説明

血管内皮細胞増殖因子2

【課題】本発明の課題は、新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの使用、およびそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生である。本発明はまた、そのようなポリペプチドの作用を阻害することを課題とする。
【解決手段】本発明は、図1の推定のアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチドまたはこのポリペプチドの活性なフラグメント、アナログまたは誘導体;ATCC寄託番号75698番に含まれるcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチドまたは該ポリペプチドの活性なフラグメント、アナログまたは誘導体;をコードするポリヌクレオチドからなる群から選択される、VEGF2をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの使用、およびそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生に関する。より詳細には、本発明のポリペプチドは、ヒト血管内皮細胞増殖因子2(VEGF2)である。本発明はまた、そのようなポリペプチドの作用を阻害することに関する。
【背景技術】
【0002】
新たな血管の形成、すなわち脈管形成は、胚の発生、それに続く成長、および組織修復のために必須である。脈管形成は、ヒト固形ガン(human solid cancer)の成長の必須な部分である。そして異常な脈管形成は、慢性関節リウマチ、乾癬、および糖尿病性網膜症などの他の疾患に関連する(非特許文献1)。
【0003】
いくつかの因子が脈管形成に関与する。内皮細胞および他の細胞タイプのためのマイトジェンである酸性および塩基性両方の線維芽細胞増殖因子分子。アンギオトロピン(angiotropin)およびアンジオジェニンは脈管形成を誘導し得るが、これらの機能は不明である(非特許文献2)。高度に選択的な血管内皮細胞のためのマイトジェンは、血管内皮細胞増殖因子すなわちVEGFである(非特許文献3)。血管内皮細胞増殖因子は、その標的細胞特異性が血管内皮細胞に制限されているようである、分泌される脈管形成マイトジェンである。マウスVEGF遺伝子は、特徴付けられ、そして胚形成におけるその発現パターンが解析された。VEGFの持続的な発現が、有窓内皮に隣接する上皮細胞において(例えば、脈絡叢および腎糸球体において)観察された。このデータは、VEGFの内皮細胞の増殖および分化の多機能性レギュレーターとしての役割に一致する。非特許文献4。
【0004】
VEGFは、脈管形成を促進し得る。VEGFは、ヒト血小板由来増殖因子、PDGFαおよびPDGFβと配列相同性を共有する(非特許文献5)。相同性の程度は、それぞれ約21%および約24%である。8つのシステイン残基が、これら3つのすべてのメンバーの間で保存されている。これらは類似しているが、VEGFとPDGFとの間には特異的な差異がある。PDGFは結合組織のための主要な増殖因子である一方、VEGFは内皮細胞に高度に特異的である。VEGFは、血管透過性因子(vascular permeability factor)(VPM)および星状ろ胞由来増殖因子(follicle stellate−derived growth factor)としても知られる。これはヘパリン結合性二量体ポリペプチドである。
【0005】
VEGFは、オルタナティブスプライシングによる、121、165、189および206アミノ酸の4つの異なる形態を有する。VEGF121およびVEGF165は、可溶性でありそして脈管形成を促進し得る。一方VEGF189およびVEGF206は、細胞表面中のヘパリン含有プロテオグリカンに結合している。VEGFの時期的および空間的な発現は、血管の生理学的増殖に相関していた(非特許文献6;非特許文献7)。その高親和性結合部位は、組織切片中の内皮細胞上のみに位置付けられる(非特許文献8)。この因子は下垂体細胞およびいくつかの腫瘍細胞株から単離され得、そしてある種のヒト神経膠腫と関係している(非特許文献9)。興味深いことに、VEGF121またはVEGF165の発現は、チャイニーズハムスター卵巣細胞に、ヌードマウス中で腫瘍を形成する能力を与える(非特許文献10)。最後に、抗VEGFモノクローナル抗体によるVEGF機能の阻害は、免疫欠損マウスにおける腫瘍成長を阻害することが示された(非特許文献11)。
【0006】
血管透過性因子(VEGFとしても知られる)はまた、傷害の休止の後でさえも血漿タンパク質に対する持続的な微小血管高透過性(microvascular hyperpermeability)(これは、正常な創傷治癒の特徴的な特性である)を担うことが見出されている。これは、VPF(またはVEGF)が、創傷治癒における重要な因子であることを示唆する。非特許文献12。
【0007】
Chenらに1991年12月17日に発行された特許文献1は、適切な環境において内皮細胞増殖を相乗的に増強するための方法を開示する。この方法は、環境に、VEGF、エフェクターおよび血清由来因子を添加する工程を包含する。また、血管内皮細胞増殖因子CサブユニットDNAが、ポリメラーゼ連鎖反応技術により調製された。このDNAは、ヘテロ二量体またはホモ二量体のいずれとしても存在し得るタンパク質をコードする。このタンパク質は、哺乳動物血管内皮細胞マイトジェンであり、そして、1992年9月30日に公開された特許文献2に開示されるように、それ自体、血管の発達および修復の促進のために有用である。
【0008】
本発明の1つの局面に従って、 VEGF2ならびにそのフラグメント、アナログおよび誘導体である、新規な成熟ポリペプチドが提供される。本発明のVEGF2は、ヒト起源である。
【特許文献1】米国特許第5,073,492号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第92302750.2号明細書
【非特許文献1】Folkman, J.およびKlagsbrun,M.,Science 1987年 第235巻p.442−447
【非特許文献2】Folkman, J.,Cancer Medicine Lea and Febiger Press 1993年,p.153−170
【非特許文献3】Ferrara, N.ら、Endocr.Rev.1992年 第13巻p.19−32
【非特許文献4】Breier, G.ら、Development,1992年 第114巻p.521−532
【非特許文献5】Leung, D.W.ら、Science,1989年 p.1306−1309
【非特許文献6】Gajdusek, C.M.,およびCarbon, S.J.,Cell Physiol.,1989年 第139巻 p.570−579
【非特許文献7】McNeil, P.L., Muthukrishnan, L., Warder, E., D’Amore, P.A., J. Cell.Biol.,1989年 第109巻p.811−822
【非特許文献8】Jakeman, L.B.ら、Clin.Invest.1989年 第89巻 p.244−253
【非特許文献9】Plate, K.H. Nature 1992年 第359巻 p.845−848
【非特許文献10】Ferrara, N.ら、J. Clin. Invest.1993年 第91巻p.160−170
【非特許文献11】Kim,K.J.,Nature 1993年 第362巻p.841−844
【非特許文献12】Brown, L.F.ら、J. Exp. Med.,1992年 第176巻p.1375−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの使用、およびそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生である。より詳細には、本発明のポリペプチドは、ヒト血管内皮細胞増殖因子2(VEGF2)である。本発明はまた、そのようなポリペプチドの作用を阻害することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、VEGF2をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、このポリヌクレオチドは、
図1の推定のアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチドまたはこのポリペプチドの活性なフラグメント、アナログまたは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
ATCC寄託番号75698番に含まれるcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチドまたは該ポリペプチドの活性なフラグメント、アナログまたは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
からなる群から選択される。
【0011】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドはDNAである。
【0012】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0013】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドはゲノムDNAである。
【0014】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、図1の推定のアミノ酸配列を有するVEGF2をコードする。
【0015】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、ATCC寄託番号75698番のcDNAによりコードされるVEGF2ポリペプチドをコードする。
【0016】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、図1に示されるVEGF2のコード配列を有する。
【0017】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、ATCC寄託番号75698番として寄託されるVEGF2のコード配列を有する。
【0018】
別の局面において、本発明は、上記DNAを含むベクターを提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、上記ベクターを用いて遺伝子操作された宿主細胞を提供する。
