説明

表示映像の座標と撮影映像の座標とを対応付ける映像処理装置、システム、プログラム及び方法

【課題】表示映像の座標と、それをカメラで撮影した映像の座標とを対応付け、カメラをポインティングデバイスとして用いる。
【解決手段】カメラの撮影映像におけるキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchを算出し、Hkey_cMatchが算出され次第、HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新。同時に、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出する。次に、Ht,keyTrackを算出した際に、Ht,keyTrackにHkeyMatchを乗算し、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出し、撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに表示された表示映像の座標と、その表示映像をカメラによって撮影した撮影映像の座標とを対応付ける映像処理の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザによって視認されている表示装置に、広告用映像を表示するデジタルサイネージの技術がある。「デジタルサイネージ」とは、公共の場所に設置された、例えば平面ディスプレイやプロジェクタのような電子的なディスプレイに、映像(静止画像も含む)を表示する広告媒体技術をいう。デジタルサイネージは、表示装置に広告用映像を表示することによって、ポスターや看板のように用いることができる。
【0003】
一般に、デジタルサイネージの表示装置は、コンテンツ配信サーバに接続されている。そのコンテンツ配信サーバは、表示装置の設置場所又は時刻に応じて、異なるコンテンツを配信する。また、コンテンツ配信サーバは、その表示装置を視聴している視聴者の属性に応じて、異なるコンテンツを配信することもできる。これにより、広告提供者は、発信力のある広告用映像を、表示装置のディスプレイに表示することができる。
【0004】
デジタルサイネージシステムによれば、パーソナルコンピュータのポインティングデバイスのように、表示装置のディスプレイに対して、視聴者がポインティングすることができれば、視聴者の好みに応じて広告用映像を表示することができる。しかしながら、表示装置に対して、マウスのような専用のポインティングデバイスを必要とする。
【0005】
これに対し、カメラを搭載した携帯電話機を用いて、デジタルサイネージのディスプレイに対してポインティングする技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、専用のポインティングデバイスを用いる必要がない。携帯電話機を把持する視聴者は、カメラで、デジタルサイネージのディスプレイに表示された映像の中で、ボタンに相当する部分を撮影する。そのボタン部分の映像は、サーバへ送信される。サーバは、パターン認識処理によって、その映像の中からボタン部分を特定する。サーバは、そのボタン部分を特定したことを表す枠映像を、携帯電話機へ送信する。携帯電話機は、カメラで撮影した映像に、サーバから受信した枠映像を重畳的に表示する。視聴者は、携帯電話機の表示部に表示された枠映像に、ボタン部分が重畳していることを確認し、「決定」ボタンを押下することによって、そのボタンが押下(ポインティング)されたものと認識する。
【0006】
また、ディスプレイに表示された表示映像の座標と、その表示映像をカメラによって撮影した撮影映像の座標とを対応付ける技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、携帯電話機を把持するユーザは、カメラで、デジタルサイネージのディスプレイを撮影する。映像処理によって、その撮影映像からディスプレイ枠が検出され、そのディスプレイ枠の四隅の座標が取得される。次に、撮影映像から表示映像への射影変換行列が算出される。これによって、撮影映像の中心座標を、表示映像の座標へ射影変換し、その位置にポインタ(又はカーソル)を移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−230193号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H. Cantzler and C. Hoile、「A Novel Form of aPointing Device」、in Proc. of Vision, Video and Graphics、2003、pp. 57-62.
【非特許文献2】D. G. Lowe、「Distinctive image features fromscale-invariant keypoints」、IJCV、vol. 60、no. 2、pp. 91-110、2004.
