説明

表示装置およびその製造方法

【課題】ブラックマトリクスの厚みを厚くすることなく外光反射を抑えることが可能な表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板の一部に設けられ、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有するブラックマトリクスと、ブラックマトリクス上の領域に設けられた薄膜トランジスタと、第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を基板側からこの順に有し、第1電極はブラックマトリクスの間の領域に設けられ、発光層で発生した光を基板の側から取り出す有機EL素子とを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に有機EL(Electroluminescence)素子を備えた表示装置およびその製造方法に係り、とりわけ、発生した光を基板の側から取り出すボトムエミッション型の有機EL素子を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトムエミッション型の有機EL素子は、基板に、第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を基板側からこの順に有し、発光層で発生した光は基板の側から取り出されるようになっている。このようなボトムエミッション型の有機EL素子では、基板側から入射した外光がTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)または配線などで反射され、表示品質の低下が生じる。その対策として、例えば、基板の表面に偏光板を貼り付けて外光反射を抑える方法が行われている。しかし、偏光板は外光反射だけでなく有機EL素子で発生した光も一定の割合で遮断してしまうので、消費電力の増加を引き起こしてしまう。
【0003】
そこで、例えば特許文献1ないし特許文献4では、偏光板に代えて、基板とTFTとの間に金属膜などのブラックマトリクスを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−216960号公報
【特許文献2】特開2002−299055号公報
【特許文献3】特開2004−46087号公報
【特許文献4】特開2004−72092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブラックマトリクス上にTFTを設けるようにした場合には、ブラックマトリクスの厚みを厚くすると表面荒さが増加し、表面凹凸が大きくなり、TFT特性に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、ブラックマトリクスの厚みを厚くすることなく外光反射を抑えることが可能な表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の表示装置は、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)基板の一部に設けられ、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有するブラックマトリクス
(B)ブラックマトリクス上の領域に設けられた薄膜トランジスタ
(C)第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を基板側からこの順に有し、第1電極はブラックマトリクスの間の領域以外に設けられ、発光層で発生した光を基板の側から取り出す有機EL素子
【0008】
本開示の表示装置では、ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有している。よって、基板外から入射してきた外光の反射光は、反射層の基板側の界面(主たる界面)で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第1干渉層および第2干渉層の界面で反射される成分とに分かれる。主たる界面での反射光の強度および位相が、それ以外の界面での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面での反射光とそれ以外の界面での反射光は互いに打ち消し合い、基板外に出てこなくなる。
【0009】
本開示の表示装置の製造方法は、以下の(A)〜(F)の工程を含むものである。
(A)基板の一部に、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有するブラックマトリクスを形成する工程
(B)ブラックマトリクス上の領域に薄膜トランジスタを形成する工程
(C)ブラックマトリクスの間の領域に第1電極を形成する工程
(D)第1電極の上に絶縁膜材料膜を形成したのち、絶縁膜材料膜を、ブラックマトリクスをマスクとして基板の裏側から露光することにより、第1電極に対向して開口部を有する絶縁膜を形成する工程
(E)第1電極および絶縁膜の上に、発光層を含む有機層を形成する工程
(F)有機層の上に第2電極を形成することにより、第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を基板側からこの順に有し、発光層で発生した光を基板の側から取り出す有機EL素子を形成する工程
【発明の効果】
【0010】
本開示の表示装置によれば、ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有するようにしたので、光の干渉効果を利用して吸収率を高めることが可能となる。よって、ブラックマトリクスの厚みを厚くすることなく外光反射を抑えることが可能となる。
【0011】
本開示の表示装置の製造方法によれば、絶縁膜材料膜を、ブラックマトリクスをマスクとして基板の裏側から露光することにより、第1電極に対向して開口部を有する絶縁膜を形成するようにしたので、本開示の表示装置を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す断面図である。
【図6】図3に示したブラックマトリクスの作用を説明するための図である。
【図7】本開示の第2の実施の形態に係る表示装置における表示領域の構成を表す断面図である。
【図8】図7に示したブラックマトリクスの作用を説明するための図である。
【図9】本開示の第3の実施の形態に係る表示装置における表示領域の構成を表す断面図である。
【図10】図9に示したブラックマトリクスの作用を説明するための図である。
【図11】本開示の第4の実施の形態に係る表示装置における表示領域の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示したブラックマトリクスの作用を説明するための図である。
【図13】本開示の第5の実施の形態に係る表示装置における表示領域の構成を表す断面図である。
【図14】図13に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図15】図14に続く工程を表す断面図である。
【図16】図15に続く工程を表す断面図である。
【図17】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図18】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図19】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図20】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図21】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図22】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層および反射層を基板側からこの順に有する例)
2.第2の実施の形態(ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層,位相調整層および反射層を基板側からこの順に有する例)
3.第3の実施の形態(ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層,反射層,第3干渉層および第4干渉層を基板側からこの順に有する例)
4.第4の実施の形態(ブラックマトリクスが、第1干渉層,第2干渉層,第1位相調整層,反射層,第2位相調整層,第3干渉層および第4干渉層を基板側からこの順に有する例)
5.第5の実施の形態(白色発光の有機EL素子を用いる例)
6.適用例
