説明

表示装置およびその製造方法、並びに電子機器

【課題】分解を容易にすることが可能な表示装置およびその製造方法、並びに電子機器を提供する。
【解決手段】前面に偏光板11が設けられた表示部10と前面部材20とを粘着シート30により貼り合わせる。粘着シート30の外形線30Aの少なくとも一部に、外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側に位置する退避部分31を設ける。この退避部分31には、偏光板11と、前面部材20と、退避部分31の端面31Aとで三方を囲まれた隙間33が形成されている。分解(リワーク)のために粘着シート30を剥がす際には、刃物40をこの隙間33に差し込むと、刃物40が確実に粘着シート30の退避部分31の端面31Aに到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、液晶または有機EL(Elecroluminescence)等の表示装置およびその製造方法、並びにこの表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶パネルの表面側に、ゲル層などの粘着シートを用いて保護パネルを貼り合わせることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−287219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゲル層などの粘着シートは、一度貼り合わせてしまうと分解(リワーク)することが難しいという問題があった。例えば、貼り合わせ工程で空気中のゴミなどを噛みこんでしまったり気泡が生じてしまったりした場合に、粘着シートを剥がして貼り直すことが難しかった。
【0005】
本技術の目的は、分解を容易にすることが可能な表示装置およびその製造方法、並びにこの表示装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術による表示装置は、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)前面に偏光板が設けられた表示部
(B)表示部の前面側に対向配置された前面部材
(C)偏光板と前面部材との間に設けられ、外形線の少なくとも一部に、外形線が偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有する粘着シート
【0007】
本技術の表示装置では、粘着シートが、外形線の少なくとも一部に、外形線が偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有している。この退避部分には、偏光板と、前面部材と、退避部分の端面とで三方を囲まれた隙間が形成されている。分解(リワーク)のために粘着シートを剥がす際には、刃物をこの隙間に差し込むと、刃物が確実に粘着シートの退避部分の端面に到達する。
【0008】
本技術による表示装置の製造方法は、前面に偏光板が設けられた表示部と、表示部の前面側に対向配置された前面部材とを粘着シートにより貼り合わせると共に、粘着シートの外形線の少なくとも一部に、外形線が偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を設けるようにしたものである。
【0009】
本技術による電子機器は、上記本技術による表示装置を備えたものである。
【0010】
本技術の電子機器では、上記本技術による表示装置により画像表示が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本技術の表示装置、または本技術の表示装置の製造方法によれば、粘着シートの外形線の少なくとも一部に、外形線が偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を設けるようにしたので、分解を容易にすることが可能となる。よって、この表示装置を用いて電子機器を構成すれば、粘着シートの貼り合わせ面へのゴミや気泡の混入を少なくして表示品質を高め、利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本技術の一実施の形態に係る表示装置の外観を表す斜視図である。
【図2】(A)は図1のIIA−IIA線における断面図であり、(B)は図1のIIB−IIB線における断面図である。
【図3】図1に示した表示部および前面板の位置関係を表す平面図である。
【図4】図1に示した表示部,偏光板,粘着シートおよび前面部材の不透光部の角の部分における位置関係を拡大して表す平面図である。
【図5】図4に示した表示部,偏光板および粘着シートの角の部分を拡大して表す斜視図である。
【図6】粘着シートを切断した場合の端面の一例を表す断面図である。
