説明

表示装置、描画用プログラム、防災システム

【課題】比較的少ない予算で、津波を初めとする天災に対して人的被害を最小化させる防災システム及び装置が求められていた。
【解決手段】本発明の表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出手段と、もとめられた津波の現在位置を示す描画パターンを地図情報に基づいて描画した地図と合わせて表示する表示手段と、を具備する。本発明の防災システムは、上記表示装置と、上記表示装置に津波の現在位置に関する情報を送信する災害情報管理システムとから構成される。表示装置に津波の現在位置がリアルタイムで表示されることで市民の危機意識を高め避難行動を促進させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時に危険の接近を視覚的に表示するための表示装置、及び当該表示装置で用いられる描画用プログラム、表示方法、並びに当該表示装置を用いる防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
巨大な自然災害が発生した場合、人は冷静な判断ができなくなることが多い。自然災害が発生した場合でも冷静な対処を行えるように、防災訓練などで日頃から対処方法が市民に対して教育されている。そのため、我が国においては、自然災害が起きても市民はパニックを起こすことなく比較的冷静に対処ができる体制が整えられている。
【0003】
また、我が国は自然災害が多い国の一つである。大陸プレートの境界上に位置している関係上、我が国においては自然災害の中でも特に地震が頻発しており、当該地震が発生した場合の被害も甚大なものとなっている。従って、当該地震が発生した場合の被害を最小限に食い止めるため多くの防災システムが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1において、地震が発生した際に伝播するS波とP波の時間差を利用して、本震到達前に数秒後の大きな揺れを予め通知するシステムである緊急地震速報システムを利用した発明が開示されている。当該発明によれば、緊急地震速報を携帯端末に対して一斉伝達することにより、市民は本震が到達する前にガスを止めることや机の下に隠れるなどの事前行動を予め取ることができる。上記システムを有効活用することで、家屋の倒壊による圧死や、2次火災といった地震に伴う人的被害を最小限に抑えることができる。
【特許文献1】特開2001−309354号公報
【特許文献2】特開2001−304876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の防災システムが整備されている我が国において、通常の地震であれば死傷者数は数百人を超えることはまずない。しかしながら、想像を超える地震が発生した場合には、上記防災システムや日頃の防災訓練のみでは十分に対処できないことが昨日発生した地震で証明された。
【0006】
すなわち、地震によって最も恐れるものは津波である。津波は死傷者数を数十倍から数百倍に押し上げる最も危険な災害である。現状の防災システムでは、地震の発生と共に津波の到達場所、到達時刻、津波の大きさ(高さ)を警報で通知することで避難を促し被害を食い止めようとしている。
【0007】
しかしながら、津波は人生で一度体験するかどうかの災害であり、加えて想像を遥かに上回る場合がある。従って津波警報により到達時刻を通知されてもその時に何が起こるか感覚的に捉えることは困難である。加えて、大津波が起きる場合は、事前に巨大地震を体感しており、防災訓練をしていても冷静さを欠いている。従って単に津波が来ることを知らしめるだけではユーザに正確な危機感を持たせることは不可能に近い。
【0008】
すなわち、津波警報により津波が来ると分かっても、津波は想像することが難しい災害であるため、避難の初動が他の災害と比べて格段に遅れる。そして、肉眼で津波を捕らえたときに始めて事態の深刻さに気付くが、津波の速度は非常に速いためその段階で気付いても手遅れであることが多い。つまり、現在の防災システムで与えられる情報のみでは、警告の情報量として足りておらず、市民に危機意識を与えることが難しく適切な避難行動を取らせるには不十分であることが判明した。
【0009】
この教訓を活かし、最も危険な災害である津波に対してより適切な対応を取れる防災システムを構築しなおす必要がある。しかし、大掛かりな防災インフラストラクチャの構築は、巨額な費用がかかり、数十年に一度起きるかどうかの災害に対して日本全土に巨大な防波堤を整備することもまた現実的には不可能である。
【0010】
本願発明は、以上の課題を鑑み、比較的少ない予算で、津波を初めとする災害に対してより適切な避難を市民に行わせることができる防災システム及び当該システムで用いられる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示して表示する表示手段と、を有する。
【0012】
また、本願発明の別の形態の表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出手段と、前記求められた津波の現在位置を示す描画パターンを前記地図情報に基づいて描画した地図と合わせて表示する表示手段と、を具備する。
【0013】
また、本発明の描画用プログラムは、外部からの信号を受信する受信手段で受信した津波の現在位置に関する情報を読み込む第1読み込みステップと、前記津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の位置を示すパターンを描画する第1描画ステップと、地図情報を読み込む第2読み込みステップと、読み込んだ地図を描画する第2描画ステップと、前記第1描画ステップ及び第2描画ステップで描画した前記パターンと前記地図を重ね合わせる重畳ステップと、を計算機に実行させる。
【0014】
また、本発明の防災システムは、災害情報管理システムと表示装置とから構成される防災システムであって、前記災害情報管理システムは、津波の位置を検出する複数の検出装置と、前記複数の検出装置から送信される信号に基づいて津波の現在位置に関する情報を生成する生成装置と、当該生成された津波の現在位置に関する情報を送信する送信装置と、から構成され、前記表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示して表示する表示手段と、を有する。
【0015】
本願発明によれは、比較的少ない予算で、現在の津波を初めとする災害に対してより適切な避難を市民に行わせることができる防災システム及び当該システムで用いられる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る防災システムのブロック図である。当該防災システムは、後述する災害等に関する緊急情報を生成する災害情報管理センターと、当該生成された緊急情報を送信する送信装置と、当該緊急情報を受信してユーザに適切な避難方法を提示する表示装置とから構成される。
【0018】
ここで、送信装置は、例えばFM放送送信装置、TV放送局装置、ITSによる路側通信装置、携帯基地局装置、インターネットサーバなど様々な送信装置が考えられ、予め定められたプロトコルに従って後述する緊急情報を送信する。送信形態は、無線、有線のどちらでもよく、またブロードキャスト、マルチキャスト等様々な形態を取ることが可能である。また、表示装置としては、カーナビゲーション装置、携帯電話端末装置、スマートフォン、携帯ゲーム機、テレビジョン受像装置、インターネットに接続された計算機装置など様々な形態をとることができる。以下、各装置の機能について詳細に説明する。
【0019】
災害情報管理センターは、発生した災害に関する情報を収集して災害に関する緊急情報を生成する。
【0020】
図2に当該緊急情報のフォーマットを示す。緊急情報は、当該緊急情報に関する災害の種類を示す災害種別、当該災害の大きさを表す災害レベル情報、災害毎に災害の内容を表す災害情報などから構成される。また、緊急情報には、同一の緊急情報毎に一意に割り当てられる管理番号や当該緊急情報の送信日時などの情報も含まれている。
【0021】
ここで、災害には、例えば、地震、火災、津波、竜巻、洪水、台風、などの自然災害のほか、空襲、核ミサイル接近、暴動発生、など人的災害も含む。また、緊急地震速報も当該災害種別でラベル付けされている。これらの災害は、図3に示すテーブルように災害種別でラベル付けされている。例えば、図3の災害種別管理テーブルにおいて、津波は“3”に、暴動発生は“13”に対応付けられている。このように1〜16までに対応する4ビットが災害の種類を表す災害種別として緊急情報内に含まれる。
【0022】
図4は、災害種別が地震であった場合に緊急情報内の災害情報に含まれる情報の一例を表している。当該災害情報には、震度の大きさ、震源位置、震源の深さ、地震発生時刻に関する情報、津波発生の有無に関する情報などが含まれる。また、災害種別が緊急地震速報であった場合には、予想震度の大きさ、震源位置、地震発生時刻、予想地震到達時刻などの情報が緊急情報内の災害情報に含まれる。
【0023】
図5は、災害種別が、暴動発生であった場合に緊急情報内の災害情報に含まれる情報を表している。当該災害情報には、暴動の内容に関する情報の他に暴動発生地域に関する情報が緊急情報内の災害情報に含まれる。
【0024】
図6は、災害種別が津波であった場合に緊急情報内の災害情報に含まれる情報を表している。災害情報には、少なくとも予想される津波の到達時刻、津波の到達場所、津波の高さに関する情報が緊急情報内の災害情報に含まれる。なお、図6では津波の到達場所として1つのエリアに関する災害情報の一例を示したが、複数のエリアに跨って津波警報が出される場合には、津波の到達場所毎に予想される津波の高さと到達時刻が災害情報に含まれる。
【0025】
なお、図示はしないが、その他の災害種別でラベル付けされる災害に関しても、災害の内容や災害の発生地域、発生時刻などその災害に関する情報が緊急情報内の災害情報に含まれる。
【0026】
次に、当該緊急情報を受信して避難誘導を行う表示装置について説明する。なお、ここでは、緊急情報が、それぞれ地震、津波、空襲の場合について説明する。なお、緊急情報がこれらに限られるものではないことは言うまでもない。
【0027】
図7は、表示装置100の構成を示したブロック図である。表示装置100は、位置検出部110と、記憶部120と、入力部130と、算出部140と、受信部150と、表示部160とから構成される。
【0028】
位置検出部110は現在の位置を求める検出手段であり、例えばGPSを用いた位置検出方法によって現在位置を求める。具体的には、複数の衛星から送信された衛星固有のC/Aコード信号をGPSアンテナを介して受信し、各衛星から受信した信号のタイミングを基に各衛星までの擬似距離を算出して現在の位置および時刻を求める。また、位置検出部110は、必要に応じて加速度を検出する加速度センサや方位を検出する方位センサなどを内部に具備し、これらのセンサで得られる加速度や方位、その他角速度などの情報を上記GPSで求められる位置と組み合わせてより正確な位置を求めることができる。また、位置検出部110は後述する地図情報を用いて、マップマッチング方法により正確な位置を求めることも可能である。
【0029】
記憶部120は、地図情報と避難情報を記憶する。ここで地図情報は、例えばノードやリンクといった情報が含まれた一般的な地図情報である。また、避難情報は、緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた情報である。
【0030】
図8に避難情報の一例を示す。避難情報には、管理番号、避難場所名、対応災害種別、住所、GPS情報、詳細情報、などがテーブル状に対応付けられている。
【0031】
ここで管理番号は、それぞれの避難場所を管理するための番号である。避難場所毎に一意にナンバーが割り当てられている。
【0032】
避難場所名は、避難場所の一般的な名前を表している。
