説明

表皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法及びその装置

【課題】自動車の内装用等の基材の表面に貼り付けて用いられる表皮材の粘着面から、保護シートを自動的手段で簡単確実に剥離するための方法とその装置を提供する。
【解決手段】吸着ベース5上に保護シート103を上にして表皮材100をセットし、この表皮材100の輪郭部の側方にめくりエアー噴出孔付の押え刃31を配置する。保護シート103を剥離する場合には、押え刃31を前進させて表皮材100の端面に刃先を突き刺し、その上でめくりエアー噴出孔からエアーを噴出させてこの力で保護シート103の端部をめくり上げる。このめくり上げたところをチャック51で摘み、チャック51を移動させることにより表皮材本体の粘着剤の表面から保護シート103を剥がし取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面の一部に鋭い刃先が突き刺さる程度の材質から成る平板状の表皮材本体
の粘着剤面に貼り付けられた保護シート(保護フィルム)の剥離方法及びこの方法の実施に際して用いられる前記保護シートの剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や客車あるいは飛行機等の場合、内装の多くは樹脂形成品(以下「基材」という。)であり、そしてこの基材の表面には、意匠目的や、安全性確保のために、樹脂製の表皮材を一体に貼り付けている例が殆どである。
【0003】
このように、意匠目的等のために基材の表面に貼り付けて用いられる表皮材は、生産工場において貼り付け箇所の形態に合わせてカッティングされたのち、貼り付け面(裏面)にあらかじめ粘着剤が塗布されていて、基材のところまで搬送したのちはそのまま貼り付ければ良い構造となっている。
【0004】
このため、前記粘着剤を塗布したのち、基材に貼り付ける直前までは、粘着剤を保護し、かつ周りに貼り付いたりしないように、粘着剤の表面には保護シートが貼り合わされている。
【0005】
このようなことから、自動車の内装部品のように、ロボットを用いて作業が行われる分野においては、表皮材を基材に貼り付ける直前に保護シートを剥がし取る作業が必要であり、この作業はやはりロボットに依存することがライン的に必要である。
【0006】
しかし、表面積の大きい表皮材であって、輪郭形状も直線部とか円曲部の在るものの場合は、保護シートを適格に剥がし取る機械的な手段がなく、現在でも人手に頼っている。
【0007】
但し、液晶のような硬質の被保護部材の表面に貼り付けられた保護シートを組み立ての段階で自動的に剥がし取る方法及びこの装置として、特開平9−309664号公報には、被保護部材に貼り付けられた保護シートの端部に上方から突当て部材を突き当てることにより部分的に剥離し、この剥離したところにエアーを吹き付けてめくり起こし、このめくり起こした部分をチャックで挟持し、この状態でチャックを位置移動させて保護シートを剥がし取る内容のものが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−309664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に紹介されている保護シートの剥離方法及び装置の場合、被保護部材が液晶のような硬質の対象物の場合には実用化が可能であるが、樹脂製の表皮材に貼り合わされた保護シートの場合、突当て部材を保護シートの表面に突き当てると、柔軟性を有する表皮材側の貼着表面に凹みや反りが出来てしまい、成形品に対する貼着強度が表皮材の輪郭部において低下し、これが経年的に剥がれの原因になる。
【0010】
また、突当て部材を保護シートに突き当てたときに、前記のように保護シート及び表皮材の表面に凹みができると、めくり起こしが不安定となり、チャッキングエラーが発生したりして、自動車の内装部品の自動生産ライン等に採用するには信頼性が足りない。
【0011】
このようなことから、上記のように現在でも、人手に頼って保護シートを剥がし取っている。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑みて提供されるものであって、その目的は、柔軟性を有する表皮材に貼られた保護シートを自動的かつ短時間に確実に剥離することにより自動生産ラインに組み入れることができる保護シートの剥離方法とその剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、表皮材の粘着面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法において、
