説明

血糖代謝異常及びグルコースエクスカーション(excursion)を治療する方法

本願は、正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、グルコースエクスカーションを低減するための医薬組成物に関する。この医薬組成物は、治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物を含む乾燥ブレンド混合物をそれぞれ含有する、1又は2以上の活性薬剤含有層を含有する。各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の両親媒性イオン化合物を含有し、その結果、水性流体と接触すると、両親媒性イオン化合物は、極性イオン性のインスリン感作性経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する。本発明はまた、正常な患者又はインスリン関連障害を有する患者において、摂食前(基礎)インスリンレベルを感作し、且つ/又は摂食後グルコースエクスカーションを低減するための、治療有効量のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む放出調節医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン関連障害を有するか、インスリン関連障害に罹りやすい、ヒトなどの哺乳動物において、摂食後グルコースエクスカーションを低減し、優れた血中グルコース管理を実現するための治療方法及びインスリン抵抗性改善(insulin-sensitizing)経口血糖降下剤を含有する組成物に関する。具体的には、本願は、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の新規の経口組成物を用いて内因性インスリン作用の有効性及び効率を改善することによって、糖尿病でない個体、前糖尿病、耐糖能障害、空腹時糖障害を有する個体、及び糖尿病を有する患者において、摂食後グルコースエクスカーションを有効に低減する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
正常なグルコース恒常性に関して本質的な2つの活性状態、即ち吸収又は食後状態、及び基礎又は吸収後状態が存在する。炭水化物食品を摂取した後、体に第一に必要なことは、正常な血漿グルコース濃度を維持することである。大体において、このグルコース維持は、インスリンの分泌によって実現され、これは、2つの主要な時期、即ち急性早期及び二次後期において起こる。細胞レベルで、インスリンは、グルコース輸送及び処理経路を活性化し、グリコーゲンとしての貯蔵をもたらす。インスリン分泌及び血糖は、主に肝臓のグリコーゲン分解を減少させることによって、肝グルコース産生(HGP,hepatic glucose production)を抑制する。肝臓がグルコースを産生する他の経路である糖新生も、インスリンによってではなくグルコースの生理的濃度によって抑制される。
【0003】
正常な個体におけるこの恒常性機構の正味の効果は、HGPの95%を超える減少が、血漿インスリン及びグルコース濃度の適度の増加によって実現されるということである。インスリンは、インスリン依存性の組織、主に筋肉中に、グルコース負荷の約25%の細胞取込みを促進する。グルコース負荷の残りの75%は、インスリン非依存性組織、例えば、脳、内臓器官(肝臓及び腸)、赤血球、並びに腎臓などによって、現行の血漿グルコース濃度に比例した割合で吸収される。脂肪組織は、グルコース負荷の5%未満の処理に関与する。血漿グルコース濃度は、グリコーゲン分解及び糖新生の両方を通じて肝臓によって定常状態で維持される。したがって、HGPの割合は、主にインスリン作用を通じて、組織によるグルコース取込みと釣り合う。
【0004】
現在、世界的に少なくとも2億4600万人を苦しめ、2025年までに3億8000万人を冒すと予期される糖尿病は、疾患による世界的な死亡の4番目の主要原因であり、インスリン産生、インスリン作用、又はその両方の欠損から生じる、高濃度の血中グルコースを特徴とする一群の疾患である。
【0005】
疾患の一形態は、インスリン依存性糖尿病(IDDM,insulin dependent diabetes mellitus)、即ち1型糖尿病であり、世界的に糖尿病集団の約10%を占める。IDDMは、ランゲルハンスの膵島におけるインスリン分泌β細胞の自己免疫性破壊の結果であり、不十分なインスリン産生と関連し、代謝性変化、例えば、高血糖、糖尿、及び肝グリコーゲンレベルの減少などを引き起こす。最も一般的な形態の糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM,non-insulin dependent diabetes mellitus)、即ち2型糖尿病であり、これは発症した個体の残りの90%を占める。2型糖尿病は、2つの病原性欠損、即ち、インスリン分泌障害及びインスリン抵抗性を特徴とする異質の障害である。インスリン分泌の障害は、食後高血糖を最初に導き、β細胞機能がさらに低下するにつれて、空腹時高血糖が後に続く。インスリン抵抗性は、空腹時及び食後高血糖にさらに寄与し、これらを悪化させる。
【0006】
グルコース濃度の上昇が、糖尿病でない個体及び糖尿病の個体における心血管疾患の独立した、臨床的に重大なリスク要因であることが、最近の研究において定着している(Arch Inter Med. 2003; 163:1306-1316)。
【0007】
健康な個体では、基礎血糖値は、内因性のフィードバックループのために相対的に日々一定である。血漿グルコース濃度が増加する任意の傾向は、インスリン分泌の増大及びグルカゴン分泌の抑制によって釣り合いが取られ、これにより、肝グルコース産生(糖新生及びグリコーゲン貯蔵部からの放出)並びに組織のグルコース取込みが調節されることによって、血漿グルコース濃度が一定に維持される。
【0008】
個体がストレスを受け、体重を増やし、又は任意の他の理由でインスリン抵抗性となると、血糖値が増加し、インスリン抵抗性を補うためにインスリン分泌が増大する。したがって、グルコース及びインスリン濃度が調節されることによって、これらの濃度の変化を最小限にする一方で、グルコースの相対的に正常な産生及び利用が維持される。
【0009】
正常なレベルと明白に糖尿病のレベルの間の血糖を特徴とする耐糖能障害(IGT,Impaired glucose tolerance)は、NIDDM発症の主要なリスク要因であり、大血管疾患のリスクの増大に関連している。潜在的なNIDDM症例の50%超が診断未確定であり、IGTは、この集団の中でより蔓延している(National Diabetes Data Group及びWHO判定基準)。
【0010】
食事に対する応答におけるインスリン分泌は多相性であり、炭水化物食品の応答における主な二相性の様式は、膵臓β細胞がグルコース(又は他の分泌促進物質)の急速な増加に曝されて最初の5〜10分後に放出される、インスリンの最初のバーストとして定義される第1相又は急性インスリン応答、並びにより段階的に上昇し、刺激の程度及び継続時間に直接関係する第2相インスリン分泌として分類された。同定されてきたインスリン放出の他の様式には、1)吸収後状態における放出を特徴づける基礎インスリン分泌;2)食物の視覚、嗅覚、及び味覚によって誘起され(任意の栄養分が腸によって吸収される前)、膵臓の神経支配によって媒介されるインスリン分泌の頭相;並びに最後に、インビトロのみで説明されている、インスリン分泌の第3相が含まれる。これらの段階の間に、多くの他のホルモンと同様に、インスリンは脈動的に分泌され、末梢血において振動する濃度をもたらす。
【0011】
適切なグルコース管理は、膵β細胞が、門脈循環及び末梢の両方において、血清インスリンを急速に上昇させる食事様グルコース曝露に対して早期に応答する場合、健康な個体において実現される。反対に、2型糖尿病では、第1相インスリン応答が損なわれた欠陥β細胞は、食事様グルコース曝露に対して緩慢に応答し、食後の高血糖をもたらす。
【0012】
食後高血糖は、2型糖尿病の病因における顕著で早期の欠陥であることが現在知られている。食後のグルコースエクスカーション又は食後高血糖が、2型糖尿病における心血管死亡率の増加に関連することも、多くの研究において知られ、確立されている(Diabetologia 39:1577-1583; the DIS group 1996 Risk factors for myocardial infarction and death in newly detected NIDDM: the Diabetes Intervention Study, 11 year follow-up;Lancet 354: 617-621DECODE Study Group, European Diabetes Epidemiology Group 1999 Glucose tolerance and mortality: comparison of WHO and American Diabetes Association diagnostic criteria., Diabetes study;Diabetes Care 22:920-A 1999 Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose: the Fungata 924)。さらに、食後高血糖はまた、見かけ上健康な個体の中での心血管疾患のリスク要因として同定されただけでなく、内皮障害、中年の糖尿病でないオスにおける死亡率にも直接結びつけられ(Circulation 2002:106:1211-1218Ceriello A et al.、Diabet Med. 2004, 21(2VnI-S. Ceriello A et al、及びDiabetes Care 1998, 21(3):360-7. Balkau et al.)、糖尿病でない個体における頸動脈内膜中膜厚の増大の独立したリスク要因として同定された(Arch Intern Med. (2004) 164:2147-2155.Levitan EB, et al.、Atherosclerosis. (1999) 144(1):229-35, Hanefeld M et al.)。摂食後グルコースエクスカーション、即ち、糖尿病における微小血管合併症の発症における、外因性グルコース摂取に対する増大性の血中グルコース応答の役割もよく確立されている(JAMA 2002; 287:2414-23; The glycemic index - physiological mechanisms relating to obesity, diabetes and cardiovascular disease. Ludwig DS.、及びArch Inter Med 2003; 163:1306-16; Clinical significance, pathogenesis, and management of postprandial hyperglycemia; Gerich JE)。
【0013】
従来の糖尿病管理指針は、総合的な血糖管理を評価する手段として、空腹時血漿グルコース(FPG,fasting plasma glucose)及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)濃度をモニターすることを推奨し、勧告しているが、そのようなFPG判定は、グルコースレベルの摂食後の上昇の総合的な血糖管理への寄与についての情報を提供しないことが知られている。実際に、HbA1cは、血糖値の1日の周期的変動に関連した情報を提供しないが、その理由は、これが以前の2〜3カ月の間の平均グルコースレベルしか表さないためである。
【0014】
さらに、食後高血糖は、推奨されたヘモグロビンHbA1cの目標(7%未満)を達成した対象の約40%において、及び正常な空腹時血中グルコース濃度を達成した糖尿病対象の約10%において起こる(Diabetes Care 24:1734-1738 2001; Post challenge hyperglycemia in a national sample of U.S. adults with Type 2 diabetes; Erlinger TP, Brancati FL.)。食後のグルコーススパイクは、糖尿病対象におけるグルコース増分の54%を占めることも推定され(Diabetes Care 25:737-741 2002 Morning hyperglycemic excursions: a constant failure in the metabolic control of non-insulin-using patients with Type 2 diabetes; Monnier L, Colette C, Rabasa-Lhoret R, Lapinski H, Caubel C, Avignon A, Boniface H)、HbA1cと非常に相関する(Diabetes Care 20:1822-1826 1997 Non fasting plasma glucose is a better marker of diabetic control then fasting plasma glucose in Type 2 diabetes Avignon A, Radauceanu A, Monnier L)。
【0015】
朝食、昼食、間食及び夕食文化を有する今日の現代社会では、1日の大部分は摂食後状態で費やされ、これは、1日当たり約20時間続き得る。摂食後状態は、栄養分含量及び測定されるパラメータに応じて、各食事後に2〜8時間の推定継続時間を有する(N Engl J Med 327: 707-713 1992 Carbohydrate metabolism in non-insulin-dependent diabetes mellitus. Dinneen S, Gerich JE, Rizza R、Diabetes 37:1020-10241988 Measurement of plasma glucose, free fatty acid, lactate, and insulin for 24 h in patients with NIDDM; Reaven GM, Hollenbeck C, Jeng CY, Wu MS, Chen YD)。ほとんどの人は、真に空腹時状態にあるより、摂食後状態にあることが多い。血漿グルコース濃度の広い変動が1日を通して起こり得、食事をして1〜2時間後が高い値であり、次の食事の前が低い値である。食後高血糖は、食後の最初の30分でインスリン分泌がないことに主に起因する(Diabetes Care 7:491-502 1984 Pathophysiology of insulin secretion in non-insulin-dependent diabetes mellitus Ward WK, Beard JC, Halter JB, Pfeiffer MA, Porte D)。このβ細胞の欠陥は、肝糖産生の不十分な抑制、及び引き続いて遅発型の高インスリン血症をもたらす(Diabetes 48:99-105, 1999 Restoration of early rise in plasma insulin levels improves the glucose tolerance of Type 2 diabetic patients; Bruttomesso D, Pianta A, Mari A, Valerio A, Marescotti M, Avogaro A, Tiengo A, Del Prato S)。
【0016】
したがって、総合的な血糖管理のモニタリングにおいて摂食後のグルコースレベルを評価することは賢明であり、より有用である。摂食後のグルコースレベルは、2型糖尿病の病因、即ち、インスリン抵抗性、肝臓でのグルコース生産の増加、及びインスリン分泌の障害に関与する代謝過程をより密接に表すことができる。
【0017】
正常な個体では、食事の消費によりインスリンのバースト放出が誘発され、血清インスリン濃度の急速なスパイクを生じ、次いでこれは比較的急速に減衰する。この初期相インスリン応答は、肝臓からの内因性グルコース放出の抑制に関与する。次いで恒常性機構は、引き続くインスリン分泌(及び血清インスリン濃度)をグルコース負荷と釣り合わせる。これは、適度に上昇した血清インスリン濃度が、第2相動態と呼ばれる、ベースラインに戻る遅い減衰として観察される。
【0018】
証拠は、摂食後のグルコース恒常性の維持において極めて重要な役割を果たすのは、グルコース摂取後の、初期の比較的急速なインスリン応答であることをますます示している。インスリン濃度の初期サージは、主に内因性グルコース産生の阻害を通じて、最初のグルコースエスカレーションを制限するように作用する。したがって、糖尿病の個体において急速なインスリン応答を誘発することにより、血中グルコース恒常性が改善されることが予期される。実際には、2型糖尿病患者は、一般に、血中グルコース濃度の増加に対する応答の遅延を示す。正常な個体は通常、食物を消費して2〜3分後以内にインスリンを放出し始めるが、2型糖尿病患者は、第2相動態を伴って、血中グルコースが著しく上昇し始めるまで内因性インスリンを分泌しない場合があり、これは、インスリン濃度の遅い上昇及び安定状態の延長をもたらす。
【0019】
欠陥のある第1相「バースト」インスリン放出の結果として、内因性グルコース産生は、食事を消費した後に阻害されず、十分続き、患者は、血糖値の上昇又は高血糖を経験することに迫られる。疾患が進行するにつれて、膵臓に置かれた要求により、インスリンを産生するその能力がさらに低下し、血糖値の制御が徐々に劣化する。放っておくと、疾患は、インスリン産生の欠陥により、1型糖尿病の完全な発症に典型的な程度に近づくまで進行し得る。しかし、1型糖尿病は、初期の「蜜月」段階を伴う場合があり、その後に最初の危機が続き、ここでインスリンは依然として産生されるが、初期の2型疾患と同様の放出の欠陥が示される。
【0020】
2型糖尿病の病因におけるインスリン分泌異常の関連性は、広範に議論されてきているが、到達した明らかなコンセンサスは、グルコース代謝を調節することにおいてその中心的な役割を満たすために、インスリン分泌は、定量的に適切であるだけでなく、標的組織に対するインスリン作用を最適化する定性的、動的特徴も有さなければならないということである。
【0021】
さらに、いくつかの臨床的観察により、朝時間帯にわたる高い血漿グルコースエクスカーションとして顕在化する、悪化した朝食後高血糖は、2型糖尿病を有する、インスリンを使用しない患者における永続的な不全であるように思われ、これは患者の体重、患者の食事のカロリー及び栄養分含量、生物学的(HbA1c)、治療的、及び病態生理学的な(残留するβ細胞機能)状態にかかわらないことが確認された。食事に対するグルコース応答のこの概日性パターンは、朝時間における肝臓でのグルコース生産の不十分な抑制をもたらしている、肝臓のインスリン感度の障害による可能性が最も高い。同じ研究において、2型糖尿病患者では、肝グルコース産生は一晩絶食した後ピークに達し、徐々に低下して午後に最下点に達することが実証された(Diabetes 45:1044-1050, 1996 Evidence, for a circadian rhythm of insulin sensitivity in patients with NIDDM caused by cyclic changes in hepatic glucose production Boden G, Chen X, Urbain JL)。同様の機構は、曙現象により空腹時高血糖を引き起こすと考えられている(N Engl J Med 310: 746-750 1984 The "dawn phenomenon"-a common occurrence in both non-insulin-dependent and insulin-dependent diabetes mellitus, Bolli GB, Gerich JE)。
【0022】
したがって、心血管疾患のリスクを防止するために、見かけ上健康な個体、過体重の人、肥満の人、又は耐糖能障害を有する人において、摂食後グルコースエクスカーションを減少させるための安全な、有効な薬剤が非常に必要である。
【0023】
また、心血管疾患及び摂食後グルコースエクスカーションに関連する他の合併症のリスクを低減するために、2型糖尿病対象における摂食後のグルコースエクスカーション及び食後高血糖を低減するための安全な、有効な薬剤が非常に必要である。
【0024】
1型糖尿病患者は、現在、インスリンを用いて治療される一方で、2型糖尿病患者の大部分は、β細胞機能を刺激する薬剤、又はインスリンに向けた患者の組織感度を高める薬剤を用いて治療される。これらの薬剤は、一般に経口で摂取され、したがって一括して経口血糖降下剤と呼ばれる。最も一般的なインスリン抵抗改善経口血糖降下剤は、グリタゾン(例えば、ピオグリタゾン及びロシグリタゾン)、並びにビグアナイド(例えば、ブホルミン及びメトホルミン)である。
【0025】
血液中のグルコース濃度を低下させるのに有効である、現在利用可能な経口血糖降下剤及び他のインスリン分泌剤は、肝臓のインスリン抵抗性を克服するのに完全に有効ではなく、この抵抗性は、朝食後の血糖エクスカーションを強めるだけでなく、一般に昼食後及び夕食後の血糖エクスカーションの一因にもなる。安全な、有効な経口血糖降下剤の中で、グアニジン誘導体のメトホルミンは、依然として、2型糖尿病の管理において使用するために指示される、最も一般に処方される経口抗糖尿病薬である。
【0026】
メトホルミンは、肝選択的なインスリン感作物質であり、これは、空腹時血中グルコース及び%HbA1cを順調に低下させ、低血糖症又は高インスリン血症を引き起こさない。これは、30年を超えて臨床で使用されているが、既知の治療プロファイルは、1日2回又は3回の投与を必要とする従来の即時放出製剤、及びより最近では、1日1回の投与を可能にする持続放出製剤からの治療に大部分は基づいている。これらの製剤の有効性は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)及び空腹時血中グルコースを低下させることに主に基づいている。HbA1cは、成人ヘモグロビン(HbA)へのグルコースの遅い非酵素結合(糖化)によって形成される翻訳後修飾であるので、ヘモグロビンA1Cの程度は、以前の2〜3カ月にわたる平均血糖の尺度として使用することができ、長期間血糖管理の評価のための優れた基準として臨床業務において採用されている。
【0027】
米国特許第3,174,901号明細書には、ビグアナイド降圧剤のメトホルミンが開示されている。塩酸塩の形態での即時放出製剤は、Bristol-Myers Squibb Co.によって、商標名Glucophage(登録商標)錠剤で米国内で現在市販されている。それぞれのGlucophage(登録商標)錠剤は、500mg、850mg、又は1000mgのメトホルミン塩酸塩を含有する。Glucophage(登録商標)を用いた糖尿病における高血糖の管理についての定められた投与量レジメンはまったく存在しない。Glucophage(登録商標)の投与量は、有効性及びトレランスの両方に基づいて個別化されるが、1日当たり2550mgの最大推奨用量を超えない。しかし、短期作用薬であるので、メトホルミンは、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回(t.i.d.)の投薬を必要とする。メトホルミンの使用に関連する有害事象は、本質的に胃腸のものであることが多い(例えば、食欲不振症、吐き気、嘔吐、及び時に下痢など)。これらの有害事象は、初期用量及び/若しくは維持用量を低減し、又は持続放出剤形を使用することによって部分的に回避することができる。
【0028】
米国特許第6,660,300号明細書には、1日1回療法を提供し、即時放出対応物に関連する有害事象の発生を低減するために、メトホルミンの制御放出及び持続放出の医薬剤形をもたらすのに使用される組成物及び技法が開示されている。50th Edition of the Physicians' Desk Reference, copyright 1996, p. 753には、「食物は、Glucophage(登録商標)剤形によって送達されるメトホルミンの程度を減少させ、このメトホルミンの吸収をわずかに遅延させる。この減少は、空腹時条件下で投与された同様の錠剤と比較して、食物とともに850mgのメトホルミン塩酸塩を含有する1個のGlucophage(登録商標)錠剤を投与した後の、約40%低いピーク濃度、25%低いバイオアベイラビリティ、及びピーク血漿濃度までの時間の35分の延長によって示される」ことが報告されている。
【0029】
米国特許第6,660,300号明細書、同第6,099,862号明細書、同第6,340,475号明細書、及び同第6,488,962号明細書によって本明細書に参照されている、持続放出メトホルミン剤形を製造する方法では、上部胃腸管内の滞留時間を延ばすことによって、メトホルミン放出を延長することが可能であることが教示されている。これらの従来技術の剤形は、固体物質についての正常な胃内通過時間に抵抗する機構と、食料供給状態(fed state)、より好ましくは、高脂肪食料供給状態における胃内滞留の延長の吸収に対する生理的な効果とを本質的に組み合わせることによる、メトホルミンの放出を延長するもっともらしい機構として、胃内滞留の延長のために様々な方法で提供されている。
【0030】
Vidon et al(Diabetes Res Clin Pract. 1988 Feb 19;4 (3):223-9 3359923)による研究では、送達過程が、胃腸管からのメトホルミン吸収についての律速要因であり、メトホルミンの透過性に制限された吸収が存在することが強く示されている。経口投与された薬物は、摂取された剤形から溶解した後、小腸を下って通過し、吸収速度が遅い場合、所与の用量からの吸収が完了する前に、薬物が透過性の乏しい領域に到達する場合がある可能性がある。
【0031】
メトホルミン経口製剤の放出の延長は、薬物のバイオアベイラビリティを常に損ね、低減することが知られている。この結果はおそらく、剤形がかなりの割合の薬物含量を担持し、薬物に対する透過性が非常に乏しい胃腸管の領域に放出されるように残るためである。投薬頻度を減らすために、剤形からの放出速度は、有効血漿レベルを延長するようでなければならないが、この速度での有効な送達に対する潜在性は、小腸近位から大腸に通過する際の薬物に対する透過性のかなりの低減と、薬物が本質的によく吸収される、胃腸管の領域内での剤形の限られた滞留時間との合わさった効果によって損なわれる。
