表示装置
【課題】MOSFETを用い、DAHCの発生を抑制した走査線駆動回路を有する表示装置を提供する。
【解決手段】走査線の各々に画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路を有する表示装置であって、走査線駆動回路は、それぞれ対応する走査線に画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部102と、画素駆動信号の出力のための電圧信号G1を、各駆動信号出力部に入力する電圧信号入力部104とを有し、駆動信号出力部102は、トランジスタTr1を有し、電圧信号入力部104は、トランジスタTr1へのゲート電圧の供給期間の開始より後、かつ供給期間が終了するより前に、電圧信号を入力し、駆動信号出力部102は、トランジスタTr1から画素駆動信号を対応する走査線に出力し、閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段110をさらに有する、ことを特徴とする表示装置。
【解決手段】走査線の各々に画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路を有する表示装置であって、走査線駆動回路は、それぞれ対応する走査線に画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部102と、画素駆動信号の出力のための電圧信号G1を、各駆動信号出力部に入力する電圧信号入力部104とを有し、駆動信号出力部102は、トランジスタTr1を有し、電圧信号入力部104は、トランジスタTr1へのゲート電圧の供給期間の開始より後、かつ供給期間が終了するより前に、電圧信号を入力し、駆動信号出力部102は、トランジスタTr1から画素駆動信号を対応する走査線に出力し、閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段110をさらに有する、ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査線駆動回路を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置等の表示装置には、その表示領域に走査線が敷設され、当該走査線の各々に画素を駆動するための信号を供給する走査線駆動回路は、一般的に、表示領域の周辺回路として構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような走査線駆動回路は、回路規模の増大を抑えるためにMOSFETトランジスタを有するCMOS素子を含んで実装されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3866070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような走査線駆動回路においては、MOSFETトランジスタによるスイッチング素子にDAHC(Drain Avalanche Hot Carrier)による劣化が生じる場合がある。DAHCとは、ドレイン近傍に高電界領域が形成される等により雪崩的に発生したキャリアの一部が、ゲート絶縁膜中にトラップされてMOSFETトランジスタの劣化を生じさせる現象をいう。このようなDAHCは、具体的には、ゲート端子に閾値電圧付近の電圧が印加されると共に、Vds(ソース・ドレイン間の電圧)が大きくなることで生じやすくなる。DAHCが発生すると、トランジスタのOn電流の減少や閾値電圧のシフト等が引き起こされる。
【0006】
また、走査線駆動回路がCMOS素子を含んで実装される場合には、DAHCの発生が問題となりやすい。図8Aは、従来の有機EL表示装置における走査線駆動回路の一例を示す図である。図8Aの走査線駆動回路におけるDフリップフロップ回路DFF等の論理回路は、図8B〜図8Dで示されるように、CMOS素子を含んで構成される。図8Aで示される走査線駆動回路は、走査線に接続された各画素回路を駆動する信号を、画素駆動信号OUT1、OUT2、OUT3、OUT4の順に生成する。また、図8B〜図8Dの各図において、VDDは電源、VSSはグランドを示している。
【0007】
ここで、画素駆動信号OUT1等としては、走査線に接続された各画素回路を駆動するため、所定電圧(例えば、12V)が必要とされることから、走査線駆動回路における電源にもこの所定電圧に応じた電圧(12V)が必要となる。このため、所定電圧に応じた電圧が電源から供給されるCMOS素子のMOSFETでは、常にVdsが大きくなり、かつ、スイッチングが繰り返されるごとにゲート端子に閾値電圧付近の電圧が印加されて、DAHCによる劣化が生じやすくなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、CMOS素子を用いる場合であっても、DAHCによるMOSFETの劣化を生じにくくした走査線駆動回路を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る表示装置は、画像を表示する表示領域に敷設された複数の走査線と、前記走査線の各々に、画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路と、を有する表示装置であって、前記走査線駆動回路は、それぞれ対応する前記走査線に前記画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部と、前記画素駆動信号を出力させるための電圧信号を、前記駆動信号出力部の各々に入力する電圧信号入力部と、を有し、前記駆動信号出力部は、少なくとも1つのトランジスタを有し、前記電圧信号入力部は、前記トランジスタのゲート端子にゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記トランジスタのソース及びドレインの一方の端子に前記電圧信号を入力し、前記駆動信号出力部は、前記トランジスタの前記ソース及びドレインの他方の端子から、前記画素駆動信号を前記対応する走査線に出力し、前記トランジスタにおける閾値電圧と前記ゲート電圧との差を増大させるように、前記ゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段を有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記閾値電圧差増大手段は、前記ゲート端子と、前記他方の端子との間に接続される容量素子と、前記ゲート端子に接続される整流素子と、を含み、前記容量素子は、前記整流素子と前記他方の端子との間に接続される、ことを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記走査線駆動回路は、前記走査線の各々のうちの一部を選択して、該一部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を供給する一部選択手段を有し、前記一部選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、前記一部選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、ことを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記走査線駆動回路は、前記走査線の全部を選択して、該全部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を一括して供給する一括選択手段、をさらに有し、前記一括選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、前記一括選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、ことを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記トランジスタは、NMOSトランジスタであって、前記電圧信号入力部は、前記トランジスタの閾値電圧よりも正の方向に大きい電位となるゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記ゲート電圧よりも正の方向に大きい電位となる前記電圧信号を前記ドレイン端子に入力する、ことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、DAHCによる劣化を生じにくくした走査線駆動回路を有する表示装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL表示装置におけるTFT基板の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路を説明するブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路を概略的に示す回路図である。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における信号の入出力のタイミングを示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における回路を概略的に示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における信号の入出力のタイミングを示す図である。
