説明

表示駆動装置及び表示装置

【課題】 表示画素に設けられた発光素子を電流指定方式で発光制御するディスプレイにおいて、表示画素への表示データの書込動作に際し、書込不足による表示画質の劣化を抑制することができるとともに、表示パネルの大画面化や高精細化に良好に対応することができる表示駆動装置及び表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置100は、少なくとも、各行ごとの走査ラインSLiと各列ごとのデータライン群DGjを構成するデータラインDLja、DLjbとの各交点に接続された表示画素EMが配列された表示パネル110と、各走査ラインSLiに走査信号Vselを印加して、特定の行の表示画素を選択状態に設定する走査ドライバ120と、表示データに基づく階調電流Ipixを生成して、所定のタイミングで各列のデータラインDLja、DLjbに順次(交互に)出力するデータドライバ130と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示駆動装置及び表示装置に関し、特に、表示データに応じた電流を供給することにより所定の輝度階調で発光する電流制御型の発光素子を備えた表示画素を、複数配列してなる表示パネルに適用可能な表示駆動装置、及び、該表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)や発光ダイオード(LED)等のように、供給される駆動電流の電流値に応じて所定の輝度階調で発光動作する電流制御型の発光素子を備えた表示画素を、2次元配列した表示パネルを具備する発光素子型のディスプレイ(表示装置)が知られている。
【0003】
特に、アクティブマトリックス駆動方式を適用した発光素子型ディスプレイは、近年普及が著しい液晶表示装置(LCD)に比較して、表示応答速度が速く、視野角依存性もなく、また、高輝度・高コントラスト化、表示画質の高精細化、低消費電力化等が可能であるとともに、発光素子型の表示画素から構成されるため、液晶表示装置の場合のように、バックライトを必要としないので、一層の薄型軽量化が可能である、という極めて優位な特徴を有しており、次世代のディスプレイとして研究開発が盛んに行われている。
【0004】
図11は、従来技術における発光素子型ディスプレイの要部構成例を示す概略図であり、図12は、従来技術における発光素子型ディスプレイに適用される表示画素の構成例を示す等価回路図である。
図11に示すように、従来技術における発光素子型ディスプレイは、概略、相互に直交するように配設された複数の走査ラインSLと複数のデータラインDLとの各交点近傍に、例えば、後述する発光駆動回路(画素駆動回路)及び電流制御型の発光素子(有機EL素子)を備えた複数の表示画素EMがマトリクス状(n行×m列)に配列された表示パネル110Pと、該表示パネル110Pの走査ラインSLに接続され、各走査ラインSLに所定のタイミングで順次走査信号Vselを印加することにより、行ごとの表示画素EMを選択状態に設定(走査)する走査ドライバ120Pと、表示パネル110PのデータラインDLに接続され、表示データを取り込んで、所定のタイミングで各データラインDLへ表示データに応じた階調電流(階調信号)IPpixを供給するデータドライバ130Pと、を備えた構成を有している。
【0005】
このようなディスプレイにおいて、例えば、外部から供給されるタイミング信号に基づいて生成される走査制御信号及びデータ制御信号等により、走査ドライバ120P及びデータドライバ130Pの動作状態が制御されて、走査信号の印加により選択状態に設定された各行の表示画素に、表示データに応じた階調電流を書き込むことにより、各表示画素が所定の輝度階調で発光動作して、所望の画像情報が表示される。
【0006】
そして、このような発光素子型ディスプレイにおいては、上述した電流制御型の発光素子を発光制御するための駆動制御機構や制御方法が種々提案されている。例えば、特許文献1等に記載されているように、表示パネルを構成する各表示画素ごとに、上記発光素子に加えて、該発光素子を発光制御するための複数のスイッチング手段からなる駆動回路(以下、便宜的に「発光駆動回路」と記す)を備えたものが知られている。
【0007】
具体的には、特許文献1等に記載された表示画素は、図12に示すように、相互に並行して配設された一対の走査ラインSL1、SL2とデータラインDLとの各交点近傍に、ゲート端子が走査ラインSL1に、ソース端子及びドレイン端子がデータラインDL及び接点N111に各々接続された薄膜トランジスタTr111と、ゲート端子が走査ラインSL2に、ソース端子及びドレイン端子が接点N111及び接点N112に各々接続された薄膜トランジスタTr112と、ゲート端子が接点N112に、ドレイン端子が接点N111に各々接続され、ソース端子に高電源電圧Vddが印加された薄膜トランジスタTr113と、ゲート端子が接点N112に接続され、ソース端子に高電源電圧Vddが印加された薄膜トランジスタTr114と、を備えた画素駆動回路DP1、及び、階画素駆動回路DP1の薄膜トランジスタTr114のドレイン端子にアノード端子が接続され、カソード端子に接地電位が印加された有機EL素子OELを有して構成されている。
【0008】
ここで、図12において、薄膜トランジスタTr111はnチャネル型の電界効果型トランジスタにより構成され、薄膜トランジスタTr112乃至Tr114はpチャネル型の電界効果型トランジスタにより構成されている。また、CP1は、薄膜トランジスタTr113及びTr114のゲート−ソース間に形成される寄生容量である。
そして、このような構成を有する発光駆動回路DP2においては、薄膜トランジスタTr111乃至Tr114からなる4個のトランジスタ(スイッチング手段)を所定のタイミングでオン、オフ制御することにより、以下に示すように、有機EL素子OELを発光制御する。
【0009】