【0032】
いくつかの従来技術の持続放出メトホルミン剤形は、最大血漿濃度間までの時間を6〜8時間の程度まで延長することによって、メトホルミンの放出を延ばす課題を克服したが、これらは、糖尿病を有する患者のための推奨食餌に反して、高脂肪食料供給条件下でのみ実現可能であり、最大血漿濃度がかなり低減する。さらに、これらの持続放出製剤は、非常に有意な食物効果薬物動態を示し、これは、複数の投薬レジメンの間に、対象内にばらつきを加える。
【0033】
米国特許第6,660,300号明細書に記載されている、1つの従来技術の持続放出メトホルミン製剤Glucophage(登録商標)XRの場合では、食事とともに摂取されると、Cmaxは平均7.0時間で実現され、ピーク血漿濃度は、同じ用量の即時放出Glucophage(登録商標)と比較して20%低いが、吸収の程度は(AUCによる測定)、Glucophage(登録商標)と同様である。
【0034】
米国特許第6,099,862号明細書に記載されている、別の従来技術の持続放出メトホルミン製剤Fortamet(登録商標)の場合では、食事とともに摂取されると、Cmaxは平均6.1時間で実現され、Cmaxは、空腹時状態で実現されるCmaxより30%高い。さらに、吸収の程度は(AUCによって測定した場合)、空腹状態で与えられた同じ用量と比較して、食料供給状態において60%高い。
【0035】
米国特許第6,340,475号明細書、及び同第6,488,962号明細書に記載されている、さらに別の従来技術の持続放出メトホルミン製剤Glumetza(登録商標)の場合では、食事とともに摂取されると、Cmaxは平均7時間で実現され、ピーク血漿濃度は、同じ用量の即時放出メトホルミンと比較した場合18%低いが、吸収の程度は(AUCによって測定した場合)、即時放出メトホルミンと同様である。さらに、Glumetza(登録商標)が、低脂肪の食事及び高脂肪の食事とともに摂取される場合、吸収の程度に(AUCによって測定した場合)35%の差異が存在する。AUCは、高脂肪の食事で高い。
【0036】
持続放出メトホルミン製剤のこれらの上述の従来技術の教示では、食料供給状態及び空腹状態の両方において、同じ用量の即時放出製剤と比較して、同等のピーク血漿濃度を実現することは誰もできないことは明らかに明白である。Cmaxは、食料供給状態において著しく低減し、最も損なわれ、食料供給状態は、皮肉なことに、従来技術の即時放出製剤及び持続放出製剤の両方にとって好適な投与方法である。空腹状態又は食事前に摂取される場合、同じ用量の即時放出製剤と比較して、同等の程度の薬物吸収を実現することは誰もできないことも明白である。持続放出製剤は、剤形の機能性に必要な好適な投与方法の理由で、空腹状態における同じ用量の即時放出対応物、又は食料供給状態における同じ用量の同じ持続放出製剤と比較した場合、空腹状態において著しく低減された程度の薬物吸収を示す。
【0037】
持続放出メトホルミンの従来技術の教示は、投与頻度の低減による明白な患者の服薬遵守の改善、及び胃腸管内での剤形からの薬物放出速度の低減による胃腸の有害作用の低減をもたらしたが、空腹状態又は食料供給状態において摂取される同じ用量の即時放出製剤と比較した場合、改善又は少なくとも同等の臨床的な有効性を得ることができることは示されていない。例えば、1日1回夕食とともに1000mg摂取される、従来技術の持続放出メトホルミン製剤Glucophage(登録商標)XR、及び1日2回(朝食及び夕食とともに)摂取される、即時放出メトホルミン500mgのGlucophage(登録商標)の24週間、二重盲検、無作為化試験が、2型糖尿病を有する患者において行われた。この試験において、試験に適格な患者は、8.5%以下のグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)、及び200mg/dL以下の空腹時血漿グルコース(FPG)レベルを有していた。治療の12週間後に、すべての群において平均HbA1cが増加し、Glucophage(登録商標)XR 1000mg群において、0.23%のベースラインからの増加は、統計的に有意であった。Glucophage(登録商標)1000mg(500mg b.i.d.)は、0.14%の増加があった。治療介入後のHbA1cレベルの増加は、有効性の減退又は乏しい有効性を示す。
【0038】
メトホルミンの方法及び組成物、即時放出及び持続放出の従来技術の教示は、a)食事前の投与に適していない、b)摂食後グルコースエクスカーションを低減することを対象にしていないか、これを低減することに適していない、c)薬物の望ましくない食物効果薬物動態を克服することができないことが明白である。さらに、Glucophage(登録商標)についての薬物モノグラフによれば、「このモノグラフによるメトホルミンの治療目的は、単剤療法として、又はスルホニル尿素若しくはインスリンと併用して使用される場合に、最低有効用量のGlucophage(登録商標)又はGlucophage(登録商標)XRを使用することによって、空腹時血漿グルコースレベル及びグリコシル化ヘモグロビンレベルの両方を、正常又は正常付近に減少させることを実現することである」。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】米国特許第3,174,901号明細書
【特許文献2】米国特許第6,660,300号明細書
【特許文献3】米国特許第6,099,862号明細書
【特許文献4】米国特許第6,340,475号明細書
【特許文献5】米国特許第6,488,962号明細書
【非特許文献】
【0040】
【非特許文献1】Arch Inter Med. 2003; 163:1306-1316
【非特許文献2】Diabetologia 39:1577-1583 ; the DIS group 1996 Risk factors for myocardial infarction and death in newly detected NIDDM: the Diabetes Intervention Study, 11 year follow-up
【非特許文献3】Lancet 354: 617-621DECODE Study Group, European Diabetes Epidemiology Group 1999 Glucose tolerance and mortality: comparison of WHO and American Diabetes Association diagnostic criteria., Diabetes study.
【非特許文献4】Diabetes Care 22:920-A 1999 Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose: the Fungata 924
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、インスリン関連障害を有するか、インスリン関連障害に罹りやすいヒトなどの哺乳動物において、摂食後グルコースエクスカーションを低減し、優れた血中グルコース管理を実現するための、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む治療方法及び組成物に関する。具体的には、本願は、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の新規経口組成物を用いて、内因性インスリン作用の有効性及び効率を改善することによって、糖尿病でない個体、前糖尿病、耐糖能障害、空腹時糖障害を有する個体、及び糖尿病を有する患者において、摂食後グルコースエクスカーションを有効に低減する方法を開示する。
【0042】
本発明の第1の態様によれば、正常な対象、又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、摂食後グルコースエクスカーションなどのグルコースエクスカーションを低減するための医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、この1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の1つの両親媒性イオン化合物を含み、その結果、液体(aqueous fluid)と接触すると、両親媒性イオン化合物は、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する医薬組成物が提供される。
【0043】
より詳細には、本発明は、正常な対象、又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において摂食後グルコースエクスカーションなどのグルコースエクスカーションを低減するための医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、この1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)単量体形態のただ1つの界面活性剤
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、各乾燥ブレンド混合物からの1つの界面活性剤、及び極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩は、対象の胃腸管内にある液体中に各乾燥ブレンド混合物が溶解すると反対に帯電し、
各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の1つの界面活性剤を含み、その結果、水性流体中でそれぞれの乾燥ブレンドが溶解した後、この1つの界面活性剤は、水性流体中で臨界逆ミセル濃度に到達し、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する医薬組成物を提供する。
【0044】
本発明は、本発明の第1の態様において定義される、以下の例の医薬組成物も提供する。
【0045】
一例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤(release controlling agent)をさらに含む。
【0046】
別の例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物でコーティング又は層状化される。
【0047】
さらなる例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含むか、これらでコーティング又は層状化される。
【0048】
別の例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、対象の中央から下部の胃腸管において医薬組成物の滞留時間を延ばすための、有効量の1又は2以上の粘膜付着剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む、1又は2以上の付着性組成物をさらに含むか、この付着性組成物で層状化又はコーティングされる。
【0049】
本発明の第2の態様では、医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、この1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、1又は2以上の活性薬剤含有層は、対象の中央から下部の胃腸管において医薬組成物の滞留時間を延ばすための、有効量の1又は2以上の粘膜付着剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む、1又は2以上の付着性組成物をさらに含むか、この付着性組成物で層状化又はコーティングされ、
1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤をさらに含み、或いは
1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物でコーティング又は層状化され、
各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の両親媒性イオン化合物を含み、その結果、水性流体と接触すると、1つの両親媒性イオン化合物は、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する医薬組成物を提供する。
【0050】
より詳細には、本発明は、医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、この1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)単量体形態のただ1つの界面活性剤
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、1又は2以上の活性薬剤含有層は、対象の中央から下部の胃腸管において医薬組成物の滞留時間を延ばすための、有効量の1又は2以上の粘膜付着剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む、1又は2以上の付着性組成物をさらに含むか、この付着組成物で層状化又はコーティングされ、
1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤をさらに含み、或いは
1又は2以上の活性薬剤含有層は、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物でコーティング又は層状化され、
各乾燥ブレンド混合物からの1つの界面活性剤、及び極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩は、対象の胃腸管内にある水性流体中に各乾燥ブレンド混合物が溶解すると反対に帯電し、
各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の1つの界面活性剤を含み、その結果、水性流体中でそれぞれの乾燥ブレンドが溶解した後、この1つの界面活性剤は、水性流体中で臨界逆ミセル濃度に到達し、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する医薬組成物を提供する。
【0051】
本発明は、本発明の第1及び第2の態様で定義される、以下の例の医薬組成物も提供する。
【0052】
一例では、放出制御剤は、水媒質中で膨潤しない化合物、例えば、セチルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物などを含む。
【0053】
別の例では、1又は2以上のpH依存性バリアポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP,hydroxypropyl methyl cellulose phthalate)、酢酸フタル酸セルロース(CAP,cellulose acetate phthalat)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択することができる。
【0054】
さらなる例では、1又は2以上の粘膜付着剤は、胃腸粘膜に結合することができる、1又は2以上の粘膜付着性ポリマーを含むことができる。
【0055】
特定の例では、1又は2以上の粘膜付着性ポリマーは、親水性ポリマー、陰イオン性ポリマー及び陽イオン性ポリマーからなる群から選択される。別の特定の例では、1又は2以上の粘膜付着性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP,polyvinyl pyrrolidone)、ポリメチルメタクリラート(polymethlymethacrylate)(Eudragit(登録商標)NE30D)、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、メチルセルロース(MC,methyl cellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC,sodium carboxymethylcellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC,hydroxypropyl cellulose)、カルボポール、ポリアクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合されたナトリウム及びカルシウム塩、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーの混合されたナトリウム及びカルシウム塩、キトサン、キトサンの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
さらなる例では、1又は2以上(one, or more than one of the one, or more than one)の付着性組成物は、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含むか、これらでコーティング又は層状化される。特定の例では、1又は2以上のpH依存性バリアポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択される。
【0057】
別の例では、単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物は、ただ1つの単量体形態の両親媒性イオン化合物からなるただ1つの単量体形態の両親媒性化合物である。
【0058】
さらなる例では、1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、約10未満のpH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数を有する。
【0059】
なおさらなる例では、1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、約10を超えるpH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数を有する。
【0060】
別の例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1、又は2以上の層中の、極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、約10未満のpH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数を有し、2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1、又は2以上の他の層中の、極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、約10を超えるpH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数を有する
【0061】
本発明は、本発明の第1及び第2の態様で定義される医薬組成物にも関し、
i)1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System)のクラスIに属し;
ii)1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIIに属し;
iii)1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIIIに属し;
iv)1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIVに属し;
v)1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIに属し、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスII、III又はIVに属し;
vi)1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIIに属し、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスI、III又はIVに属し;
vii)1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIIIに属し、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスI、II又はIVに属し;或いは
viii)1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスIVに属し、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、生物薬剤学分類システムのクラスI、II又はIIIに属する。
【0062】
さらなる例では、1又は2以上の活性薬剤含有層は、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、この2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤と同じであるか、又は異なる。
【0063】
別の例では、両親媒性イオン化合物は、約0.5重量%〜約500重量%の量で、1又は2以上の活性薬剤含有層中に存在する。
【0064】
本発明は、本発明の第1及び第2の態様で定義される医薬組成物にさらに関し、
i)1若しくは2以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の両親媒性イオン化合物は、陰イオン性界面活性剤であり、1若しくは2以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、正に帯電し;
ii)1若しくは2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける両親媒性イオン化合物は、陰イオン性界面活性剤であり、1若しくは2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、正に帯電し;
iii)1若しくは2以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の両親媒性イオン化合物は、陽イオン性界面活性剤であり、1若しくは2以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、負に帯電し;
iv)1若しくは2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける両親媒性イオン化合物は、陽イオン性界面活性剤であり、1若しくは2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、負に帯電し;又は
v)1若しくは2以上の活性薬剤含有層は、2若しくは3以上の活性薬剤含有層であり、この2若しくは3以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の両親媒性イオン化合物は、陰イオン性界面活性剤であり、この2若しくは3以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、正に帯電し、この2若しくは3以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の他の層中の両親媒性イオン化合物は、陽イオン性界面活性剤であり、この2若しくは3以上の活性薬剤含有層のうちの1若しくは2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤は、負に帯電している。
【0065】
陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム又はドデシル硫酸カリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(AOT,sodium bis(2-ethylhexyl)sulfosuccinate)、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに、陽イオン性界面活性剤は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB,didodecyl dimethyl ammonium bromide)、セチル−トリアンモニウムブロミド(CTAB,cetyl-triammonium bromide)、セチルピリジニウムブロミド(CPB,cetylpyridinium bromide)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DOTAC,dodecyl trimethyl ammonium chloride)、ナトリウムペルフルオロノナノエート(SPFN,sodium perfluorononanoate)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA,hexadecyl trimethyl ammonium bromide)、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0066】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層の乾燥ブレンド混合物は、粘度エンハンサー、希釈剤、抗粘着剤(anti-adherent)、流動促進剤、結合剤、可溶化剤、チャネリング剤、緩衝剤、香味剤(flavourant)、吸着剤、甘味剤、着色剤、滑剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。
【0067】
