説明

表示装置の製造方法及びこれに使用する中間製品

【課題】切断工程を良好に行うことができる表示装置の製造方法及びこれに使用する中間製品を提供することを目的とする。
【解決手段】相互に対向する一対の無機基板10を有し、有機シール材12によって一対の無機基板10の間に封止空間20が形成された中間製品を用意する。封止空間20の外側で一対の無機基板10を切断する。一対の無機基板10の対向面の少なくとも一方には、封止空間20内に、画像表示のための回路が形成されている。中間製品は、封止空間20の外側に、一対の無機基板10の少なくとも一方の面及び有機シール材12で区画された流路56を有する。一対の無機基板10を切断する工程は、流路56に無機材料に対するエッチング液58を侵入させ、流路56に沿って一対の無機基板10の少なくとも一方の面をエッチングして溝60を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法及びこれに使用する中間製品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造方法として、大型のマザーガラス基板を使用する方法が知られており、一対のマザーガラス基板の間には、個々の製品の液晶を封止するシール材が配置されている。マザーガラスは化学的にエッチングして薄くすることがあった(特許文献1)。また、一対のマザーガラス基板の周縁部に封止材を設けることがあった。封止材は、マザーガラス基板を化学的にエッチングして薄くするときに、一対のマザーガラス基板の間へのエッチング液の侵入を防止して、個々の製品のシール材を保護していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、封止材があるために、マザーガラスは端部でエッチングされにくくなっており、板厚差が生じるため、その後の切断工程に悪影響を与えていた。
【0005】
本発明は、切断工程を良好に行うことができる表示装置の製造方法及びこれに使用する中間製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る表示装置の製造方法は、相互に対向する一対の無機基板を有し、有機シール材によって前記一対の無機基板の間に封止空間が形成された中間製品を用意する工程と、前記封止空間の外側で前記一対の無機基板を切断する工程と、を含み、前記一対の無機基板の対向面の少なくとも一方には、前記封止空間内に、画像表示のための回路が形成され、前記中間製品は、前記封止空間の外側に、前記一対の無機基板の少なくとも一方の面及び前記有機シール材で区画された流路を有し、前記一対の無機基板を切断する工程は、前記流路に無機材料に対するエッチング液を侵入させ、前記流路に沿って前記一対の無機基板の前記少なくとも一方の面をエッチングして溝を形成することを含むことを特徴とする。本発明によれば、無機基板に溝を形成するので、この溝に沿って無機基板を良好に切断することができる。
【0007】
(2)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記溝の形成は、前記エッチング液に前記中間製品を浸漬して行い、前記エッチング液によって、前記一対の無機基板の相互に反対側を向く面をそれぞれエッチングして、前記一対の無機基板を薄くすることを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材によって、複数の前記封止空間が形成されることを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられることを特徴としてもよい。
【0010】
(5)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられる介在シール材と、前記一対の無機基板の端面に設けられるカバーシール材と、を含むことを特徴としてもよい。
【0011】
(6)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記封止空間に隣接する内側シール材と、前記内側シール材が囲む前記封止空間の外側に前記内側シール材から間隔をあけて分離された外側シール材と、を含むことを特徴としてもよい。
【0012】
(7)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の両方に密着するように相互に間隔をあけて配置された一対の全密着部と、前記一対の全密着部の間に配置されて前記一対の無機基板の一方との接触を避けて他方に密着する半密着部と、を含むことを特徴としてもよい。
【0013】
(8)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部を含むことを特徴としてもよい。
【0014】
(9)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部と、前記少なくとも1層の有機膜の前記一部に積層されて前記一対の無機基板を接着する接着部と、を含むことを特徴としてもよい。
【0015】
(10)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、を含み、前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが接合されていることを特徴としてもよい。
【0016】
(11)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、接着部と、を含み、前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが、前記接着部を介して接合されていることを特徴としてもよい。
【0017】
(12)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記一対の無機基板を切断する工程で、前記溝が形成された前記面とは反対の面を、前記溝に沿ってスクライビングすることを特徴としてもよい。
【0018】
(13)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記エッチングによって、前記溝を進行させて前記一対の無機基板の前記少なくとも一方を貫通させてスリットを形成することを特徴としてもよい。
【0019】
(14)(13)に記載された表示装置の製造方法において、前記封止空間を囲むように前記スリットを形成して、前記一対の無機基板の前記少なくとも一方を切断することを特徴としてもよい。
【0020】
(15)(14)に記載された表示装置の製造方法において、前記エッチングによって、前記一対の無機基板の両方を切断することを特徴としてもよい。
【0021】
(16)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記一対の無機基板の間で、前記封止空間内に、製品にされる空間を囲む製品シール材が設けられ、前記回路は、前記製品にされる前記空間に配置されていることを特徴としてもよい。
【0022】
(17)(16)に記載された表示装置の製造方法において、前記製品にされる前記空間には、前記製品シール材によって液晶が封止されていることを特徴としてもよい。
【0023】
(18)(16)に記載された表示装置の製造方法において、前記製品シール材は、前記製品にされる前記空間に液晶を注入するための開口が形成されていることを特徴としてもよい。
【0024】
(19)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記封止空間に液晶が封入されていることを特徴としてもよい。
【0025】