【図7】従来の表示装置の問題点を説明するための断面図である。
【図8】図1に示した表示装置を分解して表す斜視図である。
【図9】図5における矢印IX方向から見た構成を表す側面図である。
【図10】従来の表示装置の構成を表す断面図であり、(A)は図1のIIA−IIA線に対応する位置における断面図であり、(B)は図1のIIB−IIB線に対応する位置における断面図である。
【図11】図10に示した表示部,偏光板および粘着シートの角の部分を拡大して表す斜視図である。
【図12】図11における矢印XII方向から見た構成を表す図である。
【図13】変形例1に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図14】従来の他の表示装置の問題点を説明するための断面図である。
【図15】変形例2に係る表示装置の外観を表す断面図である。
【図16】図15における矢印XVI方向から見た構成を表す図である。
【図17】図15における矢印XVII方向から見た構成を表す図である。
【図18】変形例3に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図19】変形例4に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図20】(A)は適用例1の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図21】適用例2の外観を表す斜視図である。
【図22】図4に示した退避部分の変形例を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(前面板の粘着シート側に入力部を設け、入力部と表示部とを粘着シートにより貼り合わせ、前面板の前面に不透明層を設けた例)
2.変形例1(入力部を省略し、前面板と表示部とを粘着シートにより貼り合わせ、前面板の前面に不透明層を設けた例)
3.変形例2(前面板に拡張部および屈曲した拡張部を設けた例)
4.変形例3(拡張部の裏面に入力部を追加した例)
5.変形例4(拡張部の裏面のみに入力部を設け、前面板と粘着シートとの間の入力部を省略した例)
6.適用例
【0014】
図1は、本技術の一実施の形態に係る表示装置を前面(観測面、画像表示面)の側から見た外観を表したものである。図2(A)は、図1のIIA−IIA線における断面図であり、図2(B)は図1のIIB−IIB線における断面構成を表したものである。この表示装置1は、例えばデジタルカメラまたはビデオカメラの表示部として用いられるものであり、表示部10の前面側に前面部材20を対向配置し、これらを粘着シート30により貼り合わせた構成を有している。なお、図面では、表示部10,粘着シート30および前面部材20の積層方向をz方向、表示部10の左右方向をx方向、表示部10の上下方向をy方向とする。
【0015】
表示部10は、例えば、透明板ガラス等よりなる二枚の基板の間に液晶層を有する液晶表示パネルにより構成されている。一方の基板には、各画素を駆動するTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ),透明電極および配向膜が配設されると共に、各画素に映像信号等を供給するための駆動回路等が設けられている。他方の基板には、透明電極および配向膜と共に、図示しない3原色(R,G,B)の各カラーフィルタが、画素毎に形成されている。液晶層の周辺はシール材により封止されている。表示部10の表面には、表示部10よりもわずかに小さい寸法の矩形の偏光板11が設けられており、表示部10の裏面にも同様の偏光板(図示せず)が設けられている。表示部10の近傍には、図示しないが、バックライトユニットとして、光学シート,LED(Light Emitting Diode)等よりなる光源および導光板,並びに放熱部材が配置されている。
【0016】
また、表示部10は、例えば、透明板ガラス等よりなる基板に有機EL(Electroluminescence)素子を設けた有機ELパネルにより構成されていることも可能である。この場合にも、画素間の配線が使用者によって視認されてしまうのを回避する等の目的で、表示部10の表面には偏光板11が設けられている。
【0017】
