血糖上昇を抑制する組成物、薬剤及び機能性食品
【課題】服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用が得られるようにすること。
【解決手段】少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有する組成物にすることで、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用が得られるようにすることができるようになる。
【解決手段】少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有する組成物にすることで、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用が得られるようにすることができるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病に関連する疾患に対し、副作用などの心配もなく、予防、改善及び治療等を行うものであり、例えば、ツボクサ等の植物の抽出物に含有されるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを主成分とし、これにグルコン酸亜鉛を副成分として含有させてなる血糖上昇を抑制する組成物と、該組成物を含有する薬剤及び機能性食品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、欧米先進国を中心として糖尿病などの生活習慣病が蔓延しつつあり、日本国も例外ではなく、主に、食環境の欧米化に伴う生活習慣病の急増が顕在化している。その終末として、心臓(循環器)、脳機能障害及び悪性腫瘍が死因となる事例が、近年増加の傾向にある。
【0003】
しかしながら、現在の糖尿病の治療効果の高い医療用医薬品は、一般的に副作用が強い上に、多剤服用による重複毒性の問題などが存在するために長期間にわたる服用には、リスクを負わざるを得ないのが現実である。
【0004】
そこで、血糖上昇を抑制または降下させることができ、且つ服用によるリスクが少ない天然物からなる成分として、例えば、トチノキ科植物由来のサポニンを用いてインシュリンと同様に細胞への糖取り込みを促進させる効果を有する医薬組成物がある(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の公知技術においては、トチノキ科植物由来のサポニンを用いるものであり、該サポニンが、植物界に分布する配糖体の一群で、多環式化合物をアグリコンとする化合物である。
【0006】
このサポニンとは、トリテルペンまたはステロイドの配糖体の総称である。植物等から抽出されるサポニンは、それぞれの生物活性が個々に異なっており、サポニンとしての共通性はないものであり、サポニンは、血糖上昇を抑制または降下させる作用を有しているということが知られている。
【0007】
また、近年、ツボクサ由来のサポニンが注目されつつある。このツボクサとは、中国やインド等の東南アジアにおいて、古くから薬草として用いられると共に、薬効を有するハーブとして知られており、野菜としてそのまま食したり、ジュース等の飲食品に加工されたりしているものであり、安全性の高いものとして扱われているものである。
【0008】
そこで、このツボクサの成分を用いて血糖上昇を抑制または降下させる技術として、例えば、セリ科の植物であるツボクサから、低級のアルコールを用いて抽出した抽出物を有効成分とするアルドース還元酵素阻害剤がある(特許文献2参照)。
【0009】
この特許文献2の公知技術においては、ツボクサに含まれる有効成分をエタノール等の低級のアルコールを用いて抽出し、この抽出物に含まれるサポニン及びサポゲノールを利用するものである。
【0010】
【特許文献1】特開2002−275191号公報
【特許文献2】特開2000−80044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1、2の公知技術においては、いずれも植物から得られた抽出物中に含有されるサポニンを、主として単独で利用するものであり、このサポニンによる血糖上昇を抑制または降下させる作用を享受しようとするものであるが、サポニンを単独で用いて血糖上昇を抑制または降下させるだけでは、その得られる作用効果に限界が生じる。
【0012】
従って、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用が得られるようにするということに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した従来例の課題を解決する具体的手段として本発明に係る第1の発明として、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有することを特徴とする血糖上昇を抑制する組成物を提供するものである。
【0014】
この第1の発明において、前記トリテルペン系サポニンが、asiaticosideまたはmadecassosideと、それぞれのアグリコンであるasiatic acidまたはmadecassic acidとの一種または二種以上であること;前記トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとは、ツボクサに由来すること;を付加的な要件として含むものである。
【0015】