【図8A】従来の有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路の一例を示す図である。
【図8B】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【図8C】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【図8D】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る各実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、各実施形態で同一の構成要素には同一符号を付し、同一構成要素の繰り返しの説明については省略する。本発明は、技術的思想を逸脱しない範囲内において適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置におけるTFT基板の概略構成を示す図である。同図に示されるTFT基板では、複数の走査線が互いに等間隔を置いて図中水平方向に敷設され、複数の映像信号線が互いに等間隔を置いて図中垂直方向に敷設される。各走査線には走査線駆動回路200から信号が出力され、各映像信号線には映像信号線駆動回路210から信号が出力される。また、画像を表示する表示領域220は、走査線および映像信号線によってマトリクス状に区画されており、これらの走査線および映像信号線に沿ってマトリクス状に複数の画素が配列される。
【0018】
これら走査線と映像信号線とによって区画される各画素の領域には、スイッチングに用いられるMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造の薄膜トランジスタ等が配置されて画素回路が構成される。また、走査線駆動回路200および映像信号線駆動回路210は、表示領域220の周辺に実装される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る有機EL表示装置の走査線駆動回路200を説明するブロック図である。同図で示すように、走査線駆動回路200は、複数の駆動信号出力部102と、電圧信号入力手段104と、走査線選択信号供給手段106とを含んで構成される。走査線選択信号供給手段106は、走査線駆動回路200が信号を供給する走査線を選択するための回路であり、選択される走査線に対応する駆動信号出力部102に選択信号を供給する。また、電圧信号入力手段104は、各駆動信号出力部102に電圧信号を入力する回路である。そして、駆動信号出力部102は、選択信号と電圧信号の入力に応じて、走査線に接続された画素を駆動するための画素駆動信号を出力する回路であり、各走査線に対応するように複数配置される。
【0020】
本実施形態においては、走査線選択信号供給手段106は、走査線駆動回路200が駆動する対象となる走査線のうちの一部を選択する一部選択手段106Aを有しており、当該一部の走査線に対応する駆動信号出力部102に選択信号を供給する。一方、電圧信号入力手段104は、各駆動信号出力部102に同一のタイミングで電圧信号を入力する。選択信号が供給された駆動信号出力部102は、電圧信号入力手段104から電圧信号が入力されるタイミングに合わせて、接続された走査線に画素駆動信号を出力する。
【0021】
ここで、各駆動信号出力部102は、少なくとも1つのMOSFETを含んでいる。当該MOSFETのソース電極及びドレイン電極の一方の端子には、電圧信号入力手段104からの電圧信号が入力される。そして、当該MOSFETのゲート電極に、走査線選択信号供給手段106からの選択信号が入力されることにより、ソース電極及びドレイン電極の他方の端子から画素駆動信号が出力される。特に、本実施形態では、各駆動信号出力部102は、選択信号によって生じるゲート電圧とゲート閾値電圧との差を増大させる閾値電圧差増大手段110を有している。これについては詳しくは後述する。
【0022】
以下では、走査線駆動回路200の具体的な構成について説明する。図3は、本実施形態における走査線駆動回路200を概略的に示す回路図である。同図で示された鎖線枠の回路部分は、それぞれ駆動信号出力部102、電圧信号入力手段104、走査線選択信号供給手段(一部選択手段106A)に対応する。また図3においては、各駆動信号出力部102に、102−1、102−2、102−3、102−4の符号を付して表記しており、これらは同様の構成を有している。駆動信号出力部102−1〜4は、それぞれ画素駆動信号OUT1〜4を対応する走査線に出力する。以下、それぞれの回路部分につき説明する。なお、図3においては、駆動信号出力部102−5以降の駆動信号出力部や、そこから出力される画素駆動信号OUT5等の記載は省略されている。
【0023】
まず、本実施形態における一部選択手段106Aは、図3で示されるようなシフトレジスタであって、各Dフリップフロップ回路DFFによって、図中上側から図中下側の駆動信号出力部102に順番に選択信号を出力するように構成されている。また、一部選択手段106Aは、図8B及び図8Cに示すような、CMOS素子を含む回路を含んで構成される。
【0024】
つぎに、各駆動信号出力部102のいずれかに、一部選択手段106Aからの選択信号が入力される。当該選択信号は、整流素子RDを経由して、トランジスタTr1(MOSFET)のゲート電極に供給される。この選択信号の入力によって、当該ゲート電極にゲート電圧が印加される。本実施形態におけるトランジスタTr1は、NMOSトランジスタであって、選択信号によって印加されるゲート電圧は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも正の方向に大きな電位となる。
【0025】
そして、電圧信号入力手段104は、選択信号によるゲート電圧がトランジスタTr1のゲート電極に印加される期間が開始するより後、かつ、当該期間が終了するより前に、各駆動信号出力部102におけるトランジスタTr1のドレイン電極に電圧信号G1を入力する。すなわち、駆動信号出力部102は、一部選択手段106Aから選択信号が入力されている期間において、電圧信号入力手段104から電圧信号G1が入力されるタイミングで、トランジスタTr1のソース電極から画素駆動信号を出力する。このようにして、電圧信号入力手段104は、画素駆動信号を出力するタイミングを規定している。
【0026】
ここで、画素駆動信号としては、走査線に接続された各画素を駆動するために比較的高い電圧(本実施形態では12Vの電圧である)が必要とされる。したがって、駆動信号出力部102に入力される電圧信号G1にも、比較的高い電圧が必要とされ、この電圧信号G1の電圧は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。本実施形態では、Vdsが大きくなる期間(トランジスタTr1のドレイン電極に比較的高い電圧の電圧信号が入力される期間)が、ゲート電極に閾値電圧付近の電圧が印加されるタイミング(選択信号の入力が開始するタイミングと終了するタイミング)を避けるようにしているため、トランジスタTr1におけるDAHCの発生を抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態では、一部選択手段106Aにおける電源の電位を、電圧信号G1の電位よりも低く設定している。これにより、図8B及び図8Cで示される各CMOS素子のトランジスタでは、当該トランジスタに閾値電圧付近の電圧が印加されるタイミングであってもVdsが低くなる。このようにして、一部選択手段106Aを構成するCMOS素子のトランジスタにおいてもDAHCの発生が抑制される。
【0028】
一方、上述のようにして、一部選択手段106Aにおける電源の電位が電圧信号G1の電位よりも低いと、駆動信号出力部102に供給される選択信号の電位も低くなり、トランジスタTr1のゲート電極に選択信号によって供給されるゲート電圧も低くなる。ゲート電圧が低いと、トランジスタTr1のON抵抗が大きくなるので、その電圧降下によって十分な電圧の画素駆動信号が出力できなくなってしまう。そこで本実施形態では、トランジスタTr1のソース電極から出力される画素駆動信号によって、ゲート電極に印加されるゲート電圧と閾値電圧との差を増大させる閾値電圧差増大手段110を有するようにしている。この閾値電圧差増大手段110により、画素駆動信号を出力する際のトランジスタTr1におけるゲート電圧を向上させることができるので、一部選択手段106Aにおける電源の電位を低くしつつ、トランジスタTr1は、電圧信号G1の電圧降下を少なくして画素駆動信号を走査線に出力できる。以下において、閾値電圧差増大手段110の具体的な構成について説明する。
【0029】
