説明

衛星システムに基づく正確な絶対時間伝送

一又は複数の実施形態により、衛星システムを用いて正確な絶対時間を取得するためのシステムと方法が開示される。正確な絶対時間は、例えば、減衰又は妨害を受ける環境でのナビゲーションを含む位置決めシステムの補助として使用することができる。一実施形態による、衛星から正確な絶対時間伝送を獲得する方法は、衛星から、周期的に反復するコードを含む精密時間信号を受信することと、このコードのタイミング位相を求めることと、追加的な補助情報を受信することと、タイミング位相及び追加的補助情報を使用して正確な絶対時間を求めることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して時間伝送に関するものであり、具体的には衛星に基づく時間伝送とナビゲーション技術とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の種々の衛星ナビゲーションシステムによって提供される既存のナビゲーション及びタイミング信号は、十分なシステム性能を提供しないことがある。特に、このようなナビゲーション及びタイミング信号の信号電力、帯域幅、及び幾何学的てこ比は、通常、要件の厳しい多くの用途において不十分である。
【0003】
例えば、汎地球測位システム(GPS)信号に基づく既存のナビゲーション及び作動周期調整方式は、ナビゲーションユーザにとって使用可能でない場合が多い。典型的には、GPS受信機は、三次元での測位と正確な時間伝送を可能にするためには少なくとも四つの測位源を同時に受信しなければならない。しかしながら、GPS信号は、市街地又は建造物の壁を容易に通りぬけるためには不十分な低信号の電力又はジオメトリーを提供することが多い。例えば携帯電話又はテレビジョン信号に基づく他のナビゲーション方式は、一般に垂直方向のナビゲーション情報を欠いている。
【0004】
既存のシステムは、例えば慣性ナビゲーションシステム、専用ビーコン、及び高感度GPSシステムの使用といった種々の方式により、屋内ナビゲーションの欠陥に対処しようと試みてきた。しかしながら、慣性ナビゲーションシステムは安定でなく、また高価である。ビーコンは、高価で標準化されない専用の固定資産を必要とするため、限られた用途しか有しておらず、高感度GPSシステムは、屋内環境ではGPS信号が弱いために、ユーザの期待に応えるような動作をしないことが多い。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、衛星から正確な絶対時間を取得する方法は、衛星から周期的な反復コードを含む精密時間信号を受信することと、前記コードのタイミング位相を求めることと、追加的な補助情報を受信することと、タイミング位相と追加的補助情報とを使用して正確な絶対時間を求めることとを含む。
【0006】
別の実施形態では、減衰した環境又は妨害を受ける環境においてナビゲーションを実行する方法は、第1の衛星から受信した信号のフレーム構造を検出することと、受信装置のクロックを、検出されたフレーム構造に合わせることと、フレーム構造に従ってそれぞれが分離された複数の時間推定値であって、うち少なくとも一つを後で第2衛星の信号に合わせる複数の時間推定値を生成することと、受信装置のシステム相関器に時間推定値を供給することと、時間推定に従ってシステム相関器を整列させることと、第2衛星の信号源に合わせる少なくとも一つの時間推定値を特定することであって、この少なくとも一つの時間推定値が受信装置に有効な補助情報を供給することにより検出効率が有意に向上することとを含む。
【0007】
別の実施形態では、減衰した環境又は妨害を受ける環境での使用に適した受信装置は、衛星から周期的に反復するコードを含む精密時間信号を受信し、且つ追加的な補助情報を受信するアンテナと、プロセッサと、コンピュータで読み取り可能な複数の指令を記憶するメモリとを備えており、前記コンピュータで読み取り可能な複数の指令がプロセッサによって実行されることにより、受信装置は、コードのタイミング位相を求め、且つこのタイミング位相と追加的補助情報とを使用して正確な絶対時間を求める。
【0008】
別の実施形態では、減衰した環境又は妨害を受ける環境での使用に適した受信装置は、第1の衛星から周波数帯域フレーム構造を含む精密時間信号を受信し、且つ第2の衛星から第2の信号を受信するアンテナと、プロセッサと、コンピュータで読み取り可能な複数の指令を記憶するメモリとを備えており、前記コンピュータで読み取り可能な複数の指令がプロセッサによって実行されることにより、受信装置は、第1の衛星のフレーム構造を検出し、受信装置の内部クロックを第1の衛星のフレーム構造に合わせ、第1の衛星のフレーム構造に従ってそれぞれ分離された複数の時間推定値であって、うち少なくとも一つが第2の衛星の信号に合わられる複数の時間推定値を生成し、時間推定値に従って受信装置のシステム相関器を整列させ、且つ第2の衛星の信号に合わせられる少なくとも一つの時間推定値を特定することにより、有効な補助情報を受信装置に供給する。
【0009】
本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲はここで言及されたことにより本部分に包含される。後述する一又は複数の実施形態の詳細な説明を検討することにより、当業者は本発明の実施形態に対する理解を更に深め、更にはその追加的な利点を認識するであろう。後述では、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、閉塞した環境又は妨害を受ける環境において実行可能なナビゲーションシステムの概要を示す。
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態による受信装置302の機能的ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態により、衛星から正確な絶対時間伝送を取得する方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による低地球軌道(LEO)衛星の時間伝送構造信号を示す。
【図3A】図3Aは、一実施形態により、受信した衛星信号のコード位相を求める方法のフローチャートである。
【図3B】図3Bは、本発明の一実施形態により、減衰した環境又は妨害を受ける環境において時間伝送及びナビゲーションを実行する方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、衛星を使用した無線ネットワーク局の位置測定を行う自己形成型ナビゲーションシステムを示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従って衛星信号と無線ネットワーク信号とを統合することによる位置情報取得を実行する方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態に従って衛星信号と無線ネットワーク信号とを統合することにより位置情報取得を実行する方法を示すフローチャートである。
【0011】