また、第2及び第3の発明として、前記第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を含む薬剤と、機能性食品とを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物は、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有するものであるため、血糖上昇を抑制または降下させる作用として、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とによる相乗効果を期待することができ、また、これらトリテルペン系サポニンと、グルコン酸亜鉛とは、いずれも経口摂取による安全性が高いので、服用によるリスクを軽減できるという優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明に第2、第3の発明に係る薬剤及び機能性食品は、前記第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を含むものであるため、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用を享受できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
本発明の実施の形態に係る血糖上昇を抑制する組成物は、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有するものである。これらトリテルペン系サポニン、およびそのアグリコンとは、自然植物界に広く分布する化合物であり、植物から水またはアルコール等により容易に抽出することができる。
【0019】
また、一般的に、亜鉛を摂取した場合には、体内で亜鉛がインスリン様の作用を示してブドウ糖等の血糖成分の吸収が抑制されるようになることが知られている。この亜鉛は、金属(イオン)であるが、一般的に用いられる硫酸亜鉛等の無機亜鉛化合物は、体内で摂取された際に毒性を示すことがあるが、本発明に用いるグルコン酸亜鉛は、有機亜鉛化合物であるため、体内に摂取した場合であっても、比較的安全性が高い物質であると認められているものであり、米国において、サプリメント類、あめ類または飲料等として用いられているものである。
【0020】
前記トリテルペン系サポニンとしては、asiaticosideまたはmadecassosideを用いることが良く、また、該トリテルペン系サポニンのそれぞれのアグリコンとしては、asiatic acidまたはmadecassic acidを用いることが良く、これらトリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとの一種または二種以上を用いれば良い。このトリテルペン系サポニンの化学式を図1に示し、該トリテルペン系サポニンのアグリコンの化学式を図2に示してある。
【0021】
これらトリテルペン系サポニン、およびそのアグリコンは、植物から容易に抽出することができるが、なかでも、双子葉植物でセリ科のツボクサ(Centella asiatica L.)から抽出するのが良く、特にツボクサの地上部(乾燥物を含む)から抽出するのが良い。このツボクサから抽出した場合は、他の植物から抽出した場合と比較して、抽出エキス(抽出物)に含まれるasiaticosideの含有量が約1%(多い時には約5%)程度と多量に精製できる点で優れている。また、サポニンとしては、カンゾウ(甘草)の根、キキョウの根またはニンジン(朝鮮人参)の根等の植物にも多量に含まれている。
【0022】
更に、本発明においては、薬剤または食品に前記血糖上昇を抑制する組成物を含有させて、血糖上昇を抑制する組成物を含む薬剤または機能性食品とすることができる。この機能性食品とは、血糖上昇を抑制する組成物を含み、ビタミン類等の各種栄養素または食品等を一種以上含む天然物からなる食品またはその加工食品のことであり、例えば、菓子類または清涼飲料等の飲食品を含むものである。
【0023】
前記薬剤を、例えば、医薬製剤(医薬品)として用いる場合には、有効成分であるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンの薬剤担体成分の全体に対する割合が、約0.1〜10重量%程度の範囲であれば良く、特に、約0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。また、グルコン酸亜鉛の配合量としては、薬剤担体成分の全体に対する割合が、約0.25mg/kg・BW〜0.5mg/kg・BW程度の範囲であり、且つ、該グルコン酸亜鉛の1日あたりの摂取量が15mg・Znを越えないように配合させるのが良い。
【0024】
この薬剤を医薬製剤として用いる場合における剤形としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、懸濁液剤、軟膏、ゲル剤、ペースト剤またはクリーム剤等の医薬製剤として製造可能な全ての剤形をあげることができる。また、投与経路としては、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下または関節腔等の種々の投与経路をあげることができる。
【0025】
また、前記医薬製剤は、予防や治療に有効な量のトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを製薬学的に許容できる担体または希釈剤と共に製剤化するのが良い。更に、結合剤、吸収促進剤、潤沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料または甘味料等を適宜添加させても良い。
【0026】
(トリテルペン系サポニン及びそのアグリコンの製造例1)
次に、より具体的な実施例を用いて説明する。この製造例1においては、ツボクサの地上部を採取し、これを乾燥させたものを用いた。このツボクサ地上部の乾燥物550グラムに80%エタノール水を5リットル加え、80℃で1時間還流抽出し、その後、その抽出液を濾過した。この濾過して得られた残渣に、再度、80%エタノール水を5リットル加えて、同様の操作を行った。これら2回分の濾液を減圧濃縮し、水・エタノールを留去し乾燥させて乾燥物125グラム(トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとの含有量が約22.7%)を得た。
【0027】
(トリテルペン系サポニンの製造例2)