(20)(1)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記封止空間を複数の分割封止空間に区画するパーティション部を有するように形成されていることを特徴としてもよい。
【0026】
(21)(20)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を避けるように形成されることを特徴としてもよい。
【0027】
(22)(20)に記載された表示装置の製造方法において、前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を通るように形成されることを特徴としてもよい。
【0028】
(23)(22)に記載された表示装置の製造方法において、前記パーティション部では、前記流路が、前記一対の無機基板の一方のみの前記面及び前記有機シール材で区画されるように形成され、前記封止領域の全体を囲む部分では、前記流路が、前記一対の無機基板の両方の前記面及び前記有機シール材で区画されることを特徴としてもよい。
【0029】
(24)本発明に係る表示装置製造用の中間製品は、相互に対向する一対の無機基板と、前記一対の無機基板の間に封止空間を形成する有機シール材と、を有し、前記一対の無機基板の対向面の少なくとも一方には、前記封止空間内に、画像表示のための回路が形成され、前記封止空間の外側に、前記一対の無機基板の少なくとも一方の面及び前記有機シール材で区画された流路を有することを特徴とする。本発明によれば、流路にエッチング液を侵入させることで無機基板に溝を形成することができ、この溝に沿って無機基板を良好に切断することができる。
【0030】
(25)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材によって、複数の前記封止空間が形成されることを特徴としてもよい。
【0031】
(26)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられることを特徴としてもよい。
【0032】
(27)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられる介在シール材と、前記一対の無機基板の端面に設けられるカバーシール材と、を含むことを特徴としてもよい。
【0033】
(28)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記封止空間に隣接する内側シール材と、前記内側シール材が囲む前記封止空間の外側に前記内側シール材から間隔をあけて分離された外側シール材と、を含むことを特徴としてもよい。
【0034】
(29)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の両方に密着するように相互に間隔をあけて配置された一対の全密着部と、前記一対の全密着部の間に配置されて前記一対の無機基板の一方との接触を避けて他方に密着する半密着部と、を含むことを特徴としてもよい。
【0035】
(30)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部を含むことを特徴としてもよい。
【0036】
(31)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部と、前記少なくとも1層の有機膜の前記一部に積層されて前記一対の無機基板を接着する接着部と、を含むことを特徴としてもよい。
【0037】
(32)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、を含み、前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが接合されていることを特徴としてもよい。
【0038】
(33)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、接着部と、を含み、前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが、前記接着部を介して接合されていることを特徴としてもよい。
【0039】
(34)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記一対の無機基板の間で、前記封止空間内に、製品にされる空間を囲む製品シール材が設けられ、前記回路は、前記製品にされる前記空間に配置されていることを特徴としてもよい。
【0040】
(35)(34)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記製品にされる前記空間には、前記製品シール材によって液晶が封止されていることを特徴としてもよい。
【0041】
(36)(34)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記製品シール材は、前記製品にされる前記空間に液晶を注入するための開口が形成されていることを特徴としてもよい。
【0042】
(37)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記封止空間に液晶が封入されていることを特徴としてもよい。
【0043】
(38)(24)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記封止空間を複数の分割封止空間に区画するパーティション部を有するように形成されていることを特徴としてもよい。
【0044】
(39)(38)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を避けるように形成されることを特徴としてもよい。
【0045】
(40)(38)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を通るように形成されることを特徴としてもよい。
【0046】
(41)(40)に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記パーティション部では、前記流路が、前記一対の無機基板の一方のみの前記面及び前記有機シール材で区画されるように形成され、前記封止領域の全体を囲む部分では、前記流路が、前記一対の無機基板の両方の前記面及び前記有機シール材で区画されることを特徴としてもよい。
【0047】
(42)(24)から(41)のいずれか1項に記載された表示装置製造用の中間製品において、前記一対の無機基板は、厚みが異なることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態に係る中間製品を示す側面図である。
【図2】図1に示す中間製品のII−II線断面図である。
【図3】図1に示す中間製品のIII−III線断面の拡大図である。
【図4】一方の無機基板の断面の一部を示す拡大図である。
【図5】第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【図6】第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【図7】第1の実施形態の変形例1に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【図8】第1の実施形態の変形例2に係る中間製品を示す図である。
【図9】第1の実施形態の変形例3に係る中間製品を示す図である。
【図10】第1の実施形態の変形例4に係る中間製品を示す図である。
【図11】第1の実施形態の変形例5に係る中間製品を示す図である。
【図12】第1の実施形態の変形例6に係る中間製品を示す図である。
【図13】第1の実施形態の変形例7に係る中間製品を示す図である。
