説明

表示装置の駆動方法、駆動回路およびそれを搭載した表示装置

【課題】各画素の発光素子をPWM制御する場合、画像の明るさを犠牲にせずに電源を効率的に設計すること。
【解決手段】それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示パネル10を駆動する駆動回路に於いて、データ書込部332〜33nは、画像データに記述された各発光素子の点灯レベルに対応したデューティ比で、各発光素子に所定の電圧を印加する。調整部322〜32nは、データ書込のための単位周期時間内にて、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を、その画素に流れる電流を平滑化するよう調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の発光素子をパルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)信号によって所望の点灯色を得る表示装置の駆動方法、駆動回路およびそれを搭載した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一種として、LED(Light Emitting Diode)や有機EL(electro-luminescence)などの発光素子をマトリクス状に配した表示パネルが用いられている。青色LEDの実用化などにより、256階調や1024階調のフルカラードットマトクリスLEDパネルも実用化されている。このような表示パネルの駆動方法の一つとして、所定の単位周期時間に対する点灯時間の比により点灯の明るさを調整するPWM制御方式がある。
【0003】
PWM制御方式に関し、特許文献1は以下の技術を開示する。パネルの1単位を構成する複数色のLEDの点灯時間の和のデューティ比が最大で100/nパーセント(但し、nは整数)以下のとき、各々のLEDの点滅順序を次のようにする。n単位を構成する複数色のLEDの特定のLEDの点灯から消灯に変化させると略同時に、次に点灯させるLEDを消灯から点灯に変化させ、上記パネルのn単位を構成する複数色のLEDを順次点灯制御する。これにより、特許文献1は電源装置のピーク電力と平均電力の差を少なくできるとしている。
【特許文献1】特開平11−119733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記パネルの1単位にて、瞬間的に点灯しているLEDは一つであるから、十分な明るさを得ることが難しい。このような、利用効率の高い電源設計を優先して画質の低下を許容するという手法は、高画質が要求される分野には適用しづらいものである。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高画質および電源の効率的設計の要請を両立させることができる表示装置の駆動方法、駆動回路およびそれを搭載した表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の表示装置の駆動方法は、それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示装置を駆動する方法であって、外部から与えられる画像データに記述された各発光素子の点灯レベルに対応したデューティ比で各発光素子に所定の電圧を印加するとき、データ書込のための単位周期時間内にて、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を、その画素に流れる電流を平滑化するよう調整する。
【0007】
この態様によると、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することにより、画像の明るさを犠牲にすることなく、電源を効率的に設計することができる。
【0008】
各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の重複期間を低減するよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整してもよい。各画素に含まれる複数の発光素子のうち、少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の開始時期を単位周期時間の始めに調整し、それ以外の少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整してもよい。それ以外の少なくとも一つの電圧印加期間の開始時期または終了時期を、他の複数の発光素子による各電圧印加期間の重複期間を回避するよう調整してもよい。これらの態様によると、各画素に流れる電流を可及的に平滑化することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、駆動回路である。この駆動回路は、それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示部を駆動する回路であって、外部から与えられる画像データに応じて、表示部のデータ線を駆動するデータ線駆動部と、外部から与えられる同期信号に応じて、表示部の走査線を駆動する走査線駆動部と、を備える。データ線駆動部は、画像データに記述された各発光素子の点灯レベルに対応したデューティ比で、各発光素子に所定の電圧を印加するデータ書込部と、データ書込のための単位周期時間内にて、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を、その画素に流れる電流を平滑化するよう調整する調整部と、を有する。「データ線駆動部」および「走査線駆動部」の少なくとも一方は、画像データや同期信号などに関して、ユーザ設定が可能な構成であってもよい。このユーザにはセットメーカを含んでもよい。
