表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置
【課題】映像のコントラストを高める光学機能を有し、かつ近赤外線またはネオン光の放出を防止することができる安価で透過率の高い表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置を提供する。
【解決手段】本発明による表示装置用フィルタ10は、PDP30の前面に設置される。この表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12と、映像のコントラストを高める光学機能層20とを備えている。このうち光学機能層20は、透明樹脂部21と透明樹脂部21に埋め込まれた黒化樹脂部22とからなり、また透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させている。これにより映像のコントラストを高めるとともに、近赤外線またはネオン光をカットする。
【解決手段】本発明による表示装置用フィルタ10は、PDP30の前面に設置される。この表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12と、映像のコントラストを高める光学機能層20とを備えている。このうち光学機能層20は、透明樹脂部21と透明樹脂部21に埋め込まれた黒化樹脂部22とからなり、また透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させている。これにより映像のコントラストを高めるとともに、近赤外線またはネオン光をカットする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示装置の表示面のような光透過面等に配置されて用いられる表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置に係り、とりわけ映像のコントラストを高める光学機能、電磁波遮蔽機能、および近赤外線/ネオンカット機能を有する表示装置用フィルタおよびこのような表示装置用フィルタを有するフィルタ付表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の映像表示装置が、種々の分野で利用されている。そして、映像表示装置に表示される映像を明瞭に観察することができるようにするためには、映像のコントラストを高めることが有効である。そして、映像のコントラストを高めるための種々の研究がなされており(例えば、特許文献1)、外光の表示面への入射を抑制することが有効とされている。とりわけ、プラズマディスプレイパネル(PDP)においては、その構造的特徴から表示面が全体的に白っぽくなり、映像のコントラストが低下しやすい。このため、プラズマディスプレイパネルの前面には、外光を吸収する遮光材が配置される。
【0003】
また近年、各種映像表示装置から発生される電磁波による、電子機器や身体等への電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference; EMI)が問題となっている。例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)は、データ電極と蛍光層を有するガラス板と透明電極を有するガラス板との組合体であり、作動すると電磁波が大量に発生する。このため、プラズマディスプレイパネルの前面には、メッシュ状(格子状)に形成された導電体を含む電磁波シールド材が配置される。そして、この電磁波シールド材によって、映像表示装置から発生する電磁波を遮蔽するようになっている。
【0004】
また映像表示装置のうち、とりわけPDPからは電磁波だけでなく、近赤外線(NIR)、あるいは封入ガスからネオン光(Ne)が放出してオレンジ色が強くなり、色純度が低下することも考えられる。このため、上述した遮光材や電磁波シールド材のほかに、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット材)が設けられている。
【特許文献1】特許第2624462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像表示装置の表示面の前面に配置される遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材は、互いに全く異なる特殊な構造を有しており、別部材として作製されている。そして、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材を表示装置の表示面上へ配置する場合、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材が別個に表示面上に配置される、あるいは、遮光材と電磁波シールド材と近赤外線/ネオンカット材とが予め積層され、得られた積層体が表示面上に配置される。この結果、表示装置の構成が複雑化するとともに、表示装置の製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、映像表示装置に限られず、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材が積層されて用いられる場合がある。そしてこの場合、同様の問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、映像のコントラストを高める光学機能を有し、かつ近赤外線またはネオン光の放出を防止することができる安価で透過率の高い表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、映像のコントラストを高める光学機能層を備え、光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、透明樹脂部中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0009】
本発明は、電磁波シールド層を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0010】
本発明は、電磁波シールド層と光学機能層は、透明基材を介して積層されていることを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0011】
本発明は、光学機能層の透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0012】
本発明は、表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、映像のコントラストを高める光学機能層を備え、光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0013】
本発明は、反射防止層を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0014】
本発明は、光学機能層の透明樹脂部中に、色調補正色素または色調補正顔料を更に添加したことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0015】
本発明は、支持用基材を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0016】
本発明は、表示装置用フィルタと、表示装置とを備えたことを特徴とするフィルタ付表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、光学機能層の透明樹脂部中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させるので、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)と光学機能層を別々に設ける必要がない。このため表示装置用フィルタを構成する部材の数を減らすことができる。これにより、表示装置用フィルタを製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。また表示装置用フィルタの透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【0018】
また本発明によれば、光学機能層の透明樹脂部中に金属粉を含有させるので、電磁波シールド層と光学機能層を別々に設ける必要がない。このため表示装置用フィルタを構成する部材の数を減らすことができる。これにより、表示装置用フィルタを製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。また表示装置用フィルタの透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1乃至図4、および図6は、本発明の一実施の形態による表示装置用フィルタを示す構成図であり、図5は比較例としての表示装置用フィルタを示す構成図であり、図7乃至図10は本発明の一実施の形態による表示装置用フィルタの製造方法を示す工程図であり、図11乃至図16は電磁波シールド層の製造工程を示す図であり、図17乃至図18は映像のコントラストを高める光学機能層の製造工程を示す図である。
【0020】
表示装置用フィルタの構成
まず、図1乃至図5により本実施の形態による表示装置用フィルタについて説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態による表示装置用フィルタ10は、プラズマディスプレイパネル(PDP)30等の映像表示装置の前面に設置されるものである。
【0022】
このような表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12と、PDP30からの映像のコントラストを高める光学機能層20とを備えている。このうち電磁波シールド層12はPDP30から放出され人体に有害な電磁波を効果的に遮蔽するものであり、光学機能層20は外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるものである。
【0023】
電磁波シールド層12は、導電性メッシュフィルムまたは金属薄膜等からなり、第1透明基材11a上に形成されている。
【0024】
また光学機能層20は、透明樹脂部21と、この透明樹脂部21内に埋め込まれた断面くさび状の黒化樹脂部22とからなり、この黒化樹脂部22により外光を効果的に吸収することができる。この光学機能層20は第2透明基材11b上に形成され、第2透明基材11bは、中間粘着材15を介して第1透明基材11aに接着されている。
【0025】
また、電磁波シールド層12上には、反射防止用粘着材13を介して反射防止層14が設けられ、他方、光学機能層20上には表示装置用粘着材(画像表示部側粘着材)24が設けられている。
【0026】
反射防止層14は空気とフィルタ10との間の屈折率差による反射を防止するとともに、PDP30表面の反射を防止するものである。この反射防止層14は光学薄膜を積層することにより構成される。
【0027】
また反射防止用粘着材13、中間粘着材15および画像表示部側粘着材24としては、粘着性をもつアクリル樹脂等を用いることができる。
【0028】
なお画像表示部側粘着材24は、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に接着させるものである。そして表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に接着させることにより、表示装置用フィルタ10とPDP30とからなるフィルタ付PDP(フィルタ付表示装置)が得られる。