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、後述する複数の有機EL素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が設けられたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0015】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極41の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。画素駆動回路140は、例えば、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、キャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10R(または10G,10B)とを有している。キャパシタCsの一方の電極は駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2の間に接続され、他方の電極は駆動トランジスタTr1および有機EL素子10R(または10G,10B)との間に接続されている。
【0016】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0017】
図3は、図1に示した表示領域110の断面構成を表したものである。基板11上には、ブラックマトリクス20,第1絶縁膜31,上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1としてのTFT32,第2絶縁膜33,および有機EL素子10R,10G,10Bが基板11側からこの順に設けられている。有機EL素子10R,10G,10Bは、必要に応じて、窒化シリコン(SiN)などの保護膜(図示せず)により覆われている。保護膜の上には、ガラス等の封止用基板が、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂などの接着層により貼り合わせられている。
【0018】
基板11は、ガラスまたはプラスチック等の絶縁性基板により構成されている。
【0019】
ブラックマトリクス20は、基板11側から入射した外光が駆動トランジスタTr1等で反射されるのを抑え、表示品質を向上させるためのものである。ブラックマトリクス20は、駆動トランジスタTr1の下層に設けられ、例えば、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23を基板11側からこの順に有している。これにより、この表示装置では、ブラックマトリクス20の厚みを厚くすることなく外光反射を抑えることが可能となっている。
【0020】
第1干渉層21および第2干渉層22は、反射層23で生じる外光の反射光について、光の強度の調節および位相の調節を行うという二つの機能を有している。そのため、第1干渉層21および第2干渉層22の材料および厚みは、基板11側から入射する外光のスペクトルのピーク波長において反射層23の反射率が抑えられるように設定されていることが望ましい。
【0021】
例えば、外光が蛍光灯(スペクトルのピーク波長545nm)である場合には、第1干渉層21は、例えば、厚みが40nm以上50nm以下、具体的には45nmであり、窒化シリコン(SiNx)により構成されている。第2干渉層22は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には15nmであり、非晶質シリコン(a−Si)により構成されている。反射層23は、例えば、厚みが80nm以上150nm以下、具体的には100nmであり、モリブデン(Mo)により構成されている。
【0022】
また、例えば、外光が太陽光(スペクトルのピーク波長450nmないし550nm)である場合には、第1干渉層21は、例えば、厚みが45nm以上55nm以下、具体的には50nmであり、SiNxにより構成されている。第2干渉層22は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には12nmであり、a−Siにより構成されている。反射層23は、例えば、厚みが80nm以上150nm以下、具体的には100nmであり、Moにより構成されている。
【0023】
第1絶縁膜31は、基板11およびブラックマトリクス20と画素駆動回路140との間に設けられ、例えば、厚みが200nmであり、SiNまたはSiO2により構成されている。
【0024】
TFT32は、画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1を構成するものであり、例えば、第1層間絶縁膜31上に、ゲート電極32A,ゲート絶縁膜32B,半導体膜32C,チャネル保護膜32D,層間絶縁膜32E,配線32Fがこの順に積層されたボトムゲート型(逆スタガ型)のTFTである。なお、図2に示した書き込みトランジスタTr2も、TFT32と同様の構成を有している。
【0025】
ゲート電極32Aは、例えば、厚みが90nmであり、Moにより構成されている。ゲート絶縁膜32Bは、例えば、厚みが100nmであり、SiO2またはSiN、あるいはそれら積層構造により構成されている。半導体膜32Cは、例えば、厚みが45nmであり、a−Siにより構成されている。チャネル保護膜32Dは、例えば、厚みが15 nmであり、SiO2により構成されている。層間絶縁膜32Eは、例えば、厚みが600nmであり、SiO2またはSiN、あるいはそれら積層構造により構成されている。配線32Fは、例えば、厚みが500nmであり、Alにより構成されている。
【0026】
ブラックマトリクス20の第1干渉層21は、ゲート絶縁膜32Aと同じ材料により構成され、反射層23はゲート電極32Aと同じ材料により構成されていることが好ましい。また、第2干渉層22は半導体膜32Cと同じ材料により構成されていることが好ましい。ブラックマトリクス20の各層とTFT32の各層とを同じ材料により構成することにより、ブラックマトリクス20がTFT32の製造工程でかかる熱に耐えることが可能となる。また、ブラックマトリクス20を、ゲート電極32A,ゲート絶縁膜32Bまたは半導体膜32Cのいずれか一つと同じ材料よりなる単膜により構成した場合には、光の吸収率が低く、所望の外光反射特性を得ることが難しい。ブラックマトリクス20をゲート電極32A,ゲート絶縁膜32Bおよび半導体膜32Cと同じ材料の多層構造とすることにより、光の干渉効果を利用して吸収率を高めることが可能となる。
【0027】
第2絶縁膜33は、画素駆動回路140(TFT32)が設けられた基板11の表面を平坦化するものであり、例えば、厚みが100nmないし1000nmであり、酸化窒化シリコン(SiON)またはSiO2により構成されている。また、第2絶縁膜33は、厚みが2.0μm程度であり、ポリイミドなどの感光性絶縁材料により構成されていることも可能である。第2絶縁膜33には、TFT32と有機EL素子10R,10G,10Bとの電気的接続をとるための接続孔33Aが設けられている。
【0028】
有機EL素子10R,10G,10Bは、第2絶縁膜33の上に設けられ、基板11の側から、第1電極41,第3絶縁膜42,発光層を含む有機層43,および第2電極44がこの順に積層された構成を有している。
【0029】
第1電極41は、有機EL素子10R,10G,10Bの各々に対応して形成されている。第1電極41は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標)),またはSnO2、ZnOなどの透明電極により構成され、発光層で発生した光を第1電極41側から取り出すようになっている(ボトムエミッション)。第1電極41はブラックマトリクス20の間の領域に設けられており、発光層で発生した光は第1電極41を透過して基板11側から取り出されるようになっている。また、第1電極41は、第2絶縁膜33の接続孔33A内にも延在し、TFT32の配線32Fに接続されている。
【0030】
第3絶縁膜42は、第1電極41と第2電極44との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば、厚みが1μm程度であり、シリコン酸化物またはポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。第3絶縁膜42には、発光領域に対応して開口部42Aが設けられている。なお、有機層43および第2電極44は、第3絶縁膜42の上にも連続して設けられているが、発光が生じるのは第3絶縁膜42の開口部42Aだけである。
【0031】
有機層43は、例えば、第1電極41の側から順に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層および電子注入層を積層した構成を有するが、これらのうち発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層43は、有機EL素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0032】