本実施形態における閾値電圧差増大手段110は、図3に示されるような容量素子C1と整流素子RDを含んで構成されるブートストラップ回路である。図3で示すように、容量素子C1は、トランジスタTr1のゲート電極とソース電極との間に接続されて、ゲート電極は、容量素子C1と整流素子RDの間において接続されるようにしている。一旦、ソース電極から画素駆動信号の出力が開始されてトランジスタTr1のソース電極の電位が向上すると、容量素子C1のゲート電極側の電位もこれに伴って上昇し、ゲート電極に印加されるゲート電圧が上昇する。このようにして、トランジスタTr1のゲート電極に一部選択手段106Aからの選択信号が入力され始めたときよりも、トランジスタTr1におけるゲート電極の閾値電圧とゲート電圧との差がさらに増大する。これにより、トランジスタTr1によるON抵抗が減少するので、駆動信号出力部102は、比較的高い電位を維持して画素駆動信号を走査線に出力できる。
【0030】
また、本実施形態における各駆動信号出力部102は、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すためのリセット手段を含んでいる。本実施形態におけるリセット手段は、トランジスタTr1のゲート電極をグランド接続させる配線と、当該配線上に配置されたトランジスタTr2を含んで構成される。トランジスタTr1のゲート電極は、トランジスタTr2を介してグランド接続されており、トランジスタTr2がONとなることにより接地されて、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位が基準電位に戻される。トランジスタTr1のゲート電極が接地されることで、トランジスタTr1がOFFとなり、駆動信号出力部102は、電圧信号G1が入力されても画素駆動信号を出力しないようになる。また、このトランジスタTr2はトランジスタTr1と同様にNMOSである。トランジスタTr2は、そのゲート電極に、一部選択手段106Aからの選択信号が入力されることでONとなり、トランジスタTr1のゲート電極が接地される。また、トランジスタTr1のゲート電極が接地されることにより、容量素子C1に蓄積された電荷は、放電される。
【0031】
ここで、駆動信号出力部102におけるトランジスタTr2のゲート電極は、当該駆動信号出力部102に隣接する他の駆動信号出力部102へ選択信号を入力する配線と接続されて、この選択信号によってスイッチングが制御される。すなわち、駆動信号出力部102のリセット手段は、一部選択手段106Aからの選択信号が入力された後、当該駆動信号出力部102とは異なる駆動信号出力部102に入力される選択信号によって、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻す。
【0032】
本実施形態では、具体的には、一部選択手段106Aからの選択信号が、駆動信号出力部102−2、102−3、102−4・・・と順番に供給されると、駆動信号出力部102−1、102−2、102−3・・・における各リセット手段はトランジスタTr1におけるゲート電極の電位を基準電位に戻すように、順番に動作する。選択信号が入力された駆動信号出力部102のリセット手段は、一部選択手段106Aから次に出力される選択信号により、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻す。本実施形態では、具体的には、駆動信号出力部102−1に選択信号が供給されると、その次に、駆動信号出力部102−2に選択信号が供給されることとなる。駆動信号出力部102−1のリセット手段は、駆動信号出力部102−2に供給される選択信号によって、駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極を接地する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200における信号の入出力のタイミングを示す図である。同図で示すように、まず、走査線駆動回路200に走査開始信号ST1が入力されることにより、表示領域220に1画面を表示させる1フレーム期間が開始する。また本実施形態における走査開始信号ST1が出力される期間は、1水平期間である。この1水平期間は、1本の走査線に画素駆動信号を供給して、接続される各画素を描画するための期間である。
【0034】
また、各Dフリップフロップ回路DFFには、クロックパルスCLK1とCLK1B、又は、CLK2とCLK2Bのいずれかが供給されるようになっている。図3で示すように、奇数番目に配列されたDフリップフロップ回路にはクロックパルスCLK1とCLK1Bが、偶数番目に配列されたDフリップフロップ回路にはクロックパルスCLK2とCLK2Bが供給されるようになっている。また、クロックパルスCLK1とCLK1B、CLK2とCLK2Bは、各一対が交互となるタイミングで供給されるようになっており、各クロックパルスの周期は2水平期間である。
【0035】
また、電圧信号入力手段104は、電圧信号G1を、1水平期間の周期で各駆動信号出力部102のそれぞれに入力する。図4で示すように、電圧信号G1と、各クロックパルスとは、異なるタイミングで出力されるようになっている。また、本実施形態では、一部選択手段106Aにおける各Dフリップフロップ回路DFFは、図中上側から順番に、各駆動信号出力部102に選択信号を供給する。この選択信号が供給される順番に従って、各駆動信号出力部102−1〜102−4は、図4で示すように、画素駆動信号OUT1〜OUT4を出力する。
【0036】
ここで特に、図4におけるNode1は、画素駆動信号OUT1を出力する駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を示している(図3参照)。図4で示すように、まず、駆動信号出力部102に選択信号が入力されることにより、Node1がゲート閾値電圧よりも正の方向に高い所定電位となる。そして、トランジスタTr1のゲート電極が当該所定の電位となる期間中に、電圧信号G1が入力されるタイミングにおいて、閾値電圧差増大手段110の作用により、Node1の電位がさらに向上してゲート閾値電圧との差が増大する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態における走査線駆動回路200では、電圧信号G1のHレベルは、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。そして、駆動信号出力部102は閾値電圧差増大手段110を有しており、トランジスタTr1における閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させることができる。そのため、一部選択手段106Aに入力される走査開始信号ST1のHレベル、クロックパルスCLK1とCLK1BのHレベル、クロックパルスCLK2とCLK2BのHレベル、および、Dフリップフロップ回路DFFにおける電源は、電圧信号G1のHレベルよりも低い電圧に設定することができる。本実施形態では、一部選択手段106AがCMOS素子を含んで構成されているが、一部選択手段106Aに入力される各信号のHレベルや電源を低い電圧に設定することで、回路規模の増大を抑えつつ、DAHCの発生を抑制し、さらに消費電力を低減することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
以下においては、第2の実施形態に係る有機EL表示装置を説明する。第2の実施形態に係る有機EL表示装置は、表示する輝度の階調値に基づく電荷を各画素に書きこむ書き込み期間と、各画素に書き込まれた電荷に従って当該書き込み期間の後に一画面の画像を表示させる発光期間とを有する。
【0039】
図5は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200を説明するブロック図である。同図で示されるように、第2の実施形態では、走査線選択信号供給手段106は一括選択手段106Bをさらに含んでおり、かかる点で、第1の実施形態と異なっている。また、図6は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置の走査線駆動回路200を概略的に示す回路図である。図6で示された鎖線枠の回路部分は、それぞれ駆動信号出力部102、電圧信号入力手段104、走査線選択信号供給手段106、一部選択手段106A、一括選択手段106Bに対応する。以下において、一括選択手段106Bを中心にして第2の実施形態を説明するが、第1の実施形態とほぼ同様となる部分については、説明を省略する。
【0040】
一括選択手段106Bは、走査線駆動回路200が駆動させる対象となる走査線の全部を一括して選択する。また、一括選択手段106Bは、発光期間が開始するタイミングで入力される発光期間信号G2により、各駆動信号出力部102に一括して選択信号を供給する。一括選択手段106Bは、図6で示すように、複数のOR回路R1を含んで構成される。各OR回路R1は、発光期間信号G2が入力される端子と、一部選択手段106Aからの信号が入力される端子を有している。一括選択手段106Bにおける各OR回路R1は、一部選択手段106Aからの信号、又は、発光期間信号G2が入力されることにより、走査線駆動回路200が駆動させる対象となる走査線の一部を選択する選択信号、又は、当該走査線の全部を選択する選択信号を出力する。各駆動信号出力部102のトランジスタTr1のゲート電極は、一部選択手段106Aによる選択信号が入力される場合と同様に、一括選択手段106Bによる選択信号が入力されるとともに、電圧信号G1が入力されることで、走査線に接続された画素を駆動するための画素駆動信号を出力する。