a.柔軟性を有する表皮材本体101の裏面に塗布された粘着剤102の表面から保護シ ート103を剥がし取る方法であって、
b.前記保護シート103を上側にして前記表皮材本体101を吸着ベース5上に水平に 載置したのち、吸引力によりこの表皮材本体101を吸着ベース5上に固定する工程、
c.前記吸着ベース5上に固定された表皮材本体101の輪郭の一部であって、その端面 105に向けて押え刃31を前進させてその刃先32を肉厚に突き刺したのち、刃先3 2の上面に形成しためくりエアー噴出孔34から圧縮エアーを端面105に向けて噴出 させることにより、このエアー圧で粘着剤102の表面に貼り付けられている保護シー ト103の端部106を剥がしてめくり上げる工程、
d.前記めくり上げられた保護シート103の端部106をチャック51で摘み、このチ ャック51を表皮材本体101を横断する方向に移動させて表皮材本体101の粘着面 102の表面から保護シート103を剥がし取る工程、
から成ることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によると、表皮材に凹みをつけることなくめくり上げることができるため、この表皮材を基材に対してその輪郭部まで確実に貼り付けることができる。この結果、経年的に粘着強度が低下して表皮材がその端部から剥がれ出すという心配がない。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、保護シートの剥離装置として、前記押え刃31を表皮材本体101の端面105の肉厚に突き刺したのち、この押え刃31を微量下方に移動させることにより押え刃31の刃先32の上方に微小な空隙を形成し、噴射したエアーをこの空隙内から保護シート103の端縁106に集中的に吹きつけて保護シート103の端部106に対するめくり上げ力を高めて行う請求項1に記載の表皮材の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法から成ることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によると、表皮材を変形させずに確実に保護シートを剥離することができると共に装置の小型化を図ることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の剥離方法において、前記押え刃31を表皮材本体101の端面105に突き刺す際、押さえ板39が保護シート103を上面から押さえ、併せて吸盤38が端部106の上面に吸着し、その後ともに上昇し、ここにエアー圧をかけて大きくめくり上げることにより摘み代104を形成すると共に、この摘み代104の後方に移動して来た垂直な当て板59に摘み代104をエアー圧で押しつけて垂直に保持したのち、チャック51を下降後当て板59を逃がしてから、摘み代104をチャッキングして表皮材本体101を横断する方向にチャック51を移動させて保護シート103を剥がし取ることを特徴とするものである。
【0018】
この発明によると、表皮材の供給、保護シートの剥離を自動化することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、保護シートの剥離装置において、
a.ベース面5a全体に表皮材固定用の吸引孔6を設けると共に移動レール2、2a上に 後方に向って移動自在に載置された構成の吸着ベース5と、
b.前記吸引孔6を負圧装置に結び、吸着ベース5上に載置された表皮材本体101を負 圧の力で吸着固定するための減圧装置7と、
c.前記吸着ベース5の側方に位置し、かつ刃先32を表皮材本体101の端面105に 対向させ、この刃先32の上面に形成したテーパー面33にめくりエアー噴出孔34を 形成すると共に表皮材本体101の端面105に向けて前進し、刃先32を端面105 の肉厚に突き刺し、前記エアー噴出孔34から圧縮エアーを端面105に吹き付けてこ の吹き付け力により表皮材本体101の端面105において保護シート103の端部1 06をめくり起して摘み代104を形成する押え刃31と、
d.前記めくり起された端部106の摘み代104がエアー圧の反対側に倒れるのを押え るためにめくり起された端部106の裏側部分に移動して来て停止する当て板59と、
