説明

表示装置

【課題】フレキシブル配線基板の破断を抑制し、信頼性の向上した表示装置を提供する。
【解決手段】下部基板11の配線領域13にはフレキシブル配線基板17が配設され、このフレキシブル配線基板17と電極14とがACF19を介して電気的に接続されている。フレキシブル配線基板17の表面にフレキシブル配線基板17を間にしてACF19を覆うように補強材15が設けられている。これによりフレキシブル配線基板17の曲げを小さくし、破断を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板が接続された表示セルを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶表示装置等の表示装置は、表示セルの駆動のためにフレキシブル配線基板などの配線基板が使用されており(例えば、特許文献1)、近年の表示装置の高精細化に伴い、この配線基板の配線も微細化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−122078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような配線基板の配線が微細化すると配線幅が細くなり、破断のリスクが高まる。配線基板の破断は、表示セル駆動時の温度上昇により、配線基板の接続部に局所的に発生する曲げ応力が原因で生じる。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、配線基板の破断を抑制し、信頼性の向上した表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、対向配置された第1基板および第2基板を有し、第2基板に
第1基板より幅広の配線領域を有する表示セルと、裏面側の少なくとも一部が配線領域に対向するように配置された配線基板と、配線基板と表示セルとを電気的に接続する圧着材と、少なくとも配線基板の表面に設けられ、配線基板を間にして圧着材を覆う補強材とを備えたものである。
【0007】
この表示装置では、配線基板の表面の補強材が圧着材を覆うように設けられている
ため、配線基板での曲げの発生、延いては配線基板の破断が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置によれば、補強材を配線基板の表面に設け、この補強材が配線基
板を間にして圧着材を覆うようにしたので、配線基板に生じる曲げを小さくし、配線基板の破断を抑制することができる。よって、表示装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す側断面図である。
【図2】図1に示した表示装置の構成を表す平面図である。
【図3】図1に示した表示装置の構成を表す斜視図である。
【図4】配線基板において破断が生じる原因を説明するための模式図である。
【図5】図1に示した表示装置において補強材の濡れ性が高い場合の側断面図である。
【図6】変形例1に係る表示装置の構成を表す側断面図である。
【図7】変形例2に係る表示装置の構成を表す側断面図である。
【図8】従来の表示装置の構成を表す側断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を表す側断面図である。
【図10】図9に示した表示装置において補強材の濡れ性が高い場合の側断面図である。
【図11】図9に示した表示装置が防湿材を有する場合の側断面図である。
【図12】図9に示した表示装置が防湿材を有し、かつ補強材の濡れ性が高い場合の側断面図である。
【図13】図9に示した表示装置の他の例を説明するための図である。
【図14】図9に示した表示装置の更に他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明
は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
配線基板の表面に補強材を有する表示装置
2.変形例1
配線基板の保護材と圧着材との間に間隙を有する表示装置
3.変形例2
防湿材を有する表示装置
4.第2の実施の形態
前面板を有する表示装置
【0011】
<第1の実施の形態>
[表示装置1の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置1の概略構成を示す要部側断面
図である。図2は表示装置1の構成を表す平面図、図3(A)は表示装置1の構成を表す斜視図、図3(B)は図3(A)のフレキシブル配線基板17(配線基板)による表示セル10と取付基板40との接続部分を拡大した図である。
【0012】
