説明

表皮材一体発泡ヘッドレスト

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表皮材の端末を折り返して形成された注入口よりヘッドレストフレームと、該ヘッドレストフレームに連結されたステーを挿入し、ヘッドレストステーの先端側を表皮材のステー挿入穴より外方に突出させて挿入保持した状態で、発泡成形型に表皮材を配設し、表皮材に形成された注入口より発泡原液を注入してパッド材を一体発泡させて形成される表皮材一体発泡ヘッドレストに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の表皮材一体発泡ヘッドレストは、例えば図4及び図5(a),(b)に示すように、ヘッドレストの表皮材1は布地または合成樹脂シートを袋状に縫製して形成されている。この表皮材1のステー突出面1a側にフレーム挿入兼発泡原液注入口5を形成し、ヘッドレストステー2a,2aとこれらヘッドレストステー2a,2aをその下端側で連結する中央杆部2bとで逆U字状に形成されたヘッドレストフレーム2を表皮材1のフレーム挿入兼発泡原液注入口5より挿入している。
【0003】表皮材1のフレーム挿入兼発泡原液注入口5より発泡原液が外部に漏れることを防止するために注入口5は表皮材1の端部5a,5bが夫々内側に折り返されて形成されている。このフレーム挿入兼発泡原液注入口5からフレーム2を挿入してそのヘッドレストステー2a,2aの先端側を挿入穴1b,1bから外方に突出させた状態で、発泡成形型に表皮材1を配設し、フレーム挿入兼発泡原液注入口5より発泡原液3aを注入し、発泡キュアー処理してパッド材3を発泡成形している。
【0004】また、図5(a),(b)に示す如く、ヘッドレストの表皮材1が平織の布地から形成された表皮材1cと、トリコット等の編み物から形成された表皮材1dとから縫製により袋状に形成されているものも存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、従来の表皮材1を平織の布地から形成された表皮材1cと、トリコット等の編み物から形成された表皮材1dとから縫製により袋状に形成する場合には、注入口5の内側に折り返されて形成された表皮材1の端部5a,5bが夫々異なる剛性を有し、表皮材1のフレーム挿入兼発泡原液注入口5の両端を引張部材7,7により外方に引張った場合に、図4及び図5(b)に示す如く、注入口5の中央部側で、剛性を有する平織の布地から形成された表皮材1cの端部5aが十分に引ききれず、外方に膨出した状態となり、発泡原液3aが注入口5の中央部側より漏出し、外観を悪化させる虞れを有していた。
【0006】本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、剛性の異なる複数の表皮材を縫製して袋状に形成された表皮材を用いた場合にも、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがなく、外観を向上させることができる表皮材一体発泡ヘッドレストを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述せる課題に鑑みてなされたもので、本発明の請求項1記載の表皮材一体発泡ヘッドレストは、表皮材の端末を折り返して形成された注入口よりヘッドレストフレームと、該ヘッドレストフレームに連結されたステーを挿入し、ヘッドレストステーの先端側を表皮材のステー挿入穴より外方に突出させて挿入保持した状態で、発泡成形型に表皮材を配設し、表皮材に形成された注入口より発泡原液を注入してパッド材を一体発泡させて形成される表皮材一体発泡ヘッドレストにおいて、前記ヘッドレストの表皮材は縫製により所望形状に形成されていると共に、前記表皮材の注入口の相互に対向する表皮材の端末が異なる素材により形成され、該表皮材の端末の剛性を有する側の端末の内側への折り返し部が他方に比較して長く形成されていることを特徴とする。
【0008】本発明の請求項2記載の表皮材一体発泡ヘッドレストは、前記表皮材の端末を折り返して形成された注入口の一方の端末が平織の布地から形成され、他方の端末が編み物から形成され、前記平織の布地から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部が、他方の編み物から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部に比較して長く形成されていることを特徴とする。