この製造例2においては、ツボクサに最も多量に含まれているトリテルペン系サポニンのasiaticosideの精製方法の一例をあげる。ツボクサ地上部の乾燥物5.1キログラムに80%エタノール水を60リットル加え、2.5時間の還流抽出を2回行い、この得られた抽出濾液を減圧濃縮して抽出乾燥物998グラムを得た。
【0028】
この得られた抽出乾燥物を、多孔質ポリスチレン樹脂を充填したカラム(φ80mm×400mm)に付し、メタノール水(30→60→80%メタノール)の各3リットルで順次溶出させた。
【0029】
80%メタノール水の溶出部の乾燥物37.5グラムをシリカゲルカラム(φ80mm×300mm)に付し、クロロホルム・メタノール・水(25:10:1 v/v/v)混合液で順次極性を上げながら溶出させ、4画分(I〜IV)に分画した。
【0030】
画分IVを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル・メタノール・水;1:1:2 v/v/v)により、asiaticoside 10.12グラム(収率0.198%)を得た。
【0031】
(試験例1)
この試験例1においては、前記製造例1(ツボクサ抽出エキス群)と、前記製造例2(asiaticoside群)とにおける血糖値の上昇を抑制する効果についての確認をマウスを用いて行った。7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対して、予備飼育期間中は固形飼料を与えつつ血糖測定および状態観察を行い、空腹時血糖の平均値がほぼ一定になるように10匹ずつ3群に群分けした。
【0032】
これら3群としては、下記溶剤のみを投与した群(Control群)と、下記溶剤及び前記製造例1で得られたツボクサから抽出しトリテルペン系サポニンとそのアグリコンとを含有する乾燥物とを投与した群(製造例1群)と、下記溶剤及び前記製造例2で得られたasiaticosideを投与した群(製造例2群)との各群に分けた。これら各群に対し、各群の0.3%CMC懸濁液(溶剤)を毎日1回、強制的に28日間連続経口投与し、1週間毎に空腹時血糖の値を測定した。
【0033】
この試験例1の結果を表1に示すと共に、それぞれの血糖値の変化を表したグラフを図3に示した。なお、被験物質は、200mg/kg相当量とした。試験結果は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定は、Student’s−tを用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1及び図3の結果から、溶剤の0.3%CMCの懸濁液のみ与えたControl群の血糖値は、試験開始時の約140mg/dlから28日後の約232mg/dlと糖尿病血糖値を呈し、上昇傾向にあったのに対して、製造例1群と製造例2群とでは、それぞれ試験開始時の約138mg/dl及び約140mg/dlから、28日後の約221mg/dl(p<0.05)及び約204mg/dl(p<0.01)になり、前記Control群と比較して、有意な血糖上昇の抑制効果が確認され、前記製造例1群(ツボクサ抽出エキス群)では投与から約3週間以降で、また前記製造例2群(asiaticoside群)では投与から約2週間以降で、有意な血糖上昇の抑制が確認された。
【0036】
(試験例2)
この試験例2においては、トリテルペン系サポニン及びそのアグリコン(例えば、asiaticoside)を用いて、血糖上昇の抑制効果を確認するために、(1)糖吸収抑制試験と、(2)糖負荷試験との2種類の試験を行った。
【0037】
前記(1)の糖吸収抑制試験においては、7週齢の雌性Wistar系ラットを用い、下記溶剤のみを投与した群(Control群)と、下記溶剤及び前記製造例2で得られたasiaticosideを前投与した群(製造例2群)との2群(n=12)で比較検討した。これら被験物質は、200mg/kg相当量を0.3%CMC懸濁液(溶剤)に懸濁して経口投与し、12時間絶食後、麻酔下に開腹、小腸腸管部にペリスタポンプを接続し、2.0mg/kg濃度のグルコースを含む還流液を120分まで還流した。20分毎に120分まで腸管内のグルコース値を求め、Control群と比較した。Control群には前記溶剤の0.3%CMC懸濁液のみを経口投与した。この試験例2の(1)の結果を表2及び図4に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
これら表2及び図4から理解できるように、Control群では、0分時の腸管内のグルコース値を100とした120分後では、46.3%まで低下し、腸管壁から確実に腸管内部にグルコースの吸収がおこっていることが確認できた。一方、asiaticosideを前投与した製造例2群では、120分後で55.0%になり、前記Control群と比較して、有意に腸管内にグルコースが滞留し、腸管内部への吸収阻害あるいは腸管内でのグルコースの分解を抑制しているものと推察される。この有意な変化は、還流約40分以降に継続して起きていた。
【0040】
次に、前記(2)の糖負荷試験においては、7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスを用い、試験前に糖化ヘモグロビンA1cに差が生じないように、下記グルコース溶液を投与した群(Control群)と、下記グルコース溶液及び前記製造例2で得られたasiaticosideを前投与した群(製造例2群)との2群(n=12)に分けた。これら2群に対し、20%グルコース溶液(溶剤)を2.0g/kgの割合で経口投与後、120分まで糖負荷による血中インスリンおよび血糖値の変動の有無を比較検討した。なお、溶剤およびその投与量については、前記(1)の糖吸収抑制試験と同一の条件にして行った。この試験例2の(2)の結果を表3及び図5に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
