表示装置
【課題】複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置において、設計の自由度を確保しつつモアレを低減させる。
【解決手段】表示装置100は、サブピクセル110SがサブピクセルピッチpxSで周期的に配列され、複数のサブピクセル110Sによって画素110Pが構成され、表示面115上に複数の視点画像を表示する表示部110と、透過部120Aが周期的に配列されるバリア部120とを備え、画素110Pを構成する複数のサブピクセル110Sのいずれか1つの開口部である画素開口部110Aは、画素開口幅wxPを有し、画素開口幅wxPは、サブピクセルピッチpxSに近づくように設定される
【解決手段】表示装置100は、サブピクセル110SがサブピクセルピッチpxSで周期的に配列され、複数のサブピクセル110Sによって画素110Pが構成され、表示面115上に複数の視点画像を表示する表示部110と、透過部120Aが周期的に配列されるバリア部120とを備え、画素110Pを構成する複数のサブピクセル110Sのいずれか1つの開口部である画素開口部110Aは、画素開口幅wxPを有し、画素開口幅wxPは、サブピクセルピッチpxSに近づくように設定される
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の視点に向けた画像を、透過部を有するバリアによって空間的に分離し、それぞれの視点において異なる画像を観察することができる表示装置が開発されている。このような表示装置において、観察者の左眼の位置と右眼の位置を含む複数の視点を設定し、左眼の位置にあたる視点に向けた画像と、右眼の位置にあたる視点に向けた画像とに所定の視差を反映させることによって、観察者は裸眼で立体映像を観察することができる。このような表示装置に用いられるバリアを、特にパララックスバリアともいう。なお、パララックスバリアを用いた表示装置は、例えば複数の視点に向けた画像に視差を反映させない、つまり複数の視点に同じ画像を表示することによって、平面の映像を表示することもできる。
【0003】
このような、複数の視点に向けた画像を周期的に配置して表示する表示装置においては、モアレと呼ばれる輝度のむらが発生することが知られている。モアレは、例えば画像において縞模様として観察され、観察者に不快感を与えうるものである。そこで、画像において観察されるモアレを低減させる技術が開発されている。例えば、特許文献1には、バリアにおける透過部の比率を通常よりも大きくすることでモアレを低減させる技術が記載されている。また、特許文献2には、バリアの透過部を、幅が水平画素ピッチに一致する斜めストライプ状に形成することで、モアレを低減させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4023626号公報
【特許文献2】特許3955002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1には、バリアにおける透過部の比率を視点の数の逆数の1.1〜1.8倍にすることが記載されているのみで、それを導き出す過程が明らかにされていない。特許文献2には、バリアの透過部の幅を水平画素ピッチに一致させることが記載されているのみで、それを導き出す過程については全く開示されていない。表示装置は、観察者の視聴に不快感や疲労感を与えないために、モアレの低減以外にも様々な要素を考慮して設計されるため、上記の技術によってモアレを低減させようとする場合、とりうる構成が限定され、表示装置の設計の自由度が低くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置において、設計の自由度を確保しつつモアレを低減させることが可能な、新規かつ改良された表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、サブピクセルが画面の第1の方向に第1のサブピクセルピッチで周期的に配列され、複数の上記サブピクセルによって画素が構成され、表示面上に複数の視点画像を表示する表示部と、透過部が周期的に配列されるバリア部とを備え、上記画素を構成する複数の上記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、上記第1の方向に第1の画素開口幅を有し、上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに近づくように設定される表示装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、サブピクセルの光強度分布と、透過部の光強度分布とを重ね合わせた空間的周期構造において、ビートを発生させる周波数成分を低減させることができるため、画像において観察されるモアレを低減させることができる。また、画素開口幅をサブピクセルピッチに近い値に設定すれば、幅については自由に設定することができるため、設計の自由度を確保することができる。
【0009】
前記バリア部は、前記表示部の前記表示面の前に配置されてもよい。
【0010】
前記表示装置は、光源をさらに備え、前記バリア部は、前記光源と前記表示部との間に配置されてもよい。
【0011】
上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致してもよい。
【0012】
上記バリア部は、斜めストライプバリアであり、上記第1の方向は、上記斜めストライプバリアの開口方向に対して垂直な方向であってもよい。
【0013】
上記画素を構成する複数の上記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、上記画面の第2の方向に第2の画素開口幅を有し、上記サブピクセルは、上記第2の方向に第2のサブピクセルピッチで周期的に配置され、上記第2の画素開口幅は、上記第2のサブピクセルピッチに近づくように設定されてもよい。
【0014】
上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致し、上記第2の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致してもよい。
【0015】
上記第1の方向は、上記画面の水平方向であり、上記第2の方向は、上記画面の垂直方向であり、上記バリア部は、階段状に上記透過部が配置されたステップバリアであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置において、設計の自由度を確保しつつモアレを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るディスプレイおよびパララックスバリアを視点の側から見た概略的な立面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画素開口部について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るディスプレイによる光強度分布について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る透過部について説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るパララックスバリアによる光強度分布について説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルについて説明するための図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルの重ね合わせについて説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る第1および第2の方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るディスプレイおよびパララックスバリアを視点の側から見た概略的な立面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る幅について説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る第1および第2の方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.表示装置の構成
1−2.画像における光強度分布
1−3.モアレの発生原因
1−4.モアレ低減のための設計
2.第2の実施形態
2−1.表示装置の構成
2−2.画像における光強度分布
2−3.モアレの発生原因
2−4.モアレ低減のための設計
3.補足
【0020】
<1.第1の実施形態>
まず、図1〜図9を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0021】
[1−1.表示装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100の概略的な構成を示す図である。図1を参照すると、表示装置100は、ディスプレイ110およびパララックスバリア120を含む。
【0022】
ディスプレイ110は、3つのサブピクセルを含む画素によって、N個の視点(Nは任意の複数)のそれぞれに向けたN個の視点画像を表示する表示部である。ディスプレイ110は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、または有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどでありうる。
【0023】