すなわち、発光駆動回路DP1において、図示を省略した走査ドライバにより、走査ラインSL1にハイレベルの走査信号Vsel1を、走査ラインSL2にローレベルの走査信号Vsel2を各々印加して表示画素を選択状態に設定すると、薄膜トランジスタTr111、Tr112及びTr113がオン動作して、図示を省略したデータドライバによりデータラインDLに供給された、表示データに応じた階調電流Ipixが薄膜トランジスタTr113及びTr111を介して流れる。このとき、Tr112によりTr113のゲート・ドレイン間が電気的に短絡されているため、Tr113は飽和領域で動作する。これにより、該階調電流Ipixの電流レベルが薄膜トランジスタTr113により電圧レベルに変換されてゲート−ソース間に所定の電圧が生じる(書込動作)。この薄膜トランジスタTr113のゲート−ソース間に生じた電圧に応じて薄膜トランジスタTr114がオン動作して、高電源電圧Vddから所定の発光駆動電流が薄膜トランジスタTr114及び有機EL素子OELを介して接地電位に流れ、有機EL素子OELが発光する(発光動作)。
【0010】
次いで、例えば、走査ラインSL2にハイレベルの走査信号Vsel2を印加すると、薄膜トランジスタTr112がオフ動作することにより、薄膜トランジスタTr113のゲート−ソース間に生じた電圧が寄生容量CP1により保持され、次に、走査ラインSL1にローレベルの走査信号Vsel1を印加すると、薄膜トランジスタTr111がオフ動作することにより、データラインDLと画素駆動回路DP1とが電気的に遮断される。これにより、上記寄生容量CP1に保持された電圧に基づく電位差により、薄膜トランジスタTr114が継続してオン動作し、高電源電圧Vddから所定の発光駆動電流が薄膜トランジスタTr114及び有機EL素子OELを介して接地電位に流れ、有機EL素子OELの発光動作が継続される。
【0011】
ここで、薄膜トランジスタTr114を介して有機EL素子OELに供給される発光駆動電流は、表示データの輝度階調に基づいた電流値になるように制御され、この発光動作は、次の表示データに応じた階調電流が各表示画素に書き込まれるまで、例えば、1フレーム期間継続されるように制御される。
このような回路構成を有する画素駆動回路における駆動制御方法は、各表示画素(薄膜トランジスタTr113のゲート端子)に表示データに応じた電流値を指定した階調電流を供給し、該電流値に応じて保持される電圧に基づいて、有機EL素子OELに流す発光駆動電流を制御して、所定の輝度階調で発光動作させていることから、電流指定方式(又は、電流印加方式)と呼ばれている。
【0012】
なお、図示を省略したが、図12と同様に、画素駆動回路と有機EL素子とを備えた表示画素に対して、表示データに応じた電圧値を指定した階調信号電圧を印加し、該電圧値に応じて、有機EL素子OELに流す発光駆動電流を制御して、所定の輝度階調で発光動作させる、電圧指定方式(又は、電圧印加方式)の駆動制御方法も知られている。
【0013】
ここで、電圧指定方式を採用した発光駆動回路においては、選択機能や発光駆動機能を担うスイッチ素子の素子特性(薄膜トランジスタのチャネル抵抗等)が、外部環境(周囲の温度等)や使用時間等に依存してバラツキや変動(劣化)を生じた場合には、発光駆動電流に影響を与えることになり、長期間にわたり安定的に所望の発光特性(所定の輝度階調での表示)を実現することができない、という問題や、表示パネルの高精細化を図るために、各表示画素を微細化すると、発光駆動回路を構成するスイッチ素子の動作特性(薄膜トランジスタのソース−ドレイン間電流等)のバラツキが大きくなるため、適正な階調制御が行えなくなり、各表示画素の発光特性にバラツキが生じて表示画質の劣化を招くという問題を有していた。
【0014】
これに対して、上述した電流指定方式の発光駆動回路においては、各表示画素に供給される表示データに応じた階調電流の電流レベルを電圧レベルに変換する薄膜トランジスタTr113(電流/電圧変換用トランジスタ)及び有機EL素子OELに所定の電流値の駆動電流を供給する薄膜トランジスタTr114(発光駆動用トランジスタ)を備え、有機EL素子OELに供給する発光駆動電流の電流値を設定することにより、各薄膜トランジスタTr113、Tr114の動作特性のバラツキの影響を抑制することができるので、電圧指定方式の発光駆動回路の問題点を解決することができるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−147659号公報 (第7頁〜第8頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述したような電流指定方式を採用した発光駆動回路においては、以下に示すような問題を有していた。
すなわち、最下位又は比較的輝度の低い表示データに基づく階調電流を各表示画素に書き込む場合(低階調表示時)、表示データの輝度階調に対応した小さい電流値の信号電流を各表示画素に供給する必要がある。
【0017】
ここで、各表示画素に表示データ(階調電流)を書き込む動作は、データラインに寄生する容量成分(配線容量及び表示画素を構成する保持容量)を所定の電圧まで充電することに相当するため、例えば、表示パネルの大型化等によりデータラインの配線長が長くなるとともに、当該データラインに接続される表示画素の数が増加した場合には、階調電流の電流値が小さくなるほど(すなわち、低階調表示時ほど)、データラインの充電時間が長くなって、表示画素への書込動作に長時間を要するようになり、予め設定された(既定の)書込時間では表示画素に書き込まれる表示データが充分安定した状態(飽和状態)に達しない、いわゆる、書込不足が生じる。これにより、表示データに応じた適切な輝度階調で発光動作することができない表示画素が発生して、表示パネル内で輝度差が生じて表示画質の劣化を招くという問題を有していた。
【0018】
また、表示パネルを高精細化するために、表示パネルに配設される走査ラインの数を増加させて、各走査ラインの選択期間(すなわち、書込時間)を短く設定した場合においても、階調電流の電流値が小さくなるほど、各表示画素への十分な書込動作が行われなくなり、書込不足が発生して表示画質の劣化を招いたり、表示パネルの高精細化が制約されるという問題を有していた。
