説明

表示装置および透過光制御方法

【課題】 低コストで確実に表示装置内の温度上昇を防止することができなかった。
【解決手段】 平面状に配設された複数の発光素子を点灯させる表示装置の透過光を制御するにあたり、可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過する帯域フィルタによって上記発光素子に対して照射される光の波長を制限する。帯域フィルタとしては、可視光域のさらに一部の光のみを透過する構成を採用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を点灯して文字や図柄を表示する表示装置および透過光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示装置としては、高速道路上や道路作業車の後部に設置して交通情報を表示する道路情報表示装置や屋外で動画等を表示するための表示装置等が知られている。この表示装置は屋外で使用されるため、日光が表示装置の表示面に照射される。一般に発光素子を点灯させるための電子機器が高温になることは好ましくなく、各種の手法によって温度上昇を防止する措置が執られている(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】登録実用新案第2515929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の表示装置においては、表示装置内の温度上昇を防止するため、冷却ファンが使用されている。しかし、冷却ファンを使用する場合には、冷却ファンを構成するためのコスト、冷却ファンのメンテナンスコストが生じるし、冷却ファンが何らかの故障によって停止してしまった場合には、温度上昇を防止することができない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、低コストで確実に表示装置内の温度上昇を防止することが可能な表示装置および透過光制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、請求項1にかかる発明では、可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過する帯域フィルタを発光素子と表示装置の外部との間に配置することにより、表示装置に対して入射する日光を制限する。すなわち、表示装置が機能するためには可視光が表示装置の外部に放射されればよいため、可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過させるフィルタを発光素子の前面(発光素子による発光方向)に配置する。この結果、情報表示のために必要な発光素子による可視光は表示装置の外部に放射され、表示装置として機能しながらも、表示装置に照射される光の大半が表示装置内に入射しないように構成することができる。従って、日光の入射による表示装置内部の発熱を効果的に抑えることができる。尚、日光に含まれる光エネルギー分布は可視光域で約50%,紫外域と赤外域で約50%である。従って、可視光波長域に限定することで、入射する光エネルギーの約50%を遮断することができる。
【0005】
複数の発光素子は、その発光と非発光とを点灯制御部で制御することにより文字や図柄を表示することができればよく、LED等種々の素子を採用可能である。
【0006】
また、点灯制御部においては、発光素子を選択的に点灯させることができればよく種々の構成を採用可能である。例えば、発光素子を点灯させるための電圧を個々の発光素子に印加できるように構成し、点灯させる発光素子を示すデータに基づいて点灯させるべき発光素子に電圧を印加する構成等を採用可能である。
【0007】
帯域フィルタにおいては、少なくとも可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過すれば、表示装置の機能を確保しながら、日光による発熱を抑えることができる。また、帯域フィルタは、発光素子と表示装置の外部との間に配置されればよい。通常、発光素子を基板の上に平面状に配設したユニットの前面がガラス等によって覆われるため、このガラスの後面に帯域フィルタを取り付ければよい。尚、発光素子は特定の照射角度に対して光を放射するので、光が放射されない帯域フィルタの部分は、光を透過させないマトリックス状に丸孔を開けた金属フィルム等によって覆うことが好ましい。
【0008】
上記帯域フィルタにおいて、より効率的に日光の光エネルギーによる発熱を抑えるために好ましい構成として、請求項2のように可視光波長域に含まれる特定の波長域の光のみを透過する特定波長透過フィルタを採用しても良い。すなわち、表示装置を機能させるためには、可視光波長域の全域で光を透過させることは必須ではない。そこで、特定の波長域の光を透過させるようにフィルタを構成すれば、日光に含まれる光エネルギーが表示装置内部に入射する割合をより一層効果的に制限することができ、発光素子を取付けた基板(ブラックマスク基板)などからの輻射熱による表示装置の内部発熱をより確実に抑えることができる。
