説明

表示装置

【課題】 本発明の目的は、低消費電力かつ高コントラストな表示装置を提供することである。
【解決手段】 赤色を発する有機EL素子と緑色を発する有機EL素子と青色を発する有機EL素子とを有する表示装置であって、青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上するための構造体が設けられていることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機EL素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、基板側に配置される第1電極と、発光層を含む有機化合物層と、第2電極とが積層されて構成されている。有機EL素子を用いた表示装置の課題として消費電力低減があり、有機EL素子の発光効率の向上が求められる。
【0003】
この課題に対して特許文献1では、第1電極と第2電極の両方に金属を用いる共振器構造を導入することにより発光効率の向上を試みている。また、特許文献2では、すべての有機EL素子の光出射側にレンズを配置することで、有機EL素子内に閉じ込められていた光を空気中に取り出すと同時に正面へ集光することで、発光効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−109775号公報
【特許文献2】特開2004−039500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、金属薄膜の反射率は、図2で示すように可視光領域の短波長では小さくなる。そのため、青色、緑色、赤色を発する有機EL素子を備えた表示装置において、光の出射側の電極として金属薄膜を用いる場合には、青色を発する有機EL素子で他の色を発する有機EL素子よりも共振効果が小さくなる。その結果、特許文献1のような共振器構造を導入する場合、青色を発する有機EL素子の発光効率が他の色を発する有機EL素子ほどは向上しない。このため、表示装置全体の消費電力が低下しないという課題がある。
【0006】
また、特許文献2のような、レンズを設ける場合には、レンズ表面における外光の散乱、および、斜入射光がレンズにより正面に反射されるため、コントラストが低下するという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、低消費電力かつ高コントラストな表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、赤色を発する有機EL素子と緑色を発する有機EL素子と青色を発する有機EL素子とを有する表示装置であって、前記青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上させるための構造体が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、蛍光を発する有機EL素子と燐光を発する有機EL素子とを有する表示装置であって、前記蛍光を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上させるための構造体が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低消費電力かつ高コントラストな表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る表示装置の一例を示す斜視模式図および断面模式図
【図2】金属薄膜における反射率の波長分散を示す図
【図3】本発明に係る表示装置の他の例を示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0013】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る表示装置を示す斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素1を複数有している。そして、複数の画素1はマトリックス状に配置され、表示領域2を形成している。なお、画素とは、1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は、有機EL素子であり、画素1のそれぞれに1つの色の有機EL素子が配置された表示装置である。有機EL素子の発光色としては、赤色、緑色、青色が挙げられ、そのほかに黄色、シアンでもよい。また、本実施形態の表示装置には、発光色の異なる複数の画素(例えば赤色を発する画素、緑色を発する画素、及び青色を発する画素)からなる画素ユニットが複数配列されている。画素ユニットとは、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を示す。
【0014】
図1(b)は、図1(a)のA−B線における部分断面模式図である。1つの画素は、基板10上に、第1電極(陽極)11と、正孔輸送層12と、発光層13R,13G,13Bと、電子輸送層14と、第2電極(陰極)15と、を備える有機EL素子3を有している。本発明の有機EL素子3は発光層から放射されて第1電極11に向かう光を反射する反射面を第1電極11に有し、第2電極15から光を出す構成である。また、発光層13Rは赤色を発する発光層、発光層13Gは緑色を発する発光層、発光層13Bは青色を発する発光層である。発光層13R,13G,13Bはそれぞれ、赤色、緑色、青色を発する画素(有機EL素子3)に対応してパターン形成されている。また、第1電極11も、隣の画素(有機EL素子3)の第1電極11と分離されて形成されている。そして、正孔輸送層12と電子輸送層14と第2電極15は、隣の画素と共通で形成されていてもよいし、画素毎にパターン形成されていてもよい。なお、第1電極11と第2電極15とが異物によってショートするのを防ぐために、画素(より具体的には、第1電極11)間に絶縁層20が設けられている。
