説明

表示装置の製造方法

【課題】簡便な手法により複数種の発光層を高精度に塗り分けることができ、優れた動画特性を得ることができる表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】この表示装置の製造方法は、電極11上に正孔輸送層13および赤色発光層14Rを形成する工程と、赤色発光層14R上に絶縁層22aを形成する工程と、絶縁層22a上にフォトレジスト21を形成し、フォトレジスト21をマスクに絶縁層22aおよび正孔輸送層13および赤色発光層14Rをドライエッチング法によりエッチングするエッチング工程と、エッチング工程後、赤色発光層14R上に残存した絶縁層22aを除去する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、大画面の有機ELディスプレイの製造に好適な表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機EL素子を用いた有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイは、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型ディスプレイで、バックライトが不要であることに加え、優れた色再現性や高コントラスト、動画に適した応答性、広視野角などの優れた特徴を有している。
【0003】
このような優れた特徴を有する有機ELディスプレイは、フラットパネルディスプレイとして理想的な特性を有しており、2mm以下の厚みで、1インチから40インチサイズの高画質および高視認性のディスプレイを実現することができる。
【0004】
しかしながら、液晶ディスプレイとの競合も相まって、大面積基板への展開、消費電力の低減、信頼性の向上、コストの低減などの課題がある。特に、大面積基板への展開が非常に重要な課題となっている。この際に問題となるのが、フルカラー化のための光の三原色(RGB)を発光するRGB画素を形成する方法である。
【0005】
RGB画素を形成する方法としては、(1)RGBの発光層を平面的に配置する塗り分け法、(2)青色発光を蛍光変化する色変換法、(3)白色発光をカラフィルターで三原色に分けるカラーフィルター法などが提案されている。
【0006】
(2)の色変換法や(3)のカラーフィルター法では、色純度が悪いことや輝度の低下を招くなどの問題があるため、最先端のディスプレイデバイスの性能を満足できない。(1)の塗り分け法を用いた場合には、発光画素のミクロ化に加えて、複数種の発光層を高精度に塗り分けて基板上に製膜する塗分け技術が必要となる。
【0007】
複数種の発光層を塗り分ける技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、マスクの開口に1色目の有機EL素子を形成した後、別の開口にて2色目の有機EL素子を設けるように、マスクを変更する方法が提案されている。この方法は単純ではあるが、多色エリア分け有機EL素子の作製には極めて有効である。
【0008】
【特許文献1】特許第2734464号公報
【0009】
また、特許文献2では、特許文献1に記載されている方法を発展させ、周期的に微小開口を設けたマスクを1色の発光層を形成するごとに画素ピッチ分だけ移動し、2色、3色目の発光層を製膜する方法が提案されている。この方法では、発光層の相互の間に有機層が存在しない場合に、絶縁層は、陰極と透明電極の短絡を防ぐとともに、画素の形状を定める重要な役割を有する。
【0010】
【特許文献2】特開平8−227276号公報
【0011】
さらに、特許文献3では、発光層上にレジストをパターニングした後、エッチングを行い、O2プラズマアッシングによるレジストの除去を行うことで、発光層のパターニングを行う技術が開示されている。
【0012】
さらに、インクジェットのヘッドから有機材料の溶液やRGBの色素をITO(Indium Tin Oxide)電極に落としていくことで、RGBを塗り分けるインクジェット法も、有機材料のロスがなく、有機材料の利用効率を高めることができるので有効である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1および特許文献2で提案されているマスクによる蒸着塗り分けでは、大型マスクに密着させることが困難な上、マスク上に堆積する有機物を除去する必要があるなど、量産面で課題がある。
【0014】
また、特許文献3の技術では、レジストの除去をO2プラズマアッシングで行うので、発光層と、発光層上に形成されたレジストとの選択比がとれず、レジストの除去の際に、発光層も除去されてしまうため、複数種の発光層を高精度に塗り分けることができない。
【0015】
さらに、インクジェット法を用いた塗り分けでは、インクジェットでRGBを形成する場合には、バンクと呼ばれる土手構造を作製し、その中にインクジェットでインクを滴下する必要があり、さらに、ITO電極上を親水性にし、バンクを疎水性にするための表面処理を行う必要がある。