【図14】第1の実施形態の変形例8に係る中間製品を示す図である。
【図15】変形例8に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。
【図16】第1の実施形態の変形例9に係る中間製品を示す図である。
【図17】変形例9に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。
【図18】第1の実施形態の変形例10に係る中間製品を示す図である。
【図19】変形例10に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。
【図20】本発明を適用した第2の実施形態に係る中間製品を示す図である。
【図21】第2の実施形態に係る切断された中間製品を説明する図である。
【図22】図21に示す中間製品のXXII−XXII線断面図である。
【図23】切断片が除去された中間製品を示す図である。
【図24】第2の実施形態に係る中間製品の変形例を示す図である。
【図25】図24に示す中間製品のXXV−XXV線断面図である。
【図26】図24に示す中間製品のXXVI−XXVI線断面図である。
【図27】第2の実施形態の変形例に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【図28】第2の実施形態の変形例に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態に係る表示装置の製造方法は、中間製品を用意する工程を含む。中間製品とは、製造プロセスの途中で得られる製品である。製造プロセスの最終製品は、表示装置である。本実施形態で製造される表示装置は液晶表示装置であるが、それ以外の有機エレクトロルミネッセンス装置などの表示装置にも本発明は適用可能である。
【0050】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る中間製品を示す側面図である。図2は、図1に示す中間製品のII−II線断面図である。図3は、図1に示す中間製品のIII−III線断面の拡大図である。
【0051】
中間製品は、一対の無機基板10(例えばガラス基板)を有する。それぞれの無機基板10は、矩形の平面形状を有している。一対の無機基板10は、それぞれマザー基板であり、切断ラインLに沿って個々の最終製品に対応して切り出される。一対の無機基板10は、間隔をあけて相互に対向するように配置されている。一対の無機基板10の間には、樹脂などからなる有機シール材12が設けられている。
【0052】
有機シール材12は、その位置によって介在シール材14とカバーシール材16に分けられる。介在シール材14は、一対の無機基板10(詳しくは対向面)の間に設けられている。介在シール材14は、一対の無機基板10の対向面において無機基板10の周縁を避けており、無機基板10からはみ出さない。介在シール材14は、一対の無機基板10の対向面に接触又は密着している。一方、カバーシール材16は、一対の無機基板10の端面(対向面の周縁から立ち上がる外周面)に設けられる。カバーシール材16は、一対の無機基板10の間の空間を、一部を除いて塞ぐようになっている。一対の無機基板10の間の空間は、カバーシール材16が設けられていない領域で外部に連口している。つまり、カバーシール材16は、開口18を有するように形成されている。カバーシール材16は、一対の無機基板10の間の空間に入り込んでいてもよく、一対の無機基板10の対向面(例えばその端部)に接触(密着)していてもよい。
【0053】
有機シール材12は、一対の無機基板10の間の空間を部分的に囲んで封止空間20を形成する。図2に示す例では、有機シール材12(介在シール材14)によって、複数の封止空間20が形成される。本実施形態で、封止空間20とは、最終製品となる部分を包含する空間である。
【0054】
封止空間20に対する機能の面から、有機シール材12は、内側シール材22と外側シール材24を含む。内側シール材22は、封止空間20を区画するものであってその封止空間20に隣接する。外側シール材24は、封止空間20を囲む内側シール材22から間隔をあけてその封止空間20の外側に分離されて配置されている。ただし、図2に示すように、複数の封止空間20が形成されるので、隣同士の封止空間20をそれぞれ囲む隣同士の内側シール材22としての有機シール材12は、相互に、外側シール材24でもある。つまり、隣同士の内側シール材22の一方は、他方の内側シール材22に対して外側シール材24でもある。言い換えると、1つの封止空間20に対して内側シール材22である有機シール材12は、隣の封止空間20に対してはその封止空間20を区画しないので外側シール材24でもある。これに対して、内側シール材22の最も無機基板10の端部に近い部分から、無機基板10の周縁の方向に離れた有機シール材12は、最終製品となる部分を包含する封止空間20を区画していないので、外側シール材24ではあるが、内側シール材22ではない。
【0055】
外側シール材24ではあるが内側シール材22ではない有機シール材12aは、内側シール材22である有機シール材12bに沿って延びる第1部分26と、第1部分26から外方向(内側シール材22から離れる方向)に90度を超える角度で折り返されて延びる第2部分28とを含む。隣り合う有機シール材12の隣同士の第2部分28は、間隔をあけて配置されており、その間隔は外方向に向けて拡がるようになっている。そして、第2部分28の先端部(例えばその外側)に接触(密着)して、カバーシール材16が設けられている。図2の例では、無機基板10の端部で、カバーシール材16と第2部分28とによって封止されている空間があるが、これは本願発明で定義する封止空間20ではない。隣り合う有機シール材12の隣同士の第2部分28にそれぞれ接触(密着)する隣同士のカバーシール材16は、間隔をあけて配置されており、その間隔は外方向に向けて狭まるようになっている。隣同士のカバーシール材16の間に開口18が形成される。開口18の両側に位置する一対のカバーシール材16は、両者の間隔が、外方向に向けて狭まるように形成されている。
【0056】
矩形の無機基板10の角部には、V字状に屈曲する形状の有機シール材12cが、両端を無機基板10の角方向に向けて配置されている。V字状の有機シール材12cは、封止空間20と関係がないため、内側シール材22及び外側シール材24のいずれにも該当しない。V字状の有機シール材12cの両先端部(例えばその外側)にもカバーシール材16が密着しており、これらによって封止される空間が形成されるが、これも本願発明で定義する封止空間20ではない。図2の例では、V字状の有機シール材12cの先端から屈曲部までの部分と、有機シール材12aの上述した第2部分28とは、間隔をあけて隣り合うように配置されており、その間隔は、無機基板10の外方向に向けて拡がるようになっている。無機基板10の角部に配置された(V字状の有機シール材12cに接触する)カバーシール材16と、これに隣り合う(第2部分28に接触する)カバーシール材16とは、間隔をあけて配置されており、その間隔は外方向に向けて狭まるようになっている。つまり、開口18の両側に位置する一対のカバーシール材16は、両者の間隔が、外方向に向けて狭まるように形成されている。
【0057】
図3に示すように、一対の無機基板10の間で、封止空間20の内側から外側(有機シール材12bが配置される位置を含む)に至るように、1層又は複数層の有機膜30が形成されている。例えば、カラーフィルタ基板である無機基板10には、ブラックマトリクスを構成する有機膜30aと、オーバーコート層を構成する有機膜30bが積層されている。これらの有機膜30に接着部32が積層されて、一対の無機基板10が接着されている。有機シール材12は、これらの有機膜30のそれぞれの一部と接着部32を含んで構成される。すなわち、有機シール材12は、1層又は複数層の有機膜30の一部を含む。なお、図3の例では、下側の無機基板10には、無機膜34が形成されている。