ディスプレイ110の表示面115の前、またはディスプレイ110のバックライトと表示面115との間には、表示面115から所定の間隔をおいてパララックスバリア120が配設されている。パララックスバリア120は、斜め方向にステップ状の透過部120Aを有する。パララックスバリア120は、ディスプレイ110からの光を、透過部120Aでは透過させ、それ以外の部分では遮蔽する。透過部120Aが、ディスプレイ110に表示されるN個の視点に向けた画像の配置に合わせて配列されることによって、パララックスバリア120は、N個の視点に向けた画像を視点画像ごとに互いに分離する。
【0024】
ここで、パララックスバリア120は、例えば、透過型液晶表示素子を用いて、透過部120Aにあたる部分の光の透過率がそれ以外の部分よりも高い画像を表示することによって実現されてもよい。このような場合、透過部120Aは必ずしも物理的な開口部分ではなくてもよい。また、透過部120Aの光の透過率は、必ずしも100%でなくてもよく、その他の部分と比較して高い透過率であればよい。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るディスプレイ110およびパララックスバリア120を視点の側から見た概略的な立面図である。図2を参照すると、ディスプレイ110には、サブピクセル110Sが周期的に配列され、本実施形態では3つのサブピクセル110Sによって画素110Pを構成する。なお、画素に含まれるサブピクセルの数は、複数であればよく、3には限られない。パララックスバリア120には、透過部120Aが周期的に配列される。また、本実施形態では、視点の数Nは4である。
【0026】
サブピクセル110Sは、画面の第1の方向であるx軸方向には第1のサブピクセルピッチpxSで配列され、画面の第2の方向であるy軸方向には第2のサブピクセルピッチpySで配列されている。x軸方向には、R(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)の3色をそれぞれ表示するサブピクセル110Sが、R、G、Bの順で周期的に配列されている。y軸方向には、R、G、Bの3色のいずれか1色を表示するサブピクセル110Sが周期的に配列されている。
【0027】
画素110Pは、R、G、Bの3色をそれぞれ表示する3つのサブピクセル110Sを含む。画素110Pは、x軸方向には第1の画素ピッチpxPで配列され、y軸方向には第2の画素ピッチpyPで配列されている。ここで、画素110Pは、x軸方向に並んだ3つのサブピクセル110Sを含むため、第1の画素ピッチpxPおよび第1のサブピクセルピッチpxSについて、式(1)によって示される関係が成り立つ。
【0028】
【数1】
【0029】
また、第2の画素ピッチpyPおよび第2のサブピクセルピッチpySについて、式(2)によって示される関係が成り立つ。
【0030】
【数2】
【0031】
透過部120Aは、パララックスバリア120に周期的に配列されており、サブピクセル110Sと略相似する形状を有する。第1の実施形態において、パララックスバリア120は、角度θの斜め方向に階段状に透過部120Aが配列された、ステップバリアと呼ばれる種類のバリアである。透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列される。
【0032】
ここで、ディスプレイ110では、N個の視点に向けた画像がそれぞれ分割され、1つの視点に向けた画像が角度θの斜め方向に並んだサブピクセル110Sに表示される。つまり、角度θの斜め方向に並んだサブピクセル110Sを単位として、第1の視点に向けた画像、第2の視点に向けた画像、・・・第Nの視点に向けた画像が、順次繰り返して配列される。よって、第1のバリアピッチpxB、第1のサブピクセルピッチpxS、および第1の画素ピッチpxPについて、式(3)によって示される関係が成り立つ。
【0033】
【数3】
【0034】
また、第2のバリアピッチpyB、第2のサブピクセルピッチpyS、および第2の画素ピッチpyPについて、式(4)によって示される関係が成り立つ。
【0035】
【数4】
【0036】
なお、角度θは、サブピクセル110Sのx軸方向とy軸方向の比によって定められる。例えば、第1の画素ピッチpxPと、第2の画素ピッチpyPとが等しい場合には、式(5)によって示される関係が成り立つ。
【0037】
【数5】
【0038】
[1−2.画像における光強度分布]
(ディスプレイによる光強度の分布)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る画素開口部110Aについて説明するための図である。図3を参照すると、画素開口部110Aは、画素110Pを構成する複数のサブピクセル110Sのいずれか1つの開口部である。
【0039】
画素開口部110Aは、R、G、Bの3色のいずれか1色についての、画素110Pにおける光の透過部分である。図示されている例では、画素110PにおけるG(緑色)の光の透過部分を画素開口部110Aとしている。この場合、画素開口部110Aは、G(緑色)の光を表示するサブピクセル110Sの開口部になる。画素開口部110Aは、x軸方向に第1の画素開口幅wxPを有し、y軸方向に第2の画素開口幅wyPを有する。
【0040】
ここで、図示されている画素110Pに隣接する図示しない画素110Pにおいても、同様に画素開口部110Aが存在する。そのため、ディスプレイ110において、画素開口部110Aのx軸方向の間隔は第1の画素ピッチpxPに等しくなり、画素開口部110Aのy軸方向の間隔は第2の画素ピッチpyPに等しくなる。
【0041】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るディスプレイ110による光強度分布について説明するための図である。図4を参照すると、ディスプレイ110によるG(緑色)の光強度は、x軸方向およびy軸方向にそれぞれ周期的に分布する。
【0042】
ディスプレイ110によってG(緑色)の光が発光されるのは、画素110PにおけるG(緑色)の光の透過部分である画素開口部110Aの部分である。図示されているように、画素110Pは、x軸方向には第1の画素ピッチpxPで配列され、y軸方向には第2の画素ピッチpyPで配列されている。また、それぞれの画素110Pにおいて、画素開口部110Aは、x軸方向に第1の画素開口幅wxPを有し、y軸方向に第2の画素開口幅wyPを有する。
【0043】
よって、ディスプレイ110による光強度分布は、x軸方向については、周期pxP、幅wxPのパルス状の周期構造を有する。また、y軸方向については、周期pyP、幅wyPのパルス状の周期構造を有する。このような2次元の周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、x座標およびy座標についての関数fP(x,y)として、式(6)のように表される。なお、mおよびnは級数の次数を表し、amn、am、anはフーリエ係数を表す。
【0044】
【数6】
【0045】
(パララックスバリアによる光強度の分布)
図5は、本発明の第1の実施形態に係る透過部120Aについて説明するための図である。図5を参照すると、透過部120Aは、パララックスバリア120に周期的に配列されている。
【0046】
透過部120Aは、x軸方向に第1の幅wxBを有し、y軸方向に第2の幅wyBを有する。図2を参照して説明されたように、透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列される。
【0047】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパララックスバリア120による光強度分布について説明するための図である。図6を参照すると、パララックスバリア120による光強度は、x軸方向およびy軸方向にそれぞれ周期的に分布する。
【0048】
パララックスバリア120がディスプレイ110からの光を透過するのは、透過部120Aの部分である。図示されているように、透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列されている。また、透過部120Aは、x軸方向に第1の幅wxBを有し、y軸方向に第2の幅wyBを有する。
【0049】
よって、パララックスバリア120による光強度分布は、x軸方向については、周期pxB、幅wxBのパルス状の周期構造を有する。また、y軸方向については、周期pyB、幅wyBのパルス状の周期構造を有する。このような2次元の周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、x座標およびy座標についての関数fB(x,y)として、式(7)のように表される。なお、mおよびnは級数の次数を表し、bmn、bm、bnはフーリエ係数を表す。
【0050】
【数7】
【0051】
(画像において観察される光強度の分布)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置100によって表示される画像において観察される光強度は、以上で説明したディスプレイ110による光強度、およびパララックスバリア120による光強度の重ね合わせである。ここで、重ね合わせによる光強度は、重ね合わせられるそれぞれの光強度を表す関数の積によって表される。従って、画像において観察される光強度の分布は、ディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)と、パララックスバリア120による光強度を表す式(7)の関数fB(x,y)との積として、式(8)のように表される。
【0052】
【数8】
【0053】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルについて説明するための図である。図7を参照すると、周期p、幅wのパルス状の周期構造を有する光強度は、間隔が1/pの離散スペクトルを有する。
