説明

表示装置用基板の製造方法

【課題】光抜け及び混色等の不良が低減されて良好な表示特性を有する表示装置用基板を高い生産性で製造することができる表示装置用基板の製造方法、及び、それを用いて製造される液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置を提供する。
【解決手段】機能膜が樹脂材料からなるバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板の製造方法であって、上記製造方法は、バンクをアッシング処理する工程、洗浄処理する工程、及び、プラズマ撥水処理する工程と、液状の機能材料を塗布する工程とを順次行うことにより基板上のバンクを処理して機能膜を形成する表示装置用基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用基板の製造方法に関する。より詳しくは、大型液晶テレビに好適に用いられる表示装置用基板の製造方法、及び、それを用いて製造される液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型液晶テレビの需要が増加する傾向にあるが、更なる普及のためには、コスト削減が重要であり、特に、コスト的に比重の高いカラーフィルタ基板のコスト削減に対する要求が高まっている。カラーフィルタ基板には、絵素領域毎に各種製造法により色材(着色層)が配置されるが、大型液晶テレビのコストを下げるための1つの手法として、インクジェット方式による着色層形成技術が注目されている。インクジェット方式によれば、染色法、顔料分散法、電着法等の他の方法と比較して、製造プロセスが短縮されるという利点があるからである。
【0003】
しかしながら、インクジェット方式を用いる場合には、インクジェットヘッドのノズルより吐出させる液状色材の粘度の調節に限界があるため、隣接する絵素領域まで液状色材が流出し、基板上で異なる色の液状色材が混合してしまうおそれがある。そこで、通常では、絵素領域間を仕切る凸形状の構造物(バンク)を設け、そのバンクに囲まれた領域にインクジェット方式により異なる色の液状色材を吐出する方法が用いられる。
【0004】
しかしながら、バンクを設けたとしても、バンクに囲まれた領域にインクジェットから吐出された液状色材が均一に濡れ広がらず、色抜け(光抜け)が生じてしまうことがある。また、吐出される液状色材の液滴の大きさがバンクに囲まれた領域よりも大きい場合には、隣のバンクで囲まれた領域に液状色材が流れ出し、混色が生じてしまうこともあった。
【0005】
一方、高画質が追求される大型液晶テレビに用いられるカラーフィルタ基板では、高色純度、例えばNTSC比(アメリカテレビ標準化委員会による色度域の規格)が72%以上であることが求められる。このためには、光抜けの少ない、かつ、混色不良の少ないカラーフィルタ基板を作製することが重要である。これに対し、バンクに囲まれる領域の底面には親水性を付与し、バンク上面とバンク側面には撥水性を付与し、色抜けや混色を防止する方法が知られている。この方法によれば、バンクで囲まれる底面に親水性を付与することで、バンクに囲まれた領域に液状色材が均一に濡れ広がり、色抜けを防止することができる。また、バンク上面及び側面に撥水性を付与することで、液状色材がバンクに弾かれるため、バンクの高さを超える量の液状色材を充填しても、材料の表面張力により隣のバンクで囲まれた領域に液状色材が流出しにくくなり、混色を防止することができる。
【0006】
ここで、バンクに撥水性を付与する方法としては、フッ素系ガスを用いたプラズマ処理が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、バンクは、通常、フォトリソグラフィ法等を用いたパターニングを経て形成される(例えば、特許文献2参照。)ことから、パターニング後の絵素領域に残渣11cが残ることが多く(図9(a))、そのまま連続してフッ素プラズマ処理を行った場合には、残渣11cを除去しきれず、絵素領域に存在する残渣11cにも撥水性が付与されることになる(図9(b))。その結果、インクジェット方式により液状色材12a、12b、12cを塗布しようとした際には、液状色材12a、12b、12cが絵素領域に存在するバンクの残渣11cによって弾かれ、色抜けが生じてしまうおそれがあった(図9(c))。
そこで、酸素等を用いたドライエッチング処理(アッシング処理)によりバンクの残渣を除去した後に、フッ素系ガスを用いたプラズマ処理を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、図10(a)〜(c)に示すように、アッシング処理を行った場合には、フッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりバンク11bに充分な撥水性を付与することができず、液状色材12a、12b、12cが隣のバンク11bで囲まれた領域に流出し、混色不良15が発生してしまうという点で未だ工夫の余地があった。
