説明

血管新生標的としてのGPCR

【課題】 血管新生を調節する方法等を提供すること。
【解決手段】 本発明は、Gタンパク共役型受容体(GPCR:G−Protein Coupled Receptor)、すなわちLectomedin−3(LEC3)、エンドセリン−1受容体(EDNRA:Endothelin−1 Receptor)及びC−X−Cケモカイン受容体4(CXCR−4:C−X−C Chemokine Receptor 4)の発現又は機能を高め又は弱めることにより血管新生を調節する方法を提供する。本発明は、また、血管新生関連の疾患の治療のために、ヒトを含め、脊椎動物、すなわち特定の哺乳動物におけるGPCR依存の血管新生を抑制する方法及び促進する方法を提供する。本発明は、また、血管新生を促進し又は抑制する化合物を、LEC3、EDNRA又はCXCR−4の全部又は一部との相互作用を通じて同定する方法を提供する。本発明は、さらに、これらのGPCRとVEGFの調節によって血管新生を調節する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対するクロス・レファレンス)
本願は2006年2月14日になされた米国仮出願第60/772,991号の利益を主張するものであり、これは参照により全体としてここに組み入れられる。
【0002】
本発明は、3つのGタンパク共役型受容体(GPCR:G−Protein Coupled Receptor)タンパク質及びそれらの血管新生に対する関係性に関する。具体的には、本願は、抗血管新生及び血管新生促進に関連した治療法のための、薬剤標的としての、Lectomedin−3(LEC3)、エンドセリン−1A形受容体(EDNRA:Endothelin−1 Receptor type A)及びC−X−Cケモカイン受容体4(CXCR4:C−X−C Chemokine Receptor 4)の役割に関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生とは、新しい血管が既存の血管から形成されるプロセスである。これには、内皮細胞の他、恐らくは平滑筋細胞や繊維芽細胞のような血管内に見られるその他の細胞型の、増殖、分化及び遊走が含まれる。このプロセスを変化させることは、活性化によるものであれ阻害化によるものであれ、癌、黄斑変性、関節リウマチ、アルツハイマー病、創傷治癒、アテローム性動脈硬化症及び乏血といった人間の疾患の治療にとって有益となりうる。
【0004】
血管新生の阻害は、癌治療に対する強力で新規の手法を意味する。癌治療のためのこの方法の可能性をしっかりと実現するためには、抗血管新生活性のための化合物を迅速にスクリーニングできる分析法が不可欠である。充実性腫瘍は、生き延び、成長し、そして転移するために、血液からの十分な栄養素の供給を必要とする(非特許文献1、非特許文献2)。新規の血管は、血管新生として知られているプロセスである既存の血管からの新芽形成により、成長中の腫瘍を育てる。近年、血管新生は、癌をターゲットする新規なプロセスとして、かなりの注目を受けている。既に臨床試験において多くの薬剤が抗血管新生の働きを有していることが証明され、また、いくつかの新薬が特にその血管成長を抑止する能力のために開発されている(非特許文献3)。
【0005】
網膜における異常な血管新生は、視力喪失の根本原因である加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症及び末熟児網膜症における主要な要因である。したがって、血管新生関連の病気の治療は、網膜の病理において特に重要である。
【0006】
抗血管新生薬は、臨床応用において混合成功を収めた。多くの新規の化合物は、様々な腫瘍を治療することができる薬剤を同定するためにインビボでテストされる必要があるであろう。したがって、潜在的な抗血管新生化合物のスクリーニングに適しているインビボの分析法がますます重要となる。特許文献1は、高スループットの薬物スクリーニングのための可能性だけでなくインビボ環境の関連性も提供する、ゼブラフィッシュ(ダニオ・レリオ(Danio rerio))を用いた分析法を提供する。この技術は、たとえば、血管において特に発現される緑リーフコーラル蛍光タンパク質(G−RCFP:green reef coral fluorescent protein、非特許文献4)や赤蛍光タンパク質(dsRed2)のようなレポータータンパク質を発現する、ゼブラフィッシュのトランスジェニック系を生成することを含む。
【0007】
ゼブラフィッシュは、脊椎形成に関する研究にとって格好のモデルとなっている。マウスと異なり、ゼブラフィッシュ胚は母親の外部で発育して透明で、分化する組織と器官の観察を容易にする。特に、ゼブラフィッシュの維管束系は詳細に記述されており、ゼブラフィッシュからヒトへ高度に保存されることが証明された。(非特許文献5、非特許文献6)。さらに、ゼブラフィッシュ胚は多くの血液供給なく数日間は生きることができるので、血管に欠陥がある胚に関する研究を促進する。ゼブラフィッシュ胚の中の体節間の血管は、腫瘍血管新生に非常に類似している血管新生的崩出によって形成し、また、このプロセスは、哺乳動物における血管成長に必要であると証明されているのと同一のタンパク質を必要とするようである。たとえば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)受容体チロシンキナーゼの阻害剤である抗血管新生化合物のPTK787/ZK222584は、ゼブラフィッシュの血管の形成に影響を与えることが証明された(非特許文献7)。
【0008】
現在、ゼブラフィッシュの血管を視覚化する方法には、血管内皮細胞マーカーのホールマウントin situハイブリダイゼーション(非特許文献8、非特許文献9)、血管における内因性アルカリフォスファターゼ活性の検出及び循環している心臓血管系の細血管造影が含まれる。後者の技術は、生きているゼブラフィッシュの幼生の循環に蛍光性のビーズの注入を伴い(非特許文献10)、完全な循環系における血管の視覚化に有用である。VEGF受容体をターゲットとするチロシンキナーゼ阻害剤の適用によりブロックされた体節間の血管の形成は、維管束系における蛍光性のタンパク質を発現するトランスジェニック魚において容易に視覚化可能であることが判明した。
【0009】
ゼブラフィッシュは、血管新生の研究にとって優れたモデルである。当該技術分野には(所望の結果に応じて)血管新生を促進し又は抑制するように作用する標的を発見する必要性があり、ゼブラフィッシュ・モデルは血管新生促進療法及び抗血管新生療法のためのこれらの標的の有用性を実証するために用いることができる。
【0010】
毒性は、薬剤開発時の失敗の主要な原因である。細胞培養において安全であると示された多くの薬剤が、動物研究において有毒であると証明されてきた。したがって、ゼブラフィッシュは初期の毒性スクリーニングのための有用な動物モデルであるが、人間の疾患の遺伝・生物学的な基礎をより忠実に模倣すると考えられる哺乳類系において更なる研究がしばしば必要となる。したがって、網膜症のような血管新生に関連した異常において有用である化合物のためのスクリーニングについての第2ステージとして、疾患に係る哺乳類モデルが必要である。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開公報第20040143865号(Rubinstein他)
【非特許文献1】ハナハン・ディー=ジェイ・フォルクマン(1996)Cell86:353−364
【非特許文献2】リィー・シー・ワイ他(2000)Cancer Met.Rev.19:7−11
【非特許文献3】ローゼン・エル(2000)Oncologist5(suppl.l):20−27
【非特許文献4】マッツ・エム・ヴィー他(1999)Nat.Biotechnol.17:969−973
【非特許文献5】イソガイ・エス他(2001)Dev.Biol.230(2):278−301
【非特許文献6】ヴォーゲル・エイ・エム=ビー・エム・ヴァインスタイン(2000)Trends Cardiovasc.Med.10(8):352−360
【非特許文献7】チャン・ジェイ他(2002)Cancer Cell1:257−267
【非特許文献8】フーケット・ビー他(1997)Dev.Biol.183:37−48
【非特許文献9】リャオ・ダブリュー他(1997)Development124:381−389
【非特許文献10】ヴァインスタイン・ビー・エム他(1996)Nat.Med.1:1143−1147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記必要ないし必要性を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの全部又は一部についての単離された核酸配列を用いて、血管新生を促進する方法を提供する。いくつかの実施形態において、CXCR4をコードする核酸は、配列番号1、配列番号7、又は配列番号32のポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3をコードする核酸は、配列番号3、又は配列番号9のポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAをコードする核酸は、配列番号5、配列番号11、配列番号19又は配列番号35のポリヌクレオチド配列を有する。本発明は、また、CXCR4、LEC3又はEDNRAの全部又は一部をコードするポリヌクレオチド並びに当該発明の方法で使用される他の脊椎種からのそれらのポーション、相同体及び断片を提供する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、たとえば、ヒト、マウス、ラット、及び雌牛のような種に由来する。
【0014】
本発明は、また、単離されたゼブラフィッシュCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ有する。本発明は、また、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチド並びに当該発明の方法で使用される他の脊椎種からのそれらのポーション、相同体及び断片を提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、たとえば、ヒト、マウス、ラット、及び雌牛のような種に由来する。いくつかの実施形態において、CXCR4ポリペプチドは、配列番号2、配列番号8、又は配列番号33のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3ポリペプチドは、配列番号4、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号27、又は配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAポリペプチドは、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、又は配列番号23のアミノ酸配列を有する。
【0015】
その発明は、また、単離されたゼブラフィッシュ・ペプチド・リガンド、CXCR4受容体のための間質細胞由来因子1(SDF−1ないしCXCL12)及びEDNRA受容体のためのエンドセリン−1(ET−1ないしETA)を提供する。いくつかの実施形態において、そのポリペプチドは、配列番号37(SDF−1:NP_954637)及び配列番号39(ET−1:NP_001946)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。これらのSDF−1及びET−1タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号38(NM_199168)及び配列番号40(NM_001955)である。本発明は、また、SDF−1及びET−1ポリペプチド並びに当該発明の方法で使用される他の脊椎種からのそれらのポーション、相同体及び断片を提供する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、たとえば、ヒト、マウス、ラット、及び雌牛のような種に由来する。いくつかの実施形態において、CXCR4のためのペプチドSDF−1リガンドは、配列番号42(Homo sapiens(ヒト)についてのNP_000600)、配列番号44(NP_068350、Mus musculus、マウス)、配列番号46(Rattus norvegicus(ラット)についてのNP_071513)、配列番号48_(Gallus gallus(鶏)についてのNP_989841)、配列番号50(Sus scrofa(豚)についてのNP_001009580)のアミノ酸配列を有する。これらのCXCR4タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号41(Homo sapiens(ヒト)について)、配列番号43(Mus musculus(マウス)について)、配列番号45(Rattus norvegicus(ラット)について)、配列番号47(Gallus gallus(鶏)について)、及び配列番号49(Sus scrofa(豚)について)である。本発明は、また、動物における血管新生を促進する方法を提供する。EDNRAのためのペプチドET−1リガンドは、配列番号39(Homo sapiens(ヒト)についてNP_001946)、配列番号52(Mus musculus(マウス)についてNP_034234)、配列番号54(Rattus norvegicus(ラット)についてNP_036680)、配列番号56(Bos taurus(ウシ)についてNP_851353)、及び配列番号58(Sus scrofa(豚)についてNP_999047)のアミノ酸配列を有する。これらのET−1リガンドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号40(Homo sapiens(ヒト)について)、配列番号51(Mus musculus(マウス)についてNP_034234)、配列番号53(Rattus norvegicus(ラット)について)、配列番号55(Bos taurus(ウシ)について)、及び配列番号57(Sus scrofa(豚)について)である。いくつかの実施形態において、その方法は、動物に対して、CXCR4のための効果的な量のペプチド・リガンドSDF−1を、また、EDNRA受容体の活性化のための効果的な量のET−1を投与し、これによって、血管新生を促進することを備える。加えて、リガンドSDF−1及びET−1に対する抗体は、それらのそれぞれの受容体CXCR4及びEDNRAに対する内因性リガンドの生物学的利用性をブロックするために恐らく用いることができ、これにより、抗血管新生のためにCXCR4及びEDNRAの活性化をブロックする目的で用いることができる。これは、癌を治療するための抗血管新生療法にとって腫瘍血管におけるVEGFのその受容体Flk−Iに対する生物学的利用性をブロックするために、抗VEGF抗体であるAvastinにとっての同様のシナリオとなるであろう(参照:Ferrara,N.,Hillan,K.J.&Novotny,W.(2005)“Bevacizumab(Avastin),a humanized anti−VEGF monoclonal antibody for cancer therapy”Biochem.Biophys.Res.Commun.333:328−335)。
【0016】
本発明は、また、オーファンGPCR、LEC3受容体のための内因性で人工的なペプチド・リガンドを単離する方法を提供する。LEC3がオーファンGPCRとして分類されているので、この受容体のための既知の内因性リガンドは存在しない。しかしながら、我々は、LEC3受容体に結合する高親和性ペプチド配列を単離するために、コンビナトリ・ペプチド・ファージ・ライブラリをスクリーニングすることを提案する。一度ペプチド配列が同定されれば、我々は、LEC3受容体に対して、より高い親和性、機能的なブロッキング又は増強作用を備えたペプチド・クローンの追加的な変異体を生成してスクリーニングすることができる。この同定されたリコンビナント・ペプチドは、LEC3受容体に対して機能的ブロッキング又は増強作用の何れかを有することができるので、それぞれ、血管新生を阻害するか(抗血管新生)又は誘発(血管新生促進)するために利用することができる。いくつかの実施形態において、当該方法は、動物に対して、LEC3受容体にとってのこのリコンビナント・ペプチド・リガンドを効果的な量だけ投与することを備える。どれが受容体の活性化又は不活性化に導くかは、そのペプチド・リガンド上のアミノ酸の態様に左右される。したがって、本発明はまた、動物において、抗血管新生の又は血管新生を促進する方法のそれぞれを提供する。
【0017】
本発明は、また、動物における血管新生を促進する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、動物に対し、効果的な量のCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドを、単独で又は混合して投与することを備える。細胞膜バリアの通過を容易にするために、そのポリペプチドは種々の効果的な送達試薬と結合していてもよい。このCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドは、任意の脊椎のあるCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドであってよい(すなわち、任意の種に由来するものであってよい)。いくつかの実施形態において、CXCR4ポリペプチドは、配列番号2、配列番号8、又は配列番号33のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3ポリペプチドは、配列番号4、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号27、又は配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAポリペプチドは、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、又は配列番号23のアミノ酸配列を有する。
【0018】
本発明の他の実施形態において、血管新生を促進する方法は、血管新生を必要とする動物に対して、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドをコードする効果的な量のポリヌクレオチドを、単独で又は組み合わせて、投与することを含む。このポリヌクレオチドは、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの何れをコードするものであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号7の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号32の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号3の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号9の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号5の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号11の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号19の核酸配列を備える。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号35の核酸配列を備える。
【0019】
その発明は、また、必要とする動物に対して血管新生を促進する方法を提供し、動物に対し、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドをコードする効果的な量の第1のポリヌクレオチドと、VEGFポリペプチドをコードする効果的な量の第2のポリヌクレオチドと、を投与することを備える。いくつかの実施形態において、VEGFポリペプチドは、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74及び配列番号76から成る群から選択されたアミノ酸配列を備える。
【0020】
本発明は、また、動物における血管新生を抑制する方法を提供する。いくつかの実施形態において、当該方法は、動物に対して、CXCR4、LEC3、EDNRAポリペプチドの全部又は一部の発現を抑制するアンチセンス・オリゴヌクレオチド、すなわちホスホラミダイト・モルホリノ・オリゴヌクレオチド(PMO:phosphorodiamidate morpholino oligonucleotide)のようなポリヌクレオチドを、効果的な量だけ投与することを備える。CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAのポリペプチドは、任意の脊椎動物のCXCR4、LEC3及び/又はEDNRAのポリペプチドであってもよい(ヒト、マウス、雌牛、ラット、ゼブラフィッシュその他のすべての脊椎動物を含む。)。細胞の中へのPMOの効率的な吸収を改善するために、アルギニン・リッチ・ペプチドのようなペプチドをPMOに加えてもよい(Moulton,H.M.et al.(2004)Cellular Uptake of Antisense Morpholino Oligomers Conjugated to Arginine−Rich Peptides.Bioconjugate Chem.15:290−299)。いくつかの実施形態において、CXCR4ポリペプチドは、配列番号2、配列番号8、又は配列番号33のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3ポリペプチドは、配列番号4、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号27、又は配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAポリペプチドは、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、又は配列番号23のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、CXCR4をコードする核酸は、配列番号1、配列番号7、又は配列番号32のポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3をコードする核酸は、配列番号35又は配列番号9のポリヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAをコードする核酸は、配列番号5、配列番号11、配列番号19又は配列番号35のポリヌクレオチド配列を有する。
【0021】
本発明は、また、血管新生関連の疾患の治療を必要とする患者に対して、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現を抑制するポリヌクレオチドを血管新生を抑制するのに十分な量だけ、すなわち抗VEGFのような療法と化学療法とを任意に組み合わせたレジメンの効果を強化する量だけ、投与することを備える血管新生関連の疾患を治療する方法を提供する。血管新生関連の疾患には、血管新生依存癌;良性腫瘍;慢性関節リウマチ;乾癬;視覚の血管新生疾病;オースラー・ウェバー症候群;心筋の血管新生;溶菌はん新血管新生;毛細管拡張症;血友病性関節症;線維血管腫;傷肉芽形成;腸管癒着、アテローム性動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、猫ひっかき病及びヘリコバクターピロリ潰瘍が含まれるが、これらに限定されるものでない。
【0022】
そのため、当該方法は、ポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチドを投与することにより血管新生依存性腫瘍の患者を治療することを含む。これらの投与は、それは細胞や組織の中へのポリヌクレオチドの効果的な送達を可能にし、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現を抑制する賦形剤とともに、癌状態の腫瘍の退縮ないし安定化をもたらすのに十分な量だけ、すなわち任意の療法を組み合わせたレジメンの効果を強化する量だけ投与することを含む。ポリヌクレオチド又は修飾されたポリヌクレオチドは、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、siRNA、モルホリノ・オリゴヌクレオチド、又はCXCR4、LEC3及び/又はEDNRAをコードする核酸に限定的にハイブリッドするリボザイムであってもよい。本発明は、また、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAとそれらのリガンドとの相互作用を抑制し又は下流のエフェクタ機能を不全にさせるために、細胞浸透性のペプチドで、被検者を治療する方法を提供する。本発明に係る当該方法は、さらにVEGF活性の細胞浸透性ペプチド抑制を含んでいてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、血管新生関連の疾患の治療を必要とする患者に対して、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現を抑制する第1の試薬と、VEGFの発現を抑制する第2の試薬と、を投与することを備える血管新生関連の疾患を治療する方法を提供する。そこでは、第1試薬と第2試薬は、血管新生を抑制するためにともに相乗的に作用する。第1試薬は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAをコードするポリヌクレオチドに向けられたポリヌクレオチドを備えてもよい(RNAis、siRNAs、miRNAs、被修飾核酸、PNA、又はモルホリノ・オリゴヌクレオチド若しくはリボザイムなどのようなアンチセンス分子を含む。)。いくつかの実施形態において、第1試薬は、配列番号24、配列番号25、配列番号26及びそれらの組合せから成る群から選択される配列を有する。
【0024】
アンチセンス・モルホリノあるいは他のsiRNAのためのターゲットとされた配列の小さな部位のみを限定するのに簡単なように、それはそうではありません。翻訳に係るブロッキング・アンチセンス・モルホリノ・オリゴは、ATG開始コドンの5’未翻訳領域から25bp下流のどこにおいても作用する。また、スプライシング抑制アンチセンス・モルホリノ・オリゴは、エキソン/イントロン境界間で作用する。したがって、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRA遺伝子の何れのエキソン/イントロン境界も、標的配列である。したがって、翻訳ブロックアンチセンスのためのCXCR4、LEC3及び/又はEDNRAのmRNA転写の任意の領域、また、抑制をスプライスするためのCXCR4、LEC3及び/又はEDNRA遺伝子の任意のゲノム領域を用いることができる。第2試薬は、VEGFをコードするポリヌクレオチドに向けられたポリヌクレオチドを備えてもよい(アンチセンス分子、RNAis、siRNAs、miRNAs、被修飾核酸、PNAs、モルホリノ・オリゴヌクレオチド、リボザイムなどを含む。)。いくつかの実施形態において、第1試薬は配列番号24、配列番号25、配列番号26及びそれの組合せから成る群から選択される配列を有する。ヒトのVEGF受入番号(accession number)はNMJ303376(Unigeneクラスタ:Hs.73793(Ensembl gene ID:ENSG00000112715))である。いくつかの実施形態において、血管新生関連の疾患は、腫瘍あるいは癌の進行と関連する。
【0025】
CXCR4、LEC3及び/又はEDNRA及び/又はVEGFの作用を分裂させるオリゴヌクレオチドを設計するために、RNA発現の抑制に所望の影響を有するであろう配列を予測するための本発明の属する技術領域で既知の種々のコンピュータに基づいたアルゴリズムを用いてもよい。そのようなアルゴリズムの一例には Sfoldが含まれるが、これに限られるものでない。Sfoldは、sfold.wadsworth,org.というドメイン・アドレスの下にあるワールド・ワイド・ウェブ上のSfoldのウェブサーバ上で入手可能である。このアルゴリズムは、Ding,Y.et al.(2004)Nucl.Acids Res.32:W135−W141にも記載されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1試薬は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRA、及びVEGFの発現又は作用を抑制するコンビナトリアル・ケミストリからの小さな分子、天然の化合物又は合成化合物である。そのような化合物は本発明の属する技術分野において既知のものであってもよいし、また、ここに記述されたスクリーニング法を用いて同定されてもよい。そのような化合物は、たとえば、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの翻訳後修飾を抑制してもよいし、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAのアロステリックな構成を変化させてもよいし、あるいは受容体CXCR4、LEC3およびEDNRAに対する内因性リガンドの結束と競合してもよい。
【0027】
本発明は、血管新生関連の疾患の治療を必要とする患者に対して、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの機能又は発現を抑制する第1の化合物と、VEGF信号の発現又は機能を抑制する第2化合物と(その受容体と下流シグナリング分子とを含む。)、を投与することを備える血管新生関連の疾患を治療する方法をさらに提供する。前記第1化合物及び前記第2化合物は、血管新生を抑制するのに十分な量だけ提供される。いくつかの実施形態において、CXCR4の機能を抑制する化合物は、CXCR4と特異的に結合する抗体である。
【0028】
本発明に係る特定の実施形態において、本発明は、必要とする患者に対して、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現又は作用を抑制する第1化合物と、VEGFの発現又は作用を抑制する第2の化合物と(コンビナトリアル・ケミストリからの天然化合物、合成化合物又は小さな分子を含む。)、を投与することを備える血管新生依存の腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。前記第1化合物及び前記第2化合物は、腫瘍退縮を引き起こすのに十分な量だけ提供される。いくつかの実施形態において、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現又は作用を抑制する化合物は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAポリペプチドをコードする配列を備える核酸に特異的にハイブリッドするアンチセンス、モルホリノ・オリゴヌクレオチド、又はリボザイムのようなポリヌクレオチドである。他の実施形態において、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現又は作用を抑制する化合物は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAポリペプチドと特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、VEGFの発現か作用を抑制する化合物は、VEGFポリペプチドをコードする配列を備える核酸に特異的にハイブリッドするアンチセンス、モルホリノ・オリゴヌクレオチド、又はリボザイムのようなポリヌクレオチドである。他の実施形態において、VEGFの作用を抑制する化合物は、特異的にVEGFポリペプチドと結合する抗体である。いくつかの実施形態において、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRA及び/又はVEGFの発現及び/又は作用を抑制する化合物は、ポリヌクレオチドと抗体の組合せである。
【0029】
本発明に係る別の特定の方法において、治療を必要とする患者の目に対して、血管新生関連のタンパク質の発現を抑制するポリヌクレオチドを、血管新生を抑制するのに十分な量だけ投与することによって、網膜症を予防するか又は治療するための方法が提供される。そのタンパク質は、たとえば、LEC3、EDNRA及びCXCR4である。当該方法は、アンチセンス・オリゴヌクレオチド又はホスホラミダイト・モルホリノ・オリゴマーのようなポリヌクレオチドの投与を含んでいてもよい。そのようなアンチセンス・オリゴヌクレオチドやPMOは、ポリヌクレオチドの細胞吸収を促進するためにペプチドにコンジュゲートされていてもよい。他の実施形態において、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAの発現又は作用を抑制する方法は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAポリペプチドと特異的に結合する抗体である。これらの方法は、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症又は末熟児網膜症のような網膜症を予防するか又は治療するのに有用である。オリゴヌクレオチドとPMOの配列は、この明細書のどこか他の箇所に血管新生を抑制するために記載されたものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
腫瘍発病の際に重大なステップである、新規の血管の形成(すなわち血管新生)にとって不可欠な、3つの薬物混入可能な標的が同定された。これらの遺伝子のうちのいずれか1つを抑制することにより、脊椎動物のモデル生体であるゼブラフィッシュにおける血管新生が妨げられる。小さく、透明で、急成長しているゼブラフィッシュは、血管新生と関係する人間の疾患を研究するための先導的な脊椎動物モデルになる期待を与えてくれる。ゼブラフィッシュ・モデルを用いる血管新生に関するこのインビボ研究からの結果は、血管新生における重要な役割を有する3つのGタンパク共役型受容体(GPCR)を明らかにし、抗癌治療のための方法を提供する。
【0031】
GPCRは、過去20年にわたって、市場に出ているすべての薬剤標的の約50%を占めた。トップ50のベストセラーとなった薬剤標的GPCRの30%超には、アレルギー、統合失調症及び双極性障害、胸やけ及び高血圧のための周知の薬物が含まれる。このように、血管新生にとって不可欠なGPCRの発見は、病的の血管新生を調節するための薬剤混入可能な標的を我々が利用することを可能にし、癌と戦うための創薬プロセスを促進する。機能が血管新生のために不可欠である重要な3つの分子を同定した。これらの分子は、C−X−Cケモカイン受容体型4(CXCR4)、Lectomedin−3(LEC3)及びエンドセリン−1受容体(EDNRA)である。まず、インビボ脊椎動物モデルとしてゼブラフィッシュを用いて、ヒト血管内皮細胞及びゼブラフィッシュ血管系においてこれらの遺伝子が発現することを実証した。次に、逆遺伝ツールを用いて、これらの遺伝子の各々の標的とされたノックダウンが動物モデルにおける血管新生を抑制した。
【0032】
本発明は、ゼブラフィッシュ(及び他の脊椎動物種、特にヒト)CXCR4、LEC3及びEDNRAのためのポリヌクレオチド及びポリペプチドを提供する他、CXCR4、LEC3及びEDNRAセンス・ポリヌクレオチド及びアンチセンス・ポリヌクレオチドを用いて動物における血管新生を促進する方法および抑制する方法をも提供する。
【0033】
本明細書で参照されるGenBankデータベース配列への受入番号を含め、参照される業績、特許、特許出願、及び科学文献は、当業者の知識を確認するものであり、各々が引用によって組み入れられるべく具体的かつ個別的に示されるのと同程度に、引用により全体としてここに組み入れられる。ここで引用される文献と本明細書の特定の教示との間に矛盾がある場合には、後者の利益になるように解決されることとする。
【0034】
種々の定義が本文書を通してなされる。殆どの語は、当業者によってそれらの語に帰せられる意味を有する。以下において又は本書類の他の箇所において具体的に定義される語は、全体として本発明の文脈において与えられ、当業者によって典型的に理解されるような意味を有する。ある語又は熟語の技術的に理解される定義と、その語又は熟語について本明細書において具体的に教示される定義との間に矛盾が生じた場合には、後者の利益になるように解決されることとする。本明細書に使用される見出しは便宜上のものであり、限定するものとして解されるべきでない。
【0035】
当業者には既知である組み換えDNA技術の一般原理を記述している標準的な参考業績には、Ausbel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1998;Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2D ED.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York,1989;Kaufman et al.,Eds.,HANDBOOK OF MOLECULAR AND CELLULAR METHODS IN BIOLOGY AND MEDICINE,CRC Press,Boca Raton,1995;McPherson,Ed.,DIRECTED MUTAGENESIS:A PRACTICAL APPROACH,IRL Press,Oxford,1991が含まれる。当業者には既知であるゼブラフィッシュを用いる研究のための一般原理及びプロトコルを記述している標準的な業績には、THE ZEBRAFISH BOOK:A GUIDE FOR THE LABORATORY USE OF ZEBRAFISH(DANIO RERIO),Westerfield,M.,4th ed.,Univ.of Oregon Press,Eugene,2000が含まれるが、これに限定されるものでない。
【0036】
ここで用いられるように、「単離される」とは、物質がその最初の環境(たとえば、それが自然に存するのであれば、自然環境)から除去されることを意味する。たとえば、生きている動物中に現れる自然に存在しているポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、自然システム中に共存する物質の全部又は一部から単離された同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、及び/又はそのようなポリヌクレオチド若しくはポリペプチドは組成物の一部であってもよく、そしてそのようなベクター若しくは組成物がその自然環境の一部でない場合にはなお単離されてもよい。
【0037】
「精製された」又は「十分に精製された」ポリヌクレオチド又はポリペプチドとは、生来の(又は野生型の)核酸又はポリペプチドが自然に随伴する他の細胞成分から、及び/又は他の不純物(たとえば、アガロースゲル)から十分に分離されることをいう。精製されたポリペプチド又はタンパク質は、サンプルの約60%〜99%w/w以上を備え、約90%、約95%、又は約98%の純度であってもよい。
【0038】
ここで用いられる「約」とは、基準値の+/−10%を指す。
【0039】
ここで用いられるように、「バリアント」核酸又はアミノ酸配列とは、たとえば、関心のある配列のイソ型、種変異体、対立遺伝子変異体、及びフラグメントを含む、相同体を指す。「相同性ヌクレオチド配列」若しくは「相同性アミノ酸配列」、又はその変異体とは、基準配列、又は機能的ドメインをコードしているか若しくは有するその部分若しくはフラグメントに関して、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、より好ましくは100%のパーセンテージ同一性(ポリヌクレオチドに関する場合)又は相同性(ポリペプチドに関する場合)によって特徴付けられる配列を指す。
【0040】
CXCR4、LEC3又はEDNRAアンチセンス・オリゴヌクレオチドなど、CXCR4、LEC3及びEDNRAアンタゴニストの「治療学的有効量」という用語は、疾病状態(たとえば、腫瘍に適用される場合、腫瘍)において、または全身的に投与される場合は、血漿において、治療学的に有効なレベルを達成かつ維持して、血管新生を抑制する(癌に適用される場合、癌細胞の増殖を抑制する)ように計算された量を意味する。たとえば、インビトロで、癌細胞、例えばKS細胞の約50%以上の増殖を抑制するのに十分な治療学的量である。もちろん、治療学的用量は、インビトロでの癌細胞増殖の抑制における各CXCR4、LEC3及びEDNRAアンタゴニストの効力、ならびに腫瘍組織及び/又は血漿において身体によるCXCR4、LEC3及びEDNRAアンタゴニストの排除又は代謝の速度により変化するであろう。また治療学的用量は、治療の任意の組合せ療法、たとえば抗VEGF及び化学療法の効力を増進するであろうCXCR4、LEC3及びEDNRAアンタゴニストの量に適合する。