本発明の実施形態とその利点とは、後述の詳細な説明を参照することにより最もよく理解することができる。一又は複数の図面に示される類似の要素を特定するために、類似の参照番号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに開示する種々の実施形態によれば、例えば低地球軌道(LEO)衛星といった衛星を利用するシステムを使用することにより、著しく減衰した環境、閉塞した環境、又は妨害を受ける環境においても、例えば携帯電話又はその他の小型デバイスといった受信装置が機能するように、そのような受信装置を強化することができる。本明細書の一又は複数の実施形態によるナビゲーションシステムは、汎地球測位システム(GPS)衛星のような既存の信号源から受信される信号が基本的に弱いことに起因する受信装置の現行の問題に対処することができる。
【0013】
例えば通信衛星のような特定の衛星からの信号は、一般に、GPSのような他の既存の測位システムからの信号より強い。そのような衛星の一つは、低地球軌道衛星(LEO)コンステレーションイリジウムである。一実施例では、例えばイリジウム衛星のようなLEO衛星から受信される信号と協働する受信装置は、受信装置のアンテナにおける減衰が約45dB未満の信号レベルで動作することができ、一方GPS用の受信装置は通常そのようなレベルでは動作しない。イリジウム衛星信号を利用することにより、イリジウム用受信装置は、一般的なGPS用受信装置がそれ以下では動作を停止するような約15−20dbで動作することができる。
【0014】
種々の実施形態によれば、このような強力な信号は、衛星システムからの精密時間信号を含んでおり、例えば約1−10マイクロ秒の精度で正確な絶対時間を求めるために使用することができる。また、このような強力な信号は、携帯電話ネットワーク、インターネットネットワーク、又はWiFiといった他の地上インフラストラクチャーからの情報と併せて受信装置伝送することができる。一又は複数の実施形態によれば、衛星信号から取得された正確な絶対時間は、受信装置のシステム相関器を円滑に整列させて極めて狭い時間帯に集束させるために十分な精度を有している。閉塞した環境又は妨害を受ける環境において正確な時間基準の恩恵無しで複数のシステム相関器が使用される場合、長時間に亘る検索により相関プロセスの演算負荷が大きくなり、受信装置はそのような条件下では機能できない。しかしながら、正確な絶対時間(例えば、約10マイクロ秒以内の精度を有する)により、受信装置(又はユーザ)は、著しく減衰した環境又は妨害を受ける環境においても、受信装置のシステム相関器を整列させることにより、GPSのような測位システムからのナビゲーション信号をうまく受信及び追跡することができる。このように、本発明の実施形態は、著しく減衰した環境又は妨害を受ける環境において、GPS又はその他のあらゆる測位衛星システムを支援することができる。正確な絶対時間伝送は、ネットワークの同期といった他の用途にも使用可能であることを理解されたい。
【実施例】
【0015】
次に図面を参照する。これらの図面は、本発明の実施形態の例示のみを目的としており、それらを制限するものではない。図1は、本発明の一実施形態による、閉塞した環境又は妨害を受ける環境において動作できるナビゲーションシステム300の概要を示している。
【0016】
図1の実施形態に示すように、ナビゲーションシステム300では、受信装置302(例えば携帯電話)は衛星306から信号309を受信するものであり、この信号は従来の航行衛星からの汎地球測位システム(GPS)信号(例えば、保護されたGPS信号及び/又は保護されていないGPS信号)を含みうる。加えて、受信装置302は、低地球軌道(LEO)衛星とすることができる衛星304から信号305を受信する。更に、受信装置302は、ネットワーク308から信号307を受信する。このようなネットワークには、例えば、携帯電話ネットワーク、インターネットネットワーク、WiFIネットワーク、及び/又はその他のネットワークが含まれる。衛星304から受信された信号305は、衛星304でコードされた精密時間信号を含んでいる。ネットワーク308を介して受信された信号307は、例えば、衛星304に関連する軌道情報、受信装置302の凡その位置、衛星304と受信装置302との間の凡そのレンジ(例えば約3000m以内)、凡その時間情報(例えば約5秒以内の凡その時間)、衛星304に関連するタイミングバイアス情報(例えば衛星クロックのオフセット)、及び/又はその他の情報といった追加的な補助情報を含むことができる。
【0017】
一又は複数の実施形態によれば、衛星306は、iGPSシステムのような統合型高性能ナビゲーション及び通信システムの一部であってもよい。衛星306は、例えば全地球航行衛星システム(グロナス)を含むその他任意の測位システム衛星の一部であってもよい。
【0018】
一実施例では、衛星304はLEO衛星とすることができ、既存の通信システム(例えば、イリジウム又はグローバルスター衛星システム)の衛星により実施することができる。イリジウム衛星を用いて衛星304を実施する一実施例では、適切なソフトウェアを用いてイリジウム衛星のフライトコンピュータを再プログラミングすることにより、ナビゲーション信号のハンドリングが容易になる。グローバルスター通信衛星を用いて衛星304を実施する別の実施例では、衛星の屈曲パイプ式アーキテクチャにより、様々な新規信号形式のサポートするための地上設備のアップグレードが可能となる。
【0019】
衛星304がLEO通信衛星として実施される実施形態では、LEO通信衛星は、ナビゲーション信号だけでなく通信信号もサポートする。これに関して、このようなナビゲーション信号は、様々な要素、例えばマルチパス排除、測距精度、相互相関、ジャミング及び干渉に対する耐性、並びに、選択的アクセス、抗スプーフィング、及び妨害されにくさを含む安全性を実現するために導入することができる。
【0020】
受信装置302は、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアにより実施されて、宇宙圏及び地球圏に亘る様々な信号源から信号を受信して複合することによりナビゲーションを実行する。このような信号には、例えば、GPS(又はその他あらゆる測位システム(例えばグロナス))、LEO(例えば、イリジウム又はグローバルスター衛星システム)、広域補強システム(WAAS)、欧州静止衛星ナビゲーション補強サービス(EGNOS)、多機能衛星補強システム(MSAS)、ガリレオ、準天頂衛星システム(QZSS)、及び/又は移動体衛星事業者(MSV)の衛星からの衛星放送が含まれる。このような信号は、ネットワーク308からの地球圏同報通信も含まれ、ネットワーク308には、携帯電話ネットワーク、TVネットワーク、インターネットネットワーク、WiFi、WiMAX、米国の車両インフラ協調(VII)のノード、及びその他の適切な信号源が含まれる。受信装置302は、2005年11月7日出願の米国特許出願番号第11/268317号に規定された種々の実施形態に従って実施することができ、前記特許出願は引用により本明細書に包含される。
【0021】