有機EL素子10Rの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機EL素子10Rの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL素子10Rの赤色発光層は、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。有機EL素子10Rの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。
【0033】
有機EL素子10Gの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機EL素子10Gの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機EL素子10Gの緑色発光層は、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。有機EL素子10Gの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0034】
有機EL素子10Bの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機EL素子10Bの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機EL素子10Bの青色発光層は、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。有機EL素子10Bの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0035】
第2電極44は、例えば、金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),タングステン(W),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金よりなる反射電極により構成されている。また、第2電極44は、これらの金属元素の単体または合金よりなる層と、第1電極41と同様の透明電極との複合膜により構成されていてもよい。
【0036】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0037】
まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)装置を用いて、シラン(SiH4),アンモニア(NH2)および窒素(N2)を原料ガスとして、SiNx膜を45nmの厚みで形成する。次いで、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を15nmの厚みで形成する。続いて、スパッタリング装置を用いて、Mo膜を100nmの厚みで形成する。そののち、SiNx膜,a−Si膜およびMo膜の積層体を、例えばリソグラフィおよびエッチングにより、所定の形状に成形する。これにより、図4に示したように、基板11の一部(TFT32の形成予定領域の下層)に、SiNxよりなる第1干渉層21,a−Siよりなる第2干渉層22およびMoよりなる反射層23を順に積層したブラックマトリクス20が形成される。
【0038】
ブラックマトリクス20を形成したのち、同じく図4に示したように、例えばCVD法により、SiNxよりなる第1絶縁膜31を200nmの厚みで形成する。
【0039】
続いて、同じく図4に示したように、ブラックマトリクス20上の領域に、上述した厚みおよび材料よりなるゲート電極32A,ゲート絶縁膜32B,半導体膜32C,チャネル保護膜32D,層間絶縁膜32E,配線32Fを順に形成し、TFT32を形成する。
【0040】
TFT32を形成したのち、例えばプラズマCVD法により、SiON膜またはSiO2膜を100nmないし1000nmの厚みで形成する。続いて、このSiON膜またはSiO2膜を、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形し、同じく図4に示したように、接続孔33Aを有する第2絶縁膜33を形成する。
【0041】
第2絶縁膜33を形成したのち、同じく図4に示したように、第2絶縁膜33上のブラックマトリクス20の間の領域に、上述した材料よりなる第1電極41を形成すると共に、第1電極41を接続孔33AにおいてTFT32の配線32Fに接続する。
【0042】
第1電極41を形成したのち、同じく図4に示したように、第1電極41および第2絶縁膜33の上に、上述した材料よりなる第3絶縁膜材料膜42Bを形成する。
【0043】
続いて、同じく図4に示したように、第3絶縁膜材料膜42Bを、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光する。これにより、図5に示したように、第1電極41に対向して開口部42Aを有する第3絶縁膜42が形成される。
【0044】
そののち、第1電極41および第3絶縁膜42の上に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる有機層43および第2電極44を形成する。これにより、図3に示した有機EL素子10R,10G,10Bが形成される。
【0045】
有機EL素子10R,10G,10Bを形成したのち、有機EL素子10R,10G,10Bの上に保護膜(図示せず)を形成し、接着層(図示せず)を間にして封止用基板(図示せず)を貼り合わせる。以上により、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
【0046】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極41,第2絶縁膜33,第1絶縁膜31および基板11を透過して(ボトムエミッション)取り出される。
【0047】
ここでは、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23を基板11側からこの順に有している。よって、図6に示したように、基板11外から入射してきた外光h1の反射光は、反射層23の基板11側の界面(主たる界面)P1で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第1干渉層21および第2干渉層22の界面P2で反射される成分とに分かれる。主たる界面P1での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P2での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P1での反射光とそれ以外の界面P2での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、外光反射が抑えられる。
【0048】
また、従来のブラックマトリクスは、例えば黒色樹脂により構成する場合には1μm程度の厚みが必要であったのに比べて、本実施の形態では、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23の合計厚みは130nmないし225nmであり、ブラックマトリクス20の厚みが著しく小さくなる。
【0049】
このように本実施の形態の表示装置では、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23を基板11側からこの順に有するようにしたので、光の干渉効果を利用して吸収率を高めることが可能となる。よって、ブラックマトリクス20の厚みを厚くすることなく外光反射を抑え、TFT特性への影響を小さくすることが可能となる。
【0050】
本実施の形態の表示装置の製造方法では、第3絶縁膜材料膜42Bを、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光することにより、第1電極41に対向して開口部42Aを有する第3絶縁膜42を形成するようにしている。よって、開口部42Aのブラックマトリクス20に対する位置精度を高めて開口率を向上させることが可能となり、本実施の形態の表示装置を容易に製造することが可能となる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図7は、本開示の第2の実施の形態に係る表示装置における表示領域の断面構成を表したものである。本実施の形態では、第2干渉層22と反射層23との間に位相調整層24が設けられている。このことを除いては、本実施の形態の表示装置は、第1の実施の形態の表示装置と同様の構成、作用および効果を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0052】
