説明

衛星通信装置

【課題】地球局から送信された信号を受信可能な状況でも地球局との通信の異常を確認できると共に異常の要因を特定することができ、複数の地球局の受信状態を集中監視可能とする衛星通信装置を提供すること。
【解決手段】1つ以上の通信相手の地球局8から衛星を介して送信された信号を受信する衛星通信装置10であって、受信された信号の周波数またはレベルを含む信号の品質に関わる品質データを取得するキャリアクロック再生部22およびD/A変換器20と、受信された信号が復調されたとき地球局8を識別する地球局識別情報を含む受信データを取得するデータ分離部23と、取得された受信データと品質データとを合成するデータ処理部30と、データ処理部30によって合成された合成データから地球局識別情報と品質データとを対応させて表示する表示部42とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星を介して地球局と通信を行う衛星通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムとしては、図5に示すように、TDMA方式でHUB局7(親局)および複数の地球局8(子局)とが人工衛星9を介して通信が行われるものが知られている。地球局8の各々を区別する場合、地球局8Aまたは地球局8Bとして記載し、区別しない場合、地球局8として記載する。また、地球局8やHUB局7は、図示していないが、人工衛星9と通信するための衛星通信装置や、この衛星通信装置を介してデータを送受信する通信機器などによって構成されている。
【0003】
従来では、例えば図6(A)に示すように、HUB局7がデータを、地球局8に送信し、地球局8は、HUB局7から送信されたデータを正常に受信すると、応答信号をHUB局7に送信するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載された地球局8は、VSAT局(Very Small Aperture Terminal)である。
【0004】
また、地球局8が応答信号をHUB局7に送信したとき、HUB局7は、地球局8から送信された応答信号の受信の可否を判断し、応答信号を受信できていない場合、図6(B)に示すように、受信できなかった地球局8に再送するなどの措置をとる。なお、HUB局7が信号を受信できない要因としては、受信した信号の周波数が異常である、または、受信した信号の強度が不足している等である。
【特許文献1】特開平10−126326号公報(第2、5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地球局8から送信された信号をHUB局7が受信できない場合には、HUB局7と地球局8とが二度と通信できなくなっていることがあるため、地球局8から送信された信号をHUB局7が受信できなくなることを検出しないと、HUB局7と地球局8との通信が異常になっていることが判明できないという問題があった。また、HUB局7と地球局8との通信が異常になった場合には、特殊な試験装置を用いて異常になった要因を解析するため、解析作業が負担となっていた。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、地球局から送信された信号を受信可能な状況でも地球局との通信の異常を確認できると共に異常の要因を容易に特定することができる衛星通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衛星通信装置は、1つ以上の通信相手の地球局から衛星を介して送信された信号を受信する通信部と、前記通信部によって受信された信号の周波数またはレベルを含む信号の品質に関わる品質データを取得する品質データ取得部と、前記通信部によって受信された信号が復調されたとき前記通信相手の地球局を識別する地球局識別情報を含む受信データを取得する受信データ取得部と、前記受信データ取得部によって取得された受信データと前記品質データ取得部によって取得された品質データとを合成するデータ処理部と、前記データ処理部によって合成された合成データから前記地球局識別情報と前記品質データとを対応させて表示する表示部と構成を有している。
この構成により、地球局から受信した信号の周波数のずれや信号のレベルからなる品質データと地球局識別情報とを対応させて表示するため、地球局から送信された信号を受信可能な状況でも地球局との通信の異常を確認できると共に、信号の周波数のずれや信号のレベルなど、異常の要因を容易に特定することができ、複数の地球局の受信状態を集中監視可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、地球局から送信された信号を受信可能な状況でも地球局との通信の異常を確認できると共に異常の要因を容易に特定することができ、複数の地球局の受信状態を集中監視可能とする衛星通信装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る衛星通信システムおよび衛星通信装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る衛星通信システムのブロック図を示したものである。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る衛星通信システムは、複数の地球局8(子局)、これらの地球局8を集中して管理および制御するHUB局6(親局)、および、地球局8とHUB局6との通信を中継する人工衛星9を備えて構成される。本発明の実施の形態に係る衛星通信システムにおいては、HUB局6と各地球局8との通信がTDMA(Time Division Multiple Access)方式を用いて行われる。
