表示装置及び表示装置の製造方法
【課題】長期に亘って均一な輝度特性を維持することができる表示装置及び表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする表示装置。
【解決手段】映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する表示装置及び当該表示装置を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、一般的に、映像を表示するための表示パネルと、表示パネルを駆動する駆動回路基板と、これらを収容並びに保持する筐体と、を備える。駆動回路基板が表示パネルに近接して取り付けられるならば、表示パネル及び駆動回路基板は、筐体内にコンパクトに収容される。
【0003】
駆動回路基板が表示パネルを駆動している間、駆動回路基板は発熱する。駆動回路基板が表示パネルに近接して取り付けられるならば、駆動回路基板からの熱は、表示パネルに伝達されやすくなる。
【0004】
表示装置として、有機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイが例示される。有機ELディスプレイは、有機EL発光素子を含む。有機EL発光素子の発光層は、熱によって、特に劣化しやすい。したがって、駆動回路基板からの熱による表示パネルの温度上昇下において、有機EL発光素子の輝度は、経時的に低下する。
【0005】
特許文献1は、駆動回路基板から発光素子への熱伝達を抑制するための構造を有する表示装置を開示する。特許文献1によれば、駆動回路基板と発光素子を有する表示パネルとの間に空隙が形成される。空隙部によって、表示パネル中での局所的な高温領域の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−156035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駆動回路基板と表示パネルとの間の空隙は、駆動回路基板の近くの領域の温度上昇を緩和するが、表示パネル中には、尚、高温領域と低温領域とを含む不均一な温度分布が発生する。高温領域に存する発光素子の寿命は、低温領域に存する発光素子の寿命よりも短くなる。この結果、高温領域において、低温領域よりも早く輝度の低下が生ずる。したがって、表示装置は、長期に亘って均一な画質を維持することができない。
【0008】
本発明は、長期に亘って均一な画質を維持することができる表示装置及び当該表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る表示装置は、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の局面に係る映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法は、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る表示装置は、表示領域中の温度分布に応じて設定された厚さの機能層を備えるので、長期に亘って均一な画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】表示装置の概略的な斜視図である。
【図2】図1に示される表示装置の表示パネルの概略的な正面図である。
【図3】図2に示される表示パネルの概略的な側面図である。
【図4】図2に示される表示パネルの概略的な背面図である。
【図5】図2に示される表示パネルに取り付けられる駆動回路基板の概略的なブロック図である。
【図6】図2に示される表示パネルの表示領域に発生する温度分布を表す概略的な等温線図である。
【図7】図2に示される表示パネルの概略的な部分断面図である。
【図8】図7に示される表示パネルの機能層の概略的な断面図である。
【図9】図1に示される表示装置の製造方法を表す概略的なフローチャートである。
【図10】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図11】図10に示される支持基板の概略的な平面図である。
【図12】図10に示される支持基板の形成領域中に設定される分割領域の概略図である。
【図13】図10に示される支持基板の形成領域中に設定される他の分割領域の概略図である。
【図14】図13に示される分割領域を含む形成領域の概略図である。
【図15A】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図15B】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図15C】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図16A】図1に示される表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。
【図16B】一様な機能層の膜厚分布を有する表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、表示装置及び当該表示装置の製造方法が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、表示装置及び製造方法の原理を容易に理解させることを目的とするものであり、表示装置及び製造方法の原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0014】
(表示装置の構造)
図1は、表示装置100の概略的な斜視図である。図1を用いて、表示装置100が説明される。
【0015】
表示装置100は、映像を表示する表示パネル200と、表示パネル200を支持する筐体110と、を備える。表示パネル200は、映像が表示される表示領域210を備える。表示領域210は、筐体110から露出する。表示装置100は、表示パネル200を駆動する駆動回路基板を更に備える。駆動回路基板は、筐体110内に配設されるので、図1には示されていない。本実施形態において、駆動回路基板は、駆動部として例示される。
【0016】
図1に示される表示装置100は、放送波を受信し、映像を表示するテレビ装置である。代替的に、パーソナルコンピュータのディスプレイ装置、携帯電話やスマートフォンといった通信機器のディスプレイや映像を表示することができる他の装置が表示装置として用いられてもよい。
【0017】
図2は、表示パネル200の概略的な正面図である。図2を用いて、表示パネル200が説明される。
【0018】
表示パネル200は、行列状に配置された複数の表示画素211と、表示画素211を支持するための基板220と、を備える。表示領域210は、水平方向及び垂直方向に整列された複数の表示画素211によって規定される。映像信号に応じて、複数の表示画素211が発光する結果、表示領域210に映像が表示される。
【0019】
図3は、表示パネル200の概略的な側面図である。図4は、表示パネル200の概略的な背面図である。図2乃至図4を用いて、表示パネル200が更に説明される。
【0020】
基板220は、表示領域210が形成される第1面221と、第1面221とは反対側の第2面222と、を含む。上述の駆動回路基板300は、第2面222に取り付けられる。本実施形態において、駆動回路基板300は、第2面222の略中央に直接的に取り付けられている。代替的に、駆動回路基板は、第2面の上部、下部、左部又は右部に取り付けられてもよい。或いは、駆動回路基板は、基板に固定されなくともよい。
【0021】
図5は、駆動回路基板300の概略的なブロック図である。図2及び図5を用いて、駆動回路基板300が説明される。
【0022】
駆動回路基板300は、映像信号が入力される入力ポート310と、表示パネル200に駆動信号を出力するドライバ素子320と、を備える。ドライバ素子320は、入力ポート310を介して入力された映像信号を処理し、駆動信号を生成する信号処理回路321と、駆動信号を出力する出力ポート322と、を含む。表示パネル200は、出力ポート322から出力された駆動信号によって駆動される。
【0023】
映像信号から駆動信号への変換処理に伴って、ドライバ素子320は発熱する。この結果、ドライバ素子320は、表示領域210に不均一な温度分布を生じさせる。本実施形態において、駆動回路基板300は、表示領域210に不均一な温度分布を生じさせる熱源として作用する。表示画素211は、駆動回路基板300が生じさせる温度分布に従って形成される。代替的に、他の要素が表示領域に不均一な温度分布を生じさせるならば、他の熱源要素が生じさせる温度分布に従って、表示画素が形成されてもよい。表示画素211の形成手法は後述される。
【0024】
図6は、表示領域210に発生する温度分布を表す概略的な等温線図である。図2、図4、図6を用いて、表示領域210中で生ずる温度分布が説明される。尚、図6において、等温線を明瞭に示すために、表示領域210及び熱源として作用する駆動回路基板300は、点線で概略的に描かれている。
【0025】
上述の如く、駆動回路基板300が映像の表示のために表示パネル200を駆動すると、駆動回路基板300は熱を発する。駆動回路基板300からの熱は、基板220を通じて、表示領域210へ伝達される。この結果、表示領域210には、不均一な温度分布が発生する。
【0026】
図6に示される表示領域210中には、駆動回路基板300を取り囲む等温線C1及び等温線C1を取り囲む等温線C2が示されている。上述の如く、本実施形態において、駆動回路基板300は、熱源として作用するので、等温線C1によって囲まれる領域は、表示領域210中、最も高温となる。以下の説明において、等温線C1によって囲まれる領域は、「高温領域」と称される。等温線C2より外側の領域は、表示領域210中、比較的低温である。以下の説明において、等温線C2より外側の領域は、「低温領域」と称される。等温線C1と等温線C2とによって囲まれる領域は、低温領域と高温領域との間の温度である。以下の説明において、等温線C1と等温線C2とによって囲まれる領域は、「中間領域」と称される。本実施形態において、低温領域又は中間領域は、第1領域として例示される。高温領域は、第2領域として例示される。
【0027】
本実施形態において、駆動回路基板300は、熱源として作用するので、高温領域は駆動回路基板300の近くで発生し、駆動回路基板300から離れるにつれて温度は低下する。駆動回路基板以外の他の要素が表示領域の近くで発熱するならば、当該他の熱源要素の周囲で高温領域が発生する。
【0028】
本実施形態において、駆動回路基板300は、基板220の第2面222の中央領域に固定される。代替的に、駆動回路基板が、第2面の上部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の上部に発生し、低温領域は表示領域の下部に発生する。駆動回路基板が、第2面の下部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の下部に発生し、低温領域は表示領域の上部に発生する。駆動回路基板が、第2面の右部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の右部に発生し、低温領域は表示領域の左部に発生する。駆動回路基板が、第2面の左部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の左部に発生し、低温領域は表示領域の右部に発生する。
【0029】
図7は、表示パネル200の概略的な部分断面図である。図2、図5及び図7を用いて、表示パネル200が説明される。
【0030】
表示パネル200は、表示画素211及び基板220に加えて、基板220の第1面221上に形成されたTFT基板230と、TFT基板230上に形成された平坦化層240と、を含む。TFT基板230及び平坦化層240は、表示画素211と基板220との間に形成される。平坦化層240は、表示画素211が形成される平坦な表面を提供する。
