説明

衛生紙用柔軟剤

【課題】なめらかさ、柔らかさ、しっとり感に加え、良好なしっかり感も付与された衛生紙を得ることができる衛生紙用柔軟剤の提供。
【解決手段】(a)グリセリン、(b)式(1)で示される四級アンモニウム塩、および(c)炭素数12〜28の脂肪酸塩からなり、(a)が90〜99質量%、(b)と(c)の合計が1〜10質量%であり、(b)と(c)との質量比が40/60〜80/20。


(式中、Rは炭素数12〜28のアルキル基またはアルケニル基、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、Xはハロゲン原子)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生紙用柔軟剤に関し、より詳細にはなめらかさ、柔らかさ、しっとり感に加え、良好なしっかり感をも付与することのできる衛生紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生紙、中でもティシューやトイレットペーパーなどは、直接肌に触れるものであることから、良好な肌触りが求められている。そのため、従来よりグリセリンや糖をはじめとした多価アルコールなどの保湿成分を紙に含浸させ、柔らかさやしっとり感を高めることが知られている。
【0003】
柔らかさやしっとり感の良好な衛生紙が市場に浸透してくるにつれ、さらにより良好な肌触りが求められるようになってきた。そこで、例えば特許文献1においては、界面活性剤および多価アルコール類からなる薬液を紙に含浸させることで、しっとり感に加え、なめらかさを紙に付与することが開示されている。また、特許文献2には、エステル結合を有する第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステルおよび多価アルコールからなる薬液を紙に含浸させることで、なめらかさ、柔らかさ、しっとり感を付与できることが開示されている。このように、より良好な肌触りとして、なめらかさ、柔らかさ、しっとり感の付与がなされてきた。
【0004】
一方、良好な肌触りの衛生紙が広く普及してきた結果、特に鼻をかんだり、拭き取りなどを目的とした使用の際は、その柔らかさやしっとり感のために、紙が弱々しく感じられることがある。使用する際に紙が弱々しく感じられると、破れたり、吸収するべき水分が裏抜けするのではないかと使用時に不安に感じてしまう。よって、なめらかさ、柔らかさおよびしっとり感に加え、良好なしっかり感が、快適な使用感を有する衛生紙の肌触りとして求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262489号公報
【特許文献2】特開2008−7926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、なめらかさ、柔らかさ、しっとり感に加え、良好なしっかり感も付与された衛生紙を得ることができる衛生紙用柔軟剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、グリセリン、特定の四級アンモニウム塩、脂肪酸塩を配合した組成物を衛生紙に塗布することで、良好ななめらかさ、柔らかさ、およびしっとり感に加え、しっかり感をも付与し、より快適な肌触りを衛生紙に付与できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、(a)グリセリン、(b)式(1)で示される四級アンモニウム塩、および(c)炭素数12〜28の脂肪酸塩からなり、(a)が90〜99質量%、(b)と(c)の合計が1〜10質量%であり、(b)と(c)との質量比が40/60〜80/20である衛生紙用柔軟剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは炭素数12〜28のアルキル基またはアルケニル基、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生紙用柔軟剤によれば、衛生紙に塗布することで、なめらかさ、柔らかさ、およびしっとり感に加え、しっかり感があり、快適に使用できる衛生紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の衛生紙用柔軟剤は、(a)成分としてのグリセリン、(b)成分としての上記式(1)で示される四級アンモニウム塩、および(c)成分としての炭素数12〜28の脂肪酸塩からなる。
【0013】
(b)成分としての上記式(1)で示される四級アンモニウム塩において、Rは炭素数12〜28のアルキル基またはアルキレン基であり、具体的には、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクダデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、テトラドコシル基、ヘキサドコシル基、オクタドコシル基などが挙げられる。好ましくはオクダデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基である。炭素数が11以下の場合は良好ななめらかさ、柔らかさおよびしっかり感が得られない場合がある。R〜Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。Xはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。(b)成分の四級アンモニウム塩は1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
(c)成分としての炭素数12〜28の脂肪酸塩は、炭素数12〜28の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアミン塩である。脂肪酸としては、ヘキサデカン酸、ヘキサデセン酸、ヘプダデカン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸などが挙げられる。好ましくはオクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、ドコサン酸のアルカリ金属塩およびアミン塩である。さらに好ましくはイコサン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、ドコサン酸である。炭素数11以下の場合は良好ななめらかさ、しっかり感が得られない場合がある。アルカリ金属としてはナトリウムまたはカリウムが挙げられ、アミンとしてはトリエタノールアミンが挙げられる。
【0015】
(c)成分の脂肪酸塩は、上記炭素数12〜28の脂肪酸と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンなどの塩基性化合物とをそれぞれ添加したものを用いることができる。(c)成分の脂肪酸塩は1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明の衛生紙用柔軟剤における(a)成分のグリセリンの含有量は、90〜99質量%であり、好ましくは94〜99質量%である。また、(b)成分と(c)成分の含有量の合計は、1〜10質量%であり、好ましくは1〜6質量%である。(a)成分が90質量%未満、または(b)成分と(c)成分の合計が10質量%を超える場合は、なめらかさ、柔らかさやしっかり感とのバランスが崩れて、良好なしっとり感が得られない場合がある。また(a)成分が99質量%を超えるか、または(b)成分と(c)成分の合計が1質量%未満の場合は、なめらかさ、柔らかさおよびしっかり感が不十分である場合がある。なお、(a)+(b)+(c)の含有量の合計は100質量%である。
【0017】
(b)成分と(c)成分の質量比(b)/(c)は、40/60〜80/20であり、好ましくは50/50〜70/30である。(b)成分と(c)成分の質量比(b)/(c)が40/60未満の場合は良好な柔らかさを得られない場合があり、80/20を超える場合はしっかり感が不十分である場合がある。
【0018】
本発明の衛生紙用柔軟剤は、取扱いを良くするために、水などの溶媒で希釈し粘度を低減させて使用することができる。また、本衛生紙用柔軟剤には、油性成分、界面活性剤、防腐剤などの紙用添加剤として用いられる他の成分を配合してもよい。本発明の衛生紙用柔軟剤が塗布される衛生紙としては、ティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。
【0019】
本発明の衛生紙用柔軟剤を衛生紙に塗布する方法としては、コーターまたは印刷機による塗布法、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。衛生紙に塗布する量は、紙に対して、10〜30質量%が好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
〔衛生紙用柔軟剤の調製例〕
グリセリンを91質量%、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムを3.6質量%、イソステアリン酸トリエタノールアミン塩を5.4質量%混合して組成物1(実施例1)を得た。また、実施例1と同様に、表1〜3の各成分を所定の割合で混合し、組成物2〜13(実施例2〜9、比較例1〜4)を調製した。
【0022】
【表1】

