説明

表示装置

【課題】情報表示機能以外の機能を付与して高機能化を図ったときでも、表示品位が低下するのを防ぐことができる表示装置を提供する。
【解決手段】文字および画像を含んだ情報を表示する表示面を有する液晶表示装置(表示部)3と、液晶表示装置3に対してタッチパネル機能を付与するタッチパネル(機能付与光学素子)2とを備えた表示装置1において、液晶表示装置3とタッチパネル2との間に、液晶表示装置3から出射した光がタッチパネル2との界面に入射して生じる反射光を弱める干渉縞防止膜5を介在させることにより、干渉縞の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字および画像を含んだ情報を表示する表示装置であって、特に、タッチパネルや視野角制御素子等の光学素子を表示面に積層した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置では、タッチパネル機能や視野角制御機能などの情報表示機能以外の機能を付与することにより、ユーザに対する利便性の向上などが図られた高機能な表示装置が提供されている。
【0003】
具体的にいえば、従来の表示装置には、例えば下記特許文献1に記載されているように、文字および画像を含んだ情報を表示する表示部としての液晶表示装置と、この液晶表示装置の表示面側に組み付けられたタッチパネルとを備えたものが提供されている。そして、この第1の従来例の表示装置では、液晶表示装置による情報表示機能に加え、タッチパネルによる操作入力機能が設けられることにより、ユーザからの操作入力(指示)に応じた情報表示などの様々なサービスをユーザに提供することが可能とされていた。
【0004】
つまり、第1の従来例の表示装置では、液晶表示装置がその表示面に操作入力画面を表示するとともに、タッチパネルが操作入力画面に対するユーザからの操作入力を検知するように構成されていた。そして、この第1の従来例の表示装置では、液晶表示装置がタッチパネルによる検知結果に応じて、上記表示面を、操作入力画面からユーザが望んだ情報を表示した表示画面に変更することにより、ユーザが所望する情報を表示可能に構成されていた。
【0005】
また、従来の表示装置には、例えば下記特許文献2に記載されているように、上記表示部としての液晶表示装置に対して、視野角制御機能を付与したものが提供されている。すなわち、この第2の従来例の表示装置では、液晶表示装置の表示面側に視野角制御装置(位相差制御用液晶素子)を設置し、視野角制御装置の動作状態を変更することにより、表示装置の表示状態を広視野角と狭視野角との間で切り替え可能に構成されていた。
【0006】
第2の従来例の表示装置では、その表示状態を広視野角とすれば、例えば、多数のユーザに対する情報表示が可能である。一方、その表示状態を狭視野角とすれば、ユーザの個人的な情報が他のユーザから覗き見されるのを防止可能である。
【特許文献1】特開2001−356323号公報
【特許文献2】特許第3322197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来の表示装置では、干渉縞が発生してユーザに視認されることがあり、表示品位が著しく低下することがあった。
【0008】
具体的にいえば、上記第1の従来例の表示装置では、枠状に設けられた両面粘着テープを用いて、液晶表示装置に対しタッチパネルを一体的に組み付けていた。すなわち、この第1の従来例の表示装置では、両面粘着テープを介在させることにより、タッチパネルおよび液晶表示装置の外周部分を互いに貼り合わせていた。
【0009】
ところが、上記のような両面粘着テープを使用した場合、表示装置の表示画面の大きさなどによっては、タッチパネルがその自重によって撓みを生じることがあり、干渉縞の発生が容易に視認されることがあった。具体的には、例えば15インチ以上の表示面を有する液晶表示装置に対し、両面粘着テープを用いてタッチパネルを設置する場合、タッチパネルの中央部が液晶表示装置側に撓むことがあった。この結果、第1の従来例の表示装置では、干渉縞が発生して、表示品位の低下を防止するのが難しいという問題点を生じた。
【0010】
また、上記第2の従来例の表示装置では、視野角制御装置と液晶表示装置とが透明な接着材料によって、貼り合わせられていた。しかしながら、この第2の従来例の表示装置では、接着材料と液晶表示装置との接合面および接着材料と視野角制御装置との接合面に微少なエアギャップが生じることがあり、これらのエアギャップにより干渉縞が発生した。この結果、第2の従来例の表示装置では、第1の従来例の表示装置と同様に、表示品位の低下を防止するのが難しいという問題点を生じた。
【0011】