【0009】
特定の波長域の光のみを透過する特定波長透過フィルタとしては、特に限定されず、各種の構成を採用可能である。その一例として、請求項3のように、2つのフィルタを組み合わせることによって特定の波長域の光のみを透過するフィルタを形成することができる。すなわち、可視光における長波長側の所定波長より短い波長の光を透過する短波長透過フィルタと、可視光における短波長側の所定波長より長い波長の光を透過する長波長透過フィルタとの双方を透過するように特定波長透過フィルタを構成すればよい。
【0010】
このフィルタによれば、上記長波長側の所定波長と上記短波長側の所定波長との間の波長を透過する帯域フィルタを構成することができる。従って、長波長側の所定波長と上記短波長側の所定波長とを選択することで所望の波長域の光のみを透過する特定波長透過フィルタを容易に構成することができる。尚、上記短波長透過フィルタと長波長透過フィルタとは、低屈折材料又は高屈折材料を表層の上下に配置し中間にそれぞれ低屈折材料と高屈折材料とを交互に積層することによって作成することができる。
【0011】
また、請求項4のように、ファブリペロー型フィルタによって特定波長透過フィルタを構成しても良い。すなわち、所定のスペーサを高反射率のミラーで挟み込んで形成されるファブリペロー型フィルタによれば、スペーサの厚みと光の入射角とを調整することにより所望の波長を選択的に透過するフィルタを構成することができる。
【0012】
さらに、ファブリペロー型フィルタの特性をより改善したフィルタを採用しても良い。すなわち、ファブリペロー型フィルタにおいては、ある波長の透過率が略100%であるが、その波長の前後の波長では透過率が急激に減衰するので、ある程度の幅を持った波長域の光を選択的に透過させることは困難である。そこで、複数のファブリペロー型フィルタと類似の原理を使用して透過帯域幅を増加させたフィルタを採用すれば、ある程度の幅を持った波長域の光を略100%透過させ、この幅以外の光については透過率が急激に減衰するようにフィルタを構成することができる。
【0013】
この結果、発光素子からの光の波長がある程度の幅の波長域に分布している場合に、その光を確実に外部に放射し、明るい表示を行うことを確保しながらも、発光素子が放射する光の波長以外の波長の光については表示装置内に入射しないようにすることができる。このようなフィルタは、例えば、請求項5のように、高屈折率材料で形成したスペーサを高屈折材料と低屈折材料とからなる誘電体薄膜の積層体で挟み込んで得られる所定単位のキャビティを形成し、低屈折材料からなる層を介してこのキャビティを複数回繰り返すことによって形成することができる。
【0014】
さらに、請求項6のように、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を透過する可視光透過フィルタと、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を減衰させる特定波長減衰フィルタとを組み合わせて特定波長透過フィルタを構成しても良い。すなわち、特定波長減衰フィルタによれば、特定の波長の光を減衰させることができるので、可視光透過フィルタを透過する波長のうち、減衰を受けていない波長のみが透過するようにフィルタを構成することができる。
【0015】
以上のように特定波長透過フィルタによって、特定の波長の光が透過するように選択する構成においては、請求項7のように、上記発光素子が発する光の波長が当該特定の波長域に含まれるように構成するのが好ましい。すなわち、表示装置における内部発熱を抑えるためには、できるだけ表示装置に入射する光を抑えることが好ましいが、表示装置を機能させるためには、発光素子からの放射光は外部に放射されるようにしなければならない。
【0016】
そこで、上記発光素子が発する光の波長のみが当該特定の波長域に含まれるように構成すれば、表示装置の機能を確実に確保することができる。むろん、表示装置においては、1色,2色あるいはそれ以上の色の発光素子を利用することがあり得るので、各発光素子の色に対応した波長域の光のみが透過するように特定波長透過フィルタを構成すればよい。
【0017】
ところで、上述した表示装置においては、特定の波長の光のみを透過させることができればよいので、請求項8のように、この考え方を採用した透過光制御方法としても発明は成立する。むろん、請求項2〜請求項7に記載された構成を上記方法に対応させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)表示装置の構成:
(2)帯域フィルタの構成例1:
(3)帯域フィルタの構成例2:
(4)帯域フィルタの構成例3:
(5)帯域フィルタの構成例4:
(6)他の実施形態:
【0019】
(1)表示装置の構成:
図1は第1実施形態にかかる表示装置の外観を示している。図1に示す表示装置10は、道路脇に立てられた支柱に取り付けられる装置であり、その表示面11に交通情報等を表示する装置である。すなわち、表示面11には発光素子Pとして多数のLEDがマトリックス状に配設されており、これらLEDのいずれかを点灯させることによって表示面上に文字や図柄を表示することができる。拡大図Aは表示面11の一部を拡大して模式的に示した図である。
【0020】
なお、発光素子Pは、一つのパッケージに赤色LED(R)と黄緑色LED(G)とを収容しており、各色LEDを発光素子P毎に点灯制御することにより3色での文字や図柄の表示を行う。すなわち、各発光素子Pについて赤色LEDのみを点灯させると赤、黄緑色LEDのみを点灯させると黄緑、赤色LEDと黄緑色LEDを点灯させると橙の文字や図柄を表示することができる。
【0021】
図2は、表示装置10の主な内部構成を示すブロック図である。表示装置10は表示面11での表示文字や図柄を制御する制御部20と上記複数のLED表示ユニット31を駆動するLED表示部30とを備えている。LED表示部30は、一定数のLEDが搭載されたLED表示ユニット31を複数個備えており、各ユニットにはシフトレジスタが搭載されている。シフトレジスタは、入力されるクロックに同期してデジタルデータを次々と隣のレジスタに伝達する記憶装置であり、各色LEDのそれぞれにレジスタが対応している。本実施形態では、レジスタ内に記憶されたデジタルデータが”1”であるときに対応する赤色LED(R)あるいは黄緑色LED(G)を点灯し、デジタルデータが”0”であるときに対応するLEDを非点灯にする。
【0022】
表示面11の全体において文字や図柄を表示するために、LED表示部30は制御部20からシリアル転送される上記デジタルデータを取得し、シフトレジスタに全画面分のデータを転送して記憶させる。そして、赤色LED(R)あるいは黄緑色LED(G)を点灯させることにより、制御部20から転送されるデジタルデータに対応した文字や図柄を表示面11上に表示する。
【0023】
制御部20は、CPU21と制御プログラムメモリ22と表示データメモリ23とROM24とLED制御部25とを備えている。制御プログラムメモリ22は、表示データを取得し、文字や図柄に相当する発光素子Pの点灯を制御するプログラムを記憶した記憶媒体であり、CPU21は表示データメモリ23をワークエリアとして利用しながら当該制御プログラムを実行することができる。
【0024】
ROM24には、表示対象の文字や図柄を示す表示データ24aが記憶されている。表示データ24aは、表示装置10の表示面11上に表示させる文字や図柄毎にLEDの表示位置を指定したデータであり、LEDの色毎に赤色表示用データ(Rデータ)と黄緑色表示用データ(Gデータ)とを備えている。表示に際してはCPU21の制御によって表示データ24aが表示データメモリ23に保存される。さらにCPU21は当該表示データメモリ23に保存した表示データを所定タイミングのクロックに同期させてLED制御部25にシリアル転送する。LED制御部25は当該シリアル転送される表示データによって点灯される赤色LED(R)あるいは黄緑色LED(G)の制御を行う。
【0025】
図3は、本実施形態における表示装置10を側面から眺めた状態の断面図である。図3に示すように、表示装置10は一面が開口した直方体の筐体12に囲まれており、その内部に複数のLED32が並設されている。LED32は、筐体12の開口部に向けて光を放射するように配向されており、その放射方向には表示面11が形成されている。
【0026】
本実施形態において、表示面11は3層の物質を積層することによって形成されている。すなわち、拡大図Bに示すように、表示面11の外側から表示装置10の内部に向けてガラス13,粘着シート14,帯域フィルタ15が積層されている。ガラスは表示装置10の表示面11を覆っていればよいが、雨水等の進入を防止するため、ガラス13と筐体12とは密着させるのが好ましい。
【0027】
ガラス13としては、種々の特性のガラスを選択することができるが、一般にガラスは日光に含まれる光エネルギーの大半を透過する。従って、表示面11がガラス13のみによって構成されている場合、日光がLED32の基板に照射されることにより多くの輻射熱が発生する。基板で発生した輻射熱が赤外線として放出されたとしても、この赤外線のうち、遠赤外線に相当するある波長域の赤外線はガラスを透過しない。また、ガラス13によって表示装置10が密閉されているので、熱が外部に発散されない。従って、ガラス13のみにおいては、熱を外に逃がすことができず、表示装置10の内部の温度は上昇してしまう。