【0041】
各駆動信号出力部102におけるトランジスタTr1は、第1の実施形態と同様にNMOSトランジスタである。そして一括選択手段106BのOR回路R1を経てトランジスタTr1のゲート電極に供給される選択信号は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも大きい電位を有している。
【0042】
電圧信号入力手段104は、一括選択手段106Bによる選択信号がトランジスタTr1のゲート電極に入力される期間が開始するより後、かつ、当該期間が終了するより前となる期間に、トランジスタTr1のドレイン電極に電圧信号G1を入力する。各駆動信号出力部102は、一括選択手段106Bによる選択信号と、電圧信号入力手段104による電圧信号とによって、画素駆動信号を同時に出力する。また、この電圧信号G1は、走査線に接続された各画素を駆動するために比較的高い電圧(本実施形態では12Vの電圧)となるが、一括選択手段106Bによる選択信号の入力が開始するタイミングと終了するタイミングを避けて、トランジスタTr1のドレイン電極に入力される。したがって、第1の実施形態における一部選択手段106Aの場合と同様に、トランジスタTr1におけるDAHCの発生を抑えることができる。
【0043】
図8Dは、走査線駆動回路200に含まれるOR回路R1の一例を示す回路図である。本実施形態では、上記のOR回路R1における電源の電位を、電圧信号G1の電位よりも低くする。これにより、OR回路R1におけるトランジスタでも、Vdsが低くなるため、第1の実施形態の場合と同様に、OR回路R1におけるDAHCの発生が抑制される。
【0044】
一方、上述のようにして、OR回路R1における電源の電位を低く設定すると、駆動信号出力部102に供給される選択信号の電位も低くなる。これに対して、第1の実施形態と同様に、各駆動信号出力部102は、閾値電圧差増大手段110を有することにより、トランジスタTr1における電圧信号G1の電圧降下を少なくして画素駆動信号を出力するようにしている。
【0045】
また、第2の実施形態における各駆動信号出力部102は、各駆動信号出力部102に含まれるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を一括して基準電位に戻す一括リセット手段を含んでいる。第2の実施形態における各駆動信号出力部102は、一括リセット手段をそれぞれ有しており、一括リセット手段の各々は、トランジスタTr1のゲート電極をグランド接続する配線と、当該配線上に配置されるトランジスタTr3とを含んで構成される。このトランジスタTr3はトランジスタTr1と同様にNMOSである。トランジスタTr3は、そのゲート電極に信号が供給されることにより、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すように動作する。
【0046】
トランジスタTr3は、図6で示すように、走査開始信号ST1が入力される配線にゲート電極が接続されて、走査開始信号ST1によりスイッチング制御される。具体的には、一括リセット手段の各々は、次の画面を表示するフレーム期間が開始するタイミングに合わせて、対応する駆動信号出力部102のトランジスタTr1のゲート電極に印加する電位を基準電位に戻す。一括リセット手段が、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すことにより、容量素子C1に蓄積された電荷が放電される。
【0047】
図7は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200における信号の入出力のタイミングを示す図である。同図で示すように、第2の実施形態では1フレーム期間において、書き込み期間と発光期間とが設けられる。また、発光期間では、クロックパルスCLK1とCLK2の供給が停止され、一部選択手段106Aが動作しないようになっている。また、図7におけるNode1は、駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を示している。このNode1が示ように、駆動信号出力部102に一括選択手段106Bによる選択信号が入力されている期間中(発光期間中)に、電圧信号G1が入力されることで、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位がさらに向上する。これにより、ゲート閾値電圧との差が増大してトランジスタTr1におけるON抵抗が減少し、各駆動信号出力部102は、電圧信号G1の比較的高い電圧を維持して画素駆動信号を出力する。
【0048】
以上説明したように、第2の実施形態における走査線駆動回路200では、電圧信号G1のHレベルは、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。そして、駆動信号出力部102は閾値電圧差増大手段110を有しており、トランジスタTr1における閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させることができる。そのため、走査線選択信号供給手段106に入力される走査開始信号ST1のHレベル、クロックパルスCLK1とCLK1BのHレベル、クロックパルスCLK2とCLK2BのHレベル、および、Dフリップフロップ回路DFFとOR回路R1における電源は、電圧信号G1のHレベルよりも低い電圧に設定することができる。本実施系値亜出は、走査線選択信号供給手段106がCMOS素子を含んで構成されているが、走査線選択信号供給手段106に入力される各信号のHレベルや電源を低い電圧に設定することで、回路規模の増大を抑えつつ、DAHCの発生を抑制し、さらに消費電力を低減することができる。
【0049】
なお、上記の各実施形態では、有機EL表示装置を表示装置の一例として説明したが、走査線駆動回路を有すればよいことから、本発明の実施形態に係る表示装置は、液晶表示装置等の他の表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
102 駆動信号出力部、104 電圧信号入力手段、106 走査線選択信号供給手段、106A 一部選択手段、106B 一括選択手段、110 閾値電圧差増大手段、200 走査線駆動回路、210 映像信号線駆動回路、220 表示領域、Tr1,Tr2,Tr3 トランジスタ、C1 容量素子、RD 整流素子、G1 電圧信号、G2 発光期間信号、DFF Dフリップフロップ回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査線駆動回路を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置等の表示装置には、その表示領域に走査線が敷設され、当該走査線の各々に画素を駆動するための信号を供給する走査線駆動回路は、一般的に、表示領域の周辺回路として構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような走査線駆動回路は、回路規模の増大を抑えるためにMOSFETトランジスタを有するCMOS素子を含んで実装されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3866070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような走査線駆動回路においては、MOSFETトランジスタによるスイッチング素子にDAHC(Drain Avalanche Hot Carrier)による劣化が生じる場合がある。DAHCとは、ドレイン近傍に高電界領域が形成される等により雪崩的に発生したキャリアの一部が、ゲート絶縁膜中にトラップされてMOSFETトランジスタの劣化を生じさせる現象をいう。このようなDAHCは、具体的には、ゲート端子に閾値電圧付近の電圧が印加されると共に、Vds(ソース・ドレイン間の電圧)が大きくなることで生じやすくなる。DAHCが発生すると、トランジスタのOn電流の減少や閾値電圧のシフト等が引き起こされる。
【0006】
また、走査線駆動回路がCMOS素子を含んで実装される場合には、DAHCの発生が問題となりやすい。図8Aは、従来の有機EL表示装置における走査線駆動回路の一例を示す図である。図8Aの走査線駆動回路におけるDフリップフロップ回路DFF等の論理回路は、図8B〜図8Dで示されるように、CMOS素子を含んで構成される。図8Aで示される走査線駆動回路は、走査線に接続された各画素回路を駆動する信号を、画素駆動信号OUT1、OUT2、OUT3、OUT4の順に生成する。また、図8B〜図8Dの各図において、VDDは電源、VSSはグランドを示している。
【0007】