【0016】
このように、従来の塗り分け技術は、特性の問題やそのプロセスの煩雑さから、実用的な技術とはいい難く、簡便な手法により複数種の発光層を高精度に基板上に塗分けることができる技術が求められている。
【0017】
したがって、この発明の目的は、簡便な手法により複数種の発光層を高精度に塗り分けることができ、優れた動画特性を得ることができる表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために、この発明は、
電極上に発光層を含む1以上の層からなる有機層を形成する工程と、
有機層上に絶縁層を形成する工程と、
絶縁層上にフォトレジストを形成し、フォトレジストをマスクに絶縁層および有機層をドライエッチング法によりエッチングするエッチング工程と、
エッチング工程後、有機層上に残存した絶縁層を除去する工程と
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0019】
この発明では、電極上に発光層を含む1以上の層からなる有機層を形成する工程と、有機層上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層上にフォトレジストを形成し、フォトレジストをマスクに絶縁層および有機層をドライエッチング法によりエッチングするエッチング工程と、エッチング工程後、有機層上に残存した絶縁層を除去する工程とを含むので、簡便な手法で複数種の発光層を高精度に塗り分けることができ、優れた動画特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、簡単な手法により複数種の発光層を高精度に塗り分けることができ、優れた動画特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<表示装置の構成>
図1は、この発明の一実施形態による表示装置の製造方法が適用できる表示装置の一例の構成を示す断面図である。
【0023】
この表示装置は、発光した光を基板10側から取り出す構成のいわゆるボトムエミッション型であり、基板10上に設けられた第1電極11と、第2電極18との間に、第1電極11側から正孔注入層12と、正孔輸送層13と、発光層14と正孔ブロッキング層15と電子輸送層16と電子注入層17とがこの順で挟まれた構造を有する。
【0024】
基板10は、可視領域に吸収の無い透明基板で構成されており、例えば、ソーダライム基板などのガラス基板やプラスチック基板などを用いることができる。
【0025】
第1電極(アノード)11は、可視領域に吸収が無く導電性の高い透明電極である。第1電極11は、発光層14に正孔を注入する電極であり、所定の位置で電圧−電流が印加できるように必要に応じてパターン化されている。第1電極11の材料としては、例えば、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)などの酸化物などを用いることができる。
【0026】
正孔注入層12および電子注入層17は、第1電極11および第2電極18から電子および正孔をスムーズに受け入れるために設けられたものである。正孔輸送層13および電子輸送層16は、電子および正孔を発光層14にスムーズに移動させるために設けられたものである。正孔ブロッキング層15は、発光特性を劣化する正孔の侵入を抑制するために設けられたものである。正孔注入層12、正孔輸送層13、正孔ブロッキング層15および電子輸送層16には、それぞれの機能に適した材料を用いることができる。
【0027】
カラー発光を行うために、赤色を発光する赤色発光層14Rと、緑色を発光する緑色発光層14Gと、青色を発光する青色発光層14Bと、が複数配設されている。赤色発光層14Rには、赤の波長の光を発光するのに適した有機材料を用いることができ、緑色発光層14Gには、緑の波長の光を発光するのに適した有機材料を用いることができ、青色発光層14Bには、青の波長の光を発光するのに適した有機材料を用いることができる。
【0028】
第2電極(カソード)18は、発光層14に電子を注入する電極である。第2電極18は、基板10の配線と電気的に接続している。第2電極18の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、MgAg合金などを用いることできる。
【0029】
表示装置の一例では、第1電極11と第2電極18との間に、電源19を通じて必要な電圧−電流を印加すると、第1電極11から正孔が第2電極から電子が発光層14に注入され、発光層14で正孔と電子が再結合することにより発光する。
【0030】
なお、表示装置の一例は、第1電極11/正孔注入層12/正孔輸送層13/発光層14/正孔ブロッキング層15/電子輸送層16/電子注入層17/第2電極18の構造を有するが、表示装置の構造はこれに限定されるものではない。例えば、表示装置は、第1電極11/発光層14/第2電極18、第1電極11/正孔輸送層13/発光層14/電子輸送層16/第2電極18などの構造を有するようにしてもよい。