【0010】
この態様によると、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することにより、画像の明るさを犠牲にすることなく、電源を効率的に設計することができる。
【0011】
調整部は、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の重複期間を低減するよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整してもよい。各画素に含まれる複数の発光素子のうち、少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の開始時期を単位周期時間の始めに調整し、それ以外の少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整してもよい。画素は、赤、緑および青の発光素子を含んでもよく、調整部は、緑の発光素子における電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整してもよい。単位周期時間における各画素に流れる電流のピーク期間とボトム期間とが等しくなるよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整してもよい。「ビーク期間」を可及的に短くしてもよい。これらの態様によると、各画素に流れる電流を可及的に平滑化することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、表示装置である。この装置は、それぞれ発光効率の異なる複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示部と、表示部を駆動する上述した態様の駆動回路と、を備える。
【0013】
この態様によると、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することにより、画像の明るさを犠牲にすることなく、電源を効率的に設計することができる表示装置を実現することができる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システムおよびコンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高画質および電源の効率的設計の要請を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置100の構成を示す。表示装置100は、表示パネル10、電源20および駆動回路50を備える。駆動回路50は、データ線駆動部30およびおよび走査線駆動部40を備える。駆動回路50は、同一半導体基板上に集積化されてもよい。なお、電源20は駆動回路50に内蔵されていてもよい。表示パネル10は、複数の画素を備える。各画素110、120は、複数の発光素子を含む。例えば、フルカラーを表現することができるR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の発光素子112、114、116を含んでもよい。また、橙、白などの発光素子を追加的に用いてもよい。
【0017】
各発光素子112、114、116は、データ線と走査線とが直交する位置またはその近傍に設置され、パッシブマトリクス型の場合、その電極の一端がデータ線と接続され、他端が走査線と接続される。発光素子の一方の電極にデータ線から電圧が印加されている状態で、走査線がグランドに接地されると、発光素子に電流が流れて発光する。
【0018】
電源20は、電池または交流電源から整流して得た直流電圧をデータ線駆動部30に供給する。電源電圧は、所望の発光輝度、発光素子の発光効率、その素子間の発光効率比、および後述する電源電圧に対するPWM制御などを考慮して設定されてもよい。
【0019】
走査線駆動部40は、PCなどの外部制御装置から入力される同期信号sにもとづいて、表示パネル10に配されている走査線のうち、一番上の走査線から順にひとつを選択していく。そして、一番下の走査線まで選択すると、また一番上の走査線に戻って選択を続ける。パッシブマトリクス駆動の場合、選択された走査線がグランドに接地されることになる。したがって、選択されている走査線に対応した発光素子が発光することになる。一方、選択されていない走査線には、発光素子に電流が流れないよう逆バイアスをかけてもよい。
【0020】
上記同期信号sの周波数は、駆動回路50における仕様の上限と下限の範囲内にて、セットメーカなどのユーザにより自由に設定される。一般的に、周波数が高く設定されると動画像の追従性が向上し、スチールカメラで撮影した画像なども高画質に再生することができる。一方、周波数が低く設定されると、明るさを向上させることができる。
【0021】
データ線駆動部30には、上記外部制御装置から画像データiおよび同期信号sが入力される。また、電源20から表示パネル10に印加する電圧の供給を受ける。データ線駆動部30は、供給された画像データiを表示パネル10のデータ線に与える。R、G、Bの発光素子112、114、116を各画素110に設けている場合、R、G、Bの各画像データは、点灯レベルを256階調で表現するために8ビットのデジタルデータで記述されていてもよい。その場合、その諧調に対応した同期信号も外部から与えられてもよい。なお、外部からアナログ形式で画像データiが入力される場合、図示しないアナログ−デジタル変換器でデジタル形式に変換してもよい。データ線駆動部30は、これらデジタルデータをPWM制御してデータ線に与えることができる。このようなPWM制御に対応した画像データもセットメーカなどのユーザにより自由に設定されたものが入力される。