【0020】
別の局面において、本発明は、上記宿主細胞から上記DNAによりコードされるポリペプチドを発現させる工程を包含する、このポリペプチドを産生するためのプロセスを提供する。
【0021】
別の局面において、本発明は、上記ベクターを用いて細胞を遺伝子操作する工程を包含する、ポリペプチドを発現し得る細胞を生成するためのプロセスを提供する。
【0022】
別の局面において、本発明は、上記DNAにハイブリダイズ可能でありかつVEGF2活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたDNAを提供する。
【0023】
別の局面において、本発明は、(i) 図1の推定のアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチドならびにその活性なフラグメント、アナログおよび誘導体、および(ii)
ATCC寄託番号75698番のcDNAによりコードされるVEGF2ポリペプチドならびに該ポリペプチドの活性なフラグメント、アナログおよび誘導体、からなる群から選択されるポリペプチドを提供する。
【0024】
1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、図1の推定のアミノ酸配列を有するVEGF2である。
【0025】
別の局面において、本発明は、上記ポリペプチドに対する抗体を提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、上記ポリペプチドに対するアンタゴニストを提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、VEGF2を必要とする患者の処置方法を提供し、この方法は、患者に治療有効量の上記ポリペプチドを投与する工程を包含する。
【0028】
別の局面において、本発明は、VEGF2を阻害する必要を有する患者の処置方法を提供し、この方法は、患者に上記ポリペプチドに対する治療有効量のアンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0029】
別の局面において、本発明は、上記ポリペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。
【0030】
1つの実施形態において、上記治療有効量ポリペプチドが、患者にこのポリペプチドをコードするDNAを提供しそしてこのポリペプチドをインビボで発現させることにより投与される方法が提供される。
【0031】
本発明の別の局面に従って、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)が提供される。
【0032】
本発明のさらに別の局面に従って、そのようなポリペプチドを組換え技術により産生するためのプロセスが提供される。
【0033】
本発明のまたさらなる局面に従って、そのようなポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、損傷された骨および組織の増殖を促進しそして内皮形成(endothelialization)を促進するための治療目的(例えば、創傷治癒剤として)、ならびに腫瘍の診断、ガン治療およびVEGF2の未知のレセプターを同定および単離するために利用するためのプロセスが提供される。
【0034】
本発明のまた別の局面に従って、VEGF2に対する抗体およびそのような抗体を産生するためのプロセスが提供される。
【0035】
本発明のまた別の局面に従って、VEGF2に対するアンタゴニスト/インヒビターが提供される。これは、そのようなポリペプチドの作用を阻害するために(例えば、腫瘍脈管形成を防止するために)使用され得る。
【0036】
本発明のこれらおよび他の局面は、本明細書中の教示から当業者に明らかであるはずである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの使用、およびそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生が提供される。より詳細には、本発明のポリペプチドは、ヒト血管内皮細胞増殖因子2(VEGF2)である。本発明によれば、そのようなポリペプチドの作用を阻害することもまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の1つの局面によれば、図1の推定のアミノ酸配列を有する成熟ポリペプチドまたは に対するATCC寄託番号75698として、アメリカンタイプカルチャーコレクション、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に寄託されたクローンのcDNAにコードされる成熟ポリペプチドをコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)が提供される。
【0039】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、初期のヒト胚(8〜9週)骨巨細胞腫、成人心臓またはいくつかの乳ガン細胞株から得られ得る。本発明のポリヌクレオチドは、初期のヒト9週胚由来cDNAライブラリー中に発見された。これは、VEG
F/PDGFファミリーに構造的に関連している。これは、約350アミノ酸残基のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。この最初のおよそ24アミノ酸残基がリーダー配列であるようであり、その結果成熟タンパク質は326アミノ酸を含む。そしてこのタンパク質は、血管内皮細胞増殖因子に対する最大の相同性を示し(30%の同一性)、PDGFα(23%)およびPDGFβ(22%)がそれに続く(図3を参照のこと)。8つすべてのシステインがファミリーの4つのメンバー内すべてで保存されていることは特に重要である(図2の四角で囲んだ領域を参照のこと)。さらに、PDGF/VEGFファミリーの特徴であるPXCVXXXRCXGCCNが、VEGF2において保存されている(図2参照のこと)。VEGF2、VEGFおよび2つのPDGFの間の相同性は、タンパク質配列レベルである。ヌクレオチド配列の相同性は検出され得ない。それゆえ、VEGF2を低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションのような単純なアプローチで単離することは困難であろう。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNA(このDNAはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを包含する)の形態であり得る。DNAは二本鎖または一本鎖であり得、そして一本鎖はコード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。成熟ポリペプチドをコードするコード配列は、図1に示すコード配列または寄託したクローンのコード配列と同一であり得、あるいはそのコード配列が、遺伝コードの重複性または縮重の結果として、図1のDNAまたは寄託したcDNAと同じ成熟ポリペプチドをコードする異なるコード配列であり得る。
【0041】
図1の成熟ポリペプチドまたは寄託したcDNAによりコードされる成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは以下を包含し得る:成熟ポリペプチドのコード配列のみ;成熟ポリペプチドのコード配列およびリーダーまたは分泌配列またはプロタンパク質配列のようなさらなるコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列(および随意のさらなるコード配列)および非コード配列(例えば、イントロンまたは成熟ポリペプチドのコード配列の5’および/または3’非コード配列)。
【0042】
従って、用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペプチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチドおよびさらなるコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。
【0043】
本発明はさらに、図1の推定のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは寄託したクローンのcDNAによりコードされるポリペプチドの、フラグメント、アナログおよび誘導体をコードする本明細書中上記のポリヌクレオチドの改変体に関する。ポリヌクレオチドの改変体は、ポリヌクレオチドの天然の対立遺伝子改変体またはポリヌクレオチドの非天然の改変体であり得る。
【0044】
従って本発明は、図1に示すものと同じ成熟ポリペプチドまたは寄託したクローンのcDNAによりコードされる同じ成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびそのようなポリヌクレオチドの改変体を包含する。この改変体は、図1のポリペプチドまたは寄託したクローンのcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメント、誘導体またはアナログをコードする。このようなヌクレオチド改変体は、欠失改変体、置換改変体および付加または挿入改変体を包含する。
【0045】
本明細書中上記で示したように、ポリヌクレオチドは、図1に示すコード配列または寄託したクローンのコード配列の天然の対立遺伝子改変体であるコード配列を有し得る。当該分野で公知なように、対立遺伝子改変体は、1以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加を有するポリヌクレオチド配列の別の形態であり、これはコードされるポリペプチドの機能を実質的に変化させない。
【0046】
本発明はまたポリヌクレオチドを包含し、ここで成熟ポリペプチドのコード配列は宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの制御された輸送のための分泌配列として機能するリーダー配列)に同じ読みとり枠内で融合され得る。リーダー配列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、そして宿主細胞により切断されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有し得る。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質およびさらなる5’アミノ酸残基であるプロタンパク質をコードし得る。プロ配列を有する成熟タンパク質はプロタンパク質であり、そしてそれは不活性型のタンパク質である。一旦プロ配列が切断されると、活性な成熟タンパク質が残る。
