説明

表示装置およびコレステリック液晶表示パネルの駆動方法

【課題】中間調の安定性・均一性に優れ、コントラストが高く、かつ表示時間が数秒以内であるコレステリック液晶パネルを備える表示装置の実現。
【解決手段】コレステリック液晶表示パネル10と、駆動回路28,29と、制御回路27と、を備える表示装置であって、制御回路は、表示する階調に応じて、各画素を、もっとも明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、最高階調と低中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類し、駆動回路は、第1の駆動波形を印加して、最高階調および高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、最低階調のグループの画素を最低階調状態に、低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にし、第2の駆動波形を印加して、高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶表示パネルを備える表示装置およびコレステリック液晶表示パネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶は、半永久的な表示保持(メモリ性)や鮮やかなカラー表示、高コントラスト、高解像性といった優れた特徴を有しており、電子ペーパー、特にカラー電子ペーパーの有力な方式として注目されている。コレステリック液晶は、カイラルネマティック液晶とも称されることがある。コレステリック液晶は、ネマティック液晶にキラル性の添加剤(カイラル材とも称される)を比較的多く(数十%)添加することにより、ネマティック液晶の分子がらせん状のコレステリック相を形成する液晶である。コレステリック液晶は,その液晶分子の配向状態で表示の制御を行う。
【0003】
図1は、コレステリック液晶の状態を説明する図である。図1の(A)および(B)に示すように、コレステリック液晶を利用した表示素子10は、上側基板11と、コレステリック液晶層12と、下側基板13と、を有する。コレステリック液晶には、図1の(A)に示すように入射光を反射するプレーナ状態と、図1の(B)に示すように入射光を透過するフォーカルコニック状態と、があり、これらの状態は、無電界下でも安定してその状態が保持される。
【0004】
プレーナ状態の時には、液晶分子のらせんピッチに応じた波長の光を反射する。反射が最大となる波長λは、液晶の平均屈折率n、らせんピッチpから次の式で表される。
【0005】
λ=n・p
反射帯域Δλは、液晶の屈折率異方性Δnにより決定され、Δnを大きくすると、Δλそれに伴って大きくなる。
【0006】
プレーナ状態の時には、入射光が反射するので「明」状態、すなわち前記λに対応する色(たとえばλが550nmなら緑)を表示することができる。一方、フォーカルコニック状態の時には、下側基板13の下に光吸収層を設けることにより、液晶層を透過した光が吸収されるので「暗」状態、すなわち黒を表示することができる。
【0007】
次に、コレステリック液晶を利用した表示素子の駆動方法を説明する。
【0008】
コレステリック液晶に強い電界を与えると、液晶分子のらせん構造は完全にほどけ、全ての分子が電界の向きにしたがうホメオトロピック状態になる。次に、ホメオトロピック状態から急激に電界をゼロにすると、液晶のらせん軸は電極に垂直になり、らせんピッチに応じた光を選択的に反射するプレーナ状態になる。一方、液晶分子のらせん構造が解けない程度の弱い電界の形成後の電界除去、あるいは強い電界をかけた後緩やかに電界を除去した場合は、液晶のらせん軸は電極に平行になり、入射光を透過するフォーカルコニック状態になる。また、中間的な強さの電界を与え、急激に除去すると、プレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在し、中間調の表示が可能となる。以上の現象を利用して画像表示を行う。
【0009】
図2は、一般的なコレステリック液晶の電圧−反射特性の一例を示している。横軸は、コレステリック液晶を挟む電極間に所定のパルス幅で印加されるパルス電圧の電圧値(V)を表し、縦軸はコレステリック液晶の反射率(%)を表している。図2に示す実線の曲線Pは、初期状態がプレーナ状態のコレステリック液晶の電圧−反射率特性を示し、破線の曲線FCは、初期状態がフォーカルコニック状態のコレステリック液晶の電圧−反射率特性を示す。
【0010】
図2において、電極間に所定の高電圧VP100(例えば±36V)を印加して、コレステリック液晶中に相対的に強い電界を発生させると、液晶分子のらせん構造は完全にほどけて、すべての分子が電界の方向に従うホメオトロピック状態になる。次に、液晶分子がホメオトロピック状態の時に、印加電圧をVP100から所定の低電圧(例えば、VF0=±9V)に急激に低下させて、液晶中の電界を急激にほぼゼロにすると、液晶のらせん軸は電極に垂直になり、らせんピッチに応じた光を選択的に反射するプレーナ状態になる。
【0011】
一方、電極間に所定の低電圧VF100b(例えば、±24V)を印加し、コレステリック液晶中の相対的に弱い電界を発生させると、液晶分子のらせん構造が完全には解けない状態になる。この状態において、印加電圧をVF100bから低電圧VF0に急激に低下させて、液晶中の電界を急激にほぼゼロにするか、あるいは強い電界を印加し緩やかに電界を除去した場合は、液晶分子のらせん軸が電極に平行になり、入射光を透過するフォーカルコニック状態になる。
【0012】
また、中間的な強さの電界を印加し、急激に電界を除去すると、プレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在し、中間調の表示が可能となる。
【0013】
ここで、図2に示す曲線Pにおいて、破線枠A内では、印加する電圧パルスの電圧値を高くするに従ってフォーカルコニック状態の割合を増加させてコレステリック液晶の反射率を低下させることができる。また、図2に示す曲線PおよびFCにおいて、破線枠B内では、印加する電圧値を低くするに従ってフォーカルコニック状態の割合を増加させてコレステリック液晶の反射率を低下させることができる。
【0014】
中間調を表示するためには、A領域またはB領域を利用する。A領域を利用する場合には、画素を初期化してプレーナ状態にした後に、VF0とVF100aの間の電圧パルスを印加して一部をフォーカルコニック状態にする。また、B領域を利用する場合には、画素を初期化してフォーカルコニック状態にした後に、VF100bとVP0の間の電圧パルスを印加して一部をプレーナ状態にする。
【0015】
以上説明した電圧応答特性に基づく駆動方法の原理を、図3および図4を参照して説明する。図3の(A)、図4の(A)および(C)は電圧パルスの波形を示す。図3の(B)、図4の(B)および(D)は、図3の(A)、図4の(A)および(C)の電圧パルスをそれぞれ印加した時のパルス応答特性を示す。図3の(A)は、電圧値が±36Vで、パルス幅が数十msの電圧パルスを示す。図4の(A)は、オン(ON)時の電圧値が±20Vで、オフ(OFF)時の電圧値が±10Vで、パルス幅が2msの電圧パルスを示す。図4の(C)は、オン(ON)時の電圧値が±20Vで、オフ(OFF)時の電圧値が±10Vで、パルス幅が1msの電圧パルスを示す。図3の(B)、図4の(B)および(D)において、横軸は電圧(V)を表し、縦軸は反射率(%)を表す。図3の(B)の電圧−反射率特性は、図2の曲線PおよびFCを模式化して示し、図4の(B)および(D)の電圧−反射率特性は、図2の曲線Pのみを模式化して示す。ここで使用する電圧パルスは、液晶の駆動パルスとしてよく知られているように、イオン分極などによる液晶の劣化を防止するために、正極性と負極性のパルスを組み合わせている。
【0016】
図3の(A)および(B)に示すように、パルス幅が大きい場合には、初期状態がプレーナ状態だと、電圧をある範囲に上げると、フォーカルコニック状態となり、さらに電圧を上げると、再度プレーナ状態となる。初期状態がフォーカルコニック状態だと、パルス電圧を上げるにつれて次第にプレーナ状態になる。
【0017】
パルス幅が大きい場合に、初期状態がプレーナ状態とフォーカルコニック状態のいずれでも必ずプレーナ状態になるパルス電圧は、図3の(B)では±36Vである。また、この中間のパルス電圧では、プレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態になり、中間調が得られる。
【0018】
一方、図4の(A)および(B)に示すように、パルス幅が2msの場合には、初期状態がプレーナ状態では、パルス電圧が±10Vでは反射率は変化しないが、それ以上大きな電圧になるとプレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態になり、反射率が低下する。反射率の低下量は電圧が大きくなるに従って大きくなるが、±36Vよりさらに大きな電圧になると反射率の低下量は一定となる。これは、初期状態がプレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態でも同じである。従って、初期状態がプレーナ状態である場合に、パルス幅が2msでパルス電圧が±20Vの電圧パルスを1回印加すると、反射率はある程度低下する。このようにしてプレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態で反射率が少し低下した状態で、パルス幅が2msでパルス電圧が±20Vの電圧パルスをさらに印加すると、反射率はさらに低下する。これを繰り返すと、反射率は所定値まで低下する。