【0022】
図2は、実施形態に係るデータ線駆動部30の詳細を示す。データ線駆動部30は、データ線に対応して、複数のデータラッチ部312〜31n、調整部322〜32nおよびデータ書込部332〜33nを備える。複数のデータラッチ部312〜31nは、一行分の画像データiを記憶可能なシフトレジスタで構成されてもよい。複数のデータラッチ部312〜31nは、画像データiが外部から供給されてくる信号線から、上記同期信号sにしたがい、一行分の画像データiを取得する。各データラッチ部312は、担当するデータ線上の画素用の画像データを取得する。例えば、その画素用のR、G、Bの各画像データを取得する。
【0023】
各データラッチ部312〜31nは、上記画像データiを取得した有意なタイミングの次の有意なタイミングで、ラッチしている画像データiを各調整部322〜32nを介して各データ書込部332に出力する。それと同時に、次行の画像データiを上記信号線から取得する。
【0024】
調整部322〜32nは、対応するデータラッチ部312〜31nにラッチされている複数色の画像データのそれぞれの書込開始タイミングまたは書込終了タイミングを調整し、対応するデータ書込部332にそれを設定する。調整部322〜32nは、上記同期信号sの単位周期時間に、単位画素分の書込開始タイミングまたは書込終了タイミングをスケジューリングする。そのスケジューリングのため、画像データiの諧調数に対応した同期信号を利用する。この同期信号は、上記外部制御装置から供給されてもよいし、回路内部で生成してもよい。調整部322〜32nは、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコンピュータ、その他のデジタル回路素子、アナログ回路素子、またはそれらの任意の組み合わせで構成される。調整部322〜32nが上記書込開始タイミングまたは書込終了タイミングを調整するためのアルゴリズムの詳細については後述する。
【0025】
データ書込部332〜33nは、データ線に印加すべき電圧をPWM制御することにより、対応する調整部322〜32nにより書込開始タイミングまたは書込終了タイミングが調整された複数色の画像データを、対応するデータ線に書き込む。すなわち、各色の画像データiで指定されたデューティ比で上記電圧をPWM制御して、対応するデータ線に印加する。データ書込部332〜33nに電源20から供給される電圧は、印加すべき発光素子の発光効率に応じて異なるレベルに設定された電圧であってもよいし、その発光効率に応じてPWM制御された電圧であってもよい。データ書込部332〜33nは、電源20から供給される電圧と画像データとの論理積を演算するためのANDゲートで構成されてもよい。
【0026】
以下、調整部322〜32nにて、単位画素を構成する各発光素子への書込開始タイミングまたは書込終了タイミングを調整するためのアルゴリズムの例について説明する。基本概念として、調整部322〜32nは、単位画素を構成する各発光素子の電圧印加期間が可及的に重ならないように最適に配分して、所定の期間内における単位画素に流れる電流を平滑化するよう動的に制御する。もちろん、各画素用の画像データiは一般的なものであり、単位画素を構成する各発光素子に印加される電圧のデューティ比の和が、単位期間の100%を超える画像データiも当然含まれる。
【0027】
以下、単位画素がR、G、Bの発光素子で構成され、R用の画像データのデューティ比が40%、G用の画像データのデューティ比が70%およびB用の画像データのデューティ比が50%で与えられる例を用いて説明する。
【0028】
図3は、調整部322〜32nの第1実施例を説明するためのタイミングチャートである。第1実施例は、複数の発光素子のうち、1色またはそれ以上の発光素子に対して、単位周期時間Tcのフロントエッジから電圧を印加するのではなく、そのエンドエッジに近づける、すなわち電圧印加期間の開始時期を遅らせる例である。図3では、G用の画像データの電圧印加期間の終了タイミングが単位周期時間Tcのエンドエッジに合わさるよう調整される。G用の画像データの電圧印加期間の開始タイミングは、それに応じて遅延される。図3の一番下のチャートは、R、G、Bを含む単位画素に流れる電流Cの遷移を示す。なお、単位周期時間Tcは単位走査期間に対応しており、単位周期時間Tcの切り替わりに、所定のブランキングタイムが挿入されてもよい。
【0029】
図4は、調整部322〜32nの比較例を説明するためのタイミングチャートである。比較例は、複数の発光素子のすべてに対して、単位周期時間Tcのフロントエッジから電圧を印加する例である。すなわち電圧印加期間の開始時期がすべて同じ例である。図3、図4の一番下の画素に流れる電流を比較すると、図3のほうが単位周期時間Tc内の画素に流れる電流Cが平滑化されていることが分かる。これらのチャートでは、説明の便宜上、R、G、Bの各発光素子に流れる電流を等しく描いている。実際の画素に流れる電流の遷移は、各発光素子の発光効率に応じて多少異なるが、基本的には同様の遷移となる。
【0030】
