説明

表示システム、端末、表示装置、キャリブレーション方法、コンピュータプログラムおよび記録媒体

【課題】目的の点を高速かつ正確に指定できるようにする。
【解決手段】端末3は、端末3が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部34と、エリアカーソル画像を端末3の画面31に表示させる表示部32と、画面31で指定された点を検出する操作部35と、指定された点を表示装置2に通知する通信部33とを備え、表示装置2は、端末3との間の距離d、端末3に向かう方向を示すベクトルeを検出するセンサ部213と、距離dとベクトルeから、端末3の座標Ctを求め、座標Ctから交差する点の座標CaやCa’を計算する計算部215と、計算された座標の点にエリアカーソル211Aを表示する表示部212と、計算された点を含むエリアカーソル画像を端末3に送信する通信部214とを備えることで、端末3により目的の点を近くに見ることができ、よって、目的の点を高速かつ正確に指定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的の点を高速かつ正確に指定するための表示システム、端末、表示装置、キャリブレーション方法、コンピュータプログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、大型のディスプレイを利用して作業する機会が多い。例えば、家具や自動車のデザインでは、CADソフトを利用して、実寸大の家具などの全体が表示される。こうして表示された広い範囲にある目的の点を指定する場合、マウスを使用して、その点にカーソルをあわせるようになっている。
【特許文献1】特開2005−267169号
【非特許文献1】Myers, B., Bhatnagar, R., Nichols, J., Peck, C.H., Kong, D., Miller, R., and Long, C.:"Interacting at a distance: measuring the performance of laser pointers and other devices", proc. of ACM CHI, pp.33-40, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、目的の点がネジなどの小さなものであった場合、マウスでは、カーソルを正確にあわせられない可能性がある。また、出来たとしても時間がかかる。ディスプレイが遠くにある場合は、小さな点が見づらく、カーソルを正確にあわせるのが難しい。
【0004】
非特許文献1では、ユーザは端末を目的の点に向け、その点にカーソルを表示させることで、マウスの欠点を補っている。特許文献2では、光の点滅を利用して、同様のことを行っている。
【0005】
しかし、こうした方法を行ったとしても、目的の点が非常に小さくなると、その正確な指定は難しく、出来たとしても時間がかかる。つまり、高速性と正確性はトレードオフの関係にある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目的の点を高速かつ正確に指定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の本発明は、表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムであって、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示させる表示部と、前記画面で指定された点を検出する操作部と、前記指定された点を表示装置に通知する通信部とを備え、前記表示装置は、前記端末との間の距離、前記端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、前記距離とベクトルから、前記端末の座標を求め、前記座標から前記交差する点の座標を計算する計算部と、前記計算された座標の点に前記エリアカーソルを表示する表示部と、前記計算された点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信する通信部とを備えることを特徴とする表示システムをもって解決手段とする。
【0008】
請求項2記載の本発明は、表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおける前記端末であって、前記端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示させる表示部と、前記画面で指定された点を検出する操作部と、前記指定された点を表示装置に通知する通信部とを備えることを特徴とする端末をもって解決手段とする。
【0009】
請求項3記載の本発明は、表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおける前記表示装置であって、前記端末との間の距離、前記端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、前記距離とベクトルから、前記端末の座標を求め、前記座標から前記交差する点の座標を計算する計算部と、前記計算された座標の点に前記エリアカーソルを表示する表示部と、前記計算された点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信する通信部とを備えることを特徴とする表示装置をもって解決手段とする。
【0010】
請求項1記載の表示システムによれば、端末は、端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、エリアカーソル画像を端末の画面に表示させる表示部と、画面で指定された点を検出する操作部と、指定された点を表示装置に通知する通信部とを備え、表示装置は、端末との間の距離、端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、距離とベクトルから、端末の座標を求め、座標から前記交差する点の座標を計算する計算部と、計算された座標の点にエリアカーソルを表示する表示部と、計算された点を含むエリアカーソル画像を端末に送信する通信部とを備えることで、端末により目的の点を近くに見ることができ、よって、目的の点を高速かつ正確に指定することができる。
【0011】