図3に示したように表示装置1は表示セル10を有しており、この表示セル10の裏面側(背面側)にはバックライトユニット30が配置されている。表示セル10には、配線基板、例えばフレキシブル配線基板17の一端側が接続されている。更に、このフレキシブル配線基板17の他端は取付基板40に接続されている。例えばこのフレキシブル配線基板17に実装されたデータドライバIC(Integrated Circuit)(図示せず)および別のフレキシブル配線基板(図示せず)に実装されたゲートドライバIC(図示せず)から供給される信号により表示セル10が駆動され、映像表示を行うようになっている。なお、これらデータドライバICおよびゲートドライバICの実装位置は上記構成に限定されるものではなく、表示セル10上に実装するようにしてもよく、また、表示セル10内に該当する機能を持たせるようにしてもよい。
【0013】
(表示セル)
図1に示したように表示セル10は、裏面側(背面側)の下部基板11(第2基板)と表面側(表示側)の上部基板12(第1基板)とを対向配置したものであり、これら下部基板11と上部基板12との間に液晶層(図示せず)を備えている。下部基板11の面積は上部基板12より大きくなっており、この下部基板11の拡幅領域が配線領域13となっている。この配線領域13は下部基板11の一カ所でもよいが、複数箇所に設けられていてもよい。配線領域13は例えば約2mmの幅を有している。配線領域13には電極14が設けられており、この電極14に対してフレキシブル配線基板17がACF(Anisotropic Conductive Film;異方性導電膜)19(圧着材)を介して電気的に接続されている。フレキシブル配線基板17を通じて供給される信号が、この電極14を通じ各画素に供給されるようになっている。ACF19は例えば100μmの厚さで形成される。下部基板11の裏面側および上部基板12の表面側には偏光板(図示せず)が貼り合わされている。
【0014】
下部基板11および上部基板12は、例えばガラス基板やアクリル板等の透明な基板からなる。ガラス基板の表面にはアルカリイオンの浸透を防止するために保護膜を設けてもよい。上部基板12の裏面側、即ち下部基板11との対向面には、例えばカラーフィルタおよびブラックマトリックスが形成されている(図示せず)。カラーフィルタおよびブラックマトリックスは下部基板11に形成してもよい。
【0015】
(フレキシブル配線基板)
フレキシブル配線基板17は、裏面側の一部が下部基板11と対向するように配置
されている。フレキシブル配線基板17は、フレキシブルなフィルム基材の裏面(下部基板11との対向面)に配線パターンとしての例えばCu(銅)箔が形成され、例えばデータドライバIC(図示せず)が実装されている(COF(Chip on film))。フレキシブル配線基板17の厚みは例えば37.5μm程度である。
【0016】
フレキシブル配線基板17の配線パターンはソルダーレジスト20(保護材)によ
り保護されている。表示セル10と取付基板40との接続のため、ソルダーレジスト20は、フレキシブル配線基板17の両末端部分を露出させるように設けられている。フレキシブル配線基板17の裏面では、ソルダーレジスト20とACF19とが一部重なっている。即ち、フレキシブル配線基板17の裏面はソルダーレジスト20とACF19との間に間隙がない状態となっている。
【0017】
(補強材)
補強材15は、図1に示したようにフレキシブル配線基板17の表面に、フレキシブル配線基板17を間にしてACF19を覆う状態で設けられている。この補強材15は例えば20〜500μm程度の厚さでフレキシブル配線基板17に塗布される。後述のように、補強材15は、フレキシブル配線基板17の表面に滴下して形成するため、フレキシブル配線基板17の表面からフレキシブル配線基板17の側面を介して下部基板11の配線領域13の一部まで連続して設けられる。換言すれば、補強材15はフレキシブル配線基板17の表面に設けられると共に、フレキシブル配線基板17,下部基板11,上部基板12およびACF19により形成された間隙を埋めるように設けられている。
【0018】
ここで、図4を用いてフレキシブル配線基板117に破断が生じる原因について説明する。図4(A)は表示セル110とフレキシブル配線基板117との接続部分の平面図、図4(B)は表示セル110とフレキシブル配線基板117との接続部分の側面図である。なお、図4では表示装置1に対応する部位に100番台の符号を付す。
【0019】
表示セル110を駆動すると、駆動時の温度上昇により表示セル110を構成する
各部材,フレキシブル配線基板117および取付基板140(図示せず)に熱膨張が生じる。各部位の熱膨張係数の違い等に由来する熱膨張量の差から、図4(A)および図4(B)に示したように下部基板111,フレキシブル配線基板117および取付基板140(図示せず)の位置関係が変化し、ACF119によるフレキシブル配線基板117の圧着部に局所的な曲げが生じる。そして、表示セル110の駆動サイクルに伴う加熱および冷却の繰り返しにより局所的な応力集中が生じ、フレキシブル配線基板117の配線パターンに疲労が蓄積する。この疲労の蓄積により破断に至る。