【特許文献1】特許第3328297号明細書(第1頁)
【特許文献2】特開2002−156520号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2001−343518号公報(第1、2、8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光抜け及び混色等の不良が低減されて良好な表示特性を有する表示装置用基板を高い生産性で製造することができる表示装置用基板の製造方法、及び、それを用いて製造される液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、バンクで囲まれる底面のバンク残渣を除去して親水性を充分に付与するとともに、バンクに撥水性を充分に付与する方法について種々検討したところ、アッシング処理後のバンクの表面状態に着目した。そして、アッシング処理によりバンク残渣を除去した後には、バンク表面にアッシング処理による生成物が堆積するため、続くフッ素系ガス等を用いたプラズマ処理により、バンクに高い撥水性を付与することができないことを見いだすとともに、バンク表面の堆積物を洗浄処理により除去することで、バンクに高い撥水性を付与することができることを見いだした。その結果、光抜け及び混色等の不良が低減されて良好な表示特性を有する表示装置用基板を高い生産性で製造することができ、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、機能膜が樹脂材料からなるバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板の製造方法であって、上記製造方法は、バンクをアッシング処理する工程、洗浄処理する工程及びプラズマ撥水処理する工程と、液状の機能材料を塗布する工程とを順次行うことにより、基板上のバンクを処理して機能膜を形成する表示装置用基板の製造方法である。なお、本発明において、上記バンク(土手)は、複数の機能膜形成領域同士を仕切る構造物(凸部)であれば特に限定されるものではない。また、上記機能膜は、インクジェット法等の塗布法によりバンク内に形成されるものであれば特に限定されず、例えば、液晶表示装置におけるカラーフィルタ基板の着色層、配線基板における金属配線、有機エレクトロルミネセンス表示装置における発光層等の有機層が挙げられる。
【0010】
上記バンクをアッシング処理する工程(アッシング処理工程)は、通常では、酸素ガスを用いたプラズマ処理により行われるものである。これにより、バンクをパターニング形成した際に生じた残渣の除去を行うことができるので、後に行われるプラズマ処理工程を経た後も、バンクで囲まれる底面の親水性を充分に確保することができる。その結果、インクジェット法等の塗布法により機能膜をバンク内の隅々にまで充填させることができ、カラーフィルタ基板における光抜け等を効果的に防止することができる。
【0011】
本発明では、上記洗浄処理する工程(洗浄処理工程)により、アッシング処理の際にバンク表面に堆積した生成物を除去するので、後に行われるフッ素系ガス等を用いたプラズマ処理により、バンクに高い撥水性を付与することが可能となる。上記洗浄処理工程においては、ブラシ洗浄や、流体洗浄が好適に用いられ、これらを組み合わせた洗浄方法が特に好適に用いられる。これらの洗浄方法によれば、優れた洗浄力と高生産性とを両立することができる。ブラシ洗浄に用いるブラシとしては特に限定されないが、ナイロン系ブラシが好適に用いられる。また、流体洗浄としては、気体と純水とを混合した流体を用いる、いわゆる2流体洗浄、超音波等により発生させたキャビティ(空洞)が弾ける際の力を利用する洗浄等が挙げられる。
【0012】
上記洗浄処理工程は、アッシング処理を行う装置に一体として設けられた洗浄装置を用いて行われることが好ましい。これにより、実質的な工程数の増加もなく、高い生産性を確保することができる。このような洗浄装置としては、例えば、ブラシ洗浄ユニットの前段に酸素アッシング処理で使用する大気圧プラズマユニットを併設した洗浄装置等が挙げられる。
【0013】
上記プラズマ撥水処理する工程(プラズマ撥水処理工程)は、通常では、フッ素系ガスを用いたプラズマ処理により行われるものである。これにより、バンク表面に高い撥水性を付与することができる。プラズマ撥水処理工程で用いるフッ素系ガスとしては特に限定されず、CF(四フッ化炭素)、SF、CHF、C等が挙げられ、中でも、四フッ化炭素が好ましい。なお、フッ素系ガスにヘリウムや窒素等の不活性ガスを混合して用いてもよい。
【0014】
上記液状の機能材料を塗布する工程(塗布工程)は、インクジェット法により行われることが好ましい。本発明においては、アッシング処理工程により、バンクで囲まれる底面に親水性が充分に付与されているとともに、プラズマ処理工程により、バンクの撥水性が充分に付与されていることから、インクジェット法により充填抜け及び隣接する機能膜間での混合を防止しつつ、バンク内に機能膜を形成することができる。その結果、機能膜形成プロセスを簡略化し、製造コストを低減することが可能となる。