請求項4記載の本発明は、表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおけるキャリブレーション方法であって、前記端末の通信部は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを3つの位置で前記表示装置に通知し、前記表示装置の計算部は、各通知につき、前記表示装置のセンサ部と前記端末との間の距離、前記センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルを用いて、前記端末が向いている方向を示すベクトルを求め、前記表示装置の計算部は、各通知につき、通知されたベクトルに変換行列を乗じた結果が前記求めたベクトルになることを示す式を生成し、前記表示装置の計算部は、前記生成された3つの式からなる連立方程式を解くことで前記変換行列を求めることを特徴とするキャリブレーション方法をもって解決手段とする。
【0012】
請求項4記載のキャリブレーション方法によれば、端末の通信部は、端末が向いている方向を示すベクトルを3つの位置で表示装置に通知し、表示装置の計算部は、各通知につき、表示装置のセンサ部と端末との間の距離、センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルを用いて、端末が向いている方向を示すベクトルを求め、表示装置の計算部は、各通知につき、通知されたベクトルに変換行列を乗じた結果が求めたベクトルになることを示す式を生成し、表示装置の計算部は、生成された3つの式からなる連立方程式を解くことで変換行列を求めることで、その変換行列により、端末が向いている方向を示すベクトルを、センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルで使用される座標系のベクトルに変換することができる。
【0013】
請求項5記載の本発明は、表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおけるキャリブレーション方法であって、前記表示装置の計算部は、所定の変換行列を変換するときに、前記通知されたベクトルを前記所定の変換行列で変換し、前記通知されたベクトルの方向を示す方位角と仰角の少なくとも一方を変化させた後の方向を示すベクトルを前記変換後の変換行列で変換したときに前記変換後のベクトルが得られるようにすることを特徴とするキャリブレーション方法をもって解決手段とする。
【0014】
請求項5記載のキャリブレーション方法によれば、表示装置の計算部は、所定の変換行列を変換するときに、通知されたベクトルを前記所定の変換行列で変換し、通知されたベクトルの方向を示す方位角と仰角の少なくとも一方を変化させた後の方向を示すベクトルを前記変換後の変換行列で変換したときに前記変換後のベクトルが得られるようにすることで、その変換後の変換行列により、端末が向いている方向を示すベクトルを、センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルで使用される座標系のベクトルに変換することができ、また、端末を3つの位置に位置させる必要がなくなる。よって、目的の点の指定後に端末がエリアカーソルに向けられたときにエリアカーソルの位置がずれることなく、その結果、スムーズにエリアカーソルを移動させて、次の目的の点を指定することができる。
【0015】
請求項6記載の本発明は、請求項5記載のキャリブレーション方法において、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列を複数生成し、前記表示装置は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択することを特徴とするキャリブレーション方法をもって解決手段とする。
【0016】
請求項7記載の本発明は、請求項5記載のキャリブレーション方法において、前記端末の通信部は、前記端末が向いている方向を示す方位角の変動量と仰角の変動量を前記表示装置に通知し、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記通知された方位角の変動量と仰角の変動量とで変動量が小さい傾向にある方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の一方を変化させ、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記表示装置の計算部は、前記小さい傾向にある方でない大きい傾向にある方に対応するものであって前記組で使用されたものの中から、最小の前記差に対応するものを選択し、前記表示装置の計算部は、再び前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記選択した方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の他方を変化させ、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択することを特徴とするキャリブレーション方法をもって解決手段とする。
【0017】
請求項7記載のキャリブレーション方法によれば、端末の通信部は、端末が向いている方向を示す方位角の変動量と仰角の変動量を前記表示装置に通知し、表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記通知された方位角の変動量と仰角の変動量とで変動量が小さい傾向にある方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の一方を変化させ、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記小さい傾向にある方でない大きい傾向にある方に対応するものであって前記組で使用されたものの中から、最小の前記差に対応するものを選択し、再び前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記選択した方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の他方を変化させ、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択することで、前述のキャリブレーション方法と同様に、スムーズにエリアカーソルを移動させて、次の目的の点を指定することができ、さらには、方位角の変動量と仰角の変動量のどちらが大きい傾向のユーザであっても、変換行列を選択するまでの計算量を少なくすることができる。 請求項8記載の本発明は、請求項2記載の端末をコンピュータにより構成するためのコンピュータプログラムをもって解決手段とする。
【0018】
請求項9記載の本発明は、請求項3記載の表示装置をコンピュータにより構成するためのコンピュータプログラムをもって解決手段とする。
