説明

衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するための計算方法と計算システム

【課題】衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するための計算方法と計算システムを提供する。
【解決手段】本発明は、衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するために低い確率の事象を計算する方法とシステムに関する。
本発明は、精度性能を評価するためのチャートを併せて用いることで、極値理論の実施に基づいて低い確率の事象をモデル化することにより、高い要求レベルの衛星ナビゲーション・システムの精度性能を保証することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛星ナビゲーション・システムに関し、特にそのようなシステムの精度性能を評価するために低い確率の事象を計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、衛星ナビゲーション・システムを利用する商業サービスは大幅に拡大しつつある。無線標定信号に基づいて作動する製品は、当初は道路ナビゲーション支援のための自動車内利用から、最近では多数の個人用サービスのために携帯電話装置内でも利用され、日常生活の中で広く利用できるようになってきている。将来の衛星による位置決定システム、例えばガリレオ・ヨーロッパ・システム(GALILEO Europe system)へのアップグレードは、現在のシステムよりもさらに高い性能を約束する。従って、十分な信頼性及び位置決定の精度の不足により想定出来なかった新たなサービスが、今日では、企業、とりわけ道路輸送会社及び航空輸送会社にとって考慮できるものとなっている。例えば、道路輸送に関しては、顧客に個別化された条件を提示することにより、有料道路区間を運用するためのサービスの経済的モデルを変える取り組みが進行中である。航空輸送会社に関しては、信頼性及び位置決定精度の性能向上により、パイロットが全面的に頼ることができるナビゲーション装置を航空機に組み込むことができる。これらの装置は、航空輸送の安全性の大幅な改善を可能にするであろう。しかしながら、人々の安全性がかかっているサービスについては、ナビゲーション・システムによって送られるデータの信頼性を証明することが必須である。このような理由で、衛星ナビゲーション・システムの運営者は、末端の顧客への保証されたサービスに関する要件が行政機関によって課せられる。
【0003】
衛星ナビゲーション・システムは、完全性、精度、及び受信地域に関する性能データによって特徴付けられる。完全性は、衛星ナビゲーション・システムにより提供される情報における信頼性の尺度である。提供される地点の完全性を決定するための良く知られたツールは、スタンフォード・チャート(Stanford chart)である。スタンフォード・チャート(Stanford chart)は、その水平軸上の入力パラメータが垂直又は水平に観察された位置の誤差であり、その垂直軸上の入力パラメータが、統計的モデルに基づいて垂直又は水平に計算された保護レベルである、二次元マトリックスである。このチャートは、その観察された位置の誤差が保護レベルより小さい測定サンプルの比率の検証を可能にする。
【0004】
位置の精度は、実際の位置に対して推定された位置の誤差により定義される。位置の精度はとりわけ、測定結果のジオメトリの構成と同様に、ユーザーと受信した衛星との間の推定された距離における誤差に依存する。測定結果のジオメトリの条件を示す、通常「精度の希釈(Dilution of Precision)」を表わすDOPと呼ばれる値が存在する。DOPの値が高いとき、これは位置を得るために使用される衛星が近く、従ってそのジオメトリが悪く、そしてDOPの値が低いとき、これは位置を得るために使用される衛星が遠く、従ってそのジオメトリが良いことを示す。
【0005】