【0054】
ここで、パルス状の周期構造を有する関数の離散スペクトルの包絡線は、sinc関数になることが知られている。これを、ディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)に適用すると、式(9)のように、sinc関数の積の形のフーリエ係数を求められる。
【0055】
【数9】
【0056】
また、同様に、パララックスバリア120による光強度を表す式(7)の関数fB(x,y)についても、jを任意の整数として、式(10)のように、sinc関数に係数がかけられた形のフーリエ係数を求められる。
【0057】
【数10】
【0058】
なお、式(10)はwxB≦pxB/N、およびwyB≦pyB/Nの場合に成り立つ式であるが、これ以外の場合であっても、係数部分が変化するだけでsinc関数の積の部分は同じである。
【0059】
[1−3.モアレの発生原因]
図8は、本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルの重ね合わせについて説明するための図である。図8の上側には、x軸方向について、ディスプレイ110による光強度分布の周波数スペクトルが示され、下側には、パララックスバリア120による光強度分布の周波数スペクトルが示されている。
【0060】
上述のように、パルス状の周期構造を有する光強度分布は、間隔が周期の逆数の離散スペクトルを有する。よって、上側に図示されている、ディスプレイ110による光強度分布は、間隔が1/pxPの離散スペクトルを有する。また、同様に、下側のパララックスバリア120による光強度分布は、間隔が1/pxBの離散スペクトルを有する。
【0061】
ここで、モアレが発生する原因について説明する。モアレは、複数の光強度分布の重ね合わせにおいて、重ね合わせられる光強度分布のそれぞれの周波数成分に、周波数がわずかに異なる周波数成分が含まれている場合に、その周波数成分同士によるビート(うなり)による輝度むらとして発生する。この輝度むらの大きさは、ビートが発生しているそれぞれの周波数成分の振幅(光強度の大きさ)の積に依存する。
【0062】
従って、ビートが発生している周波数成分の振幅(光強度)が大きければ、大きな輝度むらが発生し、強いモアレが観察される。第1の画素ピッチpxP、および第1のバリアピッチpxBの実際の値は、機械的加工精度によっていくらかの誤差を含みうるものであるため、設計上の値によって求めたそれぞれの光強度分布に共通して含まれる周波数成分において、モアレが発生する可能性が高いといえる。
【0063】
x軸方向において、ディスプレイ110およびパララックスバリア120のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分についての条件は、式(3)を利用すると、式(11)のように表される。
【0064】
【数11】
【0065】
本実施形態では、視点数Nは4であるため、4/pxB=3/pxPとなる。よって、図8に示されている例では、上記の条件を満たす場合として、ディスプレイ110による周波数成分の周波数が3/pxPの成分と、パララックスバリア120による周波数成分の周波数が4/pxBの成分、および、ディスプレイ110による周波数成分の周波数が6/pxPの成分と、パララックスバリア120による周波数成分の周波数が8/pxBの成分がある。
【0066】
以上はx軸方向を例にした説明であるが、同様の関係が第2の方向であるy軸方向についても成り立つ。y軸方向において、ディスプレイ110およびパララックスバリア120のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分についての条件は、式(4)を利用すると、式(12)のように表される。
【0067】
【数12】
【0068】
式(11)および式(12)より、観察される画像においてモアレが発生する条件は、sおよびtを任意の整数として、式(13)のように表される。
【0069】
【数13】
【0070】
ただし、本実施形態では、式(12)および式(13)におけるNは、上述の通り4である。
【0071】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る第1および第2の方向であるx軸方向およびy軸方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。図9を参照すると、ディスプレイ110による光強度分布とパララックスバリア120による光強度分布のそれぞれについて、x軸方向とy軸方向の空間周波数の組み合わせがプロットされている。
【0072】
ここで示されている周波数分布は、図8を参照して説明された周波数分布を、x軸方向、y軸方向で組み合わせたものである。よって、x軸方向およびy軸方向について、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分の組み合わせが、ビートが発生する周波数成分の組み合わせとして示されている。ここでは、ディスプレイ110側の光強度分布の周期性と、パララックスバリア120側の光強度分布の周期性とによって、ビート(モアレ)が発生する周波数がxy空間上に等間隔に出現する。
【0073】
[1−4.モアレ低減のための設計]
式(8)において示されているように、画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度と、パララックスバリア120による光強度との積によって表されるため、上記のモアレが発生しうる周波数成分の組み合わせにおいて、いずれかの光強度を0に近づければ、モアレを低減させることが可能である。
【0074】
まず、ディスプレイ110による光強度分布について、式(9)によって示されるフーリエ係数が0になれば、モアレが発生する周波数の光強度(振幅)を0にすることができるため、モアレの発生を防ぐことができる。フーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(14)のように表される。
【0075】
【数14】
【0076】
上記の条件は、式(1)および式(2)より、式(15)のように表される。ただし、第1の画素開口幅wxPは、第1のサブピクセルピッチpxSを超えることはなく、第2の画素開口幅wyPは、第2のサブピクセルピッチpySを超えることはないため、式(14)の条件は、j=1の場合に限定される。
【0077】
【数15】
【0078】
次に、パララックスバリア120による光強度分布について、式(10)によって示されるフーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(16)のように表される。
【0079】
【数16】
【0080】
上記の条件は、式(3)および式(4)より、式(17)のように表される。なお、第1の幅wxBは、第1のバリアピッチpxBを超えることはなく、第2の幅wyBは、第2のバリアピッチpyBを超えることはないため、j=1,2,・・・Nとなる。すなわち、jは視点の数N以下の自然数である。
【0081】
【数17】
【0082】
ディスプレイ110についての式(15)、およびパララックスバリア120についての式(17)によって示される条件を整理すると、表示装置100によって表示される画像において観察されるモアレを低減するためには、以下のいずれかの条件が満たされればよい。
【0083】
(a)・・・第1の幅wxBの第1のサブピクセルピッチpxSに対する比が、N以下の自然数である。
(b)・・・第2の幅wyBの第2のサブピクセルピッチpySに対する比が、N以下の自然数である。
(c)・・・第1の画素開口幅wxPが、第1のサブピクセルピッチpxSに等しい。
(d)・・・第2の画素開口幅wyPが、第2のサブピクセルピッチpySに等しい。
【0084】
実際の表示装置100の設計においては、例えばサブピクセル110S同士の間に駆動回路を設置するスペースが必要であるというような理由のために、上記の条件を厳密に満たすことは難しい。しかし、上記の条件に近づくような設計にすることで、ある程度モアレを低減させることができる。そのような場合には、さらに、上記の(a)〜(d)の条件のうちの複数の条件を満たす形状に近づくような設計にすることで、式(8)に示した4つのフーリエ係数の積がより小さい値になるため、モアレをさらに低減させることができる。
【0085】
<2.第2の実施形態>
次に、図10〜12を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、パララックスバリア120の構成において相違するが、その他の機能構成は第1の実施形態と略同一であるため、詳細説明は省略する。
【0086】
[2−1.表示装置の構成]
図10は、本発明の第2の実施形態に係るディスプレイ110およびパララックスバリア220を視点の側から見た概略的な立面図である。図10を参照すると、ディスプレイ110には、サブピクセル110Sが周期的に配列され、本実施形態では3つのサブピクセル110Sによって画素110Pを構成する。なお、画素に含まれるサブピクセルの数は、複数であればよく、3には限られない。パララックスバリア220には、透過部220Aが周期的に配列される。また、本実施形態では、視点の数Nは4である。
【0087】
透過部220Aは、パララックスバリア220に周期的に配列された、ストライプ状の部分である。第2の実施形態において、パララックスバリア220は、角度θの斜め方向に透過部220Aが配列されている、斜めストライプバリアと呼ばれる種類のバリアである。透過部220Aのバリアピッチについては後述する。
【0088】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る透過部220Aについて説明するための図である。図11を参照すると、透過部220Aは、パララックスバリア220に周期的に配列されている。