受信装置302は、更に、特定の実施形態において所望される場合、宇宙圏及び地球圏に亘る他の信号源から同報通信された信号を受信し、それを使用してナビゲーションを実行することができる。加えて、受信装置302は、ジャミングからの保護を提供するために、例えば超小型電気機械システム(MEMS)デバイスとして実施される慣性測定装置(IMU)を備えることができる。
【0022】
受信装置302はまた、用途に応じて任意の望ましい構成で実施することができる。例えば、種々の実施形態において、受信装置302は、携帯電話、iGPSレシーバ、ハンドヘルドナビゲーションデバイス、車載式ナビゲーションデバイス、航空機搭載式ナビゲーションデバイス、又はその他の種類のデバイスとして実施することができる。一実施形態では、受信装置302の位置はユーザの位置に対応している。
【0023】
図1Aには、本発明の一実施形態による受信装置302の機能的ブロック図が示されている。受信装置302は、一又は複数の衛星から衛星信号3010を受信する多重周波数アンテナ3020を含んでいる。アンテナ3020は、例えば図1のネットワーク308から信号を受信することもできる。アンテナ3020は、一又は複数の所定のフィルタ3030と、増幅器3040と、A/D変換器3050とに連結されている。シンセサイザ3070は、温度制御された水晶発振器(TCXO)3080から信号を受信するもので、A/D変換器3050と、慣性測定装置3085と、コンピュータ3060とに連結されており、このコンピュータはメモリとプロセッサとを備えている(図示しない)。システム相関器はプロセッサとして実施することができる。コンピュータ3060は、慣性測定装置3085から生の測定値を、シンセサイザ3070及びA/D変換器3050から入力を、それぞれ受信して、位置、高度、及び時間の出力3090を生成する。A/D変換器3050のサンプリングレートは、受信装置302が対象とする全ての帯域の周波数を基礎帯域にダウンコンバートすることができるように、適切に決定することができる。
【0024】
一又は複数の実施形態によれば、使用時には、閉塞又は妨害により受信装置302が衛星306から信号309(例えばGPS信号)を受信できない位置では、受信装置302はネットワーク308にメッセージを送信して援助を要求することができる。ここでネットワーク308は、追加の補助情報を決定する。次いで受信装置302は、ネットワーク308から取得された追加的補助情報を含む信号307と、精密時間信号を含む衛星304から受信された信号305とを組み合わせて使用して、当該受信装置のシステム相関器を整列させることにより、衛星306からの信号309(例えばGPS信号)の受信を改善し、それにより閉塞した環境又は妨害を受ける環境でもナビゲーションを実行することができる。
【0025】
次に図2を参照する。図2は、本発明の一実施形態に従って衛星から正確な絶対時間伝送を取得するための方法を示すフローチャートである。一実施形態では、図2は図1のナビゲーションシステム300に使用することができるが、ネットワーク同期のような他のシステム又は用途に使用するために実施することもできる。(図1に示すように、)衛星304から受信された信号305は、追加的補助情報を含む信号307と組み合わせることで測位を可能にする。追加的補助情報は、ネットワーク308を介して受信装置302に送達される。
【0026】
ブロック350では、受信装置302は、衛星304から、精密時間信号を含む信号305を受信する。精密時間信号は、周期的に反復する明確なコードとして衛星304から受信される。ここで、明確なコードには、例えば擬似ランダムコードのような任意の数のコードが含まれうることに注意されたい。一実施例では、イリジウム衛星は、概ね23秒毎に繰返す擬似コードを同報通信することができる。他の用途は別のコード構造を含むことができる。例えば、そのような一の用途では、粗(coarse)タイミングコードの後に擬似ランダムコードを続けることができる。このような用途では、粗タイミングコードは、ドップラー偏移の決定などの様々な演算に使用される受信装置302により容易に検出できる純粋な搬送波周波数の反復セグメントを含むことができる。このような用途では擬似ランダムコードを使用して高い精度で絶対時間を決定することができるが、受信装置302が擬似ランダムコードを検出することは粗タイミングコードより難しい。これに関して、受信装置302が粗タイミングコードを使用することにより、擬似ランダムコードの受信が予測される凡その時間を効率的に決定することができる。
【0027】
種々の実施形態では、衛星304から受信される信号305は詳細なナビゲーション情報を含む必要はなく、衛星304のうちの一つからの信号305の一回の同報通信のみを使用して補助技術を開始することができる。更に、信号305のタイミング精度は、一般的なGPS衛星の性能と比較してかなり低い場合があるが、10マイクロ秒程度の精度で十分である。一実施例では、受信装置302は、減衰した環境又は閉塞した環境(例えば屋内)で動作することができ、このような環境では、受信装置302は、衛星304から信号305を受信できるが、信号309の電力が低いことと、環境の減衰とのために、衛星306から信号309を受信することができない。例えば、イリジウム衛星の場合、反復可能な擬似ランダムコードの構造により、受信装置302は、極めて減衰した環境であっても、アンテナにおいて約45dBの減衰まで、即ち、それを超えると多くのGPSレシーバは受信できない約15dBでも、擬似ランダムコード上にロックすることができる。受信装置302は、例えば、業務上競合する信号により信号309が妨害される可能性がある環境、又は例えば軍事的に敵により故意に妨害される環境においても、動作することができる。
【0028】
ブロック352では、低データ率相関を用いて、受信装置302により衛星304からの信号305のコードの相対的なタイミング位相(以下で「n」又は「コード位相」ともいう)を求める。例えば、受信装置302を使用して、信号305によって供給される高電力非GPS精密時間信号にロックすることで、約3マイクロ秒未満以内でタイミング位相を求めることができる。
【0029】
ブロック354では、受信装置302は、ネットワーク308からび追加的補助情報を含む信号307を受信する。別の方法では、例えば受信装置302が減衰した環境内に進入するか又は減衰した環境から出て行く場合、追加的補助情報を衛星304から受信することができる。一般に、追加的補助情報の更新率はやや低く、原則として24時間以上保存される。一実施形態では、追加的補助情報は、コードの同報通信の開始時間と、タイミング伝送の予測周波数と、非GPS衛星の軌道のモデルと、ブロック350に記載のような衛星304から受信された精密時間信号の忠実度を向上させることができる時間バイアス修正情報とを含みうる。加えて、ネットワーク308から、又は受信装置302のローカルクロックにより、凡その時間(例えば、数秒以内の精度)が供給されうる。
【0030】
ブロック356では、コードのタイミング位相を、例えば等式406に従ってネットワーク308から受信されうる追加的補助情報と組み合わせることにより、このコードのタイミング位相を正確な絶対時間に変換する。上記等式については図3を参照して後述する。