【0031】
表示画素211は、平坦化層240上に形成されたバンク部251を含む。バンク部251は、複数の表示画素211の輪郭を規定する。図7には、複数の表示画素211として、「赤色発光する表示画素(赤)」、「緑色発光する表示画素(緑)」及び「青色発光する表示画素(青)」が示されている。バンク部251は、表示領域210をこれらの表示画素211の領域に区画する。本実施形態において、表示パネル200は、赤、緑及び青の色相を用いて、映像を表現する。代替的に、表示パネルは、他の色相(例えば、白)を用いて、映像を表現してもよい。
【0032】
表示画素211は、平坦化層240上に設置された反射陽極252と、反射陽極252に対向する透明陰極253と、を更に含む。反射陽極252は、バンク部251の間に配設される。TFT基板230は、駆動回路基板300からの駆動信号に応じた大きさの電圧を反射陽極252と透明陰極253との間に生じさせる。
【0033】
表示画素211は、バンク部251及び反射陽極252によって規定される凹部内に形成された機能層260を更に含む。機能層260は、反射陽極252上に積層された正孔注入層261と、正孔注入層261上に積層された正孔輸送層262と、正孔輸送層262上に積層された発光層263と、発光層263上に積層された電子輸送層264と、電子輸送層264と透明陰極253との間に形成された電子注入層265と、を含む。
【0034】
上述の如く、TFT基板230は、反射陽極252と透明陰極253との間に電圧を生じさせる。反射陽極252と透明陰極253との間で印加された電圧下で、機能層260に電流が流れる。この結果、機能層260の発光層263が発光する。本実施形態において、TFT基板230は、表示画素211に電流を供給するためのTFT層として例示される。
【0035】
「表示画素(赤)」に用いられる発光層263は、赤色発光する。「表示画素(緑)」に用いられる発光層263は、緑色発光する。「表示画素(青)」に用いられる発光層263は、青色発光する。本実施形態において、発光層263は、有機発光材料を含有するインクを用いて形成される。有機発光材料を含有するインクは、一般的に、熱の影響を受けやすい。この結果、有機発光材料を含有するインクを用いた表示画素の輝度は、経時的に低下しやすい。後述される本実施形態の原理は、熱に起因する表示画素の輝度の低下を好適に抑制する。尚、本実施形態の原理は、熱の影響を受けやすい他の材料を用いた表示画素に対しても、好適に適用される。
【0036】
図8は、機能層260の概略的な断面図である。図6乃至図8を用いて、機能層260が説明される。
【0037】
図8には、「低温領域」に形成された機能層260、「中間領域」に形成された機能層260及び「高温領域」に形成された機能層260が示されている。低温領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEL」は、中間領域に形成された発光層263の膜厚「TEM」及び高温領域に形成された発光層263の膜厚「TEH」よりも小さい。高温領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEH」は、他の領域(中間領域及び低温領域)に形成された発光層263の膜厚(「TEM」,「TEL」)よりも大きい。中間領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEM」は、低温領域の発光層263の膜厚と高温領域の発光層263の膜厚(「TEL」,「TEH」)の間の大きさである。尚、機能層260の他の層(正孔注入層261、正孔輸送層262、電子輸送層264及び電子注入層265)の膜厚は、低温領域、中間領域及び高温領域に亘って一定である。この結果、低温領域に形成された機能層260の膜厚「TFL」は、最も小さくなる。高温領域に形成された機能層260の膜厚「TFH」は、最も大きくなる。中間領域に形成された機能層260の膜厚「TFM」は、低温領域の機能層260の膜厚「TFL」と高温領域の機能層260の膜厚「TFH」との間の大きさとなる。
【0038】
本実施形態において、機能層260の膜厚は、発光層263の膜厚に応じて調整される。尚、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも1つの層の膜厚の結果、機能層の膜厚が調整されてもよい。
【0039】
駆動回路基板300は、機能層260の厚さに応じて、表示画素211に印加される電圧(反射陽極252と透明陰極253との間の電圧)を画素毎に設定する。例えば、駆動回路基板300は、所定の輝度「E」で、低温領域の表示画素211を発光するために、低温領域の表示画素211に電圧「V1」を設定するならば、高温領域の表示画素211に対して、電圧「V1」よりも大きな電圧「V2」を設定し、高温領域の表示画素211を輝度「E」で発光させてもよい。
【0040】
(表示装置の製造方法)
図9は、表示装置100の製造方法を表す概略的なフローチャートである。図9に示される工程が説明される。
【0041】
(ステップS100)
表示装置100を製造するために、まず、基板220への積層が行われる。
【0042】
図10は、ステップS100において作成される支持基板400の概略的な部分断面図である。図11は、図10に示される支持基板400の概略的な平面図である。図2、図9乃至図10を用いて、ステップS100が説明される。
【0043】
ステップS100において、基板220上にTFT基板230が形成される。その後、TFT基板230上に平坦化層240が積層される。この結果、平坦な面が形成される。
【0044】
平坦化層240によって形成された面上に反射陽極252が所定間隔で配置される。その後、反射陽極252の配置パターンに合わせて、バンク部251が平坦化層240上に形成される。この結果、機能層260を形成するための形成領域500が基板220上に規定されることとなる。形成領域500は、図2に関連して説明された表示領域210に対応する。基板220上に形成領域500が規定されると、ステップS200が実行される。本実施形態において、ステップS100は、第1工程として例示される。また、形成領域500は、対応領域として例示される。
【0045】
(ステップS200)
ステップS200において、所定の温度分布に従って、形成領域500が複数の分割領域に区分される。以下の説明において、所定の温度分布として、図6に関連して説明された温度分布が用いられる。本実施形態において、ステップS200は、第2工程として例示される。
【0046】
図12は、形成領域500中に設定される分割領域の概略図である。図6、図9及び図12を用いて、形成領域500中に設定される分割領域が説明される。
【0047】
図12に示される形成領域500中には、図6に関連して説明された等温線C1,C2が示されている。等温線C1,C2に加えて、図12に示される形成領域500中には、等温線C1に外接するように規定された矩形枠F1及び等温線C2に外接するように規定された矩形枠F2が示されている。以下の説明において、矩形枠F1内の領域は、「分割領域D1」と称される。矩形枠F1と矩形枠F2との間の領域は、「分割領域D2」と称される。矩形枠F2よりも外側の領域は、「分割領域D3」と称される。
【0048】
図12に示される如く、等温線C1,C2に外接する矩形枠F1,F2によって分割領域D1乃至D3が規定されるならば、分割領域D1乃至D3それぞれは、形成領域500内の温度分布の温度域に対応することとなる。即ち、分割領域D1は、高温領域の温度域に対応する。分割領域D2は、中間領域の温度域に対応する。分割領域D3は、低温領域の温度域に対応する。
【0049】
高温領域の温度が、「T1」で表されるならば、後述されるステップS300において、分割領域D1の温度は、「T1」に設定されてもよい。代替的に、高温領域と分割領域D1との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と高温領域の温度「T1」とを用いて、ステップS300において、分割領域D1の温度が設定されてもよい。
【0050】
中間領域の温度が、「T2」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D2の温度は、「T2」に設定されてもよい。代替的に、中間領域と分割領域D2との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と中間領域の温度「T2」とを用いて、ステップS300において、分割領域D2の温度が設定されてもよい。
【0051】
低温領域の温度が、「T3」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D3の温度は、「T3」に設定されてもよい。代替的に、低温領域と分割領域D3との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と低温領域の温度「T3」とを用いて、ステップS300において、分割領域D3の温度が設定されてもよい。
【0052】
図12に示される分割領域D1乃至D3の設定において、等温線C1,C2に外接する矩形枠F1,F2が用いられている。代替的に或いは追加的に、等温線に内接する矩形枠が形成領域を区分するために用いられてもよい。分割領域の設定の基準となる等温線の数は、「1」であってもよく、「2」よりも大きくともよい。分割領域の設定の基準となる等温線の数が大きいならば、ステップS300において設定される膜厚分布に対して、表示領域の温度分布は一層反映される。一方、分割領域の設定の基準となる等温線の数の増大は、ステップS300以降の工程を煩雑にすることもあるので、好ましくは、分割領域は、温度分布への適合度とステップS300以降の工程の煩雑さとを考慮に入れて設定される。
【0053】
図13は、形成領域500中に設定される他の分割領域の概略図である。図7、図9、図12及び図13を用いて、形成領域500中に設定される分割領域が説明される。
【0054】
図13に示される形成領域500中には、マトリックス状に配列された矩形状の分割領域D11乃至D76が示されている。図13に示される如く、ステップS200において、形成領域500中で生ずる温度分布に無関係に、分割領域D11乃至D76が設定されてもよい。後述されるステップS300において、温度分布に対応した温度が分割領域D11乃至D76に割り当てられ、機能層260の膜厚が設定されるならば、形成領域500中の温度分布は膜厚分布に反映されることとなる。
【0055】
例えば、図13に示される分割領域D44は、高温領域に包含される。したがって、高温領域の温度が、「T1」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D11の温度は、「T1」に設定されてもよい。
【0056】
図13に示される分割領域D22は、高温領域と中間領域とを含む。したがって、高温領域の温度が「T1」で表され、且つ、中間領域の温度が「T2」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D22の温度は、「T1」と「T2」との間に設定されてもよい。
【0057】
図13に示される分割領域D11は、低温領域に略包含される。したがって、低温領域の温度が「T3」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D11の温度は、「T3」に設定されてもよい。
【0058】
図13において、形成領域500は、7行×6列のマトリックス状に分割されている。尚、形成領域の分割パターンは、図13に示されるパターンよりも粗くともよく、細かくてもよい。分割パターンが細かく設定されるならば、ステップS300において設定される膜厚分布に対して、表示領域の温度分布は一層反映される。一方、分割パターンの細かさは、ステップS300以降の工程を煩雑にすることもあるので、好ましくは、分割パターンは、温度分布への適合度とステップS300以降の工程の煩雑さを考慮に入れて設定される。
