説明

表層溶融処理方法および表層改質鋼鋳片、加工製品

【課題】安価に、かつ生産性を低下させることなく、鋼鋳片の表層部を溶融処理して高清浄化を図る技術、その表層溶融処理部分に、金属元素、合金、もしくは異種鋼材を添加して高機能化を図り複合鋼材を得る技術において、プラズマ加熱によって、従来よりも表層改質層が厚く、かつ、深さ方向のばらつきの小さい複合鋼鋳片を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】搬送されている鋼鋳片の表層を、バーナー加熱、誘導加熱、プラズマ加熱のうちの少なくともいずれかの方法によって予熱し、その後、プラズマ加熱によって20W/mm以上の表面入熱密度で、鋼鋳片表面から10mm以上の表層部を溶融処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼鋳片の表層部を溶融処理して高清浄化を図る方法、その表層溶融処理部分に、金属元素、合金、もしくは異種鋼材を添加して高機能化を図り複合鋼材を得る方法、それらの方法により得られる鋼鋳片、これらの鋼鋳片を圧延して得られる鋼板、および当該鋼板を加工して得られる鉄鋼製品や複層鋼板などの加工製品に関する。なお本明細書において、鋼鋳片とは、圧延途中の鋼片並びに連続鋳造後の鋳片を指称している。
【背景技術】
【0002】
従来から、成分の異なる2種類の金属を用いて、内層と外層から構成された鋳片は、複合された機能を有する複合材として利用価値があり、その製造方法は、各種、提案されている。
【0003】
例えば、本発明者らは、鋳片表層と内層の成分が異なる鋳片の連続鋳造方法として、連続鋳造する際に、2種類の溶鋼を同時に鋳造する方法(特許文献1)を、また潤滑剤内に元素を混入させる方法(特許文献2)を、それぞれ開示している。
【0004】
さらに、本発明者らは、これらの複層鋳片を製造する従来の方法を改良するために、鋳片の表層を、誘導加熱、プラズマ加熱のいずれか一方または双方により溶融させ、溶融した鋼鋳片の表層部分に、添加元素もしくはその合金を添加する溶融改質方法(特許文献3)を提案している。
そして、プラズマ加熱で溶融させるときの方法として、処理対象の金属を非磁性化温度以上に予熱することにより、広幅でかつ安定した往復運動を行う扁平プラズマを形成する方法(特許文献4)を提案している。
また、鋼鋳片の表層を誘導加熱、プラズマ加熱のいずれか一方または双方により溶融させ、溶融した鋼鋳片の表層部分に、添加元素もしくはその合金を添加することを特徴とする鋼鋳片の表層改質方法(特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−108947号公報
【特許文献2】特開平07−276019号公報
【特許文献3】特開2005−305532号公報
【特許文献4】特開2006−124763号公報
【特許文献5】特開2004−195512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示している様な、2種類の溶鋼を同時に鋳造する方法では、さまざまな組み合わせの複層鋳片を得ることができる反面、溶鋼段階で2種類の成分のものを準備する必要があり、かつ該溶鋼を入れる取鍋、それを鋳型に注入する際に必要となるタンディッシュやノズルなども2種類用意する必要があり、コスト的に高くなるという問題がある。また、鋳片の一方の面と他方の面で異なる元素を添加したり、片面のみに元素を添加することができない。また、特許文献2に開示している様な、潤滑剤内に元素を混入させる方法では、コスト的に安価とすることはできるものの、潤滑剤を通じて添加するために、元素成分の添加量が安定しないことや、熱源の不足により添加量が限られる等の問題があり、そして特許文献1と同様に、鋳片の一方の面と他方の面で異なる元素を添加したり、片面のみに元素を添加することができないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献3に開示されている方法では、上記特許文献1、2の問題点は解決できるものの、特許文献3で具体的に実施例に開示されている内容は、誘導加熱により鋳片の表層20mmを溶融処理するものであり、プラズマ加熱により鋳片を溶融処理する場合の具体的な条件については開示されていない。
【0008】
そこで、プラズマ加熱により鋳片を溶融処理するものとしては、特許文献4の実施例に開示されている通り、溶融深さが5mm程度であり、この様に、誘導加熱と比較すると、プラズマ加熱では、溶融深さが小さいことがわかる。表層改質層が5mm程度では、後工程の圧延工程で生成する酸化物スケールを除去するためのデスケーリング処理により、表層改質層も部分的に脱離もしくは除去されやすいという問題がある。また、特許文献5の実施例に開示されている様に、誘導加熱とプラズマ加熱を併用して溶融改質処理を行うことにより、鋳片の表層20mmを溶融処理する方法が開示されている通り、プラズマ加熱だけで鋳片の表層5mm超を溶融処理するものは開示されていない。
【0009】
