説明

表示パネル

【課題】 見栄えのよい表示パネルを提供する。
【解決手段】 表示パネル3は、固定表示領域6と可変表示領域8とを有する表示素子12と、前記固定表示領域8に設けられる遮光層13と、前記表示素子12の表示面側に設けられる板材14と、前記表示素子12によって透過照明される固定意匠部7と、を有する表示パネル3であって、前記遮光層13は、前記板材14の反表示面側に設けられ前記固定意匠部7と対向する開口部26を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用表示装置に組み込まれ、固定表示領域と可変表示領域とを備える表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示される表示パネルが知られている。表示パネルは、表示素子と、表示パネル(以下文字板とする)と、見切り部材とからなる。表示素子は、指針によって指示される目盛り及び数字や車両の運転状態を示すウォーニング等の固定情報(固定意匠)を表示する固定表示領域と、走行距離等の可変情報(可変意匠)を日の字型セグメントによって表示する可変表示領域とを備える。固定表示領域と可変表示領域とは、文字板と見切り部材によって区画されている。文字板は、固定表示領域において透過性のインクによって目盛り等の固定意匠が印刷され、固定意匠を除いて遮光性の黒色インクによってマスクが印刷され、表示素子によって透過照明される。以上のような表示パネルは、単一の表示パネルによって構成されているため、各表示領域に発光素子や表示パネルを設けるものと比べて輝度調整作業や設計を容易にできるという効果がある。
【特許文献1】特開2003−240661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年表示パネルにおいては、限られたスペースの中で表示する情報量の増加や表示方法の多様化に加えてデザイン性や見栄えの良さが求められているが、前記特許文献1記載の表示パネルは、固定表示領域と可変表示領域とを見切り部材によって区画する構成であるため、固定表示領域と、可変表示領域との境目が、見切り部材の厚みによる段差によって目立ってしまい、見栄えを低下させてしまう恐れがある。
【0004】
一方、見切り部材に替えて黒色インク等を用いて遮光マスク印刷を施すことも考えられるが、固定表示領域との境目が印刷による段差によって目立ってしまったり、遮光性の黒色インクで覆われる固定表示領域の黒色インクの背景色と、ポジ表示する可変表示領域の背景色との色調及び質感の違いが際立ってしまい、見栄えを損なってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑み、表示パネルにおいて、見栄えのよい表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、固定表示領域と可変表示領域とを有する表示素子と、前記固定表示領域に設けられる遮光層と、前記表示素子の表示面側に設けられる板材と、前記表示素子によって透過照明される固定意匠部と、を有する表示パネルであって、前記遮光層は、前記板材の反表示面側に設けられ前記固定意匠部と対向する開口部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記固定意匠部は、前記板材の表示面側に設けられ、前記遮光層は、前記固定意匠部の輪郭よりも小さく形成される前記開口部と、前記固定意匠部と重なりあう重合部と、前記固定意匠部と重ならない非重合部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記板材は、表示面に前記固定意匠部を備え、反表示面に前記遮光層を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、請求項4に記載したように、前記板材は、透過抑制部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、見栄えのよい表示パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明による表示素子を適用した表示装置の実施形態を説明する。
【0012】
図1から図7は、本発明による表示パネルを適用した表示装置の第一の実施形態を示す正面図である。図1は、本実施形態の表示パネルを適用した表示装置の正面図であり、図2は、表示パネルの断面図であり、図3は、表示パネルの正面図である。図4は、偏光板(板材)の表示面図であり、図5は、偏光板の反表示面図であり、図6は、表示パネルの要部正面図及び断面図であり、図7は、視差を示す参考図である。