【0028】
しかし、本発明においては、ガラス13の内側に帯域フィルタ15が貼り付けられているので、日光に含まれる光の大半が表示装置10内に入射しないようにすることができる。すなわち、帯域フィルタ15は、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光のみを透過するフィルタであり、当該特定の波長域の光以外は表示装置10内に入射させない。
【0029】
本実施形態において、LED32は赤色LEDと黄緑色LEDとを含むので、少なくとも赤色LEDによる放射光の波長(636nm)と黄緑色LEDによる放射光の波長(574nm)とを透過させるフィルタであればよい。むろん、LEDからの放射光の波長は温度変化等による変動幅を持つので、その変動幅あるいはそれ以上の透過帯域を持ったフィルタであることが好ましく、550nm〜650nmの波長の光を透過する帯域フィルタであっても良い。
【0030】
他にも、表示装置10で使用するLEDの色が青(470nm),緑(555nm),赤(636nm)である場合にそれぞれの波長の光を透過する帯域フィルタを構成しても良いし、450nm〜650nmの波長の光を透過する帯域フィルタを構成しても良く、種々の構成を採用可能である。
【0031】
以上のように、本発明によれば、特定の波長域の光以外は表示装置10内に入射させないので、帯域フィルタ15が存在しない場合と比較して表示装置10内での発熱を非常に効率的に抑えることができる。尚、粘着シート14の屈折率は略1であればよく、種々の粘着材を構成することができる。むろん、ガラス13を基板にして帯域フィルタ15の層を成長させるなど、ガラス13に対して直接的に帯域フィルタ15を形成しても良い。
【0032】
(2)帯域フィルタの構成例1:
帯域フィルタ15は、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光のみを透過する種々のフィルタを採用することができる。例えば、可視光における長波長側の所定波長より短い波長の光を透過する短波長透過フィルタと、可視光における短波長側の所定波長より長い波長の光を透過する長波長透過フィルタとを積層することによって帯域フィルタ15を構成することができる。
【0033】
図4は、上記短波長透過フィルタの形成法と帯域特性とを示す図である。図4の左側には、短波長透過フィルタの形成法を示している。当該短波長透過フィルタは、高屈折材料(Hと表記する)と低屈折材料(Lと表記する)とを複数層積層することによって形成することができる。また、図4の左側に示す0.5H,1Hは高屈折材料を示すとともに0.5と1とで相対的な厚さを示し、1Lは低屈折材料を示している。
【0034】
すなわち、最上層と最下層とを除く中間層で高屈折材料と低屈折材料とが交互に積層され、最上層と最下層とでは中間層における高屈折材料の半分の厚みの層が形成される。この構成において、各層の膜厚は、以下の式(1)にて表すことができる。
膜厚=λ/(4n)・・・(1)
ここで、nは屈折材料の屈折率であり、λは波長である。
【0035】
また、高屈折材料と低屈折材料とは特に限定されないが、例えば、二酸化チタン等を高屈折材料として使用することができるし、光学用合成石英ガラス等を低屈折材料として使用することができる。尚、屈折率n=2.40の二酸化チタン、屈折率n=1.46の光学用合成石英ガラスを使用し、波長λ=800(nm)とすれば、上記式(1)により、1Hの膜厚を83.3nm、1Lの膜厚を137.0nmと特定することができる。また、0.5Hの膜厚は、1Hの半分の厚みであるため、41.7nmとなる。
【0036】
従って、真空蒸着、スパッタリング、フラッシュ蒸着等によって基板に対して膜厚41.7nmの二酸化チタン(0.5H)を形成し、膜厚137.0nmの光学用合成石英ガラス(1L)と膜厚83.3nmの二酸化チタン(1H)とを交互に形成し、最後に膜厚41.7nmの二酸化チタン(0.5H)を形成することによって短波長透過フィルタを形成することができる。図4の右側のグラフは、以上のようにして形成した短波長透過フィルタの帯域特性であり、可視光における長波長側の所定波長(約675nm)より短い波長の光を透過させることができる。
【0037】
図5は、上記長波長透過フィルタの形成法と帯域特性とを示す図である。図5の左側には、長波長透過フィルタの形成法を示している。当該長波長透過フィルタも、上記短波長透過フィルタと同様に、高屈折材料(Hと表記する)と低屈折材料(Lと表記する)とを複数層積層することによって形成することができる。また、図5の左側に示す0.5L,1Lは低屈折材料を示すとともに0.5と1とで相対的な厚さを示し、1Hは高屈折材料を示している。
【0038】