【0031】
次に図3を参照する。図3は、本発明の一実施形態による低地球軌道(LEO)衛星の時間伝送構造信号を示している。図3の時間伝送構造は、一実施形態により図1のナビゲーションシステム300に使用するために実施することができるが、ネットワーク同期といった他のシステム又は用途にも使用することができる。この実施形態では、衛星304はイリジウム衛星により実施される。イリジウム衛星の時間伝送信号が示されているが、本明細書の説明は、他の衛星システムに合わせて適切に変更することができる。図3の実施例では、信号305は、各衛星304によって繰り返し同報通信される10Kのバッファ周期402を含むことができる。10Kのバッファ周期の各々は、9984バイト、72872ビット、又は256のメッセージ、或いは46.08秒に相当しうる。一日当たり、1875のバッファ周期が存在する。メッセージフレーム404(メッセージとも呼ぶ)も示されており、このフレームは1バースト当たり312ビット又は8.28ミリ秒に相当しうる。他のビットは衛星304によって予め規定することができる。メッセージフレーム404の312ビットは、通常、90ミリ秒毎に音声が更新される例えば通話のような通信が発生する場合のペイロードビットである。各フレームは0.18秒毎に繰り返し、全てのビットはメッセージフレーム404のエッジを検出するために使用できる。一のバーストは、メッセージフレーム404内に特定された「タイムスロット」だけオフセットされうる。
【0032】
例えば、擬似ランダムコードが312ビットである場合、256のメッセージを有するフルバッファが存在する。この実施例では、各メッセージは、他のコードと混同されないように固有の擬似ランダムコードを有する。擬似ランダムコードは約20−40秒毎に繰返すことができる。既知の単純な擬似ランダムコード(又はその他のコード)を使用して、256のメッセージを区別し、大きな処理利得を提供することができる。一実施形態では、粗く単純なコード(例えば、搬送波周波数の検出を容易にするもの)と、もっと細かい擬似ランダムコード(例えば、時間合わせの精度を向上させるもの)とを交互に用いることができる。
【0033】
一実施例では、受信装置302は現在時刻を求めるために使用することができる。バッファをロードして同報通信を開始する。受信装置302を正しい周波数に調節し、L帯域フレームにビットを見出す。受信装置302はバッファのn番目のメッセージに一致するコードを見出す。しかしながら、これは現在時刻を示すものではなく、n番目のメッセージであること(又は反復コードの「コード位相」)を示すだけである。
【0034】
図2のブロック352及び354に記載されたタイミング位相情報及び追加的補助情報を、図2のブロック356に規定されるように組み合わせて、図3の実施形態を参照する以下の実施例のような正確な絶対時間を取得するための等式を形成することができる。図3の実施形態では、等式406は時間を決定するために使用される。等式406では、256個のユニークなメッセージが46.08秒毎に繰返される:
時間=開始時刻午前12:00+(N−1)*46.08秒+(n−1)*0.18秒+時間バイアス+レンジ/C(光速)
【0035】
ここで、衛星304のバッファ再生の既知の開始時間は、データリンクによって送達されるものであり、図3の等式406に示される例では所定日の午前12:00である。「N」(「現在のバッファ周期」とも呼ぶ)は、開始時間以来256個のメッセージの擬似ランダムコードブロックが反復された回数である。一実施形態では、「N」は、約10秒未満の精度で受信装置302のローカルクロックによって決定されうる。例えば午前12:00にメッセージが同報通信され、受信装置302がネットワーク308に同期されたクロックを有する場合、受信装置302は現在のバッファ周期「N」を求めることができる。即ち、受信装置302は、特定の既知の変数に基づいた数「N」を解く助けとなる。
【0036】
「n」は反復シーケンス内のコード位相である。等式406の実施例では、時間メッセージは0.18秒毎に再生され、256のユニークな擬似ランダムメッセージを含む。その後、擬似ランダムコードは始めから反復される。したがって、「n」は1から256の間の数である。「n」は、例えば擬似ランダムコードを使用して衛星304から測定され、10マイクロ秒未満の精度を有する。
【0037】
受信装置302が受信されたメッセージを認識するとき、コード位相「n」を求めることができる。受信装置302は、相関を実行することにより、雑音の存在下においても受信されたメッセージを決定することができる。例えば、雑音が存在しても、ランダムビットを受信し、次いでメッセージを受信し、次いで再びランダムビットを受信することができる。このように、メッセージは雑音によって崩壊している場合があり、崩壊したビット値を含みうる。長いメッセージ、例えば1000ビットのメッセージが送信される場合、これらのビットは受信されたビットと比較される。例えば980ビットが正確である場合、次の1000ビットの比較を行うというように、ピークに達するまで作業を続ける。ピークに達成するときとは、正確なビットの数が平均数を上回ったときである。1000ビットのメッセージを送信するこの実施例では、ピークが例えば600である場合、これが正確なメッセージであることが決定される。このように、特定の時間において、雑音の存在下でもメッセージが受信されてうまく決定される。受信された衛星信号のコード位相「n」を決定する方法を、一実施形態に従って添付の図3Aに記載する。
【0038】
「時間バイアス」は、例えば、システム300の任意のタイミングのバイアスを表わしており、衛星304のクロックに測定される誤差及び/又は伝送シーケンスに既知のタイムスロットの変化を補償することができる。タイムスロットは、サービスの一部として予測可能でありうるか、衛星304によって供給されるか、観測基準点によって測定されるか、或いは固定されうる。図3の実施例では、90ミリ秒のイリジウムのメッセージフレームが複数のタイムスロットに分解されうる。図3に示すように、バーストは、メッセージフレーム内において発生し、特定のタイムスロットによってオフセットされうる。受信装置302はネットワーク308で使用されるタイムスロットを認識することができる。ネットワーク308は、伝送の周波数、即ち、伝送のサブ帯域であって、例えば同報通信及び/又はその他の要因に応じて頻繁に変化するサブ帯域のような基本情報を供給する。
【0039】