民間航空に関する規則及び検査に対して責任がある機関は、特に重要なサービスに対する精度性能に関して、厳格なレベルの性能を要求する。衛星ナビゲーション・システムの地理位置情報データを利用するこれらの重要なサービスの中で、LPV(「Localizer Performance with Vertical Guidance(垂直ガイダンスを伴うローカライザの性能)」)200サービスは、過去に衛星ナビゲーション・システムが、少なくとも時間の95%の間、4m未満の垂直位置誤差と16m未満の水平位置誤差を示すことを要求した。将来的には、運営者は衛星ナビゲーション・システムがユーザーに対し、通常の状態で、10mを超える垂直位置誤差の発生確率が10−7未満、及び劣化した状態で、15mを超える位置誤差の発生確率が10−5未満であることを立証するように要求されるであろう。このサービスは、垂直で35m及び水平で40mの警告レベルを定義している。
【0006】
補強された衛星システムは、非常に低い確率の事象に対して要求される仕様に適合できることが知られている。これらの検証チェックは、開発段階の期間中、困難で厄介な方法を通じて実施されている。現在の技術によれば、それらは試験にかかる時間が過剰に長い期間(すなわち数十年)にわたる測定の実施を必要とするであろう。事実、完全性の許容範囲の測定を実行するために、従来の推測統計学は、観察可能な実現領域にわたる確率変数の挙動をモデル化しようとする。関連する統計を得るため、不必要な情報を測定しないように十分な相関関係のないデータを回収することが必要である。各測定の間が約5分間の周期で、サンプリングを行うことが必要と推定される。しかしながら、もし検出しようとする事象の確率が低いならば、これは数千年の測定にわたって数十億ものサンプルを集めることを意味するであろう。
【0007】
以前の国際公開第2009/112483号パンフレットにおいて、出願者は極値理論に基づいて非常に低い確率の位置誤差の分布をモデル化することを可能にする、衛星ナビゲーション・システムの、完全性のしるしを推定するための手段を提供する装置を開示している。しかしながら、精度性能もまた衛星のジオメトリに依存し、収集されたデータが、ユーザーごとの全ての場合の衛星ジオメトリを考慮していないため、要求レベルを低い発生確率でユーザーに対して保証できる精度測定ツールは現時点では存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、ユーザー用の衛星のジオメトリに関する全ての状況を考慮して、衛星ナビゲーション・システムの精度性能を保証し、そして運営者に課された要求よりも大きい位置誤差の発生が非常に低い発生確率であることをユーザーに保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より正確に言えば、本発明は、受信機セグメントに無線標定信号を送信する宇宙セグメントを含む衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するために、低い確率の事象を計算する方法に関する。有利なことに、それは次のステップ:
− 複数のサンプル用のシステムによって保証され得る、前記サンプル用のシステムの受信機位置の推定誤差を測定し、保護半径と呼ばれる最大の位置誤差のしきい値を計算する先行ステップであって、推定誤差及び保護半径が位置の基準点の一次元において定義されるステップと、
− 次の条件:
i.保護半径が警告のしきい値よりも小さく、
ii.保護半径と推定位置誤差との比率が安全率よりも大きく、安全率が推定誤差の要求レベルに対する警告のしきい値の比率であること
を満たすサンプル分布の、第1の比率を計算するステップと、
− 次の条件:
i.保護半径が警告のしきい値よりも小さく、
ii.保護半径と推定位置誤差との比率が安全率よりも小さく、
iii.推定位置誤差が推定誤差の要求レベルよりも小さいこと
を満たすサンプル分布の、第2の比率を計算するステップと、
− サンプル分布の少なくとも1つの要素をモデル化するステップであって、要素が分布の低い発生確率のサンプルを表わし、モデル化が前記観察された分布のサンプルに基づき、極値理論を適用することによって計算されるステップと
を含む。
【0010】
第1の好適な変形によれば、精度性能を検証するため、本方法は保護半径と推定位置誤差との比率が安全率に等しい、サンプルの分布の確率を計算するステップを含む。
【0011】
第2の好適な変形によれば、精度性能を検証するため、本方法は一方で、保護半径と推定位置誤差との比率が安全率よりも小さいサンプルを得る確率を計算するステップと、他方でこのサンプルに対して、保護半径が警告しきい値よりも小さく、推定位置誤差が、推定誤差の要求レベルよりも大きい確率を計算するステップとを含む。