これら表3及び図5から明らかように、Control群と比較して糖負荷による血糖上昇は、asiaticosideを前投与した製造例2群で15分経過後から60分経過まで、有意に抑制できたことが理解できる。このとき、表及び図には示していないが、同時に測定した血中インスリン値には前記両群に有意差がなくて殆ど変化はみられず、また、試験開始時点での前記両群間で糖化ヘモグロビンA1c値に差がみられなかったことから、製造例2群であるasiaticosideの前投与群での糖負荷による血糖上昇の抑制作用は、腸管からのグルコースの吸収阻害あるいは腸内でのグルコース分解を抑制しているものと推察される。
【0043】
これら試験例1及び試験例2より、被験物質である、製造例1で得られたツボクサから抽出したトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキスと、製造例2で得られたasiaticosideとは、自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対する血糖上昇の抑制作用を有していることが確認された。この作用機序は、ツボクサ抽出エキス中のトリテルペン系サポニンであるasiaticosideによる腸管内グルコースの吸収阻害あるいは腸管内でのグルコース分解を抑制しているものと推察される。
【0044】
このように、本発明に係る血糖上昇を抑制する組成物の構成物質の1つであるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを経口摂取することにより、血糖の上昇を抑制する作用(血糖を降下させる作用を含む)を得ることができることから、糖尿病に関連する疾患の予防・改善・治療の効果を期待できる。また、ツボクサ等の植物に由来することから、経口摂取による安全性が高いので、服用によるリスクを軽減できる。
【0045】
(試験例3)
次に、試験例3として、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンに、グルコン酸亜鉛を混合・含有させた場合における血糖上昇を抑制する作用を確認する試験を行った。この試験例3においては、7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対して、通常の飼料のみを与えた群(Control群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス50mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(50mg群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス100mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(100mg群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス200mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(200mg群)との3群(n=8)で比較検討した。これら被験物質は、強制的に28日間連続経口投与し、開始から7、14、28日目における空腹時血糖の値を測定した。
【0046】
この試験例3の結果を表4及び図6に示す。試験結果は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定は、Student’s−tを用いた。
【0047】
【表4】
【0048】
これら表4及び図6から明らかように、前記試験例1と比較して、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンだけでなく、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンに、グルコン酸亜鉛を含有させた血糖上昇を抑制する組成物にすることにより、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンの含有量が少なくても、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛との相乗効果により、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを単体で用いる場合よりも、より高い血糖の上昇を抑制する作用(血糖を降下させる作用を含む)を得ることができることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を構成する物質の1つであるトリテルペン系サポニンの化学式である。
【図2】同トリテルペン系サポニンのアグリコンの化学式である。
【図3】試験例1の血糖値の変化を表したグラフである。
【図4】試験例2(1)の糖吸収抑制度の変化を表したグラフである。
【図5】試験例2(2)の糖負荷の変化を表したグラフである。
【図6】試験例3の血糖値の変化を表したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病に関連する疾患に対し、副作用などの心配もなく、予防、改善及び治療等を行うものであり、例えば、ツボクサ等の植物の抽出物に含有されるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを主成分とし、これにグルコン酸亜鉛を副成分として含有させてなる血糖上昇を抑制する組成物と、該組成物を含有する薬剤及び機能性食品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、欧米先進国を中心として糖尿病などの生活習慣病が蔓延しつつあり、日本国も例外ではなく、主に、食環境の欧米化に伴う生活習慣病の急増が顕在化している。その終末として、心臓(循環器)、脳機能障害及び悪性腫瘍が死因となる事例が、近年増加の傾向にある。
【0003】
しかしながら、現在の糖尿病の治療効果の高い医療用医薬品は、一般的に副作用が強い上に、多剤服用による重複毒性の問題などが存在するために長期間にわたる服用には、リスクを負わざるを得ないのが現実である。
【0004】