「レンジ」は、衛星304と受信装置302との間の距離を表わしており、データリンクによって送達されうる衛星304の軌道モデルと、適度な精度を有する受信装置302の位置情報と、凡その時間(衛星軌道モデルへの入力としての)を用いて算出される。一実施形態では、約10マイクロ秒内の精度を得るために、レンジの推定は約3000mの精度を有さねばならず、これは地上での水平精度の約20,000mに相当しうる。このレベルの位置決めは、例えば携帯電話ネットワーク技術により容易に達成可能である。加えて、単純なビームカバレッジ法を使用し、ユーザが現在位置する非GPS衛星ビームはどれかという認識と、最近のビーム時間履歴とに基づいて、受信装置302の位置を決定することができる。多数の他の大雑把な位置決め方法も適切に利用することができる。一実施形態では、衛星304の衛星軌道情報(エフェメリス)は、様々な時点での衛星コンステレーション内における衛星304の位置といった情報、及び衛星304からクロック値を正確に取得するために受信装置302が使用できるその他の情報を含む。この実施形態では、ネットワーク308は、1キロメートル未満以内で受信装置302(又はユーザ)の位置を容易に決定することができる。このレンジは約3キロメートルの精度を有しうる。受信装置302の凡その時間を軌道情報と共に使用して、衛星304の位置を決定することができる。衛星304のレンジは、決定後、光速(「C」ともいう)で除される。
【0040】
図3Aは、一実施形態による、受信された衛星信号のコード位相を決定する方法のフローチャートを示す。図3Aは、衛星304がイリジウム衛星である一実施例である。ブロック2010では、データを含む信号を、イリジウム衛星から受信することができ、適切なアンテナ、増幅器、及び周波数ダウンコンバータ逓降変換器を有する受信装置(図1Aに示すような)により、イリジウム周波数帯域全体から収集することができる。ブロック2020では、受信されたデータの周波数を、例えば1606MHzだけダウンコンバートすることができ、データを例えば1秒あたり50Mサンプルでサンプリングすることができる。
【0041】
ブロック2030では、サンプリングされたデータを取り込んで、例えば1秒毎に区切ったブロックなどの適切なブロックのメモリに保存することができる。
【0042】
ブロック2040では、サンプリングされたデータの粗い獲得検索(coarse acquisition search)を実行することができる。この実施例では、詳細な処理のために約9msのデータを選択することができる。既知の軌道モデルと推定時間とを使用して、取り込まれたデータのドップラーを推定することができる。このデータは、既知の(又は推定された)周波数のサブ帯域及びアクセスに基づいて、正弦関数及び余弦関数によりデジタル式に復調することができる。復調はまた推定されたドップラー周波数を含んでいる。次いでデータは、例えば約111の因数により間引きすることができる。この間引きされたデータに高速フーリエ変換(FFT)を使用して、最高のピークと関連周波数とを求めることができる。関連周波数を使用することで、次の反復時に復調を更に改善することができることに注目されたい。一般に復調はDCの結果をもたらすが、不完全なドップラー推定は、一般に低周波数成分を生成する。次に、サンプリングされたデータの次の1ミリ秒のブロックを検討してプロセスを反復することができる。
【0043】
ブロック2050では、処理済みのデータをピークについてスクリーングすることにより整合性チェックを行う。例えば、ピークは「n」*90ミリ秒だけ分離されなければならない。
【0044】
ブロック2060では、ピークのスクリーニングが終了した後で、コースピーク+180ミリ秒−0.5*ウィンドウの位置において細かい獲得を実行することができる。このウィンドウは、コードが見つかると思われる時間範囲を表わしている。例えば、受信されたデータは、このコード内の128の非ゼロのメッセージに対して相関させることができ、このとき最も高い相関ピークを記録することができ、特定数のミリ秒だけ時間ステップをインクリメントすることができる。次いで当該ウィンドウの期間に亘ってこのようなプロセスを繰り返すことができる。
【0045】
ブロック2070では、最良のピークを生成したメッセージを認識することと、その相対時間を認識することとにより、データの取り込み時に受信装置によってコード位相が決定されうる。
【0046】
コード位相が決定されたら、図3の等式406に関連して上述したようにして、正確な絶対時間を決定することができる。
【0047】
一又は複数の実施形態に従って上述した技術により正確な絶対時間が算出されると、ネットワークの同期のような多数の用途において、又はGPSのような位置決めシステムの補助として、正確な絶対時間を使用することができる。
【0048】
位置決めの補助の実施形態において、上述のようにして求められた正確な絶対時間を利用して、受信装置、例えばGPSレシーバの相関器を「集束」又は整列させることができる。この場合、GPSレシーバは多数の並列配置された位置決めシステムの相関器を有することができ、これらは、十分に時間的に整列されると(例えば、本明細書に記載の技術を使用して)、妨害を受ける環境又は減衰した環境においても、衛星306からの信号309、例えばGPS衛星からのGPS信号にロックすることができる。
【0049】
受信装置302はドップラー偏移を補償することもできる。ドップラー偏移とは、観測者に対する放出源の動きにより生成される放射波の周波数の変化を指す。衛星が天空を移動するとき、衛星信号の伝送周波数が変化する。受信装置302は、その時間認識を使用することにより、ドップラー偏移を予測して補償することができるので、正確な周波数を取得することができる。一実施形態では、ドップラー偏移は以下の等式によって算出される:
ドップラー=距離レート÷C×伝送の規定周波数
【0050】
上述のように、衛星304までのレンジは、受信装置302の位置と衛星304との間の距離である。距離レートは、レンジ及び時間の関数であり、例えば二つの異なる時点の間で移動した距離に基づく速度の測定値とは異なる。最後に、上記のドップラー等式では、イリジウム衛星用の伝送の公称周波数は、例えば1.6GHzのオーダーでありうる。「C」は光速を指す。
【0051】
ネットワーク308は衛星情報と信号の前調整情報とを供給するので、ドップラー偏移が発生すると、信号はそれに従って調整された状態を維持するように変化する。
【0052】
衛星304のドップラープロファイルも、タイミング情報決定の助けとなりうる。受信装置302は、時間をかけて衛星304から受信される様々な信号305をモニタリングすることができる。衛星304が頭上を移動するときに起こるドップラー偏移を求めることにより、受信装置302は受信装置302の位置とタイミング情報とを正確に求めることができる。したがって、この場合もまた、図3の等式406に示すように、受信装置302の位置は、衛星304のドップラープロファイルを参照することにより推定することができる。
【0053】
このように、上述の実施形態では、等式406による正確な絶対時間は、宇宙空間ネットワーク(一又は複数の衛星304及び/又は306)をサポートする地上ネットワーク(例えばネットワーク308)が存在している受信装置302に運ばれる。
【0054】
別の実施形態では、添付の図3Bを参照して更に詳細に説明するように、上述のように供給される追加的補助情報が無い場合も、例えばイリジウム衛星の固有のL帯域バースト構造信号を使用することにより、正確な絶対時間を達成することができる。種々の実施形態では、衛星304はLEO衛星とすることができ、よってイリジウム及び衛星306はGPS衛星であってもよい。このような実施形態では、イリジウム衛星が1610MHz〜1625MHzのL帯域構造による周波数を使用することが既知である。GPS搬送波もL帯域に属し、1176.45MHz(L5)、1227.60MHz(L2)、1381.05MHz(L3)、及び1575.42MHz(L1)周波数を中心としている。イリジウム周波数とGPS周波数が近接していることにより、受信装置302は、余分なアンテナを必要とせずに両衛星システム、即ちイリジウム衛星システム及びGPS衛星システムから信号を併せて受信することができる。