【0058】
図2に示すように、一対の無機基板10の間で、封止空間20内に、製品にされる空間を囲む製品シール材36が設けられている。1つの封止空間20内に、複数の製品シール材36が設けられている。製品にされる空間には、製品シール材36によって液晶38が封止されている。
【0059】
図4は、一方の無機基板10の断面の一部を示す拡大図である。無機基板10には、薄膜トランジスタが形成されている。すなわち、無機基板10は、TFT(Thin Film Transistor)基板である。薄膜トランジスタは、液晶38(図2参照)の駆動を制御するためのスイッチである。薄膜トランジスタは、制御用の走査電圧が印加されるゲート電極40が下に配置されるボトムゲート型である。無機基板10上に、無機材料(SiOなどの半導体酸化物又はSiNなどの半導体窒化物)からなるゲート電極40が形成されている。ゲート電極40を覆うようにゲート絶縁膜42が形成されている。ゲート絶縁膜42の上には半導体層44が形成されている。半導体層44上には、ソース電極46及びドレイン電極48が形成されている。ソース電極46及びドレイン電極48並びに半導体層44を覆うように、無機材料(SiOなどの半導体酸化物又はSiNなどの半導体窒化物)からなる保護絶縁層50が形成されている。保護絶縁層50によって半導体層44の湿度汚染が防止される。図3に示す無機膜34は、ゲート絶縁膜42及び保護絶縁層50からなる。
【0060】
ゲート電圧がゲート電極40に印加されると映像信号電圧が印加されたドレイン電極48とソース電極46の間の半導体層44の抵抗が低下し、これによりソース電極46に接続された画素電極52と、共通電圧の印加された共通電極54の間の電界が発生し、これが液晶38に加わり液晶38の透過率が変化し表示を行う。本実施形態に係る液晶の駆動方式は、IPS(In Plane Switching)方式である。
【0061】
薄膜トランジスタの上方(保護絶縁層50上)には有機絶縁膜47が配置されている。有機絶縁膜47上に共通電極54が形成されている。共通電極54上には層間絶縁膜55が形成されている。層間絶縁膜55はSiNなどの無機材料の絶縁膜で構成される。さらにその上部には画素電極52が形成されている。画素電極52上に図示しない液晶38(図2参照)が配置される。
【0062】
以上説明した回路は、画像表示のための回路である。この回路は、一対の無機基板10の対向面の少なくとも一方(図3の例では下側の無機基板10)に形成される。回路は、製品にされる空間(製品シール材36で囲まれた領域)に配置されている。
【0063】
図3に示すように、封止空間20の外側には、一対の無機基板10の少なくとも一方の面及び有機シール材12によって流路56が区画されている。図2に示すように、流路56は、隣同士の封止空間20の間を通り、封止空間20の外側を通って外部と流通する。図2の例では、相互に連通した一体的な流路56が形成されているが、変形例として、連通しない複数の流路56を形成してもよい。
【0064】
流路56は、図2に示すように、カバーシール材16が設けられないことで形成された開口18で外部と連通している。流路56は、複数の封止空間20の全体を囲む位置では、内側シール材22である有機シール材12bと、外側シール材24であるが内側シール材22にはならない有機シール材12aとの間に形成されている。流路56は、隣同士の封止空間20の間では、封止空間20をそれぞれ区画する内側シール材22であって相対的に外側シール材24でもある一対の有機シール材12bの間に形成される。隣同士の、外側シール材24であるが内側シール材22にはならない一対の有機シール材12aの間にも流路56が形成される。また、外側シール材24であるが内側シール材22にはならない有機シール材12aと、内側シール材22及び外側シール材24のいずれにもならない有機シール材12cとの間にも流路56が形成される。また、開口18を挟む一対のカバーシール材16の間にも流路56が形成される。
【0065】
流路56には、無機基板10の対向面が露出している。詳しくは、無機基板10の基材の対向面自体が露出していてもよいし、無機基板10の基材上に設けられた無機材料からなる層の表面が露出していてもよい。いずれの場合であっても、少なくとも一方の無機基板10の流路56に露出する面は無機材料からなる。無機基板10上に形成された1層又は複数層の有機膜30(図3参照)は、流路56を避けるように形成されている。これ以外にも、無機基板10と流路56との間には有機材料は存在しない。
【0066】
図5及び図6は、本実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。表示装置の製造方法は、封止空間20の外側で一対の無機基板10を切断する工程を含む。
【0067】
詳しくは、図5に示すように、流路56に無機材料に対するエッチング液58を侵入させる。エッチング液58によって、流路56に沿って一対の無機基板10の少なくとも一方の面をエッチングして溝60を形成する。本実施形態によれば、流路56にエッチング液58を侵入させることで無機基板10に溝60を形成することができ、この溝60に沿って無機基板10を良好に切断することができる。
【0068】
溝60を形成する工程は、無機基板10を薄くする工程と同時に行うことができる。例えば、エッチング液58に中間製品を浸漬する。これにより、流路56にエッチング液58を侵入させることができる。エッチング液58によって、一対の無機基板10の相互に反対側を向く面はそれぞれエッチングされて、一対の無機基板10は薄くなる。
【0069】
次に、溝60が形成された面とは反対の面を、溝60に沿ってスクライビングする。そして、図6に示すように、一対の無機基板10を切断する。すなわち、一対の無機基板10は、複数の封止空間20(図2参照)が有機シール材12で封止された状態で切り出される。それぞれの封止空間20には、複数の製品にされる空間が製品シール材36で封止されているので、これらを製品ごとに切り出す。こうして、表示装置を得ることができる。
【0070】
[変形例]
図7は、本実施形態の変形例1に係る表示装置の製造方法を説明する図である。この例では、溝を進行させて一対の無機基板10の両方を切断する。つまり、エッチングによって無機基板10を貫通するスリット62を形成する。スリット62は、封止空間20(図2参照)を囲むように形成する。これによればスクライビングを省略することができる。また、エッチングによって一方の無機基板10を切断するだけでも工程省略の効果がある。その他の詳細は、上記実施形態で説明した通りである。
【0071】
図8は、本実施形態の変形例2に係る中間製品を示す図である。この例では、製品シール材64は、その後の工程で製品にされる空間に液晶を注入するための開口66が形成されている。したがって、製品シール材64の内側は空になっている。つまり、封止空間20には、複数の空セルが配置されている。なお、製品シール材64は、複数の空セルを連続的に区画している。一対の無機基板10は、上述した溝60(図5参照)に沿って切断された後に、空セルごとに切り出される。その後、空セルには液晶が注入される。その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0072】