本発明の第1及び第2の態様で定義される医薬組成物は、圧縮若しくはペレット化法によって作製されたマトリックス固体コンパクト(matrix solid compact)、又は湿式若しくは乾式押し出し法で作製されたマトリックス押し出しスフェロイド(matrix extrusion spheroid)の形態であってもよい。
【0068】
本発明はまた、上記に定義した医薬組成物に関し、この医薬組成物は、午前食前の投与用であり、原則午前食前の1日1回の投与用であり、午前食開始前約60分から午前食開始後約60分の投与用であり、又は午前食開始前30分以内の投与用である。
【0069】
本発明の医薬組成物は、正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象におけるグルコースエクスカーションの低減用とすることができる。インスリン関連障害は、糖尿病、2型糖尿病、早期1型糖尿病、前糖尿病、又は空腹時糖障害である場合がある。
【0070】
本発明の医薬組成物の、1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤は、メトホルミンなどのビグアナイド、又は薬学的に許容されるその塩とすることができる。
【0071】
本発明は、1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中にメトホルミンを含有する医薬組成物も含み、メトホルミンは、1日1回1グラムの量での投与用、又は1日に0.25〜3.0グラムの量での投与用である。
【0072】
別の例では、本発明の医薬組成物は、インスリン抵抗性改善血糖降下剤としてメトホルミンを含み、模擬腸液(37℃でpH6.8のリン酸緩衝液)1000ml中、50rpmで、USPタイプ2装置で試験されるとき、以下の溶解プロファイルを示す:
i)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の0〜20%が、0.5時間後に放出され;
ii)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の20〜30%が、1時間後に放出され;
iii)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の30〜40%が、2時間後に放出され;
iv)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の35〜45%が、3時間後に放出され;
v)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の45〜55%が、5時間後に放出され;
vi)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の55〜65%が、7時間後に放出され;
vii)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の65〜75%が、11時間後に放出され;
viii)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の75〜85%が、16時間後に放出され;
ix)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の80%以上が、19時間後に放出され;
x)メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の85%以上が、24時間後に放出される。
【0073】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤としてメトホルミンを含む本発明の医薬組成物は、午前食又は朝食前の投与後に、1又は2以上の以下の特徴を有することができる:
i)投与後2.5〜約6.5時間の、メトホルミンの最大血漿濃度までの平均時間(Tmax);
ii)約1.0〜約10時間の、メトホルミンの平均血漿濃度/時間曲線の高さの50%での幅、及び約0.25〜約14時間の、メトホルミンの平均血漿濃度/時間曲線の高さの幅25%;
iii)投与して約24時間後でのメトホルミンの平均血漿レベルの約10倍を超える、メトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax);
iv)投与して約24時間後でのメトホルミンの血漿レベルの約10倍〜約20倍である、メトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax);
v)メトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に基づいて、約1.18μg/ml〜約1.60μg/mlのメトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax);
vi)メトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に基づいて、約10.0μg・時間/ml〜約13.0μg・時間/mlの平均AUC0〜24時間
vii)メトホルミンの1日1回2000mgの用量の投与に基づいて、約18.00μg・時間/ml〜約22.00μg・時間/mlの平均薬物曝露及びAUC0〜24時間
viii)メトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に関して、単回投与で、10.10±1.9ug.時間/mlの平均薬物曝露及び平均AUC0〜∞、並びに1.19±0.25ug/mlの平均ピーク血漿濃度及びCmaxの提供;
ix)メトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に関して、投与初日に11.75±3.90μg・時間/mlの平均AUC0〜24時間及び1.51±0.43μg/mlの平均Cmax、並びに投与7日目に12.95±3.6μg・時間/mlの平均AUC0〜24時間及び1.48±0.45μg/mlの平均Cmax;又は
x)4.0〜6.0の平均t1/2
【0074】
本発明は、糖尿病又はグルコースエクスカーションに関連する疾患を発症するリスクを低減するための、上記に定義した医薬組成物の使用にも関する。
【0075】
本発明の医薬組成物は、投与後に対象の上部、中央、及び下部胃腸管を通じて、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を送達することができる。
【0076】
本発明の第3の態様では、正常な患者又はインスリン関連障害を有する患者において、摂食前(基礎)インスリンレベルを感作し、且つ/又は摂食後グルコースエクスカーションを低減する方法であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含む、単回投与の放出調節(modified release)医薬組成物を患者に投与するステップを含み、1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、治療有効量のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、及び患者が午前食を摂取する前に、医薬組成物からのインスリン感作経口血糖降下剤の放出を制御するための有効量の放出制御剤を含み、医薬組成物の投与後に、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の、ある血漿濃度が経時的に患者において実現され、その結果、用量の投与後に、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の最大血漿濃度(Cmax)の50パーセントが、約1〜約12時間、約1.0〜10.0時間、若しくはその間の値の任意のサブ範囲、又は約2.0〜8.0時間、若しくはその間の値のサブ範囲、約0.5時間の期間、患者において持続される方法が提供される。
【0077】
本発明の方法は、1又は2以上の以下の有利な結果を生じることができる:
・臨床的に関連した遅発型インスリン媒介性グルコース処理の発生率を低減する;
・肝臓組織分布及び末梢組織分布を改善する;
・肝臓組織及び末梢組織における、基礎インスリン及び分泌インスリンの両方の感作を改善する;
・12〜24時間の期間の抗血糖降下薬(anti-hypoglycemic drug)の治療レベルを提供する;
・食物とともに摂取されてもバイオアベイラビリティの減少を示さない;
・投与して2.5〜6.5時間後の間に得られるピーク血漿レベルを伴った、1日を通した薬物の治療レベルをもたらす;
・投与して約24時間後で薬剤の血漿レベルの約8倍〜約20倍の経口血糖降下剤の平均最大血漿濃度(Cmax)をもたらす;
・胃内保持を伴うことなく、胃の後での十分な吸収で、拡張した吸収をもたらす。
【0078】
本発明の放出調節医薬組成物の1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層において使用されるインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤がメトホルミンである場合、本発明の方法は、1又は2以上の以下の追加の有利な結果を生じることができる:
・等価用量の1日1回の持続放出メトホルミン組成物参照基準品より、摂食後グルコースエクスカーションを少なくとも25%低減する一方で、参照基準品と、実質的に同様の血漿メトホルミン曝露をもたらす;
・等価用量の1日2回の即時放出メトホルミン組成物参照基準品より、摂食後グルコースエクスカーションを少なくとも25%低減する一方で、参照基準品と、実質的に同様の血漿メトホルミン曝露をもたらす;
・食事とともに1日2回投与される、等価用量のGlucophage(登録商標)によってもたらされるTmaxと比べて遅延したTmaxをもたらす。遅延したTmaxは、投与して約2.5〜約7時間後、又は約3.5〜約7.0時間後に起こり得る;
・食事とともに1日2回投与される、等価用量のGlucophage(登録商標)、又は食事とともに1日1回投与される、等価用量のGlucophage(登録商標)XRによってもたらされる平均最大血漿濃度(Cmax)と比較して、より高いCmaxをもたらす。このより高いCmaxは、1ミリリットル当たり約1.2〜1.52マイクログラムとなり得る;
・1日2回投与される、等価用量のGlucophage(登録商標)によって生じるものの少なくとも80%である全メトホルミン曝露(AUC0〜24時間)をもたらす。
【0079】
本発明の第3の態様の方法の例では、医薬組成物を投与した後に、患者においてインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の最大血漿濃度(Cmax)の25パーセントが、約1〜約14時間、又は約1.0〜12.0時間の期間持続されるようなインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の血漿濃度が、時間とともに患者において実現される。
【0080】
上記方法の別の例では、放出調節医薬組成物は、上述した本発明の第1又は第2の態様の医薬組成物である。他の例では、放出調節医薬組成物は、米国特許第6,309,663号明細書、又は米国特許出願公開第2006/0025346号明細書に開示された放出調節組成物である。
【0081】
本発明の第3の態様の放出調節医薬組成物は、投与後に対象の上部、中央、及び下部胃腸管を通じてインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を送達することができる。
【0082】
上記方法のさらなる例では、調製放出医薬組成物は、対象が午前食を始める時間の約10分〜30分前、又は30分を越える前から、対象が食事を始めて約5分後に投与される。
【0083】
なおさらなる例では、グルコースエクスカーションは、グルコース濃度対時間曲線下の24時間の正の増加性の面積(iAUC0〜24)によって求められ、グルコースエクスカーションの変化(ΔiAUC0〜24)は、実質的に同様の血糖負荷の同様の食事条件下で、経口血糖降下剤を含む医薬組成物を用いて処置する前後で求めたiAUC0〜24の値を比較することによって求められる。
【0084】
第4の態様では、本発明は、正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象においてグルコースエクスカーションを低減するために、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物を含む逆ミセルを提供し、これは、本発明の第1及び第2の態様で上記に定義された医薬組成物から作製することができる。
【0085】
本発明の第5の態様では、正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、摂食後グルコースエクスカーションなどのグルコースエクスカーションを低減するための方法であって、
i)上記に定義した医薬組成物を対象に経口投与するステップと、
ii)極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩を含む逆ミセルを、対象の胃腸管内で形成させ、対象の胃腸管全体にわたって吸収させ、それによって、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩を対象に送達するステップと
を含む方法が提供される。
【0086】
より詳細には、本発明は、正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、摂食後のグルコースエクスカーションなどのグルコースエクスカーションを低減するための方法であって、
i)1又は2以上の活性薬剤含有層を含む医薬組成物を対象に経口投与するステップであって、1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれは、
治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
単量体形態のただ1つの界面活性剤
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、各乾燥ブレンド混合物からの1つの界面活性剤、及び極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩は、対象の胃腸管内にある水性流体中に各乾燥ブレンド混合物が溶解すると反対に帯電し、
各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の1つの界面活性剤を含み、その結果、水性流体中で各乾燥ブレンド混合物が溶解した後、この1つの界面活性剤は、水性流体中で臨界逆ミセル濃度に到達し、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成するステップと、
ii)各乾燥ブレンド混合物からの極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩を含む逆ミセルを、対象の胃腸管内で形成させ、対象の胃腸管全体にわたって吸収させ、それによって、各乾燥ブレンド混合物からの極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩を対象に送達するステップと
を含む方法を提供する。
【0087】
2型糖尿病患者におけるメトホルミンとインスリン療法の組合せは、メトホルミン又はインスリン療法単独と比較して、優れた血中グルコース及び%HbA1c低下をもたらすことが知られている。さらに、インスリンレベルは、2型糖尿病を有する患者において使用されるメトホルミンとともに減少する。この薬物が、実際に末梢組織、例えば筋肉及び脂肪などをインスリンに対して感作するかどうかは、依然として議論の余地がある。しかし、インビボで定量的及び動態学的な特性を有し、その結果、正常な対象の第1相インスリン放出を模倣し、肝実質細胞及び末梢組織中に十分に及び好ましく分布される割合で、治療有効量の薬物が全身的に利用可能である経口血糖降下剤製剤は、実際にこれらの組織をインスリンに対して感作することができると仮定することは、かなりもっともらしい。
【0088】
標的組織においてインスリン媒介性グルコース排除に関する生理的要求を模倣する様式でのメトホルミンのタイミング及び分配は、内因性インスリン作用を増強するのに有効となる優れた療法を提供する。これらはさらには、グルコースエクスカーションを低下させることにおいて薬物の有効性を改善し、その結果、厳しい短期間血糖管理をもたらすことができる。
【0089】
メトホルミン濃度の急速なスパイクの効果を増強することを活用することによって、2型糖尿病患者又はインスリン関連障害を有する患者における基礎分泌及び損なわれたバースト分泌からの内因性インスリンがどちらも、好ましくは、正常な第1相インスリン動態の効果を模倣するように感作されることを仮定することは妥当である。本発明の経口血糖降下剤組成物は、食事を開始する数分前に投与することができ、通常食後に摂取される、よりゆっくりと吸収される持続放出及び又は吸収開始の遅い従来技術の即時放出メトホルミン製剤と異なる。即時又は持続放出剤形の両方において、従来技術のメトホルミン製剤の食料供給状態における投薬間隔及び投与方法は、一般に、患者の耐容性、最大吸収に好都合な条件、及び最大メトホルミン濃度を実現するのに必要な時間に基づく。
【0090】
一般に、任意の時点でのグルコース消失速度は、その時点でのインスリン濃度の関数であると仮定されている。実際には、任意の特定のインスリン濃度によって実現されるグルコース消失速度は、肝実質細胞及び末梢組織の、利用可能なインスリンに対して前に「感作された」又は「初回刺激を受けた」状態によって影響される。したがって、グルコース処理速度は、グルコース消失を機能的に促進することができる標的組織におけるインスリンの以前のレベルによって一定に増強される。したがって、任意の特定のインスリン濃度について、グルコース消失速度は、対象がインスリン濃度の高いサージを最近経験し、且つ/又は標的組織におけるインスリン受容体が、先行する時間間隔において、利用可能なインスリンに対して初回刺激を受けたか、感作された場合、より大きい。
【0091】
1日2回食後に摂取される、従来技術の即時放出処置に由来する不十分なグルコース低下療法は、グルコース消失速度は、インスリン濃度の関数であるという暗黙の仮定に基づいていた。さらに、1日1回夕食後に摂取される、従来技術の持続放出メトホルミンに由来する不十分なグルコース低下療法は、グルコース消失は、糖新生のピーク期間(午前2時頃、又は朝の早い時間)の間に最も必要であるという仮定に基づいていた。
【0092】
本願では、摂食後グルコースエクスカーションの治療及び改善用の急速吸収放出調節経口血糖降下剤組成物の薬物動態及び薬力学の研究を行い、意外にも、インスリン作用の好都合な増強は、適切に送達されたトホルミンなどのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤によって、健康な個体及び糖尿病の個体において実現することができることを実証した。経口血糖降下剤の急速な吸収に由来するこの増強は、グルコース消失速度をはるかに急速に最大に至らせ、治療有効レベルの経口血糖降下剤の連続性及び持続性の吸収は、1日の間の複数の食後のグルコース負荷に応答して、長時間にわたって増強を促進すると仮定される。
【0093】
血清メトホルミン濃度の急速な上昇及び延長を生じる、急速吸収放出調節経口血糖降下剤製剤の増強効果によって、この製剤は、より容易に食事と連携して作用させることができる。最大グルコース消失速度を急速に獲得し、放出調節剤形からの経口血糖降下剤をゆっくり放出することにより、胃腸の有害作用が低減される一方で、血中グルコースを低下させるための優れた療法が促進される。急速吸収放出調節経口血糖降下剤組成物の経口剤形は、食事時間前の投与、又は食事を開始して最大1時間後の投与にもよく適している。内因性第2相及び基礎のインスリンも経口血糖降下剤によって増強され、その限られたインスリンの有効性を増大させ、膵臓のストレスを低減するという点で、インスリンを産生するいくらかの能力を保持する糖尿病患者において、さらなる利点が認識される。
【0094】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付の図面に対して参照が行われている以下の説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】37℃の温度で、pH6.8のリン酸緩衝液中、USPタイプII溶解装置を用いて50rpmで試験した、本発明の医薬組成物の一例である、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの溶解プロファイルを例示する図である。放出された薬物(%)は、ある期間(時間)にわたって放出されたメトホルミンの平均値である。
【図2】37℃の温度で、pH6.8のリン酸緩衝液中、USPタイプII溶解装置を用いて50rpmで試験した、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg、Glucophage(登録商標)XR(持続放出メトホルミン)、Glucophage(登録商標)(即時放出メトホルミン)の溶解プロファイルの比較プロットを例示する図である。放出された薬物(%)は、ある期間(時間)にわたって放出されたメトホルミンの平均値である。
【図3】37℃の温度で、pH6.8のリン酸緩衝液中、USPタイプII溶解装置を用いて50rpmで試験した、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)XR(持続放出メトホルミン)の溶解プロファイルの比較プロットを例示する図である。放出された薬物(%)は、ある期間(時間)にわたって放出されたメトホルミンの平均値である。
【図4】25人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与空腹状態クロスオーバーバイオアベイラビリティ試験の間の、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)1000mg(2×500mg)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図5】26人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与空腹状態クロスオーバー用量−比例バイオアベイラビリティ試験の間の、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg、GlycoBien(登録商標)CR 2000mg(2×1000mg)、及びGlucophage(登録商標)1000mg(2×500mg)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図6】25人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与食物効果クロスオーバーバイオアベイラビリティ試験の間に、空腹状態で摂取される、及び高脂肪食後に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図7】18人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与食物効果クロスオーバーバイオアベイラビリティ試験において、低脂肪食後に摂取される、及び高脂肪食後に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図8A】14人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与クロスオーバー薬物動態試験において、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図8B】13人の健康な男性及び女性を対象とした、複数回投与定常状態クロスオーバー薬物動態試験において、7日目の後に、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図9A】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)を用いた処置の、複数回投与クロスオーバー薬力学試験において、7日目に血糖負荷標準食(standardized meal)を摂食した13人の健康な男性及び女性を対象とした、1日の摂食後血漿血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜24)の比較プロットを例示する図である。
【図9B】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)を用いた処置の、定常状態クロスオーバー薬力学試験において、血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、単回投与及び複数回投与の両方の、1日の摂食後血漿血糖エクスカーション(血清グルコース iAUC0〜24)の比較プロットを例示する図である。
【図9C】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)を用いた単回投与処置の、クロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、及び夕食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、朝食、昼食、及び夕食を摂食後の血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜x)の比較プロットを例示する図である。
【図9D】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mg)を用いた複数回投与処置の、7日目でのクロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、及び夕食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、朝食、昼食、及び夕食を摂食後の血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜24)の比較プロットを例示する図である。