【0055】
各イリジウム衛星は、クロックの変動無しで、グリニッジ標準時(UTC、協定世界時、又はグリニジ平均時など)から10ミリ秒の精度にモニタリング及び維持される内部クロックを維持している。したがって、イリジウム衛星により供給されるL帯域信号は、約10ミリ秒以内でUTC時間に正確に結びつけることができる。L帯域イリジウム衛星信号は、90ミリ秒のフレームにより構造化される。このように、イリジウム衛星信号のL帯域フレームのエッジを決定することにより、正確なタイミング情報を取得することができる。
【0056】
次に図3Bを参照する。図3Bは、本発明の一実施形態による、減衰した環境又は妨害を受ける環境において時間伝送及びナビゲーションを実行する方法を説明するフローチャートを示している。図3Bに示される方法は、図1のナビゲーションシステムにより実施することができるが、この実施形態では、ネットワーク308により供給される追加的補助情報が使用できない。
【0057】
ブロック502では、(例えばL帯域イリジウム衛星信号により実施されたとき)衛星304から同報通信された信号305のフレーム構造が、受信装置302によって検出される。明確なコード又は正確なコードが無い場合も、受信装置302は、インジウム伝送信号のL帯域フレームを検出することができる。この実施形態では、ネットワーク308からの追加的補助情報は使用できないので、受信装置302は絶対時間の連続する予想値又は推定値を準備する。十分な事前情報があれば、時間推定値の数は、大抵は妥当な数に落ち着くこととなる。例えば、イリジウムフレーム構造の100のフレーム内に、GPS秒が整列している。このように、時間推定値又は予想値の数は100回まで減らすことができる。
【0058】
ブロック504では、連続する推定値が生成されたた後で、受信装置302のローカルクロックを衛星304の信号305のフレーム構造に合わせる。
【0059】
ブロック506では、フレーム構造信号に従ってそれぞれ隔てられた複数の時間推定値を生成し、そのうち少なくとも一つの時間推定値を衛星306の信号309に合わせる。
【0060】
ブロック508では、時間推定値を受信装置302の並列に配置された相関器に供給することができる。このとき、時間推定値に従って並列に配置された相関器を整列させる。
【0061】
ブロック510では、衛星306の信号309に合わせた時間推定値を特定し、補助情報を受信装置302に供給する。このような補助情報は、受信装置302の、衛星306の信号309を効率的に検出する能力を大きく向上させる。即ち、イリジウム衛星を使用して衛星304を実施する一実施形態に従って上述したように、複数の並行な通話を利用して、例えば衛星信号のフレーム構造のフレームエッジを決定することができる。このような実施例では、イリジウムは90ミリ秒のフレーム構造を有している。100フレーム毎に、対応するGPS秒が位置するフレームが存在している。したがって、単純にフレームエッジが判明すれば、無限大の推定値を試さずとも、100のフレームを試せばよいので、補助情報を取得し易くなり、GPS処理が大きく向上する。
【0062】
図1〜3Bを参照して上述した一又は複数の実施形態による正確な絶対時間を取得するためのシステム及び方法を使用して、無線ネットワークステーション(例えば、WiFiトランシーバ、WiFi互換性デバイス、802.11互換性デバイス、又はその他の無線デバイス)の測量を瞬間的に初期化することにより、屋内ナビゲーションを容易に行うことができる。一又は複数の実施形態によれば、上述のような正確な絶対時間を使用することにより、無線ネットワークステーション(例えば、インターネットホットスポット及び/又はその他の種類の無線ネットワークステーション)は、受信装置302の位置決めビーコンとして動作することができる。その結果、受信装置302のローミングユーザは、屋内環境でもナビゲーションを行うことができる。
【0063】
図4は、本発明の一実施形態により、衛星を使用して無線ネットワークステーションの測位を可能にする自己形成型ナビゲーションシステム300aを示している。図4では、受信装置302aは、レンジング信号701、703、及び705を受信することができ、これらの信号は無線ネットワークステーション702、704、及び706からの補助情報を含むことができる。各無線ネットワークステーション702、704、及び706は、ネットワーク708と信号通信し、更には衛星304aから正確な時間及びレンジング信号710を受信する。一実施形態では、受信装置302aの位置はローミングユーザの位置にも対応しうる。
【0064】
無線ネットワークステーション702、704、及び706は、WiFiトランシーバと、その他の無線ネットワークステーションデバイス、構成、及び/又はネットワークを含むことができる。加えて、ネットワーク708は、インターネット、或いは携帯電話ネットワーク又はTVネットワークのようなその他の適切なネットワークを含むことができる。
【0065】
図5は、本発明の一実施形態により衛星信号と無線ネットワークステーション信号とを統合することにより位置情報取得を実行する方法のフローチャートを示している。図5のフローチャートは、図4のナビゲーションシステムに使用するために実施することができる。この実施形態では、例えばイリジウム衛星及びGPS衛星からの衛星信号を、WiFi又は802.11タイプの信号と統合することができる。
【0066】
ブロック802では、受信装置302aは、例えば(図1〜3Bを参照する一又は複数の実施形態に従って上述した)LEO衛星のような衛星304aから同報通信される擬似ランダムコードのような、反復可能コードの形式の正確な絶対タイミングコード信号710を受信する。
【0067】
ブロック804では、受信装置302aは、無線ネットワークステーション702、704、及び/又は706を介して補助情報を受信する。
【0068】
ブロック806では、正確な絶対タイミングコード信号710を無線ネットワークステーション702、704、及び/又は706からの補助情報と共に使用して、数ミリ秒以内の精度の正確な絶対時間を決定する。
【0069】
ブロック808では、閉塞した環境における、例えばGPS測位などの位置決めを容易に行うために、正確な絶対時間を使用して、例えばGPS相関器のような受信装置302aのシステム相関器を整列させる。
【0070】
ブロック810では、受信装置302aは、正確な絶対時間を使用することにより決定された位置決め情報を使用して、無線ネットワークステーション702、704、及び/又は706の位置を測量する。
【0071】
ブロック812では、受信装置302aは、レンジングコード上で伝送される無線ネットワークステーション702、704、及び706の位置情報を受信する。
【0072】