【0033】
対応災害種別は、当該避難場所が対応可能な災害種別を示している。例えば、管理番号N00001の避難場所は公園であり、従って、地震や火災が発生した場合の一時的な避難場所となる。一方、公園は台風や津波の避難場所には適さないため、当該避難場所における対応災害種別としては、地震と火災が対応付けられている。一方、N00004の避難場所はビルディングであり、津波や竜巻が押し寄せてきた場合の一時的な避難場所となりうるが、他国より空襲されている場合の避難場所としては適さない。従って、当該避難場所に対する対応災害種別は、津波と竜巻が対応付けられている。他の避難場所についても同様であり、その避難場所で対応可能な災害の種別が記憶さている。なお、当該テーブルでは、「地震」や「津波」と記載しているが、上述した緊急情報に含まれる災害種別にラベルされた番号と対応する形で、番号も合わせて記憶されている。すなわち、図3に示す緊急情報に含まれる災害種別において津波は“3”が割り振られているため、避難情報の対応災害種別においても津波に対応可能な避難場所には“3”が記録されている。
【0034】
住所は、当該避難場所の住所を表している。
【0035】
GPS情報は、当該避難場所のGPSによる位置情報が示されている。具体的には、当該避難場所の緯度(例:Lat34,12,00,05)、経度(例:Lon138,45,54,01)、海抜(Alt12.3m)などの情報が記録されている。
【0036】
詳細情報は、当該避難場所に関する具体的な情報が示されている。例えば、管理番号N36021の核シェルタでは収容人数や食料の備蓄があるかどうかなどの情報が合わせて記憶されている。
また、N00004の避難場所では、どれくらいの高さの津波に耐えられるかについての情報が記憶されている。また、図示はしないが、必要に応じてどのくらいの津波の強度に耐えられるかや、収容可能人数や、オートロック有りかどうか、などに関する情報も記録されている。
【0037】
入力部130は、ユーザからの指示を入力するための入力手段であり、例えばタッチパネルや、入力キー、音声入力など様々なユーザインタフェース形態をとりうる。例えば、ユーザは目的地に関する情報を入力部130を介して装置100へ入力する。
【0038】
受信部140は、上述した緊急情報を受信する。受信した緊急情報は、算出部140へ出力される。
【0039】
算出部150は、後述する最適経路の算出や最適な避難場所の算出など、様々な計算を行う処理手段であり、例えばCPU(Central processing unit)などがこれにあたる。当該CPUは必要に応じて装置全体の制御を管理するシステムコントローラとしての機能も果たしている。具体的には、算出部150は、以下に示す複数の処理を行う。
【0040】
算出部150は第1の算出処理として、ユーザが指定した目的地までの経路を算出する。算出部150は、前記入力部130を介してユーザより入力された目的地と、前記位置検出部110で検出された現在の位置と、前記記憶部120に記憶されている地図情報とに基づいて、目的地までの最適な経路を求める算出処理を行う。なお、算出部150は、必要に応じて、さらにVICS(VICSは登録商標。以下省略。)などで送信される渋滞や通行止めなどの交通補助情報などを合わせて用いることで最適な経路を求めることができる。
【0041】
また、算出部150は、第2の算出処理として、上記避難情報に含まれる複数の避難場所の中から最適な避難場所を特定する処理を行う。具体的には、前記受信部140で受信された緊急情報に含まれる災害種別から災害の種類を特定し、当該災害種別に対応する避難場所を前記避難情報から抽出する。次に抽出した避難場所のうち、前記位置検出部110で求められた現在位置から避難可能な避難場所を避難場所候補として抽出する。次に、抽出された避難場所候補の中から、所定の決定アルゴリズムに従って最適な避難場所を求める。ここで、算出部150は、当該最適な避難場所を求めるにあたり、現在位置からの距離や避難場所の強度、避難場所の収容可能人数、その他複数の要因に基づいて所定のアルゴリズムに従って最適な避難場所を求めることができる。
【0042】
また算出部150は、第3の算出処理として、前記位置検出部110で求められた現在位置から上記第2の算出処理で求められた最適の避難場所までの最適な避難経路を求める。最適な避難経路の求め方としては、例えば、記録部120に記録されている地図情報のノードやリンクに関する情報を組み合わせて、現在位置と最適な避難場所までの複数の経路のうち、最も移動距離が短い経路又は最も移動時間が短い経路を最適な避難経路として求める。なお、上記第1から第3までの算出処理の順番は順不同である。
【0043】
表示部160は、算出部150で求められた最適の避難場所を表示する。また、表示部160は、最適の避難場所までの最適な避難経路も表示する。当該最適な経路を表示するための表示パネルとしては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等様々なディスプレイを採用することができる。ここで、表示部160は、記憶部120に記憶されている地図情報に基づいて描画された地図の上に、前記算出部150で求められた最適な避難経路をオーバーレイ表示して表示することができる。また、表示部160は、地図情報に基づいて描画された地図の上に前記算出部150の第1算出処理により求められた目的地までの経路をオーバーレイ表示することも可能である。
【0044】
図9に、表示部160が表示パネル上で表示する画面の一例を示す。図9においては、表示部160は、算出部150における第2算出処理で求められた最適の避難場所800と、第3算出処理で求められた最適な避難場所までの最適な避難経路801と現在位置802とを、現在位置に対応する地図803にオーバーレイ表示する。
【0045】
また、図9において、表示部160は、更に以下の情報も表示している。表示部160は、算出部150における第2の算出処理で求められた最適な避難場所に関する情報804をウィンドウ表示する。当該最適な避難場所に関する情報は、表示部160が記憶部120に記憶されている緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報の中から、当該最適な避難場所に関する情報を読み込んで表示する。ここで、読み込まれる情報は、避難場所の名前や住所がある。
【0046】
また、表示部160は、受信部140で受信された緊急情報の内容804も表示する。また、表示部160は、現在位置から避難場所までにかかる時間である予想避難所要時間805を合わせて表示している。当該予想避難所要時間805は、算出部150によって求められて表示部160で表示される。すなわち、算出部150は、入力部110より入力された現在位置(表示装置が位置検出部を具備している場合は当該位置検出部で検出された現在位置)と上記最適な避難場所までの距離を当該避難場所までの交通手段(徒歩、車、自転車)における単位時間当たり平均移動距離(m/分)で除算することで予想避難所要時間を求める。
【0047】
次に、本表示装置内部で行われる処理の処理フローについて説明する。図10は、当該表示装置の動作を示したフローチャートである。
【0048】
位置検出部110は、所定のタイミングで現在の位置を検出する(ステップ001)。ここで、所定のタイミングは例えば1秒に1回の割合で現在の位置を検出する。検出した位置に関する情報は、必要に応じて算出部に出力される。
【0049】
次に、受信部140は、外部より送信された緊急情報を受信する(ステップ002)。受信部140で受信された緊急情報は算出部140へ出力される。
【0050】
算出部140は、受信部より緊急情報を入力すると、位置検出部110より現在の位置に関する情報である現在位置情報を読み込む(ステップ003)。
【0051】
次に、算出部140は、記憶部120より避難情報を読み込む(ステップ004)。なお、ステップ003とステップ004の順序は順不同であってよい。
【0052】
次に算出部140は、緊急情報と避難情報と現在位置情報とに基づいて所定のアルゴリズムに従って最適な避難場所を選び出す(ステップ005)。
【0053】
より具体的には、緊急情報に含まれる災害種別に基づいて、緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報の中から当該災害種別に対応可能とラベルされている複数の避難場所を避難場所候補として抽出する(ステップ005−a)。
【0054】
次に、ステップ005−aで抽出された複数の避難場所の中から、上記現在位置情報に基づいて現在位置から所定の距離以内にある複数の避難場所を更に望ましい避難場所候補として抽出する(ステップ005−b)。より具体的には、緊急情報に含まれる予想津波到達時刻や退避完了要請時間に基づいて、現在位置から当該時間以内に移動可能な距離範囲に存在する複数の避難場所を抽出する。ここで退避完了要請時間とは、緊急情報に含まれる情報の一種であり、現在の時刻からどれだけの時間以内に退避を完了すべきであるかを示した時間情報である。災害の種類が津波であれば予想津波到達時刻と現在の時刻との差分がこれに該当する。その他、災害が、空襲、核ミサイル、竜巻、であれば、それぞれ予想空襲時刻、予想核ミサイル到達時刻、予想竜巻到達時刻と現在の時刻との差分がこれに該当する。その他の災害についても同様に、退避が求められる時間でとなる。
【0055】
次に、ステップ005−bで抽出されている避難場所候補の中から所定のアルゴリズムに基づいて1の最適な避難場所を選び出す(ステップ005−c)。ここで、当該アルゴリズムとしては、例えば後述するアルゴリズムを用いることが可能であるが、特に限定はない。
【0056】
次に、表示部160は、ステップ005で選び出された最適な避難場所を画面に表示する(ステップ006)。
【0057】
これと同時に、算出部150は、上記既に読み込んである現在位置情報と、ステップ005で選んだ最適な避難場所とに基づいて、現在位置から避難場所までの最適な避難経路を算出する(ステップ007)。
【0058】
具体的には、算出部150は、記憶部120に記憶されている地図情報を読み込んで、現在位置から上記最適な避難場所まで到達するための多くの経路の中から所定のアルゴリズムに基づいて有力な候補となりうる複数の経路を抽出する(ステップ007−a)。ここで有力な候補となりうる複数の経路を抽出するためのアルゴリズムは、上記地図情報に基づいて、現在位置から上記最適な避難場所までの間に通過するノードの数が少ないほうから一定の数の経路を抽出するように構成しても良い。
【0059】
次に、ステップ007−aで抽出した複数の経路の中から、最も移動距離が短くなる経路を最適な避難経路として特定する(ステップ007−b)
【0060】
表示部160は、記憶部120から読み込んだ地図情報に基づいて地図を描画し、上記ステップ007で求めた現在位置から最適な避難場所までの最適な避難経路をオーバーレイ表示して表示する(ステップ008)。また、表示部160は、ステップ006で表示している最適な避難場所に関する情報やその他、算出部150が別途算出した現在位置から上記最適な避難場所までに要する予想移動所要時間などの情報も合わせて表示する。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態1の表示装置は、避難情報を記憶する記憶部と、緊急情報を受信する受信部と、緊急情報と避難情報に基づいて避難先を決定する決定部と、決定した避難先を提示する提示部と、を備えている。このように、緊急情報を受信した場合に、避難先を提示する機能を有することでユーザは当該提示に従って避難を行うことができる。
【0062】
