説明

衣類および衣類の製造方法

【課題】衣類の開口部に低コストにてほつれ止め機能を付与する。
【解決手段】腰回り部20は、直線状に切り離された端面22を有する。端面22から所定の長さまでの領域に縁部24が設けられている。また、脚回り部30a、30bは、それぞれ、直線状に切り離された端面32a、32bを有する。端面32a、32bから所定の長さまでの領域にそれぞれ縁部34a、34bが設けられている。縁部24、34a、34bは、熱融着弾性糸と被弾性糸を用いて編みたてられ、湿熱加熱処理により熱融着弾性糸が溶融したヨコ編地により形成されている。熱融着弾性糸としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、腰、脚、腕、首などを通すための開口部を有する衣類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開口部にほつれが生じにくい衣類に対する需要が高まっている。一般に、衣類の開口部にほつれが生じることを防止するために、開口部の端部を折り返して縫着するほつれ止め処理が施される。しかし、特に、インナー類において、折り返し部分が外衣表面に影響を与えファッション性を低下させたり、着用感を損なうなどの問題があった。また、縫着によるほつれ止め処理は、衣類の縫製工程を増加させるため、コストが増大する要因となっていた。
【0003】
この問題を解決するために、曲線状の開口部にヨコ編地として編みたてられた熱融着弾性糸をヒートセット加工による乾熱処理により溶融して、衣類の開口部にほつれ止め機能を付与させる技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】実開平07−028902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱融着弾性糸はポリエステルなどの繊維に比べて高価である。このため、曲線状の開口部にほつれ止め機能が付与される場合には、使用される熱融着弾性糸の量が多くなり、それだけ衣類のコストが増大してしまう。
【0005】
また、従来のように衣類の開口部に乾熱処理を施すためには、ヒートセット加工用の設備が必要となるため、衣類の製造コストの増大を招いていた。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衣類の開口部に低コストにてほつれ止め機能を付与する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、衣類である。当該衣類は、直線状に切り離された端面を持つ開口部と、端面から所定の長さまでの領域に設けられた縁部と、熱融着弾性糸と非弾性糸とを用いて縁部に編みたてられ、湿熱加熱処理により熱融着弾性糸が熱融着したヨコ編地とを備えることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、各開口部の端面が直線状であるため、開口部の端面が曲線状である場合に比べて縁部の面積が減少する。この結果、縁部に必要な熱融着弾性糸の量が低減するため、低コストにて衣類の開口部にほつれ止め機能を付与することができる。また、熱融着弾性糸が湿熱加熱処理により溶融してるため、ヒートセット加工用の設備を別途設けることなく、たとえば染色工程と同時あるいは前後して熱融着弾性糸を溶融させることができる。この結果、衣類の製造コストを抑制することができる。
【0009】
上記態様において、熱融着弾性糸が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであってもよい。また、熱融着弾性糸と弾性糸とがプレーティング編みにより編みたてられていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は、衣類の製造方法である。当該衣類の製造方法は、熱融着弾性糸と非弾性糸とからなる第1の伸縮部、身生地、熱融着弾性糸と非弾性糸とからなる第2の伸縮部、および水溶性繊維からなる切り離し部を順に繰り返し縫製して筒状生地を形成する工程と、筒状生地を染色するとともに、切り離し部を溶解させて、筒状生地を第1の伸縮部、身生地、および第2の伸縮部からなる一人分の生地に分離する工程と、湿熱加熱処理により第1の伸縮部および第2の伸縮部を構成する前記熱融着弾性糸を熱融着させる工程と、生地の股下部分を裁断し、裁断によって生じた切断部分を縫着し、脚回り用の開口部を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、筒状生地の染色工程と、筒状生地から一人分の生地を分離する工程を同時に行うことができるため、衣類の製造工程の簡便化、省力化が可能となり、ひいては、衣類の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衣類の開口部に低コストでほつれ止め機能を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係るインナー10の正面図である。インナー10は、筒状の生地から形成される身生地12を有する。身生地12は、たとえば、キュプラ、綿、ポリエステルなどの繊維を用いて編みたてられている。
【0014】
インナー10の股下部分に縫い合わせ部40が設けられている。縫い合わせ部40は、縫着または接着により形成されうる。
【0015】
インナー10には、開口部として腰回り部20、および脚回り部30a、30bが設けられている。なお、脚回り部30a、30bは、それぞれ右足用、左足用の開口部である。
【0016】
腰回り部20は、直線状に切り離された端面22を有する。この端面22から所定の長さ(たとえば、2.5cm)までの領域に縁部24が設けられている。
【0017】
また、脚回り部30aは、直線状に切り離された端面32aを有する。この端面32aから所定の長さ(たとえば、1.5cm)までの領域に縁部34aが設けられている。同様に、脚回り部30bは、直線状に切り離された端面32bを有する。この端面32bから所定の長さ(たとえば、1.5cm)までの領域に縁部34bが設けられている。
【0018】