誘導加熱によれば、鋳片の表層20mm程度の溶融処理を行うことは可能であるが、誘導加熱では電磁力を発生するため、処理している鋳片の面に電磁力の分布が生じ、このため、深さ方向のばらつきが大きくなるという問題があるのに対し、プラズマ加熱では、深さ方向のばらつきを小さくできるという利点がある。しかし、上述の通り、プラズマ加熱では、鋳片の表層5mm程度しか溶融処理できないという問題がある。
【0010】
ちなみに、溶融処理する鋳片の移動速度を極端に遅くすれば、鋳片の表層20mm程度の溶融処理であっても実施することは可能であるが、生産効率が顕著に低下するため、現実的ではない。
【0011】
本発明は、生産性を低下することなく、従来よりも表層改質層が厚く、かつ溶融部分の深さ方向のばらつきが小さい鋳片を製造する方法、その方法により得られる鋼鋳片、この鋼鋳片を圧延して得られる鋼板、およびこの鋼板を加工して得られる鉄鋼製品などの加工製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 搬送されている鋼鋳片を、バーナー加熱、誘導加熱、プラズマ加熱のうちの少なくともいずれかの方法によって予熱し、その後、プラズマ加熱によって20W/mm以上の表面入熱密度で、鋼鋳片表面から10mm以上の表層部を溶融処理することを特徴とする、鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(2) 前記プラズマ加熱によって溶融処理している鋼鋳片の表層部溶融部分に、金属元素、合金、または異種鋼材の少なくともいずれかを添加することを特徴とする、前記(1)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(3) 前記の金属元素は、シリコン、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウムから選択される1種以上であることを特徴とする、前記(2)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(4) 前記の合金または異種鋼材に含有される元素は、炭素、窒素、りん、硫黄、ボロン、シリコン、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウムから選択される1種以上であることを特徴とする、前記(2)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(5) 前記の溶融処理を行う前の鋼鋳片が銅を含有する鋼鋳片であり、前記の金属元素がニッケル、または、合金もしくは異種鋼材に含有される元素がニッケルであることを特徴とする、前記(2)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(6) 前記のプラズマ加熱によって鋼鋳片を溶融処理する際に、100Hz以上の交流磁場により振動させた直流アークプラズマを用いることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(7) 前記の交流磁場を発生させる交流電流の波形が正弦波であることを特徴とする、前記(6)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(8) 前記の交流磁場を発生させる交流電流の波形が矩形波であることを特徴とする、前記(6)に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(9) 前記のプラズマ加熱によって鋼鋳片を溶融処理する際に、プラズマトーチガスとしてArガスをベースガスとし、Heガス、Hガス、HOガス、Nガス、NHガス、COガス、炭化水素ガスから選択される1種以上を配合した混合ガスを使用することを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(10) 鋼鋳片の片面のみに溶融処理を行うこと、両面ともに同一の条件で溶融処理を行うこと、または一方の面と他方の面で異なる処理条件で溶融処理を行うことを特徴とする、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法により得られる鋼鋳片であって、鋼鋳片表面から10mm以上の厚みの表層部に溶融処理部を有することを特徴とする、表層改質鋼鋳片。
(12) 前記(11)に記載された鋼鋳片を、熱間圧延、厚板圧延、または熱間圧延後に更に冷間圧延して得られたことを特徴とする、表層改質加工製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産性を低下することなく、プラズマ加熱により、鋼鋳片の表層部10mm以上を溶融処理して、深さ方向のばらつきが小さい鋳片を製造することができる。さらに、鋼鋳片の表層部10mm以上を溶融処理して高清浄化を図ったり、あるいは、10mm以上の表層溶融処理部分に、金属元素、合金、もしくは異種鋼材を添加して高機能化を図り複合鋼材を得ることができる。また、母材の延性・靭性を保ったまま、表層改質層が10mm以上の鋳片を得ることができ、また、表層部が耐食性・耐磨耗性・耐久性に優れた加工製品を安定して製造することが可能となり、特殊な自動車部品、機械部品、構造材など耐久性の必要となる用途に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した場合のプラズマによる金属材料の溶融処理状態を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)はその側面図を示している。
