説明

表示デバイス

この発明は、UV照射によって劣化するプラスチックの目的物の老化を決定するための表示デバイス(5)に関する。表示デバイスは、目的物上に配置されるか、又は目的物に組み込まれて固定され、そしてUV照射によって劣化しうる顔料を含んでいる。この顔料の劣化は目的物中に含まれるプラスチックの劣化に従うか、又は法律もしくは他の規則に従って予め決められた時間間隔に対応する。
また、この発明は、前述に対応する性質を示す表示デバイス(5)を含む安全ヘルメットに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV照射により分解性を有するプラスチック目的物の劣化を決定するための表示デバイスに関し、該表示デバイスは該目的物上に固定して配置されるか又は該目的物中に組み込まれている。
本発明は、また表示デバイスを含む安全ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、種々の状況で用いられる物品である。特に、安全と個人保護のために異なる目的の製造に用いられてきている。プラスチックは、多くの有利な性質に恵まれている、例えば耐衝撃性を有し、また製造の際に異なる形状に容易に成形することができる。
【0003】
残念ながら、プラスチックは、いくつかの欠点を有している。無視し得ない欠点は、それが紫外線照射の作用のもとで、劣化(老化)することである。例えば、紫外線の存在は、異なるタイプのプラスチックにクラックをもたらす。材料開発によりこの老化を抑制する試みがなされてはいるが、現在これらの物質に対して、老化は、安全、例えば人間の保護設備に対し極めて重要な部品の製造において考慮すべき要因である。
このような製品のいくつかの例は、安全ヘルメット、子供用カーシート及び子供用の自転車シートであり、これらは、すべてその耐用年数の期間多かれ少なかれ紫外線照射(UV照射)に曝される。
【0004】
UV照射不存在下で、例えば製品が充填又は貯蔵されるとき、劣化はごくわずかである。その製品が屋内又は屋外で使用されるか、及び北緯度又は南緯度において使用されるか否かにより、老化速度の相違が観察される。換言すれば、製品が曝されるUV照射は、老化の速度に決定的な影響を与える。
【0005】
このような場合に、使用期限表示が現在行なわれているが、上記したように製品の老化を反映するのに十分な方法ではない。老化した又はその機械的強度に欠けている製品をもはや用いられなくするためには、使用期限表示は、相当の余裕安全率が適用されるように行なわなければならない。
製品が使用できる期間の制限は、UV照射に最大限曝されそしてその結果老化する仮定を出発点として捉えられる。このことは、多くの場合にUV照射に曝されていないので全く老化していないために使用可能である製品が、その使用期限表示が切れてた時に販売できなくなる。時折、老化のために欠陥となった商品が用いられる場合に、誰も人を負傷させ又は器物を破損するリスクを望まないので、使用期限表示は、尊重される。このことは、このような商品を多量に在庫している、製造者、小売業者そして末端ユーザーにとって、相当の経済損失となる。
【0006】
更なる問題の側面は、ある国が使用最大許容期間に対して極めて厳しい立法上の要件を制定していることである。このことは、1の製品と同様の他の製品は立法のために1つのマーケットでせいぜい短い期間の使用であるの対し、他のマーケットにおいてはより長い期間使用可能となる。商品の実際の耐久性は、一般に前記した期間より長い期間であるので、制定された法律に関すると同様に不必要な経済損失を避けるため、最大限許可された期間を十分に使用可能にすることが特に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の使用期限表示よりも老化の程度をより反映した表示デバイスを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
背景技術の項で説明した表示デバイスがUV照射により劣化する顔料を含み、そして該顔料の劣化に従って(follow)UV照射により目的物に含まれるプラスチック材料の劣化が生ずるか、又は法律によりもしくは他の規則により予め定められた時間間隔に従う(follow)場合に、本発明に基づき形成される目的物に到達することが可能となる。
【0009】
安全ヘルメットに関しては、表示デバイスが少なくとも請求項1又は2の記載に相当する性質を表示する場合に、本発明による目的が達成される。更なる利点は、もし表示デバイスが請求項3ないし6に記載する1またはそれ以上の特性が与えられている場合に、達成される。
【0010】
[図面の簡単な説明]
添付した図面を参照して、以下に本発明をより詳細に記述する。
図1aは、本発明による表示デバイスの一態様の断面図である。
図1bは、図1Aの表示デバイスの変形例による図である。
図2Aは、使用前における、本発明による表示デバイスの第二の態様の平面図である。