【図10A】10人の健康な男性及び女性を対象とした、単回投与クロスオーバー薬物動態試験において、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図10B】10人の健康な男性及び女性を対象とした、複数回投与定常状態クロスオーバー薬物動態において、7日目で、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及び朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)の血漿メトホルミン濃度−時間プロファイルの比較プロットを例示する図である。
【図11A】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)を用いた処置の、複数回投与クロスオーバー薬力学試験において、7日目に血糖負荷標準食を摂食した10人の健康な男性及び女性を対象とした、1日の摂食後血漿血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜24)の比較プロットを例示する図である。
【図11B】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)を用いた処置の、定常状態クロスオーバー薬力学試験において、血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、単回投与及び複数回投与の両方の1日の摂食後血漿血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜24)の比較プロットを例示する図である。
【図11C】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg (500mg b.i.d.)を用いた単回投与処置のクロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、及び夕食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、朝食、昼食、及び夕食を摂食後の血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜x)の比較プロットを例示する図である。
【図11D】プラセボ、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)を用いた複数回投与処置の、7日目でのクロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、及び夕食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、朝食、昼食、及び夕食を摂食後の血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜x)の比較プロットを例示する図である。
【図12A】朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)のクロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、夕食及び間食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とした、単回投与薬力学試験における、インスリン応答、総合的な血糖応答(血清グルコースAUC)、及び摂食後血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜x)の比較プロットを例示する図である。
【図12B】朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、並びに朝食及び夕食後に1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)500mg(500mg b.i.d.)のクロスオーバー薬力学試験において、朝食、昼食、夕食及び間食について血糖負荷標準食を摂食した健康な男性及び女性を対象とし、処置の7日目の、複数回投与薬力学試験における、インスリン応答、総合的な血糖応答(血清グルコースAUC)、及び摂食後血糖エクスカーション(血清グルコースiAUC0〜x)の比較プロットを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、インスリン関連障害を有するか、インスリン関連障害に罹りやすいヒトなどの哺乳動物において、摂食後グルコースエクスカーションを低減し、優れた血中グルコース管理を実現するための、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む治療方法及び組成物に関する。具体的には、本願は、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の新規経口組成物を用いて、内因性インスリン作用の有効性及び効率を改善することによって、糖尿病でない個体、前糖尿病、耐糖能障害、空腹時糖障害を有する個体、及び糖尿病を有する患者において、摂食後グルコースエクスカーションを有効に低減する方法を開示する。
【0097】
用語の定義
本明細書で使用する場合、用語「糖尿病」は、2型(II型)糖尿病、即ちインスリン非依存性糖尿病を指す。
【0098】
本明細書で使用する場合、「インスリン関連障害」は、ヒトなどの哺乳動物において、インスリンの産生、調節、代謝、及び作用を伴う障害を指す。インスリン関連障害として、それだけに限らないが、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、低血糖、高血糖、インスリン抵抗性、膵臓β細胞機能の喪失、及び膵臓β細胞の喪失が挙げられる。
【0099】
本明細書で使用する場合、「第1相」インスリンは、食事の結果として誘発された膵臓からのインスリンのバースト放出を指す。第1相放出により、血中インスリン濃度のスパイクが生じ、これは急速なピークとして現れ、このピークは比較的急速に減衰する。
【0100】
本明細書で使用する場合、「第2相」インスリンは、インスリンの中程度の上昇を指し、これは、第1相が過ぎた後に減衰して徐々にベースラインに戻る。第2相は、血糖値の上昇に対する応答におけるインスリンの非スパイク放出を指すこともできる。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「メトホルミン」は、メトホルミン塩基又は任意の薬学的に許容されるその塩、例えば、米国特許第6,031,004号明細書に開示されている塩酸塩、メトホルミン(2:1)フマル酸塩、及びメトホルミン(2:1)コハク酸塩や、臭化水素酸塩、p−クロロフェノキシ酢酸塩、又はエンボン酸塩、並びにモノカルボン酸及び二塩基性カルボン酸の他の既知のメトホルミン塩などを意味する。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「グルコースエクスカーション」は、ある時間にわたる、ベースラインを超えた血中グルコースの正の変化として測定される、増加性の血中グルコース応答を指す。ベースライン血糖値は、空腹時又は食事前血中グルコースなどの、恒常性状態において得られる基礎グルコースとして仮定される。定量的には、この脈絡におけるグルコースエクスカーションは、式1によって、及びベースラインとして空腹時又は食事前血糖値を使用して求められる、ある時間にわたる血中又は血漿グルコース濃度時間曲線下の正に増加性の面積(iAUC)として表される。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「正の増加性のAUC」、即ち「iAUC」は、ベースラインとして空腹時血中グルコース又は他の食事前時点を使用し、ゼロ又は選択された食事前ベースライン未満の任意の値を無視した、血中グルコース濃度−時間曲線下面積(AUC)の計算である。iAUCは、ある時間、例えば0〜3時間、0〜4時間、又は0〜24時間などにわたって求められる。正のiAUC計算は、式1によって求められる。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「グルコースエクスカーションの変化」はΔiAUC0〜tであり、又は正の増加性のAUCの変化は、炭水化物食負荷の指定された条件下で、治療介入若しくはプラセボ処置を用いずに得られたiAUCと、炭水化物食負荷の同様の条件下、及び同じ時間にわたる、治療介入若しくは薬物処置を用いて得られたiAUCとの間の差異の計算である。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「空腹時」又は「空腹状態」は、対象が、調剤投与前の少なくとも10時間の期間にわたって、いずれの食事も取らず(水の消費を除く)、投与後最低さらに4時間、連続した絶食が続く条件を指す。一般に、空腹時又は空腹状態での薬物の投与は、10時間の絶食、及び最初の食事の消費前の、投与後のさらに4時間の絶食後に確立される。
【0106】
本明細書で使用する場合、用語「摂食前のグルコース」は、摂食を開始する直前の血糖値を指す。「摂食後のグルコース」は、摂食後の血糖値を指す。
【0107】
本明細書で使用する場合、「摂食後」は、食事又は間食を摂取した後のある時間を指す。摂食後グルコースは、食事の消費を開始した後の様々な時点で測定することができ、食事の摂取を開始してから0〜240分まで変化し得る。遅い摂食後は、食事又は間食を摂取して約3〜4時間又はそれ以上後の時間を指す。
【0108】
本明細書で使用する場合、「摂食後グルコースエクスカーション」は、空腹時又は食事前ベースラインを超える、指定された期間にわたり、AUC0〜t又は正の増加性のAUC0〜tなどの、グルコース濃度の変化を測定するための所望の指数に基づいた、血漿又は血清グルコース濃度対時間曲線下面積(AUC)を指す。
【0109】
本明細書で使用する場合、「グルコース消失速度」は、グルコースが血液から消失する速度である。
【0110】
本明細書で使用する場合、「高血糖」は、正常より高い、空腹時又は摂食後の血中グルコース濃度であり、通常126mg/dL又はそれ以上である。いくつかの研究では、高血糖エピソードは、280mg/dL(15.6mM)を超える血中グルコース濃度として定義された。
【0111】
用語「午前」は、本発明の調剤投与に関してこれを本明細書で使用する場合、患者が一晩の睡眠から目覚めた後のその日の早期、一般に約6a.m.〜11a.m.に(本明細書でそのように指定されない限り、その時に朝食が食べられるかどうかにかかわらず)、剤形が経口投与されることを意味する。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「朝食」又は「朝食時」は、朝食が通常食べられる時間(本明細書でそのように指定されない限り、その時食事が実際に食べられるかどうかにかかわらず)、一般に約6a.m.〜10a.m.に関して使用される。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「昼食時間」又は「昼食時」は、昼食が通常食べられる時間(本明細書でそのように指定されない限り、その時食事が実際に食べられるかどうかにかかわらず)、一般に約11a.m.〜2p.m.に関して使用される。
【0114】
本明細書で使用する場合、用語「夕食時間」又は「夕食時」は、夕食が通常食べられる時間(本明細書でそのように指定されない限り、その時食事が実際に食べられるかどうかにかかわらず)、一般に約4p.m.〜8p.m.に関して使用される。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「Cmax」は、投薬間隔内で得られる薬物の最高血漿濃度である。
【0116】
用語「Cmin」は、投薬間隔内で得られる薬物の最低血漿濃度である。
【0117】
用語「Cavg」は、本明細書で使用する場合、投薬間隔内での薬物の平均血漿濃度を意味する。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「変動指数(%)」は、[{Cmax−Cmin}/Cavg]×100として表される。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語「Tmax」は、剤形の投与後に経過する時間であり、この時点で薬物の血漿濃度が、投薬間隔内の最高血漿濃度に達する。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「放出調節」、「持続放出」、「徐放」及び「制御放出」は、剤形の特性を定義するのに使用され、その結果、活性成分コンポーネントの放出は遅く、対応する急速又は即時放出対応物より実質的に長い時間にわたって起こる。
【0121】
本明細書で使用する場合、用語「急速吸収放出調節」は、本発明の剤形に関して使用され、活性成分の放出は遅く、長時間にわたって起こるが、本発明の組成物は、放出された活性成分の吸収を増強することができ、したがって、本質的に予期されるより速い速度の吸収をもたらす。この治療様式により、インスリン関連障害、例えば、糖尿病、前糖尿病、耐糖能障害などを有する患者、又はインスリン関連障害を発症しやすい健康な個体において、糖尿病でない個体のインスリン作用を模倣する様式で、インスリン作用が有効に増強される。より具体的には、本発明は、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、例えば、ビグアナイド、例えば、メトホルミン、フェンホルミン若しくはブホルミンなど、又は薬学的に許容されるその塩、例えば、メトホルミン塩酸塩若しくは米国特許第3,957,853号明細書及び同第4,080,472号明細書に記載されているメトホルミン塩などを含む、急速吸収放出調節経口投与組成物に関する。
【0122】
用語「両親媒性(amphipathic)イオン化合物」又は「両親媒性(amphiphilic)イオン化合物」とは、その分子又はイオンが、極性溶媒及び非極性溶媒の両方に対してある特定の親和性を有する、合成又は別の方法の任意の化合物を意味する。本明細書で使用する場合、用語「両親媒性(amphipathic)化合物」は、用語「両親媒性(amphiphilic)化合物」と同義であることを意味する。
【0123】
「臨界ミセル濃度」(CMC,critical micelle concentration)は、特定の溶媒中でミセル相を形成するのに必要とされる、最低量の両親媒性化合物(例えば、界面活性剤)を定義し、その溶媒中の界面活性剤単量体の溶解度を表すとみなすことができる。
【0124】
「臨界逆ミセル濃度」(CrMC,critical reverse micelle concentration)は、本明細書で使用する場合、特定のイオンを含有する特定の溶媒中で逆ミセル相を形成するのに必要とされる、最低量の両親媒性化合物(例えば、界面活性剤)を定義する。
【0125】
用語「イオン単量体」とは、陽イオン性単量体及び陰イオン性単量体、即ち、エチレン的に不飽和の基を含有する単量体分子の一部が、それぞれ正電荷又は負電荷を有する単量体を意味する。
【0126】
グルコースエクスカーションの評価
血糖エクスカーションは、空腹時又は基礎の食事前レベルを超える血中グルコース値の漸増上昇として定義することができる。グルコースエクスカーションの正味の値は、糖新生及びグリコーゲン分解などの過程からの内因性の寄与、並びに炭水化物代謝からの外因性の寄与の結果である。ほとんどのグルコースエクスカーションに対する主要な寄与は、食事に関連する炭水化物負荷からであるが、1又は複数の代謝的な欠陥による有意な寄与も、特に糖尿病の個体において、内因性過程からの寄与を強調する場合がある。
【0127】
インスリン関連障害の結果としての高血糖の研究は、処理の動態(速度)及び熱力学(程度)の両方の機能として、総合的なグルコース処理に対処しなければならない。グルコース処理の程度に相関する有用で、確立された指数は、空腹時血中グルコース及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)である。これらの指標は、総合的なグルコース管理、即ち熱力学機能の有用な尺度である。1日を通した、及び一連の食事負荷にわたる摂食後グルコースエクスカーションの評価は、動的過程及び動態学的機能であり、これらは、空腹時又は食事前ベースラインを超える血糖値上昇の複数のサンプリング及び評価を必要とする。
【0128】
血中グルコース応答を測定するための、普遍的に「正しい」又は「間違った」方法はまったく存在しない。様々な目的のために様々な方法が必要とされる。例えば、糖尿病に対する新しい治療が、血中グルコース濃度、全血中グルコースAUC、経時的な平均濃度の程度を低減するかどうかを判定することにより、その治療の結果を示すことができる。しかし、新しい治療が、血中グルコースエクスカーションを低減するかどうかを判定するためには、正の増加性の全AUC(iAUC)が好適であり、その理由は、グルコースエクスカーションが、ベースラインを超える、経時的な変化の尺度であるためである。一部の研究者らは、増加性のAUC(iAUC)の概念を使用することによって、糖尿病状態における高血糖、及び収集した有益な洞察を評価した。例えば、Monnier et al(Diabetes Care 2003;26:881-5.: Contributions of fasting and postprandial plasma glucose increments to the overall diurnal hyperglycemia of Type 2 and diabetic patients.)は、2型を有する患者における全体的な高血糖に対する摂食後及び空腹時グルコースの増加の寄与を調査し、iAUCを使用することによって、全体的な昼行性の高血糖に対する血中グルコース増加の、これらの2つの本質的に異なるが重要な原因によって築かれる別々の、及び認識可能な寄与を描写した。別の研究では、Rassam et al(Diabetes Care 1999; 22:133-6: Optimal administration of Lispro(登録商標)Insulin in hyperglycemic Type I diabetes.)は、iAUCの概念を適用することによって、I型糖尿病を有する患者における高血糖の発症に対する、薬物Lispro(登録商標)(インスリン類似体)の投薬スケジュールの効果を調査した。彼らは、iAUCの適用により、観察された高血糖性エクスカーションの有意な差異を識別することにおいて強力なツールが提供され、高血糖患者における薬物のより適切な投薬スケジュールの勧告が導かれることを実証することができた。
【0129】
食事負荷後のある時間にわたる、血中グルコース値についての、ベースライン未満の任意の面積を無視した正のiAUCは、Wolever et al.(British Journal of Nutrition (2004), 91, 295-300: Effect of blood sampling schedule and method of calculating the area under the curve on validity and precision of glycaemic index values)の方法によって記載され、計算されており、摂食後グルコースエクスカーションの適切な尺度である。式1は、iAUCを求めるための式を提供する。この方法は、複数の時点での真の血糖エクスカーションのより感度のよい評価を可能にする一方で、エクスカーションに関係しない血中グルコース値、即ち、空腹時ベースライン未満の値を無視する。
【0130】
式1:時間t、t、...tにおいて、グルコースについての血液分析物濃度(Gとして示す)は、それぞれG、G、...Gであると仮定して、
X=1
AUC=ΣA
(式中、A=x番目の時間間隔についてのAUCであり、x番目の時間間隔は、時間t(x−1)〜tの間隔である)。
第1の時間間隔(即ち、x=1)について:
>Gの場合、A=(G−G)×(t−t)/2であり、さもなければA=0である。
他の時間間隔(即ち、x>1)について:
>G及びG(x−1)>Gである場合、A={[(G−G)/2]+(G(x−1)−G)/2)×(t−t(x−1))であり、
>G及びG(x−1)<Gである場合、A=[(G−G)2/(G−G(x−1))]×(t−t(x−1))/2であり、
<G及びG(x−1)>Gである場合、A=[(G(x−1)−G)2/(G(x−1)−G)]×(t−t(x−1))/2であり、
<G及びG(x−1)<Gである場合、A=0である。
【0131】
糖尿病などのインスリン関連障害の治療を目的とした、いくつかの治療薬が存在する。薬物治療の主力は、経口抗糖尿病剤である。インスリンは通常、経口抗糖尿病剤を用いても空腹時血漿グルコース若しくはHbA1cの目標を実現しないか、又は経口抗糖尿病剤を許容することができない患者のために準備される。
【0132】
インスリン療法は、摂食後グルコースエクスカーション及び高血糖を低減するのに最も有効であるとみなされているが、インスリン療法に共通の問題は、食事グルコース負荷を制御するのに十分なインスリン投与は、長い間隔にわたってグルコース消失速度を上昇させる場合があり、これは、食事後に持続する場合があり、摂食後低血糖症に至ることである。さらに、インスリン療法投与は、1日に数回の注射を必要とし、これは患者にとって不都合である。代替の療法は、経口血糖降下剤(OHA,oral hypoglycemic agent)である。利用可能な5つのクラスの経口血糖降下剤、即ち、スルホニル尿素、ビグアナイド、α−グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、及び非スルホニル尿素分泌促進物質が存在する。これらは、糖尿病における薬理及び役割に関して差異及び類似性を有する。ビグアナイドのメトホルミンは、OHAのうちでより広く処方されており、2型糖尿病の治療及び管理に関してより安全であるとみなされているが、これは、その使用に付随する低血糖症のリスクがまったくないためである。
【0133】
現在のメトホルミン療法様式は、食事負荷に応答した第2相インスリン放出を主に感作することによって、血糖値を低減することができるが、基礎及び第1相インスリンを有効に感作するのに必要な薬物動態学的特性を有していない。したがって、2型糖尿病患者における基礎インスリン及び/又は損なわれた第1相インスリンの適切な感作は、食事負荷からの切迫した高血糖及びグルコースエクスカーションに対する早期応答を誘発することにきわめて重要であると仮定することは妥当である。結果として、内因性第2相及び基礎のインスリンもメトホルミンによって増強され、その限られたインスリンの有効性を増大させ、膵臓のストレスを低減するという点で、インスリンを産生するいくらかの能力を保持する糖尿病患者において、さらなる利点が認識される。
【0134】
ある時点でのグルコース排除の速度は単純に、その時点でのインスリン濃度の関数であると一般に仮定されている。実際には、任意の特定のグルコース負荷によって実現されるグルコース消失速度は、前のインスリン濃度、インスリンの動態、組織分布、及び利用可能なインスリンの総合的な感作状態によって影響される。したがって、グルコース消失速度は、以前の高いインスリンレベルによってだけでなく、利用可能なインスリンが、肝実質細胞及び末梢組織において適切に分布し、感作されている場合にも増強される。いかなる量のグルコース負荷、及びグルコース負荷に応答して産生又は放出された生理的に利用可能なインスリン濃度でも、対象が、先行する時間間隔において、グルコース処理を促進することができる肝実質細胞及び末梢の組織中の高インスリン濃度、又は同じ組織内で適切に感作された高インスリン濃度を経験した場合、グルコース消失速度はより大きい。理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明の方法は、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤によってインスリンを適切及び適時に感作し、これは、組織内の基礎インスリン及び分泌インスリンの両方の効果を感作及び増強することができ、この増強は、グルコース消失速度をはるかに急速に最大に至らせ、通常新しいグルコース負荷によってグルコースエクスカーションを起こしやすい時期に長時間にわたって持続する。経口血糖降下剤による末梢組織及び肝実質細胞に対する基礎インスリン及び分泌インスリンの両方の初期早期の感作は、そのような組織をグルコース負荷に応答した急速なグルコース消失に対して準備させることができる。
【0135】
現在のメトホルミン療法に共通の問題は、臨床業務における現在の使用条件下での、高血糖を制御及び低減するのに十分なメトホルミンの用量では、長期の摂食後間隔にわたって、食後の高血糖を効率的に処理し、摂食後グルコースエクスカーションを効率的に低減することができる、所望のグルコース消失速度を生じないことである。その使用に付随する、耐えがたい胃腸に関連する副作用及び不快感、例えば吐き気、嘔吐、及び鼓腸などにより、メトホルミンは、食事とともに摂取するように処方される。2006年6月のBristol Myers Squibbによる、Glucophage(登録商標)及びGlucophage(登録商標)XRの処方箋製品モノグラフによれば、「GLUCOPHAGEは、食事とともに分割量で投与されるべきである一方、GLUCOPHAGE XRは一般に、夕食とともに1日1回投与されるべきである。GLUCOPHAGE又はGLUCOPHAGE XRは、低用量で開始し、段階的に用量を増やすことによって、胃腸の副作用を低減し、且つ最低用量の同定を可能にするべきである」。これは、「治療目的は、単剤療法として、又はスルホニル尿素又はインスリンと併用して使用される場合、最低有効用量のGLUCOPHAGE又はGLUCOPHAGE XRを使用することによって、空腹時血漿グルコース及びグリコシル化ヘモグロビンレベルを正常又は正常付近に減少させるためであるべきである」とさらに述べている。
【0136】
臨床業務において現在処方されているように、食事とともにメトホルミンを安全に使用及び投与した後の、経口投与後のメトホルミンの血中濃度の増加は、正常な個体及び2型糖尿病の個体において見られる食事グルコース上昇に対して生理学的応答を有効に誘発するのに必要な増加より著しく遅い。