【0019】
請求項10記載の本発明は、請求項8または9記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体をもって解決手段とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表示システムによれば、端末は、端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、エリアカーソル画像を端末の画面に表示させる表示部と、画面で指定された点を検出する操作部と、指定された点を表示装置に通知する通信部とを備え、表示装置は、端末との間の距離、端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、距離とベクトルから、端末の座標を求め、座標から交差する点の座標を計算する計算部と、計算された座標の点にエリアカーソルを表示する表示部と、計算された点を含むエリアカーソル画像を端末に送信する通信部とを備えることで、端末により目的の点を近くに見ることができ、よって、目的の点を高速かつ正確に指定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る表示システムを図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る表示システム1のブロック図である。 図2は、表示システム1の外観図である。図3は、画像の一例である番組表を示す図である
表示システム1は、例えば、これを使用するユーザUが指定したい地点を含む画像を表示する表示装置2と、画像内の位置を指定する端末3とを備える。画像は、図2に示すように、例えば地図であり、目的の都市のある点が指定される。画像は、図3に示すように、例えば、テレビジョン放送などの番組表であり、目的の番組情報のある点が指定される。なお、この場合、表示装置2は、図2に示すものとは異なる小型のものでもよい。
【0023】
図1に示すように、表示装置2は、画像を表示する表示画面部21と、番組の録画予約や画像の態様変更などのための処理部22とを備える。表示画面部21は、画像が表示される画面211と、そのための表示部212と、複数のセンサ部213と、端末3との通信のための通信部214と、座標や行列を計算する計算部215と、各種情報が記憶される情報記憶部216とを備える。
【0024】
図2に示すように、端末3は、画面211の前でユーザUに保持される。センサ部213は、画面211の前を避けて配置される。
【0025】
画面211は、そのユーザU側の面が、X、YおよびZ軸で規定される3次元座標系の原点でZ軸に直交するX−Y平面に含まれるように配置される。この3次元座標系を「システム座標系」という。これに対し、図4に示すように、x、yおよびz軸で規定され、端末3の向きの基準となる3次元座標系を「端末座標系」という。
【0026】
センサ部213は、そのシステム座標系でのZ座標が0となるように、画面211の上側の近い位置に配置されていることとする。
【0027】
図2に示すように、画面211の一部には、その部分を示すエリアカーソル211Aが表示される。エリアカーソル211Aは、例えば、それによって示される部分を囲む枠線と当該部分の中心を示す十字線とからなる。図3に示すように、エリアカーソル211Aは、複数の番組情報を表示した部分を囲む枠線である。以下、画面211に表示された画像における当該部分をエリアカーソル画像という。
【0028】
図5は、情報記憶部216を示す図である。
【0029】
情報記憶部216には、端末座標系での端末3の向きを示すベクトルをシステム座標系での端末3の向きを示すベクトルに変換する変換行列Dが記憶される。変換行列Dは、3×3の行列であり、9個の数値を有する。当初の情報記憶部216には変換行列Dが記憶されておらず、変換行列Dは、後述するキャリブレーションの際に生成されて記憶される。
【0030】
情報記憶部216には、エリアカーソル211Aの中心を示すシステム座標系での座標Ca(Xa,Ya,0)が記憶される(図2参照)。当初の座標Ca(Xa,Ya,0)は、画面211の例えば中心を示すものである。座標Caについては、新たなものが逐次生成され、情報記憶部216に記憶される。
【0031】
情報記憶部216には、各センサ部213につき、センサ部213の位置を示すシステム座標系での座標Cs(Xs,Ys,0)と、センサ部213から連続的に通知される距離dおよびベクトルeの中での最新のものとが記憶される。
【0032】
距離dは、センサ部213と端末3との間の距離である。ベクトルeは、センサ部213から端末3に向かう方向を示すベクトルである。
【0033】
情報記憶部216には、端末3から連続的に通知されるベクトルbの中での最新のものが記憶される。
【0034】
ベクトルbは、端末座標系で端末3が向いている方向を示すベクトルである(図4参照)。ベクトルbは、所定の長さの線分が端末座標系の原点からベクトルbの方向に向いている場合の当該線分の先端の点の座標(xt、yt、zt)で表現される。
【0035】
情報記憶部216には、端末3から連続的に通知される方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨが全て記憶される。方位角変動量Δθは、図4に示すように、端末座標系の原点でz軸に直交するx−y平面内での端末3の方向を示す方位角θが手ぶれなどによって変動する場合の変動量である。仰角変動量ΔΨは、x−y平面に垂直なz平面内での端末3の方向を示す仰角Ψが手ぶれなどにより変動する場合の変動量である。方位角θや仰角Ψが所定の角度に維持されるときの変動量を0とすると、実際には、図6に示すように、プラスまたはマイナスの変動量Δの観測され、その絶対値が変化するので、情報記憶部216には、このような変動量Δが連続的に通知され、それらが全て記憶されるのである。
【0036】
図1に戻り、端末3は、エリアカーソル画像が表示される画面31と、そのための表示部32と、表示装置2との通信のための通信部33と、1つのセンサ部34と、目的の点を指定するための操作部35と、モードを選択するためのモード選択部36と、電波を反射する反射物37とを備える。
【0037】
操作部35は、ユーザUにより画面31で行われたクリック、ドラッグ・アンド・ドロップなどの操作が行われたときに、その点の座標と操作の種類を検出するものである。操作部35は、例えば、画面31上に配置されたタッチパネルである。
【0038】