【0019】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、表示画素に設けられた発光素子を電流指定方式で発光制御するディスプレイにおいて、表示画素への表示データ(階調電流)の書込動作に際し、書込不足による表示画質の劣化を抑制することができるとともに、表示パネルの大画面化や高精細化に良好に対応することができる表示駆動装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1記載の発明は、表示パネルを構成する2次元配列された複数の表示画素に対して、表示データに基づく階調電流を供給することにより、前記各表示画素を駆動する表示駆動装置において、少なくとも、前記表示パネルの隣接する所定の複数の行の前記表示画素の各々を、互いに重複しない期間と互いに重複する期間とを有する所定のタイミングで順次選択状態に設定する画素選択手段と、前記表示データに基づいて前記各表示画素の輝度階調を制御する所定の電流値を有する信号電流を生成する電流生成手段と、前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行の前記表示画素に対応する前記信号電流を順次取り込み、該信号電流に基づく前記階調電流を生成し、該階調電流を、前記所定のタイミングに対応して前記選択状態に設定される前記所定の複数の行の前記表示画素の各々に、前記表示パネルの前記隣接する複数の行の前記表示画素の各々に対応する複数のデータラインを介して、前記重複しない期間と重複する期間とを有して順次供給する電流書込手段と、を備え、前記電流書込手段は、前記複数のデータラインに前記所定のタイミングで前記階調電流を出力する複数の電流保持回路を備え、該各電流保持回路は、前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行の各列の前記表示画素に対応して前記信号電流を保持する信号保持部と、該信号保持部に前記信号電流を分配する信号分配部と、該信号保持部に保持された前記信号電流に対応する電流を前記階調電流として生成して、該階調電流を、前記選択状態に設定される期間に亘って、前記所定の複数行の前記各表示画素に出力する階調電流出力部と、を有する複数の電流保持・出力部を備え、少なくとも、前記電流書込手段は、前記表示パネルが形成される基板とは独立して設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1記載の表示駆動装置において、前記信号保持部は、前記信号電流に基づく電荷を蓄積して、電圧成分として保持する電荷蓄積手段を備えていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1または2に記載の表示駆動装置において、前記階調電流出力部は、カレントミラー回路構成を有し、前記電流生成手段から供給される前記信号電流に対して、所定の電流比率の電流値を有する前記階調電流を生成して、前記各行の前記表示画素に出力することを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の表示駆動装置において、少なくとも、前記電流書込手段は、同一のチャネル極性を有する電界効果型トランジスタを用いて構成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項記載の発明は、表示パネルの行方向に配設された複数の走査ライン及び列方向に配設された複数のデータラインの各交点近傍に配列された複数の表示画素に対して、表示データに応じた所定の電流値を有する階調電流を供給することにより前記表示画素を駆動して、前記表示パネルに所望の画像情報を表示する表示装置において、少なくとも、各列に、隣接する所定の複数の行の前記表示画素に対応する複数のデータラインからなるデータライン群が配設された前記表示パネルと、前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行に対応する複数の前記走査ラインの各々に、互いに重複する期間を有する所定のタイミングで順次走査信号を印加して、該各走査ラインに接続される前記表示画素を、互いに重複しない期間と互いに重複する期間とを有して順次選択状態に設定する走査駆動回路と、前記表示データに基づいて前記表示パネルの前記各表示画素の輝度階調を制御する所定の電流値を有する信号電流を生成する電流生成手段、及び、前記表示パネルの前記所定の複数の行の表示画素に対応する前記信号電流を順次取り込み、該信号電流に基づく前記階調電流を生成し、該階調電流を、前記選択状態に設定される前記所定の複数の行の表示画素の各々に、前記重複しない期間と重複する期間とを有して供給する電流書込手段を備えた信号駆動回路と、を備え、前記信号駆動回路の前記電流書込手段は、前記表示パネルの各列の前記データライン群に前記所定のタイミングで前記階調電流を出力する複数の電流保持回路を備え、該各電流保持回路は、前記表示パネルの前記所定の複数の行の各列の前記表示画素に対応して前記信号電流を保持する信号保持部と、該信号保持部に前記信号電流を分配する信号分配部と、該信号保持部に保持された前記信号電流に対応する電流を前記階調電流として生成して、該階調電流を、前記選択状態に設定される期間に亘って、前記所定の複数行の前記各表示画素に出力する階調電流出力部と、を有する複数の電流保持・出力部を備え、少なくとも、前記信号駆動回路は、前記表示パネルが形成される基板とは独立して設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項に記載の表示装置において、前記表示パネルに配列された前記表示画素は、前記階調電流に基づいて所定の発光駆動電流を生成する発光駆動回路と、該発光駆動回路から供給される前記発光駆動電流の電流値に基づいて、所定の輝度階調で発光動作する電流制御型の発光素子と、を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項記載の表示装置において、少なくとも、前記発光駆動回路は、同一のチャネル極性を有する電界効果型トランジスタを用いて構成されていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項又はに記載の表示装置において、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセント素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