本実施の形態のブラックマトリクス20は、第1干渉層21,第2干渉層22,位相調整層24および反射層23を基板11の側から順に積層した構成を有している。第1の実施の形態では第2干渉層22であった部分を、第2の実施の形態では第2干渉層22,位相調整層24の2層に分離することで光の強度調整を第2干渉層22で行ない、位相調整を位相調整層24で行ない、光の強度調整と位相調整をが各々独立し調整することが可能になっている。これにより、本実施の形態の表示装置では、更にブラックマトリクス20の反射率を低減し、外光反射を抑えることが可能となっている。
【0053】
具体的には、外光が蛍光灯(スペクトルのピーク波長545nm)である場合には、第1干渉層21は、例えば、厚みが40nm以上50nm以下、具体的には45nmであり、SiNxにより構成されている。第2干渉層22は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には15nmであり、a−Siにより構成されている。位相調整層24は、例えば、厚みが1nm以上10nm以下、具体的には5nmであり、SiO2により構成されている。反射層23は、例えば、厚みが80nm以上150nm以下、具体的には100nmであり、Moにより構成されている。
【0054】
また、例えば、外光が太陽光(スペクトルのピーク波長450nmないし550nm)である場合には、第1干渉層21は、例えば、厚みが40nm以上70nm以下、具体的には60nmであり、SiNxにより構成されている。第2干渉層22は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には12nmであり、a−Siにより構成されている。位相調整層24は、例えば、厚みが1nm以上10nm以下、具体的には5nmであり、酸化シリコン(SiO2)により構成されている。反射層23は、例えば、厚みが80nm以上150nm以下、具体的には100nmであり、Moにより構成されている。
【0055】
位相調整層24は、ゲート絶縁膜32Aまたはチャネル保護膜32Dと同じ材料により構成されていることが好ましい。ブラックマトリクス20の各層とTFT32の各層とを同じ材料により構成することにより、ブラックマトリクス20がTFT32の製造工程でかかる熱に耐えることが可能となる。
【0056】
この表示装置は、ブラックマトリクス20の製造工程を除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0057】
本実施の形態におけるブラックマトリクス20の形成工程は、以下の通りである。すなわち、まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えばCVD装置を用いて、SiH4,NH2およびN2を原料ガスとして、SiNx膜を45nmの厚みで形成する。次いで、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を10nmの厚みで形成する。続いて、例えばCVD装置を用いて、SiH4およびN2Oを原料ガスとして、SiO2膜を5nmの厚みで形成する。そののち、スパッタリング法により、Mo膜を100nmの厚みで形成する。Mo膜を形成したのち、SiNx膜,a−Si膜,SiO2膜およびMo膜の積層体を、例えばリソグラフィおよびエッチングにより、所定の形状に成形する。これにより、基板11の一部(TFT32の形成予定領域の下層)に、SiNxよりなる第1干渉層21,a−Siよりなる第2干渉層22,SiO2よりなる位相調整層24およびMoよりなる反射層23を順に積層したブラックマトリクス20が形成される。ブラックマトリクス20形成後の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0058】
この表示装置では、第1の実施の形態と同様にして各画素の有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入され、発光が起こる。この光は、第1電極41,第2絶縁膜33,第1絶縁膜31および基板11を透過して(ボトムエミッション)取り出される。
【0059】
ここでは、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22,位相調整層24および反射層23を基板11側からこの順に有している。よって、図8に示したように、基板11外から入射してきた外光h1の反射光は、反射層23の基板11側の界面(主たる界面)P1で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第1干渉層21および第2干渉層22の界面P2、または第2干渉層22および位相調整層24の界面P3で反射される成分とに分かれる。主たる界面P1での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P2またはP3での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P1での反射光とそれ以外の界面P2またはP3での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、外光反射が抑えられる。
【0060】
このように本実施の形態の表示装置では、第2干渉層22と反射層23との間に位相調整層24を設けるようにしたので、光の干渉効果を利用して反射率を更に低減し、吸収率を更に高めることが可能となる。よって、ブラックマトリクス20の厚みを厚くすることなく外光反射を抑え、TFT特性への影響を小さくするという第1の実施の形態の効果を更に高めることが可能となる。
【0061】
(第3の実施の形態)
図9は、本開示の第3の実施の形態に係る表示装置における表示領域の断面構成を表したものである。本実施の形態は、反射層23の有機EL素子10R,10G,10B側に、更に第3干渉層25,第4干渉層26を設けることにより、有機EL素子10R,10G,10Bの発光領域以外からの光漏れ(また有機EL素子10R,10G,10Bの発光や外光が第2電極44やTFT配線で複雑に反射した結果現れる予期せぬ迷光)を抑えるようにしたものである。このことを除いては、本実施の形態の表示装置は、第1の実施の形態の表示装置と同様の構成、作用および効果を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0062】
第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0063】
第3干渉層25および第4干渉層26は、隣接する有機発光素子10R,10G,10Bから入射する漏れ光の反射光について、光の強度の調節および位相の調節を行うという二つの機能を有している。第3干渉層25は第2干渉層22と同じ材料により構成され、第4干渉層26は第1干渉層21と同じ材料により構成されている。
【0064】
第3干渉層25は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には15nmであり、a−Siにより構成されている。第4干渉層26は、例えば、厚みが45nm以上70nm以下、具体的には45nmであり、SiNxにより構成されている。
【0065】
第4干渉層26は、ゲート絶縁膜32Aと同じ材料により構成されていることが好ましい。また、第3干渉層25は半導体膜32Cと同じ材料により構成されていることが好ましい。ブラックマトリクス20の各層とTFT32の各層とを同じ材料により構成することにより、ブラックマトリクス20がTFT32の製造工程でかかる熱に耐えることが可能となる。
【0066】
この表示装置は、ブラックマトリクス20の製造工程を除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0067】
本実施の形態におけるブラックマトリクス20の形成工程は、以下の通りである。すなわち、まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えばCVD装置を用いて、SiH4,NH2およびN2を原料ガスとして、SiNx膜を45nmの厚みで形成する。次いで、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を15nmの厚みで形成する。続いて、スパッタリング法により、Mo膜を100nmの厚みで形成する。そののち、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を15nmの厚みで形成する。更に、例えばCVD装置を用いて、SiH4,NH2およびN2を原料ガスとして、SiNx膜を45nmの厚みで形成する。そののち、SiNx膜,a−Si膜,Mo膜,a−Si膜およびSiNx膜の積層体を、例えばリソグラフィおよびエッチングにより、所定の形状に成形する。これにより、基板11の一部(TFT32の形成予定領域の下層)に、SiNxよりなる第1干渉層21,a−Siよりなる第2干渉層22,Moよりなる反射層23,a−Siよりなる第3干渉層25およびSiNxよりなる第4干渉層26を順に積層したブラックマトリクス20が形成される。ブラックマトリクス20形成後の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
