表示装置
【課題】接触検出時の周波数を上げることなく検出速度を向上させる。
【解決手段】タッチパネル10は、接触に応答して電気的変化を発生する駆動電極E1と検出電極E2を含む接触応答部と、接触駆動走査部11とを有する。接触駆動走査部11は、駆動電極E1への駆動電圧の印加を検出面13A内の一方向内で走査して、電気的変化の検出電極E2からの出力を時系列に制御する。このとき接触駆動走査部11は、タッチパネル10の異なる領域に対し、駆動信号源Sと反転駆動信号源Sxとで複数の走査を並列に実行する。
【解決手段】タッチパネル10は、接触に応答して電気的変化を発生する駆動電極E1と検出電極E2を含む接触応答部と、接触駆動走査部11とを有する。接触駆動走査部11は、駆動電極E1への駆動電圧の印加を検出面13A内の一方向内で走査して、電気的変化の検出電極E2からの出力を時系列に制御する。このとき接触駆動走査部11は、タッチパネル10の異なる領域に対し、駆動信号源Sと反転駆動信号源Sxとで複数の走査を並列に実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ユーザが指やペン等を検出面に接触または近接させることを検出する接触検出装置の機能を表示部内にもつ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるタッチパネルと呼ばれる接触検出装置が知られている。
一般に、接触検出装置は、検出面に対しユーザの指やペン等が接触し、あるいは、近接したことを検出する装置である。
【0003】
これに対しタッチパネルは、表示パネルに重ねて形成し、表示面に画像として各種のボタンを表示させることにより、通常のボタンの代わりとして情報入力を可能とする。この技術を小型のモバイル機器に適用すると、ディスプレイとボタンの配置の共用化が可能で画面の大型化、あるいは、操作部の省スペース化や部品点数の削減という大きなメリットをもたらす。
【0004】
このように"タッチパネル"というとき、一般には、表示装置と組み合わされるパネル状の接触検出装置を指す。
タッチパネルの接触検出方式は、光学式、抵抗膜式、静電容量式の3つが知られている。
【0005】
一方、接触や近接に応じて生じる電気的変化を位置情報に対応させるためには、位置特定が可能に組み合わされてマトリクス配置された多数の配線が必要となる。
この配線の組み合わせによる位置検出の仕方で、検出の解像度を上げるためには配線数が膨大となる。
【0006】
このため、上記3つの検出方式では、電気的変化を出力するラインを一方向に走査しながら接触位置または近接位置を検出する駆動法が主流となってきている(例えば非特許文献1(光学式)、非特許文献2(抵抗膜式)、非特許文献3(静電容量式)参照)。ここでラインとは、接触検出のために所定の規則で2次元配置された微小なセンサ部のX方向またはY方向の並びをいう。
【0007】
ところで、タッチパネルを表示パネル上に重ねて設けると、表示モジュール全体の厚さが厚くなる。
そこで、近年、タッチパネルは表示パネル上に重ねて取り付けられるものから、表示パネル内に内蔵されるものへと開発されるタイプの主流が推移している(上記非特許文献1〜3、特許文献1参照)。
【0008】
以下、タッチパネルが表示パネル上に重ねて取り付けられるか、表示パネルと一体に形成されるかを問わない呼び方として、"タッチセンサ付き表示装置"を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−9750号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hirotaka Hayashi etc., "Optical Sensor Embedded Input Display Usable under High-Ambient-Light Conditions", SID 07 DIGEST p1105.
【非特許文献2】Bong Hyun Youetc., "12.1-inch a-Si:H TFT LCD with Embedded Touch Screen Panel", SID 08 DIGEST p830.
【非特許文献3】Joohyung Lee etc., "Hybrid Touch Screen Panel Integrated in TFT-LCD", SID 08 DIGEST p834.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
接触検出装置をラインごとに駆動する駆動法は、Y軸方向とX軸方向の片方または両方に沿ったラインを高速に走査する必要がある。このため、接触検出装置においては、駆動周波数等が非常に高く消費電力等が非常に大きいという改善点がある。
【0012】
一方、特に、表示装置と接触検出装置が組み合わされる、タッチセンサ付きの表示装置では、検出駆動の周波数が表示駆動の周波数によって制約され、自由に検出駆動周波数を決めることができない場合がある。
【0013】
本願の技術者は液晶表示のための画素電極を容量検出方式の一方の検出電極と兼用させることで、表示装置の薄型化を図る技術を提案している(例えば、特願2008−104079号参照)。この場合、表示駆動周波数と検出駆動周波数とが構造上の理由から、一致する。
【0014】
しかし、この技術の場合、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いので検出駆動周波数を上げようとしても、表示駆動周波数の制約から、自由に検出駆動周波数を変えることができないという不都合がある。
【0015】
本技術は、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いとき、あるいは、その逆のときに表示駆動に可能な限り制約されないで検出駆動周波数を任意に決めることができる構造の、接触検出機能付きの表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本技術に関わる表示装置は、表示部と、表示駆動走査部と、接触応答部と、接触駆動走査部とを有する。表示部は、映像信号が供給される画素電極が形成された第一の基板と、駆動信号が供給される対向電極と、第一の基板に対向する第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、を備え、入力される映像信号に応じて液晶層が透過光量を光変調し、変調後の光を表示面から出力する。表示駆動走査部は、表示部がもつ光変調の最小単位である画素の一方向の並びをラインとしたときに、当該ラインごとに光変調の駆動電圧を印加する動作をラインと直交する他方向に走査する。接触応答部は、被検出物が表示面に接触または近接することに応答して電気的変化を発生する。接触駆動走査部は、接触応答部への駆動電圧の印加を表示面内の一方向内で走査して、電気的変化の出力を時系列に制御する。また、接触駆動走査部は、接触応答部の異なる領域に対する複数の走査を並列に実行し、複数の電気的変化を並列に出力し、対向電極は、表示部の画素のラインごとに光変調の駆動電圧を印加するとともに接触応答部への駆動電圧を印加する。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いとき、あるいは、その逆のときに表示駆動に可能な限り制約されないで検出駆動周波数を任意に決めることができる構造の、接触検出機能付きの表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1〜第6実施形態に関わるタッチセンサ部の動作を説明するための等価回路図と概略断面図である。
【図2】図1に示すタッチセンサ部に指が接触または接近した場合の、同等価回路図と同概略断面図である。
【図3】第1〜第6実施形態に関わるタッチセンサ部の入出力波形を示す図である。
【図4】第1実施形態に関わる表示装置のタッチ検出のための電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図と概略断面図である。
【図5】第1〜第6実施形態に関わる表示装置において、センサ駆動のための交流信号源と電圧検出器の回路例を示すための図である。
【図6】第1実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図7】第2実施形態における異なる振幅での駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図8】第2実施形態における、さらに駆動電圧の振幅の大きさの種類を増やした場合の図である。
【図9】図8の応答波形の電位レベルを詳しく示す図である。
【図10】第3実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図11】第3実施形態における同相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図12】第4実施形態における検出線と検出回路の配置を示す図である。
【図13】第5および第6実施形態に関わる表示装置の画素の等価回路図である。
【図14】第5実施形態に関わる表示装置のタッチ検出のための電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図と概略断面図である。
【図15】第5実施形態に関わる対向電極のパターンと、当該パターンも含めたタッチセンサ部の等価回路図ならびにセンサ電圧の式を示す図である。
【図16】第5実施形態に関わる対向電極の選択(同時に交流駆動する電極グループの決定)と、そのシフト(再選択)の様子を示す平面図である。
【図17】第6実施形態に関わる表示装置の概略断面図である。
【図18】第6実施形態に関わるFFSモード液晶素子の動作説明図である。
【図19】図18の動作を断面図において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術の実施形態を、静電容量式の接触検出装置、および、当該接触検出の機能をもつ液晶表示装置を主な例として図面を参照して説明する。なお、抵抗膜式や光学式にも本技術は適用可能である。また、ここでは液晶表示装置を例とするが、有機EL表示装置などの他の表示装置に対しても本技術は適用可能である。
【0020】
最初に、実施形態で前提となる事項として、図1〜図3を参照して、静電容量式接触検出の基本を説明する。
図1(A)と図2(A)はタッチセンサ部の等価回路図、図1(B)と図2(B)はタッチセンサ部の構造図(概略断面図)である。ここで図1は被検出物としての指がセンサに近接していない場合を、図2はセンサに指が近接または接触している場合を、それぞれ示す。
【0021】
図解するタッチセンサ部は、静電容量型タッチセンサであり、図1(B)および図2(B)に示すように容量素子からなる。具体的に、誘電体Dと、誘電体Dを挟んで対向配置する1対の電極、すなわち駆動電極E1および検出電極E2とから容量素子(静電容量)C1が形成されている。
【0022】
図1(A)および図2(A)に示すように、容量素子C1の駆動電極E1は、ACパルス信号Sgを発生する駆動信号源Sに接続される。容量素子C1の検出電極E2は、電圧検出器DETに接続される。このとき検出電極E2は抵抗Rを介して接地されることで、DCレベルが電気的に固定される。
【0023】
駆動信号源Sから駆動電極E1に所定の周波数、例えば数[kHz]〜十数[kHz]程度のACパルス信号Sgを印加する。このACパルス信号Sgの波形図を図3(B)に例示する。
ACパルス信号Sgの印加に応じて、検出電極E2に、図3(A)に示す出力波形の信号(検出信号Vdet)が現れる。
【0024】
なお、詳細は後述するが、接触検出装置の機能を液晶表示パネル内に有する液晶表示装置の実施形態では、駆動電極E1が液晶駆動のための対向電極(画素電極に対向する、複数画素で共通の電極)に相当する。ここで対向電極は液晶駆動のため、いわゆるVcom反転駆動と称される交流駆動がなされる。よって、本技術の実施形態では、Vcom反転駆動のためのコモン駆動信号Vcomを、駆動電極E1をタッチセンサのために駆動するACパルス信号Sgとしても用いる。
【0025】
指を接触していない図1に示す状態では、容量素子C1の駆動電極E1が交流駆動され、その充放電にともなって検出電極E2に交流の検出信号Vdetが出現する。以下、このときの検出信号を「初期検出信号Vdet0」と表記する。検出電極E2側はDC接地されているが高周波的には接地されていないため交流の放電経路がなく、初期検出信号Vdet0のパルス波高値は比較的大きい。ただし、ACパルス信号Sgが立ち上がってから時間が経過すると、初期検出信号Vdet0のパルス波高値が損失のため徐々に低下している。図3(C)に、スケールとともに波形を拡大して示す。初期検出信号Vdet0のパルス波高値は、初期値の2.8[V]から高周波ロスによって僅かな時間の経過で0.5[V]ほど、低下している。
【0026】
この初期状態から、指が検出電極E2に接触、または、影響を及ぼす至近距離まで接近すると、図2(A)に示すように、検出電極E2に容量素子C2が接続された場合と等価な状態に回路状態が変化する。これは、高周波的に人体が、片側が接地された容量と等価になるからである。
【0027】
この接触状態では、容量素子C1とC2を介した交流信号の放電経路が形成される。よって、容量素子C1とC2の充放電に伴って、容量素子C1,C2に、それぞれ交流電流I1,I2が流れる。そのため、初期検出信号Vdet0は、容量素子C1とC2の比等で決まる値に分圧され、パルス波高値が低下する。
【0028】
図3(A)および図3(C)に示す検出信号Vdet1は、この指が接触したときに検出電極E2に出現する検出信号である。図3(C)から、検出信号の低下量は0.5[V]〜0.8[V]程度であることが分かる。
【0029】
図1および図2に示す電圧検出器DETは、この検出信号の低下を、例えば閾値Vthを用いて検出することにより、指の接触を検出する。
【0030】
《第1実施形態》
本実施形態では、表示パネルに外付け可能な静電容量式のタッチパネルを例として、本技術に関わる接触検出装置の実施形態を説明する。
【0031】
図4(A)〜図4(C)に、本実施形態に関わる接触検出装置の電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図を示す。また、図4(D)に、本実施形態に関わる接触検出装置を、液晶表示装置の表示面側に外付けしたときの概略的な断面構造を示す。図4(D)は、例えば行方向(画素表示ライン方向)の6画素分の断面を表している。
【0032】
図4(D)では断面構造を見易くするために、対向電極、画素電極および検出電極についてはハッチングを付すが、それ以外の部分(基板、絶縁膜および機能膜等)についてはハッチングを省略している。このハッチングの省略は、これ以降の他の断面構造図においても同様である。
【0033】
なお、図4(D)に示す液晶表示装置の詳細は後述する他の実施形態で説明する。そのため図4(D)には、その説明で用いる符号を付しているが、本実施形態では液晶表示装置自体の詳しい説明は省略する。
【0034】
図4(D)に示す液晶表示装置は、画素の駆動のための信号が主に供給される基板(以下、駆動基板2という)と、駆動基板2に対向して配置された対向基板4と、駆動基板2と対向基板4との間に配置された液晶層6とを備えている。
【0035】
本実施形態に関わる接触検出装置(以下、タッチパネル10という)は、接着層12を介して対向基板4上に貼られている。
タッチパネル10は、液晶表示装置側の駆動電極E1と、駆動電極E1上に誘電体層14を介して重なる検出電極E2とを有する。検出電極E2上には保護層13が形成されている。
【0036】
「検出面13A」は、保護層13の最表面を指す。
図4(D)のようにタッチパネル10が液晶表示装置1上に貼られた状態ではタッチパネル10を通して表示光がユーザ側に出射されるため、検出面13Aが表示面となる。
【0037】