e.前記押え刃31で起された保護シート103の摘み代104から当て板59を逃がし たのち、この摘み代104のところに下降して来てこの摘み代104を挟持し、表皮材 本体101を横断する方向に移動して粘着剤102の表面から保護シート103を剥が し取る保護シート剥離ユニット50と、
から成ることを特徴とするものである。
【0020】
この発明によると、簡単な装置により表皮材本体101から保護シート103を確実に剥がし取ることができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の剥離装置において、前記吸着ベース5の上方を横断する方向に配置された2本の移動ガイドレール23へローラーユニット24を介して跨ぐ様に吊設された移動プレート25を設け、この移動プレート25の下面に形成した吸盤22により吸着して表皮材100を吸着ベース5の処に搬送して来てセットする表皮材供給ユニット20を設けて成ることを特徴とするものである。
【0022】
この発明によると、表皮材を自動的に吸着ベースへ供給することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の剥離装置において、前記めくり押え刃31の上面に形成したエアー噴出孔34をテーパー面33に沿って多段に形成して成ることを特徴とするものである。
この発明によると、めくり押え刃31の突き刺し位置に多少の狂いがあっても、確実にエアーを表皮材本体101と保護シート103間に噴射することができる。
【0024】
また、請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の剥離装置において、前記めくり押え刃31の上面に形成したエアー噴出孔34をテーパー面33に沿って長孔又はスリットを多数に形成して成ることを特徴とするものである。
この発明によると、めくり押え刃31の突き刺し位置に多少の狂いがあっても、確実にエアーを表皮材本体101と保護シート103間に噴射することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上で説明したように、表皮材の端面に押え刃を突き刺して表皮材を押えながら表皮材の端面にエアーを噴射して保護シートの端縁をめくり上げ、ここをチャッキングして表皮材を横断する方向に移動することにより表皮材の粘着面から保護シートを剥がし取るようにしたため、保護シートを確実かつスピーディーに剥離することができると共に表皮材の粘着面に貼着不良が発生するような変形部が生じることはない。
【0026】
また、保護シートの剥離作用は、押え刃とこの押え刃に設けたエアーの噴射孔と、めくり上げた保護シートを摘んで表皮材を横断する方向に移動する保護シート剥離ユニットを基本としていることから、装置は簡単となり、かつ自動化した部品の生産ライン内に組み付けて利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の対象となった表皮材の平面図である。
【図2】A−A´線拡大端断面図である。
【図3】剥離装置全体の側面図である。
【図4】吸着ベースの平面図である。
【図5】めくりユニットの側面図である。
【図6】押え刃とこの押え刃の取り付け及び駆動装置の説明図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【図7】押え刃の説明図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【図8】吸着ベース、押え刃、保護シート剥離ユニットの側面図である。
【図9】吸着ベース上に表皮材を搬送して来た状態の説明図である。
【図10】吸着ベース上に表皮材をセットした状態の説明図である。
【図11】表皮材の端面に押え刃を前進させて刃先を突き刺した状態の説明図である。
【図12】エアーを噴射して保護シートの端縁をめくり上げる直前の説明図である。
【図13】保護シートの端縁を吸盤で吸着し、大きくめくり上げている状態の説明図である。
【図14】保護シートの端縁を垂直にめくり上げて当て板に当てて摘み易くした状態の説明図である。
【図15】保護シートの端縁をチャッキングする直前の説明図である。
【図16】チャッキングした状態の説明図である。
【図17】チャックが表皮材を横断する方向に移動している状態の説明図である。
【図18】保護シート剥離ユニットと表皮材との位置関係を示す平面図であって、(a)は全体を示す平面図、(b)は図18(a)におけるB−B´部断面図、(c)は図18(a)におけるC−C´部断面図である。
【図19】保護シート剥離ユニットと吸着ベースの移動状態の説明図である。