なお、液状の機能材料としては、機能膜を塗布法により形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、機能材料を分散させた分散液、機能材料を溶媒中に溶解させた溶液、機能材料を溶融した液体等の形態が挙げられる。
本発明の表示装置用基板の製造方法としては、上述の各工程を必須として構成されるものである限り、その他に行われる工程により特に限定されるものではない。
【0015】
上記バンクの好ましい形態としては、ネガ型の感光性樹脂(ネガ型レジスト)を用いて形成された形態、レーザ照射により樹脂フィルムをパターニングして形成された形態、遮光性樹脂を用いて形成された形態等が挙げられる。なお、上記樹脂フィルムとしては、膜厚や柔軟性等により特に限定されるものではなく、一般に樹脂シートと呼ばれるものであってもよい。ネガ型の感光性樹脂を用いてバンクが形成される場合や、レーザ照射により樹脂フィルムをパターニングしてバンクが形成される場合には、パターニング後にバンクの残渣が残りやすいため、アッシング処理を充分に行う必要があり、本発明の作用効果を充分に奏することが可能となる。また、遮光性樹脂を用いてバンクが形成される場合には、バンクを遮光部材としても利用することが可能となり、例えば、カラーフィルタ基板におけるブラックマトリクスとして用いることができる。
【0016】
本発明により製造される表示装置用基板の構成としては、バンク及び機能膜を必須部材として基板上に備えるとともに、各種表示装置用基板が通常有する構成要素を備えたものであればよく、その他の構成において特に限定されるものではない。
上記表示装置用基板は、カラーフィルタ基板であることが好ましい。カラーフィルタ基板の場合、通常では、基板上の画素毎にそれぞれ赤色、緑色及び青色の3色の着色層(カラーフィルタ)と、各着色層同士を隔てるバンクとが設けられ、その上層に保護膜、共通電極、配向膜等が積層配置された基板構成を有する。上記機能膜は、カラーフィルタ基板用の着色層であることが好ましく、この場合、液状の機能材料としてカラーインクが好適に用いられる。これにより、光抜けや混色不良を改善したカラーフィルタ基板の製造が可能であり、液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0017】
上記表示装置用基板は、配線基板であることが好ましい。上記配線基板とは、基板上に配線が形成されたものであれば特に限定されず、例えば、薄膜トランジスタアレイ基板等が挙げられる。上記機能膜は、配線基板用の金属配線であることが好ましく、この場合、液状の機能材料として金属コロイド溶液が好適に用いられる。これにより、断線不良や細線化不良が低減された金属配線を有する配線基板の製造が可能である。
【0018】
上記表示装置用基板は、有機エレクトロルミネセンス表示パネルであることが好ましい。有機エレクトロルミネセンス表示パネルの場合、通常では、基板上の画素毎にそれぞれ有機層と各有機層同士を隔てるバンクとが設けられ、各有機層を挟持するように一対の駆動用電極が配置された基板構成を有する。ここで、有機層は、通常では、赤色、緑色及び青色に発光する3色の発光層を含み、更に必要に応じて、電子輸送層やホール輸送層等を含んで構成されるものである。上記機能膜は、有機エレクトロルミネセンス表示パネル用の発光層、電子輸送層、及び、ホール輸送層からなる群より選択される少なくとも1層であることが好ましい。これにより、光抜けや混色不良を改善した有機エレクトロルミネセンス表示パネルの製造が可能であり、有機エレクトロルミネセンス表示装置に好適に用いることができる。
【0019】
本発明はまた、上記表示装置用基板の製造方法により製造された表示装置用基板を備える液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置でもある。このような本発明の液晶表示装置や有機エレクトロルミネセンス表示装置によれば、光抜けや混色不良が改善され、良好な表示特性を有する液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表示装置用基板の製造方法によれば、アッシング処理工程とプラズマ処理工程との間に洗浄処理工程を行うことから、アッシング処理工程により充分にバンクの残渣を除去してバンクで囲まれた領域に充分な親水性を付与するとともに、プラズマ処理工程によりバンクの側面及び上面に充分な撥水性を付与することができる。従って、例えば、バンクの側面及び上面のインクに対する撥水角を50〜65°とし、バンクで囲まれた基板表面のインクに対する親水角を6〜20°にすることが可能である。その結果、バンク残渣のインク弾きによる光抜け、及び、バンクの撥水性低下による混色不良が効果的に防止されて表示特性に優れた表示装置用基板を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に実施例を掲げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