この表示装置では、第1の実施の形態と同様にして各画素の有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入され、発光が起こる。この光は、第1電極41,第2絶縁膜33,第1絶縁膜31および基板11を透過して(ボトムエミッション)取り出される。
【0069】
ここでは、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23を基板11側からこの順に有している。よって、図10に示したように、基板11外から入射してきた外光h1の反射光は、反射層23の基板11側の界面(主たる界面)P1で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第1干渉層21および第2干渉層22の界面P2で反射される成分とに分かれる。主たる界面P1での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P2での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P1での反射光とそれ以外の界面P2での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、外光反射が抑えられる。
【0070】
また、反射層23の上には第3干渉層25および第4干渉層26が順に設けられている。これにより、同じく図10に示したように、隣接する有機EL素子10R,10G,10Bから入射してきた漏れ光h2の反射光は、反射層23のTFT32側の界面(主たる界面)P4で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第3干渉層25および第4干渉層26の界面P5で反射される成分とに分かれる。主たる界面P4での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P5での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P4での反射光とそれ以外の界面P5での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、有機EL素子10R,10G,10Bの発光領域以外からの光漏れが抑えられる。
【0071】
このように本実施の形態の表示装置では、反射層23の有機EL素子10R,10G,10B側に第3干渉層25および第4干渉層26を設けるようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、有機EL素子10R,10G,10Bの発光領域以外からの光漏れを抑えることが可能となる。
【0072】
(第4の実施の形態)
図11は、本開示の第4の実施の形態に係る表示装置における表示領域の断面構成を表したものである。本実施の形態では、第2干渉層22と反射層23との間に第1位相調整層27が設けられ、反射層23と第3干渉層25との間に第2位相調整層28が設けられている。このことを除いては、本実施の形態の表示装置は、第3の実施の形態の表示装置と同様の構成、作用および効果を有し、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0073】
本実施の形態のブラックマトリクス20は、第1干渉層21,第2干渉層22,第1位相調整層27,反射層23,第2位相調整層28,第3干渉層25および第4干渉層26を基板11の側から順に積層した構成を有している。
【0074】
第1干渉層21は、第1の実施の形態と同様に、反射層23で生じる外光の反射光について、光の強度の調節および位相の調節を行うという二つの機能を有している。第2干渉層22は光の強度の調節の機能を有し、第1位相調整層27は光の位相の調節の機能を有している。これにより、本実施の形態の表示装置では、更にブラックマトリクス20の反射率を低減し、外光反射を抑えることが可能となっている。
【0075】
一方、第4干渉層26は、第3の実施の形態と同様に、隣接する有機発光素子10R,10G,10Bから入射する漏れ光の反射光(また有機EL素子10R,10G,10Bの発光や外光が第2電極44やTFT配線で複雑に反射した結果現れる予期せぬ迷光)について、光の強度の調節および位相の調節を行うという二つの機能を有している。第3干渉層25は光の強度の調節の機能を有し、第2位相調整層28は光の位相の調節の機能を有している。これにより、本実施の形態の表示装置では、更にブラックマトリクス20の反射率を低減し、隣接する有機EL素子10R,10G,10Bからの光漏れを抑えることが可能となっている。
【0076】
第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23の材料および厚みは、第1の実施の形態と同様である。第1位相調整層27の材料および厚みは、第2の実施の形態の位相調整層24と同様である。
【0077】
第2位相調整層28は、例えば、厚みが1nm以上10nm以下、具体的には5nmであり、SiO2により構成されている。第3干渉層25は、例えば、厚みが10nm以上20nm以下、具体的には15nmであり、a−Siにより構成されている。第4干渉層21は、例えば、厚みが40nm以上70nm以下、具体的には45nmであり、SiNxにより構成されている。
【0078】
第2位相調整層28は、ゲート絶縁膜32Aまたはチャネル保護膜32Dと同じ材料により構成されていることが好ましい。第4干渉層26は、ゲート絶縁膜32Aと同じ材料により構成されていることが好ましい。また、第3干渉層25は半導体膜32Cと同じ材料により構成されていることが好ましい。ブラックマトリクス20の各層とTFT32の各層とを同じ材料により構成することにより、ブラックマトリクス20がTFT32の製造工程でかかる熱に耐えることが可能となる。
【0079】
この表示装置は、ブラックマトリクス20の製造工程を除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0080】
本実施の形態におけるブラックマトリクス20の形成工程は、以下の通りである。すなわち、まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えばCVD装置を用いて、SiH4,NH2およびN2を原料ガスとして、SiN膜を45nmの厚みで形成する。次いで、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を15nmの厚みで形成する。続いて、例えばCVD装置を用いて、SiH4およびN2Oを原料ガスとして、SiO2膜を5nmの厚みで形成する。そののち、スパッタリング法により、Mo膜を100nmの厚みで形成する。続いて、例えばCVD装置を用いて、SiH4およびN2Oを原料ガスとして、SiO2膜を5nmの厚みで形成する。そののち、例えばCVD装置を用いて、SiH4を原料ガスとして、a−Si膜を15nmの厚みで形成する。更に、例えばCVD装置を用いて、SiH4,NH2およびN2を原料ガスとして、SiN膜を45nmの厚みで形成する。そののち、SiNx膜,a−Si膜,SiO2膜,Mo膜,SiO2膜,a−Si膜およびSiNx膜の積層体を、例えばリソグラフィおよびエッチングにより、所定の形状に成形する。これにより、基板11の一部(TFT32の形成予定領域の下層)に、SiNよりなる第1干渉層21,a−Siよりなる第2干渉層22,SiO2よりなる第1位相調整層27,Moよりなる反射層23,SiO2よりなる第2位相調整層28,a−Siよりなる第3干渉層25およびSiNxよりなる第4干渉層26を順に積層したブラックマトリクス20が形成される。ブラックマトリクス20形成後の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0081】
この表示装置では、第1の実施の形態と同様にして各画素の有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入され、発光が起こる。この光は、第1電極41,第2絶縁膜33,第1絶縁膜31および基板11を透過して(ボトムエミッション)取り出される。
【0082】
