説明

衝撃緩和用マット

【課題】本発明は、従来と比べて高い衝撃吸収性を発揮するとともに、車椅子の走行性や人間の歩行性に優れた衝撃緩和用マットを提供することを課題とする。
【解決手段】床面に配置されて使用される衝撃緩和用マット1であり、発泡倍率が10〜100倍の弾性発泡体からなりかつ表面硬度がアスカーCS:0〜50の芯材5と、この芯材5の上面に形成され、表面硬度がアスカーA:65〜98の上層6と、前記芯材5の下面に形成され、表面硬度がアスカーCS:25〜90で内部に空隙部を有した下層7とを具備することを特徴とする衝撃緩和用マット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衝撃緩和用マットに関し、特にベッドや幼児用立体的遊戯具(例えばジャングルジム)の傍らの床面に配置されて使用される衝撃緩和用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護用品の1つとして、ベッドから転落した際の人体への衝撃を緩和するため、衝撃緩和用マットレスが提案されている。このようなマットレスは、ベッドの傍らの床面に置かれるベッドサイドマットであり、使用時のずれを防止するため、ベッドの脚やフレーム等の適当な所に締結し得るベルト等の締結手段を側縁部に備え、不使用時には折り畳める様に複数の分割マットレスを連結して構成される。こうしたマットは、一枚物で軟らかいとともに比較的薄く、芯材はウレタンフォームで構成され表皮はフィルムラミネート構造の生地などで構成される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−199969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のマットでは、衝撃吸収性が未だ充分でなく、安全性向上の観点からいっそうの衝撃緩和機能が求められている。また、ベッドの傍らに車椅子を近付けようとして車椅子をマットの上に載せた場合、車椅子の車輪がマット表面に食い込む。そのため、車椅子の走行性が著しく悪くなり、車椅子の操作がし難くなるという問題があった。また、人がマットの上を歩行する場合においても、足が沈んで歩行がし難く、足を取られる場合が多い。
【0004】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、従来と比べて高い衝撃吸収性を発揮するとともに、車椅子の走行性や人間の歩行性に優れた衝撃緩和用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、床面に配置されて使用される衝撃緩和用マットであり、発泡倍率が10〜100倍の弾性発泡体からなりかつ表面硬度がアスカーCS:0〜50の芯材と、この芯材の上面に形成され、表面硬度がアスカーA:65〜98の上層と、前記芯材の下面に形成され、表面硬度がアスカーアスカーCS:25〜90で内部に空隙部を有した下層とを具備することを特徴とする衝撃緩和用マットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来と比べて高い衝撃吸収性を発揮するとともに、車椅子の走行性や人間の歩行性に優れた衝撃緩和用マットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
図1は、本発明に係る衝撃緩和用マットとしてのベッドサイドマットの使用態様を示す平面図である。また、図2は図1のX−X線に沿う断面図である。
図中の符番1は衝撃緩和用マットしてのベッドサイドマット(以下、単にマットと呼ぶ)を示し、ベッド2の傍らの床面に配置されて使用される。前記ベッド2の長手方向に沿う一方側は柵状になっており、他方側は人が出入できるように開放されている。
【0008】
前記マット1は、図1から明らかのように例えば平面的に長方形形状になっているが、この形に限定されない。マット1は、その長さがベッド2と略同じ長さで大体90〜220cm、その幅は車椅子が走行できるように大体60〜90cmである。
前記マット1は、図2に示すように、弾性発泡体からなる芯材5と、この芯材5の上面に形成された上層6と、芯材5の下面に形成された下層7と、これらの部材を覆うカバー8とを備えている。
【0009】