ところで、自然界に存在する様々な色には緑の成分が多く、三原色でデータ化する場合も緑の成分が多くなりやすく、緑の発光素子の点灯時間が他の色より長い場合が多い。そこで、緑の発光素子の点灯開始時刻を他の色より遅らせることにより、上記画素に流れる電流の平滑化に寄与する可能性を高くすることができる。また、第1実施例は、簡素なアルゴリズムであるため、調整部322〜32nを比較的簡素な構成で設計することができる。
【0031】
図5は、調整部322〜32nの第2実施例を説明するためのタイミングチャートである。第2実施例は、三色の発光素子のうち、一色は単位周期時間Tcのフロントエッジから電圧印加期間を開始し、それ以外の一色はそのエンドエッジで消灯するような時期に電圧印加期間を開始し、残りの一色は他の二色の重複する電圧印加期間を避けるように電圧印加期間の開始タイミングを設定する。どの色の発光素子の点灯時間を単位周期時間Tcのフロントエッジ側やエンドエッジ側に配置してもよい。
【0032】
図5では、単位画素を構成するR用の画像データのデューティ比が30%、G用の画像データのデューティ比が40%およびB用の画像データのデューティ比が40%の例で説明する。三色の画像データのうち、Rの発光素子における電圧印加期間の開始時刻をフロントエッジに配し、Gの発光素子における電圧印加時間の終了時刻をエンドエッジに配している。RおよびGの発光素子における電圧印加期間の非重複期間内に、Bの発光素子における電圧印加期間が可及的に含まれるようその開始時刻を配している。
【0033】
図6は、第2実施例の処理を説明するためのフローチャートである。まず、調整部322〜32nは、Rの発光素子における電圧印加期間の開始時刻を単位周期時間Tcのフロントエッジに設定し(S10)、Gの発光素子における電圧印加期間の終了時刻を単位周期時間Tcのエンドエッジに設定する(S12)。
【0034】
次に、Rの発光素子における電圧印加期間TrとGの発光素子における電圧印加期間Tgを合わせた期間と、単位周期時間Tcを比較する(S14)。単位周期時間Tcがその合わせた期間未満の場合(S14のY)、すなわちRの電圧印加期間TrとGの電圧印加期間Tgとに非重複期間がある場合、当該重複期間の開始時刻t1に、Bの発光素子における電圧印加時間の開始時刻を設定する(S16)。
【0035】
一方、単位周期時間Tcがその合わせた期間以上の場合(S14のN)、すなわちRの電圧印加期間TrとGの電圧印加期間Tgとに重複期間があるか両期間が等しい場合、単位周期時間Tcのフロントエッジに、Bの発光素子における電圧印加時間の開始時刻を設定する(S18)。
【0036】
第2実施例は、単位周期時間Tcに画素を流れる電流を第1実施例よりさらに平滑化させることができる。また、単位画素を構成する各発光素子に印加される電圧のデューティ比の和が単位期間の100%未満の場合でも、画素に流れる電流が0から一つの発光素子に流れる電流までの間で推移することになり、比較例などより画素に流れる電流を平滑化することができる。
【0037】
図7は、調整部322〜32nの第3実施例を説明するためのタイミングチャートである。第3実施例は、単位周期時間Tc内に、画素に流れる電流が最も大きい時間と最も小さい時間とが可及的に等しくなるよう、かつそれらの時間が可及的に短くなるよう、各色の発光素子の点灯開始タイミングをスケジューリングする例である。例えば、すべての発光素子の点灯期間が重なる期間と一つも重ならない期間を可及的に等しくするようスケジューリングする。図6の一番下のチャートは、画素に流れる電流がピーク値を指す時間Tpとボトム値を指す時間Tbとが実質的に等しい例を示す。
【0038】
調整部322〜32nは、このような制御を行うため種々のアルゴリズムを用いて、単位周期時間Tc内で各発光素子の点灯開始タイミングをスケジューリングする。第3実施例は、仮にすべての発光素子の点灯時間が重なる期間があっても、それを可及的に短くすることにより、電源20に負荷が強くかかっている状態や電流が流れていない状態を減少させることができる。よって、平均的に電流を流すことができ、電源電圧を安定化させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明した。この実施形態によれば、PWM制御を行う表示装置の駆動回路にて、各画素に流れる電流を平滑化することができ、電源にかかる負荷を平滑化することができる。よって、表示装置内部での不要な電圧降下を低減でき、色ムラや輝度ムラを抑制することができる。例えば、不要な電圧降下が発生すると、表示パネルの一端、中間、他端で明るさが違ってしまうこともある。こような事態を抑制することができる。また、各画素の急峻な電流の変化を低減でき、画素に流れる電流のピーク値とボトム値間の差も小さくできるため、データ線から発生する輻射ノイズを大幅に低減することができる。さらに、当該電流の変動範囲が小さくなったり、当該電流の変化の角度が緩やかになったりすることにより、電源の設計を簡略化することができる。このように本実施形態は、画像品質の向上と電源の効率的設計の要請を両立させることができる。もちろん、画像の明るさを通常より犠牲にすることもない。
【0040】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0041】
上記実施形態では、説明を簡略化するため、表示パネル10をパッシプマトリクス駆動する例を説明した。この点、本発明は当然、アクティブマトリクス駆動にも適応可能である。アクティブマトリクス駆動方式は、走査電極間のクロストークも排除することができるため、さらに高画質化することができる。
【0042】