【0012】
本発明はまた、上記の変形のいずれか1つによる方法を実施可能な、衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するために低い確率の事象を計算するシステムに関する。
【0013】
上述の変形による方法及びシステムの特性により、衛星ナビゲーション・システムの精度性能を検証するために、事象の発生確率を観察する必要無しに、非常に低いその確率の事象の発生確率を評価することが可能である。
【0014】
さらにこの方法は、あらゆる場合のジオメトリと非常に低い再発事象の発生を観察するために、膨大な観察の方策に頼ることなく、あらゆる場合の衛星のジオメトリに対する性能を証明することができる。
【0015】
本発明は以下に続く限定されない記述を読むことにより、および添付図面によりより良く理解され、そして別の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】衛星ナビゲーション・システムの精度性能、及び所与の要求レベルを考慮した、受信機に対しての位置誤差の確率計算に関する制御チャートを表わす。
【図2】精度性能、及びその位置誤差が所与の要求レベルに適合しないサンプルを得る確率の計算に関する、制御チャートを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0017】
衛星ナビゲーション・システムの無線標定信号を利用するサービスプロバイダーは、これらのシステムに対して、一方でより高い性能を期待し、他方で性能が期待した要求事項を満たさないとき、サービスの連続性と、サービスのユーザーへの警告を可能にする警告能力とを期待する。性能を検証するための解決策は現在、ユーザー用の信号の観察条件がどうであろうと、衛星ナビゲーション・システムの完全性を調べるために存在するが、精度性能の検証については各ユーザーが当人の位置、観察の時点、及び当人の位置を計算するために見出される衛星の状態に応じて、特有の構成で無線標定信号を利用するため、現行のツールは全ての観察条件下ではそれを保証できない。
【0018】
衛星ナビゲーション・システムの位置決定の原理が簡潔に想起される。衛星ナビゲーション・システムにおいて、位置決定されるべき受信機に達するために衛星によって送信される無線標定信号によってかかる時間は、この衛星とこの受信機との間の擬似的距離と呼ばれる距離を決定するために使われ、信号は衛星に関する位置のデータを含む。ユーザーによって見出される幾つかの衛星により送信された無線標定信号の処理に基づき、ユーザーは当人の位置を確認できる。衛星の数が多い程、そしてDOPの値が低い程、位置の精度はより良好である。精度はとりわけ衛星のクロックの精度パラメータ、横切る大気層、及びなされる修正の精度に依存する。
【0019】
レベルLPV200のサービスは、次の性能を必要とする。衛星ナビゲーション・システムは、時間の少なくとも95%の間、4m未満の垂直位置誤差及び16m未満の水平位置誤差を示すことが必要とされる。さらに、このサービスは通常の状態で、10mを超える垂直位置誤差を与える確率が10−7未満であり、そして劣化した状態で、15mを超える位置誤差を与える確率が10−5未満であることを必要とする。LPV200のサービスレベルは、40mに等しい水平の警告しきい値及び35mに等しい垂直の警告しきい値を課す。
【実施例】
【0020】
本発明は無線標定信号の観察条件によらない精度性能を計算する方法、及び所与の誤差よりも大きい観察に関する確率比の要求を提案する。本方法は同様に、位置に対する、垂直及び水平の位置決定に対する、あらゆる他のレベルの要求の形成を可能にする。図1はナビゲーション・システムの性能を決定するために行われる計算を図式的に表わす。
【0021】
図1は衛星ナビゲーション・システムの受信機用の位置決定サンプルのチャートを表わす。それは第1の水平軸10上に、計算された最大誤差しきい値(通常は保護半径と呼ばれ、以降、本明細書では記述を容易にするためにこの用語を用いる)と推定位置誤差との比率を表わし、その比率は凡例として、参照記号XPL/XNSEにより表示され、位置の基準点の一次元において定義される。保護半径と推定位置誤差の比率が垂直の基準線で表わされる場合、その比率はVPL/VNSEの値で表わされ、そして水平平面においてはHPL/HNSEによって表わされるであろう。保護半径XPLは計算アルゴリズムにより得られる。