モード選択部36は、図7に示すように、例えば、端末3をもつユーザUの親指の位置に設けられたタッチセンサであり、触れられているときには、図2に示す画面211でエリアカーソル211Aが移動できる「エリアカーソル移動操作モード」とし、指が離れているときには、図5の画面31にエリアカーソル画像が表示されたままとなってしかも画面31を操作できる「エリアカーソル内操作モード」とするためのものである。
【0039】
図8に示すように、モード選択部36に触れると、エリアカーソル内操作モードがエリアカーソル移動操作モードになり、エリアカーソル移動操作モードは触れたまますると維持される。モード選択部36から指を離すと、エリアカーソル移動操作モードがエリアカーソル内操作モードになり、エリアカーソル内操作モードは指を離したままにすると維持される。モード選択部36は、こうして、触れるか否かによる直感的なモード切替を可能としている。
【0040】
(表示システム1の動作)
端末3ではセンサ部34が、連続的にベクトルbつまり端末座標系で端末3が向いている方向を示すベクトルを検出し、これを通信部33が表示画面部21の通信部214に通知する。
【0041】
詳しくは、センサ部34は、例えば、方位磁石と姿勢センサ(ジャイロセンサなど)を備え、まず、端末3が向いている方向に延びる直線を端末3を含む水平面に投影してできた直線と端末3から例えば北に向かう直線との間にできる方位角、並びに、端末3が向いている方向に延びる直線を鉛直面に投影してできた直線と該鉛直面内で端末3から水平に延びる直線との間にできる仰角を求める。次に、方位角と仰角を、これらで示される方向を示す端末座標系でのベクトルb(xb、yb、zb)に変換する。
【0042】
通信部214は、ベクトルbをその都度、計算部215に転送する。計算部215は、最新のベクトルbを情報記憶部216に記憶させておく。説明上、古いベクトルbについては、記憶されてないものとする。
【0043】
端末3ではセンサ部34が、連続的に、方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨを検出し、通信部33が表示画面部21の通信部214に通知する。
【0044】
詳しくは、センサ部34は、上記と同様に、方位角θと仰角Ψそれぞれの変動量を求め、これらを端末座標系での方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨに変換する。そして、これらを通信部33が通信部214に通知する。
【0045】
通信部214は、方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨをその都度、計算部215に転送する。計算部215は、方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨを全て情報記憶部216に記憶させておく。
【0046】
一方、センサ部213は、連続的に、このセンサ部213と端末3との間の距離dと、当該センサ部213から端末3に向かう方向を示すベクトルeを検出して計算部215に通知する。
【0047】
詳しくは、センサ部213は、端末3が存在可能な各方向に電波を放射し、その電波が反射物37に反射して戻ってきたら、その電波の往復時間から距離dを検出する。
【0048】
また、センサ部213は、例えば、方位磁石と姿勢センサ(ジャイロセンサなど)を備え、まず、センサ部213から端末3に向かう方向に延びる直線をセンサ部213を含む水平面に投影してできた直線とセンサ部213から例えば北に向かう直線との間にできる方位角、並びに、センサ部213から端末3に向かう方向に延びる直線を鉛直面に投影してできた直線と該鉛直面内でセンサ部213から水平に延びる直線との間にできる仰角を求める。次に、方位角と仰角を、これらで示される方向を示すシステム座標系でのベクトルe(Xe、Ye、Ze)に変換する。
【0049】
センサ部213は、距離dとベクトルeを計算部215に与える。図2に示すように、センサ部213と端末3の間の線分は、d・eで表現される。
【0050】
計算部215は、距離dとベクトルeをその都度受け取り、最新の距離dとベクトルeを情報記憶部216に記憶させておく。なお、説明上、古い距離dとベクトルeについては、記憶されてないものとする。
【0051】
また、端末3では、通信部33が、モード選択部36の状態を連続的に表示画面部21の通信部214に通知する。
【0052】
表示画面部21の計算部215は、通信部214を介して通知された状態が、エリアカーソル移動操作モードに対応するものなら、情報記憶部216における変換行列Dの有無を判定し、変換行列Dが無ければキャリブレーションを行う。このキャリブレーションを、便宜的に、「第1のキャリブレーション」という。
【0053】
図9は、第1のキャリブレーションの際のシーケンス図である。
【0054】
まず、計算部215は、情報記憶部216から座標Caを読み出し、座標Caを表示部212に与える(S1)。表示部212は、画像が表示された画面211の座標Caが示す位置にエリアカーソル211Aを表示させる(S3)。
【0055】
計算部215の指示で、通信部214は、端末3をエリアカーソル211Aに向けるように促すメッセージを通信部33に送信する(S11)。
【0056】
端末3では、表示部32が通信部33から受けたメッセージを画面31に表示させる(S21)。メッセージを見たユーザUは、端末3をエリアカーソル211Aに向け、向け終えたことを示す操作を例えば画面31で行う(S23)。
【0057】
通信部33は、その操作がなされたことを通信部214に通知する(S25)。
【0058】
計算部215は、変換行列Dを求める(S27)。
【0059】
詳しくは、まず、計算部215は、通信部214を介して、この通知を受けると、あるシステム座標系でのベクトルB(Xt、Yt、Zt)を求める。
【0060】
図2に示すように、端末3とエリアカーソル211Aの間の距離をkとすると、その間の線分は、k・Bで表現される。
【0061】
詳しくは、計算部215は、記憶しておいた各センサ部213と端末3との間の距離dの中の最小の距離d(以下、単に距離dという)と、これを通知してきたセンサ部213から通知され、記憶しておいたベクトルe(以下、単にベクトルeという)を使用する(図9参照)。
【0062】
計算部215は、情報記憶部216から座標Caと座標Csを読み出し、これらと、記憶された距離dとベクトルeとを用いて、ベクトルBを求める。
【0063】
計算部215は、式(1)により、cを求め、式(2)により、ベクトルBを求める。
【数1】

こうして、ベクトルBが求まるのは、以下の理由による。
【数2】

【0064】
つまり、直線の式(3)が成立し、これが座標Ca(Xa,Ya,0)を通過するので、式(4)が成立する。よって、式(1)、(2)により、ベクトルBが求まるのである。