上記の課題を鑑み、本発明は、情報表示機能以外の機能を付与する機能付与光学素子が表示面に積層された表示装置であって、干渉縞の発生を抑制し得る表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる表示装置は、文字および画像を含んだ情報を表示する表示面を有する表示部と、前記表示部に対して、付加的な光学機能を与える機能付与光学素子とを備え、前記表示部と前記機能付与光学素子との間に、前記表示部から出射した光が前記機能付与光学素子との界面に入射して生じる反射光を弱める干渉縞防止膜を備えたことにより、干渉縞が発生するのを防止したことを特徴とする。
【0013】
上記のように構成された表示装置では、表示部と機能付与光学素子との間に設けた干渉縞防止膜により、干渉縞の発生が防止されている。この結果、上記従来例と異なり、情報表示機能以外の機能を付与して高機能化を図ったときでも、表示品位が低下するのを防ぐことができる。
【0014】
本発明にかかる表示装置において、前記干渉縞防止膜は、蒸着法またはスパッタリング法によって成膜される薄膜であることが好ましい。前記干渉縞防止膜の材料としては、例えばフッ化マグネシウムを用いることができる。
【0015】
本発明にかかる表示装置において、前記表示部から出射した光の分光特性のピークがλであり、前記干渉縞防止膜の厚さdがλ/4であることが好ましい。前記表示部から出射した光が前記機能付与光学素子との界面に入射して生じる反射光を弱めることができ、干渉縞をより効果的に防止できるからである。
【0016】
本発明にかかる表示装置において、前記機能付与光学素子は、例えば、前記表示部の前記表示面側に設けられたタッチパネルである。この場合、タッチパネルによってユーザからの操作入力(指示)を検知可能となり、表示装置では、その指示に応じた情報表示などを行うことができる。
【0017】
本発明にかかる表示装置において、前記機能付与光学素子は、例えば、前記表示部の前記表示面側および前記表示面に対向する非表示面側の少なくとも一方に設けられた視野角制御パネルであっても良い。この場合、視野角制御パネルによって上記表示部の視野角を制御することができ、表示装置では、その用途や使用環境などに応じて、表示部の視野角を最適に変更することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、情報表示機能以外の機能を付与して高機能化を図ったときでも、表示品位が低下するのを防ぐことができる表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の表示装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、本発明を透過型の液晶表示装置に適用した場合を例示して説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示す側面図である。図1において、本実施形態の表示装置1は、ユーザの視認側(図の上側)に配置された抵抗膜式のタッチパネル2と、このタッチパネル2の背面側(図の下側)に設置された表示部としての液晶表示装置3とを備えている。タッチパネル2において液晶表示装置3に対向する面には、干渉縞防止膜5が設けられている。また、表示装置1には、液晶表示装置3の背面側に配置され、当該液晶表示装置3に照明光を照射するバックライト装置4が設けられている。
【0021】
タッチパネル2は、外部からの押圧操作に応じて変形可能に構成された、透明な上部電極部21と、上部電極部21に対向して配置された透明な下部電極部22とを備えている。そして、タッチパネル2では、上部電極部21がユーザからの押圧操作、すなわち操作入力(指示)に応じて変形し、下部電極部22に部分的に接触することにてオフ状態からオン状態に切替えられて、当該ユーザからの指示を検知・入力可能に構成されている。
【0022】
具体的にいえば、上部電極部21には、薄板状の基板21aと、この基板21aの下部電極部22側の表面全面を覆うように形成された抵抗膜21bとが設けられている。同様に、下部電極部22には、薄板状の基板22aと、この基板22aの上部電極部21側の表面全面を覆うように形成された抵抗膜22bとが設けられている。
【0023】
基板21a、22aは、透明で可撓性を有する合成樹脂、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いて構成されている。また、抵抗膜21b、22bは、ITO(酸化インジウム錫)などの透明な導電性薄膜により構成されている。上述の干渉縞防止膜5は、基板22aにおいて抵抗膜22bが設けられている面とは反対側の面に、例えばフッ化マグネシウムの薄膜を蒸着法またはスパッタリング法により成膜することによって形成されている。なお、この成膜工程は、基板22aに抵抗膜22bを形成する前に行うことが好ましい。作業が容易であるからである。