前面部材20は、例えば、入力部21,前面板22および反射低減シート23を表示部10の側からこの順に積層した構成を有している。入力部21は、例えば静電容量式タッチパネルにより構成されている。入力部21の有効検知領域は、表示領域10Aにほぼ一致している。前面板22は、表示部10や入力部21の強度向上,表面保護および意匠性の向上などのために設けられるものであり、例えばガラスや樹脂などの透明板により構成されている。前面板22を構成する樹脂としては、アクリルやポリカーボネート等が挙げられる。反射低減シート23は、前面板22の表面での外光反射を低減するために前面板22の前面に設けられるものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルムを母材とした反射防止膜により構成されている。なお、入力部21および反射低減シート23は、それぞれ図示しない粘着層により前面板22に貼り合わせられている。前面板22または反射低減シート23の外縁部には、表示領域10A周辺の配線や回路等を遮蔽し、表示部10の体裁を整えるため、金属,顔料,染料などの不透明材料よりなる不透光層24が設けられている。
【0018】
図3は、図1に示した表示部10と前面部材20との平面的位置関係を表したものである。表示部10は、複数の画素(図示せず)が設けられた表示領域10Aと、この表示領域10A以外の非表示領域10Bとを有している。具体的には、表示領域10Aは表示部10の中央の矩形の領域であり、非表示領域10Bは表示領域10Aを囲む枠状に設けられている。
【0019】
前面部材20は、表示部10の表示領域10Aに対向して透光部20Aを有すると共に透光部20Aの外側の領域に不透光部20Bを有している。透光部20Aは、表示領域10Aに表示される画像を視認可能とするため、透明ガラス板よりなる前面板22自体により構成されている。不透光部20Bは、表示領域10A周辺の配線や回路等を遮蔽し、表示部10の体裁を整えるための領域であり、例えば、前面板22または反射低減シート23に不透光層24を設けることにより構成されたものである。不透光部20Bの内側輪郭線20C(透光部20Aと不透光部20Bとの境界線)は、表示領域10Aとほぼ同寸の矩形形状を有している。不透光部20Bの内側輪郭線20Cは、表示領域10Aの端部が不透光部20Bによって隠されないようにするため、表示領域10Aと非表示領域10Bとの境界線10Cよりも外側にあることが望ましい。なお、不透光部20Bの内側輪郭線20Cは、境界線10Cに一致していてもよい。
【0020】
図2に示した粘着シート30は、表示部10と前面部材20とを貼り合わせる粘着層である。入力部21や反射低減シート23を構成する透明樹脂には、紫外線による劣化防止のために紫外線吸収剤が含まれているが、粘着シート30は硬化のために紫外線を照射する必要がないので、表示部10と前面部材20とを容易かつ確実に貼り合わせることが可能となり、量産性が向上する。また、粘着シート30は、表示部10と前面部材20との間の空間を、前面部材20と光学的に等価な樹脂で埋めることにより、外光が存在する環境下で偏光板11の表面または前面板22の裏面での外光反射を少なくして視認性を向上させる機能も有している。このような粘着シート30は、表示部10とほぼ同寸法の矩形形状を有し、例えば、基材のない透明なアクリル系粘着剤(いわゆる、ゲルシート)により構成されている。粘着シート30の厚みは、例えば、0.2mm程度であることが好ましい。粘着シート30があまりに薄い場合には、表示部10および前面部材20の平面度の違いを十分に吸収することが難しい。また、粘着シート30があまりに厚い場合には、粘着シート30の切断加工が困難となる。
【0021】
図4は、図1に示した表示部10,偏光板11,粘着シート30および前面部材20の不透光部20Bの角の部分における平面的な位置関係を表したものである。図5は、図4に示した表示部10,偏光板11および粘着シート30を拡大して表したものである。
【0022】
粘着シート30は、外形線30Aの一部、具体的には四つの角のうち少なくとも一つの角に、外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側(表示部10の中心に近い側)に位置する退避部分31を有している。この退避部分31は、後述するように、粘着シート30を刃物で切断して表示部10と前面部材20とを分離する分解(リワーク)工程において、粘着シート30への刃物の進入口となるものである。これにより、この表示装置1では、分解を容易にすることが可能となっている。
【0023】
退避部分31は、上述のように、粘着シート30の角に設けられていることが好ましい。その理由は以下の通りである。粘着シート30は、偏光板11や入力部21の平面度の違いを吸収するため、適度な厚みと柔らかさが必要となる。そのような粘着シート30は、表示部10に合わせて所望の寸法に切断する際に、端面の加工が難しく、図6に示したようにバリ30Bが立ったり、欠け(図示せず)が生じたり、さまざまな異形が発生しやすい。このような異形を有する粘着シート30を偏光板11と入力部21との間に挟んで貼り付けた場合、バリ30Bなどの異形の近辺に気泡30Cが発生し、表示装置1の外観を損なうと共に不良率の上昇を招く原因となる。そのため、退避部分31の外形線30Aは、できるだけ表示領域10Aから離すことが望ましい。退避部分31を粘着シート30の辺に設けると、退避部分31の外形線30Aが表示領域10Aに近づくので、気泡30Cが表示領域10A内に現れてしまうおそれがある。退避部分31を粘着シート30の角に設けることにより、退避部分31の外形線30Aと表示領域10Aとの距離を近づけることなく、外形線30Aを偏光板11の外形線11Aよりも内側にすることが可能となる。また、退避部分31を粘着シート30の角に設けることにより、分解(リワーク)工程において刃物の進入位置が分かりやすくなる。