【0047】
従って、例えば、本発明のポリヌクレオチドは、成熟タンパク質、またはプロ配列を有するタンパク質またはプロ配列およびプレ配列(リーダー配列)の両方を有するタンパク質をコードし得る。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドはまた、本発明のポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同じ読みとり枠で融合されたコード配列を有し得る。マーカー配列は、細菌宿主の場合にマーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供する、pQE−9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであり得る。また例えばマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS−7細胞)が使用される場合は、血球凝集素(HA)タグであり得る。HAタグはインフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープと一致する。(Wilson, I.ら、Cell, 37:767 (1984))。
【0049】
本発明はさらに、配列間に少なくとも50%および好ましくは70%の同一性が存在する場合、本明細書中上記の配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、本明細書中上記のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本明細書中で用いられる用語「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーションが配列間に少なくとも95%および好ましくは少なくとも97%の同一性が存在する場合のみに生じることを意味する。好ましい実施態様において本明細書中上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、図1のcDNAまたは寄託したcDNAによりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドをコードする。
【0050】
本明細書中でいう寄託物は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の下に維持される。これらの寄託物は、単に便宜上提供されるのみであり、そして米国特許法第112条の下で寄託が必要とされることを認めたわけではない。寄託物に含まれるポリヌクレオチドの配列、ならびにそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書中に参考として援用されており、そして本明細書中の配列の記載とのいかなる矛盾も抑えている。寄託物を製造し、使用し、または販売するためには実施許諾が必要とされ得、そしてそのような実施許諾はこれによって与えられるわけではない。
【0051】
本発明はさらに、図1の推定のアミノ酸配列を有するまたは寄託したcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するVEGF2ポリペプチド、およびそのようなポリペプチドのフラグメント、アナログおよび誘導体に関する。
【0052】
用語「フラグメント」、「誘導体」および「アナログ」は、図1のポリペプチドまたは寄託したcDNAにコードされるポリペプチドをいう場合は、そのようなポリペプチドと本質的に同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドを意味する。従ってアナログは、プロタンパク質部分の切断により活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じ得るプロタンパク質を包含する。
【0053】
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然のポリペプチドまたは合成ポリペプチドであり得、好ましくは組換えポリペプチドであり得る。
【0054】
図1のポリペプチドまたは寄託したcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメント、誘導体またはアナログは、(i)そこで1以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、そしてこのような置換されるアミノ酸残基がこの遺伝コードによりコードされるアミノ酸残基であり得るかあり得ないもの、または(ii)そこで1以上のアミノ酸残基が置換基を含有するもの、または(iii)そこで成熟ポリペプチドがポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)のような別の化合物に融合されているもの、または(iv)そこでリーダー配列または分泌配列もしくは成熟ポリペプチドまたはプロタンパク質の精製に用いられる配列のようなさらなるアミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されるフラグメント、誘導体またはアナログであり得る。このようなフラグメント、誘導体およびアナログは、本明細書中の教示から、当業者の範囲内にあると考えられる。
【0055】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離された形態で提供され、そして好ましくは均質に精製される。
【0056】
用語「単離された」は、物質がその本来の環境(例えば、天然に存在する場合は、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物の中に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されているわけではなく、しかし天然の系において共存する物質の幾らかまたは全部と分離されている同一のポリヌクレオチドまたはDNA、あるいはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり得るが、それにもかかわらずそのようなベクターまたは組成物がその天然の環境の一部ではないため単離されている。
【0057】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターを用いて遺伝子操作される宿主細胞、および組換え技術による本発明のポリペプチドの産生に関する。
【0058】
宿主細胞は、本発明のベクター(これは例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る)を用いて遺伝子操作される(形質導入されるまたは形質転換されるまたはトランスフェクトされる)。ベクターは例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、またはVEGF2遺伝子を増幅するために適切に改変した従来の栄養培地中において培養され得る。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択される宿主細胞に以前使用された条件であり、そして当業者には明らかである。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によりポリペプチドを産生するために用いられ得る。従って例えば、ポリヌクレオチド配列は、種々の発現媒介物のいずれか1つ、特にポリペプチドを発現するためのベクターまたはプラスミドに含まれ得る。このようなベクターは、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、および合成DNA配列を包含する。このようなベクターは、例えば、SV40の誘導体;細菌性プラスミド;ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病のようなウイルスDNAである。しかし、宿主において複製可能で、そして存続可能である限り、他の任意のプラスミドまたはベクターも使用され得る。
【0060】
上記に記載のように、適切なDNA配列は、種々の手順によりベクターに挿入され得る。一般に、DNA配列は当該分野で公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順および他の手順は、当業者に公知の範囲内であると考えられる。
【0061】
発現ベクター中のDNA配列は、適切な発現制御配列(プロモーター)に作動可能に連結され、mRNAの合成を指示する。このようなプロモーターの代表的な例としては、以下が挙げられ得る:LTRまたはSV40プロモーター、E.coli lacまたはtrp、λファージPプロモーター、および原核細胞または真核細胞あるいはそのウイルス内で遺伝子の発現を制御すると公知である他のプロモーター。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含有し得る。ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含有し得る。
【0062】
さらに、発現ベクターは、好ましくは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型特性(例えば、真核細胞培養物についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、またはE.coliにおけるテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性)を提供する遺伝子を含有する。
【0063】
上記のような適切なDNA配列ならびに適切なプロモーター配列または制御配列を含有するベクターは、適切な宿主を形質転換して宿主にタンパク質を発現させるために用いられ得る。適切な宿主の代表的な例としては、以下が挙げられ得る:細菌細胞(例えば、E.coliSalmonella typhimuriumStreptomyces);真菌細胞(例えば酵母);昆虫細胞(例えば、DrosophilaおよびSf9);動物細胞(例えば、CHO、COSまたはBowes黒色腫);植物細胞など。適切な宿主の選択は、本明細書の教示により当業者に公知の範囲内であると考えられる。