【非特許文献3】J. Shi and C. Tomasi、「Good Features to Track」、inProc. of Computer Vision and Pattern Recognition、1994、pp. 593-600.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された技術によれば、携帯電話機から送信されるボタン部分映像と、デジタルサイネージのディスプレイから送信される枠映像とが、常に転送され続けるために、遅延が大きく、ポインティングデバイスのようなリアルタイムな応答性を得ることができない。また、非特許文献1に記載された技術によれば、デジタルサイネージの表示装置の枠が、他のオブジェクトに隠蔽(オクルージョン)された場合、枠の検出に失敗する。結局、射影変換行列を算出することができなくなり、ロバスト性が低いという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ディスプレイに表示された表示映像の座標と、その表示映像をカメラによって撮影した撮影映像の座標とを対応付ける映像処理について、リアルタイムな応答性と、高いロバスト性とを有する映像処理装置、システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。表示映像の座標と撮影映像の座標とを対応付けることによって、ポインティングデバイスとして利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ表示装置の映像を撮影するカメラとに接続され、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける映像処理装置であって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新するキー撮影フレーム照合手段と、
キー撮影フレーム照合手段の実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出するカメラ追跡手段と、
カメラ追跡手段によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する現映像照合手段と、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける座標照合手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の映像処理装置における他の実施形態によれば、
座標照合手段は、第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の中心座標を、表示装置の表示映像の座標へ変換するものであり、
表示映像に、変換された座標を、ポインタとして表示するポインティング指示手段を更に有することも好ましい。
【0013】
本発明の映像処理装置における他の実施形態によれば、カメラ追跡手段は、現時刻tにおける現撮影フレームCtから、前の時刻t-1における前撮影フレームCt-1への射影変換行列Ht,t-1Trackを、局所特徴領域の追跡を用いて算出し、射影変換行列Ht,t-1Trackを逐次累積的に乗算することによって、現撮影フレームCtからキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrack(=Hkey+1,keyTrack・...・Ht-1,t-2Track・Ht,t-1Track)を算出することも好ましい。
【0014】
本発明の映像処理装置における他の実施形態によれば、キー撮影フレーム照合手段は、キー撮影フレーム候補Ckey_c及び表示フレームDkeyから抽出した局所特徴領域の対応によって、CkeyからDkeyへの第1の射影変換行列HkeyMatchを算出することも好ましい。
【0015】
本発明の映像処理装置における他の実施形態によれば、
キー撮影フレーム照合手段は、
以前に照合された際の第1の射影変換行列HkeyMatchの逆行列(HkeyMatch-1を、第4の射影変換行列Hkey_cTransとして算出し、
第4の射影変換行列Hkey_cTransを用いて、表示フレームDkey_cを中間表示フレームDkey_c'へ変換し、
キー撮影フレーム候補Ckey_c及び中間表示フレームDkey_c'から抽出した局所特徴領域の対応によってキー撮影フレーム候補Ckey_cからDkey_c'への第5の射影変換行列Hkey_cMatch'を算出し、
第5の射影変換行列Hkey_cMatch’に第4の射影変換行列Hkey_cTransの逆行列を乗算することによって第1の射影変換行列Hkey_cMatchを算出するものであり、
現映像照合手段は、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出するものであり、
座標照合手段は、第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付けるものであることも好ましい。
【0016】
本発明の映像処理システムによれば、
前述した映像処理装置は、表示装置に一体的に搭載されたものであり、
カメラは、携帯端末に搭載されたものであり、
ユーザによって把持された携帯端末は、カメラの撮影映像を、表示装置へ送信することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の映像処理システムによれば、
前述した映像処理装置は、セットトップボックスであり、
表示装置は、テレビ装置であり、
携帯端末は、セットトップボックスに対するリモコン装置であることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の映像処理システムによれば、
前述した映像処理装置及びカメラは、携帯端末に一体的に搭載されたものであり、
ユーザによって把持された携帯端末は、表示装置から表示映像を受信すると共に、カメラの撮影映像の中心座標を表示装置の表示映像の座標へ変換したポインタの座標を、表示装置へ送信することを特徴とする。
【0019】
更に、本発明の映像処理システムによれば、前述した映像処理装置について、
カメラは、携帯端末に搭載されたものであり、
携帯端末は、カメラ追跡手段を更に有し、当該カメラ追跡手段によって算出された、キー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを、表示装置へ送信し、