前記芯材5の材料としては、例えばウレタン、スチレン、各種ゴム、ポリ塩化クロライド(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エポキシ樹脂(EP)、ポリ酢酸ビニルアルコール(EVA)、あるいはこれらを主成分とする混合物等の発泡体が挙げられる。また、上記材料には、リサイクルされた発泡材、フェルト、綿、羽毛等が混入していてもよい。前記芯材を構成する弾性発泡体の発泡倍率を10〜100倍とするのは、10倍未満では剛性が大きく身体への衝撃が大きいからであり、100倍を越えるとマットの変形が大きく落下物の衝撃が床面に直接伝わり易く、身体への衝撃が増すからである。また、弾性発泡体の表面硬度をアスカーCS:0〜50としたのは、50を越えると、硬すぎ身体への衝撃が大きくなるからである。
【0010】
前記上層6の表面硬度をアスカーAで65〜98とするのは、硬度が65未満では車椅子が走行した場合に車輪の食い込みが生じたり、人,特にすり足歩行気味の老人が歩く場合に躓き易く、硬度が98を超えると衝撃荷重を分散しにくくなるからである。前記上層の材質としては、例えばPP、PE、PS、EVA、PVC、ポリウレタン(PU)、あるいはこれらを主成分とする混合物等の発泡体、あるいはウレタンゴム等のエラストマーのソリッド、あるいは低発泡体(JISA硬度80から95)が挙げられる。
【0011】
前記下層7の表面硬度をアスカーCSで25〜90とするのは、硬度が25未満ではマットに落下した落下物の衝撃が床面に直接伝わり易く、硬度が90を越えると身体への衝撃が大きくなるからである。前記下層の材質としては、例えば、空隙部を有した段ボールプラスチック(ダンプラ)、ウレタン発泡体、あるいはPE又はEVAの空気マット状のものが挙げられる。
【0012】
本発明において、マットがベッドの傍らの床面に配置されて使用される場合においては、側縁部の少なくとも一部、できればベット側を除く三方の側縁部にテーパが形成されていることが好ましい。これにより、車椅子をマットのテーパを利用して容易に乗り降りすることが容易となる。また、例えば老人のようにすり足歩行の人でも、つまずかずに歩行しやすい。
【0013】
本発明において、マットは防水処理加工を施されていることが好ましい。具体的には、例えば、マット全体特に表面を、ウレタン等でコーティングした布、又はPET,ナイロンの布地を上下からゴム、PVC,EVAシートで挟んだ被覆材、あるいはナイロン,ポリエステル布地にウレタンをコートした布で被覆することが挙げられる。
【0014】
本発明において、マット全体を被覆するために、マットを使用状態で上から(平面的に)見て少なくとも1辺側、好ましくは連続する2辺側、あるいは連続する3辺側が開放できるようにファスナー若しくはマジックテープ付きカバーを備えることが好ましい。ここで、カバーの材質としては、ナイロン、PETの表面にウレタンコート等の防水コートをしたものにすることが良い。これにより、カバーをマットより取り外し易く、カバーのみの洗濯を容易に行うことができる。なお、上記カバーのファスナー若しくはマジックテープは、スリット部で複数のマット本体に折り畳みできるような機能を有したマットにおいては、スリット部でファスナー等が連続していなくても、マットを使用状態で上から見て直線状にあれば、1辺側に形成されているとみなす。また、本発明のマットにおいて、「1辺側に形成されている」とは、ファスナー等が1辺側から連続する隣りの辺側まで若干及んで形成されている場合も含む。これは、2辺側、あるいは3辺側に連続して形成されている場合も1辺側に形成されている場合と同様に解釈する。
【0015】
本発明において、マットは、使用しない時に容易に片付けられるように、折畳み可能な構造を備えていることが好ましい。図3(A),(B)は、例えば2つに分割可能な構成のマット1を示し、第1のマット本体1aと第2のマット本体1bとから構成されている。前記マット1は、表面を内側にして長手方向の中央部のスリット部13を起点としてマット本体1a,1bの2つに折り畳むことができる(図3(B)参照)。なお、図3の場合、カバー8が存在するので、図3(B)に示すように折り畳むことができるが、この代わりに、マットの長手方向に沿う中心部にマット本外1a,1bにヒンジや面ファスナー(夫々図示せず)を設けても折り畳むことができる。また、折り方も2つ折りに限定されず、3つ以上折り畳んでもよい。
【0016】
本発明において、折畳み後のマットは、例えば図3に示すように、マットの底部の長手方向に沿う端部にマジックテープ9a,9bを縫い付け、マット本体1a,1bを互に重なり合うように折り畳んだ後、図3(B)に示すように、前記マジックテープ9a,9bと係止する別なマジックテープ(把手)10を用いて、折り畳んだ後のマットの移動を容易にできるようにしてもよい。なお、マジックテープ以外の手段を用いて把手機能を設けても良い。