縁部24、34a、34bは、熱融着弾性糸と被弾性糸を用いて編みたてられ、伸縮性を有する。縁部24、34a、34bは、湿熱加熱処理により熱融着弾性糸が溶融したヨコ編地により形成されている。熱融着弾性糸としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好適であり、たとえば、日清紡社製のモビロン(登録商標)を用いることができる。また、被弾性糸としては、身生地12と同様に、キュプラ、綿、ポリエステルなどの繊維を用いることができる。
【0019】
図2は、実施の形態に係るインナーの製造に用いられる生地100の正面図である。生地100は、筒状生地である。生地100は、丸編み機などの編み機を用い、プレーティング編みにより編むことができる。生地100は、身生地12の両端にそれぞれ伸縮部23、33が設けられている。また、伸縮部23と伸縮部33との間に、切り離し部50が設けられている。切り離し部50と伸縮部23との境界、および切り離し部50と伸縮部33との境界は直線状である。身生地12と、その両端に設けられた伸縮部23、33が一人分の生地素材となり、複数の生地素材が切り離し部50を介して繰り返して連なっている。
【0020】
伸縮部23および伸縮部33は、熱融着弾性糸と被弾性糸を用いて編みたてられたヨコ編地により形成されている。熱融着弾性糸として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられている。
【0021】
切り離し部50は、水溶性の繊維により形成される。水溶性の繊維としては、水溶性ビニロンが好適である。
【0022】
以上説明した生地100を用いて実施の形態に係るインナーを製造する工程について説明する。まず、切り離し部50を温水に溶解させるとともに、伸縮部23および伸縮部33を構成する熱融着弾性糸を湿熱加熱処理(たとえば、120℃)により熱融着させ、ネットを形成させる。これにより、図1に示す腰回り部20、および脚回り部30a、30bを形成するための開口部が形成された一人分の生地素材が得られる。また、伸縮部23と伸縮部33にほつれ止め機能が付与される。ほつれ止め機能が付与された伸縮部23は、図1に示す縁部24となる。なお、切り離し部50を温水に溶解させる工程は、たとえば、生地100を染色する工程と同時あるいはその前後において施すことができる。また、湿熱加熱処理は、たとえば、生地100を染色する工程と同時あるいはその前後において施すことができる。
【0023】
続いて、一人分に切り離された生地素材について、股下部分を裁断する。続いて、裁断によって生じた切断部分を縫着することにより、図1に示すような縫い合わせ部40を形成することにより、脚回り部30a、30bを形成する。以上の工程により、図1に示すインナー10を製造することができる。なお、図2の伸縮部33は裁断および縫製加工の後、図1に示す縁部34a、34bとなる。
【0024】
以上説明したインナーによれば、各開口部の端面が直線状であるため、開口部の端面が曲線状である場合に比べて縁部の面積が減少する。この結果、縁部に必要な熱融着弾性糸の量が低減するため、低コストにてインナーの開口部にほつれ止め機能を付与することができる。
【0025】
また、熱融着弾性糸が湿熱加熱処理により熱融着してるため、ヒートセット加工用の設備を別途設けることなく、たとえば染色工程と同時あるいは前後して熱融着弾性糸を溶融させることができる。この結果、衣類の製造コストを抑制することができる。
【0026】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0027】
例えば、上述の実施の形態では、インナーが例示されているが、アウターウエアーなどの衣類にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態に係るインナーの正面図である。
【図2】実施の形態に係るインナーの製造に用いられる生地の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 インナー、 12 身生地、 20 腰回り部、22,32a,32b 端面、 30a,30b 脚回り部、 40 縫い合わせ部、 50 切り離し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に切り離された端面を持つ開口部と、
前記端面から所定の長さまでの領域に設けられた縁部と、
熱融着弾性糸と非弾性糸とを用いて前記縁部に編みたてられ、湿熱加熱処理により前記熱融着弾性糸が熱融着したヨコ編地と、
を備えることを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記熱融着弾性糸が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記熱融着弾性糸と前記非弾性糸とがプレーティング編みにより編みたてられたことを特徴とする請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
熱融着弾性糸と非弾性糸とからなる第1の伸縮部、身生地部、熱融着弾性糸と非弾性糸とからなる第2の伸縮部、および水溶性繊維からなる切り離し部を順に繰り返し縫製して筒状生地を形成する工程と、
前記筒状生地を染色するとともに、前記切り離し部を溶解させて、前記筒状生地を前記第1の伸縮部、前記身生地部、および前記第2の伸縮部からなる一人分の生地に分離する工程と、
湿熱加熱処理により前記第1の伸縮部および前記第2の伸縮部を構成する前記熱融着弾性糸を熱融着させる工程と、
前記生地の股下部分を裁断し、裁断によって生じた切断部分を縫着し、脚回り用の開口部を形成する工程と、
を備えることを特徴とする衣類の製造方法。
【請求項5】
前記切り離し部と前記第1の伸縮部との境界、および前記切り離し部と前記第2の伸縮部との境界が直線状であることを特徴とする請求項4に記載の衣類の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−203591(P2009−203591A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49921(P2008−49921)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(593029075)株式会社アズ (8)
【Fターム(参考)】