すなわち、本発明は、表示信号(表示データ)に応じた階調電流を各表示画素に印加することにより、各表示画素を駆動して、所望の画像情報を表示パネルに表示する表示装置において、表示パネルに2次元配列された表示画素に対して、走査ドライバ(画素選択手段、走査駆動回路)から各行の走査ラインに、隣接する走査ライン間で互いに重複しない期間と互いに重複する期間とを有する所定のタイミングで走査信号を順次印加することにより、隣接する行の表示画素を、重複する期間で同時並行的に選択状態に設定し、データドライバ(信号駆動回路)に設けられた電流生成回路(電流生成手段)により、表示データに基づいて各行の表示画素に対応する信号電流を生成し、電流保持回路(電流書込手段)により、電流生成回路から供給される信号電流を、表示パネルの各行の表示画素に対応して複数のラッチ部(電流保持・出力部)に分配して取り込み、該信号電流に基づく階調電流を生成して、上記選択状態に設定される各行の表示画素に、該選択状態に設定される期間に亘って、重複しない期間と重複する期間とを有して順次供給するように構成されている。
【0026】
ここで、少なくとも上記データドライバ(電流生成回路及び電流保持回路)は、例えば、表示パネルが設けられる基板とは独立して設けられて、ドライバチップとして提供されるようにしてもよく、これにより、表示装置の各構成のレイアウト工程において設計自由度を向上させることができる。
【0027】
また、電流保持回路における各ラッチ部は、例えば、少なくとも、電流生成回路から順次供給され、信号分配部により分配される信号電流を、表示パネルの隣接する所定の複数の行の表示画素の各々に対応して、例えば容量成分(電荷蓄積手段)に保持する信号保持部と、例えばカレントミラー回路構成を用いて、該信号電流に対して所定の電流比率の電流値を有する階調電流を生成して出力する階調電流出力部と、を備えた構成を適用することができる。
【0028】
このような構成により、電流生成回路から供給される信号電流を各ラッチ部に分配して、一のラッチ部により、一の行の表示画素に対応する信号電流を取り込み保持すると同時に、該信号電流に基づく階調電流を出力する動作と、他のラッチ部により、上記一の行に隣接する行の表示画素に対応する信号電流に基づく階調電流を出力する動作とを、重複する期間において同時に並行して実行する駆動制御方法を適用することができる。
【0029】
すなわち、走査ドライバから、隣り合う複数行(k行)の走査ラインの各々に対して、所定の期間、重複する(オーバーラップ)するように走査信号を順次印加することにより、複数行(k行)分の表示画素を所定の期間において同時並行して選択状態に設定し、かつ、データドライバにより、各列ごとに設けられた電流保持回路(ラッチ部)に、各行の表示画素に対応する表示データを分配して個別に取り込んで保持すると同時に、各行の表示画素に階調電流を供給することができるので、各列のデータライン群を構成する複数のデータラインの各々を介して、同時並行的に複数の行の表示画素に対して、表示データに基づく階調電流を書き込むことができ、当該階調電流の書込時間を実質的に複数倍(k倍)に、長く設定することができる。
【0030】
また、同時並行して選択状態に設定される行の数(k)に応じて、各列のデータライン群を構成する各データラインに接続される表示画素の数を削減(1列に1本のデータラインを配設した従来の表示装置に比較して、k分の1に削減)することができるので、各データラインに寄生する容量成分(寄生容量)を大幅に低減することができ、データライン(表示画素)への階調電流の供給時(表示データの書込時)に生じる遅延時間(データラインの充電に要する時間)を大幅に減少させることができる。
【0031】
したがって、各表示画素への表示データの書込時間を充分に長く確保することができるとともに、各データラインの寄生容量を大幅に削減して、階調電流の書込時の信号遅延を抑制することができるので、表示パネルを大型化した場合や高精細化した場合、あるいは、低階調表示時であっても、データラインの寄生容量を迅速に所定の電圧まで充分に充電して、表示データの書込不足を解消することができ、各表示画素を表示データに応じた適切な輝度階調で発光動作させて、表示パネル内で発生する輝度傾斜(表示ムラ)を大幅に低減して表示画質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る表示装置の全体構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る表示装置の要部構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る表示装置のデータドライバに適用可能な電流生成回路の一構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る表示装置のデータドライバに適用可能な電流保持部(電流保持回路)の一構成例を示す回路構成図である。
【図5】本実施形態に適用可能な電流保持部の概略動作を示す概念図である。
【図6】本実施形態に係る表示装置の駆動制御方法を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明に係る表示装置に適用可能な表示画素(画素駆動回路、発光素子)の一具体例を示す回路構成図である。