【0064】
さらに詳細には、本発明はまた、上で広範に記載した1以上の配列を含む組換え構築物を包含する。構築物は、ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)を包含し、このベクターの中には本発明の配列が正方向または逆方向に挿入されている。この実施態様の好ましい局面によれば、構築物はさらに、配列に作動可能に連結された調節配列(例えば、プロモーターを包含する)を含む。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者には公知であり、そして購入可能である。以下のベクターが例として提供される。細菌性:pQE70、pQE−9(Qiagen)、pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)。真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかし、それらが宿主において複製可能で、そして存続可能である限り、他の任意のプラスミドまたはベクターも使用され得る。
【0065】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択マーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択され得る。2つの適切なベクターは、pKK232−8およびpCM7である。特によく知られた細菌プロモーターは、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、λP、Pおよびtrpを包含する。真核プロモーターは、CMV即時型、HSVチミジンキナーゼ、初期SV40および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスI型メタロチオネインを包含する。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベル範囲内である。
【0066】
さらなる実施態様では、本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、高等真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)または下等真核細胞(例えば、酵母細胞)であり得るか、または宿主細胞は原核細胞(例えば、細菌細胞)であり得る。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーションにより達成され得る(Davis,L.,Dibner,M.,Battey,I.,Basic Methods in
Molecular Biology, 1986)。
【0067】
宿主細胞中の構築物は、組換え配列によりコードされる遺伝子産物を産生するために、従来の方法において使用され得る。あるいは、本発明のポリペプチドは、従来のペプチド合成機により合成的に産生され得る。
【0068】
成熟タンパク質は、哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞中で適切なプロモーターの制御下で発現され得る。無細胞翻訳系もまた、このようなタンパク質を産生するために、本発明のDNA構築物に由来するRNAを使用して用いられ得る。原核宿主および真核宿主で使用される適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版,(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)(この開示は、本明細書中に参考として援用されている)に記載されている。
【0069】
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増大され得る。エンハンサーはDNAのシス作用因子であり、通常は約10〜約300bpであり、これはプロモーターに作用してその転写を増大させる。例は、複製起点(bp100〜270)の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルスの早期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを包含する。
【0070】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点および宿主細胞の形質転換を可能とする選択マーカー(例えば、E.coliのアンピシリン耐性遺伝子およびS.cerevisiaeのTRP1遺伝子)および下流の構造配列の転写を指示する高発現遺伝子由来プロモーターを含有する。このようなプロモーターは、特に解糖酵素(例えば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質)をコードするオペロンに由来し得る。異種構造配列は、翻訳開始配列および翻訳終止配列、および好ましくは翻訳されたタンパク質の細胞周辺腔または細胞外培地への分泌を指示し得るリーダー配列と適切な相内で組立てられる。随意に異種配列は、所望の特徴を与えるN末端同定ペプチド(例えば、発現された組換え産物の安定化または簡略化された精製)を含む融合タンパク質をコードし得る。
【0071】
細菌での使用に有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターと作動可能な読みとり相で、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を適切な翻訳開始シグナルおよび翻訳終止シグナルと共に挿入することにより構築される。ベクターは、1以上の表現的な選択マーカー、およびベクターの維持を保証するため、そして所望により宿主内での増幅を提供するために複製起点を含有する。形質転換のために適切な原核宿主は、E.coliBacillus subtilisSalmonella typhimurium、およびPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属内の種々の種を包含するが、他の種もまた選択対象に用いられ得る。
【0072】
代表的な、しかし限定しない例として、細菌での使用に有用な発現ベクターは、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝エレメントを含む市販のプラスミドに由来する選択マーカーおよび細菌性の複製起点を含有し得る。このよう
な市販のベクターは、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)およびGEM1(Promega
Biotec, Madison, WI, USA)を包含する。これらのpBR322「骨格」部分は、適切なプロモーターおよび発現されるべき構造配列と組み合わされる。
【0073】
適切な宿主系統の形質転換および適切な細胞密度への宿主系統の増殖に続いて、選択されたプロモーターは適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)により脱抑制され、そして細胞はさらなる期間培養される。
【0074】
細胞は、代表的には遠心分離により収集され、物理的手段または化学的手段により破砕され、そして得られた粗抽出物はさらなる精製のために保持される。
【0075】
タンパク質の発現において用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用を包含する任意の便利な方法により破砕され得る。
【0076】
種々の哺乳動物細胞の培養系もまた、組換えタンパク質を発現するために用いられ得る。哺乳動物発現系の例は、Gluzman, Cell, 23: 175 (1981)に記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、および適合性のベクターを発現し得る他の細胞株(例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株)を包含する。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサー、および任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位、転写終結配列、および5’フランキング非転写配列をも含有する。SV40のウイルスゲノムに由来するDNA配列(例えば、SV40オリジン、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位)は、必要な非転写遺伝エレメントを提供するために使用され得る。
【0077】
VEGF2は、以下で使用される方法により組換え細胞培養物から回収され、そして精製される。これらの方法には、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーが包含される。精製の間に低濃度(約0.1〜約5mM)のカルシウムイオンが存在することが好ましい(Priceら、J.Biol.Chem., 244: 917(1969))。必要に応じて、タンパク質の再折りたたみ(refolding)工程が、成熟タンパク質を完全な配置とするために使用され得る。最終的に、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が、最終的な精製工程に用いられ得る。
【0078】
本発明のポリペプチドは、天然の精製された産物または化学合成手順の産物であり得るか、または原核宿主または真核宿主(例えば、培養中の細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞)から組換え技術により産生され得る。組換え産生手順に用いられる宿主により、本発明のポリペプチドは、哺乳動物または他の真核性の糖質でグリコシル化され得るか、またはグリコシル化され得ない。
【0079】
VEGF2は、創傷治癒剤として、特に損傷した組織を再血管形成させる必要がある場合、または新たな毛細脈管形成が重要である場合に、有用である。それゆえ、VEGF2はとこずれを包含する皮膚の潰瘍、静脈の潰瘍、および糖尿病性潰瘍のような全層性創傷の処置のために使用され得る。さらにVEGF2は、傷害部位中の熱傷に植皮片および皮膚弁を形成するために脈管形成が所望される場合に、全層性熱傷および傷害の処置において使用され得る。この場合、これは部位に直接適用される。同様に、VEGF2は、熱傷