さらに、本実施の形態1の表示装置は、現在の位置を検出する位置検出部と、緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報を記憶する記憶部と、緊急情報を受信する受信部と、緊急情報及び現在の位置に基づいて、避難情報に含まれる複数の避難場所から最適の避難場所を求める第1の算出処理を行う算出部と、求められた最適の避難場所を表示する表示部と、を備えている。当該構成により、より最適な避難場所を求めて表示することができ、ユーザは当該表示された避難場所へ適切に避難することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態1の表示装置において、記憶部は地図情報を更に記憶し、算出部は、地図情報と現在の位置とに基づいて、現在の位置から最適の避難場所までの最適な経路を求める第2の算出処理を行う。そして表示部は、最適な避難場所までの最適な経路を表示する構成をとる。当該構成により、更に最適な避難経路が表示されるため、より適切な避難行動を取ることができる。
【0064】
なお、表示部は、地図情報を読み込んで描画した地図に最適の避難場所までの最適な経路をオーバーレイ表示することができる。ユーザは、避難中においても現在の位置を見失わず、冷静に避難行動を取ることができる。
【0065】
また、上記表示装置は、ユーザが指定する目的地へのナビゲーション機能を備えていると再利用できる機能が多数存在するためコストの面からも良好である。すなわち、表示装置が、目的地を入力する入力部を更に備え、算出部は、入力された目的地と検出された現在の位置と地図情報とに基づいて、現在の位置から目的地までの最適な経路を求める第3の算出処理を行う。そして、表示部は、地図情報を読み込んで描画した地図に目的地までの最適な経路をオーバーレイ表示する。このように構成されていても良い。
【0066】
但し、ユーザが指定する目的地と、緊急情報が受信されたことに基づいて算出部が求める最適の避難場所では、後者の方が遥かに重要度が高い。そこで、表示部は、目的地までの最適な経路をオーバーレイ表示している時に、受信した緊急情報に基づいて算出部における第2の算出処理によって最適の避難場所までの最適な避難経路が求められた場合は、目的地までの最適な経路のオーバーレイ表示を取りやめて最適の避難場所までの最適な避難経路を地図にオーバーレイ表示するよう構成しておくとなお良好である。なぜならば、冷静さを失っているときに今必要としていない目的地が表示されていると、誤った判断を招きかねないためである。
【0067】
なお、上記説明では、算出部150は、上記第2算出処理において最適な避難場所を特定しているが、当該算出部は、避難方法毎に最適な避難場所を特定しても良い。すなわち、避難方法としては、徒歩、自転車、原付、バイク、車、車椅子、などユーザによって様々な避難方法をとるものと想定されるが、各避難方法毎に避難速度と可能避難距離は異なってくる。従って、算出部150は、上記緊急情報及び現在の位置に基づいて、上記避難情報に含まれる複数の避難場所の中から避難方法ごとに最適の避難場所を求める処理を行う構成であっても良い。表示部160には、避難方法ごとに最適の避難場所が表示される。
【0068】
図21に、表示部160に表示される画面の一例を示す。画面には、避難方法毎に異なる避難場所が対応付けられて表示されている。また、避難方法毎に、第1避難場所、第2避難場所、予想避難所要時間、距離などが合わせて表示される。算出部150が、図21に示す各々の情報を算出し、又は記憶部より読み込んで表示部160に表示する。このように構成されていても良い。
【0069】
また、算出部160は、第2の算出処理において最適の避難場所を求めるに当たり、現在の状況を踏まえて避難場所を求めても良い。すなわち、時間帯が朝、昼、夜、夜中では、避難速度に差が生じる。また通勤時や帰宅時には道路が込み合うため車における避難速度に遅れが生じる。また、地震により道路が寸断されている可能性もある。従って、最適な避難場所の算出には、これらの要因を考慮に入れた上で最適な避難場所が求められるよう構成しても良い。例えば、避難方法が自転車であって、昼間の自転車の平均移動距離が200m/分であり、夜中の自転車の平均移動距離が160m/分である場合であって10分以内に避難完了が求められている場合、夜中の避難においては昼間の避難と比べて1600m〜2000mの避難場所には辿り着くことができない。従って、算出部は位置検出部で検出される現在の時刻又は図示せぬ時刻を管理する時刻管理部から出力される現在の時刻に基づいて避難方法毎に避難速度の補正を行い、補正された避難速度に基づいて、退避完了要請時間までに移動可能な距離以内における避難場所を最適な避難場所として求めるよう構成されているとなお良好である。
【0070】
なお、本表示装置は、上記説明したように災害を初めとする緊急事態における避難誘導に利用できるが、本発明は特に先日発生した大津波による被害を再度起こさないために、発明したものである。そこで、特に緊急情報が津波である場合について、より詳しく述べておく。
【0071】
本表示装置は、少なくとも予想される津波の高さと津波の到達時刻と津波の到達場所に関する情報を緊急情報として受信し、算出部は、緊急情報に含まれる予想される津波の高さと津波の到達場所と現在の位置に基づいて、現在の位置が津波の影響を受ける範囲に含まれているかどうかの判断を行い、前期範囲に含まれていると判断された場合は、避難情報に含まれる複数の緊急時の避難場所の中から、津波の到達時刻までに現在の位置から到達可能な1の避難場所を最適の避難場所として求めるものである。
【0072】
このように本実施の形態1の表示装置に寄れば、災害が発生した場合に、単に災害の情報を通知するだけではなく、適切な避難経路をユーザに提示することができる。従って、津波や空襲、核攻撃といった通常の避難訓練などでは想定しきれない事態が発生した場合に、思考力が低下しているユーザを適切に安全な場所まで誘導することができるため、災害による犠牲者を減らすことができる。
【0073】
なお、上記表示装置100は、例えばカーナビゲーション装置や携帯電話端末などを一例として想定しているため位置検出部110を備える構成であったがこれに限るものではない。例えば位置検出部110を備えない形態をとることも可能である。図11に、別の形態の表示装置200のブロック図を示す。
【0074】
図11の表示装置200は、記憶部120と、入力部130と、受信部140と、算出部150と、表示部160とから構成される。これらの各ブロックがバスを通じて相互に接続されている。
【0075】
ここで当該表示装置200においては、ユーザは入力部130を介して現在の位置を登録することが可能となっている。ユーザより入力された現在の位置に関する情報である現在位置情報は記憶部120に記憶される。そして、受信部140で緊急情報が受信された場合は、前記算出部150は、前記記憶部120に記憶されている現在位置情報を読み込んで上述した第2又は第3の算出処理を行う。なお、当該表示装置200は位置検出部を有さないため、表示装置100の算出部が行う第1算出処理は行わない。
【0076】
すなわち、表示装置200は、現在の位置を入力する入力手段と、入力された現在の位置を現在位置情報として記憶すると共に位置緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報を記憶する記憶手段と、緊急情報を受信する受信手段と、緊急情報及び現在位置情報に基づいて、避難情報に含まれる複数の避難場所から最適の避難場所を求める算出処理を行う算出手段と、求められた最適の避難場所を表示する表示手段と、を具備する。
【0077】
このような表示装置200には、例えばテレビ受像装置やインターネットに接続された計算機などが想定される。テレビ受像装置やインターネットに接続された計算機が、上記構成を有することで、例えば家の中でテレビや計算機を使用していた場合に、テレビ放送やインターネットブロードキャストにより緊急情報が受信された場合に、家に留まるべきなのか、又は当該表示装置が示す避難場所に避難すべきなのかを適切に判断することが可能となる。
【0078】
従って、この度発生した津波のように、本来その津波の規模を鑑みれば避難すべきところを家の2階で待機しておけば大丈夫といった誤った判断をすることで命を落としてしまうといった事態を極力減らすことが可能となる。また、同時に、地震が発生する度に、過度に津波を警戒して高台へ避難を行うといったことを防ぐことができる。本来、安全を考えれば、地震が発生する度に高台に避難することは決して悪いことではない。しかし、実際に襲ってこない津波に対して毎回避難を行っているうちに、やがて危機意識が薄れていき、面倒くさがって避難しなくなるのが人間である。そして、本来避難すべき時に避難しないといった事態を招きかねない。そのため、避難すべきか避難すべきでないかを的確にナビゲートできる本装置は、災害発生時の人的被害を最小限に抑える有力な装置となる。
【0079】
なお、当該表示装置200は、家の中に固定されていることがあるため、算出部150は第3の算出処理を行わなくても良い。すなわち、家の中に設置されるということは、当該表示装置200のユーザは、周囲の環境は熟知していると考えられる。従って、ユーザは第2の算出処理で求められた最適な避難場所さえ分かれば最適に当該避難場所まで辿り着けるものと考えられる。
【0080】
従って、当該表示装置200においては、以下のように構成されていても良い。すなわち、算出部150は、第2の算出処理として、上記避難情報に含まれる複数の避難場所の中から最適な避難場所を特定する処理を行う。具体的には、前記受信部140で受信された緊急情報に含まれる災害種別から災害の種類を特定し、当該災害種別に対応する避難場所を前記避難情報から抽出する。次に、前記入力部より入力されて記憶部120に登録・記憶されている現在位置を読み出す。避難可能な避難場所を抽出する。次に、当該現在位置に基づいて、抽出された避難場所の中から最適な避難場所を求める。
【0081】
ここで、算出部150は、当該最適な避難場所を求めるにあたり、現在位置からの距離や避難場所の収容可能人数、現在位置から避難場所へ避難するために要する時間、その他複数の要因に基づいて所定のアルゴリズムに従って最適な避難場所を求める。
【0082】
ここで、算出部150が最適な避難場所を求めるアルゴリズムは、避難に余裕を持たせられるよう一定のマージンが与えられることが望ましい。
【0083】
例えば、緊急情報が津波に関する情報であり、避難場所が高台である場合に、津波到達時刻が現在の時刻からみて20分後である場合に、現在位置から避難場所までに必要とする時間が20分丁度であることは好ましくない場合がある。すなわち、避難するにあたり、老人の避難速度が想定される避難速度よりも遅いことや、避難における混乱で予め想定された時間よりも長い時間を要する場合がある。この場合、避難場所に辿り着く前に津波が到達してしまうといった事態を招きかねない。
【0084】
従って、算出部150は、津波到達時刻まで20分である場合は、1/4のマージンをとって現在地から15分以内に到達可能な避難場所を最適な避難場所として選ぶように構成されていても良い。但し、上記アルゴリズムによりマージンを含んだ15分以内の移動範囲内に当該災害に対応できる避難場所が無い場合は、マージンを外して20分以内に到達できる避難場所の検索を行っても良い。算出部150は、当該検索により15分以上20分以下の時間で避難できる避難場所が見つかった場合には、このような避難場所の1つを最適な避難場所として特定しても良い。
【0085】
また、同様に算出部150は、津波の高さに関してもマージンを与えた上で最適な避難場所を特定することが望ましい。例えば、算出部150で用いられる上記アルゴリズムにおいては、緊急情報が津波に関する情報である場合に、当該情報に含まれる津波の高さにマージンを与えた上で最適な避難場所を求めることが望ましい。
【0086】
例えば、予想される津波の高さが6mであった場合に、避難場所の対応可能な津波の高さが6mであった場合には、予想が外れて更に大きな津波が押し寄せてきた場合に避難場所としてその機能を果たせなくなる場合が考えられる。従って、算出部150は、緊急情報に含まれる予想される津波の高さに所定のマージンを加えた津波の高さに対応できる避難場所を記憶部120に記憶されている緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報の中から抽出し、当該抽出された複数の避難場所の中から1の避難場所を最適な避難場所として特定しても良い。
