衝撃作動ヒートパッケージを組み込んだエアロゾル薬剤送達デバイス
衝撃作動ヒートパッケージ(32)を組み込んだエアロゾル薬剤送達デバイス(10)が開示される。ヒートパッケージは衝撃点火器(40)と、衝撃点火器置によって点火されると、発熱酸化還元反応を受ける燃料(50)とを含む。開示された薬剤送達デバイスは、作動機構によって作動して、ヒートパッケージの外面上に置かれた薬剤を含む薄い固体膜(56)を蒸発させることができる。加熱されると、そこから薬剤が選択的に気化される揮発性薬剤の金属配位錯体、詳細にはニコチンも開示される。さらに、ニコチン渇望症の治療および禁煙を達成するための、ニコチン金属塩錯体の薄膜を備えるエアロゾル薬剤送達デバイスの用途も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、衝撃作動ヒートパッケージを組み込んだエアロゾル薬剤送達デバイスに関する。薬剤送達デバイスは、薬剤を含んだ薄膜を蒸発させる作動機構によって作動する。これらの薄膜は固体または粘性液体から構成できる。本発明はさらに、加熱されると選択的に気化する揮発性化合物の金属配位錯体を含んだ薄膜に関する。より詳細には、本発明は、ニコチン渇望を治療するためおよび禁煙を達成するための、ニコチン金属塩錯体の薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]ニコチンは喫煙者の肺を通して吸収されるため、喫煙によって、ニコチンの血中濃度は最初に急激に上昇する。一般的に、30〜40ng/mLのタバコによって、喫煙後10分以内に血中濃度がピークに達する。ニコチンの血中濃度が急激に上昇するのは、中枢神経系内のニコチン様コリン受容体および、喫煙者が遭遇する徴候を誘発する自律神経節でのシナプス後部効果に原因があると想定されているが、禁煙中止に伴う渇望症に原因する場合もある。
【0003】
[003]数多くのニコチン置換療法が開発されてきたが、如何なる療法も、喫煙により生じる全身のニコチン血中濃度の薬物動態プロファイルを再現するようには思われない。結果的に、従来のニコチン置換療法は、喫煙者を禁煙させるのに特に効果的ではないことがわかってきた。例えば、禁煙治療におけるニコチン置換用に市販されている製品の多くは、血中のニコチンの安定したベースライン濃度を提供することを意図している。ニコチンチューインガムと経皮的ニコチンパッチは2つの禁煙製品の例であり、これら製品は、約30分超の間のタバコによって生じるニコチン血中濃度と同等の濃度を実現するが、喫煙によって発生するニコチンの血中濃度の最初の急激な上昇を再現しない。ニコチンガムは、患者が噛むとゆっくりとニコチンを放出するイオン交換樹脂で、口腔内に存在するニコチンは、口腔吸収によって体循環される。ニコチンパッチでは、使用者のニコチン血中濃度は低く、一定になる。したがって、ニコチンガムも経皮的ニコチンも両方とも、喫煙によって発生するニコチン血中濃度の薬物動態プロファイルを再現せず、したがって、禁煙を試みるとき、喫煙者の多くに渇望症を体験させる要求を満たさない。
【0004】
[004]ニコチン蒸気を発生する吸入製品も効果的ではない。この理由は、吸入された蒸気は、主に舌、口腔、喉を通って吸収され、肺内に堆積しないからである。噛みタバコや経口噛みタバコ、タバコにおい袋といった無煙ニコチン製品は、ニコチンを頬粘膜へ運ぶ。頬粘膜は、ニコチンガムの場合と同様に、放出されたニコチンがゆっくりと非効率的にしか吸収されない。これらの製品によるニコチン血中濃度は、約12ng/mLの最大ニコチン血中濃度(この濃度は、1本のタバコを吸うことによって達するピーク値の半分より少ない)に達するのにおよそ30分を要する。口腔吸収経路を使用することで低いニコチン血中濃度を得るのは、最初に肝臓代謝を通過することに起因する可能性がある。
【0005】
[005]口腔内に投与された製剤およびロゼンジ剤も比較的効果が小さい。
【0006】
[006]200msec未満の間に最高温度600℃において空気流内で薬剤の薄膜を急速蒸発させることによって、薬剤の劣化を最小限にした高収率で高純度の薬剤エアロゾルを生成できる。濃縮薬剤エアロゾルを利用して、吸入医療デバイスを用いて薬剤を効果的に肺に送達することができる。金属基板上に付着された薬剤の薄膜が電気的な抵抗加熱によって蒸発するデバイスおよび方法が実証されてきた。エンクロージャ内で発熱金属酸化還元反応を受ける燃料を含むことができる、化学的ベースのヒートパッケージを利用して、薄膜を蒸発させることができる急速熱衝撃を発生することにより、高純度のエアロゾルを生成することもできる。このことは、例えば2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Self−Contained heating Unit and Drug−Supply Unit Employing Same」の米国出願第10/850,895号および、2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Percussively Ignited or Electrically Ignited Self−Contained Heating Unit and Drug Supply Unit Employing Same」の米国出願第10/851,883号に開示され、その両方の全内容は参照として本明細書に組み入れられる。これらのデバイスおよび方法は、物理的および化学的に安定した固体として堆積可能な化合物と共に用いるのに適している。金属表面に堆積した直後に気化するのでなければ、液体は表面から蒸発または拡散できる。したがって、このようなデバイスを利用して液体を気化できるが、液剤を使用することはある種の望ましくない複雑性を加えることになる。ニコチンは常温で液体であって、蒸気圧が比較的高い。したがって、公知のデバイスおよび方法は、特に、液剤を用いたニコチンエアロゾルを生成するのに適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[007]したがって、喫煙によって得られる薬物動態プロファイルと同様の薬物動態プロファイルを与え、それによって禁煙に伴う渇望症に直接的に対処するニコチン置換療法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[008]したがって、本発明の第1の態様によれば、空気路を画成するハウジングを備える薬剤送達デバイスであって、空気路は、少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースと、空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージと、少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構とを備える薬剤送達デバイスが提供される。薄膜(固体または粘性液体のいずれか)としてコーティング可能な薬剤は、本発明のこの態様に特に適している。同様に、以下に説明するとおり、錯体を形成し、その後薄膜としてコーティング可能な揮発性または液体の薬剤も、本発明のこの態様において用いるのに適している。明確にするため、本明細書における「衝撃作動ヒートパッケージ」とは、衝撃によって発火または作動が可能なように構成されたヒートパッケージを意味している。「非作動ヒートパッケージ(unactivated heat package or non−activated heat package)」とは、本明細書では、デバイス内の衝撃作動ヒートパッケージであって、ヒートパッケージ自体はそのように位置すると衝撃によって作動するよう構成されてはいるが、直接的に衝撃を与えられ発火可能なようにはデバイス内にまだ位置していない衝撃作動ヒートパッケージのことを指す。
【0009】
[009]本発明の第2の態様は、機械的衝撃によって変形可能な領域を含んだエンクロージャと、エンクロージャ内に配置されたアンビルと、エンクロージャ内に配置された衝撃開始剤組成物であって、エンクロージャの変形可能な領域が変形すると点火されるよう構成された衝撃開始剤組成物と、エンクロージャ内に配置され、開始剤組成物によって点火されるよう構成された燃料と、を備える衝撃作動ヒートパッケージを提供する。
【0010】
[010]本発明の第3の態様は、揮発性化合物を含んだ金属配位錯体、特にニコチンの金属配位錯体であって、化合物は加熱されると選択的に気化可能な金属配位錯体を提供する。
【0011】
[011]本発明の第4の態様は、化合物を含んだ金属配位錯体を場合によって含む薄膜から、この化合物を選択的に気化することによって化合物のエアロゾルを生成する方法を提供する。
【0012】
[012]本発明の第5の態様は、
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースを備える空気経路を画成するハウジングと、空気路内に配置された少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるよう構成された機構とを有する、薬剤送達デバイスを設けるステップと、
マウスピースから吸入するステップと、
衝撃が与えられるよう構成された機構を作動するステップと、
を含んだ、薬剤を患者に供給する方法を提供するものであり、
衝撃作動ヒートパッケージは少なくとも1つの薬剤を気化して、患者が吸入する空気路内に薬剤を含んだエアロゾルを生成する。
【0013】
[013]本発明の第6の態様は、ニコチンエアロゾルを用いて、ニコチン渇望症の治療と禁煙をする方法を提供する。
【0014】
[014]以上の一般的な説明と以下の詳細な説明は両方とも例示および説明のためだけであって、特許請求の範囲に記載されるとおり、ある特定の実施形態に限定されないことは理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[025]次に本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の特定の実施形態が記載されているが、これは本発明の実施形態をそれら記載の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解される。本発明の実施形態の記載では、代替物、変更形態および均等物を、添付の特許請求の範囲で定義されているとおり、本発明の実施形態の精神と範囲内に含むものとする。
【0016】
[026]特に指定しない限り、明細書および特許請求の範囲で用いられる量、条件などを表現する全ての数字は、いずれの場合にも、用語の「約」を伴うと理解されるべきである。
【0017】
[027]本出願においては、特に指定しない限り、単数形を使用する場合は複数形を含む。本出願において、特に指定しない限り、「または」を使用する場合は「および/または」を意味する。さらに、用語の「含んでいる」、ならびに「含む」や「含まれた」といった他の活用形の使用は、限定的ではない。また、「要素」または「構成要素」などの用語は、特に指定しない限り、1つのユニットを備える要素および構成要素と、2つ以上のサブユニットを備える要素および構成要素の両方を範囲に含む。
【0018】
[028]薬剤を含んだ薄膜の気化を利用して、薬剤のエアロゾルを使用者に投与することができる。薬剤の固体薄膜を気化することによってエアロゾルが生成される吸入薬剤送達デバイスが、例えば米国特許出願第10/850,895号に記載され、その開示は参照として本明細書に組み入れられる。このようなデバイスでは、患者がデバイスを吸入すると、その上に薬剤の薄い固体膜が置かれた加熱要素が作動する。高速熱衝撃によって薬剤が気化され、患者の吸入により発生する空気流内にエアロゾルを生成する。エアロゾルが患者により吸入され、患者の肺に送達され、そこで薬剤が患者の体循環に急速に効率的に吸収される。燃料が発熱金属酸化還元反応を受けて熱を供給することにより、物質を気化できるデバイスも記載されている(例えば、「スタッカートデバイスの利用」を参照のこと)。本明細書に開示する揮発性化合物の金属配位錯体の薄膜は、同様のデバイスで同様の方法で用いられて、高純度の薬剤エアロゾルを生成することができる。
【0019】
[029]ニコチン渇望症の治療と禁煙は、喫煙中に発生るニコチン血中濃度の急激な上昇を再現する治療計画および/または療法によって対処することができる。典型的には、喫煙者は、約5分間に約10回吸入する。したがって、喫煙の使用プロファイルをシミュレート可能なニコチン送達デバイスは、1回が約200μgのニコチンを5〜20回投与分含み、その後、ニコチンは、使用者が欲すると断続的に放出される。このようなプロトコルは、例えば、2004年6月3日付で出願された、発明の名称「Multiple Dose Condensation Aerosol Devices and Methods of Forming Condensation Aerosols」の米国出願第10/861,554号で開示されているように、先に記載した携帯型多回投与薬剤送達デバイスに適用できるが、このようなデバイスは、薄い固体膜を気化するために電気的な抵抗加熱を採用し、したがってバッテリなどの比較的高価でかさばる電源を必要とする。バッテリを組み込まず、簡単に使い捨て可能で、大量に、低コストで製造しやすい携帯型多回投与薬剤送達デバイスは、ニコチン置換療法に特に有用である。機械的に作動し、衝撃で点火する化学ヒートパッケージは、携帯型多回投与および単一投与薬剤送達デバイスで用いるための、薬剤の薄膜を気化することが可能な、小型で内蔵型加熱システムを提供することができる。
【0020】
[030]図1は、衝撃ヒートパッケージを組み込んだ多回投与薬剤送達デバイスおよび機械的作動機構の等角図である。薬剤送達デバイス10は、末端部12とマウスピース14とを備えるハウジングを備える。末端部12とマウスピース14は、少なくとも1つの(隠れた)空気吸入口16と、マウスピース14で形成された少なくとも1つの排気口18とを有する内部空気路を画成している。手動で作動する押しボタン式のスイッチ20が末端部12に組み込まれている。末端部12とマウスピース14は、接合部分22で分離可能に、回転可能に、または固定して接続することができる。薬剤送達デバイス10の寸法は、デバイスが簡単に人間工学的に取り扱うことができるような寸法である。ニコチン置換療法の目的で、薬剤送達デバイス10の外観と感触は、タバコ、シガリロまたは葉巻と類似であることが有益である。例えば、特定の実施形態においては、末端部12の長さは1.4インチ、外径が1.2インチで、マウスピース14の長さが1.8インチから2.5インチである。マウスピース14は接合部分22で末端部12と同じ直径を有し、使用者が便利で快適であるよう、さらに薬剤エアロゾルを使用者の肺に吸入および送達しやすくするために、必要に応じて排気口18に向かってテーパ状になっている。排気口18の断面面積は約0.01in2から1.5in2の範囲にすることができる。末端部12とマウスピース14とで形成された内部空気路は、吸入中に通常生成される空気流量を含むことができる。例えば、末端部12とマウスピース14によって画成された空気路は、10L/分〜200L/分の範囲の空気流量を含むことができる。末端部12とマウスピース14は、ポリマーもしくはポリマー複合材料から、または例えば、金属、合金、複合材料、セラミックスおよびそれらの混合物などを含む、内部構成要素に構造的支持を与えるに任意の他の材料から形成することができる。末端部12とマウスピース14の外面はさらにテクスチャ加工を施すことができ、または触感および/または意匠性を向上させるために成形挿入体を含むことができる。末端部12とマウスピース14の肉厚は、送達デバイスに機械的完全性を与え、内部構成部品に物理的支持を与える厚さであればどのような厚さであってもよい。特定の実施形態においては、末端部12とマウスピース14は、低価格のプラスチックおよび/またはプラスチック部品を用いた射出成形法によって製造することできる。
【0021】
[031]図2は、多回投与薬剤送達デバイス10の切り取り断面図を示している。マウスピース14は、接合部分22で摺動可能に末端部12に接続され、図2に示すように、部分的に分解された構造で、末端部12からわずかに離れるように引っ張られている。マウスピース14は、孔27を有する内部バッフル25を含んでいる。特定の実施形態においては、接合部分22での摺動可能な接続を利用して、末端部12に対してマウスピース14を回転させて末端部12内に保持された構成部品に対して孔27の方向を決め、詳細に、孔27を個々のヒートパッケージ32に位置合わせできる。バッフル25は空気路内を流れる空気を方向変更させて孔27を通るようにする。患者がマウスピース14により吸入すると、空気が空気吸入口16に入り、複数の孔63を通って、バッフル25で孔27を通るよう方向転換され、排気口18を通ってデバイスから出る。
【0022】
[032]使用者にニコチンなどの薬剤を送達するために、少なくとも1つのヒートパッケージ32の外面30から薬剤が気化する。複数のヒートパッケージ32、例えば5〜30個のヒートパッケージが各薬剤送達デバイス10内に収容されている。
【0023】
[033]図3は、ヒートパッケージ32の一実施形態の断面図を示している。各ヒートパッケージ32は衝撃イグナイタ40と加熱要素39とを含んでいる。衝撃イグナイタ40は、機械的に変形可能な管42と、変形可能な管42内に同軸で配置され、窪み46で所定位置に保持されたアンビル44とを含んでいる。開始剤組成物48がアンビル44の領域に配置されている。十分な力で機械的衝撃が与えられると、変形可能な管42が変形し、変形可能な管42とアンビル44との間の開始剤組成物48を圧縮して、開始剤組成物48を急激に燃焼して火花を散らす。加熱要素39の内部52は、点火すると急速に強い熱衝撃を生じる燃料50が含まれている。燃料の適切な例が本明細書に開示されている。加熱要素39の外面54は、薬剤または薬剤含有成分の薄膜56を有している。開始剤組成物48が急激に燃焼すると、燃料50が発火する。燃料50が燃焼することで生成された熱は、加熱要素39の外面54を加熱する。外面54からの熱エネルギーが伝わり、外面54から薬剤または薬剤含有成分の薄膜56が蒸発する。薬剤蒸気がデバイス10(図1〜2参照)内の空気流で凝結して、薬剤エアロゾルを生成する。
【0024】
[034]図2においては、ヒートパッケージ32は隙間を空けた構成で示されており、これは各ヒートパッケージ32を隣接のヒートパッケージから分離する形態物がないことを意味している。図4は、複数のヒートパッケージを組み込んだ多回投与薬剤送達デバイスの別の実施形態を示している。図4において、ヒートパッケージ32は封止された円筒形のエンクロージャから形成されている。各ヒートパッケージ32の一端は、衝撃イグナイタ110を備え、対向端部は、加熱要素111を備える。各ヒートパッケージ32は取付け板55によって保持されている。各ヒートパッケージ32の加熱要素111は円筒形の凹部60内に配置されている。図5は、円筒形の凹部50内に配置されたヒートパッケージ32をより明確に示している。凹部60はヒートパッケージ32から気化した薬剤が隣接するヒートパッケージに蒸着するのを防ぐことができる。隣接するヒートパッケージ上への気化した薬剤の堆積を防ぐことは、デバイスがそれぞれ作動して生成された薬剤エアロゾルの量を一定に保つのに有用で、および/または高純度のエアロゾルを生成しやすくすることができる。
【0025】
[035]図4はまた、2つの部材112を備える係合アーム53の構造をより明確に示している。2つの部材112は、係合アーム53の軸に垂直で、ねじりばね41、43のストライカアーム(図示せず)を、ヒートパッケージ32の衝撃イグナイタの端部110に押したり引いたりするために用いられる。衝撃イグナイタの端部110の方にストライカアームを押したり引いたりすることによって、ストライカアームは、次の非作動ヒートパッケージ32に自由に衝撃を与える。図4はまた、凹部60内に配置され、末端部12の内部に向かって延びるロッド113も示している。ロッド113は、デバイスを最初に使用する前に、予め付勢された位置でストライカアームを保持する機械的な係止部として働く。例えば、使用者が図4で示されたデバイスを最初に使用する場合、ストライカアームは、予め付勢された状態でロッド113上に置かれている。最初の使用中、使用者がプッシュアウト・スイッチ20を押し出すと、係合アーム53がストライカアームをロッド113からはずして押したり引いたりし、それによってストライカアームが、第1のヒートパッケージ32の衝撃イグナイタ110に衝撃を与えるようになる。第1のヒートパッケージ32は、ここで、予め付勢された状態でストライカアームを保持する。2回目に使用する間は、使用者がプッシュアウト・スイッチ20を押すと、係合アーム53は第1のヒートパッケージ32をストライカアームからはずして押したり引いたりし、それによってストライカアームが、第2のヒートパッケージ32の衝撃イグナイタ110に衝撃を与えるようになる。全てのヒートパッケージ32が作動するまでこの手順を繰り返すことができる。
【0026】
[036]図2および図4に示したデバイスを使用して、薬剤などの物質のエアロゾルを患者に投与できる。各ヒートパッケージ32は物質または薬剤の薄膜で被膜することができる。患者がマウスピース14により吸入すると、デバイスを通る空気流が発生され、同時にプッシュアウト・スイッチ20を作動させると、ヒートパッケージ32が物質または薬剤を気化させる。物質または薬剤は、その後、空気流内で凝結して物質または薬剤のエアロゾルを生成し、患者に吸入される。
【0027】
[037]特定の実施形態においては、多回投与薬剤送達デバイスの全体の組立て長さは、約3インチ〜6インチの範囲にあり、特定の実施形態では、約4インチ〜約4.6インチの範囲にある。
【0028】
[038]図2に示されているとおり、末端部12には、単一ユニットを形成するよう固定接続された基底部35と取付け部37とが含まれている。基底部35は1つ以上の空気吸入口16と、衝撃イグナイタを作動させるために衝撃力を与えるよう構成されたレボルバ機構38と、手動で作動するプッシュアウト・スイッチ20とを含む。空気吸入口16は、末端部12の一端で1つ以上の孔を含んでいる。レボルバ機構38は、第1ねじりばね41と第2ねじりばね43とが取り付けられた軸を含む。ねじりばね41、43は、レボルバ機構38回りに巻きつけられ、軸38に固定された第1端部45と第2端部またはストライカアーム47とがヒートパッケージ32の衝撃イグナイタの方へ延び、衝撃を与えることができる。手動スライド49と圧縮ばね51と係合アーム53とを含んだプッシュアウト・スイッチ20も末端部12に組み込まれている。ばね51は、スライド20を押込み位置、つまり非作動位置に保持している。非作動位置では、ストライカアーム47はヒートパッケージ32または静止ピン(図示せず)に対向して置かれている。スライド20を押し出すことによって、係合アームがヒートパッケージ32をはずれてストライカアーム47を引っ張り、それによってストライカアーム47は次のヒートパッケージの衝撃イグナイタに自由に衝撃を与える。
【0029】
[039]取付け部37は、複数のヒートパッケージ取付け孔61と複数の空気孔63と回転軸38が挿入されるアクセス孔65とを有する取付け板55を含んでいる。ヒートパッケージ32は、ヒートパッケージ取付け孔61に挿入され、締まり嵌め、プレス嵌め、接着組成物または他のそのような方法で所定位置に保持することができる。ヒートパッケージ32は回転軸38の回りに間隔を空けて位置する。空気孔63が各ヒートパッケージ32の周りに位置し、これにより、十分な空気流が各ヒートパッケージを通って、ヒートパッケージの表面から気化する物質または薬剤を生成できる。
【0030】
[040]回転軸38の第1端部67が基底部35の空気吸入端部に固定して取り付けられる。デバイス10を組み立てるために、回転軸38をアクセス孔65に挿入することによって、取付け部37が基底部35上に配置される。その後、マウスピース14が取付け部37の上に挿入され、所定位置に固定される。
【0031】
[041]ねじりばねとプッシュアウト・スイッチを用いた機械機構以外の作動機構を用いて、衝撃イグナイタを作動するよう機械的な衝撃を与えることもできる。このような作動機構には、機械機構、電気機構および吸入機構が含まれている。他の機械機構の例として、これに限定されないが、圧縮ばねを解放して衝撃イグナイタに衝撃を与えることと、本体を解放または推進して衝撃イグナイタに衝撃を与えることと、レバーを移動して予め付勢されたばねを解放することと、デバイスの一部を回転させてばねに応力を加えて解放することにより衝撃イグナイタに衝撃を与えることとが含まれている。特定の薬剤送達デバイスで採用される機構に関係なく、作動機構は、衝撃イグナイタの外壁を変形し、開始剤組成物を急激に燃焼させるのに十分な衝撃力を発生する。
【0032】
[042]特定の実施形態においては、薬剤送達デバイスは、単一のヒートパッケージを備える単一投与デバイスである。特定の実施形態では、1つ以上の衝撃点火ヒートパッケージを備える部分と、作動機構を備える部分とが使用者によって分離可能であり、1つ以上のヒートパッケージが作動すると、薬剤が被膜された未使用のヒートパッケージを備える新しい部分が挿入されて、作動機構を備える部分が再利用される。特定の実施形態においては、1つ以上のヒートパッケージと作動機構とは、使用者によって分離可能なように設計されていない単一のユニットとして設けることができる。このような実施形態においては、1回以上の投与が行われた後、デバイス全体を廃棄することができる。したがって、特定の実施形態においては、衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイスは、低価格で使い捨ての部品および材料を含む。
【0033】
[043]図6A〜図6Fは、衝撃イグナイタを備えるヒートパッケージの実施形態を示している。図6A〜図6Fに示されたヒートパッケージ70は、第1端部72と第2端部74とを有する封止された管またはシリンダ76を実質的に備える。携帯型医療器具で使用するために、ヒートパッケージは点火しても封止されたままであり、燃料が燃焼することによって生成するどのような内部圧力にも耐えることが重要である。図6Aおよび図6C〜図6Fにおいて、ヒートパッケージ70の第1端部72は、管状の本体部76と一体化、または管状の本体部76として同一部品から形成されている。図6Bにおいては、第1端部72は別個の部分で、第2端部74は別個の部分である。部分72、74は開始剤および燃料組成物の燃焼中に生成された圧力および温度に耐えることが可能な任意の適切な手段(例えば、はんだ付け、溶接、圧着、接着固定、機械結合など)によって接合部分78で封止される。第2端部74も同様の手段によって封止され、特定の実施形態においては、熱導電性または非導電性である挿入体を含むことができる。
【0034】
[044]図6Aは、窪み86、87で所定位置に保持された同軸に位置したアンビル80を有するヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル80によってヒートパッケージ70の長さが実質的に延びている。開始剤組成物82の薄い被膜がアンビル80の一端に置かれ、本明細書で開示された金属酸化/還元燃料組成物の被膜84がアンビル80の他端に置かれている。窪み87によって、アンビル80と管70の内壁との間に空間ができ、開始剤組成物82の急激な燃焼中に生成された火花が燃料組成物84に衝突して点火することができる。アンビル80は、より多くの量の燃料を保持しやすくするため、および/または組み立てやすくするための形態物を含むことができる。例えば、燃料84が配置されるアンビル80の端部にはフィンまたはのこぎり形状を設けて、表面面積を増加させることができる。
【0035】
[045]図6Bは、ヒートパッケージ70の長さよりも短く延びたアンビル90を有するヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル90は、アンビル90の一端に向かって窪み94で管92内に同軸で保持されている。アンビル90と管92の内壁との間の空間内の障害物を最小限または除去することによって、開始剤組成物82から放射した火花が燃料98に衝突点火しやすくすることができる。図6Bに示されたヒートパッケージ70を形成する第1および第2部分72、74は接合部分78で封止される。燃料98が第1部分72内に置かれている。アンビル90が短いことによって、第1部分72の全領域を燃料98で充填できる。