本実施例は、本発明の方法によりカラーフィルタ基板を製造する場合の一例を示すものである。なお、本実施例では、バンクは遮光性を有し、ブラックマトリクス(BM)として機能することになる。以下、本実施例におけるカラーフィルタ基板の製造工程を順に説明する。
【0023】
(1)BM(バンク)の形成
(1−a)フィルムタイプの感光性及び遮光性の両特性を有する樹脂を用いたBM形成方法
図1(a)〜(e)は、フィルムタイプの感光性及び遮光性を有する樹脂を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。なお、図中のhυは、紫外線が照射されていることを示している。
まず、ガラス基板10に密着性を上げるためのシランカップリング剤(図示せず)を塗布し、200℃程度のベーク(焼成)を行う。次に、紫外線硬化及び熱硬化の両特性を有する遮光性の樹脂フィルム(膜厚1500〜2000nm程度)11aを100℃前後に昇温しながら、ラミネートする(図1(a))。次に、所定のBMパターンに応じて開口部が設けられたフォトマスク14を樹脂側(表側)に配置し、フォトマスク14の表側から365nmの波長を含む紫外線を約70mJ/cm(検出波長365nm)程度照射し、現像を行う(図1(b)、(c))。最後に、図1(d)に示すように、樹脂側(表側)及びガラス側(裏側)の両側から、約200mJの紫外線を1時間程度照射し、220℃で1時間程度のベークを行うことにより、BMパターン11bを形成する(図1(e))。
このようにBM材料として、フィルムタイプの感光性及び遮光性を有する樹脂を用いた場合には、BMの残渣が残りやすいため、本発明の製造方法は特に効果的である。
【0024】
(1−b)液状の感光性及び遮光性の両特性を有する樹脂を用いたBM形成方法
図2(a)〜(d)は、液状の感光性及び遮光性の両特性を有する樹脂を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。なお、図中のhυは、紫外線が照射されていることを示している。
まず、ガラス基板10に密着性を上げるためのシランカップリング剤(図示せず)を塗布し、200℃程度のベークを行う。続いて、紫外線硬化及び熱硬化の両特性を有する液状の遮光性の樹脂材料をスピンコート、ダイコート、ノズルコート等の手法を用いて1100〜1500nm程度に成膜し、120℃−5分程度のベークを行う(図2(a))。次に、所定のBMパターンに応じて開口部が設けられたフォトマスク14を用いて、樹脂側(表側)から365nmの波長を含む紫外線を約200mJ/cm(検出波長365nm)程度照射し、現像を行う(図2(b)、(c))。最後に、220℃で1時間程度のベークを行うことにより、BMパターン11bを形成する(図2(d))。
【0025】
(1−c)レーザ転写法を用いたBM形成方法
図3(a)及び(b)は、レーザ転写法を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。
まず、膜厚1500〜2000nm程度の遮光性の樹脂フィルム11aを100℃前後に昇温しながら、ガラス基板10にラミネートした(図3(a))。次に、波長680〜1100nmの近赤外線波長のレーザを照射した後、樹脂フィルム11aの不要な部分を剥離することにより、求めるパターンに樹脂をパターニングした。最後に、220℃で1時間程度のベークを行うことによりBMパターン11bを形成した(図3(b))。
【0026】
(2)酸素を用いたアッシング処理
上記(1)のBM形成後には、図4(a)及び図5(a)に示すように、ガラス基板10上にBMの残渣11cが残っている。これを除去しなければ、後述するプラズマ処理によってBMの残渣11cに撥水性が付与されてしまうため、酸素を用いてアッシング処理により除去する。アッシング処理は、例えば、以下の(2−a)〜(2−c)に示す方法等で行うことができる。
【0027】
(2−a)真空圧ドライエッチング装置を用いる方法
図6に示すような真空圧ドライエッチング装置を用いる。アッシング処理条件としては、導入ガス:O/He=50〜300/0〜500sccm(standard cc/min)、ガス圧力:50〜500mTorr、使用電力:300〜500W、処理時間:10〜30sec、処理温度:40℃で行う。
【0028】
(2−b)ダイレクトタイプの大気圧プラズマ装置を用いる方法
図7に示すようなダイレクトタイプの大気圧プラズマ装置を用いる。アッシング処理条件としては、導入ガス:O/N=1.0〜3.0slm(standard liter /min)/20〜50slm、使用電力:300〜800W、搬送速度:0.5〜3.0m/min、処理温度:25〜30℃で行う。
【0029】
(2−c)リモートタイプの大気圧プラズマ装置を用いる方法
図8に示すようなリモートタイプの大気圧プラズマ装置を用いる。アッシング処理条件としては、導入ガス:O/N=1.0〜3.0slm/20〜50slm、使用電力:300〜800W、搬送速度:0.5〜3.0m/min、処理温度:60〜100℃で行う。