【0065】
計算部215は、求めたベクトルBと記憶されたベクトルbの組を記憶する。
【0066】
同様に、通信部214は、端末3の位置を変えてエリアカーソル211Aに向けるように促すメッセージを通信部33に送信する。これにより、端末3の位置が変えられ、端末3を向け終えたことを示す操作がなされたことが通知されるので、計算部215は、またベクトルBを計算し、このベクトルBとベクトルbの組を記憶する。
【0067】
この2回目の計算に際して変えられた端末3の位置によっては、最小の距離dを通知したセンサ部213が、1回目のものとは異なり、2回目では、このセンサ部213から通知された距離dとベクトルeが使用される。
【0068】
計算部215は、これと同様にして、ベクトルBとベクトルbをもう1組記憶する。この3回目でも、端末3の位置によっては、別のセンサ部213から通知された距離dとベクトルeが使用される。
【0069】
こうして、ベクトルBとベクトルbの組が3組記憶される。端末3の位置が異なるので、ベクトルB、ベクトルbのそれぞれは、他の組のものに対して異なっている。
【0070】
計算部215は、連立方程式(5)を解くことで、変換行列Dを求め、これを情報記憶部216に記憶させる(S27)。なお、式(5)における添字1〜3は、3つづつ記憶したベクトルB、ベクトルbの区別のために使用したものである。
【数3】

【0071】
こうした変換行列Dが記憶されると、その後、上記の判定で、変換行列Dがあると判定される。
【0072】
図10は、それ以降のシーケンス図である。
【0073】
計算部215は、端末3からこの端末3が向いている方向に延びる直線と画面211とが交差する点の座標を計算する(S31)。計算されるのは新たな座標Caの座標である。
【0074】
詳しくは、まず、計算部215は、座標Cs(Xs,Ys,Zs)を読み出し、これと記憶された距離dとベクトルeを基に、端末3のシステム座標系における座標Ctを求める。また、計算部215は、変換行列Dを読み出し、これを記憶されたベクトルbに乗じる。その乗算の結果を便宜的にベクトルBという。計算部215は、さらに、座標Ctの点からベクトルBの方向に延びる直線と画面211とが交差する点、つまり、新たな座標Caの座標を計算し、情報記憶部216に記憶させる。
【0075】
次に、計算部215は、新たな座標Caを表示部212に与える(S41)。表示部212は、画面211の座標Caが示す位置にエリアカーソル211Aを表示させる(S43)。新旧の座標が相違していれば、エリアカーソル211Aが移動したように見える。
【0076】
次に、表示部212は、通信部214を制御して、画面211に表示された画像の座標Caを含む部分の画像つまりエリアカーソル画像を端末3の通信部33に送信させる(S45)。
【0077】
端末3では、表示部32が通信部33から受けたエリアカーソル画像を画面31に表示させる(S51)。
【0078】
ステップS31,41,43,45,51は、周期的になされるので、ユーザUは、例えば、エリアカーソル画像に目的の点が含まれていなければ、端末3の向きを変えればよい。
【0079】
こうしたエリアカーソル画像の表示は、距離dとベクトルeによって可能となるものである。仮にセンサ部213が1つでは、そのセンサ部213が距離dとベクトルeを検出できない位置に端末3がある場合には、エリアカーソル画像の表示ができない。そこで、表示システム1では、複数のセンサ部213を位置を変えて設けることで、いずれかが距離dとベクトルeを検出できる位置であれば、端末3がどのような位置にあっても、また、ユーザUが移動しながらでも、エリアカーソル画像を表示することができる。
【0080】
こうして、目的の点が表示されたら、ユーザUは、モード選択部36に例えば触れることで、その状態をエリアカーソル内操作モードに対応するものに変化させる(S61)。 こうすると、上記のように、モード選択部36の状態が表示画面部21の通信部214に通知されるなかにあって、エリアカーソル内操作モードに対応する状態が通知される(S63)。
【0081】
表示画面部21の表示部212は、通信部214を介して通知された状態が、エリアカーソル移動操作モードに対応するものなら、通信部214を制御して、エリアカーソル画像を端末3に送信させるのを中止する(S71)。
【0082】
これにより、端末3では、最新のエリアカーソル画像が画面31に表示されたままとなる。これは、端末3をエリアカーソル211Aに向けなくてよいことを示しており、ユーザUは、図2に示すように、端末3の向きを例えば画面31が見やすくなるように変え、操作部35である例えばタッチパネル上の目的の点を操作(クリックなど)する(S81)。操作部35は、例えばエリアカーソル画像の中心を原点とした2次元の座標系において、目的の点の座標Aa’を求め、さらには、操作の種類を求め、通信部33を制御し、座標Aa’と操作の種類を表示画面部21の通信部214に通知させる(S83)。
【0083】
表示画面部21では、通信部214を介して、座標Aa’を受けた計算部215が、座標Aa’を基に、操作された点のシステム座標系での点の座標Ca’を求め、情報記憶部216に記憶させる(S91)。ここで、計算部215は、情報記憶部216から座標Caを読み出し、このXa、Yaを座標Aa’に応じて増減させ、これを座標Ca’とする。
【0084】
また、計算部215は、例えば、通信部214を介して通知された操作の種類を処理部22に通知する。
【0085】
また、計算部215は、例えば、座標Ca’も処理部22に通知する。画像が番組表で操作の種類が録画に対応するものである場合、処理部22は、例えば、座標Ca’に表示された番組情報に対応する番組の録画予約等を行う。
【0086】
また、計算部215は、画像が地図などの場合、操作された点の座標Ca’を表示部212に与える(S93)。表示部212は、画面211の座標Ca’が示す位置にエリアカーソル211Aを表示させる(S95)。これにより、例えば、操作された目的の点にエリアカーソル211Aの中心が移動する。
【0087】
図11は、座標Ca’を求めた後のシーケンス図である。
【0088】
次に、表示部212は、エリアカーソル画像を端末3に送信させるのを再開する。これにより、目的の点を中心としたエリアカーソル画像が端末3に送信され(S101)、表示される。
【0089】
なお、処理部22は、通知された操作の種類に応じた指示を表示部212に行い、これにより、例えば、画像表示の態様を変化させる。
【0090】
こうして、目的の点が例えば中心に表示されたら、ユーザUは、再び端末3をエリアカーソル211Aに向ける。また、ユーザUは、その状態でモード選択部36に例えば触れることで、その状態をエリアカーソル移動操作モードに対応するものに変化させる(S111)。