【0015】
赤色、緑色、青色を発する有機EL素子を発光させて混色させ正面に白色を表示する際の表示装置の消費電力は、有機EL素子の正面の発光効率の影響を受けるため、消費電力を下げるためには各有機EL素子の発光効率[cd/A]を上げることが望ましい。
【0016】
発光効率を向上させる手段としては、回折格子やレンズなどの2次元もしくは3次元からなる発光効率を向上させるための構造体を有機EL素子の光取り出し側に設けることが考案されている。しかし、このような構造体を設けると、構造体表面における外光の散乱や、斜め方向の入射光が回折、散乱、屈折して正面方向の反射光となることによって、コントラストが低下するという課題がある。
【0017】
つまり、消費電力の低減のためには発光効率を向上させるための構造体を設けることが望ましいが、この構造体を設けることによりコントラストの低下を招いてしまう。
【0018】
本発明は、表示装置において重要な課題であるコントラストを損なうことなく、白色表示時の消費電力の低減することを目的とする。具体的には、本実施形態の表示装置では、異なる色を発する複数の有機EL素子のうち消費電力が最も大きい有機EL素子の光出射側にのみ、発光効率を向上させるための構造体が設けられた構成を採っている。図1(b)では、消費電力が最も大きい有機EL素子は青色を発する有機EL素子であり、発光効率を向上させるための構造体はレンズ30である。なお、図1(b)では、レンズ30と各有機EL素子3の間には、水分や酸素から有機EL素子3を保護する保護層40が配置されている。
【0019】
青色を発する有機EL素子が消費電力が最も大きくなる理由は以下のとおりである。光出射側にある第2電極15を5nm以上30nm以下のAgなどの金属薄膜で構成する場合には、図2で示すように、第2電極15の反射率が短波長領域で小さくなっている。これは短波長領域において金属薄膜での吸収が大きいことが理由として考えられる。各有機EL素子の第2電極15として金属薄膜を用いる場合には、各有機EL素子が共振器構造を有する構成となり、発光効率の向上が期待される。ただし、共振器構造は共振部において多重反射を繰り返すため、吸収が大きい部材が存在すると多重反射による吸収増加量が優るため発光効率は向上しない。一般的に金属薄膜は短波長側の吸収が大きいため、青色有機EL素子の共振効果は他の色よりも小さくなり、青色を発する有機EL素子の発光効率は他の色の素子よりも小さくなってしまい、その結果青色有機EL素子の消費電力は他の色の素子よりも大きくなってしまう。なお、共振器構造とは、具体的には第1電極11にある反射面と第2電極15にある反射面との間で多重干渉効果を利用して特定の波長を強めるものである。そして、共振器構造を有する有機EL素子は、第1電極11にある反射面と第2電極15にある反射面との間の光学距離Lは以下の式1を満たすように、有機化合物層の膜厚などが設定されている。
L=(λ/2)×(m+(φ/2π)) ・・・式1
ここで、λは有機EL素子が発する光のスペクトルの最大ピーク波長、mは0以上の整数、φは第1電極11にある反射面と第2電極15にある反射面それぞれで発光層からの光を反射する際の位相シフトの和である。
【0020】
また、青色の発光材料として実用可能な燐光材料の開発は遅れており、青色を発する有機EL素子の発光材料として蛍光材料を使用することが多い。一方で赤色、緑色の燐光材料は実用可能である。赤色の燐光材料としては、化1で表される、btpIr(acac)、Ir(piq)、Ir(tiq)が挙げられ、緑色の燐光材料としては、化2で表される、Ir(ppy)、Ir(CH−ppy)が挙げられる。このため、赤色を発する有機EL素子、緑色を発する有機EL素子において燐光材料を使用した場合、青色を発する有機EL素子とその他の色の有機EL素子との内部量子効率の差は大きくなってしまう。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
なお、基底状態から一重項励起状態へ励起された後、そこから基底状態に戻る際に放射される光を蛍光と呼び、一重項励起状態から三重項励起状態に遷移した後、そこから基底状態に戻る際に放射される光を燐光と呼ぶ。
【0024】
また、有機EL素子が共振器構造を有していなくても、少なくとも第1電極11の金属層によって、短波長(青)領域の光が吸収されるので、青色を発する有機EL素子の発光効率が他の色を発する有機EL素子よりも小さくなってしまう。このため、青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上させるための構造体を設けることが好ましい。
【0025】
さらに、発光色に限らず、蛍光を発する有機EL素子と燐光を発する有機EL素子とを備える表示装置では、内部量子効率の小さい、つまり発光効率の小さい蛍光を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上させるための構造体を設けることも好適である。蛍光を発する有機EL素子と燐光を発する有機EL素子が混載された表示装置の場合、消費電力の大半は蛍光を発する有機EL素子の駆動に用いられている。したがって、蛍光を発する有機EL素子の消費電力を低下させるだけで、表示装置の消費電力を大きく低減することができる。
【0026】