【0020】
一般的に弾性率が高いほどたわみにくく、また、同じ弾性率であるなら厚みの大き
いものほどたわみにくいことが知られている。フレキシブル配線基板のベースフィルムや金属薄膜の膜厚を厚くすることによりフレキシブル配線基板の強度を高め、破断を防止することは可能であるが、この手法ではコスト増となる。
【0021】
上述のように、フレキシブル配線基板17で最も応力が集中するのは、ACF19
により圧着され、フレキシブル配線基板17が固定されている部分である。本実施の形態では、フレキシブル配線基板17の表面にACF19を覆うように補強材15を設けることにより、フレキシブル配線基板17の弾性率を変化させ曲率を緩和させる。即ち、フレキシブル配線基板17に生じる曲げの変位量を小さくし、破断を抑制することができる。
【0022】
補強材15としては例えば安価な樹脂材料を用いることができ、コスト増を抑制しつつフレキシブル配線基板17の破断を防止することができる。補強材15に使用する樹脂材料は、紫外線硬化性樹脂でもよく、可視光硬化樹脂でもよい。光硬化性樹脂であれば、フレキシブル配線基板17の表面に広範囲にわたり形成された樹脂組成物を短時間で硬化することができる。
【0023】
補強材15は、アクリレート系樹脂,エポキシ系樹脂あるいはシリコン樹脂を含むことが好ましく、これらを混合して使用してもよい。
【0024】
上記のような補強材15として例えば、ポリマー,モノマーおよび光重合開始剤か
らなる樹脂材料を用いることができる。ポリマーとしては、例えばポリウレタンアクリレート,テルペン系水素添加樹脂,ブタジエン重合体,ポリイソプレン系アクリレートおよびそのエステル化合物等からなる群のうちの1種以上、モノマーとしては、例えばイソボルニルアクリレート,ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシブチルメタクリレート等からなる群のうちの1種以上、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名 IRGACURE184:イルガキュア184(商標),チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)または2, 2−ジメトキシ−1, 2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名 IRGACURE651:イルガキュア651(商標),チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を含有する。樹脂材料をこのような構成にすることにより、紫外線照射で補強材15が形成される。また、光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名 IRGACURE369:イルガキュア369(商標),チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製),ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(商品名 IRGACURE819:イルガキュア819(商標),チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)またはジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名 SpeedCureTPO(商標),日本シイベルヘグナー(株)製)を用いると、可視光領域の光照射でも硬化を行うことができる。
【0025】
また、補強材15に熱硬化性樹脂を使用してもよい。熱硬化性樹脂を用いると、例
えば光照射により硬化させる樹脂では、遮光される部分が存在する場合であっても均一に硬化を行うことができる。
【0026】
補強材15に、熱硬化性樹脂として例えばエスドリマー/ESDRIMER(商
標),新日鉄化学(株)製を用いることができる。光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを適宜混合して用いてもよい。なお、エスドリマー/ESDRIMER(商標)(新日鉄化学 (株)製)も光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合したものである。
【0027】
補強材15を構成する樹脂組成物は濡れ性が高いことが好ましい。図5に補強材1
