説明

表示装置

【課題】発光素子を用いた表示装置において放熱板を損なわずして、雨水などによる発光部材等の表面に付着する水滴を抑制すると共に遮光板の素材選択の幅を広げる。
【解決手段】本願発明の表示装置は、発光素子10を有する複数の発光部材1と、発光部材1を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔21を備えた遮光板2と、遮光板2の背面側に配され上記複数の発光部材1夫々の端子が接続された配線板4と、発光部材1を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔31を備え上記遮光板2と配線板4との間に配された放熱板3と、放熱板3と配線板4との間に介された熱伝導部材5とを備える。遮光板2背面と放熱板3正面との間に複数の間隔保持部材6が点在し、遮光板2は間隔保持部材6を挟んで放熱板3へ固定され、遮光板と放熱板との間に隙間が開けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、表示装置に関し、特に道路や鉄道車両など屋外において情報を表示するのに適した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、発光ダイオード(以下、必要に応じてLEDと呼ぶ。)をマトリックス状に配置し、ダイナミック点灯やスタティック点灯を行うことにて、情報の表示を行うマトリックス表示装置が広く普及している。
このような表示装置として、マトリックス状に複数のLEDが接続された配線板に対して、マトリックス状に設けられた複数のLED挿通孔を備える金属製の放熱板と、同様にマトリックス状に設けられた複数のLED挿通孔及び庇(ルーバー)を備える遮光板とを、重ねて固定したものが見受けられる(特許文献1)。
特に、特許文献1に示すものは、配線板やLEDで生じる熱について、放熱板を介して遮光板に伝導して放熱する。
【0003】
具体的には、特許文献1の表示装置は、複数の発光素子と、発光素子がそれぞれ挿通されるマトリックス状に配列された複数の挿通孔を有し且つ熱伝導率の高い材料から成る遮光部材(遮光板)と、遮光部材の挿通孔に光出射方向が同一方向となるようにして挿通された複数の上記発光素子の端子が所定の配線に接続され光出射方向側とは反対側に配置されるプリント配線板(配線板)と、上記発光素子がそれぞれ挿通されるマトリックス状に配列された複数の挿通孔を有し且つ遮光部材とプリント配線板との間であって一方表面が遮光部材に接触して配置された熱伝導率の高い金属材料から成る放熱部材と、放熱部材とプリント配線板との間に充填された熱伝導率の高い材料から成る樹脂層とを備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3247821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、表示装置の屋外での使用は、雨水や結露により遮光板の貫通孔の内周面や発光素子表面に水滴が付着し、当該水滴は他に流れ落ちずに付着したままとなる事態を招く。
上記特許文献1に示す表示装置では、放熱板の正面側においてマトリックス状に配列された挿通孔の列に接して上下に伸びる溝を設けて雨水の下方への排水を期すものである(段落番号0023)。特に、特許文献1には、製造時、当該溝から耐水性を有する樹脂を注入し、挿通孔を通じて放熱板とプリント配線板との間に当該樹脂を充填することが記されている。
しかし、第1の問題として、特許文献1の表示装置は、水滴が流れ落ちずに遮光板の貫通孔内や発光素子に付着したままとなる事態の発生を、直接防止するものではない。
特許文献1の表示装置において、遮光板の背面に放熱板の正面が接触して配置される。即ち、上記の溝にて、局部的に遮光板背面と放熱板正面との間で接触していない個所が存するものの、全体的には遮光板背面は放熱板正面と密着する。当該配置によって、遮光板を放熱に利用することを期す。しかし、このように特許文献1の表示装置では、配線板やLEDで生じた熱の当該放熱に主眼が注がれ、遮光板の貫通孔内周面やLED表面の上記水滴の残留を直接防止するという発想はなく、そのような手段は開示されていないのである。
また、第2の問題として、特許文献1の表示装置では、遮光板の貫通孔は、放熱に殆ど利用されていない。発生した熱は、最終的には空気に発散することによって放熱されるのであるが、特許文献1の表示装置では、放熱のために遮光板の貫通孔を空気の通路として利用できず、遮光板の貫通孔において通気性は確保されていない。
更に、第3の問題として、特許文献1の表示装置では、直射日光に曝されて加熱された遮光板から、遮光板へ密着する放熱板へ熱が伝わり、配線板側へ当該熱が導かれるといった事態を招来する。
また更に、第4の問題として、特許文献1の表示装置では、遮光板の素材について放熱性を考慮する必要があり、遮光板の素材を自由に選択するという訳には行かず、その選択は制限されるものであった。
本願発明は、遮光板の放熱板に対する物理的な配置を工夫することによって、上記水滴付着の画期的な防止手段を提供して第1の問題を解決を図る。
また、本願発明は、遮光板と放熱板の当該配置の工夫によって、上記第2の問題の解決を図る。
更に、本願発明では、遮光板と放熱板の当該配置の工夫によって、上記第3の問題の解決を図る。
また、更に、本願発明では、遮光板に放熱を頼るのを避けることにより、第4の問題の解決を図る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1の発明では、発光素子を有する複数の発光部材と、庇を形成する遮光部材と、遮光部材の背面側に配され且つ正面に上記複数の発光部材夫々がマトリックス状に配列されて当該各発光部材の端子が接続された配線板とを備えた表示装置にであって、次の構成を採るものを提供する。
即ち、この表示装置は、遮光部材と配線板との間に、吸水機構を備える。遮光部材は、発光部材の発する光を前方へ通過させ或いは発光部材を収容する空洞部を備える。吸水機構は、後方を臨む第1面と、第1面の後方に配されて第1面を臨む第2面とを備える。当該第1面と第2面とは夫々、発光部材の発する光を前方へ通過させ或いは発光部材を通す開口部を備える。上記第1面と第2面との間に隙間が設けられている。当該隙間は、第1面の開口部を通じて上記空洞部へ繋がっている。