【図20】保護シートを剥がし終えた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の表皮材の保護シート剥離装置及び保護シート剥離方法は、押え刃を表皮材の端面へ突き差してからこの端面へ剥離エアーを吹きかけて保護シートの端縁を的確に剥離することができる。さらに、押え刃の先端の上面にテーパー面を形成し、このテーパー面にめくりエアー噴射孔を形成したことにより、剥離用の圧縮エアーを端面の最適位置へ適格に吹き当てることができる。
【実施例1】
【0029】
本実施例1では、請求項3〜請求項7に記載した剥離装置の実施例を先に説明する。先ず、本実施例1で剥離対象となる製品の例を図1、図2に示す。
【0030】
図1は、柔軟性を有する素材で作られた表皮材の平面図、図2は図1に示した表皮材のA−A´線断面図である。
【0031】
この表皮材100は、ほぼ台形状を呈し、意匠性と緩衝性を目的として車両の内装成形品(基材)に貼り付けて用いられる物であり、その断面は図2に示すように表皮材本体101に粘着剤(接着剤)102を塗布し、さらに粘着剤102の表面に樹脂フィルム製の保護シート103を貼り付けた構成となっている。また、形状の一部には他の角よりも小さな角度部分104が存在する。
【0032】
上記した表皮材100において、その表皮材本体101の粘着剤102の表面から保護シート103を剥離するための装置(本発明装置)の全体を図3に示す。
【0033】
この図3において、符号の1は表皮材100をセットするための吸着盤ユニット、20は表皮材供給ユニット、30は保護シートめくりユニット、50は保護シート剥離ユニットである。
【0034】
先ず、吸着盤ユニット1について説明すると、この吸着盤ユニット1は、図3において前後方向に敷設されたレール2、2a上に沿って移動シリンダー3により移動自在であって、この吸着盤ユニット1は、図4に示すように、表皮材100の輪郭形状に合わせた枠4で囲まれたベース5に多数の吸引孔6を形成し、この吸引孔6は減圧装置7(図3)に結ばれていて、ベース5にセットされた表皮材100をベース5の表面に吸着固定できる構成となっている。
【0035】
なお、図4において、59は保護シート当て板であって、この当て板59は駆動体60が矢印方向に出入りすることによりめくり返された保護シート103のめくり返し部が当接して垂直を保つように保持し、後述するチャック51がめくり返し部を摘む寸前に逃れる構造となっている。
【0036】
図3において、8は移動シリンダー3に連結された基板3aの下面において、レール2、2aに係合しているスライドブロック、9は基板3a上にベース5を支えている支柱、10はこの支柱9に沿って上下動し、ベース5を支持しているスライドシャフトブロック、11は基板3a上に設けられたベース5を上下動調節するための昇降シリンダーである。
【0037】
次に、表皮材供給ユニット20について説明する。この表皮材供給ユニット20は、吸着盤22を下向きに取り付けた表皮材100の保持板21を図3において左右方向に移動自在に吊設した移動ガイドレール23と、この移動ガイドレール23に対してローラーユニット24及び吊り下げ部材56を介して取り付けられた移動プレート25と、この移動プレート25に対して前記保持板21を上下動自在に吊設しているスライドガイド26と、前記保持板21と移動プレート25間に取り付けられていて、前記保持板21を前記スライドガイド26に沿って上下動させるシリンダー28とで構成されている。図3において27はスライドガイド26に対して移動プレート25を昇降自在に取り付けている軸筒である。
【0038】
次に、保護シートめくりユニット30について説明する。この保護シートめくりユニット30は、図3、図6、図7に示すように前記吸着盤ユニット1の側方であって、図4に示すように前記ベース5にセットされた表皮材100の輪郭において、最も小さな角度の角104に対向するように配設されていて、表皮材100の角104の端面105(図2参照)に向けて前進して行って刃先32が肉厚に突き刺さると共に上面に上りテーパー面33を形成し、このテーパー面33にめくりエアー噴出孔34を設けた押え刃31と、この押え刃31を取り付けた押え刃取付ブロック36を前進させる第一シリンダー35と、押え刃31を下方に微量沈み込ませる第2シリンダー37と、表皮材100の端部106を少し残して上方から押え込み自在の押さえ吸盤38と、この押さえ吸盤38の両サイドにおいて、表皮材100を保護シート103の上面から押える押さえ板39と、前記押さえ吸盤38と押さえ板39を取り付けた押さえブロック40と、この押さえブロック40を下降させる第3シリンダー41と、押え刃31が突き刺さる位置において、斜め下方からめくり上げエアーを吹き付けるめくり上げエアーノズル42で形成されている。
