説明

表示器具

【課題】放送受信と通信が任意の空間と場所で円滑に利用できる環境を確保するために電波伝搬特性上の必要な位置に効果的にアンテナを設置することができる表示器具を提供する。
【解決手段】天井に埋込配設される箱状の器具本体1と、器具本体1の下面より垂下された表示ユニット2と、後述する補助電源4を収納した電源ユニット3とを備える。アンテナ7は板状に成形された平面形アンテナからなり、厚み方向において一対の導光板21,21に狭持される形で表示ユニット2に内蔵される。故に、単独で設置する場合に比較して設置場所における空間のデザインを損なわずに多数のアンテナ7を設置することが可能な誘導灯器具(表示器具)が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の建築構造物空間、地下鉄構内、電鉄駅ホーム、地下街、地下駐車場、オフィスビル、商業施設、公共施設など多くの利用客が集う大規模な施設では、エレクトロニクスの技術革新により各種の防災保安装置などセキュリティ設備の遠隔監視制御、照明設備の遠隔制御など、建造物内の電気設備工事などが高度化、複雑化し、限られたスペース内で設備のメンテナンスなども頻繁に行われている。
【0003】
最近は建造物内の携帯電話中継設備など電波の利用機会も拡大しており、新たにサービスを開始する地上デジタル放送など、デジタル放送通信技術設備の電波を送信又は受信するためのアンテナや制御器の設備スペース確保、電源、信号伝送用光ファイバなど連絡線新設工事など、年々増加の一途を辿っている。
【0004】
地上デジタル放送を初めとする各種放送受信と無線LANや携帯電話などモバイル通信端末の活用に対する期待が高まりつつある。また、防災行政情報提供、避難誘導対策、安全確認など一連の利用技術も開発されつつある。
【0005】
これらの都市生活空間内で、放送受信と通信による情報収集力の強化のために、簡便で効果的に環境を確保する技術開発成果の活用が、強く望まれている。
【0006】
ところで、従来はタクシーの屋根に設置されて社名の文字などを表示する表示器具に、乗務員が緊急事態の発生を知らせるための電波を送信する送信機やアンテナを搭載したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−80413公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電波による放送・通信サービスの主な対象となる都市部建築構造物内において、空間のデザイン上の制約や、電源設備や構造上の理由から任意の場所、効果的なアンテナ設置位置と方法を実現することは非常に困難であった。また、特許文献1に記載されているものではアンテナが表示器具の器具本体に取り付けられているために見栄えが悪く、建築構造物内に設置するには不向きであった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、放送受信と通信が任意の空間と場所で円滑に利用できる環境を確保するために電波伝搬特性上の必要な位置に効果的にアンテナを設置することができる表示器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、放送用電波を発信するアンテナまたは相互に電子情報を無線交信するためのアンテナを、図形や文字情報を表示する表示ユニット内に収納したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、光源と、透光性材料によって板状に形成され光源から放射される光が一端面より入射する導光板と、図形や文字情報が描かれた表示パネルとを表示ユニットに備え、表示パネルと導光板が厚み方向に重なるように配設されるとともに表示パネルと導光板の対向面を除く位置にアンテナが配設されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、商用交流電源によって充電される補助電源と、光源を点灯する点灯装置と、電波による放送通信ができるアンテナ制御部とを備え、点灯装置並びにアンテナ制御部は非停電時には商用交流電源から電源供給を受け、停電時には補助電源から電源供給を受けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建築構造物空間に設置される表示器具にアンテナを内蔵したことにより、単独で設置する場合に比較して表示器具の設置義務又は必要とされる設置希望場所に設置することができて、空間デザイン上の制約、電気配線などの建造物設備工事の2重コストを抑制することができる。
【0013】
日常生活の中で放送や通信などの情報利活用による利便性の確保は重要な要素となっている。本発明に係る表示器具を使用すれば、受益者は建築建造物インフラや設置空間の美観を損なうことなく、いつでも、どこでも、誰にでも、あらゆる生活空間で高度情報利用が可能となり、迅速な防災情報収集と適切な避難誘導が可能になるなど安全で快適な社会環境が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の技術思想を誘導灯器具に適用した実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本実施形態の誘導灯器具は、図1に示すように天井に埋込配設される箱状の器具本体1と、器具本体1の下面より垂下された表示ユニット2と、後述する補助電源4を収納した電源ユニット3とを備えている。器具本体1には、図2に示すように直管形の冷陰極管蛍光灯からなる光源5と、光源5を点灯するための点灯回路6とが内蔵され、下面に設けられた開口を通して光源5の光が下方へ放射される。点灯回路6へは商用交流電源ACから交流電源が供給され、非停電時においては商用交流電源ACから供給される交流電源によって点灯回路6が光源5を点灯させる。
【0016】