【0137】
即時放出メトホルミン(例えば、Glucophage(登録商標))は、持続放出又は制御放出対応物(例えば、Glucophage(登録商標)XR)より高い薬物のピーク血漿濃度をもたらす治療プロファイルを生じるが、その吸収速度及び投薬間隔は、遅く、非効率でありすぎて、日常生活を通して後グルコースエクスカーションエピソードを有効に低減することができない。持続放出メトホルミン(例えば、Glucophage(登録商標)XR)は、1日1回の投与、胃腸の副作用の低減、及び患者の服薬遵守の改善という利点をもたらすが、得られる治療プロファイルは、より低く、非効率な吸収速度、及び遅すぎ且つ低すぎて、グルコースエクスカーション及び食後高血糖を低減するのに有効となり得ないピーク血漿濃度を生じる。
【0138】
現在のメトホルミン療法の別の問題は、即時放出及び持続放出製剤の両方の既知の食物効果傾向である。2006年6月のBristol Myers Squibbによる薬物モノグラフによれば、「食物は、メトホルミンの吸収の程度を減少させ、吸収をわずかに遅延させ、これは、空腹時に投与される同じ錠剤強度と比較して、食物とともにメトホルミンの1個の850mg錠剤を投与した後の、約40%低い平均ピーク血漿濃度(Cmax)、25%低い血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)、及びピーク血漿濃度までの時間(Tmax)の35分の延長によって示される」。持続放出製剤の食物効果傾向に関しては、このモノグラフは、「GLUCOPHAGE XR錠剤からのメトホルミン吸収の程度は(AUCによって測定した場合)、食物とともに投与されるとき約50%増大したが、メトホルミンのCmax及びTmaxに対する食物の効果はまったくなかった。高脂肪食及び低脂肪食はともに、GLUCOPHAGE XRの薬物動態に対して効果は同じであった」と述べている。
【0139】
したがって、メトホルミンの血中濃度のより急速な上昇をもたらし、生理的に妥当な期間にわたって治療的に有意な濃度の長期吸収を伴い、標的組織(例えば、肝実質細胞及び末梢組織)内でより効率的にメトホルミンを分布させるメトホルミン組成物及び治療方法は、インスリンを感作し、最大のグルコース消失速度を実現する、より生理的に同調した手段をもたらす。
【0140】
そのようなメトホルミン組成物は、従来の即時放出メトホルミンの治療効果を改善し、有害作用を伴わず、1日1回の持続放出メトホルミンの利点を伴う。この二重特性は、複数の間隔にわたって、肝実質細胞、引き続いて末梢組織においてインスリンを早期及び適時に感作する効果を有し、これは、内因性の基礎インスリン及び分泌インスリンを増強することによって正常なインスリン応答の模倣につながり、それによって、摂食後の高血糖及びグルコースエクスカーションを低減する。さらに、現在のメトホルミン療法の不利な食物効果を伴わないことは、そのような組成物にとって、治療有効性及び患者の服薬遵守の両方において有利となる。食物効果がないことにより、新しいメトホルミン組成物及び療法の一貫した性能が保証される。
【0141】
本発明の経口調製放出メトホルミン組成物、即ち、1日1回のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgが、食事直前に投与される場合、同じ対象が、臨床業務において日常的に処方されるように、従来技術の持続放出メトホルミン組成物、即ち食事とともに摂取されるGlucophage XR 1000mgを投与される場合より、食後の血糖値及びグルコースエクスカーションは著しく低減され、しっかりと制御される。上述の比較試験対象は、朝食、昼食、夕食及び間食にわたって同じ標準食及び血糖負荷が与えられた。全24時間の期間にわたり、及び各食事期間にわたって、グルコース血漿時間曲線下の正の増加性の面積(iAUC)によって測定した場合のグルコースエクスカーションは、非常に類似した全薬物曝露にもかかわらず、従来技術の組成物と比較して、本発明のメトホルミン組成物によって著しく鈍くなった。
【0142】
さらに、別の試験では、本発明の経口調製放出メトホルミン組成物、即ち、1日1回のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgが、食事直前に投与される場合、同じ対象が、臨床業務において日常的に処方されるように、従来技術の即時放出メトホルミン組成物、即ち食事とともに1日2回摂取されるGlucophage 500mgを投与される場合より、食後の血糖値及びグルコースエクスカーションはやはり低減され、しっかりと制御された。やはり、対象は、朝食、昼食、夕食及び間食にわたって同じ標準食及び血糖負荷が与えられた。全24時間の期間にわたり、及び各食事期間にわたって、グルコース血漿時間曲線下の正の増加性の面積(iAUC)によって測定した場合のグルコースエクスカーションは、非常に類似した全薬物曝露にもかかわらず、従来技術の組成物と比較して、本発明のメトホルミン組成物によって著しく鈍くなった。
【0143】
肝臓組織内での薬物の優先的な分布とともに、薬物の食事前投与の有効な活用、及びメトホルミン濃度の急速で顕著な増加の増強効果、その後の数時間にわたる長期の治療濃度を通じて、グルコース負荷に対する生理的応答を模倣する治療プロファイルを有するメトホルミン療法及び治療方法は、グルコースエクスカーションの治療及び改善において、優れたグルコース管理、及び従来の療法に対するいくつかの利点を提供することができる。
【0144】
優れた血中グルコース管理は、従来のメトホルミン療法(複数も)によって実現可能な任意の低減と比較した、(上昇した)グルコースエクスカーションへの曝露(iAUC)の低減、従来のメトホルミン療法(複数も)と比較した、HbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)のレベルの低減、低血糖症のリスク又は発生が実質的にまったくないこと、及び治療に対する応答のばらつきの低減として認めることができる。
【0145】
そのようなメトホルミン組成物は、朝食を開始する数分前以内に1日1回投与されることが好ましく、夕食後に通常摂取される、よりゆっくり吸収される従来技術の持続放出メトホルミン組成物と異なり、食事とともに摂取される即時放出薬物より急速に吸収され、持続放出薬物の期間に類似した長期間にわたって、薬物の持続性の治療有効濃度を維持する。
【0146】
現在のメトホルミン治療の別の問題は、不利な食物効果薬物動態であり、これは、患者の食事状態が変化するにつれて、薬物の吸収及び実現可能な最大血漿濃度を変化させる。この食物効果特性は、薬物の治療性能をそれぞれの患者内で一貫性のないものにし、摂食後グルコースエクスカーションを改善するためのインターベンションとして常に効果的でなくする場合がある。クロスオーバー、比較による食物効果バイオアベイラビリティ試験(図6)では、本発明の放出調節メトホルミン組成物、即ち、空腹状態下、並びに高脂肪食及び低脂肪食後に投与される、1日1回のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの薬物動態、臨界薬物動態パラメータ、即ちCmax、AUC、並びにTmaxは、有意に異なっていなかった。したがって、本発明の放出調節メトホルミン組成物は、慣例的な従来技術のメトホルミン組成物について周知であり、実証されている不利な食物効果薬物動態を示さない。
【0147】
食事前の1日1回の投与に適しており、本発明の所望の薬物動態学的特徴を提供することができる、放出調節メトホルミンの組成物、及びこの放出調節メトホルミンを調製する方法は、加国特許第2,468,788号明細書、及び「Reverse-micellar Drug Delivery System for Controlled Transportation and Enhanced Absorption of Agents」という表題の出願中の米国特許出願公開第2005/0255156号明細書に開示されている。
【0148】
GlycoBien(登録商標)CRは、薬剤の輸送制御及び吸収増強のための逆ミセル薬物送達システムに基づく放出調節メトホルミン組成物を指し、これは、食事前の1日1回の経口投与に適している。
【0149】
朝食前の1日1回の経口投与によるGlycoBien(登録商標)CRを用いた治療は、臨床業務において日常的に処方されるような、食事とともに摂取される従来の即時放出メトホルミン(例えば、Glucophage(登録商標))又は持続放出メトホルミン(例えば、Glucophage(登録商標)XR)より急速に上昇する血清中メトホルミン濃度に導き、メトホルミンのそのような早期の上昇及び大きい血漿濃度は、正常な個体において、末梢組織で基礎及び第1相分泌インスリン作用を有効に感作し、食事関連グルコース上昇に対するインスリン応答の動態をより密接に模倣する。さらに、本発明の組成物は、肝臓組織及び末梢組織内のメトホルミンの分布を改善すると考えられる。これらの有益な特性の結果として、臨床業務において処方されるような、1日2回摂取される従来の即時放出メトホルミン又は1日1回摂取される持続放出メトホルミンと比較して、摂食後血糖エクスカーションは、GlycoBien(登録商標)CR療法後、食後期間中に実質的に低減されることが予期される。
【0150】
血糖負荷−標準食を与えられ、同じ全1日量のメトホルミンを投与された健康な対象における、クロスオーバー、比較による薬物動態学的−薬力学的試験では(図12A及び図12B)、合計の1日の平均グルコース処理(グルコースAUC0〜24)及び1日の平均インスリン分泌(インスリンAUC0〜24)は、対象が、本発明のメトホルミン組成物(GlycoBien(登録商標)CR)を投与されても、従来技術の即時放出メトホルミン(Glucophage(登録商標))を投与されても類似しているが、正常な血糖値からの1日の食後エクスカーションは、従来技術のメトホルミン療法より、GlycoBien(登録商標)CRで有意に少ない。
【0151】
したがって、本発明のメトホルミンの新しい治療様式及び送達特徴を使用することにより、健康な個体の予期された応答を模倣するインスリン作用動態がもたらされ、これにより、糖尿病又は耐糖能障害を有する患者が、食後期間の間の、患者の全体的な1日の血中グルコース及び1日のグルコースエクスカーションに対してより優れた制御を実現することが可能になる。
【0152】
食後のグルコースエクスカーションを実質的に低減する、本発明の能力は、糖尿病患者、耐糖能障害の個体、及びさもなければ耐糖能障害又は糖尿病を発症しやすい健康な対象の全体的な健康に対して追加の利点を有することができる。過剰な食後グルコースエクスカーションは、アテローム性動脈硬化症、並びに糖尿病性血管疾患、眼、腎臓及び末梢自律神経系に影響する、糖尿病の合併症につながる。したがって、本発明による治療方法及びメトホルミン組成物は、血糖値及びグルコースエクスカーションの優れた制御を提供し、糖尿病症状、並びに糖尿病患者及び糖尿病を発症しやすい健康な個体の全体的な健康の即時の短期間管理及び長期間管理を導く。
【0153】
スルホニル尿素又はグリタゾン単独を用いた、飲食物及び単剤療法が、適切な血糖管理をもたらさない場合、本発明の1日1回のメトホルミン組成物及び療法は、スルホニル尿素又はグリタゾンと同時に使用することができる。
【0154】
本発明の剤形の平均変動指数(%)は、約250%〜約260%、又は約252%〜約256%となり得る。2つの等しい分割量として投与される、等価な用量の即時放出参照基準組成物より高い血漿中の平均変動指数を示す、本発明のある特定の例では、剤形と即時放出組成物の平均変動指数の比は、約12:1、約11:1、又は約11.6:1である。
【0155】
極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する両親媒性イオン化合物を含む、本発明の放出調節メトホルミン組成物は、米国特許出願公開第2005/0255156号明細書、及び加国特許第2,468,788号明細書に一般的に記載されている医薬組成物と類似している。特定の例では、本発明の医薬組成物は、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg、即ち、1日1回の急速吸収放出調節メトホルミン塩酸塩二重層錠剤である。
【0156】
陰イオン性、陽イオン性、又は双性イオン界面活性剤を、本発明の医薬組成物中の両親媒性化合物として使用することができる。
【0157】
本発明によって使用することができる陰イオン性界面活性剤の例には、それだけに限らないが、界面領域内で界面活性剤分子の好都合な充填形状を呈する界面活性剤、例えば、それだけに限らないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS,sodium dodecyl sulphate)、及びナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(AOT)などが含まれる。使用することができる他の陰イオン性界面活性剤として、それだけに限らないが、アルカリ金属硫酸塩、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム又はドデシル硫酸カリウム、オクタデシル硫酸ナトリウムなど、アルカリ金属スルホン酸塩、例えば、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、及びジアルキスルホスクシネート(dialkysulphosuccinate)のアルキル金属塩などが挙げられる。さらなる例では、陰イオン性界面活性剤は、アルカリ金属スルホン酸塩、例えば、それだけに限らないが、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、及びジアルキスルホスクシネートのアルカリ金属塩である。
【0158】
本発明によって使用することができる陽イオン性界面活性剤として、それだけに限らないが、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、セチルトリアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルピリジニウムブロミド(CPB)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DOTAC)、ナトリウムペルフルオロノナノエート(SPFN)、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。しかし、逆ミセルを形成することができる任意の陽イオン性界面活性剤を、本発明の医薬組成物中に使用することができる。
【0159】
当業者に明白となるように、本発明の医薬組成物において使用される1又は複数の界面活性剤は、ヒト摂取が認められるべきであることが一般に好適である。したがって、低毒性を有する界面活性剤が好適である。例えば、しかしいずれの様式にも限定されることを望むことなく、約10g/kg〜約15g/kgを超えるLD50を有する界面活性剤が好適である。他の副作用がないことも望ましい。ヒト摂取を既に許可された界面活性剤が好適であるが、他の界面活性剤も、本発明の医薬組成物中に使用することができる。
【0160】
CMCを十分に超える界面活性剤濃度で、任意の少量の単量体界面活性剤(及びおそらく小さいプレミセル界面活性剤凝集体)が、ミセル凝集体中でバルクの界面活性剤と平衡状態で存在する。特定の溶媒中の界面活性剤単量体の溶解度は、特定の溶媒−溶質力に依存する。理論に束縛されることを望むわけではないが、極性界面活性剤とアルカン溶媒、分子との間の支配的な分子間相互作用は、双極子−誘起双極子、及び誘起双極子−誘起双極子の力であると考えられる。
【0161】
イオン単量体の逆ミセルを形成する能力は、臨界ミセル濃度(CMC)を求めるための、当技術分野で知られている標準的な試験によって求めることができる。当業者に知られているように、界面活性剤溶液の特性の一部、例えば、屈折率、光散乱、界面張力、粘度、色素可溶化、及び蛍光物質の吸収などは、通常、最大CMCまで濃度の増加とともに直線的に変化し、CMCで、これらの特性の1又は複数の破壊又は変化がある(Encyclopaedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer--3rd. ed. Vol. 22, A Wiley Interscience Publication--New York (1983) Page 354)。
【0162】
逆ミセルの形成
逆ミセルは極性のコアを有し、[水]/[界面活性剤]比(W)に依存する溶媒特性を伴い、これは、非常に極性の水溶性化合物(例えば、親水性物質、例えば、タンパク質、酵素、イオン化された薬物、化学触媒及び開始剤など)、並びに時に、通常不溶性の両親媒性化合物でさえも溶媒和させることができる。低W値で、ミセル中の水は、界面活性剤分子及び対イオンコア上のイオン性基との結合により、非常に組織化されている。ミセルコア内の環境は、大きい対イオン濃度により、イオン性流体の環境と類似している。より大きいW値で、膨潤したミセル(又はマイクロエマルジョン)は、遊離水コアを有すると考えられ、これは、異なる第3の溶媒環境を提供し、バルク水の特性に近づく。ある特定の酵素及び極性化合物は、大量の水で膨潤した逆ミセル(約10を超えるW)によってのみ可溶化される。
【0163】
以下により詳細に記載されるように、理論に束縛されることを望むわけではないが、イオン性両親媒性物質が親水性流体中に導入される場合、及び両親媒性物質の濃度が、その固有のCMC値以上であるという条件で、凝集が起こり、ミセルが形成する。ミセル中の凝集体組成物は配向し、その結果、炭化水素鎖は、ミセル中で内側に向いて、それ自体の親油性環境を形成する一方で、炭化水素コア周囲の極性領域は、親水性流体連続相中で極性分子と会合している。非極性流体環境中のミセル凝集体の配向は、本質的に逆になる。極性領域は、ミセル中で内側に向く一方で、ミセルのコア周囲の炭化水素鎖は、流体環境中で非極性分子と相互作用する。
【0164】
低濃度で液体媒質中に存在する場合、両親媒性物質は別々に存在し、サブコロイドであるようなサイズである。濃度が増加するにつれて、狭い濃度範囲にわたって凝集が起こる。いくつかの単量体から構成されるこれらの凝集体は、ミセルと呼ばれる。ミセルが形成される単量体の濃度は、臨界ミセル濃度、又はCMCと呼ばれる。
【0165】
陰イオン性又は陽イオン性界面活性剤などのイオン性両親媒性物質は、炭化水素鎖の凝集を介して親油性コアを形成することによって、親水性溶媒中でミセルを生じることは、当技術分野で周知である。ミセルのコア周囲のこれらの化合物の極性頭部は、流体環境中で極性分子と相互作用及び会合する。本明細書で記載されるように、極性コアを有する逆ミセルは、親水性流体中に存在することができ、そのような逆ミセル及びマイクロエマルジョンは、生体膜を横切って極性イオン性化合物を輸送及び送達することができる、ユニークで有用な特性を有することが予想外に観察された。
【0166】
理論に束縛されることを望むわけではないが、イオン性両親媒性物質が、極性分子からなる親水性流体媒質中に導入され、極性分子のイオン化特性が、両親媒性極性頭部の分子電荷又はイオン電荷と反対の分子電荷又はイオン電荷をもたらす場合、会合コロイドを、通常予期される配向と逆の配向を伴って形成することができる。両親媒性物質の帯電した極性領域は、流体環境の逆に帯電した極性分子又はイオンと会合する。両親媒性物質のある特定の濃度で、会合コロイドを形成することができる。これらのコロイドは、極性コアを有する逆ミセルを含み、極性コアは、両親媒性物質の極性頭部とともに、流体媒質中で逆に帯電したイオン又は分子を含む。そのような逆ミセルは、コロイドの内部相内で、両親媒性物質の親油性領域によって囲まれ、親水性流体連続相から離されている。
【0167】
胃腸の管腔などの一般的な生理的環境において非常にイオン性である親水性薬物は、その極性及び電荷にある程度起因して、十分に吸収されないと考えられる。これらの群の化合物は、GITの水性生理媒質中で可溶性であるが、これらは、GITの膜を横切る分配係数が乏しく、浸透性が低いことを示す。これらのカテゴリーの化合物に属するいくつかの治療剤は、クラスIII(高溶解度、低浸透性)生物薬剤化合物と当技術分野で時に呼ばれ、低いバイオアベイラビリティとともに、飽和性の吸収動態を示すことが多い。本発明の逆ミセル送達システムは、これらの化合物のGIT膜貫通型輸送及び送達を増強する。
【0168】
生理的流体環境中に溶解すると、極性薬剤は、帯電したイオン又は分子として主に存在する。これらの条件下で形成された逆ミセルは、ミセルのコア内の結合した薬剤からなり、親油性炭化水素によって囲まれている。結合した、イオン化された薬剤は、球状コロイドの逆ミセル内に封入されていると考えられる。これらの逆ミセルコロイドは、GITの親油性粘膜を横切って分配し、したがって、治療剤のための輸送担体として作用する。親油性の膜を横切って分配されると、逆ミセルは分離するが、これは、親油性環境内で、膜内の濃度がCMC又はCrMC未満に低下し、界面張力が低下するためである。
【0169】
本発明の医薬組成物が、環境の外側の流体、例えば、水又は他の生体液などと接触すると、イオン性両親媒性物質のバースト放出又は段階的な放出が起こり得る。追加のイオン性両親媒性物質及び対象とする経口血糖降下剤の同時放出が続く。放出されたイオン性両親媒性物質は、水性流体媒質中に溶解し、イオン性単量体を形成する。流体環境の一般的なpH及び化学化合物のpKaに応じて対象とする経口血糖降下剤(複数も)が放出されると、イオン化された分子が形成される。これらのイオンは、イオン性両親媒性物質の極性領域の正味電荷と反対の永続的な正味電荷を担持する。対象とするイオン化された薬剤の逆に帯電した極性基と両親媒性物質は、互いに引きつける。理論に束縛されることを望むわけではないが、両親媒性物質の十分なイオン性単量体が、水性流体中で帯電した種に引きつけられるある時点で、凝集及び逆ミセル形成が起こる。この時点が、臨界逆ミセル濃度(CrMC)であると考えられている。これらの逆ミセルは、水性流体環境中で、コロイドのマイクロエマルジョンを最終的に形成する。ヒトGITにおいて、そのような逆ミセルは、吸収粘膜細胞の親油性膜と直接接触している。逆ミセルの外側表面の固有の親油性により、逆ミセルは、これらの膜中に急速に分配することができ、それによって吸収を促進する。
【0170】
理論に束縛されることを望むわけではないが、逆ミセルが親油性膜中に分配すると、逆ミセルの両親媒性分子成分の濃度は、CMC又はCrMC未満に減少する。逆ミセルは脱凝集を起こし、コア内の経口血糖降下剤を放出する。これらの薬剤の輸送及び膜貫通型放出の動態は、本質的にゼロ次又は約ゼロ次付近とすることができる。
【0171】
本発明で使用される経口血糖降下剤は、プロドラッグなどのマスクされた形態での薬物とすることができる。
【0172】
本発明の医薬組成物は、医薬剤形とすることができ、これには、それだけに限らないが、当業者に明白であるように直接圧縮、湿式顆粒化、乾式顆粒化、ホットメルト顆粒化、マイクロカプセル化、噴霧乾燥、及び押し出し成形法によって得られる、圧縮錠剤、顆粒、ペレット、懸濁液、押し出しスフェロイド又はコンパクトが含まれる。硬質ゼラチンカプセルなどの他の固体剤形は、当技術分野で一般に知られているように、乾燥ブレンド、顆粒化、懸濁液、スフェロイド、ペレット、錠剤、及びこれらからの組合せから得ることもできる。
【0173】
特に、本発明の医薬組成物は、以下のタイプの剤形のうちの1つとすることができる。
i)経口血糖降下剤、若しくはマイクロカプセル化経口血糖降下剤を含有する乾燥ブレンド混合物又は微粒子の1若しくは2以上の層を含む固体コンパクト、マトリックス型固体コンパクト、若しくはマトリックス型押し出しスフェロイド;
ii)経口血糖降下剤、若しくはマイクロカプセル化経口血糖降下剤を含有する乾燥ブレンド混合物若しくは微粒子で満たしたカプセル、又は
iii)経口血糖降下剤、又はマイクロカプセル化経口血糖降下剤を含有する経口血糖降下剤微粒子の懸濁液。
【0174】
送達システムは、対象に投与する前に分散させることもでき、その結果、分散した混合物中で逆ミセルが形成される。例えば、いずれの様式においても限定するとみなされるべきではないが、本発明の送達システムは、液体内で分散させることができ、この液体は、必要に応じて経口又は注射用形態で投与することができる。
【0175】
本発明の送達システムは、治療的に実用的な時間にわたって、1次、ゼロ次、又はゼロ次付近の放出動態を伴って、制御された様式で、対象とする1又は複数の経口血糖降下剤の放出を可能にする。
【0176】
医薬剤形は、必要に応じて賦形剤、例えば、それだけに限らないが、1又は複数の粘度エンハンサー、腸溶性ポリマー、pH−特異的なバリアポリマー、希釈剤、抗粘着剤、流動促進剤、結合剤、可塑剤、可溶化剤、チャネリング剤、安定剤、コンパクションエンハンサー(compaction enhancer)、湿潤剤、充填剤、緩衝剤、香味剤、吸着剤、甘味剤、着色剤、滑剤、又はこれらの組合せも含むことができる。
【0177】
固体剤形を組み込んでいる製剤は、1又は複数の追加の補助剤をさらに含むことができ、これは、香料、染料、希釈剤、結合剤、可塑剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、コンパクションエンハンサー、チャネリング剤、流動促進剤、滑剤、コーティングポリマー、及び抗粘着剤を含めた、当技術分野で知られているものから選択することができる。
【0178】
その必要がある対象は、任意の哺乳動物対象、例えば、それだけに限らないが、ヒト対象を含むことができる。
【0179】
上記説明は、いずれの様式においても主張した発明を限定することが意図されておらず、さらに、論じた特徴の組合せは、本発明の解決に絶対的に必要であるとは限らない場合がある。
【0180】
本発明を以下の実施例でさらに例示する。しかし、これらの実施例は、例示的な目的のためだけであり、いずれの様式においても本発明の範囲を限定するために使用されるべきではないことが理解されるべきである。
[実施例]
【0181】
急速吸収放出調節メトホルミン経口剤形の組成物
本発明の急速吸収放出調節メトホルミン組成物は、製剤によって調製した。
急速吸収放出調節メトホルミンの組成物:GlycoBien(登録商標)CR
【0182】
【表1】

