説明

表示装置及び照明装置

【課題】視野角制御機能及び立体/平面表示切替機能を実現することができる薄型の表示装置及び薄型の照明装置を提供する。
【解決手段】カラー表示可能な表示装置は、基板1上の発光素子OLED#1〜#3と、発光素子の駆動回路4、4’と、光学手段21とを備え、発光素子OLED#1〜#3及び光学手段21がサブ画素31を構成し、隣接する、放射光の波長が相互に異なる3つのサブ画素31が単位画素3を構成し、光学手段が、中央部に位置する第1の発光素子OLED#2から放射される光を、第1の発光素子OLED#2を通り基板1に垂直な直線の方向に屈折させ、且つ、第1の発光素子の周囲に位置する第2の発光素子OLED#1、#3から放射される光を、該第2の発光素子から第1の発光素子OLED#2に向かう方向に屈折させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ用バックライトなどの照明装置、及び、視野角の制御機能、2次元表示/3次元表示の切り替え機能などを有する薄型の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは一般に視野角が広い方が見やすいが、携帯電話やノートPC等のディスプレイでは、他人の覗き見を防止するには視野角を狭くすればよい。従って、使用場面に応じて視野角を切り替える機能(以下「視野角制御機能」とも記す)を備えることが望ましい。そこで従来から、液晶ディスプレイの視野角を電気的に切り替える方法が提案されている。例えば下記特許文献1には、図10に示すように、液晶表示パネル1とバックライト2との間に、電界制御型パネル3を挿入した構成の表示装置が開示されている。ここで、電界制御型パネル3は、透明電極を備えた透明基板2枚の間に高分子分散型液晶層を配置した構成であり、透明電極の間に電圧を印加すると透明状態になる。このとき、バックライト2から照射される光は散乱されることなく液晶表示パネル1に入射し、視野角は正面方向の狭い範囲となる。一方、電界制御型パネル3に電圧を印加しないときには、高分子分散型液晶層がバックライト2からの光を散乱するため、液晶表示パネル1から広い範囲に光が放射されて、視野角は広くなる。
【0003】
一方、2眼式の両眼視差方式による立体表示と平面画像表示とを切り替える機能(以下「立体/平面表示切替機能」とも記す)を有する液晶ディスプレイが知られている。例えば、光源を2つ備えたバックライトを用いる方法が、下記非特許文献1に開示されている。非特許文献1では、図11に示すように、エッジ点灯型のバックライトの導光板の両端にそれぞれ光源1及び2を配置して、これらを交互に点灯する。導光体の表面には、特殊な光学部品(断面形状は、上面がレンチキュラーレンズであり、下面がプリズムである。)が配置される。例えば、光源1を点灯したときには、この光学部品の機能により、LCDの法線から右側へ約10°傾いた方向へ光が放射される。従って、光は右目には到達するが、左目には到達しない。光源2を点灯したときには、左側へ約10°傾いた方向へ光が放射され、左目のみに入射する。これら2組の光源1、2のON/OFFと同期して、液晶パネルに右目用と左目用の画像データを入力すると、右目には右目用画像のみが入射し、左目には左目用画像のみが入射することになる。この動作を高速に切り替えることにより立体表示が可能になる。この構成で両方の光源1及び2を同時に点灯すれば、平面画像が表示される。この平面画像の精細度は、立体表示と同じである。
【0004】
また、下記特許文献2も知られている。特許文献2では、図12に示すように、2つのレンチキュラーレンズ31、32を対向させて、液晶ディスプレイ2の表面に設置する。レンチキュラーレンズの1つの曲面31aは、液晶ディスプレイ2の隣接する2つの画素41、42に対応している。図12の(a)の立体画像表示モードでは、レンズの効果により、画素41を通過した光は、表示面の法線から右の方向へ曲げられる。同様にして、画素41を通過した光は、左の方向へ曲げられる。従って、画素41に右目用、画素42に左目用の画像を表示することにより、両眼視差方式による立体表示が可能になる。一方、図12の(b)では、2つのレンチキュラーレンズ31、32を半ピッチずらして対向させて配置しており、この場合、レンズ効果が打ち消されて、平面画像を表示する。ここで表示される平面画像は、立体画像表示モードの画像の2倍の精細度になる。逆に言えば、立体表示の画像の精細度は、平面表示の画像の精細度の1/2である。
【0005】