、外傷の後またはさらに美容目的のために再構成が必要な場合に、形成外科において使用され得る。
【0080】
VEGF2はまた、損傷した骨、歯周組織または靭帯組織の成長を誘導するために使用され得る。VEGF2がメチルセルロースゲル中で疾患歯の歯根に適用される歯周疾患において使用され得、この処置は新たな骨形成およびコラーゲン繊維内殖を有するセメント質の形成を導き得る。VEGF2は、疾患および外傷によって損傷した歯の支持組織(歯糟骨、セメント質および歯周靭帯を含む)の再生のために使用され得る。
【0081】
脈管形成は創傷を清潔にそして非感染に保つことにおいて重要であるので、VEGF2は外科手術に関連しておよびそれに続く切断の修復において使用され得る。VEGF2は、感染の危険性が高い腹部創傷の処置において特に有用であるはずである。
【0082】
VEGF2は、血管移植手術において内皮形成(endothelialization)促進のために使用され得る。移植された物質または合成した物質のいずれかを用いた血管移植片の場合、VEGF2は移植片の表面または連結部に適用されて血管内皮細胞の増殖を促進し得る。これの1つの派生は、VEGF2が心筋梗塞および冠状動脈バイパス外科手術が移植された組織の成長の刺激により必要とされるその他の情況の損傷を修復するために使用され得ることである。これに関しては、VEGF2の虚血後の心血管系を修復するための使用が挙げられる。
【0083】
VEGF2の同定は、血管内皮細胞増殖因子の特定のインヒビターの生成のために使用され得る。脈管形成および血管新生は固形ガン成長における必須の工程であるので、血管内皮細胞増殖因子の脈管形成活性の阻害は、固形ガンのさらなる成長の防止、遅延、または退縮においてすら非常に有用である。VEGF2の発現レベルは乳房を含む正常組織において非常に低いが、VEGF2は悪性腫瘍に由来する少なくとも2つの乳ガン細胞株において中等レベルで発現されていることが見出され得る。それゆえ、VEGF2が腫瘍の脈管形成および成長に関与する可能性がある。
【0084】
VEGF2は、血管内皮細胞のインビトロでの培養のために使用され得る。ここでVEGF2は、馴化培地に10 pg/ml〜10 ng/mlの濃度で添加され得る。
【0085】
本発明のポリペプチドはまた、インビボでのこのようなポリペプチドの発現により本発明に従って用いられ得、これはしばしば、「遺伝子治療」といわれる。
【0086】
従って、例えば、骨髄細胞のような細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を用いてエクソビボで操作され得、次いで、操作された細胞はポリペプチドで処置される患者に提供される。このような方法は当該分野で周知である。例えば、細胞は、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子の使用により、当該分野で公知の手順によって操作され得る。
【0087】
同様に、細胞は、インビボでのポリペプチドの発現のために、例えば、当該分野で公知の手順によりインビボで操作され得る。当該分野で公知のように、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子を産生するための産生細胞は、インビボで細胞を操作するためおよびインビボでのポリペプチドの発現のために患者に投与され得る。このような方法により本発明のポリペプチドを投与するこれらの方法または他の方法は、本発明の教示により当業者には明らかである。例えば、細胞を操作するための発現媒介物は、レトロウイルス粒子以外のもの(例えば、アデノウイルス)であり得る。これは、適切な送達媒介物と組み合わせた後インビボで細胞を操作するために使用され得る。
【0088】
本発明のポリペプチドは、適切な薬学的キャリアと組み合わせて用いられ得る。このような組成物は、治療有効量のタンパク質、および薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。このようなキャリアは、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを包含するが、これに限定されない。処方は、投与方法に合わせるべきである。
【0089】
本発明はまた、1以上の本発明の薬学的組成物の成分が満たされた1以上の容器を含有する薬学的パックまたはキットを提供する。このような容器は、薬剤または生物製品の製造、使用、または販売を統制する政府機関により規定された形式の通知を伴い得、この通知はヒトへの投与についての製造、使用、または販売における機関による認可を反映する。さらに、本発明のポリペプチドは、他の治療的化合物と併用して用いられ得る。
【0090】
薬学的組成物は、経口経路および静脈内経路のような便利な方法で投与され得、これは好ましくは局所的に投与される。被験体に投与されるVEGF2の量および投与法は、多数の因子(投与方法、処置される症状の性質、処置される被験体の体重および処方する医師の判断など)に依存する。一般的にいえば、これは、例えば少なくとも約10μg/kg体重の治療有効用量で与えられ、そしてほとんどの場合、1日あたり約8mg/kg体重を超えない量で投与され、そして好ましくは、投与量は、投与経路、症状などを考慮して、1日あたり約10μg/kg体重〜約1mg/kg体重である。
【0091】
本発明の配列はまた、染色体の同定に有益であり得る。配列は、個々のヒト染色体の特定の位置を特異的に標的化し、そしてその位置でハイブリダイズし得る。さらに、現在は染色体上の特定の部位を同定する必要がある。現在、染色体位置の標識に利用可能な実際の配列データ(反復多型)に基づいた染色体標識試薬はほとんどない。本発明によるDNAの染色体へのマッピングは、これらの配列と疾患に関する遺伝子とを相関させることにおける重要な第1段階である。
【0092】
簡略に述べれば、配列は、cDNAからPCRプライマー(好ましくは15〜25bp)を調製することにより染色体にマップされ得る。cDNAのコンピューター解析が、ゲノムDNA内で1より多いエキソンにまたがらない、従って増幅プロセスを複雑化しないプライマーを迅速に選択するために使用される。次いで、これらのプライマーは、個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングに使用される。プライマーに対応するヒト遺伝子を含有するハイブリッドのみが増幅フラグメントを生じる。
【0093】
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の染色体に特定のDNAを割り当てるための迅速な手順である。本発明を同じオリゴヌクレオチドプライマーと共に使用して、特定の染色体由来のフラグメントのパネルまたは類似の方法の大きなゲノムクローンのプールを用いて下部位置決め(sublocalization)が達成され得る。染色体にマップするために同様に使用され得る他のマッピング戦略は、インサイチュハイブリダイゼーション、標識したフローサイトメトリーで選別した染色体でのプレスクリーニング、および染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーションによる前選択を包含する。
【0094】
cDNAクローンの中期染色体展開物への蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、1工程で正確な染色体位置を提供するために使用され得る。この技術は、500または600塩基という短いcDNAで使用され得る;しかし、2,000bpよりも長いクローンの方が、簡便な検出のために充分なシグナル強度でユニークな染色体位置に結合しやすい。FISHは、ESTが由来するクローンの使用を必要とし、そしてこのクローンはより長いことが好ましい。例えば、2,000bpが良好であり、4,000bpはより良好であり、そして4,000bpを超える長さは、良好な結果に時間の合
理的な割合を得るためにおそらく必要でない。この技術の総説としては、Vermaら,
Human Chromosomes: a Manual of Basic Techniques, Pergamon Press, New York (1988)を参照のこと。
【0095】
一旦配列が正確な染色体位置にマップされると、配列の染色体上での物理的な位置を遺伝的地図のデータと相関させ得る。(このようなデータは、例えば、V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man に見出される(Johns Hopkins University Welch Medical Libraryからオンラインで入手可能である))。次いで、同一の染色体領域にマップされる遺伝子と疾患との関係が、連鎖解析(物理的に隣接した遺伝子の同時遺伝)により同定される。
【0096】
次に、罹患個体と非罹患個体との間のcDNAまたはゲノム配列の差異を決定する必要がある。変異がいくつかまたはすべての罹患個体に観察されるが正常な個体には観察されない場合、この変異は疾患の原因因子であると思われる。
【0097】
物理的マッピング技術および遺伝的マッピング技術の現在の解像度では、疾患に関する染色体領域に正確に位置決めされたcDNAは、50と500との間の潜在的原因遺伝子の1つであり得る。(これは、1メガ塩基のマッピング解像度で、そして20kbあたり1遺伝子と仮定する。)
罹患個体と非罹患個体との比較は、一般に、まず染色体の構造変化(例えば、染色体展開物で目視できるか、あるいはそのcDNA配列に基づくPCRを使用して検出可能な欠失または転座)を探す工程を包含する。最終的には、変異の存在を確認し、そして変異を多型から区別するために、数個体由来の遺伝子の完全な配列決定が必要とされる。
【0098】
本発明はさらに、アンチセンス技術の使用によるインビボでのVEGF2の阻害に関する。アンチセンス技術は、3重ヘリックスの形成あるいはアンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAにより遺伝子発現を制御するために使用され得る。これらの方法は両方とも、ポリヌクレオチドのDNAまたはRNAへの結合に基づく。例えば、成熟ポリヌクレオチド配列の5’コード部分(これは、本発明のポリペプチドをコードする)が、長さ10塩基対〜40塩基対のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計するために使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に関わる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(3重ヘリックス−Leeら, Nucl. Acids Res.,6: 3073 (1979); Cooneyら, Science, 241: 456 (1988); およびDervanら, Science, 251: 1360 (1991)を参照のこと)、その結果VEGF2の転写および産生を防ぐ。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイブリダイズし、そしてmRNA分子のVEGF2への翻訳をブロックする(アンチセンス−Okano, J. Neurochem.,56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press, Boca Raton, FL (1988)を参照のこと)。