【0030】
(3)BMの洗浄
上記(2)のBMのアッシング処理後には、図4(b)及び図5(b)に示すように、BM11b上にアッシング生成物11dが堆積している。これを除去しなければ、後述するプラズマ処理によってBM11bに撥水性を充分に付与することができないため、洗浄を行って除去する(図4(c)及び図5(c))。洗浄は、例えば、以下の(3−a)〜(3−c)に示す方法等で行うことができる。
【0031】
(3−a)ブラシ洗浄
ナイロン系のブラシを用いて、回転数150〜500rpm、押し込み量0.5〜1.0m、搬送速度1.0〜3m/minで洗浄を行う。
(3−b)流体洗浄
エアと純水とを混合した流体を用いる、いわゆる2流体洗浄や、超音波等により生じさせたキャビティ(空洞)が弾ける力を利用した洗浄等により洗浄を行う。上記(3−a)のブラシ洗浄に加えて、流体洗浄を加えた場合には、特に良い結果が得られる。
(3−c)BM形成後の洗浄に用いられる洗浄装置のブラシ洗浄ユニットの活用
通常行われるBM形成後の洗浄に用いられる洗浄装置のブラシ洗浄ユニットを利用して洗浄を行う。更に、ブラシ洗浄ユニットの前段に酸素アッシング処理で使用する大気圧プラズマユニット(図7、図8)を追加することで、工程数の増加を防止しつつ、表示特性の良いカラーフィルタ基板を作製することが可能となる。
【0032】
(4)フッ素系ガスを用いたプラズマ処理
上記(3)に続いて、バンク11bの側面及び上面に撥水性を付与するために、フッ素系ガスを用いてプラズマ処理を行う。プラズマ処理は、例えば、以下の(4−a)〜(4−b)に示す方法等で行うことができる。
【0033】
(4−a)真空圧ドライエッチング装置を用いる方法
図6に示すような真空圧ドライエッチング装置を用いる。プラズマ処理条件としては、導入ガス:CF/He=150〜300/0〜500sccm、ガス圧力:50〜150mTorr、使用電力:200〜300W、処理時間:20〜90sec、処理温度:40℃で行う。
(4−b)ダイレクトタイプの大気圧プラズマ装置を用いる方法
図7に示すようなダイレクトタイプの大気圧プラズマ装置を用いる。プラズマ処理条件としては、導入ガス:CF/N=5.0〜15slm/20〜50slm、ガス圧力:300〜800W、搬送速度:0.5〜3.0m/min、処理温度:25〜35℃で行う。
なお、プラズマ処理に用いるガスとしては、CF以外のSF、CHF、C等のフッ素系ガスを用いてもよい。また、フッ素系ガスにHeやN等の不活性ガスが混合されていてもよい。
【0034】
(5)バンク内への液状機能材料の塗布
上記(4)に続いて、インクジェット方式によりBM11b内にインク(液状機能材料)12a、12b、12cを吐出した(図4(d)及び図5(d))。このとき、BM11b内は、上記(2)の酸素を用いたアッシング処理により、残渣11cが除去されているので、親水性が充分に高められており、また、BM11bの側面及び上面は、上記(3)のBM11bの洗浄によってアッシング生成物11dが除去された後に、上記(4)のフッ素系ガスを用いたプラズマ処理が行われているので、撥水性が充分に高められている。従って、BM11b内に吐出されたインクは、バンク11b内の周辺領域で弾かれることなく、バンク11b内の隅々まで行き渡り、充填抜けが充分に低減されることとなる。また、バンク11b内に着弾したインク液滴12a、12b、12c同士がバンク11bを乗り越えて混合することが充分に低減されることとなる。
そして、バンク11b内に吐出されたインク12a、12b、12cを乾燥することで着色層が形成され、更に保護膜(オーバーコート層)、共通電極、配向膜等を順次形成することで、カラーフィルタ基板が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)〜(e)は、フィルムタイプの感光性及び遮光性を有する樹脂を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。なお、図中のhυは、紫外線が照射されていることを示している。
【図2】(a)〜(d)は、液状の感光性及び遮光性の両特性を有する樹脂を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。なお、図中のhυは、紫外線が照射されていることを示している。
【図3】(a)及び(b)は、レーザ転写法を用いてBM(バンク)を形成する方法の一例を示す断面模式図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の表示装置用基板の製造方法の一実施形態を示す断面模式図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の表示装置用基板の製造方法の一実施形態を示す平面模式図である。
【図6】真空圧ドライエッチング装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】ダイレクトタイプの大気圧プラズマ装置の構成を模式的に示す図である。
