説明

表示装置

【課題】蛍光体の体色と表示面の色が異なっていても、光源の非点灯時において、蛍光体の体色が外部から視認されることのない表示装置を実現する。
【解決手段】上端開口を有するケース部材12と、ケース部材12の上端開口を閉塞し、白色の表示面14aを有する透光性基板14と、ケース部材12内に配置されるLED16を有しており、また、上記透光性基板14の背面側に、赤色の体色を有する蛍光体20R、緑色の体色を有する蛍光体20Gが被着形成された透明シート18を配置して成り、上記蛍光体20R,20Gの表面に、白色顔料22を付着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示面と、該表示面の前面側及び/又は背面側に配置した蛍光体と、該蛍光体を励起する波長の光を放射する光源を備え、上記蛍光体が励起されて発光する可視光を上記表示面に表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8及び図9は、この種の表示装置60の一例を示すものであり、該表示装置60は、上端開口を有するケース部材62と、ケース部材62の上端開口を閉塞するガラス等より成る透光性基板64と、ケース部材62内にドットマトリクス状に配置された複数の発光ダイオード66(LED66)を有している。上記ケース部材62は、アルミニウム等の光反射率の高い材料で構成されている。
また、上記透光性基板64の内面には、蛍光体68が被着形成された透明シート70が配置されている。
【0003】
図8に示すように、上記透明シート70に形成された蛍光体68は、文字・図形等を表す所定形状に形成されており、図8においては、「右折可能」の文字と、矢印「→」の図形を表す形状が、上記蛍光体68によって形成されている。上記透光性基板64の表面が表示面64aと成されている。
上記蛍光体68は、紫外線等の所定波長の光で励起されて所定色の可視光を発光するものである。また、上記LED66は、蛍光体68を励起させる波長の光(紫外線や可視光)を放射するものである。
【0004】
上記表示装置60にあっては、LED66から放射された光が、透明シート70に形成された蛍光体68を励起して蛍光体68から所定色の可視光が発光され、この可視光が透明シート70及び透光性基板64を透過することにより、表示面64aに上記「右折可能」の文字と矢印「→」が表示されるのである。
【0005】
尚、この種の表示装置として、出願人は先に実用新案登録第3136904号を提案している。
【特許文献1】実用新案登録第3136904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記蛍光体68の体色としては白色のものが多いことから、表示面64aを構成する透光性基板64も白色のものが用いられることが多く、蛍光体68の体色と表示面64aの色が同色(白色)であるため、LED66の非点灯時において、蛍光体68の白色の体色が外部から目立たないようになっている。
【0007】
しかしながら、蛍光体68の中には体色が白色以外のものもあり、例えば、青色光や近紫外線で励起される蛍光体68の体色には、黄色、赤色、緑色等がある。
而して、これら黄色、赤色、緑色等の白色以外の体色を有する蛍光体68を、白色の透光性基板64を備えた表示装置60に使用した場合、LED66の非点灯時において、蛍光体68の黄色、赤色、緑色等の体色が外部から視認されてしまい、外観上見栄えが悪いといった問題を生じる。
また、LED66の点灯時のみに、特定のデザインや文字等を蛍光体68の可視光によって表示面64aに表示する構造の表示装置60の場合、LED66の非点灯時において、外部から視認される黄色、赤色、緑色等の蛍光体68の体色によって、どのようなデザインや文字であるかが判ってしまうといった欠点が生じる。
【0008】
尚、蛍光体68の体色が例えば赤色の場合には赤色の表示面64aと成した透光性基板64を用いる等、蛍光体68の体色に合わせて表示面64aの色を変更する方法も考えられるが、表示面64aの色の変更に要する手間やコストが嵩むものであり、また、体色の異なる複数種類の蛍光体68を使用する場合には、表示面64aの色の変更は困難である。
【0009】
本発明は、従来の上記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、蛍光体の体色と表示面の色が異なっていても、光源の非点灯時において、蛍光体の体色が外部から視認されることのない表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る表示装置は、