また、「接触応答部」は、検出面13Aに対し、ユーザが指やペンなどの被検出物で接触または近接する操作を行うと、その操作に応答して電気的変化が生じる部分を指す。したがって、図1〜図3との対応から明らかなように、上記接触または近接に応答して電位変化を生じるための構成、即ち、本例では、少なくとも駆動電極E1、検出電極E2およびその間の誘電体層14を含む部分が、「接触応答部」の一実施例に相当する。
【0038】
駆動電極E1と検出電極E2は、図4(A)〜図4(C)に示すように、互いに直交する方向で分割されている。
ここで、検出面13Aをユーザ側から見ると、図4(A)のように「接触応答部」が複数の領域、例えば第1領域Re1と第2領域Re2に区分されている。第1領域Re1と第2領域Re2のそれぞれに、所定数m本の駆動電極E1が配置されている。図4では、第1領域Re1の駆動電極E1を符号"E11_1〜E11_m"により示し、第2領域Re2の駆動電極E1を符号"E12_1〜E12_m"により示している。
【0039】
各駆動電極E11_1〜E11mまたはE12_1〜E12_mは、比較的太い幅の帯形状を有し、互いに平行に配置されている。
駆動電極E11_1〜E11_mは駆動電極の第1組EU11を構成し、駆動電極E12_1〜E12_mは駆動電極の第2組EU12を構成する。
【0040】
これに対し、検出電極E2は、駆動電極E1とは直交する方向に長い平行ストライプ配置の所定数kの導電層から形成されている。以下、この平行ストライプ状の検出電極の各々を"検出線"と呼ぶ。図4では、この検出線を符号"E2_1〜E2_k"により示している。
【0041】
k本の検出線E2_1〜E2_kは、1つの検出線の組EU2を構成する。本実施形態では検出線の組が1組配置されている。そのため、本実施形態では、検出線の組(所定数kの検出線)が、第1領域Re1と第2領域Re2の各々に対して同じように交差している。より詳細には、駆動電極と検出線の重なりの態様が、第1領域Re1と第2領域Re2で同じである。
【0042】
以上のように配置されたk本の検出線E2_1〜E2_kの一方端に、「検出部」としての検出回路8が接続されている。検出回路8は、図1および図2に示す電圧検出器DETを基本検出単位として有する。k個の検出線E2_1〜E2_kから、それぞれ検出信号Vdet(図3参照)が検出回路8の対応する電圧検出器DETに入力されるようになっている。
【0043】
また、駆動電極E11_1〜E12_mに対して接触駆動走査部11が接続されている。
本技術の大きな特徴は、この接触駆動走査部11が、第1領域Re1と第2領域Re2に対して駆動電圧の走査を別々に、かつ、並列に実行することである。接触駆動走査部11は、この並列な走査の実行によって、被検出物の接触または近接に応答して「接触応答部」で発生する電気的変化、即ち、ここでは検出線の電位変化を並列に出力する。
【0044】
図5は、タッチ検出動作を行う検出回路8の一構成例を、検出対象の位置を示す電極パターンとともに示す図である。
図5において、斜線により示す駆動電極E11_1が駆動信号源Sに接続されて選択され、それ以外の非選択の駆動電極E11_2〜E11_5がGND電位で保持されている。駆動電極が選択された状態をオン状態、非選択の状態をオフ状態ともいう。
【0045】
図5は、これらの駆動電極群に交差する、ある検出線E2_i(i=1〜k)に接続された電圧検出器DETと、駆動信号源Sの回路図を示している。検出線E2_iと各対向電極との各交差部分に、(静電)容量素子C1_1〜C1_5が形成される。なお、本実施形態では実際には、前述したようにm個の駆動電極からなる駆動電極の第1組EU11と第2組EU12が並列に駆動される。
【0046】
図5に図解する駆動信号源Sは、制御部91と、2つのスイッチSW(+),SW(-)と、ラッチ回路92と、バッファ回路(波形整形部)93と、出力スイッチSWとを有する。
制御部91は、プラス電圧V(+)とマイナス電圧V(-)を各々がスイッチする2つのスイッチSW(+),SW(-)と、出力スイッチSWとを制御する回路である。制御部91は、駆動信号源S内に設けなくとも、外部のCPU等で代用できる。
【0047】
スイッチSW(+)はプラス電圧V(+)とラッチ回路92の入力との間に接続され、スイッチSW(-)はマイナス電圧V(-)とラッチ回路92の入力との間に接続されている。ラッチ回路92の出力はバッファ回路93を介して、出力スイッチSWのオン側ノードに接続されている。バッファ回路93はプラス電圧V(+)とマイナス電圧V(-)に、入力電位を電位補償して出力する回路である。
【0048】
ここで出力スイッチSWは、制御部91により制御されて、当該駆動信号源Sをオン(選択状態あるいは活性状態)とするか、非活性のGND接続とするかを制御する。この制御部91の機能は他の駆動信号源Sとの制御と同期させる関係上、通常は、たとえば活性化する駆動信号源Sのグループをシフトして選択する信号を、シフトレジスタ等で順送りする等の構成によって実施される。
【0049】
(静電)容量素子C1_1〜C1_5が接続された検出線E2に、電圧検出器DETが接続されている。
図5に図解する電圧検出器DETは、OPアンプ回路81、整流回路82および出力回路83から構成される。
【0050】
OPアンプ回路81は、OPアンプ84、抵抗R1とR2、および、容量C3により図示のように構成され、ノイズ除去のためのフィルタ回路を形成する。このフィルタ回路は抵抗の比等で増幅率が決まり、信号増幅回路としても機能する。
【0051】
OPアンプ84の非反転入力「+」に検出線E2が接続され、ここから検出信号Vdetが入力される。検出線E2は、その電位のDCレベルを電気的に固定するために抵抗Rを介して接地電位に接続されている。OPアンプ84の出力と反転入力「−」との間に抵抗R2と容量C3が並列接続され、OPアンプ84の反転入力「−」と接地電位との間に抵抗R1が接続されている。
【0052】
整流回路82は、半波整流を行うダイオードD1と、充電キャパシタC4と、放電抵抗R0とを有する。ダイオードD1のアノードがOPアンプ回路81の出力に接続され、ダイオードD1のカソードと接地電位との間に、充電キャパシタC4と放電抵抗R0がそれぞれ接続されている。充電キャパシタC4と放電抵抗R0により平滑回路が形成される。
【0053】
ダイオードD1のカソード(整流回路82の出力)電位が、出力回路83を介してデジタル値として読み出される。図5に示す出力回路83は、閾値と電圧比較を実行するコンパレータ85のみ示す。出力回路83はADコンバータの機能も有する。ADコンバータは、抵抗ラダー型や容量分割型などコンバータのタイプは任意である。出力回路83は、入力したアナログ信号をコンパレータ85によって閾値Vth(図3(A)参照)と比較する。コンパレータ85は、CPUなどの制御回路(不図示)の機能として実現してもよい。この比較結果が、タッチされたか否かを示す信号、例えばボタン操作の有無を示す信号として各種アプリケーションに利用される。
【0054】
コンパレータ85の参照電圧としての閾値Vtは、CPUなどの制御部によって変更可能であり、これにより、検出信号Vdetの電位を判別可能である。
図4に説明を戻す。
【0055】
図4に示す接触駆動走査部11は、駆動信号源Sと、駆動信号源Sとは出力する駆動電圧の位相が反転している反転駆動信号源Sxとを有する。
接触駆動走査部11は、駆動信号源Sにより第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11を交流駆動し、反転駆動信号源Sxにより第2組EU12を交流駆動する。この交流駆動の対象は、駆動電極単位で順次一方向にシフトされ、これにより走査が実行される。走査の向きは、図4では一方の向きに揃えているが、逆でもよい。また、第1組EU11と第2組EU12の両方に対し、往復の走査を繰り返してよく、あるいは、帰線期間を設け同じ一方端を起点とする走査を繰り返してもよい。
【0056】
図6に、本実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形とを示す。
なお、この図における「応答波形」は、非常に短い時間だけ指100を検出面13A(図4(D)参照)に接触させ、直ぐに離す、いわゆるインパルス応答時の検出信号Vdetの変化成分を模式的に示すものである。
【0057】
図6に示す第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11の走査(駆動電圧印加のシフト動作)と、第2領域Re2の駆動電極の第2組EU12の走査とは、駆動電圧が逆相となっている。同じ検出線に対応する第1領域Re1の位置(ポイントA)と第2領域Re2の位置(ポイントB)で同時に接触が行われた場合("A+B"と表記)、応答波形は発生しないか発生しても無視できるほど小さい。このことは、両ポイントとも接触がない場合("untouched"と表記)でも同様である。
【0058】
これに対し、ポイントAでの接触で図示のように電位が低下する場合、ポイントBでは電位が上昇する電位変化が発生する。これとは逆に、ポイントAでの接触で電位が上昇する場合、ポイントBでは電位が低下する。一方、ポイントAとBでの同時接触では、この正負の電位が打ち消しあって見かけ上、検出線に電位変化は発生しない。
【0059】
検出回路8および不図示のCPU等を含む「検出部」は、まず、k本の検出線のどの検出線に電位変化が発生したかにより接触位置のx方向アドレスを確定する。また、走査のタイミングと出力変化のタイミングから、接触位置のY方向のアドレスを確定する。このとき、電位変化の発生の程度、即ち正または負の極性によって第1領域Re1への接触であるか、第2領域Re2への接触であるかを識別できる。なお、2箇所の接触のタイミングと接触時間が全く同じであることは極めて稀であるため、同時接触でも何らかの応答波形が出現し、その出現パターン、例えば連続して正負の電位変化が出現する場合は2箇所同時接触と判断することもできる。
【0060】
図6には、第1領域Re1に「書き込み+駆動ボーダー」と表示され、第2領域Re2に「駆動ボーダー」と表示されている。この表示の意味は、液晶表示装置1の表示のための映像信号の書き込みを第1領域Re1で開始すると同時に、第1領域Re1と第2領域Re2で並行して接触駆動走査を開始することを意味している。このように表示駆動と同期させることは任意であるが、接触駆動と表示駆動を同期させるとすると、走査駆動部を兼用できる利点があり好ましい。
【0061】
つぎに、本実施形態における利点を説明する。
本実施形態では、接触検出の駆動走査を同一時間内に2回以上、並列に行うことで1回の走査時間を大きく減らすことが可能となる。
【0062】
これに対し、本技術が適用されない場合、タッチパネル10の1フレーム(F)全部を使って1回の走査を行う場合、その走査周波数60Hz(1Fに対する1回の走査時間は16.7[msec])となる。
【0063】
しかし、このような場合、走査が過ぎてすぐに画面にタッチされた場合は、33.4(=16.7×2)[msec]後の検出となり、その後CPU等での処理が行われて始めて、画面にタッチされたことが認識される。その認識に基づいて、アプリケーションに応じて画像が変化し、操作スイッチの場合はスイッチがオンまたはオフする。
【0064】
たとえば、触った後のアプリケーションソフトウエア処理が50〜100[msec]程度かかるといわれており、ユーザに伝わる反応が100[msec]程度もかかってしまう。この反応をユーザは非常に遅いと感じてストレスとなる。
【0065】
表示とタッチパネルの検出を同期させる場合、上記タッチしてから反応が出現するまでの遅さを改善するためには、書き込むフレーム周波数を増加させる方法が考えられる。
しかし、書き込む周波数を増加させると書き込み不良が発生し、また処理負担が重い画像処理等が必要となる。例えば60[Hz]の信号から画像を作る必要があるため、大がかりな画像処理や消費電力が大幅に増加する等の不利益を被る。
【0066】
本実施形態では、タッチパネルの駆動ラインを同時に2本以上走査して、そのうちの1つのみで表示のための書き込みを行い、他方は書き込みを伴わず接触検出の駆動電極のみ交流駆動する。
【0067】
そのため、タッチパネルのスキャン周波数は、2つの検出駆動走査を同時に行う場合は2倍に、3つの検出駆動走査を同時に行う場合は3倍にすることが可能となる。なお、上記例では反転駆動する領域を2つ設けたが、一般には、領域をN個設ける場合、その駆動電圧の位相を1周期のN等分ずつずらすとよい。その場合、単に検出線電位変化の正負の極性だけでは判別が困難な場合がある。その場合、極性に加えて、その電位変化のレベルを、図5に示すコンパレータの基準電位を変えながら判別することで、接触が生じた領域の識別が可能である。
【0068】
なお、表示装置の書き込みと同期させる必要は必ずしもなく、その場合でも接触検出の駆動周波数が低減するため、その分、消費電力を抑制し、あるいは、タッチパネルの応答性を高めることが可能となる。
【0069】
《第2実施形態》
本実施形態では複数の領域、例えば領域数が2の場合、第1領域Re1と第2領域Re2で接触駆動電圧の振幅を異なるレベルで供給する。
【0070】
図7に領域数および振幅レベル数が2の場合、図8と図9に領域数および振幅レベル数が3の場合の応答波形を示す。
図7に示す実施例では、第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11に供給する駆動電圧と、第2領域Re2の駆動電極の第2組EU12に供給する駆動電圧とが振幅において異なる。図7は、後者の駆動電圧の振幅が前者の駆動電圧の振幅のほぼ2倍程度である場合を例示する。両駆動電圧は位相が同じである。
【0071】
この駆動電圧の位相が同じで振幅差があること以外は、第1実施形態と同じである。よって、図4で接触駆動走査部11が反転駆動信号源Sxに代えて、振幅が2倍の同相交流信号源を有する以外、図4は第2実施形態でも適用される。また、図5も同様に適用される。
【0072】
図7に示すように、非接触(untouched)の場合で応答波形の波高値が最も大きい。次に応答波形の波高値が大きいのは、駆動振幅が小さい側のポイントA(第1領域Re1)をタッチした場合である。その次に応答波形の波高値が大きいのは、駆動振幅が大きい側のポイントB(第2領域Re2)をタッチした場合である。そして、両方のポイントを同時にタッチした場合、応答波形の波高値が最も低下して最小となる。検出回路8は、図5のコンパレータ85の参照電圧(閾値Vt)を変え、このレベル差を検出することによって、どの領域がタッチされたかを識別できる。
【0073】
図8に示す例ではさらに領域が1つ増えて、第3領域Re3を有する場合を示す。
第3領域には駆動電極の第3組EU13が設けられている。第3組EU13の駆動電極は、接触駆動走査部11(図4参照)によって、最も大きな振幅の駆動電圧が印加される。
【0074】
図8では、同じ検出線に対する第1領域Re1内の指100の接触点をポイントY1、第2領域Re2内の接触点をポイントY2、第3領域Re3内の接触点をポイントY3と表記する。また、ポイントY1での駆動電圧を"V1"とすると、ポイントY2では"2×V1"、ポイントY3では"3×V1"の振幅の交流パルスが印加されるとしている。
【0075】
電圧検出器DETにおける検出線の検出電圧が、ポイントY1のみの接触時にA1からB1(<A1)へと小さくなった場合に、その変化する電圧比(以下、変化率という)を、"b(=B1/A1)"とおく。その場合、ポイントY2のみ接触時、ポイントY3のみの接触時も同じ変化率bで検出線の電位が変化する。
【0076】
一方、どのポイントにも接触がない(untouchedの)場合、応答波形の波高値は、3種類の駆動電圧の波高値を合計した6A1(=A1+2A1+3A1)となる。また、複数のポイントで接触が同時に行われた場合、そのポイントの組み合わせに応じて異なる電位変化が発生する。
【0077】
図9に、全ての組み合わせにおける電位変化(電位低下)を重ねて示す。