表示装置は、キー撮影フレーム照合手段と、現映像照合手段と、座標照合手段とを有し、携帯端末から受信した、キー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを、キー撮影フレーム照合手段へ入力することを特徴とする。
【0020】
更に、本発明の映像処理システムによれば、
表示装置は、デジタルサイネージ装置であり、
表示装置及び携帯端末は、近距離無線リンク又はケーブルを介して接続されていることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ表示装置の表示映像を撮影するカメラとに接続されたコンピュータ装置を、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付けるように機能させる映像処理プログラムであって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新するキー撮影フレーム照合手段と、
キー撮影フレーム照合手段の実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出するカメラ追跡手段と、
カメラ追跡手段によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する現映像照合手段と、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける座標照合手段と
してコンピュータ装置を機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ表示装置の表示映像を撮影するカメラとに接続されたコンピュータ装置が、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける映像処理方法であって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新する第1のステップと、
第1のステップの実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出する第2のステップと、
第2のステップによって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する第3のステップと、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける第4のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の映像処理装置、システム、プログラム及び方法によれば、表示映像の座標と撮影映像の座標とを対応付ける射影変換行列を少ない計算量で算出することができると共に、全ての撮影映像と全ての表示映像とを照合しないために、リアルタイムな応答性と高いロバスト性とを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明におけるデジタルサイネージの使用形態を表す説明図である。
【図2】本発明におけるフローチャートである。
【図3】本発明における表示映像と撮影映像とを対応付ける第1の説明図である。
【図4】本発明における表示映像と撮影映像とを対応付ける第2の説明図である。
【図5】本発明における射影変換行列を表す説明図である。
【図6】本発明の表示装置及び携帯電話機における第1の機能構成図である。
【図7】本発明の表示装置及び携帯電話機における第2の機能構成図である。
【図8】本発明の表示装置及び携帯電話機における第3の機能構成図である。
【図9】本発明の表示装置及び携帯電話機における第4の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明におけるデジタルサイネージの使用形態を表す説明図である。
【0027】
図1によれば、公共の場に、デジタルサイネージとしての表示装置1が設置されている。表示装置1は、ディスプレイ101に様々な広告用映像を表示し、公衆に視聴させる。表示装置1のディスプレイ101に表示される映像は、ネットワークを介して、配信サーバから受信されたものであってもよい。
【0028】
また、図1によれば、表示装置1は、映像を表示するディスプレイ101と、携帯電話機2と無線リンクを介して通信するための近距離無線インタフェース部102とを有する。近距離無線インタフェース部102は、例えばBluetooth又は無線LAN(Local Area Network)であってもよい。また、近距離無線に限られず、広域の携帯電話網を介した通信であってもよい。尚、表示装置1は、無線リンクに限られず、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルやLANケーブルを介して、携帯電話機2に接続されるものであってもよい。
【0029】
携帯電話機2は、カメラ部20と、近距離無線インタフェース部22と、ディスプレイ22とを有する。視聴者は、表示装置1のディスプレイ101に表示されている映像を視聴しているとする。ここで、視聴者は、携帯電話機2を把持し、携帯電話機2のカメラ部20を表示装置1のディスプレイ101へ向ける。これにより、視聴者は、携帯電話機2のディスプレイ22を閲覧しながら、カメラ部20によって表示装置1のディスプレイ101の映像を撮影することができる。携帯電話機2は、カメラ部20によって撮影した撮影映像を、近距離無線インタフェース部22から表示装置1へ送信し続ける。
【0030】
本発明によれば、表示装置1のディスプレイ101に、ポインタが表示される。このポインタは、携帯電話機2のディスプレイ22に表示される映像の中心点に対応する。即ち、視聴者の認識は、カメラ部20によって映像を撮影する操作ではなく、表示装置1のディスプレイ101に表示されるポインタを動かす操作である。ポインティングデバイスを操作しているものと同じ認識である。これは、撮影映像の中心座標を、表示映像の座標に対応付けることによって実現できる。
【0031】
図2は、本発明におけるフローチャートである。
【0032】
[S21]視聴者の操作に応じて、携帯電話機2のカメラ部20は、表示装置1のディスプレイ部101へ向けられる。そして、カメラ部20は、表示装置1のディスプレイ部101に表示される映像(撮影映像)を撮影する。
【0033】
[S22]携帯電話機2は、時間的に連続となるその撮影映像を、ストリーミングによって表示装置1へ送信し続ける。
【0034】
[S23]表示装置1は、最初に、カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を開始する。
【0035】