【0039】
次に、保護シート剥離ユニット50について説明する。この保護シート剥離ユニット50は、図3、図18に示すように、ベース5上において、角度αをつけてベース5を横断する方向に配設された移動ガイドレール52と、この図18(c)に示すように移動ガイドレール52にガイドローラー56、軸53を介して吊設され、かつシリンダー55により昇降自在のチャックブロック54とこのチャックブロック54に取り付けられたチャック51と、図18(b)に示すガイドローラーユニット24に吊設された移動プレート25との間を連結して移動プレート25の移動に併せて連動移動させる連板57で構成されている。
【実施例2】
【0040】
本実施例2は、実施例1で説明した剥離装置を用いて行う表皮材本体101からその保護シート103を剥離する方法である。
【0041】
この方法を図8〜図18を用いて詳細に説明する。
【0042】
図8は車両に用いる内装材の加工装置における保護シート剥離装置の待機状態の説明図、図9は表皮材供給ユニット20により表皮材100を搬送している様子を示す説明図、図10は吸着盤22で保持した表皮材100をベース5にセットした状態の説明図、図11は表皮材本体101の端面105へ押え刃31を突き差した状態を示す拡大説明図、図12はエアーを噴射して保護シート103の端部106をめくり上げる直前の説明図、図13は表皮押さえ板39を上昇させて吸着盤38にて保護シート103をさらに剥離させている拡大説明図、図14は第2剥離エアー吹き出し口42からの剥離エアーにて保護シート103を垂直に当て板59へ押し付けている拡大説明図、図15は剥離チャックブロック54が降下し保護シート103のめくり上げ部を挟持する寸前の説明図、図16は保護シート103をチャック51で挟持した説明図、図17は移動プレート25の移動に連動して剥離チャックブロック54が剥離方向へ移動して保護シート103を剥離している説明図、図18は移動ガイドレール52に沿ってチャックブロック54(チャック51)が移動し始めた状態を上から見た説明図、図19は、図18より更にチャックブロック54が移動した説明図、図20は保護シートの剥離を完了させた説明図である。
【0043】
本実施例2において対象となった表皮材100は、図1及び図2に示した平面形状の表皮材であって、基材(本体)100の厚さは1mm、保護シート103の厚さは0.1mmである。
【0044】
先ず、図8に示す保護シート剥離装置の待機状態において、装置の始動スイッチをONにすると、表皮材ストッカー(図示せず)から移動プレート25に設置された表皮材供給ユニット20の保持板21の吸着盤22により表皮材100が吸着され、図9に示す様に、移動ガイドレール23に沿って移動プレート25及びチャックブロック54がベース5側へ移動して来る。
【0045】
次に、保持工程として、図10に示す様に、吸着ベース5上に来ると、表皮材供給ユニット20の保持板21を降下させて吸着ベース5上へ表皮材100を載置し、減圧装置7を駆動して吸着ベース5に備えた吸引孔6を負圧化し、この吸引作用により吸着ベース5上に表皮材100を吸着保持させる(保持工程)。
【0046】
その後、表皮材押さえ付け工程として、図11に示す様に、第一シリンダー35(図10参照)にて剥離ブロック30を前進させると、表皮材押え板39が表皮材100の角部104の表面へスライドし、次に押え刃31が表皮材100の端面105の肉厚へ突き刺さる。表皮材押さえ板39が表皮材100を押さえているので、押え刃31が突き刺さる際、表皮材100が浮いたり位置ズレしたりすることがない。
【0047】
さらに、表皮材100の角部104から少し入った所定の位置に当て板59をせり出させる。
【0048】
次に、剥離準備工程として図12に示す様に表皮材本体101に突き刺された押え刃31を、第二シリンダー37の作用にて表皮材本体101の板厚の半分程度降下させると表皮材本体101と保護シート103の端部106は僅かに剥離する。
【0049】
さらに、第1剥離工程として押え刃31のテーパー面33に具備しためくりエアー噴出孔34から圧縮エアーを表皮材本体101と保護シート103の境目に吹きかけることにより、保護シート103の端部106間の剥離がさらに進む。このとき、めくりエアー噴出孔34を境目へ可及的に近づけることができるので効率良く剥離エアーを吹きかけることができる。
【0050】