5を濡れ性の高い樹脂組成物により構成した場合の表示装置1の側断面図を示した。補強材15が樹脂材料からなるとき、フレキシブル配線基板17の表面に塗布された樹脂組成物はその濡れ性によりフレキシブル配線基板17に拡散していく。補強材15を構成する樹脂組成物の濡れ性が高ければ、塗布量および塗布位置が容易に制御でき、フレキシブル配線基板17の表面を広範囲に亘り覆うことが可能となる。
【0028】
また、補強材15に使用する樹脂材料の濡れ性があまり高くない場合であっても、
フレキシブル配線基板17の表面に界面活性剤等で表面処理を施すことにより、補強材15をフレキシブル配線基板17に広範囲に亘り設けることができる。
【0029】
他、防湿性接合剤15としては、以下の条件を備えていることが好ましい。
【0030】
フレキシブル配線基板17に曲げ等が生じた場合に、補強材15がフレキシブル配
線基板17から簡単に剥がれることのないよう補強材15はフレキシブル配線基板17の基材に対して高い親和性を有することが好ましい。また、補強材15の弾性が低いと、フレキシブル配線基板17の曲げにより補強材15が割れる虞があるため、補強材15はフレキシブル配線基板17の曲げに耐えうる弾性を有することが好ましい。
【0031】
補強材15は金属腐食性がないか、または低いものを用いる。フレキシブル配線基板17の周辺部には金属配線が多数存在するため、この金属配線が腐食して接触不良となることを防ぐためである。侵食度が0.03mm/yr以下の補強材15を用いることが好ましい。
【0032】
補強材15の熱伝導率が低いと補強材15で覆われたフレキシブル配線基板17の
熱分布が不均一となり、フレキシブル配線基板17にたわみやねじれが生じる虞がある。フレキシブル配線基板17のストレスを軽減するために補強材15の熱伝導率は高いことが好ましい。具体的には空気の熱伝導率0.0241/(m・K)よりも高いことが好ましい。補強材15の熱伝導率が空気よりも高い場合には,フレキシブル配線基板17に実装されたドライバIC(図示せず)の放熱効果を高めることも可能となる。更に、ACF19との圧着は熱により行う場合が多いため、補強材15の熱伝導率が高ければ、フレキシブル配線基板17の剥がれを防止することもできる。
【0033】
補強材15の熱膨張係数とフレキシブル配線基板17の基材の熱膨張係数との差が
大きい場合には、熱膨張量の差によりフレキシブル配線基板17にたわみやねじれが生じる虞がある。これを抑制するため、反り量C(下記数式(1))がフレキシブル配線基板17の有効長の5%以下であることが好ましい。なお、フレキシブル配線基板17の有効長とは、フレキシブル配線基板17の全長から、表示セル10との圧着部分(ACF19の設けられた部分)および取付基板40との圧着部分を除いた長さ、またはフレキシブル配線基板17の全幅のいずれかのうち短い方の長さのことをいう。なお、数式(1)においてE1はフレキシブル基板17のヤング率,E2は補強材15のヤング率,α1はフレキシブル基板17の熱膨張係数,α2は補強材15の熱膨張係数,ΔTは表示装置1を使用する際の最高温度と室温の差,hは補強材15の平均の厚さとフレキシブル基板17の平均の厚さの和,Lはフレキシブル基板17の有効長のうち、補強材15と重なる部分の長さである。
【数1】

【0034】
[表示装置1の製造方法]
上記のような表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0035】
まず、表示セル10を作製する。配線領域13に電極14が設けられた下部基板11と、カラーフィルタ(図示せず)を有する上部基板12とにより液晶層(図示せず)をシール剤で封止する。その後、上部基板12の表面側および下部基板11の裏面側の面に、偏光板(図示せず)を貼り合わせる。
【0036】
次いで、端部を除き配線パターンがソルダーレジスト20で保護されたフレキシブ
ル配線基板17と配線領域13の電極14との間にACF19を配置し、熱圧着により電極14とフレキシブル配線基板17との電気的な接続を行う。
【0037】
補強材15は、例えば光硬化性樹脂組成物からなる。光硬化性樹脂組成物は、例え
ばポリウレタンアクリレートやイソボルニルアクリレート等の光反応性アクリレート材料と、光重合開始剤とを主剤として、その他、増感剤,可塑剤,透明粒子等の添加剤を加えて調製する。
【0038】
光硬化性樹脂組成物を調製した後、上述のように表示セル10に接続したフレキシ
ブル配線基板17の表面に光硬化性樹脂組成物を所定量滴下する。ACF19により表示セル10に接続されている端部の近傍に光硬化性樹脂組成物を滴下することにより、光樹脂組成物がフレキシブル配線基板17の表面およびフレキシブル配線基板17の側面を介し配線領域13に設けられる。このとき光樹脂組成物がフレキシブル配線基板17を間にしてACF19を覆うように滴下量を調整する。
【0039】
次いで、この光樹脂組成物に対し、紫外線または可視光を照射して樹脂組成物を硬化させる。紫外線または可視光は、使用する光重合開始剤に応じて選択する。これにより補強材15が形成される。