【0024】
退避部分31は、粘着シート30の四つの角のうち少なくとも一つの角に設けられていれば足りるが、粘着シート30の四つの角の全部に設けることも可能であることは言うまでもない。あるいは、表示部10の一辺には図示しないFPC(Flexible Printed Circuit)が取り付けられているので、分解の際のFPCの損傷を避けるため、退避部分31はFPCの付いていない辺の両端または一端の角に設けることも可能である。
【0025】
退避部分31の外形線30Aは、不透光部20Bの内側輪郭線20Cよりも外側(表示部10の外形線10Dに近い側)に位置していることが好ましい。退避部分31の外形線30A近傍に発生した気泡30Cを不透光部20Bによって隠すことが可能となるので、気泡30Cが透光部20A内に現れて視認可能となってしまうおそれが小さくなるからである。
【0026】
退避部分31の外形線30Aは、不透光部20Bの内側輪郭線20Cの角を囲む円弧をなしていることが好ましい。退避部分31の形状が曲線であるほうが、粘着シート30を所望の寸法に切断する際にバリ30B等の異形を発生しにくくすることが可能となる。なお、退避部分31の外形線30Aの円弧とは、正確な円弧だけでなく、円弧に類似した丸みのある曲線形状(R形状)も含む。
【0027】
粘着シート30の退避部分31以外の通常部分32(具体的には辺の部分)の外形線30Aは、偏光板11の外形線11Aよりも外側に位置していることが好ましい。これにより、図6に示したように粘着シート30の切断端面にバリ30B等の異形があっても、異形の近傍に発生した気泡30Cが視認可能となってしまうおそれが小さくなり、表示装置1の外観を良好にすると共に歩留まりを高めることが可能となる。
【0028】
通常部分32の外形線30Aは、表示部10の外形線10Dよりも内側に位置することが好ましい。これにより、粘着シート30の端部が表示部10と前面部材20との間からはみ出すのを回避することが可能となる。
【0029】
不透光部20Bにおいては、前面板22の前面側に不透明層24が設けられていることが好ましい。具体的には、不透明層24は、前面板22の表面、または反射低減シート23に設けられていることが好ましい。その理由は、以下の通りである。図7に示したように前面板22の裏面、または入力部21に不透明層24を設けた場合には、前面板22の裏面側に、不透明層24に起因する段差が生じる。この状態で表示部10と前面部材20とを粘着シート30で貼り合わせると、不透明層24の設けられた部分では粘着シート30が圧縮されるので反力が生じ、不透明層24の近傍(不透明層24が設けられていない部分)では負圧状態になり、不透明層24の際に気泡30Dが生じやすい。これに対して、不透明層24を前面板22の表面、または反射低減シート23に設けた場合には、反射低減シート23は両面を剛体によって挟まれていないので、不透明層24の形状にならって(不透明層24に起因する段差に追随して)変形することが可能である。図7では、粘着シート30が表示部10および前面板22によって両面を剛体で挟まれているので、粘着シート30が不透明層24に起因する段差を吸収しきれず、気泡30Dが生じることになる。
【0030】
また、不透明層24が前面板22の表面、または反射低減シート23に設けられていることにより、分解(リワーク)の際に不透明層24が刃物によって剥離などの損傷を受けることを回避することが可能となる。
【0031】
この表示装置1は、例えば、次のようにして製造することが可能である。
【0032】
まず、図8に示したように、例えば液晶表示パネルまたは有機EL表示パネルよりなる表示部10を形成し、表示部10の前面に偏光板11を貼り合わせる。
【0033】
また、同じく図8に示したように、上述した材料よりなる前面板22を用意し、この前面板22の裏面には入力部21を貼り合わせ、前面板22の前面には、不透明層24を印刷した反射低減シート23を貼り合わせる。これにより、前面部材20が形成される。
【0034】
続いて、上述した材料よりなる粘着シート30を用意する。粘着シート30の両面には、補強のため、透明樹脂薄板よりなる剥離シート(図示せず)が貼られている。ローラ等を用いて、粘着シート30の一方の面を、剥離シートを剥がしながら、前面部材20の入力部21の裏面に貼り合わせる。そののち、ローラ等を用いて、粘着シートの他方の面を、剥離シートを剥がしながら、表示部10の偏光板11が設けられた面に貼り合わせる。その際、退避部分31の外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側に位置するようにする。