【0029】
なお、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に装着する方法として、上述のように表示装置用フィルタ10を画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着させる方法の他、後述するようにガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を準備し、この支持用基材10AとPDP30とを接着させても良い(図6参照)。また支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を支持用基材10AがPDP30側を向くように配置し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。さらにまた支持用基材10Aを有しない表示装置用フィルタ10を準備し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。
【0030】
ところで、光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0031】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0032】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0033】
図1において、光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させるので、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)と光学機能層20とを別々に設ける必要がなく、表示装置用フィルタ10を構成する部材の数を減らすことができる。すなわち近赤外線/ネオンカット層および近赤外線/ネオンカット層を支持する透明基材が不要となる。これにより、表示装置用フィルタ10を製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。さらには表示装置用フィルタ10の透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【0034】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21には、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されているが、近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素のいずれか一方のみを含有させてもよい。
【0035】
すなわち、比較例として図5に示す表示装置用フィルタ40は、近赤外線およびネオン光をカットする機能を有する近赤外線/ネオンカット層25と、この近赤外線/ネオンカット層25を支持する第3透明基材11cとを有している。このうち第3透明基材11cは、第1中間粘着材15aを介して第1透明基材11aに接合されている。そして第1透明基材11a上に電磁波シールド層12が支持され、電磁波シールド層12に反射防止用粘着材13を介して反射防止層14が設けられている。
【0036】
また近赤外線/ネオンカット層25は、第2中間粘着材15bを介して第2透明基材11bに接合されている。そして第2透明基材11b上に光学機能層20が設けられ、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24が設けられている。
【0037】
図5に示す比較例としての表示装置用フィルタ40において、第1透明基材11aと第2透明基材11bとの間に、近赤外線/ネオンカット層25と、近赤外線/ネオンカット層25を支持する第3透明基材11cとが配置されている。
【0038】
これに対して、図1に示すように本発明によれば、第1透明基材11aと第2透明基材11bは、中間粘着材15を介して互いに接合され、第1透明基材11a上に電磁波シールド層12が設けられ、第2透明基材11b上に光学機能層20が設けられている。また光学機能層20の透明樹脂部21中に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されている。このため、電磁波シールド層12と光学機能層20のほかに、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)を設ける必要はない。
【0039】
なお、図1において電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設けた例を示したが、これに限らず反射防止層14の代わりに表面に凹凸をつけて外光を散乱させるぎらつき防止層を設けてもよい。また反射防止層14は電磁波シールド層12側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。さらに表示装置用フィルタ10は、更に画像表示部側粘着材24側または反射防止層14側に配置され、全体を保持する機能をもつガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有していてもよい(図6参照)。
【0040】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。なお光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。
【0041】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に色調補正色素または色調補正顔料を更に添加しても良い。これによりPDP30からの映像光の色再現範囲を増加させ、画面の鮮明度を向上させることができる。なお、このような色調補正色素または色調補正顔料としては、例えばアントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などの有機色素を含むものを用いることができる。
【0042】
次に図2乃至図4により表示装置用フィルタ10の他の構成について説明する。図2乃至図4において、図1に示す表示装置用フィルタ10と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図2に示す表示装置用フィルタ10は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に設けられた電磁波シールド層12と、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14と、透明基材11の他方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、光学機能層20上に設けられた画像表示部側粘着材24とを備えている。
【0044】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0045】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0046】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0047】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0048】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。なお光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。
【0049】
反射防止層14は電磁波シールド層12側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。
【0050】
図3に示す表示装置用フィルタ10は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、透明基材11の他方の面に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14と、光学機能層20上に設けられた画像表示部側粘着材24とを備えている。
【0051】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0052】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0053】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0054】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0055】
ところで図3に示す表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12を有していない。このため、光学機能層20の透明樹脂部21中に、更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにすることが好ましい。光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。あるいは、図3において光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させることなく、透明樹脂部21中に金属粉を含有させ、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0056】
反射防止層14は透明基材11側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。
【0057】
図4に示す表示装置用フィルタ10は、第1透明基材11aと、第1透明基材11aの一方の面に設けられた電磁波シールド層12と、第1透明基材11aの他方の面に設けられた画像表示部側粘着材24と、第2透明基材11bと、第2透明基材11bの一方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、第2透明基材11bの他方の面に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14とを備えている。このうち光学機能層20は、中間粘着材15を介して電磁波シールド層12に接着されている。
【0058】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0059】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0060】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0061】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0062】
反射防止層14は第2透明基材11b側ではなく、第1透明基材11a側に設けてもよい。
【0063】
なお図2乃至図4において、反射防止層14の代わりに、ぎらつき防止層を設けてもよい。
【0064】
また図2乃至図4において、光学機能層20の透明樹脂部21には、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されているが、近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素のいずれか一方のみを含有させてもよい。