【0019】
図4の(C)および(D)に示すように、パルス幅が1msの場合には、パルス幅が2msの場合と同様に、電圧パルスを印加することにより反射率が低下するが、反射率の低下具合はパルス幅が2msの場合と比べて小さい。
【0020】
以上のことから、数十msのパルス幅で36Vのパルスを印加すればプレーナ状態になり、2ms程度のパルス幅で十数Vから20V程度のパルスを印加すればプレーナ状態からプレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態になって反射率が低下する。反射率の低下量は、パルスの累積時間に関係すると考えられる。
【0021】
コレステリック液晶の駆動波形は、一般の液晶と同様に、液晶材料の劣化を抑制するために交流とする必要がある。このため、液晶ドライバIC(一般にコレステリック液晶専用IC、またはSTN液晶用ICが用いられる)は液晶セルに印加される電界の極性を反転させる機能を有する。液晶ドライバICは、液晶セルに印加される電界の極性を反転させる機能を有するため、液晶駆動用の高圧電源は+36Vの単一電源でよい。
【0022】
コレステリック液晶表示パネルに画像を表示するための駆動方法は、各種提案されているが、「コンベンショナル駆動」と「ダイナミック駆動」に大別できる。
【0023】
図5の(A)に示すように、コンベンショナル駆動は、上記の「ホメオトロピック(HT)」、「プレーナ(PL)」および「フォーカルコニック(FC)」の3状態間の遷移を、動作原理に忠実にパルス波高とパルス幅で制御するものである。フォーカルコニック状態への遷移には長い時間を要するため、表示の高速化が一般的な課題である。
【0024】
図5の(B)に示すように、ダイナミック駆動は、上記の3状態に加えて、「トランジェントプレーナ(TP)」状態を用いる。
【0025】
図6は、ダイナミック駆動における印加電圧振幅と液晶の状態の関係を示す。図6に示すように、ダイナミック駆動方法は、準備(Preparation)期間と、選択(Selection)期間と、維持(Evolution)期間とを有する。準備期間では、ホメオトロピック(HT)状態にする電圧が印加される。その後、短時間の選択区間において低電圧のパルスを与えることで、ホメオトロピック状態を維持するか、それともトランジェントプレーナ(TP)状態に緩和するかが設定される。その後の維持期間では、プレーナ(PL)状態からフォーカルコニック(FC)状態への移行に適した電圧が印加される。ホメオトロピック状態にある画素は、維持期間中これを維持し、維持期間終了時にプレーナ状態に移行して明状態になる。トランジェントプレーナ状態にある画素は、維持期間中にフォーカルコニック状態に遷移する。選択は、プレーナ状態とフォーカルコニック状態のいずれかの状態に遷移するかを設定するだけであるから、極めて短い時間である。全表示ラインに選択期間の駆動波形を走査するように印加し、各表示ラインの選択期間の前後に準備期間および維持期間を他の表示ラインと重なるように配置する。これにより、1画面の書き換えが短時間で行え、高速表示が可能である。ダイナミック駆動では、プレーナ状態とフォーカルコニック状態の各状態(明/暗)の飽和度が低いため、高コントラスト化が一般的な課題である。また、プレーナ状態とフォーカルコニック状態のいずれの状態に遷移するかを決定する条件はマージンが小さいため、同じ階調の画素の反射率がバラツキが問題である。さらに、パネルの製造誤差や周囲温度に対する表示(特に中間調)の安定性向上も、一般的な課題である。
【0026】
コレステリック液晶表示パネルの駆動方法における問題点を解決するため、いろいろな駆動方法が提案されている。以下、コンベンショナル駆動およびダイナミック駆動の典型的な従来例とその問題点を説明する。
【0027】
まず、コンベンショナル駆動に関する典型的な従来例を説明する。
【0028】
表示速度は、液晶材料やパネル構造に大きく依存する。図7に示す構造を有し、図8に示す電圧応答特性を示すコレステリック液晶パネル10Aを使用した場合を例として以下の説明を行う。図7に示すように、コレステリック液晶パネル10Aは、上側基板11と、上側基板11の表面に設けられた上側電極層14と、下側基板13の表面に設けられた下側電極層15と、シール材16と、を有し、光を入射させる側とは反対側の下側基板13の下(外面)には、必要に応じて可視光吸収層17が設けられる。
【0029】
図8は、22%の最高反射率(明度)を示すプレーナ状態のコレステリック液晶パネル10Aにパルスを印加して実測した反射率変化を示す図である。図8において、横軸がパルス電圧で、縦軸がパルス印加後の反射率である。パラメータ1ms、2ms、10ms、20ms、200msは、電源電圧36Vの範囲内で、1ライン当たりの駆動時間を示す。この時間は、パルス幅に相当する。言い換えれば、図8は、コンベンショナル駆動で、プレーナ状態からフォーカルコニック状態への遷移、すなわち図2の左側のA領域を利用する場合の応答特性を示す。例えば、1ms幅のパルスを印加する場合、15Vのパルスでは反射率は変化せず、30Vのパルスであれば反射率は15%以下に低下する。1ms幅のパルスを印加する場合、15Vのパルスでは反射率は変化せず、30Vのパルスであれば反射率は15%以下に低下する。また、200ms幅のパルスを印加する場合、11Vのパルスで反射率は4%に変化し、28Vのパルスであればプレーナ状態に戻り、反射率は22%である。
【0030】
以上の特性を前提とし、以下の説明を行う。
【0031】
コンベンショナル駆動では、表示の高速化が一般的な課題である。フォーカルコニック状態からプレーナ状態への遷移、すなわち図2の右側のB領域を利用した遷移は比較的短時間で行える。これに対して、プレーナ状態からフォーカルコニック状態への遷移、すなわち図2の左側のA領域を利用した遷移は長時間を要する。したがって、表示速度の点からは、主としてフォーカルコニック状態からプレーナ状態への遷移を用いることが望ましい。
第1の従来例は、全画素を、白に対応するプレーナ状態に一括してリセットする第1ステップを行った後、低電圧のパルスを複数回印加して白画素の明るさを減ずる駆動方式である。言い換えれば、第1の従来例は、プレーナ状態からフォーカルコニック状態に変化させる第2ステップを行う駆動方式である。この駆動方式は、黒も含めた中間調表示に図2の左側の領域Aを利用し、プレーナ状態から様々な飽和度のフォーカルコニック状態への遷移を1ライン毎に行う方式である。この方式は、A領域の電圧応答特性はゆるやかであるため、良好な中間調が表示できるが、ある程度の黒さまで明るさを減ずるには少なくとも10msは必要であり、表示が遅いという問題がある。表示パネルのライン数を1000ラインとすると、表示時間の典型的な値は10秒となる。また、最初に2値表示を行わないため、中間調の連続性は極めて良好だが、黒が十分な黒さ(暗さ)にならず、コントラストがやや低い。そのため、第1の従来例は、高コントラスト化も課題である。第1の従来例は、後述する第3の従来例に比べて、表示速度は改善されるが、コントラストが犠牲になっている。
【0032】
第2の従来例は、低速なプレーナ状態からフォーカルコニック状態への遷移は全画素を一括で行い、比較的高速なフォーカルコニック状態からプレーナ状態への遷移を1ライン毎に行う駆動方式である。ここでは、この方式をフォーカルコニックリセット(Focal Conic Reset、以下FCR)法と称する。FCR法は、コンベンショナル駆動の典型的方法の1つである。なお、全画素を一括で変化させる場合、1ライン当たりの時間は非常に小さくなる。FCR法の典型的な走査速度は1〜10ms/ラインである。FCR法では、駆動電圧を高くすると時間が短縮できるが、FCR法で1ms/ラインを実現するには約100Vの高電圧が必要になる。このような高電圧の電源およびドライバICとも入手が困難で、高コストになるという問題を生じる。これに対して、電源およびドライバICの入手の容易な電源電圧36Vの場合には、走査速度は4ms/ライン程度である。
【0033】
プレーナ状態からフォーカルコニック状態への遷移は,全画素を一括で行うため,じっくり時間をかけて良好な黒(高コントラスト)を実現することができる。表示パネルのライン数を1000ラインとすると,4ms/ラインでの走査に要する時間は4秒である。プレーナ状態からフォーカルコニック状態への一括遷移で高コントラストを実現するのに必要な時間は200ms程度であり、走査時間の合計に比べて十分に小さく、高コントラストは時間の問題を生じることなく実現できる。
【0034】
しかし、FCR法は、中間調の実現に図2の右側のB領域を利用し、フォーカルコニック状態からプレーナ状態への遷移を1ライン毎に行う方式である。B領域の電圧応答特性は極めて急峻なため、明状態の明るさは良好であるが、中間調の明るさが不安定、かつ不均一であり、FCR法には、中間調の再現性向上が不十分であるという一般的な課題がある。
【0035】