ここで、画素駆動信号OUT1等としては、走査線に接続された各画素回路を駆動するため、所定電圧(例えば、12V)が必要とされることから、走査線駆動回路における電源にもこの所定電圧に応じた電圧(12V)が必要となる。このため、所定電圧に応じた電圧が電源から供給されるCMOS素子のMOSFETでは、常にVdsが大きくなり、かつ、スイッチングが繰り返されるごとにゲート端子に閾値電圧付近の電圧が印加されて、DAHCによる劣化が生じやすくなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、CMOS素子を用いる場合であっても、DAHCによるMOSFETの劣化を生じにくくした走査線駆動回路を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る表示装置は、画像を表示する表示領域に敷設された複数の走査線と、前記走査線の各々に、画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路と、を有する表示装置であって、前記走査線駆動回路は、それぞれ対応する前記走査線に前記画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部と、前記画素駆動信号を出力させるための電圧信号を、前記駆動信号出力部の各々に入力する電圧信号入力部と、を有し、前記駆動信号出力部は、少なくとも1つのトランジスタを有し、前記電圧信号入力部は、前記トランジスタのゲート端子にゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記トランジスタのソース及びドレインの一方の端子に前記電圧信号を入力し、前記駆動信号出力部は、前記トランジスタの前記ソース及びドレインの他方の端子から、前記画素駆動信号を前記対応する走査線に出力し、前記トランジスタにおける閾値電圧と前記ゲート電圧との差を増大させるように、前記ゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段を有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記閾値電圧差増大手段は、前記ゲート端子と、前記他方の端子との間に接続される容量素子と、前記ゲート端子に接続される整流素子と、を含み、前記容量素子は、前記整流素子と前記他方の端子との間に接続される、ことを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記走査線駆動回路は、前記走査線の各々のうちの一部を選択して、該一部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を供給する一部選択手段を有し、前記一部選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、前記一部選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、ことを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記走査線駆動回路は、前記走査線の全部を選択して、該全部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を一括して供給する一括選択手段、をさらに有し、前記一括選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、前記一括選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、ことを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係る表示装置の一態様では、前記トランジスタは、NMOSトランジスタであって、前記電圧信号入力部は、前記トランジスタの閾値電圧よりも正の方向に大きい電位となるゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記ゲート電圧よりも正の方向に大きい電位となる前記電圧信号を前記ドレイン端子に入力する、ことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、DAHCによる劣化を生じにくくした走査線駆動回路を有する表示装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL表示装置におけるTFT基板の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路を説明するブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路を概略的に示す回路図である。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における信号の入出力のタイミングを示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における回路を概略的に示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路における信号の入出力のタイミングを示す図である。
【図8A】従来の有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路の一例を示す図である。
【図8B】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【図8C】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【図8D】走査線駆動回路に含まれる論理回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る各実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、各実施形態で同一の構成要素には同一符号を付し、同一構成要素の繰り返しの説明については省略する。本発明は、技術的思想を逸脱しない範囲内において適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置におけるTFT基板の概略構成を示す図である。同図に示されるTFT基板では、複数の走査線が互いに等間隔を置いて図中水平方向に敷設され、複数の映像信号線が互いに等間隔を置いて図中垂直方向に敷設される。各走査線には走査線駆動回路200から信号が出力され、各映像信号線には映像信号線駆動回路210から信号が出力される。また、画像を表示する表示領域220は、走査線および映像信号線によってマトリクス状に区画されており、これらの走査線および映像信号線に沿ってマトリクス状に複数の画素が配列される。
【0018】
これら走査線と映像信号線とによって区画される各画素の領域には、スイッチングに用いられるMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造の薄膜トランジスタ等が配置されて画素回路が構成される。また、走査線駆動回路200および映像信号線駆動回路210は、表示領域220の周辺に実装される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る有機EL表示装置の走査線駆動回路200を説明するブロック図である。同図で示すように、走査線駆動回路200は、複数の駆動信号出力部102と、電圧信号入力手段104と、走査線選択信号供給手段106とを含んで構成される。走査線選択信号供給手段106は、走査線駆動回路200が信号を供給する走査線を選択するための回路であり、選択される走査線に対応する駆動信号出力部102に選択信号を供給する。また、電圧信号入力手段104は、各駆動信号出力部102に電圧信号を入力する回路である。そして、駆動信号出力部102は、選択信号と電圧信号の入力に応じて、走査線に接続された画素を駆動するための画素駆動信号を出力する回路であり、各走査線に対応するように複数配置される。
【0020】
本実施形態においては、走査線選択信号供給手段106は、走査線駆動回路200が駆動する対象となる走査線のうちの一部を選択する一部選択手段106Aを有しており、当該一部の走査線に対応する駆動信号出力部102に選択信号を供給する。一方、電圧信号入力手段104は、各駆動信号出力部102に同一のタイミングで電圧信号を入力する。選択信号が供給された駆動信号出力部102は、電圧信号入力手段104から電圧信号が入力されるタイミングに合わせて、接続された走査線に画素駆動信号を出力する。
【0021】
ここで、各駆動信号出力部102は、少なくとも1つのMOSFETを含んでいる。当該MOSFETのソース電極及びドレイン電極の一方の端子には、電圧信号入力手段104からの電圧信号が入力される。そして、当該MOSFETのゲート電極に、走査線選択信号供給手段106からの選択信号が入力されることにより、ソース電極及びドレイン電極の他方の端子から画素駆動信号が出力される。特に、本実施形態では、各駆動信号出力部102は、選択信号によって生じるゲート電圧とゲート閾値電圧との差を増大させる閾値電圧差増大手段110を有している。これについては詳しくは後述する。
【0022】