【0089】
透過部220Aは、x軸に対して角度θだけ傾いた方向に形成された帯状の開口部である。ここで、透過部220Aが形成されている方向に対して垂直な方向にu軸を設定する。u軸方向の距離uと、x座標およびy座標との関係は、式(18)のように表される。
【0090】
【数18】
【0091】
透過部220Aは、u軸方向に開口幅wuBを有する。また、透過部220Aは、u軸方向にバリアピッチpuBで配列される。以下、パララックスバリア220による光強度分布については、u軸方向について説明する。なお、透過部220Aについて、x軸方向の開口幅wxB、およびx軸方向のバリアピッチpxBを、式(19)のように定義することも可能である。
【0092】
【数19】
【0093】
図示されていないが、同様に、y軸方向の開口幅wyBと、y軸方向のバリアピッチpyBについても、式(20)のように定義できる。
【0094】
【数20】
【0095】
[2−2.画像における光強度分布]
第1の実施形態において図6を参照して説明された、パララックスバリア120による光強度分布と同様に、パララックスバリア220による光強度分布は、u軸方向について、周期puB、幅wuBのパルス状の周期構造を有する。このような周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、u軸方向の距離uについての関数fB(u)として、式(21)のように表される。なお、mは級数の次数を表し、bmはフーリエ係数を表す。
【0096】
【数21】
【0097】
本発明の第2の実施形態に係る表示装置100によって表示される画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度、およびパララックスバリア220による光強度の重ね合わせである。ここで、重ね合わせによる光強度は、重ね合わせられるそれぞれの光強度を表す関数の積によって表される。従って、画像において観察される光強度の分布は、第1の実施形態において説明されたディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)と、パララックスバリア220による光強度を表す式(21)の関数fB(u)との積として、式(22)のように表される。
【0098】
【数22】
【0099】
ここで、パルス状の周期構造を有する関数の離散スペクトルの包絡線は、sinc関数になるため、これをパララックスバリア220による光強度を表す式(21)の関数fB(u)に適用すると、式(23)のように、sinc関数の形のフーリエ係数が求められる。
【0100】
【数23】
【0101】
[2−3.モアレの発生原因]
ここで、パララックスバリア220による光強度分布は、u軸方向について、間隔が1/puBの離散スペクトルを有する。ディスプレイ110による光強度分布との重ねあわせを考えるため、これをx軸方向とy軸方向に分解する。式(19)より、パララックスバリア220のx軸方向の光強度分布は、間隔が1/puBcosθの離散スペクトルを有する。
【0102】
第1の実施形態において図8を参照して説明されたように、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分において、モアレが発生する可能性が高い。x軸方向について、この条件は、式(3)を利用して、式(24)のように表される。
【0103】
【数24】
【0104】
また、y軸方向について、この条件は、式(4)を利用して、式(25)のように表される。
【0105】
【数25】
【0106】
ここで、u軸方向のサブピクセルピッチpuSは、x軸方向の第1のサブピクセルピッチpxS、またはy軸方向の第2のサブピクセルピッチpySを用いて、式(26)のように定義される。
【0107】
【数26】
【0108】
式(26)を用いて、式(24)および式(25)をu軸方向についてまとめると、観察される画像においてモアレが発生する条件は、sを任意の整数として、式(27)のように表される。
【0109】
【数27】
【0110】
ただし、本実施形態では、式(24)、式(25)、および式(27)におけるNは、上述の通り4である。
【0111】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る第1および第2の方向であるx軸方向およびy軸方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。図12を参照すると、ディスプレイ110による光強度分布とパララックスバリア220による光強度分布のそれぞれについて、x軸方向とy軸方向の空間周波数の組み合わせがプロットされている。
【0112】
ここで示されている周波数分布は、第1の実施形態において図8を参照して説明されたような周波数分布を、式(24)、式(25)、および式(27)より、x軸方向、y軸方向で組み合わせたものである。よって、x軸方向およびy軸方向について、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分の組み合わせが、ビートが発生する周波数成分の組み合わせとして示されている。ここでは、ディスプレイ110側の光強度分布の周期性と、パララックスバリア120側の光強度分布の周期性とによって、ビート(モアレ)が発生する周波数がxy空間上に等間隔に出現する。
【0113】
[2−4.モアレ低減のための設計]
式(22)において示されているように、画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度と、パララックスバリア220による光強度との積によって表されるため、上記のモアレが発生しうる周波数成分の組み合わせにおいて、いずれかの光強度を0に近づければ、モアレを低減させることが可能である。
【0114】
パララックスバリア220による光強度分布について、式(23)によって示されるフーリエ係数が0になれば、モアレが発生する周波数の光強度(振幅)を0にすることができるため、モアレの発生を防ぐことができる。フーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(28)のように表される。
【0115】
【数28】
【0116】
上記の条件は、u軸方向について式(29)のように表される。ただし、幅wuBは、バリアピッチpuBを超えることはないため、j=1,2,・・・Nとなる。すなわち、jは視点の数N以下の自然数である。
【0117】
【数29】
【0118】
ディスプレイ110についての式(15)、およびパララックスバリア220についての式(29)によって示される条件を整理すると、表示装置100によって表示される画像において観察されるモアレを低減するためには、以下のいずれかの条件が満たされればよい。
【0119】
(a)・・・幅wuBの、サブピクセルピッチpuSに対する比が、N以下の自然数である。
(b)・・・第1の画素開口幅wxPが、第1のサブピクセルピッチpxSに等しい。
(c)・・・第2の画素開口幅wyPが、第2のサブピクセルピッチpySに等しい。
【0120】
実際の表示装置100の設計においては、例えばサブピクセル110S同士の間に駆動回路を設置するスペースが必要であるというような理由のために、上記の条件を厳密に満たすことは難しい。しかし、上記の条件に近づくような設計にすることで、ある程度モアレを低減させることができる。そのような場合には、さらに、上記の(a)〜(c)の条件のうちの複数の条件を満たす形状に近づくような設計にすることで、式(22)に示した3つのフーリエ係数の積がより小さい値になるため、モアレをさらに低減させることができる。
【0121】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0122】
100 表示装置
110 ディスプレイ
110S サブピクセル
110P 画素
110A 画素開口部
120,220 パララックスバリア
120A,220A 透過部
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の視点に向けた画像を、透過部を有するバリアによって空間的に分離し、それぞれの視点において異なる画像を観察することができる表示装置が開発されている。このような表示装置において、観察者の左眼の位置と右眼の位置を含む複数の視点を設定し、左眼の位置にあたる視点に向けた画像と、右眼の位置にあたる視点に向けた画像とに所定の視差を反映させることによって、観察者は裸眼で立体映像を観察することができる。このような表示装置に用いられるバリアを、特にパララックスバリアともいう。なお、パララックスバリアを用いた表示装置は、例えば複数の視点に向けた画像に視差を反映させない、つまり複数の視点に同じ画像を表示することによって、平面の映像を表示することもできる。
【0003】
このような、複数の視点に向けた画像を周期的に配置して表示する表示装置においては、モアレと呼ばれる輝度のむらが発生することが知られている。モアレは、例えば画像において縞模様として観察され、観察者に不快感を与えうるものである。そこで、画像において観察されるモアレを低減させる技術が開発されている。例えば、特許文献1には、バリアにおける透過部の比率を通常よりも大きくすることでモアレを低減させる技術が記載されている。また、特許文献2には、バリアの透過部を、幅が水平画素ピッチに一致する斜めストライプ状に形成することで、モアレを低減させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4023626号公報