第3の従来例は、図2の右側のB領域を利用して2値表示を行う第1ステップを行った後、明状態であるプレーナ状態の画素に対して、図2の左側のA領域を利用して低電圧の幅狭パルスを複数回印加して明るさを減ずる第2ステップを行う駆動方式である。この駆動方式は、明るさが安定し、かつ均一な中間調を表示することができる。しかし、この方式は、図2の左側のA領域を利用し、プレーナ状態から様々な飽和度のフォーカルコニック状態への遷移を1ライン毎に行う方式である。左側のA領域は、電圧応答特性の変化がゆるやかなため、良好な中間調が表示できるが、黒に近いレベルまで明るさを減ずるには、少なくとも20msは必要であり、表示速度が遅いという問題がある。表示パネルのライン数を1000ラインとし、2値表示を行う第1ステップをFCR法で行うとすると、典型的には、第1ステップの2値表示に4秒、第2ステップの中間調表示に20秒、合計24秒となる。
【0036】
また、第3の従来例の変形例として、B領域を利用して複数階調表示を行う第1ステップを行った後、表示した複数階調の画素をA領域を利用して更に別の複数の階調に変化させる第2ステップを行う駆動方式がある。しかし、この駆動方式も、第2ステップで、黒に近い階調レベルを一層減ずるため時間が長くなり、第3の従来例と同様に表示速度が遅いという問題を有する。
【0037】
以上がコンベンショナル駆動の典型的な従来例である。いずれの従来例も表示速度が遅いという問題があった。
【0038】
第4の従来例は、すでに述べたダイナミック駆動方式である。ダイナミック駆動方式は、図2の右側のB領域を利用し、最終的な状態がプレーナ状態かフォーカルコニック状態かを1ライン毎に設定する。ダイナミック駆動方式は、各ラインの画素の状態確定を待たずに次ラインの処理に進む方式であり、設定に要する選択期間の長さは1ms程度であり、表示パネルのライン数を1000ラインとすると、表示時間は典型的には1秒である。
ダイナミック駆動では、プレーナ状態およびフォーカルコニック状態の両方の状態とも明状態の明るさと暗状態の暗さの飽和度が低いため、高コントラスト化が一般的な課題である。また、プレーナとフォーカルコニックのいずれの状態に遷移するかを決定する条件はマージンが小さいため、パネルの製造誤差や周囲温度に対する表示(特に中間調)の安定性向上も、一般的な課題である。
【0039】
第5の従来例は、ダイナミック駆動とコンベンショナル駆動を組み合わせた駆動方式である。第5の従来例では、最初にダイナミック駆動でやや低コントラストの2値表示を行った後、コンベンショナル駆動で上書きすることで、高コントラスト化、中間調表示、および異常表示の除去を行う。コンベンショナル駆動で図2の左側のA領域を利用し、黒に近いレベルまで明るさを減ずるには、少なくとも20msは必要であり、表示の高速化が課題である。表示パネルのライン数を1000ラインとすると、表示時間の典型的な値は、2値表示に1秒、中間調表示に20秒、合計21秒となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2008−268566号公報
【特許文献2】特許第3713954号
【特許文献3】国際公開2006/103738A1
【特許文献4】米国特許第6154190号
【特許文献5】特開2007−128043号公報
【非特許文献】
【0041】
【非特許文献1】J.Ruth, et al. “LOW COST DYNAMIC DRIVE SCHEME FOR REFLECTIVE BISTABLE CHOLESTERIC LIQUID CRYSTAL DISPLAYS, Flat Panel Display ‘97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
図9は、上記の典型的な従来例の特徴をまとめた表を示し、表示時間は典型的な場合の試算値である。
【0043】
図9に示すように、中間調の表示特性がすぐれたものは、全て表示時間が10〜24秒と長い。現在、電子ペーパーの最大市場は電子書籍、携帯情報端末等であるが、これらは表示時間(書き換え時間)1〜2秒の高速表示を必要とする。したがって、この要求を満たすために現状ではダイナミック駆動が用いられているが、中間調の表示能力が不十分なため、実効的な色数は8〜64色程度に留まっている。
【0044】
フルカラー表示では、表示時間は数秒程度まで許されるが、現実にはやや低コントラストでも10秒、高コントラストなら20秒以上が必要であり、コレステリック液晶パネルを電子書籍、携帯情報端末等に適用する上での最大の制約となっていた。
【0045】
このように、コレステリック液晶パネルを備える装置では、中間調の安定性・均一性に優れ、コントラストが高く、かつ表示時間が数秒以内であることが望まれていた。この要望が実現できれば、コレステリック液晶パネルを備える表示装置の応用範囲を広げて商品価値を向上させることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0046】
実施形態の表示装置は、多階調表示を行うコレステリック液晶表示パネルと、コレステリック液晶表示パネルの駆動回路と、制御回路と、を備える表示装置である。実施形態の表示装置では、制御回路が、表示する階調に応じて、各画素を、最も明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、最高階調と中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類する。そして、駆動回路は、コレステリック液晶表示パネルに第1の駆動波形を印加して、最高階調のグループおよび高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、最低階調のグループの画素を最低階調状態に、低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にする。さらに、駆動回路は、コレステリック液晶表示パネルに第2の駆動波形を印加して、高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする。
【発明の効果】
【0047】
実施形態によれば、コレステリック液晶表示パネルを利用して、表示品質を維持した上で、実用上の要求を満たせる書き込み速度を有する表示装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、コレステリック液晶の双安定状態(プレーナ状態とフォーカルコニック状態)を説明する図である。
【図2】図2は、パルス電圧によるコレステリック液晶の状態変化を説明する図である。
【図3】図3は、コレステリック液晶に印加する大きな電圧と広いパルス幅のパルスによる反射率の変化を説明する図である。
【図4】図4は、コレステリック液晶に印加する中間電圧と狭い2種類のパルス幅のパルスによる反射率の変化を説明する図である。
【図5】図5は、コンベンショナル駆動およびダイナミック駆動によるコレステリック液晶の状態変化を説明する図である。
【図6】図6は、ダイナミック駆動の駆動電圧を説明する図である。
【図7】図7は、1枚のコレステリック液晶パネルの構造を示す図である。
【図8】図8は、コレステリック液晶パネルの印加パルスの電圧に対する反射率(明度)の変化を示す電圧応答特性図である。
【図9】図9は、典型的な従来例の特性と問題点を説明する図である。
【図10】図10は、実施形態のカラー表示装置が備えるコレステリック液晶パネルの積層構造を示す図である。
【図11】図11は、実施形態のカラー表示装置の概略構成を示す図である。
【図12】図12は、実施形態におけるドライバ出力電圧と液晶印加電圧を示す図である。
【図13】図13は、実際に印加される対称パルスの例を示す図である。
【図14】図14は、第1実施形態における処理を示すフローチャートである。
【図15】図15は、第1実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【図16】図16は、第1実施形態における第1ステップのダイナミック駆動波形を示す図である。
【図17】図17は、第1実施形態の第1ステップにおいて印加するダイナミック駆動波形のパルス長と反射率の関係を示す図である。
【図18】図18は、第1実施形態の第2ステップにおけるコンベンショナル駆動方式を説明する図である。
【図19】図19は、第2実施形態の制御回路への入力信号を示す図である。
【図20】図20は、第2実施形態における処理を示すフローチャートである。
【図21】図21は、第2実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【図22】図21は、第2実施形態における擬似階調処理で使用するディザマトリクスを示す図である。
【図23】図23は、第2実施形態において擬似階調処理が施される階調のマトリクス表示を示す図である。
【図24】図24は、第3実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【図25】図25は、第3実施形態において擬似階調処理が施される階調のマトリクス表示を示す図である。
【図26】図26は、第4実施形態における第1ステップの処理を示すフローチャートである。
【図27】図27は、第4実施形態の第1ステップにおいて印加されるパルスの印加時間と反射率の関係を示す図である。