【0040】
最後に、上記のようにして作製した表示セル10を、バックライトユニット30と
共に外装部材(図示せず)内に設置することにより、表示装置1が完成する。
【0041】
[表示装置1の作用・効果]
この表示装置1では、バックライトユニット30からの光は表示セル10に入射する。入射光は、フレキシブル配線基板17を通じて電極14に供給される信号に基づいて、画素毎に変調されつつ液晶層を透過する。液晶層を透過した光は、カラーフィルタ(図示せず)を有する上部基板12を通過することにより、カラーの表示光として上部基板12の外側へ取り出される。
【0042】
本実施の形態の表示装置1では、フレキシブル配線基板17の表面に、ACF19
を覆う形状で補強材15を設けるようにしたので、フレキシブル配線基板17に生じる曲げを小さくし、フレキシブル配線基板17の破断を抑制することができる。よって、表示装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0043】
<実施例>
次に、本発明の表示装置1についての具体的な実施例を挙げて説明する。
【0044】
(実施例)
実施例として、補強材15にポリイミド樹脂を使用した。これをフレキシブル配線
基板17の表面にACF19を覆うよう約20μmの厚さで設け、表示装置1を作製した。このフレキシブル配線基板17を90度屈曲させ、±0.2mmのねじれの振幅を変化量として与えた。
【0045】
(比較例)
比較例として、フレキシブル配線基板17に補強材15を設けずに、表示装置を作
製した。このフレキシブル配線基板17を90度屈曲させ、±0.2mmのねじれの振幅を変化量として与えた。
【0046】
このようにして、フレキシブル配線基板17の配線パターンが破断に至るまでの振
幅回数を計測した。その結果、補強材15を設けない比較例では約3, 500回であったのに対し、実施例では約10, 000回であった。この結果より、補強材15をフレキシブル配線基板17の表面に設けることにより、破断が抑制されることが確認できた。
【0047】
<変形例1>
図6は上記実施の形態の変形例1に係る表示装置1Aの側断面図を表したものであ
る。この表示装置1Aでは、フレキシブル配線基板17の裏面のACF19とソルダーレジスト20との間に間隙17Bが設けられている。また、フレキシブル配線基板17は、フレキシブル配線基板17を間にして表面の補強材15が設けられた領域と裏面のソルダーレジスト20が設けられた領域とが重なる重複領域17Aを有している。重複領域17Aの長さは例えば約300μm程度である。その点を除き、表示装置1Aは上記実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0048】
フレキシブル配線基板17において、ACF19とソルダーレジスト20との間に間隙17Bが存在すると、間隙17Bの部分に応力が集中しやすい。これに対して、表示装置1Aでは、フレキシブル配線基板17を間にして補強材15が設けられた部分とソルダーレジスト20が設けられた部分とが重なる重複領域17Aを有する。即ち、最も応力の集中しやすいフレキシブル配線基板17の裏面の間隙17Bの部分を、表面から補強材15が覆っているため、フレキシブル配線基板17に生じる曲げを小さくし、フレキシブル配線基板17の破断を抑制することができる。
【0049】
この表示装置1Aは、例えば補強材15として樹脂組成物を用いた場合には、フレキシブル配線基板17に滴下する樹脂組成物の量を増やすことで、上記実施の形態の表示装置1と同様にして作製することができる。
【0050】
<変形例2>
図7は上記実施の形態の変形例2に係る表示装置1Bの側断面図を表したものである。この表示装置1Bでは、上部基板12の側面から下部基板11の配線領域13にかけて防湿材18が設けられている。補強材15はフレキシブル配線基板17の表面と共に、この防湿材18を覆うように形成されている。その点を除き、表示装置1Bは上記実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0051】
液晶表示セルのような表示セルでは液晶層の劣化を防ぐため防湿処理が必要となる。
図8は、防湿材118を有する従来の表示装置100の側面図である。液晶表示セルでは、図8に示したように上部基板12と下部基板11との間の液晶層に水分が入らないよう上部基板12と下部基板11との間に防湿材118が設けられる場合が多い。また、ACF119によるフレキシブル配線基板117と表示セル110との接続部に水分が浸入しないよう、この接続部に防湿材118が設けられる場合もある。
【0052】
図7に示したように、防湿材18が表示セル10に設けられていても、防湿材18
の上から補強材15をACF19を覆うようにフレキシブル配線基板17の表面に設け、フレキシブル配線基板17の破断を抑制することができる。