【0022】
保護半径は当業者に知られている様々な方法によって得ることができ、本方法の選択は、本発明の枠内で、発明の範囲を限定しない。例えば、保護半径は衛星ナビゲーション・システムの完全性のレベルに基づいて決定され得る。保護半径は実際の位置の周りの所与の平面内における可能な位置を表わし、より正確には計算された位置が、所与の平面内で実際の位置プラス保護レベルを超えて位置し得ないことが、計算により保証される。
【0023】
推定位置誤差XNSEは、様々な手段により正確に知られる受信機の実際の位置と、衛星により送信された無線標定信号の処理に基づいて推定される位置との差である。例えば、衛星ナビゲーション・システムの一部を形成する(「ground‐based augmentation system(地上型補強システム)」を表わす)GBASタイプの受信ビーコンの位置は、正確に知られる。推定位置誤差は、当業者に知られている様々な方法により得ることができ、本方法の選択は、本発明の枠内で、発明の範囲を限定しない。
【0024】
位置誤差Kの要求レベルは、ナビゲーション・システムが時間の95%の間に超えてはならないという位置誤差に相当する。サービスの重要度に応じて、誤差の要求レベルは4、10、又は15mであり得る。要求レベルは位置の基準点の一次元に従って変化し得る。
【0025】
本チャートは第2の垂直軸11上に保護半径XPLを表わす。本チャートはそれゆえ、水平には保護半径XPLと位置誤差XPLの比率の関数として、そして垂直には保護半径の関数として、チャート内に位置する位置データのサンプルを表わす。警告しきい値Jは直線12によりチャート内に図式的に表わされ、推定誤差の要求レベルKは直線13により表わされている。
【0026】
低い確率の事象を計算する方法は、第1に以下の段落において定義されている、チャートの様々なカテゴリー内のサンプルの比率を計算することにある。精度性能を測定することの問題となる事柄は、各ユーザーにとってDOP値を通じて評価される衛星のジオメトリに依存することが想起される。チャートによる表示の利点は、DOPにおける変動を視覚化できることである。この変動はサンプルの垂直運動により、チャート内で特徴付けられる。衛星のジオメトリにおけるDOP値が増加するとき、データのサンプルはチャート内で垂直方向に上向きに推移する。実際、DOP値が増加すると保護半径は増加するが、しかしXPL/XNSEの比率は、それがDOPに依存しないため変化せずに留まり、その位置の領域において保護半径XPLはDOPと完全性の係数との乗算に等しく、そして位置誤差はDOPと擬似距離誤差との乗算に等しい。DOPが減少する場合、保護半径は減少してサンプルは垂直方向に下向きに推移する。
【0027】
その確認方法により計算される第1のカテゴリー1は、以下の2つの条件に適合するサンプルを含む:保護半径XPLがサービスの警告しきい値Jよりも小さく、保護半径と推定位置誤差との比率XPL/XNSEが安全率J/Kよりも大きく、安全率は推定誤差の要求レベルKに対する警告しきい値Jの比率である。これらのデータサンプルに対して、DOPが変動するとき、サンプルはジオメトリの条件が劣化した場合に垂直方向の上向きに推移し、ジオメトリの条件が改善した場合には下向きに推移すると推定される。その結果、このカテゴリー1内に位置するサンプルはDOPがどうであろうと位置誤差の要求に適合し、そして位置誤差の要求Kが適合しないようにDOPが劣化した場合、サンプルは必然的に、サービスによって必要とされる警告しきい値Jを超える。これは従って誤差における要求レベルが満たされ、従ってそれはDOPがどうであろうと確かに満たされるか、あるいは要求レベルが満たされず、従って警告のしきい値が超えられているため、いかなる場合でもナビゲーション・サービスは使用できないことのいずれかを意味する。それゆえ95%の時間中に、観察されたDOPの条件において、計算されたサンプルがカテゴリー1の条件に適合した場合、ユーザーのDOP観察条件がどうであれ、精度性能は満たされる。本方法により、全ての観察条件で測定する必要無しに、それを決定することができる。
【0028】