ここで、「キー撮影フレーム」とは、表示フレームの座標と撮影フレームの座標とが対応付けられた、最後の撮影フレームを意味する。即ち、同一時刻(現時刻tよりも過去時刻key)における両フレームを対応付ける演算処理時間の間であっても、現時刻tにおける撮影フレームCtは進行している。従って、同一時刻の表示フレームDkeyの座標と対応付けのための演算処理がなされている撮影フレームCkeyを、「キー撮影フレーム」とする。また、「キー撮影フレーム候補」とは、第1の射影変換行列Hkey_cMatchの演算処理中にある撮影フレームを意味する。
【0036】
撮影フレームの座標と、表示フレームの座標との間は、射影幾何学によれば線形である。従って、射影変換行列Hによって、座標を置き換えることができる。
【数1】

特徴領域の対応から、平面射影変換行列Hを算出する。平面射影変換行列Hの未知パラメータ数は、8個(h0〜h7)であり、一組の対応点は2個の式を与える。従って、4組以上の対応点があれば、最小二乗法によってこの行列を計算することができる。
【0037】
そして、表示装置1は、第1の射影変換行列Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新する。
【0038】
第1の射影変換行列Hkey_cMatchは、キー撮影フレーム候補Ckey_c及び表示フレームDkey_cから抽出した局所特徴領域の対応によって算出されることも好ましい。ここで、局所特徴領域には、回転やスケールの変化にロバスト性が高く、比較的計算量が大きいものを利用することができる。局所特徴領域の検出には、SIFT、SURF、MSER、Hessian-Affine、Harris-Affine等のアルゴリズムが利用できる。また、特徴領域の記述には、SIFT、SURF、PCA-SIFT等のアルゴリズムが利用できる。これらのアルゴリズムによって抽出された局所特徴を、最近傍探索によって対応付け、その対応組からRANSACアルゴリズムを用いて射影変換行列を推定することができる(例えば非特許文献2参照)。従って、比較的計算量を要する第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出に必要な演算処理時間う比較的長い。
【0039】
[S24]S23と並行して、表示装置1は、現時刻tにおける現撮影フレームCtから過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出する。ここで、第1の撮影映像の座標と、第2の撮影映像の座標との間も、射影幾何学によれば線形である。従って、射影変換行列Hによって、座標を置き換えることができる。
【0040】
ここで、表示装置1は、現時刻tにおける現撮影フレームCtから、前の時刻t-1における前撮影フレームCt-1への射影変換行列Ht,t-1Trackを局所特徴領域の追跡を用いて算出する。即ち、射影変換行列Ht,t-1Trackを逐次累積的に乗算することによって、現撮影フレームCtからキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrack(=Hkey+1,keyTrack・...・Ht-1,t-2Track・Ht,t-1Track)を算出する。このように、カメラによって撮影された撮影フレームを追跡することによって、第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出される。
【0041】
尚、「局所特徴領域」とは、画像の中に、複数の局所領域を設定し、その特徴量を抽出する。これによって、画像の中で、認識対象が隠蔽されていても、見える領域の特徴量を用いることによって認識可能となる。カメラ追跡では、高速且つ計算量の小さい特徴領域を利用する(例えば非特許文献3参照)。また、FASTやSUSANと呼ばれる特徴領域も利用できる。これらの特徴領域から、LK法などを利用して、オプティカルフローを求める。従って、比較的計算量が小さい第2の射影変換行列Ht,keyTrackの算出に必要な演算処理時間は比較的短い。
【0042】
[S25]そして、S24によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する。
【0043】
[S26]第3の射影変換行列H3C→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0044】
[S27]携帯電話機2のカメラをポインティングデバイスとして用いる場合、第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の中心座標を、表示装置の表示映像の座標へ変換する。これによって、視聴者から見ると、携帯電話機2のカメラの向きに応じて、表示装置のディスプレイにポインタが表示される。視聴者は、携帯電話機のカメラの向きに応じてポインティングデバイスを操作しているように認識する。
【0045】
図3は、本発明における表示映像と撮影映像とを対応付ける第1の説明図である。また、図5は、本発明における射影変換行列を表す説明図である。図3の射影変換行列は、図5の射影変換行列に対応する。
【0046】
図3によれば、時間経過t=1〜5に対応して、表示装置1の表示映像における表示フレームDtと、カメラの撮影映像における撮影フレームCtとが表されている。
【0047】
(現時刻t=1)最初に、時刻t=1における撮影フレーム候補C1から、表示フレームD1への第1の射影変換行列H1Matchの計算処理を開始する(図2のS23参照)。現時刻t=1ではまだ、キー撮影フレームが存在しないために、第3の射影変換行列H1C→Dを算出することはできない。
【0048】
(現時刻t=2)次に、現時刻t=2における現撮影フレームC2から、過去時刻t=1における撮影フレームC1への第2の射影変換行列H2,1Trackを算出する(図2のS24参照)。過去時刻t=1と同様にまだ、第3の射影変換行列H2C→Dを算出することはできない。
【0049】
(現時刻t=2.5)現時刻t=2.5で、撮影フレーム候補C1から表示フレームD1への第1の射影変換行列H1Matchの計算処理が終了したとする。この計算処理には、過去時刻t=1から現時刻t=2.5まで要している。このとき、キーフレーム時刻t=keyをkey_c=1で更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをH1Matchによって更新する(key=1)。「キー撮影フレーム」とは、過去時刻t-n(=key)における表示フレームCt-nの座標と撮影フレームDt-nの座標とが対応付けられた最後の撮影フレームを意味する。