【0024】
また、下部電極部22には、図2(a)に示すように、抵抗膜22b上で互いに平行に設けられた一対の平行電極22c、22dが設けられている。各平行電極22c、22dは、抵抗膜22bと同じ透明な導電性材料を用いて当該抵抗膜22bと一体的に設けられたものであり、図2の上下方向(以下、Y軸方向という。)に沿って帯状に形成されている。
【0025】
また、各平行電極22c、22dは、位置検出用のFPC(Flexible Printed Circuit)25に接続されており、FPC25を介して接続された電源(図示せず)から直流電圧が印加されるようになっている。また、FPC25には、図示を省略した位置検知部が接続されており、抵抗膜22aと上部電極部21側の抵抗膜21bとが接触したときに、上記位置検知部は、抵抗膜21b、22bの接触点と平行電極22cまたは22dとの間の電圧値を検出して、その検出電圧値を基に同図2の左右方向(以下、X軸方向という。)での抵抗膜21b、22bの接触点の位置を検知するようになっている。
【0026】
一方、上部電極部21には、図2(b)に示すように、X軸方向に沿って帯状に形成された一対の平行電極21c、21dが抵抗膜21b上で互いに平行に設けられている。これらの各平行電極21c、21dは、抵抗膜21bと同じ透明な導電性材料を用いて当該抵抗膜21bと一体的に形成されたものであり、FPC25に接続されている。
【0027】
平行電極21c、21dは、下部電極部22側の平行電極22c、22dと同様に、FPC25を介して直流電圧が印加されるようになっている。さらに、上部電極部21では、抵抗膜21bと下部電極部22側の抵抗膜22bとが接触したときに、上記位置検知部が、抵抗膜21b、22bの接触点と平行電極21cまたは21dとの間の電圧値を検出し、その検出電圧値を基にY軸方向での抵抗膜21b、22bの接触点の位置を検知するようになっている。
【0028】
また、上部電極部21と下部電極部22との間には、例えば両面粘着材を用いた封止部材23が、上部電極部21および下部電極部22の各外周部分に枠状に取り付けられており、これらの上部電極部21と下部電極部22とを電気的に絶縁した状態で、抵抗膜21b、22bを互いに対向させるようになっている。
【0029】
さらに、枠状の封止部材23の一辺上には、図2(a)に示すように、FPC25が載置されており、上部電極部21と下部電極部22とが封止部材23により一体化されたときに、FPC25は同時に上部電極部21の抵抗膜21bに気密に固着されるようになっている。
【0030】
また、タッチパネル2では、図2に一点鎖線にて示す入力領域(すなわち、平行電極21c、21dおよび22c、22dで囲まれた領域)が設定されており、この入力領域内でユーザからの操作指示を受け入れるようになっている。また、この入力領域の内部には、透明材料からなる突起部材24(図1)が下部電極部22側の抵抗膜22b上に複数形成されており、抵抗膜21bおよび22bが常時接触するのを確実に防止したり、上記操作指示を円滑、かつ高精度に検出したりすることができるようになっている。
【0031】
さらに、タッチパネル2では、液晶表示装置3の表示面上に表示された操作入力画面が上記入力領域内でユーザに視認可能に構成されている。そして、ユーザが当該操作入力画面に対し、指やタッチペンなどを用いた操作入力を行うと、上部電極部21が当該操作入力に応じて変形して、その抵抗膜21bが下部電極部22の抵抗膜22bに接触することにより、タッチパネル2では、上述のように、X軸方向およびY軸方向での各接触点の位置が検知されて、ユーザからの操作入力が判別される。
【0032】
液晶表示装置3には、表示用液晶パネル31と、表示用液晶パネル31の表示面側および非表示面側にそれぞれ配置された一対の偏光板32および33が設けられている。上記表示用液晶パネル31は、文字および画像を含んだ情報を表示する表示面を有しており、上記表示部を実質的に構成している。表示用液晶パネル31は、カラーフィルタ(図示せず)を具備してカラー表示が可能な構成であっても良いし、カラーフィルタを具備せずモノクロ表示を行う構成であっても良い。
【0033】
また、表示用液晶パネル31の液晶モードや画素構造は任意である。また、表示用液晶パネル31の駆動モードも任意である。すなわち、表示用液晶パネル31としては、情報を表示できる任意の液晶パネルを用いることができる。それゆえ、図1においては表示用液晶パネル31の詳細な構造を図示せず、その説明も省略する。
【0034】
バックライト装置4は、直下型のバックライト装置であり、図1の左右方向で所定間隔をおいて配置された複数の冷陰極管Lを備えている。そして、バックライト装置4は、液晶表示装置3に対して平面状の上記照明光を照射するようになっている。
【0035】