【0099】
あるいは、上記のオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNAまたはアンチセンスDNAがインビボで発現されて上記の方法でVEGF2の産生を阻害し得るように、当該分野の手順により細胞に送達され得る。
【0100】
それゆえ、VEGF2に対するアンチセンス構築物は、VEGF2の脈管形成活性を阻害し得、そして固形ガンのさらなる成長を防止するかまたは退縮すらさせ得る。なぜなら
、脈管形成および血管新生は固形ガン成長における必須の段階であるからである。これらのアンチセンス構築物はまた、慢性関節リウマチ、乾癬および糖尿病性網膜症(これらはすべて異常な脈管形成により特徴付けられる)を処置するために使用され得る。
【0101】
このポリペプチド、そのフラグメントまたは他の誘導体、またはそれらのアナログ、あるいはそれらを発現する細胞は、それらに対する抗体を産生させるための免疫原として使用され得る。これらの抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体であり得る。本発明はまた、キメラ抗体、単鎖抗体およびヒト化抗体、ならびにFabフラグメント、またはFab発現ライブラリーの産物を包含する。当該分野で公知の種々の手順が、このような抗体およびフラグメントの産生のために使用され得る。
【0102】
本発明の配列に対応するポリペプチドに対して生成される抗体は、動物へのポリペプチドの直接注射により、または動物へのポリペプチドの投与により得られ得る。この動物は、好ましくは非ヒトである。次いで、このようにして得られた抗体は、ポリペプチド自体に結合する。このようにして、ポリペプチドのフラグメントのみをコードする配列でさえも、天然のポリペプチド全体に結合する抗体を生成するために使用され得る。次いで、このような抗体は、そのポリペプチドを発現する組織からポリペプチドを単離するために使用され得る。モノクローナル抗体の調製のために、細胞株の連続培養により産生される抗体を提供する任意の技術が使用され得る。例としては、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein, 1975, Nature, 256: 495−497)、トリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら, 1983, Immunology Today 4: 72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら, 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss,Inc.,77−96頁)が挙げられる。
【0103】
単鎖抗体を産生するために記載された技術(米国特許第4,946,778号)を、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する単鎖抗体を生成するために適合させ得る。
【0104】
中和抗体が同定され得そして、血管内皮細胞増殖因子をマスクするために適用され得る。そしてこれはVEGFに対するマウスモデル系において示された。VEGF2はまた、この遺伝子自身内の特定のドミナントネガティブ変異体によって不活性化され得る。PDGFαおよびβの両方がヘテロ二量体またはホモ二量体を形成し、そしてVEGFがホモ二量体を形成することが知られている。同様なVEGF2間の相互作用が予測され得る。それゆえこれらの抗体は、VEGF2の脈管形成活性をブロックし、そして固形腫瘍の成長を遅延させるために使用され得る。これらの抗体はまた、VEGF2の存在の結果生じる増加した血管透過性により起こる炎症を処置するために使用され得る。
【0105】
これらの抗体はさらに、特定の個体における腫瘍の存在を検出するためのイムノアッセイにおいて使用され得る。エンザイムイムノアッセイを、個体の血液サンプルから実施し得る。VEGF2の上昇したレベルは、ガンの特徴であると考えられ得る。
【0106】
本発明はまた、本発明のポリペプチドのアンタゴニスト/インヒビターに関する。アンタゴニスト/インヒビターは、ポリペプチドの機能を阻害または除去するものである。
【0107】
従って、例えば、アンタゴニストは本発明のポリペプチドに結合し、そしてその機能を阻害または除去する。このアンタゴニストは、例えば、ポリペプチドまたはある場合ではオリゴヌクレオチドに結合するポリペプチドに対する抗体であり得る。インヒビターの例は、ポリペプチドに結合しそしてその触媒部位を占め、それにより触媒部位を基質に接近不能にし、その結果正常な生物学的活性が妨害される、低分子である。低分子の例は、低
分子ペプチドまたはペプチド様分子を包含するが、それらに限定されない。
【0108】
VEGF2の短縮型も産生され得る。この短縮型は野生型VEGF2と相互作用して内皮細胞増殖を活性化できない二量体を形成し得、それゆえ内因性VEGF2を不活化し得る。あるいは、変異体型のVEGF2は、それ自身で二量体を形成し、そして標的細胞表面上の適切なチロシンキナーゼレセプターのリガンド結合ドメインを占めるが、細胞増殖を活性化できない。
【0109】
あるいは、本発明のポリペプチドが正常に結合するレセプターに結合する、本発明のポリペプチドに対するアンタゴニストが用いられ得る。アンタゴニストは、天然のタンパク質のレセプター部位を認識し、そしてそれに結合するが、しかしこれらは天然のタンパク質の不活性形態であり、レセプター部位が占められているのでそれによりVEGF2の作用を妨害するような近縁のタンパク質であり得る。これらの方法により、VEGF2の作用が妨害され、そしてアンタゴニスト/インヒビターはVEGF2により認識される腫瘍のレセプター部位を占めることにより、またはVEGF2自身を不活化することにより、抗腫瘍薬物として治療的に使用され得る。アンタゴニスト/インヒビターはまた、VEGF2の増加した血管透過性作用に起因する炎症を防止するために使用され得る。アンタゴニスト/インヒビターはまた、固形ガン成長、糖尿病性網膜症、乾癬および慢性関節リウマチを処置するために使用され得る。
【0110】
アンタゴニスト/インヒビターは、例えば本明細書中上記のような薬学的に受容可能なキャリアを有する組成物中で用いられ得る。
【0111】
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに記載する;しかし、本発明はこのような実施例に限定されないことを理解されたい。すべての部または量は、他に明記しない限り重量基準である。
【0112】
以下の実施例の理解を容易にするために、現れる頻度の高い所定の方法および/または用語を記載する。
【0113】
「プラスミド」は、小文字のpの前および/または後に大文字および/または数字を示すことにより命名される。本明細書中の出発プラスミドは、市販であり、制限無く公的に入手可能であり、または公開された手順に従って入手可能なプラスミドから構築され得る。さらに、記載されるプラスミドと等価のプラスミドが当該分野で公知であり、そして当業者には明らかである。
【0114】
DNAの「消化」は、DNA中の所定の配列でのみ作用する制限酵素でそのDNAを触媒反応的に切断することをいう。本明細書中で使用される種々の制限酵素は、市販されており、そしてそれらの反応条件、補因子、および他の必要条件は当業者に公知のものが使用された。分析目的には、代表的には1μgのプラスミドまたはDNAフラグメントが約2単位の酵素とともに約20μlの緩衝溶液中で使用される。プラスミド構築のためのDNAフラグメントを単離する目的には、代表的には5〜50μgのDNAが20〜250単位の酵素で、より大きな容量中で消化される。特定の制限酵素のための適切な緩衝液および基質量は、製造者により特定される。37℃にての約1時間のインキュベーション時間が通常使用されるが、しかしこれは供給者の説明書に従って変動させ得る。消化後、反応物をポリアクリルアミドゲルで直接電気泳動して所望のフラグメントを単離する。
【0115】
切断フラグメントのサイズ分離は、Goeddel,D.ら, Nucleic Acids Res.,8: 4057 (1980)により記載された8%ポリアクリルアミドゲルを使用して行われる。
【0116】
「オリゴヌクレオチド」は、1本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは2つの相補的なポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかをいい、これらは化学的に合成され得る。このような合成オリゴヌクレオチドは、5’リン酸を有さず、従ってキナーゼの存在下でリン酸とATPとを添加しなければ別のオリゴヌクレオチドと連結しない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていないフラグメントに連結する。
【0117】
「連結」は、2つの2本鎖核酸フラグメントの間でリン酸ジエステル結合を形成するプロセスをいう(Maniatis,Tら、前出、146頁)。他に提供されていなければ、連結は公知の緩衝液および条件で、大体等モル量の連結されるべきDNAフラグメント0.5μgあたり10単位のT4 DNAリガーゼ(「リガーゼ」)を用いて達成され得る。
【0118】
記載しない限り、形質転換はGraham,F.およびVan der Eb, A., Virology, 52:456−457 (1973)の方法に記載のように実施した。
【実施例1】
【0119】
ヒト組織および乳ガン細胞株におけるVEGF2の発現パターン