1. ポリヌクレオチド
A. 脊椎動物CXCR4、LEC3及びEDNRA
【0041】
本発明は、ゼブラフィッシュCXCR4、LEC3及びEDNRAをコードするポリヌクレオチドを提供し、また、本発明の方法における使用のための他の脊椎動物由来のCXCR4、LEC3及びEDNRAをコードするポリヌクレオチドを提供する。ここで使用されるように、「ポリヌクレオチド」とは核酸分子を指し、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、混合ポリマー、組み換え核酸、それらのフラグメント及びバリアントなどを含む。本発明において有用なポリヌクレオチドのフラグメントは、基準ポリヌクレオチドの少なくとも10、好ましくは少なくとも12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100個の連続するヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む。本発明のポリヌクレオチドは、自然に存在するポリヌクレオチドでも、自然に存在しないポリヌクレオチドでもよい。ここで使用される「合成されたポリヌクレオチド」とは、酵素的方法とは別に、純粋に化学的方法によって作成されたポリヌクレオチドを指す。したがって、「完全に」合成されたDNA配列は全体的に化学的手段によって作成され、そして「部分的に」合成されたDNAは、得られるDNAの一部分のみが化学的手段によって作成されたDNAを包含する。本発明のポリヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよい。本発明のポリヌクレオチドは、化学的に修飾されていてもよく、当業者には容易に理解できるように、非天然ヌクレオチド塩基又は誘導ヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。そのような修飾は、たとえば、標識、メチル化、類似体による1又は2以上のヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の修飾、たとえば非荷電の結合(たとえば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、荷電結合(たとえば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部(たとえば、ポリペプチドなど)、インターカレータ(たとえば、アクリジン、ソラレンなど)、キレータ、アルキレータ、及び修飾結合(たとえば、α−アノマー核酸など)を含む。また、水素結合及び他の化学的相互作用を介して指定された配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子が含まれる。そのような分子は当該技術分野において既知であり、たとえば、ペプチド結合が分子の骨格においてホスフェート結合を置換している分子を含む。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2(ヒトCXCR4)、配列番号4(ヒトLEC3)及び配列番号6(ヒトEDNRA)のポリペプチド配列をコードするそれらを含む。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1(ヒトCXCR4)、配列番号4(ヒトLEC3)及び配列番号6(ヒトEDNRA)の核酸配列を備える。ポリヌクレオチドは、同類的であっても非同類的であってもアミノ酸置換をもたらす突然変異を含有してもよい。突然変異は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの標準技術によって、本発明の核酸配列中に導入することができる。同類アミノ酸置換は、1個又は2個以上の予想される非必須アミノ酸残基においてなされてもよい。「同類アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、及びヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。このように、予想される非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基により置換される。あるいはまた、突然変異は、コーディング配列の全部又は一部にそって、たとえば飽和変異によってランダムに導入することができ、得られる突然変異体は活性を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。突然変異に続いて、コードされているタンパク質が、当該技術分野において既知のいずれかの組み換え技術によって発現されてもよく、タンパク質の活性が決定できる。
【0043】
ヌクレオチド配列は、左から右へ、5’〜3’方向において、一本鎖のみによって提示される。ヌクレオチドは、IUPAC−IUB Biochemical Nomendlature Commissionによって推奨される方式で表される。
【0044】
本発明のいくつかの実施態様では、突然変異は、CXCR4、LEC3及びEDNRAタンパク質の翻訳後修飾又は生物学的活性を有意には変えないであろう。