【特許文献2】特許3955002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1には、バリアにおける透過部の比率を視点の数の逆数の1.1〜1.8倍にすることが記載されているのみで、それを導き出す過程が明らかにされていない。特許文献2には、バリアの透過部の幅を水平画素ピッチに一致させることが記載されているのみで、それを導き出す過程については全く開示されていない。表示装置は、観察者の視聴に不快感や疲労感を与えないために、モアレの低減以外にも様々な要素を考慮して設計されるため、上記の技術によってモアレを低減させようとする場合、とりうる構成が限定され、表示装置の設計の自由度が低くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置において、設計の自由度を確保しつつモアレを低減させることが可能な、新規かつ改良された表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、サブピクセルが画面の第1の方向に第1のサブピクセルピッチで周期的に配列され、複数の上記サブピクセルによって画素が構成され、表示面上に複数の視点画像を表示する表示部と、透過部が周期的に配列されるバリア部とを備え、上記画素を構成する複数の上記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、上記第1の方向に第1の画素開口幅を有し、上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに近づくように設定される表示装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、サブピクセルの光強度分布と、透過部の光強度分布とを重ね合わせた空間的周期構造において、ビートを発生させる周波数成分を低減させることができるため、画像において観察されるモアレを低減させることができる。また、画素開口幅をサブピクセルピッチに近い値に設定すれば、幅については自由に設定することができるため、設計の自由度を確保することができる。
【0009】
前記バリア部は、前記表示部の前記表示面の前に配置されてもよい。
【0010】
前記表示装置は、光源をさらに備え、前記バリア部は、前記光源と前記表示部との間に配置されてもよい。
【0011】
上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致してもよい。
【0012】
上記バリア部は、斜めストライプバリアであり、上記第1の方向は、上記斜めストライプバリアの開口方向に対して垂直な方向であってもよい。
【0013】
上記画素を構成する複数の上記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、上記画面の第2の方向に第2の画素開口幅を有し、上記サブピクセルは、上記第2の方向に第2のサブピクセルピッチで周期的に配置され、上記第2の画素開口幅は、上記第2のサブピクセルピッチに近づくように設定されてもよい。
【0014】
上記第1の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致し、上記第2の画素開口幅は、上記第1のサブピクセルピッチに一致してもよい。
【0015】
上記第1の方向は、上記画面の水平方向であり、上記第2の方向は、上記画面の垂直方向であり、上記バリア部は、階段状に上記透過部が配置されたステップバリアであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、複数の視点に向けた画像をバリアによって分離する表示装置において、設計の自由度を確保しつつモアレを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るディスプレイおよびパララックスバリアを視点の側から見た概略的な立面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画素開口部について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るディスプレイによる光強度分布について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る透過部について説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るパララックスバリアによる光強度分布について説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルについて説明するための図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルの重ね合わせについて説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る第1および第2の方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るディスプレイおよびパララックスバリアを視点の側から見た概略的な立面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る幅について説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る第1および第2の方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.表示装置の構成
1−2.画像における光強度分布
1−3.モアレの発生原因
1−4.モアレ低減のための設計
2.第2の実施形態
2−1.表示装置の構成
2−2.画像における光強度分布
2−3.モアレの発生原因
2−4.モアレ低減のための設計
3.補足
【0020】
<1.第1の実施形態>
まず、図1〜図9を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0021】
[1−1.表示装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100の概略的な構成を示す図である。図1を参照すると、表示装置100は、ディスプレイ110およびパララックスバリア120を含む。
【0022】
ディスプレイ110は、3つのサブピクセルを含む画素によって、N個の視点(Nは任意の複数)のそれぞれに向けたN個の視点画像を表示する表示部である。ディスプレイ110は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、または有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどでありうる。
【0023】
ディスプレイ110の表示面115の前、またはディスプレイ110のバックライトと表示面115との間には、表示面115から所定の間隔をおいてパララックスバリア120が配設されている。パララックスバリア120は、斜め方向にステップ状の透過部120Aを有する。パララックスバリア120は、ディスプレイ110からの光を、透過部120Aでは透過させ、それ以外の部分では遮蔽する。透過部120Aが、ディスプレイ110に表示されるN個の視点に向けた画像の配置に合わせて配列されることによって、パララックスバリア120は、N個の視点に向けた画像を視点画像ごとに互いに分離する。
【0024】
ここで、パララックスバリア120は、例えば、透過型液晶表示素子を用いて、透過部120Aにあたる部分の光の透過率がそれ以外の部分よりも高い画像を表示することによって実現されてもよい。このような場合、透過部120Aは必ずしも物理的な開口部分ではなくてもよい。また、透過部120Aの光の透過率は、必ずしも100%でなくてもよく、その他の部分と比較して高い透過率であればよい。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るディスプレイ110およびパララックスバリア120を視点の側から見た概略的な立面図である。図2を参照すると、ディスプレイ110には、サブピクセル110Sが周期的に配列され、本実施形態では3つのサブピクセル110Sによって画素110Pを構成する。なお、画素に含まれるサブピクセルの数は、複数であればよく、3には限られない。パララックスバリア120には、透過部120Aが周期的に配列される。また、本実施形態では、視点の数Nは4である。
【0026】
サブピクセル110Sは、画面の第1の方向であるx軸方向には第1のサブピクセルピッチpxSで配列され、画面の第2の方向であるy軸方向には第2のサブピクセルピッチpySで配列されている。x軸方向には、R(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)の3色をそれぞれ表示するサブピクセル110Sが、R、G、Bの順で周期的に配列されている。y軸方向には、R、G、Bの3色のいずれか1色を表示するサブピクセル110Sが周期的に配列されている。
【0027】
画素110Pは、R、G、Bの3色をそれぞれ表示する3つのサブピクセル110Sを含む。画素110Pは、x軸方向には第1の画素ピッチpxPで配列され、y軸方向には第2の画素ピッチpyPで配列されている。ここで、画素110Pは、x軸方向に並んだ3つのサブピクセル110Sを含むため、第1の画素ピッチpxPおよび第1のサブピクセルピッチpxSについて、式(1)によって示される関係が成り立つ。
【0028】
【数1】
【0029】
また、第2の画素ピッチpyPおよび第2のサブピクセルピッチpySについて、式(2)によって示される関係が成り立つ。
【0030】
【数2】
【0031】
透過部120Aは、パララックスバリア120に周期的に配列されており、サブピクセル110Sと略相似する形状を有する。第1の実施形態において、パララックスバリア120は、角度θの斜め方向に階段状に透過部120Aが配列された、ステップバリアと呼ばれる種類のバリアである。透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列される。