【図8】リモートタイプの大気圧プラズマ装置の構成を模式的に示す図である。
【図9】バンク形成後にアッシング処理を行わずに、フッ素系ガスを用いたプラズマ処理を行う場合の表示装置用基板の製造フローの一例を示す平面模式図である。
【図10】バンク形成後にアッシング処理を行い、その後にフッ素系ガスを用いたプラズマ処理行う場合の表示装置用基板の製造フローの一例を示す平面模式図である。
【符号の説明】
【0036】
10:ガラス基板
11a:ブラックマトリクス(パターニング前)
11b:ブラックマトリクス(パターニング後)
11c:ブラックマトリクス残渣
11d:アッシング生成物
12a(右斜線部):インク(赤)
12b(右斜線部):インク(緑)
12c(右斜線部):インク(青)
14:フォトマスク
15(左斜線部):混色不良箇所
20:高周波電源
21:真空チャンバ
22a:上(左)部電極
22b:下(右)部電極
23:被エッチング(プラズマ処理)部材
24:排気ポンプ
25:試料台(ステージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能膜が樹脂材料からなるバンクにより仕切られた構造を基板上に有する表示装置用基板の製造方法であって、
該製造方法は、バンクをアッシング処理する工程、洗浄処理する工程及びプラズマ撥水処理する工程と、液状の機能材料を塗布する工程とを順次行うことにより、基板上のバンクを処理して機能膜を形成することを特徴とする表示装置用基板の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄処理工程は、ブラシ洗浄を行うものであることを特徴とする請求項1記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄処理工程は、流体洗浄を行うものであることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄処理工程は、アッシング処理を行う装置に一体として設けられた洗浄装置を用いて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項5】
前記塗布工程は、インクジェット法により行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項6】
前記バンクは、ネガ型の感光性樹脂を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項7】
前記バンクは、レーザ照射により樹脂フィルムをパターニングして形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項8】
前記バンクは、遮光性樹脂を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項9】
前記表示装置用基板は、カラーフィルタ基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項10】
前記機能膜は、カラーフィルタ基板用の着色層であることを特徴とする請求項9記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項11】
前記表示装置用基板は、配線基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項12】
前記機能膜は、配線基板用の金属配線であることを特徴とする請求項11記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項13】
前記表示装置用基板は、有機エレクトロルミネセンス表示パネルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項14】
前記機能膜は、有機エレクトロルミネセンス表示パネル用の発光層、電子輸送層、及び、ホール輸送層からなる群より選択される少なくとも1層であることを特徴とする請求項13記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項15】
請求項9又は10記載の表示装置用基板の製造方法により製造された表示装置用基板を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項16】
請求項13又は14記載の表示装置用基板の製造方法により製造された表示装置用基板を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−162881(P2006−162881A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353136(P2004−353136)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】