【図2】図1における直流プラズマの振動原理を説明するための図であり、(a)は交流磁場の作用方向が左奥側から右手前方向の場合、(b)は交流磁場の作用方向が右手前側から左奥側方向の場合の、各々の電磁力の作用方向を示している。
【図3】表面入熱密度に対する溶融深さを示すグラフである。
【図4】プラズマアーク制御電流周波数に対する鋳片入熱効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者らは、表層改質層が5mm程度では、後工程の圧延工程で生成する酸化物スケールを除去するためのデスケーリング処理により、表層改質層も部分的に脱離もしくは除去されやすいという問題に対して、検討を進めた。その結果、表層改質層が10mm以上であれば、熱延工程あるいはさらに冷延工程を経ても、表層改質層が健全に維持され、また、圧下により母材中の粗大な介在物が表層部に押し込まれることもないため、割れや疵等の発生のトラブルがなく加工もできるため、欠陥率を非常に小さくできることを実験的に知見した。
【0016】
そこで、生産性を低下させることなく、プラズマ加熱処理により、鋳片表面から10mm以上の表層部を溶融処理するための条件を、鋭意、検討したところ、プラズマ加熱によって鋳片への表面入熱密度を20W/mm以上の表面入熱密度とすることで、溶融深さが急激に大きくなることが判明し、鋳片表層を10mm以上の肉厚で安定的に溶融することが可能であることを見出した。
【0017】
更には溶融した表層部分の有害な酸化物系非金属介在物が除去されているため高清浄化層を有する鋳片が得られ、また表層溶融部分に、金属元素、合金、もしくは異種鋼材を添加した高機能化層を有する鋳片が得られ、さらに、溶融改質した鋳片を用いて加工した製品も得ることができるため、製品用途が格段に拡がることを可能とできる。以下、詳細に説明をする。先ず、本発明を完成するに至った実験について説明する。
【0018】
発明者らは、プラズマ加熱を用いて鋳片を移動させながら、鋳片の表層を溶融する実験を行った。その結果、生産性を低下させないためには、少なくとも0.1m/min以上の鋳片の移動速度を確保することが好適であるため、そのためには、予熱することなくプラズマ加熱処理のみで溶融処理を行うことは、現実的に困難であることが判明した。尚、鋳片の移動速度は大きい方が、生産性が向上するため、0.5m/min以上が好ましく、1.0m/min以上がより好ましく、1.2m/min以上がさらにより好ましい。
【0019】
そこで、プラズマ加熱を用いて鋳片の表層を溶融処理する前に、予熱を行うこととした。予熱を行う方法としては、バーナー加熱、誘導加熱、プラズマ加熱を用いることができ、これらを組み合わせて用いても良い。また、予熱温度は、特に規定するものではないが、鋳片表面温度で800〜900℃程度が例示できる。
【0020】
この予熱の後に、プラズマ加熱を用いて鋳片の表層の溶融を行った。これを図1、図2によって具体的に説明する。図1に示す如く、プラズマトーチ1は直流電源8からの電圧の印加によって、導入したプラズマガス7から、金属材料11との間に直流プラズマによるプラズマを形成する。プラズマトーチ1から金属材料11に向って噴射されるプラズマに近接して2個の矩形ループ状のプラズマ振動用コイル2、2を対向して配置し、該プラズマ振動用コイル2、2によりプラズマの振動を行う。それぞれ交流電源9に接続する2個のプラズマ振動用コイル2、2は、プラズマを挟んで対向するように金属材料11の幅方向に設置され、コイル電流は金属材料幅方向に流れる。
【0021】
発生したプラズマはプラズマトーチ1が陰極、金属材料11が陽極となっており、図2に示すように、プラズマトーチ1から電子流13が放出され、電流12は金属材料11からプラズマトーチ1に流れる。この電流12に対して、2個のプラズマ振動用コイル2、2に通電することによって発生する交流磁場14を作用させると、フレミングの左手の法則により、図1(a)の正面図では紙面に垂直の方向に、図1(b)の側面図では左右の方向にローレンツ力が発生し、プラズマを図1(b)における往復矢印で示した電磁力による振動方向10に振動させる。図2(a)、(b)に示した15がプラズマを振動させる電磁力であり、図2(a)に示したように交流磁場14の作用方向が左奥側から右手前方向(図面左上から右下方向)の場合には、電磁力15は図2(a)に示したように図中の右側に働き、図2(b)に示したように交流磁場14の作用方向が右手前側から左奥側方向(図面右下から左上方向)の場合には、電磁力15は図2(b)に示したように、図中の左側に働く。このような交流磁場14の作用によって電磁力15の働く方向が正反対となることによって図1(b)に示す如く、金属材料11側に広がった扇形の扁平プラズマ6が形成される。このプラズマの振動及び金属材料11の一定速度の移動(図1(a)中の移動方向5で示す)により、金属材料11はこのプラズマ振幅にそった幅で長手方向に連続的に溶融され、溶融部3を生成する。なお図1(a)における4は溶融部3が再凝固した部分を示す。