【0065】
さらに図2乃至図4において、光学機能層20の透明樹脂部21中に色調補正色素または色調補正顔料を更に添加しても良い。これによりPDP30からの映像光の色再現範囲を増加させ、画面の鮮明度を向上させることができる。なお、このような色調補正色素または色調補正顔料としては、例えばアントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などの有機色素を含むものを用いることができる。
【0066】
図2乃至図4において、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に装着する方法として、上述のように表示装置用フィルタ10を画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着させる方法の他、ガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を準備し、この支持用基材10AとPDP30とを接着させても良い。また支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を支持用基材10AがPDP30側を向くように配置し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。さらにまた支持用基材10Aを有しない表示装置用フィルタ10を準備し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。
【0067】
表示装置用フィルタの製造方法
次に表示装置用フィルタの製造方法について説明する。まず図1に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について、図7(a)〜(f)により説明する。
【0068】
まず図7(a)に示すように、第1透明基材11aを準備する。次に第1透明基材11aの一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図7(b))。
【0069】
また、図7(c)に示すように、第2透明基材11bを準備する。次に第2透明基材11bに、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図7(d))。光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0070】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0071】
次に、第1透明基材11aと第2透明基材11bとを中間粘着材15を介して接着させ、これにより図7(e)に示す積層体を得る。その後、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより(図7(f))、図1に示すような表示装置用フィルタ10が得られる。
【0072】
次に図8乃至図10により、図2乃至図4に示す表示装置用フィルタの製造方法について説明する。
【0073】
まず図8(a)〜(f)により、図2に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0074】
まず図8(a)に示すように、透明基材11を準備する。次に透明基材11の一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図8(b))。その後、透明基材11の他方の面に、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図8(e))。
【0075】
なお、図8(c)(d)に示すように、透明基材11の下面(一方の面)にまず光学機能層20を形成し、その後に透明基材11の上面(他方の面)に電磁波シールド層12を形成してもよい(図8(e))。
【0076】
光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0077】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0078】
その後図8(f)に示すように、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより、図2に示す表示装置用フィルタ10が得られる。次に表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0079】
次に図9(a)〜(c)により、図3に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0080】
まず図9(a)に示すように、透明基材11を準備する。次に透明基材11の一方の面に、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図9(b))。
【0081】
光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0082】
この場合、表示装置用フィルタ10は電磁波シールド層12を有していない。このため、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしておくことが好ましい。あるいは、光学機能層20の透明樹脂部21中に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させることなく金属粉を含有させ、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0083】
その後、図9(c)に示すように、透明基材11上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより、図3に示す表示装置用フィルタ10が得られる。次に表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0084】
次に図10(a)〜(f)により、図4に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0085】
まず図10(a)に示すように、第1透明基材11aを準備する。次に第1透明基材11aの一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図10(b))。
【0086】
また図10(c)に示すように、第2透明基材11bを準備する。次に第2透明基材11bに、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図10(d))。光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0087】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0088】
次に、光学機能層20と電磁波シールド層12とを中間粘着材15を介して接着させ、これにより図10(e)に示す積層体を得る。その後、第2透明基材11b上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、第1透明基材11a上に画像表示部側粘着材24を設けることにより(図10(f))、図4に示すような表示装置用フィルタ10が得られる。
【0089】
各構成部材の説明
次に表示装置用フィルタ10を構成する各構成部材について説明する。
【0090】
(透明基材)
透明基材11(第1透明基材11a、第2透明基材11b)としては、PET製フィルム、アクリル製フィルム等のプラスチックフィルム、あるいはガラス板等を用いることができる。
【0091】
透明基材11(第1透明基材11a、第2透明基材11b)を構成するプラスチックフィルムは高透明性と耐熱性を有することが望ましく、高分子成形物および高分子成形物の積層体を用いることができる。透明性に関しては可視光線透過率が80%以上であることが有利であって、耐熱性に関してはガラス転移温度が50℃以上であることが望ましい。とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリサルフォン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリルレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等を挙げることができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用いることが望ましい。
【0092】
(電磁波シールド層)
電磁波を遮蔽する電磁波シールド層12としては、導電性メッシュフィルム、または金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層透明導電膜を用いることができる。また電磁波シールド層12を導電性ペーストまたは導電性インクにより作製することもできる。なお、電磁波シールド層12を構成する導電性フィルムまたは導電膜の形状は、メッシュ状(格子状)のほか、ストライプ状またはその他幾何学模様状であってもよい。
【0093】
導電性メッシュフィルムとしては一般的には、接地された金属メッシュ、または合成樹脂や金属繊維のメッシュに金属被服したものを用いることができる。導電性メッシュフィルムを構成する金属の材質としては例えば、銅、クロム、ニッケル、銀、モリブデン、タングステン、アルミニウムなど電気伝導性に優れ、加工性が高い金属であれば、いずれも使用可能である。
【0094】
多層透明導電膜としては、ITO(Indium Tin Oxide)等の高屈折透明薄膜と、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属薄膜とを交互に積層した材料を用いることができる。
【0095】
金属薄膜は、銀(Ag)または銀を含有した合金から構成された薄膜層である。そのうち、銀の単体は、好適に使用できる。
【0096】
ITO等の高屈折率透明薄膜層は、可視光に対して透過性を有しており、金属薄膜との屈折率の差によって、金属薄膜により可視光線が反射されることを防止する効果を有する。
【0097】
次に図11および図12により、導電性メッシュフィルムからなる電磁波シールド層12の製造方法について述べる。
【0098】
図11は電磁波シールド層12をエッチング法により製造する方法を示す図である。
図11に示すように、まず透明基材11上に銅箔をラミネートするか、あるいは透明基材11上に銅蒸着を施して、透明基材11上に銅層31aを設ける。
【0099】
次に透明基材11の銅層31a上に、パターン状に形成されたレジストを設ける。この場合、銅層31a上に、フォトリソグラフィー法、グラビア印刷、フレキソ印刷あるいは電子印刷により、パターン状にレジストを形成することができる。
【0100】
次にパターン状のレジストをマスクとして、銅層31aをエッチング除去し、その後レジストを除去することにより、銅層31aからなる導電性メッシュフィルムを形成することができる。次に銅層31a上に黒化銅からなる黒化層31bを形成することにより、銅層31aと黒化層31bとからなる導電性メッシュフィルムの電磁波シールド層12が得られる。この場合、黒化層31bはニッケル、クロム、コバルト酸化銅等からなり、蒸着、スパッタリング、めっき、薬液浸漬等を用いて形成される。
【0101】
図11において電磁波シールド層12の黒化層31bは、反射防止機能を果たす。