【0087】
このように、予想される津波の高さに5m〜10mほどのマージンを持たせておくことで、例え予想される津波の高さよりも3〜5m高い津波が押し寄せても避難場所の機能を果たすことができる。従って、現在位置のより近くに6mの津波に耐えられる避難場所が存在しても、予想される津波到達時刻までに十分移動可能な範囲であって、20m以上の津波に絶えられる別の避難場所が存在するならば、算出部150は、後者の避難場所を最適な避難場所として特定しても良い。なお、上記到達時刻におけるマージンと同様、津波の高さにマージンを持たせた第1の検索において避難場所が見つからなかった場合は、当該マージンを外し、予想される津波の高さに耐えられる避難場所を検索しても良い。
【0088】
ここで、当該表示装置200の算出部150は、第3の算出処理は行わなくてもよい。上述したとおり、ユーザは周囲の環境を熟知しているため、第2の算出処理で求められた最適な避難場所さえ特定できれば、例え緊急時で思考能力が落ちていても避難は可能であるためである。
【0089】
従って、表示部160は、算出部150で求められた最適な避難場所に関する情報を表示する。このように構成されていても良い。災害時において思考力が低下した人が犯してしまう最も致命的な誤りは、避難すべき場所を間違ってしまうことである。すなわち、地震が起きて津波が来る可能性がある場合に、気が動転して、周囲の建物の崩落から身を守るために近くの公園に一時避難してしまう場合がある。しかし、津波の存在を考えれば、高台又は鉄筋コンクリートの堅固な建物へ避難する必要がある。ここで、本表示装置が、表示部を介してユーザに対して「予想高度6mの津波が20分以内に到達します。△△ビルディングの5階以上が最適な避難場所ですので直ちにそこへ避難してください!」といったメッセージを提示すれば、ユーザは気が動転していても、△△ビルディングの存在を熟知しているので十分避難が可能となる。
【0090】
なお、上記説明では、緊急情報が津波に関する場合について特に詳しく説明したが、その他の災害でも同じである。算出部150が、最適な避難場所を選ぶアルゴリズムとして、予想される空襲時刻、予想される核ミサイル到達時刻、予想される竜巻到達時刻などの時間に対してマージンを含んだ範囲の避難場所を選ぶことや、避難場所が避難民で溢れかえる可能性を考慮して収容人数に余裕があるシェルタを最適な避難場所に選ぶことなどが考えられる。
【0091】
また、上記アルゴリズムは、現在の時刻、季節、曜日、交通規制の有無、など様々な要因に重み付けを行い、複数ある避難場所の中から1の避難場所を最適な避難場所として選ぶことが可能である。
【0092】
また、上記説明では、算出部150は、第2の算出処理において、複数ある避難場所の中から1の避難場所を最適な避難場所として選ぶ場合について説明したが、これに限るものではない。複数ある避難場所の中から数個の避難場所を最適な避難場所候補として選び出してもよい。表示部160は、算出部150で選び出された上記数個の避難場所を最適な避難場所候補として表示しても良い。このように構成することで、ユーザにある程度決定権を与えることができる。但し、緊急時に複数の避難候補を提示されるとユーザが混乱する可能性があるため1の避難場所を最適な避難場所候補として提示する方が望ましい場合もある。一方、1の避難場所を最適な避難場所として提示すると、近くの住民がすべて1箇所の避難場所に集中してしまう可能性もあるため、ある程度分散させるために複数の避難場所を最適な避難場所候補として提示することも望ましい。
【0093】
また、上記説明では、算出部で求められた最適の避難場所や避難経路を画面表示という形態でユーザに提示する構成を示したがこれに限るものではなく、音声を用いてユーザに注意喚起を行っても良い。すなわち、表示装置100及び200は、音声生成部を別途備え、求められた最適な避難場所や避難経路を音声に変換する。当該音声変換により生成された音声が図示せぬスピーカーを通じてユーザに提示される形態も可能である。この場合、上記表示装置は音声ナビゲーション装置ともなり、具体的な装置としては、画面付ラジオ、テレビ受像機、画面付音楽生成プレーヤーなど様々な形態をとることが可能となる。
【0094】
なお、記録部に記録される緊急時の避難場所を表す情報である避難情報が音声と合わせて記憶されていても良い。この形態の場合は、別途音声生成部は必要なく、算出部で求められた最適な避難場所を図示せぬ音声再生部が読み込み、スピーカーを通じて音声が発せられることになる。
【0095】
このように、本実施の形態の表示装置では、各々の装置が最適の避難場所を求めている。災害発生時などの場合は、その影響を受ける人の数が莫大な数に上ると共に、迅速な対応が求められる。従って、膨大な処理を極めて短時間に行うことを中央サーバで行わせた後に、各ユーザに対して個別に誘導を行うことは現状の計算機能力では限界がある。一方、本実施の形態の表示装置は、最適な避難場所を特定するのに必要となる僅かの情報をブロードキャストし、各々の装置が現在の状況を把握しながら最適な避難場所を分散して求める。従って、送信側及び受信側ともに簡単な構成で装置を組むことができるとともに、迅速に結果を算出してユーザを適切に避難させることを補助できる。
【0096】
(実施の形態2)
本実施の形態2の表示装置は、実施の形態1の表示装置と比較して避難情報を保有していない。その一方で、海抜まで含めた3次元地図を地図情報として記憶している。また、位置検出部は、海抜まで含めた3次元位置を検出する。以下、詳細に説明する。
【0097】
図9は、本実施の形態2にかかる表示装置300のブロック図である。本実施の形態2にかかる表示装置300は、位置検出部310と、記憶部120と、入力部130と、受信部140と、算出部150と、表示部160と、から構成される。以下、各ブロックについて説明する。但し、実施の形態1の表示装置100と同一のブロックに関しては一部説明を省略する。
【0098】
位置検出部310は、現在の位置を求める検出手段であり例えばGPSを用いた位置検出方法によって現在位置を求める。ここで、位置検出部310は、緯度(Latitude)、経度(Longitude)に加えて海抜高度(altitude)も検出する。すなわち、位置検出部310はX方向、Y方向、Z方向の3次元における現在位置を検出する。
【0099】
記憶部120は、地図情報を記憶する。ここで記憶部120に記憶されている地図情報は、3次元地図であることを特徴としている。すなわち、記憶部120には、緯度、経度の他に海抜高度や等高線といった“高さ”の概念を有する地図が記憶されている。
【0100】
受信部140は、外部より緊急情報を受信する。ここでは、特に緊急情報が津波に関する情報であるとして説明する。受信部140は、緊急情報を受信すると、受信した当該緊急情報を算出部150へ出力する。
【0101】
算出部150は、受信部140より津波に関する緊急情報を入力すると、位置検出部310より現在位置に関する情報である現在位置情報を読み込む。
【0102】
算出部150は、読み込んだ現在位置情報と緊急情報に含まれる津波に関する情報とに基づいて、現在位置が津波の被害を受ける可能性がある範囲内にあるかどうかの判断を行う。より具体的には、算出部150は、緊急情報に含まれる予想される津波の高さと津波の到達位置とに基づいて、津波の被害を受け得る範囲を特定するための第1算出処理を行う。次に、上記第1算出処理で求めた範囲内に現在位置が含まれるかを判定する第2算出処理を行う。上記第2算出処理によって現在の位置が津波の被害を受けうる範囲に属すると判定された場合は、上記津波の被害を受けない範囲であって、現在の位置から予想される津波の到達時刻までに移動可能な1の場所を上記地図情報に基づいて特定する第3算出処理を行う。算出部140は、特定された場所を避難場所として目的地に設定し、現在位置から当該避難場所までの最適な経路を求める第4算出処理を行う。
【0103】
表示部160は、記憶部120に記憶されている地図情報に基づいて描画した地図の上に、前記第1算出処理で求めた津波の被害を受けうる範囲を示す描画をオーバーレイ表示することで、津波の被害を受けうる範囲をユーザに警告する。また、表示部は、算出部150における前記第4算出処理で求めた最適な避難経路を合わせてオーバーレイ表示する。
【0104】
図13は、表示部160が表示する表示画面の一例を示している。表示部は、表示画面に、現在位置901、第1算出処理で求めた津波の被害を受けうる範囲902及び903と、第3算出処理で求められた避難場所904と、現在位置901から避難場所904までの最適な経路905を、描画した地図上にオーバーレイ表示して表示している。ここで902は津波の被害を高い確率で受ける範囲(いわゆる警報範囲であり退避勧告が出ている範囲)を示しており、903は津波の被害を受ける可能性がある範囲(いわゆる注意範囲であり、注意喚起が出ている範囲)である。
【0105】
次に、上記表示装置における処理動作について説明する。図14は、当該処理フローを示したフローチャートである。以下、津波に関する緊急情報を特に津波情報と記載して説明する。また、ここでは高さ6mの津波が予測される場合について説明する。
【0106】
位置検出部110は、所定のタイミングで現在の位置を検出する(ステップ001)。ここで、所定のタイミングは例えば1秒に1回の割合で現在の位置を検出する。検出した位置に関する情報は、必要に応じて算出部に出力される。
【0107】
次に、受信部140は、外部より送信された津波情報を受信する(ステップ002)。受信部140で受信された津波情報は算出部140へ出力される。
【0108】
算出部140は、受信部より津波情報を入力すると、位置検出部110より現在の位置に関する情報である現在位置情報を読み込む(ステップ003)。
【0109】
次に、算出部140は、読み込んだ現在位置情報と津波情報に含まれる津波警報が発令されている地域とから、現在の位置が津波の影響を受けるエリアであるかに関する大まかな判断を行う(ステップ004)。例えば、津波警報が日本海側に出ている場合に、現在位置が内陸部や太平洋側である場合には、避難誘導を行う必要が無いため処理を終了する。
【0110】
一方、現在の位置が津波警報が発令されている地域内である場合には、津波情報に含まれる予想される津波の高さと津波到達場所と地図情報と現在位置に基づいて、陸地であって津波の影響を受ける場所を特定する(ステップ005)。当該特定方法を図15及び図16を用いて説明する。
【0111】
図15は、上記3次元地図情報の中から海岸付近の地図をXZ平面図を切り出した図である。図右側のAの部分が海であり、図左側が陸地である。ここで点線は海面が津波により6m上昇した場合の海面の高さであり、上部の点線は海面が津波により10m上昇した場合の海面の高さを模式的に示している。
【0112】
図から読み取れるように、海面が6m上昇した場合、海岸付近の陸地であって海抜が6m以下の場所は海面下となる。すなわち津波が押し寄せてきた場合被害を受けうる範囲となる。なお10mの場合も同様である。従って、図15内においてAlertで示されている位置は、6mの津波が襲ってきた場合に水没する地域であり、退避勧告が発せられる警戒地域となる。一方、予報が外れた場合や、地形によってさらに津波が内陸部まで入り込んでくる可能性を考慮して海抜10m以下のエリア(図12内においてCautionで示されている位置)が注意喚起が発せられる注意地域となる。
【0113】
図16は、図15に対応する地図をXY平面で表した図である。図右側が海であり、図左側が陸地を表している。ここで、図16において、斜線の範囲が注意喚起が発せされている範囲を、網掛けの範囲が退避勧告が発せられている範囲を示している。算出部150は、3次元の地図情報から海岸線から所定の距離以内であって海抜6m以下の範囲と10m以下の範囲を抽出し、当該範囲を津波の被害を受けうる範囲であると特定する。また、河川付近は、海抜が津波の高さ以上であっても容易に津波が浸食してくるため、算出部150は、河川付近についてはマージンを20mとり、海抜26m以下の河川付近の場所についても津波の被害を受けうる範囲として特定する。また、算出部150は、当該抽出した範囲に関するデータを図示せぬバッファメモリに一時記憶する。