本願の請求項2の発明では、本願の上記請求項1の発明にあって、上記の隙間は、0.1mm〜5mmである表示装置を提供する。
本願の請求項3の発明では、本願の上記請求項1又は2の発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、この表示装置は、配線板又は発光部材の熱を伝導して大気中へ当該熱を放熱する、放熱部材を備える。放熱部材は、上記遮光部材と配線板との間に配される放熱板を備える。遮光部材の背面が、吸水機構の上記第1面であり、放熱板の正面が吸水機構の上記第2面である。
本願の請求項4の発明では、本願の上記請求項3の発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、この表示装置は、遮光部材と放熱板とを結合する結合部材と、遮光部材と放熱板との間に介されて上記隙間を確保する1つ又は複数の間隔保持部材とを備える。間隔保持部材全ての正面の総面積は、吸水機構の第2面である放熱板正面において開口部のない非開口領域の面積の、3割を超えない。
本願の請求項5の発明では、本願の上記請求項3又は4の発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、上記の遮光部材は、正面に複数の庇部を備えた遮光板であり、発光部材を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔を、上記の空洞部として有する。遮光部材の当該貫通孔の遮光部材背面における開口部が、上記吸水機構の第1面が有する開口部である。放熱板は、上記発光部材を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔を有し、当該貫通孔の放熱板正面における開口部が、上記吸水機構の第2面が有する開口部である。
本願の請求項6の発明では、本願の上記請求項3乃至5の何れかの発明にあって、上記の放熱部材は、放熱板の背面側に、放熱板と一体或いは放熱板と別体に形成された後枠部を備え、後枠部は、配線板の上下左右を取り囲む、配線板の収容部を形成するものである表示装置を提供する。
本願の請求項7の発明では、本願の上記請求項3乃至6の何れかの発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、配線板と放熱板との間にレンズ形成シートが介される。レンズ形成シートは、正面側にマトリックス状に配列された複数のレンズ部分が隆起する樹脂シートである。レンズ形成シートのレンズ部分の夫々は、発光部材が備えるレンズとして各発光素子の前方を覆うものである。レンズ形成シートは、放熱板の貫通孔を通じて放熱板の正面側から配線板へ水分が侵入するのを抑制するものである。
本願の請求項8の発明では、本願の上記請求項1の発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、配線板と遮光板との間にレンズ形成シートが介される。レンズ形成シートは、正面側にマトリックス状に配列された複数のレンズ部分が隆起する樹脂シートである。レンズ形成シートのレンズ部分の夫々は、発光部材が備えるレンズとして各発光素子の前方を覆うものである。レンズ形成シートは、配線板へ水分が侵入するのを抑制するものである。遮光部材の背面が、吸水機構の上記第1面であり、レンズ形成シートの正面が吸水機構の上記第2面である。
本願の請求項9の発明では、本願の上記請求項7又は8の発明にあって、次の構成を採る表示装置を提供する。
即ち、この表示装置は、レンズ形成シートと配線板との間に介されて少なくとも配線板の熱を放熱板へ伝導する熱伝導部材を備える。熱伝導部材は、シリコン樹脂層である。レンズ形成シートは、シリコン樹脂にて形成されている。遮光板は、ポリカーボネート又はアミニウムにて形成されている。放熱板は、アルミニウムにて形成されたものである。
本願の請求項10の発明では、本願の上記請求項3乃至7の何れかの発明にあって、放熱板の貫通孔内部において、発光部材と当該貫通孔内側面との間にシリコン樹脂が充填されたものであり、放熱板正面は、シリコン樹脂にて被覆された面である表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1〜10の発明は、隙間を介して対面する第1面と第2面とにて、吸水機構を構成したものである。即ち、本願発明により、第1面と第2面との間に隙間を設けることにより、遮光板の空洞(貫通孔)内面或いは空洞部内の発光部材表面に雨水や結露によって生じた水分が付着し続けるのを抑制した。
現状では、上記の隙間を設けることによる遮光板の貫通孔等への水分付着の抑制の効果の詳しいメカニズムについては十分解明できていないが、このような水分付着の抑制効果は、第1面と第2面との間の隙間に、空洞内面等に付着した水分が吸着されるという要因が大きいと考えられる。そして、上記隙間への水分の吸着については、毛細管現象に負うところが大きいと推測することができる。
即ち、第1面と第2面との隙間により毛細管現象が誘引されて、遮光部材の空洞内面に付着する、雨水や結露による水滴を、第1面の開口部から上記隙間へ吸着することとなり、その結果、空洞部内に当該水滴が付着し続けるのを抑制するのに貢献した。このような毛細管現象を、付着水分除去の少なくとも一要因として利用し、本願発明は、上記水滴による発光部材の表示の視認性の低下を抑えんとするのである。
上記の通り、本願の各発明は、外部の光の侵入を遮るため遮光部材を利用しつつも、特に発光部材の光の通路となる空洞部の内面に水滴が付着し続けるのを抑制した。
更に、本願の各発明は、上記隙間によって、遮光部材の空洞部内の通気性を確保できるものとした。
また、本願の各発明では、直射日光を受けるなどにて、遮光部材の温度が上昇した際に、上記隙間の存在によって、当該熱が配線板側へ伝わるのを抑制した。
更にまた、本願の各発明では、放熱を遮光板に全面的に頼ることを止めることにより、遮光板の素材自身に熱伝導性の高い素材を採用する必要性をなくし、遮光板の素材選択の自由度を高めた。
本願の請求項2の発明により、毛細管現象を利用した上記水分の吸着を、より確実に行うことを可能とした。
本願発明の請求項3の発明により、吸水機構を形成する、より具体的な手段を提供し得た。
本願の請求項4の発明により、上記遮光板と放熱板との間に上記隙間を設ける具体的手段を提供した。