【0032】
ここで、ディスプレイ110では、N個の視点に向けた画像がそれぞれ分割され、1つの視点に向けた画像が角度θの斜め方向に並んだサブピクセル110Sに表示される。つまり、角度θの斜め方向に並んだサブピクセル110Sを単位として、第1の視点に向けた画像、第2の視点に向けた画像、・・・第Nの視点に向けた画像が、順次繰り返して配列される。よって、第1のバリアピッチpxB、第1のサブピクセルピッチpxS、および第1の画素ピッチpxPについて、式(3)によって示される関係が成り立つ。
【0033】
【数3】
【0034】
また、第2のバリアピッチpyB、第2のサブピクセルピッチpyS、および第2の画素ピッチpyPについて、式(4)によって示される関係が成り立つ。
【0035】
【数4】
【0036】
なお、角度θは、サブピクセル110Sのx軸方向とy軸方向の比によって定められる。例えば、第1の画素ピッチpxPと、第2の画素ピッチpyPとが等しい場合には、式(5)によって示される関係が成り立つ。
【0037】
【数5】
【0038】
[1−2.画像における光強度分布]
(ディスプレイによる光強度の分布)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る画素開口部110Aについて説明するための図である。図3を参照すると、画素開口部110Aは、画素110Pを構成する複数のサブピクセル110Sのいずれか1つの開口部である。
【0039】
画素開口部110Aは、R、G、Bの3色のいずれか1色についての、画素110Pにおける光の透過部分である。図示されている例では、画素110PにおけるG(緑色)の光の透過部分を画素開口部110Aとしている。この場合、画素開口部110Aは、G(緑色)の光を表示するサブピクセル110Sの開口部になる。画素開口部110Aは、x軸方向に第1の画素開口幅wxPを有し、y軸方向に第2の画素開口幅wyPを有する。
【0040】
ここで、図示されている画素110Pに隣接する図示しない画素110Pにおいても、同様に画素開口部110Aが存在する。そのため、ディスプレイ110において、画素開口部110Aのx軸方向の間隔は第1の画素ピッチpxPに等しくなり、画素開口部110Aのy軸方向の間隔は第2の画素ピッチpyPに等しくなる。
【0041】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るディスプレイ110による光強度分布について説明するための図である。図4を参照すると、ディスプレイ110によるG(緑色)の光強度は、x軸方向およびy軸方向にそれぞれ周期的に分布する。
【0042】
ディスプレイ110によってG(緑色)の光が発光されるのは、画素110PにおけるG(緑色)の光の透過部分である画素開口部110Aの部分である。図示されているように、画素110Pは、x軸方向には第1の画素ピッチpxPで配列され、y軸方向には第2の画素ピッチpyPで配列されている。また、それぞれの画素110Pにおいて、画素開口部110Aは、x軸方向に第1の画素開口幅wxPを有し、y軸方向に第2の画素開口幅wyPを有する。
【0043】
よって、ディスプレイ110による光強度分布は、x軸方向については、周期pxP、幅wxPのパルス状の周期構造を有する。また、y軸方向については、周期pyP、幅wyPのパルス状の周期構造を有する。このような2次元の周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、x座標およびy座標についての関数fP(x,y)として、式(6)のように表される。なお、mおよびnは級数の次数を表し、amn、am、anはフーリエ係数を表す。
【0044】
【数6】
【0045】
(パララックスバリアによる光強度の分布)
図5は、本発明の第1の実施形態に係る透過部120Aについて説明するための図である。図5を参照すると、透過部120Aは、パララックスバリア120に周期的に配列されている。
【0046】
透過部120Aは、x軸方向に第1の幅wxBを有し、y軸方向に第2の幅wyBを有する。図2を参照して説明されたように、透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列される。
【0047】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパララックスバリア120による光強度分布について説明するための図である。図6を参照すると、パララックスバリア120による光強度は、x軸方向およびy軸方向にそれぞれ周期的に分布する。
【0048】
パララックスバリア120がディスプレイ110からの光を透過するのは、透過部120Aの部分である。図示されているように、透過部120Aは、x軸方向には第1のバリアピッチpxBで配列され、y軸方向には第2のバリアピッチpyBで配列されている。また、透過部120Aは、x軸方向に第1の幅wxBを有し、y軸方向に第2の幅wyBを有する。
【0049】
よって、パララックスバリア120による光強度分布は、x軸方向については、周期pxB、幅wxBのパルス状の周期構造を有する。また、y軸方向については、周期pyB、幅wyBのパルス状の周期構造を有する。このような2次元の周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、x座標およびy座標についての関数fB(x,y)として、式(7)のように表される。なお、mおよびnは級数の次数を表し、bmn、bm、bnはフーリエ係数を表す。
【0050】
【数7】
【0051】
(画像において観察される光強度の分布)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置100によって表示される画像において観察される光強度は、以上で説明したディスプレイ110による光強度、およびパララックスバリア120による光強度の重ね合わせである。ここで、重ね合わせによる光強度は、重ね合わせられるそれぞれの光強度を表す関数の積によって表される。従って、画像において観察される光強度の分布は、ディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)と、パララックスバリア120による光強度を表す式(7)の関数fB(x,y)との積として、式(8)のように表される。
【0052】
【数8】
【0053】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルについて説明するための図である。図7を参照すると、周期p、幅wのパルス状の周期構造を有する光強度は、間隔が1/pの離散スペクトルを有する。
【0054】
ここで、パルス状の周期構造を有する関数の離散スペクトルの包絡線は、sinc関数になることが知られている。これを、ディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)に適用すると、式(9)のように、sinc関数の積の形のフーリエ係数を求められる。
【0055】
【数9】
【0056】
また、同様に、パララックスバリア120による光強度を表す式(7)の関数fB(x,y)についても、jを任意の整数として、式(10)のように、sinc関数に係数がかけられた形のフーリエ係数を求められる。
【0057】
【数10】
【0058】
なお、式(10)はwxB≦pxB/N、およびwyB≦pyB/Nの場合に成り立つ式であるが、これ以外の場合であっても、係数部分が変化するだけでsinc関数の積の部分は同じである。
【0059】
[1−3.モアレの発生原因]
図8は、本発明の第1の実施形態に係る光強度分布の周波数スペクトルの重ね合わせについて説明するための図である。図8の上側には、x軸方向について、ディスプレイ110による光強度分布の周波数スペクトルが示され、下側には、パララックスバリア120による光強度分布の周波数スペクトルが示されている。
【0060】
上述のように、パルス状の周期構造を有する光強度分布は、間隔が周期の逆数の離散スペクトルを有する。よって、上側に図示されている、ディスプレイ110による光強度分布は、間隔が1/pxPの離散スペクトルを有する。また、同様に、下側のパララックスバリア120による光強度分布は、間隔が1/pxBの離散スペクトルを有する。
【0061】
ここで、モアレが発生する原因について説明する。モアレは、複数の光強度分布の重ね合わせにおいて、重ね合わせられる光強度分布のそれぞれの周波数成分に、周波数がわずかに異なる周波数成分が含まれている場合に、その周波数成分同士によるビート(うなり)による輝度むらとして発生する。この輝度むらの大きさは、ビートが発生しているそれぞれの周波数成分の振幅(光強度の大きさ)の積に依存する。
【0062】
従って、ビートが発生している周波数成分の振幅(光強度)が大きければ、大きな輝度むらが発生し、強いモアレが観察される。第1の画素ピッチpxP、および第1のバリアピッチpxBの実際の値は、機械的加工精度によっていくらかの誤差を含みうるものであるため、設計上の値によって求めたそれぞれの光強度分布に共通して含まれる周波数成分において、モアレが発生する可能性が高いといえる。
【0063】
x軸方向において、ディスプレイ110およびパララックスバリア120のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分についての条件は、式(3)を利用すると、式(11)のように表される。
【0064】
【数11】
【0065】