図2Bは、本発明による図2Aの表示デバイスの老化した状態の図である。
図3は、本発明による表示デバイスが安全ヘルメット上に配置された、長手方向の正面図である。
図4は、本発明による表示デバイスの第二態様の斜視図である。
図5は、本発明による表示デバイスの第三態様の斜視図である。
【0011】
[好ましい実施態様の説明]
図1a、1b、2A及び2Bは、本発明による表示デバイスの態様の例を示している。本発明のこれらの又は他の態様に共通している特徴は、表示デバイスが日光に対する公知の堅牢性(fastness)の顔料を混合したキャリア材料、典型的にはプラスチック材料から製造される。
最も好ましくは、キャリア材料は、ポリエチレンであり、この材料は、経済的で、環境にも優しく、射出成形が可能で、紫外線に安定性で、顔料を用いて色彩に適応し、また、表示デバイスの耐用期間中顔料に対する好ましい環境を提供する。
UV安定化に関して、顔料は影響されず、意図されるこれらの性質を持続できることを確認する必要がある。
【0012】
キャリア材料により導入される顔料は、そのキャリア材料よりも早く劣化するものである。光、特に紫外線の作用下で劣化の速さは、顔料の光に対する堅牢度により示される。光に対する堅牢度は、1から8の段階に等級分けされる、ここでより低位の形態では、顔料が光の作用下で迅速に劣化することを示し、一方より高位の形態は、劣化に長い時間を要することを示す。多くの顔料の性質は、よく知られており、実証されている。例えば、適当な公知の紫外線量の作用で紫色から白色、又は赤色から透明に色彩変化することは実現可能である。
【0013】
顔料の劣化とそれに伴う表示デバイスはまた表示デバイスの材料厚みにより影響される。それは、表示デバイスの表面に近接して配置される顔料が最初に及び最大限の影響を受け、一方深部の位置する顔料は、表面顔料が破壊されたときにのみ影響を受ける。このように、色彩は、薄い材料厚みの部分で最初に消失する傾向にあり、他方、より大きな材料厚み部分は初期の色を最も長く維持する。
【0014】
目的物上でUV照射の作用下で劣化程度を示す、本発明による表示デバイスに対して、顔料の劣化は、本質的に目的物の材料が劣化するのと同じ速さで起こる。
表示デバイスが示す通り、目的物中の材料が健全であることを信頼させる目的のために、多分、表示デバイスにおける顔料の劣化は、幾分早く進行させることは可能であるが、より遅く進行させてはならない。
【0015】
着色顔料と表示デバイスの材料厚みは、その表示デバイスがその上で曝される目的物中の材料が受ける劣化に適切に調和されている。しかしながら、適切な表示デバイスは、目的物として同じ材料から製造される必要はない;重要なことは、着色顔料の性質(すなわちUV照射の作用下での劣化)が、目的物自体の製造物の劣化、例えばクラックの生成に対応することである。
目的物中の材料の劣化に対応する、表示デバイス中の顔料の劣化を引き起こすために以下のファクター:光、天候、温度に関するその性質を考慮した顔料の選択;顔料が含まれる目的物の厚みと同様にその顔料の濃度、に関して主に実験された。
【0016】
適応の他の可能性は、着色顔料が劣化を受ける市場で紫外線に対して最大の許容暴露に対応するような方法で、着色顔料と材料厚みを選択することである。
このような場合には、その出発点は、許容される暴露期間に計算される全UV照射でなければならない。このように、予め定められた期間に積極的な使用(すなわち、UV照射への暴露)が達成されたときを示す、表示デバイスが得られる。
1の及び同様の目的物は、異なるマーケットに適用可能な法律又は他の規則に順応する異なる表示デバイスを備えている。
目的物が期間中に用いられないとき、UV照射から保護され、すなわち室内に保管されることを条件に、その老化は中断され、また表示デバイス中の着色顔料の劣化もまた中断される。
【0017】
図1aは、材料の厚みを変えている表示デバイス1の断面図である。材料の厚みは、薄い部分2から中間の厚み部分3を経て最大厚みに部分4に除々に変わっている。
図1bは、表示デバイス1のバリエーションの断面図である、ここで材料厚みは、端部2と最大厚みの中央部4の間で段階的に変化している。双方の図による表示デバイス1中の顔料が劣化するに従って、その色彩は、除々に消失していき、より薄い部分は最も早く、最も厚い部分が最後に消失する。色彩の除々の喪失は、ユーザーに対して、表示デバイス1がその上に固定されている目的物について製品寿命がどのくらい残っているかを示すことになる。
【0018】
図2Aは、その特有の性質が図1の表示デバイス1に対して記述されたこれらの性質と結合した表示デバイスのバリエーションを示す。図2A中の表示デバイス5は、着色されたキャリア材から製造された小さい表象(token)の形である。
顔料は、図2Aにおいて点の連続で示されている。図2Aにおいて、表示デバイス5は、その初期の状態で示されている、すなわち、表示デバイスとそれが固定されている目的物が新しく、UV照射にまだ実体的に曝されていないときである。