また、図11及び図12の技術は、2つの観察方向に応じて異なる画像(視差画像)を表示するものである。従って、立体表示の他にも、例えばカーナビゲーション用ディスプレイとして、運転者用と助手席用に異なる画像を表示することもできる。但し、この場合の視差は、運転者の目と助手席の人の目とディスプレイを頂点とする三角形の2辺の成す角度に等しいので、立体表示のときの視差に比べて大きく設定する必要がある。
【0006】
以上に説明したように、表示装置には、利用場面に応じて、視野角が広いモードと狭いモードとを切り替える機能、立体画像表示モードと平面画像表示モードとを切り替える機能が求められており、それぞれの機能を実現する構成が提案されている。
【特許文献1】特開2006−119291号公報
【特許文献2】特開2004−085924号公報
【非特許文献1】T. Sasagawa, A. Yuuki, S. Tahata, O. Murakami, and K. Oda, “Dual directional backlight for stereoscopic LCD,” SID03 Digest, pp. 399-401, 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
仮に、一つの表示装置で、視野角制御機能と立体/平面表示切替機能とを実現できれば、携帯電話などの利便性が更に向上する。また、カーナビゲーション用ディスプレイで地図の表示と立体的な風景の表示とを切り替えることができれば、ナビゲーションシステムの有効性が向上する。
【0008】
しかし、次のような問題がある。第1に、上記した特許文献1、2及び非特許文献1を組み合わせても、視野角制御機能及び立体/平面表示切替機能の両方を有する表示装置を実現することは困難である。
【0009】
第2に、機能の追加に伴って表示装置が大型化する問題がある。一般に、液晶ディスプレイを薄くするために、液晶パネルの透明基板の研磨、プラスチック材料の採用、偏光板やバックライトなどの構成要素の薄型化や機能の統合などの様々な技術革新がなされているが、現時点で最も薄い液晶ディスプレイの厚さは1mm程度である。これに、従来技術により視野角制御機能を搭載すると、図10の構成では電界制御型パネルの厚さが加わるため、少なくとも約0.4mmは厚くなる。また、立体表示方式切替機能を搭載すると、図12の構成では1〜2mmも厚さが増加する。従って、従来技術では、これらの機能を(同時ではなく、独立して)有する表示装置を1mm以下にまで薄くすることは困難である。
【0010】
第3に、2眼式の両眼視差方式の立体表示には、立体画像を観察できる場所の範囲が狭いという問題がある。これを解決するには、多眼式の手法が知られている。即ち、右目用と左目用の2つの画像だけではなく、少しずつ見る角度の異なる多数の画像をわずかに異なる方向へ出力することにより、一人の観察者が場所を移動しても、また複数の観察者が同時に、それぞれの位置に対応した画像を観察できるようになる。しかし、図11の構成では、光の放射方向は特殊な光学部品の形状によって2方向に制限されているため、多眼式の手法を適応できない。図12のようにレンチキュラーレンズを用いる構成では、多数の画素と一つのレンズとを対応させることにより、多眼式にすることが可能と考えられる。しかし、多数の画素を用いて一つの立体画像を表示する必要があるため、画像の精細度が著しく劣化する問題を生じる。
【0011】
従って、本発明は、視野角制御機能、立体/平面表示切替機能、及び多眼式立体表示機能を実現することができる薄型の表示装置、及び、薄型の照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0013】
即ち、本発明に係る第1の表示装置は、基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、前記発光素子の各々の発光量を調整する駆動回路と、前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が1つのサブ画素を構成し、1つのサブ画素と、該サブ画素の周辺に隣接する複数のサブ画素とが、単位画素を構成し、前記単位画素を構成する複数のサブ画素から放射される光の分光強度分布のうち、少なくとも2つの分光強度分布が相互に異なり、複数の前記単位画素が2次元状に配列され、前記光学手段が、前記サブ画素中の前記発光素子または前記サブ画素中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る第2の表示装置は、基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、前記発光素子の各々の発光量を調整する駆動回路と、前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が、単位画素を構成し、複数の前記単位画素が2次元状に配列され、複数の前記単位画素から放射される光の分光強度分布が同じであり、前記光学手段が、前記サブ画素中の前記発光素子または前記サブ画素中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴としている。
【0015】
上記の第1又は第2の表示装置において、前記駆動回路は、第1モードにおいて、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群をOFFし、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群のみの発光量を制御し、第2モードにおいて、前記サブ画素の発光素子または発光素子群の発光量を制御することができる。
【0016】
また、上記の第1又は第2の表示装置において、前記駆動回路は、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群に第1の画像を、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群に第2の画像を、それぞれ表示してもよい。
【0017】
また、上記の第1又は第2の表示装置において、前記駆動回路は、前記発光素子群に、互いに異なる複数の画像を表示し、該複数の画像が2眼式または多眼式立体表示用の視差画像であってもよい。
【0018】
また、上記の第1又は第2の表示装置において、前記駆動回路は、前記発光素子群の発光量を調整することにより、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群をOFFし、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群のみの発光量を制御する狭視野角モード、前記サブ画素の発光素子または発光素子群の発光量を制御する広視野角モード、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群が第1の画像を、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群が第2の画像を、それぞれ表示するデュアル表示モード、及び、前記発光素子群に、互いに異なる複数の画像を表示し、該複数の画像が立体表示用の視差画像である前記立体表示モードからなる群の中から選択される少なくとも2つの表示モードの中の一つのモードを選択することができる。
【0019】
また、前記発光素子は、有機EL発光素子であることができる。
【0020】
また、前記光学手段は、半円筒状レンズ、マイクロレンズ、又は屈折率分布型の光学手段の何れかであることができる。
【0021】
本発明に係る照明装置は、基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、前記発光素子の発光量を調整する駆動回路と、前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が、単位照明素子を構成し、複数の前記単位照明素子が1次元または2次元状に配列され、前記駆動回路が、複数の前記単位照明素子を構成する前記発光素子の発光量を調整し、前記光学手段が、前記単位照明素子中の前記発光素子または前記単位照明素子中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、視野角制御機能と立体/平面表示切替機能とを共に有する薄型の表示装置を実現することができる。従来技術では、視野角制御機能と立体/平面表示切替機能のいずれか一方を提供できるに過ぎず、何れの場合にも表示装置の厚さが1mm以上増加する。現在これらの機能を持たない表示装置が1mm程度まで薄型化されているので、これらの機能の追加により2倍以上に厚くなることを意味する。
【0023】
これに対して、本発明では、これらの機能を提供するために、表示装置の厚さが、高々100μm〜200μm程度増加するだけである。本発明を有機ELディスプレイに適用すれば、表示装置の厚さを0.4mm以下にすることができ、同様の機能を備えた液晶ディスプレイに比べて格段の薄型化を達成することができる。
【0024】