本願発明の請求項5の発明により、吸水機構を形成するのにより好ましい手段を提供し得た。
本願発明の請求項6の発明により、後枠部に配線板を収容することにより、上下左右からの水分の侵入を抑制する。また、後枠部にて、精密部品である配線板を、遮光部材のある表示装置の正面以外の方向からの日光の侵入や直射日光による加熱から、更には、不意に配線板へ物理的な力が加わることから、保護することができる。
また、製造時の組み立てなどにおいて、後枠部内へ配線板を挿入することで、配線板の放熱部材に対する位置合わせが容易に行え、便利である。
本願発明の請求項7及び8の発明により、レンズ形成シートを用い、各発光素子の光をレンズにて光学的に調整することができる。
更に、上記のレンズ形成シートとして樹脂シートを採用したことで、樹脂の注入による防水層の形成と異なり、樹脂の充填ムラによる配線板への水分侵入の危惧を排除した。
また、レンズ形成シートを装着するだけで、配線板の正面側へ防水層を設けることができ、樹脂を充填する場合に比して簡単に防水対策を採ることができる。実施の形態において、1枚のレンズ形成シートにて、熱伝導部材を通じて配線板正面の全体をカバーするのが理想的である。但し、複数枚のレンズ形成シートにて当該配線板正面の各領域を分割して覆うものを排除するものではない。
特に、本願の請求項8の発明により、放熱部材を採用しない表示装置においても、吸水機構を形成する、より具体的な手段を提供し得た。
本願の請求項9の発明によって、放熱性を損なわず、表示装置を軽量化することができる。また、実施の形態において、レンズ形成シートと配線板との間に熱伝導部材としてシリコン樹脂を積層することにより、レンズ形成シートと熱伝導部材と配線板とを一体のものとして取り扱え便利である。
本願の請求項10の発明により、防水性を更に高めた。また、上記の充填や被覆に、熱伝導性の良好なシリコン樹脂を用いることにより、放熱板の放熱性を大きく損なうことなく、防水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)は本願発明に係る表示装置の一実施を示す正面図、(B)は(A)の表示装置から取り外した遮光板の背面図。
【図2】(A)は図1(A)の表示装置の拡大側面図、(B)は図1(A)の拡大X−X断面図。
【図3】(A)は図1(A)の表示装置から取り外した放熱板の正面図、(B)は(A)の放熱板の背面図。
【図4】図2に示す表示装置の分解側面図。
【図5】図2に示す表示装置の一部切欠拡大断面図。
【図6】図4に示すレンズ形成シートを採用した場合に適する、変更例の一部切欠拡大断面図。
【図7】本願発明の他の実施の形態を示す一部切欠拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
この表示装置は、図1〜4へ示す通り、発光部材1…1と、遮光部材2と、放熱部材30と、配線板4と、熱伝導部材5と、間隔保持部材6と、レンズ形成シート7とを備える。
各部の構成について詳しく説明する。
【0010】
発光部材1…1の夫々は、LED特に高輝度LEDである発光素子10と、発光素子10の前面に配置される透明な樹脂製のレンズ11とを備える。
発光素子10は、透明な封止(ポッティング)樹脂にて被覆された上で、その前面に上記レンズ11が配置されるものとするのが好ましい。
レンズ11にはシリコン樹脂を採用するのが好ましい。また、上記の封止樹脂にも、シリコン樹脂を採用するのが好ましい。
各発光素子1…1の端子は、マトリックス状即ち碁盤目状に配列された状態に、上記配線板4へ接続される。
【0011】
遮光部材2は、発光部材1側へ直射日光が侵入するのを防ぐ庇を形成するものである。この実施の形態において、遮光部材2は、正面視矩形の板である(以下、遮光板2と呼ぶ。)
遮光板2は、金属、樹脂、カーボン、又はこれらの複合素材にて形成することができる。遮光板2には、プラスチック、特にポリカーボネートを採用するのが好ましい。遮光板2には、また、アルミニウムも適する。
遮光板2は、正面2aから背面2bへ貫通する複数の貫通孔21…21と、正面に設けられた複数の庇部22…22とを備える。
【0012】
遮光板2の上記貫通孔21…21は、遮光板2の正面視において、マトリックス状に配列されて、発光部材1…1の夫々を挿通することができる。
この実施の形態では、遮光板2は、正面視において、一辺が160mmの正方形である。遮光板2の正面視において、貫通孔21…21は、夫々、直径7.5mmであり、隣り合う貫通孔21,21間の間隔は、10mmである。但し、遮光板2やその貫通孔21の上記寸法や配列は、例示であり、放熱部材30の形状・寸法や、放熱板3の後述する貫通孔31の寸法や配列に応じて、変更可能である。
【0013】
庇部22…22は、遮光板2正面2aから突出する庇状の部分であり、マトリックス状に配列された上記貫通孔21…21の各行間から前方へ突出する。詳しくは、個々の庇部22は、マトリックス状に配列された貫通孔21…21の行間において左右に水平へ伸びると共に、表示装置の前方Fへ突出する。
庇部22…22は、夫々遮光部即ち庇として、外部からの光の貫通孔21…21への侵入を遮るものである。
【0014】
遮光板2背面2bは、平らな面である。遮光板2は、ネジやピン、ボルト・ナットといった周知の結合部材23…23によって放熱部材30の放熱板3に固定される。但し、遮光板の固定手段は、上記結合部材23に限定するものではない。例えば、遮光板2背面2bと放熱部材30の放熱板3正面3aの何れか一方に凹部を何れか他方に凸部を設け、凹部と凸部とを強制嵌合することによって、放熱部材30の放熱板3に遮光板2を固定するものとしても実施できる(図示しない)。
図1(B)の24は、上記結合部材23であるネジの挿通孔を示す。
【0015】
放熱部材30は、遮光板2の背面2b側に、配される。
この実施の形態において、放熱部材30は、放熱板3と、後枠部38とにて構成されている。後枠部38は、放熱板3と一体に放熱板3背面3b側へ設けられている。但し、後枠部38は、放熱板3と別体に形成されたものとし、後枠部38の背面側へ配置されるものとしても実施できる。
ここでは、後枠部38について、放熱板3と一体に形成されものを例示して説明する。