尚、上記の説明以外に、熱陰極管、キセノン管などの放電管を用いた線状光源や、LEDなどの点状光源を備えたバックライト装置を使用することもできる。また、導光板を使用したエッジライト型のバックライト装置を用いることもできる。
【0036】
ここで、図3および図4を参照して、干渉縞防止膜5の機能について説明する。
【0037】
最初に、図3を参照し、タッチパネル2と液晶表示装置3との間に干渉縞防止膜5が設けられていない場合に、干渉縞が発生する原理について説明する。図3は、本発明に対する比較例として、タッチパネル2と液晶表示装置3との間に、干渉縞防止膜5が設けられておらず、厚さh1の空隙層(エアギャップ)が存在している状態を示す。このような空隙層は、従来の表示装置のように、タッチパネル2と液晶表示装置3とを両面粘着テープや接着材料等で貼り合わせた場合に形成されるものである。
【0038】
図3に示すように、液晶表示装置3側から出射した光は、液晶表示装置3の偏光板32と空隙層との界面Aを通過して、空隙層を通過し、さらに空隙層とタッチパネル2の基板22aとの界面Bを通過して観察者側へ進行する。詳細には、偏光板32と空隙層との界面A上の点P1において、偏光板32の内部を通過してきた光αは入射角θ1で空隙層の内部に入射した後、空隙層と基板22aとの界面B上の点P2に対して入射角θ2で入射する。このとき、当該点P2において、基板22a側へ透過する透過光βと、界面Bで反射して空隙層側へ戻る反射光γとが生じる。すなわち、上記光αの一部が、点P2を経て基板22aの内部に直接的に進行する透過光βとなる。
【0039】
また、反射光γは、点P2で偏光板32側に反射された後、偏光板32と空隙層との界面Aの点P3において、基板22a側に再度反射され、空隙層と基板22aとの界面Aの点P4を経て、基板22aの内部に進行する。
【0040】
このように透過光βおよび反射光γが生じた場合に、これらの透過光βおよび反射光γが同時に観察者側へ出射されると、干渉縞の発生が視認されることがある。つまり、上記光αが波連を有する光(波)である場合、空隙層と基板22aとの界面Bで透過光βと反射光γとが再合成されると、干渉縞が生じてしまう。それゆえ、干渉縞の発生を防ぐためには、界面Bにおいて生じる反射光γを小さくすれば良い。
【0041】
図1に示したように、本実施形態にかかる表示装置1においては、タッチパネル2と液晶表示装置3との間に、界面Bでの反射光γを弱める機能を有する干渉縞防止膜5が設けられている。ここで、図4を参照しながら、干渉縞防止膜5が備えるべき条件について説明する。
【0042】
図4は、干渉縞防止膜5の界面近傍を拡大して示す断面模式図である。前述したように、本実施形態における干渉縞防止膜5は、タッチパネル2の基板22aの表面(図4に示す界面B)に蒸着またはスパッタリングで形成された薄膜であるので、干渉縞防止膜5と基板22aとの間には空隙層は存在しない。しかし、干渉縞防止膜5における基板22a側とは反対側の面は、空隙層との界面Cとなる。
【0043】
図4において、γ1は、空隙層と干渉縞防止膜5との界面Cにおける反射光である。γ2は、干渉縞防止膜5と基板22aとの界面Bにおける反射光である。図4に示すように干渉縞防止膜5を備えた構成においては、反射光γは、図4に示すγ1とγ2との合成波となる。つまり、図4においては図示を省略しているが、γ1とγ2は、空隙層と偏光板32との界面Aで反射され、観察者側へ向かって進行する。従って、反射光γを弱めるためには、γ1とγ2とが弱め合うように、干渉縞防止膜5の膜厚dを決定すれば良い。
【0044】
ここで、空隙層の屈折率をn1(n1=1)、干渉縞防止膜5の屈折率をn3、基板22aの屈折率をn2とすると、γ1とγ2とが弱め合うためには、γ1とγ2との光路長差がλ/n3の整数倍であれば良いので、以下の式(1)が成立すればよい。ただし、mは整数である。
【0045】
2*d/cosθ3=λ/n3*(m+0.5) ・・・(1)
上記式(1)を変形すると、干渉縞防止膜5の膜厚dに関する条件として、下記の式(2)が得られる。
【0046】
d={λ(m+0.5)/2n3}*cosθ3 ・・・(2)
従って、干渉縞防止膜5の膜厚dをおよそλ/4とすれば、波長λの入射光に対して干渉縞を防止する効果が得られる。
【0047】
また、干渉縞防止膜5の屈折率n3は、基板22aの屈折率n2よりも小さいことが好ましい。これは、干渉縞防止膜5は、干渉によって反射光を制限するので、界面Cでの反射光γ1の強度と、界面Bでの反射光γ2の強度とを同じレベルに近づけることにより、干渉縞の発生をより効果的に抑制できるからである。
【0048】