【0091】
こうすると、上記のように、モード選択部36の状態が通信部214に通知されるなかにあって、エリアカーソル移動操作モードに対応する状態が通知される(S113)。
【0092】
計算部215は、通知された状態がエリアカーソル内操作モードからエリアカーソル移動操作モードに変わった場合に限っては、第2のキャリブレーションを行う(S115)。
【0093】
まず、第2のキャリブレーションでは、計算部215は、変換行列Dを読み出し、これを記憶されたベクトルbに乗じる。その乗算の結果を便宜的にベクトルBという。
【0094】
また、計算部215は、記憶した方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨとを比較して、どちらが大きい傾向になっているかを判定する。
【0095】
計算部215は、方位角変動量Δθの方が大きいなら、同一の仰角変動量ΔΨと、相違する方位角変動量Δθの1つとでなる組をつくる。計算部215は、方位角変動量Δθを1回づつ残らず使用し、つまり、その数の組を作る。例えば、方位角変動量Δθはいずれも、例えば−25度≦Δθ≦+25度の範囲から選択される。
【0096】
次に計算部215は、各組につき、その仰角変動量ΔΨと方位角変動量Δθで変換行列Dを変換行列D’に変換する。
【0097】
ここでは、式(6)に示すように、ある端末座標系でのベクトルbを変換前の変換行列Dで変換し(これを変換後ベクトルという)、ベクトルbの方向を示す仰角と方位角を仰角変動量ΔΨと方位角変動量Δθの量だけ変化させたあとの方向を示すベクトルb’を変換後の変換行列D’で変換したときに、変換後ベクトルが得られるようにする。
【数4】

【0098】
次に、計算部215は、各変換行列D’につき、それを記憶されたベクトルbに乗じる。これにより、乗算の結果であるベクトルB’がそれぞれ求まる。
【0099】
次に、計算部215は、各ベクトルB’につき、ベクトルBとの差βを求める。これにより、複数の差βが求まる。
【0100】
次に、計算部215は、前記の相違する方位角変動量Δθの中から、最小の差βに対応する方位角変動量Δθを選択する。
【0101】
次に、計算部215は、選択した方位角変動量Δθと、相違する仰角変動量ΔΨの1つとでなる組をつくる。計算部215は、仰角変動量ΔΨを1回づつ残らず使用し、つまり、その数の組を作る。例えば、仰角変動量ΔΨはいずれも、例えば−25度≦ΔΨ≦+25度の範囲から選択される。
【0102】
次に計算部215は、各組につき、上記の仰角変動量ΔΨを同一としたときと同様に、組の仰角変動量ΔΨと方位角変動量Δθで変換行列Dを変換行列D’に変換する。
【0103】
次に、計算部215は、各変換行列D’につき、それを記憶されたベクトルbに乗じる。これにより、乗算の結果であるベクトルB’がそれぞれ求まる。
【0104】
次に、計算部215は、各ベクトルB’につき、ベクトルBとの差βを求める。これにより、複数の差βが求まる。
【0105】
次に、計算部215は、前記の方位角変動量Δθを同一としたときの変換行列D’の中から、最小の差βに対応する変換行列D’を選択する。
【0106】
第2のキャリブレーションの最後に、計算部215は、選択した変換行列D’を新たな変換行列Dとして情報記憶部216に記憶させる。
【0107】
なお、計算部215は、方位角変動量Δθの方が大きいなら、先に仰角変動量ΔΨを同一としたが、仰角変動量ΔΨの方が大きいなら、先に方位角変動量Δθを同一とする。
【0108】
なお、第2のキャリブレーションでは、以下のようにしてもよい。
【0109】
つまり、まず、計算部215は、1つの方位角変動量Δθと1つの仰角変動量ΔΨとでなる組を複数つくる。計算部215は、組同士で方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨの少なくとも一方を相違させる。例えば、方位角変動量Δθはいずれも、例えば−25度≦Δθ≦+25度の範囲から選択される。仰角変動量ΔΨも同様に、例えば−25度≦ΔΨ≦+25度の範囲から選択される。
【0110】
次に計算部215は、各組につき、上記の仰角変動量ΔΨや方位角変動量Δθを同一としたときと同様に、組の仰角変動量ΔΨと方位角変動量Δθで変換行列Dを変換行列D’に変換する。
【0111】
次に、計算部215は、各変換行列D’につき、それを記憶されたベクトルbに乗じる。これにより、乗算の結果であるベクトルB’がそれぞれ求まる。
【0112】
次に、計算部215は、各ベクトルB’につき、ベクトルBとの差βを求める。これにより、複数の差βが求まる。
【0113】
次に、計算部215は、変換行列D’の中から、最小の差βに対応する変換行列D’を選択する。
【0114】
第2のキャリブレーションの最後に、計算部215は、選択した変換行列D’を新たな変換行列Dとして情報記憶部216に記憶させる。
【0115】
仮に、変換前の変換行列Dを残しておくと、エリアカーソル内操作モードに移行する直前に通知されたベクトルbと、エリアカーソル移動操作モードに移行した直後に通知されたベクトルbとが異なっていた場合、エリアカーソル211Aが移動したように見えてしまうのだが、変換後の変換行列D’を記憶させることで、そのような場合にあっても、エリアカーソル211Aが移動したように見えるのを防止することができる。
【0116】
また、第2のキャリブレーションでは、第1のキャリブレーションのように、端末3を3つの位置からエリアカーソル211Aに向ける必要がない。よって、第2のキャリブレーションは、例えば、エリアカーソル211Aを次なる目的の点に移動させるときの妨げにならない。
【0117】
また、第2のキャリブレーションの変形例では、先に仰角変動量ΔΨなどを同一とした場合との比較で、方位角変動量Δθと仰角変動量ΔΨとでなる組の数およびそれに伴う計算量が多くなるが、先に仰角変動量ΔΨなどを同一とすることで、組の数およびそれに伴う計算量を少なくすることができる。
【0118】
以上説明したように、本実施の形態に係る表示システム1によれば、例えば、家具や自動車のデザインにおいて、小さな目的の点を指定でき、これにより、局所的なデザインが可能となる。その結果、全体的なデザインが可能であることと相俟って、デザインを迅速に行うことができる。
【0119】
また、表示システム1によれば、番組表に表示された小さい目的の番組情報を指定して、録画予約等を行うことができる。
【0120】