具体的には、後枠部38は、上面部34と、底面部35と、左右側面部36,37とを備える。これにより、放熱部材30は、正面部となる放熱板3と、上記上面部34と、上記底面部35と、上記左右側面部36,37とにて画されると共に、背面側が解放された、直方体の筺体として形成される。但し、放熱部材30は、後枠部38を備えないものとしても実施できる。
上記の放熱板3が遮光板2背面2bに配され、放熱板3背面3b側に配線板4が配置される。この配置によって、配線板4は、放熱板3と底面部35と左右側面部36,37とに画された放熱部材30の、内部空間に収容される。
筺体である放熱部材30の正面部である放熱板3は、正面視矩形の板である。前記遮光板2は、金属、樹脂又はカーボンにて形成することができる。放熱部材30には、金属、特にアルミニウムを採用するのが好ましい。即ち、放熱部材30には、熱伝導率の高い素材を採用するのが望ましい。例えば、熱伝導率が70W/mK以上の素材を採用するのが好ましく、特に、熱伝導率が236W/mKと良好であり且つ金属の中でも比重が4以下具体的には比重が2.3と軽量である上記アルミニウムが好ましい。但し、熱伝導率や比重について上記数値に限定するものではない。
但し、軽量化の面を重視すれば、比重は3以下とするのが好ましい。重量が大きいと、表示装置を支持する周辺の構成にも、長期の支持に耐えるものを採用するなどの工夫が強いられるからである。
アルミニウムを採用する場合、放熱部材30は、アルミダイキャストにて形成することができる。
放熱部材30を熱伝導に優れ比較的比重も小さな素材例えば上記アルミニウムとし、遮光板2を放熱板3よりも比重が小さな素材例えば上記ポリカーボートとするのが、基部(後方)側よりも先端(前方)側を軽量とでき、表示装置全体として、重量のバランスが良く、また、軽量化と放熱性とを両立させる上で、理想的である。但し、このような素材の組み合わせに限定し、他の素材の組み合わせを制限するものではない。
【0016】
放熱板3は、正面3aから背面3bへ貫通する複数の貫通孔31…31を備える。
放熱板3の上記貫通孔31…31は、放熱板3の正面視において、マトリックス状に配列されて、発光部材1…1の夫々を挿通することができる。
即ち、正面視において、放熱板3の貫通孔31…31は、遮光板2の貫通孔21…21と重なる。
【0017】
この実施の形態では、放熱板3は、正面視において、一辺が160mmの正方形である。放熱板3の正面視において、貫通孔31…31は、夫々、直径7.5mmであり、隣り合う貫通孔21,21間の間隔は、10mmである。但し、この寸法や配列は、変更可能である。
【0018】
放熱板3の正面3aは、全体として平らである。その一方で、貫通孔31…31が設けられていない非開口領域(図3(A)にて斑点で示す部分)において、上記間隔保持部材6…6が複数設けられている。図3(A)へ示す通り、各間隔保持部材6…6は、放熱板3正面3aにて点在する。即ち、間隔保持部材6…6同士は、放熱板3正面3aの各方向について間隔を開けて配置される。
各間隔保持部材6…6は、放熱板3正面3aから突出する突起である。
上記突起は、放熱板3の正面3aと、放熱板3の正面3aに重ねられる上記遮光板2の背面2bとの間に、隙間dを形成する。即ち、遮光板2の背面2bを第1面とし放熱板3の正面3aを第2面として、第1面と第2面間に隙間dを設けることにより、毛細管現象にて水分を吸着する吸水機構が形成されている。
この隙間dは0.2〜5mmとする。特に、この隙間dは、0.3〜0.8mmとするのが好ましい。隙間dは、0.5mmが最適である。この隙間dは、0.2mm以上とすることによって、放熱板3正面を放熱面として外気に解放することもできる。
【0019】
吸水機構について、具体的に説明する。
隙間dについて、上記の通り、上限を5mmと設定することによって、遮光板2背面2bの貫通孔21が設けられていない非開口領域と、放熱板3正面3aの上記非開口領域との間に、雨水や結露によって生じた水分が、付着し続けることを抑制することができた。前述の通り、この抑制の効果について、詳しいメカニズムは分からないが、上記の雨水等にて遮光板2の貫通孔21内面へ付着した水分が、隙間dに吸着することによって得られたものと考えられる。発明者において、水分の上記隙間dへの吸着は、毛細管現象により生じており、上記の水分の付着抑制の効果が100%毛細管現象のみによって生じていると断言はできないが、上記水分の付着に対して、当該毛細管現象が大きく寄与していると考える。
発明者において隙間dが0.2〜5mmを外れると遮光板2の貫通孔21内面への水分の付着の抑制効果が見られないことを確認している。
特に、上記隙間dを0.3〜0.8mmとすることによって、遮光板2の貫通孔21への付着抑制の効果が顕著であった。
間隔保持部材6…6の夫々を、放熱板3正面3aに点在する突起とすることによって、表示装置の側面において、隙間dを表示装置の外部と連絡することができ、毛細管現象を促すと共に、吸着していない状態において、通気を確保し、放熱に寄与する。また、隙間dに水分が吸着した状態においては、当該水分の取り込みにより、放熱板3を水冷することができる。
上記の隙間d内へ十分に水滴を取り込めるように、間隔保持部材6…6である上記個々の突起の直径は、極力小さくするのが好ましい。例えば、遮光板2や放熱板3の各部の寸法を前述の通りとした場合、上記の隙間dに十分な吸水が行えるように、上記突起の直径は、5mm以下とするのが好ましく、特に3mmとするのが好ましい。
但し、隙間dを設けるために、突起即ち、スペーサとなる上記間隔保持部材6を設けるのに限定するものではなく、他の隙間確保の手段を採用するものとしても実施できる。例えば、放熱板3の正面側において、前方へ隆起する、前上面部と前下面部と前左右側面部にて構成された前枠部を形成することにより、遮光板2背面2bと放熱板3正面3aとの間に上記隙間dを確保するものとしても実施できる。この場合前枠部側面へ前枠部の内側から外側に貫通する穴や切欠部を形成して表示装置側面における通気性を確保しておけば、放熱性や毛細管現象を確実に得ることができる。
また、スペーサとして間隔保持部材6を形成する場合も、正面視円形の突起に限定するものではない。例えば下駄の接地部となる歯のように板状の突出物を設けるものとしても実施できる。また、結合部材のみにて、隙間dを確保するものとしてもよい。更に、結合部材として設けたネジにナットを取り付けるものとし、当該ナットをスペーサとして、遮光板2背面2bと放熱板3正面3aとの間に配置するものとしても実施できる。