なお、バックライト装置4の光源として、図5(a)に曲線70にて例示するように、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の各色光の波長域で鋭いピークを有する3波長管が用いられることがある。このような分光特性を有する3波長管をバックライト装置4の光源として用いた場合の、表示用液晶パネル31のカラーフィルタのR層、G層、およびB層をそれぞれ通過した後のRGBの色光の分光特性を、図5(b)の曲線70R、70G、および70Bにそれぞれ示す。図5(b)に示すように、カラーフィルタのR層を通過した色光は610nm付近にピークを持ち、G層を通過した色光は545nm付近にピークを持ち、B層を通過した色光は435nm付近にピークを持つ。
【0049】
従って、上述の3波長管をバックライト装置4の光源として用いる場合は、図6に示すように、上記の式(2)にλ=610nmを代入して得られる膜厚を有する干渉縞防止膜5aと、上記の式(2)にλ=545nmを代入して得られる膜厚を有する干渉縞防止膜5bと、上記の式(2)にλ=435nmを代入して得られる膜厚を有する干渉縞防止膜5cとの合計3枚の積層構造によって干渉縞防止膜5を形成することで、干渉縞防止効果をより高めることが可能となる。つまり、この構成では、反射光γ11と反射光γ12とによってλ=610nmの光の反射が防止される。また、反射光γ12と反射光γ13とによってλ=545nmの光の反射が防止される。また、反射光γ13と反射光γ14とによってλ=435nmの光の反射が防止される。なお、図6において、干渉縞防止膜5aと干渉縞防止膜5bとの界面、干渉縞防止膜5bと干渉縞防止膜5cとの界面、干渉縞防止膜5cと基板22aとの界面のそれぞれにおいて生じる屈折の図示を省略した。また、干渉縞防止膜5a〜5cの積層順序は任意であり、図6に示した順序に限定されない。
【0050】
なお、図6に示したような積層構造の干渉縞防止膜5a〜5cは、屈折率が互いに異なる材料からなる膜を、スパッタ法等によって順次積層することで形成できる。例えば、図6に示した構成において、干渉縞防止膜5a,5cをフッ化マグネシウムで形成し、干渉縞防止膜5bを二酸化ケイ素で形成することができる。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の表示装置1では、タッチパネル2と液晶表示装置3との間に、図4に示した界面Cにおける反射光γ1と界面Bにおける反射光γ2とが弱め合うように膜厚が設定された干渉縞防止膜5を介在させることにより、干渉縞の発生を防止している。この結果、タッチパネル2と液晶表示装置3との間の空隙層に起因する干渉縞を防止し、表示品位が低下するのを防ぐことができる。
【0052】
尚、上記の説明では、抵抗膜式のタッチパネル2を使用した場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、光学式や静電容量式等の他の方式のタッチパネルを用いることもできる。
【0053】
さらに、上記の説明では、干渉縞防止膜5が、タッチパネル2の基板22aに成膜された構成を例示した。しかしながら、干渉縞防止膜5が、タッチパネル2側ではなく、液晶表示装置3の偏光板32の表面に設けられた構成としても良い。あるいは、干渉縞防止膜5が、タッチパネル2の基板22aと、液晶表示装置3の偏光板32表面との両方に設けられた構成であっても良い。
【0054】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示す側面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、タッチパネルに代えて、視野角制御機能を付与する視野角制御装置を用いた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0055】
つまり、図7に示すように、本実施形態の表示装置1では、液晶表示装置3の表示面側に視野角制御装置6が積層されている。視野角制御装置6は、視野角制御用液晶パネル61と、視野角制御用液晶パネル61上に順次積層された位相差板62および偏光板63とを有している。そして、視野角制御用液晶パネル61において表示用液晶パネル31に対向する面に、例えばフッ化マグネシウムの薄膜を蒸着法またはスパッタリング法で成膜することによって、干渉縞防止膜5が形成されている。なお、この成膜工程は、視野角制御用液晶パネル61の透光性基板に対して、例えば電極膜等の他の部材を形成する前に、最初に行うことが好ましい。作業が容易であるからである。
【0056】
視野角制御用液晶パネル61は、液晶層と、この液晶層を狭持する一対の透光性基板とを備えている(図示せず)。上記液晶層には、例えばホモジニアス配向させたネマティック液晶が用いられている。また、この液晶層では、その液晶分子は、電圧の無印加時には、上記透光性基板の基板面に対して分子長軸がほぼ平行となるように配列され、電圧が印加されると、同基板面に対して分子長軸がほぼ垂直となるよう配列されている。