【0009】本発明の請求項1記載の表皮材一体発泡ヘッドレストによれば、ヘッドレストの表皮材は縫製により所望形状に形成されていると共に、表皮材の注入口の相互に対向する表皮材の端末が異なる素材により形成され、該表皮材の端末の剛性を有する側の端末の内側への折り返し部が他方に比較して長く形成されているので、剛性を有する側の端末が十分に内側に引き込まれ、外側に膨出する虞れがなく、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがない。
【0010】本発明の請求項2記載の表皮材一体発泡ヘッドレストによれば、平織の布地から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部が、他方の編み物から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部に比較して長く形成されているので、剛性を有する側の平織の布地から形成された表皮材の端末が十分に内側に引き込まれ、外側に膨出する虞れがなく、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがない。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る表皮材一体発泡ヘッドレストを図面を参照して説明する。図1乃至図3R>3(a),(b)は本発明に係る表皮材一体発泡ヘッドレストの実施の形態を夫々示すもので、ヘッドレスト10の表皮材11は袋状に縫製されて形成されている。
【0012】ヘッドレスト10の表皮材11のシート装着時に下面側となるステー突出面11a側にヘッドレストステー12a,12aを挿入する一対の挿入穴11b,11cが形成されていると共に、これら挿入穴11b,11cの中心を結ぶ線と平行に端縁近傍まで延長するフレーム挿入兼注入口15が開口されている。
【0013】図1に示す如く、表皮材11内に前述した従来例と同様のヘッドレストステー12a,12aとこれら間を連結する中央杆部12bとで略逆U字状に形成されたヘッドレストフレーム12が表皮材11内に挿入して保持される。
【0014】前記ヘッドレストフレーム12のヘッドレストステー12a,12aは先端側からフレーム挿入兼注入口15に挿入され、一対の挿入穴11b,11cからヘッドレストステー12a,12aを夫々外部に突出させた状態で中央杆部12bを表皮材11内に挿入して保持される。
【0015】尚、ヘッドレストフレーム12の形状は図示のものに限定されるものではなく、ヘッドレストステー12a,12aと中央杆部12bとは別体のものを一体に固着したものであってもよい。
【0016】図2に示す如く、袋状に縫製されて形成されたヘッドレスト10の表皮材11は、正面側の平織の布地等から形成された表皮材11dと、裏面側の編み物等から形成された表皮材11eとを縫製して袋状に形成されている。
【0017】尚、表皮材11d,11eは素材が異なる平織の布地及び編み物に限定されるものではなく、平織の布地同士、または軟質の合成樹脂シート同士であっても、一方が他方に比較して剛性が大きいものであればよい。
【0018】尚、更に表皮材11は、図示せざるも、表面側の布地からなる表皮と、この表皮の裏面側に接合された発泡合成樹脂シートからなるワディングと、このワディングの裏面側に積層された非通気性の軟質の合成樹脂フィルム等から形成するものであってもよい。
【0019】前記表皮材11は、袋状に縫製されて形成され、図2に示す如く、表皮材11の注入口15の相互に対向する表皮材11d,11eの端末15a,15bが異なる素材により形成されている。本実施の形態では編み物から形成された表皮材11eの端末15bの内側への折り返し部の長さLに対して、平織の布地から形成された表皮材11dの端末15aの内側への折り返し部の長さが2Lに形成されている。
【0020】尚、剛性を有する側の端末の内側への折り返し部の長さは2Lに限定されるものではなく、剛性の小さい側に比較し、長く形成されていればよい。
【0021】斯る構成によれば、フレーム挿入兼発泡原液注入口15からフレーム12を挿入してそのヘッドレストステー12a,12aの先端側を挿入穴11b,11cから外方に突出させた状態で、発泡成形型に表皮材11を配設し、フレーム挿入兼発泡原液注入口15より発泡原液13aを注入し、発泡キュアー処理してパッド材13を発泡成形することができる。