図9は、本実施形態の変形例3に係る中間製品を示す図である。この例では、封止空間20に液晶68が封入されている。つまり、封止空間20に製品シール材が設けられておらず、それぞれの封止空間20の全体が1つの製品になる。したがって、封止空間20ごとに切り出された一対の無機基板10は、それが製品となるので、再度切り出されない。この内容は、上記実施形態に適用することができる。また、この例では、図2に示すカバーシール材16が省略されている。流路56に隣接して一対の無機基板10の最も端部側に位置する有機シール材12は、介在シール材14であって、封止空間20を封止しない外側シール材24である。この内容も、上記実施形態に適用することができる。
【0073】
図10は、本実施形態の変形例4に係る中間製品を示す図である。この例では、流路56に隣接して一対の無機基板10の最も端部側に位置する外側シール材としての有機シール材70の形状が、図9に示す変形例3と異なる。つまり、図9の例では、一対の無機基板10の周縁部を避けるように有機シール材12aが配置されているのに対して、図10の例では、一対の無機基板10の周縁に至るように有機シール材70が配置されている。その他の内容は、上記変形例3で説明した内容が該当する。
【0074】
図11は、本実施形態の変形例5に係る中間製品を示す図である。この例では、一対の無機基板10の最も端部側に位置する外側シール材としての有機シール材72の形状が、図9に示す変形例3と異なる。つまり、図9の例とは異なり、図11の例では、最も外側に位置する外側シール材としての有機シール材72が、所定の領域を囲むように形成されている。また、内側シール材及び外側シール材のいずれにも該当しない有機シール材74も、所定の領域を囲むように形成されている。その他の内容は、上記変形例3で説明した内容が該当する。
【0075】
図12は、本実施形態の変形例6に係る中間製品を示す図である。この例では、無機基板10を複数の切断ラインLに沿って切断するが、全ての切断ラインLに沿って流路76が形成されるわけではない点で、上記実施形態とは異なる。流路76は、複数の切断ラインLのうち少なくとも1つを除く切断ラインLに沿って形成される。また、流路76は、無機基板10の端から端に至るようには形成されていない。すなわち、流路76は、無機基板10の端部を避けて形成されている。詳しくは、内側シール材78は無機基板10の端部を避けて形成されており、外側シール材80も無機基板10の端部を避けて形成されている。したがって、流路76は、切断ラインLの一部にのみ形成される。このような流路76にエッチング液を侵入させて、切断ラインLの一部のみに溝を形成する。溝の形成された領域ではそれに沿って無機基板10をスクライビングなどの方法で切断する。溝の形成されない領域では、溝なしで従来通りの方法で無機基板10を切断する。この例では、切断ラインLは封止空間20を横切るようにも予定されており、この点は上記実施形態又は他の変形例にも適用可能である。その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0076】
図13は、本実施形態の変形例7に係る中間製品を示す図である。この例では、1つの切断ラインLに、複数の流路82が相互に連通しないように形成されている。それぞれの流路82は、無機基板10の端に開口84を有して外部と連通している。図13の例では、1つの切断ラインL上に、一対の流路82が、開口84が相互に反対方向を向くように形成されている。それぞれの流路82は、主路86と分岐路88を含み、主路86が切断ラインLに沿って延びている。分岐路88は、主路86から交差する方向に延びており、主路86の開口18とは別の開口90を有している。すなわち、1つの流路82は、複数の開口84,90を有しており、これら全ての開口84,90に接続されるように形成されている。
【0077】
封止空間92は、内側シール材94とカバーシール材96によって封止されている。すなわち、内側シール材94は、封止空間92を断続的に囲んでおり、封止空間92の開口98を形成している。この開口98をカバーシール材96が塞いでいる。内側シール材94によって、封止空間92は、1つ又は複数(図13では左右に2つ)の開口98を有する。この開口98は、液晶の注入口として利用される。流路82は、封止空間92の開口98を通らないように形成されている。したがって、封止空間92の開口98には溝は形成されない。
【0078】
この中間製品を使用して本実施形態に係る方法を適用した場合、カバーシール材96によって蓋がれた封止空間92にはエッチング液が入らず、流路82に沿って溝が形成される。溝は、切断ラインLに沿って無機基板10の端から他の端までは形成されず、その区間の一部だけに形成される。このような溝であっても、これを利用することで切断プロセスは容易になる。切断プロセスの終了後、カバーシール材96を除去して、内側シール材94の切れ目から形成された開口98から液晶を注入して、最終製品を得ることができる。
【0079】
図14は、本実施形態の変形例8に係る中間製品を示す図である。この例では、有機シール材100は、一対の無機基板10の両方に密着するように相互に間隔をあけて配置された一対の全密着部102を含む。図14の例では、それぞれの全密着部102は、少なくとも1層の有機膜104の一部と接着部106とによって構成されている。少なくとも一層の有機膜104が一方の無機基板10に密着し、接着部106が他方の無機基板10に密着し、有機膜104と接着部106は密着している。接着部106は封止空間108に隣接している。有機シール材100は、一対の全密着部102の間に配置されて一対の無機基板10の一方との接触を避けて他方に密着する半密着部110を含む。それぞれの全密着部102の少なくとも一部(例えば接着部106)と半密着部110は一体的に形成され、全密着部102の残りの部分(例えば少なくとも1層の有機膜104)に半密着部110は密着している。一対の全密着部102の間であって、半密着部110が接触しない無機基板10と半密着部110との間には、流路112が形成される。なお、図14は、一対の全密着部102及び半密着部110の長さ方向に直交する断面を示す図である。
【0080】
図15は、変形例8に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。流路112には、一対の無機基板10の一方の表面が露出するので、この露出する表面を有する無機基板10には、エッチング液によって溝114を形成することができる。これに対して、他方の無機基板10は、有機シール材100によって覆われているため、エッチング液にさらされず、溝は形成されない。こうして、一対の無機基板10の一方のみに溝114を形成することができる。さらに、溝114の形成された無機基板10を、溝114が形成された面とは反対の面からスクライビングなどによって切断する。この例について、その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0081】
図16は、本実施形態の変形例9に係る中間製品を示す図である。この例では、有機シール材116は、一方の無機基板10に積層された少なくとも1層の第1有機膜118の一部を含む。図16の例では、上側の無機基板10の下にブラックマトリクスを構成する第1有機膜118aと、その下のオーバーコートを構成する第1有機膜118bと、一対の無機基板10の間隔を確保するためのスペーサを構成する第1有機膜118cが設けられている。また、有機シール材116は、他方の無機基板10に積層された少なくとも1層の第2有機膜120の一部を含む。そして、少なくとも1層の第1有機膜118の一部と、少なくとも1層の第2有機膜120の一部とが接合(例えば密着)している。その他の内容は、上記実施形態(特に図3参照)で説明した内容が該当する。
【0082】