【0013】
表示装置1は、指針2と、表示パネル3と、回路基板4と、見返し板5と、からなり、図1に示すように、固定表示領域6において指針2が指示する車両の速度を示す指標である数字及び単位(固定意匠部)7を表示し、指針2が回動しない表示領域下方に設けられる可変表示領域8において、時刻や走行距離等の車両情報(可変意匠部)9を表示する。
【0014】
指針2は、指示部10と、指針2の回転中心部を覆う指針キャップ11と、を備える。指示部10は、透明な合成樹脂からなり光を導く導光材料で形成され、後に詳述する表示パネル3によって照明される。指針キャップ11は、遮光性の合成樹脂材料で形成される。
【0015】
表示パネル3は、図2に示すように、有機EL素子(表示素子)12と、遮光層13と、円偏光板(板材)14と、固定意匠部7と、からなる。有機EL素子12は、支持部材15と、有機EL素子層16と、封止部材17と、貫通孔18(図3)と、固定表示領域6と、可変表示領域8と、からなり、固定表示領域6においては、固定意匠部7を透過照明し、可変表示領域8においては可変意匠部9を発光させるポジ表示を行う。
【0016】
支持部材15は、略長方形状の平板部材でガラスや透光性樹脂等からなり、有機EL素子層16を支持する。
【0017】
有機EL素子層16は、セグメントによって固定表示領域6を構成し、ドットマトリクスによって可変表示領域8を構成する。透光性材料であるITO(indium tin oxide)等を用いた陽極である透明電極19と、ポリイミド系やフェノール系の感光性樹脂材料からなる電気絶縁性の絶縁層20と、ドットマトリクスによって表示する可変表示領域8の有機EL素子層16において用いられるフェノール系等の感光性樹脂材料からなる電気絶縁性の隔壁21と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層からなる有機層22と、アルミニウム(Al)等の非透光性材料を用いた陰極である背面電極23と、を順次蒸着法等により積層し、形成される。
【0018】
封止部材17は、例えば、ガラス材料の平板部材を支持部材15よりも若干小さく、凹形状に形成し、底部と側部とによって有機EL素子層16を収納する空間部Sを支持部材15とによって構成する。封止部材17は、底部の中央から突出する、貫通孔18の周壁となる円柱状の突出部(図示しない)が形成され、突出部の高さは、側部と同等に設定される。封止部材17は、底部に空間部Sの水分を吸収する吸湿剤Cが有機EL素子層16と所定の空隙を隔てるように塗布される。封止部材17は、支持部材15との接合部に塗布される紫外線硬化型接着剤(図示しない)を介して支持部材15に配設される。
【0019】
有機EL素子12は、有機EL素子層16を積層した支持部材15と封止部材17とを接合して形成された後に、ドリルなどによって突出部の中心をくりぬくように貫通孔18が形成される。このようにして形成された貫通孔18には、指針2の指針軸(図示しない)が挿通される。
【0020】
円偏光板14は、透光性部材であり、外光の映りこみを防止するために有機EL素子12上に設けられる。円偏光板14は、直線偏光板と位相差板からなっており、直線偏光板の偏光軸と位相差板の光軸とのなす角を±45度傾けることにより右巻き、あるいは左巻きの円偏光を得ることができる。そして、右円偏向は反射することにより左円偏向となり、左偏向は反射すると右円偏向となる。即ち、外部から入射した光(外部入射光)は、円偏光板14を通過し、右旋回または左旋回の円偏向となり、背面電極23にて反射すると、逆向きの円偏光となって有機EL素子12外部に向かって進行する。背面電極23にて反射した外部入射光は、入射光と逆向きの円偏光となっているので、円偏光板14は、反射光を透過することなく、有機EL素子12外部への進行を遮断し、反射による外光の映りこみを防ぐこととなる。
【0021】
円偏光板14は、図4に示すように、その表示面に固定意匠部7を備え、図5に示すようにその表示面の反対面に遮光層13を備える。円偏光板14は、透過抑制部材であり、無色透明ではなく、偏光によりグレーに視認される。透過率の低い円偏光板14の反表示面に遮光層13を設けることによって、固定表示領域6と可変表示領域8との境界Eを不明瞭にして目立たなくすることができ、固定表示領域6と可変表示領域8との一体感を演出し、表示パネル3の見栄えを良好なものとしている。なお、円偏光板14に替わる板材14として、グレーに着色されたカラーフィルム等を用いてもよい。