【0114】
次に、算出部150は、現在の位置がステップ005で特定された津波の被害を受けうる範囲内であるかどうかの判定を行う(ステップ006)。具体的には、バッファメモリに一時記憶されている津波の被害予想地域として抽出された位置範囲内に現在の位置が含まれているかどうかの判定を行う。
【0115】
算出部150は、ステップ006において現在の位置が津波の被害を受けうる範囲内であると判断した場合には、津波の被害を受けうる範囲外であって、現在の位置から津波の到達時刻内に到達可能な場所を避難場所として特定する(ステップ007)。ここで、算出部150は、避難場所としては、現在位置と海岸とを結ぶ線上であって、海岸と反対側の位置でかつ海抜高度が予想される津波の高さに所定のマージンを加えた高さ以上の場所を避難場所として特定することができる。また、算出部150は、現在の位置から所定の半径の同心円内に、海抜高度が予想される津波の高さに所定のマージンを加えた高さ以上の場所がないかどうかの検索処理を行い、当該場所が存在する場合には、その場所を避難場所として特定しても良い。また、当該同心円内に該当する場所が無い場合には、同心円の半径を拡大して同様の処理を繰り返しても良い。
【0116】
次に算出部150は、上記避難場所を新たな目的地として設定する(ステップ008)。予めユーザが目的地を入力して経路誘導が行われていた場合でも、上記ステップで求めた避難場所を新たな目的地として強制的に設定する。
【0117】
次に、算出部150は、現在位置から上記避難場所までの最適な経路を算出する(ステップ009)。
【0118】
次に、表示部160は、地図情報に基づいて描画した地図に、ステップ005で求めた津波の影響をうけうる範囲やステップ007で求めた避難場所やステップ008で求めた最適な経路をオーバーレイ表示する(S010)。このような処理を行うことにより、ユーザに適切な避難行動が取れるようにする。
【0119】
以上説明したように本実施の形態2にかかる表示装置では、現在の位置を検出する位置検出手段と、3次元の地図情報を記憶する記憶手段と、少なくとも予想される津波の到達時刻と津波の到達場所と津波の高さに関する情報を含む津波情報を受信する受信手段と、前記津波情報が受信された場合に、前記地図情報と前記津波情報とに基づいて前記現在の位置から所定の範囲内において津波の影響を受け得る範囲を求める第1の算出処理を行う算出手段と、前記地図情報を読み込んで描画した地図に前記求められた津波の影響を受け得る範囲を示す描画をオーバーレイ表示する表示手段と、を具備する。
【0120】
このように構成することで、津波の被害を受けるエリアを視覚的に捉えることができるため、どこに避難すれば安全であるかを感覚的に捉えることができる。従って、冷静さを失っている場合においてもユーザは適切な避難行動を取ることが可能となる。
【0121】
また、本実施の形態2にかかる表示装置では、算出手段が、前記3次元の地図情報に基づいて前記予想される津波の到達時刻までに現在位置から移動可能な範囲内であって、前記予想される津波の高さよりも海抜高度が高い1つの場所を最適な避難場所として選ぶ選択処理を行うことができる。このように構成することで、当該装置が適切な避難場所を提示するため、ユーザは、当該提示された避難場所に適切に避難することができる。
【0122】
また、上記算出手段は、前記3次元の地図情報に基づいて前記予想される津波の到達時刻までに現在位置から移動可能な範囲内であって、前記予想される津波の高さよりも海抜高度が高い場所を避難場所候補として抽出する抽出処理をまず行う。そして、前期抽出した避難場所候補の中から、最適な避難場所として1の避難場所を選ぶ選択処理を行うことも可能である。このような2段階の処理で避難場所を特定することで処理速度を速めることができる。
【0123】
また、上記前記算出手段は、前記現在の位置から前記選ばれた最適の避難場所までの最適な避難経路を求める第3の算出処理を行い、前記表示手段は、前記目的地までの最適な経路のオーバーレイ表示を中止し、前記最適の避難場所までの最適な避難経路を地図上にオーバーレイ表示することができる。その効果は実施の形態1の場合と同様である。
【0124】
以上説明したように表示装置を上記構成とすることで、予め避難情報を保有しない場合でも現在位置の海抜と地図情報に含まれる海抜とに基づいて、予想される津波の高さよりも高い位置を最適な避難場所として特定し、当該避難場所を新たな目的地として経路誘導することが可能となる。
【0125】
また、上記表示装置では、現在位置情報と津波情報と地図情報とに基づいて現在位置周辺の津波の影響を受けうる範囲を特定し、視覚的にユーザに表示する。従って、津波の被害を受けうる範囲外にいるユーザが誤って津波の被害を受けうる範囲内に入ってしまうことを防ぐことができる。
【0126】
また、津波の影響を受ける範囲外から津波の影響を受ける範囲内に誤って入ってしまった場合は、図示せぬスピーカーより警告音を発するよう構成していても良い。すなわち、算出部150は、位置検出部110より入力した位置情報に基づいて、現在位置が津波の影響を受けうる範囲内であると判定した場合は、記憶部130に記憶されている所定の警告音を読み出して再生し、スピーカーよりユーザに注意喚起を行うよう構成するとなお良好である。
【0127】
また、避難する車や人が渋滞しないように、避難場所は津波の影響をうけうる範囲の境界線よりもより内陸側若しくはより高度の高い場所を避難場所として特定するアルゴリズムを用いることがなお良好である。
【0128】
次に、本願発明の特に好ましい表示装置の構成について以下詳細に説明する。本表示装置は、津波の第1波面の状況をリアルタイムで受信して表示することを特徴としている。
【0129】
当該防災システムは、大きく災害情報管理システムと当該表示装置より構成される。ここで、災害情報管理システムは、災害検出装置と、災害情報生成装置と、災害情報送信装置とで構成されている。なお、個々では災害を津波として説明するが、その他の災害においても同様である。すなわち、以下の説明では津波を災害と読み替えることができる。
【0130】
災害検出装置は、津波の現在位置を検出する。災害情報管理システム内にはこのような検出装置が複数配置されている。当該災害検出装置は、検出した津波の位置を災害情報生成装置へ送信する。
【0131】
災害情報生成装置は、複数の検出装置から送信される信号に基づいて津波の現在位置に関する情報を生成する。津波の現在位置に関する情報の一例としては、津波の最前線を表すGPSデータで構成される情報が想定される。この津波の最前線に関して所定の距離間隔でGPSデータが埋め込まれている。なお、当該情報の生成はリアルタイムで行われ、0.1秒〜10秒程度の更新間隔で当該情報が生成される。
【0132】
災害情報送信装置は、災害情報生成装置で生成された上記津波の現在位置に関する情報を送信する。送信方法としては、上述の場合と同様ブロードキャスト、マルチキャストで送信することができる。
【0133】
すなわち、災害情報管理システムは、衛星や各場所に配置されたセンサで捕らえた津波の現在の最前線の位置データ、より詳しくはGPSデータを各表示装置へリアルタイムで送信し続ける。送信間隔は例えば0.1秒毎〜10秒毎程度に設定できる。
【0134】
一方表示装置は、少なくとも記憶部と、受信部と、表示部を具備する。
【0135】
記憶部は、地図情報を記憶する。地図情報は上述した地図情報と同様の地図を用いることができる。受信部は、津波の現在位置に関する情報を受信する。当該情報は、当該津波の現在位置を示すリアルタイムの位置情報である。受信部は、当該受信した津波の現在位置に関する情報を算出部へ出力する。算出部は、当該情報に基づいて現在の津波の位置を特定する。より具体的には、当該情報に含まれる複数のGPSデータを線形補完等の処理を行うことで各点を繋ぎ合わせ、津波の第一波面を津波の現在位置を示す境界として求める。表示部は、当該求められた津波の位置を特定の描画パターンで地図上にオーバーレイ表示する。
【0136】
すなわち、上記構成の表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターン(アイコン)をオーバーレイ表示して表示する表示手段と、を有する。当該構成により、迫り来る津波の位置を視覚的に認識しながら避難することができる。
【0137】
このように津波の現在位置をナビゲートする表示装置を用いることで、避難が遅れた人に後どれくらいで現在の位置に津波が到達するかをリアルタイムで視覚的に提示することができるため、避難を急ぐことや、緊急的に近くの建物に逃げ込むといった対応が可能となる。津波の速度は車の速度と同等以上であり、津波が視界に入ってからこのような緊急行動をとっても間に合わないためである。しかし、津波の最前線を認識しておくことで緊急時の回避を行える可能性を高めることができ、人的被害を最小限に減らすことができる。
【0138】
なお、上記表示手段は、受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて、津波の最前線部分を示すラインを描画して地図にオーバーレイ表示しても良いし、津波全体を津波の位置として例えば網掛け表示により地図上にあらわしてもよい。
【0139】
なお、上記表示装置は、更に現在の位置を検出する位置検出部を備えるとなお良好である。ユーザは現在位置と津波の位置との位置関係を把握しやすくなるため、適切な避難の見極めを行うことができる。また、受信部が所定の頻度で受信する津波の位置に関する情報より求まる津波の位置の変化から津波の速度を算出する算出部を更に備えていているとなお良好である。表示部は、当該算出部における計算により求められた津波の速度を表示することでユーザは、より津波の位置関係を把握しやすくなるため適切な避難行動をとることができる。表示部は、地図情報に基づいて位置検出部で検出された現在位置周辺の地図を描画し、さらに津波の位置を示す描画パターンを描画し、これら2つの描画を合わせて表示する。
【0140】
また、上記算出部は、位置検出部で検出された現在の位置と、計算した津波の速度と、津波の現在位置とに基づいて、津波の予想到達時間を計算するよう構成するとなお良好である。表示部は、算出部で計算された津波の予想到達時間を表示する。このように構成することで、避難途中にあるユーザは、あと何分何秒で津波が自分の位置まで到達するかを秒単位の精度で知ることが可能となる。なお、算出部はユーザの現在の移動速度を計算し、当該移動速度を考慮に入れた上で津波がユーザに迫るまでの時間を計算すると、より正確な到達時間を求めることができる。なお、現在の移動速度は、別途も受けられた速度センサや加速度センサや方位検出部などの情報を用いて求めても良いし、位置検出部で検出される現在位置の変化の差分からユーザの移動速度及び移動方向を示す移動ベクトルを求めても良い。
【0141】
また、算出部は、受信した津波の現在位置に関する情報に含まれる複数のGPSデータのうち、位置検出部で検出されたユーザの現在位置周辺のGPSデータのみを抽出する抽出処理を行う。次に、抽出した複数のGPSデータを直線補間等により繋ぎ合わせて津波の現在位置を求める。このように構成しても良い。
【0142】
また、算出部及び表示部は、以下のプログラムを実行することで上記機能を実現していても良い。すなわち、外部からの信号を受信する受信手段で受信した津波の現在位置に関する情報を読み込む第1読み込みステップと、前記津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の位置を示すパターンを描画する第1描画ステップと、地図情報を読み込む第2読み込みステップと、読み込んだ地図を描画する第2描画ステップと、前記第1描画ステップ及び第2描画ステップで描画した前記パターンと前記地図を重ね合わせる重畳ステップと、をCPUに実行させる描画用プログラムとすることができる。