本実施形態では、視点数Nは4であるため、4/pxB=3/pxPとなる。よって、図8に示されている例では、上記の条件を満たす場合として、ディスプレイ110による周波数成分の周波数が3/pxPの成分と、パララックスバリア120による周波数成分の周波数が4/pxBの成分、および、ディスプレイ110による周波数成分の周波数が6/pxPの成分と、パララックスバリア120による周波数成分の周波数が8/pxBの成分がある。
【0066】
以上はx軸方向を例にした説明であるが、同様の関係が第2の方向であるy軸方向についても成り立つ。y軸方向において、ディスプレイ110およびパララックスバリア120のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分についての条件は、式(4)を利用すると、式(12)のように表される。
【0067】
【数12】
【0068】
式(11)および式(12)より、観察される画像においてモアレが発生する条件は、sおよびtを任意の整数として、式(13)のように表される。
【0069】
【数13】
【0070】
ただし、本実施形態では、式(12)および式(13)におけるNは、上述の通り4である。
【0071】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る第1および第2の方向であるx軸方向およびy軸方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。図9を参照すると、ディスプレイ110による光強度分布とパララックスバリア120による光強度分布のそれぞれについて、x軸方向とy軸方向の空間周波数の組み合わせがプロットされている。
【0072】
ここで示されている周波数分布は、図8を参照して説明された周波数分布を、x軸方向、y軸方向で組み合わせたものである。よって、x軸方向およびy軸方向について、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分の組み合わせが、ビートが発生する周波数成分の組み合わせとして示されている。ここでは、ディスプレイ110側の光強度分布の周期性と、パララックスバリア120側の光強度分布の周期性とによって、ビート(モアレ)が発生する周波数がxy空間上に等間隔に出現する。
【0073】
[1−4.モアレ低減のための設計]
式(8)において示されているように、画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度と、パララックスバリア120による光強度との積によって表されるため、上記のモアレが発生しうる周波数成分の組み合わせにおいて、いずれかの光強度を0に近づければ、モアレを低減させることが可能である。
【0074】
まず、ディスプレイ110による光強度分布について、式(9)によって示されるフーリエ係数が0になれば、モアレが発生する周波数の光強度(振幅)を0にすることができるため、モアレの発生を防ぐことができる。フーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(14)のように表される。
【0075】
【数14】
【0076】
上記の条件は、式(1)および式(2)より、式(15)のように表される。ただし、第1の画素開口幅wxPは、第1のサブピクセルピッチpxSを超えることはなく、第2の画素開口幅wyPは、第2のサブピクセルピッチpySを超えることはないため、式(14)の条件は、j=1の場合に限定される。
【0077】
【数15】
【0078】
次に、パララックスバリア120による光強度分布について、式(10)によって示されるフーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(16)のように表される。
【0079】
【数16】
【0080】
上記の条件は、式(3)および式(4)より、式(17)のように表される。なお、第1の幅wxBは、第1のバリアピッチpxBを超えることはなく、第2の幅wyBは、第2のバリアピッチpyBを超えることはないため、j=1,2,・・・Nとなる。すなわち、jは視点の数N以下の自然数である。
【0081】
【数17】
【0082】
ディスプレイ110についての式(15)、およびパララックスバリア120についての式(17)によって示される条件を整理すると、表示装置100によって表示される画像において観察されるモアレを低減するためには、以下のいずれかの条件が満たされればよい。
【0083】
(a)・・・第1の幅wxBの第1のサブピクセルピッチpxSに対する比が、N以下の自然数である。
(b)・・・第2の幅wyBの第2のサブピクセルピッチpySに対する比が、N以下の自然数である。
(c)・・・第1の画素開口幅wxPが、第1のサブピクセルピッチpxSに等しい。
(d)・・・第2の画素開口幅wyPが、第2のサブピクセルピッチpySに等しい。
【0084】
実際の表示装置100の設計においては、例えばサブピクセル110S同士の間に駆動回路を設置するスペースが必要であるというような理由のために、上記の条件を厳密に満たすことは難しい。しかし、上記の条件に近づくような設計にすることで、ある程度モアレを低減させることができる。そのような場合には、さらに、上記の(a)〜(d)の条件のうちの複数の条件を満たす形状に近づくような設計にすることで、式(8)に示した4つのフーリエ係数の積がより小さい値になるため、モアレをさらに低減させることができる。
【0085】
<2.第2の実施形態>
次に、図10〜12を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、パララックスバリア120の構成において相違するが、その他の機能構成は第1の実施形態と略同一であるため、詳細説明は省略する。
【0086】
[2−1.表示装置の構成]
図10は、本発明の第2の実施形態に係るディスプレイ110およびパララックスバリア220を視点の側から見た概略的な立面図である。図10を参照すると、ディスプレイ110には、サブピクセル110Sが周期的に配列され、本実施形態では3つのサブピクセル110Sによって画素110Pを構成する。なお、画素に含まれるサブピクセルの数は、複数であればよく、3には限られない。パララックスバリア220には、透過部220Aが周期的に配列される。また、本実施形態では、視点の数Nは4である。
【0087】
透過部220Aは、パララックスバリア220に周期的に配列された、ストライプ状の部分である。第2の実施形態において、パララックスバリア220は、角度θの斜め方向に透過部220Aが配列されている、斜めストライプバリアと呼ばれる種類のバリアである。透過部220Aのバリアピッチについては後述する。
【0088】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る透過部220Aについて説明するための図である。図11を参照すると、透過部220Aは、パララックスバリア220に周期的に配列されている。
【0089】
透過部220Aは、x軸に対して角度θだけ傾いた方向に形成された帯状の開口部である。ここで、透過部220Aが形成されている方向に対して垂直な方向にu軸を設定する。u軸方向の距離uと、x座標およびy座標との関係は、式(18)のように表される。
【0090】
【数18】
【0091】
透過部220Aは、u軸方向に開口幅wuBを有する。また、透過部220Aは、u軸方向にバリアピッチpuBで配列される。以下、パララックスバリア220による光強度分布については、u軸方向について説明する。なお、透過部220Aについて、x軸方向の開口幅wxB、およびx軸方向のバリアピッチpxBを、式(19)のように定義することも可能である。
【0092】
【数19】
【0093】
図示されていないが、同様に、y軸方向の開口幅wyBと、y軸方向のバリアピッチpyBについても、式(20)のように定義できる。
【0094】
【数20】
【0095】
[2−2.画像における光強度分布]
第1の実施形態において図6を参照して説明された、パララックスバリア120による光強度分布と同様に、パララックスバリア220による光強度分布は、u軸方向について、周期puB、幅wuBのパルス状の周期構造を有する。このような周期構造によって観察される光強度は、フーリエ級数を用いて、u軸方向の距離uについての関数fB(u)として、式(21)のように表される。なお、mは級数の次数を表し、bmはフーリエ係数を表す。
【0096】
【数21】
【0097】
本発明の第2の実施形態に係る表示装置100によって表示される画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度、およびパララックスバリア220による光強度の重ね合わせである。ここで、重ね合わせによる光強度は、重ね合わせられるそれぞれの光強度を表す関数の積によって表される。従って、画像において観察される光強度の分布は、第1の実施形態において説明されたディスプレイ110による光強度を表す式(6)の関数fP(x,y)と、パララックスバリア220による光強度を表す式(21)の関数fB(u)との積として、式(22)のように表される。
【0098】
【数22】
【0099】
ここで、パルス状の周期構造を有する関数の離散スペクトルの包絡線は、sinc関数になるため、これをパララックスバリア220による光強度を表す式(21)の関数fB(u)に適用すると、式(23)のように、sinc関数の形のフーリエ係数が求められる。
【0100】
【数23】
【0101】
[2−3.モアレの発生原因]
ここで、パララックスバリア220による光強度分布は、u軸方向について、間隔が1/puBの離散スペクトルを有する。ディスプレイ110による光強度分布との重ねあわせを考えるため、これをx軸方向とy軸方向に分解する。式(19)より、パララックスバリア220のx軸方向の光強度分布は、間隔が1/puBcosθの離散スペクトルを有する。
【0102】