【0031】
<表示装置の製造方法>
次に、この発明の一実施形態による表示装置の製造方法について、図2〜図5を参照しながら説明する。表示装置の製造方法の説明では、第1電極11/正孔輸送層13/発光層14/電子輸送層16/電子注入層17/第2電極18の構造を有する表示装置を製造する例について説明する。なお、図1と共通する部位に対しては同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0032】
<赤色発光層14Rのパターニング>
図2(a)に示すように、基板10上に第1電極11と正孔輸送層13と赤色発光層14Rとをこの順で形成する。第1電極層11は、必要に応じて塩化水素などの無機酸によって、フォトリソグラフィー法などにより形成されたマスクを用いてパターン加工されたものであってもよい。第1電極11、正孔輸送層13、赤色発光層14Rの形成は、例えば、真空蒸着法などで行う。
【0033】
図2(b)に示すように、さらに、絶縁層22aを赤色発光層14R上に、回転塗布法などにより形成した後、フォトリソグラフィー法によって絶縁層22aをエッチング加工できるように、フォトマスクとしての所望のパターンのフォトレジスト21を絶縁層22a上に形成する。絶縁層22aには、フォトレジスト21との選択比がとれる材料を用いる。中でも、フォトレジスト21とエッチングの選択比が大きくとれる材料であり、後の工程での除去が容易である点から、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜およびシリコン酸窒化膜のうちの少なくとも1種が好ましい。絶縁層22a上に形成したフォトレジスト21により、絶縁層22は、容易にパターン加工可能となる。
【0034】
図2(c)に示すように、フォトレジスト21をマスクにして、絶縁層22aをドライエッチングにより加工する。
【0035】
図2(d)に示すように、絶縁層22aのエッチング加工が終了した後、ドライエッチングに用いる反応性ガスを切り替えて、正孔輸送層13および赤色発光層14Rをドライエッチングにより加工する。このとき、第1電極11により、垂直方向のエッチングは停止するので、オーバーエッチングにより基板全面に渡って均一な加工特性が確保できる。よって、大面積の基板を用いた場合でも、優れた加工特性を確保できる。
【0036】
例えば、反応性ガスは、(絶縁層22aの加工時:少なくともフルオロ炭素系ガスおよび酸素系ガスを含むガス)→(正孔輸送層13および赤色発光層14Rの加工時:酸素系ガスおよび不活性ガス)などのように切り替える。ここで、フルオロ炭素系ガスとしては、CF4ガス、C26ガス、CHF3ガス、C66ガスなどが挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0037】
なお、オーバーエッチングの工程で、例えば、反応性ガスの酸素の濃度を減らすように条件を切り替えてもよい。このように、条件を切り替えると、正孔輸送層13および赤色発光層14Rが横方向でエッチングされる量を低減できるので、より優れた加工特性を得ることができる。
【0038】
正孔輸送層13および赤色発光層14Rのエッチング加工では、正孔輸送層13および赤色発光層14Rをほぼ垂直に加工することができる。また、エッチング反応は、第1電極11に到達した段階で終了し、被加工材との高いエッチングの選択性が確保されるので大面積基板全面にわたって良好なエッチング加工が可能となる。フォトレジスト21が同時に除去され、フォトレジスト21が除去された後は、発光層14R上に残存している絶縁層22のパターンがエッチングのマスクとなる。
【0039】
なお、絶縁層22a上のフォトレジスト21が残留している場合には、後で説明する他の色の発光層のパターニング工程で絶縁層22aを除去できない問題が生じるので、絶縁層22a上のフォトレジスト21を除去する必要がある。これに対して、この製造方法では、正孔輸送層13および赤色発光層14Rをドライエッチングする工程において、絶縁層22a上のフォトレジスト21が同時に除去されるので、プロセスの簡便さの点で優れている。
【0040】
<緑色発光層14Gのパターニング>
図3(e)に示すように、赤色発光層14R上に残存している絶縁層22aのパターン上および第1電極11上に、例えば真空蒸着法などで、正孔輸送層13と緑色発光層14Gとをこの順に形成する。
【0041】
図3(f)に示すように、さらに、絶縁層22bを緑色発光層14G上に、回転塗布法などにより形成した後、絶縁層22bをエッチング加工できるように、フォトリソグラフィー法によって、絶縁層22b上に所望のパターンのフォトレジスト21を形成する。
【0042】
図3(g)に示すように、フォトレジスト21をマスクにして、絶縁層22bをドライエッチングにより加工する。
【0043】