所定の色を有する表示面と、該表示面の前面側及び/又は背面側に配置され、上記表示面の色と異なる体色を有する蛍光体と、該蛍光体を励起する波長の光を放射する光源を備え、上記蛍光体が励起されて発光する可視光を上記表示面に表示する表示装置であって、上記蛍光体の表面に、上記表示面と同色の顔料を付着させたことを特徴とする。
【0011】
例えば、上記表示面が白色であると共に、上記蛍光体が表示面の白色と異なる体色を有している場合には、蛍光体の表面に白色顔料を付着させる。
【0012】
上記光透過性の白色顔料としては、例えば、酸化チタン、アルミナを好適に使用することができる。
【0013】
蛍光体に付着させた上記顔料は、粒子状の蛍光体の表面積の30%〜80%を覆っているのが適当である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置にあっては、表示面の色と異なる体色を有する蛍光体の表面に、表示面と同色の顔料を付着させたので、蛍光体の表面が表示面と同色の顔料で覆われ、光源の非点灯時において蛍光体の体色が外部から視認されることを防止できる。
【0015】
例えば、上記表示面が白色であると共に、上記蛍光体が表示面の白色と異なる体色を有している場合に、蛍光体の表面に白色顔料を付着させれば、蛍光体の表面が白色顔料によって覆われ、光源の非点灯時において、蛍光体の体色が外部から視認されることを防止できる。
【0016】
蛍光体に付着させた顔料が、粒子状の蛍光体の表面積の30%〜80%を覆うように構成した場合、蛍光体の体色が外部から目立つことはなく、違和感を生じさせることがないと共に、輝度低下を防止する観点から好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明に係る表示装置の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る表示装置10の正面図、図2は図1のA−A拡大概略断面図であり、該表示装置10は、上端開口を有するケース部材12と、ケース部材12の上端開口を閉塞する樹脂、ガラス等より成る白色の透光性基板14と、ケース部材12内にドットマトリクス状に配置された複数の光源としての発光ダイオード16(LED16)を有している。上記ケース部材12は、アルミニウム等の光反射率の高い材料で構成されている。
上記LED16は、後述する蛍光体20R,20Gを励起する波長の光(近紫外線や可視光)を放射するものである。
【0018】
また、上記透光性基板14の背面側には、多数の粒子状の蛍光体が被着形成された透明シート18が配置されている。透明シート18は、樹脂やガラスで構成することができる。また、多数の繊維が立体的に絡み合って形成され、透明繊維間に多数の空隙を有する不織布で上記透明シート18を構成しても良い。
透明シート68に形成された蛍光体は、図1に示すように文字・図形等を表す所定形状に形成されており、図1においては、「大阪」の文字と「左折を示す矢印」の図形が、赤色の体色を有する蛍光体20Rで形成されており、「東京」の文字と「右折を示す矢印」の図形が、緑色の体色を有する蛍光体20Gで形成されている。
上記透光性基板14の表面が、白色の表示面14aと成されている。
【0019】
上記蛍光体20R,20Gは、近紫外線等の所定波長の光で励起されて可視光を発光するものであり、赤色の体色を有する蛍光体20Rとしては、例えば、赤色可視光を発光する硫化物系の蛍光体等がある。
緑色の体色を有する蛍光体20Gとしては、例えば、緑色可視光を発光する硫化亜鉛系の蛍光体等がある。
【0020】
図3は、赤色の体色を有する蛍光体20Rを模式的に示す拡大断面図であり、図4は、緑色の体色を有する蛍光体20Gを模式的に示す拡大断面図である。図3及び図4に示すように、粒子状の蛍光体20R,20Gの表面に、粒子状の白色顔料22が付着されている。
上記白色顔料22としては、例えば、無機顔料である酸化チタン、アルミナが好適である。
尚、白色顔料22によって、励起光が蛍光体20R,20Gに到達するのが妨げられたり、蛍光体20R,20Gから発光される可視光が遮られることを抑制するため、例えば、白色顔料22を蛍光体20R,20Gの表面に部分的に付着させれば良く、この場合、白色顔料22の間から励起光が蛍光体20R,20Gに到達すると共に、蛍光体20R,20Gの可視光が白色顔料22の間から外部へ放射される。或いは、白色顔料22を蛍光体20R,20Gの表面全体に薄く付着させると白色顔料22は光を透過できるため、白色顔料22を透過して励起光が蛍光体20R,20Gに到達すると共に、蛍光体20R,20Gの可視光が白色顔料22を透過して外部へ放射される。要するに、白色顔料22は、励起光が蛍光体20R,20Gに到達可能であると共に、蛍光体20R,20Gの可視光が外部へ放射可能な状態で、蛍光体20R,20Gの表面に付着されるものである。
【0021】