【0059】
図12及び図13において、複数の矩形領域によって分割領域が表されている。代替的に、他の形状(三角形領域、円形領域や他の幾何学的形状)の領域によって分割領域が規定されてもよい。
【0060】
図12及び図13に示される等温線図は、後述されるステップS300において、基準として用いられる温度分布に関する分布データとして例示される。分布データは、基板200への積層工程(ステップS100)の前に予め取得されてもよい。後述されるステップS300において、機能層260の膜厚は、分布データに基づき設定される。
【0061】
分布データは、好適には、本実施形態の表示装置100が製造される製造条件と共通する製造条件で製造された他の表示装置から取得される。例えば、分布データを取得するための他の表示装置が、本実施形態の表示装置100の表示パネル200と駆動回路基板300との組立工程に用いられた組立ラインで組み立てられるならば、分布データは、表示パネル200と駆動回路基板300との間の取付誤差に起因する誤差をほとんど含まない。或いは、分布データを取得するための他の表示装置が、本実施形態の表示装置100の駆動回路基板300と同一の製造ラインで製造された駆動回路基板を備えるならば、分布データは、駆動回路基板の発熱特性に起因する誤差をほとんど含まない。
【0062】
更に好ましくは、温度分布データを取得するために、共通する製造条件下で製造された複数の表示装置が用意される。複数の表示装置の温度分布データが平均化されたデータがステップS300以降の工程において、基準として用いられるならば、機能層260の膜厚は、一層、適切に設定される。
【0063】
形成領域500が複数の分割領域の分割された後、ステップS300が実行される。
【0064】
(ステップS300)
上述の如く、ステップS300において、複数の分割領域それぞれに対して機能層260の膜厚が設定される。本実施形態において、ステップS300は、第3工程として例示される。
【0065】
図14は、図13と同様に分割領域D11乃至D76に区分された形成領域500の概略図である。図8、図12乃至図14を用いて、機能層260の膜厚の設定が説明される。
【0066】
図13に関連して説明された如く、温度分布を反映した温度データが分割領域D11乃至D76それぞれに割り当てられる。図14には、分割領域D11乃至D76にそれぞれ割り当てられた温度データTD11乃至TD76が示されている。図13に関連して説明された如く、例えば、高温領域に包含される分割領域D44に対して割り当てられた温度データTD44は、他の分割領域よりも高く設定される。低温領域に略包含される分割領域D11に対して割り当てられた温度データTD11は、他の分割領域よりも低く設定される。高温領域と中間領域とを含む分割領域D22に割り当てられた温度データTD22は、温度データTD44と温度データTD11との間の温度に設定される。
【0067】
図14には、分割領域D11乃至D76それぞれに対して設定された膜厚TF11乃至TF76が示されている。図8に関連して説明された如く、高い温度を表す温度データが割り当てられた分割領域に対して、大きな膜厚が設定される。上述の如く、分割領域D44に割り当てられた温度データTD44は、他の分割領域(例えば、分割領域D22や分割領域D11)よりも高い温度を指し示すので、分割領域D44に設定される膜厚TF44は、他の領域に設定される膜厚(例えば、分割領域D22に設定される膜厚TF22や分割領域D11に設定される膜厚TF11)よりも高い。分割領域D11に割り当てられた温度データTD11は、他の分割領域(例えば、分割領域D22や分割領域D44)よりも低い温度を指し示すので、分割領域D11に設定される膜厚TF11は、他の領域に設定されるエイジング率(例えば、分割領域D22に設定される膜厚TF22や分割領域D44に設定される膜厚TF44)よりも低い。分割領域D22に割り当てられた温度データTD22は、上述の如く、分割領域D11に割り当てられた温度データTD11と分割領域D44に割り当てられた温度データTD44との間の温度を指し示す。したがって、分割領域D22に対して、分割領域D11に設定された膜厚TF11と分割領域D44に設定された膜厚TF44との間の大きさの膜厚TF22が設定される。
【0068】
上述の膜厚の設定の手法は、図12に関連して説明された形成領域500の区分手法とともに用いられてもよい。代替的に、上述の膜厚の設定の手法は、温度分布を反映するように設定された他の区分手法に従って分割された形成領域に対して適用されてもよい。分割領域それぞれに対して膜厚が設定されると、ステップS400が実行される。
【0069】
(ステップS400)
ステップS400において、ステップS300の工程に従って設定された膜厚に従って、複数の分割領域それぞれに対して、機能層260が形成される。本実施形態において、ステップ400は、第4工程として例示される。
【0070】
図15A乃至図15Cは、反射陽極252上に積層された正孔注入層261及び正孔輸送層262を備える支持基板400の概略的な部分断面図である。図7、図8、図15A乃至図15Cを用いて、機能層260の形成が説明される。
【0071】
図15A乃至図15Cに示される正孔注入層261及び正孔輸送層262は、既知の手法を用いて、反射陽極252上に積層されてもよい。図15A乃至図15Cには、インクジェット装置IJが、支持基板400上に示されている。本実施形態において、発光層263は、インクジェット装置IJを用いて形成される。インクジェット装置IJは、ステップS200において設定された分割領域に応じて、有機発光材料を含有するインクの塗布量を調整する。この結果、図8に関連して説明されたように、温度分布に応じて、機能層260の膜厚が異なることとなる。代替的に、機能層260の他の層がインクジェット装置IJを用いて形成されてもよい。溶融樹脂といった液体材料を塗布することができるインクジェット装置は、一般的に、塗布領域及び塗布量の点において、細かな設定に対応することができる。したがって、インクジェット装置は、複雑な温度分布形状や分割領域のパターンに対応して、設定された膜厚の機能層を形成することができる。
【0072】
図15Aは、高温領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。図15Bは、中間領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。図15Cは、低温領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。
【0073】
図15A乃至図15Cに示される如く、インクジェット装置IJから塗布されるインクの塗布量は、領域ごとに相違する。インクジェット装置IJは、高温領域内に区画された分割領域に対して、最も多くのインクを塗布する。インクジェット装置IJは、低温領域内に区画された分割領域に対して、最も少ない量のインクを塗布する。中間領域内におけるインクの塗布量は、低温領域において塗布されるインクの量と高温領域において塗布されるインクの量との間である。インクジェット装置IJが、分割領域に応じて、インクの塗布量を変更する結果、図8に関連して説明された如く、所望の発光層263の膜厚が得られる。
【0074】
上記のように、発光層263の形成において、インクジェット装置IJを用いた塗布方式について例示的に説明をした。発光層263の膜厚が適切に増減されるならば、他の手法(例えば、凸版印刷法やスクリーン印刷法、または蒸着法)によって、発光層263を形成してもよい。
【0075】
発光層263が形成された後、電子輸送層264及び電子注入層265が順次積層される。その後、透明陰極253が更に積層される。電子輸送層264、電子注入層265及び透明陰極253は、既知の手法に従って積層されてもよい。
【0076】
本実施形態において、インクジェット装置IJは、発光層263の膜厚を好適に調整する。機能層が、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも1つの層の膜厚の調整により、所望の膜厚に形成されるならば、インクジェット装置は、膜厚調整処理が行われる対象の層の形成に用いられてもよい。この場合、インクジェット装置から塗布されるインクは、対象の層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び/又は電子注入層)に用いられる材料を含有することとなる。
【0077】
(輝度特性)
図16A及び図16Bは、表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。図8、図16A及び図16Bを用いて、表示装置の輝度特性が説明される。
【0078】
図16Aは、高温領域の表示画素の輝度特性及び低温領域の表示画素の輝度特性を表す概略的なグラフである。図8に関連して説明された如く、図16Aに示される輝度特性において、高温領域の表示画素の機能層は、低温領域の表示画素の機能層よりも厚い。
【0079】
図16Bも、高温領域の表示画素の輝度特性及び低温領域の表示画素の輝度特性を表す概略的なグラフである。図16Aとは異なり、図16Bに示される輝度特性において、高温領域の表示画素の機能層は、低温領域の表示画素の機能層と略等しい厚さを有する。尚、図16Aと図16Bとの間において、低温領域の表示画素の機能層の膜厚は等しい。したがって、図16A及び図16Bにおいて、低温領域の表示画素に対応する曲線は共通である。
【0080】
図16A及び図16Bのグラフの横軸は、表示画素の発光時間を表す。図16A及び図16Bのグラフにおいて、表示画素は、総計、1000時間に亘って発光している。図16A及び図16Bのグラフの縦軸は、所定電流が表示画素に所定時間印加されたときの表示画素の相対輝度を表す。
【0081】
表示画素の輝度は、経時的に低下する。したがって、表示画素の輝度及びこれらの相対輝度は、時間の関数として表現される。以下の数式において、「t」は、時刻を意味する。BH(t)は、時刻「t」における高温領域の表示画素の輝度を表す。BL(t)は、時刻「t」における低温領域の表示画素の輝度を表す。RBH(t)は、時刻「t」における高温領域の表示画素の相対輝度を表す。RBL(t)は、時刻「t」における低温領域の表示画素の相対輝度を表す。BH(0)は、発光開始時刻における高温領域の表示画素の輝度を表す。BL(0)は、発光開始時刻における低温領域の表示画素の輝度を表す。
【0082】
(数1)
【0083】
(数2)
【0084】
図16A及び図16Bの高温領域の表示画素に対応する曲線を比較すると、高温領域と低温領域との間で一定の膜厚となる条件下において、発光開始時刻から100時間を経過するまでの間に相対輝度RBH(t)は著しく低下することが分かる。一方、高温領域において膜厚が増大されるならば、発光開始時刻から100時間を経過するまでの間の相対輝度RBH(t)の低下は緩和される。
【0085】
以下の数式において、BDH(t)は、高温領域の表示画素に対する相対輝度の降下率を表す。BDL(t)は、低温領域の表示画素に対する相対輝度の降下率を表す。
【0086】
(数3)
【0087】
(数4)
【0088】
図16Aに示される表示画素間の相対輝度の降下率の差異は、「2%」未満である。尚、高温領域の表示画素の降下率と低温領域の表示画素の降下率との差異が、「10%」以下であるならば、表示領域中における経時的な輝度変化のばらつき(表示領域中の温度分布によって規定される領域間での輝度変化のばらつき)に起因する画質の低下は観察されにくい。
【0089】
上述された実施形態に係る表示装置は、以下の構成を備える。上述された実施形態に係る表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0090】