【0057】
また、視野角制御用液晶パネル61では、表示用液晶パネル31と異なり、画素単位に液晶層を駆動する必要がないため、電極構造に関しては制限がない。つまり、視野角制御用液晶パネル61では、表示面全体で一様なスイッチングを行うために、上記透光性基板の全面に一様な透明電極が形成された構成としても良いし、他の任意の電極構造を取り得る。
【0058】
また、視野角制御装置6では、液晶表示装置3の偏光板32と協働して、表示装置1の表示状態を狭視野角と広視野角との間で切替可能に構成されている。すなわち、偏光板63と偏光板32とは、それぞれの偏光透過軸が略直交(例えば、80°〜100°の範囲)するように配置されている。
【0059】
ここで、図8および図9を参照して、本実施形態の表示装置1での視野角の切替動作について具体的に説明する。
【0060】
図8は、図7に示した表示装置において、異なる視点からの視角の定義を表す模式図である。図9(a)〜(c)は、図7に示した表示装置における、視角に応じた液晶分子と偏光板の偏光透過軸との位置関係を示す図である。尚、以下の説明では、表示装置1に対する、ある視点からの視角を、偏光板63の中央63cを基準とした方位角θおよび極角φによって表す。
【0061】
すなわち、図8に示すように、方位角θとは、視点から偏光板63の表面を含む平面へ下ろした垂線の足と、偏光板63の中央63cとを結ぶ線の回転角である。また、図8において、方位角θは、視点S1の方向の方位角θC1を0°として、偏光板63の法線方向上側から見た場合に時計回りに増加するものとする。すなわち、同図8に例示するように、視点S2の方位角θC2は90°であり、視点S3の方位角θC3は180°である。また、極角φ1〜φ3は、偏光板63の中央63cと視点S1〜S3とをそれぞれ結ぶ直線が、偏光板63の法線となす角度である。
【0062】
ここで、図9(a)〜(c)を参照して、視野角制御用液晶パネル61において、電圧印加が行われて、液晶分子の分子長軸が表示装置1の表示面にほぼ垂直となった場合の、図8に示す視点S1〜S3のそれぞれの視角から観察される表示状態について説明する。
【0063】
まず、視点S1からの視角(方位角θC1=0°)に対しては、極角φ1がおよそ20°〜60°の範囲で、図9(a)に示すように、液晶分子61cの短軸側が視角方向に対向する状態となる。これにより、視点S1からの視角に対しては、バックライト装置4から出射され、偏光板32を透過して視野角制御用液晶パネル61内に入射した直線偏光は、液晶分子61cによって複屈折が与えられず、偏光板63で遮蔽される。従って、視点S1からの視角に対しては、他人からの覗き見を防止するに十分な遮光状態が得られる。
【0064】
また、視点S2からの視角(方位角θC2=90°)に対しては、極角φ2がおよそ30°〜60°の範囲で、図9(b)に示すように、液晶分子61cの分子長軸が、偏光板32の偏光透過軸X2に対してほぼ平行に近く見える状態となる。これにより、視点S2からの視角に対しては、バックライト装置4から出射され、偏光板32を透過して視野角制御用液晶パネル61内に入射した直線偏光は、液晶分子61cによって偏光板63で遮蔽される。従って、視点S2からの視角に対しても、他人からの覗き見を防止するに十分な遮光状態が得られる。また、視点S2と対向する位置、つまり方位角θが270°の場合も、視点S2からの観察時と同様の原理により、遮光状態が得られる。
【0065】
また、視点S3からの視角(方位角θC3=180°)に対しては、極角φ3が0°≦φ3<90°の範囲で、図9(c)に示すように、液晶分子61cの分子長軸が、偏光板63の偏光透過軸X1および偏光板32の偏光透過軸X2のそれぞれに対して約45°傾き、かつ、液晶分子61cの長軸側が視角方向に対向する状態となる。これにより、視点S3からの視角に対しては、バックライト装置4から出射され、偏光板32を透過して視野角制御用液晶パネル61内に入射した直線偏光は、液晶分子61cによって複屈折が与えられ、偏光板63の偏光透過軸X1に一致するよう偏光方向が回転され、偏光板63を透過する。従って、視点S3からの視角に対しては、十分な透過率が得られる。
【0066】
以上のように、視野角制御装置6では、視野角制御用液晶パネル61において電圧印加が行われた場合、方位角180°を中心とする狭い視角範囲についてのみ良好な表示が得られ、その他の方位角については、視野角制御用液晶パネル61内の偏光光が偏光板63で遮光され、黒表示となる。従って、視野角制御装置6では、視野角制御用液晶パネル61において電圧印加を行うことにより、広視野角方向に対しては、バックライト装置4からの出射光を遮蔽できる。すなわち、広視野角方向からは表示用液晶パネル31の表示画像を視認できなくなり、表示装置1を狭視野角とすることができる。