【0143】
また、当該描画用プログラムは、位置検出部で検出された現在位置に基づいて、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる津波の位置データのうち、前記検出された現在位置から所定の範囲内の前記位置データを抽出する抽出ステップを有し、上記第1描画ステップは、抽出ステップで抽出された前記位置データを繋ぎ合わせることで前記津波の位置を示すパターンを描画するステップであっても良い。
【0144】
また、当該描画用プログラムは、津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出ステップを有していても良い。また、位置検出部で検出された現在位置を読み込む第3読み込みステップを有していても良い。当該算出ステップで求められた津波の現在位置と、第3読み込みステップで読み込まれた現在位置とに基づいて津波までの距離を算出する距離算出ステップや、津波が現在位置に到達するまでの時間を算出する到達時間算出ステップを有していても良い。当該描画用プログラムは、これらの処理をCPUに実行させる。また、上記距離算出ステップや到達時間算出ステップで求められた距離や到達予想時間などを表示部に表示させるステップを有していても良い。
【0145】
また、当該描画用プログラムは、第1読み込みステップで読み込んだ津波の現在位置に関する情報と、その後の読み込みステップで読み込んだ津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の速度を計算する速度計算ステップを有していても良い。より具体的には、異なる時刻に送られている津波の現在位置に関する情報に基づいて求まる2つの津波の位置の差を上記の時間差で割る計算を行うことで津波の速度を求めることができる。
【0146】
また、当該描画用プログラムは、本装置(ユーザ)の移動速度を求める移動速度計算ステップを有し、当該移動速度計算ステップで求まる本装置(ユーザ)の移動速度と、上記速度計算ステップで求めた津波の移動速度と、津波の現在位置と装置(ユーザ)の現在位置との距離差と、に基づいて津波の予想到達時間を求めるステップを有していても良い。
【0147】
津波は、襲ってきた瞬間に数十センチ高いところに避難できるかできないかですら生死が問われる災害である。津波が襲ってくる5秒前に津波の到来を察知し、近くの建物に緊急的に避難することでも助かることがあり、数秒単位の精度で津波の到来を察知することができることで、人的被害をかなり減らすことが期待できる。現在の津波の位置との関係から予定した避難場所への避難が間に合わないことを上記表示装置を用いていち早く察知し、機転をきかせて近くの建物に逃げ込むことができることの効果は非常に大きい。
【0148】
また、災害情報管理システムは、海岸線や街中に配置されたイメージセンサ等で取得された津波の写真を各表示装置にブロードキャストし、表示装置の受信部が、当該写真を受信し、当該写真を表示部で表示できるよう構成しても良い。
【0149】
すなわち、画像を受信する受信手段と、当該画像を表示する表示手段とを備えると更に良好である。津波は、その規模の大きさを見誤り、逃げ場を失った後で後悔することが多い。数百メートル先まで押し寄せている津波の実際の映像を見ることで、津波の大きさの周囲の地形を見ることで避難が遅れたユーザはどのような行動をとることが生存率を高めるかを判断することができる。
【0150】
なお、0127段落〜149段落では、津波の位置検出、速度算出、予想到達時間算出、表示、写真表示について説明したが、他の災害について同様の構成を行うことができることは言うまでもない。例えば、核ミサイルが近づいている場合は、衛星で検出した核ミサイルの位置をブロードキャストし、各表示装置でその位置や速度や予想ミサイル到達時刻を表示したりしても良いし、空爆を行う爆撃機が近づいている場合は、その位置や速度や予想空襲時間を求めて表示しても良い。また、これらのミサイルや爆撃機の衛星写真などを各表示装置に送信して表示できる構成とすることで、迫りくる危機を正確に認識させることができる。竜巻、台風、地震なども同様である。
【0151】
(実施の形態3)
本実施の形態3にかかる表示装置400は、新たに通信手段を有し、外部から追加的に送られている情報を用いて避難経路をリアルタイムで修正可能な構成をとる。
【0152】
図17は、本実施の形態3にかかる表示装置400の構成を示すブロック図である。当該表示装置400は、位置検出部110、記憶部120、入力部130、受信部140、算出部150、表示部160、通信部470、を備える。なお、表示装置100と同一のブロックについては一部説明を省略する。
【0153】
通信部470は、算出部150で求めた最適な避難場所をデータとするパケットを生成し、予め登録されているIPアドレスをあて先として外部へ送信する。ここで、パケットの宛先は避難場所の調整を行う災害情報管理センターのサーバのIPアドレスとなる。
【0154】
災害情報管理センターは、緊急情報を送信した後、複数の表示装置から送信されてくる最適の避難場所の統計をとる。ここで、それぞれの表示装置が緊急情報に基づいて独自に設定した最適の避難場所に偏りがある場合は、災害情報管理センターは、避難場所修正指示情報を送信する。ここで避難場所修正指示情報には、偏りがある避難場所を特定するための情報が含まれる。
【0155】
表示装置400の受信部140は、緊急情報に続いて当該避難場所修正指示情報を受信し、当該情報を算出部150へ出力する。
【0156】
算出部150は、受信部140より入力した避難場所修正指示情報に含まれる修正依頼が出されている避難場所と同一の避難場所を、緊急情報に基づいて求めた最適の避難場所と一致しているかを判定する。一致していると判定された場合は、当該避難場所は最適な避難場所として不適当であると判断し、当該避難場所を除く避難場所候補の中から改めて最適な避難場所を求める算出処理を行う。
【0157】
このように構成することで、特定の避難場所に避難者が殺到してしまうことを調節することができる。
【0158】
なお、災害情報管理センターは、その地域にいていると思われる人口と、表示装置から送られてくる各装置で求められた最適な避難場所に関する情報との統計から避難場所修正指示情報を送信するかどうかの判断を行う。すべての表示装置が当該送信機能を有しているとは限らないため、各装置から送られてきた「最適な避難情報」の数を基準にすると適切な修正が出せない可能性がある。そこで、周辺の避難場所候補等を考慮に入れた上で各避難場所毎に偏差値を算出し、偏差値が基準よりも高い避難場所は避難者が殺到する可能性があると予測し、当該避難場所に対して避難場所修正指示情報を送信する。このように構成しても良い。
【0159】
なお、当該避難場所修正指示情報を受信した表示装置は、一定のランダム関数を用いて避難場所の変更を行うかどうかを決定しても良い。上記避難場所修正指示情報を受けた表示装置すべてで避難場所の変更が行われると、この避難場所が過疎化してしまい、周辺の避難場所が同様に密集してしまう可能性があるためである。
【0160】
また、算出部150で行われる最適の避難場所の選出と修正は以下のフローに従って行われるとなお良好である。まず、算出部150は、緊急情報に基づいて、現在位置から求められる時間以内に避難可能な避難場所候補を非難情報の中から抽出し、抽出された各避難場所について数値化する。
【0161】
ここで、現在位置により近い避難場所は高い点数が与えられる。また、災害に対する耐性が強い避難場所は高い点数が与えられる。例えば災害が津波であれば、想定される津波よりも遥かに高い津波に耐えられる避難場所には高い点数が与えられる。一方、このマージンがほとんど無い避難場所は低い点数が与えられる。その他避難場所の収容人数や環境なども考慮に入れる。
【0162】
一例として以下の状況について説明する。ここで表示装置Xを有する甲と表示装置Yを有する乙がいると仮定する。また発生した災害は津波であるとする。
【0163】
ここで、甲の表示装置Xにおいて、現在位置から津波到達時刻までに避難可能な候補がA〜Eの5つ抽出されたとする。ここで、上記避難場所毎の数値化によりAは81点、Bは15点、Cは45点、Dは92点、Eは63点だったと仮定する。この場合、表示装置Xの算出部150は、最も点数が高いDが最適な避難場所として特定する。当該避難場所Dに関する情報は表示部160で表示されると共に、通信部470より災害情報管理センターへ送信される。なお、算出部が求めたA〜Eの各避難場所候補の数値及び書く避難場所候補の情報は一旦図示せぬ一時記憶部に格納される。
【0164】
同様に、乙の表示装置Yにおいて、現在位置から津波到達時刻までに避難可能な候補がC、D、Hの3つ抽出されたとする。ここで、上記避難場所毎の数値化によりCは52点、Dは94点、Hは25点だったと仮定する。この場合、表示装置Yの算出部150も、最も点数が高いDを適な避難場所として特定する。当該避難場所Dに関する情報は表示部160で表示されると共に、通信部470より災害情報管理センターへ送信される。
【0165】
災害情報管理センターは、受信した最適な避難場所に関する情報から、表示装置X、Yの両方で避難場所Dが最適な避難場所として選定されたことを知る。そして、災害情報管理センターの避難場所管理装置は、当該避難場所Dに避難者が集中するとして避難場所修正指示情報を作成する。ここで避難場所修正指示情報は、避難場所Dに避難者が集中する可能性があるために避難場所としての適正値が15ポイント下落したことを示す。なお、どれだけ適正値が下落したかは、上記避難場所管理装置が、各装置より受信した「最適な避難場所に関する情報」に基づいて求めた上記偏差値と基準値との乖離などを基に決定される。当該下落ポイントを含む避難場所修正指示情報が、各装置へ送信される。図18に当該避難場所修正指示情報を示す。避難場所修正指示情報には、各避難場所に一意に割り当てられた管理番号と、当該避難場所に対する補正ポイント値が対応付けられている。なお、上記避難場所修正指示情報に含まれる管理番号は、図8に示す避難情報内に記されている管理番号と対応している。
【0166】
受信部140が、当該避難場所修正指示情報を受信し、算出部150へ出力する。算出部150は、避難場所修正指示情報に含まれる「避難場所Dに対して15ポイントのマイナス補正を行う」という指示内容に基づいて、再度最適の避難場所を求める処理を行う。具体的には、上記一時期億部に一時格納してある避難場所候補A〜Eの数値を読み出し、上記補正を行う。
【0167】
この場合、表示装置Xにおいては、Dのポイントが77点に、表示装置YにおいてはDのポイントは79点になる。そして、各々の装置の算出部150において、ポイント補正後の値で改めて最適な避難場所を求める算出処理を行う。表示装置Xでは、81点の避難場所Aが最もポイントが高く最適な避難場所となる。従って、表示装置Xは、再度の算出処理で求めた避難場所Aを最適の避難場所として特定し、最適な経路を求める算出処理や表示部160における表示処理などを進める。一方、表示装置Yにおいては、ポイント補正を行っても未だ避難場所Dのポイントが最も高い。従って、表示装置Yは、避難場所の変更を行わない。
【0168】
このように構成することで、同じ避難場所に避難者が集中することを防ぐことができる。
【0169】
なお、上記説明では集中が予想される避難場所についてマイナス補正をする場合について説明したが、比較的空きが予想される避難場所についてプラス補正を行う構成であっても良い。
【0170】