図1(b)のような半球レンズを用いる場合、レンズ30の焦点に有機EL素子の発光層の発光位置が位置されるよう、レンズ30と発光位置の間の距離が規定されるのが好ましい。また、有機EL素子の発光領域がレンズ30のレンズ径に対して小さくする方が光取り出し効率の向上に効果的である。このため、レンズ30が設けられた有機EL素子(消費電力が最も大きい有機EL素子)の発光領域が他の色を発する有機EL素子の発光領域よりも小さいことが望ましい。ただし、有機EL素子の発光領域(開口率)を小さくした場合、発光に必要な電流密度が増大する。燐光を発する有機EL素子は蛍光を発する有機EL素子よりも、電流密度が増大すると発光効率が低下するロールオフ現象が顕著である。このため、発光領域を小さくしても発光効率が小さくならないようにするために、レンズ30が設けられた有機EL素子(消費電力が最も大きい有機EL素子)は蛍光を発する有機EL素子であることが好ましい。
【0027】
基板10は、TFTやMIM等のスイッチング素子(不図示)が形成された絶縁性の基板であり、ガラス、プラスチック等からなる。また、基板10は、スイッチング素子と第1電極11とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された層間絶縁膜を有していてもよい。さらに、基板10には、スイッチング素子の凹凸を平坦化するための平坦化膜を有していてもよい。
【0028】
第1電極11は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属層を用いることができる。さらに、酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層を金属層の上に積層する構成を採ることもできる。第1電極11の膜厚は、50nm以上200nm以下が好ましい。なお、透明とは、可視光域(波長400nm乃至780nm)において40%以上の光透過率を有することをいう。
【0029】
第1電極11にある反射面は、第1電極11が金属層のみからなる場合には金属層と有機化合物層との界面であり、第1電極11が金属層と透明酸化物導電層との積層構成である場合には金属層と透明酸化物導電層との界面である。
【0030】
正孔輸送層12は、正孔注入性、正孔輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。一方、電子輸送層14は、電子注入性、電子輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。また、必要に応じて、正孔輸送層12として、発光層から陽極側に電子が移動するのを抑制するために、電子ブロッキング層を設けることもできる。また、電子輸送層14として、正孔ブロッキング層を設けることもできる。また、正孔輸送層12、電子輸送層14として、発光層で発生した励起子の拡散を抑制するための励起子ブロッキング層を設けることもできる。
【0031】
赤色を発する発光層13R、緑色を発する発光層13G、青色を発する発光層13Bとしては、特に制限はなく公知の材料を適用することが可能である。例えば、発光性とキャリア輸送性を兼ね備える材料の単一層や、蛍光材料、燐光材料等の発光性材料をキャリア輸送性のホスト材料の混合層を適用することができる。
【0032】
各発光層13R,13G,13B、正孔輸送層12、電子輸送層14には、公知の材料を使用することができ、成膜手法も蒸着法や転写法等公知の成膜手法を用いることができる。また、各層の膜厚は、各色の有機EL素子の発光効率を上げるために最適な膜厚にすることが望ましく、それぞれ5nm以上100nm以下の膜厚であることが望ましい。
【0033】
第2電極15は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属薄膜を使用することができる。特にAgを含む金属薄膜は吸収率が低く、比抵抗も低いため、第2電極15として好ましい。第2電極15の膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。また、第2電極15は上述した金属薄膜と酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層とが積層された構成であってもよいし、透明酸化物導電層のみで構成されていてもよい。
【0034】
第2電極15にある反射面は、第2電極15が金属層を有する場合には、金属層の有機化合物層側の面である。第2電極15が透明酸化物導電層のみで構成される場合には、透明酸化物導電層と有機化合物層との界面と透明酸化物導電層と保護層40との界面のうち屈折率差が大きい界面が第2電極15にある反射面となる。
【0035】
保護層40は、材料や成膜手法は公知のものを使用することができる。一例としては、窒化珪素や酸窒化珪素、酸化珪素をCVD装置で成膜する方法が挙げられる。保護層40の膜厚は、保護性能を有するために0.5μm乃至10μmであることが好ましい。
【0036】
レンズ30は、水分含有が少ない熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができる。レンズ30の膜厚は、10μm乃至100μmが好ましい。熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂を用いた場合、成膜方法としては、スピンコート法、ディスペンス法などを用いることが可能である。また、保護層40上に、膜厚10μm乃至100μm程度の熱可塑性樹脂のフィルムを真空下にて貼りつける方法も用いることができる。具体的な樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0037】
レンズ30の製造方法は、以下の方法が挙げられる。