【図28】図28は、周囲温度に対するコレステリック液晶パネルで実現できるコントラスト比の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施形態の表示装置は、もっとも色再現性に優れる3層構造RGBカラーコレステリック液晶表示パネルを使用する。
【0050】
図10は、実施形態で使用する3層構造RGBカラーコレステリック液晶表示パネルの構成を示す図である。図10に示すように、この表示パネル10は、見る側から順番に、青(ブルー)用パネル10B、緑(グリーン)用パネル10G、および赤(レッド)用パネル10Rの3枚のパネルが積層されており、レッド用パネル10Rの下側には光吸収層17が設けられている。3枚のパネル10B、10G、10Rは、光吸収層17以外は図7に示したパネルと同様の構成を有するが、波長特性が異なる。パネル10Bは反射の中心波長が青色(約480nm)、パネル10Gは反射の中心波長が緑色(約550nm)、パネル10Rは反射の中心波長が赤色(約630nm)になるように、液晶材料およびカイラル材が選択され、カイラル材の含有率が決定されている。パネル10B、10Gおよび10Rは、青層用制御回路18B、緑層用制御回路18Gおよび赤層用制御回路18Rで、それぞれ駆動される。
【0051】
図7を参照して、各パネル10Aの構成を説明する。図7に示すように、表示パネル10Aは、上側基板11と、上側基板11の表面に設けられた上側電極層14と、下側基板13の表面に設けられた下側電極層15と、シール材16と、を有し、光を入射させる側とは反対側の下側基板13の下(外面)には、必要に応じて可視光吸収層17が設けられる。
【0052】
上側基板11と下側基板13は、電極が対向するように配置され、間に液晶材料を封入した後シール材16で封止される。なお、液晶層12内にスペーサが配置されるが図示は省略している。上側電極層14と下側電極層15の電極には、駆動回路18から電圧パルス信号が印加され、それにより液晶層12に電圧が印加される。液晶層12は、コレステリック相を示すコレステリック液晶組成物であり、液晶層12に電圧を印加して、液晶層12の液晶分子をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態にして表示を行う。
【0053】
上側基板11と下側基板13は、いずれも透光性を有している。透光性を有する基板としては、ガラス基板があるが、ガラス基板以外にも、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などのフィルム基板を使用してもよい。
【0054】
上側電極層14と下側電極層15の電極の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)が代表的であるが、その他インジウム亜鉛酸化物(IZO: Indium Zic Oxide)などの透明導電膜を使用することが可能である。
【0055】
上側電極層14の透明電極は、上側基板11上に互いに平行な複数の帯状の上側透明電極として形成され、下側電極層15の透明電極は、下側基板13上に互いに平行な複数の帯状の下側透明電極として形成されている。そして、上側基板11と下側基板13は、基板に垂直な方向から見た時に、上側電極と下側電極が交差するように配置され、交差部分に画素が形成される。
【0056】
電極上には絶縁性のある薄膜が形成される。この薄膜が厚いと駆動電圧を高くする必要があり、STN用などの汎用ドライバで駆動回路を構成するのが難しくなる。逆に、薄膜がないとリーク電流が増加するため、消費電力が増大するという問題を生じる。ここでは、薄膜は比誘電率が約5であり、液晶よりもかなり低いため、薄膜の厚さは約0.3μm以下とするのが適している。
【0057】
なお、この絶縁性薄膜は、SiO2の薄膜、あるいは配向安定化膜として知られているポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機膜で実現できる。
【0058】
次に、スペーサについて説明する。上記のように、液晶層12内にスペーサが配置され、上側基板11と下側基板13の間隔、すなわち液晶層12の厚さを一定にする。スペーサは、一般に樹脂製または無機酸化物製の球体であるが、基板表面に熱可塑性の樹脂をコーティングした固着スペーサを使用することも可能である。このスペーサによって形成されるセルギャップは3.5μm〜6μmの範囲が適正である。セルギャップがこの値より小さいと反射率が低下して暗い表示になり、逆のこの値より大きいと駆動電圧が上昇して汎用ドライバによる駆動が困難になる。
【0059】
液晶層12を形成する液晶組成物は、ネマティック液晶混合物にカイラル材を10〜40重量%(wt%)添加したコレステリック液晶である。ここで、カイラル材の添加量は、ネマティック液晶成分とカイラル材の合計量を100wt%とした時の値である。
【0060】
ネマティック液晶としては、従来から公知の各種のものを使用可能であるが、誘電率異方性(Δε)が15〜35の範囲の液晶材料であることが望ましい。誘電率異方性が15以下であれば、駆動電圧が全体的に高くなり、駆動回路に汎用ドライバを使用できなくなる。一方、誘電率異方性が15以上となると、全選択電圧と半選択電圧のVTの比率は大きくなると考えられ、この場合にはさらに液晶材料自体の信頼性に問題が生じる。
【0061】
また、屈折率異方性(Δn)は、0.18〜0.26であることが望ましい。屈折率異方性が、この範囲より小さいと、プレーナ状態の反射率が低くなり、この範囲より大きいと、フォーカルコニック状態での散乱反射が大きくなるのに加えて、粘度も高くなり、応答速度が低下する。
【0062】
以上、実施形態で使用する3層構造RGBカラーコレステリック液晶表示パネルについて説明したが、実施形態は説明したパネルに限定されるものではないのはいうまでもない。
【0063】
図11は、実施形態の表示装置の全体構成を示す図である。RGBカラーコレステリック液晶表示パネル10は、A4判XGA仕様で、1024×768画素を有する。電源21は、例えば3V〜5Vの電圧を出力する。昇圧部22は、DC−DCコンバータなどのレギュレータにより、電源21からの入力電圧を36V〜40Vに昇圧する。この昇圧レギュレータは、専用ICが広く使用されており、そのICにはフィードバック電圧を設定することにより、昇圧電圧を調整する機能を有している。従って、抵抗による分圧などにより生成した複数の電圧を選択してフィードバック端子に供給するように構成することで、昇圧電圧を変化させることが可能である。
【0064】
電圧切替部23は、抵抗分割などにより各種の電圧を生成する。電圧切替部23におけるリセット電圧と階調書込み電圧のスイッチングには、高耐圧のアナログスイッチを用いてもよいが、トランジスタによる単純なスイッチング回路を使用することも可能である。電圧安定部24は、電圧切替部23から供給される各種の電圧を安定化させるために、オペアンプのボルテージフォロア回路を使用することが望ましい。オペアンプは、容量性負荷に対して強い特性を有するものを使用するのが望ましい。なお、オペアンプに接続する抵抗を切り替えることにより増幅率を切り替える構成が広く知られており、この構成を使用すれば、電圧安定部24から出力する電圧を容易に切り替えることが可能である。
【0065】
原振クロック部25は、動作の基本となる基本クロックを発生する。分周部26は、基本クロックを分周して、後述する動作に必要な各種クロックを生成する。
【0066】
制御回路27は、基本クロック、各種クロックおよび画像データDに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する。
【0067】
コモンドライバ28は768本のスキャンラインを駆動し、セグメントドライバ29は1024本のデータラインを駆動する。RGBの各画素に与える画像データが異なるため、セグメントドライバ29は各データラインを独立して駆動する。コモンドライバ28は、RGBのラインを共通に駆動する。本実施形態では、ドライバICは、汎用の2値出力のSTNドライバを使用した。利用可能なドライバICは、様々なものが使用可能である。
【0068】
図12は、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29の出力電圧を説明する図である。後述する第2ステップ時の印加電圧を例として、ドライバの動作を説明する。
【0069】
セグメントドライバ29およびコモンドライバ28は、例えば、図12の(A)に示すようなパルスを出力する。このようなパルスをパネル10に印加することにより、画素には図12の(B)に示すような電圧が印加される。
【0070】
セグメントドライバ29には、V0として20Vが、V21SおよびV34Sとして10Vが、供給され、正極フェーズ(FR=1)では正パルスが、負極フェーズ(FR=0)では負パルスが、出力される。
【0071】
コモンライバ28には、V0として20Vが、V21Cとして15Vが、V341Cとして5Vが、供給され、正極フェーズ(FR=1)では負パルスが、負極フェーズ(FR=0)では正パルスが、出力される。
【0072】