図9から、どのような組み合わせで接触が生じたかは、その検出線の電位低下のレベルで一意に確定できる。このレベル認識も、例えば図5のコンパレータ85の参照電圧(閾値Vt)を変えることで実行できる。
【0078】
《第3実施形態》
本実施形態ではk本の検出線の組EU2を2つ設ける。
【0079】
図10に逆相駆動の場合、図11に同相駆動の場合の応答波形を示す。
図10および図11に示すように、第1領域Re1と第2領域Re2に同じようにして交差する検出線の組(以下、第1組EU21という)を有することは、上記第1〜第2実施形態と同じである。本実施形態では、さらに、第2領域Re2に対してのみ交差するもう1組のk本の検出線を設ける。この追加したk本の検出線を、以下、検出線の第2組EU22と呼ぶ。
【0080】
検出線の第1組EU21の一方端には、電圧検出器DETaがk個含まれる検出回路8aが接続されている。同様に、検出線の第2組EU22の一方端には、電圧検出器DETbがk個含まれる検出回路8bが接続されている。検出回路8aと8bを含む構成が"2つの検出部"の実施例に該当する。
【0081】
このように領域に対し交差の仕方が異なる2組の検出線を設け、さらに、検出線の各組で検出器を分けて設けると、図10のように検出器の入力に現れる応答波形が得られる。
電圧検出器DETaでは図6と同様な応答波形となる。
【0082】
一方、電圧検出器DETbでは、非接触時(untouched)とポイントAの接触時で正の応答波形、ポイントBとポイントA+Bの接触時で、それより電位が低下した正の応答波形となる。ここでポイントAとポイントBでは、検出電圧の最大波高値が異なる。これは、電圧検出器DETaとDETbでは、それぞれに接続された検出線の長さが異なり、その結果、負荷容量が異なるためである。図10ではポイントAでの最大波高値を符号"A1"により示し、ポイントBでの最大波高値を符号"B1"により示す。
【0083】
第3実施形態では、特にポイントA+Bと非接触時(untouched)が、第1実施形態より確実に識別できるという利点がある。
図11は、図10の逆相駆動を同相駆動とした場合である。
【0084】
この場合も図10と同様に、検出線の長さに起因した負荷容量の違いによって、電圧検出器DETaとDETbでは、検出電圧の最大波高値が異なる。ここでもポイントAでの最大波高値を符号"A1"により示し、ポイントBでの最大波高値を符号"B1"により示す。また、駆動電圧振幅をV1により表す。
【0085】
ポイントAとポイントBの双方が非接触(untouched)の場合、電圧検出器DETaに入力される検出電圧が最大波高値A1を維持し、電圧検出器DETbに入力される検出電圧が最大波高値B1を維持する。
【0086】
ポイントAのみの接触の場合、電圧検出器DETbでは最大波高値B1の出力状態に変化がないが、電圧検出器DETaの検出電圧が最大波高値A1から変化率f(0<f<1)で低下する。
【0087】
ポイントBのみの接触の場合、ポイントAのみの接触の場合からさらに、電圧検出器DETbにおいても、最大波高値B1から変化率fで検出電圧が低下する。
ポイントAとポイントBの同時接触の場合、ポイントBのみの接触の場合からさらに、電圧検出器DETaに変化率fの検出電圧低下が生じる。このとき電圧検出器DETaに入力される検出電圧は、初期の最大波高値A1から2fの割合で電圧低下が観測される。
【0088】
したがって、図11に示す駆動法においても、接触と非接触の組み合わせである4つの場合を確実に識別できる利点がある。
このような検出線の重なり方と駆動電圧の仕方が違うこと以外は、第1実施形態の図4および図5が、本第3実施形態でも適用できる。
【0089】
なお、第3実施形態と第2実施形態を任意に組み合わせることができる。
以上より、『検出部は、検出線の交差の仕方と駆動の仕方の少なくとも一方が領域間で異なることに応じて発生する検出線の電圧変化パターンに基づいて接触が発生した領域の識別を行うことができる』。
【0090】
《第4実施形態》
図12に、第4実施形態の構成図を示す。
【0091】
図12に示す駆動法では、k個の検出線の組を第1領域Re1と第2領域Re2で完全に分離している。例えば、第1領域Re1側の検出線に検出回路8aを接続し、第2領域Re2側の検出線に検出回路8bを接続している。そのため図12に示すように、望ましくは、2つの検出回路8aと8bが走査方向の両側に配置される。
【0092】
第4実施形態では、駆動電圧が同じでも検出線と検出回路の組み合わせが別系統であるため、どの領域への接触かは容易に判別できる。
しかし、表示パネルに適用する場合には検出回路の配置スペースに無駄が生じやすい。つまり、表示パネルは、その有効表示領域を可能な限り大きくし、枠スペースを可能な限り小さくする要請がある。この要請は特に小型の電子機器に搭載される表示パネルに対して強い。一般に、この枠スペースの無駄を省くために、表示パネルと外部との信号や電圧の入出力は、表示パネルの片側(一辺側)からフレキシブル基板等によってまとめて行うことが多い。
【0093】
そのような入出力形態には図12の検出回路配置はマッチングが悪い。図12のように2つの検出回路を両側配置できない場合、片方の検出回路への配線を表示パネルの外周の半周分引き回す必要がある。しかし、微小な信号電位がノイズに影響されてS/N比が低下する懸念がある。よって、検出回路8の信号増幅率を上げるなど余分な回路負担が強いられる。
【0094】
しかし、本実施形態の方法は、領域判定に関しては最もシンプルで確実な方法であり、検出回路の配置の自由度が高い場合に好適な実施形態である。
【0095】
《第5実施形態》
第5実施形態では、タッチパネルの機能を液晶表示パネル内に内蔵させる。この場合、好ましくは、表示駆動電極の一部と検出駆動電極を兼用する。また、検出駆動が表示に影響しない工夫が必要になる。
【0096】
なお、本実施形態は、上記第1〜第4実施形態と任意に組み合わせることができる。検出駆動における動作は、既に説明したため、以下、表示装置の構成と動作を、詳しく説明する。
【0097】
液晶表示装置は、複数の画素で共通な電極として、画素ごとに階調表示のための信号電圧に対し基準電圧を付与するコモン駆動信号Vcomが印加される電極(対向電極)を有する。本実施形態では、この対向電極をセンサ駆動のための電極としても用いる。
【0098】
図13は、画素の等価回路図である。また、図14は、表示パネルの概略的な平面図と断面図である。
液晶表示装置1は、図13に示す画素PIXがマトリクス配置されている。
【0099】
各画素PIXは、図13に示すように、画素のセレクト素子としての薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor、以下、TFT23と表記)と、液晶層6の等価容量C6と、保持容量(付加容量ともいう)Cxとを有する。液晶層6を表す等価容量C6の一方側の電極は、画素ごとに分離されてマトリクス配置された画素電極22であり、他方側の電極は複数の画素で共通な対向電極43である。
【0100】
TFT23のソースとドレインの一方に画素電極22が接続され、TFT23のソースとドレインの他方に信号線SIGが接続されている。信号線SIGは不図示の垂直駆動回路に接続され、信号電圧を持つ映像信号が信号線SIGに垂直駆動回路から供給される。
【0101】
対向電極43には、コモン駆動信号Vcomが与えられる。コモン駆動信号Vcomは、中心電位を基準として正と負の電位を、1水平期間(1H)ごとに反転した信号である。
【0102】
TFT23のゲートは行方向、即ち表示画面の横方向に並ぶ全ての画素PIXで電気的に共通化され、これにより走査線SCNが形成されている。走査線SCNは、不図示の垂直駆動回路から出力され、TFT23のゲートを開閉するためのゲートパルスが供給される。そのため走査線SCNはゲート線とも呼ばれる。
【0103】
図13に示すように、保持容量Cxが等価容量C6と並列に接続されている。保持容量Cxは、等価容量C6では蓄積容量が不足し、TFT23のリーク電流などによって書き込み電位が低下するのを防止するために設けられている。また、保持容量Cxの追加はフリッカ防止や画面輝度の一様性向上にも役立っている。
【0104】
このような画素が配置された液晶表示装置1は、断面構造(図14(D))で見ると、断面に現れない箇所で図13に示すTFT23が形成され画素の駆動信号(信号電圧)が供給される基板(以下、駆動基板2という)を有する。また、液晶表示装置1は、駆動基板2に対向して配置された対向基板4と、駆動基板2と対向基板4との間に配置された液晶層6とを有する。
【0105】
駆動基板2は、図13のTFT23が形成された回路基板としてのTFT基板21(基板ボディ部はガラス等からなる)と、このTFT基板21上にマトリクス配置された複数の画素電極22とを有する。
【0106】
TFT基板21に、各画素電極22を駆動するための図示しない表示ドライバ(垂直駆動回路、水平駆動回路等)が形成されている。また、TFT基板21に、図13に示すTFT23、ならびに、信号線SIGおよび走査線SCN等の配線が形成されている。TFT基板21に、タッチ検出動作を行う検出回路8等(図5)が形成されていてもよい。
【0107】
対向基板4は、ガラス基板41と、このガラス基板41の一方の面に形成されたカラーフィルタ42と、カラーフィルタ42の上(液晶層6側)に形成された対向電極43とを有する。カラーフィルタ42は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を周期的に配列して構成したもので、画素PIX(または画素電極22)ごとにR、G、Bの3色の1色が対応付けられている。なお、1色が対応付けられている画素を「サブ画素」といい、R、G、Bの3色のサブ画素の集合を「画素」という場合があるが、ここではサブ画素も「画素PIX」と表記する。
【0108】
対向電極43は、タッチ検出動作を行うタッチセンサの一部を構成するセンサ駆動電極としても兼用されるものであり、図1および図2における駆動電極E1に相当する。
対向電極43は、コンタクト導電柱7によってTFT基板21と連結されている。このコンタクト導電柱7を介して、TFT基板21から対向電極43に交流パルス波形のコモン駆動信号Vcomが印加されるようになっている。このコモン駆動信号Vcomは、図1および図2の駆動信号源Sから供給されるACパルス信号Sgに相当する。
【0109】
ガラス基板41の他方の面(表示面側)には、検出電極44(44_1〜44_k)が形成され、さらに、検出電極44の上には、偏光板45が形成されている。検出電極44は、タッチセンサの一部を構成するもので、図1および図2における検出電極E2に相当する。ガラス基板41に、タッチ検出動作を行う検出回路DET(図5)が形成されていてもよい。
【0110】
液晶層6は、「表示機能層」として、印加される電界の状態に応じて厚さ方向(電極の対向方向)を通過する光を変調する。液晶層6は、例えば、TN(ツイステッドネマティック)、VA(垂直配向)、ECB(電界制御複屈折)等の各種モードの液晶材料が用いられる。
【0111】
なお、液晶層6と駆動基板2との間、および液晶層6と対向基板4との間には、それぞれ配向膜が配設される。また、駆動基板2の反表示面側(即ち背面側)と対向基板4の表示面側には、それぞれ偏光板が配置される。これらの光学機能層は、図14で図示を省略している。
【0112】
対向電極43は、図14(A)に示すように、画素配列の行または列、本例では列の方向(図の縦方向)に分割されている。この分割の方向は、表示駆動における画素ラインの走査方向、すなわち不図示の垂直駆動回路が走査線SCNを順次活性化していく方向と対応する。
【0113】
対向電極43は、駆動電極を兼ねることに基づく必要性から、合計でn個に分割されている。よって、対向電極43_1,43_2,…,43_m,…,43_nは、行方向に長い帯状のパターンを有して面状配置され、当該面内で互いの離間距離をとって平行に敷き詰められている。
【0114】
n分割された対向電極43_1〜43_nは、少なくとも2以上のm(<n)本で同時に駆動される。つまり、m本の対向電極43_1〜43_mに同時にコモン駆動信号Vcomが印加されて、その電位が反転を1水平期間(1H)ごとに繰り返す。そのとき、他の対向電極は、駆動信号が与えられないため電位変動しない。本技術の実施形態では、この同時駆動される対向電極の束を、交流駆動電極ユニットEUと表記する。
【0115】
本実施形態では、交流駆動電極ユニットEUごとに対向電極の数は一定の数mとする。また、交流駆動電極ユニットEUが、その束ねる対向電極の組み合わせを変えながら列方位にステップ状にシフトする。つまり、シフトごとに交流駆動電極ユニットEUとして選択される対向電極の組み合わせが変化する。そして、2回のシフトでは1つの、分割された対向電極のみが選択から外れ、代わりに、分割された対向電極が新たに選択される。
【0116】
このように、n個の対向電極43_1〜43_nは、列方向の画素数だけ等間隔に配置されている。n個の対向電極43_1〜43_nは、Vcom交流駆動を繰り返す際に、1つの交流駆動電極ユニットEUとして選択するm(<n)個の対向電極の組み合わせを、列方向内で対向電極が配置されたピッチを単位にシフトする。ここで「対向電極のピッチ」とは、列方向の対向電極の幅と、その幅方向の片側に隣接する他の対向電極までの離間距離との合計した距離である。通常、列方向における対向電極のピッチは、列方向における画素サイズに等しい。
【0117】
このような対向電極の交流駆動電極ユニットEUを単位とするVcom駆動と、そのシフト動作は、不図示の垂直駆動回路(書き込み駆動走査部)内に設けられた、「表示駆動走査部」としてのVcom駆動回路9により行われる。Vcom駆動回路9の動作は、「m本の対向電極の配線を同時にVcom交流駆動する駆動信号源S(図1および図2参照)を列方向に移動して、選択する対向電極を1つずつ変えながら列方向に走査する動作」に等しいとみなせる。
【0118】
なお、図14(A)と図14(B)は電極パターン説明のために分けた図であるが、実際には、図14(C)のように対向電極43_1〜43_mと検出電極44_1〜44_kとは重ねて配置され、2次元平面内の位置検出が可能になっている。
【0119】
この構成によって、検出回路8は、どの電圧検出器DETに電圧変化が生じたかで行方向の位置が検出でき、その検出時のタイミングによって列方向の位置情報を得ることができる。
【0120】
つぎに、以上の駆動信号源Sを基本構成とするVcom駆動回路9による、対向電極43のシフトおよび交流駆動について、図面を用いて説明する。
図15(A)に、画素表示ライン単位(書き込みユニットともいう)で分割された対向電極43_1〜43_nを示す。図15(B)に、そのうちの最初の1本である対向電極43_1の駆動時におけるタッチセンサ部の等価回路図を示す。
【0121】
図15(A)に示すように対向電極43_1に駆動信号源Sが接続されてVcom交流駆動されている。このときタッチセンサ部は、既に説明したように図15(B)のような等価回路が形成される。ただし、ここでは容量素子C1_1〜C1_nの各静電容量値を"Cp"、検出電極44に、容量素子C1_1〜C1_n以外に接続されている容量成分(寄生容量)を"Cc"、駆動信号源Sによる交流電圧の実効値を"V1"と表す。
【0122】
このとき電圧検出器DETで検出される検出信号Vdetは、指が非接触のときは電圧Vs、指が接触のときは電圧Vfとなる。以下、電圧Vs,Vfをセンサ電圧という。
非接触時のセンサ電圧Vsは、図15(C)のような式によって表される。この式から、対向電極43の分割数nが大きいと、その分、各静電容量値Cpは小さくなる。図15(C)の式の分母は"nCp"がほぼ一定なため余り大きな変化がないが、分子が小さくなる。よって、対向電極43の分割数nが大きくなるにしたがって、センサ電圧Vsの大きさ(交流の実効値)も小さくなる。
【0123】
したがって、分割数nは余り大きくできない。