以下では、走査線駆動回路200の具体的な構成について説明する。図3は、本実施形態における走査線駆動回路200を概略的に示す回路図である。同図で示された鎖線枠の回路部分は、それぞれ駆動信号出力部102、電圧信号入力手段104、走査線選択信号供給手段(一部選択手段106A)に対応する。また図3においては、各駆動信号出力部102に、102−1、102−2、102−3、102−4の符号を付して表記しており、これらは同様の構成を有している。駆動信号出力部102−1〜4は、それぞれ画素駆動信号OUT1〜4を対応する走査線に出力する。以下、それぞれの回路部分につき説明する。なお、図3においては、駆動信号出力部102−5以降の駆動信号出力部や、そこから出力される画素駆動信号OUT5等の記載は省略されている。
【0023】
まず、本実施形態における一部選択手段106Aは、図3で示されるようなシフトレジスタであって、各Dフリップフロップ回路DFFによって、図中上側から図中下側の駆動信号出力部102に順番に選択信号を出力するように構成されている。また、一部選択手段106Aは、図8B及び図8Cに示すような、CMOS素子を含む回路を含んで構成される。
【0024】
つぎに、各駆動信号出力部102のいずれかに、一部選択手段106Aからの選択信号が入力される。当該選択信号は、整流素子RDを経由して、トランジスタTr1(MOSFET)のゲート電極に供給される。この選択信号の入力によって、当該ゲート電極にゲート電圧が印加される。本実施形態におけるトランジスタTr1は、NMOSトランジスタであって、選択信号によって印加されるゲート電圧は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも正の方向に大きな電位となる。
【0025】
そして、電圧信号入力手段104は、選択信号によるゲート電圧がトランジスタTr1のゲート電極に印加される期間が開始するより後、かつ、当該期間が終了するより前に、各駆動信号出力部102におけるトランジスタTr1のドレイン電極に電圧信号G1を入力する。すなわち、駆動信号出力部102は、一部選択手段106Aから選択信号が入力されている期間において、電圧信号入力手段104から電圧信号G1が入力されるタイミングで、トランジスタTr1のソース電極から画素駆動信号を出力する。このようにして、電圧信号入力手段104は、画素駆動信号を出力するタイミングを規定している。
【0026】
ここで、画素駆動信号としては、走査線に接続された各画素を駆動するために比較的高い電圧(本実施形態では12Vの電圧である)が必要とされる。したがって、駆動信号出力部102に入力される電圧信号G1にも、比較的高い電圧が必要とされ、この電圧信号G1の電圧は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。本実施形態では、Vdsが大きくなる期間(トランジスタTr1のドレイン電極に比較的高い電圧の電圧信号が入力される期間)が、ゲート電極に閾値電圧付近の電圧が印加されるタイミング(選択信号の入力が開始するタイミングと終了するタイミング)を避けるようにしているため、トランジスタTr1におけるDAHCの発生を抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態では、一部選択手段106Aにおける電源の電位を、電圧信号G1の電位よりも低く設定している。これにより、図8B及び図8Cで示される各CMOS素子のトランジスタでは、当該トランジスタに閾値電圧付近の電圧が印加されるタイミングであってもVdsが低くなる。このようにして、一部選択手段106Aを構成するCMOS素子のトランジスタにおいてもDAHCの発生が抑制される。
【0028】
一方、上述のようにして、一部選択手段106Aにおける電源の電位が電圧信号G1の電位よりも低いと、駆動信号出力部102に供給される選択信号の電位も低くなり、トランジスタTr1のゲート電極に選択信号によって供給されるゲート電圧も低くなる。ゲート電圧が低いと、トランジスタTr1のON抵抗が大きくなるので、その電圧降下によって十分な電圧の画素駆動信号が出力できなくなってしまう。そこで本実施形態では、トランジスタTr1のソース電極から出力される画素駆動信号によって、ゲート電極に印加されるゲート電圧と閾値電圧との差を増大させる閾値電圧差増大手段110を有するようにしている。この閾値電圧差増大手段110により、画素駆動信号を出力する際のトランジスタTr1におけるゲート電圧を向上させることができるので、一部選択手段106Aにおける電源の電位を低くしつつ、トランジスタTr1は、電圧信号G1の電圧降下を少なくして画素駆動信号を走査線に出力できる。以下において、閾値電圧差増大手段110の具体的な構成について説明する。
【0029】
本実施形態における閾値電圧差増大手段110は、図3に示されるような容量素子C1と整流素子RDを含んで構成されるブートストラップ回路である。図3で示すように、容量素子C1は、トランジスタTr1のゲート電極とソース電極との間に接続されて、ゲート電極は、容量素子C1と整流素子RDの間において接続されるようにしている。一旦、ソース電極から画素駆動信号の出力が開始されてトランジスタTr1のソース電極の電位が向上すると、容量素子C1のゲート電極側の電位もこれに伴って上昇し、ゲート電極に印加されるゲート電圧が上昇する。このようにして、トランジスタTr1のゲート電極に一部選択手段106Aからの選択信号が入力され始めたときよりも、トランジスタTr1におけるゲート電極の閾値電圧とゲート電圧との差がさらに増大する。これにより、トランジスタTr1によるON抵抗が減少するので、駆動信号出力部102は、比較的高い電位を維持して画素駆動信号を走査線に出力できる。
【0030】
また、本実施形態における各駆動信号出力部102は、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すためのリセット手段を含んでいる。本実施形態におけるリセット手段は、トランジスタTr1のゲート電極をグランド接続させる配線と、当該配線上に配置されたトランジスタTr2を含んで構成される。トランジスタTr1のゲート電極は、トランジスタTr2を介してグランド接続されており、トランジスタTr2がONとなることにより接地されて、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位が基準電位に戻される。トランジスタTr1のゲート電極が接地されることで、トランジスタTr1がOFFとなり、駆動信号出力部102は、電圧信号G1が入力されても画素駆動信号を出力しないようになる。また、このトランジスタTr2はトランジスタTr1と同様にNMOSである。トランジスタTr2は、そのゲート電極に、一部選択手段106Aからの選択信号が入力されることでONとなり、トランジスタTr1のゲート電極が接地される。また、トランジスタTr1のゲート電極が接地されることにより、容量素子C1に蓄積された電荷は、放電される。
【0031】
ここで、駆動信号出力部102におけるトランジスタTr2のゲート電極は、当該駆動信号出力部102に隣接する他の駆動信号出力部102へ選択信号を入力する配線と接続されて、この選択信号によってスイッチングが制御される。すなわち、駆動信号出力部102のリセット手段は、一部選択手段106Aからの選択信号が入力された後、当該駆動信号出力部102とは異なる駆動信号出力部102に入力される選択信号によって、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻す。
【0032】
本実施形態では、具体的には、一部選択手段106Aからの選択信号が、駆動信号出力部102−2、102−3、102−4・・・と順番に供給されると、駆動信号出力部102−1、102−2、102−3・・・における各リセット手段はトランジスタTr1におけるゲート電極の電位を基準電位に戻すように、順番に動作する。選択信号が入力された駆動信号出力部102のリセット手段は、一部選択手段106Aから次に出力される選択信号により、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻す。本実施形態では、具体的には、駆動信号出力部102−1に選択信号が供給されると、その次に、駆動信号出力部102−2に選択信号が供給されることとなる。駆動信号出力部102−1のリセット手段は、駆動信号出力部102−2に供給される選択信号によって、駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極を接地する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200における信号の入出力のタイミングを示す図である。同図で示すように、まず、走査線駆動回路200に走査開始信号ST1が入力されることにより、表示領域220に1画面を表示させる1フレーム期間が開始する。また本実施形態における走査開始信号ST1が出力される期間は、1水平期間である。この1水平期間は、1本の走査線に画素駆動信号を供給して、接続される各画素を描画するための期間である。
【0034】