【0102】
図12は電磁波シールド層12をめっき法により製造する方法を示す図である。
図12に示すように、まず透明基材11上にパラジウム等を含む触媒32cをパターン状に設ける。次に触媒32c上に銅めっきを施して銅層32aを形成し、その後銅層32a上に黒色電解めっきを施して黒化層32bを形成する。
【0103】
このようにして触媒32cと、銅層32aと、黒化層32bとからなる導電性メッシュフィルムからなる電磁波シールド層12が得られる。
【0104】
次に図13により、導電性ペーストからなる電磁波シールド層12の製造方法について説明する。図13は、導電性ペーストからなる電磁波シールド層12を製造する方法を示す図である。
【0105】
図13に示すように、まず透明基材11上に透明なUV硬化樹脂33bを塗布し、このUV硬化樹脂33b上に型を当てながらUV照射することによりUV硬化樹脂33bを硬化させて凹部を形成する。
【0106】
次にUV硬化樹脂33bの凹部内に導電性ペースト33aを充てんし硬化または乾燥させることにより、導電性ペースト33aを含む電磁波シールド層12が得られる。
【0107】
なお、UV硬化樹脂33bの代わりに熱硬化樹脂を用い加熱して硬化してもよい。
【0108】
導電性ペーストは、導電性金属を樹脂中に分散させたものであり、前記導電性金属の比抵抗値が0.5×10−5Ω・cm以下になるようにすることが好ましい。
【0109】
前記導電性金属としては、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、金ステンレス、タングステン、クロム、チタン等の金属あるいはこれらの2種以上を組み合わせた合金等を使用できるが、導電性や樹脂分散の容易性、価格の点から、銀、銅、ニッケルが適している。
【0110】
前記導電性金属を分散させる前記樹脂としては、ゴム系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂または共重合体の熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの他に、アクリルモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等の重合性モノマーも使用できる。これらの重合性モノマーは前記熱可塑性樹脂と組み合わせて使うことができる。更に、これらの樹脂を汎用溶剤に溶解させるか、または無溶剤のまま金属分散剤等とともに撹拌・混合して使用することができる。
【0111】
なお、これらの重合性モノマーに、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂を添加することも可能である。これらのポリマーは必要に応じて2種以上共重合してもよいし、ブレンドして使用することも可能である。これらは通常汎用溶剤に溶解させるか、または無溶剤のまま金属分散剤等とともに撹拌・混合して使用することができる。
【0112】
次に図14により、導電性インクからなる電磁波シールド層12の製造方法について説明する。図14は導電性インク法により電磁波シールド層12を製造する方法を示す図である。
【0113】
図14に示すように、透明基材11上に導電性インク34aを用いて印刷し、この導電性インクを乾燥させることにより、導電性インク34aからなる電磁波シールド層12が得られる。
【0114】
導電性インク34aとしては、一般に金属微粒子を硬化性有機バインダーと混合したもので、通常使用される金属(フィラー)としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、その他および合金類あるいは異種金属混合系などがある。これらの導電性は、例えば塗料のフィラーとしては銀は10−5Ω・cm以上、金は10−6Ω・cm以上である。また、硬化性有機バインダー類としてはアクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン系、メラミン樹脂系など良く知られている。これらの金属フィラーを用いた導電性インクは一般市販品であり、かつ導電性が10−3〜10−6Ω・cmを示すので、例えばITOの導電性101〜103Ω・cmに比して高く電磁波遮蔽材料として好適である。
【0115】
次に図15により、金属薄膜と高屈折透明薄膜を交互に積層した電磁波シールド層12をスパッタリングにより製造する方法について説明する。図15に示すように、まず透明基材11上にスパッタリング法によりAgからなる導電性の金属薄膜35bを形成する。次に金属薄膜35b上にスパッタリング法によりITOからなる高屈折透明薄膜35aを形成し、このようにして透明基材11上に金属薄膜35bと、高屈折透明薄膜35aを交互に積層することにより電磁波シールド層12を得ることができる。
【0116】
また、図16に示すように、透明基材11上に自己組織化するインク、例えばITOインクを塗布するだけで、このITOインクが自己組織化して網目状の電磁波シールド層12を得ることができる。
【0117】
(光学機能層)
光学機能層20は透明樹脂部21と、透明樹脂部21内に埋込まれた黒化樹脂部22とからなっている。このうち黒化樹脂部22はくさび形断面を有しているが、矩形状断面、逆くさび形断面、三角形断面、半円形断面を有していてもよい(図17および図18参照)。
【0118】
ここで、図17は光学機能層20の製造方法を示す断面図であり、図18は光学機能層20を示す平面図である。
【0119】
図18に示すように、光学機能層20の黒化樹脂部22は、一線状に帯状となって延び、表示装置用フィルタ10をPDP30に設置した場合、黒化樹脂部22の方向は左右方向となる。
【0120】
光学機能層20の透明樹脂部21はUV硬化樹脂で形成されている。上述したように、この透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0121】
また上述したように、光学機能層20の透明樹脂部21中に銅または銀等の粉末からなる金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0122】
一方、黒化樹脂部22は光を吸収することができる黒色無機物および/または有機物、金属等で形成することができる。特に金属の場合には電気伝導度が大きく、電気抵抗が低いため、金属粉末を添加して黒化樹脂部22を形成した場合、金属粉末の濃度によって電気抵抗の調節が可能である。また、黒化樹脂部22としては炭素、あるいは炭素を含む樹脂を用いることもできる。
【0123】
次に図17により、光学機能層20を製造する方法について説明する。図17に示すように、まず透明基材11上に近赤外線(NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素を含有する透明なUV硬化樹脂21を塗布する。また任意的に透明樹脂部21中に銅または銀等の粉末からなる金属粉が添加されていても良い。
【0124】
次に、このUV硬化樹脂21上に型を当てながらUV照射することによりUV硬化樹脂21を硬化させて、凹部を形成する。
【0125】
次にUV硬化樹脂21の凹部内に黒化樹脂部となる黒化インキを充てんし乾燥または硬化させる。このことによりUV硬化樹脂からなる透明樹脂部21と、黒化樹脂部22とからなる光学機能層20を得ることができる。
【0126】
なお、透明樹脂部21をUV硬化樹脂で形成する代わりに、熱硬化樹脂を用いて形成してもよい。
【0127】
また他の光学機能層20の製造方法としては、まず透明基材11上に黒色樹脂を用い、フォトリソグラフィー、インクジェット、その他の印刷法により凸状のパターンを形成し、この凸状のパターン上全面を覆って近赤外線(NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素を含有する透明樹脂を塗布して光学機能層20を製造してもよい。この場合黒色樹脂により黒化樹脂部22が形成され、透明樹脂により透明樹脂部21が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図3】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図4】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図5】比較例としての表示装置用フィルタを示す構成図。
【図6】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図7】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態を示す工程図。
【図8】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図9】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図10】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図11】電磁波シールド層をエッチング法により製造する工程を示す図。
【図12】電磁波シールド層をめっき法により製造する工程を示す図。
【図13】電磁波シールド層を製造する工程を示す図。
【図14】電磁波シールド層を導電インク法により製造する工程を示す図。
【図15】電磁波シールド層をスパッタリング法により製造する工程を示す図。
【図16】電磁波シールド層を自己組織化法により製造する工程を示す図。
【図17】光学機能層を製造する工程を示す図。
【図18】光学機能層を示す平面図。
【符号の説明】
【0129】
10 表示装置用フィルタ
10A 支持用基材
11 透明基材
12 電磁波シールド層
13 反射防止層用粘着材
14 反射防止層
15 中間粘着材
20 光学機能層
21 透明樹脂部
22 黒化樹脂部
23 近赤外線/ネオンカット粘着材
24 画像表示部側粘着材
25 近赤外線/ネオンカット層
30 PDP
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示装置の表示面のような光透過面等に配置されて用いられる表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置に係り、とりわけ映像のコントラストを高める光学機能、電磁波遮蔽機能、および近赤外線/ネオンカット機能を有する表示装置用フィルタおよびこのような表示装置用フィルタを有するフィルタ付表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の映像表示装置が、種々の分野で利用されている。そして、映像表示装置に表示される映像を明瞭に観察することができるようにするためには、映像のコントラストを高めることが有効である。そして、映像のコントラストを高めるための種々の研究がなされており(例えば、特許文献1)、外光の表示面への入射を抑制することが有効とされている。とりわけ、プラズマディスプレイパネル(PDP)においては、その構造的特徴から表示面が全体的に白っぽくなり、映像のコントラストが低下しやすい。このため、プラズマディスプレイパネルの前面には、外光を吸収する遮光材が配置される。
【0003】
また近年、各種映像表示装置から発生される電磁波による、電子機器や身体等への電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference; EMI)が問題となっている。例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)は、データ電極と蛍光層を有するガラス板と透明電極を有するガラス板との組合体であり、作動すると電磁波が大量に発生する。このため、プラズマディスプレイパネルの前面には、メッシュ状(格子状)に形成された導電体を含む電磁波シールド材が配置される。そして、この電磁波シールド材によって、映像表示装置から発生する電磁波を遮蔽するようになっている。