蛍光体20R,20Gの表面に白色顔料22を付着させるには、例えば以下の方法を用いることができる。すなわち、水中に蛍光体20R,20Gを分散させた蛍光体分散液と、水中に白色顔料22を分散した顔料分散液とを混合・撹拌した後、ゼラチンを添加して撹拌を続ける。その後、酢酸等を添加してpH4に調整すると、蛍光体20R,20Gの表面に白色顔料22が付着し、その後、濾過、脱水することにより、白色顔料22が付着した蛍光体20R,20Gが得られる。
【0022】
また、図5及び図6に示すように、白色顔料22が付着した蛍光体20R,20Gを、透明無機材料であるシリカ24で被覆しても良い。白色顔料22が付着した蛍光体20R,20Gをシリカ24で被覆した場合には、蛍光体20R,20Gに付着した白色顔料22の剥離を防止することができると共に、湿気が蛍光体20R,20Gや白色顔料22に付着することが防止され耐候性の向上を図ることができる。
白色顔料22が付着した蛍光体20R,20Gをシリカ24で被覆するには、以下の方法を用いることができる。
先ず、水硝子水中に蛍光体20R,20Gを均一に分散させた液中に、予め乳化剤と共に非水溶剤中等に所定量の白色顔料22を均一分散させた着色液を入れ、高速攪拌しで微細な乳化分散液を作成する。その後、水硝子の硬化剤又はPH調整等を行うことにより、蛍光体20R,20G表面に白色顔料22が均一に付着すると共に、蛍光体20R,20G及び白色顔料22が水硝子のシリカ成分によって被覆(カプセル化)されるのである。
【0023】
上表示装置10にあっては、LED16から放射された近紫外線や青色可視光等の光が
、透明シート18に形成された蛍光体20R,20Gを励起することにより、蛍光体20Rから赤色可視光、蛍光体20Gから緑色可視光が発光され、この可視光が透明シート18及び透光性基板14を透過することにより、表示面14aに、上記「大阪」の文字と「左折を示す矢印」の図形が赤色可視光で表示されると共に、「東京」の文字と「右折を示す矢印」の図形が緑色可視光で表示されるのである。
尚、ケース部材12はアルミニウム等の光反射率の高い材料で構成されているので、LED16から放射された光の中で、表示面14a側に向かわなかった光を、上記ケース部材12で反射させて表示面14a側へ導くことができる。
【0024】
而して、本発明の表示装置10にあっては、白色の表示面14aと異なる赤色の体色を有する蛍光体20R、緑色の体色を有する蛍光体20Gの表面に、表示面14aと同色の白色顔料22を付着したことから、蛍光体20R,20Gの表面が白色顔料22によって覆われ、LED16の非点灯時において、蛍光体20R,20Gの体色である赤色や緑色が外部から視認されることを防止できる。
白色顔料22は、上記の通り、蛍光体20R,20Gの表面に部分的に付着させたり、或いは、蛍光体20R,20Gの表面全体に薄く付着させることにより、LED16の点灯時においては、LED16から放射された光が蛍光体20R,20Gに到達して励起することができると共に、蛍光体20R,20Gから発光された可視光も白色顔料22で遮られることが抑制されて外部へ放射することができる。
【0025】
尚、蛍光体20R,20Gの体色(赤色、緑色)を外部から視認できなくするためには、粒子状の蛍光体20R,20Gの表面積の100%を白色顔料22で覆うのが好ましいといえる。しかしながら、その一方で、白色顔料22によって光の一部が吸収されてしまうことから、輝度向上の観点からは、白色顔料22が覆う蛍光体20R,20Gの表面積はできるだけ小さい方が適当である。
而して、白色顔料22が、粒子状の蛍光体20R,20Gの表面積の少なくとも30%覆っていれば、蛍光体20R,20Gの体色(赤色、緑色)が外部から目立つことはなく、違和感の生じないことが本発明者らの試験で判明した。従って、蛍光体20R,20Gの体色(赤色、緑色)を外部から視認できなくする観点から、白色顔料22は、粒子状の蛍光体20R,20Gの表面積の少なくとも30%以上覆っていることが要求される。
一方、輝度向上の観点から、白色顔料22が覆う蛍光体20R,20Gの表面積は80%以下とすべきである。
以上のことから、白色顔料22が覆う粒子状の蛍光体20R,20Gの表面積を30%〜80%の範囲内とした場合、蛍光体20R,20Gの体色(赤色、緑色)が外部から目立つことはなく、違和感を生じさせることがないと共に、輝度低下を防止する観点から好適である。
【0026】
上記においては、蛍光体20R,20Gが形成された透明シート18を透光性基板14の背面側に配置した場合を例に挙げて説明したが、図7に示す本発明の表示装置10の変形例のように、透光性基板14の前面側となる表示面14a上に、蛍光体20R,20Gが形成された透明シート18が配置するようにしても良い。