【0036】
[046]図6Cでは、アンビル100が燃料を含んでいる。開始剤組成物82がアンビル100の表面の一部に置かれている。開始剤組成物82を作動させることによってアンビル100を点火させることができる。端部102は、ヒートパッケージ70を取り付けやすくするために、熱絶縁性の材料でできている。ヒートパッケージのほぼ全長に延びる燃料を使用することによって、有効な加熱面積をより大きくすることができる。
【0037】
[047]図6Dは、アンビル106の前方端部104が、例えば、燃料101をシリンダ端部72内に装填するよう用いることができる、高ピッチで薄肉のオーガで形成されたヒートパッケージ70の一実施形態を示している。このような設計は、ヒートパッケージを製造しやすくするのに有益である。
【0038】
[048]図6Eは、アンビル90が管76の全長の一部まで延び、管76の内部の大部分が燃料99で充填されたヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル90は窪み94によって所定位置に保持されている。開始剤組成物82がアンビル90上に置かれている。管76の大部分を燃料99で充填することによって、ヒートパッケージ70によって発生する熱量を増加できる。図6Fで示されているとおり、特定の実施形態においては、燃料99は管76の内壁で層として配置でき、中心領域97は空隙である。燃料99の層によって、管76を均一に加熱、および/または開始剤組成物82から放出される火花によって点火可能なより大きな表面面積を露出することによってより急速に最高温度に達しやすくすることができる。中心領域97の空隙を設けることにより、放出された気体が蓄積してヒートパッケージ70の内部圧力を低減することができる。
【0039】
[049]図3は、上述したとおり、ヒートパッケージの別の実施形態を示している。ヒートパッケージ32は、衝撃イグナイタを備える第1部分40と、燃料50を備える、第1部分40よりも大きな断面寸法を有する第2部分39とを含む。衝撃イグナイタは、変形可能な管42内に同軸で配置されたアンビル44を含む。変形可能な管42の一端45は封止され、対向端部57は部分39に接合されている。アンビル44は窪み46で所定位置に保持されている。アンビル44の一部は、開始剤組成物48で被膜されている。第2部分39は、第1部分40よりも大きな肉厚と断面寸法を有したエンクロージャを備える。このような設計は、燃料の量を増やし、物質が置かれる外面面積を増やし、気体が膨張し、それによってエンクロージャ内の圧力を低減させる容積を設け、燃焼率を上げるためにより大きな燃料表面積を設け、および/または第1部分40の構造強度を増すのに有益である。図3において、燃料50は、第2部分39の内壁に沿って配置された薄い層として示されている。他の燃料構造も可能である。例えば、燃料は水平な壁に沿ってのみ配置することができ、内部領域52を完全にまたは部分的に充填することができ、および/または領域52全体に配置された繊維マトリックス内に配置されることができる。燃料50の形状、構造および成分は特定の用途の必要に応じて決定でき、一部は所望の熱プロファイルによって決定することができる。ヒートパッケージ32はさらに、第2部分39の外面に配置された物質の薄膜56を含む。
【0040】
[050]図3および図6A〜6Fに示されるように、ヒートパッケージの寸法は任意の適切な寸法を有することができるが、少なくとも一部は、加熱されるよう意図された表面積および最高所望温度によって決定される。衝撃作動ヒートパッケージは、薬剤を気化して吸入用の凝結エアロゾルを生成するのに使用できるような、短い熱衝撃を発生できる小型の加熱要素として特に有用である。このような用途においては、ヒートパッケージの長さは0.4インチ〜2インチの範囲にあり、直径は0.05インチ〜0.2インチの範囲にある。特定の実施形態においては、アンビルはコイル状であり、その場合、アンビルの長さは、燃料を点火するのに必要なコイルの厚さと長さに応じて変化させることができる。アンビルの最適な寸法、密閉されたシリンダの寸法および特定の用途および/または使用のためにその中に置かれる燃料の量は、標準的な最適化手順によって決定できる。
【0041】
[051]内臓ヒートパッケージは、エンクロージャに十分な力で機械的衝撃を与えることによって衝撃点火させて、エンクロージャの一部をアンビルの方へ向けさせることができ、その場合、開始剤組成物は管とアンビルとの間で圧縮される。圧縮力によって開始剤組成物が急激に燃焼し始める。急激な燃焼によって生成された火花は燃料組成物の方へ向けられて衝撃を与え、それによって燃料組成物を自己金属酸化反応で点火させて急激な強い熱衝撃を発生する。
【0042】
[052]衝撃作動開始剤組成物は、当分野では周知である。衝撃点火システムで使用するための開始剤組成物は、衝撃が与えられると急激に燃焼して強い火花を生成し、金属酸化還元燃料などの燃料を簡単に確実に点火することができる。例えばヒートパッケージで用いる場合など、密閉されたシステムで用いる場合には、開始剤組成物は爆発的に点火せず、また過剰な量の気体を生成しないことが有益である。特定の開始剤組成物が、2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Stable Initiator Compositions and Igniters」の米国特許出願第10/851,018号に開示されており、その全内容は参照として本明細書に組み入れられる。開始剤組成物は、少なくとも1つの金属還元剤と、少なくとも1つの酸化剤と随意に少なくとも1つの不活性な結合剤とを含む。
【0043】
[053]特定の実施形態では、金属還元剤には、これらに限定されないが、モリブデン、マグネシウム、リン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ボロン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、スズ、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、シリコンを挙げることができる。特定の実施形態においては、金属還元剤には、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンを挙げることができる。特定の実施形態においては、金属還元剤は2つ以上に金属還元剤を含むことができる。
【0044】
[054]特定の実施形態においては、酸化剤は、酸素、酸素ベースの気体および/または固体の酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤は、金属含有酸化剤を含むことができる。金属含有酸化剤の例として、これに限定されないが、過塩素酸遷移金属酸化物が挙げられる。過酸素酸塩には、これらに限定されないが、過塩素酸カリウム(KClO4)、塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などのアルカリ金属またはアルカリ土塁金属の過塩素酸塩を含むことができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤として作用する遷移金属酸化物には、これらに限定されないが、MoO3などのモリブデンの酸化物、Fe2O3などの酸化鉄、V2O5などのバナジウムの酸化物、CrO3やCr2O3などのクロムの酸化物、MnO2などのマンガンの酸化物、Co3O4などのコバルトの酸化物、Ag2Oなどの銀の酸化物、CuOなどの銅の酸化物、WO3などのタングステンの酸化物、MgOなどのマグネシウムの酸化物、Nb2O5などのニオブの酸化物を挙げることができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤は、2つ以上の金属含有酸化剤を含むことができる。
【0045】
[055]特定の実施形態では、金属還元剤および金属含有酸化剤は粉末形態である。用語の「粉末」は、自己増殖点火を維持するのに適切な大きさおよび/または表面面積を表す、粉末、粒子、小球、薄片およびその他の微粒子を意味する。例えば、特定の実施形態では、粉末は、平均直径が0.01μm〜200μmの範囲の粒子を含むことができる。
【0046】
[056]特定の実施形態においては、開始剤組成物内の酸化剤の量は、燃料組成物に対する共融点または共融点近くの酸化剤のモル量と関係する。特定の実施形態では、酸化剤は主要成分で、他の実施形態では金属還元剤が主要成分であってもよい。また、当分野で公知のとおり、金属および金属含有酸化剤の粒径は、燃焼速度を決定するよう変化し、燃焼を速くするには小さい粒径が選択される(例えばPCTのWO2004/01396参照)。したがって、高速燃焼が望まれるいくつかの実施形態では、直径がナノメータスケールの粒子を用いることができる。
【0047】
[057]特定の実施形態においては、金属還元剤の量は、開始剤組成物の全乾燥質量に対して25重量%〜75重量%の範囲にできる。特定の実施形態においては、金属含有還元剤の量は、開始剤組成物の全乾燥質量に対して25重量%〜75重量%の範囲にできる。
【0048】
[058]特定の実施形態においては、開始剤組成物は、本明細書で記載した金属など、少なくとも1つの金属と、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土塁金属の塩素酸塩または過塩素酸塩、または金属酸化物など少なくとも1つの金属含有酸化物と、本明細書で記載した他のものとを含むことができる。
【0049】
[059]特定の実施形態においては、開始剤組成物は、アルミニウム、ジルコニウム、ボロンから選択される少なくとも1つの金属還元剤を含むことができる。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、三酸化モリブデン、酸化銅、三酸化タングステン、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウムから選択される少なくとも1つの酸化剤を含むことができる。
【0050】
[060]特定の実施形態においては、アルミニウムを金属還元剤として用いることができる。アルミニウムはナノ粒子など種々の大きさで得ることができ、保護酸化層を形成するため、乾燥状態で市場において入手できる。
【0051】
[061]特定の実施形態においては、開始剤組成物は2つ以上の金属還元剤を含むことができる。このような組成物では、少なくとも1つの還元剤はボロンであってもよい。ボロンを含んだ開始剤組成物の例が米国特許第4,484,960号および第5,672,843号に開示されている。ボロンは点火が生じる速度を高めることができ、それによって開始剤組成物が発生する熱量を増加できる。
【0052】
[062]特定の実施形態においては、金属含有酸化剤と、少なくとも1つの金属還元剤と、少なくとも1つの結合剤および/または、ゲル化剤および/または結合剤などの添加物の混合物を含んだ開始剤組成物を用いることによって、燃料を確実に、再現可能に、制御して点火しやすくすることができる。開始剤組成物は、本明細書に開示しているとおり、金属酸化/還元燃料を含んだ反応剤と同一または同様の反応物を含むことができる。
【0053】
[063]特定の実施形態においては、開始剤組成物は1つ以上の添加物を含むことにより、例えば処理を容易にし、機械的完全性を向上し、および/または燃焼およびスパーク発生特性を決定することができる。不活性の添加物により、開始剤組成物の点火および燃焼中に反応しないか、または最小限しか反応しなくなる。これは、開始剤組成物が、圧力を最小限にすることが有用な密閉システム内で使用される場合に有利である。添加物は無機物質であり、例えば、結合剤、接着剤、ゲル化剤、チキソトロープおよび/または表面活性剤として働くことができる。ゲル化剤の例として、これらに限定されないが、ラポナイト、モンモリロナイト、Cloisiteなどの粘土と、R−Si(OR)nおよびM(OR)nの式(ここで、nは3または4、Mはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ボロンまたは他の金属)で表されるような金属アルコキシドと、遷移金属水酸化物または酸化物を基にするコロイド粒子が含まれている。結合剤の例として、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウムなど可溶性ケイ酸塩、金属アルコキシド、無機ポリアニオン、無機ポリカチオン、アルミナまたはシリカ系ゾルなどの無機ゾルゲル物質が含まれている。他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、グアガム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、フッ化炭素ゴム(Viton)および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。特定の実施形態においては、開始剤組成物は2つ以上の添加物を含むことができる。
【0054】
[064]特定の実施形態においては、添加物は、開始剤組成物の特定の処理、点火および/または燃焼特性を決定するのに有用である。特定の実施形態においては、開始剤組成物の粒径を選択して、当分野で公知のとおり、例えば米国特許第5,739,460号で開示されているように、点火および燃焼速度特性に合わせることができる。
【0055】
[065]特定の実施形態においては、1つ以上の添加剤は不活性であることが有用である。エンクロージャ内で封止されると、開始剤組成物の発熱酸化還元反応は、封止された組成物によって、圧力を上昇させることができる。例えば携帯用医療器具といった特定の用途においては、エンクロージャ内で生成された高温から生じる発熱反応や他の化学反応の高温材料や生成物を含むことが有益となる。
【0056】
[066]医療用途に用いられるのに特に適した特定の実施形態においては、例えばニトロセルロースなどの添加剤は、米国運輸省が分類する爆発物ではないことが望ましい。特定の実施形態においては、添加物は、バイトン、ラポナイトまたはガラスフィルタであってもよい。これらの物質は、開始剤組成物の成分に結合し、開始剤組成物に機械的安定性を与えることができる。
【0057】
[067]金属還元剤、金属含有酸化剤および/または添加物および/または他の適切な水溶性または有機可溶性結合剤を含んだ開始剤組成物の成分は、適切な物理的または機械的方法によって混合でき、有用なレベルの分散および/または均一性を達成することができる。取扱い、使用および/または利用を容易にするために、開始剤組成物は、有機または水溶性溶媒の液体懸濁液またはスラリーとして調製される。
【0058】
[068]金属含有酸化剤に対する金属還元剤の割合を選択することにより、適切な燃焼およびスパーク生成特性を決定することができる。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、燃料を点火するのに十分なエネルギーを有する火花の発生を最大限にするよう配合可能である。開始剤組成物から放出された火花は、酸化/還元燃料などの燃料の表面に衝突し、それによって燃料を自己発熱酸化/還元反応で点火させる。特定の実施形態においては、開始剤組成物によって放出されるエネルギーの全体量は0.25J〜8.5Jの範囲にある。特定の実施形態においては、厚さが20μm〜100μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒〜30ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。特定の実施形態では、厚さが40μm〜100μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒から20ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。特定の実施形態においては、厚さが40μm〜80μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒から10ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。
【0059】
[069]開始剤組成物の例として、10%のZrと22.5%のBと67.5%のKClO3、49%のZrと49%のMoO3と2%のニトロセルロース、33.9%のAlと55.4%のMoO3と8.9%のBと1.8%のニトロセルロース、26.5%のAlと51.5%のMoO3と7.8%のBと14.2%のバイトン、47.6%のZrと47.6%のMoO3と4.8%のラポナイト(なお全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である)で構成される組成物が含まれる。
【0060】
[070]高火花発生および低ガス生成開始剤組成物の例として、アルミニウムとモリブデンと三酸化物とボロンとバイトンの混合物が挙げられる。特定の実施形態においては、これらの組成物は、20〜30%のアルミニウムと、40〜55%の三酸化モリブデンと、6〜15%のボロンと、5〜20%のバイトンとの混合物に結合されてもよい。なお、全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、26〜27%のアルミニウムと、51〜52%の三酸化モリブデンと、7〜8%のボロンと、14〜15%のバイトンを含んでいる。なお、全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である。特定の実施形態においては、アルミニウム、ボロンおよび三酸化モリブデンはナノスケールの粒子形状である。特定の実施形態においては、バイトンはバイトンA500である。
【0061】
[071]特定の実施形態においては、衝撃作動開始剤組成物には、例えば、米国特許第6,666,936号に開示されているように、中心の金属コアと、そのコアを取り囲む金属酸化層とフルオロアルキシラン表面層とを含んだ粉末状の金属含有酸化剤および粉末状の還元剤から構成される組成物を含むことができる。
【0062】
[072]典型的には、開始剤組成物は、アンビルを被膜するために有機または水溶性溶媒中の液体懸濁液として調製され、通常は、可溶性結合剤が、被膜をアンビルへ接着させるために含まれている。
【0063】
[073]開始剤組成物の被膜は、種々の既知の方法でアンビルに塗布することができる。例えば、アンビルは開始剤組成物のスラリーに浸漬され、次いで空気中で乾燥または加熱して液体を除去し、先に記載した所望の特性を有する固体接着塗膜を形成する。特定の実施形態においては、スラリーはアンビルに噴射またはスピンコーティングすることができ、その後固体塗膜を生成するように処理される。アンビルの上の開始剤組成物の塗膜の厚さは、アンビルがエンクロージャ内に配置されると、開始剤組成物が約千分の数インチ、例えば0.004インチ、エンクロージャの内壁からわずかに離れるような厚さにするべきである。
【0064】
[074]燃料は、例えば、金属含有酸化剤など金属還元剤や酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、燃料は、ZrとMoO3、ZrとFe2O3、AlとMoO3、またはAlとFe2O3の混合物を含むことができる。特定の実施形態においては、金属還元剤の量は60重量%〜90重量%の範囲にし、金属含有酸化剤の量は40重量%〜10重量%の範囲にすることができる。
【0065】
[075]燃料を形成するのに有用な金属還元剤の例として、これらに限定されないが、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ボロン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、スズ、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、シリコンが含まれる。特定の実施形態においては、金属還元剤は、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンから選択される。特定の実施形態においては、金属還元剤は2つ以上に金属還元剤を含むことができる。
【0066】
[076]特定の実施形態においては、燃料を形成するための酸化剤は、酸素、酸素ベースの気体および/または固体の酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤は、金属含有酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤は、これに限定されないが、過塩素酸遷移金属酸化物が含まれる。過酸素酸塩には、これらに限定されないが、過塩素酸カリウム(KClO4)、塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などのアルカリ金属またはアルカリ土塁金属の過塩素酸塩を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤として働く遷移金属酸化物には、これらに限定されないが、MoO3などのモリブデンの酸化物、Fe2O3などの酸化鉄、V2O5などのバナジウムの酸化物、CrO3やCr2O3などのクロムの酸化物、MnO2などのマンガンの酸化物、Co3O4などのコバルトの酸化物、Ag2Oなどの銀の酸化物、CuOなどの銅の酸化物、WO3などのタングステンの酸化物、MgOなどのマグネシウムの酸化物、Nb2O5などのニオブの酸化物が含まれる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤には2つ以上の金属含有酸化剤を含むことができる。
【0067】
[077]特定の実施形態においては、固体燃料を形成する金属還元剤は、ジルコニウムおよびアルミニウムから選択し、金属含有酸化剤はMoO3およびFe2O3から選択することができる。
【0068】
[078]金属含有酸化剤に対する金属還元剤の割合を選択することにより、固体燃料の点火温度と燃焼特性を決定できる。例示的な化学燃料には、75重量%のジルコニウムと25重量%のMoO3を含むことができる。特定の実施形態においては、金属還元剤の量は、固体燃料の全乾燥重量の60重量%〜90重量%の範囲にすることができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤の量は固体燃料の全乾燥重量の10重量%〜40重量%の範囲にすることができる。
【0069】
[079]特定の実施形態においては、燃料が1つ以上の添加物を含むことにより、例えば処理を容易にし、および/または続く燃料の点火中に加熱部の熱的および一時的な特性を決定することができる。添加物は無機材料であり、例えば、結合剤、接着剤、ゲル化剤、チキソトロープおよび/または表面活性剤として作用する。ゲル化剤の例として、これらに限定されないが、ラポナイト、モンモリロナイト、Cloisiteなどの粘土と、R−Si(OR)nおよびM(OR)nの式(なお、nは3または4、Mはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ボロンまたは他の金属)で表されるような金属アルコキシドと、遷移金属水酸化物または酸化物に基づいたコロイド粒子を含む。結合剤の例として、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウムなど可溶性ケイ酸塩、金属アルコキシド、無機ポリアニオン、無機ポリカチオン、アルミナまたはシリカ系ゾルなどの無機ゾルゲル物質を含む。他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、グアガム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、フッ化炭素ゴム(バイトン)および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。
【0070】
[080]他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。特定の実施形態においては、燃料は2つ以上の添加物を含むことができる。金属、酸化剤および/または添加物および/または他の適切な水溶性または有機可溶性結合剤を含んだ燃料の成分は、適切な物理的または機械的方法によって混合でき、有用なレベルの分散および/または均一性を達成することができる。特定の実施形態においては、燃料はガス抜きすることができる。
【0071】
[081]加熱ユニット内燃料は、任意の適切な形状であってもよく、任意の適切な寸法を有することもできる。燃料は、シリンダ、ペレットまたは管などの固体形状に生成し、ヒートパッケージに挿入することができる。燃料は、スラリーまたは懸濁液としてヒートパッケージ内に堆積することができ、次いで、燃料は乾燥されて溶媒を除去する。燃料のスラリーまたは懸濁液は、ヒートパッケージの内側面に燃料を堆積するために乾燥している間に回転することができる。特定の実施形態においては、燃料は、例えば、アンビル上の開始剤組成物を被膜するための、本明細書で開示した方法を含む適切な方法によってアンビルなどの支持物上に被膜することができる。
【0072】
[082]特定の実施形態においては、アンビルは、例えば従来技術で公知のとおり、PYROFUZEなど可燃性の金属合金または金属/金属酸化物成分から形成できる。アンビルを形成するのに適した燃料成分の例が、米国特許第3,503,814号、第3,377,955号、およびPCT出願公開公報第WO93/14044号に開示され、各関連部分が本明細書に参照として組み入れられる。
【0073】
[083]特定の実施形態においては、燃料はヒートパッケージに詰め込まれる可鍛性の繊維マトリックスによって支持することができる。金属還元剤および金属含有酸化剤を含んだ燃料は繊維材料と混合されて、可鍛性の繊維燃料マトリックスを形成することができる。繊維燃料マトリックスは、製造を容易にする便利な燃料形態であって、燃料速度をより速くする。繊維燃料マトリックスは、無機繊維マトリックスによって支持された粉末状の金属酸化剤および金属含有還元剤を含む紙状の組成物である。無機繊維マトリックスは、セラミック繊維および/またはガラス繊維など無機繊維から形成できる。繊維燃料を形成するために、金属還元剤、金属含有酸化剤および無機繊維材料が溶媒中でともに混合され、例えば、製紙デバイスを用いてある形状、つまりシートに形成されて、乾燥される。繊維燃料は、製造および/または燃焼を容易にするマットまたは他の形状に形成することもできる。
【0074】
[084]特定の実施形態においては、物質は、衝撃作動ヒートパッケージの外側面上に置くことができる。作動すると、燃料の燃焼で発生される熱によって、最小限の劣化で、ヒートパッケージの外側面に置かれた物質の薄膜を蒸発させることができる、急速で強い熱衝撃が与えられる。物質の薄膜は、任意の適切な方法によってヒートパッケージの外側に塗布され、ある程度は、物質の物理的特性と塗布される層の最終厚さに左右される。特定の実施形態においては、ヒートパッケージに物質を塗布する方法は、これらに限定されないが、ブラシ研磨、浸漬被覆、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ローラー塗り、インクジェット印刷、気相堆積法、スピンコーティングなどが含まれる。特定の実施形態においては、物質は、少なくとも1つの溶媒を含む溶液として調製され、ヒートパッケージの外側面に塗布できる。特定の実施形態においては、溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールなど揮発性溶媒を含むことができる。特定の実施形態においては、物質は、溶解物としてヒートパッケージに塗布することができる。特定の実施形態においては、物質は、剥離剤を有する膜に付与され、ヒートパッケージに移される。常温で液体の物質については、増粘剤がその物質と混合されて、本明細書で開示した方法を含む任意の適切な方法によって支持体に塗布できる物質を含む粘性成分を生成することができる。特定の実施形態においては、物質の層は1回の塗布で形成するか、または繰り返し塗布して形成し、層の最終厚さを厚くすることができる。
【0075】