B. 発現ベクター
【0045】
本発明の他の態様は、ゼブラフィッシュCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチド、又はその誘導体、フラグメント、類似体若しくは同族体をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。ここで使用されるように、「ベクター」との用語は、結合先の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは付加されるDNAセグメントが結合できる環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの他のタイプは、ウイルスベクターであり、この場合、付加されるDNAセグメントはウイルスゲノム中に結合できる。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律的に複製することができる(たとえば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際し宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが操作可能に結合された遺伝子の発現を指導することができる。そのようなベクターは、ここでは「発現ベクター」として言及される。一般に、組換えDNA技術における有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態で存在する。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターのもっとも普通に使用される形態物であるので、交換可能に使用することができる。しかしながら、本発明は、発現ベクターのそのような他の形態、たとえばウイルスベクター(たとえば、複製能欠陥レトロウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含むことを意図しており、これらは等価の機能を果たす。
【0046】
本発明の組換え発現ベクターは本発明の核酸を含み、これは宿主細胞での核酸の発現のために適当な形態をしている。これは、組換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選ばれ、発現される核酸配列に操作可能に結合される1又は2以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「操作可能に結合される」とは、対象となるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(たとえば、インビトロの転写/翻訳システムにおいて又はベクターが宿主細胞に導入される場合の宿主細胞において)調節配列に結合されることを意味することが意図されている。「調節配列」との用語は、プロモータ、エンハンサ及び他の発現制御要素(たとえば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。そのような調節配列は、たとえば、Goeddel;GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)において記述されている。調節配列は、多くの宿主細胞類においてヌクレオチド配列の構成的発現を指導する配列、及びある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指導する配列(たとえば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルのようなファクターに依存してもよいことは、当業者によって理解されよう。本発明の発現ベクターは宿主細胞中に導入され、それによって、いかなる脊椎動物種からもここに記載されるような核酸によってコードされた、融合タンパク質又はペプチドを含むタンパク質又はペプチド(たとえば、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチド、CXCR4、LEC3及びEDNRAの変異形態物、融合タンパク質など)を生産することができる。いくつかの実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAは哺乳動物から得られる。いくつかの他の実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAはマウスまたはラットから得られる。いくつかの他の実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAはヒトから得られる。いくつかの他の実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAはゼブラフィッシュから得られる。ヒト及びゼブラフィッシュCXCR4、LEC3及びEDNRAのアミノ酸配列の比較が図2、図4及び図7において示される。
【0047】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞における脊椎動物CXCR4、LEC3及びEDNRAの発現のために設計することができる。たとえば、ゼブラフィッシュCXCR4、LEC3及びEDNRAは、細菌細胞、たとえば大腸菌、(バクロウイルス発現ベクターを用いる)昆虫細胞、酵母細胞又は哺乳動物細胞において発現可能である。適当な宿主細胞は、Goeddel;GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)においてさらに議論されている。また、組換え発現ベクターは、たとえば、T7プロモータ調節配列及びT7ポリメラーゼを用いてin vitroで転写及び翻訳されてもよい。
【0048】
原核生物におけるタンパク質の発現は、多くの場合、融合タンパク質か非融合タンパク質の発現を指導する構成的プローモータ又は誘導プロモータを含有するベクターにより大腸菌において実施される。融合ベクターは、そこにコードされたタンパク質、普通には組換えタンパク質のアミノ末端に、多数のアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、3つの目的:(1)組換えタンパク質の発現を増強すること;(2)組換えタンパク質の溶解度を増大すること;及び(3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を助けること、に役立つ。しばしば、融合発現ベクターでは、タンパク質分解的切断部位が融合部分及び組換えタンパク質の連結点に導入されて、融合部分からの組み換えタンパク質の分離と、それに続く融合タンパク質の精製を可能にする。そのような酵素及びそれらの同族の認識配列は、Factor Xa、トロンビン及びエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターは、標的組換えタンパク質に、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、又はプロテインAを融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc.;Smith and Johnson(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA.)及びpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)を含む。
【0049】
適当な誘導性非融合大腸菌発現ベクターには、pTrc(Amrann et al.,(1988)Gene69:301−315)及びpET11d(Studier et al.,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)pp.60−89)が含まれる。
【0050】
大腸菌における組換えタンパク質発現を最大化する1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力の損傷された宿主細菌においてタンパク質を発現することである。参照、Gottesman、GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)119−128。他の戦略は、各アミノ酸のための個々のコドンが大腸菌において優先的に利用されるものであるように、発現ベクター中に挿入される核酸の核酸配列を変えることである(Wada et al.,(1992)Nucleic acids Res.20:2111−2118)。本発明の核酸配列のそのような変更は、標準DNA合成技術によって実施することができる。
【0051】
他の実施態様では、脊椎動物のCXCR4、LEC3及びEDNRA発現ベクターは酵母発現ベクターである。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari,et al.,(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,(1982)Cell30:933−943)、pJRY88(Sechutz et al.,(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)、及びpicZ(Invitrogen Corp.San Diego,CA)が含まれる。
【0052】
また、脊椎動物CXCR4、LEC3及びEDNRAは、バクロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞において発現することができる。培養昆虫細胞(たとえば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)SF9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用できるバクロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smith et al.,(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)及びpVLシリーズ(Lucklow and Summers(1989)Virorlogy170:31−39)を含む。
【0053】
さらに他の実施態様では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed(1987)Nature329:840)及びpMT2PC(Kaufman et al.,(1987)EMBO J.6:187−195)が含まれる。哺乳動物において使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしばウイルスの調節要素によって提供される。たとえば、典型的に使用されるプロモータは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウィルス40から得られる。プロモータの代表例には、限定されるものではないが、LTR又はSV40プロモータ、大腸菌、lac又はtrp、λファージPプロモータ及び原核細胞若しくは真核細胞又はそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモータが含まれる。原核細胞及び真核細胞の両方のための他の適当な発現系は、たとえば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の第16章及び第17章を参照。多数の適当なベクター及びプロモータは当業者には既知であり、市販されている。次のベクターが例として提供される;細菌:pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pBluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223−3、pDR540、pRITS(Pharmacia);真核生物:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかしながら、他のプラスミドやベクターも、それらが宿主において複製可能かつ生存可能である限り使用することができる。さらに、完全な哺乳動物の転写単位及び選択可能なマーカーが原核生物のプラスミド中に挿入されてもよい。次いで、得られるベクターが細菌において増幅され、その後培養哺乳動物細胞中にトランスフェクトされる。この種のベクターの例には、pTK2、pHyg及びpRSVneoが含まれる。
【0054】
他の実施態様では、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞種において優先的に核酸の発現を指導することができる(たとえば、組織特異的調節要素が核酸を発現するために使用される。)。組織特異的調節要素は当該技術分野において既知である。適当な組織特異的調節要素の非限定的な例には、アルブミンプロモータ(肝臓特異的;Pinkert et al.,(1987)Gene Dev.1:268−277)、類リンパ特異的プロモータ(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、特にT細胞受容体(Winoto and Baltomore(1989)EMBO J.8:729−733)及び免役グロブリン(Banerji et al.(1983)Cell33:729−740;Queen and Baltimore(1983)Cell33:741−748)のプロモータ、ニューロン特異的プロモータ(たとえば、神経フィラメントプロモータ;Byme and Ruddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5473−5477)、膵臓特異的プロモータ(Edlund et al.,(1985)Science230:912−916)及び乳腺特異的プロモータ(たとえば、乳漿プロモータ;米国特許第4,873,316号公報及び欧州特許出願公開第264,166号公報)が含まれる。また、発生上調節されるプロモータには、たとえば、マウスhoxプロモータ(Kessel and Gruss(1990)Science249:374−379)及びα−フェトプロテインプロモータ(Campes and Tilghman(1989)Gene Dev.3:537−546)が包含される。適当なベクター及びプロモータの選択は、当業者の水準内で周知である。
【0055】
また発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネータを含有してもよい。また、ベクターは発現を増幅するための適当な配列を含んでもよい。さらに、いくつかの実施態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型特徴、たとえばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又は真核細胞培養のためのネオマイシン(NEO)耐性、あるいは大腸菌におけるテトラサイクリン(TET)又はアンピシリン(AMP)耐性を提供するために、1種以上の選択可能なマーカー遺伝子を含有する。
【0056】
さらに、本発明は、アンチセンス方向において発現ベクター中にクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、脊椎動物CXCR4、LEC3及びEDNRAのmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で調節配列に操作可能に連結される。種々の細胞種におけるアンチセンスRNA分子の連続発現を指導する、アンチセンス方向においてクローン化された核酸に操作可能に連結される調節配列、たとえばウイルスプロモータ及び/又はエンハンサが選ばれてもよく、あるいはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的又は細胞種特異的発現を指導する調節配列が選ばれてもよい。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率調節領域の制御下で生産される組換えプラスミド、ファージミド又は弱毒ウイルスの形態で存在してもよく、この活性はベクターが導入される細胞種によって決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の議論では、Weintraub et al.,(1986)“Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,”Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1):22−25を参照。
C. アンチセンス・オリゴヌクレオチド
【0057】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、動物及びヒトにおける疾病状態の処置において治療学的部分として使用されてもよい。リボザイムを含むアンチセンス・オリゴヌクレオチ ド薬物は、ヒトに安全かつ有効に投与されており、そして多くの臨床試行が現在進行中である。かくして、オリゴヌクレオチドが、細胞、組織及び動物、特にヒトの処置のための処置法において有用であるように構成することができる有用な治療手段になり得ることが確立される。
【0058】
本発明の文脈上、「オリゴヌクレオチド」との用語は、リボ核酸(RNA)若しくはデオキシリボ核酸(DNA)又はそれらの擬似物のオリゴマー若しくはポリマーを指す。この用語は、自然に存在する核酸塩基、糖及びヌクレオシド間(骨格)共有結合からなるオリゴヌクレオチド並びに類似に機能する自然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。そのような改変又は置換オリゴヌクレオチドは、所望の特性、たとえば細胞の取込み増進、核酸標的に対する親和力増進及びヌクレアーゼの存在下での安定性増大のために、しばしば本来の形態物以上に好適である。
【0059】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドが本発明によって熟考されるが、限定されるものではないが下記のようなオリゴヌクレオチド擬似物を含む、他のオリゴマーのアンチセンス化合物もまた含まれる。本発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは、約8〜約50個の核酸塩基(すなわち、約8〜約50個の連結ヌクレオシド)を含む。いくつかの実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約8〜約15個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約16〜約25個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約20〜約30個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約25〜約35個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約30〜約45個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは約40〜約50個の核酸塩基を含む。アンチセンス化合物には、標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を調節する、リボザイム、エクスターナルガイド(external guide)配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、及び他の短い触媒RNA又は触媒オリゴヌクレオチドを含む。
【0060】
当該技術分野において既知であるように、ヌクレオシドは塩基−糖の組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は正常には複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2種のもっとも普通の種類はプリン及びピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれらのヌクレオシドでは、リン酸基は糖の2’,3’又は5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成では、リン酸基は隣接するヌクレオシドを他のヌクレオシドに共有結合して、直線状ポリマー化合物を形成する。順に、この直線状ポリマー構造物のそれぞれ末端がさらに連結されて、環状構造物が形成されてもよいが、開放された直線状構造物が一般に好適である。オリゴヌクレオチド構造物において、リン酸基は通常、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格の形成に向けられる。RNA及びDNAの通常の結合又は骨格は、3’〜5’ホスホジエステル結合である。
【0061】
本発明において有用な好適なアンチセンス化合物の特定の例は、修飾骨格又は非天然のヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義されるように、修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格中にリン原子を保持するもの、及び骨格中にリン原子を有しないものを含む。本明細書の目的のためには、また、当該技術分野において時々引用されるように、それらのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有しない修飾オリゴヌクレオチドもまたオリゴヌクレオチドであると考えることができる。
【0062】
いくつかの実施態様では、修飾オリゴヌクレオチド骨格は、たとえば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、正常な3’−5’結合を有するセレノホスフェート及びボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、及び1個以上のヌクレオチド間結合が3’〜3’,5’〜5’又は2’〜2’結合である反転極性を有するそれらのものを含む。反転極性を有する好適なオリゴヌクレオチドは、3’−大多数ヌクレオチド間結合における単一の3’〜3’結合、すなわち、塩基性であってもよい単一の反転ヌクレオシド残基(核酸塩基が失われているか、又はその代わりにヒドロキシル基を有する)を含む。
【0063】
他の好適なオリゴヌクレオチド擬似物では、両糖及びヌクレオシド間の結合、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新規の基により置換される。塩基単位は、適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのそのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド擬似物は、ペプチド核酸(PNA)として言及される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、骨格、特にアミノエチルグリシン骨格を含有するアミドにより置換される。核酸塩基は保有され、そして骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;及び同第5,719,262号を含み、これらの各々は引用によって本明細書に組み入れられる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.(1991)Science254:1497−1500において見出される。
【0064】
改変されたオリゴヌクレオチドはまた、1又は2個以上の置換糖部分を含有していてもよい。
【0065】
さらなる改変は、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’又は4’炭素原子に結合されて、二環式糖部分を形成するLocked Nucleic Acids(LNA)を含む。結合は、好ましくは、2’酸素原子と4’炭素原子を架橋しているメチレン(−CH2−)n基[式中、nは1又は2である]であり、そしてそれの調製はWO98/39352およびWO99/14226に記述されている。
【0066】
他の改変は、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−CH−CH=CH)、2’−O−アリル(2’−O−CH−CH=CH)及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’−改変は、アラビノ(up)位置又はリボ(down)位置に存在してもよい。好適な2’−アラビノ改変は2’−Fである。類似の改変もまた、オリゴヌクレオチドにおける他の位置、具体的には3’末端ヌクレオチドにおける糖の3’位又は2’−5’結合オリゴヌクレオチド及び5’末端ヌクレオチドの5’位において作成されてもよい。またオリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖擬似物を有してもよい。
【0067】
また、オリゴヌクレオチドは核酸塩基(しばしば、当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれる)改変物又は置換物を含む。ここで使用されるように、「未改変」ないし「自然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)、及びピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を含む。改変核酸塩基は、他の合成及び自然の核酸塩基、たとえば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニル(−C=C−CH)ウラシル及びシトシン及びピリミジン塩基の他のアルキル誘導体、6−アゾ ウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−ヒドロキシル及び8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル及び他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン及び3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンを含む。さらなる改変核酸塩基は、三環式ピリミジン、たとえばフェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−clamps、たとえば置換フェノキサジンシチジン(たとえば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[5,4−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)を含む。また改変核酸塩基は、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環式化合物、たとえば7−デアザアデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリミジン及び2−ピリドンにより置換されるものを含んでもよい。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、THE CONCISE ENCYCLOPEDIA OF POLYMER SCIENCE AND ENGINEERING,pages858−859,Kroschwitz,J.J.,ed.John Wiley&Sons,1990に開示されるもの、Englisch et al.Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613によって開示されるもの、及びSanghvi,Y.S.,Chapter15,ANTISENSE RESEARCH AND APPLICATIONS,pages 289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ed.,CRC Press,1993に開示されるものを含む。これらの核酸塩基のあるものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和力を増大するために特に有用である。これらは、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル及び5−プロピニルシトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン及びN−2,N−6及びO−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換物は、0.6〜1.2℃だけ核酸二重らせんの安定性を増強することが示され(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.eds.,ANTISENSE RESEARCH AND APPLICATIONS,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、そしてより特別には、2’−O−メトキシエチル糖改変と組み合わされた場合、現在、好適な塩基置換物である。
【0068】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分配又は細胞取込みを増進する1又は2個以上の部分又は結合物(conjugate)をオリゴヌクレオチドに化学的に結合することを伴う。本発明の化合物は、官能基、たとえば第1又は第2ヒドロキシル基に共有結合された結合基を含んでもよい。本発明の結合基は、インターカレータ、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的性質を増進する基、及びオリゴマーの薬動学的性質を増進する基を含む。典型的な結合基は、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォラシン、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、ローダミン、クマリン及び染料を含む。本発明の文脈上、薬力学的性質を増進する基は、オリゴマーの取込みを改良し、分解に対するオリゴマーの抵抗性を増進し、及び/又はRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本発明の文脈上、薬動学的性質を増進する基は、オリゴマーの取込み、分配、代謝又は排泄を改良する基を含む。結合部分は、限定されるものではないが、脂質部分、たとえばコレステロール部分(Letsinger et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−6556)、コール酸(Manoharan et al.(1994)Bioorg.Med.Chem.Let.4:1053−1060)、チオエーテル、たとえばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.,(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:306−309;Manoharan et al.,(1993)Bioorg.Med.Chem.Let.3:2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,(1992)Nucl.Acids Res.20:533−538)、脂肪族鎖、たとえばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.,(1991)EMBO J.10:1111−1118;Kabanov et al.,(1990)FEBS Lett.259:327−330;Svinarchuk et al.,(1993)Biochimie75:49−54)、リン脂質、たとえばジーヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルーアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.36:3651−3654;Shea et al.,(1990)Nucl.Acids Res.18:3777−3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,(1995)Nucleosides&Nucleotides14:969−973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.36:3651−3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,(1995)Biochim.Biophys.Acta1264:229−237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.,(1996)J.Pharmacol Exo.Ther.277:923−937)を含む。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、活性薬物物質、たとえば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナミン酸(flufenamic acid)、ベンゾチアジアジド、クロロチアジアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビタール酸塩、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗菌剤又は抗生物質に結合されてもよい。
【0069】
所与の化合物の全ての位置について均一に改変されることは必ずしも必要でなく、事実、1を超える前記改変を、オリゴヌクレオチド内の単一の化合物又は単一のヌクレオチドにおいてさえ組み入れてもよい。また本発明はキメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。本発明の文脈上、「キメラの」アンチセンス化合物ないし「キメラ」は、各々が少なくとも1個のモノマー単位、すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチドから作成された、2個以上の化学的に異なる領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の増大、細胞取り込みの増大及び/又は標的核酸への結合親和力の増大をオリゴヌクレオチドに与えるようにオリゴヌクレオチドが改変される、少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドのさらなる領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂できる酵素のための基質として働いてもよい。例を挙げれば、RNアーゼHは、RNA:DNA二重らせんのRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のオリゴヌクレオチド抑制の効力を大きく増進する。結果的に、同じ標的領域へハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドに比較して、キメラオリゴヌクレオチドが使用される場合、匹敵する結果が、しばしば、より短いオリゴヌクレオチドを用いて得ることができる。RNA標的の切断は、日常的にはゲル電気泳動によって検出でき、必要であれば当該技術分野において既知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって検出できる。
【0070】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、前記のような2個以上のオリゴヌクレオチド、改変オリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド擬似物の複合体構造物として形成されてもよい。そのような化合物もまたハイブリッド又はギャップマー(gapmer)として当該技術分野において言及されている。
【0071】
本発明に従って使用されるアンチセンス化合物は、便利かつ日常的には、周知の固相法という技術により作成されてもよい。そのような合成の機器は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)を含むいくつかの販売元によって販売されている。当該技術分野において既知のそのような合成のための任意の他の手段が、追加的又は代替的に使用されてもよい。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製するために類似技術を使用することは周知である。
【0072】
本発明のアンチセンス化合物はインビトロで合成され、そして生物学的起源のアンチセンス組成物、又はアンチセンス分子のインビボ合成を指導するように設計された遺伝ベクター構築物を含まない。また本発明の化合物は、取込み、分配及び/又は吸収を助けるために、たとえば、リポソーム、受容体標的分子、経口、肛門、局所又は他の調合物として、他の分子、分子構造物又は化合物の混合物とともに、混合、カプセル化、結合又は他に会合されてもよい。