一方、分割数nが小さく、1つの対向電極43_1の面積が大きいと、そのVcom交流駆動が電極間で切り替わる時の微妙な電位変動(過渡的な電位変動)が表示画面で線として見えてしまう。
【0124】
そこで、本実施形態では前述したように、分割自体は画素表示ライン(書き込みユニット)ごとに行うが、複数の対向電極を同時にVcom交流駆動する。また、一部の分割された対向電極は、2回連続して選択する。これにより、分割数nが大きくなることによるセンサ電圧の低下(S/N比の低下)と、電極切り替わり時の電位変動の希釈化(目立たなくすること)とを同時に達成する。
【0125】
図16に、この交流駆動とシフトの動作説明図を示す。
図16において斜線により示す7本の対向電極により交流駆動電極ユニットEUが構成されている。図16(A)〜(C)は、交流駆動電極ユニットEUを1画素ライン単位で列方向にシフトさせたときの選択範囲の推移を示す。
【0126】
図16(A)の時間T1では、最初の1つの書き込みユニットは非選択であるが、2番目から8番目のラインに対応した対向電極が選択されて同時に駆動信号源Sで交流駆動されている。次のサイクル(時間T2)では、1つの書き込みユニット分シフトし、1番目と2番目のラインに対応する2つの対向電極が非選択、3番目以降の7本が選択、その他が非選択となっている。さらにその次のサイクル(時間T3)では、さらに1つの書き込みユニット分シフトし、1〜3番目のラインに対応する対向電極が非選択、4番目以降の7本が選択、その他が非選択となる。
【0127】
以後、同様にシフトと交流駆動を繰り返す。
この動作により、図15(C)に示した式におけるnの値は、実際の分割数の1/7に低減されてセンサ電圧Vsの実効値がその分、大きくなる。一方、図16に示すように、選択グループに新たに含まれ、それに変わって含まれなくなる単位が1画素ラインに対応する1つの対向電極である。よって、交流駆動の切り替わり周波数がコモン駆動信号Vcomの1H反転周波数と等しくなる。この周波数は商用電源周波数、例えば60[Hz]を列方向の画素数倍した非常に高い周波数となる。たとえば列方向の画素数が480の場合、この周波数は28.8[kHz]、パルス波形の周波数としては、その半分の14.4[kHz]となる。よって、交流駆動のシフトに起因する画像変化は、人の目に視認できない十分に高い周波数となる。
【0128】
以上より、センサ電圧の低下によるS/N比低下の防止と、電極駆動の切り替えによる画質低下の防止が両立できる。
次に、以上のような構成の表示装置の動作を説明する。
【0129】
駆動基板2の表示ドライバ(図示しない水平駆動回路および垂直駆動回路等)は、対向電極43の各電極パターン(対向電極43_1〜43_n)に対してコモン駆動信号Vcomを線順次で供給する。このとき、対向電極の選択の仕方とシフトの仕方は、上述したとおりである。コモン駆動信号Vcomは、画像表示の対向電極電位制御のためにも用いられる。
【0130】
また、表示ドライバは、信号線SIGを介して画素電極22へ信号電圧を供給すると共に、これに同期して、走査線SCNを介して各画素電極のTFTのスイッチングを線順次で制御する。これにより、液晶層6には、画素ごとに、コモン駆動信号Vcomと各画素信号とにより定まる縦方向(基板に垂直な方向)の電界が印加されて液晶状態の変調が行われる。このようにして、いわゆる反転駆動による表示が行われる。
【0131】
一方、対向基板4の側では、対向電極43の各電極パターン(対向電極43_1〜43_n)と、検出電極44の各電極パターン(検出電極44_1〜44_k)との交差部分にそれぞれ容量素子C1が形成される。対向電極43の各電極パターンにコモン駆動信号Vcomを時分割的に順次印加していくと、その印加された対向電極43の電極パターンと検出電極44の各電極パターンとの交差部分に形成されている一列分の容量素子C1の各々に対する充放電が行われる。その結果、容量素子C1の容量値に応じた大きさの検出信号Vdetが、検出電極44の各電極パターンからそれぞれ出力される。対向基板4の表面にユーザの指が触れられていない状態においては、この検出信号Vdetの大きさはほぼ一定(センサ電圧Vs)となる。コモン駆動信号Vcomのスキャンに伴い、充放電の対象となる容量素子C1の列が線順次的に移動していく。
【0132】
ここで、対向基板4の表面のいずれかの場所にユーザの指が触れると、そのタッチ箇所に元々形成されている容量素子C1に、指による容量素子C2が付加される。その結果、そのタッチ箇所がスキャンされた時点の検出信号Vdetの値(センサ電圧Vs)が他の箇所よりも小さくなる(センサ電圧Vf(<Vs)となる)。検出回路8(図5)は、この検出信号Vdetを閾値Vtと比較して、検出信号Vdetが閾値Vt以下の場合に、その箇所をタッチ箇所として判定する。このタッチ箇所は、コモン駆動信号Vcomの印加タイミングと、閾値Vt以下の検出信号Vdetの検出タイミングとから求めることができる。
【0133】
このように、本実施形態によれば、液晶表示素子に元々備えられている液晶駆動の共通電極(対向電極43)を、駆動電極と検出電極とからなる一対のタッチセンサ用電極の一方(駆動電極)と兼用する。また、本実施形態によれば、表示駆動信号としてのコモン駆動信号Vcomをタッチセンサ駆動信号として共用するようにして、静電容量型タッチセンサを構成している。よって、新たに設ける電極は検出電極44だけでよく、また、タッチセンサ駆動信号を新たに用意する必要がない。したがって、構成が簡単である。
【0134】
また、複数の対向電極を同時に交流駆動し、その同時に交流駆動する電極グループを、各対向電極が2回の交流駆動で共に選択されるようにシフトする。このため、センサの検出電圧のS/N比低下と画質低下の防止を両立できる。
【0135】
さらにコモン駆動信号Vcomの駆動電極と駆動回路を、センサ駆動電極と駆動回路と兼用できるため、その分の配置スペースと消費電力の節約ができる。
なお、図4および図6において、検出電極44は細い幅のラインとして示すが、行方向に大きな幅に形成してもよい。この幅は、容量素子C1の容量値が小さ過ぎて、より大きくしたい場合に、電極幅を大きく対処できる。逆に、例えば誘電体Dが薄いために容量素子C1の容量値が大き過ぎて、より小さくしたい場合は、電極幅を小さくして対処できる。
【0136】
また、上記第1〜第4の実施形態における領域の識別は、この検出電極44(検出線E2)の幅を領域で変えることによっても可能である。
第5実施形態では、分割された対向電極の1ピッチごとに、同時駆動する対向電極グループ(交流駆動電極ユニットEU)をシフトしたが、これに限定されない。
【0137】
また、断面構造内において検出電極44を、カラーフィルタ42を挟んで対向電極43と対抗する位置に形成してもよい。
【0138】
《第6実施形態》
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態は、上記第5実施形態の場合とは異なり、表示素子として横電界モードの液晶素子を用いるようにしたものである。
【0139】
図17は、本実施形態の表示装置の概略的な断面構造図である。図17で、第5実施形態と同一の構成は、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態の表示装置が、電極の位置に限り(パターンは異なる)、第5実施形態と異なる点は、対向電極43を駆動基板2側に配置することである。本実施形態における対向電極43は、画素電極22の液晶層6と反対の側に画素電極22と対向して配置されている。ここで対向といっても、特に図示しないが、画素電極22同士の間の距離が比較的大きく取られ、画素電極22の間から対向電極43が液晶層6に電界を作用させる。つまり、液晶層6に対する電界の作用する方向が横方向の横電界モードの液晶表示となる。
【0140】
その他の構成は、断面における配置に限れば、第1実施形態と第2実施形態とは同じとなる。
容量素子C1は、検出電極44と対向電極43との間に形成されるため、第5実施形態(図14(D))に比べると、容量値が低くなる。しかし、電極間隔が遠くなることを、電極幅を大きくするなどで補うような対処が可能であり、また、容量素子C2との関係で感度が大きくなる場合もある。
【0141】
液晶層6は、電界の状態に応じてそこを通過する光を変調するものであり、例えば、FFS(フリンジフィールドスイッチング)モードや、IPS(インプレーンスイッチング)モード等の横電界モードの液晶が用いられる。
【0142】
つぎに、図18を参照して、より詳細に説明する。
図18に示すFFSモードの液晶素子においては、駆動基板2上に形成された対向電極43の上に、絶縁層25を介して、櫛歯状にパターニングされた画素電極22が配置され、これを覆うように配向膜26が形成される。この配向膜26と、対向基板4側の配向膜46との間に、液晶層6が挟持される。2枚の偏光板24,45は、クロスニコルの状態で配置される。2枚の配向膜26,46のラビング方向は、2枚の偏光板24,45の一方の透過軸と一致している。図17では、ラビング方向が出射側の偏光板45の透過軸と一致している場合を図示してある。さらに、2枚の配向膜26,46のラビング方向および偏光板45の透過軸の方向は、液晶分子が回転する方向が規定される範囲で、画素電極22の延設方向(櫛歯の長手方向)とほぼ平行に設定されている。
【0143】
次に、以上のような構成の表示装置の動作を説明する。
ここではまず、図18および図19を参照して、FFSモードの液晶素子の表示動作原理について簡単に説明する。ここで、図19は液晶素子の要部断面を拡大して表したものである。これらの図で、(A)は電界非印加時、(B)は電界印加時における液晶素子の状態を示す。
【0144】
対向電極43と画素電極22との間に電圧を印加していない状態では(図18(A)、図19(A))、液晶層6を構成する液晶分子61の軸が入射側の偏光板24の透過軸と直交し、かつ、出射側の偏光板45の透過軸と平行な状態となる。このため、入射側の偏光板24を透過した入射光hは、液晶層6内において位相差を生じることなく出射側の偏光板45に達し、ここで吸収されるため、黒表示となる。一方、対向電極43と画素電極22との間に電圧を印加した状態では(図18(B)、図19(B))、液晶分子61の配向方向が、画素電極間に生じる横電界Eにより、画素電極22の延設方向に対して斜め方向に回転する。この際、液晶層6の厚み方向の中央に位置する液晶分子61が約45度回転するように白表示時の電界強度を最適化する。これにより、入射側の偏光板24を透過した入射光hには、液晶層6内を透過する間に位相差が生じ、90度回転した直線偏光となり、出射側の偏光板45を通過するため、白表示となる。
【0145】
なお、タッチセンサ部に関しては、断面構造内の電極配置が異なるのみで、基本的な動作は第1〜第4実施形態と共通する。つまり、Vcom交流駆動とシフトの繰り返しにより対向電極43を列方向で駆動し、そのときのセンサ電圧VsとVfの差を、電圧検出器DETを介して読み取る。デジタル値として読み取ったセンサ電圧Vsを閾値Vtと比較し、指の接触または接近の位置をマトリクス状に検出する。
【0146】
このとき、第1実施形態と同様に、図16に示すように、m本(図16ではm=7)同時に対向電極43を交流駆動し、1つの書き込みユニットに対応する1本の対向電極43ずつずらしてシフトしてから再度交流駆動を行い、このシフトと交流駆動を繰り返す。このため、図15(C)に示した式におけるnの値は、実際の分割数の1/mに低減されてセンサ電圧Vsがその分、大きくなる。一方、図16に示すように、選択グループに新たに含まれ、それに変わって含まれなくなる単位が1画素ラインに対応する1つの対向電極である。よって、交流駆動の切り替わり周波数がコモン駆動信号Vcomの1H反転周波数と等しくなる。この周波数は商用電源周波数、例えば60[Hz]を列方向の画素数倍した非常に高い周波数となる。たとえば列方向の画素数が480の場合、この周波数は28.8[kHz]、パルス波形の周波数としては、その半分の14.4[kHz]と、人の目に視認できない十分に高い周波数となる。
【0147】
以上より、センサ電圧の低下によるS/N比低下の防止と、電極駆動の切り替えによる画質低下の防止が両立できる。
以上の効果に加え、第5実施形態と同様に、Vcom駆動とセンサ駆動の電極の共用により、構成が簡単であるという利点がある。また、コモン駆動信号Vcomの駆動電極と駆動回路を、センサ駆動電極と駆動回路と兼用できるため、その分の配置スペースと消費電力の節約ができる。
【符号の説明】
【0148】
1…液晶表示装置、2…駆動基板、21…TFT基板、22…画素電極、23…TFT、4…対向基板、41…ガラス基板、42…カラーフィルタ、43…対向電極、44…検出電極、6…液晶層、7…コンタクト導電柱、8…検出回路、81…OPアンプ回路、82…整流回路、83…出力回路、10…タッチパネル、11…接触駆動走査部、12…接着層、13…保護層、13A…検出面、14…誘電体層、C1,C2…容量素子、S…駆動信号源、Sx…反転駆動信号源、DET,DETa,DETb…電圧検出器、E1…駆動電極、E2…検出電極(検出線)、Vcom…コモン駆動信号、Vdet…検出信号、Vt…閾値、Vs…センサ電圧(非接触時)、Vf…センサ電圧(接触時)
【技術分野】
【0001】
本技術は、ユーザが指やペン等を検出面に接触または近接させることを検出する接触検出装置の機能を表示部内にもつ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるタッチパネルと呼ばれる接触検出装置が知られている。
一般に、接触検出装置は、検出面に対しユーザの指やペン等が接触し、あるいは、近接したことを検出する装置である。
【0003】
これに対しタッチパネルは、表示パネルに重ねて形成し、表示面に画像として各種のボタンを表示させることにより、通常のボタンの代わりとして情報入力を可能とする。この技術を小型のモバイル機器に適用すると、ディスプレイとボタンの配置の共用化が可能で画面の大型化、あるいは、操作部の省スペース化や部品点数の削減という大きなメリットをもたらす。
【0004】
このように"タッチパネル"というとき、一般には、表示装置と組み合わされるパネル状の接触検出装置を指す。
タッチパネルの接触検出方式は、光学式、抵抗膜式、静電容量式の3つが知られている。
【0005】
一方、接触や近接に応じて生じる電気的変化を位置情報に対応させるためには、位置特定が可能に組み合わされてマトリクス配置された多数の配線が必要となる。
この配線の組み合わせによる位置検出の仕方で、検出の解像度を上げるためには配線数が膨大となる。
【0006】
このため、上記3つの検出方式では、電気的変化を出力するラインを一方向に走査しながら接触位置または近接位置を検出する駆動法が主流となってきている(例えば非特許文献1(光学式)、非特許文献2(抵抗膜式)、非特許文献3(静電容量式)参照)。ここでラインとは、接触検出のために所定の規則で2次元配置された微小なセンサ部のX方向またはY方向の並びをいう。
【0007】
ところで、タッチパネルを表示パネル上に重ねて設けると、表示モジュール全体の厚さが厚くなる。
そこで、近年、タッチパネルは表示パネル上に重ねて取り付けられるものから、表示パネル内に内蔵されるものへと開発されるタイプの主流が推移している(上記非特許文献1〜3、特許文献1参照)。
【0008】
以下、タッチパネルが表示パネル上に重ねて取り付けられるか、表示パネルと一体に形成されるかを問わない呼び方として、"タッチセンサ付き表示装置"を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−9750号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hirotaka Hayashi etc., "Optical Sensor Embedded Input Display Usable under High-Ambient-Light Conditions", SID 07 DIGEST p1105.