[085]特定の実施形態においては、ヒートパッケージ上に置かれた物質は、少なくとも1つの生理学的活性化合物または薬剤の治療上の有効量を含むことができる。治療上の有効量とは、治療が必要な患者または使用者に投与されると治療を行うのに十分な量のことを指す。あらゆる病気、症状または疾患の治療または処置とは、病気、症状または疾患の進行を停止または改善すること、病気、症状または疾患に陥る危険性を低減すること、病気、症状もしくは疾患、または病気、症状もしくは疾患の臨床症状のうち少なくとも1つの進行を軽減すること、または、病気、症状もしくは疾患、または病気もしくは疾患の臨床症状のうち少なくとも1つが進行する危険性を軽減することを指す。処置または治療とは、病気、症状または疾患を、物理的(例えば、識別可能な兆候の安定化)もしくは生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、または両方で抑制すること、および患者が識別可能でない可能性のある少なくとも1つの物理的パラメータを抑制することも指す。さらに、処理または治療とは、病気、症状または疾患にさらされるかまたはかかりやすい可能性がある患者において、たとえ、患者が、その病気、症状または疾患の兆候を経験または表していないとしても、病気、症状もしくは疾患、またはそれらのうち少なくとも1つの兆候の発現を遅らせることを指す。
【0076】
[086]特定の実施形態においては、支持体上に置かれる物質の量は100マイクログラム未満であり、特定の実施形態においては、250マイクログラム未満であり、特定の実施形態においては、1,000マイクログラム未満であり、別の実施形態においては、3,000マイクログラム未満である。特定の実施形態においてはヒートパッケージに塗布される薄膜の厚さは0.01μm〜20μmの範囲にあり、特定の実施形態においては、0.5μm〜10μmの範囲にある。
【0077】
[087]特定の実施形態においては、物質は医薬品を含むことができる。特定の実施形態においては、物質は治療化合物または非治療化合物を含むことができる。非治療化合物とは、レクリエーション、実験または前臨床目的で用いることができる化合物のことである。使用可能な薬品の分類には、これらに限定されないが、麻酔薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、解毒剤、制吐薬、抗ヒスタミン剤、抗感染症薬、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、抗精神病薬、抗不安薬、食欲刺激薬および抑制剤、血液修飾剤、心臓血管作動薬、中枢神経系刺激薬、アルツハイマー病治療用薬、嚢胞性線維症治療、診断、栄養補助食品用薬、勃起不全用薬、胃腸薬、ホルモン、アルコール依存症の治療用薬、中毒の治療用薬、免疫抑制薬、肥満細胞安定剤、片頭痛製剤、乗り物酔い製剤、多発性硬化症治療用薬、筋肉弛緩剤、非ステロイド系抗炎症薬、オピオイド、他の鎮痛剤および興奮剤、点眼薬、骨粗しょう症薬、プロスタグランジン、呼吸器系薬、鎮静剤および睡眠薬、皮膚および粘膜剤、禁煙補助薬、トゥレットシンドローム薬、尿路薬、目眩薬を含む。
【0078】
[088]熱劣化の程度および原因は、少なくとも一部は、特定の化合物に依存するが、特定の実施形態においては、活性物質を気化および/または昇華させるのに十分な温度まで物質を急速に加熱することによって熱劣化を最小限にすることができる。特定の実施形態においては、物質は、500ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで、特定の実施形態においては、250ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで、特定の実施形態においては、100ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで加熱することができる。
【0079】
[089]特定の実施形態においては、物質の層を急速に気化すると、物質の熱分解を最小限して、高純度の物質を示す凝縮エアロゾルを生成できる。例えば、特定の実施形態においては、10%未満の物質が熱蒸発中に分解され、特定の実施形態においては、5%未満の物質が熱蒸発中に分解される。
【0080】
[090]高純度のエアロゾルを生成するために加熱面から蒸発される薬剤の例には、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムを含む。これらの薬剤は、薬剤の薄膜を250℃〜550℃の範囲の温度まで100ミリ秒未満で加熱すると、厚さが0.1μm〜20μmの範囲で、被膜質量が0.2mg〜40mgの範囲の薄膜から気化され、薬剤の純度が90%超、多くの場合99%超のエアロゾルを生成できる。
【0081】
[091]ニコチンは、以下の構造を有した遊離塩基と塩形態の両方で存在する複素環状化合物である。
【化1】
【0082】
[092]25℃では、ニコチンは、無色から淡黄色の揮発性液体である。ニコチンの融点は−79℃で、沸点は247℃で、蒸気圧は0.0425mmHgである。液体の性質によって、安定した膜の形成が妨げられ、高蒸気圧によって保存有効期間中に蒸発してしまう可能性がある。保存有効期間中のニコチンの気化および劣化を防ぐ種々の方法(例えば、インクジェットデバイスによる容器からの供給、シクロデキストリン錯体としてのニコチンの化学的樹脂封止、ブリスターパック内でのニコチン収容)が検討されてきたが、これらの実施が、低コストの製造に変更であることは実証されていない。
【0083】
[093]揮発性化合物、特にニコチンは、化合物の金属配位錯体を形成することによって安定化できる。図7は、揮発性化合物を安定化するための無機金属錯体の使用の概念的な概要を示している。ニコチンなどの揮発性化合物は金属または金属含有錯体との錯体を形成して、化合物の金属配位錯体を形成することができる。金属配位錯体には、揮発性化合物に加えて、他の配位子を含むことができる。揮発性化合物を含む金属配位錯体は、標準温度、圧力および環境の条件で安定化できる。金属配位錯体は、溶媒中で懸架または溶解することができ、懸濁液または溶液は物質に塗布または堆積される。溶媒を除去した後、化合物を含む金属配位錯体の薄膜が物質上に残る。錯体が形成されると、化合物は、標準条件下では気化または劣化しないように安定化するが、加熱すると選択的に気化できる。
【0084】
[094]揮発性有機化合物の薄膜を形成するのに適した金属および金属含有化合物は、(i)標準温度、圧力および環境条件で安定した組成物を形成することができ、(ii)金属含有化合物を劣化させず、識別できるほどには気化させず、または反応させない温度で揮発性有機化合物を選択的に放出することができ、(iii)少なくとも1つの有機溶媒で溶解可能な揮発性有機化合物と錯体を形成することができ、(iv)有機化合物を識別できるほどには劣化させずに揮発性有機化合物を放出することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体は少なくとも1つの金属塩を含む。特定の実施形態においては、少なくとも1つの金属塩は、Zn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩およびそれらの混合物から選択される。特定の実施形態においては、金属塩は臭化亜鉛(ZrBr2)を含む。
【0085】
[095]金属配位錯体を形成するのに特に適した有機化合物には、1つ以上の窒素および/または硫黄原子を有する複素環系を含む化合物、窒素族を有する化合物、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基などの酸性基を有する化合物、およびスルホニル基など硫黄族を有する化合物を含む。
【0086】
[096]特定の実施形態においては、薬剤などの安定した揮発性有機化合物は、100℃〜600℃の範囲の温度まで加熱されると金属配位錯体から選択的に気化することができ、特定の実施形態においては、100℃〜500℃の範囲の温度まで加熱して選択的に気化することができ、他の実施形態においては、100℃〜400℃の範囲の温度まで加熱して選択的に気化させることができる。本明細書で使用する用語の「選択的に気化する」とは、有機化合物を錯体から気化することができるが、金属および/または金属含有化合物は、気化されず、揮発性生成物の形成を低下させず、および/または有機化合物と反応せずに、金属含有化合物から得られる組成物を含んだ揮発性反応生成物を形成することを指す。用語の「選択的に気化する」の使用には、いくつかの金属含有化合物、分解生成物および/または反応生成物を、有機錯体を「選択的に気化する」温度で気化することに比べて、高い可能性を含む。しかし、金属含有化合物、分解生成物および/または反応生成物の量は、高純度の有機化合物エアロゾルが生成されるほどには識別きるものではなく、いずれの金属含有化合物および/またはその誘導体の量もFDAガイドライン内にある。
【0087】
[097]薬剤などの化合物を含んだ高収率、高純度のエアロゾルの形成は、薄膜を急速に気化することによって生成を容易にすることができる。したがって、金属配位錯体は、薄膜などの基板上に塗布または堆積可能であることが望ましい。薄膜は、溶剤相、気相またはそれらの組み合わせから塗布または堆積することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体の薄膜は、溶媒の溶液の懸濁液から塗布することができる。溶媒は、例えば真空および温度下で堆積した薄膜から除去可能な揮発性溶媒であってもよい。溶媒に懸濁または溶解した金属配位錯体は、スプレーコーティング、ローラーコーティング、浸漬被覆、スピンコーティングなどの任意の適切な方法によって塗布できる。金属配位錯体はまたは気相から基板上に堆積することができる。
【0088】
[098]臭化亜鉛(ZnBr2)やニコチンの金属配位錯体を調製して評価した。ZrBr2は、融点が394℃、沸点が650℃、熱分解温度が697℃の灰白色の固体である。ZnBr2は常温および常圧下で安定している。(ニコチン)2−ZnBr2金属塩錯体は、本明細書で開示されているとおりに、調製した。(ニコチン)2−ZnBr2金属塩錯体は、融点が155℃の固体である。
【0089】
[099]ニコチンエアロゾルの発生量は、(ニコチン)2−ZnBr2錯体の薄膜を蒸発させることによって生成されたエアロゾル内のニコチン量を測定することによって決定した。厚さが2μmまたは6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜被膜は、本明細書で開示されているとおりに、調製した。2μmと6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を含んだニコチンの量は、それぞれ、約1.17mgと約3.5mgであった。(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜が堆積された金属箔基板は、約20L/分の空気流内に配置した。膜は、電流を金属箔基板に印加することによって、約200ミリ秒未満内、最高温度300℃、350℃、400℃または500℃まで加熱した。(ニコチン)2−ZnBr2膜を選択的に蒸発している間に生成されたエアロゾルは、シュウ酸で被膜されたフィルタ上で収集し、収集されたニコチンの量は、高圧液体クロマトグラフィーによって決定した。エアロゾル内の百分率のニコチン発生量は、HPLCを金属箔基板上に堆積した薄膜内のニコチンの量で割算して決定される、フィルタ上で収集されたニコチン量とした。
【0090】
[0100]図8に示されるように、気化された厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜からのエアロゾル内でのニコチンの平均発生量は、300℃〜400℃の温度範囲で約60±7%であった。厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を蒸発させて得られるエアロゾル内のニコチンの平均発生量は、金属箔が最高温度300℃まで加熱されると、約51±2%で、金属箔を最高温度400℃まで加熱すると、約73±1%まで増加した。
【0091】
[0101](ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を蒸発させることにより生成されたエアロゾル内のニコチン純度も測定した。エアロゾル内のニコチンの百分率純度は、ニコチンを表す曲線の下の面積を、HPLCで分離された他の全ての成分を表す曲線の下の面積と比較することによって決定した。図9で示されているとおり、厚さが2μmと6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を、最高温度300℃で蒸発させることで得られたエアロゾルの平均ニコチン純度は、それぞれ約99.5%と約99.99%であった。(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を最高温度300℃より高温で加熱すると、エアロゾルのニコチン純度は低減した。また、所定の蒸発温度に対しては、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜から生じるニコチンエアロゾルの純度は、厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2の固体膜から生じるニコチンエアロゾルの純度よりも高かった。
【0092】
[0102]平均質量空気動力学的直径が1から5の範囲のエアロゾルは主に肺内に堆積するが、揮発性化合物のエアロゾルは吸入中に気化する。その後、再度気化した化合物が口腔または喉に堆積して、苛立ちおよび/または不快な味となる。急速蒸発を用いて高密度のエアロゾルボーラスを形成することによって、揮発性化合物から形成されたエアロゾルの再蒸発が最小限になるかまたは防止される。さらに、金属配位錯体内に含まれる適切な添加物を用いることによって、再蒸発を最小限にすることができる。例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの化合物が用いることができる。不快な味を隠すために、メントールなどの化合物を錯体に含むことができる。
【0093】
[0103]金属配位錯体を使用して、本明細書で開示されているとおり、薬剤送達デバイスで使用するためのニコチンなどの揮発性化合物を安定化することができる。薬剤を含んだ金属配位錯体は、衝撃作動ヒートパッケージの外面に薄膜として塗布することができる。例えば、薬剤を含んだ金属配位錯体は、図2の構成要素30または図4の構成要素111に塗布することができる。衝撃イグナイタの作動によって、燃料が点火され、ヒートパッケージの外側面と、薬剤を含んだ金属配位錯体の薄膜とが加熱される。その後、薬剤は、金属配位錯体から選択的に気化することができる。薬剤および/または他の揮発性化合物を含んだ金属配位錯体の薄膜は他の薬剤送達デバイスで用いることもできる。例えば、特定の実施形態では、金属配位錯体の薄膜は、米国出願第10/861,554号に開示されているように、抵抗加熱金属箔がその上に蒸着された薄い固体膜を加熱するのに用いられる薬剤送達デバイスで使用することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体の薄膜は、電気的な抵抗加熱要素が火花を発生する開始剤組成物を点火するのに用いられる薬剤送達デバイスで使用することができ、このデバイスは、米国出願第10/850,895号に開示されているように、作動すると、金属酸化/還元燃料を点火する。
【0094】
[0104]特定の実施形態においては、薬剤の金属配位錯体の薄膜は、テープのスプールやリール上に置かれる薬剤の多回投与量を供給するために用いることができる。例えば、テープは、複数の薬剤供給部を備え、各薬剤供給部は、薬剤から構成される金属配位錯体を含んだ薄膜が配置されるヒートパッケージを備える。各ヒートパッケージには、例えば抵抗加熱によって、または衝撃で点火可能な開始剤組成物と、金属配位錯体から薬剤を選択的に気化させるのに十分な急速高温の熱衝撃を与えることが可能な燃料とが含まれている。各ヒートパッケージはテープの長さに沿って間隔が空けられている。使用中、1つ以上のヒートパッケージは、空気路内に配置され、空気が空気路を通って流れている間、ヒートパッケージは金属配位錯体から薬剤を選択的に気化させるよう作動可能である。気化した薬剤は空気流内で凝結して、薬剤を含んだエアロゾルを形成する。薬剤はその後、使用者によって吸入される。テープは、開始剤組成物と燃料と薬剤を含んだ薄膜とが配置される領域を画成する複数の薄膜を含むことができる。複数の層のうちいくつかの層はさらに、放出ガスが蓄積して圧力上昇を最小限にするための充填されていない容積を提供できる。複数の層は、機械的な支持物を備えることができ、ヒートパッケージが達する温度で目に見えて化学的に劣化しない任意の材料から形成することができる。特定の実施形態においては、層は、金属または、ポリイミド、フッ素重合体、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイトもしくはその他の高温抵抗ポリマーなどのポリマーを含むことができる。特定の実施形態においては、テープは、薬剤または薬剤を含んだ金属配位錯体を物理的および/または環境的に保護するよう構成された上下層をさらに含むことができる。上および/または下の保護層は、例えば、金属箔やポリマーを含むことができ、または、金属箔とポリマーを含んだ多層構造を含むことができる。特定の実施形態においては、保護層は、酸素、水分および/または有害ガスに対して低い透過性を有することができる。保護層の全てまたは一部を使用する前に除去して、薬剤および燃料を露出させることができる。開始剤組成物と燃料組成物は、例えば、本明細書で開示するいずれをも含むことができる。薄膜ヒートパッケージと、テープ、ディスクまたは他のほぼ平坦構造の形状をした薬剤供給部とは、物質の多回投与量を提供する、小型で量産可能な方法を提供することができる。低コストで多回投与量を提供することは、例えば、ニコチン渇望症の治療および/または禁煙を達成するためにニコチンを投与するようなある特定の治療に特に有益である。
【0095】
[0105]図10は、テープのスプールまたはリールを用いた、複数回使用のために設計された薬剤送達デバイス内で用いるように構成された薬剤供給ユニットの特定の実施形態を示している。図10に示されているとおり、スプールまたはリール400形状のテープ406は、複数の薬剤供給ユニット402、404を備える。複数の薬剤供給ユニット402、404は、熱で気化される薬剤または薬剤/錯体の薄膜が置かれた加熱ユニットを備えることができる。薄膜を被膜するのは、例えば金属線など微細メッシュ407で、加熱ユニット上で薬剤および/または薬剤錯体を維持または保持する。錯体は、厚い膜には特に接着困難であり、メッシュを用いることによって、テープまたはリールの表面から薬剤の錯体がはがれ落ちるか、分離するのを防ぐことができる。メッシュは、テープ406の全長を覆う層、または薬剤の膜の各領域を覆う個別のメッシュユニットであってもよい。複数の薬剤供給ユニット402、404のそれぞれは、本明細書で記載した形態物と同じ形態物を含むことができる。特定の実施形態においては、テープ406は複数の加熱ユニットを備えることができる。各加熱ユニットは、固体燃料と、固体燃料に隣接する開始剤組成物とを含むことができ、開始剤組成物に衝突すると、開始剤組成物に火花を発生させ、燃料を点火し、その結果薬剤を気化することができる。テープは、リール機構(図示せず)を用いてデバイス内を進むことができ、ばねや他の機構を用いて、衝突によって開始剤組成物を作動させることができる。
【0096】
[0106]金属配位錯体から薬剤を選択的に気化することによって生成された薬剤エアロゾルは、薬剤の肺への投与のため、ならび、病気および症状の治療のために用いることができる。したがって、ニコチンエアロゾルを使用して、ニコチンの使用をやめようとするヒトが経験するニコチン渇望症を治療し、および禁煙を達成することができる。使用者の肺に供給されたニコチンエアロゾルは、薬物動態プロファイルと喫煙から生じるニコチンの血中濃度とをシミュレートすると期待される。したがって、ニコチン渇望を低減することを目的とした効果的な治療および禁煙が、本明細書に開示のデバイスおよび方法によって生成されるニコチンエアロゾルを用いて開発できると期待される。
【実施例】
【0097】
[0107]本発明の実施形態は、以下の実施例を参照してさらに明確にすることができる。以下の実施例では、本発明の化合物の調製を詳細に説明している。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく、材料および方法の両方に対して数多くの変更形態が実現可能であうことが明らかである。
【0098】
[実施例1]
ニコチン金属配位錯体の固体薄膜の調製
[0108]1Lのアセトンに20gのシュウ酸を溶解することによって、2%のシュウ酸溶液が調製された。ガラス繊維フィルタ(ワットマン紙)が、約10秒間、2%のシュウ酸溶液にフィルタを浸漬することによってシュウ酸で被膜された。シュウ酸で被膜されたフィルタが空気乾燥された。
【0099】
[0109]最初に、1Mの溶液を形成するようエタノールに固体のZnBr2を溶解することによって、(ニコチン)2−ZnBr2(s)錯体が調製された。ニコチンをエタノールで懸濁することによって、2Mのニコチン溶液が調製された。ZnBr2とニコチン溶液が合わせ混合された。得られた固体錯体が、真空濾過を用いてメタノールで繰り返し洗浄され、次に乾燥された。ニコチン−ZnBr2錯体におけるZnBr2に対するニコチンのモル比は2:1であった。
【0100】
[0110]金属箔を被膜するために、(ニコチン)2−ZnBr2錯体がクロロホルムに溶解された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体は、厚さが0.005インチのステンレス箔上で手塗りされた。被膜は、真空下において約1時間25℃で乾燥された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、使用前に、真空下で保管され、光から保護された。
【0101】
[0111](ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、300℃、350℃および400℃の温度まで被膜を加熱するのに十分な金属箔に電流を印加することで蒸発させられた。20L/分の空気流で被膜を蒸発することによって形成されたエアロゾルが、シュウ酸で被膜したフィルタ上でエアロゾルを収集することによって分析された。収集されたエアロゾルは、0.1%のTFAを含む5mLの水溶液を用いてフィルタから抽出された。抽出物の純度は、図9で示されているように、高圧液体クロマトグラフィーを用いて決定された。単一のXTerraRP18、4.6×150mmカラムで、pH2の1−スルホン酸オクタンナトリウム塩濃縮液を1アンプル備える75%の水相の過塩素酸溶液と、25%の有機相のアセトニトリルとを含んだ溶離液を有するVarian HPLCシステムが用いられた。HPLCは20分間、一定作動条件下で実行された。
【0102】
[実施例2]
ニコチンZnBr2錯体からのニコチン気化によるニコチンアエロゾルの粒径の決定
[0112]1Lのアセトン(JTBaker)に20gのシュウ酸(Aldrich)を溶解して、2%のシュウ酸溶液が調製された。GF50、O81mmのガラス繊維フィルタ(Schleicher&Schull)が、約10秒間2%のシュウ酸溶液にフィルタを浸漬することによって、シュウ酸で被膜された。シュウ酸で被膜されたフィルタは、一晩空気乾燥された。
【0103】
[0113](ニコチン)2−ZnBr2錯体が、まず、1Mの溶液を形成するよう、エタノールに固体のZnBr2を溶解することによって調製された。2Mのニコチン溶液が、エタノールにニコチンを懸濁することによって調製された。ZnBr2とニコチン溶液が合わせて混合された。得られた固体錯体は、真空濾過を用いてメタノールで繰り返し洗浄され、次いで乾燥された。ニコチン−ZnBr2錯体におけるZnBr2に対するニコチンのモル比は2:1であった。
【0104】
[0114]金属箔を被膜するため、(ニコチン)2−ZnBr2錯体がクロロホルムに溶解された。2つの異なった被膜厚みの(ニコチン)2−ZnBr2錯体がステンレス鋼上で調製された。クロロホルム中に169.4mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液と、クロロホルム中に338.8mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液とが得られた。これらの溶液を形成中およびその後もずっと露光は最小限にされた。各溶液に対する(ニコチン)2−ZnBr2錯体は、10μLのHamilton注射器を用いて、厚さが0.005インチのステンレス箔上に手塗りされた。169.4mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液のうち5.9μLが、1.27cm×2.3cmのステンレス鋼の領域の両側に被膜された。これは、約1mgのニコチンを含有した、膜厚が2μmの被膜に対応する。同様に、338.8mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液のうち8.8μLが、1.27cm×2.3cmのステンレス鋼の領域の両側に被膜された。これは、約3.5mgのニコチンを含有した、膜厚が6μmの被膜に対応する。これらの被膜は、真空下において約1時間25℃で乾燥された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体被膜が、使用前に、少なくとも30分間真空内で保管され、光から保護された。
【0105】
[0115](ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、被膜を350℃の温度まで加熱するのに十分な金属箔に13.0Vの電流を印加することによって蒸発された。28.3L/分の空気流内で被膜を蒸発させることで形成されたエアロゾルが、8段のAndersonインパクタを用いて、シュウ酸で被膜されたフィルタ上でエアロゾルを収集して分析された。厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体から、ニコチンエアロゾルのMMADは、2.00であると決定された。同様に、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体から、ニコチンエアロゾルのMMADは、1.79であると決定された。蒸発後、フィルタは、5mLの0.1%トリフルオロ酢酸/DIH2Oで抽出され、HPLCで分析された。厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体からのニコチンエアロゾルの純度は、97%超と決定された。一方、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体からのニコチンエアロゾルの純度は、97%超と決定された。
【0106】
[実施例3]
衝撃ヒートパッケージに対する開始剤組成物の調製
[0116]粒径が20μm未満のチタン620重量部と、100重量部の塩素酸カリウムと、180重量部の赤リンと、100重量部の塩素酸ナトリウムと、620重量部の水とを、2%のポリビニルアルコール結合剤と合わせることによって、開始剤組成物が形成された。
【0107】
[実施例4]
衝撃点火ヒートパッケージ
[0117]1/4インチ断面の薄いステンレス鋼ワイヤアンビルを備える点火アセンブリが開始剤組成物で浸漬被膜され、約1時間およそ40〜50℃で乾燥された。乾燥した被膜ワイヤアンビルは、厚さが0.003インチ、または厚さが0.005インチで、長さが約1.65インチ、外径が0.058インチの、壁部が軟らかいアルミニウム管に挿入された。管はワイヤアンビルを所定位置で保持するよう圧着され、エポキシで封止された。
【0108】