(1)レンズの型を用意し、その型を樹脂層に対して押圧してレンズ形状に形成する方法。
(2)フォトリソなどによってパターニングされた樹脂層を熱処理し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させる方法。
(3)均一の厚さに形成された光硬化型樹脂層を、面内方向に分布を持った光で露光し、この樹脂層を現像することによってレンズを形成する方法。
(4)イオンビームあるいは電子ビーム、レーザー等を用いて、均一の厚さに形成された樹脂材料の表面をレンズ形状に加工する方法。
(5)各画素に適量の樹脂を滴下して自己整合的にレンズを形成する方法。
(6)有機EL素子が形成された基板とは別個に、レンズが予め形成された樹脂シートを用意し、両者をアライメントした後、貼り合せることによりレンズを形成する方法。
これ以外でもレンズ形成可能な方法であればどの方法でもよい。
【0038】
またレンズ30の材料として窒化珪素や酸化珪素といった無機物を用いてもよい。その場合は、まずCVD法にて窒化珪素層や酸化珪素層を形成し、その上に樹脂にてレンズ形状の構造物を作成する。これらをドライエッチングすることで窒化珪素層や酸化珪素層にレンズ形状が転写される。また、レンズ30は、保護層40の表面をレンズ形状に加工することによって形成されていてもよい。
【0039】
なお、レンズ30は、集光特性を有していれば凸形状でも凹形状でもよい。「集光特性」とは、レンズがない平坦な取り出し表面での光線の放射特性に比べて正面方向の強度が大きくなる特性のことである。レンズの集光特性は、有機EL素子の発光面積、レンズの曲率、発光面からレンズまでの距離、レンズの材料の屈折率などに依存し、これらをパラメータとして、所望の集光特性が得られるようにレンズを設計することが好ましい。
【0040】
また、消費電力が最も大きい有機EL素子の光出射側にのみ設けられる発光効率を向上させるための構造体としては、図3に示すように回折格子31であってもよいし、さらに、微粒子、プリズムシートなどの公知の構造体でもよい。また、レンズ形状に関しても半球に限らず、ピラミッド形状等の非球面であってもよい。
【0041】
なお、本実施形態は基板10とは反対側から光が出射されるトップエミッション型の表示装置であるが、基板10側から光が出射されるボトムエミッション型の表示装置でも有効である。
【0042】
本発明の表示装置の用途として、高輝度による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面モニタ、携帯電話用ディスプレイなどが挙げられる。また、同じ輝度でも低消費電力が期待されるので、屋内で使用する用途にも有用である。
【0043】
本発明は、上述した趣旨を逸脱しない限り、以上説明した構成に限られることはなく、種々の応用・変形が可能である。
【0044】
(実施例1)
実施例1として、図1で示すような、消費電力が最も大きい青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ半球レンズ30を設けた表示装置を以下に示す方法で作製した。
【0045】
まず、ガラス基材上に、低温ポリシリコンからなるTFT駆動回路(図示省略)を形成し、その上にアクリル樹脂からなる平坦化膜(図示省略)を形成して透明絶縁性基板10とした。
【0046】
次に、第1電極11(陽極)としてAg合金と酸化インジウム錫とからなる積層膜をそれぞれスパッタリング法により形成し、各画素の発光領域に合わせてパターニングした。そして、絶縁層20としてポリイミド系樹脂をスピンコートし、フォトリソグラフィによって画素に応じた発光領域となるようにパターニングした。なお、青色を発する有機EL素子の発光領域が他の色よりも小さくなるように絶縁層20を形成した。
【0047】
次に、各有機化合物層を順次、真空蒸着法により成膜した。各発光色において、第1電極11にある反射面と後に形成される第2電極15にある反射面との間の光学距離が式1を満たすように、正孔輸送層12の膜厚を各発光色で変えて形成した。また、青色を発する有機EL素子の発光層13Bに含まれる発光材料としては蛍光材料であり、緑色、赤色を発する有機EL素子の発光層13G,13Rに含まれる発光材料としては燐光材料を用いた。なお、電子輸送層14は各発光色で共通の材料で共通の膜厚で形成した。
【0048】
次に第2電極15として、Ag合金を真空蒸着法により各発光色の有機EL素子にわたって成膜した。その後、保護層40としてCVD法により窒化珪素層を成膜した。
【0049】
次に、窒化珪素層上に感光性レジストをスピンコートし、フォトマスクを用いて露光・現像を行った。フォトマスクは青色を発する有機EL素子の上部にのみ露光するための開口を有していた。その後ポストベークを行い、レジスト形状をリフローさせた。ドライエッチングによりレジストパターンごと窒化珪素層をエッチングすることで、保護層40の表面でかつ、青色を発する有機EL素子3の光出射側にのみ、半球レンズ30が加工されて形成された。
【0050】
さらに、半球レンズ30を形成した後、封止ガラス(図示省略)によって有機EL素子の封止を行い、円偏光板(図示省略)を封止ガラスの上に貼り付けた。
【0051】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に対してレンズ30を設けなかった点が異なり、それ以外の構成は実施例1と同じであった。
【0052】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対して赤色、緑色を発する有機EL素子の光出射側にもレンズ30を設けた点が異なり、それ以外は実施例1と同じ構成であった。
【0053】