表示デバイス5は、図中に文字Cの形でマーキング6が備えられている。図2Aにおいて、マーキング6は、表示デバイス5中に配置された顔料によって隠蔽されている。このマーキングは、その色彩が非劣化顔料の色彩に相当するとき、特に見かけ上消失している。このマーキングは、表示デバイス5中に成形することができるが、また、後で付けることもできる、例えばプリント又は表示デバイスの内面上に貼ることもできる。
【0019】
図2Bは、表示デバイスが長期間の間UV照射に曝された後の、図2Aによる表示デバイス5を示す、この場合、その顔料は劣化してマーキング6は表面上明らかになる。表示デバイス5のような製造の際に、マーキング6は、表示デバイス中で曝される顔料よりも光に対して早く曝される、その結果マーキング6の色彩は、顔料と同じ速さでUV照射により劣化されない。マーキング6が読めるようになると、このことは、ユーザーに対して表示デバイス5がその上に固定されている目的物が消費されそして交換されなければならないことを示すシグナルになる。
【0020】
図3は、目的物上に配置された表示デバイス1、5を、より詳しくはその老化が表示デバイス1、5上で可読できるヘルメット7を示す。当然に、表示デバイス1、5は他のタイプの目的物上に配置することも可能である。この表示デバイス1、5は、よくUV照射に曝される、好ましくは最大暴露されるヘルメット7のこれらの部分と同程度に曝される。このような手段により、ヘルメット7中の材料は、表示デバイス1、5中の顔料よりは劣化しないことが保証される。
【0021】
表示デバイス1、5は、ある種の固定デバイス8によりヘルメット7に固定されている。このような固定デバイス8は、リベット止め、材料のアップセット、キャスティング、接着、又は他の利用可能な方法により実現される。行われる方法に対する1つの条件は、それが当局により制定される他の安全要求及びヘルメット7上の他の物品を満足する。表示デバイス1、5は、取り外しを困難にすべきで、少なくとも表示デバイス1、5を置き換えること、または明らかにこれが目視できることなく改ざんすることを不可能にすべきである。このような方法により、老化した安全ヘルメット7が該ヘルメット中の材料の実際の状態を反映しない新しい表示デバイス1、5を備えるというリスクを回避できる。
【0022】
本発明による表示デバイス1、5を応用する1つの方法は、顔料に光に対する異なる堅牢度を有する2又はそれ以上の均一混合物を考慮することである。
その結果、表示デバイスはそれがUV光に曝されるに従って、異なる色彩を表示するようになる。例えば、黄色が赤色よりも光に対する堅牢度高いときに、赤色と黄色の顔料を混合することは可能である。最初、表示デバイスは赤色であるが、赤色顔料が消失すると、表示デバイスは黄色に変わる。やがて、黄色に着色された顔料は消失し、そして表示デバイス白色に変わる。このことは、表示デバイス1、5とそれが固定された目的物が消耗間近であることをユーザーにあらかじめ警告を与えることになる。その結果、新しい目的物を余裕をもって注文することができる、このことは、計画購入と在庫管理の利点となる。異なる着色顔料の均一混合は、その厚みが図1に従う厚み変化、及び/又は図2Aと2Bに従って模様がはめ込まれたマーキングを備えている表示デバイス1、5を有利に組み合わせることができる。
このように、好ましい視覚上の効果は、非常に広い範囲のバリエーションを達成できる。
【0023】
本発明の変化の更なる他の方法は、表示デバイス1、5の異なる部分又は層に異種の顔料を配置することである。例えば、これらの部分は互いに隣接して配置させ、そしてこれらが同じ色彩になったときに、これれは目的物が置き換えられるべきことを示唆する。更なる方法は、第1の層が最初に消失するように異なる顔料を隣接する層に配置する、その後で第2の層の顔料が劣化を始める。このような場合、表示デバイス1、5の異なる色彩効果を変更する付加的方法を与える。異なる顔料の幾つかの層と部分の提供は、2又はそれ以上の成分の射出成形を前提とする。これらのバリエーションは、表示デバイス1、5のバリエーションと組み合わせることができる、この場合その厚みを変更し、マーキング6ははめ込まれるか、又はこの場合多数の異なる顔料が均一混合物中に存在する。表示デバイスの2つの具体的実例のバリエーション9と10を図4と5に示す。
【0024】
図4に示すバリエーションは、本質的に円形のディスク又はプレートの外形形状である。中心部15の周りに、この図では4つの互いに異なる厚みのいくつかの領域11、12、13、14が配置されている、そしてユーザーには、それによって商品の全寿命の残りの程度又は使用期間が終了したことが表示される。この表示は、図2Aと2Bに示されるマーキング6が表示デバイス9中に組み込まれているか、又はその背面上にプリントされていると、顔料の劣化が見えるようになる。例えば、マーキングは、UV光への暴露が同じ条件で、目的物が消費される前に該目的物が積極的に使用可能である、推定された残りの製品寿命を示すことができる。
【0025】