図12の(A)のようなパルスが印加されることにより、スキャンラインが選択状態(コモンがオン)で、データラインも選択状態(セグメントがオン)では、正極フェーズ(FR=1)においては20Vが、負極フェーズ(FR=0)では−20Vが印加される。スキャンラインが選択状態(コモンがオン)で、データラインが非選択状態(セグメントがオフ)では、正極フェーズ(FR=1)においては10Vが、負極フェーズ(FR=0)では−10Vが印加される。スキャンラインが非選択状態(コモンがオフン)で、データラインが選択状態(セグメントがオン)では、正極フェーズ(FR=1)においては5Vが、負極フェーズ(FR=0)では−5Vが印加される。スキャンラインが非選択状態(コモンがオフン)で、データラインが非選択状態(セグメントがオフ)では、正極フェーズ(FR=1)においては−5Vが、負極フェーズ(FR=0)では5Vが印加される。
【0073】
従って、選択状態のスキャンラインの各画素に印加される電圧パルスの波形は図13の(A)に示すようになり、非選択状態のスキャンラインの各画素に印加される電圧パルスの波形は図13の(B)に示すようになり、どちらの場合も、選択状態のデータラインの波形を実線で、非選択状態のデータラインの波形を点線で示す。パルス幅が2msの電圧パルスの場合、電圧が±20Vでは液晶の状態、すなわち反射率が変化するが、電圧が±10Vでは反射率は変化しないので、上記のような波形であれば、スキャンラインとデータラインの両方がONの場合に、階調パルスによる書き込みが行われ、それ以外の場合には書き込みは行われないことになる。実際にはクロストークの問題があるが、本発明には直接関係しないので、説明は省略する。
【0074】
上記のように、第2ステップにおいて実際に印加される電圧パルスは図6に示すような波形であるが、以下の記載では説明を簡単にするために、0Vを中心にして対称な正負のパルスで表す場合がある。また、OFFパルスの電圧は、書き込みが行われないようなレベルに設定されるものとし、パルスの電圧は、ONパルスの電圧を指すものとする。
【0075】
以上、実施形態で使用する表示装置の構成について説明した。
【0076】
次に、第1実施形態の表示装置における画像の書込み処理を説明する。
【0077】
図14は、第1実施形態の表示装置の書込み処理を示すフローチャートである。また、図15は、第1実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【0078】
図14に示すように、第1実施形態での書込み処理は、グループ分類ステップ101と、第1ステップ102と、第2ステップ103と、を備える。
【0079】
図15に示すように、画像データは0から9の10階調表示データであるとする。10階調表示データは、もともと10階調表示のデータであっても、例えば、16階調表示データや、256階調表示データに対して階調数を減少させる処理を行って得たデータであってもよい。ここでは、階調9がもっとも明るい最高階調であり、階調0がもっとも暗い最低階調である。
【0080】
グループ分類ステップ101では、階調9の画素を最高階調グループAに、階調2から8の7階調分の画素を高中間調グループBに、階調1の画素を低中間調グループCに、階調0の画素を最低階調グループDに、分類する。
【0081】
第1ステップ102では、ダイナミック駆動方式を使用して、グループAおよびBの画素を階調9に、グループCの画素を階調1に、グループDの画素を階調0になるように書き込み処理を行う。したがって、グループAおよびBの画素の液晶は主としてプレーナ状態になり、グループDの画素の液晶は主としてフォーカルコニック状態となる。グループCの画素は、フォーカルコニック状態の液晶と少しのプレーナ状態の液晶が混在した状態になる。ここでは、全体に示すプレーナ状態の液晶の割合を混在率と称する。
【0082】
第2ステップ103では、コンベンショナル駆動方式を使用して、グループBの画素を、階調レベル9から表示階調に対応した階調2〜8のいずれかになるように書き込み処理を行う。
【0083】
図16は、第1ステップ102で使用するダイナミック駆動方式を説明する図であり、(A)はコモンドライバ28の出力する電圧波形を、(B)はセグメントドライバ29の出力する電圧波形を、(C)は液晶に印加される電圧波形を示す。前述のように、ダイナミック駆動方式は、準備(Preparation)期間と、選択(Selection)期間と、維持(Evolution)と、を備える。各期間の電圧と時間長は,準備期間が40V/60ms,選択期間が12V/0−1ms,維持期間が24V/20msである。
【0084】
図17は、図16の電圧波形で、選択期間におけるパルス長を、選択期間のパルスのデューティ比を変えることにより変化させた場合の反射率の変化を示す図である。図示のように、パルス長が0.1msより小さければ反射率が低い状態になり、0.3msより大きければ反射率が高い状態になり、0.1ms〜0.3msの間であれば中間調の反射率の状態になる。第1実施形態では、階調0の画素には、反射率が最大値の12%(=最小値)になるように、パルス幅が0ms、すなわち選択期間の存在しない波形を印加する。同様に、10階調中の階調1の画素には、反射率が最大値の20.8%になるように、パルス幅が0.16msの波形を印加し、階調9の画素には、反射率が最大値になるように、パルス幅が1msの波形を印加する。第1ステップに要する時間は、約1秒になる。
【0085】
ダイナミック駆動方式は、広く知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0086】
図18は、第2ステップ102におけるコンベンショナル駆動方式を説明する図である。第2ステップ102では、図4に示した電圧波形のパルスを印加して、第1ステップで階調9、すなわち液晶が主としてプレーナ状態である状態に設定された階調2〜8の画素を、表示階調に変化させる。コンベンショナル駆動方式では、パルス印加の累積時間が反射率の変化に関係する。そこで、第2ステップ102では、(A)±24Vの1ms幅の第1サブパルスの走査、(B)±24Vの0.6ms幅の第2サブパルスの走査、および(C)±24Vの0.2ms幅の第3サブパルスの走査を行う。図18に示すように、階調2の画素は、第1から第3サブパルスのすべてでオンされ、累積印加時間が1.8msになる。同様に、階調3の画素は、第1および第2サブパルスでオンされ、第3サブパルスでオフされ、累積印加時間が1.6msになる。以下同様に、階調4から8の累積印加時間は、1.2ms、1.0ms、0.8ms、0.6ms、0.2msになる。これにより、各階調の画素は、対応する反射率(明度)になる。代2ステップに要する時間は焼く1.8秒になる。したがって、第1ステップと第2ステップを合わせた書き込みに要する時間は合計で約2.8秒になる。
【0087】
ここで、第1実施形態における書き換え時間および表示品質について説明する。
【0088】
ダイナミック駆動は、高速駆動が可能であるが、得られる明状態および暗状態に対応する最高階調および最低階調のレベルは、不十分である。一方、図2の右側の領域Bを使用するコンベンショナル駆動は、高速駆動が可能であり、最初に十分な時間をかけて最低階調にするため、十分に暗い最低階調が得られる。このように、ダイナミック駆動および図2の右側の領域Bを使用するコンベンショナル駆動は、高速駆動が可能であり、コンベンショナル駆動では、十分に暗い最低階調が得られる。しかし、ダイナミック駆動および図2の右側の領域Bを使用するコンベンショナル駆動による画像は、中間調のレベルのバラツキが大きいという問題がある。
【0089】
そこで、前述の従来例のように、ダイナミック駆動および図2の右側の領域Bを使用するコンベンショナル駆動により、最低階調の画素は最低階調に、それ以外の画素は最高階調に設定する。その後、図2の左側の領域Aを使用するコンベンショナル駆動により、最低階調および最高階調以外の画素を、最高階調から対応する階調に変化させることが考えられる。これによれば、最低階調に近い画素は、図2の左側の領域Aを使用するコンベンショナル駆動により、最高階調から対応する階調に変化されることになるが、これに要する時間は非常に長いという問題がある。例えば、最高階調から最低階調に近い階調に変化させるのに要する時間は、最高階調と最低階調の中間付近の階調に変化させるのに要する時間の数倍である。
【0090】
第1実施形態では、領域Aを使用するコンベンショナル駆動を使用した場合に書き込み時間が長くなる最低階調に近い階調は、ダイナミック駆動により書き込みを行う。そして、領域Aを使用するコンベンショナル駆動でも比較的短時間に書き込めるそれ以外の階調を、領域Aを使用するコンベンショナル駆動で書き込む。これにより書き込み時間を短くすることができる。
【0091】
しかも、ダイナミック駆動により書き込まれた最低階調に近い階調は、最高階調と最低階調の中間付近の階調に比べて、バラツキがやや小さい。さらに、黒(最低階調)に近いレベルでは人の眼の粒状性に対する感度が下がるため、たとえダイナミック駆動により書き込まれた最低階調に近い暗い階調のレベルがばらついて粒状性が損なわれても、大きく影響しない。
【0092】
したがって、ダイナミック駆動の代わりに図2の右側の領域Bを使用するコンベンショナル駆動を適用して第1ステップを行う場合も高速処理が可能であり、同様の効果が得られる。これについては後述する。
【0093】