【0017】
本発明において、マットの底部には、図示しないが、滑り止め用シートを設け、特に被介護者がマットに移動したり、あるいはマットから別な場所に移動する際にマットが滑らないようにすることが好ましい。これにより、被介護者等がマットから乗り降りする際に、マットが滑りにくいので、転倒することを著しく低減することができる。なお、滑り止め用シートの数や大きさは特に限定されず、その目的に応じて任意に設定すればよい。
【0018】
本発明において、本発明に係る衝撃緩和用マットは、例えば図1に示すようにベッドの傍らの床面に配置されて使用することができる。この場合、マット1の四方側の側縁部には段差部1’が設けられているが、特にベット側を除く三方側の段差部にはこの段差部を知らせるための目印を付加することが好ましい。ここで、前記目印としては、側縁部に例えば蛍光テープ、夜光性テープ、帯光性テープを付けて、特に夜に光を発して目立つようにすることが挙げられる。これにより、特に被介護者が夜にベッドから降りてマットを通過するときや、逆にマットを通ってベッドに上るときに、マットの側縁部で躓くのを軽減することができる。
【0019】
また、本発明に係る前記マットは、ベッドの傍らに配置されて使用する場合でも、その四方側に段差部が設けられていない構成も含まれる。この場合、段差部による段差を補うように、例えば図4に示すように発泡体、樹脂、木材等からなる三角柱状のエッジ部材12を接着剤11等を介して設けてもよい。また、このエッジ部材の代わりに、前記段差部に対応する部分にその段差を補うような部材を収容した袋状体でマット全体を被覆してもよい。こうしたエッジ部材は、マットの側縁部にテーパを形成しにくい場合に有効である。
【0020】
本発明に係る衝撃緩和用マットは、図1に示すようにベッドの傍らに配置されて使用されるのみならず、例えば室内用のジャングルジムのような幼児用立体的遊戯具の周囲に配置して使用することもできる。これにより、幼児が誤って遊戯具からその周囲に転落してもマットにより転落による衝撃を軽減することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について図面を参照して施工方法を併記しながら説明する。なお、下記に示す部材の材料や数値等は一例を示すもので、これらにより本発明の権利範囲が特定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
本実施例1に係る衝撃緩和用マットは、図1に示すように、平面的に長方形形状になっており、その長さがベッド2と略同じ長さで大体180cm、その幅は車椅子が走行できるように大体65cmである。
【0023】
前記マット1は、図2に示すように、弾性発泡体からなる芯材5と、この芯材5の上面に形成された上層6と、芯材5の下面に形成された下層7と、これらの部材を覆うカバー8とから構成されている。なお、図2は図1のX−X線に沿う断面図に相当する。ここで、上層6は、下記表1に示すように、材質:ポリウレタン(PU)発泡体、厚さ3mm、表面硬度がアスカーCS89である。芯材5は、同表1に示すように材質:ポリウレタンフォーム(商品名:EL25、東洋ゴム工業社製)、厚さ43mm、アスカーCS硬さ25(JISK6400A法で200N/314cm)で、発泡倍率は50である。下層7は、同表1に示すように、材質:ダンプラ(商品名:ダンプレートE−2、宇部日東社製)、厚さ4mm、アスカーCS硬さ80である。また、前記カバー8としては、ウレタンコートポリエステル(商品名:No2525、広撚社製)を用いた。
【表1】

【0024】
実施例1に係る衝撃緩和用マットによれば、芯材5を適宜な発泡倍率と硬度を有するポリウレタンフォームから構成するので、従来と比べて充分な衝撃吸収性が得られる。また、マット1の表面には、適宜な硬度のPU発泡体からなる上層6が設けられているので、車椅子をマット1の上に載せた場合、車椅子の車輪がマット表面に食い込むのを回避し、車椅子の走行性が改善され、車椅子の操作がし易くなる。また、人がマットの上を歩行する場合においても、足が沈んで歩行がし難く、足を取られるのを回避できる。更に、マット1には適宜な硬さのダンプラからなる下層7が設けられているので、落下物があった場合、この衝撃が床面に直接伝わることを回避できる。
【0025】
こうした構成の衝撃緩和用マットを床面に配置し、高さ81.6cmから重さ4kgの物体を落下させ、衝撃速度4m/secのときの衝撃度を測定した。その結果は、上記表1に示すとおりである。
【0026】
(実施例2)