すなわち、最上層と最下層とを除く中間層で高屈折材料と低屈折材料とを交互に積層し、最上層と最下層とでは中間層における低屈折材料の半分の厚みの層を形成する。ここでも膜厚は上記式(1)によって決定することができる。また、高屈折材料と低屈折材料とは特に限定されないが、例えば、二酸化チタン等を高屈折材料として使用することができるし、光学用合成石英ガラス等を低屈折材料として使用することができる。
【0039】
屈折率n=2.40の二酸化チタン、屈折率n=1.46の光学用合成石英ガラスを使用し、波長λ=330(nm)とすれば、上記式(1)により、0.5Lの膜厚を28.3nm、1Lの膜厚を56.5nm、1Hの膜厚を34.4nmと特定することができる。従って、真空蒸着、スパッタリング、フラッシュ蒸着等によって基板に対して膜厚28.3nmの光学用合成石英ガラス(0.5L)を形成し、膜厚34.4nmの二酸化チタン(1H)と膜厚56.5nmの光学用合成石英ガラス(1L)とを交互に形成し、最後に膜厚28.3nmの光学用合成石英ガラス(0.5L)を形成することによって長波長透過フィルタを形成することができる。図5の右側のグラフは、以上のようにして形成した長波長透過フィルタの帯域特性であり、可視光における長波長側の所定波長(約400nm)より長い波長の光を透過させることができる。
【0040】
以上のように形成した短波長透過フィルタと長波長透過型フィルタとをさらに積層すれば、図6に示す帯域特性のフィルタを形成することができる。すなわち、約400nm〜675nmの波長の光を透過する帯域フィルタを形成することができる。従って、このフィルタを表示装置10の帯域フィルタ15として使用することにより、余分な日光の入射を効果的に防止することができる。尚、図6に示す帯域フィルタは上述のように、青(470nm),緑(555nm),赤(636nm)の3色のLEDを備える表示装置に適用して特に好適である。
【0041】
むろん、上述の実施形態のように赤色LEDと黄緑色LEDとを備える表示装置10に対して図6に示す帯域フィルタを適用しても良いが、上述の式(1)に代入するλの値を調整することによって、より適切な帯域特性を持つフィルタ、例えば550nm〜650nmの波長の光を透過する帯域フィルタを形成しても良い。
【0042】
(3)帯域フィルタの構成例2:
帯域フィルタ15としては、他にもファブリペロー型フィルタを採用することが可能である。図7は、ファブリペロー型フィルタの断面構成を示す説明図である。同図7の左側に示すように、ファブリペロー型フィルタは、スペーサ151をミラー150で挟み込むことによって構成される。ミラー150はその反射面Sが互いに向かい合うように配置される。
【0043】
ここで、ミラー150の反射率は、95%以上の高反射率になるように反射面Sが形成される。従って、一方のミラーから入射した光はスペーサ151内で図7の左側に示すように多重的に反射を繰り返す。この多重反射を繰り返す光の一部は他方のミラーから透過するが、以下の式(2)を満たすときに透過率が極大となる。すなわち、多重反射の過程で、ある波長の光はスペーサ151の厚さと波長との関係で共振が起こり、特定の波長の光を透過することになる。
mλ=2tcosθ・・・(2)
【0044】
ここで、mは整数、tはスペーサ151の光学的厚み(スペーサの屈折率×スペーサの厚さ)、θは図7の左側に示す入射角である。従って、スペーサ151の光学的厚みが決定されたとき、ある角度で入射する光の波長がλあるいはその整数倍であるときにそれらの光がフィルタを透過する。図7の右側にはこの透過特性を示している。すなわち、整数mの増加に応じて透過率が極大となる複数の波長λ1,λ2,λ3が得られる。
【0045】
以上のように、ファブリペロー型フィルタによれば、特定の波長域の光のみを透過するフィルタを構成することができるので、主な入射角θを想定し、スペーサ151の材質およびその厚みを調整することによって可視光波長域に含まれる特定の波長域の光のみを透過するフィルタを構成することができる。スペーサ151およびミラー150の材質は種々のものを選択することができる。例えば、フッ化マグネシウムによってスペーサ151を形成することができるし、ガラス等の基材にアルミ、白金、銀、クロムなどを蒸着することによってミラー150を形成することができる。ミラー150は高反射率になるように形成されるが、むろん、その一部は透過する必要があるため、所定の透過率で光が透過するように薄く蒸着させる。
【0046】
(4)帯域フィルタの構成例3:
帯域フィルタ15としては、帯域幅を改良したフィルタを採用することも可能である。図8は、2つの誘電体薄膜の積層体でスペーサを挟み込んで形成される帯域フィルタを示す図である。同図に示すフィルタは、アブセンティーと呼ばれる層を介してキャビティと呼ばれる単位を繰り返すことによって形成されるフィルタであり、同図8においてはキャビティを2単位繰り返したフィルタを示している。