【0011】
また、HUB局6は、本発明の実施の形態に係る衛星通信装置10を備えている。複数の地球局8(子局)は、例えば、VSATに対応して小型化および可搬化されたものである。また、地球局8は、図示していないが、人工衛星9と通信するための衛星通信装置や、この衛星通信装置を介してデータを送受信する通信機器などによって構成されている。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係る衛星通信装置10のブロック図である。衛星通信装置10は、図示していないアンテナから受信した信号を復調する復調処理部11と、復調されたデータおよび信号が復調されたときの品質データを処理するデータ処理部30と、品質データを監視する監視処理部40によって構成されている。
【0013】
なお、品質データは、衛星通信装置10が受信した信号のレベルや信号の周波数のずれなどを表すデータである。また、衛星通信装置10は、人工衛星9と通信する際に信号を送受信することができるが、説明の都合上、信号の受信に関わる部材を主に図示している。
【0014】
復調処理部11は、IF(Intermediate Frequency)受信部12、発振器13、ミキサー14、バンドパスフィルタ15、ゲイン可変型アンプ16、直交検波器17、A/D変換器18、FIRフィルタ19、D/A変換器20、AGC制御部21、キャリアクロック再生部22、およびデータ分離部23によって構成されている。
【0015】
IF受信部12には、アンテナによって受信された信号が入力され、信号がミキサー14に出力される。また、発振器13は、発振周波数による局部発振信号をミキサー14に出力するようになっている。
【0016】
ミキサー14は、発振器13から出力される局部発振信号を用いて、IF受信部12から出力された信号を周波数変換してバンドパスフィルタ15に出力するようになっている。バンドパスフィルタ15は、ミキサー14によって周波数変換された信号のうち特定の周波数の成分を除去してゲイン可変型アンプ16に出力するようになっている。
【0017】
ゲイン可変型アンプ16は、バンドパスフィルタ15によって出力された信号を、指定レベルまで増幅し、直交検波器17は、ゲイン可変型アンプ16によって増幅された信号を直交検波により復調してA/D変換器18に出力するようになっている。なお、指定レベルは、AGC制御部21によって指定されたレベルである。
【0018】
A/D変換器18は、直交検波器17によって出力された信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号は、FIRフィルタ19を通じて波形整形され、D/A変換器20およびキャリアクロック再生部22に出力される。
【0019】
D/A変換器20は、FIRフィルタ19によって出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換してAGC制御部21およびデータ処理部30に出力するようになっている。なお、D/A変換器20から出力されたアナログ信号は、AGC制御部21が使用する制御電圧であり、衛星通信装置10が受信した信号のレベルを表す情報となる。なお、信号のレベルは、品質データを構成するものである。
【0020】
AGC制御部21は、AGC(Automatic Gain Control)を行うものであり、D/A変換器20によって出力された制御電圧が基準電圧になるように指定レベルを調節するようになっている。ゲイン可変型アンプ16は、バンドパスフィルタ15によって出力された信号を、指定レベルまで増幅することで、A/D変換器18が出力する信号の平均レベルを一定に保つようにする。
【0021】
キャリアクロック再生部22は、FIRフィルタ19によって出力されたデジタル信号をデータ分離部23に出力すると共に、デジタル信号からキャリアを再生して受信した信号の周波数を求め、周波数とのずれを表す情報をデータ処理部30に出力するようになっている。なお、周波数のずれは、品質データを構成するものである。本発明の実施の形態において、周波数のずれは、基準とする周波数からの相対値で表される。
【0022】
データ分離部23は、キャリアクロック再生部22によって出力されたデジタル信号を所定の通信規格に従って処理するようになっており、デジタル信号を所定の通信規格に従ったヘッダ部のデータとペイロード部のデータとを分離し、分離したヘッダ部のデータをデータ分離部23で処理し、ペイロード部のデータを図示していない他の部材に転送する。
【0023】
また、データ分離部23は、キャリアクロック再生部22によって出力されたデジタル信号から通信相手の地球局を識別する地球局識別情報を抽出し、抽出した地球局識別情報をデータ処理部30に出力するようになっている。
【0024】