また、各Dフリップフロップ回路DFFには、クロックパルスCLK1とCLK1B、又は、CLK2とCLK2Bのいずれかが供給されるようになっている。図3で示すように、奇数番目に配列されたDフリップフロップ回路にはクロックパルスCLK1とCLK1Bが、偶数番目に配列されたDフリップフロップ回路にはクロックパルスCLK2とCLK2Bが供給されるようになっている。また、クロックパルスCLK1とCLK1B、CLK2とCLK2Bは、各一対が交互となるタイミングで供給されるようになっており、各クロックパルスの周期は2水平期間である。
【0035】
また、電圧信号入力手段104は、電圧信号G1を、1水平期間の周期で各駆動信号出力部102のそれぞれに入力する。図4で示すように、電圧信号G1と、各クロックパルスとは、異なるタイミングで出力されるようになっている。また、本実施形態では、一部選択手段106Aにおける各Dフリップフロップ回路DFFは、図中上側から順番に、各駆動信号出力部102に選択信号を供給する。この選択信号が供給される順番に従って、各駆動信号出力部102−1〜102−4は、図4で示すように、画素駆動信号OUT1〜OUT4を出力する。
【0036】
ここで特に、図4におけるNode1は、画素駆動信号OUT1を出力する駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を示している(図3参照)。図4で示すように、まず、駆動信号出力部102に選択信号が入力されることにより、Node1がゲート閾値電圧よりも正の方向に高い所定電位となる。そして、トランジスタTr1のゲート電極が当該所定の電位となる期間中に、電圧信号G1が入力されるタイミングにおいて、閾値電圧差増大手段110の作用により、Node1の電位がさらに向上してゲート閾値電圧との差が増大する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態における走査線駆動回路200では、電圧信号G1のHレベルは、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。そして、駆動信号出力部102は閾値電圧差増大手段110を有しており、トランジスタTr1における閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させることができる。そのため、一部選択手段106Aに入力される走査開始信号ST1のHレベル、クロックパルスCLK1とCLK1BのHレベル、クロックパルスCLK2とCLK2BのHレベル、および、Dフリップフロップ回路DFFにおける電源は、電圧信号G1のHレベルよりも低い電圧に設定することができる。本実施形態では、一部選択手段106AがCMOS素子を含んで構成されているが、一部選択手段106Aに入力される各信号のHレベルや電源を低い電圧に設定することで、回路規模の増大を抑えつつ、DAHCの発生を抑制し、さらに消費電力を低減することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
以下においては、第2の実施形態に係る有機EL表示装置を説明する。第2の実施形態に係る有機EL表示装置は、表示する輝度の階調値に基づく電荷を各画素に書きこむ書き込み期間と、各画素に書き込まれた電荷に従って当該書き込み期間の後に一画面の画像を表示させる発光期間とを有する。
【0039】
図5は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200を説明するブロック図である。同図で示されるように、第2の実施形態では、走査線選択信号供給手段106は一括選択手段106Bをさらに含んでおり、かかる点で、第1の実施形態と異なっている。また、図6は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置の走査線駆動回路200を概略的に示す回路図である。図6で示された鎖線枠の回路部分は、それぞれ駆動信号出力部102、電圧信号入力手段104、走査線選択信号供給手段106、一部選択手段106A、一括選択手段106Bに対応する。以下において、一括選択手段106Bを中心にして第2の実施形態を説明するが、第1の実施形態とほぼ同様となる部分については、説明を省略する。
【0040】
一括選択手段106Bは、走査線駆動回路200が駆動させる対象となる走査線の全部を一括して選択する。また、一括選択手段106Bは、発光期間が開始するタイミングで入力される発光期間信号G2により、各駆動信号出力部102に一括して選択信号を供給する。一括選択手段106Bは、図6で示すように、複数のOR回路R1を含んで構成される。各OR回路R1は、発光期間信号G2が入力される端子と、一部選択手段106Aからの信号が入力される端子を有している。一括選択手段106Bにおける各OR回路R1は、一部選択手段106Aからの信号、又は、発光期間信号G2が入力されることにより、走査線駆動回路200が駆動させる対象となる走査線の一部を選択する選択信号、又は、当該走査線の全部を選択する選択信号を出力する。各駆動信号出力部102のトランジスタTr1のゲート電極は、一部選択手段106Aによる選択信号が入力される場合と同様に、一括選択手段106Bによる選択信号が入力されるとともに、電圧信号G1が入力されることで、走査線に接続された画素を駆動するための画素駆動信号を出力する。
【0041】
各駆動信号出力部102におけるトランジスタTr1は、第1の実施形態と同様にNMOSトランジスタである。そして一括選択手段106BのOR回路R1を経てトランジスタTr1のゲート電極に供給される選択信号は、トランジスタTr1の閾値電圧よりも大きい電位を有している。
【0042】
電圧信号入力手段104は、一括選択手段106Bによる選択信号がトランジスタTr1のゲート電極に入力される期間が開始するより後、かつ、当該期間が終了するより前となる期間に、トランジスタTr1のドレイン電極に電圧信号G1を入力する。各駆動信号出力部102は、一括選択手段106Bによる選択信号と、電圧信号入力手段104による電圧信号とによって、画素駆動信号を同時に出力する。また、この電圧信号G1は、走査線に接続された各画素を駆動するために比較的高い電圧(本実施形態では12Vの電圧)となるが、一括選択手段106Bによる選択信号の入力が開始するタイミングと終了するタイミングを避けて、トランジスタTr1のドレイン電極に入力される。したがって、第1の実施形態における一部選択手段106Aの場合と同様に、トランジスタTr1におけるDAHCの発生を抑えることができる。
【0043】
図8Dは、走査線駆動回路200に含まれるOR回路R1の一例を示す回路図である。本実施形態では、上記のOR回路R1における電源の電位を、電圧信号G1の電位よりも低くする。これにより、OR回路R1におけるトランジスタでも、Vdsが低くなるため、第1の実施形態の場合と同様に、OR回路R1におけるDAHCの発生が抑制される。
【0044】
一方、上述のようにして、OR回路R1における電源の電位を低く設定すると、駆動信号出力部102に供給される選択信号の電位も低くなる。これに対して、第1の実施形態と同様に、各駆動信号出力部102は、閾値電圧差増大手段110を有することにより、トランジスタTr1における電圧信号G1の電圧降下を少なくして画素駆動信号を出力するようにしている。
【0045】
また、第2の実施形態における各駆動信号出力部102は、各駆動信号出力部102に含まれるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を一括して基準電位に戻す一括リセット手段を含んでいる。第2の実施形態における各駆動信号出力部102は、一括リセット手段をそれぞれ有しており、一括リセット手段の各々は、トランジスタTr1のゲート電極をグランド接続する配線と、当該配線上に配置されるトランジスタTr3とを含んで構成される。このトランジスタTr3はトランジスタTr1と同様にNMOSである。トランジスタTr3は、そのゲート電極に信号が供給されることにより、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すように動作する。
【0046】
トランジスタTr3は、図6で示すように、走査開始信号ST1が入力される配線にゲート電極が接続されて、走査開始信号ST1によりスイッチング制御される。具体的には、一括リセット手段の各々は、次の画面を表示するフレーム期間が開始するタイミングに合わせて、対応する駆動信号出力部102のトランジスタTr1のゲート電極に印加する電位を基準電位に戻す。一括リセット手段が、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を基準電位に戻すことにより、容量素子C1に蓄積された電荷が放電される。
【0047】