【0050】
(現時刻t=3)現時刻t=3における現撮影フレームC3から、過去時刻t=2における過去フレームC2への第2の射影変換行列H3,2Trackを算出する。現時刻t=3ではキー撮影フレームC1が存在するので、第3の射影変換行列H3C→D算出のためにH3,1Trackを算出する。即ち、過去時刻t=2について算出した第2の射影変換行列H2,1Trackと、現時刻t=3について算出した第2の射影変換行列H3,2Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H3,1Trackを算出する。第2の射影変換行列H3,1Trackは、現時刻t=3における現撮影フレームC3から、過去時刻key=1(=t-2)における撮影フレームC1への射影変換行列である。
【0051】
第2の射影変換行列H3,1Trackに、第1の射影変換行列H1Matchを乗算することによって、現撮影フレームC3から表示フレームD3への第3の射影変換行列H3C→Dを算出する。射影変換行列H3C→D用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0052】
次に、時刻t=3における撮影フレーム候補C3から、表示フレームD3への第1の射影変換行列H3Matchの計算処理を開始する。
【0053】
(現時刻t=4)時刻t=3の処理と同様に、現時刻t=4における現撮影フレームC4から、過去時刻t=3における過去フレームC3への第2の射影変換行列H4,3Trackを算出する。そして、過去時刻t=3について算出した第2の射影変換行列H3,1Trackと、現時刻t=4について算出した第2の射影変換行列H4,3Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H4,1Trackを算出する。
【0054】
更に、第2の射影変換行列H4,1Trackに第1の射影変換行列H1Matchを乗算することによって、現撮影フレームC4から表示フレームD4への第3の射影変換行列H4C→Dを算出する。第3の射影変換行列H4C→Dによって、現時刻t=4におけるカメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0055】
(現時刻t=4.5)現時刻t=4.5で、撮影フレーム候補C3から表示フレームD3への第1の射影変換行列H3Matchの計算処理が終了したとする。この計算処理には、過去時刻t=3から現時刻t=4.5まで要している。このとき、キーフレーム時刻t=keyをkey_c=3で更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをH3Matchによって更新する(key=3)。
【0056】
(現時刻t=5)現時刻t=5における現撮影フレームC5から、過去時刻t=4における過去フレームC4への第2の射影変換行列H5,4Trackを算出する。現時刻t=5ではキー撮影フレームC3が存在するので、第3の射影変換行列H5C→D算出のためにH5,3Trackを算出する。即ち、過去時刻t=4について算出した第2の射影変換行列H4,3Trackと、現時刻t=5について算出した第2の射影変換行列H5,4Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H5,3Trackを算出する。第2の射影変換行列H5,3Trackは、現時刻t=5における現撮影フレームC5から、過去時刻key=3(=t-2)における撮影フレームC3への射影変換行列である。
【0057】
更に、第2の射影変換行列H5,3Trackに第1の射影変換行列H3Matchを乗算することによって、現撮影フレームC5から表示フレームD5への第3の射影変換行列H5C→Dを算出する。第3の射影変換行列H5C→Dによって、現時刻t=5におけるカメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0058】
そして、次に、時刻t=5における撮影フレーム候補C5から、表示フレームD5への第1の射影変換行列H5Matchの計算処理を開始する。
【0059】
図4は、本発明における表示映像と撮影映像とを対応付ける第2の説明図である。図4の射影変換行列も、図5の射影変換行列に対応する。
【0060】
図4によれば、図3と比較して、中間表示フレームDt'を更に生成している点のみが相違する。
【0061】
(現時刻t=1)最初に、第4の射影変換行列H1Transを用いて、表示フレームD1を、中間表示フレームD1'へ変換する。ここで、H1Transの初期値は、単位行列である(図5参照)。次に、時刻t=1における撮影フレーム候補C1から、中間表示フレームD1'への第5の射影変換行列H1Match'の計算処理を開始する。現時刻t=1ではまだ、キー撮影フレームが存在しないために、第3の射影変換行列H1C→Dを算出することはできない。
【0062】
(現時刻t=2)次に、現時刻t=2における現撮影フレームC2から、過去時刻t=1におけるキー撮影フレームC1への第2の射影変換行列H2,1Trackを算出する。過去時刻t=1と同様にまだ、第3の射影変換行列H2C→Dを算出することはできない。
【0063】
(現時刻t=2.5)現時刻t=2.5で、撮影フレーム候補C1から中間表示フレームD1'への第5の射影変換行列H1Match’の計算処理が終了したとする。この計算処理には、過去時刻t=1から現時刻t=2.5まで要している。このとき、キーフレーム時刻t=keyをkey_c=1で更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをH1Matchによって更新する(key=1)。また、第5の射影変換行列H1Match’に、第4の射影変換行列H1Transの逆行列を乗算することによって、第1の射影変換行列H1Matchを算出する。
【0064】
(現時刻t=3)現時刻t=3における現撮影フレームC3から、過去時刻t=2における過去フレームC2への第2の射影変換行列H3,2Trackを算出する。現時刻t=3ではキー撮影フレームC1が存在するので、第3の射影変換行列H3C→D算出のためにH3,1Trackを算出する。即ち、過去時刻t=2について算出した第2の射影変換行列H2,1Trackと、現時刻t=3について算出した第2の射影変換行列H3,2Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H3,1Trackを算出する。
【0065】