なお、データ分離部23は、地球局識別情報と共に受信した信号の情報をデータ処理部30に出力するようにしてもよい。例えば、HUB局6は、定期的に、HUB局6と地球局8との通信状態を確認するためのヘルスチェック信号を地球局8に送信し、地球局8は、ヘルスチェック信号を受信し、受信したヘルスチェック信号に対する応答信号を返信する場合がある。この場合においてHUB局6の衛星通信装置10が返信された応答信号を受信したとき、データ分離部23は、応答信号の情報を地球局識別情報と共にデータ処理部30に出力することもできる。
【0025】
なお、本発明の実施の形態において、復調処理部11は、本発明の通信部を構成するが、本発明の通信部は、1つ以上の通信相手の地球局から衛星を介して送信された信号を受信するものであれば如何なるものでもよい。また、D/A変換器20およびキャリアクロック再生部22は、本発明の品質データ取得部を構成するが、本発明の品質データ取得部は、信号の品質に関わる品質データを取得するものであれば如何なるものでもよい。また、データ分離部23は、本発明の受信データ取得部を構成するが、本発明の受信データ取得部は、地球局識別情報を含む受信データを取得するものであれば如何なるものでもよい。
【0026】
データ処理部30は、入出力インタフェース31、SCI32(Serial Communication Interface)、および、CPU33(Central Processing Unit)を備えて構成されている。入出力インタフェース31には、信号のレベルや周波数のずれなどの品質データが入力され、品質データがCPU33に出力される。また、SCI32には、地球局識別情報などのデータが入力され、地球局識別情報などのデータがCPU33に出力される。
【0027】
CPU33は、SCI32から出力された地球局識別情報などのデータと、入出力インタフェース31から出力された品質データとを合成し、合成した合成データを監視処理部40に出力するようになっている。なお、地球局8から送信された信号が受信された順番通りに、CPU33は、受信された信号の地球局識別情報と品質データとを合成するようになっている。
【0028】
また、CPU33は、地球局8から送信された信号が受信される毎に合成処理を行うようにしてもよいが、ヘルスチェックの信号に対する応答信号を受信したときだけに合成処理を行うようにしてもよい。なお、合成データには、地球局識別情報および品質データに加えてデータ分離部23が処理したデジタル信号の一部や全てが含まれていてもよい。
【0029】
監視処理部40は、例えば、データ処理部30とLAN(Local Area Network)ケーブルを介して接続されており、データ処理部30とTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に準拠した通信を行うようになっている。監視処理部40は、異常監視部41および表示部42を備えて構成されている。
【0030】
異常監視部41は、例えばCPUなどで構成され、データ処理部30によって出力された合成データを表示部42に出力すると共に、合成データを解析し、地球局8との通信の異常を判定するようになっている。例えば、異常監視部41は、合成データに含まれる品質データを構成する信号のレベルや周波数のずれが所定の許容範囲内にあるか否かを判定することで、通信の異常を検出するようになっている。また、異常監視部41は、信号のレベルや周波数のずれが所定の許容範囲内にある事象が所定の回数連続した場合に通信の異常を検出するようにしてもよい。
【0031】
表示部42は、ディスプレイなどによって構成され、異常監視部41から出力された合成データを画面に表示するようになっている。例えば、表示部42の画面に表示する合成データは、図3に示すように表示される。図3(A)は、地球局8Aに関する合成データを表示したときの表示イメージである。図3(B)は、地球局8Aの合成データを表示した後、地球局8Bの合成データを表示したときの表示イメージである。図3(C)は、異常監視部41によって異常が検出される場合の表示イメージである。
【0032】
以上のように構成された衛星通信装置10の動作の一例について図面を用いて以下に説明する。図4は、衛星通信装置10の監視処理部が合成データを処理するときのフローチャートである。
【0033】
まず、地球局識別情報と周波数のずれや信号のレベルを表す品質データとがデータ処理部30によって合成され、合成された合成データが異常監視部41に入力される(S1)。次に、異常監視部41は、周波数のずれが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する(S2)。
【0034】
周波数のずれが所定の許容範囲内にある場合、異常監視部41は、信号のレベルが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する(S3)。信号のレベルが所定の許容範囲内にある場合、異常監視部41は、正常状態を示す情報を合成データに付加して表示部42に出力し、合成データは、例えば、図3(C)の地球局8Bに対応するイメージで表示部42によって表示される(S4)。
【0035】