【0053】
表示装置1Bは、上記実施の表示装置1と同様にして作製することができる。よっ
て、防湿材18が必要とされる部分に補強材15を設けることは容易であり、補強材15が防湿性であれば防湿材18を設けることなく表示装置1Bを作製することができる。即ち、製造工程を簡略化することが可能となる。例えば、吸水率が10%以下の補強材15を用いることで、このような製造工程の簡略化を実現できる。
【0054】
<第2の実施の形態>
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置2の側面図である。この表示装置2は、上部基板12の表面に前面板16を有し、また、補強材15は上部基板12の表面側から上部基板12の側面を介してフレキシブル配線基板17の表面まで連続して設けられている。この点において、表示装置2は上記第1の実施の形態の表示装置1と異なる。なお、本実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した表示装置1と前面板16を有する点において異なるものの、その他の各部の機能および構成材料は同様であるため、便宜上同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
前面板16は、補強材15により上部基板12に固定されている。前面板16は、
表示セル10の表面保護,意匠性や機能性向上を目的として設けられるものであり、例えばカバー基板(化粧板)やタッチパネル等である。前面板16は例えばガラス基板やアクリル板等の透明な基板からなり、表面または裏面に、反射防止膜,遮光膜または視野角制御膜等の光学層を設けてもよい。
【0056】
補強材15は、上部基板12の表面から上部基板12の側面を介してフレキシブル
配線基板17の表面まで設けられており、フレキシブル配線基板17の破断を抑制すると共に、前面板16を表示セル10に固定する。即ち、補強材15は、フレキシブル配線基板17を補強する補強材としての機能と前面板16を表示セル10に固定する接着材としての機能を有する。これにより、前面板16を備えた表示装置2において、製造工程および用いる材料の種類を増やすことなくフレキシブル配線基板17の破断を抑制し、表示装置2の信頼性を向上させることができる。なお、図9では、上部基板12の表面からフレキシブル配線基板17の表面まで補強材15が連続して設けられているが、前面板16の表示セル10への固定およびフレキシブル配線基板17の補強を行うことができれば、途中が途切れていてもよい。
【0057】
補強材15は、前面板16を接着するため、前面板16の構成材料に対して高い密
着性を有することが好ましい。
【0058】
また、表示装置2では上部基板12の表示領域に補強材15が存在することとなるため、補強材15は透明であるか、高い透過性を有することが好ましい。
【0059】
補強材15は、例えば樹脂材料からなるが、上記第1の実施の形態と同様に補強材
15を構成する樹脂組成物は濡れ性が高いことが好ましい。図10に補強材15を濡れ性の高い樹脂組成物により構成した場合の表示装置2の側断面図を示した。
【0060】
図11は表示装置2が防湿材18を備えた場合の側断面図を表すものである。防湿
材18が存在する場合であっても、フレキシブル配線基板17の表面および上部基板12と前面板16と間に補強材15を設けることで、フレキシブル配線基板17の破断を抑制すると共に、表示セル10に前面板16を固定することができる。図12には防湿材18を有し、補強材15が濡れ性の高い樹脂材料からなる場合の表示装置2の側断面図を示した。上記変形例2で説明したように、補強材15に防湿性のものを用いることにより、防湿材18を設けず表示装置2を作製することができる。
【0061】
上記のような表示装置2は例えば次のようにして製造することができる。
【0062】
まず、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様にして表示セル10を作製し、フレキシブル配線基板17を表示セル10に接続する。
【0063】
補強材15は、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様に例えば光硬化性樹脂組
成物からなる。光硬化性樹脂組成物を調製した後、上記のように作製した表示セル10の上部基板12の表面に光硬化性樹脂組成物を所定量滴下する。滴下のほか、印刷法を用いてもよい。前面板16をこの表示セル10に対し水平に保持した状態で下降させ、位置決め昇降機構によって前面板16を所定の位置に固定する。ここで用いる光硬化性樹脂組成物の量を、前面板16と表示セル10との接合のみ行う場合よりも僅かに多くすることで、光硬化性樹脂組成物は前面板16と表示セル10との接触面から上部基板12の側面をつたって、フレキシブル配線基板17の表面にまで到達する。