【0020】
また、間隔保持部材6である突起先端の遮光板2背面2bとの接触面積即ち当該突起の先端(正面)の総面積は、放熱板3正面3aの、当該突起自身を含めた上記非開口領域の面積の3割を超えないものとするのが望ましい。当該接触面積が3割を超えると、遮光板2への放熱の依存が大きくなると共に、毛細管現象を利用した水分の吸着が著しく制限されるからである。
従って、上記の隙間dを保持することができることを前提に、上記突起先端の接触面積は、小さいほど本願発明の効果を得る上で有利となるので、極力小さく形成するのが望ましい。
【0021】
遮光板2背面2bにおいて、間隔保持部材6である突起と当接する部分は、製造時に位置決めを行い易くするため、突起先端を受容するように凹ませておくことができる。この場合、上記隙間dを確保するために、凹ませた深さ分、突起を長く形成する必要がある。
図3(A)の32は、上記結合部材23を受けるネジ受け部を示す。
ネジ受け部32…32の夫々は、雌ねじが設けられたネジ穴を有する。
また、この実施の形態においては、当該ネジ受け部32…32の夫々も、間隔保持部材として機能する。この実施の形態では、図5へ示す通り、遮光板2背面2bには、ネジ受け部32…32との位置合わせを容易とする凹みが設けられている。但しこのような凹みは設けずに実施できる。
【0022】
配線板は、発光素子10の点灯及び消灯を制御する駆動回路を有する。配線板は、基盤に当該駆動回路がプリントされたものである。配線板を構成する当該基盤には、周知の素材、例えば、ガラス繊維を充填したエポキシ樹脂製の板材を採用することができる。
配線板4は、放熱板3背面3bのケース内にて、熱伝導部材5を介して放熱板3の背面3bに重ねられる。熱伝導部材5は、熱伝導性が良好な樹脂であり、配線板4で生じた熱を、放熱板3へ伝導する。
【0023】
熱伝導部材5は、理論的には、熱伝導率が空気よりも高い素材であればよい。即ち、熱伝導部材5には、放熱板3ほど高い熱伝導率は必要でないが、放熱板3へ配線板4や発光部材1が発する熱を伝える必要があるので、空間(空気)であってはならず、0.1W/mK以上の熱伝導率を有する素材が好ましい。
熱伝導部材5の素材としては、樹脂、特に主成分をシリコンとする、シリコン樹脂にて形成された樹脂層とするのが好ましい。シリコン樹脂は比較的柔軟である。このためシリコン樹脂を熱伝導部材5に採用することによって、放熱板3をアルミニウムなど温度の変化による伸縮が比較的大きな金属にて形成した場合に、当該伸縮を吸収することができる。点灯によって発熱する表示装置としては、熱伝導部材5にシリコン樹脂を採用するのが最適である。
熱伝導部材5は、樹脂層として配線板4とレンズ形成シート7と間に積層され、配線板4とレンズ形成シート7を一体とする。即ち、熱伝導部材5は、放熱板3の背面3bに直接接触するものではなく、レンズ形成シート7を介して放熱板3背面3bに設けられる。
図4へ示す通り、放熱板3背面3bと熱伝導部材5との間に配される上記のレンズ形成シート7は、透明なシートである。
レンズ形成シート7も、熱伝導部材5と同様、放熱板3へ熱を伝導する必要があり、放熱板3ほど高い熱伝導率は必要でないが、放熱板3へ配線板4や発光部材1が発する熱を伝えるためには、空間(空気)であってはならず、0.1W/mK以上の熱伝導率を有する素材が好ましい。
レンズ形成シート7の素材としては、透明な樹脂を採用することができる。レンズ形成シート7も、上記の熱伝導部材5と同様、柔軟なシリコン樹脂にて形成するのが好ましい。レンズ形成シート7を形成する樹脂としては、シリコン樹脂以外に、特に、ポリカーボネート、アクリル、エポキシが適する。
レンズ形成シート7は、その正面に、複数のレンズ部分(レンズ11…11)と、隣り合うレンズ部分の間に設けられた平面部分70とを有する。
詳しくは、レンズ形成シート7正面において、平らな平面部分70を残し、マトリックス状に配列された複数のレンズ部分が前方に隆起しており、このレンズ部分が、前記レンズ11として発光素子10を被覆するのである。
上述の通り、レンズ形成シート7は、上記熱伝導部材5の正面に重ねて固定され、その正面を放熱板3背面3bへ当接させる。また、上記レンズ11をなす各レンズ部分は、各発光素子10を被覆しつつ、放熱板3と遮光板2夫々の貫通孔31…31,21…21に挿通される。
即ち、熱伝導部材5は、レンズ形成シート7を通じて、配線板4の熱を放熱板3に伝導するのである。
この実施の形態において、上下に分割された、第1および第2の2枚レンズ形成シート7x,7yが熱伝導部材5,5となる樹脂層にて配線板4の正面に固定される。但し、2枚のレンズ形成シート7にて、配線板4の正面側を覆うものに限定するものではない。1枚或いは3枚以上のレンズ形成シート7にて覆うものとしても実施できる。特に1枚のレンズ形成シート7にて、配線板4を覆えば、隣接するレンズ形成シート7,7から水分が配線板4へ侵入するという危惧を払拭することができる。
尚、当初より、レンズ形成シート7と熱伝導部材5とが一体であるものを採用することも可能である。
熱伝導部材5の厚みの設定により、レンズ形成シート7の前後の位置の調整を行うことができる。
レンズ形成シート7を設ける場合、レンズ形成シート7の厚みが適切であれば、熱伝導部材5を設けずに実施することができる。
【0024】
レンズ形成シート7について、当該シートを一枚ものではなく、図4へ示す通り、複数枚に分割したものを採用する場合、レンズ形成シート7,7間やレンズ形成シート7,7に対応して複数に分割された熱伝動部材5,5の間から、配線板4側へ水分が侵入するのを防ぐ、好適な例を図6へ示す。
具体的には、図6へ示す通り、レンズ形成シート7,7を設けた配線板4を、放熱板3の背面3bへ装着する前に、レンズ形成シート7,7間の隙間に、間詰め部材8として、シリコン樹脂を充填しておくのである。この実施の形態では、レンズ形成シート7,7と対応して熱伝導部材5,5も分割されているので、間詰め部材8は、当該熱伝動部材5,5間も塞ぐように設けられている。
このように間詰部材8を設けることによって、レンズ形成シート7が2枚に分かれたものであっても、1枚ものと同様の防水性能を確保することができる。
【0025】