第2のカテゴリー2は以下の3つの条件に適合するサンプルを含む:保護半径が警告しきい値Jよりも小さく、保護半径と推定位置誤差との比率XPL/XNSEが安全率J/Kよりも小さく、そして推定位置誤差XNSEが推定誤差の要求レベルKよりも小さい。これらのデータサンプルに対して、そこから位置誤差における要求レベルは潜在的に満たされるものと推定される。しかしながら、当初のDOP値の条件下では位置誤差が小さかった一方で、DOP値が増加した場合、一定のサンプルに関する位置誤差は推定誤差の要求レベルKよりも大きくなり得る。カテゴリー2においてサンプルを計算することにより、精度性能が既知の観察条件に関して満たされているか否かが決定される。しかしながら、それを全てのユーザー、とりわけサンプル測定条件に関して劣化した測定条件下で、当人の位置を決定するユーザーに対して保証することは出来ない。
【0029】
第3のカテゴリー3は、以下の3つの条件に適合するサンプルを含む:保護半径XPLが警告しきい値Jよりも小さく、保護半径と推定位置誤差との比率XPL/XNSEが安全率J/Kよりも小さく、推定位置誤差が推定誤差の要求レベルよりも大きい。これらのデータサンプルに関して、そこから位置誤差における要求レベルは満たされていないと推定される。しかしながら、DOP値が減少する場合、サンプルに関する位置誤差は、当初のDOP値の条件下で位置誤差がより大きかった一方で、一定のサンプルに関しては推定誤差の要求レベルKよりも小さくなり得る。衛星のジオメトリにおける劣化の場合、その性能は保護半径がもはや警告しきい値に適合しないようになり得る。そのときナビゲーション・システムはもはや使われてはならず、ユーザーは警告を受ける。
【0030】
第4のカテゴリー4は、以下の2つの条件に適合するサンプルを含む:保護半径XPLが警告しきい値Jよりも大きく、推定位置誤差XNSEが推定誤差の要求レベルKよりも大きい。これらのデータサンプルに関して、保護半径XPLは警告しきい値Jよりも大きい。この部分におけるサンプルの比率が高い場合、ナビゲーション・システムは、それがユーザーのサービス用に余りに危険な位置の不確かさを示すため、もはや使われてはならない。劣悪なジオメトリは、この性能に責任を有し得る。
【0031】
第5のカテゴリー5は、以下の2つの条件に適合するサンプルを含む:保護半径XPLが警告しきい値Jよりも大きく、推定位置誤差XNSEが推定誤差の要求レベルKよりも小さい。サンプルの大きな割合がこのカテゴリー内に位置する場合、位置誤差XNSEが要求レベルKに適合する一方で、保護半径XPLが警告しきい値Jよりも大きいため、ナビゲーション・システムはもはや使われることが出来ない。
【0032】
5つのカテゴリー中の位置サンプルの分布が一旦得られると、非常に低い発生確率を示し、観測不能と考えられる分布の構成要素をモデル化するように、計算のステップが実施される。この問題は、分布の観察されたサンプルに基づき極値理論を適用することによる、モデリングの実施により解決される。極値理論の原理は、確率領域においてサンプルの分布の末端部をモデル化することにある。モデル化は分布の特性パラメータに依存する。コンピュータは、サンプルの分布のモデル化を計算するために、観察されたデータの処理を担当し、極値理論に基づいてモデル化機能を実施可能な計算手段の特性は、本発明の範囲を限定しない。
【0033】
図1はサンプルの分布20を表わす。この分布の両端は極度に低い発生確率を示す。要求レベルは、システムが例えば10mを超える位置誤差の確率が10−7未満であることを証明できるよう要求している。カテゴリー1内にあるサンプルに関して、衛星のジオメトリがどうであろうと、そして保護半径が警告しきい値未満である限り、位置誤差は要求レベルKよりも小さい。従って、安全率J/Kのレベルにあるサンプル分布の末端部のモデル化は、それに対して精度の要求レベルが確かに満たされるサンプルを持つ確率の計算を可能にする。
【0034】
図1に例証されている性能を計算するシステムの第1の変形において、安全率J/Kと関連する確率10−xが計算される。この値はユーザー・サービスにより課された精度の条件を満たさない分布のサンプルを得る確率の計算を可能にする。
【0035】