【0004】
また映像表示装置のうち、とりわけPDPからは電磁波だけでなく、近赤外線(NIR)、あるいは封入ガスからネオン光(Ne)が放出してオレンジ色が強くなり、色純度が低下することも考えられる。このため、上述した遮光材や電磁波シールド材のほかに、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット材)が設けられている。
【特許文献1】特許第2624462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像表示装置の表示面の前面に配置される遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材は、互いに全く異なる特殊な構造を有しており、別部材として作製されている。そして、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材を表示装置の表示面上へ配置する場合、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材が別個に表示面上に配置される、あるいは、遮光材と電磁波シールド材と近赤外線/ネオンカット材とが予め積層され、得られた積層体が表示面上に配置される。この結果、表示装置の構成が複雑化するとともに、表示装置の製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、映像表示装置に限られず、遮光材、電磁波シールド材、および近赤外線/ネオンカット材が積層されて用いられる場合がある。そしてこの場合、同様の問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、映像のコントラストを高める光学機能を有し、かつ近赤外線またはネオン光の放出を防止することができる安価で透過率の高い表示装置用フィルタおよびフィルタ付表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、映像のコントラストを高める光学機能層を備え、光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、透明樹脂部中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0009】
本発明は、電磁波シールド層を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0010】
本発明は、電磁波シールド層と光学機能層は、透明基材を介して積層されていることを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0011】
本発明は、光学機能層の透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0012】
本発明は、表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、映像のコントラストを高める光学機能層を備え、光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0013】
本発明は、反射防止層を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0014】
本発明は、光学機能層の透明樹脂部中に、色調補正色素または色調補正顔料を更に添加したことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0015】
本発明は、支持用基材を更に備えたことを特徴とする表示装置用フィルタである。
【0016】
本発明は、表示装置用フィルタと、表示装置とを備えたことを特徴とするフィルタ付表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、光学機能層の透明樹脂部中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させるので、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)と光学機能層を別々に設ける必要がない。このため表示装置用フィルタを構成する部材の数を減らすことができる。これにより、表示装置用フィルタを製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。また表示装置用フィルタの透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【0018】
また本発明によれば、光学機能層の透明樹脂部中に金属粉を含有させるので、電磁波シールド層と光学機能層を別々に設ける必要がない。このため表示装置用フィルタを構成する部材の数を減らすことができる。これにより、表示装置用フィルタを製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。また表示装置用フィルタの透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1乃至図4、および図6は、本発明の一実施の形態による表示装置用フィルタを示す構成図であり、図5は比較例としての表示装置用フィルタを示す構成図であり、図7乃至図10は本発明の一実施の形態による表示装置用フィルタの製造方法を示す工程図であり、図11乃至図16は電磁波シールド層の製造工程を示す図であり、図17乃至図18は映像のコントラストを高める光学機能層の製造工程を示す図である。
【0020】
表示装置用フィルタの構成
まず、図1乃至図5により本実施の形態による表示装置用フィルタについて説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態による表示装置用フィルタ10は、プラズマディスプレイパネル(PDP)30等の映像表示装置の前面に設置されるものである。
【0022】
このような表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12と、PDP30からの映像のコントラストを高める光学機能層20とを備えている。このうち電磁波シールド層12はPDP30から放出され人体に有害な電磁波を効果的に遮蔽するものであり、光学機能層20は外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるものである。
【0023】
電磁波シールド層12は、導電性メッシュフィルムまたは金属薄膜等からなり、第1透明基材11a上に形成されている。
【0024】
また光学機能層20は、透明樹脂部21と、この透明樹脂部21内に埋め込まれた断面くさび状の黒化樹脂部22とからなり、この黒化樹脂部22により外光を効果的に吸収することができる。この光学機能層20は第2透明基材11b上に形成され、第2透明基材11bは、中間粘着材15を介して第1透明基材11aに接着されている。
【0025】
また、電磁波シールド層12上には、反射防止用粘着材13を介して反射防止層14が設けられ、他方、光学機能層20上には表示装置用粘着材(画像表示部側粘着材)24が設けられている。
【0026】
反射防止層14は空気とフィルタ10との間の屈折率差による反射を防止するとともに、PDP30表面の反射を防止するものである。この反射防止層14は光学薄膜を積層することにより構成される。
【0027】
また反射防止用粘着材13、中間粘着材15および画像表示部側粘着材24としては、粘着性をもつアクリル樹脂等を用いることができる。
【0028】
なお画像表示部側粘着材24は、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に接着させるものである。そして表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に接着させることにより、表示装置用フィルタ10とPDP30とからなるフィルタ付PDP(フィルタ付表示装置)が得られる。
【0029】
なお、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に装着する方法として、上述のように表示装置用フィルタ10を画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着させる方法の他、後述するようにガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を準備し、この支持用基材10AとPDP30とを接着させても良い(図6参照)。また支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を支持用基材10AがPDP30側を向くように配置し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。さらにまた支持用基材10Aを有しない表示装置用フィルタ10を準備し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。
【0030】
ところで、光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0031】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0032】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0033】
図1において、光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させるので、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)と光学機能層20とを別々に設ける必要がなく、表示装置用フィルタ10を構成する部材の数を減らすことができる。すなわち近赤外線/ネオンカット層および近赤外線/ネオンカット層を支持する透明基材が不要となる。これにより、表示装置用フィルタ10を製造する工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。さらには表示装置用フィルタ10の透過率を向上させ、表示装置用フィルタ全体を軽量化することができる。
【0034】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21には、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されているが、近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素のいずれか一方のみを含有させてもよい。
【0035】
すなわち、比較例として図5に示す表示装置用フィルタ40は、近赤外線およびネオン光をカットする機能を有する近赤外線/ネオンカット層25と、この近赤外線/ネオンカット層25を支持する第3透明基材11cとを有している。このうち第3透明基材11cは、第1中間粘着材15aを介して第1透明基材11aに接合されている。そして第1透明基材11a上に電磁波シールド層12が支持され、電磁波シールド層12に反射防止用粘着材13を介して反射防止層14が設けられている。
【0036】