更に、本発明の表示装置によれば、一つの表示装置で、広/狭視野角と立体/平面画像の4種類の表示モードを切り替えることもできるので、映像表示装置を備えた種々の装置の付加価値を高めることができる。例えば、携帯電話などの利便性を更に向上させることができる。また、カーナビゲーション用ディスプレイに適用した場合、例えば、地図の表示と立体的な風景の表示とを切り替えて表示することなどができる。また、立体表示の他にも、運転者用と助手席用に異なる画像を表示することも可能になるので、カーナビゲーションシステムの有効性を向上させることができる。
【0025】
また、サブ画素を構成する発光素子の数を増やし、一部の複数の発光素子を発光素子群とし、発光素子群に多眼式立体表示用の視差画像を表示すれば、画像の精細度の高い多眼式立体表示を容易に実現することができる。
【0026】
また、本発明の照明装置を液晶ディスプレイのバックライトとして使用すれば、表示装置の厚さは0.4mmのバックライトに0.4mmの液晶パネルを加えた0.8mm程度とすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す斜視図である。本表示装置は、有機ELディスプレイとして構成した例である。本表示装置は、表面に複数の有機発光素子(Organic Light Emitting Diode、以下OLEDとも記す)及びその駆動回路を形成した基板1と、基板1に密着して配置された半円筒状レンズアレイ2とを備えて構成されている。
【0029】
図1の右側には、画像表示の単位要素となる画素の構成を拡大して示している。カラー表示のための単位画素3は、それぞれ分光強度分布の異なる赤(R)、緑(G)、青(B)の光を出力する3つのサブ画素31(図1のR、G、B)を一組として構成される。各サブ画素31は、3つの短冊状のOLED#1、OLED#2及びOLED#3と、1つの半円筒状レンズ21とで構成されている。OLED#2は中央部に配置され、OLED#1及び#3はOLED#2の周囲に配置されている。OLED#1、#2、#3のON/OFFや発光量は、個々のOLEDに独立して設けられた駆動回路により制御される。一般に、有機ELディスプレイの製造工程においては、薄膜トランジスタ(TFT)技術により、画素回路と呼ばれる駆動回路の一部が基板1の表面に形成され、その上に絶縁膜などを形成した後にOLED#1などが形成される。また、これらの多数の画素回路は、基板1の周辺部に配置された駆動回路(図1において符号4、4’で模式的に示す)により制御される。
【0030】
図1では、単位画素3として、R、G、Bの光を出力する3つのサブ画素31をストライプ状に併置する構成の例を挙げたが、複数のサブ画素を併置するには多様な方法が知られている。例えば、Gのサブ画素2個とRとBのサブ画素各1個をセットにして2行2列に配置した構成でもよい。あるいは、輝度向上のためにR、G、Bに白色のサブ画素を加えたり、色再現性向上を目指して第4の色のサブ画素を加えたりする方法もある。
【0031】
なお、モノクロ画像を表示するには、1種類のOLEDのみを用いて、各単位画素を1つのサブ画素で構成すればよい。
【0032】
図2は、図1に示した表示装置を部分的に示す水平断面図であり、1つのサブ画素31と1つの主要な構成要素との位置関係を示している。1つの半円筒状レンズ21に対して3つのOLED#1〜#3が配置されている。図2には、本表示装置に関する重要な設計パラメータである、半円筒状レンズ21のレンズ材料の屈折率n、半円筒状レンズ21の曲率半径r、半円筒状レンズ21の円弧の中心のz座標L、複数のサブ画素31間のピッチ(サブ画素31の幅)の1/2の距離Hを示している。なお、点Oはxz座標の原点である。
【0033】
ここでは、サブ画素31が3つのOLEDで構成されているが、後述するように、サブ画素31を構成するOLEDの数は3に限定されず、ディスプレイの仕様に応じて適切なOLEDの数を決定すればよい。また、半円筒状レンズ21の光が放射される表面の水平断面形状は、真円の一部である円弧に限定されず、視野角制御の要求仕様に応じて適切に決定すればよい。レンズ材料の屈折率nも適切に決定すればよい。以下では、半円筒状レンズ21に一般的なポリマー材料やガラス材料を用いることとして、屈折率nを約1.5として説明する。
【0034】