D.モルホリノ改変オリゴヌクレオチド
【0073】
アンチセンス技術の具体的形態はモルホリノ・オリゴヌクレオチドである(Summerton,J.and D.Weller(1997)Antisense Ncul.Acid Drug Dev.7:187−195;Nasevicius,A.and S.C.Ekker(2000) Nat.Genet.26:216−220;Yan,Y−K.et al.(2002)Development129:5065−5079)。モルホリノ・オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAと比較して変更された骨格結合をもつ非イオン性のDNA類似体であるが、相補的配列をもつWatson−Crick塩基対に従う。典型的には、モルホリノは少なくとも長さ約18〜25の核酸塩基であり、ある実施態様では、モルホリノは少なくとも長さ約25〜30の核酸塩基であり、さらに別の実施態様では、モルホリノは少なくとも長さ約30〜35かそれ以上の核酸塩基である。脊椎動物の発生を研究するための道具としてのモルホリノの長さは、Ekker S.C.(2000)Yeast17:302−306による最近の説に十分記述されており、この開示は引用によって本明細書に組み入れられる。
【0074】
モルホリノは、RNアーゼHの基質にならず、分解されないRNA−モルホリノハイブリッドを形成する。Ekker及び共同研究者等は、蛍光標識されたモルホリノ・オリゴヌクレオチドが球体期(sphere stage)のゼブラフィッシュ胚中に注入でき、そして均質な分配を達成することを報告している。緑色蛍光タンパク質(GFP)のために開始コドンに対して標的化されたモルホリノオリゴマーはGFP発現をブロックしたが、これに対して、GFPに相補的である対照オリゴマーはブロックしなかった。これにより、モルホリノオリゴマーが、配列に特異的な様式で遺伝子発現を明瞭にブロックできることが確認された。またEkker及び共同研究者等は、数種の内因性ゼブラフィッシュ遺伝子の抑制を報告した。
【0075】
本発明は、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリヌクレオチドの5’非翻訳領域又はCXCR4、LEC3又はEDNRAポリヌクレオチドのスプライス部位を標的とするモルホリノ改変オリゴヌクレオチドを提供する。そのようなモルホリノ改変オリゴヌクレオチドは、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を抑制するのに有効であり、これらの改変オリゴヌクレオチドにより処置された動物における血管新生を妨害する。
【0076】
モルホリノは高度に無極性である。したがって、改変された又は未改変のモルホリノオリゴは、細胞/組織中にモルホリノオリゴの送達を促進する任意の既知の送達担体/ベクターと組み合わせて投与されてもよい。
【0077】
モルホリノ(及び他のオリゴヌクレオチド)は、また、細胞の吸収を促進するために、Moulton,H.M.et al.(2004)Bioconjugate Chem.15:290−299に記載されているように、アルギニン・リッチ・ペプチドと結合させてもよい。これは、参照により、全体としてここに取り入れられる。

E.細胞への核酸の送達:
【0078】
本発明の核酸構築物は当該技術分野において既知の任意の手段によって送達されてもよい。ある実施態様では、核酸はエクスビボ手段を用いて細胞中に送達される。他の実施態様では、核酸はインビボ手段を用いて細胞中に送達される。
【0079】
エクスビボ遺伝子療法では、細胞は、実験操作前に宿主生物、たとえばヒトから除去される。これらの細胞が次に、当該技術分野において周知の方法を用いてインビトロで核酸をトランスフェクトされる。次いで、これらの遺伝的に操作された細胞が宿主生物中に再導入される。一方、インビボの遺伝子治療アプローチは宿主生物から標的細胞を除去することを必要としない。むしろ、核酸は、試薬、たとえばリポソーム又はレトロウイルスと複合され、続いて既知の方法を用いて生物内の標的細胞に投与されてもよい。たとえば、Morgan et al.,(1987)Science 237:1476、1987;Gerrard et al.(1993)Nat.Genet.3:180を参照。
【0080】
細胞をトランスフェクトするための数種の異なる方法を、エクスビボ又はインビボいずれかの遺伝子治療アプローチのために使用することができる。既知のトランスフェクション法は、標的細胞中に選ばれた核酸を送達するように使用される作用物に従って分類されてもよい。これらのトランスフェクション作用物は、ウイルス依存性、脂質依存性、ペプチド依存性、及び直接トランスフェクション(「裸DNA」)アプローチを含む。トランスフェクションのために使用される他のアプローチは、カルシウム共沈及びエレクトロポレーションを含む。
【0081】
ウイルスアプローチは、宿主細胞を感染させるために遺伝的に工作されたウイルスを使用し、それによって、外因性核酸により細胞を「トランスフェクトする」。既知のウイルスベクターには、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス及びレトロウイルスを含む、この例が既に開示されている組み換えウイルスが存在する。そのような組換え体は、プロモータ又はエンハンサ要素の制御下で異種の遺伝子を担持でき、そしてベクターで感染された宿主細胞においてそれらの発現を惹起することができる。ワクシニア及び他の種類の組換えウイルスは、Mackett et al.(1994)J.Virol.49:3によって概説されている。また、Kotani et al.(1994)Hun.Gene Ther.5:19も参照されたい。
【0082】
非ウイルスベクター、たとえばリポソームもまた遺伝子治療において核酸送達のための媒介物として使用されてもよい。ウイルスベクターに比較して、リポソームは安全であり、比較的高い能力を有し、比較的低い毒性であり、種々の核酸に基づく分子を送達でき、そして比較的非免疫原性である。参照、Felger,P.L.and Ringold,G.M.,(1989)Nature337:387−388。これらのベクターの中では、カチオン性リポソームが、インビトロの哺乳動物細胞トランスフェクションの媒介におけるそれらの有効性に因りもっとも研究されている。リポフェクション(lipofection)として既知の1つの技術は、核酸及び細胞へのトランスフェクションを促進するカチオン性脂質から作成されるリポプレックス(lipoplex)を使用する。脂質/核酸複合体は、原形質又はエンドソーム膜を融合するか、さもなくば破壊し、そして細胞中に核酸を移送する。リポフェクションは、典型的には、リン酸カルシウムトランスフェクション法よりも細胞へのDNAの導入において一層効率的である。Changet al.,(1988)Focus10:66。
【0083】
1つの既知タンパク質依存のアプローチは、核酸と混合されたポリリジンの使用を伴う。ポリリジン/核酸複合体は、次いで侵入のために標的細胞に曝露される。参照、たとえば、Verma and Somia(1997)Nature389:239;Wolff et al.(1990)Science247:1465。
【0084】
「裸のDNA」トランスフェクションアプローチは、核酸がインビボで直接投与される方法を伴う。参照、Germanらへの米国特許第5,837,693号。核酸の投与は、筋肉又は皮膚のような、器官における組織の間質空間中への注入、血流中、所望の体腔中への直接導入によって、あるいはまた吸入によって実施できる。これらの所謂「裸のDNA」アプローチでは、核酸は注入されるか、さもなくばいかなる補助剤もなしに動物と接触される。体組織、たとえば骨格筋又は皮膚中へ直接、遊離の(「裸の」)プラスミドDNAの注入がタンパク質の発現をもたらすことが報告されている。参照、Ulmer et al.(1993)Science259:1745−1749;Wang et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:4157−4160;Raz et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:9519−9523。
【0085】
エレクトロポレーションは別のトランスフェクション法である。参照、Szoka,Jr.らへの米国特許第4,394,448号及びHauserへの米国特許第4,619,794号。種々の動物及び植物細胞への短い高電圧電気パルスの印加は、原形質膜にナノメーターサイズの孔の形成をもたらす。DNAは、これらの小孔を通して又は孔の閉鎖を伴う膜構成成分の再分配の結果として細胞原形質中に直接侵入できる。

2. 宿主細胞
【0086】
本発明の他の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」との用語は、ここでは交換可能に使用される。そのような用語は特定の細胞のみならず、またそのような細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。ある種の改変が、突然変異又は環境の影響によって後続世代において起きるかもしれないので、そのような子孫は、実際に、親細胞と同一でなくてもよいが、尚もここで使用される用語の範囲内に含まれる。
【0087】
宿主細胞は任意の原核細胞又は真核細胞であってもよい。たとえば、脊椎動物のCXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドは細菌細胞、たとえば大腸菌、昆虫細胞、酵母又は哺乳動物細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞)において発現することができる。他の適当な宿主細胞は当業者には既知である。
【0088】
ベクターDNAは慣用の形質転換又はトランスフェクション技術を介して原核細胞又は真核細胞中に導入できる。ここで使用されるように、「形質転換」及び「トランスフェクション」との用語は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション又はエレクトロポレーションを含む、宿主細胞中に外来核酸(たとえば、DNA)を導入するための種々の技術的に認識された技術を指すことを意図している。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適当な方法は、Sambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)及び他の実験室マニュアルにおいて見出すことができる。
【0089】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションでは、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術に応じて、小部分の細胞しか、それらのゲノム中に外来DNAを組込むことができないことが知られている。これらの組込み体を同定し、選択するためには、安定なマーカー(たとえば、抗生物質に対する耐性)をコードしている遺伝子が、一般に、関心のある遺伝子とともに宿主細胞中に導入される。種々の選択可能なマーカーは、薬物、例えばG418、ハイグロマオシンおよびメトトレキセートに対する耐性を付与するものを含む。選択可能なマーカーをコードしている核酸が、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている同じベクターにおいて宿主細胞中に導入できるか、または別々のベクターにおいて導入することができる。導入された核酸により安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(たとえば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込まれた細胞は、他の細胞が死滅するのに対して生残するであろう)。
【0090】
培養物における本発明の宿主細胞、たとえば原核又は真核宿主細胞が脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドを生産する(すなわち、発現する)ために使用できる。したがって、本発明は、さらに、本発明の宿主細胞を用いて脊椎動物CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドを生産する方法を提供する。一実施態様では、本方法は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドが生産されるような適当な培地において、本発明の宿主細胞(脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている組換え発現ベクターが導入された)を培養することを含む。その他の実施態様では、本方法は、さらに、培地又は宿主細胞から脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAを単離することを含む。

3. トランスジェニック動物:
【0091】
また、本発明の宿主細胞は、非ヒト・トランスジェニック動物を作成するために使用することができる。たとえば、一実施態様では、本発明の宿主細胞は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている配列が導入された受精卵母細胞又は胚性幹細胞である。そのような宿主細胞は、次に、内因性の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA配列が変更されているそれらのゲノム又は相同の組換え動物中に、外因性の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA配列が導入された非ヒト・トランスジェニック動物を作成するために使用できる。そのような動物は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAの機能及び/又は活性を研究するため、及び脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA活性のモジュレータを同定及び/又は評価するために有用である。ここで使用されるように、「トランスジェニック動物」は非ヒト動物であり、ある実施態様では、動物は魚であり、他の実施態様では、動物は哺乳動物(たとえば、ラット又はマウスのような齧歯類)であり、この場合、動物の1個以上の細胞がトランスジーンを含む。トランスジェニック動物の他の例は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などを含む。トランスジーンは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組み込まれた外因性DNAであり、そしてこれが成熟動物のゲノム中に留まって、トランスジェニック動物の1種以上の細胞タイプ又は組織においてコードされた遺伝子産物の発現を指導する。ここで使用されるように、「相同の組換え動物」は非ヒト動物、たとえば哺乳動物(たとえば、マウス)であり、この動物では、内因性CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子は、内因性遺伝子と、動物の細胞、たとえば、動物の発生前の動物の胚性細胞中に導入された外因性DNAとの間の相同組み換えによって変更されている。
【0092】
本発明のトランスジェニック動物は、受精卵母細胞の雄性前核中に、たとえば、ミクロインジェクション、レトロウイルス感染によって脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている核酸を導入し、偽妊娠のメス養育動物において卵母細胞を生育させることによって生産することができる。配列番号1(ヒトCXCR4)、配列番号3(ヒトLEC3)、配列番号5(ヒトEDNRA)、配列番号7(ダニオCXCR4)、配列番号9(ダニオLEC3)、配列番号11(ダニオEDNRA)の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAcDNA配列又は人工的構築物を、非ヒト動物のゲノム中にトランスジーンとして導入することができる。いくつかの実施形態では、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAの変異体が導入されるが、この変異体では、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAは1個以上のドメインを欠如しているか、又は野生型配列の相同染色体による置換物を有する。あるいはまた、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子の相同染色体が脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAcDNAに対するハイブリダイゼーション(詳細は前記)に基づいて単離され、そしてトランスジーンとして使用されてもよい。また、イントロン配列及びポリアデニル化シグナルがトランスジーンに含まれてトランスジーンの発現効率が増強されてもよい。組織特異的調節配列が操作可能に脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAトランスジーンに連結されて、特定の細胞に対して脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの発現を指導してもよい。胚の操作及びミクロインジェクションを介するトランスジェニック動物、特にマウスのような動物の作成方法は、当該技術分野において慣用になっており、例えば、米国特許第4,736,866号;同第4,870,009号及び同第4,873,191号;及びHogan 1986,In:MANIPULATING THE MOUSE EMBRYO,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.において記述されている。同様の方法は他のトランスジェニック動物の作成のために使用される。トランスジェニック創始動物は、そのゲノムにおける脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAトランスジーンの存在及び/又は動物の組織又は細胞における脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAmRNAの発現に基づいて同定することができる。トランスジェニック創始動物は、次いで、トランスジーンを担持しているさらなる動物の繁殖のために使用できる。さらに、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしているトランスジーンを担持するトランスジェニック動物は、他のトランスジーンを担持している他のトランスジェニック動物とさらに交配させられてもよい。
【0093】
相同組換え動物を創成するために、欠失、付加又は置換が導入されて脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子が変更された、たとえば機能的に破壊された、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子の少なくとも一部分を含有するベクターが調製される。脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子は、配列番号1(ヒトCXCR4)、配列番号3(ヒトLEC3)、配列番号5(ヒトEDNRA)、配列番号7(ダニオCXCR4)、配列番号9(ダニオLEC3)、配列番号11(ダニオEDNRA)のcDNAであってもよい。次いで、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAは、哺乳動物、又は他の脊椎動物のゲノム中に導入されてもよい。一実施態様では、ベクターは、相同組み換えにおいて、内因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子が機能的に破壊されるように設計される(すなわち、機能的タンパク質をもはやコードしていない;また「ノックアウト」ベクターと呼ばれる)。
【0094】
また、ベクターは、相同組換えにおいて、内因性の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子が突然変異されるか、又は他の方法で変更されて、内因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの発現が変えられるが、なお機能的タンパク質をコードしているように設計されてもよい(たとえば、上流の調節領域が変更されて、内因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの発現が変えられてもよい)。相同組換えベクターでは、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子の変更部分は、その5’及び3’末端においてさらなる脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子の核酸に隣接されて、そのベクターに担持された外因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子と、胚性幹細胞における内因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子との間に相同組換えを生じさせる。さらなる隣接する脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA核酸は、内因性遺伝子との成功裏の相同組換えのために十分な長さを有する。典型的には、隣接するDNA(両5’および3’末端における)の数キロベースがベクターに含まれる。参照、たとえば、相同組換えベクターの記述について、Thomas et al.(1987)Cell51:503。ベクターは胚性幹細胞系中に(たとえば、エレクトロポレーションによって)導入され、そして導入された脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子が内因性脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子と相同的に組み換えられた細胞が選ばれる(参照、たとえば、Li et al.(1992)Cell69:915)。トランスジェニック非ヒト動物を作成する方法は当該技術分野において周知である(マウスについては、参照、Brinster et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:4438−42;米国特許第4,736,866号、同4,870,009第号、同第4,873,191号、同第6,127,598号;Hogan,B.,Manipulating The Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);相同組換えについては、参照、Capecchi(1989)Science244:1288−1292;Joyner et al.(1989)Nature338:153−156;粒子衝撃については、参照、米国特許第4,945,050号;ドロソフィラ(Drosophila)については、参照、Rubin and Spradling(1982)Science218:348−53、米国特許第4,670,388号;トランスジェニック昆虫については、参照、Berghmmer A.J.et al.(1999)Nature402:370−37;ゼブラフィッシュについては、参照、Lin S.(2000)Methods Mol.Biol.136:375−3830;魚、両生類及び鳥については、参照、Houdebine and Chourrout,(1991)Experientia 47:397−905;ラットについては、参照、Hammer et al,(1990)Cell63:1099−1112;胚性幹(ES)細胞については、参照、TERATOCARCINOMAS AND EMBRYONIC STEM CELLS, A PRACTICAL APPROACH,E.J.Robertson,ed.,IRL Press(1987);家畜については、参照、Pursel et al.(1989)Science244:1281−1288;非ヒト動物クローンについては、参照、Wilmut,I.et al.(1997)Nature385:810−813、PCT公開公報第WO97/07668号及び第WO97/07669号;調節されたトランスジーン発現のためのリコンビナーゼ系については、参照、Lakso et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.89:6232−6236;米国特許第4,959,317号(cre.loxPについて)及びO’Gorman et al.(1991)Science251:1351−1355;米国特許第5,654,182号(FLP/FRTについて))。cre/loxPリコンビナーゼ系がトランスジーンの発現を調節するために使用される場合、両Creリコンビナーゼと選ばれたタンパク質をコードしているトランスジーンを含有する動物が要求される。そのような動物は、「二重の」トランスジェニック動物の構築をとおして、たとえば、2種のトランスジェニック動物、選ばれたタンパク質をコードしているトランスジーンを含有する一方と、リコンビナーゼをコードしているトランスジーンを含有する他方との交配によって提供できる。
【0095】
本発明は、また、CXCR4、LEC3及びEDNRAトランスジーンの優性阻害及び構成活性の突然変異体形式を提供する。これらの突然変異体トランスジーンは、これらのGPCR及び治療可能性に関する研究を可能にする。いくつかの実施形態において、CXCR4、LEC3又はEDNRAの優性阻害突然変異体形式をコードする核酸配列を備える発現ベクターが非ヒトの胚又は細胞に導入され、また、その結果生じるトランスジェニック動物又は細胞は対象GPCRの優性阻害発現を有する。
【0096】
優性阻害突然変異は、たとえば部位特異的変異誘発法により(当該技術分野において既知の任意の手段により)、優性阻害効果を与えるタンパク質配列のある領域へ導入されてもよい。たとえば、限定する趣旨ではないが、ハムスターαアドレナリン受容体におけるアミノ酸位置303(F303GとF303N)でのフェニルアラニンが、このGPCRの優性阻害効果を与えることに関係していることが証明された(Chen S.et al(2000)EMBO J.19(16):4265−4271)。GPCRタンパク質のこの領域は高度に保存されるので、したがって、それは保存配列を備えたGPCRのための同様の優性阻害受容体を生成するであろう(Chen S.et al(2000)EMBO J.19(16):4265 at page 4270)。この領域は、たとえばCXCR4、LEC3、EDNRA並びにハムスターαアドレナリン受容体、ヒスタミン(H)、ドーパミン(D)、ムスカリン(M)、及びアンジオテンシンII(AT)の中に実際に保存される。したがって、図16において箱で囲まれている、特にフェニルアラニンに対するこの領域に対する突然変異は、優性阻害突然変異体を生成するのに有用である。Dosil M.et al(1998)Mol.Cell.Biol18(10):5981−5991によって発見されたように、GPCRの細胞外ドメインにおける更なる突然変異は、GPCRの細胞外ドメインのカルボキシル末端領域に対して、又はLeavitt L.M.et al(1999)Mol Gen.Genet.261(6):917−932によって報告されたのと相似の領域において閉じる。
【0097】
いくつかの実施形態において、CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードする核酸配列を備える発現ベクターは、GPCRタンパク質の構成的発現を駆動するプロモータに操作可能に結合される。これらの配列は非ヒト胚へ導入され、得られるトランスジェニック動物は対象GPCRの構成的発現を有する。構成的プロモータは当該技術分野において周知であり、限定事項でないが、SV40、サイトメガロウィルス・プロモータ(たとえば、CMV5)、ヒトCMVエンハンサ/鶏b−アクチン・プロモータ、マウスpgkプロモータ、及びヒト・ユビキチンCプロモータを含む。
【0098】
他の実施形態において、他のGPCRについての文献に記載されているのと同様の方法により、構成的に活性なタンパク質へと繋がるアミノ酸配列の中に置換を有するために、CXCR4、LEC3又はEDNRAタンパク質は部位特異的変異誘発法によって変化される。限定するものでないが、たとえば次のものがある:Vischer H.F.et al.(2006)Trends Pharmacol.Sci.27(1):56−63; Miura S.et al.(2005)J.Biol.Chem.280(18):18237−18244;Ladds G.et al.(2005)Mol.Microbiol.55(2):482−497;Zhang M.et al.(2005) Mol.Biol.Cell.16(2):562−572;Cotecchia S.et al.(2003)Assay Drug Dev.Technol1(2):311−316;Behan D.P.and D.T.Chalmers.(2001)Curr.Opin.Drug Discov.Devel4(5):548−560;Parnot C.et al.(2002)Trends Endocrinol.Metab.13(8):336−343;及びEgan C.et al.(1998)Ann.NY Acad.Sci.861:136−139。
【0099】
いくつかの実施形態において、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を駆動する使用されたプロモータは、組織特異的かもしれない。これは、動物の選択された組織におけるGPCRの構成的発現を可能にする。そのような構成的に発現されたGPCRは、治療可能性の評価のためのGPCR活性を調節する化合物のためにスクリーニングに有用である。また、組織特異的プロモータは当該技術分野において周知であり、限定事項でないが、ニューロンにおける高い発現を促進するニューロン特異的エノラーゼ(NSE);ニューロンにおける高い発現を促進するチューブリンα1(T−α1);星状細胞における高い発現を促進する神経膠線維酸性タンパク質(GFAP);心筋細胞における高い発現を促進するミオシンL鎖−2(MLC2);内皮細胞における高い発現を促進するプレプロエンドテリン−1(ET−1);内皮細胞における高い発現を促進するtie(tie);血管平滑筋細胞において高い発現を促進するSM22a(SM22a);肝細胞における高い発現を促進するα1抗トリプシン(α1−AT);肝細胞における高い表現を促進するアルブミン(ALB);ステロイド産生細胞において高い発現を促進する側鎖分裂酵素(SCC);及び腎の近位の尿細管細胞において高い発現を促進する腎臓アンドロゲン応答タンパク質(KAP)を含む。
【0100】
本発明はまた、CXCR4、LEC3及びEDNRA2、融合タンパク質を提供するが、そこでは、融合タンパク質パートナーをおおざっぱに又は組織学的に視覚化することができる。簡単には、CXCR4、LEC3又はEDNRAと視覚化又は容易に同定可能なタンパク質との枠内接合部を有する発現構成物が生産される。そのような融合タンパク質は、たとえば、緑色蛍光性タンパク質(GFP)及び当該技術分野において周知の他のものを含む。そのような構成物は、動物(たとえば相同組換えにより)又は細胞(種々のトランスフェクション技術を通じて)へ導入され、Gタンパク質、細胞内局在性、これらのGPCR標的の生理的で、病態生理学上の且つメタボリックな変化のような他のシグナリング分子との間の分子の相互作用を研究するために有用である。
【0101】
本発明は、また、CXCR4、LEC3又はEDNRAプロモータによって駆動されるGFP蛍光性リポータ構成物を提供する。そのような構成物は、たとえばGFPのようなリポータに、CXCR4、LEC3又はEDNRAプロモータを操作可能に結合することにより生成される。そのような構成物は、これらのGPCRの発現についての薬学的ないし遺伝的な調節の研究を促進するために、(たとえば相同組換えによる)動物に又は(種々のトランスフェクション技術を通じて)細胞に導入されてもよい。たとえばCXCR4、LEC3又はEDNRAのためのプロモータの制御の下でGFPを発現するトランスジェニックのゼブラフィッシュは、これらのGPCRの発現レベルを調節することができる、治療薬剤や遺伝子変更因子を同定するために、大規模の薬剤スクリーニング又は遺伝子スクリーニングを促進するのに有用である。CXCR4のためのプロモータは、当該技術分野において既知であり、たとえば、Haviv Y.S.et al.(2004)Mol Cancer Ther.3(6):687−691;Moriuchi M.et al.(1999)AIDS Res.Hum.Retroviruses15(9):821−827;Moriuchi M.et al.(1999)J.Immunol.162(10):5986−5992;また、Caruz A.et al.(1998)FEBS Lett.426(2):271−278;Moriuchi M.et al.(1997)J.Immunol.159(9):4322−4329において見出される。EDNRAのためのプロモータも当該技術分野において既知であり、たとえば、Yamashita J.et al.(1998)J.Biol.Chem.273(26):15993−15999及びYamashita J.et al.(1995)J.Cardiovasc.Pharmacol.26 Suppl3:S26−28に記載されている。