図3(h)に示すように、ドライエッチングに用いる反応性ガスを切り替えて、正孔輸送層13および緑色発光層14Gをドライエッチングにより加工する。例えば、反応性ガスは、(絶縁層22bの加工時:少なくともフルオロ炭素系ガスおよび酸素系ガスを含むガス)→(正孔輸送層13および緑色発光層14Gの加工時:酸素系および不活性ガス)などのように切り替える。
【0044】
このとき、第1電極11により、垂直方向のエッチングは停止するので、オーバーエッチングにより基板全面に渡って均一な加工特性が確保できる。よって、大面積の基板を用いた場合でも、優れた加工特性を確保できる。また、先の工程で形成した赤色発光層14Rおよび正孔輸送層13のパターンは、パターン上部に絶縁層22aがマスクとして存在するのでエッチングされないで保護される。
【0045】
なお、オーバーエッチングの工程で、例えば、反応性ガスの酸素の濃度を減らすように条件を切り替えてもよい。このように、条件を切り替えると、赤色発光層14R、緑色発光層13、正孔輸送層13が横方向でエッチングされる量を低減できるので、より優れた加工特性を得ることができる。
【0046】
正孔輸送層13および緑色発光層14Gのエッチング加工では、正孔輸送層13および緑色発光層14Rをドライエッチングによりほぼ垂直に加工することができる。エッチング反応は、第1電極11に到達した段階で終了し、被加工材との高いエッチングの選択性が確保されるので大面積基板全面にわたって良好なエッチング加工が可能となる。また、フォトレジスト21が同時に除去され、フォトレジスト21が除去された後は、緑色発光層14G上に残存している絶縁層22bのパターンがエッチングのマスクとなるので、プロセスの簡便さの点で優れる。
【0047】
さらに、先の工程で形成した赤色発光層14Rおよび正孔輸送層13のパターン上部の絶縁層22a上では、新たに製膜した緑色発光層14Gおよび正孔輸送層13が効率的に除去された後、絶縁層22aでエッチングが進行する。よって、オーバーエッチングの時間を十分に確保することができるので、大面積基板でも高い均一性でパターンを形成することができる。
【0048】
<青色発光層14Bのパターニング>
図4(i)に示すように、赤色発光層14R上に残存している絶縁層22aのパターン、緑色発光層14G上に残存している絶縁層22bのパターン、および第1電極11上に、例えば、真空蒸着法などで、正孔輸送層13と青色発光層14Bとをこの順に形成する。
【0049】
図4(j)に示すように、さらに、絶縁層22cを青色発光層14B上に、回転塗布法などにより形成した後、フォトリソグラフィー法によって絶縁層22cをエッチング加工ができるように、絶縁層22c上に所望のパターンのフォトマスク21を形成する。
【0050】
図4(k)に示すように、フォトマスク21をマスクにして、絶縁層22cをドライエッチングにより加工する。
【0051】
図4(l)に示すように、ドライエッチングに用いる反応性ガスを切り替えて、正孔輸送層13および青色発光層14Bをドライエッチングにより加工する。例えば、反応性ガスは、(絶縁層22cの加工時:少なくともフルオロ炭素系ガスおよび酸素系ガスを含むガス)→(正孔輸送層13および青色発光層14Rの加工時:酸素系および不活性ガス)などのように切り替える。
【0052】
このとき、第1電極11により、垂直方向のエッチングは停止するので、オーバーエッチングにより基板全面に渡って均一な加工特性が確保できる。よって、大面積の基板を用いた場合でも、優れた加工特性を確保できる。
【0053】
なお、オーバーエッチングの工程で、例えば、反応性ガスの酸素の濃度を減らすように条件を切り替えてもよい。このように、条件を切り替えると、赤色発光層14R、緑色発光層13、青色発光層14R、正孔輸送層13が横方向でエッチングされる量を低減できるので、より優れた加工特性を得ることができる。
【0054】
また、先の工程で形成した赤色発光層14Rおよび正孔輸送層13のパターンは、パターン上部に絶縁層22aがマスクとして存在するために保護される。先の工程で形成した緑色発光層14Gおよび正孔輸送層13のパターンは、パターン上部に絶縁層22bがマスクとして存在するために保護される。
【0055】
正孔輸送層13および青色発光層14Bのエッチング加工では、正孔輸送層13および青色発光層14Bをドライエッチングによりほぼ垂直に加工することができる。また、エッチング反応は、第1電極11に到達した段階で終了し、被加工材との高いエッチングの選択性が確保されるので大面積基板全面にわたって良好なエッチング加工が可能となる。さらに、フォトレジスト21が同時に除去され、フォトレジスト21が除去された後は、青色発光層14B上に残存している絶縁層22cのパターンがエッチングのマスクとなるので、プロセスの簡便さの点で優れる。
【0056】
さらに、先の工程で形成した赤色発光層14Rおよび正孔輸送層13のパターン上部の絶縁層22a上、並びに、緑色発光層14Gおよび正孔輸送層13の絶縁層22b上では、新たに製膜した青色発光層14Bおよび正孔輸送層13が効率的に除去され、赤色発光層14R上の絶縁層22aおよび緑色発光層14G上の絶縁層22bでエッチングが進行する。よって、オーバーエッチングの時間を十分に確保することができるので、大面積基板でも高い均一性でパターンを形成することができる。