【図8】本構成例に係る表示画素(画素駆動回路)における駆動制御動作を示す概念図である。
【図9】本構成例に係る表示画素を適用した場合の表示装置における駆動制御動作を示すタイミングチャートである。
【図10】本構成例に係る表示画素を適用した表示装置の一構成例を示す概略ブロック図である。
【図11】従来技術における発光素子型ディスプレイの要部構成例を示す概略図である。
【図12】従来技術における発光素子型ディスプレイに適用される表示画素の構成例を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る表示装置及びその駆動制御方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。
<表示装置>
まず、本発明に係る表示駆動装置を適用可能な表示装置の概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置の全体構成を示す概略ブロック図であり、図2は、本発明に係る表示装置の要部構成の一例を示す概略構成図である。
【0034】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る表示装置100は、大別して、各行(1行ごと)の画素行に対応して配設された走査ラインSLi(iは、1≦i≦nの範囲の正の整数;nは正の整数であって、表示パネル110に設定された画素行の総数)、及び、各列(1列ごと)の画素列に対応して配設され、複数本(図2では2本)のデータラインDLja、DLjb(jは、1≦j≦mの範囲の正の整数;mは正の整数であって、表示パネル110に設定された画素列の総数)を一組とするデータライン群DGj(データラインDLja又はDLjb)との各交点に、選択トランジスタTrselを介して接続された表示画素EMが、複数2次元配列(n行×m列)された表示パネル110と、該表示パネル110の走査ラインSLiに接続され、各走査ラインSLiに所定のタイミングで順次走査信号Vselを印加することにより、該走査ラインSLiに接続された各行(1行)の表示画素EMを順次選択状態に設定する走査ドライバ(画素選択手段、走査駆動回路)120と、各データライン群DGjに接続され、後述する表示信号生成部150から供給される表示データを各行の表示画素ごとに取り込み、階調電流Ipixを生成して、所定のタイミングで各行の各列に対応したデータラインDLja、DLjbに順次(交互に)出力するデータドライバ(電流生成手段、電流書込手段、信号駆動回路)130と、例えば、表示信号生成部150から供給されるタイミング信号に基づいて、少なくとも、走査ドライバ120及びデータドライバ130の動作状態を制御する走査制御信号及びデータ制御信号を生成して出力するシステムコントローラ140と、例えば、表示装置100の外部から供給される映像信号に基づいて、表示データ(例えば、デジタルデータ)を生成してデータドライバ130に供給するとともに、該表示データを表示パネル110に画像表示するためのタイミング信号(システムクロック等)を生成、又は、抽出してシステムコントローラ140に供給する表示信号生成部150と、を備えて構成されている。
【0035】
そして、本実施形態に係る表示装置においては、特に、図2に示すように、データドライバ130が、表示信号生成部150から供給される表示データに基づいて、当該表示データに基づく輝度階調値に応じた電流値を有する信号電流Idを生成する電流生成回路(電流生成手段)CGNと、表示パネル110に配設された各列のデータライン群DGjに個別に接続され、該データライン群DGjを構成する各データラインDLja、DLjbに、所定のタイミングで信号電流Idに基づく階調電流Ipixを出力する複数の電流保持回路(電流書込手段)136からなる電流保持部CHLと、を備えた構成を有している。
【0036】
また、本実施形態に係る表示装置においては、上記電流生成回路CGNと電流保持部CHLとを備えたデータドライバ130が、表示パネル(画素アレイ)110が形成される基板BASEとは独立した、例えば、トライバチップの形態を有している。なお、各表示画素EM及びデータドライバ(特に、電流保持部CHL)の回路構成等については、詳しく後述する。
【0037】
以下、上記各構成について具体的に説明する。
(表示パネル110)
本実施形態に係る表示装置に適用可能な表示パネル110は、例えば、図2に示すように、各行の画素行に対応する走査ラインSLiと、各々2本のデータラインDLja、DLjbを一組とし、1列分の画素列に対応するデータライン群DGjとが、相互に直交するように配設され、奇数行目の走査ラインSLiにおいては各列のデータラインDLjaとの各交点に、また、偶数番目の走査ラインSLiにおいては各列のデータラインDLjbとの各交点に、表示画素EMが接続された構成を有している。
【0038】
ここで、図2に示した構成においては、各列に配設されるデータライン群DGjとして、2本のデータラインDLja、DLjbを一組とした構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2以上の複数のデータラインを一組とするものであってもよい。この場合、例えば、データライン群DGjを構成するデータラインの本数をq(すなわち、データラインDLj1〜DLjqのq本)とした場合には、行番号をqで除算した余りが1となる行の走査ライン(1、q+1、2q+1、・・・行目の走査ライン)は、各列の1番目のデータラインDLj1との各交点に表示画素EMが接続され、上記余りが2となる行の走査ライン(2、q+2、2q+2、・・・行目の走査ライン)は、各列の2番目のデータラインDLj2との各交点に表示画素EMが接続され、(以下同様の関係で表示画素とデータラインが接続され)、そして、上記余りが0となる行の走査ライン(q、2q、3q、・・・行目の走査ライン)は、各列のq番目(最後)のデータラインDLjqとの各交点に表示画素EMが接続された構成を有している。