ここでは、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22,第1位相調整層27および反射層23を基板11側からこの順に有している。よって、図12に示したように、基板11外から入射してきた外光h1の反射光は、反射層23の基板11側の界面(主たる界面)P1で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第1干渉層21および第2干渉層22の界面P2、または第2干渉層22および第1位相調整層27の界面P3で反射される成分とに分かれる。主たる界面P1での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P2またはP3での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P1での反射光とそれ以外の界面P2またはP3での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、外光反射が抑えられる。
【0083】
また、反射層23の上には第2位相調整層28,第3干渉層25および第4干渉層26が順に設けられている。これにより、同じく図12に示したように、隣接する有機EL素子10R,10G,10Bから入射してきた漏れ光h2の反射光は、反射層23のTFT32側の界面(主たる界面)P4で反射される成分と、それ以外の界面、例えば第3干渉層25および第4干渉層26の界面P5、または第3干渉層25および第2位相調整層28の界面P6で反射される成分とに分かれる。主たる界面P4での反射光の強度および位相が、それ以外の界面P5またはP6での反射光の強度と同じで位相が反転している場合、主たる界面P4での反射光とそれ以外の界面P5またはP6での反射光は互いに打ち消し合い、基板11外に出てこなくなる。よって、有機EL素子10R,10G,10Bの発光領域以外からの光漏れが抑えられる。
【0084】
このように本実施の形態の表示装置では、第2干渉層22と反射層23との間に第1位相調整層27を設け、反射層23と第3干渉層25との間に第2位相調整層28を設けるようにしたので、光の干渉効果を利用して反射率を更に低減し、吸収率を更に高めることが可能となる。よって、ブラックマトリクス20の厚みを厚くすることなく外光反射を抑え、TFT特性への影響を小さくするという第1の実施の形態の効果を更に高めることが可能となると共に、有機EL素子10R,10G,10Bの発光領域以外からの光漏れを抑えるという第3の実施の形態の効果を更に高めることが可能となる。
【0085】
(第5の実施の形態)
図13は、本開示の第5の実施の形態に係る表示装置における表示領域の断面構成を表したものである。本実施の形態の表示装置は、白色光を発生する有機EL素子10と、これら有機EL素子10で発生した白色光を赤,緑および青の色光とする赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50B(以下カラーフィルタ50と総称する。)とを備えている。このことを除いては、第1の実施の形態の表示装置と同様の構成、作用および効果を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0086】
有機EL素子10は、第1電極41,第3絶縁膜42,有機層43および第2電極44を基板11側から順に積層した構成を有し、その積層構成は、発光色(赤,緑,青および白)にかかわらず同一である。なお、以下の説明では、赤色フィルタ50Rとの組み合わせにより白色光を赤色光とする有機EL素子10を、有機EL素子10Rという。同様に、緑色フィルタ50Gとの組み合わせにより白色光を緑色光とする有機EL素子10を、有機EL素子10Gという。同様に、青色フィルタ50Bとの組み合わせにより白色光を青色光とする有機EL素子10を、有機EL素子10Bという。また、カラーフィルタ50を有さず、白色光をそのまま発生する有機EL素子10を、有機EL素子10Wという。
【0087】
第1電極41および第3絶縁膜42は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0088】
有機層43は、例えば、第1電極41の側から順に、第1正孔注入層,第1正孔輸送層,青発光層,第1電子輸送層および第1電子注入層、接続層、第2正孔注入層,第2正孔輸送層,赤発光層,緑発光層、第2電子輸送層および第2電子注入層を積層した構成を有するが、これらのうち発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。第1および第2正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。第1および第2正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。第1および第2電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。第1および第2電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0089】
有機EL素子10の第1正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機EL素子10の第1正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上100nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL素子10の青発光層は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。有機EL素子10の第1電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上100nm以下であり、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。有機EL素子10の第1電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。有機EL素子10の接続層は、例えば、厚みが1nmないし20nm程度であり、Alq3 にマグネシウム(Mg)20重量%混合したものにより構成されている。
【0090】
有機EL素子10の第2正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機EL素子10の第2正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上100nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL素子10の赤発光層は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。有機EL素子10の緑発光層は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、ADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。有機EL素子10の第2電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上100nm以下であり、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。有機EL素子10の第2電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0091】
第2電極44は、例えば、金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),タングステン(W),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金よりなる反射電極により構成されている。また、第2電極44は、これらの金属元素の単体または合金よりなる層と、第1電極41と同様の透明電極との複合膜により構成されていてもよい。
【0092】
カラーフィルタ50は、TFT32と第2絶縁膜33との間に設けられ、赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50Bを有している。赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50Bは、それぞれ、有機EL素子10の各々に対向する位置に設けられている。赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0093】
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0094】