[0118]アルミニウム管の他端には、燃料が配置された。ガラス繊維を結合剤として用いて粉末状の燃料を加熱するマットを形成するために、1.3グラムのガラス繊維濾紙が取られ、約50mLの水に急速な攪拌で加えられた。ガラス繊維が水中で分離し懸濁されるようになった後、6gのMoO3が加えられた。これに続いて3.8gのZr(3μm)が加えられた。30分間室温で攪拌した後、混合物が標準的な濾紙で濾過され、得られたマットが高真空で60℃で乾燥された。急速に燃焼する、厚さが0.070インチのマットが形成された。アンビルを収容していないヒートパッケージの端部に燃料を手で詰めた後、壁部が軟らかいアルミニウム管の燃料端部が封止された。
【0109】
[0119]他の実施形態においては、燃料は、外径が0.094インチの長さ0.39インチのアルミニウムスリーブに詰められ、外径が0.058で長さが約1.18インチで、一端で封止され、乾燥した被膜ワイヤアンビルを挿入した、壁部が軟らかいアルミニウム管(厚さ0.003インチまたは厚さ0.0005インチ)に挿入された。燃料が被膜されたアルミニウムスリーブは、壁部が軟らかいアルミニウム管まで、圧着によって封止された。
【0110】
[0120]ヒートパッケージが薬剤で被膜され、ばねの機械的な作動またはばねの呼吸動作を用いて衝撃で点火された。
【0111】
[0121]いくつかの実施形態においては、ラポナイトを含む燃料混合物が用いられた。76.16%のZr:19.04%のMoO3:4.8%のラポナイト(Laponite)(登録商標)RDSを含む固体燃料被膜を調製するために、以下の手順が用いられた。
【0112】
[0122]湿ったジルコニウム(Zr)を調製するために、DI水(ドイツのChemetall)で得られたままの状態のZr懸濁液が、30分間ロトミキサーで攪拌された。10〜40mLの湿ったZrが50mLの遠心分離管に分配され、30分間、3,200rpmで遠心分離された(Sorvall6200RT)。DI水が除去されて、湿ったZrペレットが残った。
【0113】
[0123]15%のラポナイト(登録商標)RDS溶液を調製するために、85グラムのDI水がビーカーに加えられた。攪拌中、15グラムのラポナイト(登録商標)RDS(テキサス州、ゴンザレスのSouthern Clay Products)が加えられ、懸濁液が30分間攪拌された。
【0114】
[0124]まず、遠心分離管から先に調製されたように、湿ったZrペレットを除去することによって、反応スラリーが調製され、ビーカー内に置かれた。湿ったZrペレットの重量を測ると、乾燥したZrの重量は、以下の式から決定された。乾燥Zr(g)=0.8234(湿ったZr(g))−0.1059
【0115】
[0125]その後、MoO3に対するZrの割合が80:20となるよう、三酸化モリブデン量が求められ(例えば、MoO3=乾燥Zr(g)/4)、適切な量のMoO3粉末(ニューヨーク州のAccumet)が、湿ったZrが入ったビーカーに加えられて、湿ったZr:MoO3スラリーが生成された。乾燥成分が、76.16%のZr:19.04%のMoO3:4.80%のラポナイト(登録商標)RDSの最終的な重量百分率比を得るためのラポナイト(登録商標)RDSの量が決定された。40%のDI水を含んだ反応スラリーを得るための過剰水が、湿ったZrとMoO3スラリーに加えられた。反応スラリーは、分散ヘッドがS25N−8GのIKA Ultra−Turrax混合モータを用いて5分間混合された(設定4)。その後、先に決定された15%のラポナイト(登録商標)RDSの量が、反応スラリーに加えられて、IKA Ultra−Turraxミキサーを用いてさらに5分間混合された。反応スラリーが注射器に移されて、被膜する前に少なくとも30分間保管された。
【0116】
[0126]その後、Zr:MoO3:ラポナイト(登録商標)RDSの反応スラリーがヒートパッケージ内に堆積され、乾燥可能となった。
【0117】
[実施例5]
衝撃点火ヒートパッケージからの気化を用いたアルプラゾラムエアロゾルの生成
[0127]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、ジクロロメタン中のアルプラゾラム溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。アルプラゾラムを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が1.58μmで0.125mgのアルプラゾラムを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0118】
[0128]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって形成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。フィルタは、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。アルプラゾラムについては、溶離剤A(水中0.1%のトリフルオロ酢酸)と溶離剤B(アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(24分)で、1mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は96.8%で、回復収率が100%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0119】
[実施例6]
衝撃点火ヒートパッケージからの蒸発を用いたプラミペキソールエアロゾルの生成
[0129]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、メタノール中のプラミペキソール溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。プラミペキソールを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が6.33μmで0.500mgのプラミペキソールを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0120】
[0130]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって生成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。濾過は、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。プラミペキソールについては、溶離剤A(水中10mMのNH4HCO3)と溶離剤B(メタノール中10mMのNH4HCO3)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(29分)で、0.9mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は98.8%で、回復収率が95.6%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0121】
[実施例7]
衝撃点火ヒートパッケージからの蒸発を用いたシクレソニドエアロゾルの生成
[0131]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、クロロホルム中のシクレソニド溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。シクレソニドを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が2.53μmで0.200mgのシクレソニドを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0122】
[0132]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって生成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。濾過は、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。シクレソニドについては、溶離剤A(水中の0.1%トリフルオロ酢酸)と溶離剤B(アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(29分)で、0.9mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は85.6%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0123】
[実施例8]
衝撃点火を用いる燃料としてのPyrofuzeの発火
[0133]ヒートパッケージに燃料を詰め込む以外に、燃料としてワイヤを使用可能であることが決定された。
【0124】
[0134]各種の太さのPyrofuzeワイヤはSigmund Cohn.から入手できた。0.005インチ太さのワイヤは一端をU字型の形状とし、空隙を衝撃イグナイタで充填した。衝撃を与えるとワイヤが点火した。
【0125】
[0135]当業者であれば、本明細書に記載された本発明の開示の明細および実施を考慮することにより、本発明の開示の他の実施形態は理解される。明細書および実施例は、単に例示であって、本発明の開示の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】特定の実施形態による薬剤送達デバイスの等角図である。
【図2】特定の実施形態による衝撃点火ヒートパッケージを組み込んだ薬剤送達デバイスの断面図である。
【図3】特定の実施形態によるヒートパッケージの断面図である。
【図4】特定の実施形態による、各ヒートパッケージが凹部内に配置された、薬剤送達デバイスの断面図である。
【図5】凹部内に配置されたヒートパッケージの別の図である。
【図6A】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6B】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6C】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6D】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6E】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図7】金属配位錯体を使用することにより、揮発性化合物を安定化させ、次いで、金属配位錯体の固体薄膜から有機化合物を選択的に気化する、概念的な概要を示している。
【図8】選択的に気化された、(ニコチン)2−ZnBr2金属配位錯体の固体薄膜のニコチンエアロゾルの発生率を示すチャートである。
【図9】選択的に気化された、(ニコチン)2−ZnBr2金属配位錯体の固体薄膜のニコチンエアロゾルの純度を示すチャートである。
【図10】薬剤送達デバイスで使用するリール状多回投与ヒートパッケージの図である。
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、衝撃作動ヒートパッケージを組み込んだエアロゾル薬剤送達デバイスに関する。薬剤送達デバイスは、薬剤を含んだ薄膜を蒸発させる作動機構によって作動する。これらの薄膜は固体または粘性液体から構成できる。本発明はさらに、加熱されると選択的に気化する揮発性化合物の金属配位錯体を含んだ薄膜に関する。より詳細には、本発明は、ニコチン渇望を治療するためおよび禁煙を達成するための、ニコチン金属塩錯体の薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]ニコチンは喫煙者の肺を通して吸収されるため、喫煙によって、ニコチンの血中濃度は最初に急激に上昇する。一般的に、30〜40ng/mLのタバコによって、喫煙後10分以内に血中濃度がピークに達する。ニコチンの血中濃度が急激に上昇するのは、中枢神経系内のニコチン様コリン受容体および、喫煙者が遭遇する徴候を誘発する自律神経節でのシナプス後部効果に原因があると想定されているが、禁煙中止に伴う渇望症に原因する場合もある。
【0003】
[003]数多くのニコチン置換療法が開発されてきたが、如何なる療法も、喫煙により生じる全身のニコチン血中濃度の薬物動態プロファイルを再現するようには思われない。結果的に、従来のニコチン置換療法は、喫煙者を禁煙させるのに特に効果的ではないことがわかってきた。例えば、禁煙治療におけるニコチン置換用に市販されている製品の多くは、血中のニコチンの安定したベースライン濃度を提供することを意図している。ニコチンチューインガムと経皮的ニコチンパッチは2つの禁煙製品の例であり、これら製品は、約30分超の間のタバコによって生じるニコチン血中濃度と同等の濃度を実現するが、喫煙によって発生するニコチンの血中濃度の最初の急激な上昇を再現しない。ニコチンガムは、患者が噛むとゆっくりとニコチンを放出するイオン交換樹脂で、口腔内に存在するニコチンは、口腔吸収によって体循環される。ニコチンパッチでは、使用者のニコチン血中濃度は低く、一定になる。したがって、ニコチンガムも経皮的ニコチンも両方とも、喫煙によって発生するニコチン血中濃度の薬物動態プロファイルを再現せず、したがって、禁煙を試みるとき、喫煙者の多くに渇望症を体験させる要求を満たさない。
【0004】
[004]ニコチン蒸気を発生する吸入製品も効果的ではない。この理由は、吸入された蒸気は、主に舌、口腔、喉を通って吸収され、肺内に堆積しないからである。噛みタバコや経口噛みタバコ、タバコにおい袋といった無煙ニコチン製品は、ニコチンを頬粘膜へ運ぶ。頬粘膜は、ニコチンガムの場合と同様に、放出されたニコチンがゆっくりと非効率的にしか吸収されない。これらの製品によるニコチン血中濃度は、約12ng/mLの最大ニコチン血中濃度(この濃度は、1本のタバコを吸うことによって達するピーク値の半分より少ない)に達するのにおよそ30分を要する。口腔吸収経路を使用することで低いニコチン血中濃度を得るのは、最初に肝臓代謝を通過することに起因する可能性がある。
【0005】
[005]口腔内に投与された製剤およびロゼンジ剤も比較的効果が小さい。
【0006】
[006]200msec未満の間に最高温度600℃において空気流内で薬剤の薄膜を急速蒸発させることによって、薬剤の劣化を最小限にした高収率で高純度の薬剤エアロゾルを生成できる。濃縮薬剤エアロゾルを利用して、吸入医療デバイスを用いて薬剤を効果的に肺に送達することができる。金属基板上に付着された薬剤の薄膜が電気的な抵抗加熱によって蒸発するデバイスおよび方法が実証されてきた。エンクロージャ内で発熱金属酸化還元反応を受ける燃料を含むことができる、化学的ベースのヒートパッケージを利用して、薄膜を蒸発させることができる急速熱衝撃を発生することにより、高純度のエアロゾルを生成することもできる。このことは、例えば2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Self−Contained heating Unit and Drug−Supply Unit Employing Same」の米国出願第10/850,895号および、2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Percussively Ignited or Electrically Ignited Self−Contained Heating Unit and Drug Supply Unit Employing Same」の米国出願第10/851,883号に開示され、その両方の全内容は参照として本明細書に組み入れられる。これらのデバイスおよび方法は、物理的および化学的に安定した固体として堆積可能な化合物と共に用いるのに適している。金属表面に堆積した直後に気化するのでなければ、液体は表面から蒸発または拡散できる。したがって、このようなデバイスを利用して液体を気化できるが、液剤を使用することはある種の望ましくない複雑性を加えることになる。ニコチンは常温で液体であって、蒸気圧が比較的高い。したがって、公知のデバイスおよび方法は、特に、液剤を用いたニコチンエアロゾルを生成するのに適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[007]したがって、喫煙によって得られる薬物動態プロファイルと同様の薬物動態プロファイルを与え、それによって禁煙に伴う渇望症に直接的に対処するニコチン置換療法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[008]したがって、本発明の第1の態様によれば、空気路を画成するハウジングを備える薬剤送達デバイスであって、空気路は、少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースと、空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージと、少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構とを備える薬剤送達デバイスが提供される。薄膜(固体または粘性液体のいずれか)としてコーティング可能な薬剤は、本発明のこの態様に特に適している。同様に、以下に説明するとおり、錯体を形成し、その後薄膜としてコーティング可能な揮発性または液体の薬剤も、本発明のこの態様において用いるのに適している。明確にするため、本明細書における「衝撃作動ヒートパッケージ」とは、衝撃によって発火または作動が可能なように構成されたヒートパッケージを意味している。「非作動ヒートパッケージ(unactivated heat package or non−activated heat package)」とは、本明細書では、デバイス内の衝撃作動ヒートパッケージであって、ヒートパッケージ自体はそのように位置すると衝撃によって作動するよう構成されてはいるが、直接的に衝撃を与えられ発火可能なようにはデバイス内にまだ位置していない衝撃作動ヒートパッケージのことを指す。
【0009】
[009]本発明の第2の態様は、機械的衝撃によって変形可能な領域を含んだエンクロージャと、エンクロージャ内に配置されたアンビルと、エンクロージャ内に配置された衝撃開始剤組成物であって、エンクロージャの変形可能な領域が変形すると点火されるよう構成された衝撃開始剤組成物と、エンクロージャ内に配置され、開始剤組成物によって点火されるよう構成された燃料と、を備える衝撃作動ヒートパッケージを提供する。
【0010】
[010]本発明の第3の態様は、揮発性化合物を含んだ金属配位錯体、特にニコチンの金属配位錯体であって、化合物は加熱されると選択的に気化可能な金属配位錯体を提供する。
【0011】
[011]本発明の第4の態様は、化合物を含んだ金属配位錯体を場合によって含む薄膜から、この化合物を選択的に気化することによって化合物のエアロゾルを生成する方法を提供する。
【0012】
[012]本発明の第5の態様は、
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースを備える空気経路を画成するハウジングと、空気路内に配置された少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるよう構成された機構とを有する、薬剤送達デバイスを設けるステップと、
マウスピースから吸入するステップと、
衝撃が与えられるよう構成された機構を作動するステップと、
を含んだ、薬剤を患者に供給する方法を提供するものであり、
衝撃作動ヒートパッケージは少なくとも1つの薬剤を気化して、患者が吸入する空気路内に薬剤を含んだエアロゾルを生成する。
【0013】
[013]本発明の第6の態様は、ニコチンエアロゾルを用いて、ニコチン渇望症の治療と禁煙をする方法を提供する。
【0014】
[014]以上の一般的な説明と以下の詳細な説明は両方とも例示および説明のためだけであって、特許請求の範囲に記載されるとおり、ある特定の実施形態に限定されないことは理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[025]次に本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の特定の実施形態が記載されているが、これは本発明の実施形態をそれら記載の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解される。本発明の実施形態の記載では、代替物、変更形態および均等物を、添付の特許請求の範囲で定義されているとおり、本発明の実施形態の精神と範囲内に含むものとする。
【0016】
[026]特に指定しない限り、明細書および特許請求の範囲で用いられる量、条件などを表現する全ての数字は、いずれの場合にも、用語の「約」を伴うと理解されるべきである。
【0017】
[027]本出願においては、特に指定しない限り、単数形を使用する場合は複数形を含む。本出願において、特に指定しない限り、「または」を使用する場合は「および/または」を意味する。さらに、用語の「含んでいる」、ならびに「含む」や「含まれた」といった他の活用形の使用は、限定的ではない。また、「要素」または「構成要素」などの用語は、特に指定しない限り、1つのユニットを備える要素および構成要素と、2つ以上のサブユニットを備える要素および構成要素の両方を範囲に含む。
【0018】
[028]薬剤を含んだ薄膜の気化を利用して、薬剤のエアロゾルを使用者に投与することができる。薬剤の固体薄膜を気化することによってエアロゾルが生成される吸入薬剤送達デバイスが、例えば米国特許出願第10/850,895号に記載され、その開示は参照として本明細書に組み入れられる。このようなデバイスでは、患者がデバイスを吸入すると、その上に薬剤の薄い固体膜が置かれた加熱要素が作動する。高速熱衝撃によって薬剤が気化され、患者の吸入により発生する空気流内にエアロゾルを生成する。エアロゾルが患者により吸入され、患者の肺に送達され、そこで薬剤が患者の体循環に急速に効率的に吸収される。燃料が発熱金属酸化還元反応を受けて熱を供給することにより、物質を気化できるデバイスも記載されている(例えば、「スタッカートデバイスの利用」を参照のこと)。本明細書に開示する揮発性化合物の金属配位錯体の薄膜は、同様のデバイスで同様の方法で用いられて、高純度の薬剤エアロゾルを生成することができる。
【0019】
[029]ニコチン渇望症の治療と禁煙は、喫煙中に発生るニコチン血中濃度の急激な上昇を再現する治療計画および/または療法によって対処することができる。典型的には、喫煙者は、約5分間に約10回吸入する。したがって、喫煙の使用プロファイルをシミュレート可能なニコチン送達デバイスは、1回が約200μgのニコチンを5〜20回投与分含み、その後、ニコチンは、使用者が欲すると断続的に放出される。このようなプロトコルは、例えば、2004年6月3日付で出願された、発明の名称「Multiple Dose Condensation Aerosol Devices and Methods of Forming Condensation Aerosols」の米国出願第10/861,554号で開示されているように、先に記載した携帯型多回投与薬剤送達デバイスに適用できるが、このようなデバイスは、薄い固体膜を気化するために電気的な抵抗加熱を採用し、したがってバッテリなどの比較的高価でかさばる電源を必要とする。バッテリを組み込まず、簡単に使い捨て可能で、大量に、低コストで製造しやすい携帯型多回投与薬剤送達デバイスは、ニコチン置換療法に特に有用である。機械的に作動し、衝撃で点火する化学ヒートパッケージは、携帯型多回投与および単一投与薬剤送達デバイスで用いるための、薬剤の薄膜を気化することが可能な、小型で内蔵型加熱システムを提供することができる。
【0020】
[030]図1は、衝撃ヒートパッケージを組み込んだ多回投与薬剤送達デバイスおよび機械的作動機構の等角図である。薬剤送達デバイス10は、末端部12とマウスピース14とを備えるハウジングを備える。末端部12とマウスピース14は、少なくとも1つの(隠れた)空気吸入口16と、マウスピース14で形成された少なくとも1つの排気口18とを有する内部空気路を画成している。手動で作動する押しボタン式のスイッチ20が末端部12に組み込まれている。末端部12とマウスピース14は、接合部分22で分離可能に、回転可能に、または固定して接続することができる。薬剤送達デバイス10の寸法は、デバイスが簡単に人間工学的に取り扱うことができるような寸法である。ニコチン置換療法の目的で、薬剤送達デバイス10の外観と感触は、タバコ、シガリロまたは葉巻と類似であることが有益である。例えば、特定の実施形態においては、末端部12の長さは1.4インチ、外径が1.2インチで、マウスピース14の長さが1.8インチから2.5インチである。マウスピース14は接合部分22で末端部12と同じ直径を有し、使用者が便利で快適であるよう、さらに薬剤エアロゾルを使用者の肺に吸入および送達しやすくするために、必要に応じて排気口18に向かってテーパ状になっている。排気口18の断面面積は約0.01in2から1.5in2の範囲にすることができる。末端部12とマウスピース14とで形成された内部空気路は、吸入中に通常生成される空気流量を含むことができる。例えば、末端部12とマウスピース14によって画成された空気路は、10L/分〜200L/分の範囲の空気流量を含むことができる。末端部12とマウスピース14は、ポリマーもしくはポリマー複合材料から、または例えば、金属、合金、複合材料、セラミックスおよびそれらの混合物などを含む、内部構成要素に構造的支持を与えるに任意の他の材料から形成することができる。末端部12とマウスピース14の外面はさらにテクスチャ加工を施すことができ、または触感および/または意匠性を向上させるために成形挿入体を含むことができる。末端部12とマウスピース14の肉厚は、送達デバイスに機械的完全性を与え、内部構成部品に物理的支持を与える厚さであればどのような厚さであってもよい。特定の実施形態においては、末端部12とマウスピース14は、低価格のプラスチックおよび/またはプラスチック部品を用いた射出成形法によって製造することできる。
【0021】
[031]図2は、多回投与薬剤送達デバイス10の切り取り断面図を示している。マウスピース14は、接合部分22で摺動可能に末端部12に接続され、図2に示すように、部分的に分解された構造で、末端部12からわずかに離れるように引っ張られている。マウスピース14は、孔27を有する内部バッフル25を含んでいる。特定の実施形態においては、接合部分22での摺動可能な接続を利用して、末端部12に対してマウスピース14を回転させて末端部12内に保持された構成部品に対して孔27の方向を決め、詳細に、孔27を個々のヒートパッケージ32に位置合わせできる。バッフル25は空気路内を流れる空気を方向変更させて孔27を通るようにする。患者がマウスピース14により吸入すると、空気が空気吸入口16に入り、複数の孔63を通って、バッフル25で孔27を通るよう方向転換され、排気口18を通ってデバイスから出る。
【0022】
[032]使用者にニコチンなどの薬剤を送達するために、少なくとも1つのヒートパッケージ32の外面30から薬剤が気化する。複数のヒートパッケージ32、例えば5〜30個のヒートパッケージが各薬剤送達デバイス10内に収容されている。
【0023】
[033]図3は、ヒートパッケージ32の一実施形態の断面図を示している。各ヒートパッケージ32は衝撃イグナイタ40と加熱要素39とを含んでいる。衝撃イグナイタ40は、機械的に変形可能な管42と、変形可能な管42内に同軸で配置され、窪み46で所定位置に保持されたアンビル44とを含んでいる。開始剤組成物48がアンビル44の領域に配置されている。十分な力で機械的衝撃が与えられると、変形可能な管42が変形し、変形可能な管42とアンビル44との間の開始剤組成物48を圧縮して、開始剤組成物48を急激に燃焼して火花を散らす。加熱要素39の内部52は、点火すると急速に強い熱衝撃を生じる燃料50が含まれている。燃料の適切な例が本明細書に開示されている。加熱要素39の外面54は、薬剤または薬剤含有成分の薄膜56を有している。開始剤組成物48が急激に燃焼すると、燃料50が発火する。燃料50が燃焼することで生成された熱は、加熱要素39の外面54を加熱する。外面54からの熱エネルギーが伝わり、外面54から薬剤または薬剤含有成分の薄膜56が蒸発する。薬剤蒸気がデバイス10(図1〜2参照)内の空気流で凝結して、薬剤エアロゾルを生成する。