【0064】
この上部基板12と前面板16との間およびフレキシブル配線基板17の表面に設けられた樹脂組成物に対し、紫外線または可視光を照射して樹脂組成物を硬化させる。紫外線または可視光は、使用する光重合開始剤に応じて選択する。例えば光照射と同時に光ファイバー等を用いて、上部基板12と前面板16との間およびフレキシブル配線基板17の表面に設けられた樹脂組成物の外方側面側から光を直接照射してもよい。
【0065】
最後に、上記のようにして前面板16を備えた表示セル10を、バックライトユニ
ット30と共に、外装部材(図示せず)内に設置することにより、表示装置2が完成する。
【0066】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の
形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、第2の実施の形態では補強材15が、前面板16を表示セル10に固定する機能およびフレキシブル配線基板17の破断を抑制する機能の両方を備えた場合を例示したが、図13に示したように前面板16を接着材21により表示セル10に固定した後、補強材15をフレキシブル配線基板17の表面に設けてもよい。この場合、補強材15は、上部基板12の厚みを大きく超えない程度の厚さで形成することが好ましい。更に、図14に示したように、補強材15をフレキシブル配線基板17の表面に設けた後、接着材21により前面板16を表示セル10に固定してもよい。このような場合では、用いる材料の種類および製造工程は増加するものの、補強材15に使用する材料の選択の幅を広げることができる。また、補強材15により接着材21とフレキシブル配線基板17との密着性および濡れ性を補うことも可能となる。
【0067】
また、例えば上記実施の形態等では、上部基板12と下部基板11との間に液晶層を設けた液晶表示装置を例示したが、配線部分の構成が同様であればプラズマ表示装置や有機電界発光表示装置等でもよい。なお、図7,図9〜図14ではACF19とソルダーレジスト20との間に間隙17Bを有する場合を示したが、図1のように間隙17Bのない場合についても適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1B,2…表示装置、10…表示セル、11…下部基板、12…上部基板、14…電極、15…補強材、16…前面板、17…フレキシブル配線基板、19…ACF、20…ソルダーレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板および第2基板を有し、前記第2基板に前記第1基板より
幅広の配線領域を有する表示セルと、
裏面側の少なくとも一部が前記配線領域に対向するように配置された配線基板と、
前記配線基板と前記表示セルとを電気的に接続する圧着材と、
少なくとも前記配線基板の表面に設けられ、前記配線基板を間にして前記圧着材を
覆う補強材と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記補強材は、前記配線基板の表面から前記第配線基板の側面を介して前記配線領域の少なくとも一部まで連続して設けられている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記配線基板の裏面に保護材が設けられ、
前記配線基板を間にして、前記補強材が設けられた領域と前記保護材が設けられた領域との少なくとも一部が重なる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1基板の表面側に前面板を有し、
前記第1基板と前記前面板との間に設けられた接着材と前記補強材とが同一材料から構成されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記補強材は、前記配線基板の表面から前記第1基板の側面を介し前記第1基板の
表面まで連続して設けられている
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記配線領域に防湿材を有し、
前記補強材は、前記防湿材を覆っている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記配線基板はフレキシブル配線基板である
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−83492(P2012−83492A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228935(P2010−228935)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】