次に、第2実施形態の表示装置を説明する。第2実施形態の表示装置は、制御回路27に入力する信号および画像データを擬似階調処理することが、第1実施形態の表示装置と異なるが、他の部分は同じである。
【0094】
図19は、第2実施形態の表示装置の制御回路27に入力する信号を示す図である。
【0095】
図19に示すように、第2実施形態の表示装置の制御回路27は、表示モード信号および周囲温度のデータが入力されることが、第1実施形態の表示装置の制御回路と異なる。
【0096】
図20は、第2実施形態の表示装置の書込み処理を示すフローチャートである。また、図21は、第2実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【0097】
図20に示すように、第2実施形態での書込み処理は、表示階調数決定ステップ111と、擬似階調処理ステップ112と、グループ分類ステップ113」と、第1ステップ114と、第2ステップ115と、を備える。
【0098】
図21に示すように、画像データは0から15の16階調データである。表示階調数決定ステップ111では、表示モードや周囲温度のデータなどに基づいて、15階調のうち表示する階調、および表示しない階調を決定する。この処理については後述するので、ここでは、階調0、4、8〜15の10階調を表示し、階調1〜3および5〜7の6階調は表示しないとする。原画像データの階調数は、一般的には256階調であり、16階調データへの変換は、外部装置で多値ディザ法や多値誤差拡散法を用いて行い、変換後の16階調データを表示装置に供給することができるが、この変換を表示装置で行うようにしてもよい。
【0099】
第2ステップ114で階調15から変化させて書き込まれる階調のうち一番暗い階調は階調8なので、階調0〜7は、擬似階調処理により、第1ステップ113で書き込まれる階調0または階調4と、第2ステップ114で書き込まれる階調8を混在させることで表す。
【0100】
擬似階調処理には各種あるが、ここでは、2×2ドットのディザマトリックスを用いた組織的ディザ法を適用する。さらに、代表的なディザマトリックスには、図22の(A)に示すBayer型と図22の(B)に示す渦巻型とがあり、いずれを用いることも可能であるが、ここではBayer型を使用する。
【0101】
図23は、2×2ドットの平均階調が0〜7の場合の各ドットの表現を示す図である。
【0102】
画素値が階調0〜3の場合、画素のXYアドレスの最下位ビットが(0,0)の場合を上記ディザマトリックスの左上に、(1,1)の場合を右下に対応づける。平均階調が0の表示は、4個の画素値を全て階調0にすることで得られる。平均階調が1の表示は、3個の画素値を階調0に、1個の画素値を会長4にすることで得られる。平均階調が2の表示は、2個の画素値を階調0に、2個の画素値を階調4にすることで得られる。平均階調が3の表示は、1個の画素値を階調0に、3個の画素値を階調4にすることで得られる。すなわち、表示すべき階調レベルをNとすると、上記ディザマトリックスの値とNとを比較し、ディザマトリックスの値がNより小さければ画素値を階調4に、Nに等しいか大きければ画素値を階調0にする。
【0103】
画素値が階調4〜7の場合、上記の説明で、階調0を階調4に、階調4を階調8に読み換えればよい。
【0104】
以上のようにして、画像データは、擬似階調処理112により、階調0、4、8〜15のみで表されるように変換され、表示する階調数は第1実施形態と同じ10個である。したがって、第2実施形態のグループ分類ステップ113、第1ステップ114および第2ステップ115は、第1実施形態のグループ分類ステップ101、第1ステップ102および第2ステップ103と同様に行うことができるので、説明は省略する。
【0105】
第2実施形態では、階調0から階調15のうち、暗い中間レベルである階調1〜3については階調0と階調4を利用した擬似階調処理で、およびやや暗い階調5〜7については階調4と階調8を利用した擬似階調処理で作り出される。したがって、表示は第2ステップで表示される安定性および均一性の高い中間調が主体となるため、これに第1ステップで表示される安定性および均一性が十分でない黒に近い階調4を混合しても、粒状性を大きく損なうことはなく、良好な表示が行える。
【0106】
次に、第3実施形態の表示装置を説明する。第3実施形態の表示装置は、第1ステップで書き込む階調が4個に増加し、表示する階調数が12階調であることが、第2実施形態の表示装置と異なるが、他の部分は同じである。
【0107】
図24は、第3実施形態における各階調レベルに対する処理を説明する図である。
【0108】
図24に示すように、画像データは0から15の16階調データである。表示階調数決定ステップ111では、階調0、2、4、6、8〜15の12階調を表示し、階調1、3、5、7の4階調は表示しないと決定する。
【0109】
第2ステップで階調15から変化させて書き込まれる階調のうち一番暗い階調は階調8なので、階調0〜7は、擬似階調処理により、第1ステップ113で書き込まれる階調0、2、4または6と、第2ステップで書き込まれる階調8を混在させることで表す。擬似階調処理は、第2実施形態と同様に、2×2ドットのディザマトリックスを用いた組織的ディザ法を適用し、Bayer型を使用した例を示す。
【0110】
平均階調が0の表示は、4個の画素値を全て階調0にすることで得られる。平均階調が1の表示は、2個の画素値を階調0に、2個の画素値を階調2にすることで得られます。以下、同様であり、説明は省略する。第3実施形態における擬似階調処理後の画素値を、図25に示す。
【0111】
第3実施形態のグループ分類ステップでは、階調15をグループAに、階調8〜14をグループBに、階調2、4および6をグループCに、階調0をグループDに、分類する。
【0112】
第3実施形態の第1ステップにおいては、ダイナミック駆動方式を使用して、グループAおよびBの画素を階調15に、グループCの画素をそれぞれ対応する階調2、4および6に、グループDの画素を階調0になるように書き込み処理を行う。
【0113】
階調2、4および6の書き込み処理は、図17に示したグラフから選択期間のパルス長を設定することにより行う。具体的には、階調2は最大反射率の23%になるようにパルス幅を0.18msに、階調4は最大反射率の34%になるようにパルス幅を0.21msに、階調6は最大反射率の45%になるようにパルス幅を0.22msに、設定する。なお、第1実施形態と同様に、階調0はパルス幅を0msに、階調15はパルス幅を1msに設定する。
【0114】
第2ステップ103は、コンベンショナル駆動方式を使用して、グループBの画素を、階調レベル9から表示階調に対応した階調2〜8のいずれかになるように書き込み処理なので、第1および第2実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0115】
第1から第3実施形態は、図11に示した表示装置の構成は同じで、制御回路27における処理を変更するだけで選択できる。
【0116】
第1から第3実施形態では、第1ステップはダイナミック駆動方式を使用して行ったが、図2の右側の領域Bを利用したコンベンショナル駆動方式で第1ステップを行うことも可能である。
【0117】
第4実施形態の表示装置は、第2実施形態の表示装置において、第1ステップを領域Bを利用したコンベンショナル駆動方式で行うようにしたことが異なり、他の部分は同じである。第4実施形態の第1ステップは、例えば特許文献2に記載された駆動方式を使用する。
【0118】
図26は、第4実施形態の表示装置における第1ステップの処理を示すフローチャートである。図26に示すように、第1ステップは、全画素をフォーカルコニック(FC)状態にリセットするリセットステップ121と、第1サブステップ122と、第2サブステップ123と、を備える。
【0119】
リセットステップ121では、液晶に強い電界を印加してホメオトロピック状態にした後、さらに弱い電界を印加した後電界を除去するか、時間をかけて、強い電界を緩やか除去することにより、全画素をフォーカルコニック状態にする。この処理は全画素同時に行われるので、この処理に要する時間は短い。また、時間をかけて十分な黒になる最低階調を得ることが可能である。
【0120】
第1サブステップ122および第2サブステップ123では、特許文献2に記載された高電圧のパルスを印加して、図2の右側の領域Bを利用したコンベンショナル駆動方式で所定の階調0、4および15の3階調を書き込む。パルスの電圧が40Vの場合、パルスの印加時間とパルスが印加された画素の反射率の関係は、図27に示される。第4実施形態では、第1実施形態の第2ステップと同様に、第1サブステップ122および第2サブステップ123で印加されるパルスの累積時間を、図27に示された関係に基づいて決定する。具体的には、第1サブステップ122では、パルス幅2.25msのパルスを印加するように走査を行い、階調4にする画素でオンし、それ以外の画素はオフする。さらに、第2サブステップ123では、パルス幅5msのパルスを印加するように走査を行い、階調15にする階調8〜15の画素でオンし、それ以外の画素はオフする。したがって、階調0にはパルスを印加しない。
【0121】
第2ステップは、第2実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0122】