そこで、血糖上昇を抑制または降下させることができ、且つ服用によるリスクが少ない天然物からなる成分として、例えば、トチノキ科植物由来のサポニンを用いてインシュリンと同様に細胞への糖取り込みを促進させる効果を有する医薬組成物がある(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の公知技術においては、トチノキ科植物由来のサポニンを用いるものであり、該サポニンが、植物界に分布する配糖体の一群で、多環式化合物をアグリコンとする化合物である。
【0006】
このサポニンとは、トリテルペンまたはステロイドの配糖体の総称である。植物等から抽出されるサポニンは、それぞれの生物活性が個々に異なっており、サポニンとしての共通性はないものであり、サポニンは、血糖上昇を抑制または降下させる作用を有しているということが知られている。
【0007】
また、近年、ツボクサ由来のサポニンが注目されつつある。このツボクサとは、中国やインド等の東南アジアにおいて、古くから薬草として用いられると共に、薬効を有するハーブとして知られており、野菜としてそのまま食したり、ジュース等の飲食品に加工されたりしているものであり、安全性の高いものとして扱われているものである。
【0008】
そこで、このツボクサの成分を用いて血糖上昇を抑制または降下させる技術として、例えば、セリ科の植物であるツボクサから、低級のアルコールを用いて抽出した抽出物を有効成分とするアルドース還元酵素阻害剤がある(特許文献2参照)。
【0009】
この特許文献2の公知技術においては、ツボクサに含まれる有効成分をエタノール等の低級のアルコールを用いて抽出し、この抽出物に含まれるサポニン及びサポゲノールを利用するものである。
【0010】
【特許文献1】特開2002−275191号公報
【特許文献2】特開2000−80044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1、2の公知技術においては、いずれも植物から得られた抽出物中に含有されるサポニンを、主として単独で利用するものであり、このサポニンによる血糖上昇を抑制または降下させる作用を享受しようとするものであるが、サポニンを単独で用いて血糖上昇を抑制または降下させるだけでは、その得られる作用効果に限界が生じる。
【0012】
従って、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用が得られるようにするということに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した従来例の課題を解決する具体的手段として本発明に係る第1の発明として、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有することを特徴とする血糖上昇を抑制する組成物を提供するものである。
【0014】
この第1の発明において、前記トリテルペン系サポニンが、asiaticosideまたはmadecassosideと、それぞれのアグリコンであるasiatic acidまたはmadecassic acidとの一種または二種以上であること;前記トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとは、ツボクサに由来すること;を付加的な要件として含むものである。
【0015】
また、第2及び第3の発明として、前記第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を含む薬剤と、機能性食品とを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物は、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有するものであるため、血糖上昇を抑制または降下させる作用として、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とによる相乗効果を期待することができ、また、これらトリテルペン系サポニンと、グルコン酸亜鉛とは、いずれも経口摂取による安全性が高いので、服用によるリスクを軽減できるという優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明に第2、第3の発明に係る薬剤及び機能性食品は、前記第1の発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を含むものであるため、服用によるリスクが少なく、且つサポニンを単独で用いる場合よりもより高い血糖上昇を抑制または降下させる作用を享受できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
本発明の実施の形態に係る血糖上昇を抑制する組成物は、少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有するものである。これらトリテルペン系サポニン、およびそのアグリコンとは、自然植物界に広く分布する化合物であり、植物から水またはアルコール等により容易に抽出することができる。
【0019】
また、一般的に、亜鉛を摂取した場合には、体内で亜鉛がインスリン様の作用を示してブドウ糖等の血糖成分の吸収が抑制されるようになることが知られている。この亜鉛は、金属(イオン)であるが、一般的に用いられる硫酸亜鉛等の無機亜鉛化合物は、体内で摂取された際に毒性を示すことがあるが、本発明に用いるグルコン酸亜鉛は、有機亜鉛化合物であるため、体内に摂取した場合であっても、比較的安全性が高い物質であると認められているものであり、米国において、サプリメント類、あめ類または飲料等として用いられているものである。
【0020】
前記トリテルペン系サポニンとしては、asiaticosideまたはmadecassosideを用いることが良く、また、該トリテルペン系サポニンのそれぞれのアグリコンとしては、asiatic acidまたはmadecassic acidを用いることが良く、これらトリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとの一種または二種以上を用いれば良い。このトリテルペン系サポニンの化学式を図1に示し、該トリテルペン系サポニンのアグリコンの化学式を図2に示してある。