【0057】
<絶縁層22a〜絶縁層22cの除去>
図5(m)に示すように、赤色発光層14R上に形成されている絶縁層22a、緑色発光層14G上に形成されている絶縁層22b、青色発光層14B上に形成されている絶縁層22cを、例えば、ウエットエッチングなどの化学的エッチング法により除去する。これにより、赤色発光層R、緑色発光層G、青色発光層Bの良好なパターンが形成される。なお、ドライエッチングでも除去が可能であるが、反応副生成物が生成され、これを除去する工程がさらに必要となることが懸念されるので、ウエットエッチングが好ましい。
【0058】
ウエットエッチングは、発光層14や正孔輸送層13と大きくエッチングの選択比がとれるフッ酸系、フッ酸アンモニウム系などの無機系材料の水溶液を用いて行うことが好ましい。有機系の薬剤を用いる場合には、有機系の薬剤に正孔輸送層13および発光層14などの有機層が可溶であるため、いわゆるパターン崩れの発生や発光層14内のゲスト材料の流出などによりデバイスの発光特性が著しく劣化することが懸念される。これに対して、無機系材料の水溶液を用いる場合には、発光層14などの有機層にダメージを与えることがなく除去が可能であり、高い発光特性を有する表示装置を得ることができる。
【0059】
<電子輸送層16、電子注入層17、第2電極18の形成>
図5(l)に示すように、第1電極11および発光層14上に、電子輸送層16、電子注入層17、第2電極18をこの順に、例えば、真空蒸着法などにより形成する。以上により、表示装置を製造することができる。
【0060】
以上説明したこの発明の一実施形態による表示装置の製造方法では、簡便な手法で高い発光特性や優れた動画特性を有する大画面の表示装置を製造することができる。この発明の一実施形態による表示装置の製造方法では、発光層のパターニングにおいて、有効な画素エリアがマスクによって保護されているので、材料の劣化が少なく優れた発光特性や優れた動画特性を有する表示装置が得られる。
【実施例】
【0061】
さらに、この発明の具体的な実施例について図面を参照して説明する。ただし、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
実施例1は、特に、絶縁層にシリコン酸化膜を用い、絶縁層の加工にCF4/O2系ガスを用い、発光層および正孔輸送層の加工にO2/Ar系ガスを用いて製造した具体例である。以下、図6を参照しながら、実施例1について説明する。
【0063】
図6(a)に示すように、ソーダガラス基板110上に導電層として厚さ100nmのITO層111をスパッタ法で形成した。なお、実施例1では、ITO層111のパターン化は行わなかった。
【0064】
さらに、正孔輸送層112を真空蒸着法により、以下の条件で形成した。
【0065】
(正孔輸送層112形成条件)
原料 :N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5 torr
【0066】
正孔輸送層112を形成した後に、発光層113Rを真空蒸着法により、以下の条件で形成した。
【0067】
(発光層113R形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
ゲスト材料:ルブレン
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−5 torr
【0068】
次に、図6(b)に示すように、発光層113R上に回転塗布法により絶縁膜としてシリコン酸化膜114aを形成した。その後、エッチング加工ができるようにするために、フォトリソグラフィー法により、発光層113R上にフォトレジスト115のパターンを形成した。
【0069】
次に、図6(c)に示すように、フォトレジスト115をマスクにしてシリコン酸化膜114aを、例えば、以下の条件でドライエッチングにより加工した。
【0070】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :CF4/O2=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:300W
【0071】
基板全面に渡り、シリコン酸化膜114aのエッチング加工が終了した後、以下の条件に切り替えて、さらに、発光層113Rおよび正孔輸送層112をドライエッチングにより加工した。
【0072】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :O2/Ar=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:100W
【0073】
次に、図6(d)に示すように、正孔輸送層112および発光層113Gを真空蒸着法により、以下の条件で、発光層113上に残存した絶縁層114および電極層111上に形成した。
【0074】
(正孔輸送層112形成条件)