【0039】
また、各表示画素EMは、概略、ゲート端子が各走査ラインSLiに接続され、ソース端子が各データラインDLja又はDLjbに接続された選択トランジスタTrselの、ドレイン端子に接続された構成を有し、データドライバ130の電流保持部CHL(各電流保持回路136)から各データラインDLja又はDLjb、及び、上記選択トランジスタTrselを介して供給される階調電流Ipixに基づいて、所定の輝度階調で発光動作する電流制御型の発光素子を備えている。
【0040】
このような構成を有する表示パネル110において、後述する走査ドライバ120から特定の行の走査ラインSLiに走査信号Vselを印加することにより、該走査ラインSLiに接続された選択トランジスタTrselがオン動作して、当該行の表示画素EMが一括して選択状態に設定される。この選択状態において、後述するデータドライバ130(電流生成回路CGN及び電流保持部CHL)から各データライン群DGjの特定のデータラインに、表示データに対応する階調電流Ipixを一斉に供給することにより、上記オン動作した選択トランジスタTrselを介して、選択状態に設定された当該行の表示画素EMに一括して表示データが書き込まれる。なお、選択トランジスタを含む表示画素EMの具体回路例や回路動作については詳しく後述する。
【0041】
(走査ドライバ120)
走査ドライバ120は、システムコントローラ140から供給される走査制御信号に基づいて、上記各走査ラインSLiに選択レベル(例えば、ハイレベル)の走査信号Vselを印加する動作を順次実行することにより、各走査ラインSLiに接続された各行の表示画素EMを一斉に選択状態に設定するとともに、少なくとも隣り合う行同士の表示画素EMを所定の期間、同時並行して上記選択状態に設定し、後述するデータドライバ130により各データライン群DGjを介して供給される表示データに基づく階調電流Ipixを、各行の表示画素EMに一部同時並行的に書き込むように制御する。
【0042】
走査ドライバ120は、例えば、図2に示すように、シフトレジスタとバッファからなるシフトブロックSB1、SB2、・・・SBi、・・・SBnを、各走査ラインSLiに対応して複数段(図2ではn段)備えた周知の構成を有し、後述するシステムコントローラ140から供給される走査制御信号(走査スタート信号SST、走査クロック信号SCK等)に基づいて、シフトレジスタにより表示パネル110の上方から下方に順次シフトしつつ出力されるシフト信号が、バッファを介して所定の選択レベル(ハイレベル)を有する走査信号Vselとして各走査ライン群SGiに印加される。
【0043】
ここで、本実施形態においては、上述した周知の構成を有する走査ドライバにおいて、例えば、走査クロック信号SCKを、各行ごとに所定の期間(1水平走査期間)、選択状態にする通常の時間幅(走査信号Vselを印加する各行ごとの選択時間幅)に設定するとともに、走査スタート信号SSTを2行分の選択時間幅(2水平走査期間)に設定することにより、2行分の時間幅を有するシフト信号が各シフトブロックSB1、SB2、・・・SBi、・・・SBn間でシフトされることになり、少なくとも隣り合う走査ラインSLiに対して、該シフト信号に基づく走査信号Vselが所定の期間、同時に(一定期間オーバーラップして)印加される。
【0044】
(データドライバ130)
データドライバ130は、システムコントローラ140から供給されるデータ制御信号に基づいて、後述する表示信号生成部150から供給される表示データを、所定のタイミングで各行ごとに順次取り込んで、該表示データの輝度階調値に応じた電流値を有する信号電流Idを生成し、上述した走査ドライバ120により選択状態に設定された特定の行の表示画素EMに対して、上記信号電流Idを階調電流Ipixとして、各列のデータライン群DGjを介して表示画素EMに一斉に供給する。
【0045】
データドライバ130は、具体的には、例えば、図2に示すように、少なくとも、表示信号生成部150から供給される表示データに基づいて、輝度階調値に応じた信号電流Idを生成する電流生成回路CGNと、表示パネル110に配設された各データライン群DGjごとに接続された複数の電流保持回路136からなる電流保持部CHLと、を備え、後述するシステムコントローラ140から供給されるデータ制御信号に基づいて、表示信号生成部150から供給される表示データに基づいて生成された信号電流Idを、各列の電流保持回路136により各行の表示画素分ずつ、順次取り込んで、各データライン群DGjを介して選択状態に設定された各行の表示画素EMに対して、所定のタイミングで階調電流Ipixとして一括して供給する。なお、データドライバの具体的な構成及び動作については詳しく後述する。
【0046】
(システムコントローラ140)
システムコントローラ140は、上述した走査ドライバ120及びデータドライバ130に対して、動作状態を制御する走査制御信号及びデータ制御信号を出力することにより、各ドライバ120、130を所定のタイミングで動作させて走査信号Vsel及び階調電流Ipix(信号電流Id)を生成、出力させ、表示信号生成部150により生成される表示データを各表示画素EMに書き込んで発光動作させ、映像信号に基づく所定の画像情報を表示パネル110に表示させる制御を行う。
【0047】
(表示信号生成部150)
表示信号生成部150は、例えば、表示装置100の外部から供給される映像信号から輝度階調信号成分(輝度階調値)を抽出し、表示パネル110の1行分ごとに表示データとしてデータドライバ130に供給する。ここで、上記映像信号が、テレビ放送信号(コンポジット映像信号)のように、画像情報の表示タイミングを規定するタイミング信号成分を含む場合には、表示信号生成部150は、上記輝度階調信号成分を抽出する機能のほか、タイミング信号成分を抽出してシステムコントローラ140に供給する機能を有するものであってもよい。この場合においては、上記システムコントローラ140は、表示信号生成部150から供給されるタイミング信号に基づいて、走査ドライバ120やデータドライバ130に対して供給する走査制御信号及びデータ制御信号を生成する。