【0021】
これらトリテルペン系サポニン、およびそのアグリコンは、植物から容易に抽出することができるが、なかでも、双子葉植物でセリ科のツボクサ(Centella asiatica L.)から抽出するのが良く、特にツボクサの地上部(乾燥物を含む)から抽出するのが良い。このツボクサから抽出した場合は、他の植物から抽出した場合と比較して、抽出エキス(抽出物)に含まれるasiaticosideの含有量が約1%(多い時には約5%)程度と多量に精製できる点で優れている。また、サポニンとしては、カンゾウ(甘草)の根、キキョウの根またはニンジン(朝鮮人参)の根等の植物にも多量に含まれている。
【0022】
更に、本発明においては、薬剤または食品に前記血糖上昇を抑制する組成物を含有させて、血糖上昇を抑制する組成物を含む薬剤または機能性食品とすることができる。この機能性食品とは、血糖上昇を抑制する組成物を含み、ビタミン類等の各種栄養素または食品等を一種以上含む天然物からなる食品またはその加工食品のことであり、例えば、菓子類または清涼飲料等の飲食品を含むものである。
【0023】
前記薬剤を、例えば、医薬製剤(医薬品)として用いる場合には、有効成分であるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンの薬剤担体成分の全体に対する割合が、約0.1〜10重量%程度の範囲であれば良く、特に、約0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。また、グルコン酸亜鉛の配合量としては、薬剤担体成分の全体に対する割合が、約0.25mg/kg・BW〜0.5mg/kg・BW程度の範囲であり、且つ、該グルコン酸亜鉛の1日あたりの摂取量が15mg・Znを越えないように配合させるのが良い。
【0024】
この薬剤を医薬製剤として用いる場合における剤形としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、懸濁液剤、軟膏、ゲル剤、ペースト剤またはクリーム剤等の医薬製剤として製造可能な全ての剤形をあげることができる。また、投与経路としては、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下または関節腔等の種々の投与経路をあげることができる。
【0025】
また、前記医薬製剤は、予防や治療に有効な量のトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを製薬学的に許容できる担体または希釈剤と共に製剤化するのが良い。更に、結合剤、吸収促進剤、潤沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料または甘味料等を適宜添加させても良い。
【0026】
(トリテルペン系サポニン及びそのアグリコンの製造例1)
次に、より具体的な実施例を用いて説明する。この製造例1においては、ツボクサの地上部を採取し、これを乾燥させたものを用いた。このツボクサ地上部の乾燥物550グラムに80%エタノール水を5リットル加え、80℃で1時間還流抽出し、その後、その抽出液を濾過した。この濾過して得られた残渣に、再度、80%エタノール水を5リットル加えて、同様の操作を行った。これら2回分の濾液を減圧濃縮し、水・エタノールを留去し乾燥させて乾燥物125グラム(トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとの含有量が約22.7%)を得た。
【0027】
(トリテルペン系サポニンの製造例2)
この製造例2においては、ツボクサに最も多量に含まれているトリテルペン系サポニンのasiaticosideの精製方法の一例をあげる。ツボクサ地上部の乾燥物5.1キログラムに80%エタノール水を60リットル加え、2.5時間の還流抽出を2回行い、この得られた抽出濾液を減圧濃縮して抽出乾燥物998グラムを得た。
【0028】
この得られた抽出乾燥物を、多孔質ポリスチレン樹脂を充填したカラム(φ80mm×400mm)に付し、メタノール水(30→60→80%メタノール)の各3リットルで順次溶出させた。
【0029】
80%メタノール水の溶出部の乾燥物37.5グラムをシリカゲルカラム(φ80mm×300mm)に付し、クロロホルム・メタノール・水(25:10:1 v/v/v)混合液で順次極性を上げながら溶出させ、4画分(I〜IV)に分画した。
【0030】
画分IVを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル・メタノール・水;1:1:2 v/v/v)により、asiaticoside 10.12グラム(収率0.198%)を得た。
【0031】
(試験例1)
この試験例1においては、前記製造例1(ツボクサ抽出エキス群)と、前記製造例2(asiaticoside群)とにおける血糖値の上昇を抑制する効果についての確認をマウスを用いて行った。7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対して、予備飼育期間中は固形飼料を与えつつ血糖測定および状態観察を行い、空腹時血糖の平均値がほぼ一定になるように10匹ずつ3群に群分けした。
【0032】
これら3群としては、下記溶剤のみを投与した群(Control群)と、下記溶剤及び前記製造例1で得られたツボクサから抽出しトリテルペン系サポニンとそのアグリコンとを含有する乾燥物とを投与した群(製造例1群)と、下記溶剤及び前記製造例2で得られたasiaticosideを投与した群(製造例2群)との各群に分けた。これら各群に対し、各群の0.3%CMC懸濁液(溶剤)を毎日1回、強制的に28日間連続経口投与し、1週間毎に空腹時血糖の値を測定した。
【0033】