図2によって例証されている性能を計算するシステムの第2の変形において、(サンプル観察の公称条件下あるいは劣化した条件下で)保護半径の関数としてのサンプルの分布確率が考慮される。このために、一方でその保護半径と推定位置誤差との比率XPL/XNSEが、安全率J/K未満であるサンプルを得る確率が計算され、この値は10−yに等しく、他方でこのサンプルがチャートのカテゴリー2内に位置する確率が計算され、この確率は10−pに等しい。これら2つの確率の積は、非常に低い確率のサンプル分布のモデル化により、ユーザー・サービスにより課された要求事項を満たさないサンプルの発生確率の決定を可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は全ての衛星ナビゲーション・システムに適用され、例えば、性能補強システム(「European Geostationary Navigation Overlay Service(ヨーロッパ静止ナビゲーション・オーバーレイ・サービス)」を表わすEGNOS)と同様に、アメリカのシステムであるGPS(「Global Positioning System(汎地球測位システム)」)、又は将来のヨーロッパのシステム、GALILEO(ガリレオ)に適用される。
【符号の説明】
【0037】
1 第1のカテゴリー
2 第2のカテゴリー
3 第3のカテゴリー
4 第4のカテゴリー
5 第5のカテゴリー
10 第1の水平軸
11 第2の垂直軸
12 直線
13 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機セグメントに無線標定信号を送信する宇宙セグメントを含む衛星ナビゲーション・システムの、精度性能を評価するために低い確率の事象を計算する方法であって、
− 複数のサンプル用のシステムによって保証され得る、前記サンプル用の前記システムの受信機位置の推定誤差を測定し、そして保護半径と呼ばれる最大の位置誤差のしきい値を計算する先行ステップであって、前記推定誤差及び前記保護半径が位置の基準点の一次元において定義されるステップと、
− 次の条件:
i.前記保護半径(XPL)が警告のしきい値(J)よりも小さく、
ii.前記保護半径と推定位置誤差との比率(XPL/XNSE)が安全率(J/K)よりも大きく、前記安全率が推定誤差の要求レベル(K)に対する前記警告のしきい値(J)の比率であること
を満たすサンプル分布の、第1の比率(1)を計算するステップと、
− 次の条件:
i.前記保護半径(XPL)が前記警告のしきい値(J)よりも小さいこと、
ii.前記保護半径と前記推定位置誤差との比率(XPL/XNSE)が前記安全率(J/K)よりも小さいこと、
iii.前記推定位置誤差(XNSE)が前記推定誤差の要求レベル(K)よりも小さいこと
を満たすサンプル分布の、第2の比率(2)を計算するステップと、
− 前記サンプル分布の少なくとも1つの要素をモデル化するステップであって、前記要素が前記分布の低い発生確率のサンプルを表わし、モデル化が前記観察された分布のサンプルに基づき、極値理論を適用することによって計算されるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記精度性能を検証するため、前記保護半径と前記推定位置誤差との比率(XPL/XNSE)が前記安全率(J/K)に等しい、サンプルの前記分布の確率を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精度性能を検証するため、一方で、前記保護半径と前記推定位置誤差との比率(XPL/XNSE)が前記安全率(J/K)よりも小さいサンプルを得る確率を計算するステップと、他方でこのサンプルに対して、前記保護半径(XPL)が前記警告しきい値(J)よりも小さく、前記推定位置誤差(XNSE)が、前記推定誤差の要求レベル(K)よりも大きい確率を計算するステップとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
衛星ナビゲーション・システムの精度性能を評価するために低い確率の事象を計算するシステムであって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法を実施可能であることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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