【0035】
なお、貼り合わせの順序は特に限定されない。例えば、粘着シート30の一方の面を、表示部10の偏光板11が設けられた面に貼り合わせたのち、粘着シート30の他方の面を、前面部材20の入力部21の裏面に貼り合わせるようにすることも可能である。
【0036】
貼り合わせ面に気泡が残っていた場合には、いわゆるオートクレーブを用い、高い空気圧力下で、気泡を粘着シート30内に吸収させることが可能である。しかしながら、なお気泡が残っていた場合、あるいは空気中のゴミを噛みこんでしまった場合には、分解(リワーク)工程を行う。
【0037】
図9は、図5における矢印IX方向から見た構成を表したものである。この表示装置1では、粘着シート30が、外形線30Aの少なくとも一部に、外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側に位置する退避部分31を有している。この退避部分31には、偏光板11と、前面部材20と、退避部分31の端面31Aとで三方を囲まれた隙間33が形成されている。分解(リワーク)のために粘着シート30を剥がす際には、入力部21の裏面21Aに沿って、矢印A1に示したように、刃物40をこの隙間33に差し込むと、刃物40が確実に粘着シート30の退避部分31の端面31Aに到達する。
【0038】
続いて、刃物40を用いて粘着シート30を切断し、表示部10と前面部材20とを分離する。表示部10および前面部材20の表面を洗浄(クリーニング)したのち、再び上述した工程により、表示部10と前面部材20とを新たな粘着シート30により貼り合わせる。
【0039】
以上により、図1に示した表示装置1が完成する。なお、以上の分解(リワーク)工程は、製造工程のみでなく、製造後の修理や部品交換の際にも行うことが可能であることは言うまでもない。
【0040】
図10(A)は、従来の表示装置において図1のIIA−IIA線に対応する位置における断面構成を表し、図10(B)は、従来の表示装置において図1のIIB−IIB線に対応する位置における断面構成を表したものである。図11は、図10に示した従来の表示装置において、表示部、偏光板および粘着シートの角の部分を拡大して表したものである。図12は、図11における矢印XII方向から見た構成を表したものである。なお、図10ないし図12では、図1ないし図9に示した表示装置1に対応する構成要素には、100番台の同一の符号を付している。
【0041】
図10および図11に示したように、従来の表示装置101では、粘着シート130の端面付近の気泡が表示領域内に現れてしまうことを回避するため、粘着シート130の外形線130Aの全部が偏光板111の外形線111Aよりも外側に位置するようにしていた。このような従来の表示装置101では、分解(リワーク)工程において、図12に示したように、入力部121の裏面121Aに沿って、矢印A2に示したように刃物140を差し込むと、刃物140が粘着シート130の端面131Aに到達する。しかし、粘着シート130は極めて柔らかいので、矢印A3に示したように、刃物140が粘着シート130の端面131Aから逸れてしまいやすかった。そのため、狭い場所で刃物140の刃先の方向を規制しながらの難しい作業となり、表示部110や入力部121を刃物140で傷つけてしまうおそれがあった。
【0042】
この表示装置1では、バックライトユニット(図示せず)から表示部10に入射し、映像電圧に基づいて画素毎に変調されつつ液晶層(図示せず)を透過した光(液晶表示パネルの場合)、または表示部10において画素毎に駆動電流に基づいて発生した光(有機ELパネルの場合)は、偏光板11を通過した後、粘着シート30および前面部材20を通過して表示装置1の外側へ取り出される。
【0043】
ここでは、粘着シート30が、外形線30Aの少なくとも一部に、外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側に位置する退避部分31を有しているので、分解が容易になっている。従って、粘着シート30の貼り合わせ面へのゴミや気泡の混入による表示品位の低下が少なくなると共に外観が良好になる。
【0044】
このように本実施の形態では、粘着シート30の外形線30Aの少なくとも一部に、外形線30Aが偏光板11の外形線11Aよりも内側に位置する退避部分31を設けるようにしたので、分解を容易にすることが可能となる。よって、この表示装置1を用いて電子機器を構成すれば、粘着シート30の貼り合わせ面へのゴミや気泡の混入による表示品位の低下が少なく外観が良好となり、利便性を高めることが可能となる。