まず、図14に示したように、第1の実施の形態と同様にして、基板11の一部(TFT32の形成予定領域の下層)に、SiNxよりなる第1干渉層21,a−Siよりなる第2干渉層22およびMoよりなる反射層23を順に積層したブラックマトリクス20を形成する。
【0095】
次いで、同じく図14に示したように、第1の実施の形態と同様にして、第1絶縁膜31およびTFT32を形成する。
【0096】
続いて、同じく図14に示したように、TFT32の層間絶縁膜32E上の有機EL素子10R,10G,10Bの形成予定領域に、赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50Bよりなるカラーフィルタ50を形成する。
【0097】
そののち、同じく図14に示したように、第1の実施の形態と同様にして、接続孔33Aを有する第2絶縁膜33,および第1電極41を順に形成する。
【0098】
続いて、同じく図14に示したように、第1電極41および第2絶縁膜33の上に、上述した材料よりなる第3絶縁膜材料膜42Bを形成する。
【0099】
そののち、同じく図14に示したように、第3絶縁膜材料膜42Bを、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光する。このとき、カラーフィルタ50(赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50B)が設けられている部分では、カラーフィルタ50により露光の光が吸収されるので、第3絶縁膜材料膜42Bの有機EL素子10Wの形成予定領域のみが露光される。
【0100】
続いて、図15に示したように、第3絶縁膜材料膜42Bを、マスク60を用いて、基板11の表側から露光する。マスク60は、透明基材61の表面に遮光層62を有している。遮光層62には、有機EL素子10R,10G,10Bの形成予定領域に対向して開口62Aが設けられているが、有機EL素子10Wの形成予定領域は遮光層62により遮光されている。これにより、第3絶縁膜42Bの有機EL素子10R,10G,10Bの形成予定領域が露光される。
【0101】
これにより、図16に示したように、第1電極41に対向して開口部42Aを有する第3絶縁膜42が形成される。ここでは、第3絶縁膜材料膜42Bの有機EL素子10Wの形成予定領域を、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光するようにしたので、有機EL素子10Wの開口部42Aのブラックマトリクス20に対する位置精度が高くなり、開口率が向上する。
【0102】
そののち、第1電極41および第3絶縁膜42の上に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる有機層43および第2電極44を形成する。これにより、図13に示した有機EL素子10R,10G,10B,10Wが形成される。
【0103】
有機EL素子10R,10G,10B,10Wを形成したのち、有機EL素子10R,10G,10B,10Wの上に保護膜(図示せず)を形成し、接着層(図示せず)を間にして封止用基板(図示せず)を貼り合わせる。以上により、図1,図2および図13に示した表示装置が完成する。
【0104】
この表示装置では、第1の実施の形態と同様にして各画素の有機EL素子10R,10G,10Bに駆動電流Idsが注入され、発光が起こる。この光は、第1電極41,第2絶縁膜33,第1絶縁膜31および基板11を透過して(ボトムエミッション)取り出される。
【0105】
ここでは、第3絶縁膜材料膜42Bの有機EL素子10Wに対向する開口部42Aが、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光することにより形成されているので、有機EL素子10Wの開口部42Aのブラックマトリクス20に対する位置精度が高くなっている。外光反射率に一番大きく関与するのは、カラーフィルタ50を有しない有機EL素子10Wである。有機EL素子10Wの開口部42Aの位置精度が高くなることにより、有機EL素子10Wにおける外光反射を抑えることが可能となる。一方、有機EL素子10R,10G,10Bではカラーフィルタ50によりある程度外光が吸収されるので、上述したように基板11の表側から露光する方法を用いた場合にも外光反射は抑えられる。
【0106】
このように本実施の形態では、第3絶縁膜材料膜42Bを、ブラックマトリクス20をマスクとして基板11の裏側から露光したのち、マスク60を用いて基板11の表側から露光することにより、第1電極41に対向して開口部42Aを有する第3絶縁膜42を形成するようにしている。よって、有機EL素子10Wの開口部42Aのブラックマトリクス20に対する位置精度を高めることが可能となり、本実施の形態の表示装置を容易に製造することが可能となる。
【0107】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0108】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図17に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、上記実施の形態における封止用基板70から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0109】
(適用例1)
図18は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0110】
(適用例2)
図19は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0111】
(適用例3)
図20は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0112】
(適用例4)
図21は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0113】
(適用例5)
図22は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【実施例】
【0114】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0115】
(実施例1)
上記第1の実施の形態と同様にして表示装置を作製した。その際、ブラックマトリクス20は、厚み45nmのSiNxよりなる第1干渉層21,厚み15nmのa−Siよりなる第2干渉層22,および厚い100nmのMoよりなる反射層23を、基板11側から順に積層した構成とした。なお、実施例1は、蛍光灯のスペクトルのピークである545nmの波長を最も吸収するように構成したものである。
【0116】
(実施例2−1)
上記第2の実施の形態と同様にして表示装置を作成した。その際、ブラックマトリクス20は、厚み45nmのSiNxよりなる第1干渉層21,厚み15nmのa−Siよりなる第2干渉層22,厚み5nmのSiO2よりなる位相調整層24,および厚み100nmのMoよりなる反射層23を、基板11側から順に積層した構成とした。なお、実施例2−1は、蛍光灯のスペクトルのピークである545nmの波長を最も吸収するように構成したものである。
【0117】
(実施例2−2)
上記第2の実施の形態と同様にして表示装置を作成した。その際、ブラックマトリクス20は、厚み60nmのSiNxよりなる第1干渉層21,厚み12nmのa−Siよりなる第2干渉層22,厚み5nmのSiO2よりなる位相調整層24,および厚み100nmのMoよりなる反射層23を、基板11側から順に積層した構成とした。なお、実施例2−21は、太陽光のスペクトルのピークである450nmないし550nmの波長帯を最も吸収するように構成したものである。
【0118】
(比較例1)
ブラックマトリクスとして、厚み60nmのSiN層と厚み100nmのMo層との積層構造を設けたことを除いては、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0119】
(比較例2)
ブラックマトリクスとして、厚み15nmのa−Si層と厚み100nmのMo層との積層構造を設けたことを除いては、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0120】
得られた実施例1,2−1,2−2および比較例1,2の表示装置について、基板11の裏側における反射率を調べた。その結果を表1に示す。この値は、ガラスの表面反射を含んだ反射率である。また、表1には、反射率が最低となる波長を併せて示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1から分かるように、実施例1,2−1,2−2ではいずれも、比較例1,2に比べて反射率が著しく小さくなっていた。ガラスの表面反射は4%程度である。このことを考えると、実施例1の多層構造のブラックマトリクス20では反射率が大きく低減されている。実施例2−1,2−2は更に低い。