4. 脊椎動物のポリペプチド
【0102】
本発明は、また、脊椎動物のCXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドを提供する。CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチド、その変異体、フラグメント及び抗原部分は、いかなる脊椎動物種から得られてもよい。ある実施態様では、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドはマウス又はラットから得られる。他の実施態様では、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドはヒトから得られる。他の実施態様では、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチドは魚、たとえばゼブラフィッシュから得られる。いくつかの実施形態において、CXCR4ポリペプチドは、配列番号2、配列番号8、又は配列番号33のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、LEC3ポリペプチドは、配列番号4、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号27、又は配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、EDNRAポリペプチドは、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、又は配列番号23のアミノ酸配列を有する。
【0103】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」との用語は、ここでは交換可能に使用される。「ポリペプチド」は、特定の長さを指すことなくアミノ酸のポリマーを指す。本発明のポリペプチドは、ペプチドフラグメント、誘導体及び融合タンパク質を含む。ペプチドフラグメントは、好ましくは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90又は100個のアミノ酸を有する。本発明の若干のペプチドフラグメントは生物学的に活性である。生物学的活性は、免疫原性、リガンド結合及び参照ペプチドに関連する活性を含む。本発明の免疫原性ペプチド及びフラグメントは、エピトープ特異的免疫応答を生成し、ここで、「エピトープ」はペプチドの免疫原性決定基を指し、そして好ましくは、少なくとも3、5、8、9、10、15、20、30、40、45又は50個のアミノ酸を含有する。本発明の若干の免疫原性ペプチドはそのペプチドに特異的な免疫応答を生じる。本発明のポリペプチドは、自然に存在するペプチド及び自然には存在しないペプチドを含む。この用語は、改変ポリペプチド(この場合、そのような改変の例は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、カルボン酸化、ユビキチン化、標識化などを含む)、類似体(例えば自然に存在しないアミノ酸、置換結合など)及び機能的擬似物を含む。ポリペプチドを標識する種々の方法は当該技術分野において周知であり、そして放射性アイソトープ、たとえば32P又は35S、標識されたアンチリガンド(たとえば、抗体)に結合するリガンド、蛍光団、化学発光剤、酵素及びアンチリガンドを含む。
【0104】
ここで使用されるように、「アミノ酸」との用語は、アミノ基及びカルボキシル基の両方を含有する分子をいう。ある実施態様では、アミノ酸は、それらの立体異性体及びラセミ化合物を含む、α−、β−、γ−又はδ−アミノ酸である。ここで使用されるように、「L−アミノ酸」との用語は、α−炭素の周囲にL立体配置を有するα−アミノ酸、すなわち、L−立体配置を有する一般式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸を指す。「D−アミノ酸」との用語は、同様に、α−炭素の周囲にD−立体配置を有する一般式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸を指す。L−アミノ酸の側鎖は、自然に存在する部分及び自然に存在しない部分を含む。自然に存在しない(すなわち、非天然)アミノ酸側鎖は、たとえば、アミノ酸類似体における自然に存在するアミノ酸側鎖の代わりに使用される部分である。アミノ酸置換体は、たとえば、それらのカルボニル基、その酸素又はカルボニル炭素、又はそれらのアミノ基、又はそれらの側鎖部分に存在する官能基をとおして結合されてもよい。
【0105】
アミノ酸配列は、右から左へ、アミノ(N)〜カルボキシ(C)方向において示される。N−末端α−アミノ基及びC−末端β−カルボキシ基は配列において描かれない。アミノ酸は、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される方式で表されるか、又はアミノ酸は、それらの3文字コード指名によって表される。
【0106】
本発明は、また、細胞透過性ペプチドの使用を意図する。細胞透過性ペプチドは、ニューロン変性(Borsello T,and C.Bonny(2004)“Use of cell−permiable peptides to prevent neuronal degeneration”Trends Mol.Med.10(5):239−44)及びAbetal−40原線維発生(Gordon D.J.et al.(2002)“Design and characterization of a membrane permeable N−methyl amino acid−containing peptide that inhibits Abetal−40 fibrillogenesis”J.Pept.Res.60(1):37−55)を含む種々の経路の機能を抑制するように設計された。細胞透過性ペプチドを設計する方法は当該技術分野において既知であり、そして例えば、Du C.et al.(1998)“Conformational and topological requirement of cell−permeable peptide function”J.Pept.Res.51:(3):235−243において記述されている。CXCR4、LEC3若しくはEDNRA及び/又はVEGF由来の細胞透過性ペプチドもまた、被験者における血管新生を抑制し、そして血管新生関連の疾病及び血管新生依存性腫瘍を処置するために本発明の方法において使用されてもよい。どのペプチドがそのような目的のために有用であるかを決定するために、ここで記述されるスクリーニング手法が使用されて、日常的に、機能的な細胞透過性ペプチドをスクリーニングすることができる。

5. 脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAを特異的に認識する種々の抗体
【0107】
本発明は、脊椎動物CXCR4、LEC3若しくはEDNRA、又はエピトープが配列番号2、配列番号8、配列番号33、配列番号4、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号27、配列番号28、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、又は配列番号23のアミノ酸配列の少なくとも一部分を含む脊椎動物CXCR4、LEC3若しくはEDNRAのフラグメントを、特異的に認識するCDR配列を含む化合物を含む、抗体(例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二価/二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び相補性決定部(CDR)をグラフトされた抗体)を提供する。
【0108】
Fab、Fab’、F(ab’)及びFを含む、抗体フラグメントもまた、本発明によって提供される。本発明の抗体を記述するために使用される場合、「に対して特異的」との用語は、本発明の抗体の可変部が、排他的に脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAを認識し、かつ結合することを示す(すなわち、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAと他のGPCRファミリーメンバーとの間に局限される配列の同一性、相同性又は類似性の可能な存在にもかかわらず、結合親和力における測定可能な差異のために他の異なるGPCRから脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAを区別することができる)。「高い結合親和力」は、約5x10−8Mを超える、好ましくは約5x10−8M〜約5x10−12Mの結合親和力を指し、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−9M〜約5x10−11Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−7M〜約5x10−8Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−8M〜約5x10−9Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−9M〜約5x10−10Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−10M〜約5x10−11Mである。
【0109】
また、特異的抗体は、抗体の可変部の外側、特に分子の定常部における配列との相互作用を介して他のタンパク質(たとえば、黄色ブドウ球菌プロテインA又はELISA技術における他の抗体)と相互作用してもよいことが理解できる。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、かつ当該技術分野において日常的に実施されている。そのようなアッセイの包括的な議論については、Harlow et al.(Eds.),ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL;Cold Spring Harbor,N.Y.,1988.Chapter6、参照。抗体が脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAに対して特異的であれば、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAのフラグメントを認識し、結合する抗体もまた考慮される。本発明の抗体は、当該技術分野において周知であり、かつ日常的に実施されるいかなる方法を用いても作成することができる。
【0110】
ポリクローナル抗体の生産では、種々の適当な宿主動物(たとえば、ウサギ、ヤギ、マウス又は他の哺乳動物)が、生来のポリペプチド、またはその合成変異体、または前者の誘導体を注射することによって免疫化されてもよい。適当な免疫原性調製物は、たとえば、組換え技術により発現された脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド、又は化学的に合成された脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドを含んでもよい。調製物はアジュバントをさらに含む。免疫学的応答を増強するために使用される種々のアジュバントは、限定されるものではないが、Freund’s(完全及び不完全)、金属ゲル(たとえば、水酸化アルミニウム)、界面活性剤(たとえば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノールなど)、ヒト・アジュバント、たとえばBacille Calmette−Guerin及びコリネバクテリウム・パルブム、又は類似の免疫刺激剤を含む。必要であれば、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAに対向される抗体分子は、哺乳動物(たとえば、血液から)から単離でき、さらに周知の技術、例えばIgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーによって精製できる。
【0111】
ここで使用されるように、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」との用語は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAの特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位の1種のみを含有する抗体分子の集団を指す。したがって、モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドに対する単一の結合親和力を表す。特定のCXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は同族体に対向されるモノクローナル抗体の調製のためには、連続細胞系培養による抗体分子の生産のために提供するいかなる技術が利用されてもよい。そのような技術は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術(参照、Kohler& Milstein,1975 Nature256:495−497);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(参照、Kozbor,et al.,(1983)Immunol Today4:72)およびヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ技術(参照、Cole,et al,.1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)を含む。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において利用されてもよく、ヒトハイブリドーマを使用することによって(参照、Cote,et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:2026−2030)又はインビトロにおいてエプスタイン・バールウイルスによるヒトB細胞の形質転換によって(参照、Cole,et al.(1985)In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)生産されてもよい。
【0112】
本発明によれば、いくつかの技術を、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドに特異的な一本鎖の抗体の生産のために適用できる(参照、たとえば、米国特許第4,946,778号)。さらに、いくつかの方法を、Fab発現ライブラリの構築のために適用でき(参照、例えば、Huse,et al.(1989)Science246:1275−1281)、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は同族体に対する所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効率的な同定が可能になる。非ヒト抗体は、当該技術分野における周知の技術によって「ヒト化」することができる。参照、たとえば、米国特許第5,225,539号。CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドに対するイディオタイプを含有する抗体フラグメントは、限定されるものではないが、(i)抗体分子のペプシン消化によって生産されるF(ab’)フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFabフラグメント;(iii)パパイン及び還元剤による抗体分子の処理によって生成されるFabフラグメント;並びに(iv)Fvフラグメントを含む、当該技術分野において既知の技術によって生産されてもよい。
【0113】
さらに、組換え抗脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRA抗体、たとえば標準の組換えDNA技術を用いて作成できる、ヒト及び非ヒトの両部分を含んでなる、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、本発明の範囲内にある。そのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、たとえば、国際出願番号PTC/US86/02269;欧州特許出願番号第184,187号;欧州特許出願番号第171,496号;欧州特許出願番号第173,494号;PCT国際公開番号WO86/01533;米国特許第4,816,567号;米国特許第5,225,529号;欧州特許出願番号第125,023号;Better et al.(1988)Science240:1041−1043;Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu etal.(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999−1005;Wood et al.(1985)Nature314:446−449;Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1533−1559;Morrison(1985)Science229:1202−1207;Oi et al.(1986)BioThechniques4:214;Jones et al.(1986)Nature321:552−525;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534;及びBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記述される方法を用いる、当該技術分野において既知の組換えDNA技術において生産することができる。
【0114】
一実施態様では、所望の特異性をプロセスする抗体のスクリーニング方法は、限定されるものではないが、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)及び当該技術分野において既知の他の免疫学的に媒介される技術を含む。ある特定の実施態様では、ゼブラフィッシュCXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの特定のドメインに特異的である抗体の選択は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドのフラグメントに結合して、そのようなドメインをプロセスするハイブリドーマの生成によって容易になる。脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は同族体におけるIg様ドメインに特異的である抗体もまたここに提供される。
【0115】
抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体又は抗EDNRA抗体は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの局在性及び/又は定量に関する当該技術分野において既知の方法において使用されてもよい(たとえば、適当な生理学的サンプルにおける脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドのレベルの測定における使用、診断方法における使用、ポリペプチドの造影における使用などのために)。一定の実施態様では、抗体由来の結合ドメインを含有する脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は同族体に関する抗体は、薬理学的に活性のある化合物(以下、「治療剤」)として利用される。
【0116】
抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体又は抗EDNRA抗体(たとえば、モノクローナル抗体)は、標準技術、たとえばアフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降によってゼブラフィッシュCXCR4、LEC3又はEDNRAを単離するために使用することができる。抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体又は抗EDNRA抗体は、細胞からの天然のCXCR4、LEC3又はEDNRA及び宿主細胞において発現された組換え体として生産される脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAの精製を容易にすることができる。さらに、抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体又は抗EDNRA抗体は、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドの発現の量及びパターンを評価する目的で、脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチド(たとえば、細胞溶解物における)を検出するために使用できる。抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体又は抗EDNRA抗体は、臨床試験手法の部分として組織におけるタンパク質レベルを追跡するために、たとえば、特定の治療法の効能を決定するために診断的に使用することができる。検出は、検出可能な物質に抗体を結合(すなわち、物理的に連結すること)させることによって容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子基、蛍光材料、発光材料、生物発光材料および放射性材料を含む。適当な酵素の例は、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びアセクォリン(acequorin)を含み、そして適当な放射性材料の例は、ヨウ素−125、ヨウ素−131、硫黄−35又はトリチウムを含む。さらに、本発明の抗体は、毒物、例えば放射性アイソトープ、タンパク質毒素及び化学毒物に複合されてもよい。そのような毒物は、限定されるものではないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111、ホウ素−10、アクチニド、リシン、アドリアマイシン、カリケアミシン(calicheamicin)及び5−フルオロウラシルを含む。
【0117】
LEC3は細胞表面受容体であるので、LEC3に対する抗体には特別の有用性がありうる。したがって、抗体はLEC3の外部環上で作用しうる。抗体は、細胞の外部表面上に存するであろうと予測された推定アミノ酸配列に由来する単離されたペプチドに対して、上昇されていてもよい(図3A−Bを参照)。細胞の外部表面上に存するであろうと予測されたLEC3ポリペプチド配列の部分は、配列番号16のアミノ酸1−806と;配列番号16のアミノ酸861−868と;配列番号16のアミノ酸930−947と;配列番号16のアミノ酸1026−1028と;を含む。