上述された実施形態の一の局面に係る表示装置は、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする。
【0091】
上記構成によれば、表示装置の表示パネルは、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む。表示装置の駆動部は、表示パネルを駆動する。表示画素は、電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含む。映像を表示するために表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、表示領域には、第1領域と第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0092】
上記構成において、前記駆動部は、前記機能層の厚さに応じて、前記表示画素ごとに、該表示画素に印加される電圧を設定する駆動回路基板を含むことが好ましい。
【0093】
上記構成によれば、駆動部として用いられる駆動回路基板は、機能層の厚さに応じて、表示画素ごとに、表示画素に印加される電圧を設定するので、表示装置は、映像を適切に表示することができる。
【0094】
上記構成において、前記機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0095】
上記構成によれば、機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含む。したがって、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の膜厚の調整の結果、第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚く形成されることとなる。したがって、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0096】
上記構成において、前記駆動回路基板は、前記表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するドライバ素子を備えることが好ましい。
【0097】
上記構成によれば、駆動回路基板のドライバ素子は、表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するので、表示パネルは、駆動信号に応じて、映像を適切に表示することができる。
【0098】
上記構成において、前記ドライバ素子は、前記温度分布を生じさせることが好ましい。
【0099】
上記構成によれば、ドライバ素子によって、第1領域と第2領域とを有する温度分布が生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0100】
上記構成において、前記表示パネルは、前記TFT層が形成される第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含み、前記駆動回路基板は、前記第2面に取り付けられ、前記第2領域は、前記第1領域よりも前記駆動回路基板の近くで生ずることが好ましい。
【0101】
上記構成によれば、表示パネルは、TFT層が形成される第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含む。駆動回路基板は、第2面に取り付けられる。第2領域は、第1領域よりも駆動回路基板の近くで生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0102】
上述された実施形態の一の局面に係る映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法は、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする。
【0103】
上記構成によれば、第1工程において、映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板が用意される。第2工程において、表示領域に対応する前記基板の対応領域は、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けされる。第3工程において、複数の分割領域それぞれに対して、電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さが設定される。第4工程において、機能層が、複数の分割領域それぞれに対して形成される。この結果、複数の表示画素を形成される。尚、第4工程において形成される機能層は、第3工程において設定された前記機能層の厚さに従う。第3工程において、第2領域に対応する分割領域に形成される機能層の厚さは、第1領域に対応する分割領域に形成される機能層の厚さよりも大きく設定されるので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0104】
上記構成において、前記第4工程において、前記機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成されることが好ましい。
【0105】
上記構成によれば、第4工程において、機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成される。したがって、機能層の設定の基準として用いられる温度分布が複雑な形状であっても、第3工程において設定された膜厚で機能層が形成されることとなる。
【0106】
上記構成において、前記第2工程において、前記対応領域は、前記温度分布の温度域に基づき、前記複数の分割領域に分割されることが好ましい。
【0107】
上記構成によれば、第2工程において、対応領域は、温度分布の温度域に基づき、複数の分割領域に分割されるので、機能層の厚さは、表示領域中の温度分布に対応して適切に設定される。
【0108】
上記構成において、前記表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から前記温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含み、前記機能層の厚さは、前記分布データに基づき設定されることが好ましい。
【0109】
上記構成によれば、表示装置の製造方法は、表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含む。機能層の厚さは、分布データに基づき設定されるので、一定の基準の下、分割領域の設定がなされる。
【0110】
上記構成において、前記分布データは、前記共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであることが好ましい。
【0111】
上記構成によれば、分布データは、共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであるので、表示領域は適切に区分される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
上述の実施形態に係る原理は、映像を表示するための表示装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0113】
100・・・・・・・・・・表示装置
210・・・・・・・・・・表示領域
211・・・・・・・・・・表示画素
220・・・・・・・・・・基板
221・・・・・・・・・・第1面
222・・・・・・・・・・第2面
230・・・・・・・・・・TFT基板
260・・・・・・・・・・機能層
261・・・・・・・・・・正孔注入層
262・・・・・・・・・・正孔輸送層
263・・・・・・・・・・発光層
264・・・・・・・・・・電子輸送層
265・・・・・・・・・・電子注入層
300・・・・・・・・・・駆動回路基板
320・・・・・・・・・・ドライバ素子
500・・・・・・・・・・形成領域
D1乃至D3・・・・・・・分割領域
D11乃至D76・・・・・分割領域
IJ・・・・・・・・・・・インクジェット装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する表示装置及び当該表示装置を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、一般的に、映像を表示するための表示パネルと、表示パネルを駆動する駆動回路基板と、これらを収容並びに保持する筐体と、を備える。駆動回路基板が表示パネルに近接して取り付けられるならば、表示パネル及び駆動回路基板は、筐体内にコンパクトに収容される。
【0003】
駆動回路基板が表示パネルを駆動している間、駆動回路基板は発熱する。駆動回路基板が表示パネルに近接して取り付けられるならば、駆動回路基板からの熱は、表示パネルに伝達されやすくなる。
【0004】
表示装置として、有機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイが例示される。有機ELディスプレイは、有機EL発光素子を含む。有機EL発光素子の発光層は、熱によって、特に劣化しやすい。したがって、駆動回路基板からの熱による表示パネルの温度上昇下において、有機EL発光素子の輝度は、経時的に低下する。
【0005】
特許文献1は、駆動回路基板から発光素子への熱伝達を抑制するための構造を有する表示装置を開示する。特許文献1によれば、駆動回路基板と発光素子を有する表示パネルとの間に空隙が形成される。空隙部によって、表示パネル中での局所的な高温領域の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−156035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駆動回路基板と表示パネルとの間の空隙は、駆動回路基板の近くの領域の温度上昇を緩和するが、表示パネル中には、尚、高温領域と低温領域とを含む不均一な温度分布が発生する。高温領域に存する発光素子の寿命は、低温領域に存する発光素子の寿命よりも短くなる。この結果、高温領域において、低温領域よりも早く輝度の低下が生ずる。したがって、表示装置は、長期に亘って均一な画質を維持することができない。
【0008】
本発明は、長期に亘って均一な画質を維持することができる表示装置及び当該表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る表示装置は、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の局面に係る映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法は、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る表示装置は、表示領域中の温度分布に応じて設定された厚さの機能層を備えるので、長期に亘って均一な画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】表示装置の概略的な斜視図である。
【図2】図1に示される表示装置の表示パネルの概略的な正面図である。
【図3】図2に示される表示パネルの概略的な側面図である。
【図4】図2に示される表示パネルの概略的な背面図である。
【図5】図2に示される表示パネルに取り付けられる駆動回路基板の概略的なブロック図である。
【図6】図2に示される表示パネルの表示領域に発生する温度分布を表す概略的な等温線図である。
【図7】図2に示される表示パネルの概略的な部分断面図である。
【図8】図7に示される表示パネルの機能層の概略的な断面図である。
【図9】図1に示される表示装置の製造方法を表す概略的なフローチャートである。
【図10】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図11】図10に示される支持基板の概略的な平面図である。