ノーザンブロット解析を、ヒト組織およびヒト組織における乳ガン細胞株におけるVEGF2の発現レベルを試験するために行った。全細胞性RNAサンプルを、RNAzolTM Bシステム(Biotecx Laboratories, Inc.)を用いて単離した。各々の特定された乳房組織および細胞株から単離された約10μgの全RNAを、1%アガロースゲルで分離し、そしてナイロンフィルター上にブロットした(Molecular Cloning, Sambrook FritschおよびManiatis, Cold Spring Harbor Press, 1989)。標識反応は、Stratagene Prime−Itキットに従って50 ngのDNAフラグメントを用いて行った。標識したDNAを、5 Prime−−3 Prime, Inc.からのSelect−G−50カラムを用いて精製した。次いでフィルターを、放射性標識全長VEGF2遺伝子を用いて、1,000,000 cpm/mlで0.5M
NaPOおよび7%SDS中で65℃で一晩ハイブリダイズした。0.5×SSC、0.1%SDSを用いて、室温で2回および60℃で2回洗浄した後、次いでフィルターを増感スクリーンとともに−70℃で一晩曝露した。1.6 Kbのメッセージが2つの乳ガン細胞株において観察された。レーン#4は、増殖がエストロゲン非依存性である非常に腫瘍形成性の高い細胞株を表す。図4を参照のこと。また、10のヒト成人組織由来の10μgの全RNAをアガロースゲルで分離し、そしてナイロンフィルターにブロットした。次いでフィルターを放射性標識VEGF2プローブを用いて、7%SDS、0.5M NaPO(pH7.2)、1%BSA中で、65℃で一晩ハイブリダイズした。0.2×SSC中で65℃で洗浄した後、フィルターをフィルムに増感スクリーンとともに−70℃で24日間曝露した。図5を参照のこと。
【実施例2】
【0120】
インビトロでの転写および翻訳によるVEGF2の発現
VEGF2 cDNAをインビトロで転写および翻訳して、全長および部分VEGF2
cDNAによりコードされる翻訳可能なポリペプチドのサイズを測定した。pBluescript SKベクター中のVEGF2の全長および部分cDNA挿入物を、以下の3対のプライマーを用いたPCRにより増幅した。1) M13逆方向および正方向プライマー;2) M13逆方向プライマーおよびVEGFプライマーF4;3) M13逆方向プライマーおよびVEGFプライマーF5。これらのプライマーの配列は以下のとおりである。
M13−2逆方向プライマー:
5’−ATGCTTCCGGCTCGTATG−3’
この配列は、pBluescriptベクター中のVEGF2 cDNA挿入物の5’末端の上流に位置し、そしてcDNAのアンチセンス方向にある。T3プロモーター配列がこのプライマーとVEGF2 cDNAとの間に位置する。
M13−2正方向プライマー:
5’GGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’
この配列は、 pBluescriptベクター中のVEGF2 cDNA挿入物の3’末端の下流に位置し、そしてcDNA挿入物のアンチセンス方向にある。
VEGFプライマーF4:
5’−CCACATGGTTCAGGAAAGACA−3’
この配列は、VEGF2 cDNA内にアンチセンス方向でbp 1259〜1239で位置し、これは終止コドンの3’末端から約169 bp離れており、そしてcDNAの最後のヌクレオチドの約266 bp前である。
【0121】
3つすべてのプライマーの対を用いたPCR反応は、cDNA挿入物の前のT3プロモーター配列を有する増幅産物を生成する。第1および第3のプライマーの対は、VEGF2の完全なポリペプチドをコードするPCR産物を生成する。第2のプライマーの対は、VEGF2ポリペプチドのC末端の36アミノ酸をコードする配列を欠失するPCR産物を生成する。
【0122】
第1のプライマーの対由来の約0.5μgのPCR産物、第2のプライマーの対由来の1μg、第3のプライマーの対由来の1μgを、インビトロでの転写/翻訳のために使用した。インビトロでの転写/翻訳反応を、25μlの容積中で、TTM Coupled Reticulocyte Lysate Systems(Promega, CAT# L4950)を用いて実施した。詳細には、反応物は12.5μlのTTウサギ網状赤血球溶解物、2μlのTT反応緩衝液、1μlのT3ポリメラーゼ、1μlの1mMアミノ酸混合物(−メチオニン)、4μlの35Sメチオニン(>1000 Ci/mmol、10 mCi/ml)、1μlの40 U/μl;RNasinリボヌクレアーゼインヒビター、0.5または1μgのPCR産物を含有する。ヌクレアーゼなしのHOを添加して容量を25μlとした。反応物を30℃で2時間インキュベートした。反応産物の5μlを4〜20%勾配SDS−PAGEゲルで分析した。25%イソプロパノールおよび10%酢酸中で固定した後、ゲルを乾燥し、そしてX線フィルムに70℃で一晩曝露した。
【0123】
図6に示すように、全長VEGF2 cDNAおよび3’非翻訳領域(3’−UTR)中の266 bpを欠失するcDNAを含有するPCR産物は、同じ長さの翻訳産物を生成し、この分子量は38〜40 kdであると見積もられる(レーン1および3)。すべての3’UTRを欠失し、そしてC末端の36アミノ酸をコードする配列を欠失するcDNAは、36〜38 kdの概算の分子量を有するポリペプチドに翻訳された(レーン2)。
【図面の簡単な説明】
【0124】
以下の図面は、本発明の実施態様の例示であり、そして請求の範囲により包含される本発明の範囲を限定することを意味しない。
【図1A】図1Aは、VEGF2をコードするポリヌクレオチド配列、および対応する推定のアミノ酸配列(その最初のおよそ24アミノ酸がリーダー配列を表す350アミノ酸残基を含むVEGF2完全長ポリペプチド)を示す。標準的な3文字略語を、アミノ酸配列を示すために使用した。
【図1B】図1Bは、図1Aの続きである。
【図1C】図1Cは、図1Bの続きである。
【図1D】図1Dは、図1Cの続きである。
【図2A】図2Aは、増殖因子PDGFα、PDGFβ、VEGFおよびVEGF2の間のアミノ酸レベルでの相同性を示す。
【図2B】図2Bは、図2Aの続きである。
【図3】図3は、図表の形式で、PDGFα、PDGFβ、VEGFおよびVEGF2の間の相同性の百分率を示す。
【図4】図4は、乳ガン細胞株におけるVEGF2のmRNAの存在を示す。
【図5】図5は、ヒト成人組織におけるVEGF2のノーザンブロット解析の結果を示す。
【図6】図6は、インビトロ転写/翻訳後に泳動したVEGF2およびSDS−PAGEゲルの結果を示す。完全長および部分VEGF2 cDNAを、35Sメチオニンの存在下でのカップルした反応において転写して翻訳した。翻訳された産物を、4〜20%勾配SDS PAGEにより解析し、そしてX線フィルムに曝した。
【0125】
(配列表)
【0126】


【表1】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のタンパク質の成熟部分をコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号2のタンパク質のプロタンパク質部分をコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
ヒトVEGF−2をコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸38〜118を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドが内皮細胞増殖活性または脈管形成活性を有する、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸1〜326を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸−24〜326を含む、請求項5に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号1のヌクレオチド配列または配列番号1の相補体からなるポリヌクレオチドに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
1.6Kb mRNA転写産物に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、該転写産物はまた、配列番号2のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列またはATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAへのハイブリダイゼーションにより検出される、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号2のポリペプチドのフラグメントをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリペプチドのフラグメントは、脈管形成活性を有する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメントをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、該フラグメントは、脈管形成活性を有する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号2のポリペプチドのフラグメントをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリペプチドフラグメントが内皮細胞増殖活性を有する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメントをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、該フラグメントは、内皮細胞増殖活性を有する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質の成熟部分をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質のプロタンパク質部分をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドと少なくとも95%の同一である核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドであって、該単離されたポリヌクレオチドは、内皮細胞増殖活性または脈管形成活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドと少なくとも97%の同一である核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドであって、該単離されたポリヌクレオチドは、内皮細胞増殖活性または脈管形成活性を有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項20】