上記第2実施例にて、Rの発光素子における電圧印加期間TrとGの発光素子における電圧印加期間Tgを合わせた期間と、単位周期時間Tcを比較した後(S14)、単位周期時間Tcがその合わせた期間未満の場合(S14のY)も、その合わせた期間以上の場合(S14のN)も、種々の例外処理を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るデータ線駆動部の詳細を示す図である。
【図3】調整部の第1実施例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】調整部の比較例を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】調整部の第2実施例を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】第2実施例の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】調整部の第3実施例を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10 表示パネル、 20 電源、 30 データ線駆動部、 40 走査線駆動部、 50 駆動回路、 100 表示装置、 110 画素、 112 発光素子、 312 データラッチ部、 322 調整部、 332 データ書込部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示装置を駆動する方法であって、
外部から与えられる画像データに記述された各発光素子の点灯レベルに対応したデューティ比で各発光素子に所定の電圧を印加するとき、データ書込のための単位周期時間内にて、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を、その画素に流れる電流を平滑化するよう調整することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項2】
各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の重複期間を低減するよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項3】
各画素に含まれる複数の発光素子のうち、少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の開始時期を単位周期時間の始めに調整し、それ以外の少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項4】
それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示部を駆動する回路であって、
外部から与えられる画像データに応じて、前記表示部のデータ線を駆動するデータ線駆動部と、
外部から与えられる同期信号に応じて、前記表示部の走査線を駆動する走査線駆動部と、を備え、
前記データ線駆動部は、
前記画像データに記述された各発光素子の点灯レベルに対応したデューティ比で、各発光素子に所定の電圧を印加するデータ書込部と、
データ書込のための単位周期時間内にて、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の開始時期または終了時期を、その画素に流れる電流を平滑化するよう調整する調整部と、を有することを特徴とする駆動回路。
【請求項5】
前記調整部は、各画素に含まれる複数の発光素子に対する各電圧印加期間の重複期間を低減するよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することを特徴とする請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記調整部は、各画素に含まれる複数の発光素子のうち、少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の開始時期を単位周期時間の始めに調整し、それ以外の少なくとも一つの発光素子の電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整することを特徴とする請求項4または5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記画素は、赤、緑および青の発光素子を含み、
前記調整部は、各画素に含まれる緑の発光素子における電圧印加期間の終了時期を単位周期時間の終わりに調整することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項8】
前記調整部は、単位周期時間における各画素に流れる電流のピーク期間とボトム期間とが等しくなるよう、各電圧印加期間の開始時期または終了時期を調整することを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項9】
同一半導体基板上に集積化されたことを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項10】
それぞれ複数の発光素子を含む画素がマトリクス状に配された表示部と、
前記表示部を駆動する請求項4から9のいずれかに記載の駆動回路と、
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−337597(P2006−337597A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160573(P2005−160573)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】