図17は、変形例9に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。流路122には、一対の無機基板10の両方の表面が露出するので、両方の無機基板10にエッチング液によって溝123を形成することができる。さらに、図17には、一方の無機基板10のみをスクライビングなどによって切断した例が示してあり、この内容は上記実施形態及び他の変形例にも適用可能である。この例について、その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0083】
図18は、本実施形態の変形例10に係る中間製品を示す図である。この例では、一対の無機基板124,126の厚みが異なっている。また、有機シール材128は、一方の無機基板124に積層された少なくとも1層の第1有機膜130の一部と、他方の無機基板126に積層された少なくとも1層の第2有機膜132の一部と、接着部125と、を含む。少なくとも1層の第1有機膜130の一部と少なくとも1層の第2有機膜132の一部とが、接着部125を介して接合されている。この例について、その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0084】
図19は、変形例10に係る中間製品を使用した表示装置の製造方法を説明する図である。流路134には、一対の無機基板124,126の両方の表面が露出するので、両方の無機基板124,126にエッチング液によって溝129を形成することができる。また、この例でも、エッチング液によって、無機基板124,126の外側表面をエッチングして薄くする。一対の無機基板10の厚みが異なっているため、薄い方の無機基板124の外側表面のエッチングを、溝129が無機基板124を貫通するまで続ける。溝129が封止空間136を連続的に囲んでいれば、この無機基板124はエッチングだけで切断することができる。これに対して、厚い方の無機基板126は、溝129が形成されるが、溝129が外側表面に貫通しないため切断されない。この例について、その他の内容は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0085】
[第2の実施形態]
図20は、本発明を適用した第2の実施形態に係る中間製品を示す図である。この例では、無機基板210の第1切断ラインLは、五角形以上の多角形を囲むように設定されている。多角形の領域内に封止空間212が位置する。第1切断ラインLに沿って、上述した実施形態で説明したように流路214を形成する。流路214は、封止空間212を囲む内路216と、内路216から分岐して開口218に接続する外路220と、を含む。内路216は多角形を描くように形成され、多角形の角部から外路220が延びている。外路220は、矩形の無機基板210の辺に直角に延びている。
【0086】
有機シール材222は、封止空間212を複数の分割封止空間215a,215bに区画するパーティション部217を有する。複数の分割封止空間215a,215bは、異なる大きさになっている。大きい方の分割封止空間215aは、液晶219が封入されている。小さい方の分割封止空間215bは、液晶219を駆動するための集積回路チップ221を搭載するための領域を含み、そのための図示しない回路が形成されている。
【0087】
図20に示す流路214にエッチング液を流すことで、流路214に沿って溝を形成する。有機シール材222は、流路214がパーティション部217を避けるように形成されているので、パーティション部217に沿った溝は形成されない。溝を、無機基板210を貫通するように形成すれば、スクライビングを行うことなく、多角形の形状に無機基板210を切り出すことができる。詳しくは、中間製品をエッチング液に浸漬して、一対の無機基板210の外側表面をエッチングして厚みを薄くすることで、対向面の溝を外側表面に貫通させることができる。
【0088】
図21は、切断された中間製品を説明する図である。図22は、図21に示す中間製品のXXII−XXII線断面図である。上記プロセスによって、図21に示すように、無機基板210は切断される。続いて、第2切断ラインLに沿って、一方の無機基板210を切断する。第2切断ラインLは、複数の分割封止空間215a,215bの少なくとも1つの外側に設定されている。例えば、パーティション部217に沿って、大きい方の分割封止空間215aの外側(つまり小さい方の分割封止空間215b側)で、一方の無機基板210を切断する。この切断は、スクライビングなど従来の方法を適用して行う。これにより、パーティション部217の外側で、一方の無機基板210の一部が切断片224となる。一方の無機基板210の切断片224は、有機シール材222によって他方の無機基板210に固定されている。この有機シール材222を除去するために、さらに、第3切断ラインLに沿って、両方の無機基板210を切断する。この切断もスクライビングなど従来の方法を適用して行う。こうして、切断片224を除去する。
【0089】
図23は、切断片224が除去された中間製品を示す図である。集積回路チップ221を搭載するための領域は露出しており、その後の工程で、集積回路チップ221を搭載することで、最終製品を得ることができる。なお、切断片224を有機シール材222から剥離することが可能であれば、第3切断ラインLに沿った両方の無機基板210の切断は省略してもよい。その他の詳細は、上記実施形態で説明した内容が該当する。
【0090】
図24は、第2の実施形態に係る中間製品の変形例を示す図である。図25は、図24に示す中間製品のXXV−XXV線断面図である。図26は、図24に示す中間製品のXXVI−XXVI線断面図である。有機シール材322は、パーティション部316を含む。本変形例に係る中間製品は、流路314がパーティション部316を通る点で、上記第2の実施形態と異なる。パーティション部316では、流路314が、一対の無機基板310の一方のみの面及び有機シール材322で区画されている。パーティション部316の詳細は、図20を参照して説明した内容が該当する。なお、封止空間312の全体を囲む部分では、流路314が、一対の無機基板310の両方の面及び有機シール材322で区画されている。この変形例でも、上記第2の実施形態と同様に、封止空間312は複数の分割封止空間315a,315bに区画されている。第2の実施形態とは異なり、封止空間312を囲む有機シール材322のうち、小さい方の分割封止空間315bに隣接する部分324(パーティション部316は含まれない)は、それ以外の部分よりも幅が狭くなっている。
【0091】
図27及び図28は、第2の実施形態の変形例に係る表示装置の製造方法を説明する図である。この変形例では、図27に示すように、流路314がパーティション部316を通るので、エッチング液によって流路314に露出する一方の無機基板310に溝326を形成する。この例では、溝326が無機基板310を貫通することで、エッチングのみで無機基板310を切断する。詳しくは、エッチングのみによって、一対の無機基板310を多角形の平面形状を有するように切り出すとともに、一方の無機基板310の一部を切断する。その他の詳細は、上記第2の実施形態で説明した通りである。こうして、封止空間312を囲むように一対の無機基板310を切断する。また、パーティション部316では、一方の無機基板310のみを切断する。
【0092】
パーティション部316で切断された一方の無機基板310の切断片322は、有機シール材322で他方の無機基板310に固定されているが、この部分324での有機シール材322は上述したように幅が狭くなっている。したがって、切断片322の剥離がしやすくなっており、この切断片322を剥離することで、図28に示すように、集積回路チップ320を搭載するための領域を露出させることができる。
【0093】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0094】