本実施例2は、実施例1のマットと基本的な構成は同じで、上層、芯材、下層の材質及び厚みは、上記表1のようになっている。実施例2に係るマットについても、実施例1と同様に衝撃度を測定した。その結果は、上記表1に示すとおりである。
【0027】
(比較例1)
比較例1に係る衝撃緩和用マットは、軟質ポリウレタンフォーム(商品名:マット、シーホネンス社製)からなる厚さ50mmの芯材と、この芯材を覆う前記カバーとから構成されている。こうした構成の比較例1のマットについても、実施例1のマット同様に、衝撃度を測定した。その結果は、上記表1に示すとおりである。
【0028】
表1より、比較例1の場合と比べて実施例1,2の場合は、衝撃度が著しく小さいことが判明した。また、この衝撃度は、体育運動用衝撃パッドの安全基準値(製品安全境界認定基準CPSA 0103)に照らしても、安全上十分な緩衝性能を備えていることが確認された。
【0029】
(実施例3,4及び比較例2,3)
実施例1と比べて、上層、芯材、下層の材質、硬さ、厚みを変えて実施例3,4及び比較例2,3に係る衝撃緩和用マットを製作し、実施例1と同様にして衝撃度を測定した。その結果は、下記表2に示すとおりである。
【表2】

【0030】
表2より、実施例3,4によるマットは、比較例2,3によるマットに比べて夫々衝撃度が著しく小さいことが判明した。
【0031】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る衝撃緩和用マットの使用例を示す説明図。
【図2】本発明に係る衝撃緩和用マットの一例を示す断面図。
【図3】本発明に係る衝撃緩和用マットの変形例を示す説明図。
【図4】本発明に係る衝撃緩和用マットの他の変形例を示す説明図。
【0033】
1…ベッドサイドマット、1a,1b…マット本体、1’…段差部、5…芯材、6…上層、7…下層、8…カバー、9a,9b,10…マジックテープ、10…滑り止め用シート、11…接着剤、12…エッジ部材、13…スリット部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に配置されて使用される衝撃緩和用マットであり、発泡倍率が10〜100倍の弾性発泡体からなりかつ表面硬度がアスカーCS:0〜50の芯材と、この芯材の上面に形成され、表面硬度がアスカーA:65〜98の上層と、前記芯材の下面に形成され、表面硬度がアスカーCS:25〜90で内部に空隙部を有した下層とを具備することを特徴とする衝撃緩和用マット。
【請求項2】
ベッドの傍らの床面に配置されて使用され、かつ側縁部の少なくとも一部にテーパが形成されて車椅子の乗り上げを補助する機能を有することを特徴とする請求項1記載の衝撃緩和用マット。
【請求項3】
防水処理加工が施されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の衝撃緩和用マット。
【請求項4】
マット全体を被覆するための、上から見て少なくとも1辺側が開放できるようにファスナー若しくはマジックテープ付きカバーを備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の衝撃緩和用マット。
【請求項5】
折畳み可能な構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の衝撃緩和用マット。
【請求項6】
ベッドの傍らの床面に配置されて使用され、ベッド側を除く少なくとも三方側の側縁部に段差部が設けられ、しかもこの段差部を知らせるための目印が付加されていることを特徴とする請求項1記載の衝撃緩和用マット。
【請求項7】
底部にスリップ防止用の滑り止めシートが設けられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の衝撃緩和用マット。
【請求項8】
折畳んだ状態の折畳み端部に移動用の把手が取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の衝撃緩和用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−42869(P2006−42869A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224114(P2004−224114)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(504293148)有限会社 エムアンドロー (1)
【Fターム(参考)】