また、上記実施の形態1〜3においては最適な避難場所を1箇所選ぶ場合について説明したが、これに限定するものではない。一定の基準を満たした複数の避難場所を最適な避難場所として特定し、ユーザに提示する形態をとることも当然可能である。すなわち、本発明でいう最適な避難場所とは特に1つに限定しない場合は、一定の基準を満たした複数の避難場所を表している。このように構成することで、避難場所としての適格を満たした複数の避難場所の中からユーザが最も都合の良い避難場所を選ぶことができるとともに、避難者の集中を分散させる効果が期待できる。ある表示装置によって特定される避難場所は、他の表示装置においても避難場所と特定される可能性が高いためである。しかし、複数の候補の中からユーザが最終的に選ぶ場合は、分散効果が期待できる。
【0171】
(実施の形態4)
本実施の形態の防災システムでは、緊急情報をブロードキャストすることで、各表示装置が各々避難場所を求めることとは対照的に、高い処理能力を有する中央計算機装置が、各表示装置に最適な避難場所を求めて通知するシステムである。なお、当該中央計算機装置にはクラウドコンピューティングを用いることが可能である。
【0172】
図19は、当該中央計算機装置500の構成を示すブロック図である。当該中央計算機装置500は、記憶部510と、入力部520と、算出部530と、送信部540と、から構成される。
【0173】
記憶部510は表示装置を有するユーザの情報であるユーザデータが記憶されている。ユーザデータには、各ユーザに一意に割り当てられたユーザ番号の他、ユーザから所定の頻度で送信されてくる当該ユーザの現在位置がユーザデータとして記憶される。また記憶部510は、緊急時の避難場所を纏めた避難情報も記憶されている。
【0174】
入力部520は、災害情報管理センターなどから発せられる緊急情報を入力する。
【0175】
算出部530は、ユーザデータと緊急情報に基づいて、ユーザ毎に最適の避難場所を求める。
【0176】
送信部540は、ユーザ番号と当該ユーザに最適な避難場所とが組みとなって対応付けられた避難誘導情報を当該ユーザの表示装置に送信する。
【0177】
図20は、本実施の形態にかかる表示装置600のブロック図である。表示装置600は、受信部610と、抽出部620と、表示部630とを有する。
【0178】
受信部610は、上記避難誘導情報を受信する。
【0179】
抽出部620は、図示せぬ記憶部に記憶管理されている自装置に対応するユーザ番号を用いて、受信部610で受信された避難誘導情報の中に自装置宛の情報が含まれているかどうかの検索を行う。当該避難誘導情報内に自装置に対応するユーザ番号と同一のユーザ番号が含まれていた場合は、当該ユーザ番号と組になっている避難場所を抽出する。
【0180】
表示部630は、抽出部620で抽出された避難場所を表示する。
【0181】
このように、高い処理能力を有する中央計算機装置に避難場所を求める処理を行わせても良い。当該構成によれば中央計算機装置が複数のユーザの避難場所を纏めて求めるため、1箇所に避難者が集中することを回避することが容易となる。但し、緊急事態が発生した場合は、影響を受けるユーザの数が膨大になり、かつ、迅速な誘導が求められるため、この要求を満たすスペックを有する中央計算機装置を用意できないのであれば、実施の形態1〜3の防災システムの方がより優れている。
【0182】
以上、本発明の表示装置、表示方法、描画用プログラム、描画方法、防災システムについて説明した。今回我が国に襲った津波の状況から私達は多くのことを学んだ。ある映像では、津波が河川を先に遡り、2方向から襲ってきており、ある車はどちらに避難すべきかを適切に判断できずに津波に飲み込まれていた。また、別の映像によれば、津波が視界に入るまで津波が近づいている状況を適切に把握できないため、津波が襲ってきているにもかかわらず、反対車線を走っている車が散見された。津波のスピードは車のスピードと同等以上であり、視界に津波が捉えられた段階から避難することはほぼ不可能である。これらのことは、いかに津波に対して適切な避難を行うことが難しいかを証明している。
【0183】
人生に1度体験するかどうかの災害やその規模が予想しきれない災害については、経験として身に付いていないため、いかに防災訓練で意識を高めたとしても、実際に災害が発生した場合に各自の判断で避難を行うと膨大な人的被害は免れない。
【0184】
こと津波に関しては、防災警報が発令されて「高いところに避難するように」とのメッセージを受け取っても、どれくらい高いところまで避難しなければいけないのか、どこに避難すべきなのかの判断が適切にできないため、混乱と誤解を招いている。
【0185】
一方、本発明の表示装置を用いることで適切に避難が可能となる。また、本発明の表示装置は、既に身近な製品となっている携帯電話端末やカーナビゲーション装置などにコストをかけずに用意に組み込むことができるため、早急な防災システムの構築と低予算での構築が可能となる。海岸線が膨大に延びる我が国において堅固な防波堤を張り巡らせることは現実的ではない。津波は、場所によっては30mを超えることもあり、このような万が一のケースに備えて30mの防波堤を張り巡らせることは不可能だからである。また、堅固な防波堤の存在が安心を招き、かえって避難行動を鈍らせるため、想定外の大きさの津波により防波堤が破られた場合の人的被害は最悪のケースを招きかねない。このような観点からも、適切に誘導させることを可能とすることがより正しい防災であると思われる。
【0186】
なお、上記各実施の形態における説明は、一例を示したものであり適宜変更が可能であることは言うまでもない。各実施の形態同士を組み合わせることも可能である。
【0187】
なお、上記記憶部に記憶されているデジタル地図情報は、市販で流通している地図情報をそのまま流用することが可能である。
【0188】
また、上記各実施の形態で説明した表示装置とは所謂誘導装置でもあり、カーナビゲーション装置、携帯端末装置、スマートフォン、テレビ受像機、パーソナルコンピュータ、その他上記構成を有する様々な装置の形態をとりうることは言うまでもない。
【0189】
なお、上記説明した緊急情報はFM多重放送で送信されてもよいし、光ビーコンや電波ビーコン、デジタルTV(音声)放送等、その他どのような通信媒体を用いて送信されても良い。この場合、表示装置の受信部は、それぞれFM放送局から信号を受信するFM放送受信部、光ビーコンから信号を受信する光ビーコン受信部、電波ビーコンから信号を受信する電波ビーコン受信部、デジタル放送を受信するデジタル放送受信部等にそれぞれ置き換わる。また、緊急情報を受信する受信部は、車載画像記録装置の一部として組み込まれても良いし、一つの他装置として当該表示装置とインターフェースを介して接続可能な状態で構成されていても良い。
【0190】
なお、当該表示装置にはカメラが取り付けられていても良い。緊急情報を受信すると、当該カメラが自動的に作動し、画像を記憶部に順次格納する構成であっても良い。また、当該表示装置は外部の通信装置と通信を行う通信手段が備え付けられていても良い。例えば、上記カメラで撮影された画像を、当該通信手段によって外部へ送信する構成であっても良い。各表示装置から送信された画像は、災害管理センターに送られ、避難を行う車や人の避難状況をリアルタイムで把握し、より適切な指示を行えるように構成されていると、さらに災害による人的被害を低減することができるため良好である。
【0191】
また、各実施の形態の表示装置において、位置検出部、受信部、記憶部、表示部、算出部、通信部等は、装置本体に組み込まれる形で設計されていても良いし、本装置本体とコネクタや通信手段を介して接続可能な状態で個別の装置として設計されていても良い。
【0192】
また、記録部は、1つの記録媒体である必要は無く、2以上の記録媒体が組み合わされて記録部を構成していても良い。例えばHDDとフラッシュメモリの2種類記録媒体が記録部として構成されていても良い。このうち、比較的容量の大きい地図情報はHDDに、また緊急時に高速な読み出しが求められる比較的容量の小さい避難情報はフラッシュメモリに格納されていても良い。
【0193】
また、上記で説明した位置検出部、受信部、算出部等は、それぞれ半導体集積回路を用いて実現されてもよい。ここで集積回路はLSI、VLSI,ULSIと称されることもある。
【0194】
また、算出部は、CPUの一部として実装されていても良い。ここでCPUは、マイクロプロセッサユニット、中央制御部、などと呼ばれることがある。また、上記算出部が行う各算出処理は、ハードウェア的に行われても良いし、プログラムを用いてソフトウェア的に実行されるよう構成されていても良い。上記算出部に該当する中央制御部は、図示せぬ記録部に記録されたプログラムを読み込んでデコード及び実行することで上記算出部が行っている算出処理を行うよう構成されていても良い。
【0195】
すなわち、緊急情報を読み込む第1読み込みステップと、緊急時の避難場所に関する情報が複数纏められた避難情報を読み込む第2読み込みステップと、現在位置を読み込む第3読み込みステップと、前記緊急情報と前記現在の位置とに基づいて、前記避難情報に含まれる複数の避難場所の中から最適の避難場所を求める算出処理を行う算出ステップと、を計算機に実行させる誘導プログラムなどは当然本願発明の技術的範囲に含まれる。また、地図情報を読み込む第4読み込みステップと、前記読み込んだ現在の位置と前記読み込んだ地図情報と前記求めた最適な避難場所とに基づいて、前記現在の位置から前記最適の避難場所までの最適な避難経路を求める算出処理を行う第2算出ステップと、前記地図情報を読み込んで描画した地図に前記求めた最適な避難経路をオーバーレイ表示させる処理を行う表示ステップと、を更に計算機に実行させる誘導プログラムなども同様に本願発明に含まれることは言うまでもない。その他、上記説明の図で示したフローチャートにおける各処理を計算機に実行させる誘導プログラムや誘導方法も当然本願発明に含まれる。
【0196】
その他、本願の発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜設計変更が可能である。一例として、本発明は以下の形態をとることが可能である。
(1)地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出手段と、前記もとめられた津波の現在位置を示す描画パターンを前記地図情報に基づいて描画した地図と合わせて表示する表示手段と、を具備する表示装置。
(2)現在の位置を検出する位置検出手段を更に備え、前記表示手段は、前記検出された現在の位置周辺の地図を描画し、当該描画した現在の位置周辺の地図に前記津波の現在位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示する、(1)の表示装置。
(3)前記算出手段は、前記位置検出手段で検出された現在の位置と、前記求めた津波の現在位置とに基づいて、現在の位置から津波の位置までの距離を算出し、前記表示手段は前記距離を表示する、(1)の表示装置。
(4)前記算出手段は、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる複数のGPSデータを繋ぎ合わせることで津波の現在の位置を求め、前記表示手段は、前記もとめられた津波の現在の位置を表示する、(1)の表示装置。
(5)前記算出手段は、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる複数のGPSデータを線形補間することで津波の第1波面の連続する位置を求め、前記表示手段は、前記もとめられた津波の第1波面を示すラインを描画して表示する、(4)の表示装置。
(6)前記受信手段は、津波の現在位置に関する情報を所定の頻度で受信し、前記算出手段は異なるタイミングで受信された前記現在の位置に関する情報に基づいて津波の速度を算出し、前記表示手段は、前記算出した津波の速度を表示する(1)の表示装置。
(7)前記算出手段は、前記求めた津波の位置と前記津波までの距離とに基づいて、津波の到達予想時間を算出し、前記表示手段は、前記津波の到達予想時間を表示する(6)の表示装置。
(8)前記位置検出手段は、当該装置の現在位置及び移動速度を検出し、前記算出手段は、前記津波の移動速度と前記当該装置の移動速度と、前記津波までの距離とに基づいて津波の到達予想時間を算出し、前記表示手段は、前記津波の到達予想時間を表示する(7)の表示装置。