【0022】
固定意匠部7は、指針指示される固定表示領域6において、円偏光板14の表示面側に、車両の速度を示す数字及びその単位(固定意匠部)7が白色の透光性インクによって印刷される。固定意匠部7の配設位置が、円偏光板14の表示面であり、遮光層13と同様に円偏光板14の反表示面でない理由は、円偏光板14は、無色透明ではなく、グレーを帯びているため、白色の透光性インクによって印刷形成される固定意匠部7が円偏光板14の表示面の反対面に設けられると、固定意匠部7は、グレーを帯びた円偏光板14を介して視認されるため、所望の白色で視認されないからである。そのため、固定意匠部7を円偏光板14の表示面に設けることで、固定意匠部7の表示色が円偏光板14自体の色(グレー等有色の場合)に影響を受けることなく、固定意匠部7の表示色を演出できる。
【0023】
固定意匠部7は、周囲が明るいときには外光が反射することによって表示され、周囲が暗いときには有機EL素子12から発光する光によって透過照明されて表示される。これは、外光の明るい昼間に有機EL素子12からの光によってのみ固定意匠部7を表示すると、有機EL素子12の輝度を上げなければならず、電気抵抗値の増大をまねくという問題があるため、採用された表示方法である。
【0024】
遮光層13は、図4に示すように、可変表示領域8を除いた固定表示領域6において、円偏光板14の表示パネル3との対向面に遮光性の黒色インクをスクリーン印刷することによって設けられる。遮光層13は、グレーを帯びた円偏光板14を介して視認されるため、遮光層13が印刷形成される固定表示領域6と形成されない可変表示領域8との境界Eが目立たなくなり、両表示領域6,8の一体感が演出される。なお、境界Eを更に目立たなくする方法として、遮光層13の境界Eに対応する部分(可変表示領域8を囲む部分)をグラデーション印刷とすることが考えられる。
【0025】
遮光層13は、図2及び図6に示すように、固定意匠部7と重なりあう重合部24と、固定意匠部7と重ならない非重合部25と、対向する固定意匠部7の輪郭よりもひと回り小さく形成される開口部26と、を有する。即ち、開口部26は、その形状を、対応する固定意匠部7の輪郭とおよそ相似の関係にあるものとし、表示面側からみると、遮光層13の開口部26は、固定意匠部7の内側に形成されている。
【0026】
このように、遮光層13に固定意匠部7とオーバーラップする重合部24を設けた理由は、図7に示すように、固定意匠部7と対向する合同な形状の開口部27を遮光層13に設け、有機EL素子12から発光する光が光の取り出し口である開口部27をぬけて固定意匠部7を透過照明すると、利用者Uが斜めから表示パネル3を視認する際に、固定意匠部7の背後に光る開口部27を視認してしまい、不自然な感じを受けてしまうからである。これは、視差と呼ばれるものであり、この距離は、固定意匠部7と開口部27との距離であり、本実施形態においては円偏光板14の厚さ(積層深さ)Wによって決定される。
【0027】
そこで、本実施形態では、遮光層13に固定意匠部7とオーバーラップする重合部24を設けることで、図6に示すように、利用者Uが斜めから見た場合には遮光層13(重合部24)が利用者Uの視線を遮り、開口部7を直接視認することができなくする。すると、視差が解消され、不自然な感じがなくなり、見栄えが向上する。遮光層13と開口部7との重なり幅(重合部24の幅)Wは、積層深さ(固定意匠部7と開口部27との距離)Dと比例関係にあるので、積層深さDが浅いほど重なり幅Wを小さく、積層深さDが深いほど重なり幅Wを大きく設定する。有機EL素子12で発光する光を最大限利用して効率よく固定意匠部7を透過照明するためには、開口部27はできるだけ大きいほうが望ましいので、重なり幅Wを小さくする必要があり、積層深さWが浅くなるように遮光層13の形成箇所を設定する。例えば、円偏光板14と有機EL素子12との間に他の板材を介する場合には、本実施形態のように、固定意匠部7を表示面に有する円偏光板14の反表示面に遮光層13(開口部7)を設けると効果的である。
【0028】
回路基板4は、ガラスエポキシ樹脂からなる硬質の基板である。回路基板4は、その下側に指針2の駆動本体(図示しない)が固定されている。回路基板4は、可撓性接続部材(FPC)などにより、有機EL素子12と電気的に接続されてなる。
【0029】