遺伝子発現を制御する調節配列に作動性に連結された請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項21】
異種調節配列に作動可能に連結された請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項22】
異種ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
VEGF−2タンパク質を産生するための方法であって、以下:
(a)請求項21に記載の遺伝子操作された宿主細胞を、該タンパク質を産生するに適切な条件下で培養する工程;および
(b)該細胞培養物から該タンパク質を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法により産生されたVEGF−2タンパク質。
【請求項26】
配列番号2からなるタンパク質の成熟部分を含む、単離されたタンパク質分子。
【請求項27】
配列番号2からなるタンパク質のプロタンパク質部分を含む、請求項26に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項28】
ヒトVEGF−2を含む、請求項27に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項29】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質の成熟部分を含む、単離されたタンパク質分子。
【請求項30】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質のプロタンパク質部分を含む、請求項29に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項31】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるタンパク質を含む、請求項31に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項32】
配列番号2のアミノ酸38〜118を含む単離されたタンパク質分子であって、内皮細胞増殖活性または脈管形成活性を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項33】
配列番号2のアミノ酸1〜326を含む、請求項32に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項34】
配列番号2のアミノ酸−24〜326を含む、請求項33に記載の単離されたタンパク質分子。
【請求項35】
配列番号2のポリペプチドのフラグメントまたはATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメントを含む単離されたタンパク質分子であって、ここで、該フラグメントは、脈管形成活性を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項36】
配列番号2のポリペプチドのフラグメントまたはATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメントを含む単離されたタンパク質分子であって、ここで、該フラグメントは、内皮細胞増殖活性を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項37】
請求項24に記載の方法によって産生されるタンパク質のアミノ酸配列を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項38】
配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する能力を有する細胞から産生されるタンパク質のアミノ酸配列を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項39】
ATCC受託番号第75698号に含まれるcDNAを発現し得る細胞から産生されるタ
ンパク質のアミノ酸配列を有する、単離されたタンパク質分子。
【請求項40】
異種ポリペプチドをさらに含む、請求項25〜39のいずれか1項に記載のタンパク質分子。
【請求項41】
前記タンパク質がホモダイマーである、請求項25〜39のいずれか1項に記載のタンパク質分子。
【請求項42】
グリコシル化される、請求項25〜39のいずれか1項に記載のタンパク質分子。
【請求項43】
請求項25〜42のいずれか1項に記載のタンパク質分子に対する抗体。
【請求項44】
配列番号2のアミノ酸38〜118からなるタンパク質分子に対する抗体であって、該タンパク質分子は、内皮細胞増殖活性または脈管形成活性を有する、抗体。
【請求項45】
ヒトVEGF−2に特異的に結合し得る抗体を産生する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む細胞を動物に導入する工程であって、該細胞は、ヒトVEGF−2を産生し得る、工程;および
(b)該動物から、ヒトVEGF−2に特異的に結合し得る抗体を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項46】
前記抗体が、前記細胞から分泌されたヒトVEGF−2に特異的に結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項24または45に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、C127細胞、3T3細胞、およびBHK細胞からなる群より選択される、請求項24または45に記載の方法。
【請求項49】
請求項45に記載の方法によって産生された抗体。
【請求項50】
ヒトVEGF−2に特異的に結合する抗体を産生する方法であって、該方法は、以下:
(a)単鎖またはFab発現ライブラリーをスクリーニングして、請求項25〜42のいずれか1項に記載のタンパク質分子に特異的に結合する抗体を同定する工程;および
(b)該ライブラリーから該抗体を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法によって産生された抗体。
【請求項52】
請求項43〜44または49または51のいずれか1項に記載の抗体を作製する方法であって、該方法は、以下:
(a)該抗体を生成するために適切な条件下で宿主細胞を培養する工程;および
(b)該細胞培養物から該抗体を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法によって作製される、抗体。
【請求項54】
請求項25〜42のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体を作製する方法であって、該方法は、以下:
(a)請求項25〜42のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生するために適切な条件下で宿主細胞を培養する工程;および
(b)該細胞培養物から該抗体を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法によって作製された抗体。
【請求項56】
前記抗体が、抗原結合抗体フラグメントである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項57】
前記抗体が、Fabフラグメントである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項58】
前記抗体が、単鎖結合フラグメントである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項59】
前記抗体が、Fab発現ライブラリーの産物である、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項60】
前記抗体が、ポリクローナルである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項61】
前記抗体が、モノクローナルである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項62】
前記抗体が、キメラである、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項63】
前記抗体が、ヒト化されている、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項64】
請求項25〜42のいずれか1項に記載のポリペプチドを検出する方法であって、該方法は、以下:
(a)サンプルを、請求項43〜44、49、51、53または55のいずれか1項に記載の抗体と、該抗体が該ポリペプチドと結合するのに適切な条件下で接触させる工程;および
(b)該抗体に結合した該ポリペプチドの存在または非存在を決定する工程、
を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−238893(P2006−238893A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135885(P2006−135885)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【分割の表示】特願2003−291861(P2003−291861)の分割
【原出願日】平成6年5月12日(1994.5.12)
【出願人】(597018381)ヒューマン ジノーム サイエンシーズ, インコーポレイテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】Human Genome Sciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】9410 Key West Avenue, Rockville, Maryland 20850, United States of America
【Fターム(参考)】