第2の射影変換行列H3,1Trackに、第1の射影変換行列H1Matchを乗算することによって、現撮影フレームC3から表示フレームD3への第3の射影変換行列H3C→Dを算出する。射影変換行列H3C→D用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0066】
次に、第4の射影変換行列H3Transを用いて、表示フレームD3を中間表示フレームD3'へ変換する。第4の射影変換行列H3Transは、前の第1の射影変換行列H1Matchの逆行列である。そして、時刻t=3における撮影フレーム候補C3から、中間表示フレームD3'への第5の射影変換行列H3Match'の計算処理を開始する。
【0067】
(現時刻t=4)時刻t=3の処理と同様に、現時刻t=4における現撮影フレームC4から、過去時刻t=3における過去フレームC3への第2の射影変換行列H4,3Trackを算出する。そして、過去時刻t=3について算出した第2の射影変換行列H3,1Trackと、現時刻t=4について算出した第2の射影変換行列H4,3Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H4,1Trackを算出する。
【0068】
更に、第2の射影変換行列H4,1Trackに第1の射影変換行列H1Matchを乗算することによって、現撮影フレームC4から表示フレームD4への第3の射影変換行列H4C→Dを算出する。第3の射影変換行列H4C→Dによって、現時刻t=4におけるカメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0069】
(現時刻t=4.5)現時刻t=4.5で撮影フレーム候補C3から中間表示フレームD3'への第5の射影変換行列H3Match’の計算処理が終了したとする。この計算処理には、過去時刻t=3から現時刻t=4.5まで要している。このとき、キーフレーム時刻t=keyをkey_c=3で更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをH3Matchによって更新する(key=3)。また、第5の射影変換行列H3Match’に、第4の射影変換行列H3Transの逆行列を乗算することによって、第1の射影変換行列H3Matchを算出する。
【0070】
(現時刻t=5)現時刻t=5における現撮影フレームC5から、過去時刻t=4における過去フレームC4への第2の射影変換行列H5,4Trackを算出する。現時刻t=5ではキー撮影フレームC3が存在するので、第3の射影変換行列H5C→D算出のためにH5,3Trackを算出する。即ち、過去時刻t=4について算出した第2の射影変換行列H4,3Trackと、現時刻t=5について算出した第2の射影変換行列H5,4Trackとを乗算することによって、第2の射影変換行列H5,3Trackを算出する。第2の射影変換行列H5,3Trackは、現時刻t=5における現撮影フレームC5から、過去時刻key=3(=t-2)における撮影フレームC3への射影変換行列である。
【0071】
更に、第2の射影変換行列H5,3Trackに第1の射影変換行列H3Matchを乗算することによって、現撮影フレームC5から表示フレームD5への第3の射影変換行列H5C→Dを算出する。第3の射影変換行列H5C→Dによって、現時刻t=5におけるカメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0072】
そして、次に、時刻t=5における撮影フレーム候補C5から、中間表示フレームD5'への第1の射影変換行列H5Match'の計算処理を開始する。
【0073】
最後に、本発明の表示装置及び携帯電話機における機能構成について説明する。本発明における各機能構成部は、表示装置、携帯電話機及び映像処理装置それぞれに割り当てることができる。
【0074】
図6は、本発明の表示装置及び携帯電話機における第1の機能構成図である。
【0075】
図6によれば、映像処理装置の機能は全て、表示装置1に一体的に搭載されている。また、携帯電話機2は、カメラ部20と、近距離無線インタフェース部21とを有する。携帯電話機2は、カメラ部20によって撮影した撮影映像を、近距離無線インタフェース部21を介して表示装置1へ送信する。
【0076】
表示装置1は、映像処理機能として、キー撮影フレーム照合部111と、カメラ追跡部112と、現映像照合部113と、座標照合部114と、ポインティング指示部115と、映像表示制御部116とを有する。これら機能構成部は、表示装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0077】
キー撮影フレーム照合部111は、図2におけるS23と同様の処理を実行する。キー撮影フレーム照合部111は、カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新する。
【0078】
また、キー撮影フレーム照合部111は、以下のステップを実行するものであってもよい。
(S1)以前に照合された際の第1の射影変換行列HkeyMatchの逆行列(HkeyMatch-1を、第4の射影変換行列Hkey_cTransとして算出する。
(S2)第4の射影変換行列Hkey_cTransを用いて、表示フレームDkey_cを中間表示フレームDkey_c'へ変換する。
(S3)キー撮影フレーム候補Ckey_c及び中間表示フレームDkey_c’から抽出した局所特徴領域の対応によってCkey_cからDkey_c’への第5の射影変換行列Hkey_cMatch’を算出する。
(S4)第5の射影変換行列Hkey_cMatch’に第4の射影変換行列Hkey_cTransの逆行列を乗算することによって第1の射影変換行列Hkey_cMatchを算出する。
【0079】
カメラ追跡部112は、図2におけるS24と同様の処理を実行する。カメラ追跡部112は、キー撮影フレーム照合部111の実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新する。
【0080】
現映像照合部113は、図2におけるS25と同様の処理を実行する。現映像照合部113は、カメラ追跡部112によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する。
【0081】
座標照合部114は、図2におけるS26と同様の処理を実行する。座標照合部114は、第3の射影変換行列HtC→D用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける。
【0082】