見返し板5は、遮光性の合成樹脂からなり、有機EL素子12の表示領域6,8を露出させるための窓部27を備える。見返し板5は、その窓部27を囲むように、有機EL素子12において表示される車両の速度を示す数字の指標に対応する目盛り28を有する。目盛りは、見返し板5を切欠いてスリットを入れることによって設けられたものであり、有機EL素子12から発光する光の透過により照明される。
【0030】
従って、かかる表示装置1は、固定表示領域6と可変表示領域8との一体感を演出し、見栄えを向上させるものである。加えて、遮光層13に重合部24を設けて視差を解消しすることで、さらに見栄えを向上させている。また、固定意匠部7を表示面に有する円偏光板14の反表示面に遮光層13(開口部7)を設けることで、有機EL素子12で発光する光を最大限利用して効率よく固定意匠部7を透過照明している。また、板材14に専用の部材を用いず、表示装置に必要とされる外光の映りこみを防止する円偏光板14を用いることで、部品点数の削減及び表示パネル3の薄型化に貢献している。
【0031】
なお、本実施形態において、固定表示領域6は、セグメントの有機EL素子12によって固定意匠部7を透過照明するものであったが、面発光の有機EL素子12を用いてもよい。可変表示領域8においても、ドットマトリクス表示ではなく、セグメント表示を用いるものであってもよい。
【0032】
また、本実施形態は、固定意匠部7を円偏光板14の表示面に設けたが、請求項1にかかる本発明においては、固定意匠部7を遮光層13と共に円偏光板14の表示面の反対面に設けてもよい。
【0033】
また、表示素子12に有機EL素子12を用いたが、液晶や蛍光表示管でもよい。
【0034】
また、本実施形態は、遮光層13を円偏光板14の表示面の反対面に印刷するものであったが、表示パネル3(支持板15)の表示面に形成してもよい。
【0035】
また、本実施形態は、板材14として円偏光板14を用いたが、色調整,色変換,輝度調整に用いられる光学部材等任意である。
【0036】
また、本実施形態は、板材14として円偏光板14のみを用いたが、複数の板材を有機EL素子12上に設けてもよく、複数の板材14を設ける場合には、積層深さDを浅くして、開口部26を大きくするために、固定意匠部7を設けた板材14の反表示面に遮光層13を設けることで、効率よく固定意匠部7を透過照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態を示す表示パネルの断面図。
【図3】同上実施形態を示す有機EL素子の正面図。
【図4】同上実施形態の偏光板の表示面図。
【図5】同上実施形態の偏光板の反表示面図。
【図6】同上実施形態の表示パネルの要部正面図及び断面図。
【図7】視差を示す参考図。
【符号の説明】
【0038】
1 表示装置
2 指針
3 表示パネル
6 固定表示領域
7 固定意匠部
8 可変表示領域
9 可変意匠部
12 有機EL素子(表示素子)
13 遮光層
14 円偏光板(板材)
24 重合部
25 非重合部
26 開口部
D 積層深さ
W 重なり幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定表示領域と可変表示領域とを有する表示素子と、
前記固定表示領域に設けられる遮光層と、
前記表示素子の表示面側に設けられる板材と、
前記表示素子によって透過照明される固定意匠部と、
を有する表示パネルであって、
前記遮光層は、前記板材の反表示面側に設けられ前記固定意匠部と対向する開口部を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記固定意匠部は、前記板材の表示面側に設けられ、
前記遮光層は、前記固定意匠部の輪郭よりも小さく形成される前記開口部と、前記固定意匠部と重なりあう重合部と、前記固定意匠部と重ならない非重合部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記板材は、表示面に前記固定意匠部を備え、反表示面に前記遮光層を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記板材は、透過抑制部材であることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−153684(P2006−153684A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345346(P2004−345346)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】