【0183】
【表2】

【0184】
【表3】

【0185】
急速吸収放出調節メトホルミン錠剤、即ちGlycoBien(登録商標)CR、及び対応するプラセボ錠剤を以下に概説するように、3ステップ製造過程によって調製した。
【0186】
ステップ1:制御放出メトホルミン又はプラセボ顆粒の調製:メトホルミン塩酸塩又は微結晶性セルロースを調合し、製粉し(メトホルミン顆粒のみ)、ふるいにかけた(メトホルミン及びプラセボ顆粒)。製粉した粉末を、Glatt TMG 6Lミキサー−造粒機を使用して、高剪断力ミキサー造粒機で硫酸ラウリルナトリウムとブレンドした。均一なブレンドを、加熱されたジャケット付き高剪断力ミキサー造粒機で、約40℃でセチルアルコールを用いて顆粒化し、約30℃以下に急速に冷却した。顆粒化の終点に到達するのに必要な場合、変性アルコールを使用した。顆粒をメッシュUS#16、#20、又は#40を通して選別した。顆粒を、室温で、又は19℃〜23℃の強制空気乾燥器内で空気乾燥させた。
【0187】
ステップ2:遅延放出粘膜付着性顆粒の製剤:Gantrez粉末をFD&C黄色#5を含有するヒプロメロースフタレートのヒドロ−アルコール溶液を用いて、UniGlatt流動層造粒機で顆粒化した。この顆粒を、メッシュ#18又は#20を通してふるいにかけた。ふるいにかけた顆粒画分を、さらに加工するために保有した。
【0188】
ステップ3:二重層錠剤の調製:均一な放出調節顆粒を、効力がラベルクレームの100%を含むように調合及び調整した。二重層錠剤プレス機及び19mm×9mmカプレット又は他の適当なサイズの成形用具を使用して、一層(主要一次層)上の制御放出メトホルミン顆粒、及び第2層(副二次層)上の遅延放出粘膜付着性顆粒から二重層錠剤を圧縮した。
【0189】
GlycoBien(登録商標)CR二重層錠剤の溶解プロファイル
リン酸緩衝液中50rpm、37℃及びpH6.8で、USP装置2(パドル)を用いて試験した、二重層錠剤の溶解プロファイル(図1)及び合否基準は以下の通りである。
【0190】
【表4】

【0191】
臨床試験プロトコール
健康な、糖尿病でない男性及び女性志願者において一連の臨床試験を行うことによって、従来技術の治療レジメン及び組成物と比較した、本発明の新しい治療レジメン及びメトホルミン組成物のバイオアベイラビリティ、比較によるバイオアベイラビリティ、比較による薬物動態−薬力学、及び食物効果薬物動態を求め、確立した。主要な目的は、従来技術のメトホルミン組成物と比べて、本発明の医薬組成物の薬物動態学的プロファイルを確立し、並びに優れた薬力学及び摂食後グルコースエクスカーション低下特性の臨床的な証拠を提供することであった。
【0192】
試験の実施
メトホルミンは、2型糖尿病の管理及び治療において血中グルコース及びHbA1cを低下させるための有効な薬物を以前に確立した。メトホルミンは、2時間の摂食後グルコースエクスカーションを低下させることが観察されているが、ある期間にわたる食事関連摂食後グルコースエクスカーションを低減するための療法としてのその有効性は、確立されていない。したがって、食後高血糖及びグルコースエクスカーションに関連する医学的リスクを改善することにおけるその使用は、従来技術からの様々な現存するメトホルミン製剤及び治療レジメンにおいて明白ではない。本発明の顕著な態様は、1日の複数の食事を包含する期間にわたって、摂食後グルコースエクスカーションを有効に制御及び低減するためのメトホルミンの新しい治療レジメン及び新規組成物の使用である。
【0193】
摂食後グルコースエクスカーションは、食事に対する応答において、すべてのヒトに一般的である。しかし、これらのエクスカーションは、適切に制御されることによって、高血糖性エクスカーションが経験されないように保証される。糖尿病患者では、これらのエクスカーションは、常に高血糖性になる。糖尿病患者において高血糖に関与するいくつかの可能な基本的要因、及び内因性グルコース代謝的血糖代謝異常からの混乱を低減するための根本的な必要性のために、正常なインスリン機能を有する健康な対象は、試験にとって理想的である。
【0194】
したがって、健康な対象を、これらの臨床試験における適切なモデルとして選択することによって、従来技術の製剤の治療レジメン及びメトホルミン組成物に対する、本発明の新しい治療レジメン及びメトホルミン組成物の、比較による評価を混乱させる場合のある、病状によるばらつきを低減した。
【0195】
単剤療法としてのメトホルミンは、HbA1c及び空腹時血中グルコースを低下させることによって、2型糖尿病の長期管理において有効であることが証明されているという事実により、これらの指標は、摂食後グルコースエクスカーションを低減することの有効性に着目している現在の臨床試験において妥当性が低い。グルコースエクスカーションは、HbA1c及び空腹時血糖値にかかわらず、糖尿病の個体及び糖尿病でない個体の両方において一般的であるので、健康な対象においてメトホルミン製剤の薬物動態及びグルコースエクスカーションを低下させる薬力学を評価することは、科学的に正当化され、より賢明である。健康な対象の固有のグルコースエクスカーションを低下させる傾向が、臨床研究において予期される一方で、試験全体にわたるクロスオーバー試験デザイン及び強制的な血糖負荷−標準食を使用するとともに、有意性の分析における共変量としてプラセボ対照ベースラインを使用することにより、求められている比較による治療差異が引き出される。
【0196】
対象
正常なボディーマスインデックス(BMI,body mass index:18.5〜26.0kg/m)、並びにポンド及びインチで記録された、男性及び女性についての望ましい体重の表によって求めた、対象の身長及び体格に対する理想的な体重の±15%以下の体重を有する、年齢18〜55歳の健康な男性及び女性志願者を用いて試験を行った。
【0197】
試験プロトコール及び対象のインフォームドコンセントは、医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(ICH,International Convention on Harmonization)及び優良臨床試験基準(GCP,Good Clinical Practices)の条項に従って設計し、試験開始前に倫理委員会によって認可された
【0198】
試験対象患者基準は、理学的検査、バイタルサイン(100〜140/60〜90mmHgの間の血圧、及び55〜99拍/分の心拍数)、並びに12誘導ECGによって判断された場合の良好な健康であった。さらに、すべての対象は、糖尿病でないと判定され、肝機能、腎機能、ケトアシドーシス及び糖化ヘモグロビンについての血液及び尿生化学は正常な範囲であった。試験薬物療法を受けたか、試験を完了したすべての対象に、試験後健康診断、及び肝機能についての臨床生化学プロファイル経過観察を施した。
【0199】
臨床試験の概要
試験1:GlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)1000mg(即時放出メトホルミン)の空腹状態、比較によるバイオアベイラビリティ
「グループ2:Glucophage 1000mgの錠剤(1日1回、2×500として投与)及び1日1回投与したメトホルミン1000mgの持続放出(新しい製剤)錠剤を伴う、比較によるバイオアベイラビリティ(空腹及び食料供給)試験」という表題の試験において、GlycoBien CR 1000mgの空腹状態バイオアベイラビリティを、参照薬物としての市販の即時放出メトホルミン−Glucophage(2×500mg)と比較した。この試験において、26人の男性及び女性の対象を試験のために登録し、単回投与クロスオーバー空腹状態バイオアベイラビリティ試験デザインに、1人の対象が個人的理由で参加せず、25人の男性及び女性の対象が参加し、完了した。約10時間の一晩の絶食後に用量を投与し、対象は、投薬後さらに4時間絶食を続けた。各処置群は、7日の休薬期間によって離した。
【0200】
メトホルミン分析についての静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、4.0時間、5.0時間、6.0時間、7.0時間、8.0時間、9.0時間、10.0時間、12.0時間、14.0時間、16.0時間、20.0時間、24.0時間、30.0時間後に対象から得た。メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたHPLC−UV法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、25ng/mlである。試験薬物及び参照薬物についての比較による平均血漿濃度対時間プロファイルを図4に示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表1に示す。
【0201】
結果
図4及び表1に示すように、本発明の放出調節メトホルミン、即ちGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの単一経口用量の、空腹時条件下でのバイオアベイラビリティは、即時放出メトホルミン、即ちGlucophage(登録商標)1000mg(2×500mg)の単一経口用量のバイオアベイラビリティと同等である。吸収された薬物の程度(AUC0〜∞)及び最大血漿濃度(Cmax)の幾何平均比は、それぞれ0.99及び0.96である。放出調節検査薬の最大濃度までの時間Tmaxは、即時放出参照物と比較して少なくとも30分延長される。この結果は、急速吸収放出調節メトホルミン組成物からのインビトロ薬物放出は、即時放出薬物と比較して延長されるが(図2)、放出調節組成物のインビボ吸収プロファイルは、同等の程度の薬物吸収を保証することを示す。
【0202】
【表5】