6. 薬剤組成物
【0118】
CXCR4、LEC3及びEDNRA核酸分子、CXCR4、LEC3及びEDNRAポリペプチド(タンパク質の細胞透過性改変バージョンを含む)並びに抗CXCR4抗体、抗LEC3抗体及び抗EDNRA抗体(ここでは「有効成分」としても参照される)、及びその誘導体、フラグメント、類似体及び同族体は、投与のために適当な治療学的に有効な量において薬剤組成物中に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質又は抗体及び製薬学的に許容され得る担体を含む。ここで使用されるように、「薬剤学的に許容され得る担体」は、製薬学的投与に適合する、いずれか及び全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。適当な担体は、Remington’s Pharmaceutical Science、当該分野における標準的参考テキストの最新版に記述されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。そのような担体又は賦形剤の好適な例は、限定されるものではないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンを含む。リポソーム及び非水性媒質、たとえば不揮発油がまた使用されてもよい。製薬学的活性物質のためのそのような媒質及び作用物の使用は当該技術分野においては周知である。いずれか慣用の媒質又は作用物が活性化合物と適合しない限りそれを除いて、組成物におけるその使用が考えられる。補足的な活性化合物がまた組成物中に組み入れられてもよい。
【0119】
本発明の薬剤組成物は、その意図される投与経路に適合するように調合される。投与経路の例は、非経口的、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(たとえば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜及び肛門投与を含む。非経口、皮内又は皮下適用のために使用される液剤又は懸濁剤は次の成分を含む:無菌希釈剤、たとえば注射用の水、無菌食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、たとえばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、たとえばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、たとえば酢酸、クエン酸又はリン酸塩、及び等張性調節用作用物、たとえば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、たとえば塩酸又は水酸化ナトリウムにより調節することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器又はガラス又はプラスチック製の多用量バイアル中に封入することができる。
【0120】
注射用途のために適当な製薬学的組成物は、無菌の水性液剤(ここでは水溶性)または分散剤、及び無菌の注射用液剤又は分散剤の即席調製のための無菌散剤を含む。静脈内投与では、適当な担体は、生理学的食塩水、静菌性水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸バッファー食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は無菌であらねばならず、そして容易に注射可能である程度に流体でなければならない。それは、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、そして細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して防御されなければならない。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合液を含有する溶媒又は分散媒質であってもよい。適当な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合に要求される粒径の維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用防御は、種々の抗菌及び抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、たとえば、糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール及び塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の遅延吸収は、吸収を遅らせる作用物、たとえばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされる。
【0121】
無菌の注射用液剤は、要求される先に列挙された成分の1種又は組合せ物を含む適当な溶媒中に要求される量において活性化合物(たとえば、CXCR4、LEC3若しくはEDNRAポリペプチド又は抗CXCR4、抗LEC3若しくは抗EDNRA抗体)を組み入れ、続いての無菌ろ過によって調製できる。一般に、分散剤は 、基剤の分散媒質及び先に列挙されたものからの要求される他の成分を含有する無菌媒質中に活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌散剤の場合には、調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらは、予め無菌濾過された溶液から、有効成分に加えて任意のさらに所望の成分の粉末を生成する。
【0122】
経口組成物は、一般に、不活性な賦形剤及び食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入されるか又は錠剤に圧縮することができる。経口的治療投与の目的では、活性化合物は添加物とともに組み入れられ、そして錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形態で使用することができる。また経口組成物は、口内洗浄液としての使用のために流体担体を用いて調製されてもよく、この場合、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、ウガイをして吐き出されるか又は飲み下される。製薬学的に適合する結合剤及び/又は補助材料は組成物の一部として含まれてもよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは任意の次の成分又は類似の性質をもつ化合物を含有してもよい:結合剤、たとえば微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;添加物、たとえば澱粉又はラクトース、崩壊剤、たとえばアルギン酸、Primogel又はコーンスターチ;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;滑り剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、たとえばスクロース又はサッカリン;又は香味剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバ。
【0123】
吸入による投与では、化合物は、適当な噴射剤、たとえば二酸化炭素のような気体を含有する加圧容器又はディスペンサ、又はネブライザーからのエアゾル噴霧の形態で送達される。
【0124】
また、全身投与は、経粘膜又は経皮手段によるものであってもよい。経粘膜又は経皮投与のためには、透過されるべきバリヤーに適する浸透剤が調合物において使用される。そのような浸透剤は、一般に当該技術分野において既知であり、たとえば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻内噴霧剤又は坐剤の使用によって達成できる。経皮投与では、活性化合物は、当該技術分野において一般に既知の軟膏剤、膏薬、ゲル剤又はクリーム剤に調合される。
【0125】
また化合物は、坐剤(たとえば、ココアバター及び他のグリセリドのような慣用の坐剤基剤を用いて)又は直腸送達のための保持浣腸剤の形態で調製されてもよい。
【0126】
一実施態様では、活性化合物は、たとえばインプラント及び微小内包送達システムを含む徐放性調合物などの、身体からの急速な排除に対して化合物を保護するであろう担体とともに調製される。生体分解性、生体適合性ポリマー、たとえばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸が使用されてもよい。そのような調合物の製造方法は、当業者には明らかである。また材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品を得ることができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を含有する感染細胞に対して標的化されたリポソームを含む)もまた、製薬学的に許容され得る担体として使用できる。これらは、たとえば、米国特許第4,522,811号に記述されるような当業者に既知の方法に従って製造することができる。
【0127】
投与の容易さ及び用量の均一性のために用量単位形態物において経口又は非経口組成物を調合することは特に得策である。ここで使用されるような用量単位形態物は、処置される被験者のために単位用量として適合された物理的に区別された単位物を指し; 各単位物は、要求される製薬学的担体と合わせて所望される治療効果を生じるように計算された活性化合物の予定量を含有する。本発明の用量単位形態物に関する詳細は、活性化合物の独特な特性及び達成されるべき特定の治療効果、並びに個人の処置のためにそのような活性化合物を調合することの技術上固有の制約によって指示され、そしてそれらに直接依存する。
【0128】
本発明の核酸分子はベクター中に挿入され、そして遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、たとえば、静脈内注射、局所投与(参照、米国特許第5,328,470号)又は定位注射(参照、たとえば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:3054−3057)によって被験者に送達できる。遺伝子治療ベクターの薬剤調製物は、許容できる賦形剤中に遺伝子治療ベクターを含むか、又は遺伝子送達担体が包埋されている徐放性マトリックスを含むことができる。あるいはまた、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞からインタクトに生産できる、たとえばレトロウイルスベクターの場合は、薬剤調製物は、遺伝子送達システムを生産する1種以上の細胞を含むことができる。
【0129】
薬剤組成物は、投与についての指示書とともに、容器、包装物又はディスペンサ中に包含されてもよい。

7. 血管新生を調節する方法
【0130】
血管新生に関連する疾病は、治療剤の開発のための薬物標的として、本発明の脊椎動物CXCR4、LEC3又はEDNRAタンパク質を用いて診断及び処置することができる。血管新生に関連する疾病は、限定されるものではないが、たとえば、固形腫瘍、白血病などの血液を発生起源とする腫瘍、及び腫瘍転移物を含む、血管新生依存性のがん;良性腫瘍、たとえば血管腫、聴覚性神経腫、神経線維腫、トラコーマ及び化膿性肉芽腫;リウマチ様関節炎;乾癬;眼の新脈管形成疾患、たとえば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、皮膚潮紅;オースラー・ウェバー症候群;心筋血管新生;プラーク新生新脈管形成;末梢血管拡張症;血友病性関節;線維性血管腫;創傷肉芽を含む。ある実施態様では、最終目的は被験者における新脈管形成を促進することである。かくして、CXCR4、LEC3若しくはEDNRA又はその生産物は、限定されることなく、創傷治癒を促進し、血管移植手術における内皮形成を促進し、そして心筋梗塞後の血管損傷を治癒するように内皮形成を促進するために使用することができる。
【0131】
本発明は、動物における血管新生を調節する方法を提供する。ある実施態様では、当該方法は血管新生を促進する。ある実施態様では、当該方法は血管新生を抑制する。

A. 血管新生の促進
【0132】
本発明のある実施態様では、血管新生はCXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を増強することによって細胞において促進される。本発明の方法では、CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている核酸配列は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの増強された発現を促進するように細胞に投与される。核酸配列は、CXCR4、LEC3又はEDNRA核酸分子が生物活性を有するCXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしていれば、いかなるCXCR4、LEC3又はEDNRAであってもよい(すなわち、いかなる種から得られてもよい)。CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしているポリヌクレオチドはここに記述されるような発現ベクターの一部であってもよい。細胞及び動物中に核酸を導入する方法は当該技術分野において既知である。CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている使用されてもよいポリヌクレオチドは、限定されるものではないが配列番号1、配列番号7、配列番号32、配列番号3、配列番号9、配列番号5、配列番号11、配列番号19又は配列番号35を含む。CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現の量は、プロモータの強さ、及び適当な系のために選ばれる組織特異的因子によって指導されてもよい。一般に、発現量は血管新生が促進されるようなものでなければならない 。生物学的経路を活性化するためには、ある実施態様ではCXCR4、LEC3又はEDNRA単独で十分であるが、他の実施態様ではCXCR4、LEC3又はEDNRAの2つ以上が用いられる。したがって、本発明は、また、血管新生の促進のためのCXCR4、LEC3及びEDNRAの2つ以上の同時発現を備える。同時発現は、当該技術分野において既知の任意の手段によって達成することができる。2つのポリペプチドをコードしている核酸は、同じ発現ベクター中に組み込まれてもよく、別々の発現ベクターにおいて存在してもよい。細胞へのベクターのトランスフェクションは同時でも連続であってもよい。2種のサブユニットの発現は、一方又は両方のポリペプチドの制御発現を可能にするために、同じ調節要素又は異なる調節要素の制御下に存在してもよい。また、いずれか又は両ポリペプチドの発現は構成的であるように作成されてもよい。
B. 抗血管新生
【0133】
本発明のある実施態様では、血管新生は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を減少させるか、又はCXCR4、LEC3又はEDNRAの機能を抑制することによって細胞において抑制される。血管新生は、CXCR4、LEC3又はEDNRAに対して標的化される化合物、たとえば天然又は合成の低分子を含む化学化合物、アンチセンスCXCR4、LEC3又はEDNRA分子又はCXCR4、LEC3又はEDNRAに対する抗体の使用をとおして抑制されてもよい。血管新生を抑制するポリヌクレオチドは、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリヌクレオチドに結合し、そしてCXCR4、LEC3又はEDNRAの発現又はCXCR4、LEC3又はEDNRARNAの正確なスプライシングを抑制するそれらである。CXCR4、LEC3又はEDNRA発現を抑制するアンチセンス分子の例は、限定するものでないが、5’−cgcccgatctcatctacagaaagag−3’(配列番号24)(ゼブラフィッシュ遺伝子に対するMO−LEC3(スプライシング抑制のためのアンチセンス));5’−taagccatctctaaaagacttctcc−3’(配列番号25)(ゼブラフィッシュ遺伝子に対するMO−CXCR4a(翻訳ブロッキングのためのアンチセンス));5’−gccattgcagaacactggccgctct−3’(配列番号26)(ゼブラフィッシュ遺伝子に対するMO−EDNRA(翻訳ブロッキングのためのアンチセンス))、を含む。
【0134】
CXCR4、LEC3又はEDNRAの機能を抑制するために投与されてもよい化合物は、天然又は合成の低分子を含む化学化合物、特異的にCXCR4、LEC3又はEDNRAを結合するポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む。被験者に投与された場合、抗体が被験者の細胞によって産生されるCXCR4、LEC3又はEDNRAを特異的結合するならば、抗体はいかなる既知のCXCR4、LEC3又はEDNRAを結合する抗体であってもよい。
C. 抗血管新生併用療法
【0135】
本発明の他の実施態様では、血管新生は、血管内皮成長因子(VEGF)の発現及び/又は機能の調節と組み合わせて、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現及び/又は機能を操作することによって調節される。ある実施態様では、血管新生は、VEGFをコードしている核酸と組み合わせて、CXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている核酸を投与することによって刺激される。CXCR4、LEC3又はEDNRA及びVEGF核酸は、単一の発現ベクター又は別々の発現ベクターにおいて存在してもよい。VEGF及びCXCR4、LEC3又はEDNRA核酸は同時又は別々に投与されてもよい。他の実施態様では、血管新生は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現又は機能を低下させる化合物及びVEGFの発現又は機能を低下させる化合物を投与することによって抑制される。ある実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を低下させる化合物はアンチセンス・オリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現を低下させる化合物はCXCR4、LEC3又はEDNRAに対向されるモルホリノである。ある実施態様では、VEGFの発現を低下させる化合物はアンチセンス・オリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、VEGFの発現を低下させる化合物はVEGFに対向されるモルホリノである。ある実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAの機能を抑制する化合物は抗CXCR4、抗LEC3又は抗EDNRAポリクローナル又はモノクローナル抗体である。ある実施態様では、VEGFの機能を抑制する化合物は抗VEGFポリクローナル又はモノクローナル抗体である。参照、たとえば、Ferrara,N.,Hillan,K.J.&Novotny,W.(2005)“Bevacizumab(Avastin),a humanized anti−VEGF monoclonal antibody for cancer therapy”Biochem.Biophys.Res.Cornmun.333:328−335。
【0136】
VEGFはクローン化されかつ配列決定されており、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C及びVEGF−Dを含む多くの異なるVEGFが既知である。(VEGF生物学のレビューについては、Tammela,T.,Enholm,B.,Alitalo,K.,Paavonen,K.(2005)“The biology of vascular endothelial growth factors”Cardiovasc.Res.65:550−563を参照。)生物学的に活性なVEGFを生産するいかなるVEGFをコードしている核酸が使用されてもよい。たとえば、限定されるものではないが、使用されてもよいVEGFをコードしている核酸は、ヒトVEGF(配列番号59)、(タンパク質:配列番号60)、ヒトVEGF−B(配列番号61)(タンパク質:配列番号62)、ヒトVEGF−C(配列番号69)(タンパク質:配列番号70)、ヒトVEGF−D(配列番号71)(タンパク質:配列番号72);マウスVEGF−A(配列番号65)(タンパク質:配列番号66)、マウスVEGF−B(配列番号63)(タンパク質:配列番号64)、マウスVEGF−C(配列番号73)(タンパク質:配列番号74)、マウスVEGF−D(配列番号75)(タンパク質:配列番号76);ゼブラフィッシュVEGF(配列番号67)(タンパク質:配列番号68)などのVEGFコーディング核酸を含む。
【0137】
ある実施態様では、VEGFの発現及び/又は機能はアンチセンス配列を投与することによって抑制される。アンチセンス配列は、CXCR4、LEC3又はEDNRAアンチセンス配列について記述された一般的性質を有する。特定の実施態様では、たとえば、アンチセンス配列は、配列番号77及び配列番号79配列標的ゼブラフィッシュVEGFの配列を有する。ヒトVEGF配列は、受入番号:NM_003376,Unigene cluster:Hs.73793(Ensembl gene ID:ENSG00000112715)の下で見い出される。
【0138】
ある実施態様では、VEGF機能は、抗VEGFポリクローナル又はモノクローナル抗体の投与によって抑制される。抗VEGFモノクローナル抗体の例は、AVASTINTIN(商標)(Genentech)及びBioCarta Catalog Nos.09−06−16460及び09−06−11335を含む。VEGFシグナル伝達経路はまた、VEGFシグナル伝達を破壊する当該技術分野において既知のいかなるチロシンキナーゼ阻害剤、又は当該技術分野において既知のVEGFについてのいかなる他の種類の阻害剤によって抑制されてもよい。これらの阻害剤は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現又は活性を調節するためのここに記述される戦略と組み合わせて使用されてもよい。
【0139】
CXCR4、LEC3又はEDNRA及びVEGFの機能を抑制するための実施態様では、機能又は生物学的活性を抑制するために使用される化合物は、低分子化合物、ポリヌクレオチド(たとえば、アンチセンス及びモルホリノ、リボザイムなど);VEGF及びCXCR4、LEC3又はEDNRAに対する抗体;CXCR4、LEC3又はEDNRAと他の受容体(上流の受容体)、Gタンパク質パートナー及び下流のエフェクタとの相互作用をブロックする細胞透過性ペプチド;及びこれらのアプローチの組合せを含む。