この試験例1の結果を表1に示すと共に、それぞれの血糖値の変化を表したグラフを図3に示した。なお、被験物質は、200mg/kg相当量とした。試験結果は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定は、Student’s−tを用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1及び図3の結果から、溶剤の0.3%CMCの懸濁液のみ与えたControl群の血糖値は、試験開始時の約140mg/dlから28日後の約232mg/dlと糖尿病血糖値を呈し、上昇傾向にあったのに対して、製造例1群と製造例2群とでは、それぞれ試験開始時の約138mg/dl及び約140mg/dlから、28日後の約221mg/dl(p<0.05)及び約204mg/dl(p<0.01)になり、前記Control群と比較して、有意な血糖上昇の抑制効果が確認され、前記製造例1群(ツボクサ抽出エキス群)では投与から約3週間以降で、また前記製造例2群(asiaticoside群)では投与から約2週間以降で、有意な血糖上昇の抑制が確認された。
【0036】
(試験例2)
この試験例2においては、トリテルペン系サポニン及びそのアグリコン(例えば、asiaticoside)を用いて、血糖上昇の抑制効果を確認するために、(1)糖吸収抑制試験と、(2)糖負荷試験との2種類の試験を行った。
【0037】
前記(1)の糖吸収抑制試験においては、7週齢の雌性Wistar系ラットを用い、下記溶剤のみを投与した群(Control群)と、下記溶剤及び前記製造例2で得られたasiaticosideを前投与した群(製造例2群)との2群(n=12)で比較検討した。これら被験物質は、200mg/kg相当量を0.3%CMC懸濁液(溶剤)に懸濁して経口投与し、12時間絶食後、麻酔下に開腹、小腸腸管部にペリスタポンプを接続し、2.0mg/kg濃度のグルコースを含む還流液を120分まで還流した。20分毎に120分まで腸管内のグルコース値を求め、Control群と比較した。Control群には前記溶剤の0.3%CMC懸濁液のみを経口投与した。この試験例2の(1)の結果を表2及び図4に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
これら表2及び図4から理解できるように、Control群では、0分時の腸管内のグルコース値を100とした120分後では、46.3%まで低下し、腸管壁から確実に腸管内部にグルコースの吸収がおこっていることが確認できた。一方、asiaticosideを前投与した製造例2群では、120分後で55.0%になり、前記Control群と比較して、有意に腸管内にグルコースが滞留し、腸管内部への吸収阻害あるいは腸管内でのグルコースの分解を抑制しているものと推察される。この有意な変化は、還流約40分以降に継続して起きていた。
【0040】
次に、前記(2)の糖負荷試験においては、7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスを用い、試験前に糖化ヘモグロビンA1cに差が生じないように、下記グルコース溶液を投与した群(Control群)と、下記グルコース溶液及び前記製造例2で得られたasiaticosideを前投与した群(製造例2群)との2群(n=12)に分けた。これら2群に対し、20%グルコース溶液(溶剤)を2.0g/kgの割合で経口投与後、120分まで糖負荷による血中インスリンおよび血糖値の変動の有無を比較検討した。なお、溶剤およびその投与量については、前記(1)の糖吸収抑制試験と同一の条件にして行った。この試験例2の(2)の結果を表3及び図5に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
これら表3及び図5から明らかように、Control群と比較して糖負荷による血糖上昇は、asiaticosideを前投与した製造例2群で15分経過後から60分経過まで、有意に抑制できたことが理解できる。このとき、表及び図には示していないが、同時に測定した血中インスリン値には前記両群に有意差がなくて殆ど変化はみられず、また、試験開始時点での前記両群間で糖化ヘモグロビンA1c値に差がみられなかったことから、製造例2群であるasiaticosideの前投与群での糖負荷による血糖上昇の抑制作用は、腸管からのグルコースの吸収阻害あるいは腸内でのグルコース分解を抑制しているものと推察される。
【0043】
これら試験例1及び試験例2より、被験物質である、製造例1で得られたツボクサから抽出したトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキスと、製造例2で得られたasiaticosideとは、自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対する血糖上昇の抑制作用を有していることが確認された。この作用機序は、ツボクサ抽出エキス中のトリテルペン系サポニンであるasiaticosideによる腸管内グルコースの吸収阻害あるいは腸管内でのグルコース分解を抑制しているものと推察される。
【0044】
このように、本発明に係る血糖上昇を抑制する組成物の構成物質の1つであるトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを経口摂取することにより、血糖の上昇を抑制する作用(血糖を降下させる作用を含む)を得ることができることから、糖尿病に関連する疾患の予防・改善・治療の効果を期待できる。また、ツボクサ等の植物に由来することから、経口摂取による安全性が高いので、服用によるリスクを軽減できる。
【0045】
(試験例3)