【0045】
(変形例1)
図13は、本技術の変形例1に係る表示装置1Aの断面構成を表したものである。この表示装置1Aは、前面部材20が入力部21を有さず、前面板22および反射低減シート23のみを有しているようにしたものである。このことを除いては、この表示装置1Aは、上記実施の形態と同様の構成、作用および効果を有し、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0046】
本変形例では、第1の実施の形態と同様に、不透光部20Bにおいては、前面板22の前面側に不透明層24が設けられていることが好ましい。具体的には、不透明層24は、前面板22の表面、または反射低減シート23に設けられていることが好ましい。その理由は、以下の通りである。図14に示したように前面板22の裏面に不透明層24を設けた場合に、表示部10と前面部材20とを粘着シート30で貼り合わせると、不透明層24の設けられた部分では粘着シート30が圧縮されるので反力が生じ、不透明層24の近傍(不透明層24が設けられていない部分)では負圧状態になり、不透明層24の際に気泡30Dが生じやすい。これに対して、不透明層24を前面板22の表面、または反射低減シート23に設けた場合には、反射低減シート23は両面を剛体によって挟まれていないので、不透明層24の形状にならって(不透明層24に起因する段差に追随して)変形することが可能である。図14では、粘着シート30が表示部10および前面板22によって両面を剛体で挟まれているので、粘着シート30が不透明層24に起因する段差を吸収しきれず、気泡30Dが生じることになる。
【0047】
また、不透明層24が前面板22の表面に設けられていることにより、分解(リワーク)の際に不透明層24が刃物によって剥離などの損傷を受けることを回避することが可能となる。
【0048】
(変形例2,3,4)
図15は、本技術の変形例2に係る表示装置1Bの外観を表したものである。図16は、図15における矢印XVI方向から見た構成を表したものであり、図17は、図15における矢印XVII方向から見た構成を表したものである。この表示装置1Bは、前面板22が、表示部10よりもはみ出した拡張部25,26を有している(変形例2)ことを除いては、上記実施の形態と同様の構成、作用および効果を有し、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0049】
拡張部25は、例えば、表示部10の一辺に、表示部10の表面に平行(略平行である場合も含む)に延長されている。このような拡張部25を設けることにより、例えば図18に示したように、拡張部25の裏面に画面外の入力部27を設けることが可能である(変形例3)。画面外の入力部27は、例えば、入力部21と同様に静電容量式タッチパネルにより構成し、拡張部25の表面にキーボードの形状を描いた入力用不透明層28を設けることも可能である。あるいは、図示しないが、画面外の入力部27として、拡張部25に貫通孔を設けて機械的なスイッチ(図示せず)によるキーボードを設けることも可能である。このようにすれば、使用者は、例えば、表示部10の画面を見ながら拡張部25のキーボードを用いて入力作業を行うことが可能となり、更に利便性が向上する。
【0050】
また、例えば図19に示したように、表示部10と前面板22との間の入力部21を省略し、拡張部25に画面外の入力部27のみを設けることも可能である(変形例4)。
【0051】
拡張部26は、例えば、表示部10の他の辺に、表示部10の表面に対して屈曲して延長されている。拡張部26の屈曲形状は、意匠性を考慮して所望の形状・角度とすることが可能であり、例えば図15および図17に示したように、表示部10方向に(下向きに)屈曲されている。
【0052】
なお、前面板22が拡張部25,26を有する場合には、粘着シート30ではなく紫外線硬化樹脂により表示部10と前面部材20とを貼り合わせることは難しい。紫外線硬化樹脂に紫外線を入射させることが困難だからである。そのため、前面板22が拡張部25,26を有している場合には、紫外線照射により硬化させる必要がない粘着シート30を用いて、表示部10と前面部材20とを貼り合わせることが極めて有利となる。
【0053】
(適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置1,1A,1Bの適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置1,1A,1Bは、デジタルスチルカメラ,ビデオカメラ,テレビジョン装置,ノート型パーソナルコンピュータあるいは携帯電話等の携帯端末装置など、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0054】
(適用例1)
