説明

衝撃運動エネルギ吸収装置

本発明は、平常の状態である第1形態において自動車の搭乗者の身体の一部を支持し、自動車が衝撃を受けたときの第2形態において身体の一部に傷害が生じることを回避することに適したエネルギ消散手段を有し、自動車の構造部材(14)と車室(10)の間に配置する、衝撃運動エネルギ吸収装置(22)において、2つの中空の殻(24、26)の結合体から形成され、第1形態においては所定の第1容積(V)を占めてリジッドであり、第2形態においては残留容積が最小の第2容積(V)を占めるように潰されることが可能なボックスを含んでなり、衝撃中にボックスが身体の一部から力を受けたときに、2つの殻(24、26)は、互いに向けて潰されることを特徴とする、衝撃運動エネルギ吸収装置を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃運動エネルギ吸収装置に関する。
特に本発明は、平常の状態である第1形態において自動車の搭乗者の身体の一部を支持し、自動車が衝撃を受けたときの第2形態において身体の一部に傷害が生じることを回避することに適したエネルギ消散手段を有し、自動車の構造部材と車室の間に配置する、衝撃運動エネルギ吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの衝撃吸収装置の多数の例が知られている。
文献FR−A1−2.746.726には、自動車の床の上に載せる、自動車のフロアカーペット用の足載せ上張りが記載されている。この上張りは、自動車の床の変形を引き起こす激しい衝撃を受けた際に運転者の足が受ける可能性がある衝撃を吸収するための、熱可塑性の多孔質膜材料から作られる。
このような上張りは、圧縮後に、無視できない残留容積が保持されるという問題を呈する。
この残留容積は、最初の容積と運動エネルギ吸収容量との間の良好な比を有することを可能にしない。
【0003】
文献FR−A1−2.796.019には、変形可能な固定手段を介して、自動車の床に固定された硬い靴底からなる自動車用の足載せが記載されている。
このような足載せは、足に提供される支持剛性を改良するが、衝撃後に、常に無視できない残留容積が保持される。
【特許文献1】FR−A1−2.746.726
【特許文献2】FR−A1−2.796.019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解消するために、本発明は、衝撃後に非常に減少された容積のみしか有しない、運動エネルギ吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、本明細書の「技術分野」に記載したタイプの衝撃運動エネルギ吸収装置において、2つの中空の殻の結合体から形成され、第1形態においてはリジッドであり、第2形態においては残留容積が最小の容積を占めるように潰されることが可能なボックスを含んでなり、衝撃中に上記ボックスが上記身体の一部から力を受けたときに、2つの上記殻は、互いに向けて潰されることを特徴とする、衝撃運動エネルギ吸収装置を提供する。
【0006】
本発明のその他の特徴によれば:
−上記ボックスの各殻は、開口面が他の殻へ向けられた平行6面体の形状を呈し、上記殻の相互に向けた圧壊を可能にするために、各上記殻の側面は、圧縮、曲げまたはせん断力を受けて圧縮され易く、
−上記ボックスの各殻は、所定の閾値よりも小さい強さの機械的荷重を受けたときには高い抵抗特性を呈し、上記所定の閾値よりも大きい強さの機械的荷重を受けたときには崩壊する材料で作られ、
−上記材料は、繊維、特に長いガラス繊維を絡ませた、特に熱可塑性のマトリックスを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のその他の特徴及び利点は、理解のために添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。これらの添付図面において:
−図1は、本発明による衝撃運動エネルギ吸収装置を有する自動車の車室内部の斜視図であり;
−図2は、本発明による衝撃運動エネルギ吸収装置の第1形態における断面の略図であり;
−図3は、本発明による衝撃運動エネルギ吸収装置の第2形態における断面の略図である。
【0008】
以下の説明において、同一の参照符号は、同一または類似の機能を有する部品を示す。
用語「上」または「下」は、図1〜3の上方または下方の部品または位置をそれぞれ示す。
【0009】
図1に、自動車の車室10の全体を示す。
周知のように、車室10は特に運転席12を含み、運転席12の構造部材、特に床14は、上張り16を支持する。
上張り16は、例えばカーペット18を含む。自動車のペダル20の右のカーペット18の下に、床(構造部材)14の上に設けられた運動エネルギ吸収装置22が配置される。
【0010】
この形態は、本発明を限定するものではなく、運動エネルギ吸収装置22は、構造部材のどこに設けてもよく、特に自動車の床14のどこに設けてもよい。
特に、運動エネルギ吸収装置22は、必ずしもペダル20の右に設ける必要はなく、車室の足載せ24の下に設けてもよく、あるいは、運転者以外の自動車の搭乗者の箇所(図示しない)のカーペットの下に設けてもよい。
【0011】