8. 血管新生を促進し又は抑制する化合物のスクリーニング:
【0140】
本発明のその他の態様は、CXCR4、LEC3若しくはEDNRA又はCXCR4、LEC3又はEDNRAをコードしている核酸分子を試験化合物と接触させ、試験化合物がCXCR4、LEC3若しくはEDNRA又はCXCR4、LEC3若しくはEDNRAをコードしている核酸分子を結合するか否かを決定することを含んでなる、CXCR4、LEC3若しくはEDNRA又はCXCR4、LEC3若しくはEDNRAをコードしている核酸分子の何れかに結合する化合物を同定する方法に関する。
【0141】
結合は、限定されるものではないがゲル−シフトアッセイ、ウエスタン・ブロット、放射能標識競合アッセイ、ファージに基づく発現クローニング、クロマトグラフィーによる同時分画、共沈、架橋、相互作用トラップ(trap)/2−ハイブリッド解析、サウスウエスタン解析、ELISAなどを含む、当該技術分野において既知のいかなる結合アッセイによっても決定することができ、これらは、たとえば、Current Protocols In Molecular Biology,1999,John Wiley&Sons,N.Y.に記述されている。そのような試験において使用されるCXCR4、LEC3若しくはEDNRAポリペプチド又はポリヌクレオチドは、溶液中で遊離であっても、固体支持体に接着されていても、細胞内に局在していても、細胞画分と会合されていてもよい。本発明の一実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAに対して適当な結合親和力を有する化合物の高処理能スクリーニング(「HTS」)が用いられる。多数の試験化合物が固定されたCXCR4、LEC3又はEDNRAに曝露されてもよい。結合されたCXCR4、LEC3又はEDNRAが、次に当該技術分野において周知の方法によって検出される。
【0142】
標的タンパク質のリガンドを同定するその他の方法は、Wieboldt et al.,Anal.Chem.,69:1683−1691(1997)において記述されている。この技術は、標的タンパク質への結合について溶液相において同時に20〜30の作用物の組み合わせライブラリをスクリーニングする。フィルタ上に保持されている標的タンパク質に特異的に結合する作用物は、続いて標的タンパク質から遊離され、HPLC及び空気圧によるエレクトロスプレー(イオンスプレー)イオン化質量分光法によって分析される。この手法は、標的タンパク質に対する最大親和力をもつライブラリ構成成分を選択し、かつ低分子ライブラリのために特に有用である。
【0143】
本発明の他の実施態様は、抗体に基づく競合スクリーニングアッセイの使用を含む。一実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAに結合する特異的な中和抗体が、CXCR4、LEC3又はEDNRAへの結合について試験化合物と特異的に競合する。この方式では、抗体は、CXCR4、LEC3又はEDNRAとともに1種以上の抗原決定基を共有するいずれかのペプチドの存在を決定するために使用することができる。そのような結合の研究は、標識された抗体及び/又は標識された試験化合物を使用してもよい。そのような手法の例は、たとえば、Lin,A.H.et al.(1997)Antimicrobial Agents and Chemotherapy41(10):2127−2131において見出すことができる。
【0144】
本発明のその他の態様は、CXCR4、LEC3又はEDNRAの生物学的活性を調節する(すなわち、増大させ又は減少させる)化合物を同定する方法に対向される。そのような方法は、試験化合物とCXCR4、LEC3又はEDNRAを接触させ、化合物が、試験化合物の不在下でのCXCR4、LEC3又はEDNRAの活性に比較して、ポジティブ(アゴニスト)又はネガティブ(アンタゴニスト)な方式でCXCR4、LEC3又はEDNRAの生物学的活性に影響を与えるか否かを決定することを含む。
【0145】
ある実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAの発現又は生物学的活性を調節する化合物は、試験化合物が、CXCR4、LEC3又はEDNRAポリペプチドを発現するか又はCXCR4、LEC3又はEDNRAポリヌクレオチドを有する、細胞とともにインキュベートされ、そして試験化合物がCXCR4、LEC3又はEDNRA発現又は生物学的活性に及ぼす効果を決定する、インビトロの細胞アッセイにおいて同定されてもよい。CXCR4、LEC3又はEDNRA活性のモジュレータは、血管新生を伴う疾病の処置において治療学的に有用であろう。インビトロで生物学的活性のCXCR4、LEC3又はEDNRA発現を調節するとして同定された化合物は、関連する有効な活性を確認するためにインビボにおいてさらに試験されてもよい。
【0146】
本発明によって考慮される試験化合物は、天然生産物及び/又は組合せ化学合成からの合成生成物を含む、化学ライブラリからの化合物を含む。そのような化合物は、ランダムペプチド、オリゴヌクレオチド又は有機分子を含んでもよい。
【0147】
ある実施態様では、CXCR4、LEC3又はEDNRAプロモータに指導されるGFPトランスジーンを担持しているトランスジェニックゼブラフィッシュは、化合物、低分子又は遺伝子生産物が、GFPの発現の変更をもたらす、CXCR4、LEC3又はEDNRA遺伝子のプロモータに及ぼす調節活性を有するか否かを検出するために使用される。活性の増大又は減少は、生存ゼブラフィッシュ内で生成された蛍光シグナルによって検出できるので、その結果、生物学的に活性のある薬物、低分子及び遺伝子生産物をスクリーニングするためのインビボモデルを提供する。
【0148】
本スクリーニング法によって同定された化合物は、単独で、又はVEGFを促進し若しくは抑制する化合物と組み合わせて、血管新生を促進し又は抑制するために本発明の方法において使用されてもよい。
【0149】
次に示す実施例は、本発明を具体的に説明するためにのみあり、いかなる点においても本発明を限定するものと考えてはならない。

実施例
実施例1
【0150】
保存魚:ダニオ・レリオ(Danio rerio):Florida野生種(Lancaster,Pennsylvania)及びLongfin種(Scientific Hatcheries,Huntington Beach,California)。
【0151】
ゼブラフィッシュのアンチセンスCXCR4、LEC3及びEDNRAモルホリノ・オリゴヌクレオチド(Gene Tools,LLC,Philomath,Oregonにて合成)は、次に示す配列を有した:CXCR4翻訳抑制アンチセンス・モルホリノ:5’−taagccatctctaaaagacttctcc−3’(配列番号25);LEC3スプライシング・アンチセンス・モルホリノ:5’−cgcccgatctcatctacagaaagag−3’(配列番号24);EDNRA翻訳抑制アンチセンス・モルホリノ:5’−gccattgcagaacactggccgctct−3’(配列番号26).
【0152】
LEC3については、スプライス部位にわたるヒトLec3タンパク質の部分は、以下に示されるとおり同定された:

ヒトLec3(ないしLatrophilin 3と呼ばれる)タンパク質、NP_056051、1240 aa(配列番号4(太字体アミノ酸及びアンダーラインを引かれたアミノ酸はゼブラフィッシュ・エキソンに対応する隣接するエキソンである)>gi、|14149677|ref|NP_056051.1|Lec3又はlatrophilin3[ヒト]
【0153】
【表1】

【0154】
ヒトLec3の中のスプライス部位にわたるタンパク質の部分は、ゼブラフィッシュLec3配列の同一の部分と比較され、高い相同を有していることが判明した(以下では保存的置換は「+」として示される):
【0155】
【表2】

【0156】
ゼブラフィッシュLec3の相補的DNA(配列番号29)及びアミノ酸(配列番号10)配列のアライメントは、イントロン、エキソン及びスプライスされた部分を示す:
【0157】
【表3】

【0158】
スプライス抑制モルホリノは、2つのエキソンのスプライシングを抑制するために設計された。以下では、1つのエキソン(太字)と隣のエキソン(アンダーライン)とを示すゼブラフィッシュLec3ゲノムDNA配列が示されている。モルホリノ・ターゲット化配列の配列は、大文字イタリック体で示されている。
【0159】
【表4】

【0160】
したがって、ターゲットとされた領域についてのモルホリノは、イタリック体で示された配列の逆相補、すなわち5’−cgcccgatctcatctacagaaagag−3’(配列番号24)である。
【0161】
CXCR4翻訳抑制モルホリノについては、翻訳開始部位にわたるようにモルホリノを設計した。モルホリノのためのターゲットとされた配列を、太字体で下記に示す(開始メチオニンは、大文字で示されている):

ゼブラフィッシュCXCR4a(配列番号32)ポリヌクレオチド(NM_131882)及び翻訳(配列番号33)(1..56番目の5’UTR;57−1139番目の読取枠、開始コドンは大文字、太字体=モルホリノ・ターゲット化配列):
【0162】
【表5】

【0163】
したがって、ターゲットとされた領域のためのモルホリノは、太字体で示された配列の逆相補、すなわち5’−taagccatctctaaaagacttctcc−3’(配列番号25)である。
【0164】
EDNRA翻訳抑制モルホリノについては、翻訳開始部位にわたるようにモルホリノを設計した。モルホリノのためのターゲットとされた配列は、太字体で下記に示される(開始メチオニンは、大文字で示されている):

ゼブラフィッシュEDNRAポリヌクレオチド(配列番号35)(acc.#CK141648)及び翻訳産物(配列番号12):(1..242番目の5’UTR;243−677番目の読取枠、開始コドンは大文字、太字体=モルホリノにターゲットとされた配列)
【0165】
【表6】

【0166】
したがって、ターゲットとされた領域のためのモルホリノは、太字体で示される配列の逆相補、すなわち5’_gccattgcagaacactggccgctct−3’(配列番号26)である。

mRNA及びモルホリノ・アンチセンス・オリゴのミクロ注入:
【0167】
キャップ構造のセンスRNAは、SP6RNAポリメラーゼ及びmMESSAGEmMACHINE系(Ambion)を用いて合成された。mRNA又はモルホリノ・アンチセンス・オリゴのミクロ注入では、ゼブラフィッシュ胚は、早期1細胞期の卵黄中に0.25〜0.5nlを注射され、続いて、28.5℃で0.3xDanieau’s培地においてインキュベートされた。胚は、それらが蕾状期又は受精後24時間に達するまで上記条件下で維持され、次いで、RNA調製のために回収されるか、又はホールマウントin situハイブリダイゼーションのために4%パラホルムアルデヒドにおいて固定された。

In situハイブリダイゼーション:
【0168】
flkインサイチュー構築物は、Dr.Brant Weinstein(Lawson,N.D.et al.(2003)Genes Dev.17(11):1346− 1351)によって親切に提供された。in situハイブリダイゼーション法は、Leung,T.et al.(2003)Development 130(6):3639−3649から改変された。簡単に言えば、胚が、68℃で一夜ハイブリダイズされ、次いで66%Hyb/33%2XSSCにより30分間洗浄され、次いで33%Hyb/66%2XSSCによって68℃で30分間、次いで2XSSCによって68℃で15分間、続いて0.2XSSCによって68℃で1時間洗浄された。ハイブリダイズされたプローブは、NBT/BCIP染色(Roche)によって検出された。カラー染色後、胚は100%エタノール中で1時間洗浄された。

ゼブラフィッシュlec3、cxcr4及びednra遺伝子の同定
【0169】
第一歩として、我々は、ゼブラフィッシュ胚の成長中の血管系において特異的に発現されたlec3、cxcr4及びednraを同定しようと努めた。ゼブラフィッシュ配列データベースをプローブするためにヒト及び/又はマウスのタンパク質配列を用いて、我々はゼブラフィッシュlec3、cxcr4及びednra遺伝子を同定した(配列番号は、それぞれ、9、7及び11)。ゼブラフィッシュlec3、cxcr4及びednra遺伝子の発現パターンは、胚発生の過程で非常に動的であった(図9から図11)。lec3は1dpfゼブラフィッシュ胚の背動脈に発現した。そこは、体節間血管が受胎後24時間及び28時間時に血管新生の崩出によって形成される場所である(図12)。
【0170】
同様に、cxcr4aが1dpfの発生中の血管に発現した。cxcr4aは、受胎後28時間ゼブラフィッシュ胚の背動脈、体節間血管及び頭蓋血管に発現した(図13)。
【0171】
ednraの発現は、軸血管系及び発生中の血管において見られた。lec3のように、ednraは、受胎後24時間及び28時間ゼブラフィッシュ胚において体節間血管が血管新生の崩出によって形成される場所である背動脈に発現した(図14)。

ゼブラフィッシュlec3、cxcr4およびednraの標的化ノックダウンは血管新生を抑制する
【0172】
血管新生におけるlec3、cxcr4及び/又はednraが担うであろう役割を明らかにするために、我々はゼブラフィッシュ胚においてモルホリノアンチセンス・ノックダウン法を用いた(Nasevicius A.and SC Ekker(2000)Nat.Genet.26:216−220)。ゼブラフィッシュ胚に注入されると、血管内皮細胞の分子マーカーによって明らかにされるように、モルホリノは血管新生の欠損を誘発した(以下を参照)。
【0173】
これらの体節間血管は、背側大動脈及び主静脈からの血管新生崩出によって発達し、そのプロセスは腫瘍の血管新生に非常に類似する(Bergers G,and LE Benjamin(2003)Nature Rev,Cancer3:401−410)ので、体節間血管は特に興味深い。

lec3、cxcr4及びednraノックダウン表現型の分子解析
【0174】
lec3、cxcr4及びednraノックダウン胚における血管新生欠損の性質を試験するために、我々は、VEGFR−2受容体(Flk−1/KDR)をコードしている内皮の特異的マーカーflk1を使用して、発生する血管系を可視化した(Liao W et al.(1997)Development124:381−389)。1dpfの対照胚のin situハイブリダイゼーションによって示されるように、flk1転写物は、頭蓋血管、軸血管系(背側大動脈及び主静脈を含む)において、そしてより重要には、背側大動脈から発芽する体節間血管において豊富に発現した(図8)。同期におけるlec3、cxcr4及びednraノックダウン胚のin situハイブリダイゼーション解析は、背側大動脈及び主静脈に沿ってflk1転写物の発現を表し、これは、軸血管系に沿った内皮細胞分化が欠損してなかったことを示している。しかしながら、lec3、cxcr4及びednraノックダウン胚は、軸血管系から発芽する体節間血管の非常に低下した染色を示したので(図12乃至図14)、この欠損が血管新生プロセスに特異的であったことを示唆している。

cxcr4、lec3及びednraはvegf経路と発生的に相互作用する
【0175】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、胚及び腫瘍の血管新生のための主要な媒介物質である(Tammela et al.,2005;Ferrara et al.,2005)。lec3、cxcr4及びednraノックダウン表現型は、vegfノックダウン胚のそれと驚くべき類似性を共有しており(Nasevicius A.et al.(2000)Yeast17:294−301;Childs S.et al.(2002)Development129:973−982)、これは、それらが、共通の又は収斂する経路において機能するかもしれないことを示唆する。ゼブラフィッシュ・モデルを用いて、我々は、GPCRがvegfシグナリングと相互作用し、GPCRとVEGFの両方が血管新生における共通の又は収斂する経路において機能する場合があることを発見した。ここで、我々は、ホールアニマルモデルにおける血管新生プロセスを規制するcxcr4a依存経路及びvegf依存経路間の新規な相乗的相互作用を実証するために、ある実例を提供する(図15)。いずれのモルホリノ単独の有効以下の用量では、血管新生に及ぼす影響はなかった(図15E−F、vegfノックダウン;図15C−D、cxcr4aノックダウン)。しかしながら、同じ用量におけるvegf及びcxcr4aの両方の同時抑制は、ゼブラフィッシュ・モデルにおける血管新生崩出のプロセスを有意に除去した(図15G−H)。我々の所見は、病的な血管新生を相乗的にブロックするためにこのGPCR依存経路とVEGF依存経路を同時にターゲットとすることについての新規の契機を提供し、これは癌と戦うためにより安全でより効果的な治療のレジメンへと導くであろう。