図20は、上記実施の形態の表示装置1,1A,1Bが適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部211、表示部212、メニュースイッチ213およびシャッターボタン214を有しており、その表示部212は、上記実施の形態に係る表示装置1,1A,1Bにより構成されている。
【0055】
(適用例2)
図21は、上記実施の形態の表示装置1,1A,1Bが適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部221,この本体部221の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ222,撮影時のスタート/ストップスイッチ223および表示部224を有しており、その表示部224は、上記実施の形態に係る表示装置1,1A,1Bにより構成されている。
【0056】
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、退避部分31の外形線30Aが、不透光部20Bの内側輪郭線20Cの角を囲む円弧をなしている場合について説明したが、図22に示したように、退避部分31の外形線30Aは、粘着シート30の角を斜めに(例えば三角形に)切り欠いた直線形状を有していてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、表示部10として液晶表示パネルまたは有機ELパネルを用いた場合を例として説明したが、表示部10は、液晶または有機ELのほか、無機EL,エレクトロデポジション,エレクトロクロミックあるいはプラズマなどの他の表示素子を用いたものであってもよい。
【0058】
本技術は、デジタルカメラまたはビデオカメラのほか、テレビジョン装置、モニタ等の動画表示を行う表示装置、パーソナルコンピュータ等の電子機器、または携帯電話機等の情報端末の表示部など、広く適用可能である。
【0059】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
前面に偏光板が設けられた表示部と、
前記表示部の前面側に対向配置された前面部材と、
前記偏光板と前記前面部材との間に設けられ、外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有する粘着シートと
を備えた表示装置。
(2)
前記粘着シートの前記退避部分以外の通常部分の外形線は、前記偏光板の外形線よりも外側に位置する
前記(1)記載の表示装置。
(3)
前記通常部分の外形線は、前記表示部の外形線よりも内側に位置する
前記(2)記載の表示装置。
(4)
前記前面部材は、前記表示部の表示領域に対向して透光部を有すると共に前記透光部の外側の領域に不透光部を有し、
前記退避部分の外形線は、前記不透光部の内側輪郭線よりも外側に位置している
前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(5)
前記偏光板および前記粘着シートは矩形形状を有し、
前記退避部分は前記粘着シートの四つの角のうち少なくとも一つの角に設けられている
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の表示装置。
(6)
前記不透光部の内側輪郭線は矩形形状を有し、
前記退避部分の外形線は、前記不透光部の内側輪郭線の角を囲む円弧をなしている
前記(5)記載の表示装置。
(7)
前記前面部材は、前面板を有し、
前記不透光部においては、前記前面板の前面側に不透明層が設けられている
前記(4)ないし(6)のいずれか1項に記載の表示装置。
(8)
前記前面板は、前記表示部よりもはみ出した拡張部を有し、
前記前面部材は、前記拡張部の裏面に画面外の入力部を備えた
前記(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の表示装置。
(9)
前記前面部材は、前記前面板の前記粘着シート側に入力部を備えた
前記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の表示装置。
(10)
前記前面部材は、前記前面板の前面に反射低減シートを備えた
前記(1)ないし(9)のいずれか1項に記載の表示装置。
(11)
前面に偏光板が設けられた表示部と、前記表示部の前面側に対向配置された前面部材とを粘着シートにより貼り合わせると共に、前記粘着シートの外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を設ける
表示装置の製造方法。
(12)
前記偏光板と、前記前面部材と、前記退避部分の端面とで囲まれた隙間に刃物を差し込み、前記刃物を前記退避部分に到達させ、前記粘着シートを切断することにより、前記表示部と前記前面部材とを分解する