図5のバリエーションは、中央領域から離れたその厚みが完全な円周に至るまで、時計方向に連続的に増加して、ステップ17で不連続になる、周辺ゾーン16を有する。顔料の劣化に基づく色彩変化は、ゾーン16の厚みが増加するのと同じ方向に除々に行われる。上記したと同様の方法で、マーキング6は、目的物が取り替えられるべき時をユーザーに示唆するために、組み込まれるか又は表示デバイス10上にプリントされる。
【0026】
図3で表示デバイス1、5が安全ヘルメット上に固定されているように示されているが、他の目的物上に表示デバイス1、5、9、10を配置することは当然に可能であり、この場合、材料の老化をモニターすることが重要である。このことは、例えば背景技術で言及したように、子供用の自転車後部座席及び自動車の子供用安全座席のように安全面が重要である目的物に特に適用できる。
本発明は更に、添付した請求項の範囲から逸脱することなく変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】本発明による表示デバイスの一態様の断面図である。
【図1b】図1Aの表示デバイスの変形例による図である。
【図2A】使用前における、本発明による表示デバイスの第二の態様の平面図である。
【図2B】本発明による図2Aの表示デバイスの老化した状態の図である。
【図3】本発明による表示デバイスが安全ヘルメット上に配置された、長手方向の正面図である。
【図4】本発明による表示デバイスの第二態様の斜視図である。
【図5】本発明による表示デバイスの第三態様の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV照射によって劣化するプラスチックの目的物(7)の劣化を決定する表示デバイスであり、該目的物(7)上に配置又は目的物(7)中に組み込まれて固定されている該表示デバイス(1、5、9、10)であって、該表示デバイス(1、5、9、10)がUV照射によって劣化する顔料を含んでおり、そしてその顔料の劣化が該目的物(7)中に含まれるプラスチック材料の、UV照射により生ずる劣化に従うことを特徴とする表示デバイス。
【請求項2】
UV照射によって劣化するプラスチックの目的物(7)の劣化を決定する表示デバイスであり、該目的物(7)上に配置又は目的物(7)中に組み込まれて固定されている該表示デバイス(1、5、9、10)であって、該表示デバイス(1、5、9、10)がUV照射によって劣化する顔料を含んでおり、その劣化が法律もしくは他の規則により予め決められた時間間隔に対応することを特徴とする表示デバイス。
【請求項3】
前記表示デバイスの材料厚み(2、3、4、11、12、13、14、15、16)が顔料のステップワイズな劣化に対応するためにその表面に渡って変化していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表示デバイス(1、5、9、10)。
【請求項4】
前記表示デバイス(1、5、9、10)が顔料により隠蔽され、かつ該顔料の劣化によって目に見えるようになるマーキング6を含んでいることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示デバイス(1、5、9、10)。
【請求項5】
前記顔料が多段の色彩表示を実現するための異なる劣化性質を有する数個の成分の混合物であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示デバイス(1、5、9、10)。
【請求項6】
前記デバイスは顔料又は成分混合物がその顔料のステップワイズな劣化に対応するために、異なる複数層を含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示デバイス(1、5、9、10)。
【請求項7】
表示デバイス(1、5、9、10)が請求項1ないし6のいずれかの請求項に規定する性質を表示することを特徴とする、該表示デバイス(1、5、9、10)を含む安全ヘルメット(7)。



【図1a】
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【図1b】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−502408(P2007−502408A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523162(P2006−523162)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001181
【国際公開番号】WO2005/016045
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506048234)ペルター エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】Peltor AB
【Fターム(参考)】