詳しくは、端末3は、端末3が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部34と、エリアカーソル画像を端末3の画面31に表示させる表示部32と、画面31で指定された点を検出する操作部35と、指定された点を表示装置2に通知する通信部33とを備え、表示装置2は、端末3との間の距離d、端末3に向かう方向を示すベクトルeを検出するセンサ部213と、距離dとベクトルeから、端末3の座標Ctを求め、座標Ctから座標CaやCa’を計算する計算部215と、計算された座標の点にエリアカーソル211Aを表示する表示部212と、計算された点を含むエリアカーソル画像を端末3に送信する通信部214とを備えることで、端末3により目的の点を近くに見ることができ、よって、目的の点を高速かつ正確に指定することができる。
【0121】
また、第1のキャリブレーションによれば、端末3の通信部33は、端末3が向いている方向を示すベクトルbを3つの位置で表示装置2に通知し、表示装置2の計算部215は、各通知につき、距離dおよびベクトルeを用いて、端末3が向いている方向を示すベクトルBを求め、各通知につき、通知されたベクトルbに変換行列Dを乗じた結果が求めたベクトルBになることを示す式を生成し、生成された3つの式からなる連立方程式を解くことで変換行列Dを求めることで、その変換行列により、端末が向いている方向を示すベクトルを、センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルで使用される座標系のベクトルに変換することができる。
【0122】
また、第2のキャリブレーションによれば、表示装置2の計算部215は、変換行列Dを変換するときに、通知されたベクトルbを変換行列Dで変換し、通知されたベクトルbの方向を示す方位角と仰角の少なくとも一方を変化させた後の方向を示すベクトルb’を前記変換後の変換行列D’で変換したときに前記変換後のベクトルBが得られるようにすることで、その変換後の変換行列D’により、端末3が向いている方向を示すベクトルbを、センサ部213から端末3に向かう方向を示すベクトルeで使用されるシステム座標系のベクトルBに変換することができ、また、端末3を3つの位置に位置させる必要がなくなる。よって、目的の点の指定後に端末3がエリアカーソルに向けられたときにエリアカーソルの位置がずれることなく、その結果、スムーズにエリアカーソルを移動させて、次の目的の点を指定することができる。
【0123】
また、第2のキャリブレーションによれば、好ましくは、端末3の通信部33は、端末3が向いている方向を示す方位角の変動量である方位角変動量Δθと仰角の変動量である仰角変動量ΔΨを表示装置2に通知し、表示装置2の計算部215は、前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記通知された方位角の変動量と仰角の変動量とで変動量が小さい傾向にある方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の一方を変化させ、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記小さい傾向にある方でない大きい傾向にある方に対応するものであって前記組で使用されたものの中から、最小の前記差に対応するものを選択し、再び前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記選択した方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の他方を変化させ、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択することで、前述のキャリブレーション方法と同様に、スムーズにエリアカーソルを移動させて、次の目的の点を指定することができ、さらには、方位角の変動量と仰角の変動量のどちらが大きい傾向のユーザであっても、変換行列を選択するまでの計算量を少なくすることができる。
【0124】
なお、表示装置2や端末3をコンピュータにより構成するためのコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納し、陳列などして流通させたり、当該コンピュータプログラムをインターネットなどの通信網を介して伝送させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本実施の形態に係る表示システム1のブロック図である。
【図2】表示システム1の外観図である。。
【図3】画像の一例である番組表を示す図である
【図4】端末座標系を示す図である。
【図5】情報記憶部216の内容である。
【図6】方位角変動量Δθや仰角変動量ΔΨである変動量Δを示す図である。
【図7】端末3の外観図である。
【図8】モード切替の様子を示す模式図である。
【図9】第1のキャリブレーションの際のシーケンス図である。
【図10】変換行列Dがあると判定された後のシーケンス図である。
【図11】座標Ca’を求めた後のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0126】
1…表示システム
2…表示装置
3…端末
21…表示画面部
22…処理部
31…画面
32…表示部
33…通信部
34…センサ部
35…操作部
36…モード選択部
37…反射物
211…画面
211A…エリアカーソル
212…表示部
213…センサ部
214…通信部
215…計算部
216…情報記憶部
ΔΨ…仰角変動量
Δθ…方位角変動量
Aa…エリアカーソル画像で指定された座標
B…端末が向いている方向を示すシステム座標系でのベクトル
Ca…エリアカーソルのシステム座標系での座標
Cs…表示装置のセンサ部のシステム座標系での座標
Ct…端末のシステム座標系での座標
D…端末座標系のベクトルをシステム座標系のベクトルに変換する変換行列
b…端末が向いている方向を示す端末座標系でのベクトル
d…表示装置のセンサ部と端末との間の距離
e…表示装置のセンサ部から端末に向かう方向を示すシステム座標系でのベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムであって、
前記端末は、
前記端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、
前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示させる表示部と、
前記画面で指定された点を検出する操作部と、
前記指定された点を表示装置に通知する通信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記端末との間の距離、前記端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、