【0024】
[034]図2においては、ヒートパッケージ32は隙間を空けた構成で示されており、これは各ヒートパッケージ32を隣接のヒートパッケージから分離する形態物がないことを意味している。図4は、複数のヒートパッケージを組み込んだ多回投与薬剤送達デバイスの別の実施形態を示している。図4において、ヒートパッケージ32は封止された円筒形のエンクロージャから形成されている。各ヒートパッケージ32の一端は、衝撃イグナイタ110を備え、対向端部は、加熱要素111を備える。各ヒートパッケージ32は取付け板55によって保持されている。各ヒートパッケージ32の加熱要素111は円筒形の凹部60内に配置されている。図5は、円筒形の凹部50内に配置されたヒートパッケージ32をより明確に示している。凹部60はヒートパッケージ32から気化した薬剤が隣接するヒートパッケージに蒸着するのを防ぐことができる。隣接するヒートパッケージ上への気化した薬剤の堆積を防ぐことは、デバイスがそれぞれ作動して生成された薬剤エアロゾルの量を一定に保つのに有用で、および/または高純度のエアロゾルを生成しやすくすることができる。
【0025】
[035]図4はまた、2つの部材112を備える係合アーム53の構造をより明確に示している。2つの部材112は、係合アーム53の軸に垂直で、ねじりばね41、43のストライカアーム(図示せず)を、ヒートパッケージ32の衝撃イグナイタの端部110に押したり引いたりするために用いられる。衝撃イグナイタの端部110の方にストライカアームを押したり引いたりすることによって、ストライカアームは、次の非作動ヒートパッケージ32に自由に衝撃を与える。図4はまた、凹部60内に配置され、末端部12の内部に向かって延びるロッド113も示している。ロッド113は、デバイスを最初に使用する前に、予め付勢された位置でストライカアームを保持する機械的な係止部として働く。例えば、使用者が図4で示されたデバイスを最初に使用する場合、ストライカアームは、予め付勢された状態でロッド113上に置かれている。最初の使用中、使用者がプッシュアウト・スイッチ20を押し出すと、係合アーム53がストライカアームをロッド113からはずして押したり引いたりし、それによってストライカアームが、第1のヒートパッケージ32の衝撃イグナイタ110に衝撃を与えるようになる。第1のヒートパッケージ32は、ここで、予め付勢された状態でストライカアームを保持する。2回目に使用する間は、使用者がプッシュアウト・スイッチ20を押すと、係合アーム53は第1のヒートパッケージ32をストライカアームからはずして押したり引いたりし、それによってストライカアームが、第2のヒートパッケージ32の衝撃イグナイタ110に衝撃を与えるようになる。全てのヒートパッケージ32が作動するまでこの手順を繰り返すことができる。
【0026】
[036]図2および図4に示したデバイスを使用して、薬剤などの物質のエアロゾルを患者に投与できる。各ヒートパッケージ32は物質または薬剤の薄膜で被膜することができる。患者がマウスピース14により吸入すると、デバイスを通る空気流が発生され、同時にプッシュアウト・スイッチ20を作動させると、ヒートパッケージ32が物質または薬剤を気化させる。物質または薬剤は、その後、空気流内で凝結して物質または薬剤のエアロゾルを生成し、患者に吸入される。
【0027】
[037]特定の実施形態においては、多回投与薬剤送達デバイスの全体の組立て長さは、約3インチ〜6インチの範囲にあり、特定の実施形態では、約4インチ〜約4.6インチの範囲にある。
【0028】
[038]図2に示されているとおり、末端部12には、単一ユニットを形成するよう固定接続された基底部35と取付け部37とが含まれている。基底部35は1つ以上の空気吸入口16と、衝撃イグナイタを作動させるために衝撃力を与えるよう構成されたレボルバ機構38と、手動で作動するプッシュアウト・スイッチ20とを含む。空気吸入口16は、末端部12の一端で1つ以上の孔を含んでいる。レボルバ機構38は、第1ねじりばね41と第2ねじりばね43とが取り付けられた軸を含む。ねじりばね41、43は、レボルバ機構38回りに巻きつけられ、軸38に固定された第1端部45と第2端部またはストライカアーム47とがヒートパッケージ32の衝撃イグナイタの方へ延び、衝撃を与えることができる。手動スライド49と圧縮ばね51と係合アーム53とを含んだプッシュアウト・スイッチ20も末端部12に組み込まれている。ばね51は、スライド20を押込み位置、つまり非作動位置に保持している。非作動位置では、ストライカアーム47はヒートパッケージ32または静止ピン(図示せず)に対向して置かれている。スライド20を押し出すことによって、係合アームがヒートパッケージ32をはずれてストライカアーム47を引っ張り、それによってストライカアーム47は次のヒートパッケージの衝撃イグナイタに自由に衝撃を与える。
【0029】
[039]取付け部37は、複数のヒートパッケージ取付け孔61と複数の空気孔63と回転軸38が挿入されるアクセス孔65とを有する取付け板55を含んでいる。ヒートパッケージ32は、ヒートパッケージ取付け孔61に挿入され、締まり嵌め、プレス嵌め、接着組成物または他のそのような方法で所定位置に保持することができる。ヒートパッケージ32は回転軸38の回りに間隔を空けて位置する。空気孔63が各ヒートパッケージ32の周りに位置し、これにより、十分な空気流が各ヒートパッケージを通って、ヒートパッケージの表面から気化する物質または薬剤を生成できる。
【0030】
[040]回転軸38の第1端部67が基底部35の空気吸入端部に固定して取り付けられる。デバイス10を組み立てるために、回転軸38をアクセス孔65に挿入することによって、取付け部37が基底部35上に配置される。その後、マウスピース14が取付け部37の上に挿入され、所定位置に固定される。
【0031】
[041]ねじりばねとプッシュアウト・スイッチを用いた機械機構以外の作動機構を用いて、衝撃イグナイタを作動するよう機械的な衝撃を与えることもできる。このような作動機構には、機械機構、電気機構および吸入機構が含まれている。他の機械機構の例として、これに限定されないが、圧縮ばねを解放して衝撃イグナイタに衝撃を与えることと、本体を解放または推進して衝撃イグナイタに衝撃を与えることと、レバーを移動して予め付勢されたばねを解放することと、デバイスの一部を回転させてばねに応力を加えて解放することにより衝撃イグナイタに衝撃を与えることとが含まれている。特定の薬剤送達デバイスで採用される機構に関係なく、作動機構は、衝撃イグナイタの外壁を変形し、開始剤組成物を急激に燃焼させるのに十分な衝撃力を発生する。
【0032】
[042]特定の実施形態においては、薬剤送達デバイスは、単一のヒートパッケージを備える単一投与デバイスである。特定の実施形態では、1つ以上の衝撃点火ヒートパッケージを備える部分と、作動機構を備える部分とが使用者によって分離可能であり、1つ以上のヒートパッケージが作動すると、薬剤が被膜された未使用のヒートパッケージを備える新しい部分が挿入されて、作動機構を備える部分が再利用される。特定の実施形態においては、1つ以上のヒートパッケージと作動機構とは、使用者によって分離可能なように設計されていない単一のユニットとして設けることができる。このような実施形態においては、1回以上の投与が行われた後、デバイス全体を廃棄することができる。したがって、特定の実施形態においては、衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイスは、低価格で使い捨ての部品および材料を含む。
【0033】
[043]図6A〜図6Fは、衝撃イグナイタを備えるヒートパッケージの実施形態を示している。図6A〜図6Fに示されたヒートパッケージ70は、第1端部72と第2端部74とを有する封止された管またはシリンダ76を実質的に備える。携帯型医療器具で使用するために、ヒートパッケージは点火しても封止されたままであり、燃料が燃焼することによって生成するどのような内部圧力にも耐えることが重要である。図6Aおよび図6C〜図6Fにおいて、ヒートパッケージ70の第1端部72は、管状の本体部76と一体化、または管状の本体部76として同一部品から形成されている。図6Bにおいては、第1端部72は別個の部分で、第2端部74は別個の部分である。部分72、74は開始剤および燃料組成物の燃焼中に生成された圧力および温度に耐えることが可能な任意の適切な手段(例えば、はんだ付け、溶接、圧着、接着固定、機械結合など)によって接合部分78で封止される。第2端部74も同様の手段によって封止され、特定の実施形態においては、熱導電性または非導電性である挿入体を含むことができる。
【0034】
[044]図6Aは、窪み86、87で所定位置に保持された同軸に位置したアンビル80を有するヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル80によってヒートパッケージ70の長さが実質的に延びている。開始剤組成物82の薄い被膜がアンビル80の一端に置かれ、本明細書で開示された金属酸化/還元燃料組成物の被膜84がアンビル80の他端に置かれている。窪み87によって、アンビル80と管70の内壁との間に空間ができ、開始剤組成物82の急激な燃焼中に生成された火花が燃料組成物84に衝突して点火することができる。アンビル80は、より多くの量の燃料を保持しやすくするため、および/または組み立てやすくするための形態物を含むことができる。例えば、燃料84が配置されるアンビル80の端部にはフィンまたはのこぎり形状を設けて、表面面積を増加させることができる。
【0035】
[045]図6Bは、ヒートパッケージ70の長さよりも短く延びたアンビル90を有するヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル90は、アンビル90の一端に向かって窪み94で管92内に同軸で保持されている。アンビル90と管92の内壁との間の空間内の障害物を最小限または除去することによって、開始剤組成物82から放射した火花が燃料98に衝突点火しやすくすることができる。図6Bに示されたヒートパッケージ70を形成する第1および第2部分72、74は接合部分78で封止される。燃料98が第1部分72内に置かれている。アンビル90が短いことによって、第1部分72の全領域を燃料98で充填できる。
【0036】
[046]図6Cでは、アンビル100が燃料を含んでいる。開始剤組成物82がアンビル100の表面の一部に置かれている。開始剤組成物82を作動させることによってアンビル100を点火させることができる。端部102は、ヒートパッケージ70を取り付けやすくするために、熱絶縁性の材料でできている。ヒートパッケージのほぼ全長に延びる燃料を使用することによって、有効な加熱面積をより大きくすることができる。
【0037】
[047]図6Dは、アンビル106の前方端部104が、例えば、燃料101をシリンダ端部72内に装填するよう用いることができる、高ピッチで薄肉のオーガで形成されたヒートパッケージ70の一実施形態を示している。このような設計は、ヒートパッケージを製造しやすくするのに有益である。
【0038】
[048]図6Eは、アンビル90が管76の全長の一部まで延び、管76の内部の大部分が燃料99で充填されたヒートパッケージ70の一実施形態を示している。アンビル90は窪み94によって所定位置に保持されている。開始剤組成物82がアンビル90上に置かれている。管76の大部分を燃料99で充填することによって、ヒートパッケージ70によって発生する熱量を増加できる。図6Fで示されているとおり、特定の実施形態においては、燃料99は管76の内壁で層として配置でき、中心領域97は空隙である。燃料99の層によって、管76を均一に加熱、および/または開始剤組成物82から放出される火花によって点火可能なより大きな表面面積を露出することによってより急速に最高温度に達しやすくすることができる。中心領域97の空隙を設けることにより、放出された気体が蓄積してヒートパッケージ70の内部圧力を低減することができる。
【0039】
[049]図3は、上述したとおり、ヒートパッケージの別の実施形態を示している。ヒートパッケージ32は、衝撃イグナイタを備える第1部分40と、燃料50を備える、第1部分40よりも大きな断面寸法を有する第2部分39とを含む。衝撃イグナイタは、変形可能な管42内に同軸で配置されたアンビル44を含む。変形可能な管42の一端45は封止され、対向端部57は部分39に接合されている。アンビル44は窪み46で所定位置に保持されている。アンビル44の一部は、開始剤組成物48で被膜されている。第2部分39は、第1部分40よりも大きな肉厚と断面寸法を有したエンクロージャを備える。このような設計は、燃料の量を増やし、物質が置かれる外面面積を増やし、気体が膨張し、それによってエンクロージャ内の圧力を低減させる容積を設け、燃焼率を上げるためにより大きな燃料表面積を設け、および/または第1部分40の構造強度を増すのに有益である。図3において、燃料50は、第2部分39の内壁に沿って配置された薄い層として示されている。他の燃料構造も可能である。例えば、燃料は水平な壁に沿ってのみ配置することができ、内部領域52を完全にまたは部分的に充填することができ、および/または領域52全体に配置された繊維マトリックス内に配置されることができる。燃料50の形状、構造および成分は特定の用途の必要に応じて決定でき、一部は所望の熱プロファイルによって決定することができる。ヒートパッケージ32はさらに、第2部分39の外面に配置された物質の薄膜56を含む。
【0040】
[050]図3および図6A〜6Fに示されるように、ヒートパッケージの寸法は任意の適切な寸法を有することができるが、少なくとも一部は、加熱されるよう意図された表面積および最高所望温度によって決定される。衝撃作動ヒートパッケージは、薬剤を気化して吸入用の凝結エアロゾルを生成するのに使用できるような、短い熱衝撃を発生できる小型の加熱要素として特に有用である。このような用途においては、ヒートパッケージの長さは0.4インチ〜2インチの範囲にあり、直径は0.05インチ〜0.2インチの範囲にある。特定の実施形態においては、アンビルはコイル状であり、その場合、アンビルの長さは、燃料を点火するのに必要なコイルの厚さと長さに応じて変化させることができる。アンビルの最適な寸法、密閉されたシリンダの寸法および特定の用途および/または使用のためにその中に置かれる燃料の量は、標準的な最適化手順によって決定できる。
【0041】
[051]内臓ヒートパッケージは、エンクロージャに十分な力で機械的衝撃を与えることによって衝撃点火させて、エンクロージャの一部をアンビルの方へ向けさせることができ、その場合、開始剤組成物は管とアンビルとの間で圧縮される。圧縮力によって開始剤組成物が急激に燃焼し始める。急激な燃焼によって生成された火花は燃料組成物の方へ向けられて衝撃を与え、それによって燃料組成物を自己金属酸化反応で点火させて急激な強い熱衝撃を発生する。
【0042】
[052]衝撃作動開始剤組成物は、当分野では周知である。衝撃点火システムで使用するための開始剤組成物は、衝撃が与えられると急激に燃焼して強い火花を生成し、金属酸化還元燃料などの燃料を簡単に確実に点火することができる。例えばヒートパッケージで用いる場合など、密閉されたシステムで用いる場合には、開始剤組成物は爆発的に点火せず、また過剰な量の気体を生成しないことが有益である。特定の開始剤組成物が、2004年5月20日付で出願された、発明の名称「Stable Initiator Compositions and Igniters」の米国特許出願第10/851,018号に開示されており、その全内容は参照として本明細書に組み入れられる。開始剤組成物は、少なくとも1つの金属還元剤と、少なくとも1つの酸化剤と随意に少なくとも1つの不活性な結合剤とを含む。
【0043】
[053]特定の実施形態では、金属還元剤には、これらに限定されないが、モリブデン、マグネシウム、リン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ボロン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、スズ、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、シリコンを挙げることができる。特定の実施形態においては、金属還元剤には、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンを挙げることができる。特定の実施形態においては、金属還元剤は2つ以上に金属還元剤を含むことができる。
【0044】
[054]特定の実施形態においては、酸化剤は、酸素、酸素ベースの気体および/または固体の酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤は、金属含有酸化剤を含むことができる。金属含有酸化剤の例として、これに限定されないが、過塩素酸遷移金属酸化物が挙げられる。過酸素酸塩には、これらに限定されないが、過塩素酸カリウム(KClO4)、塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などのアルカリ金属またはアルカリ土塁金属の過塩素酸塩を含むことができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤として作用する遷移金属酸化物には、これらに限定されないが、MoO3などのモリブデンの酸化物、Fe2O3などの酸化鉄、V2O5などのバナジウムの酸化物、CrO3やCr2O3などのクロムの酸化物、MnO2などのマンガンの酸化物、Co3O4などのコバルトの酸化物、Ag2Oなどの銀の酸化物、CuOなどの銅の酸化物、WO3などのタングステンの酸化物、MgOなどのマグネシウムの酸化物、Nb2O5などのニオブの酸化物を挙げることができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤は、2つ以上の金属含有酸化剤を含むことができる。
【0045】
[055]特定の実施形態では、金属還元剤および金属含有酸化剤は粉末形態である。用語の「粉末」は、自己増殖点火を維持するのに適切な大きさおよび/または表面面積を表す、粉末、粒子、小球、薄片およびその他の微粒子を意味する。例えば、特定の実施形態では、粉末は、平均直径が0.01μm〜200μmの範囲の粒子を含むことができる。
【0046】
[056]特定の実施形態においては、開始剤組成物内の酸化剤の量は、燃料組成物に対する共融点または共融点近くの酸化剤のモル量と関係する。特定の実施形態では、酸化剤は主要成分で、他の実施形態では金属還元剤が主要成分であってもよい。また、当分野で公知のとおり、金属および金属含有酸化剤の粒径は、燃焼速度を決定するよう変化し、燃焼を速くするには小さい粒径が選択される(例えばPCTのWO2004/01396参照)。したがって、高速燃焼が望まれるいくつかの実施形態では、直径がナノメータスケールの粒子を用いることができる。
【0047】
[057]特定の実施形態においては、金属還元剤の量は、開始剤組成物の全乾燥質量に対して25重量%〜75重量%の範囲にできる。特定の実施形態においては、金属含有還元剤の量は、開始剤組成物の全乾燥質量に対して25重量%〜75重量%の範囲にできる。
【0048】
[058]特定の実施形態においては、開始剤組成物は、本明細書で記載した金属など、少なくとも1つの金属と、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土塁金属の塩素酸塩または過塩素酸塩、または金属酸化物など少なくとも1つの金属含有酸化物と、本明細書で記載した他のものとを含むことができる。
【0049】
[059]特定の実施形態においては、開始剤組成物は、アルミニウム、ジルコニウム、ボロンから選択される少なくとも1つの金属還元剤を含むことができる。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、三酸化モリブデン、酸化銅、三酸化タングステン、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウムから選択される少なくとも1つの酸化剤を含むことができる。
【0050】
[060]特定の実施形態においては、アルミニウムを金属還元剤として用いることができる。アルミニウムはナノ粒子など種々の大きさで得ることができ、保護酸化層を形成するため、乾燥状態で市場において入手できる。
【0051】
[061]特定の実施形態においては、開始剤組成物は2つ以上の金属還元剤を含むことができる。このような組成物では、少なくとも1つの還元剤はボロンであってもよい。ボロンを含んだ開始剤組成物の例が米国特許第4,484,960号および第5,672,843号に開示されている。ボロンは点火が生じる速度を高めることができ、それによって開始剤組成物が発生する熱量を増加できる。
【0052】
[062]特定の実施形態においては、金属含有酸化剤と、少なくとも1つの金属還元剤と、少なくとも1つの結合剤および/または、ゲル化剤および/または結合剤などの添加物の混合物を含んだ開始剤組成物を用いることによって、燃料を確実に、再現可能に、制御して点火しやすくすることができる。開始剤組成物は、本明細書に開示しているとおり、金属酸化/還元燃料を含んだ反応剤と同一または同様の反応物を含むことができる。
【0053】
[063]特定の実施形態においては、開始剤組成物は1つ以上の添加物を含むことにより、例えば処理を容易にし、機械的完全性を向上し、および/または燃焼およびスパーク発生特性を決定することができる。不活性の添加物により、開始剤組成物の点火および燃焼中に反応しないか、または最小限しか反応しなくなる。これは、開始剤組成物が、圧力を最小限にすることが有用な密閉システム内で使用される場合に有利である。添加物は無機物質であり、例えば、結合剤、接着剤、ゲル化剤、チキソトロープおよび/または表面活性剤として働くことができる。ゲル化剤の例として、これらに限定されないが、ラポナイト、モンモリロナイト、Cloisiteなどの粘土と、R−Si(OR)nおよびM(OR)nの式(ここで、nは3または4、Mはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ボロンまたは他の金属)で表されるような金属アルコキシドと、遷移金属水酸化物または酸化物を基にするコロイド粒子が含まれている。結合剤の例として、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウムなど可溶性ケイ酸塩、金属アルコキシド、無機ポリアニオン、無機ポリカチオン、アルミナまたはシリカ系ゾルなどの無機ゾルゲル物質が含まれている。他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、グアガム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、フッ化炭素ゴム(Viton)および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。特定の実施形態においては、開始剤組成物は2つ以上の添加物を含むことができる。
【0054】
[064]特定の実施形態においては、添加物は、開始剤組成物の特定の処理、点火および/または燃焼特性を決定するのに有用である。特定の実施形態においては、開始剤組成物の粒径を選択して、当分野で公知のとおり、例えば米国特許第5,739,460号で開示されているように、点火および燃焼速度特性に合わせることができる。
【0055】
[065]特定の実施形態においては、1つ以上の添加剤は不活性であることが有用である。エンクロージャ内で封止されると、開始剤組成物の発熱酸化還元反応は、封止された組成物によって、圧力を上昇させることができる。例えば携帯用医療器具といった特定の用途においては、エンクロージャ内で生成された高温から生じる発熱反応や他の化学反応の高温材料や生成物を含むことが有益となる。
【0056】
[066]医療用途に用いられるのに特に適した特定の実施形態においては、例えばニトロセルロースなどの添加剤は、米国運輸省が分類する爆発物ではないことが望ましい。特定の実施形態においては、添加物は、バイトン、ラポナイトまたはガラスフィルタであってもよい。これらの物質は、開始剤組成物の成分に結合し、開始剤組成物に機械的安定性を与えることができる。
【0057】
[067]金属還元剤、金属含有酸化剤および/または添加物および/または他の適切な水溶性または有機可溶性結合剤を含んだ開始剤組成物の成分は、適切な物理的または機械的方法によって混合でき、有用なレベルの分散および/または均一性を達成することができる。取扱い、使用および/または利用を容易にするために、開始剤組成物は、有機または水溶性溶媒の液体懸濁液またはスラリーとして調製される。
【0058】
[068]金属含有酸化剤に対する金属還元剤の割合を選択することにより、適切な燃焼およびスパーク生成特性を決定することができる。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、燃料を点火するのに十分なエネルギーを有する火花の発生を最大限にするよう配合可能である。開始剤組成物から放出された火花は、酸化/還元燃料などの燃料の表面に衝突し、それによって燃料を自己発熱酸化/還元反応で点火させる。特定の実施形態においては、開始剤組成物によって放出されるエネルギーの全体量は0.25J〜8.5Jの範囲にある。特定の実施形態においては、厚さが20μm〜100μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒〜30ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。特定の実施形態では、厚さが40μm〜100μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒から20ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。特定の実施形態においては、厚さが40μm〜80μmの開始剤組成物の固体膜は、5ミリ秒から10ミリ秒の範囲の爆燃時間で燃焼することができる。
【0059】
[069]開始剤組成物の例として、10%のZrと22.5%のBと67.5%のKClO3、49%のZrと49%のMoO3と2%のニトロセルロース、33.9%のAlと55.4%のMoO3と8.9%のBと1.8%のニトロセルロース、26.5%のAlと51.5%のMoO3と7.8%のBと14.2%のバイトン、47.6%のZrと47.6%のMoO3と4.8%のラポナイト(なお全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である)で構成される組成物が含まれる。
【0060】
[070]高火花発生および低ガス生成開始剤組成物の例として、アルミニウムとモリブデンと三酸化物とボロンとバイトンの混合物が挙げられる。特定の実施形態においては、これらの組成物は、20〜30%のアルミニウムと、40〜55%の三酸化モリブデンと、6〜15%のボロンと、5〜20%のバイトンとの混合物に結合されてもよい。なお、全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である。特定の実施形態においては、開始剤組成物は、26〜27%のアルミニウムと、51〜52%の三酸化モリブデンと、7〜8%のボロンと、14〜15%のバイトンを含んでいる。なお、全ての百分率は組成物の全重量に対する重量百分率である。特定の実施形態においては、アルミニウム、ボロンおよび三酸化モリブデンはナノスケールの粒子形状である。特定の実施形態においては、バイトンはバイトンA500である。
【0061】
[071]特定の実施形態においては、衝撃作動開始剤組成物には、例えば、米国特許第6,666,936号に開示されているように、中心の金属コアと、そのコアを取り囲む金属酸化層とフルオロアルキシラン表面層とを含んだ粉末状の金属含有酸化剤および粉末状の還元剤から構成される組成物を含むことができる。
【0062】
[072]典型的には、開始剤組成物は、アンビルを被膜するために有機または水溶性溶媒中の液体懸濁液として調製され、通常は、可溶性結合剤が、被膜をアンビルへ接着させるために含まれている。
【0063】