【0022】
この実験では、金属材料11である鋳片に熱電対を埋め込んで、鋳片の温度を測定し、鋳片への入熱量を算出した。
具体的には、まず、鋳片におけるプラズマ加熱を行う面と反対の面から、深さ位置を相違させた熱電対を鋳片内に2つ以上配置して、深さ方向に2箇所以上の温度を測定し、プラズマ加熱側から反対面側への熱流束を求める。
【0023】
次に、プラズマから出力された熱量に対して、鋳片の溶融処理面で放熱する熱量を仮定し、(プラズマから出力された熱量)−(鋳片の溶融処理面で放熱する熱量)−(プラズマ加熱側から反対面側への熱量)を、鋳片表層における入熱量として算出するとともに、鋳片内部の温度分布を求める。
【0024】
この計算を、熱電対で測定している温度にほぼ合致するまで、鋳片の溶融処理面で放熱する熱量を変化させて、繰り返し計算することにより、鋳片表層入熱量が求まる。従って、鋳片の移動速度に応じて、鋳片表層入熱密度を求めることができる。
【0025】
こうして、鋳片を加熱し、溶融実験を行いながら、鋳片の溶融深さと、鋳片表面への入熱量の関係を詳細に調査、解析を行った。その結果、図3に示すように鋳片表面への入熱密度(以降、「入熱密度」と記載する場合がある。)が20W/mm以上となると、溶融深さが飛躍的に向上し、10mm以上の溶融深さを達成できることを見出した。また、プラズマ加熱で溶融処理を行っているので、10mm以上の溶融深さが、均一に得られていることも併せて確認した。
【0026】
その理由の詳細は不明であるが、入熱密度が20W/mm以上となると、飛躍的に熱対流やマランゴニ対流による溶鋼流動が大きくなっているためであると考えられる。入熱密度が比較的小さい場合、鋳片の表層の一部は溶融するが、表層の方が温度が高い状態となり、熱対流が起きにくい状態であると考えられる。また、入熱密度小さいために、他の表層部分との温度差も小さくマランゴニ対流も起きにくい状態であると考えられる。しかし、入熱密度が20W/mm以上と大きくなると、他の表層部分との温度差が大きくなり、マランゴニ対流が引き起こされ、それに伴い熱対流も引き起こされることで、大きな流動が発生する。こうして、20W/mm以上となると、溶融深さが飛躍的に向上するものと考えられる。
【0027】
また、この10mm以上の溶融深さ部分の酸化物系非金属介在物の個数密度を調査し、解析した結果、欠陥の原因となる10μmを超えるような粗大な介在物は全く観察されず、高清浄性化層を有する鋳片が得られていることも、併せて見出した。
これは、プラズマ加熱により、鋳片の表層が溶融するため、この溶融処理部分に存在している粗大な介在物が最表層部へ浮上するためと考えられる。
【0028】
こうして得られた10mm以上の厚肉の表層改質部を有する鋳片が得られることにより、後工程の加熱炉等で酸化されてスケール落ちする深さ以上の厚みの改質層を安定的に、かつ、確実に得ることができ、適用製品を飛躍的に拡大することができる。
【0029】
また、本発明では、プラズマ加熱によって溶融処理している鋼鋳片の表層部溶融部分に、金属元素、合金、または異種鋼材の少なくともいずれかを添加しても良い。この様に、金属元素、合金、または異種鋼材の少なくともいずれかを添加することにより、添加された元素が有する機能が付加されるため、高機能化層を10mm以上の肉厚で有する鋳片を得ることができる。この場合も、表層部溶融部分の深さ方向のばらつきを小さくすることができる。
【0030】
ちなみに、金属元素、合金、または異種鋼材を、溶融処理している鋼鋳片の表層部溶融部分に添加する方法としては、例えば、溶融部にワイヤーとして添加することが効率的であるが、シートの形で鋳片の部分溶融部に添加したり、粉体として溶融部分に吹き付けたり、吹き込んだりしてもよい。
【0031】
なお、添加する金属元素の成分としては、シリコン、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウム等が挙げられる。
【0032】
また、添加する合金または異種鋼材に含有される元素の成分としては、上記の金属元素の成分に加え、炭素、窒素、りん、硫黄、ボロン、および窒素或いは酸素との化合物なども含まれる。
【0033】
以下に、添加される元素の特性について説明する。
炭素:鋼材の強度を上げる働きがある。例えば、極低炭素鋼の表層のみに炭素を添加することにより、加工性を内部の鋼で維持し、表層で強度を増すことにより強度の双方に優れる鋼板の製造が可能である。
窒素:鋼材の強度を上げる働きがある。また、種々の元素と微細な窒化物を形成し、材料組織の制御に用いることが可能である。
シリコン、マンガン:特に鉄系合金に対して強度を向上させる作用がある。
リン:極低炭素鋼に添加して、強度を上げる作用がある。
硫黄:鋼の切削性を高める作用がある。
ニッケル、クロム:鋼材の耐食性を向上させる作用がある。例えば、低炭素鋼の表層にニッケル、クロムを添加することにより、表層をステンレスとすることができる。また、ニッケルは、後述の通り、銅の鋼への固溶限を上昇する作用があるため、銅による表面赤熱脆性を抑制することができる。このため、銅を添加する場合に併用される。
モリブデン:上記のニッケル、クロムに加えてモリブデンを添加することで、さらに耐食性を向上させる作用がある。