【図12】図10に示される支持基板の形成領域中に設定される分割領域の概略図である。
【図13】図10に示される支持基板の形成領域中に設定される他の分割領域の概略図である。
【図14】図13に示される分割領域を含む形成領域の概略図である。
【図15A】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図15B】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図15C】図9に示される製造工程において作成される支持基板の概略的な部分断面図である。
【図16A】図1に示される表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。
【図16B】一様な機能層の膜厚分布を有する表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、表示装置及び当該表示装置の製造方法が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、表示装置及び製造方法の原理を容易に理解させることを目的とするものであり、表示装置及び製造方法の原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0014】
(表示装置の構造)
図1は、表示装置100の概略的な斜視図である。図1を用いて、表示装置100が説明される。
【0015】
表示装置100は、映像を表示する表示パネル200と、表示パネル200を支持する筐体110と、を備える。表示パネル200は、映像が表示される表示領域210を備える。表示領域210は、筐体110から露出する。表示装置100は、表示パネル200を駆動する駆動回路基板を更に備える。駆動回路基板は、筐体110内に配設されるので、図1には示されていない。本実施形態において、駆動回路基板は、駆動部として例示される。
【0016】
図1に示される表示装置100は、放送波を受信し、映像を表示するテレビ装置である。代替的に、パーソナルコンピュータのディスプレイ装置、携帯電話やスマートフォンといった通信機器のディスプレイや映像を表示することができる他の装置が表示装置として用いられてもよい。
【0017】
図2は、表示パネル200の概略的な正面図である。図2を用いて、表示パネル200が説明される。
【0018】
表示パネル200は、行列状に配置された複数の表示画素211と、表示画素211を支持するための基板220と、を備える。表示領域210は、水平方向及び垂直方向に整列された複数の表示画素211によって規定される。映像信号に応じて、複数の表示画素211が発光する結果、表示領域210に映像が表示される。
【0019】
図3は、表示パネル200の概略的な側面図である。図4は、表示パネル200の概略的な背面図である。図2乃至図4を用いて、表示パネル200が更に説明される。
【0020】
基板220は、表示領域210が形成される第1面221と、第1面221とは反対側の第2面222と、を含む。上述の駆動回路基板300は、第2面222に取り付けられる。本実施形態において、駆動回路基板300は、第2面222の略中央に直接的に取り付けられている。代替的に、駆動回路基板は、第2面の上部、下部、左部又は右部に取り付けられてもよい。或いは、駆動回路基板は、基板に固定されなくともよい。
【0021】
図5は、駆動回路基板300の概略的なブロック図である。図2及び図5を用いて、駆動回路基板300が説明される。
【0022】
駆動回路基板300は、映像信号が入力される入力ポート310と、表示パネル200に駆動信号を出力するドライバ素子320と、を備える。ドライバ素子320は、入力ポート310を介して入力された映像信号を処理し、駆動信号を生成する信号処理回路321と、駆動信号を出力する出力ポート322と、を含む。表示パネル200は、出力ポート322から出力された駆動信号によって駆動される。
【0023】
映像信号から駆動信号への変換処理に伴って、ドライバ素子320は発熱する。この結果、ドライバ素子320は、表示領域210に不均一な温度分布を生じさせる。本実施形態において、駆動回路基板300は、表示領域210に不均一な温度分布を生じさせる熱源として作用する。表示画素211は、駆動回路基板300が生じさせる温度分布に従って形成される。代替的に、他の要素が表示領域に不均一な温度分布を生じさせるならば、他の熱源要素が生じさせる温度分布に従って、表示画素が形成されてもよい。表示画素211の形成手法は後述される。
【0024】
図6は、表示領域210に発生する温度分布を表す概略的な等温線図である。図2、図4、図6を用いて、表示領域210中で生ずる温度分布が説明される。尚、図6において、等温線を明瞭に示すために、表示領域210及び熱源として作用する駆動回路基板300は、点線で概略的に描かれている。
【0025】
上述の如く、駆動回路基板300が映像の表示のために表示パネル200を駆動すると、駆動回路基板300は熱を発する。駆動回路基板300からの熱は、基板220を通じて、表示領域210へ伝達される。この結果、表示領域210には、不均一な温度分布が発生する。
【0026】
図6に示される表示領域210中には、駆動回路基板300を取り囲む等温線C1及び等温線C1を取り囲む等温線C2が示されている。上述の如く、本実施形態において、駆動回路基板300は、熱源として作用するので、等温線C1によって囲まれる領域は、表示領域210中、最も高温となる。以下の説明において、等温線C1によって囲まれる領域は、「高温領域」と称される。等温線C2より外側の領域は、表示領域210中、比較的低温である。以下の説明において、等温線C2より外側の領域は、「低温領域」と称される。等温線C1と等温線C2とによって囲まれる領域は、低温領域と高温領域との間の温度である。以下の説明において、等温線C1と等温線C2とによって囲まれる領域は、「中間領域」と称される。本実施形態において、低温領域又は中間領域は、第1領域として例示される。高温領域は、第2領域として例示される。
【0027】
本実施形態において、駆動回路基板300は、熱源として作用するので、高温領域は駆動回路基板300の近くで発生し、駆動回路基板300から離れるにつれて温度は低下する。駆動回路基板以外の他の要素が表示領域の近くで発熱するならば、当該他の熱源要素の周囲で高温領域が発生する。
【0028】
本実施形態において、駆動回路基板300は、基板220の第2面222の中央領域に固定される。代替的に、駆動回路基板が、第2面の上部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の上部に発生し、低温領域は表示領域の下部に発生する。駆動回路基板が、第2面の下部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の下部に発生し、低温領域は表示領域の上部に発生する。駆動回路基板が、第2面の右部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の右部に発生し、低温領域は表示領域の左部に発生する。駆動回路基板が、第2面の左部に固定されるならば、高温領域は、表示領域の左部に発生し、低温領域は表示領域の右部に発生する。
【0029】
図7は、表示パネル200の概略的な部分断面図である。図2、図5及び図7を用いて、表示パネル200が説明される。
【0030】
表示パネル200は、表示画素211及び基板220に加えて、基板220の第1面221上に形成されたTFT基板230と、TFT基板230上に形成された平坦化層240と、を含む。TFT基板230及び平坦化層240は、表示画素211と基板220との間に形成される。平坦化層240は、表示画素211が形成される平坦な表面を提供する。
【0031】
表示画素211は、平坦化層240上に形成されたバンク部251を含む。バンク部251は、複数の表示画素211の輪郭を規定する。図7には、複数の表示画素211として、「赤色発光する表示画素(赤)」、「緑色発光する表示画素(緑)」及び「青色発光する表示画素(青)」が示されている。バンク部251は、表示領域210をこれらの表示画素211の領域に区画する。本実施形態において、表示パネル200は、赤、緑及び青の色相を用いて、映像を表現する。代替的に、表示パネルは、他の色相(例えば、白)を用いて、映像を表現してもよい。
【0032】
表示画素211は、平坦化層240上に設置された反射陽極252と、反射陽極252に対向する透明陰極253と、を更に含む。反射陽極252は、バンク部251の間に配設される。TFT基板230は、駆動回路基板300からの駆動信号に応じた大きさの電圧を反射陽極252と透明陰極253との間に生じさせる。
【0033】
表示画素211は、バンク部251及び反射陽極252によって規定される凹部内に形成された機能層260を更に含む。機能層260は、反射陽極252上に積層された正孔注入層261と、正孔注入層261上に積層された正孔輸送層262と、正孔輸送層262上に積層された発光層263と、発光層263上に積層された電子輸送層264と、電子輸送層264と透明陰極253との間に形成された電子注入層265と、を含む。
【0034】
上述の如く、TFT基板230は、反射陽極252と透明陰極253との間に電圧を生じさせる。反射陽極252と透明陰極253との間で印加された電圧下で、機能層260に電流が流れる。この結果、機能層260の発光層263が発光する。本実施形態において、TFT基板230は、表示画素211に電流を供給するためのTFT層として例示される。
【0035】
「表示画素(赤)」に用いられる発光層263は、赤色発光する。「表示画素(緑)」に用いられる発光層263は、緑色発光する。「表示画素(青)」に用いられる発光層263は、青色発光する。本実施形態において、発光層263は、有機発光材料を含有するインクを用いて形成される。有機発光材料を含有するインクは、一般的に、熱の影響を受けやすい。この結果、有機発光材料を含有するインクを用いた表示画素の輝度は、経時的に低下しやすい。後述される本実施形態の原理は、熱に起因する表示画素の輝度の低下を好適に抑制する。尚、本実施形態の原理は、熱の影響を受けやすい他の材料を用いた表示画素に対しても、好適に適用される。
【0036】
図8は、機能層260の概略的な断面図である。図6乃至図8を用いて、機能層260が説明される。
【0037】
図8には、「低温領域」に形成された機能層260、「中間領域」に形成された機能層260及び「高温領域」に形成された機能層260が示されている。低温領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEL」は、中間領域に形成された発光層263の膜厚「TEM」及び高温領域に形成された発光層263の膜厚「TEH」よりも小さい。高温領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEH」は、他の領域(中間領域及び低温領域)に形成された発光層263の膜厚(「TEM」,「TEL」)よりも大きい。中間領域に形成された機能層260の発光層263の膜厚「TEM」は、低温領域の発光層263の膜厚と高温領域の発光層263の膜厚(「TEL」,「TEH」)の間の大きさである。尚、機能層260の他の層(正孔注入層261、正孔輸送層262、電子輸送層264及び電子注入層265)の膜厚は、低温領域、中間領域及び高温領域に亘って一定である。この結果、低温領域に形成された機能層260の膜厚「TFL」は、最も小さくなる。高温領域に形成された機能層260の膜厚「TFH」は、最も大きくなる。中間領域に形成された機能層260の膜厚「TFM」は、低温領域の機能層260の膜厚「TFL」と高温領域の機能層260の膜厚「TFH」との間の大きさとなる。
【0038】