[073]開始剤組成物の被膜は、種々の既知の方法でアンビルに塗布することができる。例えば、アンビルは開始剤組成物のスラリーに浸漬され、次いで空気中で乾燥または加熱して液体を除去し、先に記載した所望の特性を有する固体接着塗膜を形成する。特定の実施形態においては、スラリーはアンビルに噴射またはスピンコーティングすることができ、その後固体塗膜を生成するように処理される。アンビルの上の開始剤組成物の塗膜の厚さは、アンビルがエンクロージャ内に配置されると、開始剤組成物が約千分の数インチ、例えば0.004インチ、エンクロージャの内壁からわずかに離れるような厚さにするべきである。
【0064】
[074]燃料は、例えば、金属含有酸化剤など金属還元剤や酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、燃料は、ZrとMoO3、ZrとFe2O3、AlとMoO3、またはAlとFe2O3の混合物を含むことができる。特定の実施形態においては、金属還元剤の量は60重量%〜90重量%の範囲にし、金属含有酸化剤の量は40重量%〜10重量%の範囲にすることができる。
【0065】
[075]燃料を形成するのに有用な金属還元剤の例として、これらに限定されないが、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ボロン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、スズ、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、シリコンが含まれる。特定の実施形態においては、金属還元剤は、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンから選択される。特定の実施形態においては、金属還元剤は2つ以上に金属還元剤を含むことができる。
【0066】
[076]特定の実施形態においては、燃料を形成するための酸化剤は、酸素、酸素ベースの気体および/または固体の酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤は、金属含有酸化剤を含むことができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤は、これに限定されないが、過塩素酸遷移金属酸化物が含まれる。過酸素酸塩には、これらに限定されないが、過塩素酸カリウム(KClO4)、塩素酸カリウム(KClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などのアルカリ金属またはアルカリ土塁金属の過塩素酸塩を含むことができる。特定の実施形態においては、酸化剤として働く遷移金属酸化物には、これらに限定されないが、MoO3などのモリブデンの酸化物、Fe2O3などの酸化鉄、V2O5などのバナジウムの酸化物、CrO3やCr2O3などのクロムの酸化物、MnO2などのマンガンの酸化物、Co3O4などのコバルトの酸化物、Ag2Oなどの銀の酸化物、CuOなどの銅の酸化物、WO3などのタングステンの酸化物、MgOなどのマグネシウムの酸化物、Nb2O5などのニオブの酸化物が含まれる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤には2つ以上の金属含有酸化剤を含むことができる。
【0067】
[077]特定の実施形態においては、固体燃料を形成する金属還元剤は、ジルコニウムおよびアルミニウムから選択し、金属含有酸化剤はMoO3およびFe2O3から選択することができる。
【0068】
[078]金属含有酸化剤に対する金属還元剤の割合を選択することにより、固体燃料の点火温度と燃焼特性を決定できる。例示的な化学燃料には、75重量%のジルコニウムと25重量%のMoO3を含むことができる。特定の実施形態においては、金属還元剤の量は、固体燃料の全乾燥重量の60重量%〜90重量%の範囲にすることができる。特定の実施形態においては、金属含有酸化剤の量は固体燃料の全乾燥重量の10重量%〜40重量%の範囲にすることができる。
【0069】
[079]特定の実施形態においては、燃料が1つ以上の添加物を含むことにより、例えば処理を容易にし、および/または続く燃料の点火中に加熱部の熱的および一時的な特性を決定することができる。添加物は無機材料であり、例えば、結合剤、接着剤、ゲル化剤、チキソトロープおよび/または表面活性剤として作用する。ゲル化剤の例として、これらに限定されないが、ラポナイト、モンモリロナイト、Cloisiteなどの粘土と、R−Si(OR)nおよびM(OR)nの式(なお、nは3または4、Mはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ボロンまたは他の金属)で表されるような金属アルコキシドと、遷移金属水酸化物または酸化物に基づいたコロイド粒子を含む。結合剤の例として、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウムなど可溶性ケイ酸塩、金属アルコキシド、無機ポリアニオン、無機ポリカチオン、アルミナまたはシリカ系ゾルなどの無機ゾルゲル物質を含む。他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、グアガム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、フッ化炭素ゴム(バイトン)および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。
【0070】
[080]他の有用な添加物は、ガラスビーズ、珪藻土、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、および、結合剤として作用する他のポリマーを含む。特定の実施形態においては、燃料は2つ以上の添加物を含むことができる。金属、酸化剤および/または添加物および/または他の適切な水溶性または有機可溶性結合剤を含んだ燃料の成分は、適切な物理的または機械的方法によって混合でき、有用なレベルの分散および/または均一性を達成することができる。特定の実施形態においては、燃料はガス抜きすることができる。
【0071】
[081]加熱ユニット内燃料は、任意の適切な形状であってもよく、任意の適切な寸法を有することもできる。燃料は、シリンダ、ペレットまたは管などの固体形状に生成し、ヒートパッケージに挿入することができる。燃料は、スラリーまたは懸濁液としてヒートパッケージ内に堆積することができ、次いで、燃料は乾燥されて溶媒を除去する。燃料のスラリーまたは懸濁液は、ヒートパッケージの内側面に燃料を堆積するために乾燥している間に回転することができる。特定の実施形態においては、燃料は、例えば、アンビル上の開始剤組成物を被膜するための、本明細書で開示した方法を含む適切な方法によってアンビルなどの支持物上に被膜することができる。
【0072】
[082]特定の実施形態においては、アンビルは、例えば従来技術で公知のとおり、PYROFUZEなど可燃性の金属合金または金属/金属酸化物成分から形成できる。アンビルを形成するのに適した燃料成分の例が、米国特許第3,503,814号、第3,377,955号、およびPCT出願公開公報第WO93/14044号に開示され、各関連部分が本明細書に参照として組み入れられる。
【0073】
[083]特定の実施形態においては、燃料はヒートパッケージに詰め込まれる可鍛性の繊維マトリックスによって支持することができる。金属還元剤および金属含有酸化剤を含んだ燃料は繊維材料と混合されて、可鍛性の繊維燃料マトリックスを形成することができる。繊維燃料マトリックスは、製造を容易にする便利な燃料形態であって、燃料速度をより速くする。繊維燃料マトリックスは、無機繊維マトリックスによって支持された粉末状の金属酸化剤および金属含有還元剤を含む紙状の組成物である。無機繊維マトリックスは、セラミック繊維および/またはガラス繊維など無機繊維から形成できる。繊維燃料を形成するために、金属還元剤、金属含有酸化剤および無機繊維材料が溶媒中でともに混合され、例えば、製紙デバイスを用いてある形状、つまりシートに形成されて、乾燥される。繊維燃料は、製造および/または燃焼を容易にするマットまたは他の形状に形成することもできる。
【0074】
[084]特定の実施形態においては、物質は、衝撃作動ヒートパッケージの外側面上に置くことができる。作動すると、燃料の燃焼で発生される熱によって、最小限の劣化で、ヒートパッケージの外側面に置かれた物質の薄膜を蒸発させることができる、急速で強い熱衝撃が与えられる。物質の薄膜は、任意の適切な方法によってヒートパッケージの外側に塗布され、ある程度は、物質の物理的特性と塗布される層の最終厚さに左右される。特定の実施形態においては、ヒートパッケージに物質を塗布する方法は、これらに限定されないが、ブラシ研磨、浸漬被覆、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ローラー塗り、インクジェット印刷、気相堆積法、スピンコーティングなどが含まれる。特定の実施形態においては、物質は、少なくとも1つの溶媒を含む溶液として調製され、ヒートパッケージの外側面に塗布できる。特定の実施形態においては、溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールなど揮発性溶媒を含むことができる。特定の実施形態においては、物質は、溶解物としてヒートパッケージに塗布することができる。特定の実施形態においては、物質は、剥離剤を有する膜に付与され、ヒートパッケージに移される。常温で液体の物質については、増粘剤がその物質と混合されて、本明細書で開示した方法を含む任意の適切な方法によって支持体に塗布できる物質を含む粘性成分を生成することができる。特定の実施形態においては、物質の層は1回の塗布で形成するか、または繰り返し塗布して形成し、層の最終厚さを厚くすることができる。
【0075】
[085]特定の実施形態においては、ヒートパッケージ上に置かれた物質は、少なくとも1つの生理学的活性化合物または薬剤の治療上の有効量を含むことができる。治療上の有効量とは、治療が必要な患者または使用者に投与されると治療を行うのに十分な量のことを指す。あらゆる病気、症状または疾患の治療または処置とは、病気、症状または疾患の進行を停止または改善すること、病気、症状または疾患に陥る危険性を低減すること、病気、症状もしくは疾患、または病気、症状もしくは疾患の臨床症状のうち少なくとも1つの進行を軽減すること、または、病気、症状もしくは疾患、または病気もしくは疾患の臨床症状のうち少なくとも1つが進行する危険性を軽減することを指す。処置または治療とは、病気、症状または疾患を、物理的(例えば、識別可能な兆候の安定化)もしくは生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、または両方で抑制すること、および患者が識別可能でない可能性のある少なくとも1つの物理的パラメータを抑制することも指す。さらに、処理または治療とは、病気、症状または疾患にさらされるかまたはかかりやすい可能性がある患者において、たとえ、患者が、その病気、症状または疾患の兆候を経験または表していないとしても、病気、症状もしくは疾患、またはそれらのうち少なくとも1つの兆候の発現を遅らせることを指す。
【0076】
[086]特定の実施形態においては、支持体上に置かれる物質の量は100マイクログラム未満であり、特定の実施形態においては、250マイクログラム未満であり、特定の実施形態においては、1,000マイクログラム未満であり、別の実施形態においては、3,000マイクログラム未満である。特定の実施形態においてはヒートパッケージに塗布される薄膜の厚さは0.01μm〜20μmの範囲にあり、特定の実施形態においては、0.5μm〜10μmの範囲にある。
【0077】
[087]特定の実施形態においては、物質は医薬品を含むことができる。特定の実施形態においては、物質は治療化合物または非治療化合物を含むことができる。非治療化合物とは、レクリエーション、実験または前臨床目的で用いることができる化合物のことである。使用可能な薬品の分類には、これらに限定されないが、麻酔薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、解毒剤、制吐薬、抗ヒスタミン剤、抗感染症薬、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、抗精神病薬、抗不安薬、食欲刺激薬および抑制剤、血液修飾剤、心臓血管作動薬、中枢神経系刺激薬、アルツハイマー病治療用薬、嚢胞性線維症治療、診断、栄養補助食品用薬、勃起不全用薬、胃腸薬、ホルモン、アルコール依存症の治療用薬、中毒の治療用薬、免疫抑制薬、肥満細胞安定剤、片頭痛製剤、乗り物酔い製剤、多発性硬化症治療用薬、筋肉弛緩剤、非ステロイド系抗炎症薬、オピオイド、他の鎮痛剤および興奮剤、点眼薬、骨粗しょう症薬、プロスタグランジン、呼吸器系薬、鎮静剤および睡眠薬、皮膚および粘膜剤、禁煙補助薬、トゥレットシンドローム薬、尿路薬、目眩薬を含む。
【0078】
[088]熱劣化の程度および原因は、少なくとも一部は、特定の化合物に依存するが、特定の実施形態においては、活性物質を気化および/または昇華させるのに十分な温度まで物質を急速に加熱することによって熱劣化を最小限にすることができる。特定の実施形態においては、物質は、500ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで、特定の実施形態においては、250ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで、特定の実施形態においては、100ミリ秒未満で少なくとも250℃の温度まで加熱することができる。
【0079】
[089]特定の実施形態においては、物質の層を急速に気化すると、物質の熱分解を最小限して、高純度の物質を示す凝縮エアロゾルを生成できる。例えば、特定の実施形態においては、10%未満の物質が熱蒸発中に分解され、特定の実施形態においては、5%未満の物質が熱蒸発中に分解される。
【0080】
[090]高純度のエアロゾルを生成するために加熱面から蒸発される薬剤の例には、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムを含む。これらの薬剤は、薬剤の薄膜を250℃〜550℃の範囲の温度まで100ミリ秒未満で加熱すると、厚さが0.1μm〜20μmの範囲で、被膜質量が0.2mg〜40mgの範囲の薄膜から気化され、薬剤の純度が90%超、多くの場合99%超のエアロゾルを生成できる。
【0081】
[091]ニコチンは、以下の構造を有した遊離塩基と塩形態の両方で存在する複素環状化合物である。
【化1】
【0082】
[092]25℃では、ニコチンは、無色から淡黄色の揮発性液体である。ニコチンの融点は−79℃で、沸点は247℃で、蒸気圧は0.0425mmHgである。液体の性質によって、安定した膜の形成が妨げられ、高蒸気圧によって保存有効期間中に蒸発してしまう可能性がある。保存有効期間中のニコチンの気化および劣化を防ぐ種々の方法(例えば、インクジェットデバイスによる容器からの供給、シクロデキストリン錯体としてのニコチンの化学的樹脂封止、ブリスターパック内でのニコチン収容)が検討されてきたが、これらの実施が、低コストの製造に変更であることは実証されていない。
【0083】
[093]揮発性化合物、特にニコチンは、化合物の金属配位錯体を形成することによって安定化できる。図7は、揮発性化合物を安定化するための無機金属錯体の使用の概念的な概要を示している。ニコチンなどの揮発性化合物は金属または金属含有錯体との錯体を形成して、化合物の金属配位錯体を形成することができる。金属配位錯体には、揮発性化合物に加えて、他の配位子を含むことができる。揮発性化合物を含む金属配位錯体は、標準温度、圧力および環境の条件で安定化できる。金属配位錯体は、溶媒中で懸架または溶解することができ、懸濁液または溶液は物質に塗布または堆積される。溶媒を除去した後、化合物を含む金属配位錯体の薄膜が物質上に残る。錯体が形成されると、化合物は、標準条件下では気化または劣化しないように安定化するが、加熱すると選択的に気化できる。
【0084】
[094]揮発性有機化合物の薄膜を形成するのに適した金属および金属含有化合物は、(i)標準温度、圧力および環境条件で安定した組成物を形成することができ、(ii)金属含有化合物を劣化させず、識別できるほどには気化させず、または反応させない温度で揮発性有機化合物を選択的に放出することができ、(iii)少なくとも1つの有機溶媒で溶解可能な揮発性有機化合物と錯体を形成することができ、(iv)有機化合物を識別できるほどには劣化させずに揮発性有機化合物を放出することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体は少なくとも1つの金属塩を含む。特定の実施形態においては、少なくとも1つの金属塩は、Zn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩およびそれらの混合物から選択される。特定の実施形態においては、金属塩は臭化亜鉛(ZrBr2)を含む。
【0085】
[095]金属配位錯体を形成するのに特に適した有機化合物には、1つ以上の窒素および/または硫黄原子を有する複素環系を含む化合物、窒素族を有する化合物、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基などの酸性基を有する化合物、およびスルホニル基など硫黄族を有する化合物を含む。
【0086】
[096]特定の実施形態においては、薬剤などの安定した揮発性有機化合物は、100℃〜600℃の範囲の温度まで加熱されると金属配位錯体から選択的に気化することができ、特定の実施形態においては、100℃〜500℃の範囲の温度まで加熱して選択的に気化することができ、他の実施形態においては、100℃〜400℃の範囲の温度まで加熱して選択的に気化させることができる。本明細書で使用する用語の「選択的に気化する」とは、有機化合物を錯体から気化することができるが、金属および/または金属含有化合物は、気化されず、揮発性生成物の形成を低下させず、および/または有機化合物と反応せずに、金属含有化合物から得られる組成物を含んだ揮発性反応生成物を形成することを指す。用語の「選択的に気化する」の使用には、いくつかの金属含有化合物、分解生成物および/または反応生成物を、有機錯体を「選択的に気化する」温度で気化することに比べて、高い可能性を含む。しかし、金属含有化合物、分解生成物および/または反応生成物の量は、高純度の有機化合物エアロゾルが生成されるほどには識別きるものではなく、いずれの金属含有化合物および/またはその誘導体の量もFDAガイドライン内にある。
【0087】
[097]薬剤などの化合物を含んだ高収率、高純度のエアロゾルの形成は、薄膜を急速に気化することによって生成を容易にすることができる。したがって、金属配位錯体は、薄膜などの基板上に塗布または堆積可能であることが望ましい。薄膜は、溶剤相、気相またはそれらの組み合わせから塗布または堆積することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体の薄膜は、溶媒の溶液の懸濁液から塗布することができる。溶媒は、例えば真空および温度下で堆積した薄膜から除去可能な揮発性溶媒であってもよい。溶媒に懸濁または溶解した金属配位錯体は、スプレーコーティング、ローラーコーティング、浸漬被覆、スピンコーティングなどの任意の適切な方法によって塗布できる。金属配位錯体はまたは気相から基板上に堆積することができる。
【0088】
[098]臭化亜鉛(ZnBr2)やニコチンの金属配位錯体を調製して評価した。ZrBr2は、融点が394℃、沸点が650℃、熱分解温度が697℃の灰白色の固体である。ZnBr2は常温および常圧下で安定している。(ニコチン)2−ZnBr2金属塩錯体は、本明細書で開示されているとおりに、調製した。(ニコチン)2−ZnBr2金属塩錯体は、融点が155℃の固体である。
【0089】
[099]ニコチンエアロゾルの発生量は、(ニコチン)2−ZnBr2錯体の薄膜を蒸発させることによって生成されたエアロゾル内のニコチン量を測定することによって決定した。厚さが2μmまたは6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜被膜は、本明細書で開示されているとおりに、調製した。2μmと6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を含んだニコチンの量は、それぞれ、約1.17mgと約3.5mgであった。(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜が堆積された金属箔基板は、約20L/分の空気流内に配置した。膜は、電流を金属箔基板に印加することによって、約200ミリ秒未満内、最高温度300℃、350℃、400℃または500℃まで加熱した。(ニコチン)2−ZnBr2膜を選択的に蒸発している間に生成されたエアロゾルは、シュウ酸で被膜されたフィルタ上で収集し、収集されたニコチンの量は、高圧液体クロマトグラフィーによって決定した。エアロゾル内の百分率のニコチン発生量は、HPLCを金属箔基板上に堆積した薄膜内のニコチンの量で割算して決定される、フィルタ上で収集されたニコチン量とした。
【0090】
[0100]図8に示されるように、気化された厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜からのエアロゾル内でのニコチンの平均発生量は、300℃〜400℃の温度範囲で約60±7%であった。厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を蒸発させて得られるエアロゾル内のニコチンの平均発生量は、金属箔が最高温度300℃まで加熱されると、約51±2%で、金属箔を最高温度400℃まで加熱すると、約73±1%まで増加した。
【0091】
[0101](ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を蒸発させることにより生成されたエアロゾル内のニコチン純度も測定した。エアロゾル内のニコチンの百分率純度は、ニコチンを表す曲線の下の面積を、HPLCで分離された他の全ての成分を表す曲線の下の面積と比較することによって決定した。図9で示されているとおり、厚さが2μmと6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を、最高温度300℃で蒸発させることで得られたエアロゾルの平均ニコチン純度は、それぞれ約99.5%と約99.99%であった。(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜を最高温度300℃より高温で加熱すると、エアロゾルのニコチン純度は低減した。また、所定の蒸発温度に対しては、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2の薄膜から生じるニコチンエアロゾルの純度は、厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2の固体膜から生じるニコチンエアロゾルの純度よりも高かった。
【0092】
[0102]平均質量空気動力学的直径が1から5の範囲のエアロゾルは主に肺内に堆積するが、揮発性化合物のエアロゾルは吸入中に気化する。その後、再度気化した化合物が口腔または喉に堆積して、苛立ちおよび/または不快な味となる。急速蒸発を用いて高密度のエアロゾルボーラスを形成することによって、揮発性化合物から形成されたエアロゾルの再蒸発が最小限になるかまたは防止される。さらに、金属配位錯体内に含まれる適切な添加物を用いることによって、再蒸発を最小限にすることができる。例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの化合物が用いることができる。不快な味を隠すために、メントールなどの化合物を錯体に含むことができる。
【0093】
[0103]金属配位錯体を使用して、本明細書で開示されているとおり、薬剤送達デバイスで使用するためのニコチンなどの揮発性化合物を安定化することができる。薬剤を含んだ金属配位錯体は、衝撃作動ヒートパッケージの外面に薄膜として塗布することができる。例えば、薬剤を含んだ金属配位錯体は、図2の構成要素30または図4の構成要素111に塗布することができる。衝撃イグナイタの作動によって、燃料が点火され、ヒートパッケージの外側面と、薬剤を含んだ金属配位錯体の薄膜とが加熱される。その後、薬剤は、金属配位錯体から選択的に気化することができる。薬剤および/または他の揮発性化合物を含んだ金属配位錯体の薄膜は他の薬剤送達デバイスで用いることもできる。例えば、特定の実施形態では、金属配位錯体の薄膜は、米国出願第10/861,554号に開示されているように、抵抗加熱金属箔がその上に蒸着された薄い固体膜を加熱するのに用いられる薬剤送達デバイスで使用することができる。特定の実施形態においては、金属配位錯体の薄膜は、電気的な抵抗加熱要素が火花を発生する開始剤組成物を点火するのに用いられる薬剤送達デバイスで使用することができ、このデバイスは、米国出願第10/850,895号に開示されているように、作動すると、金属酸化/還元燃料を点火する。
【0094】
[0104]特定の実施形態においては、薬剤の金属配位錯体の薄膜は、テープのスプールやリール上に置かれる薬剤の多回投与量を供給するために用いることができる。例えば、テープは、複数の薬剤供給部を備え、各薬剤供給部は、薬剤から構成される金属配位錯体を含んだ薄膜が配置されるヒートパッケージを備える。各ヒートパッケージには、例えば抵抗加熱によって、または衝撃で点火可能な開始剤組成物と、金属配位錯体から薬剤を選択的に気化させるのに十分な急速高温の熱衝撃を与えることが可能な燃料とが含まれている。各ヒートパッケージはテープの長さに沿って間隔が空けられている。使用中、1つ以上のヒートパッケージは、空気路内に配置され、空気が空気路を通って流れている間、ヒートパッケージは金属配位錯体から薬剤を選択的に気化させるよう作動可能である。気化した薬剤は空気流内で凝結して、薬剤を含んだエアロゾルを形成する。薬剤はその後、使用者によって吸入される。テープは、開始剤組成物と燃料と薬剤を含んだ薄膜とが配置される領域を画成する複数の薄膜を含むことができる。複数の層のうちいくつかの層はさらに、放出ガスが蓄積して圧力上昇を最小限にするための充填されていない容積を提供できる。複数の層は、機械的な支持物を備えることができ、ヒートパッケージが達する温度で目に見えて化学的に劣化しない任意の材料から形成することができる。特定の実施形態においては、層は、金属または、ポリイミド、フッ素重合体、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイトもしくはその他の高温抵抗ポリマーなどのポリマーを含むことができる。特定の実施形態においては、テープは、薬剤または薬剤を含んだ金属配位錯体を物理的および/または環境的に保護するよう構成された上下層をさらに含むことができる。上および/または下の保護層は、例えば、金属箔やポリマーを含むことができ、または、金属箔とポリマーを含んだ多層構造を含むことができる。特定の実施形態においては、保護層は、酸素、水分および/または有害ガスに対して低い透過性を有することができる。保護層の全てまたは一部を使用する前に除去して、薬剤および燃料を露出させることができる。開始剤組成物と燃料組成物は、例えば、本明細書で開示するいずれをも含むことができる。薄膜ヒートパッケージと、テープ、ディスクまたは他のほぼ平坦構造の形状をした薬剤供給部とは、物質の多回投与量を提供する、小型で量産可能な方法を提供することができる。低コストで多回投与量を提供することは、例えば、ニコチン渇望症の治療および/または禁煙を達成するためにニコチンを投与するようなある特定の治療に特に有益である。
【0095】