【0203】
試験:2:健康な対象におけるGlycoBien CR 1000mg、Glucophage 1000mg(即時放出メトホルミン)、及びGlycoBien CR 2000mgの空腹状態、比較による単回投与バイオアベイラビリティ
この3処置期間試験において、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの空腹状態バイオアベイラビリティを、参照薬物としての市販の即時放出メトホルミン、即ちGlucophage(登録商標)(2×500mg)と比較し、その上、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの用量比例を、1000mg用量〜2000mg用量の薬物動態を比較することによって調査した。「健康な男性及び女性の志願者において、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg、及びGlucophage 1000mg、及びGlycoBien(登録商標)CR 2000mgを伴う、単回投与、無作為化、非盲検、クロスオーバー、比較によるバイオアベイラビリティ、及び用量比例試験」という表題の試験は、クロスオーバー、比較によるバイオアベイラビリティ試験デザインにおいて、空腹時条件下で、単一経口用量のGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、Glucophage(登録商標)1000mg(2×500mg)、又はGlycoBien(登録商標)CR 2000mg(2×1000mg)を投与するために無作為化した、合計28人の健康な男性及び女性の対象が関与した。
【0204】
約10時間の一晩の絶食後に用量を投与し、対象は、投薬後さらに4時間絶食を続けた。各処置群は、7日の休薬期間によって離した。この試験において、合計2人の対象が試験を中止した;1人の対象は個人的理由で中止し、他の対象は、即時放出Glucophage(登録商標)(2×500mg)の副作用のために中止した。したがって、26人の対象(14人の男性及び12人の女性)が試験を完了した。
【0205】
メトホルミン分析についての静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、6.0時間、7.0時間、8.0時間、9.0時間、10.0時間、12.0時間、14.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間、30.0時間、及び36.0時間後に対象から得た。メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたLC−MS−MS法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、4ng/mlである。平均血漿濃度対時間プロファイルを図5に示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表2に示す。
【0206】
結果
図5及び表2に示すように、本発明の放出調節メトホルミン、即ちGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの単一経口用量の、空腹時条件下でのバイオアベイラビリティは、即時放出メトホルミン、例えば、Glucophage(登録商標)1000mg(2×500mg)の単一経口用量のバイオアベイラビリティにほぼ近い。吸収されたメトホルミンの程度(AUC0〜∞)の平均及びピーク血漿濃度Cmaxは類似しており、それぞれ、0.88及び0.92の幾何平均比によって証明される。GlycoBien(登録商標)CRの用量を、1000mgから2000mgに増加させた場合、1.54倍のCmaxの増加及び1.62倍のAUC0〜∞の増加があった。
【0207】
【表6】

【0208】
試験3:GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの食物効果バイオアベイラビリティ
この試験では、空腹状態で摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgと比較した、食料供給状態で摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの食物効果バイオアベイラビリティを調査した。「グループ2:Glucophage(登録商標)1000mgの錠剤(1日1回、2×500mgとして投与)、及び1日1回投与されるメトホルミン1000mg持続放出(新しい製剤)錠剤を伴う、比較によるバイオアベイラビリティ(空腹及び食料供給)試験」という表題の試験において、26人の健康な男性及び女性の対象が、単回投与クロスオーバー食物効果バイオアベイラビリティ試験デザインに参加した。試験の空腹群について、約10時間の一晩の絶食後に単回投与のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgを投与し、対象は、投薬後さらに4時間絶食を続けた。食料供給アームでは、高カロリー(55%の高脂肪)朝食の消費後に投与した。このクロスオーバー食料供給バイオアベイラビリティ試験を設計することによって、長期の空腹状態における、本発明の放出調節メトホルミン組成物、即ち、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgバイオアベイラビリティと比較した、そのバイオアベイラビリティに対する高脂肪食の効果を求めた。この試験において、1人の対象が個人的理由のために中止し、したがって25人の対象が試験を完了した。
【0209】
メトホルミン分析についての静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、4.0時間、5.0時間、6.0時間、7.0時間、8.0時間、9.0時間、10.0時間、12.0時間、14.0時間、16.0時間、20.0時間、24.0時間、及び30.0時間後に対象から得た。メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたHPLC−UV法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、25ng/mlである。試験薬物及び参照薬物についての比較による平均血漿濃度対時間プロファイルを図6に示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表1に示す。
【0210】
結果
表1に示すように、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの単一経口用量のバイオアベイラビリティは、長期空腹状態におけるそのバイオアベイラビリティと比較して、高脂肪食料供給において有意に異なっていない。全薬物曝露AUC0〜∞及びピーク血漿濃度Cmaxの幾何平均比は、それぞれ0.96及び0.80である。吸収された薬物の程度は、得られたピーク濃度より同等である。高脂肪食料供給条件では、ピーク血漿濃度がわずかに減少する。
【0211】
試験4:低脂肪食及び高脂肪食後のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの食物効果バイオアベイラビリティ
この試験では、低脂肪及び高脂肪食料供給状態において摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgの食物効果バイオアベイラビリティを調査する。「健康な男性及び女性志願者における、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg(メトホルミン塩酸塩)の単回投与、3処置、無作為化、非盲検、クロスオーバー、及び「食物効果」バイオアベイラビリティ」という表題の試験において、合計28人の健康な男性及び女性の対象を無作為化して、低脂肪について米国心臓協会(AHA,American Heart Association)の判定基準に従って、空腹状態で、並びに高脂肪(55%の脂肪)及び低脂肪(25%の脂肪)後に単一経口用量のGlycoBien(登録商標)CR 1000mgを投与した。この比較によるクロスオーバー食料供給バイオアベイラビリティ試験を設計することによって、本発明の放出調節メトホルミン組成物、即ち、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgのバイオアベイラビリティに対する高脂肪及び低脂肪の効果を求めた。
【0212】
この試験に登録された対象は、約10時間、一晩絶食し、高脂肪又は低脂肪朝食後に用量を投与した。薬物は、それぞれの高脂肪又は低脂肪朝食を完全に消費した後、5分以内に投与した。各処置期間は、7日の休薬期間によって離した。この試験では、6人の対象が個人的理由のために試験を中止した。したがって、22人の対象(13人男性及び9人の女性)が試験を完了した。
【0213】
メトホルミン分析についての静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、6.0時間、7.0時間、8.0時間、9.0時間、10.0時間、12.0時間、14.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間、30.0時間、及び36.0時間後に対象から得た。メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたLC−MS−MS法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、4ng/mlであった。平均血漿濃度プロファイルを図7に示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表3に示す。
【0214】
結果
GlycoBien(登録商標)CR 1000mgの単一経口用量のバイオアベイラビリティは、高脂肪(55%の脂肪)食料供給状態と比較して、低脂肪(25%の脂肪)食料供給において有意に異なっていない。図7及び表3に示すように、吸収された薬物の程度(AUC0〜∞)、ピーク血漿濃度(Cmax)、及びピーク血漿濃度を得るまでの時間(Tmax)は類似している。全薬物曝露AUC0〜∞及び血漿濃度Cmaxの平均値の幾何的な比は、それぞれ1.02及び0.99である。したがって、本発明の放出調節メトホルミンの単一経口用量のバイオアベイラビリティは、食事の脂肪又はカロリーの含量によって有意に影響されない。従来技術のメトホルミン製剤は、食物効果薬物動態を示すことが知られており、これは、バイオアベイラビリティを損なう可能性が最も高く、したがって治療効果の一貫性に影響し得るという事実を考えると、この知見は重要である。
【0215】
【表7】

【0216】
試験5A:GlycoBien(登録商標)CR、Glucophage(登録商標)XR、及びGlucophage(登録商標)の単回投与及び複数回投与、定常状態、比較による薬物動態及び薬力学
この試験では、複数回投薬した後のGlycoBien(登録商標)CRの定常状態の薬物動態を求め、臨床業務において使用されるGlucophage(登録商標)XRと比較して、GlycoBien(登録商標)CR及び本新規投薬レジメンの、摂食後血中グルコースエクスカーションを低減する傾向を調査した。
【0217】
「健康な男性及び女性志願者における、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)XR 1000mgを伴う、非盲検、複数回投与、無作為化、クロスオーバー、比較による薬物動態及び薬力学的試験」という表題の試験において、合計16人の健康な男性及び女性の対象を、1日のプラセボリードイン期間に登録し、ここで各対象に1日2回、朝食及び夕食前に、1錠のプラセボ錠剤を投与した。対象にはまた、朝食、昼食、夕食及び間食に対して、3つの血糖負荷標準食を与えた。プラセボリードイン期間の後、無作為化した対象に、2期間クロスオーバー試験において、血糖負荷標準朝食の約30分前に、単一経口用量のGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、又は血糖負荷標準夕食から約5分後に、単一経口用量のGlucophage(登録商標)XR 1000mg(2×500mgを摂取)を投与した。プラセボ−リードイン及び各処置期間の間、朝食、昼食、夕食及び間食について同じ血糖負荷標準食を対象に与えた。1処置期間当たりの投薬レジメンは、7日の休薬によって離れた合計7日間維持した。7日の処置期間は、2日の拘束日(1日目及び7日目)並びに5日の外来日を含んでいた。外来日の間、対象のそれぞれの投薬レジメンに従って、朝食投薬後、及び夕食投薬前に、対象に標準食を与えた。この試験では、2人の対象が個人的な理由のために試験を中止した。したがって14人の対象(6人の男性及び8人の女性)が試験を完了した。
【0218】
1日のプラセボリードイン及び1日目の単回投与処置期間の間、メトホルミン血漿及び血清グルコース分析のための静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間、4.5時間、5.5時間、6.5時間、7.5時間、8.5時間、9.5時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、13.5時間、15.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間後に対象から得た。5日の外来期間の間、メトホルミン血漿分析のための血液試料は、朝食投薬の前、又は夕食投薬に関連する夕食の前のそれぞれの時間にさらに採取した。定常状態で、7日目の拘束の間、メトホルミン血漿及び血清グルコース分析のための静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間、4.5時間、5.5時間、6.5時間、7.5時間、8.5時間、9.5時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、13.5時間、15.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間、及び36.0時間後に対象から得た。
【0219】
メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたLC−MS−MS法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、4.0ng/mlであった。単一、及び複数回投与の定常状態の薬物動態についての平均血漿濃度プロファイルを図8A及び図8Bに示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表6及び表7に示す。
【0220】
グルコースの血清濃度は、バリデートしたグルコースオキシダーゼ法を使用して求め、%CVは5%未満であった。食事期間である朝食、昼食及び夕食にわたる、血中グルコース濃度対時間曲線下の正の増加性の面積(iAUC)を各処置期間について求め、プラセボベースラインと比較した。全体的な1日(24時間)のiAUC0〜24も各処置について求め、プラセボベースラインと比較した。単回投与及び複数回投与(定常状態)処置に対するグルコースエクスカーションの指数としての平均iAUCを、図9A、図9B、図9C、図9D、及び表4〜5に示す。
【0221】
結果
図8A及び8B並びに表8及び9に例示するように、薬物動態分析及び薬力学的判定の結果は、Glucophage(登録商標)XRと比較して、GlycoBien(登録商標)CRは、血中メトホルミン濃度の増加が速く、より高いピーク血漿濃度を実現し、ピーク濃度までの時間が長いことを示す。血漿メトホルミンAUC0〜24によって求めた場合の吸収された薬物の全量は同等であるが、24時間の期間にわたる摂食後グルコースエクスカーションに対する効果は、Glucophage(登録商標)XRと比較して、GlycoBien(登録商標)CRでより顕著である。結果を以下のように要約する。
【0222】
薬物動態:図8A及び8Bは、それぞれ、比較による単回投与及び定常状態の薬物動態学的プロファイルを示す。1日1回、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgのプロファイルは、1日1回、夕食後に摂取されるGlucophage(登録商標)XR 1000mgについて得られるプロファイルと明確に異なることは明白である。GlycoBien(登録商標)CRからのメトホルミンの吸収速度は、Glucophage(登録商標)XRより速く、これは、GlycoBien(登録商標)CR 1000mgについての1.19μg/Lのより高い平均ピーク血漿濃度(Cmax)及びGlucophage(登録商標)XR 1000mgについての0.88μg/L(0.004未満のp値)によって証明される。定常状態で、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)XR 1000mgについてのCmaxは、1.33μg/L及び0.97μg/L(0.001未満のp値)である。複数投薬の7日後、定常状態で、吸収された薬物の全量(AUCss)及びピーク血漿濃度までの時間(Tmax)は、有意に異なっていない。
【0223】
薬力学:図9Aから9Dは、プラセボ、GlycoBien(登録商標)CR、並びにGlucophage(登録商標)XR処置についての、朝食、昼食、及び夕食の期間、並びに全24時間の期間にわたる、比較による摂食後グルコースエクスカーション低下を示す。GlycoBien(登録商標)CRの摂食後血中グルコースエクスカーション低下効果は、Glucophage(登録商標)XRを用いて観察される効果より実質的に高い。GlycoBien(登録商標)CRでは、プラセボベースラインと比較して、24時間血漿グルコースエクスカーション(iAUC0〜24)が28.5%低下したが、Glucophage(登録商標)XRでは、9.42%増加した。したがって、GlycoBien(登録商標)CRは、Glucophage(登録商標)XRと比較して、−34.67%(0.035未満のp値)の正味の処置差異を生じた。
【0224】
【表8】