【0067】
一方、視野角制御用液晶パネル61において電圧印加を行わない場合は、視野角制御用液晶パネル61において、上記視点S1〜S3のいずれの視角に対しても、全方位に対して良好な表示が得られるような十分な複屈折が生じることにより、表示装置1を広視野角とすることができる。
【0068】
以上のとおり、本実施形態の表示装置1では、視野角制御用液晶パネル61への電圧の印加/無印加を切替えることにより、表示装置1の表示状態を広視野角と狭視野角との間で切替えることが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態の表示装置1において、干渉縞防止膜5は、視野角制御用液晶パネル61の透光性基板の表面に形成されており、この透光性基板の表面と干渉縞防止膜5との界面が図4に示す界面Bに相当する。また、本実施形態において干渉縞防止膜5が満たすべき膜厚の条件等は、第1の実施形態と同様である。
【0070】
以上のように構成された本実施形態では、視野角制御装置6と液晶表示装置3との間に、視野角制御装置6との界面における反射光γ1と、空隙層との界面における反射光γ2とが弱め合うように膜厚が設定された干渉縞防止膜5を介在させることにより、干渉縞の発生を防止している。この結果、視野角制御装置6と液晶表示装置3とを積層した場合に、その間の空隙層に起因する干渉縞を防止し、表示品位が低下するのを防ぐことができる。
【0071】
尚、上記の説明以外に、第1の実施形態の場合と同様に、液晶表示装置3の表示面側に視野角制御装置6を設けた場合について説明したが、液晶表示装置3の非表示面側に視野角制御装置6を設けることもできる。また、上記表示面側および非表示面側の双方に視野角制御装置6を設置することも可能である。
【0072】
さらに、液晶表示装置3の表示面側および非表示面側にタッチパネル2および視野角制御装置6をそれぞれ設置して、タッチパネル2による操作入力機能、および視野角制御装置6にて覗き見を防止する、いわゆるベールビュー機能の両方の機能を備えた液晶表示装置3を構成することもできる。
【0073】
また、上記の説明では、視野角制御用液晶パネル61を備えた視野角制御装置6を用いた場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、機能付与光学素子として、位相差フィルム等を積層してフィルム状に構成された視野角制御フィルムを使用することもできる。
【0074】
さらに、上記の説明では、干渉縞防止膜5が、視野角制御用液晶パネル61における液晶表示装置3側の面に成膜された構成を例示した。しかしながら、干渉縞防止膜5が、視野角制御用液晶パネル61側ではなく、液晶表示装置3の偏光板32の表面に設けられた構成としても良い。あるいは、干渉縞防止膜5が、視野角制御用液晶パネル61と、液晶表示装置3の偏光板32表面との両方に設けられた構成であっても良い。
【0075】
尚、上記の第1および第2の実施形態はすべて例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0076】
例えば、上記の説明では、本発明を透過型の液晶表示装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、文字および画像を含んだ情報を表示する表示面を有する表示部を構成可能な各種表示装置に適用することができる。具体的には、半透過型や反射型の液晶表示装置、あるいは投写型表示装置などの非発光型の表示装置を表示部として使用することができる。
【0077】
また、上記の説明以外に、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、プラズマディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)素子、無機EL素子、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display)、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display)、表面電界ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display)等の自発光型の表示装置を表示部に用いることもできる。
【0078】
また、上記の説明では、機能付与光学素子としてタッチパネルまたは視野角制御パネルを用いた場合について説明したが、本発明の機能付与光学素子はこれに限定されるものではなく、例えば表示部にて形成された表示画像の光を遮光する遮光部分と、当該光の透過を許容する透過部分とを備えた視差バリアを機能付与光学素子に用いることにより、複数の表示方向に対して異なる複数の表示画像をそれぞれ表示可能なマルチビュー機能を付与することができる。