原料 :N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5torr
【0075】
(発光層113G形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
ゲスト材料:キナクリドン
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−5torr
【0076】
さらに、発光層113G上に回転塗布法により絶縁膜としてシリコン酸化膜114bを形成した。その後、フォトリソグラフィー法により発光層114G上にエッチング加工ができるようにフォトレジスト115のパターンを形成した。
【0077】
図6(e)に示すように、フォトレジスト115をマスクにしてシリコン酸化膜114bを、例えば、以下の条件でドライエッチングにより加工した。
【0078】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :CF4/O2=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:300W
【0079】
基板全面に渡り、シリコン酸化膜114bのエッチング加工が終了した後、以下の条件に切り替えて、さらに、発光層113Gおよび正孔輸送層112をドライエッチングにより加工した。
【0080】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :O2/Ar=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:100W
【0081】
図6(f)に示すように、発光層113Bの形成条件を以下の条件として、図6(d)〜図6(e)と同様のプロセスを繰り返して発光層113Bのパターンを形成した後、発光層113R、発光層113G、発光層113B上のシリコン酸化膜を化学的エッチング法により除去した。
【0082】
(発光層113B形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
:ゲスト材料:ジトルイルビニルビフェニル(DPVB)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−6torr
【0083】
次に、図6(g)に示すように、電子輸送層122、電子注入層123および電極層124を真空蒸着法により、以下の条件で形成して、表示装置を完成した。
【0084】
(電子輸送層122形成条件)
原料 :キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5torr
【0085】
(電子注入層123形成条件)
原料 :LiF
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=300℃/1e−5torr
【0086】
(電極層124形成条件)
原料 :Al
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=300℃/1e−5torr
【0087】
<実施例2>
実施例2は、特に、絶縁層にシリコン窒化膜を用い、絶縁層の加工にCHF3/O2/Ar系ガスを用い、発光層および正孔輸送層の加工にO2/Heを用いて、表示装置を製造した具体例である。以下、図7を参照しながら実施例2について説明する。
【0088】
図7(a)に示すように、ソーダガラス基板210上に電圧−電流を印加する可視領域に吸収の無い導電層としてIZO層211をスパッタ法により150nm形成した。なお、実施例2では、IZO層211のパターン化は行わなかった。
【0089】
さらに、正孔輸送層212を以下の条件で、真空蒸着法により形成した。
【0090】
(正孔輸送層212形成条件)
原料 :4,4’,4’’−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5torr
【0091】
正孔輸送層212を形成した後に、発光層213Rを以下の条件で、真空蒸着法により形成した。
【0092】
(発光層213R形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
ゲスト材料:4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−5torr
【0093】
次に、図7(b)に示すように、発光層213R上に回転塗布法により絶縁膜としてシリコン窒化膜214aを形成した。その後、フォトリソグラフィー法により発光層213R上にエッチング加工が出来るようにフォトレジスト215のパターンを形成した。
【0094】
次に、図7(c)に示すように、フォトレジスト215をマスクにしてシリコン窒化膜214aを以下の条件でドライエッチングにより加工した。
【0095】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :CHF3/O2/Ar=100/8/10[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:300W