【非特許文献2】Bong Hyun Youetc., "12.1-inch a-Si:H TFT LCD with Embedded Touch Screen Panel", SID 08 DIGEST p830.
【非特許文献3】Joohyung Lee etc., "Hybrid Touch Screen Panel Integrated in TFT-LCD", SID 08 DIGEST p834.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
接触検出装置をラインごとに駆動する駆動法は、Y軸方向とX軸方向の片方または両方に沿ったラインを高速に走査する必要がある。このため、接触検出装置においては、駆動周波数等が非常に高く消費電力等が非常に大きいという改善点がある。
【0012】
一方、特に、表示装置と接触検出装置が組み合わされる、タッチセンサ付きの表示装置では、検出駆動の周波数が表示駆動の周波数によって制約され、自由に検出駆動周波数を決めることができない場合がある。
【0013】
本願の技術者は液晶表示のための画素電極を容量検出方式の一方の検出電極と兼用させることで、表示装置の薄型化を図る技術を提案している(例えば、特願2008−104079号参照)。この場合、表示駆動周波数と検出駆動周波数とが構造上の理由から、一致する。
【0014】
しかし、この技術の場合、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いので検出駆動周波数を上げようとしても、表示駆動周波数の制約から、自由に検出駆動周波数を変えることができないという不都合がある。
【0015】
本技術は、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いとき、あるいは、その逆のときに表示駆動に可能な限り制約されないで検出駆動周波数を任意に決めることができる構造の、接触検出機能付きの表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本技術に関わる表示装置は、表示部と、表示駆動走査部と、接触応答部と、接触駆動走査部とを有する。表示部は、映像信号が供給される画素電極が形成された第一の基板と、駆動信号が供給される対向電極と、第一の基板に対向する第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、を備え、入力される映像信号に応じて液晶層が透過光量を光変調し、変調後の光を表示面から出力する。表示駆動走査部は、表示部がもつ光変調の最小単位である画素の一方向の並びをラインとしたときに、当該ラインごとに光変調の駆動電圧を印加する動作をラインと直交する他方向に走査する。接触応答部は、被検出物が表示面に接触または近接することに応答して電気的変化を発生する。接触駆動走査部は、接触応答部への駆動電圧の印加を表示面内の一方向内で走査して、電気的変化の出力を時系列に制御する。また、接触駆動走査部は、接触応答部の異なる領域に対する複数の走査を並列に実行し、複数の電気的変化を並列に出力し、対向電極は、表示部の画素のラインごとに光変調の駆動電圧を印加するとともに接触応答部への駆動電圧を印加する。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、検出速度が小さく情報入力の応答性が悪いとき、あるいは、その逆のときに表示駆動に可能な限り制約されないで検出駆動周波数を任意に決めることができる構造の、接触検出機能付きの表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1〜第6実施形態に関わるタッチセンサ部の動作を説明するための等価回路図と概略断面図である。
【図2】図1に示すタッチセンサ部に指が接触または接近した場合の、同等価回路図と同概略断面図である。
【図3】第1〜第6実施形態に関わるタッチセンサ部の入出力波形を示す図である。
【図4】第1実施形態に関わる表示装置のタッチ検出のための電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図と概略断面図である。
【図5】第1〜第6実施形態に関わる表示装置において、センサ駆動のための交流信号源と電圧検出器の回路例を示すための図である。
【図6】第1実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図7】第2実施形態における異なる振幅での駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図8】第2実施形態における、さらに駆動電圧の振幅の大きさの種類を増やした場合の図である。
【図9】図8の応答波形の電位レベルを詳しく示す図である。
【図10】第3実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図11】第3実施形態における同相駆動と検出線の応答波形を示す図である。
【図12】第4実施形態における検出線と検出回路の配置を示す図である。
【図13】第5および第6実施形態に関わる表示装置の画素の等価回路図である。
【図14】第5実施形態に関わる表示装置のタッチ検出のための電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図と概略断面図である。
【図15】第5実施形態に関わる対向電極のパターンと、当該パターンも含めたタッチセンサ部の等価回路図ならびにセンサ電圧の式を示す図である。
【図16】第5実施形態に関わる対向電極の選択(同時に交流駆動する電極グループの決定)と、そのシフト(再選択)の様子を示す平面図である。
【図17】第6実施形態に関わる表示装置の概略断面図である。
【図18】第6実施形態に関わるFFSモード液晶素子の動作説明図である。
【図19】図18の動作を断面図において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術の実施形態を、静電容量式の接触検出装置、および、当該接触検出の機能をもつ液晶表示装置を主な例として図面を参照して説明する。なお、抵抗膜式や光学式にも本技術は適用可能である。また、ここでは液晶表示装置を例とするが、有機EL表示装置などの他の表示装置に対しても本技術は適用可能である。
【0020】
最初に、実施形態で前提となる事項として、図1〜図3を参照して、静電容量式接触検出の基本を説明する。
図1(A)と図2(A)はタッチセンサ部の等価回路図、図1(B)と図2(B)はタッチセンサ部の構造図(概略断面図)である。ここで図1は被検出物としての指がセンサに近接していない場合を、図2はセンサに指が近接または接触している場合を、それぞれ示す。
【0021】
図解するタッチセンサ部は、静電容量型タッチセンサであり、図1(B)および図2(B)に示すように容量素子からなる。具体的に、誘電体Dと、誘電体Dを挟んで対向配置する1対の電極、すなわち駆動電極E1および検出電極E2とから容量素子(静電容量)C1が形成されている。
【0022】
図1(A)および図2(A)に示すように、容量素子C1の駆動電極E1は、ACパルス信号Sgを発生する駆動信号源Sに接続される。容量素子C1の検出電極E2は、電圧検出器DETに接続される。このとき検出電極E2は抵抗Rを介して接地されることで、DCレベルが電気的に固定される。
【0023】
駆動信号源Sから駆動電極E1に所定の周波数、例えば数[kHz]〜十数[kHz]程度のACパルス信号Sgを印加する。このACパルス信号Sgの波形図を図3(B)に例示する。
ACパルス信号Sgの印加に応じて、検出電極E2に、図3(A)に示す出力波形の信号(検出信号Vdet)が現れる。
【0024】
なお、詳細は後述するが、接触検出装置の機能を液晶表示パネル内に有する液晶表示装置の実施形態では、駆動電極E1が液晶駆動のための対向電極(画素電極に対向する、複数画素で共通の電極)に相当する。ここで対向電極は液晶駆動のため、いわゆるVcom反転駆動と称される交流駆動がなされる。よって、本技術の実施形態では、Vcom反転駆動のためのコモン駆動信号Vcomを、駆動電極E1をタッチセンサのために駆動するACパルス信号Sgとしても用いる。
【0025】
指を接触していない図1に示す状態では、容量素子C1の駆動電極E1が交流駆動され、その充放電にともなって検出電極E2に交流の検出信号Vdetが出現する。以下、このときの検出信号を「初期検出信号Vdet0」と表記する。検出電極E2側はDC接地されているが高周波的には接地されていないため交流の放電経路がなく、初期検出信号Vdet0のパルス波高値は比較的大きい。ただし、ACパルス信号Sgが立ち上がってから時間が経過すると、初期検出信号Vdet0のパルス波高値が損失のため徐々に低下している。図3(C)に、スケールとともに波形を拡大して示す。初期検出信号Vdet0のパルス波高値は、初期値の2.8[V]から高周波ロスによって僅かな時間の経過で0.5[V]ほど、低下している。
【0026】
この初期状態から、指が検出電極E2に接触、または、影響を及ぼす至近距離まで接近すると、図2(A)に示すように、検出電極E2に容量素子C2が接続された場合と等価な状態に回路状態が変化する。これは、高周波的に人体が、片側が接地された容量と等価になるからである。
【0027】
この接触状態では、容量素子C1とC2を介した交流信号の放電経路が形成される。よって、容量素子C1とC2の充放電に伴って、容量素子C1,C2に、それぞれ交流電流I1,I2が流れる。そのため、初期検出信号Vdet0は、容量素子C1とC2の比等で決まる値に分圧され、パルス波高値が低下する。
【0028】
図3(A)および図3(C)に示す検出信号Vdet1は、この指が接触したときに検出電極E2に出現する検出信号である。図3(C)から、検出信号の低下量は0.5[V]〜0.8[V]程度であることが分かる。
【0029】
図1および図2に示す電圧検出器DETは、この検出信号の低下を、例えば閾値Vthを用いて検出することにより、指の接触を検出する。
【0030】
《第1実施形態》
本実施形態では、表示パネルに外付け可能な静電容量式のタッチパネルを例として、本技術に関わる接触検出装置の実施形態を説明する。
【0031】
図4(A)〜図4(C)に、本実施形態に関わる接触検出装置の電極と、その駆動や検出のための回路の配置に特化した平面図を示す。また、図4(D)に、本実施形態に関わる接触検出装置を、液晶表示装置の表示面側に外付けしたときの概略的な断面構造を示す。図4(D)は、例えば行方向(画素表示ライン方向)の6画素分の断面を表している。
【0032】
図4(D)では断面構造を見易くするために、対向電極、画素電極および検出電極についてはハッチングを付すが、それ以外の部分(基板、絶縁膜および機能膜等)についてはハッチングを省略している。このハッチングの省略は、これ以降の他の断面構造図においても同様である。
【0033】
なお、図4(D)に示す液晶表示装置の詳細は後述する他の実施形態で説明する。そのため図4(D)には、その説明で用いる符号を付しているが、本実施形態では液晶表示装置自体の詳しい説明は省略する。
【0034】
図4(D)に示す液晶表示装置は、画素の駆動のための信号が主に供給される基板(以下、駆動基板2という)と、駆動基板2に対向して配置された対向基板4と、駆動基板2と対向基板4との間に配置された液晶層6とを備えている。
【0035】
本実施形態に関わる接触検出装置(以下、タッチパネル10という)は、接着層12を介して対向基板4上に貼られている。
タッチパネル10は、液晶表示装置側の駆動電極E1と、駆動電極E1上に誘電体層14を介して重なる検出電極E2とを有する。検出電極E2上には保護層13が形成されている。
【0036】
「検出面13A」は、保護層13の最表面を指す。
図4(D)のようにタッチパネル10が液晶表示装置1上に貼られた状態ではタッチパネル10を通して表示光がユーザ側に出射されるため、検出面13Aが表示面となる。
【0037】
また、「接触応答部」は、検出面13Aに対し、ユーザが指やペンなどの被検出物で接触または近接する操作を行うと、その操作に応答して電気的変化が生じる部分を指す。したがって、図1〜図3との対応から明らかなように、上記接触または近接に応答して電位変化を生じるための構成、即ち、本例では、少なくとも駆動電極E1、検出電極E2およびその間の誘電体層14を含む部分が、「接触応答部」の一実施例に相当する。
【0038】
駆動電極E1と検出電極E2は、図4(A)〜図4(C)に示すように、互いに直交する方向で分割されている。
ここで、検出面13Aをユーザ側から見ると、図4(A)のように「接触応答部」が複数の領域、例えば第1領域Re1と第2領域Re2に区分されている。第1領域Re1と第2領域Re2のそれぞれに、所定数m本の駆動電極E1が配置されている。図4では、第1領域Re1の駆動電極E1を符号"E11_1〜E11_m"により示し、第2領域Re2の駆動電極E1を符号"E12_1〜E12_m"により示している。
【0039】
各駆動電極E11_1〜E11mまたはE12_1〜E12_mは、比較的太い幅の帯形状を有し、互いに平行に配置されている。
駆動電極E11_1〜E11_mは駆動電極の第1組EU11を構成し、駆動電極E12_1〜E12_mは駆動電極の第2組EU12を構成する。
【0040】
これに対し、検出電極E2は、駆動電極E1とは直交する方向に長い平行ストライプ配置の所定数kの導電層から形成されている。以下、この平行ストライプ状の検出電極の各々を"検出線"と呼ぶ。図4では、この検出線を符号"E2_1〜E2_k"により示している。
【0041】
k本の検出線E2_1〜E2_kは、1つの検出線の組EU2を構成する。本実施形態では検出線の組が1組配置されている。そのため、本実施形態では、検出線の組(所定数kの検出線)が、第1領域Re1と第2領域Re2の各々に対して同じように交差している。より詳細には、駆動電極と検出線の重なりの態様が、第1領域Re1と第2領域Re2で同じである。
【0042】
以上のように配置されたk本の検出線E2_1〜E2_kの一方端に、「検出部」としての検出回路8が接続されている。検出回路8は、図1および図2に示す電圧検出器DETを基本検出単位として有する。k個の検出線E2_1〜E2_kから、それぞれ検出信号Vdet(図3参照)が検出回路8の対応する電圧検出器DETに入力されるようになっている。
【0043】
また、駆動電極E11_1〜E12_mに対して接触駆動走査部11が接続されている。
本技術の大きな特徴は、この接触駆動走査部11が、第1領域Re1と第2領域Re2に対して駆動電圧の走査を別々に、かつ、並列に実行することである。接触駆動走査部11は、この並列な走査の実行によって、被検出物の接触または近接に応答して「接触応答部」で発生する電気的変化、即ち、ここでは検出線の電位変化を並列に出力する。
【0044】
図5は、タッチ検出動作を行う検出回路8の一構成例を、検出対象の位置を示す電極パターンとともに示す図である。
図5において、斜線により示す駆動電極E11_1が駆動信号源Sに接続されて選択され、それ以外の非選択の駆動電極E11_2〜E11_5がGND電位で保持されている。駆動電極が選択された状態をオン状態、非選択の状態をオフ状態ともいう。
【0045】
図5は、これらの駆動電極群に交差する、ある検出線E2_i(i=1〜k)に接続された電圧検出器DETと、駆動信号源Sの回路図を示している。検出線E2_iと各対向電極との各交差部分に、(静電)容量素子C1_1〜C1_5が形成される。なお、本実施形態では実際には、前述したようにm個の駆動電極からなる駆動電極の第1組EU11と第2組EU12が並列に駆動される。
【0046】