次に、試験例3として、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンに、グルコン酸亜鉛を混合・含有させた場合における血糖上昇を抑制する作用を確認する試験を行った。この試験例3においては、7週齢の雌性の自然発症性高血糖(KKAy)マウスに対して、通常の飼料のみを与えた群(Control群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス50mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(50mg群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス100mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(100mg群)と、通常の飼料と前記製造例1で得られたトリテルペン系サポニン及びそのアグリコンを含有するツボクサ抽出エキス200mg/kgとグルコン酸亜鉛2.3mg・kgとを与えた群(200mg群)との3群(n=8)で比較検討した。これら被験物質は、強制的に28日間連続経口投与し、開始から7、14、28日目における空腹時血糖の値を測定した。
【0046】
この試験例3の結果を表4及び図6に示す。試験結果は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定は、Student’s−tを用いた。
【0047】
【表4】
【0048】
これら表4及び図6から明らかように、前記試験例1と比較して、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンだけでなく、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンに、グルコン酸亜鉛を含有させた血糖上昇を抑制する組成物にすることにより、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンの含有量が少なくても、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛との相乗効果により、トリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンを単体で用いる場合よりも、より高い血糖の上昇を抑制する作用(血糖を降下させる作用を含む)を得ることができることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る血糖上昇を抑制する組成物を構成する物質の1つであるトリテルペン系サポニンの化学式である。
【図2】同トリテルペン系サポニンのアグリコンの化学式である。
【図3】試験例1の血糖値の変化を表したグラフである。
【図4】試験例2(1)の糖吸収抑制度の変化を表したグラフである。
【図5】試験例2(2)の糖負荷の変化を表したグラフである。
【図6】試験例3の血糖値の変化を表したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有すること
を特徴とする血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項2】
前記トリテルペン系サポニンが、asiaticosideまたはmadecassosideと、それぞれのアグリコンであるasiatic acidまたはmadecassic acidとの一種または二種以上であること
を特徴とする請求項1に記載の血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項3】
前記トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとは、
ツボクサに由来すること
を特徴とする請求項1または2に記載の血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の血糖上昇を抑制する組成物を含むこと
を特徴とする薬剤。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の血糖上昇を抑制する組成物を含むこと
を特徴とする機能性食品。
【請求項1】
少なくともトリテルペン系サポニン及び/またはそのアグリコンと、グルコン酸亜鉛とを含有すること
を特徴とする血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項2】
前記トリテルペン系サポニンが、asiaticosideまたはmadecassosideと、それぞれのアグリコンであるasiatic acidまたはmadecassic acidとの一種または二種以上であること
を特徴とする請求項1に記載の血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項3】
前記トリテルペン系サポニンと、そのアグリコンとは、
ツボクサに由来すること
を特徴とする請求項1または2に記載の血糖上昇を抑制する組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の血糖上昇を抑制する組成物を含むこと
を特徴とする薬剤。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の血糖上昇を抑制する組成物を含むこと
を特徴とする機能性食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−161667(P2007−161667A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361657(P2005−361657)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391019728)養命酒製造株式会社 (11)
【出願人】(501355919)有限会社カンズ研究開発 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391019728)養命酒製造株式会社 (11)
【出願人】(501355919)有限会社カンズ研究開発 (4)
【Fターム(参考)】
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