図7へ示す通り、放熱板3の貫通孔31内部において、発光部材1と当該貫通孔31内側面との間に熱伝導に優れる樹脂9a、具体的には、シリコン樹脂を充填して実施することができる。更に、放熱板3正面3aも、シリコン樹脂(被覆樹脂9b)にて被覆された面として実施できる。当該被覆樹脂9bの厚みは、1mm程度とするのが好ましい。
この場合、放熱板3の上記被覆樹脂の正面が、放熱板3の正面3aとなり、当該樹脂の正面即ち当該樹脂の表面を基準として上記隙間dを設定する。
【0026】
上記の各実施の形態において、間隔保持部材6…6は、放熱板3が備えるものとした。但し、遮光板2背面2bが備えるものとして実施できる。また、間隔保持部材6…6は、放熱板3及び遮光板2の双方と別体に形成された独立した部材としても実施できる。
また、発光部1において、採用することができる発光素子10としては、図5、図6及び図7へ示すような直方体型のLEDの他、砲弾型のランプを採用することができる。
更に、発光素子10としては、配線板に直接ダイクトボンディングされたものや、その他チップLEDを採用することができる。
発光素子10は、マトリックス表示装置の点光源とすることができるものであればよく、発光素子を上記に限定するものではない。
砲弾型のランプを発光素子10として採用する場合、遮光板2と放熱板3夫々の貫通孔21,31に、発光素子10の前述の封止樹脂を配置するものとすれば、レンズ形成シート7を設けずに実施することができる。
上記の各実施の形態において、遮光部材2は、複数の庇部を正面に有する板即ち遮光板2として形成されたものを例示した。遮光部材2としては、このような板状のものに限定するものではない。遮光部材2は、複数の庇を提供するものであればよく、ルーバーとして他の形態を採るものであっても実施できるのである。例えば、遮光部材2を、板状のものではなく、複数の庇部と、隣接する庇部同士の間に設けられ且つ当該庇部同士連結する連結部とにて構成されたものとすることができる。この場合連結部は、左右に隣り合う各発光部材1…1間全てに設ける必要はなく、間欠的に設けるものとしても実施でき、或いは、各庇部の左右端にのみ設けるものとしても実施できる。
【0027】
上記の実施の形態において、放熱部材30は、放熱板3を正面部とする筺体とした。放熱部材30は、前述の通り、放熱板3のみから構成されるものであってもよい。放熱部材30は、吸水機構の第2面を提供する吸水誘導部材として、少なくとも放熱板3を備えるものであればよいのである。
更に、放熱の問題を考慮する必要がなければ、吸水機構の第2面を、放熱板3に頼る必要はなく、第2面を提供し遮光板2背面2b即ち第1面との間に隙間dを形成することにより吸水機構を構成する、別途の吸水誘導部材を設けるものとしても実施できる(図示しない)。
軽量化を重視する観点から、吸水誘導部材には、樹脂、特にプラスチック(合成樹脂)も適する。例えば、軽量化の面からは、比重が2以下のポリカーボネートも吸水誘導部材に適する。ポリカーボネートの熱伝導率は、0.2W/mK以下であるが、放熱を効率よく行う必要がなければ、吸水誘導部材として採用できる。
本願発明は、このように熱伝導率が比較的低い部材を、第2面を提供する吸水誘導部材として、放熱板3に代え或いは放熱板3と共に設けるのを排除するものではない。
放熱板3以外の部材を吸水誘導部材として採用する場合も、遮光板2背面2bとの間の隙間dの設定は、上記の実施の形態と同様に行えばよい。
放熱板3を吸水誘導部材とせずに、放熱板3と共に別途の吸水誘導部材を併設する場合、吸水誘導部材を板状の吸水誘導板として形成し、当該吸水誘導板を、隙間dを開けて遮光板2の背面に配置する。そして当該吸水誘導板の背面に放熱板3の正面3aを重ねて或いは放熱に必要な隙間を空けて配置すればよい。但し、前述の通り、発光部材1が相対的に表示装置の奥に後退して表示が見え難くならないように、吸水誘導板の厚みなどの寸法設定を行う必要がある。
吸水誘導部材として光拡散シートや或いはプリズムシートを、放熱板3の正面に設けることができる。光拡散シートは、発光素子10の光を拡散する透明なシートである。プリズムシートは、光拡散シートとは逆に、正面方向の輝度を向上させるなどの目的で設けられる透明のシートである。
吸水誘導部部材となる上記シートは、放熱板3の正面或いは放熱部材30の表面全体にラミネートにより設けることができる。吸水誘導部材となる上記シートの素材については特に限定するものではないが、透明なプラスチックを採用することができ、例えば、アクリルやポリエチレンテレフタレートを採用することができる。
吸水誘導部材である上記シートは、放熱板3正面3aの非開口領域とレンズ形成シート7のレンズ部分を覆う。
放熱板3に代えて、吸水誘導部材を設ける場合、上記と同様、吸水誘導部材を板状の吸水誘導板として形成し、当該吸水誘導板を、隙間dを開けて遮光板2の背面に配置する。そして、当該吸水誘導板の背面には、配線板4を、また、レンズ形成シート7を用いる場合はレンズ形成シート7を配置すればよい。尚、吸水誘導部材は、上記放熱部材と同様、後枠部を、吸水誘導板と共に備えるものとしても実施できる。
放熱板3を備えない場合において、別途の吸水誘導部材を用意するのではなく、レンズ形成シート7を吸水誘導部材とし、レンズ形成シート7の上記平面部分70正面7aを第2面とすることができる。即ち、当該平面部分70を遮光板2の背面2bに配置するものとし、遮光板2の背面2bと上記平面部分70正面7aとの間に上記隙間dを開けるものとするのである。但し、この場合、レンズ形成シート7のレンズ部分11について、遮光板2の背面2bの開口部を塞がないように形成する必要がある。
【0028】
レンズ形成シート7の上記平面部分70正面7aを第2面とする場合においても、放熱部材30の後枠部38と同様の枠部を採用するものとすればよい。以下、レンズ形成シート7の平面部分70の正面7aを吸水機構の第2面とする場合を例に採って説明する。
この枠部には、上面部34の内面と、左右側面部36,37の内面と、下面部35の内面の、少なくとも対面する少なくとも2つの内面に、段差を設けて、配線板4が上記前方開口部から脱落しないよう、配線板4前面4aの周縁部分を受けるものとし、解放された正面部において、正面視、各発光部材1…1間即ちレンズ形成シート7のレンズ部分11…11間の平面部分70に、シリコン樹脂を設けるものとしても実施できる。この場合、発光部材10…10間に、正面部材として設けられた当該シリコン樹脂の表面(正面)と、遮光板2背面2bとの間に上記の隙間dを設ける。