図5に図解する駆動信号源Sは、制御部91と、2つのスイッチSW(+),SW(-)と、ラッチ回路92と、バッファ回路(波形整形部)93と、出力スイッチSWとを有する。
制御部91は、プラス電圧V(+)とマイナス電圧V(-)を各々がスイッチする2つのスイッチSW(+),SW(-)と、出力スイッチSWとを制御する回路である。制御部91は、駆動信号源S内に設けなくとも、外部のCPU等で代用できる。
【0047】
スイッチSW(+)はプラス電圧V(+)とラッチ回路92の入力との間に接続され、スイッチSW(-)はマイナス電圧V(-)とラッチ回路92の入力との間に接続されている。ラッチ回路92の出力はバッファ回路93を介して、出力スイッチSWのオン側ノードに接続されている。バッファ回路93はプラス電圧V(+)とマイナス電圧V(-)に、入力電位を電位補償して出力する回路である。
【0048】
ここで出力スイッチSWは、制御部91により制御されて、当該駆動信号源Sをオン(選択状態あるいは活性状態)とするか、非活性のGND接続とするかを制御する。この制御部91の機能は他の駆動信号源Sとの制御と同期させる関係上、通常は、たとえば活性化する駆動信号源Sのグループをシフトして選択する信号を、シフトレジスタ等で順送りする等の構成によって実施される。
【0049】
(静電)容量素子C1_1〜C1_5が接続された検出線E2に、電圧検出器DETが接続されている。
図5に図解する電圧検出器DETは、OPアンプ回路81、整流回路82および出力回路83から構成される。
【0050】
OPアンプ回路81は、OPアンプ84、抵抗R1とR2、および、容量C3により図示のように構成され、ノイズ除去のためのフィルタ回路を形成する。このフィルタ回路は抵抗の比等で増幅率が決まり、信号増幅回路としても機能する。
【0051】
OPアンプ84の非反転入力「+」に検出線E2が接続され、ここから検出信号Vdetが入力される。検出線E2は、その電位のDCレベルを電気的に固定するために抵抗Rを介して接地電位に接続されている。OPアンプ84の出力と反転入力「−」との間に抵抗R2と容量C3が並列接続され、OPアンプ84の反転入力「−」と接地電位との間に抵抗R1が接続されている。
【0052】
整流回路82は、半波整流を行うダイオードD1と、充電キャパシタC4と、放電抵抗R0とを有する。ダイオードD1のアノードがOPアンプ回路81の出力に接続され、ダイオードD1のカソードと接地電位との間に、充電キャパシタC4と放電抵抗R0がそれぞれ接続されている。充電キャパシタC4と放電抵抗R0により平滑回路が形成される。
【0053】
ダイオードD1のカソード(整流回路82の出力)電位が、出力回路83を介してデジタル値として読み出される。図5に示す出力回路83は、閾値と電圧比較を実行するコンパレータ85のみ示す。出力回路83はADコンバータの機能も有する。ADコンバータは、抵抗ラダー型や容量分割型などコンバータのタイプは任意である。出力回路83は、入力したアナログ信号をコンパレータ85によって閾値Vth(図3(A)参照)と比較する。コンパレータ85は、CPUなどの制御回路(不図示)の機能として実現してもよい。この比較結果が、タッチされたか否かを示す信号、例えばボタン操作の有無を示す信号として各種アプリケーションに利用される。
【0054】
コンパレータ85の参照電圧としての閾値Vtは、CPUなどの制御部によって変更可能であり、これにより、検出信号Vdetの電位を判別可能である。
図4に説明を戻す。
【0055】
図4に示す接触駆動走査部11は、駆動信号源Sと、駆動信号源Sとは出力する駆動電圧の位相が反転している反転駆動信号源Sxとを有する。
接触駆動走査部11は、駆動信号源Sにより第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11を交流駆動し、反転駆動信号源Sxにより第2組EU12を交流駆動する。この交流駆動の対象は、駆動電極単位で順次一方向にシフトされ、これにより走査が実行される。走査の向きは、図4では一方の向きに揃えているが、逆でもよい。また、第1組EU11と第2組EU12の両方に対し、往復の走査を繰り返してよく、あるいは、帰線期間を設け同じ一方端を起点とする走査を繰り返してもよい。
【0056】
図6に、本実施形態における逆相駆動と検出線の応答波形とを示す。
なお、この図における「応答波形」は、非常に短い時間だけ指100を検出面13A(図4(D)参照)に接触させ、直ぐに離す、いわゆるインパルス応答時の検出信号Vdetの変化成分を模式的に示すものである。
【0057】
図6に示す第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11の走査(駆動電圧印加のシフト動作)と、第2領域Re2の駆動電極の第2組EU12の走査とは、駆動電圧が逆相となっている。同じ検出線に対応する第1領域Re1の位置(ポイントA)と第2領域Re2の位置(ポイントB)で同時に接触が行われた場合("A+B"と表記)、応答波形は発生しないか発生しても無視できるほど小さい。このことは、両ポイントとも接触がない場合("untouched"と表記)でも同様である。
【0058】
これに対し、ポイントAでの接触で図示のように電位が低下する場合、ポイントBでは電位が上昇する電位変化が発生する。これとは逆に、ポイントAでの接触で電位が上昇する場合、ポイントBでは電位が低下する。一方、ポイントAとBでの同時接触では、この正負の電位が打ち消しあって見かけ上、検出線に電位変化は発生しない。
【0059】
検出回路8および不図示のCPU等を含む「検出部」は、まず、k本の検出線のどの検出線に電位変化が発生したかにより接触位置のx方向アドレスを確定する。また、走査のタイミングと出力変化のタイミングから、接触位置のY方向のアドレスを確定する。このとき、電位変化の発生の程度、即ち正または負の極性によって第1領域Re1への接触であるか、第2領域Re2への接触であるかを識別できる。なお、2箇所の接触のタイミングと接触時間が全く同じであることは極めて稀であるため、同時接触でも何らかの応答波形が出現し、その出現パターン、例えば連続して正負の電位変化が出現する場合は2箇所同時接触と判断することもできる。
【0060】
図6には、第1領域Re1に「書き込み+駆動ボーダー」と表示され、第2領域Re2に「駆動ボーダー」と表示されている。この表示の意味は、液晶表示装置1の表示のための映像信号の書き込みを第1領域Re1で開始すると同時に、第1領域Re1と第2領域Re2で並行して接触駆動走査を開始することを意味している。このように表示駆動と同期させることは任意であるが、接触駆動と表示駆動を同期させるとすると、走査駆動部を兼用できる利点があり好ましい。
【0061】
つぎに、本実施形態における利点を説明する。
本実施形態では、接触検出の駆動走査を同一時間内に2回以上、並列に行うことで1回の走査時間を大きく減らすことが可能となる。
【0062】
これに対し、本技術が適用されない場合、タッチパネル10の1フレーム(F)全部を使って1回の走査を行う場合、その走査周波数60Hz(1Fに対する1回の走査時間は16.7[msec])となる。
【0063】
しかし、このような場合、走査が過ぎてすぐに画面にタッチされた場合は、33.4(=16.7×2)[msec]後の検出となり、その後CPU等での処理が行われて始めて、画面にタッチされたことが認識される。その認識に基づいて、アプリケーションに応じて画像が変化し、操作スイッチの場合はスイッチがオンまたはオフする。
【0064】
たとえば、触った後のアプリケーションソフトウエア処理が50〜100[msec]程度かかるといわれており、ユーザに伝わる反応が100[msec]程度もかかってしまう。この反応をユーザは非常に遅いと感じてストレスとなる。
【0065】
表示とタッチパネルの検出を同期させる場合、上記タッチしてから反応が出現するまでの遅さを改善するためには、書き込むフレーム周波数を増加させる方法が考えられる。
しかし、書き込む周波数を増加させると書き込み不良が発生し、また処理負担が重い画像処理等が必要となる。例えば60[Hz]の信号から画像を作る必要があるため、大がかりな画像処理や消費電力が大幅に増加する等の不利益を被る。
【0066】
本実施形態では、タッチパネルの駆動ラインを同時に2本以上走査して、そのうちの1つのみで表示のための書き込みを行い、他方は書き込みを伴わず接触検出の駆動電極のみ交流駆動する。
【0067】
そのため、タッチパネルのスキャン周波数は、2つの検出駆動走査を同時に行う場合は2倍に、3つの検出駆動走査を同時に行う場合は3倍にすることが可能となる。なお、上記例では反転駆動する領域を2つ設けたが、一般には、領域をN個設ける場合、その駆動電圧の位相を1周期のN等分ずつずらすとよい。その場合、単に検出線電位変化の正負の極性だけでは判別が困難な場合がある。その場合、極性に加えて、その電位変化のレベルを、図5に示すコンパレータの基準電位を変えながら判別することで、接触が生じた領域の識別が可能である。
【0068】
なお、表示装置の書き込みと同期させる必要は必ずしもなく、その場合でも接触検出の駆動周波数が低減するため、その分、消費電力を抑制し、あるいは、タッチパネルの応答性を高めることが可能となる。
【0069】
《第2実施形態》
本実施形態では複数の領域、例えば領域数が2の場合、第1領域Re1と第2領域Re2で接触駆動電圧の振幅を異なるレベルで供給する。
【0070】
図7に領域数および振幅レベル数が2の場合、図8と図9に領域数および振幅レベル数が3の場合の応答波形を示す。
図7に示す実施例では、第1領域Re1の駆動電極の第1組EU11に供給する駆動電圧と、第2領域Re2の駆動電極の第2組EU12に供給する駆動電圧とが振幅において異なる。図7は、後者の駆動電圧の振幅が前者の駆動電圧の振幅のほぼ2倍程度である場合を例示する。両駆動電圧は位相が同じである。
【0071】
この駆動電圧の位相が同じで振幅差があること以外は、第1実施形態と同じである。よって、図4で接触駆動走査部11が反転駆動信号源Sxに代えて、振幅が2倍の同相交流信号源を有する以外、図4は第2実施形態でも適用される。また、図5も同様に適用される。
【0072】
図7に示すように、非接触(untouched)の場合で応答波形の波高値が最も大きい。次に応答波形の波高値が大きいのは、駆動振幅が小さい側のポイントA(第1領域Re1)をタッチした場合である。その次に応答波形の波高値が大きいのは、駆動振幅が大きい側のポイントB(第2領域Re2)をタッチした場合である。そして、両方のポイントを同時にタッチした場合、応答波形の波高値が最も低下して最小となる。検出回路8は、図5のコンパレータ85の参照電圧(閾値Vt)を変え、このレベル差を検出することによって、どの領域がタッチされたかを識別できる。
【0073】
図8に示す例ではさらに領域が1つ増えて、第3領域Re3を有する場合を示す。
第3領域には駆動電極の第3組EU13が設けられている。第3組EU13の駆動電極は、接触駆動走査部11(図4参照)によって、最も大きな振幅の駆動電圧が印加される。
【0074】
図8では、同じ検出線に対する第1領域Re1内の指100の接触点をポイントY1、第2領域Re2内の接触点をポイントY2、第3領域Re3内の接触点をポイントY3と表記する。また、ポイントY1での駆動電圧を"V1"とすると、ポイントY2では"2×V1"、ポイントY3では"3×V1"の振幅の交流パルスが印加されるとしている。
【0075】
電圧検出器DETにおける検出線の検出電圧が、ポイントY1のみの接触時にA1からB1(<A1)へと小さくなった場合に、その変化する電圧比(以下、変化率という)を、"b(=B1/A1)"とおく。その場合、ポイントY2のみ接触時、ポイントY3のみの接触時も同じ変化率bで検出線の電位が変化する。
【0076】
一方、どのポイントにも接触がない(untouchedの)場合、応答波形の波高値は、3種類の駆動電圧の波高値を合計した6A1(=A1+2A1+3A1)となる。また、複数のポイントで接触が同時に行われた場合、そのポイントの組み合わせに応じて異なる電位変化が発生する。
【0077】
図9に、全ての組み合わせにおける電位変化(電位低下)を重ねて示す。
図9から、どのような組み合わせで接触が生じたかは、その検出線の電位低下のレベルで一意に確定できる。このレベル認識も、例えば図5のコンパレータ85の参照電圧(閾値Vt)を変えることで実行できる。
【0078】
《第3実施形態》
本実施形態ではk本の検出線の組EU2を2つ設ける。
【0079】
図10に逆相駆動の場合、図11に同相駆動の場合の応答波形を示す。
図10および図11に示すように、第1領域Re1と第2領域Re2に同じようにして交差する検出線の組(以下、第1組EU21という)を有することは、上記第1〜第2実施形態と同じである。本実施形態では、さらに、第2領域Re2に対してのみ交差するもう1組のk本の検出線を設ける。この追加したk本の検出線を、以下、検出線の第2組EU22と呼ぶ。
【0080】
検出線の第1組EU21の一方端には、電圧検出器DETaがk個含まれる検出回路8aが接続されている。同様に、検出線の第2組EU22の一方端には、電圧検出器DETbがk個含まれる検出回路8bが接続されている。検出回路8aと8bを含む構成が"2つの検出部"の実施例に該当する。
【0081】
このように領域に対し交差の仕方が異なる2組の検出線を設け、さらに、検出線の各組で検出器を分けて設けると、図10のように検出器の入力に現れる応答波形が得られる。
電圧検出器DETaでは図6と同様な応答波形となる。
【0082】
一方、電圧検出器DETbでは、非接触時(untouched)とポイントAの接触時で正の応答波形、ポイントBとポイントA+Bの接触時で、それより電位が低下した正の応答波形となる。ここでポイントAとポイントBでは、検出電圧の最大波高値が異なる。これは、電圧検出器DETaとDETbでは、それぞれに接続された検出線の長さが異なり、その結果、負荷容量が異なるためである。図10ではポイントAでの最大波高値を符号"A1"により示し、ポイントBでの最大波高値を符号"B1"により示す。
【0083】
第3実施形態では、特にポイントA+Bと非接触時(untouched)が、第1実施形態より確実に識別できるという利点がある。
図11は、図10の逆相駆動を同相駆動とした場合である。
【0084】
この場合も図10と同様に、検出線の長さに起因した負荷容量の違いによって、電圧検出器DETaとDETbでは、検出電圧の最大波高値が異なる。ここでもポイントAでの最大波高値を符号"A1"により示し、ポイントBでの最大波高値を符号"B1"により示す。また、駆動電圧振幅をV1により表す。
【0085】
ポイントAとポイントBの双方が非接触(untouched)の場合、電圧検出器DETaに入力される検出電圧が最大波高値A1を維持し、電圧検出器DETbに入力される検出電圧が最大波高値B1を維持する。
【0086】
ポイントAのみの接触の場合、電圧検出器DETbでは最大波高値B1の出力状態に変化がないが、電圧検出器DETaの検出電圧が最大波高値A1から変化率f(0<f<1)で低下する。
【0087】
ポイントBのみの接触の場合、ポイントAのみの接触の場合からさらに、電圧検出器DETbにおいても、最大波高値B1から変化率fで検出電圧が低下する。
ポイントAとポイントBの同時接触の場合、ポイントBのみの接触の場合からさらに、電圧検出器DETaに変化率fの検出電圧低下が生じる。このとき電圧検出器DETaに入力される検出電圧は、初期の最大波高値A1から2fの割合で電圧低下が観測される。
【0088】
したがって、図11に示す駆動法においても、接触と非接触の組み合わせである4つの場合を確実に識別できる利点がある。
このような検出線の重なり方と駆動電圧の仕方が違うこと以外は、第1実施形態の図4および図5が、本第3実施形態でも適用できる。