ポインティング指示部115は、図2におけるS27と同様の処理を実行する。ポインティング指示部115は、カメラの撮影映像の中心座標を、表示装置の表示映像の座標へ変換し、その位置にポインティングする。
【0083】
映像表示制御部116は、ディスプレイ101に対して、例えば広告用映像を表示する。この映像は、ネットワークを介して、コンテンツ配信サーバから受信したものであってもよい。
【0084】
図7は、本発明の表示装置及び携帯電話機における第2の機能構成図である。
【0085】
図7のシステムは、テレビ装置である表示装置1と、リモコン装置である携帯電話機2と、セットトップボックスである映像処理装置3とを有する。テレビ装置には、セットトップボックスが接続されている。携帯電話機2は、テレビ装置に表示された表示映像をカメラで撮影すると共に、近距離無線リンクを介してセットトップボックスと通信することができる。セットトップボックスは、近距離無線インタフェース部102を有すると共に、映像処理機能として、キー撮影フレーム照合部111と、カメラ追跡部112と、現映像照合部113と、座標照合部114と、ポインティング指示部115と、映像表示制御部116とを有する。これら機能構成部は、セットトップボックスに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0086】
図8は、本発明の表示装置及び携帯電話機における第3の機能構成図である。
【0087】
図8によれば、携帯電話機に、映像処理機能が一体的に搭載されている。映像処理機能構成部は、携帯電話機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0088】
図8によれば、表示装置1は、ディスプレイ101に表示している表示映像を、近距離無線リンクを介して、携帯電話機2へ送信する。携帯電話機2は、受信した表示映像を、キー撮影フレーム照合部111及び現映像照合部113によって処理する。また、携帯電話機2は、カメラの撮影映像の中心座標を表示装置の表示映像の座標へ変換したポインティング座標を、近距離無線リンクを介して、表示装置1へ送信する。これよって、表示装置1は、ディスプレイ101に、ポインタを表示することができる。
【0089】
図9は、本発明の表示装置及び携帯電話機における第4の機能構成図である。
【0090】
図9によれば、携帯電話機2は、カメラ部20と、カメラ追跡部112と、近距離無線インタフェース部21とを有する。カメラ追跡部112によって算出された、キー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackは、近距離無線インタフェース21から表示装置1へ送信される。一方で、表示装置1は、キー撮影フレーム照合部111と、現映像照合部113と、座標照合部114と、ポインティング指示部115と、映像表示制御部116とを有する。表示装置1は、携帯電話機2から受信した第2の射影変換行列Ht,keyTrackを、キー撮影フレーム照合部111へ入力する。
【0091】
以上、詳細に説明したように、本発明の映像処理装置、システム、プログラム及び方法によれば、表示映像の座標と撮影映像の座標とを対応付ける射影変換行列を少ない計算量で算出することができると共に、全ての撮影映像と全ての表示映像とを照合しないために、リアルタイムな応答性と高いロバスト性とを有することができる。
【0092】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0093】
1 表示装置
101 ディスプレイ部
102 近距離無線インタフェース部
111 キー撮影フレーム照合部
112 カメラ追跡部
113 現映像照合部
114 座標照合部
115 ポインティング表示部
116 映像表示制御部
2 携帯端末、携帯電話機
20 カメラ部
21 近距離無線インタフェース部
22 ディスプレイ
3 映像処理装置、セットトップボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ前記表示装置の映像を撮影するカメラとに接続され、前記カメラの撮影映像の座標と前記表示装置の表示映像の座標とを対応付ける映像処理装置であって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新するキー撮影フレーム照合手段と、
前記キー撮影フレーム照合手段の実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出するカメラ追跡手段と、
前記カメラ追跡手段によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する現映像照合手段と、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける座標照合手段と
を有することを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記座標照合手段は、第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、前記カメラの撮影映像の中心座標を、前記表示装置の表示映像の座標へ変換するものであり、
前記表示映像に、変換された前記座標を、ポインタとして表示するポインティング指示手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記カメラ追跡手段は、現時刻tにおける現撮影フレームCtから、前の時刻t-1における前撮影フレームCt-1への射影変換行列Ht,t-1Trackを、局所特徴領域の追跡を用いて算出し、前記射影変換行列Ht,t-1Trackを逐次累積的に乗算することによって、現撮影フレームCtからキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrack(=Hkey+1,keyTrack・...・Ht-1,t-2Track・Ht,t-1Track)を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記キー撮影フレーム照合手段は、キー撮影フレーム候補Ckey_c及び表示フレームDkey_cから抽出した局所特徴領域の対応によって、Ckey_cからDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchを算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記キー撮影フレーム照合手段は、