本実施形態において、機能層260の膜厚は、発光層263の膜厚に応じて調整される。尚、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも1つの層の膜厚の結果、機能層の膜厚が調整されてもよい。
【0039】
駆動回路基板300は、機能層260の厚さに応じて、表示画素211に印加される電圧(反射陽極252と透明陰極253との間の電圧)を画素毎に設定する。例えば、駆動回路基板300は、所定の輝度「E」で、低温領域の表示画素211を発光するために、低温領域の表示画素211に電圧「V1」を設定するならば、高温領域の表示画素211に対して、電圧「V1」よりも大きな電圧「V2」を設定し、高温領域の表示画素211を輝度「E」で発光させてもよい。
【0040】
(表示装置の製造方法)
図9は、表示装置100の製造方法を表す概略的なフローチャートである。図9に示される工程が説明される。
【0041】
(ステップS100)
表示装置100を製造するために、まず、基板220への積層が行われる。
【0042】
図10は、ステップS100において作成される支持基板400の概略的な部分断面図である。図11は、図10に示される支持基板400の概略的な平面図である。図2、図9乃至図10を用いて、ステップS100が説明される。
【0043】
ステップS100において、基板220上にTFT基板230が形成される。その後、TFT基板230上に平坦化層240が積層される。この結果、平坦な面が形成される。
【0044】
平坦化層240によって形成された面上に反射陽極252が所定間隔で配置される。その後、反射陽極252の配置パターンに合わせて、バンク部251が平坦化層240上に形成される。この結果、機能層260を形成するための形成領域500が基板220上に規定されることとなる。形成領域500は、図2に関連して説明された表示領域210に対応する。基板220上に形成領域500が規定されると、ステップS200が実行される。本実施形態において、ステップS100は、第1工程として例示される。また、形成領域500は、対応領域として例示される。
【0045】
(ステップS200)
ステップS200において、所定の温度分布に従って、形成領域500が複数の分割領域に区分される。以下の説明において、所定の温度分布として、図6に関連して説明された温度分布が用いられる。本実施形態において、ステップS200は、第2工程として例示される。
【0046】
図12は、形成領域500中に設定される分割領域の概略図である。図6、図9及び図12を用いて、形成領域500中に設定される分割領域が説明される。
【0047】
図12に示される形成領域500中には、図6に関連して説明された等温線C1,C2が示されている。等温線C1,C2に加えて、図12に示される形成領域500中には、等温線C1に外接するように規定された矩形枠F1及び等温線C2に外接するように規定された矩形枠F2が示されている。以下の説明において、矩形枠F1内の領域は、「分割領域D1」と称される。矩形枠F1と矩形枠F2との間の領域は、「分割領域D2」と称される。矩形枠F2よりも外側の領域は、「分割領域D3」と称される。
【0048】
図12に示される如く、等温線C1,C2に外接する矩形枠F1,F2によって分割領域D1乃至D3が規定されるならば、分割領域D1乃至D3それぞれは、形成領域500内の温度分布の温度域に対応することとなる。即ち、分割領域D1は、高温領域の温度域に対応する。分割領域D2は、中間領域の温度域に対応する。分割領域D3は、低温領域の温度域に対応する。
【0049】
高温領域の温度が、「T1」で表されるならば、後述されるステップS300において、分割領域D1の温度は、「T1」に設定されてもよい。代替的に、高温領域と分割領域D1との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と高温領域の温度「T1」とを用いて、ステップS300において、分割領域D1の温度が設定されてもよい。
【0050】
中間領域の温度が、「T2」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D2の温度は、「T2」に設定されてもよい。代替的に、中間領域と分割領域D2との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と中間領域の温度「T2」とを用いて、ステップS300において、分割領域D2の温度が設定されてもよい。
【0051】
低温領域の温度が、「T3」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D3の温度は、「T3」に設定されてもよい。代替的に、低温領域と分割領域D3との間の形状的差異(面積及び/又は形状)に基づく補正値と低温領域の温度「T3」とを用いて、ステップS300において、分割領域D3の温度が設定されてもよい。
【0052】
図12に示される分割領域D1乃至D3の設定において、等温線C1,C2に外接する矩形枠F1,F2が用いられている。代替的に或いは追加的に、等温線に内接する矩形枠が形成領域を区分するために用いられてもよい。分割領域の設定の基準となる等温線の数は、「1」であってもよく、「2」よりも大きくともよい。分割領域の設定の基準となる等温線の数が大きいならば、ステップS300において設定される膜厚分布に対して、表示領域の温度分布は一層反映される。一方、分割領域の設定の基準となる等温線の数の増大は、ステップS300以降の工程を煩雑にすることもあるので、好ましくは、分割領域は、温度分布への適合度とステップS300以降の工程の煩雑さとを考慮に入れて設定される。
【0053】
図13は、形成領域500中に設定される他の分割領域の概略図である。図7、図9、図12及び図13を用いて、形成領域500中に設定される分割領域が説明される。
【0054】
図13に示される形成領域500中には、マトリックス状に配列された矩形状の分割領域D11乃至D76が示されている。図13に示される如く、ステップS200において、形成領域500中で生ずる温度分布に無関係に、分割領域D11乃至D76が設定されてもよい。後述されるステップS300において、温度分布に対応した温度が分割領域D11乃至D76に割り当てられ、機能層260の膜厚が設定されるならば、形成領域500中の温度分布は膜厚分布に反映されることとなる。
【0055】
例えば、図13に示される分割領域D44は、高温領域に包含される。したがって、高温領域の温度が、「T1」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D11の温度は、「T1」に設定されてもよい。
【0056】
図13に示される分割領域D22は、高温領域と中間領域とを含む。したがって、高温領域の温度が「T1」で表され、且つ、中間領域の温度が「T2」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D22の温度は、「T1」と「T2」との間に設定されてもよい。
【0057】
図13に示される分割領域D11は、低温領域に略包含される。したがって、低温領域の温度が「T3」で表されるならば、ステップS300において、分割領域D11の温度は、「T3」に設定されてもよい。
【0058】
図13において、形成領域500は、7行×6列のマトリックス状に分割されている。尚、形成領域の分割パターンは、図13に示されるパターンよりも粗くともよく、細かくてもよい。分割パターンが細かく設定されるならば、ステップS300において設定される膜厚分布に対して、表示領域の温度分布は一層反映される。一方、分割パターンの細かさは、ステップS300以降の工程を煩雑にすることもあるので、好ましくは、分割パターンは、温度分布への適合度とステップS300以降の工程の煩雑さを考慮に入れて設定される。
【0059】
図12及び図13において、複数の矩形領域によって分割領域が表されている。代替的に、他の形状(三角形領域、円形領域や他の幾何学的形状)の領域によって分割領域が規定されてもよい。
【0060】
図12及び図13に示される等温線図は、後述されるステップS300において、基準として用いられる温度分布に関する分布データとして例示される。分布データは、基板200への積層工程(ステップS100)の前に予め取得されてもよい。後述されるステップS300において、機能層260の膜厚は、分布データに基づき設定される。
【0061】
分布データは、好適には、本実施形態の表示装置100が製造される製造条件と共通する製造条件で製造された他の表示装置から取得される。例えば、分布データを取得するための他の表示装置が、本実施形態の表示装置100の表示パネル200と駆動回路基板300との組立工程に用いられた組立ラインで組み立てられるならば、分布データは、表示パネル200と駆動回路基板300との間の取付誤差に起因する誤差をほとんど含まない。或いは、分布データを取得するための他の表示装置が、本実施形態の表示装置100の駆動回路基板300と同一の製造ラインで製造された駆動回路基板を備えるならば、分布データは、駆動回路基板の発熱特性に起因する誤差をほとんど含まない。
【0062】
更に好ましくは、温度分布データを取得するために、共通する製造条件下で製造された複数の表示装置が用意される。複数の表示装置の温度分布データが平均化されたデータがステップS300以降の工程において、基準として用いられるならば、機能層260の膜厚は、一層、適切に設定される。
【0063】
形成領域500が複数の分割領域の分割された後、ステップS300が実行される。
【0064】
(ステップS300)
上述の如く、ステップS300において、複数の分割領域それぞれに対して機能層260の膜厚が設定される。本実施形態において、ステップS300は、第3工程として例示される。
【0065】
図14は、図13と同様に分割領域D11乃至D76に区分された形成領域500の概略図である。図8、図12乃至図14を用いて、機能層260の膜厚の設定が説明される。
【0066】
図13に関連して説明された如く、温度分布を反映した温度データが分割領域D11乃至D76それぞれに割り当てられる。図14には、分割領域D11乃至D76にそれぞれ割り当てられた温度データTD11乃至TD76が示されている。図13に関連して説明された如く、例えば、高温領域に包含される分割領域D44に対して割り当てられた温度データTD44は、他の分割領域よりも高く設定される。低温領域に略包含される分割領域D11に対して割り当てられた温度データTD11は、他の分割領域よりも低く設定される。高温領域と中間領域とを含む分割領域D22に割り当てられた温度データTD22は、温度データTD44と温度データTD11との間の温度に設定される。
【0067】
図14には、分割領域D11乃至D76それぞれに対して設定された膜厚TF11乃至TF76が示されている。図8に関連して説明された如く、高い温度を表す温度データが割り当てられた分割領域に対して、大きな膜厚が設定される。上述の如く、分割領域D44に割り当てられた温度データTD44は、他の分割領域(例えば、分割領域D22や分割領域D11)よりも高い温度を指し示すので、分割領域D44に設定される膜厚TF44は、他の領域に設定される膜厚(例えば、分割領域D22に設定される膜厚TF22や分割領域D11に設定される膜厚TF11)よりも高い。分割領域D11に割り当てられた温度データTD11は、他の分割領域(例えば、分割領域D22や分割領域D44)よりも低い温度を指し示すので、分割領域D11に設定される膜厚TF11は、他の領域に設定されるエイジング率(例えば、分割領域D22に設定される膜厚TF22や分割領域D44に設定される膜厚TF44)よりも低い。分割領域D22に割り当てられた温度データTD22は、上述の如く、分割領域D11に割り当てられた温度データTD11と分割領域D44に割り当てられた温度データTD44との間の温度を指し示す。したがって、分割領域D22に対して、分割領域D11に設定された膜厚TF11と分割領域D44に設定された膜厚TF44との間の大きさの膜厚TF22が設定される。