【0089】
なお、第3実施形態と第2実施形態を任意に組み合わせることができる。
以上より、『検出部は、検出線の交差の仕方と駆動の仕方の少なくとも一方が領域間で異なることに応じて発生する検出線の電圧変化パターンに基づいて接触が発生した領域の識別を行うことができる』。
【0090】
《第4実施形態》
図12に、第4実施形態の構成図を示す。
【0091】
図12に示す駆動法では、k個の検出線の組を第1領域Re1と第2領域Re2で完全に分離している。例えば、第1領域Re1側の検出線に検出回路8aを接続し、第2領域Re2側の検出線に検出回路8bを接続している。そのため図12に示すように、望ましくは、2つの検出回路8aと8bが走査方向の両側に配置される。
【0092】
第4実施形態では、駆動電圧が同じでも検出線と検出回路の組み合わせが別系統であるため、どの領域への接触かは容易に判別できる。
しかし、表示パネルに適用する場合には検出回路の配置スペースに無駄が生じやすい。つまり、表示パネルは、その有効表示領域を可能な限り大きくし、枠スペースを可能な限り小さくする要請がある。この要請は特に小型の電子機器に搭載される表示パネルに対して強い。一般に、この枠スペースの無駄を省くために、表示パネルと外部との信号や電圧の入出力は、表示パネルの片側(一辺側)からフレキシブル基板等によってまとめて行うことが多い。
【0093】
そのような入出力形態には図12の検出回路配置はマッチングが悪い。図12のように2つの検出回路を両側配置できない場合、片方の検出回路への配線を表示パネルの外周の半周分引き回す必要がある。しかし、微小な信号電位がノイズに影響されてS/N比が低下する懸念がある。よって、検出回路8の信号増幅率を上げるなど余分な回路負担が強いられる。
【0094】
しかし、本実施形態の方法は、領域判定に関しては最もシンプルで確実な方法であり、検出回路の配置の自由度が高い場合に好適な実施形態である。
【0095】
《第5実施形態》
第5実施形態では、タッチパネルの機能を液晶表示パネル内に内蔵させる。この場合、好ましくは、表示駆動電極の一部と検出駆動電極を兼用する。また、検出駆動が表示に影響しない工夫が必要になる。
【0096】
なお、本実施形態は、上記第1〜第4実施形態と任意に組み合わせることができる。検出駆動における動作は、既に説明したため、以下、表示装置の構成と動作を、詳しく説明する。
【0097】
液晶表示装置は、複数の画素で共通な電極として、画素ごとに階調表示のための信号電圧に対し基準電圧を付与するコモン駆動信号Vcomが印加される電極(対向電極)を有する。本実施形態では、この対向電極をセンサ駆動のための電極としても用いる。
【0098】
図13は、画素の等価回路図である。また、図14は、表示パネルの概略的な平面図と断面図である。
液晶表示装置1は、図13に示す画素PIXがマトリクス配置されている。
【0099】
各画素PIXは、図13に示すように、画素のセレクト素子としての薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor、以下、TFT23と表記)と、液晶層6の等価容量C6と、保持容量(付加容量ともいう)Cxとを有する。液晶層6を表す等価容量C6の一方側の電極は、画素ごとに分離されてマトリクス配置された画素電極22であり、他方側の電極は複数の画素で共通な対向電極43である。
【0100】
TFT23のソースとドレインの一方に画素電極22が接続され、TFT23のソースとドレインの他方に信号線SIGが接続されている。信号線SIGは不図示の垂直駆動回路に接続され、信号電圧を持つ映像信号が信号線SIGに垂直駆動回路から供給される。
【0101】
対向電極43には、コモン駆動信号Vcomが与えられる。コモン駆動信号Vcomは、中心電位を基準として正と負の電位を、1水平期間(1H)ごとに反転した信号である。
【0102】
TFT23のゲートは行方向、即ち表示画面の横方向に並ぶ全ての画素PIXで電気的に共通化され、これにより走査線SCNが形成されている。走査線SCNは、不図示の垂直駆動回路から出力され、TFT23のゲートを開閉するためのゲートパルスが供給される。そのため走査線SCNはゲート線とも呼ばれる。
【0103】
図13に示すように、保持容量Cxが等価容量C6と並列に接続されている。保持容量Cxは、等価容量C6では蓄積容量が不足し、TFT23のリーク電流などによって書き込み電位が低下するのを防止するために設けられている。また、保持容量Cxの追加はフリッカ防止や画面輝度の一様性向上にも役立っている。
【0104】
このような画素が配置された液晶表示装置1は、断面構造(図14(D))で見ると、断面に現れない箇所で図13に示すTFT23が形成され画素の駆動信号(信号電圧)が供給される基板(以下、駆動基板2という)を有する。また、液晶表示装置1は、駆動基板2に対向して配置された対向基板4と、駆動基板2と対向基板4との間に配置された液晶層6とを有する。
【0105】
駆動基板2は、図13のTFT23が形成された回路基板としてのTFT基板21(基板ボディ部はガラス等からなる)と、このTFT基板21上にマトリクス配置された複数の画素電極22とを有する。
【0106】
TFT基板21に、各画素電極22を駆動するための図示しない表示ドライバ(垂直駆動回路、水平駆動回路等)が形成されている。また、TFT基板21に、図13に示すTFT23、ならびに、信号線SIGおよび走査線SCN等の配線が形成されている。TFT基板21に、タッチ検出動作を行う検出回路8等(図5)が形成されていてもよい。
【0107】
対向基板4は、ガラス基板41と、このガラス基板41の一方の面に形成されたカラーフィルタ42と、カラーフィルタ42の上(液晶層6側)に形成された対向電極43とを有する。カラーフィルタ42は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を周期的に配列して構成したもので、画素PIX(または画素電極22)ごとにR、G、Bの3色の1色が対応付けられている。なお、1色が対応付けられている画素を「サブ画素」といい、R、G、Bの3色のサブ画素の集合を「画素」という場合があるが、ここではサブ画素も「画素PIX」と表記する。
【0108】
対向電極43は、タッチ検出動作を行うタッチセンサの一部を構成するセンサ駆動電極としても兼用されるものであり、図1および図2における駆動電極E1に相当する。
対向電極43は、コンタクト導電柱7によってTFT基板21と連結されている。このコンタクト導電柱7を介して、TFT基板21から対向電極43に交流パルス波形のコモン駆動信号Vcomが印加されるようになっている。このコモン駆動信号Vcomは、図1および図2の駆動信号源Sから供給されるACパルス信号Sgに相当する。
【0109】
ガラス基板41の他方の面(表示面側)には、検出電極44(44_1〜44_k)が形成され、さらに、検出電極44の上には、偏光板45が形成されている。検出電極44は、タッチセンサの一部を構成するもので、図1および図2における検出電極E2に相当する。ガラス基板41に、タッチ検出動作を行う検出回路DET(図5)が形成されていてもよい。
【0110】
液晶層6は、「表示機能層」として、印加される電界の状態に応じて厚さ方向(電極の対向方向)を通過する光を変調する。液晶層6は、例えば、TN(ツイステッドネマティック)、VA(垂直配向)、ECB(電界制御複屈折)等の各種モードの液晶材料が用いられる。
【0111】
なお、液晶層6と駆動基板2との間、および液晶層6と対向基板4との間には、それぞれ配向膜が配設される。また、駆動基板2の反表示面側(即ち背面側)と対向基板4の表示面側には、それぞれ偏光板が配置される。これらの光学機能層は、図14で図示を省略している。
【0112】
対向電極43は、図14(A)に示すように、画素配列の行または列、本例では列の方向(図の縦方向)に分割されている。この分割の方向は、表示駆動における画素ラインの走査方向、すなわち不図示の垂直駆動回路が走査線SCNを順次活性化していく方向と対応する。
【0113】
対向電極43は、駆動電極を兼ねることに基づく必要性から、合計でn個に分割されている。よって、対向電極43_1,43_2,…,43_m,…,43_nは、行方向に長い帯状のパターンを有して面状配置され、当該面内で互いの離間距離をとって平行に敷き詰められている。
【0114】
n分割された対向電極43_1〜43_nは、少なくとも2以上のm(<n)本で同時に駆動される。つまり、m本の対向電極43_1〜43_mに同時にコモン駆動信号Vcomが印加されて、その電位が反転を1水平期間(1H)ごとに繰り返す。そのとき、他の対向電極は、駆動信号が与えられないため電位変動しない。本技術の実施形態では、この同時駆動される対向電極の束を、交流駆動電極ユニットEUと表記する。
【0115】
本実施形態では、交流駆動電極ユニットEUごとに対向電極の数は一定の数mとする。また、交流駆動電極ユニットEUが、その束ねる対向電極の組み合わせを変えながら列方位にステップ状にシフトする。つまり、シフトごとに交流駆動電極ユニットEUとして選択される対向電極の組み合わせが変化する。そして、2回のシフトでは1つの、分割された対向電極のみが選択から外れ、代わりに、分割された対向電極が新たに選択される。
【0116】
このように、n個の対向電極43_1〜43_nは、列方向の画素数だけ等間隔に配置されている。n個の対向電極43_1〜43_nは、Vcom交流駆動を繰り返す際に、1つの交流駆動電極ユニットEUとして選択するm(<n)個の対向電極の組み合わせを、列方向内で対向電極が配置されたピッチを単位にシフトする。ここで「対向電極のピッチ」とは、列方向の対向電極の幅と、その幅方向の片側に隣接する他の対向電極までの離間距離との合計した距離である。通常、列方向における対向電極のピッチは、列方向における画素サイズに等しい。
【0117】
このような対向電極の交流駆動電極ユニットEUを単位とするVcom駆動と、そのシフト動作は、不図示の垂直駆動回路(書き込み駆動走査部)内に設けられた、「表示駆動走査部」としてのVcom駆動回路9により行われる。Vcom駆動回路9の動作は、「m本の対向電極の配線を同時にVcom交流駆動する駆動信号源S(図1および図2参照)を列方向に移動して、選択する対向電極を1つずつ変えながら列方向に走査する動作」に等しいとみなせる。
【0118】
なお、図14(A)と図14(B)は電極パターン説明のために分けた図であるが、実際には、図14(C)のように対向電極43_1〜43_mと検出電極44_1〜44_kとは重ねて配置され、2次元平面内の位置検出が可能になっている。
【0119】
この構成によって、検出回路8は、どの電圧検出器DETに電圧変化が生じたかで行方向の位置が検出でき、その検出時のタイミングによって列方向の位置情報を得ることができる。
【0120】
つぎに、以上の駆動信号源Sを基本構成とするVcom駆動回路9による、対向電極43のシフトおよび交流駆動について、図面を用いて説明する。
図15(A)に、画素表示ライン単位(書き込みユニットともいう)で分割された対向電極43_1〜43_nを示す。図15(B)に、そのうちの最初の1本である対向電極43_1の駆動時におけるタッチセンサ部の等価回路図を示す。
【0121】
図15(A)に示すように対向電極43_1に駆動信号源Sが接続されてVcom交流駆動されている。このときタッチセンサ部は、既に説明したように図15(B)のような等価回路が形成される。ただし、ここでは容量素子C1_1〜C1_nの各静電容量値を"Cp"、検出電極44に、容量素子C1_1〜C1_n以外に接続されている容量成分(寄生容量)を"Cc"、駆動信号源Sによる交流電圧の実効値を"V1"と表す。
【0122】
このとき電圧検出器DETで検出される検出信号Vdetは、指が非接触のときは電圧Vs、指が接触のときは電圧Vfとなる。以下、電圧Vs,Vfをセンサ電圧という。
非接触時のセンサ電圧Vsは、図15(C)のような式によって表される。この式から、対向電極43の分割数nが大きいと、その分、各静電容量値Cpは小さくなる。図15(C)の式の分母は"nCp"がほぼ一定なため余り大きな変化がないが、分子が小さくなる。よって、対向電極43の分割数nが大きくなるにしたがって、センサ電圧Vsの大きさ(交流の実効値)も小さくなる。
【0123】
したがって、分割数nは余り大きくできない。
一方、分割数nが小さく、1つの対向電極43_1の面積が大きいと、そのVcom交流駆動が電極間で切り替わる時の微妙な電位変動(過渡的な電位変動)が表示画面で線として見えてしまう。
【0124】
そこで、本実施形態では前述したように、分割自体は画素表示ライン(書き込みユニット)ごとに行うが、複数の対向電極を同時にVcom交流駆動する。また、一部の分割された対向電極は、2回連続して選択する。これにより、分割数nが大きくなることによるセンサ電圧の低下(S/N比の低下)と、電極切り替わり時の電位変動の希釈化(目立たなくすること)とを同時に達成する。
【0125】
図16に、この交流駆動とシフトの動作説明図を示す。
図16において斜線により示す7本の対向電極により交流駆動電極ユニットEUが構成されている。図16(A)〜(C)は、交流駆動電極ユニットEUを1画素ライン単位で列方向にシフトさせたときの選択範囲の推移を示す。
【0126】
図16(A)の時間T1では、最初の1つの書き込みユニットは非選択であるが、2番目から8番目のラインに対応した対向電極が選択されて同時に駆動信号源Sで交流駆動されている。次のサイクル(時間T2)では、1つの書き込みユニット分シフトし、1番目と2番目のラインに対応する2つの対向電極が非選択、3番目以降の7本が選択、その他が非選択となっている。さらにその次のサイクル(時間T3)では、さらに1つの書き込みユニット分シフトし、1〜3番目のラインに対応する対向電極が非選択、4番目以降の7本が選択、その他が非選択となる。
【0127】
以後、同様にシフトと交流駆動を繰り返す。
この動作により、図15(C)に示した式におけるnの値は、実際の分割数の1/7に低減されてセンサ電圧Vsの実効値がその分、大きくなる。一方、図16に示すように、選択グループに新たに含まれ、それに変わって含まれなくなる単位が1画素ラインに対応する1つの対向電極である。よって、交流駆動の切り替わり周波数がコモン駆動信号Vcomの1H反転周波数と等しくなる。この周波数は商用電源周波数、例えば60[Hz]を列方向の画素数倍した非常に高い周波数となる。たとえば列方向の画素数が480の場合、この周波数は28.8[kHz]、パルス波形の周波数としては、その半分の14.4[kHz]となる。よって、交流駆動のシフトに起因する画像変化は、人の目に視認できない十分に高い周波数となる。
【0128】
以上より、センサ電圧の低下によるS/N比低下の防止と、電極駆動の切り替えによる画質低下の防止が両立できる。
次に、以上のような構成の表示装置の動作を説明する。
【0129】
駆動基板2の表示ドライバ(図示しない水平駆動回路および垂直駆動回路等)は、対向電極43の各電極パターン(対向電極43_1〜43_n)に対してコモン駆動信号Vcomを線順次で供給する。このとき、対向電極の選択の仕方とシフトの仕方は、上述したとおりである。コモン駆動信号Vcomは、画像表示の対向電極電位制御のためにも用いられる。
【0130】
また、表示ドライバは、信号線SIGを介して画素電極22へ信号電圧を供給すると共に、これに同期して、走査線SCNを介して各画素電極のTFTのスイッチングを線順次で制御する。これにより、液晶層6には、画素ごとに、コモン駆動信号Vcomと各画素信号とにより定まる縦方向(基板に垂直な方向)の電界が印加されて液晶状態の変調が行われる。このようにして、いわゆる反転駆動による表示が行われる。
【0131】