次に、本実施の形態に係る表示装置の動作原理を説明する。一般的な素子構造のOLEDでは、全ての方向に光が放射され、その角度分布はランバート則に従う。即ち、発光部(OLED)の法線方向と成す角度θの方向に放射される光の強度I(θ)は、I0を定数として、I(θ)=I0cos(θ)と表される。OLEDから放射された光は、レンズと空気との境界に到達して屈折される。境界面に入射するときの角度によっては全反射することがあるので、全反射する確率が低くなるように設計することが望ましい。図2に実線で示したように、OLED#2のみが点灯すると、放射された光は、レンズの屈折作用によりz軸方向に進路を変えられる。従って、光は、ディスプレイの正面方向を中心とする狭い角度範囲に出力される。また、図2に破線で示したように、OLED#3のみを点灯すると、光はレンズ表面で屈折して、主に図2の右下方へ、即ち、OLED#3からOLED#2の方向に、光の進路が変えられる。逆に、OLED#1のみを点灯すると、光はレンズ表面で屈折して、右上方へ、即ち、OLED#1からOLED#2の方向に、光の進路が変えられる(図示せず)。
【0035】
従って、本実施の形態に係る表示装置において、視野角を狭くする場合には、OLED#2のみを点灯し、視野角を広くする場合には、全てのOLED#1〜#3を点灯すればよい。このように、点灯させるOLEDを選択してそれらの発光量を調整することによって、視野角が狭い状態と広い状態とを切り替えることができる。また、本実施の形態に係る表示装置において、2眼式の両眼視差方式の立体表示を行う場合には、OLED#2を点灯させずに、例えば、OLED#1のみを点灯させて右目画像を表示し、OLED#3のみを点灯させて左目画像を表示すればよい。OLED#1、#3を点灯するタイミングは、両方同時に点灯させてもよく、交互に高速に切り替えて点灯させてもよい。
【0036】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置では、サブ画素を複数のOLEDとそれらに対応したレンズとで構成し、各OLEDの発光強度を調整することによりサブ画素が出力する光の強度(角度分布)を制御する。
【0037】
次に、数値例を挙げて、視野角制御機能及び立体/平面表示切替機能の両方の機能を、同じ構成により実現可能であることを、より詳細に説明する。ここでは、レンズの屈折率nを1.5、半径rを1.5、z座標Lを1.7、距離Hを1.5とする。また、サブ画素を構成するOLEDは#1〜#5の5個とし、それぞれの位置は、図2のx座標を用いて、OLED#1は−1.0<x<−0.7、OLED#2は−0.6<x<−0.3、OLED#3は−0.2<x<0.2、OLED#4は0.3<x<0.6、OLED#5は0.7<x<1.0とする。これらの値は相似形の関係を満足するように決定すればよく、例えばr=60(μm)のときには、OLEDの幅は6μm〜8μmとなる。このとき、ディスプレイの厚さは、レンズの厚さ(128μm)だけ増加することになる。
【0038】
光強度の出力角度依存性は、光線追跡の手法を用いて数値計算により求めることができる。即ち、各OLEDを多数の微小な光源の集合として、それぞれの光源からランバート則に従って光線を発生させる。個々の光線の軌跡を追跡し、レンズと空気の境界で全反射するか否かを判定し、全反射しない場合にはスネルの法則を適用して放射角度を求めて、レンズから放射される光の方向を求める。最後に、放射角度毎に光線が発生する頻度を加算する。
【0039】
光線追跡の手法により、OLEDから放射される光の強度の角度分布をシミュレーションした結果を図3〜図5に示す。図3は、OLED#1〜#5の各々から放射される光の強度の角度分布を示している。個々のOLEDで発生させた光線数は全て同じである。
【0040】
図3のデータを基に、視野角制御機能を評価するために、OLED#3のみを点灯したときと、全てのOLED#1〜#5を点灯したときとを比較した。シミュレーション結果を図4に示す。図4に示したように、サブ画素の中央に位置するOLED#3のみを点灯すると、正面方向を中心とした角度分布(半値幅は20°)が得られ、全てのOLED#1〜#5を点灯すると、比較的広い角度の分布が得られる。視野角は、OLED#3のみを点灯した場合±15°程度、全てのOLED#1〜#5を点灯した場合±35°程度となった。
【0041】
次に、2眼式の両眼視差方式による立体表示を評価するために、OLED#2及び#4をそれぞれ点灯する場合をシミュレーションした。得られた光強度の角度依存性を図5に示す。図5から、OLED#2及び#4の2つの角度分布(それぞれの半値幅は約18°)が完全に分離されていることが確認できる。
【0042】
さらに、OLED#1及び#5のみを点灯する場合、2つの強度分布が、図5の場合よりもさらに左右に分離される。従って、2人が表示装置の両側から、異なる映像を見ることが可能となり、デュアルディスプレイを実現することができる。