実施例2
網膜症のための抗血管新生療法
【0176】
最近、酸素に誘発された網膜症のマウス・モデルが、ヒト疾患、末熟児網膜症(ROP:retinopathy of prematurity)、未熟児に影響を与える網膜の、新たに導管化する疾患の要点を再現するために用いられた。我々の研究室において開発された新規な抗血管新生の化合物をテストするためにこのマウス・モデルを使用することは、他の種に比べていくつかの重要な利点を提供する:(1)酸素に誘発された網膜症のマウス・モデルは、網膜における血管の発達異常へと導く、非常に有効で高度に再現可能な方法であり;(2)網膜は眼底検査によって異常な血管の成長をモニタリングすることができるのでこのプロセスを調べるための優れた器官であり、また、網膜の血管系全体は平らに設けられた網膜の組織標本において観察することができ;さらには、(3)網膜に対する限定的な送達は、これらの新規な抗血管新生の化合物の有効性が評価されることを可能にし、同時に、網膜に対するこれらの化合物の任意の潜在的毒性を制限することができる。
酸素誘発された網膜症のマウス・モデル
【0177】
このモデルは早熟のヒト状態網膜症のための範例として役立つ。生後P7日に、最大2までの、種雌と彼女らの一腹子をシール容器内の動物容器に入れ、酸素と圧縮空気を混合して最終酸素濃度を75%±2%にして換気した(ProOx110System,Biospherix,Ltd)。このように過剰酸素に対して晒すことで、網膜における血管の成長が阻止される。生後P12日に、その動物たちを室内気に戻した。室内気に戻すことで、相対的に低酸素の状態に起因して、網膜において新規の血管の成長(新血管新生)が誘発される。網膜における酸素誘発された変化を観察するために、これらの動物は酸素への露出に先立って、P7でナトリウム・ペントバルビタールの致死量(120mg/kg)注射によって葬られ;P12で、直ちに酸素露出が続き;そしてP17で、これが最大の網膜血管新生の時間である。一方の一腹子からの目は網膜における異常な血管成長を確認するために組織学的解析のために処理され、他方で、もう一方の一腹子からの目は網膜における形質発現変化を同定するためにRNAとタンパク質の分析のために処理された。この試験を、結果の再現性を評価するために3度繰り返した。
蛍光性ホスホラミダイト・モルホリノ・オリゴマー(PMO)の吸収
【0178】
網膜細胞への、蛍光性のラベルが付けられたPMOだけの、あるいはペプチドと結合したPMO(PMO−pep)の吸収について、比較を行った。生後P12日に、新生児のハツカネズミの一方の目にPMOの眼内注射を単独で、あるいは反対側の目にPMO−pepをした。注射の3時間後に、ナトリウム・ペントバルビタールの致死量(120mg/kg)の注射によって動物を安楽死させた。蛍光顕微鏡法によって注入された物質の位置を視覚化するために目の凍結切片を準備した。この試験を、結果の再現性を評価するために3度繰り返した。この研究の結果は、ペプチド対合がPMOのみと比較して、送達利点を与えるかどうかを示すであろう。
PMOとPMO対合の有効性
【0179】
lec3、ednra又はcxcr4発現のPMOの及びPMOpepの依存抑制の有効性を評価して酸素誘発された網膜症のマウス・モデルにおける網膜血管新生を抑えるために、研究を行った。上述したように、新生児のハツカネズミを75%の酸素に対して5日間露出することによって、網膜症を創出することができる。酸素露出が終了する日である生後P12日に、両側性の網膜症を備えたこれらのハツカネズミに、lec3、ednra又はcxcr4を標的とするPMO又はPMO−pepの眼内注射を一方の目にする。眼内注射自体が新血管新生をある程度抑制することができるので、これらのハツカネズミに対してさらに6塩基ミスマッチ、対照PMO又はPMO−pepの眼内注射を反対側の目にする。最大の新血管新生の期間に対応する生後P17日では、これらのハツカネズミは安楽死させられ、彼らの目は組織学的解析のために処理される。新血管新生の、乏血の及び正常血管系の領域は処置を知らされていなかった観察者によって定量される。処置の有効性は、治療された目と対照目における新血管新生の領域間の差分として測定されるであろう。lec3、ednra又はcxcr4の標的化ノックダウンが生理学的な血管新生を妨げずに、病的な新血管新生を抑制することができるという発見は、これらの遺伝子を様々な血管関連の網膜症のための潜在的な治療上の標的であると同定するであろう。
vegfを備えた併用療法
【0180】
網膜血管新生を抑えるために、vegfとともにgng2、lec3、ednra若しくはcxcr4のPMO依存の抑制の相対的な有効性、又はgng2、lec3、ednra若しくはcxcr4/vegf発現を比較するための研究を行った。これらの試験は、上述されたように実行されよう。gng2、lec3、ednra又はcxcr4の標的化ノックダウンがvegfの対応するノックダウンと同じくらいに、あるいはそれ以上に効果的であるという発見は、薬剤開発のための別の潜在的な標的を同定するであろう。すべての網膜症がvegf経路に対して同様の依存性を示すとは限らないので、これは重要となる。したがって、薬剤開発のための追加的な標的が同定されることで、様々な患者及び網膜障害に対する治療上の選択肢を拡張するであろう。同様に、vegfとともにlec3、ednra又はcxcr4を同時にノックダウンすることは何れか一方の処置だけに比して大きな有効性と低い副作用を提供するという発見は、処置オプションの最適化を可能にするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、CXCR4(配列番号13)の膜構造を示す。凡例:O、アミノ酸外側薄膜;M、膜貫通性アミノ酸;i、アミノ酸内側薄膜隔室。
【図2】図2は、ヒト(配列番号15)とゼブラフィッシュ(配列番号14)のCXCR4間の保持されたアミノ酸の対比を示す。
【図3A】図3A及び図3Bは、ヒトのLEC3の膜構造を示す(配列番号16)。凡例:O、アミノ酸外側薄膜;M、膜貫通性アミノ酸;i、アミノ酸内側薄膜隔室。
【図3B】図3A及び図3Bは、ヒトのLEC3の膜構造を示す(配列番号16)。凡例:O、アミノ酸外側薄膜;M、膜貫通性アミノ酸;i、アミノ酸内側薄膜隔室。
【図4】図4は、ヒト(配列番号18)とゼブラフィッシュ(配列番号17)のLEC3間の保持されたアミノ酸の対比を示す。
【図5】図5は、ゼブラフィッシュEDNRAの核酸(配列番号19)及び推定されたアミノ酸(配列番号20)の配列のアライメントを示す。
【図6】図6は、ヒトEDNRAの膜構造を示す(配列番号21)。凡例:O、アミノ酸外側薄膜;M、膜貫通性アミノ酸;i、アミノ酸内側薄膜隔室。
【図7】図7は、ヒト(配列番号23)とゼブラフィッシュ(配列番号22)のEDNRA間の保持されたアミノ酸の対比を示す。
【図8】図8は、成長途中の血管におけるCXCR4の発現及びそのイセンシャルな機能を示す。
【図9】図9は、受胎1日後(dpf:day−postfertilization)のゼブラフィッシュ胚の背動脈におけるlectomedin−3(lec3)の発現を示す。ゼブラフィッシュlec3に対してin situハイブリダイゼーション及びRNAプローブを用いることにより、我々は、受胎後24時間及び28時間(hpf:hour−postfertilization)ゼブラフィッシュ胚において血管新生の崩出により体節間血管が形成される背動脈にlec3が発現することを明らかにする(スケールバーは100umである)。
【図10】図10は、1dpfでの成長途中の血管におけるC−X−Cケモカイン受容体型4(cxcr4a)の発現を示す。ゼブラフィッシュcxcr4aに対してin situハイブリダイゼーション及びRNAプローブを用いることにより、我々は、受胎後28時間ゼブラフィッシュ胚における背動脈、体節間血管及び頭蓋血管にcxcr4aが発現することを明らかにする。凡例:d.a、背動脈;c.v、頭蓋血管;s.v、萌出血管。(スケール・バーは100umである)。
【図11】図11は、軸血管系及び成長中の血管におけるエンドセリン−1受容体(ednra)の発現を示す。ゼブラフィッシュednraに対してin situハイブリダイゼーション及びRNAプローブを用いることにより、我々は、受胎後24時間及び28時間ゼブラフィッシュ胚において血管新生の崩出により体節間血管が形成される背動脈にednraが発現することを明らかにする。(スケール・バーは100umである)。凡例:c.v、頭蓋血管;a.v、軸血管系。
【図12】図12は、flk−1マーカーを用いて、ターゲットとされたlec3のノックダウンが体節間血管の血管新生の崩出を乱すことを示す。ゼブラフィッシュ胚においてモルホリノ・アンチセンス・オリゴを用い、ターゲットとされたlec3のノックダウンは、血管内皮特有マーカーflk−1によって明らかにされるとおり体節間血管の血管新生の崩出を乱す。凡例:IS、体節間血管。(スケール・バーは100umである)。
【図13】図13は、ターゲットとされたcxcr4aのノックダウンが、萌出する血管におけるflk−1発現を特異的にブロックすることを示す。ゼブラフィッシュ胚においてモルホリノ・アンチセンス・オリゴを用い、ターゲットとされたcxcr4aのノックダウンは、血管内皮特有マーカーflk−1によって明らかにされるとおり体節間血管の血管新生の崩出を乱す。凡例:IS、体節間血管。(スケール・バーは100umである)。
【図14】図14は、flk−1マーカーを用いて、ターゲットとされたednraのノックダウンが体節間血管の血管新生の崩出を乱すことを示す。ゼブラフィッシュ胚においてモルホリノ・アンチセンス・オリゴを用い、ターゲットとされたednraのノックダウンは、血管内皮特有のマーカーflk−1によって明らかにされるとおり体節間血管の血管新生の崩出を乱す。凡例:IS、体節間血管。(スケール・バーは100umである)。
【図15】図15は、flk−1マーカーを用いて、血管新生のためのCXCR4及びVEGF依存経路による相乗的抑制を示す。A及びB:野生型対照(B、高倍率);C及びD:有効量以下の投与でのターゲットとされたcxcr4aのノックダウンは(D、高倍率)、体節間血管(IS)の萌出に対して何らの効果を示さなかった;E及びF:有効量以下の投与でのターゲットとされたvegfのノックダウンは(F、高倍率)、体節間血管(IS)の萌出に対して何らの効果を示さなかった;G及びH:ゼブラフィッシュ胚においてモルホリノ・アンチセンス・オリゴによりcxcr4a及びvegfの両方を共同ターゲットとすることは(H、高倍率)、血管内皮特有マーカーflk−1によって明らかにされるとおり体節間血管の血管新生の崩出に対して相乗的な抑制を示した。スケール・バーは100umである。
【図16】図16は、フェニルアラニンがグリシン(G)又はアスパラギン(N)と置き換えられる場合、優性阻害効果を示すハムスター・アドレナリン受容体(α1B−AR)に同族の種々のGPCR領域の配列対比を示す(Chen S.et al.(2000)EMBO J.19(16):4265−4271)。示されているのは、次のものからの同属領域である;ヒトCXCR4(配列番号80);ヒトLEC3(配列番号81);ヒトEDNRA(配列番号82);ハムスターα1B−AR(配列番号83);ハムスターα2C2−AR(配列番号84);ハムスターβ2−AR(配列番号85);ハムスターH1(配列番号86);ハムスターD2(配列番号87);ハムスターM3(配列番号88);ハムスターAT1(配列番号89);ハムスター・ロドプシン(配列番号90)。保持されたフェニルアラニン(ハムスターα1B−ARのPhe303)が箱に入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択されたポリヌクレオチドを備える単離された発現ベクターを動物に対して投与することを備える動物における血管新生を促進する方法:
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11、並びに、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列。
【請求項2】
配列番号10のアミノ酸配列を備えるポリペプチドに高い親和力で特異的に結合する抗体。
【請求項3】
配列番号4のアミノ酸配列を備えるポリペプチドの細胞外部分に高い親和力で特異的に結合する抗体。
【請求項4】
前記抗体はモノクローナルである請求項2の抗体。
【請求項5】
前記抗体はポリクロナールである請求項2の抗体。
【請求項6】
前記抗体はモノクローナルである請求項3の抗体。
【請求項7】
前記抗体はポリクロナールである請求項3の抗体。
【請求項8】
ゼブラフィッシュLEC3、CXCR4又はEDNRAの全部又は一部を生産する方法であって、
発現制御配列に操作可能に結合された配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11の配列を備える発現ベクターを備える宿主細胞を、ゼブラフィッシュLEC3、CXCR4又はEDNRAの全部又は一部の発現に適した培養条件下で培養し、
前記LEC3、CXCR4又はEDNRAの全部又は一部を単離すること、
を備える方法。
【請求項9】
LEC3、CXCR4及びEDNRAの全部又は一部をコードする核酸配列を備える単離されたポリヌクレオチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを備える治療用組成物。
【請求項10】
前記核酸配列は配列番号4又は配列番号10のポリペプチドをコードする請求項9の治療用組成物。
【請求項11】
請求項3の抗体と薬学的に受容可能なキャリアとを備える治療用組成物。
【請求項12】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択された少なくとも1つのアミノ酸配列を備えるポリペプチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを備える治療用組成物。
【請求項13】
血管新生関連に疾病を治療する方法であって、当該治療を必要とする患者に対し、LEC3の発現を抑制するポリヌクレオチドを血管新生を抑制するのに十分な量だけ投与することを備える方法。
【請求項14】
該血管新生関連の疾病は、血管新生依存癌;良性腫瘍;慢性関節リウマチ;乾癬;視覚の血管新生疾病;オースラー・ウェバー症候群;心筋の血管新生;溶菌はん新血管新生;毛細管拡張症;血友病性関節症;線維血管腫;傷肉芽形成;腸管癒着、アテローム性動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、猫ひっかき病及びヘリコバクターピロリ潰瘍から成る群から選択される請求項13の方法。
【請求項15】
該血管新生関連の疾病は、血管新生依存癌である請求項13の方法。
【請求項16】
前記血管新生関連の疾病は血管新生依存の腫瘍であって、前記ポリヌクレオチドは腫瘍退縮を引き起こすのに十分な量投与される請求項13の方法。
【請求項17】
必要とする動物の血管新生を促進する方法であって、動物に対し、LEC3、CXCR4及びEDNRAポリペプチドの全部又は一部をコードするポリヌクレオチドを有効量投与することを備える方法。
【請求項18】
前記LEC3、CXCR4又はEDNRAポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12から成る群から選択されたアミノ酸配列を備える請求項17の方法。
【請求項19】
前記LEC3ポリペプチドは、配列番号4又は配列番号10のアミノ酸配列を備える請求項17の方法。
【請求項20】
血管新生関連の疾病を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に対し、lec3、cxcr4及びednraの全部又は一部の発現を抑制する第1のポリヌクレオチドと、vegfの発現を抑制する第2のポリヌクレオチドとを投与することを備え、前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドは血管新生を抑制するのに十分なだけ提供される方法。
【請求項21】
前記第1のポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11及びこれらの組合せから成る群から選択された核酸配列を備える請求項20の方法。
【請求項22】
前記第2のポリヌクレオチドは、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号71、配列番号65、配列番号63、配列番号73、配列番号75、配列番号67及びこれらの組合せから成る群から選択された核酸配列を備える請求項20の方法。
【請求項23】
該血管新生関連の疾病は、血管新生依存癌である請求項20の方法。
【請求項24】
血管新生依存腫瘍の患者を治療する方法であって、当該治療を必要とする患者に対し、lec3、cxcr4及びednraの全部又は一部の発現又は機能を抑制する第1の化合物と、vegfの発現又は機能を抑制する第2の化合物とを投与することを備え、前記第1の化合物及び前記第2の化合物は腫瘍退縮を引き起こすのに十分な量だけ提供される方法。
【請求項25】
必要とする動物の血管新生を促進する方法であって、動物に対し、LEC3、CXCR4及びEDNRAポリペプチドの全部又は一部をコードする有効量の第1のポリヌクレオチドと、VEGFポリペプチドをコードする有効量の第2のポリヌクレオチドとを投与することを備える方法。
【請求項26】
前記LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAポリペプチドは、配列番号6、配列番号12並びに配列番号20、配列番号21及び配列番号22から成る群から選択されたアミノ酸配列を備える請求項25の方法。
【請求項27】
前記VEGFポリペプチドは、配列番号60、配列番号62、配列番号70、配列番号72、配列番号66、配列番号64、配列番号74、配列番号76及び配列番号68から成る群から選択されたアミノ酸配列を備える請求項25の方法。
【請求項28】
前記LEC3ポリペプチドは配列番号4又は配列番号10のアミノ酸配列を備え、前記VEGFポリペプチドは配列番号60、配列番号62、配列番号70、配列番号72、配列番号66、配列番号64、配列番号74、配列番号76及び配列番号68のアミノ酸配列を備える請求項25の方法。
【請求項29】
前記第2の化合物は、VEGFに特異的に結合する抗体である請求項24の方法。
【請求項30】
前記第1の化合物は、LEC3に特異的に結合する抗体である請求項24の方法。
【請求項31】
血管新生関連の疾病を治療する方法であって、当該治療を必要とする患者に対しLEC3、CXCR4及びEDNRAの全部又は一部の機能を抑制する第1の化合物と、VEGFの機能を抑制する第2の化合物とを投与することを備え、前記第1の化合物及び前記第2の化合物は血管新生を抑制するのに十分なだけ提供される方法。
【請求項32】
前記第1の化合物は、LEC3に特異的に結合する抗体である請求項31の方法。
【請求項33】
前記第2の化合物は、VEGFに特異的に結合する抗体である請求項31の方法。
【請求項34】
前記抗体はLEC3タンパク質の少なくとも一部の細胞外部分に結合する請求項32の方法。
【請求項35】
LEC3、CXCR4及び/又はEDNRA活性を抑制する化合物を同定する方法であって、試験化合物をLEC3、CXCR4及び/又はEDNRAポリペプチドと接触させ、前記試験化合物がLEC3、CXCR4及び/又はEDNRA活性を抑制するかどうか判断することを備え、LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAの活性を抑制する試験化合物は、LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAのアンタゴニストであると同定される方法。
【請求項36】
LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAの前記生物活性は、LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAに前記試験化合物を結合することにより測定される請求項35の方法。
【請求項37】
LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAの前記生物活性は、モデル系における血管新生の抑制によって測定される請求項35の方法。
【請求項38】
前記モデル系は、ゼブラフィッシュ発生系である請求項37の方法。
【請求項39】
前記モデル系は、トランスジェニック動物系である請求項37の方法。
【請求項40】
前記モデル系はインビトロ細胞系である請求項37の方法。
【請求項41】
LEC3、CXCR4及び/又はEDNRAの生物学的な機能を抑制する有効量の細胞浸透性ペプチドを細胞に投与することを備える血管新生を抑制する方法。
【請求項42】
VEGFの発現又は生物学的機能を抑制する化合物の投与をさらに備える請求項41の方法。
【請求項43】
被検者に対し、以下から成る群から選択された有効量の化合物を投与することを備える血管新生を促進する方法:
(a) 配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを備える単離された発現ベクター、
(b) 配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56及び配列番号58のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を有するポリヌクレオチドを備える単離された発現ベクター、
(c) 配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56及び配列番号58のアミノ酸配列を備えるポリペプチド。
【請求項44】
血管新生関連の疾病を治療する方法であって、当該治療を必要とする患者に対し、SDF−1又はET−1に結合する抗体を血管新生を抑制するのに十分な量投与することを備える方法。
【請求項45】
該血管新生関連の疾病は、血管新生依存癌;良性腫瘍;慢性関節リウマチ;乾癬;視覚の血管新生疾病;オースラー・ウェバー症候群;心筋の血管新生;溶菌はん新血管新生;毛細管拡張症;血友病性関節症;線維血管腫;傷肉芽形成;腸管癒着、アテローム性動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、猫ひっかき病及びヘリコバクターピロリ潰瘍から成る群から選択される請求項44の方法。
【請求項46】
該血管新生関連の疾病は、血管新生依存癌である請求項44の方法。
【請求項47】
前記血管新生関連の疾病は血管新生依存の腫瘍であって、前記ポリヌクレオチドは腫瘍退縮を引き起こすのに十分な量投与される請求項44の方法。
【請求項48】
前記SDF−1は、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48又は配列番号50のアミノ酸配列を備える請求項44の方法。
【請求項49】
前記ET−1は、配列番号52、配列番号54、配列番号56又は配列番号58の、アミノ酸配列を備える請求項44の方法。
【請求項50】
網膜症を予防し又は治療する方法であって、目に対し、LEC3、EDNRA及びCXCR4から成る群から選択されたタンパク質の発現又は機能を抑制するCXCR4、LEC3及び/又はEDNRAポリペプチドを、血管新生を抑制するのに十分な量投与することを備える方法。
【請求項51】
前記ポリヌクレオチドは、アンチセンス・オリゴヌクレオチド又はホスホラミダイト・モルホリノ・オリゴマーである請求項50の方法。
【請求項52】
前記ポリヌクレオチドの細胞吸収を促進するために、前記ポリヌクレオチドがペプチドに結合する請求項51の方法。
【請求項53】
前記網膜症は、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症又は末熟児網膜症である請求項50の方法。
【請求項54】
前記抗体は、CXCR4、LEC3及び/又はEDNRAポリペプチドに特異的に結合する抗体である請求項50の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−526861(P2009−526861A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555380(P2008−555380)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/004114
【国際公開番号】WO2007/095353
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508246526)
【Fターム(参考)】