また近赤外線/ネオンカット層25は、第2中間粘着材15bを介して第2透明基材11bに接合されている。そして第2透明基材11b上に光学機能層20が設けられ、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24が設けられている。
【0037】
図5に示す比較例としての表示装置用フィルタ40において、第1透明基材11aと第2透明基材11bとの間に、近赤外線/ネオンカット層25と、近赤外線/ネオンカット層25を支持する第3透明基材11cとが配置されている。
【0038】
これに対して、図1に示すように本発明によれば、第1透明基材11aと第2透明基材11bは、中間粘着材15を介して互いに接合され、第1透明基材11a上に電磁波シールド層12が設けられ、第2透明基材11b上に光学機能層20が設けられている。また光学機能層20の透明樹脂部21中に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されている。このため、電磁波シールド層12と光学機能層20のほかに、近赤外線およびネオン光をカットする層(近赤外線/ネオンカット層)を設ける必要はない。
【0039】
なお、図1において電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設けた例を示したが、これに限らず反射防止層14の代わりに表面に凹凸をつけて外光を散乱させるぎらつき防止層を設けてもよい。また反射防止層14は電磁波シールド層12側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。さらに表示装置用フィルタ10は、更に画像表示部側粘着材24側または反射防止層14側に配置され、全体を保持する機能をもつガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有していてもよい(図6参照)。
【0040】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。なお光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。
【0041】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に色調補正色素または色調補正顔料を更に添加しても良い。これによりPDP30からの映像光の色再現範囲を増加させ、画面の鮮明度を向上させることができる。なお、このような色調補正色素または色調補正顔料としては、例えばアントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などの有機色素を含むものを用いることができる。
【0042】
次に図2乃至図4により表示装置用フィルタ10の他の構成について説明する。図2乃至図4において、図1に示す表示装置用フィルタ10と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図2に示す表示装置用フィルタ10は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に設けられた電磁波シールド層12と、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14と、透明基材11の他方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、光学機能層20上に設けられた画像表示部側粘着材24とを備えている。
【0044】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0045】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0046】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0047】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0048】
また、光学機能層20の透明樹脂部21中に更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。なお光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。
【0049】
反射防止層14は電磁波シールド層12側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。
【0050】
図3に示す表示装置用フィルタ10は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、透明基材11の他方の面に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14と、光学機能層20上に設けられた画像表示部側粘着材24とを備えている。
【0051】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0052】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0053】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0054】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0055】
ところで図3に示す表示装置用フィルタ10は、電磁波シールド層12を有していない。このため、光学機能層20の透明樹脂部21中に、更に金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにすることが好ましい。光学機能層20の透明樹脂部21中に添加される金属粉としては、銅または銀等の粉末を用いることができる。あるいは、図3において光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させることなく、透明樹脂部21中に金属粉を含有させ、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0056】
反射防止層14は透明基材11側ではなく、光学機能層20側に設けてもよい。
【0057】
図4に示す表示装置用フィルタ10は、第1透明基材11aと、第1透明基材11aの一方の面に設けられた電磁波シールド層12と、第1透明基材11aの他方の面に設けられた画像表示部側粘着材24と、第2透明基材11bと、第2透明基材11bの一方の面に設けられ透明樹脂部21と黒化樹脂部22とを有する光学機能層20と、第2透明基材11bの他方の面に反射防止層用粘着材13を介して設けられた反射防止層14とを備えている。このうち光学機能層20は、中間粘着材15を介して電磁波シールド層12に接着されている。
【0058】
この表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0059】
また光学機能層20の透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0060】
透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。ここで近赤外線吸収色素は、800〜1100nmの波長の光をカットするようになっており、ネオン吸収色素は、570〜600nmの波長の光をカットするようになっている。
【0061】
なお、近赤外線吸収色素としては、イモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、アルミニウム塩系化合物、金属錯体化合物等が挙げられ、ネオン吸収色素としてはシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系色素等が挙げられる。
【0062】
反射防止層14は第2透明基材11b側ではなく、第1透明基材11a側に設けてもよい。
【0063】
なお図2乃至図4において、反射防止層14の代わりに、ぎらつき防止層を設けてもよい。
【0064】
また図2乃至図4において、光学機能層20の透明樹脂部21には、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素が含有されているが、近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素のいずれか一方のみを含有させてもよい。
【0065】
さらに図2乃至図4において、光学機能層20の透明樹脂部21中に色調補正色素または色調補正顔料を更に添加しても良い。これによりPDP30からの映像光の色再現範囲を増加させ、画面の鮮明度を向上させることができる。なお、このような色調補正色素または色調補正顔料としては、例えばアントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などの有機色素を含むものを用いることができる。
【0066】
図2乃至図4において、表示装置用フィルタ10をPDP30の前面に装着する方法として、上述のように表示装置用フィルタ10を画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着させる方法の他、ガラス、フィルム等からなる支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を準備し、この支持用基材10AとPDP30とを接着させても良い。また支持用基材10Aを有する表示装置用フィルタ10を支持用基材10AがPDP30側を向くように配置し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。さらにまた支持用基材10Aを有しない表示装置用フィルタ10を準備し、表示装置用フィルタ10とPDP30との間に空間をあけるようにして表示装置用フィルタ10の周縁をPDP30に固定しても良い。
【0067】
表示装置用フィルタの製造方法
次に表示装置用フィルタの製造方法について説明する。まず図1に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について、図7(a)〜(f)により説明する。
【0068】
まず図7(a)に示すように、第1透明基材11aを準備する。次に第1透明基材11aの一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図7(b))。
【0069】
また、図7(c)に示すように、第2透明基材11bを準備する。次に第2透明基材11bに、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図7(d))。光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0070】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0071】
次に、第1透明基材11aと第2透明基材11bとを中間粘着材15を介して接着させ、これにより図7(e)に示す積層体を得る。その後、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより(図7(f))、図1に示すような表示装置用フィルタ10が得られる。
【0072】
次に図8乃至図10により、図2乃至図4に示す表示装置用フィルタの製造方法について説明する。
【0073】