また、放熱部材30をケースとして形成するものに限定するものではなく、例えば、放熱部材30上記正面部材となるシリコン樹脂のみにて構成するものとしても実施できる。
【0029】
上述してきた各実施の形態において、吸水機構の第2面を提供する吸水誘導部材に対して、吸水機構の第1面を提供する前吸水誘導部材を遮光板2に頼るものとした。一方、吸水機構の第1面についても、遮光板2に頼るのではなく、遮光板2背面2aに第2面を提供する別途の部材を前吸水誘導部材として配置し、当該前吸水誘導部材の背面を吸水機構の第1面とすることができる。但し、この場合、遮光板2背面2bの開口部から隙間dまでの距離が吸水の阻害要因とならないように、また発光部材1の表示が見えにくくならないように前吸水部材の前後の厚みを設定する必要がある。
【0030】
(表1)
隙間dの大きさ(mm) 温度差△T(℃) 水滴付着孔(数)
A 0 9.8 40
B 0.2 9.9 9
C 0.5 9.5 3
D 0.8 9.5 5
E 5.0 9.0 10
F 5.5 9.0 21
G 遮光板なし 9.0 −
【0031】
上記の表1へ、図1〜図5へ示す表示装置において、夫々遮光板2と放熱板3との間の隙間を変えて、屋外にて、表示装置を30分駆動して点灯した状態で、計測した放熱板の表面温度と外気温度との温度差△Tを示す。詳しくは、平成22年12月19日正午、三和サインワークス株式会社電材事業所(茨城県かすみがうら市加茂5289−1)敷地の屋外において、晴天で気温13.1℃の下、表示装置の向きを、通常の使用状態と同様、光軸が水平となるよう表示装置(遮光板)の正面を前方へ向けて計測した。表1の温度差△Tは、いずれも上記気温13.1℃との温度差である。
表1に示す通り、隙間dが大きくなるほど、外気との温度差が小さくなり、放熱の効果が大きいことが分かる。詳しくは、隙間dが0のAと、隙間dが0.2mmのBとは、何れも外気と10度近い温度差が見られる(尚AとBとの差0.1度は誤差範囲である)。
一方、隙間dが0.2mmを超えるC〜Fや遮光板を設けないGでは、外気との温度差の減少が顕著に表れている。具体的には、△TはC及びDでは9.5度であり、E〜Gでは9.0mmである。このことから、隙間dを大きくとるほど放熱効果は大きいが、隙間dが5.0mmを超えると、放熱効果に大きな変化はなくなることが分かる。
【0032】
従って、熱抑制効果に主眼を置くと、適切な放熱効果が得られ尚且つ表示装置のコンパクト性を損なわない範囲として、隙間dを、0.2mmより大きく5.0mm以下とするのが理想である。
また、隙間dの上限を定めるのは、嵩高となることを抑制し上記コンパクト性を損なわないようにする以外に、次の問題を考慮した結果でもある。
即ち、隙間dを大きくしすぎると、光源(発光部1)が遮光部材2の貫通孔に対して、相対的に当該貫通孔の奥へ後退することになり、遠く離れた場所では見えていた発光部1の表示が、表示装置に近づくと遮光板2の貫通孔周辺が邪魔をして表示が見え難くなる。例えば、道路での表示に当該表示装置を用いた場合、車が表示装置に近づくにつれて表示が見え難くなるのである。この場合、遮光板2の庇部の前方への突出幅を小さくして、視認性を向上することも考えられるが、庇部の突出幅を小さくすると、遮光性の低下を招いてしまう。例えば、庇部は、仰角60度の太陽光の貫通孔内への入射を完全に遮断する必要があるとの規格も存在し、このような規格を満たそうとすると、単純に、庇部の突出幅を小さくするというのも適切ではない。
【0033】
更に、上記表1において、上記A〜Fについての水滴付着量のデータを示す。
この水滴付着量のデータは、表示装置の正面側から、表示装置に向け、水を3分間散水した直後に、遮光板2の貫通孔21とレンズ部分(レンズ11)を目視にて観察して数えた、直径3mm以上の水滴が付着していた貫通孔21の数である。
この水滴付着孔数は、16×16のマトリックスの場合、256個が上限である。
A〜Gは、隙間dの大きさ以外の条件をすべて同じとしている。
表1から、隙間dが0のAの場合や、更に、隙間dが5.5mmのFなど隙間dが5mmを超える場合、極端に水滴付着孔数が増加することが分かる。
次に、A〜Gに上記散水後直ちに、表示装置の正面側において、表示装置から10m離れた位置にて表示装置を目視するものとし、表示装置を駆動して表示した、数字の「1」と「7」の比較、数字の「6」と「8」の比較、数字の「3」と「8」の比較を行った。
上記の目視による比較は、見間違いが起こりやすい似た数字の判別が正確に行えるか否かのテストであり、付着した水滴の影響を調べることを目的として行った。
その結果、Aにおいては、何れも、比較した数字間で、何れの数字であるかの判別が正確にできなかった。また、Fについても、同様に、比較した数字の判別が正確に行えなかった。
これに対して、水滴数の付着ドット数が比較的少ない、B〜Eについては、比較した夫々の数字の判別が、正確に行えた。
この結果から、付着する水滴の影響即ち毛細管現象による吸水の面を主眼におくと、隙間dを、0.2mm以上5.0mm以下とするのが理想であり、とりわけ間隔dを、水滴付着孔数が9個から5個へ激減するBとCの中間即ち0.3mmを境として、0.3mm以上0.5mm以下とするのが最適である。隙間dをこのような0.3〜0.5mmの範囲に限定すると、水滴付着孔数は5個以下に抑えられることが表1から把握でき、良好な数字の判別が行えるからある。
但し、水滴の付着抑制の面において、隙間dが0から0.2mmの間においても、隙間が開いている以上、条件によっては、隙間dが0の場合には望めない毛細管現象による付着抑制効果が幾分でも得られると考えられる。従って、このような範囲を考慮して、隙間dを0.1〜5mmの範囲に設定することができる。
特に、上記の各結果から、熱抑制と水滴付着抑制の双方を勘案すると、隙間dを0.2mmより大きく5mmを超えないものとするのが、理想的である。
特に、隙間dが5mmを超えない範囲内であっても5mm付近となると、100%毛細管現象によって、付着水分の抑制を誘引するとは断言できない。例えば、隙間が大きくなることによって、通気性など他の要素の影響、例えば、隙間を大きくすることで排水路が大きく確保できる観点から水分の貫通孔外への排出が促進されるなどの要素を否定することはできない。しかし、表1へ示す通り、隙間dが5mmと5.5mmでは、付着水滴の比較的大きな貫通孔数の、著しい相違が認められ、本来なら通気性や排水の面で隙間dが5mmよりも有利であると考えられる隙間5.5mmの水滴付着貫通孔数が5mmよりも著しく劣ることが確認できる。