【0043】
尚、図3〜5では、約±50°以上の大きな角度の方向に光が出力されているが、これらは目的とする画像表示には利用できない。これらが迷光として問題になる場合には、隣接するレンズの間(図2において、基板表面に垂直な点線部分)に光の吸収体を挿入する等の手法により、迷光を除去すればよい。
【0044】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態においては、図1の構成を照明装置として用いる。この場合、単位画素が単位照明素子の役割をすることになる。例えば、図1の構成をバックライトとして液晶パネルの後方に配置することにより、液晶ディスプレイを構成することができる。この場合には、対応するOLEDの発光強度を同時に調整できればよい。前述の画素回路が不要なので、駆動回路は非常に単純になる。例えば、図1における各サブ画素31を構成するOLED#i(i=1〜3)を相互に接続すれば、バックライト表面での明るさが均一になるようにするには、OLED#i(i=1〜3)毎の発光強度を調節するだけでよい。なお、液晶パネルの透過率は光の入射角度に依存し、特に、一般に用いられている液晶の配向方式のねじれネマッティック(TN)型液晶では、表示面の法線方向とのなす角度が50°を超えると、光の透過率が著しく低下する。この場合には、図3〜5の例で見られた大きな角度方向の光は液晶パネルに吸収されて、ディスプレイからは出力されない。なお、単位照明素子の配列は、2次元状の配列に限定されず、例えば1次元状の配列であってもよい。
【0045】
以上、有機ELディスプレイを一例として本発明の実施の形態に係る表示装置を説明したが、これに限定されない。OLEDを用いたディスプレイに関しては、駆動方法、カラー化の方法、使用する材料や製造方法に関して、様々な構成が知られている。例えば、駆動方法に関しては、TFTを用いるか否かにより、アクティブ駆動とパッシブ駆動とがある。カラー化の方法に関しては、上記したように発光波長の異なる3種の発光素子を併置する構成や、白色発光素子とカラーフィルタを組み合わせる構成がある。材料と製造方法の視点では、真空蒸着法で製造する低分子系材料を用いたOLEDと、インクジェットやレーザー光の照射による転写法等の手法で製造する高分子系材料のOLEDがある。本発明は、サブ画素を構成する面状発光素子及び光学手段(図1の例ではOLED#1〜#3及び半円筒状レンズ21)を対応させて配置する点に特徴がある。従って、面状発光素子の任意の駆動方法、任意のカラー化の方法、任意の材料や任意の製造方法に適用可能である。例えば、図1では上面発光型OLEDの例を示したが、本発明は下面発光型OLEDにも適用できる。図6を用いて具体的に示す。
【0046】
図6は、上面発光型及び下面発光型の構成を示す断面図である。図6の(a)は、図1と同じ上面発光型の表示装置であるが、図1で省略されているOLEDの構成(有機材料層、透明電極、金属電極)、封止材料(保護層)も示している。ここで、各部の厚さに関しては、レンズの厚さt1は約100〜200μm、OLED部分及び保護層の厚さt2は約1μm、基板の厚さt3は約200μm、OLED部分の厚さt4は1μm未満である。一方、図6の(b)は、下面発光型の表示装置である。下面発光型では、光がOLEDの透明基板を透過して外部に出力される。これは、図1において、発光素子であるOLED#1〜#3と半円筒形状レンズ21との間に一様な厚さの透明媒体が挿入された構成と等価である。従って、設計パラメータLの下限に制限が加わるだけで、基本的な設計は同じである。なお、図6の(b)の各部の厚さに関しては、レンズ及び透明基板の厚さt5は約200〜400μm、OLED及び保護層の厚さt2は約1μm、金属又はガラス製の蓋の厚さt6は約100〜1000μmである。
【0047】
また、面状発光素子はOLEDに限らず、例えば無機EL素子であってもよい。無機EL素子は、無機材料と電極材料とを積層した構成の薄膜発光素子であり、高い交流電圧を印加して駆動するため、携帯電話のような低消費電力が要求される用途にはOLEDに比べて不向きであるが、消費電力がそれほど問題とならない用途では、無機EL素子に本発明を適用して製造した表示装置も有効である。
【0048】
また、上記ではサブ画素を構成するOLEDの個数が奇数の場合を説明したが、偶数であってもよい。例えば、図1においてOLED#2を2つに分割して、中央部に配置してもよく、周囲に配置されたOLED#1、#3をそれぞれ複数に分割して、隣接させて配置してもよい。