まず図8(a)〜(f)により、図2に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0074】
まず図8(a)に示すように、透明基材11を準備する。次に透明基材11の一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図8(b))。その後、透明基材11の他方の面に、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図8(e))。
【0075】
なお、図8(c)(d)に示すように、透明基材11の下面(一方の面)にまず光学機能層20を形成し、その後に透明基材11の上面(他方の面)に電磁波シールド層12を形成してもよい(図8(e))。
【0076】
光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0077】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0078】
その後図8(f)に示すように、電磁波シールド層12上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより、図2に示す表示装置用フィルタ10が得られる。次に表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0079】
次に図9(a)〜(c)により、図3に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0080】
まず図9(a)に示すように、透明基材11を準備する。次に透明基材11の一方の面に、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図9(b))。
【0081】
光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0082】
この場合、表示装置用フィルタ10は電磁波シールド層12を有していない。このため、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしておくことが好ましい。あるいは、光学機能層20の透明樹脂部21中に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を含有させることなく金属粉を含有させ、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0083】
その後、図9(c)に示すように、透明基材11上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、光学機能層20上に画像表示部側粘着材24を設けることにより、図3に示す表示装置用フィルタ10が得られる。次に表示装置用フィルタ10は、画像表示部側粘着材24を介してPDP30の前面に接着される。
【0084】
次に図10(a)〜(f)により、図4に示す表示装置用フィルタ10の製造方法について述べる。
【0085】
まず図10(a)に示すように、第1透明基材11aを準備する。次に第1透明基材11aの一方の面に、電磁波シールド層12が形成される(図10(b))。
【0086】
また図10(c)に示すように、第2透明基材11bを準備する。次に第2透明基材11bに、透明樹脂部21と黒化樹脂部22とからなる光学機能層20が形成される(図10(d))。光学機能層20の透明樹脂部21は、アクリル系、エポキシ系等のUV/EB硬化性樹脂またはアクリル系、エポキシ系等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂に、近赤外線吸収色素およびネオン吸収色素を添加したものである。このようにして光学機能層20を作成する方法については後述する。
【0087】
なお、光学機能層20の透明樹脂部21中に予め金属粉を添加し、これにより光学機能層20が更に電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0088】
次に、光学機能層20と電磁波シールド層12とを中間粘着材15を介して接着させ、これにより図10(e)に示す積層体を得る。その後、第2透明基材11b上に反射防止層用粘着材13を介して反射防止層14を設け、第1透明基材11a上に画像表示部側粘着材24を設けることにより(図10(f))、図4に示すような表示装置用フィルタ10が得られる。
【0089】
各構成部材の説明
次に表示装置用フィルタ10を構成する各構成部材について説明する。
【0090】
(透明基材)
透明基材11(第1透明基材11a、第2透明基材11b)としては、PET製フィルム、アクリル製フィルム等のプラスチックフィルム、あるいはガラス板等を用いることができる。
【0091】
透明基材11(第1透明基材11a、第2透明基材11b)を構成するプラスチックフィルムは高透明性と耐熱性を有することが望ましく、高分子成形物および高分子成形物の積層体を用いることができる。透明性に関しては可視光線透過率が80%以上であることが有利であって、耐熱性に関してはガラス転移温度が50℃以上であることが望ましい。とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリサルフォン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリルレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等を挙げることができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用いることが望ましい。
【0092】
(電磁波シールド層)
電磁波を遮蔽する電磁波シールド層12としては、導電性メッシュフィルム、または金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層透明導電膜を用いることができる。また電磁波シールド層12を導電性ペーストまたは導電性インクにより作製することもできる。なお、電磁波シールド層12を構成する導電性フィルムまたは導電膜の形状は、メッシュ状(格子状)のほか、ストライプ状またはその他幾何学模様状であってもよい。
【0093】
導電性メッシュフィルムとしては一般的には、接地された金属メッシュ、または合成樹脂や金属繊維のメッシュに金属被服したものを用いることができる。導電性メッシュフィルムを構成する金属の材質としては例えば、銅、クロム、ニッケル、銀、モリブデン、タングステン、アルミニウムなど電気伝導性に優れ、加工性が高い金属であれば、いずれも使用可能である。
【0094】
多層透明導電膜としては、ITO(Indium Tin Oxide)等の高屈折透明薄膜と、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属薄膜とを交互に積層した材料を用いることができる。
【0095】
金属薄膜は、銀(Ag)または銀を含有した合金から構成された薄膜層である。そのうち、銀の単体は、好適に使用できる。
【0096】
ITO等の高屈折率透明薄膜層は、可視光に対して透過性を有しており、金属薄膜との屈折率の差によって、金属薄膜により可視光線が反射されることを防止する効果を有する。
【0097】
次に図11および図12により、導電性メッシュフィルムからなる電磁波シールド層12の製造方法について述べる。
【0098】
図11は電磁波シールド層12をエッチング法により製造する方法を示す図である。
図11に示すように、まず透明基材11上に銅箔をラミネートするか、あるいは透明基材11上に銅蒸着を施して、透明基材11上に銅層31aを設ける。
【0099】
次に透明基材11の銅層31a上に、パターン状に形成されたレジストを設ける。この場合、銅層31a上に、フォトリソグラフィー法、グラビア印刷、フレキソ印刷あるいは電子印刷により、パターン状にレジストを形成することができる。
【0100】
次にパターン状のレジストをマスクとして、銅層31aをエッチング除去し、その後レジストを除去することにより、銅層31aからなる導電性メッシュフィルムを形成することができる。次に銅層31a上に黒化銅からなる黒化層31bを形成することにより、銅層31aと黒化層31bとからなる導電性メッシュフィルムの電磁波シールド層12が得られる。この場合、黒化層31bはニッケル、クロム、コバルト酸化銅等からなり、蒸着、スパッタリング、めっき、薬液浸漬等を用いて形成される。
【0101】
図11において電磁波シールド層12の黒化層31bは、反射防止機能を果たす。
【0102】
図12は電磁波シールド層12をめっき法により製造する方法を示す図である。
図12に示すように、まず透明基材11上にパラジウム等を含む触媒32cをパターン状に設ける。次に触媒32c上に銅めっきを施して銅層32aを形成し、その後銅層32a上に黒色電解めっきを施して黒化層32bを形成する。
【0103】
このようにして触媒32cと、銅層32aと、黒化層32bとからなる導電性メッシュフィルムからなる電磁波シールド層12が得られる。
【0104】
次に図13により、導電性ペーストからなる電磁波シールド層12の製造方法について説明する。図13は、導電性ペーストからなる電磁波シールド層12を製造する方法を示す図である。
【0105】
図13に示すように、まず透明基材11上に透明なUV硬化樹脂33bを塗布し、このUV硬化樹脂33b上に型を当てながらUV照射することによりUV硬化樹脂33bを硬化させて凹部を形成する。
【0106】
次にUV硬化樹脂33bの凹部内に導電性ペースト33aを充てんし硬化または乾燥させることにより、導電性ペースト33aを含む電磁波シールド層12が得られる。
【0107】
なお、UV硬化樹脂33bの代わりに熱硬化樹脂を用い加熱して硬化してもよい。
【0108】
導電性ペーストは、導電性金属を樹脂中に分散させたものであり、前記導電性金属の比抵抗値が0.5×10−5Ω・cm以下になるようにすることが好ましい。
【0109】
前記導電性金属としては、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、金ステンレス、タングステン、クロム、チタン等の金属あるいはこれらの2種以上を組み合わせた合金等を使用できるが、導電性や樹脂分散の容易性、価格の点から、銀、銅、ニッケルが適している。
【0110】
前記導電性金属を分散させる前記樹脂としては、ゴム系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂または共重合体の熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの他に、アクリルモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等の重合性モノマーも使用できる。これらの重合性モノマーは前記熱可塑性樹脂と組み合わせて使うことができる。更に、これらの樹脂を汎用溶剤に溶解させるか、または無溶剤のまま金属分散剤等とともに撹拌・混合して使用することができる。
【0111】
なお、これらの重合性モノマーに、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂を添加することも可能である。これらのポリマーは必要に応じて2種以上共重合してもよいし、ブレンドして使用することも可能である。これらは通常汎用溶剤に溶解させるか、または無溶剤のまま金属分散剤等とともに撹拌・混合して使用することができる。
【0112】
次に図14により、導電性インクからなる電磁波シールド層12の製造方法について説明する。図14は導電性インク法により電磁波シールド層12を製造する方法を示す図である。