銅:加工性と強度を同時に増すことができる。ただし、上記の通り、表面赤熱脆性を発現する悪影響を及ぼす元素でもあるので、通常ニッケルと併用する。
ボロン:鋼の焼入れ性を改善することができる。
アルミニウム:普通鋼に添加することにより、耐食性を増すことができる。
マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウム:鋼中の酸素、硫黄、炭素や窒素と結びつき、微細な酸化物や硫化物を生成して、鋼材の組織を小さくし、また鋼管材など溶接される材料に用いられる場合、溶接の熱影響部では組織が粗くなって強度が低下するが、これを微細な化合物で抑制することなどができる。
【0034】
また、添加元素の合金については、上記添加元素の複数成分の合金であれば特に規定するものではないが、通常はフェロマンガン、フェロニッケル、フェロリンその他合金鉄等が用いられる。
【0035】
さらに、添加元素成分と窒素との化合物について、ステンレスについて見てみると、オーステナイト形成元素である窒素を添加することによりこれらの組織を小さくすることができる。即ち、窒化鉄の様な窒素を合金の形で添加することで、結晶粒を小さくする作用があるため、圧延時の表面粗さが均一に保たれ鋼の表面形状を良好にできる。また、添加元素成分と酸素との化合物については、例えばマグネシウム酸化物の様な酸素を合金の形で添加することで、組織を微細化する作用があるため、加工割れの防止や溶接時の強度低下防止などができる。ただし、一部フェライト系ステンレス鋼では、鋳片端部の組織が粗く表面性状が悪くなるという問題もあるので、目的とするステンレス鋼に応じて、添加するか否かを選択することが重要である。
【0036】
また、対象とする鋼鋳片に銅が含有されている場合、鋼鋳片の表層溶融部分に、金属元素としてニッケル、または、ニッケルを含有する合金もしくは異種鋼材を添加することで、上記の通り、鋼の表面赤熱脆性を抑制することができる。
【0037】
銅を含有する鋼は、高温酸化雰囲気に曝される際に酸化され、銅は液体銅として析出し、オーステナイト粒界に浸潤して表面割れを発生する。これが、表面赤熱脆性である。しかし、ニッケルを添加することで、銅の鉄への固溶限を大きくすることができることから、液体銅として析出しにくくなるため、表面割れを防止することができる。
【0038】
しかしながら、これまでは、高価なレアメタルであるニッケルを鋼鋳片の表層のみに確実に添加する方法がなかったため、銅を含有する鋼の表面赤熱脆性を抑制するためには、溶鋼の成分調整の段階でニッケルを添加して、鋼鋳片全体にニッケルを分散させて存在させることになることから、ニッケルを必要としない鋼鋳片の表層部以外の部分にもニッケルを無駄に添加することになるため、銅を含有しない鋼鋳片が指向されてきた。
【0039】
このため、銅の含有量の多い安価な低級スクラップは、ほとんど、使用されることはなく、また、銅が有する加工性と強度を同時に増すという利点も、ほとんど享受されていないという問題があった。
【0040】
これに対して、本発明では、銅を含有する鋼鋳片に対して、表層溶融部分のみにニッケルを確実に添加することができるため、銅の含有量の多い安価な低級スクラップという資源を有効に活用することができ、また、銅が有する加工性と強度を同時に増すという利点も享受できる。
【0041】
次に、プラズマ加熱を行うときの、プラズマアークの振動を制御する交流磁場を発生するための制御コイルに流す交流電流の周波数特性について説明する。
本発明においては、直流プラズマアークに交流磁場を作用させてプラズマアークを振動させるが、その振動数が100Hz未満である場合、プラズマアークから鋳片へ入熱する効率が30%程度と低い。ここで、鋳片入熱効率とは、単位面積あたり、かつ、単位時間あたりでの、(鋳片表面入熱量)/(プラズマアークから出力される熱量)×100で定義される。
【0042】
そこで、発明者らは、振動数を上げていく実験を行ったところ、図4のグラフに示したように、100Hz以上となるところから急激に鋳片入熱効率が向上することを見出した。
【0043】
これについては、振動している直流プラズマアークの挙動を高速度カメラで撮影して、その画像の解析によりこの現象を解明することができた。具体的には、画像解析により、プラズマアークの振動数が100Hz未満である場合、プラズマアークは比較的ゆっくりと振動し、鋳片に到達する最下点において、アークが反射する現象が起こっていた。すなわち、プラズマアークを生成するプラズマトーチガスが鋳片に衝突して上向きに流れ、これにより、入熱が減少していた。
【0044】
これに対し、100Hz以上となるとプラズマアークの振動を高速化し、いわゆる、アーク振動幅をある程度保って、アークをピンチすることができるようになり、アークが反射するような現象が起こっていないことがわかった。このため、プラズマトーチガスが鋳片へ衝突しても、上向きに流れるようなことができない状態でアークがピンチされているため、鋳片への入熱量が向上していることが判明した。
【0045】