[0105]図10は、テープのスプールまたはリールを用いた、複数回使用のために設計された薬剤送達デバイス内で用いるように構成された薬剤供給ユニットの特定の実施形態を示している。図10に示されているとおり、スプールまたはリール400形状のテープ406は、複数の薬剤供給ユニット402、404を備える。複数の薬剤供給ユニット402、404は、熱で気化される薬剤または薬剤/錯体の薄膜が置かれた加熱ユニットを備えることができる。薄膜を被膜するのは、例えば金属線など微細メッシュ407で、加熱ユニット上で薬剤および/または薬剤錯体を維持または保持する。錯体は、厚い膜には特に接着困難であり、メッシュを用いることによって、テープまたはリールの表面から薬剤の錯体がはがれ落ちるか、分離するのを防ぐことができる。メッシュは、テープ406の全長を覆う層、または薬剤の膜の各領域を覆う個別のメッシュユニットであってもよい。複数の薬剤供給ユニット402、404のそれぞれは、本明細書で記載した形態物と同じ形態物を含むことができる。特定の実施形態においては、テープ406は複数の加熱ユニットを備えることができる。各加熱ユニットは、固体燃料と、固体燃料に隣接する開始剤組成物とを含むことができ、開始剤組成物に衝突すると、開始剤組成物に火花を発生させ、燃料を点火し、その結果薬剤を気化することができる。テープは、リール機構(図示せず)を用いてデバイス内を進むことができ、ばねや他の機構を用いて、衝突によって開始剤組成物を作動させることができる。
【0096】
[0106]金属配位錯体から薬剤を選択的に気化することによって生成された薬剤エアロゾルは、薬剤の肺への投与のため、ならび、病気および症状の治療のために用いることができる。したがって、ニコチンエアロゾルを使用して、ニコチンの使用をやめようとするヒトが経験するニコチン渇望症を治療し、および禁煙を達成することができる。使用者の肺に供給されたニコチンエアロゾルは、薬物動態プロファイルと喫煙から生じるニコチンの血中濃度とをシミュレートすると期待される。したがって、ニコチン渇望を低減することを目的とした効果的な治療および禁煙が、本明細書に開示のデバイスおよび方法によって生成されるニコチンエアロゾルを用いて開発できると期待される。
【実施例】
【0097】
[0107]本発明の実施形態は、以下の実施例を参照してさらに明確にすることができる。以下の実施例では、本発明の化合物の調製を詳細に説明している。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく、材料および方法の両方に対して数多くの変更形態が実現可能であうことが明らかである。
【0098】
[実施例1]
ニコチン金属配位錯体の固体薄膜の調製
[0108]1Lのアセトンに20gのシュウ酸を溶解することによって、2%のシュウ酸溶液が調製された。ガラス繊維フィルタ(ワットマン紙)が、約10秒間、2%のシュウ酸溶液にフィルタを浸漬することによってシュウ酸で被膜された。シュウ酸で被膜されたフィルタが空気乾燥された。
【0099】
[0109]最初に、1Mの溶液を形成するようエタノールに固体のZnBr2を溶解することによって、(ニコチン)2−ZnBr2(s)錯体が調製された。ニコチンをエタノールで懸濁することによって、2Mのニコチン溶液が調製された。ZnBr2とニコチン溶液が合わせ混合された。得られた固体錯体が、真空濾過を用いてメタノールで繰り返し洗浄され、次に乾燥された。ニコチン−ZnBr2錯体におけるZnBr2に対するニコチンのモル比は2:1であった。
【0100】
[0110]金属箔を被膜するために、(ニコチン)2−ZnBr2錯体がクロロホルムに溶解された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体は、厚さが0.005インチのステンレス箔上で手塗りされた。被膜は、真空下において約1時間25℃で乾燥された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、使用前に、真空下で保管され、光から保護された。
【0101】
[0111](ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、300℃、350℃および400℃の温度まで被膜を加熱するのに十分な金属箔に電流を印加することで蒸発させられた。20L/分の空気流で被膜を蒸発することによって形成されたエアロゾルが、シュウ酸で被膜したフィルタ上でエアロゾルを収集することによって分析された。収集されたエアロゾルは、0.1%のTFAを含む5mLの水溶液を用いてフィルタから抽出された。抽出物の純度は、図9で示されているように、高圧液体クロマトグラフィーを用いて決定された。単一のXTerraRP18、4.6×150mmカラムで、pH2の1−スルホン酸オクタンナトリウム塩濃縮液を1アンプル備える75%の水相の過塩素酸溶液と、25%の有機相のアセトニトリルとを含んだ溶離液を有するVarian HPLCシステムが用いられた。HPLCは20分間、一定作動条件下で実行された。
【0102】
[実施例2]
ニコチンZnBr2錯体からのニコチン気化によるニコチンアエロゾルの粒径の決定
[0112]1Lのアセトン(JTBaker)に20gのシュウ酸(Aldrich)を溶解して、2%のシュウ酸溶液が調製された。GF50、O81mmのガラス繊維フィルタ(Schleicher&Schull)が、約10秒間2%のシュウ酸溶液にフィルタを浸漬することによって、シュウ酸で被膜された。シュウ酸で被膜されたフィルタは、一晩空気乾燥された。
【0103】
[0113](ニコチン)2−ZnBr2錯体が、まず、1Mの溶液を形成するよう、エタノールに固体のZnBr2を溶解することによって調製された。2Mのニコチン溶液が、エタノールにニコチンを懸濁することによって調製された。ZnBr2とニコチン溶液が合わせて混合された。得られた固体錯体は、真空濾過を用いてメタノールで繰り返し洗浄され、次いで乾燥された。ニコチン−ZnBr2錯体におけるZnBr2に対するニコチンのモル比は2:1であった。
【0104】
[0114]金属箔を被膜するため、(ニコチン)2−ZnBr2錯体がクロロホルムに溶解された。2つの異なった被膜厚みの(ニコチン)2−ZnBr2錯体がステンレス鋼上で調製された。クロロホルム中に169.4mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液と、クロロホルム中に338.8mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液とが得られた。これらの溶液を形成中およびその後もずっと露光は最小限にされた。各溶液に対する(ニコチン)2−ZnBr2錯体は、10μLのHamilton注射器を用いて、厚さが0.005インチのステンレス箔上に手塗りされた。169.4mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液のうち5.9μLが、1.27cm×2.3cmのステンレス鋼の領域の両側に被膜された。これは、約1mgのニコチンを含有した、膜厚が2μmの被膜に対応する。同様に、338.8mg/mLの(ニコチン)2−ZnBr2錯体溶液のうち8.8μLが、1.27cm×2.3cmのステンレス鋼の領域の両側に被膜された。これは、約3.5mgのニコチンを含有した、膜厚が6μmの被膜に対応する。これらの被膜は、真空下において約1時間25℃で乾燥された。(ニコチン)2−ZnBr2錯体被膜が、使用前に、少なくとも30分間真空内で保管され、光から保護された。
【0105】
[0115](ニコチン)2−ZnBr2錯体の被膜は、被膜を350℃の温度まで加熱するのに十分な金属箔に13.0Vの電流を印加することによって蒸発された。28.3L/分の空気流内で被膜を蒸発させることで形成されたエアロゾルが、8段のAndersonインパクタを用いて、シュウ酸で被膜されたフィルタ上でエアロゾルを収集して分析された。厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体から、ニコチンエアロゾルのMMADは、2.00であると決定された。同様に、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体から、ニコチンエアロゾルのMMADは、1.79であると決定された。蒸発後、フィルタは、5mLの0.1%トリフルオロ酢酸/DIH2Oで抽出され、HPLCで分析された。厚さが2μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体からのニコチンエアロゾルの純度は、97%超と決定された。一方、厚さが6μmの(ニコチン)2−ZnBr2錯体からのニコチンエアロゾルの純度は、97%超と決定された。
【0106】
[実施例3]
衝撃ヒートパッケージに対する開始剤組成物の調製
[0116]粒径が20μm未満のチタン620重量部と、100重量部の塩素酸カリウムと、180重量部の赤リンと、100重量部の塩素酸ナトリウムと、620重量部の水とを、2%のポリビニルアルコール結合剤と合わせることによって、開始剤組成物が形成された。
【0107】
[実施例4]
衝撃点火ヒートパッケージ
[0117]1/4インチ断面の薄いステンレス鋼ワイヤアンビルを備える点火アセンブリが開始剤組成物で浸漬被膜され、約1時間およそ40〜50℃で乾燥された。乾燥した被膜ワイヤアンビルは、厚さが0.003インチ、または厚さが0.005インチで、長さが約1.65インチ、外径が0.058インチの、壁部が軟らかいアルミニウム管に挿入された。管はワイヤアンビルを所定位置で保持するよう圧着され、エポキシで封止された。
【0108】
[0118]アルミニウム管の他端には、燃料が配置された。ガラス繊維を結合剤として用いて粉末状の燃料を加熱するマットを形成するために、1.3グラムのガラス繊維濾紙が取られ、約50mLの水に急速な攪拌で加えられた。ガラス繊維が水中で分離し懸濁されるようになった後、6gのMoO3が加えられた。これに続いて3.8gのZr(3μm)が加えられた。30分間室温で攪拌した後、混合物が標準的な濾紙で濾過され、得られたマットが高真空で60℃で乾燥された。急速に燃焼する、厚さが0.070インチのマットが形成された。アンビルを収容していないヒートパッケージの端部に燃料を手で詰めた後、壁部が軟らかいアルミニウム管の燃料端部が封止された。
【0109】
[0119]他の実施形態においては、燃料は、外径が0.094インチの長さ0.39インチのアルミニウムスリーブに詰められ、外径が0.058で長さが約1.18インチで、一端で封止され、乾燥した被膜ワイヤアンビルを挿入した、壁部が軟らかいアルミニウム管(厚さ0.003インチまたは厚さ0.0005インチ)に挿入された。燃料が被膜されたアルミニウムスリーブは、壁部が軟らかいアルミニウム管まで、圧着によって封止された。
【0110】
[0120]ヒートパッケージが薬剤で被膜され、ばねの機械的な作動またはばねの呼吸動作を用いて衝撃で点火された。
【0111】
[0121]いくつかの実施形態においては、ラポナイトを含む燃料混合物が用いられた。76.16%のZr:19.04%のMoO3:4.8%のラポナイト(Laponite)(登録商標)RDSを含む固体燃料被膜を調製するために、以下の手順が用いられた。
【0112】
[0122]湿ったジルコニウム(Zr)を調製するために、DI水(ドイツのChemetall)で得られたままの状態のZr懸濁液が、30分間ロトミキサーで攪拌された。10〜40mLの湿ったZrが50mLの遠心分離管に分配され、30分間、3,200rpmで遠心分離された(Sorvall6200RT)。DI水が除去されて、湿ったZrペレットが残った。
【0113】
[0123]15%のラポナイト(登録商標)RDS溶液を調製するために、85グラムのDI水がビーカーに加えられた。攪拌中、15グラムのラポナイト(登録商標)RDS(テキサス州、ゴンザレスのSouthern Clay Products)が加えられ、懸濁液が30分間攪拌された。
【0114】
[0124]まず、遠心分離管から先に調製されたように、湿ったZrペレットを除去することによって、反応スラリーが調製され、ビーカー内に置かれた。湿ったZrペレットの重量を測ると、乾燥したZrの重量は、以下の式から決定された。乾燥Zr(g)=0.8234(湿ったZr(g))−0.1059
【0115】
[0125]その後、MoO3に対するZrの割合が80:20となるよう、三酸化モリブデン量が求められ(例えば、MoO3=乾燥Zr(g)/4)、適切な量のMoO3粉末(ニューヨーク州のAccumet)が、湿ったZrが入ったビーカーに加えられて、湿ったZr:MoO3スラリーが生成された。乾燥成分が、76.16%のZr:19.04%のMoO3:4.80%のラポナイト(登録商標)RDSの最終的な重量百分率比を得るためのラポナイト(登録商標)RDSの量が決定された。40%のDI水を含んだ反応スラリーを得るための過剰水が、湿ったZrとMoO3スラリーに加えられた。反応スラリーは、分散ヘッドがS25N−8GのIKA Ultra−Turrax混合モータを用いて5分間混合された(設定4)。その後、先に決定された15%のラポナイト(登録商標)RDSの量が、反応スラリーに加えられて、IKA Ultra−Turraxミキサーを用いてさらに5分間混合された。反応スラリーが注射器に移されて、被膜する前に少なくとも30分間保管された。
【0116】
[0126]その後、Zr:MoO3:ラポナイト(登録商標)RDSの反応スラリーがヒートパッケージ内に堆積され、乾燥可能となった。
【0117】
[実施例5]
衝撃点火ヒートパッケージからの気化を用いたアルプラゾラムエアロゾルの生成
[0127]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、ジクロロメタン中のアルプラゾラム溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。アルプラゾラムを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が1.58μmで0.125mgのアルプラゾラムを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0118】
[0128]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって形成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。フィルタは、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。アルプラゾラムについては、溶離剤A(水中0.1%のトリフルオロ酢酸)と溶離剤B(アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(24分)で、1mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は96.8%で、回復収率が100%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0119】
[実施例6]
衝撃点火ヒートパッケージからの蒸発を用いたプラミペキソールエアロゾルの生成
[0129]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、メタノール中のプラミペキソール溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。プラミペキソールを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が6.33μmで0.500mgのプラミペキソールを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0120】
[0130]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって生成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。濾過は、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。プラミペキソールについては、溶離剤A(水中10mMのNH4HCO3)と溶離剤B(メタノール中10mMのNH4HCO3)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(29分)で、0.9mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は98.8%で、回復収率が95.6%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0121】
[実施例7]
衝撃点火ヒートパッケージからの蒸発を用いたシクレソニドエアロゾルの生成
[0131]組み立てられたヒートパッケージ上に、注射器を用いて、クロロホルム中のシクレソニド溶液を手で被膜して、燃料を含むヒートパッケージの端部に塗布溶液を塗布した(ヒートパッケージの全長は1.18インチ、ヒートパッケージの薬剤塗布長さは約0.39インチであった)。シクレソニドを含む2〜3マイクロリットルの溶液が、膜厚が2.53μmで0.200mgのシクレソニドを被膜するために塗布された。被膜されたヒートパッケージは、ヒュームフード内で少なくとも30分間乾燥された。最後の微量の溶媒が、蒸発実験の前に、30分間真空内で除去された。
【0122】
[0132]ヒートパッケージを機械的に作動させた後、20L/分の空気流内で被膜を800℃超の温度で蒸発させることによって生成されたエアロゾルは、エアロゾルを含む気流を、Delrinフィルタ(25mm)ホルダー(Pall Life Sciences)内に設けられたPTFE薄膜フィルタ(直径25mm、膜孔のサイズ1μm、Pall Life Sciences)に通すことによって収集された。濾過は、1mlのアセトニトリル(HPLCグレード)で抽出された。濾過抽出が、C−18逆相カラム(日本、東京のShiseido Fine Chemicalsの4.6mmID×150mm長さ、5μm充填の「Capcell Pak UG120」)を用いて高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。シクレソニドについては、溶離剤A(水中の0.1%トリフルオロ酢酸)と溶離剤B(アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸)の二相移動相が、5〜95%のB線形勾配(29分)で、0.9mL/分の流量で用いられた。検出はフォトダイオードアレイ検出器を用いて、200〜400nmで実施された。クロマトグラムからピーク面積を測定することによって純度が算出された。得られたエアロゾルの純度は85.6%と決定された。エアロゾルの純度を上げるために、蒸発に低い温度を用いることができる。
【0123】
[実施例8]
衝撃点火を用いる燃料としてのPyrofuzeの発火
[0133]ヒートパッケージに燃料を詰め込む以外に、燃料としてワイヤを使用可能であることが決定された。
【0124】
[0134]各種の太さのPyrofuzeワイヤはSigmund Cohn.から入手できた。0.005インチ太さのワイヤは一端をU字型の形状とし、空隙を衝撃イグナイタで充填した。衝撃を与えるとワイヤが点火した。
【0125】
[0135]当業者であれば、本明細書に記載された本発明の開示の明細および実施を考慮することにより、本発明の開示の他の実施形態は理解される。明細書および実施例は、単に例示であって、本発明の開示の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】特定の実施形態による薬剤送達デバイスの等角図である。
【図2】特定の実施形態による衝撃点火ヒートパッケージを組み込んだ薬剤送達デバイスの断面図である。
【図3】特定の実施形態によるヒートパッケージの断面図である。
【図4】特定の実施形態による、各ヒートパッケージが凹部内に配置された、薬剤送達デバイスの断面図である。
【図5】凹部内に配置されたヒートパッケージの別の図である。
【図6A】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6B】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6C】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6D】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図6E】ヒートパッケージの追加の実施形態を示している。
【図7】金属配位錯体を使用することにより、揮発性化合物を安定化させ、次いで、金属配位錯体の固体薄膜から有機化合物を選択的に気化する、概念的な概要を示している。
【図8】選択的に気化された、(ニコチン)2−ZnBr2金属配位錯体の固体薄膜のニコチンエアロゾルの発生率を示すチャートである。
【図9】選択的に気化された、(ニコチン)2−ZnBr2金属配位錯体の固体薄膜のニコチンエアロゾルの純度を示すチャートである。
【図10】薬剤送達デバイスで使用するリール状多回投与ヒートパッケージの図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構と、
を備える薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記衝撃作動ヒートパッケージが、
機械的衝撃によって変形可能な領域を備えるエンクロージャと、
前記エンクロージャ内に配置されたアンビルと、
前記エンクロージャ内に配置されており、エンクロージャの前記変形可能な領域が変形すると点火されるよう構成された衝撃開始剤組成物と、
前記エンクロージャ内に配置されており、前記開始剤組成物によって点火されるよう構成された燃料と、
を備える、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記薬剤が薄膜として前記ヒートパッケージの表面上に配置されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記薄膜の厚さが0.01μm〜20μmの範囲にある、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
前記薄膜の厚さが0.5μm〜10μmの範囲にある、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
少なくとも250℃に加熱されると、前記薬剤が気化する、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記薬剤が、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムのうちの少なくとも1つから選択されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
前記薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、および呼吸ステロイドからなる群から選択されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
前記呼吸ステロイドが、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項9に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
衝撃を与えるように構成された前記機構が、機械的に、電気的に、または吸入によって作動される、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
衝撃を与える前記電気機構が、
前記空気路に結合された空気流検出アクチュエータと、
ヒートパッケージを作動するように構成された、前記空気流検出アクチュエータに結合された機構と、
を備え、
前記ヒートパッケージが、マウスピースによる呼吸によって発生する前記空気路内の空気流によって作動される、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
衝撃を与えるように構成された呼吸機構が、
前記空気路に結合された圧力感知ダイヤフラムと、
前記ハウジング内に配置されており、解放されると前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された、予め付勢されたばねと、
前記ダイヤフラムおよびハウジングに回転可能に結合されたレバーであって、回転すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備え、
前記ヒートパッケージが、前記マウスピースによる呼吸によって発生する前記空気路内の空気流によって作動される、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体と、
前記形状体を推進させるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して、前記形状体を推進させて前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項16】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が回転可能なスリーブを備え、このスリーブが回転するときにばねに応力を与えてばねを解放する、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項18】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項19】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Al、およびそれらの混合物から選択されている、請求項19に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項21】
前記固体薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項22】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項21に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項23】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの有機溶剤に溶解可能である、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項24】
前記金属配位錯体が100℃〜500℃の範囲の温度に加熱された前記薬剤を含むとき、前記薬剤が前記金属配位錯体から選択的に気化される、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項26】
前記ヒートパッケージが作動されると、前記薬剤を含むエアロゾルが空気路体に生成される、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項27】
エアロゾルを形成する前記薬剤の前記蒸気純度が少なくとも95%である、請求項26に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項28】
前記空気路内を通る空気流が10Lm/分〜200Lm/分の範囲である、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項29】
前記デバイスが複数の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項30】
前記複数の衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれが凹部内に配置されている、請求項30に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項31】
前記デバイスがさらに、非作動ヒートパッケージに対する作動を進行するように構成された機構を備える、請求項30に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項32】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