【0068】
上述の膜厚の設定の手法は、図12に関連して説明された形成領域500の区分手法とともに用いられてもよい。代替的に、上述の膜厚の設定の手法は、温度分布を反映するように設定された他の区分手法に従って分割された形成領域に対して適用されてもよい。分割領域それぞれに対して膜厚が設定されると、ステップS400が実行される。
【0069】
(ステップS400)
ステップS400において、ステップS300の工程に従って設定された膜厚に従って、複数の分割領域それぞれに対して、機能層260が形成される。本実施形態において、ステップ400は、第4工程として例示される。
【0070】
図15A乃至図15Cは、反射陽極252上に積層された正孔注入層261及び正孔輸送層262を備える支持基板400の概略的な部分断面図である。図7、図8、図15A乃至図15Cを用いて、機能層260の形成が説明される。
【0071】
図15A乃至図15Cに示される正孔注入層261及び正孔輸送層262は、既知の手法を用いて、反射陽極252上に積層されてもよい。図15A乃至図15Cには、インクジェット装置IJが、支持基板400上に示されている。本実施形態において、発光層263は、インクジェット装置IJを用いて形成される。インクジェット装置IJは、ステップS200において設定された分割領域に応じて、有機発光材料を含有するインクの塗布量を調整する。この結果、図8に関連して説明されたように、温度分布に応じて、機能層260の膜厚が異なることとなる。代替的に、機能層260の他の層がインクジェット装置IJを用いて形成されてもよい。溶融樹脂といった液体材料を塗布することができるインクジェット装置は、一般的に、塗布領域及び塗布量の点において、細かな設定に対応することができる。したがって、インクジェット装置は、複雑な温度分布形状や分割領域のパターンに対応して、設定された膜厚の機能層を形成することができる。
【0072】
図15Aは、高温領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。図15Bは、中間領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。図15Cは、低温領域内に区画された分割領域における支持基板400の概略的な部分断面図である。
【0073】
図15A乃至図15Cに示される如く、インクジェット装置IJから塗布されるインクの塗布量は、領域ごとに相違する。インクジェット装置IJは、高温領域内に区画された分割領域に対して、最も多くのインクを塗布する。インクジェット装置IJは、低温領域内に区画された分割領域に対して、最も少ない量のインクを塗布する。中間領域内におけるインクの塗布量は、低温領域において塗布されるインクの量と高温領域において塗布されるインクの量との間である。インクジェット装置IJが、分割領域に応じて、インクの塗布量を変更する結果、図8に関連して説明された如く、所望の発光層263の膜厚が得られる。
【0074】
上記のように、発光層263の形成において、インクジェット装置IJを用いた塗布方式について例示的に説明をした。発光層263の膜厚が適切に増減されるならば、他の手法(例えば、凸版印刷法やスクリーン印刷法、または蒸着法)によって、発光層263を形成してもよい。
【0075】
発光層263が形成された後、電子輸送層264及び電子注入層265が順次積層される。その後、透明陰極253が更に積層される。電子輸送層264、電子注入層265及び透明陰極253は、既知の手法に従って積層されてもよい。
【0076】
本実施形態において、インクジェット装置IJは、発光層263の膜厚を好適に調整する。機能層が、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも1つの層の膜厚の調整により、所望の膜厚に形成されるならば、インクジェット装置は、膜厚調整処理が行われる対象の層の形成に用いられてもよい。この場合、インクジェット装置から塗布されるインクは、対象の層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び/又は電子注入層)に用いられる材料を含有することとなる。
【0077】
(輝度特性)
図16A及び図16Bは、表示装置の輝度特性を概略的に表すグラフである。図8、図16A及び図16Bを用いて、表示装置の輝度特性が説明される。
【0078】
図16Aは、高温領域の表示画素の輝度特性及び低温領域の表示画素の輝度特性を表す概略的なグラフである。図8に関連して説明された如く、図16Aに示される輝度特性において、高温領域の表示画素の機能層は、低温領域の表示画素の機能層よりも厚い。
【0079】
図16Bも、高温領域の表示画素の輝度特性及び低温領域の表示画素の輝度特性を表す概略的なグラフである。図16Aとは異なり、図16Bに示される輝度特性において、高温領域の表示画素の機能層は、低温領域の表示画素の機能層と略等しい厚さを有する。尚、図16Aと図16Bとの間において、低温領域の表示画素の機能層の膜厚は等しい。したがって、図16A及び図16Bにおいて、低温領域の表示画素に対応する曲線は共通である。
【0080】
図16A及び図16Bのグラフの横軸は、表示画素の発光時間を表す。図16A及び図16Bのグラフにおいて、表示画素は、総計、1000時間に亘って発光している。図16A及び図16Bのグラフの縦軸は、所定電流が表示画素に所定時間印加されたときの表示画素の相対輝度を表す。
【0081】
表示画素の輝度は、経時的に低下する。したがって、表示画素の輝度及びこれらの相対輝度は、時間の関数として表現される。以下の数式において、「t」は、時刻を意味する。BH(t)は、時刻「t」における高温領域の表示画素の輝度を表す。BL(t)は、時刻「t」における低温領域の表示画素の輝度を表す。RBH(t)は、時刻「t」における高温領域の表示画素の相対輝度を表す。RBL(t)は、時刻「t」における低温領域の表示画素の相対輝度を表す。BH(0)は、発光開始時刻における高温領域の表示画素の輝度を表す。BL(0)は、発光開始時刻における低温領域の表示画素の輝度を表す。
【0082】
(数1)
【0083】
(数2)
【0084】
図16A及び図16Bの高温領域の表示画素に対応する曲線を比較すると、高温領域と低温領域との間で一定の膜厚となる条件下において、発光開始時刻から100時間を経過するまでの間に相対輝度RBH(t)は著しく低下することが分かる。一方、高温領域において膜厚が増大されるならば、発光開始時刻から100時間を経過するまでの間の相対輝度RBH(t)の低下は緩和される。
【0085】
以下の数式において、BDH(t)は、高温領域の表示画素に対する相対輝度の降下率を表す。BDL(t)は、低温領域の表示画素に対する相対輝度の降下率を表す。
【0086】
(数3)
【0087】
(数4)
【0088】
図16Aに示される表示画素間の相対輝度の降下率の差異は、「2%」未満である。尚、高温領域の表示画素の降下率と低温領域の表示画素の降下率との差異が、「10%」以下であるならば、表示領域中における経時的な輝度変化のばらつき(表示領域中の温度分布によって規定される領域間での輝度変化のばらつき)に起因する画質の低下は観察されにくい。
【0089】
上述された実施形態に係る表示装置は、以下の構成を備える。上述された実施形態に係る表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0090】
上述された実施形態の一の局面に係る表示装置は、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする。
【0091】
上記構成によれば、表示装置の表示パネルは、映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む。表示装置の駆動部は、表示パネルを駆動する。表示画素は、電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含む。映像を表示するために表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、表示領域には、第1領域と第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0092】
上記構成において、前記駆動部は、前記機能層の厚さに応じて、前記表示画素ごとに、該表示画素に印加される電圧を設定する駆動回路基板を含むことが好ましい。
【0093】
上記構成によれば、駆動部として用いられる駆動回路基板は、機能層の厚さに応じて、表示画素ごとに、表示画素に印加される電圧を設定するので、表示装置は、映像を適切に表示することができる。
【0094】
上記構成において、前記機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0095】
上記構成によれば、機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含む。したがって、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の膜厚の調整の結果、第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚く形成されることとなる。したがって、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0096】
上記構成において、前記駆動回路基板は、前記表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するドライバ素子を備えることが好ましい。
【0097】
上記構成によれば、駆動回路基板のドライバ素子は、表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するので、表示パネルは、駆動信号に応じて、映像を適切に表示することができる。
【0098】
上記構成において、前記ドライバ素子は、前記温度分布を生じさせることが好ましい。
【0099】
上記構成によれば、ドライバ素子によって、第1領域と第2領域とを有する温度分布が生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0100】
上記構成において、前記表示パネルは、前記TFT層が形成される第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含み、前記駆動回路基板は、前記第2面に取り付けられ、前記第2領域は、前記第1領域よりも前記駆動回路基板の近くで生ずることが好ましい。
【0101】
上記構成によれば、表示パネルは、TFT層が形成される第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含む。駆動回路基板は、第2面に取り付けられる。第2領域は、第1領域よりも駆動回路基板の近くで生ずる。第2領域に存する表示画素の機能層は、第1領域に存する表示画素の機能層よりも厚いので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0102】
上述された実施形態の一の局面に係る映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法は、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする。
【0103】