【0047】
本実施形態において、一つのキャビティは、スペーサSpを高屈折材料Hおよび低屈折材料Lからなる誘電体薄膜の積層体で挟み込んで形成される。スペーサSpは、透過させるべき光の波長λの1/2波長の光学的厚みとなる高屈折材料の層である。また、高屈折材料Hおよび低屈折材料Lは、それぞれ、透過させるべき光の波長λの1/4波長の光学的厚みとなる層である。また、アブセンティーAは、透過させるべき光の波長λの1/2波長の光学的厚みとなる低屈折材料の層である。むろん、各層は各種の蒸着処理によって形成することができる。
【0048】
図8の右側のグラフは、以上のようにして作成したフィルタの帯域特性であり、当該フィルタ(構成例3)の帯域特性を実線、ファブリペロー型フィルタ(構成例2)の帯域特性を破線で示している。当該フィルタは、同図8の実線に示すように、前記波長λを中心にして所定の幅を持ち、しかも透過率100%から透過率10%以下になるまでほぼその幅を維持している。このため、この幅を持つ波長の光についてはほとんど減衰させることなく透過させることができる。
【0049】
従って、表示装置10に備えるLEDの放射波長がこの幅に含まれるとき、その光をほとんど減衰させることなく透過させ、帯域フィルタ15によって表示装置の明るさを落とすことなく、余分な光の入射を防ぐことができる。尚、図8の左側に示す構造においては、キャビティの繰り返し数を増やすほど透過率の変化を急峻にすることができ、帯域特性を矩形に近づけることができる。
【0050】
(5)帯域フィルタの構成例4:
帯域フィルタ15としては、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を透過する可視光透過フィルタと、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を減衰させる特定波長減衰フィルタとを組み合わせることによって構成することもできる。すなわち、ある材料の持つ禁制帯エネルギーギャップを超える光エネルギーはこの禁制帯エネルギーギャップを超えた電子の遷移を引き起こすので、このような光の波長は吸収される。
【0051】
従って、フィルタとして使用する材料を適宜選択することによって所望の波長域の光を減衰させる特定波長減衰フィルタを作成することができる。図9の上段には、このような特定波長減衰フィルタの例を示している。すなわち、この例に示す特定波長減衰フィルタは、可視光波長域の特定波長(600nm)付近の光を減衰させる。可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を透過する可視光透過フィルタは、上記構成例1と同様にして形成することができる。図9の中段には、このような可視光透過フィルタの例を示している。すなわち、この例に示す可視光透過フィルタは、可視光波長域の特定波長(550nm〜650nm)の光を透過する。
【0052】
そこで、両者を積層して一つのフィルタを形成すれば、図9の下段に示すようなフィルタを作成することができる。この例では、550nm〜580nmの波長および610nm〜650nmの波長を持つ光を透過させる。このようなフィルタは、表示装置10で2色以上のLEDを使用し、そのいずれかの放射光が550nm〜580nmの波長を持ち、そのいずれかの放射光が610nm〜650nmの波長を持つ場合に有用である。すなわち、LEDからの放射がない580nm〜610nm付近の波長の光を確実に遮断することができ、LEDが放射する光の波長のみを表示装置10に入射可能とするため、表示装置10の温度上昇を格段に抑えることが可能になる。
【0053】
(6)他の実施形態:
上述の実施形態においては、表示装置10に配設されたLED32の放射方向に表示面11を形成し、同表示面11の全面に1種類のフィルタを貼り付けていたが、LED32の照射角度が含まれるために充分な大きさのフィルタを形成すれば充分である。このような構成は、LED32が所定の間隔をあけて配置されている表示装置10に適用して好適である。
【0054】
図10は、この構成を説明するための説明図であり、表示装置10を側面から眺めた状態の断面図を示している。同図10において、図3に示す表示装置10と同じ構成については同じ符号で示している。図3に示す表示装置10と異なる点は、LED32の配置と対応する帯域フィルタ152の配置である。すなわち、LED32は、縦横方向にLED一個分の間隔が空けられながら配置されている。尚、図10の拡大図b1は、表示面11を前面(LED32の放射方向)から眺めた状態でLEDの配置を示している。
【0055】