第1実施形態の第1ステップを、第4実施形態の処理で行うことも可能である。その場合には、階調0および階調10は、第2実施形態の階調0および階調15と同じように書き込み、階調1はレベルに応じてパルス幅設定して第2実施形態の階調4と同様に書き込む。もし第1実施形態の階調1が第2実施形態の階調4と同じ反射率であれば、同じ条件でよい。
【0123】
同様に、第3実施形態の第1ステップを、第4実施形態の処理で行うことも可能である。この場合には、第1サブステップおよび第2サブステップに加えて、第3サブステップおよび第4サブステップを行う。第1サブステップでは、パルス幅1.97msのパルスを印加するように走査を行い、階調2にする画素でオンし、それ以外の画素はオフする。第2サブステップでは、パルス幅2.25msのパルスを印加するように走査を行い、階調4にする画素でオンし、それ以外の画素はオフする。第3サブステップでは、パルス幅2.53msのパルスを印加するように走査を行い、階調6にする画素でオンし、それ以外の画素はオフする。第4サブステップでは、パルス幅5msのパルスを印加するように走査を行い、階調15にする階調8〜15の画素でオンし、それ以外の画素はオフする。したがって、階調0にはパルスを印加しない。
【0124】
第4実施形態は、図11に示した第1から第3実施形態と、表示装置の構成は同じで、制御回路27における処理を変更するだけで実現できる。
【0125】
第1実施形態および第2実施形態では、第1ステップにより3階調を書き込み、第3実施形態では第1ステップにより階調を書き込んだが、第1ステップおよび第2ステップで書き込む階調数は、駆動方式、パネル、表示モード、周囲温度など各種の条件に応じて制御回路が決定するようにしてもよい。第2実施形態の表示階調数決定ステップ111について説明する。
【0126】
図19に示すように、第2実施形態の表示装置の制御回路27は、ユーザなどにより設定される表示モード信号が入力される。表示モード信号は、例えば、ドラフトモードと高画質モードのいずれかを指示する。制御回路27は、ドラフトモードの時には、第1ステップで書き込む階調を階調0と階調15の2階調とし、第2ステップで書き込む階調を階調8から階調14の7階調とし、階調1から階調7の7階調に対しては擬似階調処理を行い、階調0と階調8で表す。高画質モードの時には、第1ステップで書き込む階調を階調0、階調4および階調15の3階調とし、第2ステップで書き込む階調を階調8から階調14の7階調とする。そして、階調1から階調3および階調5から階調7の6階調に対しては擬似階調処理を行い、階調0、階調4および階調8で表す。したがって、高画質モードの時には、上記の第2実施形態の処理が行われることになる。
【0127】
なお、高画質モードをさらに第1高画質モードと第2高画質モードの2段階に分けてもよい。この場合、第1高画質モードでは、第2実施形態のように、階調0、階調4および階調15の3階調を第1ステップで書き込み、第2高画質モードでは、第3実施形態のように、階調0、2、4、6および15の5階調を第1ステップで書き込む。後は、第2および第3実施形態と同じである。
【0128】
また、高画質モードでは、第4実施形態の第1ステップのように、一旦全画素をフォーカルコニック状態にした後、図2の右側の領域Bを利用したコンベンショナル駆動方式で第1ステップを行うようにしてもよい。さらに高画質モードを第1および第2高画質モードに分ける場合には、第1高画質モードでは、第1ステップはダイナミック駆動により階調0、4および15の3階調を書き込む。そして、第2高画質モードでは、第1ステップはコンベンショナル駆動により階調0、2、4、6および15の5階調を書き込む。
【0129】
図28は、周囲温度とコレステリック液晶表示装置が表示できる表示コントラストの関係を示す図である。図28に示すように、コントラストは、常温(約30℃)で最大であり、温度が低くても高くても減少する。常温時のコントラストの値は5.0であり、表示装置の使用温度範囲の−20℃から70℃の範囲では、−20℃の時に最小であり、その値は1.4である。
【0130】
ここで、常温での階調数を16階調とした場合、階調のレベル(反射率)を対数リニアで表すと、1階調当たりの「コントラストの常用対数」はlog10(5.0/15)=0.0466になる。コントラストが最小になる−20℃の時に、常温時と同じスケール(常用対数コントラストの間隔)で表示すると、階調数はlog10(1.4/0.0466)=3.14なので4となる。これは高温時も同様である。
【0131】
そこで、周囲温度を検出する温度センサ(図示せず)を設け、図19に示すように、制御回路27は周囲温度データが入力されるように構成する。制御回路27は、入力された周囲温度データに応じて、以下のような制御を行う。
【0132】
高温/低温時には、第1ステップで階調0と階調15の2階調を書き込み、第2ステップでは4階調を書き込む。第2ステップで書き込む4階調は、例えば、階調8、10、12、14である。常温時には、第3実施形態のように、第1ステップで階調0、2、4、6および15の5階調を書き込み、第2ステップでは階調8から14の7階調を書き込む。
【0133】
さらに、制御回路27は、画像データにおける画素値の出現頻度に応じて、以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0134】
白黒の略中間よりやや暗い階調の出現が高い場合、第2ステップで書き込む階調を、白黒の略中間より暗い階調以上の明るい階調を含む広い範囲とする。したがって、第1ステップでは、白黒の略中間より暗い階調と黒に対応する最低階調の間の階調が書き込まれる。そして、白黒の略中間よりやや暗い階調の出現が低い場合、第2ステップで書き込む階調を、白黒の略中間より明るい階調レベル以上の狭い範囲とする。したがって、第1ステップでは、白黒の略中間より明るい階調と黒に対応する最低階調の間の階調が書き込まれる。
【0135】
さらに、制御回路27は、RGBの各色に応じて、以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0136】
青の表示パネルについては、第1ステップで書き込む階調として、白黒の略中間よりやや暗い階調レベルを含む広い範囲の階調を書き込む。緑の表示パネルについては、第1ステップで書き込む階調として、黒に近い階調だけを含む狭い範囲の階調を書き込む。
【0137】
青に対しては、人の眼の粒状性に対する感度は著しく低い。高速な第1の駆動波形で、広い範囲の階調レベルをカバーすることで、青主体の画像は早めに完成状態に近づく。
緑に対しては、人の眼の粒状性に対する感度は最も高い。粒状性の大きい画像が書き込まれる第1ステップで、狭い範囲の階調だけをカバーすることで、画像全体の粒状性は極小化される。
【0138】
さらに、制御回路27は、画像データに応じて、以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0139】
第1ステップにおいて、駆動波形(パルス)を全ての表示ラインに対して印加する。第2ステップにおいては、各ラインごとに、書き込む中間調の画素の有無を判定し、そのような中間調の画素が存在しない場合には第2ステップの駆動波形(パルス)を印加せず、そのような中間調の画素が存在ラインに対してのみ駆動波形(パルス)を印加する。
【0140】
文字・線画などが主体の画像では、比較的低速な第2ステップでの駆動波形の印加が多くの表示ラインでスキップされるため、表示時間は著しく短縮される。
【0141】
以上説明したように、開示の実施形態によれば、コレステリック液晶表示パネルを備える表示装置およびその駆動方法において、中間調の安定性・均一性に優れ,かつ高コントラストの中間調表示/フルカラー表示が高速に実現できる。例えば、表示パネルのライン数が1000ラインの場合、従来は階調性の良好なフルカラー表示において、中コントラスト時には10秒、高コントラスト時には24秒を要していたが、実施形態であれば、階調性の良好なフルカラー表示を、中コントラスト時には3秒、高コントラスト時には6秒で行えるようになる。
【0142】
以上の実施形態を説明したが、開示の技術はこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0143】
以下、実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
多階調表示を行うコレステリック液晶表示パネルと、
前記コレステリック液晶表示パネルの駆動回路と、
制御回路と、を備える表示装置であって、
前記制御回路は、表示する階調に応じて、各画素を、もっとも明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、前記最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、前記最高階調と前記低中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類し、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに第1の駆動波形を印加して、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、前記最低階調のグループの画素を最低階調状態に、前記低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にし、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする、ことを特徴とする表示装置。