ブロック814では、受信装置302aは、無線ネットワークステーション702、704、及び706の一又は複数からの位置決め情報とレンジング情報とを組み合わせることにより、絶対位置情報取得を実行する。
【0073】
一実施形態では、ローミングユーザの位置(例えば、受信装置302aの位置)は、必要に応じて、無線ネットワークステーション702、704、及び706を通して報告されるので、ユーザ追跡が容易に行われる。
【0074】
図6は、本発明の別の実施形態による、衛星信号と無線ネットワーク信号とを統合することにより位置情報取得を実行する方法を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、図4のナビゲーションシステムに使用するために実施することができる。この実施形態では、ビーコンとして動作する無線ネットワークステーションの位置決定も、例えばイリジウム衛生信号(のみ)と、WiFi又は802.11タイプの信号(長い統合時間を要する)とを統合することにより達成することができる。
【0075】
図5のブロック802〜806を参照して上述した方法を本実施形態に使用して、数マイクロ秒の精度で正確な絶対時間を求めることができる。絶対時間を求めた後で、図6のブロック910において、閉塞した環境における位置決めを容易に行うために、絶対時間を使用して受信装置302aのシステム相関器を整列させる。
【0076】
ブロック912では、受信装置302は、時間をかけて複数の衛星の衛星レンジングコード(例えば、イリジウムiGPSレンジングコード)を測定する。
【0077】
ブロック914では、無線ネットワークステーション702、704、及び706が固定であると仮定して、レンジングコードを、軌道情報及びタイミング信号といった衛星情報と組み合わせる。
【0078】
ブロック916では、受信装置302aは、複数の衛星(例えばイリジウム)の通過を繰り返し統合することにより、多重化(multilateration)を使用して位置決めを算出する。
【0079】
ブロック918では、位置決め情報を使用してWiFiトランシーバ702、704、及び706を測量する。
【0080】
ブロック920では、受信装置302aは、レンジングコード上で伝送されるWiFiトランシーバ702、704、及び706の位置に関する情報を受信する。
【0081】
ブロック922では、受信装置302aは、FiFiトランシーバ702、704、及び706の一又は複数からの位置決め情報とレンジング情報とを組み合わせることにより、絶対位置情報取得を実行する。
【0082】
一実施形態によれば、ローミングユーザの位置は(必要であれば)、無線ネットワークから報告されるので、ユーザ追跡を容易に行うことができる。
【0083】
例えば、レンジングを求めるために、到着時間の差を求めることができる。WiFiトランシーバは、例えば電話又はコンピュータといった受信装置302aにメッセージを送ることができ、メッセージは、受信されると直ちにWiFiトランシーバに返信される。コンピュータ又は電話の処理時間は既知である。WiFiトランシーバは、受信装置302aがWiFiトランシーバに応答するまでの時間を認識している。したがって、到着時間の差(DTOA)を算出することができ、この時間差は受信装置の処理時間とFiWiトランシーバにメッセージが帰ってくるまでに要する時間との和に等しい。
【0084】
適用可能ならば、本発明により提供される様々な実施形態を、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して実施することができる。また、適用可能ならば、本明細書において規定される様々なハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントを、本発明の理念から逸脱することなく、ソフトウェア、ハードウェア、及び/又は両方を含む複合コンポーネントに組み合わせることができる。適切である場合、本明細書において規定される様々なハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントを、本発明の理念から逸脱することなく、ソフトウェア、ハードウェア、及び/又は両方を含むサブコンポーネントに分離することができる。加えて、適切である場合、ソフトウェアコンポーネントをハードウェアコンポーネントとして実施することができ、逆にハードウェアコンポーネントをソフトウェアコンポーネントとして実施することもできる。
【0085】
プログラムコード及び/又はデータのような本発明によるソフトウェアは、コンピュータで読み取り可能な一又は複数の媒体に保存することができる。また、本明細書において特定されたソフトは、一又は複数の、ネットワーク化されている、及び/又はそれ以外の、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ及び/又はコンピュータシステムを用いて実施することが考慮可能である。適切である場合、本明細書に記載した種々のステップの順序は、本明細書に記載の特徴を提供するために、変更すること、複合ステップに組み合わせること、及び/又はサブステップに分離することが可能である。
【0086】
上記の実施形態は、本発明を説明するものであって限定するものではない。本発明の原理に従って、多数の変更及び変形例が可能である。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から正確な絶対時間伝送を取得する方法であって、
衛星から、周期的に反復するコードを含む精密時間信号を受信すること、
前記コードのタイミング位相を求めること、
追加的補助情報を受信すること、及び
前記タイミング位相と前記追加的補助情報とを使用して正確な絶対時間を求めること
を含む方法。
【請求項2】
前記追加的補助情報を受信することが、ネットワークから追加的補助情報を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネットワークが、携帯電話ネットワーク、WiFiネットワーク、又はインターネットネットワークである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コードが粗タイミングコードと擬似ランダムコードとの間で交互に切り換わる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記衛星が第1の衛星であって、前記方法が更に、
正確な絶対時間を使用して受信装置の位置決め相関器を整列させることにより、減衰した環境又は妨害を受ける環境において第2の衛星からの位置決め信号を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の衛星が汎地球測位システム(GPS)衛星である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記衛星が低地球軌道(LEO)衛星である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記LEO衛星がイリジウム衛星又はグローバルスター衛星である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記追加的補助情報が、前記衛星に関連する軌道情報、約5秒以内の凡その時間、精度約3000メートル以内の、前記衛星と受信装置との間の凡そのレンジ、又は前記衛星のクロックに関連するクロックオフセット情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記衛星のドップラープロファイルから前記追加的補助情報を求めること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