ステップS2で周波数のずれが所定の許容範囲内に無い場合、異常監視部41は、地球局識別情報の地球局8で周波数のずれが所定の許容範囲内に無いことが所定回数連続して発生しているか否かを判定する(S5)。周波数のずれが所定の許容範囲内に無いことが、所定回数連続して発生していない場合、処理はステップS3に進む。
【0036】
周波数のずれが所定の許容範囲内に無いことが、所定回数連続して発生している場合、異常監視部41は、異常状態を示す情報を合成データに付加して表示部42に出力し、合成データは、例えば、図3(C)の地球局8Aに対応するイメージで表示部42によって表示される(S7)。
【0037】
ステップS3で信号のレベルが微弱になって、信号のレベルが所定の許容範囲内に無い場合、異常監視部41は、地球局識別情報の地球局8で信号のレベルが所定の許容範囲内に無いことが所定回数連続して発生しているか否かを判定する(S6)。信号のレベルが所定の許容範囲内に無いことが、所定回数連続して発生していない場合、処理はステップS4に進む。
【0038】
信号のレベルが所定の許容範囲内に無いことが、所定回数連続して発生している場合、異常監視部41は、異常状態を示す情報を合成データに付加して表示部42に出力し、合成データは、例えば、図3(C)の地球局8Aに対応するイメージで表示部42によって表示される(S7)。
【0039】
なお、ステップS5およびステップS6を行う必要は無く、ステップS2で周波数のずれが所定の許容範囲内に無い場合にステップS7で異常状態を示す情報を付加した合成データが表示部42によって表示されてもよい。また、ステップS3で信号のレベルが所定の許容範囲内に無い場合にステップS7で異常状態を示す情報を付加した合成データが表示部42によって表示されてもよい。
【0040】
以上説明したように、HUB局7の衛星通信装置10は、地球局8から受信した信号の周波数のずれや信号のレベルからなる品質データと地球局識別情報とを対応させて表示するため、地球局8から送信された信号を受信可能な状況でも地球局8との通信の異常を確認できると共に、信号の周波数のずれの異常や信号のレベルの異常など異常の要因を特定することができ、複数の地球局8の受信状態を集中監視可能とする。
【0041】
また、HUB局7の衛星通信装置10は、周波数のずれやレベルを示す値が所定の許容範囲内にあるか否かを判定することで、信号の周波数のずれの異常や信号のレベルの異常などの異常を検出することができ、周波数のずれやレベルを示す値が所定の許容範囲内に無いことが所定回数連続して発生している場合に通信の異常として処理するため、異常検出精度を高めている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明は、地球局から送信された信号を受信可能な状況でも地球局との通信の異常を確認できると共に異常の要因を特定することができるという効果を有し、人工衛星を介して地球局と通信を行う衛星通信装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る衛星通信システムのブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係る衛星通信装置のブロック図
【図3】本発明の実施の形態に係る地球局に関する合成データを表示したときの表示イメージを表す図
【図4】本発明の実施の形態に係る衛星通信装置の監視処理部が合成データを処理するときのフローチャート
【図5】従来の衛星通信システムのブロック図
【図6】従来の衛星通信システムのデータの送受信に関わるシーケンス図
【符号の説明】
【0044】
8 地球局
6、7 HUB局
9 人工衛星
10 衛星通信装置
11 復調処理部
12 IF受信部
13 発振器
14 ミキサー
15 バンドパスフィルタ
16 ゲイン可変型アンプ
17 直交検波器
18 A/D変換器
19 FIRフィルタ
20 D/A変換器
21 AGC制御部
22 キャリアクロック再生部
23 データ分離部
30 データ処理部
31 入出力インタフェース
32 SCI
40 監視処理部
41 異常監視部
42 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の通信相手の地球局から衛星を介して送信された信号を受信する通信部と、
前記通信部によって受信された信号の周波数またはレベルを含む信号の品質に関わる品質データを取得する品質データ取得部と、
前記通信部によって受信された信号が復調されたとき前記通信相手の地球局を識別する地球局識別情報を含む受信データを取得する受信データ取得部と、
前記受信データ取得部によって取得された受信データと前記品質データ取得部によって取得された品質データとを合成するデータ処理部と、
前記データ処理部によって合成された合成データから前記地球局識別情報と前記品質データとを対応させて表示する表示部とを備えたことを特徴とする衛星通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271236(P2008−271236A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112059(P2007−112059)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】