第1の実施形態において図8を参照して説明されたように、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分において、モアレが発生する可能性が高い。x軸方向について、この条件は、式(3)を利用して、式(24)のように表される。
【0103】
【数24】
【0104】
また、y軸方向について、この条件は、式(4)を利用して、式(25)のように表される。
【0105】
【数25】
【0106】
ここで、u軸方向のサブピクセルピッチpuSは、x軸方向の第1のサブピクセルピッチpxS、またはy軸方向の第2のサブピクセルピッチpySを用いて、式(26)のように定義される。
【0107】
【数26】
【0108】
式(26)を用いて、式(24)および式(25)をu軸方向についてまとめると、観察される画像においてモアレが発生する条件は、sを任意の整数として、式(27)のように表される。
【0109】
【数27】
【0110】
ただし、本実施形態では、式(24)、式(25)、および式(27)におけるNは、上述の通り4である。
【0111】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る第1および第2の方向であるx軸方向およびy軸方向の光強度の周波数の組み合わせについて説明するための図である。図12を参照すると、ディスプレイ110による光強度分布とパララックスバリア220による光強度分布のそれぞれについて、x軸方向とy軸方向の空間周波数の組み合わせがプロットされている。
【0112】
ここで示されている周波数分布は、第1の実施形態において図8を参照して説明されたような周波数分布を、式(24)、式(25)、および式(27)より、x軸方向、y軸方向で組み合わせたものである。よって、x軸方向およびy軸方向について、ディスプレイ110およびパララックスバリア220のそれぞれによる光強度分布に共通して含まれる周波数成分の組み合わせが、ビートが発生する周波数成分の組み合わせとして示されている。ここでは、ディスプレイ110側の光強度分布の周期性と、パララックスバリア120側の光強度分布の周期性とによって、ビート(モアレ)が発生する周波数がxy空間上に等間隔に出現する。
【0113】
[2−4.モアレ低減のための設計]
式(22)において示されているように、画像において観察される光強度は、ディスプレイ110による光強度と、パララックスバリア220による光強度との積によって表されるため、上記のモアレが発生しうる周波数成分の組み合わせにおいて、いずれかの光強度を0に近づければ、モアレを低減させることが可能である。
【0114】
パララックスバリア220による光強度分布について、式(23)によって示されるフーリエ係数が0になれば、モアレが発生する周波数の光強度(振幅)を0にすることができるため、モアレの発生を防ぐことができる。フーリエ係数が0になるための条件は、jを任意の整数として式(28)のように表される。
【0115】
【数28】
【0116】
上記の条件は、u軸方向について式(29)のように表される。ただし、幅wuBは、バリアピッチpuBを超えることはないため、j=1,2,・・・Nとなる。すなわち、jは視点の数N以下の自然数である。
【0117】
【数29】
【0118】
ディスプレイ110についての式(15)、およびパララックスバリア220についての式(29)によって示される条件を整理すると、表示装置100によって表示される画像において観察されるモアレを低減するためには、以下のいずれかの条件が満たされればよい。
【0119】
(a)・・・幅wuBの、サブピクセルピッチpuSに対する比が、N以下の自然数である。
(b)・・・第1の画素開口幅wxPが、第1のサブピクセルピッチpxSに等しい。
(c)・・・第2の画素開口幅wyPが、第2のサブピクセルピッチpySに等しい。
【0120】
実際の表示装置100の設計においては、例えばサブピクセル110S同士の間に駆動回路を設置するスペースが必要であるというような理由のために、上記の条件を厳密に満たすことは難しい。しかし、上記の条件に近づくような設計にすることで、ある程度モアレを低減させることができる。そのような場合には、さらに、上記の(a)〜(c)の条件のうちの複数の条件を満たす形状に近づくような設計にすることで、式(22)に示した3つのフーリエ係数の積がより小さい値になるため、モアレをさらに低減させることができる。
【0121】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0122】
100 表示装置
110 ディスプレイ
110S サブピクセル
110P 画素
110A 画素開口部
120,220 パララックスバリア
120A,220A 透過部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブピクセルが画面の第1の方向に第1のサブピクセルピッチで周期的に配列され、複数の前記サブピクセルによって画素が構成され、表示面上に複数の視点画像を表示する表示部と、
透過部が周期的に配列されるバリア部と、
を備え、
前記画素を構成する複数の前記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、前記第1の方向に第1の画素開口幅を有し、
前記第1の画素開口幅は、前記第1のサブピクセルピッチに近づくように設定される表示装置。
【請求項2】
前記バリア部は、前記表示部の前記表示面の前に配置される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
光源をさらに備え、
前記バリア部は、前記光源と前記表示部との間に配置される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の画素開口幅は、前記第1のサブピクセルピッチに一致する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記バリア部は、斜めストライプバリアであり、
前記第1の方向は、前記斜めストライプバリアの開口方向に対して垂直な方向である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素を構成する複数の前記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、前記画面の第2の方向に第2の画素開口幅を有し、
前記サブピクセルは、前記第2の方向に第2のサブピクセルピッチで周期的に配置され、
前記第2の画素開口幅は、前記第2のサブピクセルピッチに近づくように設定される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2の画素開口幅は、前記第2のサブピクセルピッチに一致する、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の方向は、前記画面の水平方向であり、
前記第2の方向は、前記画面の垂直方向であり、
前記バリア部は、階段状に前記透過部が配置されたステップバリアである、
請求項6または7に記載の表示装置。
【請求項1】
サブピクセルが画面の第1の方向に第1のサブピクセルピッチで周期的に配列され、複数の前記サブピクセルによって画素が構成され、表示面上に複数の視点画像を表示する表示部と、
透過部が周期的に配列されるバリア部と、
を備え、
前記画素を構成する複数の前記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、前記第1の方向に第1の画素開口幅を有し、
前記第1の画素開口幅は、前記第1のサブピクセルピッチに近づくように設定される表示装置。
【請求項2】
前記バリア部は、前記表示部の前記表示面の前に配置される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
光源をさらに備え、
前記バリア部は、前記光源と前記表示部との間に配置される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の画素開口幅は、前記第1のサブピクセルピッチに一致する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記バリア部は、斜めストライプバリアであり、
前記第1の方向は、前記斜めストライプバリアの開口方向に対して垂直な方向である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素を構成する複数の前記サブピクセルのいずれか1つの開口部である画素開口部は、前記画面の第2の方向に第2の画素開口幅を有し、
前記サブピクセルは、前記第2の方向に第2のサブピクセルピッチで周期的に配置され、
前記第2の画素開口幅は、前記第2のサブピクセルピッチに近づくように設定される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2の画素開口幅は、前記第2のサブピクセルピッチに一致する、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の方向は、前記画面の水平方向であり、
前記第2の方向は、前記画面の垂直方向であり、
前記バリア部は、階段状に前記透過部が配置されたステップバリアである、
請求項6または7に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−53345(P2012−53345A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196819(P2010−196819)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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