減衰した環境又は妨害を受ける環境においてナビゲーションを実行する方法であって、
第1の衛星から受信された信号のフレーム構造を検出すること、
前記検出されたフレーム構造に受信装置のクロックを合わせること、
前記フレーム構造に従ってそれぞれが分離された複数の時間推定値を生成することであって、これらの時間推定値のうちの少なくとも一つが後で第2の衛星の信号に合わせられるものであること、
前記受信装置のシステム相関器に前記時間推定値を供給すること、
前記時間推定値に従って前記システム相関器を整列させること、
前記第2の衛星からの信号源に合わせる前記少なくとも一つの時間推定値を特定することであって、前記少なくとも一つの時間推定値が有効な補助情報を前記受信装置に供給して検出効率を顕著に改善すること
を含む方法。
【請求項12】
前記受信装置がiGPSタイミングレシーバである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の衛星が低地球軌道(LEO)衛星である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記LEO衛星がイリジウム衛星である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フレーム構造が90ミリ秒のL帯域フレームを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
減衰した環境又は妨害を受ける環境において使用される受信装置であって、
衛星から周期的に繰返すコードを含む精密時間信号を受信し、且つ追加的補助情報を受信するアンテナ、
プロセッサ、及び
コンピュータで読み取り可能な複数の指令を記憶するメモリであって、これらの指令が前記プロセッサによって実行されることにより、受信装置が:
前記コードのタイミング位相を求め、且つ
前記タイミング位相と前記追加的補助情報とを使用して正確な絶対時間を求めるメモリ
を備える受信装置。
【請求項17】
前記衛星が第1の衛星であり、前記受信装置が更に、
正確な絶対時間に基づいて整列され、第2の衛星から受信された位置決め信号に基づいてナビゲーションを実行するシステム相関器
を更に備えている、請求項16に記載の受信装置。
【請求項18】
前記システム相関器が前記プロセッサによって実施されている、請求項17に記載の受信装置。
【請求項19】
前記衛星が低地球軌道(LEO)衛星である、請求項16に記載の受信装置。
【請求項20】
前記LEO衛星がイリジウム衛星又はグローバルスター衛星である、請求項19に記載の受信装置。
【請求項21】
前記ネットワークが、携帯電話ネットワーク、WiFiネットワーク、又はインターネットネットワークである、請求項16に記載の受信装置。
【請求項22】
前記コードが粗タイミングコードと擬似ランダムコードとの間で交互に切り換わる、請求項16に記載の受信装置。
【請求項23】
携帯電話、ハンドヘルドナビゲーションデバイス、車載式ナビゲーションデバイス、又は航空機搭載式ナビゲーションデバイスである、請求項16に記載の受信装置。
【請求項24】
精密時間信号が更にデータを含み、且つ前記コードのタイミング位相を求めることが、
前記衛星の一周波数帯の全域に亘って前記データを受信すること、
前記受信されたデータの周波数ダウンコンバート及びサンプリングを行うこと、
サンプリングされたデータを取り込んで適切なブロックに保存すること、
前記サンプリングされたデータの粗い獲得(coarse acquisition)検索を実行すること、
前記サンプリングされたデータのピークをスクリーニングすること、
前記粗い獲得検索に基づいて決定されてスクリーニングされたピークの位置において、細かい獲得(fine acquisition)検索を実行することにより、最良のピークを決定すること、並びに
前記最良のピークと相対時間とを生成する特定された一のメッセージに基づいて、前記コードのタイミング位相を決定すること
を含む、請求項16に記載の受信装置。
【請求項25】
前記サンプリングされたデータの粗い獲得検索を実行することが、更に:
詳細な処理を行うために前記サンプリングされたデータの一部を選択すること、
前記サンプリングされたデータの部分のドップラーを、既知の軌道モデルと推定された時間とを用いて推定すること、
既知の周波数サブ帯域に基づいて正弦関数と余弦関数とを用いて、前記サンプリングされたデータの部分をデジタル式に復調すること、
前記サンプリングされたデータの部分を間引きすること、
前記サンプリングされたデータの間引きされた部分に高速フーリエ変換を適用することにより、最高のピークとそれに関連する周波数とを求めること、並びに
前記サンプリングされたデータの次の部分に進んで前記詳細な処理を繰返すこと
を含む、請求項24に記載の受信装置。
【請求項26】
減衰した環境又は妨害を受ける環境において使用される受信装置であって、
第1の衛星から、周波数帯域のフレーム構造を含む精密時間信号を受信し、且つ第2の衛星から第2の信号を受信するアンテナ、
プロセッサ、及び
コンピュータで読み取り可能な複数の指令を記憶するメモリであって、前記複数の指令が前記プロセッサによって実行されると、受信装置が、
前記第1の衛星のフレーム構造を検出し、
前記第1の衛星のフレーム構造に前記受信装置の内部クロックを合わせ、
前記第1の衛星のフレーム構造に従ってそれぞれ分離された複数の時間推定値であって、うち少なくとも一つが前記第2の衛星からの信号に合わせられる複数の時間推定値を生成し、
前記時間推定値に従って前記受信装置のシステム相関器を整列させ、且つ
前記第2の衛星からの信号に合わせられる前記少なくとも一つの時間推定値を特定することにより、有効な補助情報が前記受信装置に供給される
メモリ
を備える受信装置。
【請求項27】
前記周波数帯域のフレーム構造がL帯域フレーム構造を含んでいる、請求項26に記載の受信装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−522258(P2011−522258A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511799(P2011−511799)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045391
【国際公開番号】WO2009/146350
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】