LED32の照射角はある一定の範囲であり、光が表示面11を通過する際の照射角度は拡大図B’に示すように限られた範囲である。従って、LED32による照射角度を含むように帯域フィルタ152を形成すれば充分である。そこで、本実施形態においては、拡大図B’に示すように、帯域フィルタ152の形成範囲をLED32の照射角度に限定している。尚、図10の拡大図b2は、表示面11を前面から眺めた状態を示しており、ハッチングをつけた部分が帯域フィルタ152である。
【0056】
以上の構成を採用すれば、LED32からの光を確実に外部に放射することができるので、帯域フィルタ152を形成している部位以外は光を透過しない材料で覆うことができる。従って、帯域フィルタ152を形成するための材料を低減し、表示装置10の機能を確保しながらも、確実に表示装置10内に入射する光を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】表示装置の外観を示す図である。
【図2】表示装置の主な内部構成を示すブロック図である。
【図3】表示装置を側面から眺めた状態の断面図である。
【図4】短波長透過フィルタの形成法と帯域特性とを示す図である。
【図5】長波長透過フィルタの形成法と帯域特性とを示す図である。
【図6】構成例1における帯域フィルタの帯域特性を示す図である。
【図7】構成例2における帯域フィルタの断面構成および帯域特性を示す説明図である。
【図8】構成例3における帯域フィルタの断面構成および帯域特性を示す説明図である。
【図9】構成例4における帯域フィルタの帯域特性を示す図である。
【図10】他の実施形態における表示装置を側面から眺めた状態の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10…表示装置
11…表示面
12…筐体
13…ガラス
14…粘着シート
15…帯域フィルタ
20…制御部
21…CPU
22…制御プログラムメモリ
23…表示データメモリ
24…ROM
24a…表示データ
25…LED制御部
30…LED表示部
31…LED表示ユニット
32…LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に配設された複数の発光素子と、
同発光素子を点灯させる点灯制御部と、
上記発光素子と表示装置の外部との間に配置され、可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過する帯域フィルタとを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記帯域フィルタは、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光のみを透過する特定波長透過フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記特定波長透過フィルタは、可視光における長波長側の所定波長より短い波長の光を透過する短波長透過フィルタと、可視光における短波長側の所定波長より長い波長の光を透過する長波長透過フィルタとを含むことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記特定波長透過フィルタは、ファブリペロー型フィルタであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
上記特定波長透過フィルタは、2つの誘電体薄膜の積層体でスペーサを挟み込んで得られる所定単位を複数回繰り返して形成したフィルタであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
上記特定波長透過フィルタは、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を透過する可視光透過フィルタと、可視光波長域に含まれる特定の波長域の光を減衰させる特定波長減衰フィルタとを含むことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
上記特定波長透過フィルタが透過する特定の波長域には、上記発光素子が発する光の波長が含まれることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
平面状に配設された複数の発光素子を点灯させる表示装置の透過光を制御する透過光制御方法であって、
可視光波長域に含まれる波長の光のみを透過する帯域フィルタによって上記発光素子に対して照射される光の波長を制限することを特徴とする透過光制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−106170(P2006−106170A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289954(P2004−289954)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】