【0225】
【表9】

【0226】
【表10】

【0227】
【表11】

【0228】
試験5B:GlycoBien(登録商標)CR、Glucophage(登録商標)XR、及びGlucophage(登録商標)の、単回投与及び複数回投与の定常状態の比較による薬物動態及び薬力学
この試験により、複数回投薬後のGlycoBien(登録商標)CRの定常状態の薬物動態を求め、臨床業務において使用されるように、1日2回摂取されるGlucophage(登録商標)(即時放出メトホルミン)と比較した、GlycoBien(登録商標)CR及び新しい朝食前の1日1回投薬レジメンの、摂食後血中グルコースエクスカーションを低減する傾向を調査した。
【0229】
「健康な男性及び女性志願者における、GlycoBien(登録商標)CR 1000mg q.d.及びGlucophage(登録商標)500mg b.i.d.を伴う、非盲検、複数回投与、無作為化、クロスオーバー、比較による薬物動態及び薬力学的試験」という表題の試験において、合計14人の健康な男性及び女性の対象を、1日のプラセボリードイン期間に登録し、ここで各対象に1日2回、朝食及び夕食前に、1錠のプラセボ錠剤を投与した。対象にはまた、朝食、昼食、夕食及び間食に対して、3つの血糖負荷標準食を与えた。プラセボリードイン期間の後、無作為化した対象に、2期間クロスオーバー試験において、血糖負荷標準朝食の約30分前に、単一経口用量のGlycoBien(登録商標)CR 1000mg、又は血糖負荷標準朝食及び血糖負荷標準夕食から約5分後に、1日2回、単一経口用量のGlucophage(登録商標)500mgを投与した。プラセボ−リードイン及び各処置期間の間、朝食、昼食、夕食及び間食について同じ血糖負荷標準食を対象に与えた。1処置期間当たりの投薬レジメンは、7日の休薬によって離れた合計7日間維持した。7日の処置期間は、2日の拘束日(1日目及び7日目)並びに5日の外来日を含んでいた。外来日の間、対象のそれぞれの投薬レジメンに従って、朝食投薬後、及び夕食投薬前に、対象に標準食を与えた。この試験では、4人の対象が個人的な理由のために試験を中止した。したがって10人の対象(4人の男性及び6人の女性)が試験を完了した。
【0230】
1日のプラセボリードイン及び1日目の単回投与処置期間の間、メトホルミン血漿及び血清グルコース分析のための静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間、4.5時間、5.5時間、6.5時間、7.5時間、8.5時間、9.5時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、13.5時間、15.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間後に対象から得た。5日の外来期間の間、メトホルミン血漿分析のための血液試料は、投薬及び治療レジメンに従って、朝食投薬若しくは食事の前、又は夕食前のそれぞれの時間にさらに採取した。定常状態で、7日目の拘束の間、メトホルミン血漿及び血清グルコース分析のための静脈血液試料は、0.0(投与前)、並びに投与して0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間、4.5時間、5.5時間、6.5時間、7.5時間、8.5時間、9.5時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、13.5時間、15.0時間、16.0時間、18.0時間、20.0時間、24.0時間、及び36.0時間後に対象から得た。
【0231】
メトホルミンの血漿濃度は、バリデートしたLC−MS−MS法を使用して求めた。この方法の定量化の下限は、4.0ng/mlである。単一、及び複数回投与の定常状態の薬物動態についての平均血漿濃度プロファイルを図10A及び図10Bに示し、この試験から得たメトホルミンの薬物動態学的パラメータの平均値を表10及び表11に示す。
【0232】
グルコースの血清濃度は、バリデートしたグルコースオキシダーゼ法を使用して求め、%CVは5%未満であった。食事期間である朝食、昼食及び夕食にわたる、血中グルコース濃度対時間曲線下の正の増加性の面積(iAUC)を各処置期間について求め、プラセボベースラインと比較した。全体的な1日(24時間)のiAUC0〜24も各処置について求め、プラセボベースラインと比較した。単回投与及び複数回投与(定常状態)処置に対するグルコースエクスカーションの指数としての平均iAUCを、図11A〜11D、並びに表6及び7に示す。
【0233】
血漿インスリン濃度は、バリデートした血漿インスリンアッセイ法を使用して求め、%CVは5%未満であった。食事期間である朝食、昼食及び夕食にわたる、血中インスリン濃度対時間曲線下全面積(AUC)を各処置期間について求め、プラセボベースラインと比較した。全体的な1日(24時間)のインスリンAUC0〜24も各処置について求め、プラセボベースラインと比較した。単回投与及び複数回投与(定常状態)処置に対する平均インスリンAUC、及び対応する血清グルコースAUCを表12に示す。
【0234】
結果
図10A〜10B及び表10〜11に例示された薬物動態及び薬力学的分析は、b.i.d.で食事後に摂取される即時放出メトホルミン(Glucophage(登録商標))と比較して、GlycoBien(登録商標)CRは、血中メトホルミン濃度中の増加がより速く、より高いピーク血漿濃度を実現することを示す。さらに、GlycoBien(登録商標)CRは、ピーク濃度までの時間の遅延、及び長期間にわたる、メトホルミンの持続性の治療的に妥当な濃度を生じた。
【0235】
Glucophage b.i.d.投与からのメトホルミンAUCによって求められる薬物曝露の全量は、1日1回のGlycoBien(登録商標)CRと比較してわずかに高いが、その差異は統計的に有意なではなく、したがって、これらは、その吸収の程度においてほぼ近い。24時間の期間にわたる、摂食後グルコースエクスカーションに対する処置効果は、Glucophage(登録商標)b.i.d.と比較して、GlycoBien(登録商標)CRで統計的及び臨床的により顕著である。結果を以下のように要約する。
【0236】
薬物動態:
図10A及び10Bは、1日1回、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgのプロファイルは、食事を伴った即時放出Glucophage(登録商標)b.i.d.と比較して、ピーク濃度までの時間が延長されるという点で異なり、徐放製剤に特有であることを示す。しかし、GlycoBien(登録商標)CRを用いて実現される吸収速度及び最大濃度は、即時放出メトホルミン(例えば、Glucophage(登録商標))を用いて得られるものより有意に高いという点で、新規であり、従来技術の持続放出メトホルミンの特色を表していない。定常状態で、複数の投薬後、2つの処置について得られる最大メトホルミン血漿濃度(Cmax)は有意に異なり、1日1回のGlycoBien(登録商標)CR 1000mg及びGlucophage(登録商標)500mg b.i.d.について、それぞれ1.48μg/L及び1.05μg/L(0.03未満のp値)である。GlycoBien(登録商標)CRについてのTmaxも、予期したように(expectedly)延長され、Glucophage(登録商標)についての4.3時間と比べて5.3時間である一方で、等価な用量に対する定常状態での全薬物曝露(AUCss)は、有意に異なっていない。
【0237】
薬力学
(a)摂食後グルコースエクスカーション:摂食後グルコースエクスカーションは、空腹時ベースラインを超える血中グルコースの漸増増加の尺度であり、グルコース対時間曲線下の増加性の正の面積(iAUC)によって、ある時間にわたって求められる。表11A〜11Dで分かるように、朝食、昼食及び夕食の期間にわたる、標準食負荷下での摂食後グルコースエクスカーション低下効果は、治療レジメンによって有意に異なる。全24時間の期間及び血糖負荷標準食にわたって、GlycoBien(登録商標)CRの摂食後血中グルコースエクスカーション低下効果は、Glucophage(登録商標)b.i.d.を用いて観察される効果より実質的に高い。7日の処置の後、定常状態で、朝食及び夕食とともに摂取されるGlucophage(登録商標)500mg b.i.d.を用いて実現される9%の低下と比較して、1日1回、朝食前に摂取されるGlycoBien(登録商標)CR 1000mgは、ベースラインプラセボからのグルコースエクスカーション(iAUC0〜24)を約42%低下させた。これらの処置は、0.056未満のp値で、グルコースエクスカーション低下効果に関して、約36%の処理という統計的に有意な差異を示す。
【0238】
(b)全血清グルコース&血漿インスリン:表12で分かるように、朝食、昼食、夕食及び間食について血糖負荷標準食を消費した後の、24時間の期間にわたる血漿グルコース濃度下全面積(グルコースAUC0〜24)は、処置レジメンの間で有意に異なっていない。さらに、血漿インスリン濃度下全面積も、有意に異なっていない。このことは予期され、対象が、24時間の期間にわたって同様のグルコース負荷に曝され、対象の先天的なグルコース応答能力を保持し、食事からのグルコース負荷に見合った全インスリンを分泌したことを確認している。図12A及び12Bは、様々な治療レジメン下での、全血漿グルコース(グルコースAUC0〜24)、全グルコースエクスカーション、(正の増加性のグルコースiAUC0〜24)、及び全インスリンレベル(インスリンAUC0〜24)についての、処置間の単回投与と複数回投与の比較を示す。この結果は、活性薬剤のメトホルミンは、健康な個体においてインスリン分泌に対していずれの効果も有さず、同様の薬物曝露は、同様の全体的なグルコース処理をもたらし、急速吸収放出調節メトホルミン組成物(GlycoBien(登録商標)CR)は、インスリン作用を増強し、従来技術のメトホルミン製剤(Glucophage(登録商標))と比較して、優れた摂食後グルコースエクスカーション低下をもたらす事実をさらに実証し、繰り返す。
【0239】
【表12】

【0240】
【表13】

【0241】
【表14】

【0242】
【表15】

【0243】
【表16】

【0244】
本発明を実施するために本発明者が知る最良の様式を含めて、本発明の好適な実施形態を本明細書に記載してきた。これらの好適な実施形態に対する変形は、前述の説明を読むと当業者に明らかとなり、又は明らかとなり得ることが予期される。本発明者は、当業者が適切な場合そのような変形を使用することを予期し、本発明者は、本明細書に具体的に記載された以外の方法で本発明を実践することできることを意図する。したがって、適用法によって認められるように、本明細書に添付した特許請求の範囲において列挙した対象物のすべての改変及び同等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述した要素の任意の組合せは、本明細書に別段の指定のない限り、又は脈絡によって別段の明らかな矛盾のない限り、本発明によって包含される。
【0245】
さらに、本明細書に開示した本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることが理解されるべきである。使用することができる他の改変も本発明の範囲内である。したがって、例として、しかし限定ではなく、本発明の代替の構成を、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に示され記載されたものに限定されない。
【0246】
本願に引用したすべての特許、特許出願、及び刊行物は、それぞれの個々の特許、特許出願、及び刊行物が、そのように個々に示されているのと同じ程度に、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常な対象、又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において摂食後グルコースエクスカーションを低減するための急速吸収放出調節医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、前記1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれが、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、各乾燥ブレンド混合物が、水性流体と接触すると、前記両親媒性イオン化合物が、前記極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成するための十分な量の前記両親媒性イオン化合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物でコーティング又は層状化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
放出制御剤が、水媒体中で膨潤しない化合物を含む、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
膨潤しない化合物が、セチルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーでコーティング又は層状化される、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
1又は2以上のpH依存性バリアポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択される、請求項6又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、対象の中央から下部の胃腸管における医薬組成物の滞留時間を延長するための、有効量の1又は2以上の粘膜付着剤を含む、1又は2以上の付着性組成物をさらに含むか、前記付着性組成物で層状化又はコーティングされる、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
1又は2以上の粘膜付着剤が、胃腸粘膜に結合するための1又は2以上の粘膜付着性ポリマーを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
1又は2以上の粘膜付着性ポリマーが、親水性ポリマー、陰イオン性ポリマー、及び陽イオン性ポリマーからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
1又は2以上の粘膜付着性ポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルメタクリラート(Eudragit(登録商標)NE30D)、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボポール、ポリアクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合されたナトリウム及びカルシウム塩、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)コポリマーの混合されたナトリウム及びカルシウム塩、キトサン、キトサンの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1又は2以上の付着性組成物が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含む、請求項9〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
1又は2以上の付着性組成物が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーでコーティング又は層状化される、請求項9〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
1又は2以上のpH依存性バリアポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択される、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物が、ただ1つの単量体形態の両親媒性イオン化合物からなるただ1つの単量体形態の両親媒性化合物である、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、pH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数が約10未満である、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、pH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数が約10を超える、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の、極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤の、pH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数が約10未満であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の、極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤の、pH7.4(オクタノールと水の間の解離定数)でのオクタノールと水の間の分配係数が約10を超える、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIIに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIIIに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
1又は2以上の活性薬剤含有層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIVに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
1又は2以上のる活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIに属し、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスII、III又はIVに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIIに属し、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスI、III又はIVに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIIIに属し、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスI、II又はIVに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項27】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスIVに属し、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、生物薬剤学分類システムのクラスI、II又はIIIに属する、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項28】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤と同じであるか、又は異なる、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
両親媒性イオン化合物が、約0.5重量%〜約500重量%の量で、1又は2以上の活性薬剤含有層中に存在する、請求項1〜28のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の両親媒性イオン化合物が、陰イオン性界面活性剤であり、前記1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、正に帯電している、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項31】
1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける両親媒性イオン化合物が、陰イオン性界面活性剤であり、前記1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、正に帯電している、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項32】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の両親媒性イオン化合物が、陽イオン性界面活性剤であり、前記1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、負に帯電している、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける両親媒性イオン化合物が、陽イオン性界面活性剤であり、1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれにおける極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、負に帯電している、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項34】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、2又は3以上の活性薬剤含有層であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の両親媒性イオン化合物が、陰イオン性界面活性剤であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、正に帯電し、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の両親媒性イオン化合物が、陽イオン性界面活性剤であり、前記2又は3以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の他の層中の極性イオン性のインスリン抵抗性改善血糖降下剤が、負に帯電している、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項35】
陰イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム又はドデシル硫酸カリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(AOT)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項30、31、又は34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
陽イオン性界面活性剤が、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、セチル−トリアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルピリジニウムブロミド(CPB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DOTAC)、ナトリウムペルフルオロノナノエート(SPFN)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項32、33、又は34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層の乾燥ブレンド混合物が、粘度エンハンサー、希釈剤、抗粘着剤、流動促進剤、結合剤、可溶化剤、チャネリング剤、緩衝剤、香味剤、吸着剤、甘味剤、着色剤、滑剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1〜36のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項38】
圧縮若しくはペレット化法によって作製されたマトリックス固体コンパクト、又は湿式若しくは乾式押出法で作製されたマトリックス押出スフェロイドの形態である、請求項1〜37のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
午前食前の投与用である、請求項1〜38のいずれかに記載に医薬組成物。
【請求項40】
原則午前食前の1日1回の投与用である、請求項1〜38のいずれかに記載に医薬組成物。
【請求項41】
午前食開始前約60分から午前食開始後約60分の投与用である、請求項1〜38のいずれかに記載に医薬組成物。
【請求項42】
午前食開始前30分以内の投与用である、請求項1〜38のいずれかに記載に医薬組成物。
【請求項43】
インスリン関連障害が糖尿病である、請求項1〜42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項44】
インスリン関連障害が2型糖尿病である、請求項1〜42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項45】
インスリン関連障害が早期1型糖尿病である、請求項1〜42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項46】
インスリン関連障害が前糖尿病である、請求項1〜42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項47】
インスリン関連障害が耐糖能障害又は空腹時糖障害である、請求項1〜42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項48】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤が、ビグアナイド、又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1〜47のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項49】
1又は2以上の活性薬剤含有層のうちの1又は2以上の層中のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤が、メトホルミン、又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1〜47のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項50】
メトホルミンが、1日1回1グラムの量での投与用である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
メトホルミンが、1日に0.25〜3.0グラムの量での投与用である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項52】
模擬腸液(37℃でpH6.8のリン酸緩衝液)1000ml中、50rpmで、USPタイプ2装置で試験されるとき、以下の溶解プロファイルを示す、請求項49、50、又は51に記載の医薬組成物:
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の0〜20%が、0.5時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の20〜30%が、1時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の30〜40%が、2時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の35〜45%が、3時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の45〜55%が、5時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の55〜65%が、7時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の65〜75%が、11時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の75〜85%が、16時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の80%以上が、19時間後に放出され;
メトホルミン又は薬学的に許容されるその塩の85%以上が、24時間後に放出される。
【請求項53】
食事前に投与後2.5〜6.5時間で、メトホルミンの最大血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項54】
約1.0〜約10時間で、メトホルミンの平均血漿濃度/時間曲線の高さの50%での幅、又は約0.25〜約14時間で、メトホルミンの平均血漿濃度/時間曲線の高さの25%での幅をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項55】
投与して約24時間後にメトホルミンの平均血漿レベルの約10倍を超える、メトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax)をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項56】
投与して約24時間後にメトホルミンの血漿レベルの約10倍〜約20倍である、メトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax)をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項57】
午前食又は朝食前のメトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に基づいて、約1.18μg/ml〜約1.60μg/mlのメトホルミンの平均最大血漿濃度(Cmax)をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項58】
午前食又は朝食前のメトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に基づいて、約10.0μg・時間/ml〜約13.0μg・時間/mlの平均AUC0〜24時間をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の組成物。
【請求項59】
メトホルミンの1日1回2000mgの用量の投与に基づいて、約18.00μg・時間/ml〜約22.00μg・時間/mlの平均薬物曝露及びAUC0〜24時間をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
午前食又は朝食前のメトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に関して、単回投与で、10.10±1.9ug・時間/mlの平均薬物曝露及び平均AUC0〜∞、並びに1.19±0.25ug/mlの平均ピーク血漿濃度及びCmaxをもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の組成物。
【請求項61】
朝食前のメトホルミンの1日1回1000mgの用量の投与に関して、投与初日に11.75±3.90μg・時間/mlの平均AUC0〜24時間及び1.51±0.43μg/mlの平均Cmax、並びに投与7日目に12.95±3.6μg.時間/mlの平均AUC0〜24時間及び1.48±0.45μg/mlの平均Cmaxをもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
4.0〜6.0の平均t1/2をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項63】
投与後2.5〜6.5時間に、メトホルミンの最大血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす、請求項49〜52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項64】
正常な対象、又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において摂食後グルコースエクスカーションを低減するための急速吸収放出調節医薬組成物であって、1又は2以上の活性薬剤含有層を含み、前記1又は2以上の活性薬剤含有層のそれぞれが、
i)治療有効量の極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び
ii)極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物
を含む乾燥ブレンド混合物を含み、1又は2以上の活性薬剤含有層が、対象の中央から下部の胃腸管において前記医薬組成物の滞留時間を延長するための、有効量の1又は2以上の粘膜付着剤を含む、1又は2以上の付着性組成物をさらに含むか、前記付着性組成物で層状化又はコーティングされ、
1又は2以上の活性薬剤含有層が、前記医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤をさらに含み、或いは
1又は2以上の活性薬剤含有層は、前記医薬組成物からのインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の放出を制御するための、有効量の1又は2以上の放出制御剤、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物でコーティング又は層状化され、
各乾燥ブレンド混合物は、十分な量の前記両親媒性イオン化合物を含み、その結果、水性流体と接触すると、前記両親媒性イオン化合物は、前記極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを形成する医薬組成物。
【請求項65】
放出制御剤が、水媒体中で膨潤しない化合物を含む、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
膨潤しない化合物が、セチルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含む、請求項64〜66のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項68】
1又は2以上の活性薬剤含有層が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーでコーティング又は層状化される、請求項64〜66のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項69】
1又は2以上のpH依存性バリアポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択される、請求項67又は68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
1又は2以上の粘膜付着剤が、胃腸粘膜に結合することができる1又は2以上の粘膜付着性ポリマーを含む、請求項64〜69のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項71】
1又は2以上の粘膜付着性ポリマーが、親水性ポリマー、陰イオン性ポリマー、及び陽イオン性ポリマーからなる群から選択される、請求項70に記載の医薬組成物。
【請求項72】
1又は2以上の粘膜付着性ポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルメタクリラート(Eudragit(登録商標)NE30D)、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボポール、ポリアクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合されたナトリウム及びカルシウム塩、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーの混合されたナトリウム及びカルシウム塩、キトサン、キトサンの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項71に記載の医薬組成物。
【請求項73】
1又は2以上の付着性組成物が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーを含む、請求項64〜72のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項74】
1又は2以上の付着性組成物が、1又は2以上のpH依存性バリアポリマー又は腸溶性ポリマーでコーティング又は層状化される、請求項64〜72のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項75】
1又は2以上のpH依存性バリアポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)からなる群から選択される、請求項73又は74に記載の医薬組成物。
【請求項76】
単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物が、ただ1つの単量体形態の両親媒性イオン化合物からなるただ1つの単量体形態の両親媒性化合物である、請求項64〜75のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項77】
正常な対象におけるグルコースエクスカーションを低減するための、請求項64〜76のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項78】
糖尿病又はグルコースエクスカーションに関連する疾患を発症するリスクを低減するための、請求項1〜76に記載の医薬組成物の使用。
【請求項79】
請求項1〜38のいずれかに記載の急速吸収放出調節医薬組成物の使用であって、前記医薬組成物が、患者が午前食又は朝食を摂取する前に単回投与で前記患者に投与するためのものであり、前記医薬組成物の投与後に、インスリン抵抗性改善経口血糖降下剤のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の最大血漿濃度(Cmax)の50パーセントが、前記用量の投与後約0.5時間経過後の約1〜約12時間の期間、前記患者において持続されるような血漿濃度が経時的に前記患者において達成させる使用。
【請求項80】
医薬組成物が、投与後に対象の上部、中央、及び下部胃腸管を通じてインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を送達するためのものである、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
正常な対象、又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、摂食後グルコースエクスカーションを低減するための逆ミセルであって、極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤、又は薬学的に許容されるその塩、及び極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤の正味電荷と反対の正味電荷を有する単量体形態の両親媒性イオン化合物からなる単量体形態の両親媒性化合物を含む逆ミセル。
【請求項82】
請求項1〜76のいずれかに記載の医薬組成物から生成される、請求項81に記載の逆ミセル。
【請求項83】
正常な対象又はインスリン関連障害若しくは血糖代謝異常を有する対象において、グルコースエクスカーションを低減するための方法であって、
i)請求項1〜76のいずれかに記載の医薬組成物を、前記対象に経口投与するステップと、
ii)各乾燥ブレンド混合物からの極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を含む逆ミセルを、前記対象の胃腸管内で形成させ、前記対象の胃腸管全体にわたって吸収させ、それによって、各乾燥ブレンド混合物からの前記極性イオン性のインスリン抵抗性改善経口血糖降下剤を前記対象に送達するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【公表番号】特表2012−500810(P2012−500810A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524144(P2011−524144)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001166
【国際公開番号】WO2010/022497
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(504220650)
【Fターム(参考)】