前記(11)記載の表示装置の製造方法。
(13)
表示装置を備えた電子機器であって、
前記表示装置は、
前面に偏光板が設けられた表示部と、
前記表示部の前面側に対向配置された前面部材と、
前記偏光板と前記前面部材との間に設けられ、外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有する粘着シートと
を備えた電子機器。
【符号の説明】
【0060】
1…表示装置、10…表示部、11…偏光板、20…前面部材、21…入力部、22…前面板、23…反射低減シート、24…不透明層、25,26…拡張部、27…画面外の入力部、28…入力用の不透明層、30…粘着シート、31…退避部分、32…通常部分、33…隙間、40…刃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に偏光板が設けられた表示部と、
前記表示部の前面側に対向配置された前面部材と、
前記偏光板と前記前面部材との間に設けられ、外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有する粘着シートと
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記粘着シートの前記退避部分以外の通常部分の外形線は、前記偏光板の外形線よりも外側に位置する
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記通常部分の外形線は、前記表示部の外形線よりも内側に位置する
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記前面部材は、前記表示部の表示領域に対向して透光部を有すると共に前記透光部の外側の領域に不透光部を有し、
前記退避部分の外形線は、前記不透光部の内側輪郭線よりも外側に位置している
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記偏光板および前記粘着シートは矩形形状を有し、
前記退避部分は前記粘着シートの四つの角のうち少なくとも一つの角に設けられている
請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記不透光部の内側輪郭線は矩形形状を有し、
前記退避部分の外形線は、前記不透光部の内側輪郭線の角を囲む円弧をなしている
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記前面部材は、前面板を有し、
前記不透光部においては、前記前面板の前面側に不透明層が設けられている
請求項4記載の表示装置。
【請求項8】
前記前面板は、前記表示部よりもはみ出した拡張部を有し、
前記前面部材は、前記拡張部の裏面に画面外の入力部を備えた
請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記前面部材は、前記前面板の前記粘着シート側に入力部を備えた
請求項1記載の表示装置。
【請求項10】
前記前面部材は、前記前面板の前面に反射低減シートを備えた
請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
前面に偏光板が設けられた表示部と、前記表示部の前面側に対向配置された前面部材とを粘着シートにより貼り合わせると共に、前記粘着シートの外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を設ける
表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記偏光板と、前記前面部材と、前記退避部分の端面とで囲まれた隙間に刃物を差し込み、前記刃物を前記退避部分に到達させ、前記粘着シートを切断することにより、前記表示部と前記前面部材とを分解する
請求項11記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
表示装置を備えた電子機器であって、
前記表示装置は、
前面に偏光板が設けられた表示部と、
前記表示部の前面側に対向配置された前面部材と、
前記偏光板と前記前面部材との間に設けられ、外形線の少なくとも一部に、前記外形線が前記偏光板の外形線よりも内側に位置する退避部分を有する粘着シートと
を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−137607(P2012−137607A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289676(P2010−289676)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】