この点、隙間dが5.5mmあたりから、上記の通り著しく水分付着抑制の効果が減退しているのが認められるので、隙間dが5mmを超えない範囲であって5mm付近においても、毛細管現象の影響を無視することはできず、吸水に寄与する毛細管現象が生じているものと考えられる。
【0034】
また、直射日光と発光部1の光軸が一致するようにし、他の条件は、表1の場合と同一として、上記の温度差△Tを計測した。即ち、直射日光が表示装置に垂直に当たるように、表示装置を配置して、上記の温度差△Tを計測したところ、隙間dが0の場合、温度差△Tが15.5℃であったのに対して、隙間dを0.5mmに設定した場合、温度差△Tが13.5℃であった。このように、直射日光を垂直に表示装置に当てた場合では、2度の差が効果となって表れたことを、言及しておく。
【符号の説明】
【0035】
1 発光部材
2 遮光板
3 放熱板
4 配線板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する複数の発光部材と、庇を形成する遮光部材と、遮光部材の背面側に配され且つ正面に上記複数の発光部材夫々がマトリックス状に配列されて当該各発光部材の端子が接続された配線板とを備えた表示装置において、
遮光部材と配線板との間に、吸水機構を備え、
遮光部材は、発光部材の発する光を前方へ通過させ或いは発光部材を収容する空洞部を備え、
吸水機構は、後方を臨む第1面と、第1面の後方に配されて第1面を臨む第2面とを備え、
当該第1面と第2面とは夫々、発光部材の発する光を前方へ通過させ或いは発光部材を通す開口部を備え、
上記第1面と第2面との間に隙間が設けられ、
当該隙間は、第1面の開口部を通じて上記空洞部へ繋がっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記の隙間は、0.1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
配線板又は発光部材の熱を伝導して大気中へ当該熱を放熱する、放熱部材を備え、
放熱部材は、上記遮光部材と配線板との間に配される放熱板を備え、
遮光部材の背面が、吸水機構の上記第1面であり、放熱板の正面が吸水機構の上記第2面であることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置。
【請求項4】
遮光部材と放熱板とを結合する結合部材と、遮光部材と放熱板との間に介されて上記隙間を確保する1つ又は複数の間隔保持部材とを備え、
間隔保持部材全ての正面の総面積は、吸水機構の第2面である放熱板正面において開口部のない非開口領域の面積の、3割を超えないものであることを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
上記の遮光部材は、正面に複数の庇部を備えた遮光板であり、発光部材を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔を、上記の空洞部として有し、遮光部材の当該貫通孔の遮光部材背面における開口部が、上記吸水機構の第1面の有する開口部であり、
放熱板は、上記発光部材を挿通するマトリックス状に配列された複数の貫通孔を有し、当該貫通孔の放熱板正面における開口部が、上記吸水機構の第2面の有する開口部であることを特徴とする請求項3又は4記載の表示装置。
【請求項6】
上記の放熱部材は、放熱板の背面側に、放熱板と一体或いは放熱板と別体に形成された後枠部を備え、
後枠部は、配線板の上下左右を取り囲む、配線板の収容部を形成するものであることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の表示装置。
【請求項7】
配線板と放熱板との間にレンズ形成シートが介され、
レンズ形成シートは、正面側にマトリックス状に配列された複数のレンズ部分が隆起する樹脂シートであり、
レンズ形成シートのレンズ部分の夫々は、発光部材が備えるレンズとして各発光素子の前方を覆うものであり、
レンズ形成シートは、放熱板の貫通孔を通じて放熱板の正面側から配線板へ水分が侵入するのを抑制するものであることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の表示装置。
【請求項8】
配線板と遮光板との間にレンズ形成シートが介され、
レンズ形成シートは、正面側にマトリックス状に配列された複数のレンズ部分が隆起する樹脂シートであり、
レンズ形成シートのレンズ部分の夫々は、発光部材が備えるレンズとして各発光素子の前方を覆うものであり、
レンズ形成シートは、配線板へ水分が侵入するのを抑制するものであり、
遮光部材の背面が、吸水機構の上記第1面であり、レンズ形成シートの正面が吸水機構の上記第2面であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
レンズ形成シートと配線板との間に介されて少なくとも配線板の熱を放熱板へ伝導する熱伝導部材を備え、
熱伝導部材は、シリコン樹脂層であり、
レンズ形成シートは、シリコン樹脂にて形成され、
遮光板は、ポリカーボネート又はアミニウムにて形成され、
放熱板は、アルミニウムにて形成されたものであることを特徴とする請求項7又は8記載の表示装置。
【請求項10】
放熱板の貫通孔内部において、発光部材と当該貫通孔内側面との間にシリコン樹脂が充填されたものであり、
放熱板正面は、シリコン樹脂にて被覆された面であることを特徴とする請求項3乃至7の何れかに記載の表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163699(P2012−163699A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22968(P2011−22968)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000177357)三和サインワークス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】