図7の表示装置10にあっては、LED16から放射された近紫外線や青色可視光等の光が、透光性基板14及び透明シート18を透過して蛍光体20R,20Gを励起することにより、蛍光体20Rから赤色可視光、蛍光体20Gから緑色可視光が発光され、この可視光によって表示面14aに、上記「大阪」の文字と「左折を示す矢印」の図形が赤色可視光で表示されると共に、「東京」の文字と「右折を示す矢印」の図形が緑色可視光で表示されるのである。
尚、図示は省略するが、透光性基板14の前面側及び背面側の両方に、蛍光体を配置するようにしても良い。
【0027】
而して、図7の表示装置10の場合も、白色の表示面14aと異なる赤色の体色を有する蛍光体20R、緑色の体色を有する蛍光体20Gの表面に、表示面14aと同色の白色顔料22が付着されているので、蛍光体20R,20Gの表面が白色顔料22によって覆われ、LED16の非点灯時において、蛍光体20R,20Gの体色である赤色や緑色が外部から視認されることを防止できる。
【0028】
上記においては、表示面14aが白色の場合に、該表示面14aの前面側又は背面側に配置され、表示面14aの色(白色)と異なる体色(赤色、緑色)を有する蛍光体20R,20Gの表面に、上記表示面14aと同色の白色顔料22を付着させることにより、LED16の非点灯時において、蛍光体20R,20Gの体色である赤色や緑色が外部から視認されることを防止できる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、所定の色を有する表示面と、該表示面の前面側及び/又は背面側に配置され、上記表示面の色と異なる体色を有する蛍光体と、該蛍光体を励起する波長の光を放射するLED等の光源を備え、上記蛍光体が励起されて発光する可視光を上記表示面に表示する表示装置に適用可能であり、上記蛍光体の表面に、表示面と同色の顔料を付着させることにより、蛍光体の表面を表示面と同色の顔料で覆い、以て、光源の非点灯時において蛍光体の体色が外部から視認されることを防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る表示装置の正面図である。
【図2】図1のA−A拡大概略断面図である。
【図3】赤色の体色を有する蛍光体を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】緑色の体色を有する蛍光体を模式的に示す拡大断面図である。
【図5】赤色の体色を有する蛍光体の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【図6】緑色の体色を有する蛍光体の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【図7】本発明に係る表示装置の変形例を示す概略断面図である。
【図8】従来の表示装置を示す正面図である。
【図9】図8のB−B拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 表示装置
12 ケース部材
14 透光性基板
14a 表示面
16 発光ダイオード
18 透明シート
20R 赤色の体色を有する蛍光体
20G 緑色の体色を有する蛍光体
22 白色顔料
24 シリカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色を有する表示面と、該表示面の前面側及び/又は背面側に配置され、上記表示面の色と異なる体色を有する蛍光体と、該蛍光体を励起する波長の光を放射する光源を備え、上記蛍光体が励起されて発光する可視光を上記表示面に表示する表示装置であって、上記蛍光体の表面に、上記表示面と同色の顔料を付着させたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記表示面が白色であると共に、上記蛍光体が表示面の白色と異なる体色を有しており、上記蛍光体の表面に白色顔料を付着させたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記白色顔料が、酸化チタン、アルミナであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
蛍光体に付着させた上記顔料は、粒子状の蛍光体の表面積の30%〜80%を覆っていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−75967(P2011−75967A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229273(P2009−229273)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】