また、必要に応じて第1めくり上げノズル42からも剥離エアーを吹き付けることにより確実に保護シート103を剥離することができる。
【0051】
次に、第1保持工程として、図13に示すように表皮押さえ板39に具備された吸着盤38の真空引きにより保持した前記保護シート103の端部106側を引き上げる。このとき、真空引きの負圧力を測定し、規定の負圧力になっていなければ吸着不完全として再度吸着しなおす。
【0052】
さらに、第2剥離工程として、図14に示す様に、保護シート103を吸着した表皮材押さえ板39を所定位置まで上昇させた後、押え刃31の後部に位置にした第2剥離エアー噴出口43から剥離された保護シート103の内面に向かって圧縮エアーを吹きかける。圧縮エアーの作用により剥離された保護シート103は垂直にめくり上がり、やがて保護シート当て板59へ押し付けられる。
なお、この当て板59のせり出しのタイミングは、前記第1剥離工程前、又は後となる。
【0053】
次に、挟持工程へ移る。図14の状態から、保護シート103の挟持準備工程として、図15に示す様に、剥離チャックブロック54を下降させ、剥離チャックブロック54に具備されたチャック51を開いた状態で保護シート当て板59をはさむ位置まで下降させる。下降完了後、保護シート当て板59を後退するとともに、図16に示すようにめくり上げエアーノズル42及び前記第2剥離エアー噴出口43からの圧縮エアーの噴出を停止し、チャック51を閉じることにより保護シート103の角部106を図16に示すように挟持する。
【0054】
次に、第3剥離工程として、図17に示す様に、表皮材供給ユニット20を矢印方向に移動すると、これにつれて、図18に示すようにチャックブロック54が移動ガイドレール52に沿って図19に示すように表皮材100を横断する方向(対角方向)に移動を開始する。そして、やがてチャックブロック54(チャック51)が横断を終ると、保護シート103は図20に示すようにすべてが剥離される。
【0055】
保護シート103の剥離終了後、吸着ベース5は移動シリンダー3の駆動力により、レール2、2a上を後方に移動し、ここに基材が下降して来て圧着される。
【0056】
以上の剥離工程によれば確実に表皮材本体101に貼り付けてある保護シート103を自動的かつ短時間に剥離することができ、又、表皮材100を吸着ベース5へ収納して剥離作業を行うため、表皮材100が位置決めされ、その結果次工程への展開が容易にできる。
【0057】
なお、上記した剥離装置及び剥離方法が適用された表皮材100の輪郭形状には角が存在したため、この角に向けてめくりユニット30を配置したが、表皮材100の輪郭が曲線の場合には、この曲線において最も外側に位置する部分にめくりユニット30を配置することになる。
【0058】
また、このめくりユニット30において、押え刃31は、その刃先32を平面視角あるいは曲線に合わせた形状としたり、あるいは押え刃31を2枚、又は3枚並設させた構成とすることもできる。
【0059】
また、押え刃31に設けるめくりエアー噴出孔34は、1個でも良いが、複数個設けても良く、また孔の形状も真円以外に、スリット状及び多段に形成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
100 表皮材
101 表皮材本体
103 保護シート
105 端面
1 吸着盤ユニット
20 表皮材供給ユニット
30 保護シートめくりユニット
31 押え刃
32 刃先
34 めくりエアー噴出孔
39 押さえ板
50 保護シート剥離ユニット
51 チャック
59 当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.柔軟性を有する表皮材本体101の裏面に塗布された粘着剤102の表面から保護シ ート103を剥がし取る方法であって、
b.前記保護シート103を上側にして前記表皮材本体101を吸着ベース5上に水平に 載置したのち、吸引力によりこの表皮材本体101を吸着ベース5上に固定する工程、
c.前記吸着ベース5上に固定された表皮材本体101の輪郭の一部であって、その端面 105に向けて押え刃31を前進させてその刃先32を肉厚に突き刺したのち、刃先3 2の上面に形成しためくりエアー噴出孔34から圧縮エアーを端面105に向けて噴出 させることにより、このエアー圧で粘着剤102の表面に貼り付けられている保護シー ト103の端部106を剥がしてめくり上げる工程、
d.前記めくり上げられた保護シート103の端部106をチャック51で摘み、このチ ャック51を表皮材本体101を横断する方向に移動させて表皮材本体101の粘着面 102の表面から保護シート103を剥がし取る工程、