【0048】
<データドライバの具体例>
次に、本実施形態に係る表示装置に適用可能なデータドライバの一構成例について、具体的に説明する。
(電流生成回路)
図3は、本実施形態に係る表示装置のデータドライバに適用可能な電流生成回路の一構成例を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態に係るデータドライバ130に適用可能な電流生成回路CGNは、例えば、図3に示すように、システムコントローラ140からデータ制御信号として供給されるシフトクロック信号CLKに基づいて、サンプリングスタート信号STRを順次シフトしつつシフト信号を出力するシフトレジスタ回路131と、該シフト信号の入力タイミングに基づいて、表示信号生成部150から供給される1行分の表示データD0〜Dm(デジタルデータ)を順次取り込むデータレジスタ回路132と、データラッチ信号STBに基づいて、データレジスタ回路132により取り込まれた1行分の表示データD0〜Dmを保持するデータラッチ回路133と、図示を省略した電源供給手段から供給される階調基準電圧V0〜Vpに基づいて、上記保持された表示データD0〜Dmを所定のアナログ信号電圧(階調電圧Vpix)に変換するD/Aコンバ−タ134と、アナログ信号電圧に変換された表示データに対応する信号電流Idを生成し、システムコントローラ140から供給される出力イネ−ブル信号OEに基づいて、電流保持部CHL(各電流保持回路136)に一斉に供給する電圧電流変換・電流供給回路135と、を有して構成されている。
【0050】
(電流保持部)
図4は、本実施形態に係る表示装置のデータドライバに適用可能な電流保持部(電流保持回路)の一構成例を示す回路構成図である。なお、図4に示す電流保持部の構成は、本実施形態に係るデータドライバに適用可能な一構成例を示すものにすぎず、この回路構成に限定されるものではない。
【0051】
本実施形態に係るデータドライバ130に適用可能な電流保持部CHLは、図2に示したように、少なくとも、各データライン群DGjに個別に接続された電流保持回路136を複数備え、各電流保持回路136は、具体的には、図4に示すように、各データライン群DGjを構成するデータラインDLjaに接続されたラッチ部(電流保持・出力部)136aと、データラインDLjbに接続されたラッチ部(電流保持・出力部)136bと、を有して構成されている。
【0052】
ラッチ部136aは、例えば、図4に示すように、上述した電流生成回路CGNから出力される輝度階調値に応じた電流値を有する信号電流Idが電流路(ソース−ドレイン)の一端側に供給され、他端側が接点N31aに接続され、制御端子(ゲート)に第1の電流取込信号WToddが印加される薄膜トランジスタTr31aと、接点N31aと接点N32aとの間に電流路が接続され、制御端子に第1の電流取込信号WToddが印加される薄膜トランジスタTr32aと、電流路の一端側が接点N31aに接続され、他端側が低電位電圧(−Vcc)に接続され、制御端子が接点N32aに接続された薄膜トランジスタTr33aと、電流路の一端側が低電位電圧(−Vcc)に接続され、他端側がデータラインDLjaに接続され、制御端子が接点N32aに接続された薄膜トランジスタTr34aと、接点N32aと低電位電圧(−Vcc)との間に接続された蓄積容量Caと、を備えた構成を有している。
【0053】
また、ラッチ部136bも、上記ラッチ部136aと同様に、例えば、図4に示すように、電流生成回路CGNから出力される信号電流Idが電流路の一端側に供給され、他端側が接点N31bに接続され、制御端子に第2の電流取込信号WTevnが印加される薄膜トランジスタTr31bと、接点N31bと接点N32bとの間に電流路が接続され、制御端子に第2の電流取込信号WTevnが印加される薄膜トランジスタTr32bと、電流路の一端側が接点N31bに接続され、他端側が低電位電圧(−Vcc)に接続され、制御端子が接点N32bに接続された薄膜トランジスタTr33bと、電流路の一端側が低電位電圧(−Vcc)に接続され、他端側がデータラインDLjbに接続され、制御端子が接点N32bに接続された薄膜トランジスタTr34bと、接点N32bと低電位電圧(−Vcc)との間に接続された蓄積容量Cbと、を備えた構成を有している。
【0054】
ここで、本実施形態に係る電流保持部CHLにおいては、各薄膜トランジスタTr31a〜Tr34a及びTr31b〜Tr34bとして、例えば、アモルファスシリコン半導体層、あるいは、ポリシリコン半導体層をチャネル層とする、nチャネル型の電界効果型トランジスタを適用することができる。
【0055】
なお、上述した電流保持回路136において、蓄積容量Ca、Cbは本発明に係る信号保持部及び電荷蓄積手段を構成し、薄膜トランジスタTr31a、Tr32a及びTr31b、Tr32bは本発明に係る信号分配部を構成し、薄膜トランジスタTr33a、Tr34a及びTr33b、Tr34bは本発明に係る階調電流出力部を構成する。
【0056】
<電流保持部の動作>
次いで、上述したような構成を有する電流保持部(電流保持回路)における動作について説明する。
図5は、本実施形態に適用可能な電流保持部の概略動作を示す概念図である。
【0057】
本実施形態に係る電流保持部CHL(電流保持回路136)における動作は、電流生成回路CGNから順次供給される2行分(隣り合う奇数行と偶数行)の表示画素に対応する表示データ(輝度階調値)に基づく信号電流Idを、各列ごとに並列的に接続されたラッチ部136a及び136bにより所定のタイミングで順次取り込むと同時に、該信号電流Idに基づいて階調電流Ipixを生成して、データライン群DGjを構成する各データラインDLja、DLjbに、所定のタイミングで個別に出力する電流ラッチ・出力動作と、該電流ラッチ・出力動作における上記階調電流Ipixの出力を、所定期間継続する電流出力保持動作と、からなり、ラッチ部136a側と136b側との間で、上記電流ラッチ・出力動作と電流出力保持動作を交互に繰り返すように制御される。これにより、電流ラッチ・出力動作における各ラッチ部136a、136bからの階調電流Ipixの出力期間が、相互に一部重なる(オーバーラップする)ように設定される。