(9)前記受信手段は、津波情報を受信し、前記表示手段は、前記津波情報に含まれる津波の高さを表示する、(1)の表示装置。
(10)外部からの信号を受信する受信手段で受信した津波の現在位置に関する情報を読み込む第1読み込みステップと、前記津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の位置を示すパターンを描画する第1描画ステップと、地図情報を読み込む第2読み込みステップと、読み込んだ地図を描画する第2描画ステップと、前記第1描画ステップ及び第2描画ステップで描画した前記パターンと前記地図を重ね合わせる重畳ステップと、を計算機に実行させる描画用プログラム。
(11)位置検出部で検出された現在位置に基づいて、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる津波の位置データのうち、前記検出された現在位置から所定の範囲内の前記位置データを抽出する抽出ステップを有し、上記第1描画ステップは、抽出ステップで抽出された前記位置データを繋ぎ合わせることで前記津波の位置を示すパターンを描画するステップを更に計算機に実行させる(10)の描画用プログラム。
(12)津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出ステップと、位置検出部で検出された現在位置を読み込む第3読み込みステップと、当該算出ステップで求められた津波の現在位置と第3読み込みステップで読み込まれた現在位置とに基づいて津波までの距離を算出する距離算出ステップと、を更に計算機に実行させる(10)の描画用プログラム。
(13)津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出ステップと、位置検出部で検出された現在位置を読み込む第3読み込みステップと、当該算出ステップで求められた津波の現在位置と第3読み込みステップで読み込まれた現在位置とに基づいて津波が現在位置に到達するまでの時間を算出する到達時間算出ステップと、を更に計算機に実行させる描画用プログラム。
(14)第1読み込みステップで読み込んだ津波の現在位置に関する情報と、第1読み込みステップ以降に改めて読み込んだ津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の速度を計算する速度計算ステップを更に計算機に実行させる描画用プログラム。
(15)災害情報管理システムと表示装置とから構成される防災システムであって、前記災害情報管理システムは、津波の位置を検出する複数の検出装置と、前記複数の検出装置から送信される信号に基づいて津波の現在位置に関する情報を生成する生成装置と、当該生成された津波の現在位置に関する情報を送信する送信装置と、から構成され、前記表示装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示して表示する表示手段と、を有する防災システム。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明に係る表示装置は、災害など緊急事態が発生した場合に、判断力が低下しているユーザに適切な行動を取らせることが求められる分野において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防災システムのブロック図
【図2】緊急情報の一例を示す図
【図3】緊急情報に含まれる災害種別の一例を示す図
【図4】緊急情報に含まれる災害情報の一例を示す図
【図5】緊急情報に含まれる災害情報の別の例を示す図
【図6】緊急情報に含まれる災害情報の別の例を示す図
【図7】本発明の実施の形態1に係る表示装置のブロック図
【図8】避難情報の一例を示す図
【図9】表示部が表示する画面の一例を示す図
【図10】本発明の実施の形態1に係る表示装置の動作を示すフローチャート
【図11】本発明の実施の形態1に係る別の形態の表示装置のブロック図
【図12】本発明の実施の形態2に係る表示装置のブロック図
【図13】表示部が表示する画面の一例を示す図
【図14】本発明の実施の形態2に係る表示装置の動作を示すフローチャート
【図15】津波の被害を受ける範囲を示した断面図
【図16】津波の被害を受ける範囲を示した平面図
【図17】本発明の実施の形態3に係る表示装置のブロック図
【図18】避難場所修正指示情報の一例を示す図
【図19】本発明の実施の形態4に係る中央計算装置のブロック図
【図20】本発明の実施の形態4に係る表示装置のブロック図
【図21】表示部が表示する画面の一例を示す図
【符号の説明】
【0199】
10 センサ 20 災害情報管理センター
30 送信装置 40 表示装置
100 表示装置 110 位置検出部
120 記憶部 130 入力部
140 受信部 150 算出部
160 表示部 200 表示装置
300 表示装置 310 位置検出部
400 表示装置 470 通信部
500 中央計算装置 510 記憶部
511 ユーザデータ 512 避難情報
520 入力部 530 算出部
540 送信部 600 表示装置
610 受信部 620 抽出部
630 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する記憶手段と、
津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、
前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示して表示する表示手段と、
を具備する表示装置。
【請求項2】
地図情報を記憶する記憶手段と、
津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、
前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出手段と、
前記求められた津波の現在位置を示す描画パターンを前記地図情報に基づいて描画した地図と合わせて表示する表示手段と、
を具備する表示装置。
【請求項3】
現在の位置を検出する位置検出手段を更に備え、
前記表示手段は、前記検出された現在の位置周辺の地図を描画し、
当該描画した現在の位置周辺の地図に前記津波の現在位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記位置検出手段で検出された現在の位置と、前記求めた津波の現在位置とに基づいて、前記検出された現在の位置から津波の現在位置までの距離を算出し、
前記表示手段は前記算出した距離を表示する、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる複数のGPSデータを繋ぎ合わせることで津波の現在の位置を求め、
前記表示手段は、前記求められた津波の現在の位置を表示する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる複数のGPSデータを線形補間することで連続する位置として津波の第1波面を求め、
前記表示手段は、前記求められた前記津波の第1波面を示すラインを描画して表示する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記受信手段は、津波の現在位置に関する情報を所定の頻度で受信し、
前記算出手段は、異なるタイミングで受信された前記現在の位置に関する情報に基づいて津波の速度を算出し、
前記表示手段は、前記算出した津波の速度を表示する、
請求項3乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記算出した津波の速度と前記津波の現在位置までの距離とに基づいて津波の到達予想時間を算出し、
前記表示手段は、前記津波の到達予想時間を表示する、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記位置検出手段は、当該装置の現在の位置及び移動速度を検出し、
前記算出手段は、前記津波の移動速度と当該装置の移動速度と前記津波の現在位置までの距離とに基づいて津波の到達予想時間を算出し、
前記表示手段は、前記津波の到達予想時間を表示する、
請求項7の表示装置。
【請求項10】
前記受信手段は、津波情報を受信し、
前記表示手段は、前記津波情報に含まれる津波の高さを表示する、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項11】
外部からの信号を受信する受信手段で受信した津波の現在位置に関する情報を読み込む第1読み込みステップと、
前記津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を示すパターンを描画する第1描画ステップと、
地図情報を読み込む第2読み込みステップと、
読み込んだ地図を描画する第2描画ステップと、
前記第1描画ステップで描画した前記パターンと前記第2描画ステップで描画した前記地図とを重ね合わせる重畳ステップと、
を計算機に実行させる描画用プログラム。
【請求項12】
位置検出部で検出された現在位置に基づいて、前記津波の現在位置に関する情報に含まれる津波の位置データのうち、前記検出された現在位置から所定の範囲内の位置データを抽出する抽出ステップを更に有し、
前記第1描画ステップは、抽出ステップで抽出された前記位置データを繋ぎ合わせることで前記津波の位置を示すパターンを描画する処理を更に計算機に実行させる、
請求項11に記載の描画用プログラム。
【請求項13】
前記津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出ステップと、
位置検出部で検出された現在の位置を読み込む第3読み込みステップと、
当該算出ステップで求められた津波の現在位置と前記第3読み込みステップで読み込まれた現在の位置とに基づいて津波までの距離を算出する距離算出ステップと、
を更に計算機に実行させる請求項12に記載の描画用プログラム。
【請求項14】
津波の現在位置に関する情報に基づいて津波の現在位置を求める算出ステップと、
位置検出部で検出された現在の位置を読み込む第3読み込みステップと、当該算出ステップで求められた津波の現在位置と前記第3読み込みステップで読み込まれた現在の位置とに基づいて津波が現在位置に到達するまでの時間を算出する到達時間算出ステップと、を更に計算機に実行させる請求項12に記載の描画用プログラム。
【請求項15】
前記第1読み込みステップで読み込んだ津波の現在位置に関する情報と、前記第1読み込みステップ以降に読み込んだ津波の現在位置に関する情報とに基づいて津波の速度を計算する津波速度計算ステップを更に計算機に実行させる、
請求項12に記載の描画用プログラム。
【請求項16】
災害情報管理システムと表示装置とから構成される防災システムであって、
前記災害情報管理システムは、
津波の現在位置を検出する複数の検出装置と、
前記複数の検出装置から送信される信号に基づいて津波の現在位置に関する情報を生成する生成装置と、
前記生成された津波の現在位置に関する情報を送信する送信装置と、
から構成され、
前記表示装置は、
地図情報を記憶する記憶手段と、
津波の現在位置に関する情報を受信する受信手段と、
前記地図情報に基づいて描画した地図に前記受信した津波の現在位置に関する情報に基づいて描画した津波の位置を示す描画パターンをオーバーレイ表示して表示する表示手段と、
を具備する防災システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−203747(P2012−203747A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69011(P2011−69011)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(707000956)
【Fターム(参考)】