非作動ヒートパッケージに対する作動を進行するように構成された機械的機構と、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機械的作動機構と、
を備える薬剤送達デバイス。
【請求項33】
前記排気口が約0.01in2〜1.5in2の断面積を有する、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項34】
前記空気路内を通る空気流が10Lm/分〜200Lm/分の範囲である、請求項33に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項35】
少なくとも5個の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項36】
少なくとも10個の複数の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項35に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項37】
前記複数の衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれが凹部内に配置されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項38】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートエレメントに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項39】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体と、
前記形状体を推進させるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して、前記形状体を推進させて前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項40】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が、前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項41】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が回転可能なスリーブを備え、このスリーブが回転するときにばねに応力を与えてばねを解放する、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項42】
前記薬剤が薄膜として前記衝撃作動ヒートパッケージの表面上に配置されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項43】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項42に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項44】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項43に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項45】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩、およびそれらの混合物から選択されている、請求項44に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項46】
前記薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項42に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項47】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項46に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項48】
前記少なくとも1つの薬剤が、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムのうちの少なくとも1つから選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項49】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、および呼吸ステロイドからなる群から選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項50】
前記呼吸ステロイドが、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項49に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項51】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項52】
薬剤を患者に送達する方法であって、
薬剤送達デバイスを設けるステップを備え、
前記薬剤送達デバイスが、
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構と、
を備え、
さらに、
前記マウスピースと通して吸入するステップと、
衝撃を与えるように構成された機構を作動するステップと、
を備える方法であって、
前記衝撃作動ヒートパッケージが少なくとも1つの薬剤を気化して、患者が吸入する空気路内に薬剤を含んだエアロゾルを生成する、方法。
【請求項53】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置されるように構成された複数の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれの上に配置される少なくともに1つの薬剤を含む薄膜と、
前記空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された少なくとも1つのばねに結合された、手動操作スイッチと、
を備え、
作動されると、前記薬剤を気化して、前記空気路内に前記薬剤を含むエアロゾルを生成する、薬剤エアロゾル送達デバイス。
【請求項54】
ニコチンを含む凝結エアロゾルを投与することによりニコチン渇望症を治療し、禁煙を実現する方法。
【請求項55】
前記ニコチンエアロゾルが、衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイスによって提供される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ニコチンエアロゾルが、ニコチンの金属配位錯体を含む薄膜からニコチンを選択的に気化することにより生成される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
金属配位錯体を含む薄膜であって、この金属配位錯体が、加熱されると前記金属配位錯体から選択的に気化する揮発性化合物を含む、薄膜。
【請求項58】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項57に記載の薄膜。
【請求項59】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項58に記載の薄膜。
【請求項60】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩、およびそれらの混合物から選択されている、請求項59に記載の薄膜。
【請求項61】
前記薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されている、請求項58に記載の薄膜。
【請求項62】
前記薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項58に記載の薄膜。
【請求項63】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項62に記載の薄膜。
【請求項64】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの有機溶剤に溶解可能である、請求項58に記載の薄膜。
【請求項65】
前記金属配位錯体が100℃〜500℃の範囲の温度に加熱された前記薬剤を含むとき、前記薬剤が前記金属配位錯体から選択的に気化される、請求項58に記載の薄膜。
【請求項66】
前記薄膜の厚さが0.01μm〜20μmの範囲にある、請求項58に記載の薄膜。
【請求項67】
前記薄膜の厚さが0.5μm〜10μmの範囲にある、請求項58に記載の薄膜。
【請求項1】
少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構と、
を備える薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記衝撃作動ヒートパッケージが、
機械的衝撃によって変形可能な領域を備えるエンクロージャと、
前記エンクロージャ内に配置されたアンビルと、
前記エンクロージャ内に配置されており、エンクロージャの前記変形可能な領域が変形すると点火されるよう構成された衝撃開始剤組成物と、
前記エンクロージャ内に配置されており、前記開始剤組成物によって点火されるよう構成された燃料と、
を備える、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記薬剤が薄膜として前記ヒートパッケージの表面上に配置されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記薄膜の厚さが0.01μm〜20μmの範囲にある、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
前記薄膜の厚さが0.5μm〜10μmの範囲にある、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
少なくとも250℃に加熱されると、前記薬剤が気化する、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記薬剤が、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムのうちの少なくとも1つから選択されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
前記薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、および呼吸ステロイドからなる群から選択されている、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
前記呼吸ステロイドが、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項9に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
衝撃を与えるように構成された前記機構が、機械的に、電気的に、または吸入によって作動される、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
衝撃を与える前記電気機構が、
前記空気路に結合された空気流検出アクチュエータと、
ヒートパッケージを作動するように構成された、前記空気流検出アクチュエータに結合された機構と、
を備え、
前記ヒートパッケージが、マウスピースによる呼吸によって発生する前記空気路内の空気流によって作動される、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
衝撃を与えるように構成された呼吸機構が、
前記空気路に結合された圧力感知ダイヤフラムと、
前記ハウジング内に配置されており、解放されると前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された、予め付勢されたばねと、
前記ダイヤフラムおよびハウジングに回転可能に結合されたレバーであって、回転すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備え、
前記ヒートパッケージが、前記マウスピースによる呼吸によって発生する前記空気路内の空気流によって作動される、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体と、
前記形状体を推進させるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して、前記形状体を推進させて前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項16】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体を備える、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が回転可能なスリーブを備え、このスリーブが回転するときにばねに応力を与えてばねを解放する、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項18】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項19】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Al、およびそれらの混合物から選択されている、請求項19に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項21】
前記固体薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項22】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項21に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項23】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの有機溶剤に溶解可能である、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項24】
前記金属配位錯体が100℃〜500℃の範囲の温度に加熱された前記薬剤を含むとき、前記薬剤が前記金属配位錯体から選択的に気化される、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項26】
前記ヒートパッケージが作動されると、前記薬剤を含むエアロゾルが空気路体に生成される、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項27】
エアロゾルを形成する前記薬剤の前記蒸気純度が少なくとも95%である、請求項26に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項28】
前記空気路内を通る空気流が10Lm/分〜200Lm/分の範囲である、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項29】
前記デバイスが複数の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項30】
前記複数の衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれが凹部内に配置されている、請求項30に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項31】
前記デバイスがさらに、非作動ヒートパッケージに対する作動を進行するように構成された機構を備える、請求項30に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項32】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
非作動ヒートパッケージに対する作動を進行するように構成された機械的機構と、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機械的作動機構と、
を備える薬剤送達デバイス。
【請求項33】
前記排気口が約0.01in2〜1.5in2の断面積を有する、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項34】
前記空気路内を通る空気流が10Lm/分〜200Lm/分の範囲である、請求項33に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項35】
少なくとも5個の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項36】
少なくとも10個の複数の衝撃作動ヒートパッケージを備える、請求項35に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項37】
前記複数の衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれが凹部内に配置されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項38】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して前記衝撃作動ヒートエレメントに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項39】
衝撃を与えるように構成された機械的作動機構が、
手動操作スイッチと、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体と、
前記形状体を推進させるように構成された予め付勢されたばねと、
前記スイッチに結合されたレバーであって、作動すると前記ばねを解放して、前記形状体を推進させて前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与える、レバーと、
を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項40】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が、前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された形状体を備える、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項41】
衝撃を与えるように構成された前記機械的作動機構が回転可能なスリーブを備え、このスリーブが回転するときにばねに応力を与えてばねを解放する、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項42】
前記薬剤が薄膜として前記衝撃作動ヒートパッケージの表面上に配置されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項43】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項42に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項44】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項43に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項45】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩、およびそれらの混合物から選択されている、請求項44に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項46】
前記薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項42に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項47】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項46に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項48】
前記少なくとも1つの薬剤が、アルブテロール、アルプラゾラム、アポモルヒネHCl、アリピプラゾール、アトロピン、アザタジン、ベンズトロピン、ブロマゼパム、ブロムフェニラミン、ブデソニド、ブメタニド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビノキサミン、クロルジアゼポキシド、クロルフェニラミン、シクレソニド、クレマスチン、クロニジン、コルヒチン、シプロヘプタジン、ジアゼパム、ドネペジル、エレトリプタン、エスタゾラム、エストラジオール、フェンタニル、フルマゼニル、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルフェナジン、プロピオン酸フルチカゾン、フロバトリプタン、ガランタミン、グラニセトロン、ヒドロモルフォン、ヒオスシアミン、イブチリド、ケトチフェン、ロペラミド、メラトニン、メタプロテレノール、メタドン、ミダゾラム、ナラトリプタン、ニコチン、オキシブチニン、オキシコドン、オキシモルホン、ペルゴリド、パーフェナジン、ピンドロール、プラミペキソール、プロクロルペラジン、リザトリプタン、ロピニロール、スコポラミン、セレギリン、タダラフィル、テルブタリン、テストステロン、テトラハイドロカナビノール、トルテロジン、トリアムシノロンアセトニド、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ザレプロン、ゾルミトリプタン、ゾルピデムのうちの少なくとも1つから選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項49】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、および呼吸ステロイドからなる群から選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項50】
前記呼吸ステロイドが、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項49に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項51】
前記少なくとも1つの薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドから選択されている、請求項32に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項52】
薬剤を患者に送達する方法であって、
薬剤送達デバイスを設けるステップを備え、
前記薬剤送達デバイスが、
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置された少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも2つ以上の衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された機構と、
を備え、
さらに、
前記マウスピースと通して吸入するステップと、
衝撃を与えるように構成された機構を作動するステップと、
を備える方法であって、
前記衝撃作動ヒートパッケージが少なくとも1つの薬剤を気化して、患者が吸入する空気路内に薬剤を含んだエアロゾルを生成する、方法。
【請求項53】
少なくとも1つの空気吸入口と少なくとも1つの排気口を有するマウスピースとを備える空気路を画成するハウジングと、
前記空気路内に配置されるように構成された複数の衝撃作動ヒートパッケージと、
前記少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージ上に配置された少なくとも1つの薬剤と、
前記衝撃作動ヒートパッケージのそれぞれの上に配置される少なくともに1つの薬剤を含む薄膜と、
前記空気路内に配置された少なくとも1つの衝撃作動ヒートパッケージに衝撃を与えるように構成された少なくとも1つのばねに結合された、手動操作スイッチと、
を備え、
作動されると、前記薬剤を気化して、前記空気路内に前記薬剤を含むエアロゾルを生成する、薬剤エアロゾル送達デバイス。
【請求項54】
ニコチンを含む凝結エアロゾルを投与することによりニコチン渇望症を治療し、禁煙を実現する方法。
【請求項55】
前記ニコチンエアロゾルが、衝撃作動ヒートパッケージを備える薬剤送達デバイスによって提供される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ニコチンエアロゾルが、ニコチンの金属配位錯体を含む薄膜からニコチンを選択的に気化することにより生成される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
金属配位錯体を含む薄膜であって、この金属配位錯体が、加熱されると前記金属配位錯体から選択的に気化する揮発性化合物を含む、薄膜。
【請求項58】
前記薄膜が薬剤の金属配位錯体を含む、請求項57に記載の薄膜。
【請求項59】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの金属塩と少なくとも1つの薬剤とを含む、請求項58に記載の薄膜。
【請求項60】
前記少なくとも1つの金属塩がZn、Cu、Fe、Co、Ni、Alの塩、およびそれらの混合物から選択されている、請求項59に記載の薄膜。
【請求項61】
前記薬剤が、ニコチン、プラミペキソール、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択されている、請求項58に記載の薄膜。
【請求項62】
前記薄膜が臭化亜鉛とニコチンの金属配位錯体を含む、請求項58に記載の薄膜。
【請求項63】
臭化亜鉛とニコチンとの割合が約1:2である、請求項62に記載の薄膜。
【請求項64】
前記金属配位錯体が少なくとも1つの有機溶剤に溶解可能である、請求項58に記載の薄膜。
【請求項65】
前記金属配位錯体が100℃〜500℃の範囲の温度に加熱された前記薬剤を含むとき、前記薬剤が前記金属配位錯体から選択的に気化される、請求項58に記載の薄膜。
【請求項66】
前記薄膜の厚さが0.01μm〜20μmの範囲にある、請求項58に記載の薄膜。
【請求項67】
前記薄膜の厚さが0.5μm〜10μmの範囲にある、請求項58に記載の薄膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−509907(P2008−509907A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525587(P2007−525587)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026360
【国際公開番号】WO2006/022714
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503412296)アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026360
【国際公開番号】WO2006/022714
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503412296)アレックザ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]