e.から成る表皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法。
【請求項2】
前記押え刃31を表皮材本体101の端面105の肉厚に突き刺したのち、この押え 刃31を微量下方に移動させることにより押え刃31の刃先32の上方に微小な空隙を 形成し、噴射したエアーをこの空隙内から保護シート103の端縁106に集中的に吹 きつけて保護シート103の端部106に対するめくり上げ力を高めて行う請求項1に 記載の表皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法。
【請求項3】
前記押え刃31を表皮材本体101の端面105に突き刺す際、押さえ板39が保護 シート103を上面から押さえ、併せて吸盤38が端部106の上面に吸着し、その後 ともに上昇し、ここにエアー圧をかけて大きくめくり上げることにより摘み代104を 形成すると共に、この摘み代104の後方に移動して来た垂直な当て板59に摘み代1 04をエアー圧で押しつけて垂直に保持したのち、チャック51を下降後当て板59を 逃がしてから、摘み代104をチャッキングして表皮材本体101を横断する方向にチ ャック51を移動させて保護シート103を剥がし取る請求項1に記載の表皮材本体の 粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離方法。
【請求項4】
a.ベース面5a全体に表皮材固定用の吸引孔6を設けると共に移動レール2、2a上に 後方に向って移動自在に載置された構成の吸着ベース5と、
b.前記吸引孔6を負圧装置に結び、吸着ベース5上に載置された表皮材本体101を負 圧の力で吸着固定するための減圧装置7と、
c.前記吸着ベース5の側方に位置し、かつ刃先32を表皮材本体101の端面105に 対向させ、この刃先32の上面に形成したテーパー面33にめくりエアー噴出孔34を 形成すると共に表皮材本体101の端面105に向けて前進し、刃先32を端面105 の肉厚に突き刺し、前記エアー噴出孔34から圧縮エアーを端面105に吹き付けてこ の吹き付け力により表皮材本体101の端面105において保護シート103の端部1 06をめくり起して摘み代104を形成する押え刃31と、
d.前記めくり起された端部106の摘み代104がエアー圧の反対側に倒れるのを押え るためにめくり起された端部106の裏側部分に移動して来て停止する当て板59と、
e.前記押え刃31で起された保護シート103の摘み代104から当て板59を逃がし たのち、この摘み代104のところに下降して来てこの摘み代104を挟持し、表皮材 本体101を横断する方向に移動して粘着剤102の表面から保護シート103を剥が し取る保護シート剥離ユニット50と、
f.から成る表皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離装置。
【請求項5】
前記吸着ベース5の上方を横断する方向に配置された2本の移動ガイドレール23へ ローラーユニット24を介して跨ぐ様に吊設された移動プレート25を設け、この移動 プレート25の下面に形成した吸盤22により吸着して表皮材100を吸着ベース5の 処に搬送して来てセットする表皮材供給ユニット20を設けて成る請求項4に記載の表 皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保護シートの剥離装置。
【請求項6】
前記めくり押え刃31の上面に形成したエアー噴出孔34をテーパー面33に沿って 多段に形成して成る請求項4に記載の表皮材本体の粘着剤面に貼り付けられた粘着剤保 護シートの剥離装置。
【請求項7】
前記めくり押え刃31の上面に形成したエアー噴出孔34をテーパー面33に沿って 長孔又はスリットを多数に形成して成る請求項4に記載の表皮材本体の粘着剤面に貼り 付けられた粘着剤保護シートの剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−105475(P2011−105475A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263643(P2009−263643)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509294922)ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】