平常の状態である第1形態においては、運動エネルギ吸収装置22は、自動車の搭乗者の身体の一部、例えば足を受けるために用いられる。また、自動車が衝撃を受けたときの第2形態においては、運動エネルギ吸収装置22は、搭乗者の身体の一部、特に足に傷害が生じることを回避することに適したエネルギ消散手段を有する。
【0012】
図2に示すように、本発明は、2つの中空の殻24、26の結合体から形成されたボックスからなる新規な運動エネルギ吸収装置22を提供する。
【0013】
これらの図において、ボックスは、運動エネルギ吸収装置22の全体を形成しているが、この形態は本発明を限定するものではなく、ボックスが運動エネルギ吸収装置22の一部のみを形成してもよい。
特に、運動エネルギ吸収装置22は、互いに独立な複数のボックスの集合から構成することもできる。
【0014】
図2に示した第1形態においては、運動エネルギ吸収装置22は、運動エネルギ吸収装置22が変形することなく、運転者または車両の他の搭乗者が足を載せることができるようにリジッドである。このとき運動エネルギ吸収装置22は、所定の第1容積「V」を占める。
【0015】
図3に示した第2形態においては、運動エネルギ吸収装置22は、残留容積が最小の第2容積「V」を占めるように潰され、衝撃中に運動エネルギ吸収装置22が足と床の間で圧縮されるときに、2つの殻24、26は、互いに向けて潰される。
【0016】
第2形態における第2容積「V」は、殻24、26の2つの壁の合計の厚さまで減らされる。
【0017】
本発明の望ましい1実施の形態においては、ボックスの各殻24、26は、開口面28、30が他の殻24、26へ向けられた、平行6面体の形状を呈する。
【0018】
運動エネルギ吸収装置22の殻24、26の相互に向けた圧壊を可能にするために、各殻24、26の側面32、34は、圧縮、曲げまたはせん断力を受けて圧縮され易くされる。
【0019】
特に、ボックスの各殻24、26は、所定の閾値よりも小さい強さの機械的荷重を受けたときには高い抵抗特性を呈し、所定の閾値よりも大きい強さの機械的荷重を受けたときには崩壊する材料で作られる。
【0020】
特に、この材料は、殻24、26が所定の閾値よりも大きい強さの機械的荷重を受けたときに、側面32、34のみが崩壊するように定められる。
【0021】
殻24、26のこのような挙動を得るために、殻24、26が構成される材料は、繊維、特に長いガラス繊維を絡ませた、特に熱可塑性のマトリックスを含むことが望ましい。
【0022】
このように、本発明は、平常の状態である第1形態においては強固で、衝撃を受けたあとでは残留容積が最小の第2容積「V」を占める、運動エネルギ吸収装置22を得ることを可能にする。残留容積が最小の第2容積「V」は、殻24、26の開口面28、30の高さにおける、殻24、26の壁の厚さに概ね相当する。
【0023】
本発明の目的を変更することなく、運動エネルギ吸収装置22を、例えば車室またはドアの側面のような、自動車の構造の様々な箇所に使用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平常の状態である第1形態において自動車の搭乗者の身体の一部を支持し、上記自動車が衝撃を受けたときの第2形態において上記身体の一部に傷害が生じることを回避することに適したエネルギ消散手段を有し、上記自動車の構造部材(14)と車室(10)の間に配置する、衝撃運動エネルギ吸収装置(22)において、2つの中空の殻(24、26)の結合体から形成され、上記第1形態においては所定の第1容積「V」を占めてリジッドであり、上記第2形態においては残留容積が最小の第2容積「V」を占めるように潰されることが可能なボックスを含んでなり、衝撃中に上記ボックスが上記身体の一部から力を受けたときに、2つの上記殻(24、26)は、互いに向けて潰されることを特徴とする、衝撃運動エネルギ吸収装置。
【請求項2】
上記ボックスの各殻(24、26)は、開口面(28、30)が他の殻(24、26)へ向けられた平行6面体の形状を呈し、上記殻(24、26)の相互に向けた圧壊を可能にするために、各上記殻(24、26)の側面(32、34)は、圧縮、曲げまたはせん断力を受けて圧縮され易いことを特徴とする、請求項1に記載の衝撃運動エネルギ吸収装置。
【請求項3】
上記ボックスの各殻(24、26)は、所定の閾値よりも小さい強さの機械的荷重を受けたときには高い抵抗特性を呈し、上記所定の閾値よりも大きい強さの機械的荷重を受けたときには崩壊する材料で作られることを特徴とする、請求項1または2に記載の衝撃運動エネルギ吸収装置。
【請求項4】
上記材料は、繊維、特に長いガラス繊維を絡ませた、特に熱可塑性のマトリックスを含むことを特徴とする、請求項3に記載の衝撃運動エネルギ吸収装置。

【公表番号】特表2007−514598(P2007−514598A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544509(P2006−544509)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050590
【国際公開番号】WO2005/061285
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】