従って、100Hz以上の交流磁場により振動させた直流アークプラズマを用いることにより、入熱効率が35%以上を達成することができるようになり、鋳片の移動速度をより大きくして生産性を向上したり、あるいは、生産性を低下させることなく溶融深さがより大きい鋳片を得ることも可能となり、要求される品種を拡大することができるため、好適である。
【0046】
そして、このプラズマアークを振動させるための制御コイルに流す交流電流の波形が、溶融部分の形状の制御に関わっていることを見出した。すなわち、この交流電流の波形が正弦波である場合は、溶融部と非溶融部の界面が波状になる。また、波状の最大、最小の変動幅は1mm程度以下であることが確認した。しかし、本発明では、溶融深さは10mm以上確保されているため、変動幅の1mm程度以下というのは十分に小さいため、清浄性化厚肉を得る場合や、薄板まで圧延しても、実用上、問題はない。従って、交流電流の波形として正弦波とすることができる。正弦波は汎用の交流電流で得られ、汎用性が高く、低コスト化に有効である。
【0047】
また、交流電流の波形が矩形波である場合は、台形的な波形を作成することにより、溶融部と非溶融部の界面を平滑にすることが可能である。非常に均一性の高い溶融深さと均一性の高い成分が得られるため、高強度化厚肉を得たい場合には好適である。
【0048】
さらに、プラズマトーチガスについて説明する。プラズマトーチガスとしてArガスをベースガスとしHeガス、Hガス、HOガス、Nガス、NHガス、COガス、炭化水素ガスをそれぞれ単独、もしくは2種以上配合した混合ガスとすることにより、多原子分子ガスによる高熱効率、高熱伝達率を得ることができ高熱効率を得るためには非常に有効である。
【0049】
また、これらのHeガス、Hガス、Nガス、NHガス、炭化水素ガスを用いることで、還元雰囲気を作ることができるため、表面酸化を抑制したい場合には、有効である。一方、HOガス、COガスを用いれば、Arガスと配合比を制御することで、弱い酸化状態を得ることが可能で、表面に酸化不動体等を形成するには非常に有効である。また、同様にNガス、NHガスの配合比を制御することで、窒化処理の制御も可能となる。したがって、目的に応じて、配合するガス種や、配合比率を、適宜、設定することができる。
【0050】
また、溶融処理に際して、鋳片の片面のみに処理を行うこと、両面ともに同一の条件で処理を行うこと、または一方の面と他方の面で異なる処理条件で処理を行うこと、のいずれかの方法を実施することで、目的に応じた鋳片を得ることができる。
【0051】
具体的には、鋳片の片面のみに処理を行うことで、片面にのみに必要な機能を付与することが可能である。例えば、軌条鋼などにおいて、片面のみの高強度化を図ることで必要な合金添加が可能となる。また、片面のみに必要な機能を持たせることで、コスト削減も可能となる。
【0052】
また、両面ともに同一の条件で処理を行うことで、鋼材のどちらの表面においても同一の効果を得ることが可能となる。例えば、構造用鋼などにおいて鋼材の耐食性を両面に施したい場合や、自動車用鋼などにおいて鋼材の両表層の清浄性を向上したい場合、両面の表層部の高強度化を図りたい場合、厚板などのうち表面割れが顕著な鋼材などにおいて、表層のみ割れないよう高機能化を図りたい場合などに有効である。
【0053】
さらに、一方の面と他方の面で異なる処理条件で処理を行うことで、鋼材の表面にそれぞれ異なる機能を付与することが可能となる。例えば、鋼管などにおいて液体を輸送する内面にあたる部分は耐食性を向上させ、外面にあたる部分は高強度化を図ったり、あるいは耐候性を向上させるような場合に有効である。
【0054】
以上の通り、本発明により得られた鋳片を、熱間圧延、厚板圧延、もしくは熱間圧延後に更に冷間圧延を行うことによって、必要な構造用鋼、自動車用鋼、鋼管、軌条鋼などの加工製品を製造することが可能となる。
【0055】
ちなみに、加工製品とは薄板、厚板等の鋼板、軌条、形鋼、鋼管等が挙げられるが、通常の鉄鋼プロセスで鋳片を加工して得られる鉄鋼製品すべてを対象とする。また、熱延コイル等の半製品も含まれる。
【実施例1】
【0056】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に28本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅2000mm、厚さ250mm、長さ10mの0.001%C−0.11%Mn−0.01%Si−0.015%P−0.009%S−0.045%Al−0.005%Ti(単位は質量%)の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片の表層12mmを、制御電流の周波数を110Hzとして制御されたプラズマトーチで24W/mmの表面入熱密度で1.2m/minの速度で溶融処理した。
【0057】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきがプラスマイナス1mmであり、酸化物系介在物の最大粒径が6μmの表層高清浄化層厚肉鋳片であった。本鋳片を加工することにより、全体に良好な加工性を有し、冷延、めっき工程までも含めて欠陥率が非常に小さい薄板用鋼板を得ることができた。
【実施例2】