10 無機基板、12 有機シール材、12a 有機シール材、12b 有機シール材、12c 有機シール材、14 介在シール材、16 カバーシール材、18 開口、20 封止空間、22 内側シール材、24 外側シール材、26 第1部分、28 第2部分、30 有機膜、30a 有機膜、30b 有機膜、32 接着部、34 無機膜、36 製品シール材、38 液晶、40 ゲート電極、42 ゲート絶縁膜、44 半導体層、46 ソース電極、47 有機絶縁膜、48 ドレイン電極、50 保護絶縁層、52 画素電極、54 共通電極、55 層間絶縁膜、56 流路、58 エッチング液、60 溝、62 スリット、64 製品シール材、66 開口、68 液晶、70 有機シール材、72 有機シール材、74 有機シール材、76 流路、78 内側シール材、80 外側シール材、82 流路、84 開口、86 主路、88 分岐路、90 開口、92 封止空間、94 内側シール材、96 カバーシール材、98 開口、100 有機シール材、102 全密着部、104 有機膜、106 接着部、108 封止空間、110 半密着部、112 流路、114 溝、116 有機シール材、118 第1有機膜、118a 第1有機膜、118b 第1有機膜、118c 第1有機膜、120 第2有機膜、122 流路、123 溝、124 無機基板、125 接着部、126 無機基板、128 有機シール材、129 溝、130 第1有機膜、132 第2有機膜、134 流路、136 封止空間、210 無機基板、212 封止空間、214 流路、215a 分割封止空間、215b 分割封止空間、216 内路、217 パーティション部、218 開口、219 液晶、220 外路、221 集積回路チップ、222 有機シール材、224 切断片、310 無機基板、312 封止空間、314 流路、315a 分割封止空間、315b 分割封止空間、316 パーティション部、320 集積回路チップ、322 有機シール材、322 切断片、324 部分、326 溝、L 切断ライン、L 切断ライン、L 第1切断ライン、L 第2切断ライン、L 第3切断ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する一対の無機基板を有し、有機シール材によって前記一対の無機基板の間に封止空間が形成された中間製品を用意する工程と、
前記封止空間の外側で前記一対の無機基板を切断する工程と、
を含み、
前記一対の無機基板の対向面の少なくとも一方には、前記封止空間内に、画像表示のための回路が形成され、
前記中間製品は、前記封止空間の外側に、前記一対の無機基板の少なくとも一方の面及び前記有機シール材で区画された流路を有し、
前記一対の無機基板を切断する工程は、前記流路に無機材料に対するエッチング液を侵入させ、前記流路に沿って前記一対の無機基板の前記少なくとも一方の面をエッチングして溝を形成することを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記溝の形成は、前記エッチング液に前記中間製品を浸漬して行い、
前記エッチング液によって、前記一対の無機基板の相互に反対側を向く面をそれぞれエッチングして、前記一対の無機基板を薄くすることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材によって、複数の前記封止空間が形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられる介在シール材と、前記一対の無機基板の端面に設けられるカバーシール材と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記封止空間に隣接する内側シール材と、前記内側シール材が囲む前記封止空間の外側に前記内側シール材から間隔をあけて分離された外側シール材と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の両方に密着するように相互に間隔をあけて配置された一対の全密着部と、前記一対の全密着部の間に配置されて前記一対の無機基板の一方との接触を避けて他方に密着する半密着部と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部と、前記少なくとも1層の有機膜の前記一部に積層されて前記一対の無機基板を接着する接着部と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、を含み、
前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが接合されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、接着部と、を含み、
前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが、前記接着部を介して接合されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記一対の無機基板を切断する工程で、前記溝が形成された前記面とは反対の面を、前記溝に沿ってスクライビングすることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記エッチングによって、前記溝を進行させて前記一対の無機基板の前記少なくとも一方を貫通させてスリットを形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載された表示装置の製造方法において、
前記封止空間を囲むように前記スリットを形成して、前記一対の無機基板の前記少なくとも一方を切断することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載された表示装置の製造方法において、
前記エッチングによって、前記一対の無機基板の両方を切断することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記一対の無機基板の間で、前記封止空間内に、製品にされる空間を囲む製品シール材が設けられ、
前記回路は、前記製品にされる前記空間に配置されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載された表示装置の製造方法において、
前記製品にされる前記空間には、前記製品シール材によって液晶が封止されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載された表示装置の製造方法において、
前記製品シール材は、前記製品にされる前記空間に液晶を注入するための開口が形成されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記封止空間に液晶が封入されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項20】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記封止空間を複数の分割封止空間に区画するパーティション部を有するように形成されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を避けるように形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載された表示装置の製造方法において、
前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を通るように形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載された表示装置の製造方法において、