前記距離とベクトルから、前記端末の座標を求め、前記座標から前記交差する点の座標を計算する計算部と、
前記計算された座標の点に前記エリアカーソルを表示する表示部と、
前記計算された点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信する通信部と
を備えることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおける前記端末であって、
前記端末が向いている方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、
前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示させる表示部と、
前記画面で指定された点を検出する操作部と、
前記指定された点を表示装置に通知する通信部と
を備えることを特徴とする端末。
【請求項3】
表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおける前記表示装置であって、
前記端末との間の距離、前記端末に向かう方向を示すベクトルを検出するセンサ部と、
前記距離とベクトルから、前記端末の座標を求め、前記座標から前記交差する点の座標を計算する計算部と、
前記計算された座標の点に前記エリアカーソルを表示する表示部と、
前記計算された点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信する通信部と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおけるキャリブレーション方法であって、
前記端末の通信部は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを3つの位置で前記表示装置に通知し、
前記表示装置の計算部は、各通知につき、前記表示装置のセンサ部と前記端末との間の距離、前記センサ部から端末に向かう方向を示すベクトルを用いて、前記端末が向いている方向を示すベクトルを求め、
前記表示装置の計算部は、各通知につき、通知されたベクトルに変換行列を乗じた結果が前記求めたベクトルになることを示す式を生成し、
前記表示装置の計算部は、前記生成された3つの式からなる連立方程式を解くことで前記変換行列を求める
ことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項5】
表示装置と端末を備え、前記端末は、前記端末が向いている方向を示すベクトルを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記端末の座標を求め、前記座標から前記ベクトルの方向に延びる直線と前記表示装置の画面とが交差する点にエリアカーソルを表示し、前記点を含むエリアカーソル画像を前記端末に送信し、前記端末は、前記エリアカーソル画像を前記端末の画面に表示し、前記端末の画面で指定された点を表示装置に通知する表示システムにおけるキャリブレーション方法であって、
前記表示装置の計算部は、所定の変換行列を変換するときに、前記通知されたベクトルを前記所定の変換行列で変換し、前記通知されたベクトルの方向を示す方位角と仰角の少なくとも一方を変化させた後の方向を示すベクトルを前記変換後の変換行列で変換したときに前記変換後のベクトルが得られるようにする
ことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項6】
請求項5記載のキャリブレーション方法において、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列を複数生成し、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、
前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択する
ことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項7】
請求項5記載のキャリブレーション方法において、
前記端末の通信部は、前記端末が向いている方向を示す方位角の変動量と仰角の変動量を前記表示装置に通知し、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記通知された方位角の変動量と仰角の変動量とで変動量が小さい傾向にある方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の一方を変化させ、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、
前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、
前記表示装置の計算部は、前記小さい傾向にある方でない大きい傾向にある方に対応するものであって前記組で使用されたものの中から、最小の前記差に対応するものを選択し、
前記表示装置の計算部は、再び前記変換後の変換行列を複数生成し、このとき、前記選択した方を同一とした方位角の変動量と仰角の変動量の組を複数用いて方位角と仰角の他方を変化させ、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列のそれぞれを前記通知されたベクトルに乗じた結果のベクトルを求め、
前記表示装置の計算部は、前記求めたベクトルのそれぞれと前記通知されたベクトルの前記所定の変換行列による変換の結果であるベクトルとの差を求め、
前記表示装置の計算部は、前記変換後の変換行列から最小の前記差に対応するものを選択する
ことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項8】
請求項2記載の端末をコンピュータにより構成するためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項3記載の表示装置をコンピュータにより構成するためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項8または9記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−140215(P2009−140215A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315670(P2007−315670)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】