表示ユニット2は、避難口へ誘導するためのシンボルSが表面に表記された一対の表示パネル20,20と、表示パネル20,20の背面側に配設され光源5の光を表示パネル20,20へ導光する透明アクリル樹脂製の一対の導光板21,21とを具備している。表示パネル20,20は、透光性を有する合成樹脂(例えば、アクリル樹脂など)の成形品であって、矩形状(本実施形態では、正方形状)の表示部20aと、表示部20aの背面における左右両端及び下端縁より後方へ突設された側片(左側側片、右側側片、下側側片)とを有しており、背面側を向き合わせるようにして互いの側片同士を結合することで上面が開口した箱状に構成され、その内部に一対の導光板21,21が収納される。そして、器具本体1下面の開口と表示パネル20,20上面の開口とを向き合わせるようにして表示ユニット2が器具本体1の下面側に取り付けられる。したがって、光源5から放射された光が表示ユニット2の導光板21,21を通って表示パネル20,20の表示部20a,20aに照射されることになる。但し、表示ユニット2は従来周知の取付金具(図示せず)により器具本体1への着脱が可能となっている。
【0017】
アンテナ7は板状に成形された平面形アンテナからなり、厚み方向において一対の導光板21,21に狭持される形で表示ユニット2に内蔵されている。ここで、アンテナ7が矩形枠状に形成されているため、表示部20a表面の周辺部分においては光量が減少するが、シンボルSが表記されている中央部分では光量の減少はない。
【0018】
電源ユニット3は、商用交流電源ACによって充電される補助電源4と、アンテナ7とアンテナ制御部30と、補助電源4並びにアンテナ制御部30を収納する箱状のケース31とを具備し、器具本体1と同様に天井に埋込配設される。補助電源4は二次電池と充電回路からなり、非停電時には給電線8を介して商用交流電源ACから給電される充電回路によって二次電池を充電し、停電時には給電線8を介して二次電池から点灯回路6に給電して光源5を点灯させる。また、アンテナ制御部30とアンテナ7とはアンテナ給電線9で接続されており、アンテナ制御部30からアンテナ給電線9を介して給電することにより、表示ユニット2の厚み方向に向けてアンテナ7から電波(VHFよりも波長の短い電波)が送信される(図1(b)の矢印参照)。
【0019】
例えば、オフィスビルや大規模商業施設等に本実施形態の誘導灯器具を設置し、地上デジタル放送の電波をアンテナ7から送信することによって建物内における地上デジタル放送の受信可能範囲を拡大することができ、あるいは、相互に電子情報を無線交信する無線LANの電波(UHF帯若しくはSHF帯の電波)をアンテナ7から送信することによって建物内における無線LANの通信可能範囲を拡大することができる。しかも、本実施形態の誘導灯器具は既存の誘導灯器具と置き換えることができるから、アンテナを単独で設置する場合に比較して設置場所における空間のデザインを損なわずに多数のアンテナ7が設置可能になるという利点がある。また、本実施形態では点灯回路6とアンテナ制御部30とが停電時に使用する補助電源4を共用しているために設置スペースが少なくて済むという利点もある。ここで、図3に示すようにアンテナ7を略コ字形に形成し、表示パネル20,20と導光板21,21の対向面を除く位置、すなわち、導光板21,21の周縁に沿った位置に配置すれば、表示部20a表面における光量の減少を防ぐことができる。
【0020】
なお、器具本体1を天井に埋込配設する代わりに、図4に示すように吊り下げ部10によって器具本体1を天井から吊下配設したり、前面が開口した箱状の器具本体1を、図5に示すように壁面に埋込配設するか、あるいは、図6に示すように床面に埋込配設しても構わない。また、前面が開口した箱状の器具本体1を、図7に示すように壁面に直付けしたり、あるいは、図8に示すように吊り下げ部10によって天井から吊下配設しても構わない。ここで、図5〜図8に示す構造においては、導光板を使わずに器具本体1内に内蔵した光源5の光が、器具本体1前面開口を塞ぐように取り付けられた表示パネル20に直接照射されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は要部断面図である。
【図2】同上のブロック図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は要部平面図である。
【図4】天井吊り下げ型の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図5】壁面埋込型の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図6】床面埋込型の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図7】壁面直付け型の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図8】天井吊り下げ型の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 器具本体
2 表示ユニット
3 電源ユニット
7 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送用電波を発信するアンテナまたは相互に電子情報を無線交信するためのアンテナを、図形や文字情報を表示する表示ユニット内に収納したことを特徴とする表示器具。
【請求項2】
光源と、透光性材料によって板状に形成され光源から放射される光が一端面より入射する導光板と、図形や文字情報が描かれた表示パネルとを表示ユニットに備え、表示パネルと導光板が厚み方向に重なるように配設されるとともに表示パネルと導光板の対向面を除く位置にアンテナが配設されたことを特徴とする請求項1記載の表示器具。
【請求項3】
商用交流電源によって充電される補助電源と、光源を点灯する点灯装置と、電波による放送通信ができるアンテナ制御部とを備え、点灯装置並びにアンテナ制御部は非停電時には商用交流電源から電源供給を受け、停電時には補助電源から電源供給を受けることを特徴とする請求項1又は2記載の表示器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−304658(P2007−304658A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129518(P2006−129518)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(591164613)株式会社エヌエイチケイアイテック (39)
【出願人】(502003390)株式会社ウイル (9)
【Fターム(参考)】