【0123】
すなわち、ブラックマトリクス20が、第1干渉層21,第2干渉層22および反射層23を基板11側からこの順に有するようにすれば、光の干渉効果を利用して吸収率を高め、外光反射を抑えることが可能となることが分かった。
【0124】
また、第2干渉層22と反射層23との間に位相調整層24を設けるようにすれば、外光反射を更に小さくすることが可能となることが分かった。また、室内使用(蛍光灯)か屋外使用(太陽光)かなど用途に応じて最大吸収波長を調整することが可能となることも分かった。
【0125】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、TFT32がa−Siよりなる半導体膜32Cを備えている場合について説明したが、TFT32は、酸化物半導体または有機半導体(半導体の性質を示す有機材料)よりなる半導体膜を備えたものであることも可能である。
【0126】
また、上記実施の形態では、カラーフィルタ50が赤色フィルタ50R,緑色フィルタ50Gおよび青色フィルタ50Bの三色を有する場合について説明したが、カラーフィルタ50は、黄色および青色の二色を有していてもよい。または、カラーフィルタ50は、赤,緑および青と、黄色またはシアン色またはマゼンタ色との四色を有していてもよい。
【0127】
更に、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0128】
加えて、例えば、上記実施の形態では発光素子が有機EL素子10である場合について説明したが、本開示の表示装置は無機EL素子などの他の発光素子を備えたものでもよい。
【0129】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
基板の一部に設けられ、第1干渉層,第2干渉層および反射層を前記基板側からこの順に有するブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクス上の領域に設けられた薄膜トランジスタと、
第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を前記基板側からこの順に有し、前記第1電極は前記ブラックマトリクスの間の領域に設けられ、前記発光層で発生した光を前記基板の側から取り出す有機EL素子と
を備えた表示装置。
(2)
前記ブラックマトリクスは、前記第2干渉層と前記反射層との間に位相調整層を有する
前記(1)記載の表示装置。
(3)
前記ブラックマトリクスは、前記基板側から、前記第1干渉層,前記第2干渉層,前記反射層,第3干渉層,第4干渉層を順に有する
前記(1)記載の表示装置。
(4)
前記ブラックマトリクスは、前記第2干渉層と前記反射層との間に第1位相調整層を有し、前記反射層と前記第3干渉層との間に第2位相調整層を有する
前記(1)記載の表示装置。
(5)
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極,ゲート絶縁膜,半導体膜を有し、
前記第1干渉層および前記第4干渉層は前記ゲート絶縁膜と同じ材料により構成され、前記反射層は前記ゲート電極と同じ材料により構成されている
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の表示装置。
(6)
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極,ゲート絶縁膜,半導体膜を有し、
前記第2干渉層および前記第3干渉層は前記半導体膜と同じ材料により構成されている
前記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の表示装置。
(7)
基板の一部に、第1干渉層,第2干渉層および反射層を前記基板側からこの順に有するブラックマトリクスを形成する工程と、
前記ブラックマトリクス上の領域に薄膜トランジスタを形成する工程と、
前記ブラックマトリクスの間の領域に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に絶縁膜材料膜を形成したのち、前記絶縁膜材料膜を、前記ブラックマトリクスをマスクとして前記基板の裏側から露光することにより、前記第1電極に対向して開口部を有する絶縁膜を形成する工程と、
前記第1電極および前記絶縁膜の上に、発光層を含む有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に第2電極を形成することにより、前記第1電極,前記発光層を含む前記有機層および前記第2電極を前記基板側からこの順に有し、前記発光層で発生した光を前記基板の側から取り出す有機EL素子を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0130】
10R,10G,10B…有機EL素子、11…基板、20…ブラックマトリクス、21…第1干渉層、22…第2干渉層、23…反射層、24…位相調整層、25…第3干渉層、26…第4干渉層、27…第1位相調整層、28…第2位相調整層、31…第1絶縁膜、32…TFT、33…第2絶縁膜、41…第1電極、42…第3絶縁膜、43…有機層、44…第2電極、50…カラーフィルタ、110…表示領域、120…信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、140…画素駆動回路、Tr1,Tr2…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一部に設けられ、第1干渉層,第2干渉層および反射層を前記基板側からこの順に有するブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクス上の領域に設けられた薄膜トランジスタと、
第1電極,発光層を含む有機層および第2電極を前記基板側からこの順に有し、前記第1電極は前記ブラックマトリクスの間の領域に設けられ、前記発光層で発生した光を前記基板の側から取り出す有機EL素子と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記ブラックマトリクスは、前記第2干渉層と前記反射層との間に位相調整層を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記ブラックマトリクスは、前記基板側から、前記第1干渉層,前記第2干渉層,前記反射層,第3干渉層,第4干渉層を順に有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記ブラックマトリクスは、前記第2干渉層と前記反射層との間に第1位相調整層を有し、前記反射層と前記第3干渉層との間に第2位相調整層を有する
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極,ゲート絶縁膜,半導体膜を有し、
前記第1干渉層および前記第4干渉層は前記ゲート絶縁膜と同じ材料により構成され、前記反射層は前記ゲート電極と同じ材料により構成されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極,ゲート絶縁膜,半導体膜を有し、
前記第2干渉層および前記第3干渉層は前記半導体膜と同じ材料により構成されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
基板の一部に、第1干渉層,第2干渉層および反射層を前記基板側からこの順に有するブラックマトリクスを形成する工程と、
前記ブラックマトリクス上の領域に薄膜トランジスタを形成する工程と、
前記ブラックマトリクスの間の領域に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に絶縁膜材料膜を形成したのち、前記絶縁膜材料膜を、前記ブラックマトリクスをマスクとして前記基板の裏側から露光することにより、前記第1電極に対向して開口部を有する絶縁膜を形成する工程と、
前記第1電極および前記絶縁膜の上に、発光層を含む有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に第2電極を形成することにより、前記第1電極,前記発光層を含む前記有機層および前記第2電極を前記基板側からこの順に有し、前記発光層で発生した光を前記基板の側から取り出す有機EL素子を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−212622(P2012−212622A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78492(P2011−78492)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】