上記構成によれば、第1工程において、映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板が用意される。第2工程において、表示領域に対応する前記基板の対応領域は、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けされる。第3工程において、複数の分割領域それぞれに対して、電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さが設定される。第4工程において、機能層が、複数の分割領域それぞれに対して形成される。この結果、複数の表示画素を形成される。尚、第4工程において形成される機能層は、第3工程において設定された前記機能層の厚さに従う。第3工程において、第2領域に対応する分割領域に形成される機能層の厚さは、第1領域に対応する分割領域に形成される機能層の厚さよりも大きく設定されるので、表示装置は、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0104】
上記構成において、前記第4工程において、前記機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成されることが好ましい。
【0105】
上記構成によれば、第4工程において、機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成される。したがって、機能層の設定の基準として用いられる温度分布が複雑な形状であっても、第3工程において設定された膜厚で機能層が形成されることとなる。
【0106】
上記構成において、前記第2工程において、前記対応領域は、前記温度分布の温度域に基づき、前記複数の分割領域に分割されることが好ましい。
【0107】
上記構成によれば、第2工程において、対応領域は、温度分布の温度域に基づき、複数の分割領域に分割されるので、機能層の厚さは、表示領域中の温度分布に対応して適切に設定される。
【0108】
上記構成において、前記表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から前記温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含み、前記機能層の厚さは、前記分布データに基づき設定されることが好ましい。
【0109】
上記構成によれば、表示装置の製造方法は、表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含む。機能層の厚さは、分布データに基づき設定されるので、一定の基準の下、分割領域の設定がなされる。
【0110】
上記構成において、前記分布データは、前記共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであることが好ましい。
【0111】
上記構成によれば、分布データは、共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであるので、表示領域は適切に区分される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
上述の実施形態に係る原理は、映像を表示するための表示装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0113】
100・・・・・・・・・・表示装置
210・・・・・・・・・・表示領域
211・・・・・・・・・・表示画素
220・・・・・・・・・・基板
221・・・・・・・・・・第1面
222・・・・・・・・・・第2面
230・・・・・・・・・・TFT基板
260・・・・・・・・・・機能層
261・・・・・・・・・・正孔注入層
262・・・・・・・・・・正孔輸送層
263・・・・・・・・・・発光層
264・・・・・・・・・・電子輸送層
265・・・・・・・・・・電子注入層
300・・・・・・・・・・駆動回路基板
320・・・・・・・・・・ドライバ素子
500・・・・・・・・・・形成領域
D1乃至D3・・・・・・・分割領域
D11乃至D76・・・・・分割領域
IJ・・・・・・・・・・・インクジェット装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、
該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、
前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、
前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、
前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記機能層の厚さに応じて、前記表示画素ごとに、該表示画素に印加される電圧を設定する駆動回路基板を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記駆動回路基板は、前記表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するドライバ素子を備えることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ドライバ素子は、前記温度分布を生じさせることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、前記TFT層が形成される第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含み、
前記駆動回路基板は、前記第2面に取り付けられ、
前記第2領域は、前記第1領域よりも前記駆動回路基板の近くで生ずることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法であって、
前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、
前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、
前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、
該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、
前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程において、前記機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成されることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記対応領域は、前記温度分布の温度域に基づき、前記複数の分割領域に分割されることを特徴とする請求項7又は8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から前記温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含み、
前記機能層の厚さは、前記分布データに基づき設定されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記分布データは、前記共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであることを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項1】
映像を表示する表示領域を規定する複数の表示画素と、前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層と、を含む表示パネルと、
該表示パネルを駆動する駆動部と、を備え、
前記表示画素は、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層を含み、
前記映像を表示するために前記表示パネルを駆動するときに生ずる熱によって、前記表示領域には、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する温度分布が生じ、
前記第2領域に存する前記表示画素の前記機能層は、前記第1領域に存する前記表示画素の前記機能層よりも厚いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記機能層の厚さに応じて、前記表示画素ごとに、該表示画素に印加される電圧を設定する駆動回路基板を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記機能層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記駆動回路基板は、前記表示パネルを駆動するための駆動信号を出力するドライバ素子を備えることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ドライバ素子は、前記温度分布を生じさせることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、前記TFT層が形成される第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有する基板を含み、
前記駆動回路基板は、前記第2面に取り付けられ、
前記第2領域は、前記第1領域よりも前記駆動回路基板の近くで生ずることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
映像が表示される表示領域を規定する複数の表示画素を有する表示装置の製造方法であって、
前記複数の表示画素に電流を供給するTFT層が形成された基板を準備する第1工程と、
前記表示領域に対応する前記基板の対応領域を、第1領域と該第1領域よりも高温の第2領域とを有する所定の温度分布に従って、複数の分割領域に区分けする第2工程と、
前記温度分布に従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記電流に応じて発光する発光層を含む機能層の厚さを設定する第3工程と、
該第3工程において設定された前記機能層の厚さに従って、前記複数の分割領域それぞれに対して、前記機能層を形成し、前記複数の表示画素を形成する第4工程と、を備え、
前記第3工程において、前記第2領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さを、前記第1領域に対応する前記分割領域に形成される前記機能層の厚さよりも大きく設定することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程において、前記機能層は、樹脂を塗布するインクジェット装置を用いて形成されることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記対応領域は、前記温度分布の温度域に基づき、前記複数の分割領域に分割されることを特徴とする請求項7又は8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記表示装置と共通する製造条件下で製造された他の表示装置から前記温度分布に関する分布データを取得する工程を更に含み、
前記機能層の厚さは、前記分布データに基づき設定されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記分布データは、前記共通する製造条件下で製造された他の複数の表示パネルから得られた温度分布の平均データであることを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【公開番号】特開2013−105570(P2013−105570A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247448(P2011−247448)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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