【0023】
表中のR〜Rは式(1)中のR〜Rをそれぞれ表す。なお、B−1〜3における式(1)中のXは塩素原子である。
【0024】
〔衛生紙用柔軟剤塗布ティシュペーパーの調製例〕
調製した衛生紙用柔軟剤をイオン交換水で4倍に希釈し、ハンドスプレーを用いてティシュペーパー1枚(市販されている2枚1組を1枚とする)に噴霧した。表中の塗布量は、柔軟剤噴霧前後のティシュペーパーの重量差から、噴霧前のティシュペーパーに対する噴霧した有効分の質量%を求めた。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
〔衛生紙用柔軟剤の評価〕
パネラー10人により、組成物1〜14をそれぞれ塗布したティシュペーパーの「なめらかさ」、「柔らかさ」、「しっとり感」、「しっかり感」について、表4に示す点数で5段階評価を行った。各項目において10人の評価の合計点が37点以上の場合を優れていると判断した。組成物1〜14を塗布したティシュペーパーは、室温23℃、湿度50%の恒温恒湿室で48時間保管した後に評価に用いた。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例1〜9では、なめらかさ、柔らかさ、しっとり感、しっかり感のいずれも良好なティシュペーパーを得ることができる。これに対し、比較例1では、(b)成分の四級アンモニウム塩および(c)成分の脂肪酸塩が配合されておらず、なめらかさおよびしっかり感が不十分である。比較例2では、(c)成分の脂肪酸塩が配合されておらず、しっかり感が不十分である。比較例3では、(c)成分の脂肪酸塩の代わりに、鎖長の短い脂肪酸塩が配合されており、なめらかさ、しっかり感が不十分である。比較例4では、質量比(b)/(c)が本発明規定の範囲を外れており、しっかり感が不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリセリン、(b)式(1)で示される四級アンモニウム塩、および(c)炭素数12〜28の脂肪酸塩からなり、(a)が90〜99質量%、(b)と(c)の合計が1〜10質量%であり、(b)と(c)との質量比が40/60〜80/20である衛生紙用柔軟剤。

(式中、Rは炭素数12〜28のアルキル基またはアルケニル基、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)

【公開番号】特開2012−102431(P2012−102431A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252204(P2010−252204)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】