以前に照合された際の第1の射影変換行列HkeyMatchの逆行列(HkeyMatch-1を、第4の射影変換行列Hkey_cTransとして算出し、
第4の射影変換行列Hkey_cTransを用いて、表示フレームDkey_cを中間表示フレームDkey_c'へ変換し、
キー撮影フレーム候補Ckey_c及び中間表示フレームDkey_c'から抽出した局所特徴領域の対応によってキー撮影フレーム候補Ckey_cからDkey_c'への第5の射影変換行列Hkey_cMatch'を算出するものであり、
第5の射影変換行列Hkey_cMatch’に第4の射影変換行列Hkey_cTransの逆行列を乗算することによって第1の射影変換行列Hkey_cMatchを算出するものであり、
前記現映像照合手段は、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、前記現撮影フレームCtから前記表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出するものであり、
前記座標照合手段は、第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、前記カメラの撮影映像の座標と前記表示装置の表示映像の座標とを対応付けるものである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の映像処理装置は、前記表示装置に一体的に搭載されたものであり、
前記カメラは、携帯端末に搭載されたものであり、
ユーザによって把持された前記携帯端末は、前記カメラの撮影映像を、前記表示装置へ送信する
ことを特徴とする映像処理システム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の映像処理装置は、セットトップボックスであり、
前記表示装置は、テレビ装置であり、
前記携帯端末は、前記セットトップボックスに対するリモコン装置である
ことを特徴とする映像処理システム。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の映像処理装置及びカメラは、前記携帯端末に一体的に搭載されたものであり、
ユーザによって把持された前記携帯端末は、前記表示装置から表示映像を受信すると共に、前記カメラの撮影映像の中心座標を前記表示装置の表示映像の座標へ変換したポインタの座標を、前記表示装置へ送信する
ことを特徴とする映像処理システム。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の映像処理装置について、
前記カメラは、携帯端末に搭載されたものであり、
前記携帯端末は、前記カメラ追跡手段を更に有し、当該カメラ追跡手段によって算出された、キー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを、前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記キー撮影フレーム照合手段と、前記現映像照合手段と、前記座標照合手段とを有し、前記携帯端末から受信した、前記キー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを、前記キー撮影フレーム照合手段へ入力する
ことを特徴とする映像処理システム。
【請求項10】
前記表示装置は、デジタルサイネージ装置であり、
前記表示装置及び前記携帯端末は、近距離無線リンク又はケーブルを介して接続されていることを特徴とする請求項6、8又は9のいずれか1項に記載の映像処理システム。
【請求項11】
ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ前記表示装置の表示映像を撮影するカメラとに接続されたコンピュータ装置を、前記カメラの撮影映像の座標と前記表示装置の表示映像の座標とを対応付けるように機能させる映像処理プログラムであって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新するキー撮影フレーム照合手段と、
前記キー撮影フレーム照合手段の実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出するカメラ追跡手段と、
前記カメラ追跡手段によって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する現映像照合手段と、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける座標照合手段と
してコンピュータ装置を機能させることを特徴とする映像処理プログラム。
【請求項12】
ユーザによって視認される映像を表示する表示装置と、ユーザに把持され且つ前記表示装置の表示映像を撮影するカメラとに接続されたコンピュータ装置が、前記カメラの撮影映像の座標と前記表示装置の表示映像の座標とを対応付ける映像処理方法であって、
カメラの撮影映像における時刻t=key_cのキー撮影フレーム候補Ckey_cから、表示装置の表示映像における表示フレームDkey_cへの第1の射影変換行列Hkey_cMatchの算出処理を実行し、Hkey_cMatchが算出され次第、キーフレーム時刻t=keyをkey_cで更新し、第1の射影変換行列HkeyMatchをHkey_cMatchによって更新する第1のステップと、
第1のステップの実行と並行して、カメラの撮影映像について、現時刻t(=key+n)における現撮影フレームCtから、過去時刻key(=t-n)におけるキー撮影フレームCkeyへの第2の射影変換行列Ht,keyTrackを算出する第2のステップと、
第2のステップによって第2の射影変換行列Ht,keyTrackが算出された際に、第2の射影変換行列Ht,keyTrackに第1の射影変換行列HkeyMatchを乗算することによって、現撮影フレームCtから表示フレームDtへの第3の射影変換行列HtC→Dを算出する第3のステップと、
第3の射影変換行列HtC→Dを用いて、カメラの撮影映像の座標と表示装置の表示映像の座標とを対応付ける第4のステップと
を有することを特徴とする映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−113316(P2011−113316A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269183(P2009−269183)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】