【0049】
また、光学手段に関して、上記では半円筒状レンズ(レンチキュラーレンズ)を用いる場合を説明したが、複数の発光素子に対応して配置する光学手段は、光の伝搬角度を適切に変換する機能を持つものであれば、様々なものを使用できる。例えば、図7に示したように、半円筒状ではなく半球状の光学手段(マイクロレンズ)を複数の1組の面状発光素子(図7では9個(3×3))に対応させて配置したマイクロレンズアレイであってもよい。この場合には、右目用と左目用に加えて上下方向の画像も用意することにより、上下左右の方向から立体画像を観察することができるようになる。また、プリズムシートなどを使用してもよい。光学手段の形状に関して、発光素子からの光が放射される側の表面形状は、その断面形状が完全な円の一部(円弧)である必要はなく、実際に使用する発光素子の光学特性、要求される機器の仕様等に応じて適切に選択すればよい。
【0050】
また、光学手段及び発光素子の位置関係に関しても、適切に設計すればよい。例えば、図8の(a)〜(c)に示したように、種々のレンズ形状に応じて発光素子を配置することが可能である。
【0051】
また、光学手段は、レンズのような凹凸の形状を持つものである必要はなく、光の進路を適切に変更する機能を有していればよい。例えば、図9に示すような屈折率分布型の光学手段を備えていてもよい。図9の(a)では、2枚のガラス板の間に、周期的に変化する屈折率分布を有する薄い層を備えている。また、図9の(b)は、表面付近に、周期的に変化する屈折率分布を有する光学部品(屈折率分布型マイクロレンズ)の一例を示す。このような光学部品は、例えばガラス板の表面の一部にイオンを注入して拡散させることにより形成することができる。
【0052】
また、光学手段は、上記したように光の伝搬角度を適切に変換する機能を持つものであればよく、光を屈折させる手段に限定されない。例えば、回折によって所定の方向に光を伝搬させる、回折格子などを用いてもよい。
【0053】
また、本発明の表示装置の製造方法に関しても、光学部品と発光素子を別々に製造し、両者の位置を合わせて張り合わせる方法、発光素子の表面に直接にマイクロレンズアレイを形成する方法、予め屈折率分布型マイクロレンズを形成した基板の表面にOLEDを形成する方法等の様々な手法が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した表示装置を部分的に示す水平断面図である。
【図3】OLED#1〜#5の各々から放射される光の強度の角度分布を示すグラフである。
【図4】OLED#3のみを点灯した場合、及び、全てのOLED#1〜#5を点灯した場合に放射される光の強度の角度分布を示すグラフである。
【図5】OLED#2及び#4をそれぞれ点灯した場合に放射される光の強度の角度分布を示すグラフである。
【図6】本発明の変形実施例である上面発光型及び下面発光型の表示装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の変形実施例であるマイクロレンズアレイを用いた表示装置を示す斜視図である。
【図8】本発明の変形実施例である光学手段及び発光素子の位置関係を示す断面図である。
【図9】本発明の変形実施例である屈折率分布を有する層を用いた表示装置を示す断面図である。
【図10】視野角を電気的に切り替えることができる従来の液晶ディスプレイを示す断面図である。
【図11】両眼視差方式による立体表示と平面画像表示とを切り替える機能を有する従来の液晶ディスプレイにおける立体表示の動作を示す図である。
【図12】両眼視差方式による立体表示と平面画像表示とを切り替える機能を有する従来の液晶ディスプレイにおける切り替え動作を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 半筒状レンズアレイ
3 単位画素
4、4’ 駆動回路
21 半円筒状レンズ
31 サブ画素
OLED#1〜#3 有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、
前記発光素子の各々の発光量を調整する駆動回路と、
前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、
前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が1つのサブ画素を構成し、
1つのサブ画素と、該サブ画素の周辺に隣接する複数のサブ画素とが、単位画素を構成し、