【0058】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に21本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅1500mm、厚さ250mm、長さ10mの0.04%C−2.0%Mn−1.0%Si−0.007%P−0.004%S−0.045%Al−0.03%Ti(単位は質量%)の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片においての表層12mmを、制御電流の周波数を110Hzとして制御されたプラズマトーチで、24W/mmの表面入熱密度で1.2m/minの速度で溶融処理し、炭素ワイヤーを用いて炭素合金添加を行い、表層の炭素成分のみ0.10質量%とした。
【0059】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきがプラスマイナス1mm、元素成分のばらつきは3%以内であった。本鋳片を加工することにより、表層が疲労強度に優れ、内部が高延性を示し、全体に良好な加工性を有する薄板用鋼板を得ることができた。
【実施例3】
【0060】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に17本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅1200mm、厚さ250mm、長さ10mの0.07%C−0.6%Mn−0.6%Si−0.03%P−0.005%S−16.5%Cr(単位は質量%)の連続鋳造鋳片の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片においての表層12mmを、制御電流の周波数を110Hzとして制御されたプラズマトーチで、24W/mmの表面入熱密度で1.2m/minの速度で溶融処理し、その際にプラズマのガスをアルゴン−窒素とすることにより窒素添加を行い、表層の窒素成分のみ0.07質量%とした。
【0061】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきがプラスマイナス1mm、元素成分のばらつきは5%以内であった。本鋳片を加工することにより、端部の表面性状が良好な薄板用ステンレス鋼板を得ることができた。
【実施例4】
【0062】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に28本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅2000mm、厚さ250mm、長さ10mの0.001%C−0.11%Mn−0.01%Si−0.015%P−0.009%S−0.045%Al−0.005%Ti(単位は質量%)の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片の表層13mmを、制御電流の周波数を1000Hzとして制御されたプラズマトーチで、50W/mmの表面入熱密度でラインスピードを約1.2倍とした1.4m/minの速度で溶融処理した。
【0063】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきがプラスマイナス1mmであり、酸化物系介在物の最大粒径が6μmの表層高清浄化層厚肉鋳片であった。本鋳片を加工することにより、全体に良好な加工性を有し、冷延、めっき工程までも含めて欠陥率が非常に小さい薄板用鋼板を得ることができた。
【実施例5】
【0064】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に28本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅2000mm、厚さ250mm、長さ10mの0.001%C−0.11%Mn−0.01%Si−0.015%P−0.009%S−0.045%Al−0.005%Ti−0.3%Cu(単位は質量%)の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片の表層12mmを、制御電流の周波数を110Hzとして制御されたプラズマトーチで24W/mmの表面入熱密度で1.2m/minの速度で溶融処理し、その際に、ニッケル合金ワイヤーを用いてニッケル合金添加を行い、表層のニッケル成分のみ0.3質量%とした。
【0065】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきがプラスマイナス1mmであり、元素成分のばらつきは10%以内であった。また、処理後の鋳片には割れも無く、加熱炉で1250℃で2時間加熱したのち、熱間圧延を行った。得られた熱延板には表面割れが無く、良好な熱延板を得ることができ、その後、冷延、めっき工程までも含めて欠陥率が非常に小さい薄板用鋼板を得ることができた。
【0066】
以上の通り、Cuを含有する鋳片であっても、表層部にニッケルを添加することで、溶融処理後および熱間圧延のいずれも、表面割れを防止することができた。また、レアメタルで高価なニッケルを、添加が必要な鋳片の表層のみに添加することができたため、コストの削減も図ることができた。
[比較例1]
【0067】