【0096】
基板全面に渡り、シリコン窒化膜214aのエッチング加工が終了した後、以下の条件に切り替えて発光層213Rおよび正孔輸送層212をドライエッチングにより加工した。
【0097】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :O2/He=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:100W
【0098】
次に、図7(d)に示すように、正孔輸送層216および発光層213Gをこの順で真空蒸着法により、以下の条件で、発光層213R上に残存したシリコン窒化膜214aおよびIZO層211上に形成した。
【0099】
(正孔輸送層212形成条件)
原料 :4,4’,4’’−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5torr
【0100】
(発光層213G形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III))
:ゲスト材料:4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−5torr
【0101】
さらに、発光層213G上に回転塗布法により絶縁膜としてシリコン窒化膜214bを形成した。その後、フォトリソグラフィー法により発光層213G上にエッチング加工ができるようにフォトレジスト215のパターンを形成した。
【0102】
次に、図7(e)に示したようにフォトレジスト215をマスクにしてシリコン窒化膜214bを以下の条件でドライエッチングにより加工した。
【0103】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :CHF3/O2/Ar=100/8/10[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:300W
【0104】
基板全面に渡り、シリコン窒化膜214bのエッチング加工が終了した後、以下の条件に切り替えて発光層213Gおよび正孔輸送層212をドライエッチングにより加工した。
【0105】
(加工条件)
装置 :マグネトロン型リアクティブイオンエッチング装置
ガス系 :O2/He=100/8[sccm]
圧力 :100mtorr
RF出力:100W
【0106】
図7(f)に示すように、発光層213Bの形成条件を以下の条件として、図7(d)〜図7(e)と同様のプロセスを繰り返し発光層213Bのパターンを形成した後、発光層213R、発光層213G、発光層213B上のシリコン窒化膜を化学的エッチング法により除去した。
【0107】
(発光層213B形成条件)
原料 :ホスト材料:キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
:ゲスト材料:ジトルイルビニルビフェニル(DPVB)
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=150℃/1e−6torr
【0108】
次に、図7(g)に示すように電子輸送層222、電子注入層223および電極層224を真空蒸着法により、以下の条件で形成することで、表示装置を完成した。
【0109】
(電子輸送層222形成条件)
原料 :キノリノールアルミ錯体(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム(III)(Alq3))
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=200℃/1e−5torr
【0110】
(電子注入層223形成条件)
原料 :LiF
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=300℃/1e−5torr
【0111】
(電極層224形成条件)
原料 :MgAg
蒸着条件:蒸着温度/蒸着圧力=300℃/1e−5torr
【0112】
以上により作製した実施例1〜実施例2では、簡便な工程で表示装置を製造することができ、製造した表示装置は、優れた発光特性および動画特性を有する。
【0113】
以上この発明の実施形態および実施例について説明したが、この発明は、上述したこの発明の実施形態および実施例に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0114】
例えば、発光層の発光色は、赤色、青色、緑色に限定されるものではない。また、異なる3色の発光層を形成する表示装置の製造について、説明したが、1色または2色の発光層や、4色以上の発光層を有する表示装置の製造にも適用可能である。
【0115】