【0113】
図14に示すように、透明基材11上に導電性インク34aを用いて印刷し、この導電性インクを乾燥させることにより、導電性インク34aからなる電磁波シールド層12が得られる。
【0114】
導電性インク34aとしては、一般に金属微粒子を硬化性有機バインダーと混合したもので、通常使用される金属(フィラー)としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、その他および合金類あるいは異種金属混合系などがある。これらの導電性は、例えば塗料のフィラーとしては銀は10−5Ω・cm以上、金は10−6Ω・cm以上である。また、硬化性有機バインダー類としてはアクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリオレフィン系、メラミン樹脂系など良く知られている。これらの金属フィラーを用いた導電性インクは一般市販品であり、かつ導電性が10−3〜10−6Ω・cmを示すので、例えばITOの導電性101〜103Ω・cmに比して高く電磁波遮蔽材料として好適である。
【0115】
次に図15により、金属薄膜と高屈折透明薄膜を交互に積層した電磁波シールド層12をスパッタリングにより製造する方法について説明する。図15に示すように、まず透明基材11上にスパッタリング法によりAgからなる導電性の金属薄膜35bを形成する。次に金属薄膜35b上にスパッタリング法によりITOからなる高屈折透明薄膜35aを形成し、このようにして透明基材11上に金属薄膜35bと、高屈折透明薄膜35aを交互に積層することにより電磁波シールド層12を得ることができる。
【0116】
また、図16に示すように、透明基材11上に自己組織化するインク、例えばITOインクを塗布するだけで、このITOインクが自己組織化して網目状の電磁波シールド層12を得ることができる。
【0117】
(光学機能層)
光学機能層20は透明樹脂部21と、透明樹脂部21内に埋込まれた黒化樹脂部22とからなっている。このうち黒化樹脂部22はくさび形断面を有しているが、矩形状断面、逆くさび形断面、三角形断面、半円形断面を有していてもよい(図17および図18参照)。
【0118】
ここで、図17は光学機能層20の製造方法を示す断面図であり、図18は光学機能層20を示す平面図である。
【0119】
図18に示すように、光学機能層20の黒化樹脂部22は、一線状に帯状となって延び、表示装置用フィルタ10をPDP30に設置した場合、黒化樹脂部22の方向は左右方向となる。
【0120】
光学機能層20の透明樹脂部21はUV硬化樹脂で形成されている。上述したように、この透明樹脂部21中に近赤外線(near infrared:NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素が含有されている。これにより、光学機能層20は、外光を効果的に吸収してPDP30からの映像のコントラストを高めるのみならず、近赤外線およびネオン光をカットする機能(近赤外線/ネオンカット機能)をも有している。
【0121】
また上述したように、光学機能層20の透明樹脂部21中に銅または銀等の粉末からなる金属粉を添加し、これにより光学機能層20が電磁波シールド機能を有するようにしても良い。
【0122】
一方、黒化樹脂部22は光を吸収することができる黒色無機物および/または有機物、金属等で形成することができる。特に金属の場合には電気伝導度が大きく、電気抵抗が低いため、金属粉末を添加して黒化樹脂部22を形成した場合、金属粉末の濃度によって電気抵抗の調節が可能である。また、黒化樹脂部22としては炭素、あるいは炭素を含む樹脂を用いることもできる。
【0123】
次に図17により、光学機能層20を製造する方法について説明する。図17に示すように、まず透明基材11上に近赤外線(NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素を含有する透明なUV硬化樹脂21を塗布する。また任意的に透明樹脂部21中に銅または銀等の粉末からなる金属粉が添加されていても良い。
【0124】
次に、このUV硬化樹脂21上に型を当てながらUV照射することによりUV硬化樹脂21を硬化させて、凹部を形成する。
【0125】
次にUV硬化樹脂21の凹部内に黒化樹脂部となる黒化インキを充てんし乾燥または硬化させる。このことによりUV硬化樹脂からなる透明樹脂部21と、黒化樹脂部22とからなる光学機能層20を得ることができる。
【0126】
なお、透明樹脂部21をUV硬化樹脂で形成する代わりに、熱硬化樹脂を用いて形成してもよい。
【0127】
また他の光学機能層20の製造方法としては、まず透明基材11上に黒色樹脂を用い、フォトリソグラフィー、インクジェット、その他の印刷法により凸状のパターンを形成し、この凸状のパターン上全面を覆って近赤外線(NIR)吸収色素およびネオン(Ne)吸収色素を含有する透明樹脂を塗布して光学機能層20を製造してもよい。この場合黒色樹脂により黒化樹脂部22が形成され、透明樹脂により透明樹脂部21が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図3】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図4】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図5】比較例としての表示装置用フィルタを示す構成図。
【図6】本発明による表示装置用フィルタの一実施の形態の変形例を示す構成図。
【図7】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態を示す工程図。
【図8】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図9】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図10】本発明による表示装置用フィルタの製造方法の一実施の形態の変形例を示す工程図。
【図11】電磁波シールド層をエッチング法により製造する工程を示す図。
【図12】電磁波シールド層をめっき法により製造する工程を示す図。
【図13】電磁波シールド層を製造する工程を示す図。
【図14】電磁波シールド層を導電インク法により製造する工程を示す図。
【図15】電磁波シールド層をスパッタリング法により製造する工程を示す図。
【図16】電磁波シールド層を自己組織化法により製造する工程を示す図。
【図17】光学機能層を製造する工程を示す図。
【図18】光学機能層を示す平面図。
【符号の説明】
【0129】
10 表示装置用フィルタ
10A 支持用基材
11 透明基材
12 電磁波シールド層
13 反射防止層用粘着材
14 反射防止層
15 中間粘着材
20 光学機能層
21 透明樹脂部
22 黒化樹脂部
23 近赤外線/ネオンカット粘着材
24 画像表示部側粘着材
25 近赤外線/ネオンカット層
30 PDP
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、
映像のコントラストを高める光学機能層を備え、
光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、
透明樹脂部中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させたことを特徴とする表示装置用フィルタ。
【請求項2】
電磁波シールド層を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置用フィルタ。
【請求項3】
電磁波シールド層と光学機能層は、透明基材を介して積層されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置用フィルタ。
【請求項4】
光学機能層の透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項5】
表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、
映像のコントラストを高める光学機能層を備え、
光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、
透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタ。
【請求項6】
反射防止層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項7】
光学機能層の透明樹脂部中に、色調補正色素または色調補正顔料を更に添加したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項8】
支持用基材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載の表示装置用フィルタと、
表示装置とを備えたことを特徴とするフィルタ付表示装置。
【請求項1】
表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、
映像のコントラストを高める光学機能層を備え、
光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、
透明樹脂部中に近赤外線吸収色素またはネオン吸収色素を含有させたことを特徴とする表示装置用フィルタ。
【請求項2】
電磁波シールド層を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置用フィルタ。
【請求項3】
電磁波シールド層と光学機能層は、透明基材を介して積層されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置用フィルタ。
【請求項4】
光学機能層の透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項5】
表示装置の前面に設置される表示装置用フィルタにおいて、
映像のコントラストを高める光学機能層を備え、
光学機能層は、透明樹脂部と、透明樹脂部に埋め込まれた黒化樹脂部とからなり、
透明樹脂部中に金属粉が添加され、これにより電磁波シールド機能を有することを特徴とする表示装置用フィルタ。
【請求項6】
反射防止層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項7】
光学機能層の透明樹脂部中に、色調補正色素または色調補正顔料を更に添加したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項8】
支持用基材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置用フィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載の表示装置用フィルタと、
表示装置とを備えたことを特徴とするフィルタ付表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−242016(P2008−242016A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81532(P2007−81532)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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