図7は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置に含まれる走査線駆動回路200における信号の入出力のタイミングを示す図である。同図で示すように、第2の実施形態では1フレーム期間において、書き込み期間と発光期間とが設けられる。また、発光期間では、クロックパルスCLK1とCLK2の供給が停止され、一部選択手段106Aが動作しないようになっている。また、図7におけるNode1は、駆動信号出力部102−1におけるトランジスタTr1のゲート電極に印加される電位を示している。このNode1が示ように、駆動信号出力部102に一括選択手段106Bによる選択信号が入力されている期間中(発光期間中)に、電圧信号G1が入力されることで、トランジスタTr1のゲート電極に印加される電位がさらに向上する。これにより、ゲート閾値電圧との差が増大してトランジスタTr1におけるON抵抗が減少し、各駆動信号出力部102は、電圧信号G1の比較的高い電圧を維持して画素駆動信号を出力する。
【0048】
以上説明したように、第2の実施形態における走査線駆動回路200では、電圧信号G1のHレベルは、トランジスタTr1の閾値電圧よりも十分に高い電圧に設定する。そして、駆動信号出力部102は閾値電圧差増大手段110を有しており、トランジスタTr1における閾値電圧とゲート電圧との差を増大させるようにゲート電圧を変化させることができる。そのため、走査線選択信号供給手段106に入力される走査開始信号ST1のHレベル、クロックパルスCLK1とCLK1BのHレベル、クロックパルスCLK2とCLK2BのHレベル、および、Dフリップフロップ回路DFFとOR回路R1における電源は、電圧信号G1のHレベルよりも低い電圧に設定することができる。本実施系値亜出は、走査線選択信号供給手段106がCMOS素子を含んで構成されているが、走査線選択信号供給手段106に入力される各信号のHレベルや電源を低い電圧に設定することで、回路規模の増大を抑えつつ、DAHCの発生を抑制し、さらに消費電力を低減することができる。
【0049】
なお、上記の各実施形態では、有機EL表示装置を表示装置の一例として説明したが、走査線駆動回路を有すればよいことから、本発明の実施形態に係る表示装置は、液晶表示装置等の他の表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
102 駆動信号出力部、104 電圧信号入力手段、106 走査線選択信号供給手段、106A 一部選択手段、106B 一括選択手段、110 閾値電圧差増大手段、200 走査線駆動回路、210 映像信号線駆動回路、220 表示領域、Tr1,Tr2,Tr3 トランジスタ、C1 容量素子、RD 整流素子、G1 電圧信号、G2 発光期間信号、DFF Dフリップフロップ回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示領域に敷設された複数の走査線と、
前記走査線の各々に、画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路と、を有する表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
それぞれ対応する前記走査線に前記画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部と、
前記画素駆動信号を出力させるための電圧信号を、前記駆動信号出力部の各々に入力する電圧信号入力部と、を有し、
前記駆動信号出力部は、少なくとも1つのトランジスタを有し、
前記電圧信号入力部は、前記トランジスタのゲート端子にゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記トランジスタのソース及びドレインの一方の端子に前記電圧信号を入力し、
前記駆動信号出力部は、
前記トランジスタの前記ソース及びドレインの他方の端子から、前記画素駆動信号を前記対応する走査線に出力し、
前記トランジスタにおける閾値電圧と前記ゲート電圧との差を増大させるように、前記ゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段をさらに有する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置であって、
前記閾値電圧差増大手段は、
前記ゲート端子と、前記他方の端子との間に接続される容量素子と、
前記ゲート端子に接続される整流素子と、を含み、
前記容量素子は、前記整流素子と前記他方の端子との間に接続される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
前記走査線の各々のうちの一部を選択して、該一部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を供給する一部選択手段を有し、
前記一部選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、
前記一部選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
前記走査線の全部を選択して、該全部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を一括して供給する一括選択手段、をさらに有し、
前記一括選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、
前記一括選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項2に記載された表示装置であって、
前記トランジスタは、NMOSトランジスタであって、
前記電圧信号入力部は、前記トランジスタの閾値電圧よりも正の方向に大きい電位となるゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記ゲート電圧よりも正の方向に大きい電位となる前記電圧信号を前記ドレイン端子に入力する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項1】
画像を表示する表示領域に敷設された複数の走査線と、
前記走査線の各々に、画素を駆動するための画素駆動信号を供給する走査線駆動回路と、を有する表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
それぞれ対応する前記走査線に前記画素駆動信号を出力する複数の駆動信号出力部と、
前記画素駆動信号を出力させるための電圧信号を、前記駆動信号出力部の各々に入力する電圧信号入力部と、を有し、
前記駆動信号出力部は、少なくとも1つのトランジスタを有し、
前記電圧信号入力部は、前記トランジスタのゲート端子にゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記トランジスタのソース及びドレインの一方の端子に前記電圧信号を入力し、
前記駆動信号出力部は、
前記トランジスタの前記ソース及びドレインの他方の端子から、前記画素駆動信号を前記対応する走査線に出力し、
前記トランジスタにおける閾値電圧と前記ゲート電圧との差を増大させるように、前記ゲート電圧を変化させる閾値電圧差増大手段をさらに有する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置であって、
前記閾値電圧差増大手段は、
前記ゲート端子と、前記他方の端子との間に接続される容量素子と、
前記ゲート端子に接続される整流素子と、を含み、
前記容量素子は、前記整流素子と前記他方の端子との間に接続される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
前記走査線の各々のうちの一部を選択して、該一部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を供給する一部選択手段を有し、
前記一部選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、
前記一部選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置であって、
前記走査線駆動回路は、
前記走査線の全部を選択して、該全部の走査線に対応する前記駆動信号出力部に前記ゲート電圧を一括して供給する一括選択手段、をさらに有し、
前記一括選択手段は、CMOS素子を含んで構成されて、
前記一括選択手段に入力される電源の電圧は、前記電圧信号の電圧よりも低い、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項2に記載された表示装置であって、
前記トランジスタは、NMOSトランジスタであって、
前記電圧信号入力部は、前記トランジスタの閾値電圧よりも正の方向に大きい電位となるゲート電圧が供給される期間の開始より後で、かつ該期間が終了するより前に、前記ゲート電圧よりも正の方向に大きい電位となる前記電圧信号を前記ドレイン端子に入力する、
ことを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【公開番号】特開2011−158555(P2011−158555A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18223(P2010−18223)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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