連続鋳造を完了した鋳片を切断後に、誘導加熱により800〜900℃の範囲で予熱を行い、その後、並列に28本プラズマトーチを並べたプラズマ加熱により溶融改質処理する方法を用いて、幅2000mm、厚さ250mm、長さ10mの0.001%C−0.11%Mn−0.01%Si−0.015%P−0.009%S−0.045%Al−0.005%Ti(単位は質量%)の幅両端部50mmを除く連続鋳造鋳片の表層を、制御電流の周波数を60Hzとして制御されたプラズマトーチで、18W/mmの表面入熱密度で1.2m/minの速度で溶融処理した。
【0068】
得られた鋳片は、断面分析したところ、深さ方向のばらつきプラスマイナス1mmであり、酸化物系介在物の最大粒径が6μmの表層高清浄化層厚肉鋳片であったものの、表層改質層の厚みは5mmと小さかった。
【符号の説明】
【0069】
1 プラズマトーチ
2 プラズマ振動用コイル
3 溶融部
4 再凝固部
5 移動方向
6 扁平プラズマ
7 プラズマガス
8 直流電源
9 交流電源
10 電磁力による振動方向
11 金属材料
12 電流
13 電子流
14 交流磁場
15 電磁力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている鋼鋳片を、バーナー加熱、誘導加熱、プラズマ加熱のうちの少なくともいずれかの方法によって予熱し、その後、プラズマ加熱によって20W/mm以上の表面入熱密度で、鋼鋳片表面から10mm以上の表層部を溶融処理することを特徴とする、鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項2】
前記プラズマ加熱によって溶融処理している鋼鋳片の表層部溶融部分に、金属元素、合金、または異種鋼材の少なくともいずれかを添加することを特徴とする、請求項1に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項3】
前記の金属元素は、シリコン、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウムから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項4】
前記の合金または異種鋼材に含有される元素は、炭素、窒素、りん、硫黄、ボロン、シリコン、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニオブ、バナジウム、セリウム、ランタン、ネオジウムから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項5】
前記の溶融処理を行う前の鋼鋳片が銅を含有する鋼鋳片であり、前記の金属元素がニッケル、または、合金もしくは異種鋼材に含有される元素がニッケルであることを特徴とする、請求項2に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項6】
前記のプラズマ加熱によって鋼鋳片を溶融処理する際に、100Hz以上の交流磁場により振動させた直流アークプラズマを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項7】
前記の交流磁場を発生させる交流電流の波形が正弦波であることを特徴とする、請求項6に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項8】
前記の交流磁場を発生させる交流電流の波形が矩形波であることを特徴とする、請求項6に記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項9】
前記のプラズマ加熱によって鋼鋳片を溶融処理する際に、プラズマトーチガスとしてArガスをベースガスとし、Heガス、Hガス、HOガス、Nガス、NHガス、COガス、炭化水素ガスから選択される1種以上を配合した混合ガスを使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項10】
鋼鋳片の片面のみに溶融処理を行うこと、両面ともに同一の条件で溶融処理を行うこと、または一方の面と他方の面で異なる処理条件で溶融処理を行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の鋼鋳片の表層溶融処理方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により得られる鋼鋳片であって、鋼鋳片表面から10mm以上の厚みの表層部に溶融処理部を有することを特徴とする、表層改質鋼鋳片。
【請求項12】
請求項11に記載された鋼鋳片を、熱間圧延、厚板圧延、または熱間圧延後に更に冷間圧延して得られたことを特徴とする、表層改質加工製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−168656(P2010−168656A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294471(P2009−294471)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】