【0022】このパッド材13の発泡キュアー時に表皮材11のフレーム挿入兼発泡原液注入口15の両端を引張部材17,17により外方に引張力を与えることにより、剛性を有する側の端末15aの内側への折り返し部が内側に十分に引き込まれ、注入口15を密閉状態とすることができ、発泡原液13aが注入口15の中央部側より漏出する虞れがない。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1に記載の表皮材一体発泡ヘッドレストによれば、ヘッドレストの表皮材は縫製により所望形状に形成されていると共に、表皮材の注入口の相互に対向する表皮材の端末が異なる素材により形成され、該表皮材の端末の剛性を有する側の端末の内側への折り返し部が他方に比較して長く形成されているので、剛性を有する側の端末が十分に内側に引き込まれ、外側に膨出する虞れがなく、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがない。
【0024】本発明の請求項2に記載の表皮材一体発泡ヘッドレストによれば、平織の布地から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部が、他方の編み物から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部に比較して長く形成されているので、剛性を有する側の平織の布地から形成された表皮材の端末が十分に内側に引き込まれ、外側に膨出する虞れがなく、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがない。
【0025】本発明によれば、剛性の異なる複数の表皮材を縫製して袋状に形成された表皮材を用いた場合にも、発泡原液が注入口より漏れ出す虞れがなく、外観を向上させることができる表皮材一体発泡ヘッドレストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る表皮材一体発泡ヘッドレストの斜視図。
【図2】本発明に係る表皮材一体発泡ヘッドレストの表皮材の実施の形態の一部斜視図。
【図3】本発明に係る表皮材一体発泡ヘッドレストを示すもので、(a)は図1のA−A線断面図、(b)は図1R>1のB−B線断面図。
【図4】従来の表皮材一体発泡ヘッドレストを示す斜視図。
【図5】従来の表皮材一体発泡ヘッドレストを示すもので、(a)は図4のA−A線断面図、(b)は図4のB−B線断面図。
【符号の説明】
10 ヘッドレスト
11 表皮材
11a ステー突出面
11b 挿入穴
11c 挿入穴
11d 表皮材
11e 表皮材
12 ヘッドレストフレーム
12a ヘッドレストステー
12b 中央杆部
13 パッド材
13a 発泡原液
15 フレーム挿入兼注入口
15a 端末
15b 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表皮材の端末を折り返して形成された注入口よりヘッドレストフレームと、該ヘッドレストフレームに連結されたステーを挿入し、ヘッドレストステーの先端側を表皮材のステー挿入穴より外方に突出させて挿入保持した状態で、発泡成形型に表皮材を配設し、表皮材に形成された注入口より発泡原液を注入してパッド材を一体発泡させて形成される表皮材一体発泡ヘッドレストにおいて、前記ヘッドレストの表皮材は縫製により所望形状に形成されていると共に、前記表皮材の注入口の相互に対向する表皮材の端末が異なる素材により形成され、該表皮材の端末の剛性を有する側の端末の内側への折り返し部が他方に比較して長く形成されていることを特徴とする表皮材一体発泡ヘッドレスト。
【請求項2】 前記表皮材の端末を折り返して形成された注入口の一方の端末が平織の布地から形成され、他方の端末が編み物から形成され、前記平織の布地から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部が、他方の編み物から形成された表皮材の端末の内側への折り返し部に比較して長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表皮材一体発泡ヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3191280号(P3191280)
【登録日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【発行日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−26185
【出願日】平成9年1月24日(1997.1.24)
【公開番号】特開平10−201968
【公開日】平成10年8月4日(1998.8.4)
【審査請求日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(000210089)ジョンソン コントロールズ オートモーティブ システムズ株式会社 (10)
【参考文献】
【文献】特開 平10−128769(JP,A)
【文献】特開 平8−117462(JP,A)
【文献】特開 平6−178879(JP,A)