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対して青色を発する有機EL素子の光出射側ではなく赤色を発する有機EL素子の光出射側にのみレンズを設けた点が異なり、それ以外は実施例1と同じ構成であった。
【0054】
(比較例4)
比較例4は、実施例1に対して青色を発する有機EL素子の光出射側ではなく緑色を発する有機EL素子の光出射側にのみレンズを設けた点が異なり、それ以外は実施例1と同じ構成であった。
【0055】
<表示装置の評価>
上記実施例1および比較例1乃至4の消費電力の相対値と外光反射(SCE)測定値を表1にまとめた。外光反射(SCE)測定にはコニカミノルタ製分光測色計CM−2600dを用いた。なお、SCEは正反射光を除去し拡散散乱光の反射率を主に測定する指標である。表示装置においては、SCEの値は0.5%以下が好ましい。また、消費電力は比較例1を1.00とした時の相対値で表されている。
【0056】
表1より、実施例1は比較例1に対して消費電力が7割以下となり、比較例2よりもSCEが低く、0.5%よりも小さい値であった。また実施例1は比較例3及び4よりも消費電力が低かった。
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例2)
実施例2は、実施例1とは以下の点が異なっている。すなわち、実施例2は緑色発光層13Gに含まれる発光材料は蛍光材料である点、すべての有機EL素子の発光領域が同じ大きさである点、レンズ30ではなく回折格子31が設けられた点、が実施例1と異なっている。
【0059】
実施例2は図3で示す構成の表示装置である。実施例2は、保護層40を形成するまでは実施例1の工程と同じ製造方法で形成した。
【0060】
次に、保護層40の上に、樹脂材料をスピンコートした後に、ナノインプリント法を適用し回折格子のパターンを青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ形成した。
【0061】
(比較例5)
比較例5は、実施例2に対して回折格子31を設けなかった点が異なり、それ以外の構成は実施例2と同じであった。
【0062】
(比較例6)
比較例6は、実施例2に対して赤色、緑色を発する有機EL素子の光出射側にも回折格子31を設けた点が異なり、それ以外は実施例2と同じ構成であった。
【0063】
(比較例7)
比較例7は、実施例2に対して青色を発する有機EL素子の光出射側ではなく赤色を発する有機EL素子の光出射側にのみ回折格子を設けた点が異なり、それ以外は実施例2と同じ構成であった。
【0064】
(比較例8)
比較例8は、実施例2に対して青色を発する有機EL素子の光出射側ではなく緑色を発する有機EL素子の光出射側にのみ回折格子を設けた点が異なり、それ以外は実施例2と同じ構成であった。
【0065】
<表示装置の評価>
上記実施例2および比較例5乃至8の消費電力の相対値と外光反射(SCE)測定値を表2にまとめた。消費電力は比較例5を1.00とした時の相対値で表されている。
【0066】
表2より、実施例2は比較例5に対して消費電力が7割以下となり、比較例6よりもSCEが低く、0.5%よりも小さい値であった。また実施例2は比較例7及び8よりも消費電力が低かった。
【0067】
【表2】

【符号の説明】
【0068】
3 有機EL素子
30 レンズ
31 回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色を発する有機EL素子と緑色を発する有機EL素子と青色を発する有機EL素子とを有する表示装置であって、
前記青色を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上するための構造体が設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記青色を発する有機EL素子の発光領域は、前記赤色を発する有機EL素子及び前記緑色を発する有機EL素子の発光領域よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記青色を発する有機EL素子は蛍光を発することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記前記赤色を発する有機EL素子及び前記緑色を発する有機EL素子は燐光を発することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
蛍光を発する有機EL素子と燐光を発する有機EL素子とを有する表示装置であって、前記蛍光を発する有機EL素子の光出射側にのみ発光効率を向上するための構造体が設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記蛍光を発する有機EL素子の発光領域は、前記燐光を発する有機EL素子の発光領域よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記有機EL素子は共振器構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光効率を向上するための構造体はレンズであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16464(P2013−16464A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94072(P2012−94072)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】