また、例えば、上述の実施形態および実施例で挙げた数値、構造、材料、エッチングガスなどは、あくまで例に過ぎず、必要に応じて、これと異なる数値、構造、材料、エッチングガスなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の一実施形態による表示装置の製造方法が適用できる表示装置の一例の構成を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施形態による表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図3】この発明の一実施形態による表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図4】この発明の一実施形態による表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図5】この発明の一実施形態による表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図6】実施例1を説明するための工程図である。
【図7】実施例2を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0117】
10・・・基板
11・・・第1電極
12・・・正孔注入層
13・・・正孔輸送層
14・・・発光層
14R・・・赤色発光層
14G・・・緑色発光層
14B・・・青色発光層
15・・・正孔ブロッキング層
16・・・電子輸送層
17・・・電子注入層
18・・・第2電極
19・・・電源
21・・・フォトレジスト
22・・・絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上に発光層を含む1以上の層からなる有機層を形成する工程と、
上記有機層上に絶縁層を形成する工程と、
上記絶縁層上にフォトレジストを形成し、上記フォトレジストをマスクに上記絶縁層および上記有機層をドライエッチング法によりエッチングするエッチング工程と、
上記エッチング工程後、上記有機層上に残存した絶縁層を除去する工程と
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記エッチング工程において、上記電極をエッチング停止層としてエッチングすること
を特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記エッチング工程後、有機層上に残存した絶縁層上および上記電極上に、さらに、他の有機層を形成する工程と、
上記他の有機層上に絶縁層を形成する工程と、
上記他の有機層上に形成した絶縁層上に、フォトレジストを形成し、上記フォトレジストをマスクに上記他の有機層上に形成した絶縁層および上記有機層をドライエッチング法によりエッチングするエッチング工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記エッチング工程において、上記絶縁層のエッチング後、エッチング条件を切り替えて、上記有機層のエッチングを行うこと
を特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
上記絶縁層のエッチングが、少なくともフルオロ炭素系および酸素系ガスを用いて行われ、上記有機層のエッチングが、酸素系ガスおよび不活性ガスを用いて行われること
を特徴とする請求項4記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
上記有機層のエッチングの際に、オーバーエッチングを行うこと
を特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
上記絶縁層が、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜およびシリコン酸窒化膜のうちの少なくとも何れかであること
を特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
上記有機層上に残存した絶縁層を、ウエットエッチング法によりエッチング除去すること
を特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
上記エッチング除去が、無機系材料の水溶液を用いて行われること
を特徴とする請求項8記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
上記他の有機層を形成する工程と、上記他の有機層上に絶縁層を形成する絶縁層を形成する工程と、上記エッチング工程とを少なくとも2回以上繰り返すこと
を特徴とする請求項3記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−170336(P2009−170336A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8966(P2008−8966)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】