前記単位画素を構成する複数のサブ画素から放射される光の分光強度分布のうち、少なくとも2つの分光強度分布が相互に異なり、
複数の前記単位画素が2次元状に配列され、
前記光学手段が、前記サブ画素中の前記発光素子または前記サブ画素中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、
前記発光素子の各々の発光量を調整する駆動回路と、
前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、
前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が、単位画素を構成し、
複数の前記単位画素が2次元状に配列され、
複数の前記単位画素から放射される光の分光強度分布が同じであり、
前記光学手段が、前記サブ画素中の前記発光素子または前記サブ画素中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路が、
第1モードにおいて、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群をOFFし、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群のみの発光量を制御し、
第2モードにおいて、前記サブ画素の発光素子または発光素子群の発光量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記駆動回路が、前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群に第1の画像を、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群に第2の画像を、それぞれ表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記駆動回路が、前記発光素子群に、互いに異なる複数の画像を表示し、
該複数の画像が2眼式または多眼式立体表示用の視差画像であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記駆動回路が、前記発光素子群の発光量を調整することにより、
前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群をOFFし、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群のみの発光量を制御する狭視野角モード、
前記サブ画素の発光素子または発光素子群の発光量を制御する広視野角モード、
前記サブ画素の一部の発光素子または発光素子群が第1の画像を、前記サブ画素のその他の発光素子または発光素子群が第2の画像を、それぞれ表示するデュアル表示モード、及び、
前記発光素子群に、互いに異なる複数の画像を表示し、該複数の画像が立体表示用の視差画像である前記立体表示モード
からなる群の中から選択される少なくとも2つの表示モードの中の一つのモードを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光素子が有機EL発光素子であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記光学手段が、半円筒状レンズ、マイクロレンズ、又は屈折率分布型の光学手段の何れかであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
基板上に形成された複数の所定数の発光素子と、
前記発光素子の発光量を調整する駆動回路と、
前記発光素子の上に配置された光学手段とを備え、
前記所定数の前記発光素子及び前記光学手段が、単位照明素子を構成し、
複数の前記単位照明素子が1次元または2次元状に配列され、
前記駆動回路が、複数の前記単位照明素子を構成する前記発光素子の発光量を調整し、
前記光学手段が、前記単位照明素子中の前記発光素子または前記単位照明素子中の前記発光素子の一部集合である発光素子群の各々から放射される光を、相互に異なる方向に導くことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−304715(P2008−304715A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151999(P2007−151999)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】