(付記2)
前記最高階調はプレーナ状態に対応し、前記最低階調はフォーカルコニック状態に対応し、中間調は前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態が混在する状態に対応し、前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態の混在率に応じて階調レベルが異なる付記1に記載の表示装置。
(付記3)
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第1の駆動波形を印加してダイナミック駆動を行い、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第2の駆動波形を印加してコンベンショナル駆動を行う、付記1または2に記載の表示装置。
(付記4)
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第1の駆動波形を印加して、全画素を前記フォーカルコニック状態にした後、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を前記プレーナ状態に変化させると共に、前記低中間階調のグループを前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態が混在する状態に変化させるコンベンショナル駆動を行い、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態が混在する状態に変化させるコンベンショナル駆動を行う、付記2に記載の表示装置。
(付記5)
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数および各階調のレベル値を、表示モードに応じて決定する付記1から4のいずれかに記載の表示装置。
(付記6)
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数および各階調のレベル値を、周囲温度に応じて決定する付記1から4のいずれかに記載の表示装置。
(付記7)
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数および各階調のレベル値を、画素値出現頻度に応じて決定する付記1から4のいずれかに記載の表示装置。
(付記8)
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数および各階調のレベル値を、表示パネルの色に応じて決定する付記1から4のいずれかに記載の表示装置。
(付記9)
前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数は、画像データの階調数より少なく、
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数に応じて、画像データに擬似階調処理を施して表示する階調数に応じた処理済み画像データに変換し、前記処理済み画像データにしたがって前記グループ分けを行う付記1から8のいずれかに記載の表示装置。
(付記10)
前記駆動回路は、
前記第1の駆動波形を印加して、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、前記最低階調のグループの画素を最低階調状態に、前記低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にする処理を、全表示ラインに対して行い、
前記第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする処理を、前記高中間階調のグループの画素を含む表示ラインに対してのみ行う付記1から9のいずれかに記載の表示装置。
(付記11)
多階調表示を行うコレステリック液晶表示パネルの駆動方法であって、
表示する階調に応じて、各画素を、もっとも明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、前記最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、前記最高階調と前記中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類し、
第1の駆動波形を印加して、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、前記最低階調のグループの画素を最低階調状態に、前記低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にし、
第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする、ことを特徴とするコレステリック液晶表示パネルの駆動方法。
【符号の説明】
【0144】
10 表示素子
11 上側基板
12 液晶層
13 下側基板
14 上側電極層
15 下側電極層
17 吸光層
18 制御回路
21 電源
22 昇圧部
23 電圧切替部
24 電圧安定部
27 制御回路
28 コモンドライバ
29 セグメントドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多階調表示を行うコレステリック液晶表示パネルと、
前記コレステリック液晶表示パネルの駆動回路と、
制御回路と、を備える表示装置であって、
前記制御回路は、表示する階調に応じて、各画素を、もっとも明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、前記最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、前記最高階調と前記低中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類し、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに第1の駆動波形を印加して、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、前記最低階調のグループの画素を最低階調状態に、前記低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にし、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする、ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記最高階調はプレーナ状態に対応し、前記最低階調はフォーカルコニック状態に対応し、中間調は前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態が混在する状態に対応し、前記プレーナ状態と前記フォーカルコニック状態の混在率に応じて階調レベルが異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第1の駆動波形を印加してダイナミック駆動を行い、
前記駆動回路は、前記コレステリック液晶表示パネルに前記第2の駆動波形を印加してコンベンショナル駆動を行う、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数は、画像データの階調数より少なく、
前記制御回路は、前記最高階調、前記高中間階調、前記低中間階調および前記最低階調を含む表示する階調数に応じて、画像データに擬似階調処理を施して表示する階調数に応じた処理済み画像データに変換し、前記処理済み画像データにしたがって前記グループ分けを行う請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
多階調表示を行うコレステリック液晶表示パネルの駆動方法であって、
表示する階調に応じて、各画素を、もっとも明るい最高階調のグループと、もっとも暗い最低階調のグループと、前記最低階調に近似した少なくとも1つの低中間階調のグループと、前記最高階調と前記中間階調の間の高中間階調のグループと、に分類し、
第1の駆動波形を印加して、前記最高階調のグループおよび前記高中間階調のグループの画素を最高階調状態に、前記最低階調のグループの画素を最低階調状態に、前記低中間階調のグループの画素を表示する階調に応じた状態にし、
第2の駆動波形を印加して、前記高中間階調のグループの画素を、表示する階調に応じた状態にする、ことを特徴とするコレステリック液晶表示パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−204373(P2010−204373A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49612(P2009−49612)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】