前記パーティション部では、前記流路が、前記一対の無機基板の一方のみの前記面及び前記有機シール材で区画されるように形成され、
前記封止領域の全体を囲む部分では、前記流路が、前記一対の無機基板の両方の前記面及び前記有機シール材で区画されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項24】
相互に対向する一対の無機基板と、
前記一対の無機基板の間に封止空間を形成する有機シール材と、
を有し、
前記一対の無機基板の対向面の少なくとも一方には、前記封止空間内に、画像表示のための回路が形成され、
前記封止空間の外側に、前記一対の無機基板の少なくとも一方の面及び前記有機シール材で区画された流路を有することを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項25】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材によって、複数の前記封止空間が形成されることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項26】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項27】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間に設けられる介在シール材と、前記一対の無機基板の端面に設けられるカバーシール材と、を含むことを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項28】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記封止空間に隣接する内側シール材と、前記内側シール材が囲む前記封止空間の外側に前記内側シール材から間隔をあけて分離された外側シール材と、を含むことを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項29】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の両方に密着するように相互に間隔をあけて配置された一対の全密着部と、前記一対の全密着部の間に配置されて前記一対の無機基板の一方との接触を避けて他方に密着する半密着部と、を含むことを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項30】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部を含むことを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項31】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記一対の無機基板の間で前記封止空間の内側から外側に至るように形成された少なくとも1層の有機膜の一部と、前記少なくとも1層の有機膜の前記一部に積層されて前記一対の無機基板を接着する接着部と、を含むことを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項32】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、を含み、
前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが接合されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項33】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、一方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第1有機膜の一部と、他方の前記無機基板に積層された少なくとも1層の第2有機膜の一部と、接着部と、を含み、
前記少なくとも1層の第1有機膜の前記一部と前記少なくとも1層の第2有機膜の前記一部とが、前記接着部を介して接合されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項34】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記一対の無機基板の間で、前記封止空間内に、製品にされる空間を囲む製品シール材が設けられ、
前記回路は、前記製品にされる前記空間に配置されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項35】
請求項34に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記製品にされる前記空間には、前記製品シール材によって液晶が封止されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項36】
請求項34に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記製品シール材は、前記製品にされる前記空間に液晶を注入するための開口が形成されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項37】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記封止空間に液晶が封入されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項38】
請求項24に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記封止空間を複数の分割封止空間に区画するパーティション部を有するように形成されていることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項39】
請求項38に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を避けるように形成されることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項40】
請求項38に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記有機シール材は、前記流路が前記パーティション部を通るように形成されることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項41】
請求項40に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記パーティション部では、前記流路が、前記一対の無機基板の一方のみの前記面及び前記有機シール材で区画されるように形成され、
前記封止領域の全体を囲む部分では、前記流路が、前記一対の無機基板の両方の前記面及び前記有機シール材で区画されることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。
【請求項42】
請求項24から41のいずれか1項に記載された表示装置製造用の中間製品において、
前記一対の無機基板は、厚みが異なることを特徴とする表示装置製造用の中間製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−220578(P2012−220578A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83878(P2011−83878)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】