一方、対向基板4の側では、対向電極43の各電極パターン(対向電極43_1〜43_n)と、検出電極44の各電極パターン(検出電極44_1〜44_k)との交差部分にそれぞれ容量素子C1が形成される。対向電極43の各電極パターンにコモン駆動信号Vcomを時分割的に順次印加していくと、その印加された対向電極43の電極パターンと検出電極44の各電極パターンとの交差部分に形成されている一列分の容量素子C1の各々に対する充放電が行われる。その結果、容量素子C1の容量値に応じた大きさの検出信号Vdetが、検出電極44の各電極パターンからそれぞれ出力される。対向基板4の表面にユーザの指が触れられていない状態においては、この検出信号Vdetの大きさはほぼ一定(センサ電圧Vs)となる。コモン駆動信号Vcomのスキャンに伴い、充放電の対象となる容量素子C1の列が線順次的に移動していく。
【0132】
ここで、対向基板4の表面のいずれかの場所にユーザの指が触れると、そのタッチ箇所に元々形成されている容量素子C1に、指による容量素子C2が付加される。その結果、そのタッチ箇所がスキャンされた時点の検出信号Vdetの値(センサ電圧Vs)が他の箇所よりも小さくなる(センサ電圧Vf(<Vs)となる)。検出回路8(図5)は、この検出信号Vdetを閾値Vtと比較して、検出信号Vdetが閾値Vt以下の場合に、その箇所をタッチ箇所として判定する。このタッチ箇所は、コモン駆動信号Vcomの印加タイミングと、閾値Vt以下の検出信号Vdetの検出タイミングとから求めることができる。
【0133】
このように、本実施形態によれば、液晶表示素子に元々備えられている液晶駆動の共通電極(対向電極43)を、駆動電極と検出電極とからなる一対のタッチセンサ用電極の一方(駆動電極)と兼用する。また、本実施形態によれば、表示駆動信号としてのコモン駆動信号Vcomをタッチセンサ駆動信号として共用するようにして、静電容量型タッチセンサを構成している。よって、新たに設ける電極は検出電極44だけでよく、また、タッチセンサ駆動信号を新たに用意する必要がない。したがって、構成が簡単である。
【0134】
また、複数の対向電極を同時に交流駆動し、その同時に交流駆動する電極グループを、各対向電極が2回の交流駆動で共に選択されるようにシフトする。このため、センサの検出電圧のS/N比低下と画質低下の防止を両立できる。
【0135】
さらにコモン駆動信号Vcomの駆動電極と駆動回路を、センサ駆動電極と駆動回路と兼用できるため、その分の配置スペースと消費電力の節約ができる。
なお、図4および図6において、検出電極44は細い幅のラインとして示すが、行方向に大きな幅に形成してもよい。この幅は、容量素子C1の容量値が小さ過ぎて、より大きくしたい場合に、電極幅を大きく対処できる。逆に、例えば誘電体Dが薄いために容量素子C1の容量値が大き過ぎて、より小さくしたい場合は、電極幅を小さくして対処できる。
【0136】
また、上記第1〜第4の実施形態における領域の識別は、この検出電極44(検出線E2)の幅を領域で変えることによっても可能である。
第5実施形態では、分割された対向電極の1ピッチごとに、同時駆動する対向電極グループ(交流駆動電極ユニットEU)をシフトしたが、これに限定されない。
【0137】
また、断面構造内において検出電極44を、カラーフィルタ42を挟んで対向電極43と対抗する位置に形成してもよい。
【0138】
《第6実施形態》
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態は、上記第5実施形態の場合とは異なり、表示素子として横電界モードの液晶素子を用いるようにしたものである。
【0139】
図17は、本実施形態の表示装置の概略的な断面構造図である。図17で、第5実施形態と同一の構成は、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態の表示装置が、電極の位置に限り(パターンは異なる)、第5実施形態と異なる点は、対向電極43を駆動基板2側に配置することである。本実施形態における対向電極43は、画素電極22の液晶層6と反対の側に画素電極22と対向して配置されている。ここで対向といっても、特に図示しないが、画素電極22同士の間の距離が比較的大きく取られ、画素電極22の間から対向電極43が液晶層6に電界を作用させる。つまり、液晶層6に対する電界の作用する方向が横方向の横電界モードの液晶表示となる。
【0140】
その他の構成は、断面における配置に限れば、第1実施形態と第2実施形態とは同じとなる。
容量素子C1は、検出電極44と対向電極43との間に形成されるため、第5実施形態(図14(D))に比べると、容量値が低くなる。しかし、電極間隔が遠くなることを、電極幅を大きくするなどで補うような対処が可能であり、また、容量素子C2との関係で感度が大きくなる場合もある。
【0141】
液晶層6は、電界の状態に応じてそこを通過する光を変調するものであり、例えば、FFS(フリンジフィールドスイッチング)モードや、IPS(インプレーンスイッチング)モード等の横電界モードの液晶が用いられる。
【0142】
つぎに、図18を参照して、より詳細に説明する。
図18に示すFFSモードの液晶素子においては、駆動基板2上に形成された対向電極43の上に、絶縁層25を介して、櫛歯状にパターニングされた画素電極22が配置され、これを覆うように配向膜26が形成される。この配向膜26と、対向基板4側の配向膜46との間に、液晶層6が挟持される。2枚の偏光板24,45は、クロスニコルの状態で配置される。2枚の配向膜26,46のラビング方向は、2枚の偏光板24,45の一方の透過軸と一致している。図17では、ラビング方向が出射側の偏光板45の透過軸と一致している場合を図示してある。さらに、2枚の配向膜26,46のラビング方向および偏光板45の透過軸の方向は、液晶分子が回転する方向が規定される範囲で、画素電極22の延設方向(櫛歯の長手方向)とほぼ平行に設定されている。
【0143】
次に、以上のような構成の表示装置の動作を説明する。
ここではまず、図18および図19を参照して、FFSモードの液晶素子の表示動作原理について簡単に説明する。ここで、図19は液晶素子の要部断面を拡大して表したものである。これらの図で、(A)は電界非印加時、(B)は電界印加時における液晶素子の状態を示す。
【0144】
対向電極43と画素電極22との間に電圧を印加していない状態では(図18(A)、図19(A))、液晶層6を構成する液晶分子61の軸が入射側の偏光板24の透過軸と直交し、かつ、出射側の偏光板45の透過軸と平行な状態となる。このため、入射側の偏光板24を透過した入射光hは、液晶層6内において位相差を生じることなく出射側の偏光板45に達し、ここで吸収されるため、黒表示となる。一方、対向電極43と画素電極22との間に電圧を印加した状態では(図18(B)、図19(B))、液晶分子61の配向方向が、画素電極間に生じる横電界Eにより、画素電極22の延設方向に対して斜め方向に回転する。この際、液晶層6の厚み方向の中央に位置する液晶分子61が約45度回転するように白表示時の電界強度を最適化する。これにより、入射側の偏光板24を透過した入射光hには、液晶層6内を透過する間に位相差が生じ、90度回転した直線偏光となり、出射側の偏光板45を通過するため、白表示となる。
【0145】
なお、タッチセンサ部に関しては、断面構造内の電極配置が異なるのみで、基本的な動作は第1〜第4実施形態と共通する。つまり、Vcom交流駆動とシフトの繰り返しにより対向電極43を列方向で駆動し、そのときのセンサ電圧VsとVfの差を、電圧検出器DETを介して読み取る。デジタル値として読み取ったセンサ電圧Vsを閾値Vtと比較し、指の接触または接近の位置をマトリクス状に検出する。
【0146】
このとき、第1実施形態と同様に、図16に示すように、m本(図16ではm=7)同時に対向電極43を交流駆動し、1つの書き込みユニットに対応する1本の対向電極43ずつずらしてシフトしてから再度交流駆動を行い、このシフトと交流駆動を繰り返す。このため、図15(C)に示した式におけるnの値は、実際の分割数の1/mに低減されてセンサ電圧Vsがその分、大きくなる。一方、図16に示すように、選択グループに新たに含まれ、それに変わって含まれなくなる単位が1画素ラインに対応する1つの対向電極である。よって、交流駆動の切り替わり周波数がコモン駆動信号Vcomの1H反転周波数と等しくなる。この周波数は商用電源周波数、例えば60[Hz]を列方向の画素数倍した非常に高い周波数となる。たとえば列方向の画素数が480の場合、この周波数は28.8[kHz]、パルス波形の周波数としては、その半分の14.4[kHz]と、人の目に視認できない十分に高い周波数となる。
【0147】
以上より、センサ電圧の低下によるS/N比低下の防止と、電極駆動の切り替えによる画質低下の防止が両立できる。
以上の効果に加え、第5実施形態と同様に、Vcom駆動とセンサ駆動の電極の共用により、構成が簡単であるという利点がある。また、コモン駆動信号Vcomの駆動電極と駆動回路を、センサ駆動電極と駆動回路と兼用できるため、その分の配置スペースと消費電力の節約ができる。
【符号の説明】
【0148】
1…液晶表示装置、2…駆動基板、21…TFT基板、22…画素電極、23…TFT、4…対向基板、41…ガラス基板、42…カラーフィルタ、43…対向電極、44…検出電極、6…液晶層、7…コンタクト導電柱、8…検出回路、81…OPアンプ回路、82…整流回路、83…出力回路、10…タッチパネル、11…接触駆動走査部、12…接着層、13…保護層、13A…検出面、14…誘電体層、C1,C2…容量素子、S…駆動信号源、Sx…反転駆動信号源、DET,DETa,DETb…電圧検出器、E1…駆動電極、E2…検出電極(検出線)、Vcom…コモン駆動信号、Vdet…検出信号、Vt…閾値、Vs…センサ電圧(非接触時)、Vf…センサ電圧(接触時)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号が供給される画素電極が形成された第一の基板と、駆動信号が供給される対向電極と、前記第一の基板に対向する第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、を備え、入力される前記映像信号に応じて前記液晶層が透過光量を光変調し、変調後の光を表示面から出力する表示部と、
前記表示部がもつ前記光変調の最小単位である画素の一方向の並びをラインとしたときに、当該ラインごとに前記光変調の駆動電圧を印加する動作を前記ラインと直交する他方向に走査する表示駆動走査部と、
被検出物が前記表示面に接触または近接することに応答して電気的変化を発生する接触応答部と、
前記接触応答部への駆動電圧の印加を前記表示面内の一方向内で走査して、前記電気的変化の出力を時系列に制御する接触駆動走査部と、
を有し、
前記接触駆動走査部は、前記接触応答部の異なる領域に対する複数の走査を並列に実行し、複数の前記電気的変化を並列に出力し、
前記対向電極は、前記表示部の画素のラインごとに前記光変調の前記駆動電圧を印加するとともに前記接触応答部への前記駆動電圧を印加する、
表示装置。
【請求項2】
前記対向電極は、前記第一の基板に形成され、前記画素電極は、前記第一の基板の前記第二の基板側の面に形成され、前記対向電極の上に、絶縁層を介して積層されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記対向電極と、前記画素電極とは、同一平面内に互いに並んで配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示駆動走査部が前記接触応答部のある領域において前記映像信号の書き込みを開始すると同時に、前記映像信号の書き込みを行っている領域と、前記映像信号の書き込みを行っていない異なる領域とにおいて、前記接触駆動走査部が接触駆動走査を開始する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記接触応答部の複数の領域ごとに対応する複数の検出線の組を有し、前記検出線は前記複数の領域において組ごとに分離され、かつ組ごとに異なる検出回路に接続される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の検出線の組は、各領域において前記接触駆動走査部より印加される、同一の駆動信号を検出する、請求項5に記載の表示装置。
【請求項1】
映像信号が供給される画素電極が形成された第一の基板と、駆動信号が供給される対向電極と、前記第一の基板に対向する第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、を備え、入力される前記映像信号に応じて前記液晶層が透過光量を光変調し、変調後の光を表示面から出力する表示部と、
前記表示部がもつ前記光変調の最小単位である画素の一方向の並びをラインとしたときに、当該ラインごとに前記光変調の駆動電圧を印加する動作を前記ラインと直交する他方向に走査する表示駆動走査部と、
被検出物が前記表示面に接触または近接することに応答して電気的変化を発生する接触応答部と、
前記接触応答部への駆動電圧の印加を前記表示面内の一方向内で走査して、前記電気的変化の出力を時系列に制御する接触駆動走査部と、
を有し、
前記接触駆動走査部は、前記接触応答部の異なる領域に対する複数の走査を並列に実行し、複数の前記電気的変化を並列に出力し、
前記対向電極は、前記表示部の画素のラインごとに前記光変調の前記駆動電圧を印加するとともに前記接触応答部への前記駆動電圧を印加する、
表示装置。
【請求項2】
前記対向電極は、前記第一の基板に形成され、前記画素電極は、前記第一の基板の前記第二の基板側の面に形成され、前記対向電極の上に、絶縁層を介して積層されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記対向電極と、前記画素電極とは、同一平面内に互いに並んで配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示駆動走査部が前記接触応答部のある領域において前記映像信号の書き込みを開始すると同時に、前記映像信号の書き込みを行っている領域と、前記映像信号の書き込みを行っていない異なる領域とにおいて、前記接触駆動走査部が接触駆動走査を開始する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記接触応答部の複数の領域ごとに対応する複数の検出線の組を有し、前記検出線は前記複数の領域において組ごとに分離され、かつ組ごとに異なる検出回路に接続される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の検出線の組は、各領域において前記接触駆動走査部より印加される、同一の駆動信号を検出する、請求項5に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−101713(P2013−101713A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−41023(P2013−41023)
【出願日】平成25年3月1日(2013.3.1)
【分割の表示】特願2008−236931(P2008−236931)の分割
【原出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年3月1日(2013.3.1)
【分割の表示】特願2008−236931(P2008−236931)の分割
【原出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】
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