【0079】
また、視差バリアに代えて、レンチキュラーレンズを含んだ視差素子を機能付与光学素子として設けることにより、表示部からの表示画像を3次元的に表示可能な3D(Dimension)表示装置を構成することもできる。
【0080】
なお、本発明にかかる表示装置の用途は多岐に亘る。例えばノート型パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末(PDA)、携帯型ゲーム機、または携帯電話等のディスプレイに適用されるだけでなく、ATM(現金自動受け払い機)、公共の場に設置される情報端末、券売機、および車載用ディスプレイ等、様々な機器のディスプレイに適用される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明にかかる表示装置は、情報表示機能以外の機能を付与して高機能化を図ったときでも、表示品位が低下するのを防ぐことができるので、優れた表示性能を有する高性能な表示装置に対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示したタッチパネルの要部構成を説明する図であり、(a)および(b)はそれぞれ上部電極部側および下部電極部側から見たときの下部電極部および上部電極部の平面図である。
【図3】本発明に対する比較例として、タッチパネルと液晶表示装置との間に、干渉縞防止膜が設けられていない状態を示す断面模式図である。
【図4】干渉縞防止膜の界面近傍を拡大して示す断面模式図である。
【図5】(a)は図1に示したバックライト装置からの光の分光特性の具体例を示すグラフであり、(b)は図1に示した表示用液晶パネルのカラーフィルタを通過した後の上記バックライト装置からの光の分光特性の具体例を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる表示装置の変形例を示す断面模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示す側面図である。
【図8】図7に示した表示装置において、異なる視点からの視角の定義を表す模式図である。
【図9】(a)〜(c)は、図7に示した表示装置における、視角に応じた液晶分子と偏光板の偏光透過軸との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 表示装置
2 タッチパネル(機能付与光学素子)
3 液晶表示装置(表示部)
31 表示用液晶パネル
5 干渉縞防止膜
5a 干渉縞防止膜
5b 干渉縞防止膜
5c 干渉縞防止膜
6 視野角制御装置(機能付与光学素子)
61 視野角制御用液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字および画像を含んだ情報を表示する表示面を有する表示部と、
前記表示部に対して、付加的な光学機能を与える機能付与光学素子とを備え、
前記表示部と前記機能付与光学素子との間に、前記表示部から出射した光が前記機能付与光学素子との界面に入射して生じる反射光を弱める干渉縞防止膜を備えたことにより、干渉縞が発生するのを防止したことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記干渉縞防止膜が、蒸着法またはスパッタリング法によって成膜される薄膜である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記干渉縞防止膜が、フッ化マグネシウム膜である、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部から出射した光の分光特性のピークがλであり、前記干渉縞防止膜の厚さdがλ/4である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記機能付与光学素子は、前記表示部の前記表示面側に設けられたタッチパネルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記機能付与光学素子は、前記表示部の前記表示面側および前記表示面に対向する非表示面側の少なくとも一方に設けられた視野角制御パネルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−20294(P2009−20294A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182534(P2007−182534)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】