【0058】
以下、上述した電流保持部(電流保持回路)の構成を参照しながら、各動作について具体的に説明する。
上述した各列ごとに設けられた電流保持回路136(ラッチ部136a、136b)において、システムコントローラ140からデータ制御信号として供給する第1及び第2の電流取込信号WTodd、WTevnを、選択的にハイレベルに設定することにより、並列的に接続されたラッチ部136a及び136bのうち、いずれか一方側のラッチ部(ラッチ部136a又は136b)が、信号電流Idを取り込むと同時に、該信号電流Idに対応する階調電流Ipixを出力する電流ラッチ・出力動作状態に設定され、他方側のラッチ部(ラッチ部136b又は136a)が先のタイミングにおける電流ラッチ・出力動作状態の、階調電流Ipixの出力状態を継続する電流出力保持動作状態に設定される。
【0059】
(電流ラッチ・出力動作)
具体的には、電流ラッチ・出力動作においては、図5(a)に示すように、第1の電流取込信号WToddがハイレベルに設定されるとともに、第2の電流取込信号WTevnがローレベルに設定されることにより、ラッチ部136aにおいて、薄膜トランジスタTr31a、Tr32aがオン動作し、薄膜トランジスタTr33aが薄膜トランジスタTr32aがオン動作することによりゲート・ドレイン間が電気的に短絡されて、飽和領域でオン動作する。これにより、電流生成回路CGNから供給された信号電流Idaは、ラッチ部136aの薄膜トランジスタTr31a、Tr33aを介して低電位電圧(−Vcc)側に流れ、該信号電流Idaの電流レベルが薄膜トランジスタTr33aのゲート−ソース間の電圧レベルに変換されて、蓄積容量Caに電荷として蓄積される。
【0060】
このとき、蓄積容量Caへの電荷の蓄積に伴って、接点N32aの電位が上昇することにより、カレントミラー回路を構成する薄膜トランジスタTr33a及びTr34aがオン動作して、信号電流Idaに対して、該カレントミラー回路に設定された所定の電流比率を有する階調電流Ipixが、データラインDLja側から薄膜トランジスタTr34aを介して低電位電圧(−Vcc)方向(すなわち、表示画素EM側からラッチ部136a方向)に引き込まれるように流れる。
【0061】
(電流出力保持動作)
電流出力保持動作においては、図5(b)に示すように、第1の電流取込信号WToddがローレベルに設定されるとともに、第2の電流取込信号WTevnがハイレベルに設定されることにより、上述したラッチ部136aにおいて、薄膜トランジスタTr31a、Tr32aがオフ動作する。このとき、上記電流ラッチ・出力動作により蓄積容量Caに蓄積された電荷(信号電流Ida)に基づく電位(高電圧)が接点N32aに保持されるため、薄膜トランジスタTr34aがオン状態を継続する。これにより、データラインDLja側からラッチ部136a(電流保持回路136)方向に階調電流Ipixを引き込む動作状態が保持される。
【0062】
また、第1の電流取込信号WToddがローレベルに設定されるとともに、第2の電流取込信号WTevnがハイレベルに設定された状態(すなわち、上述したラッチ部136aの電流出力保持動作状態)においては、ラッチ部136aに並列的に接続されたラッチ部136bにおいて、薄膜トランジスタTr31b、Tr32bがオン動作し、Tr33bがTr32bによりゲート・ドレイン間が電気的に短絡されて、飽和領域でオン動作するため、信号電流Idbが、ラッチ部136bの薄膜トランジスタTr31b、Tr33bを介して低電位電圧(−Vcc)側に流れ、該信号電流Idbの電流レベルが薄膜トランジスタTr33bのゲート−ソース間の電圧レベルに変換されて、蓄積容量Cbに電荷として蓄積されるとともに、接点N32bの電位の上昇に伴って、カレントミラー回路を構成する薄膜トランジスタTr33b及びTr34bがオン動作して、信号電流Idbに対して、所定の電流比率を有する階調電流Ipixが、データラインDLjb側から薄膜トランジスタTr34bを介して低電位電圧(−Vcc)方向(すなわち、表示画素EM側からラッチ部136b方向)に引き込まれるように流れる電流ラッチ・出力動作が実行される。
【0063】
すなわち、ラッチ部136a、136bのいずれか一方側が電流ラッチ・出力動作状態に設定された期間に、同時並行的に、他方側が電流出力保持動作状態に設定される。
なお、本実施形態に係る電流保持部CHLにおいては、後述する表示画素EMに設けられる画素駆動回路の回路構成に対応させるために、電流生成回路CGNから供給される正極性の信号電流Id(Ida、Idb)に対応する、負の階調電流Ipixを生成して、該階調電流Ipixをデータライン(表示画素EM)側から引き込む場合について説明したが、表示画素EMの回路構成に応じて、正極性の階調電流Ipixを生成して、データライン(表示画素EM)に流し込む構成を有するものであってもよい。
【0064】
<表示装置の駆動制御方法>
次いで、上述したような構成を有する表示装置における駆動制御動作について説明する。
図6は、本実施形態に係る表示装置の駆動制御方法を示すタイミングチャートである。
【0065】
上述したような構成を有する表示装置において、まず、表示信号生成部150により抽出された表示データは、システムコントローラ140から供給されるデータ制御信号に基づくタイミングで、データドライバ130の電流生成回路CGNに、表示パネル110の各行ごとに順次取り込まれ、該表示データに応じた信号電流Idに変換されて、各列のデータライン群DGjに対応して電流保持回路136が設けられた電流保持部CHLに出力される。
【0066】
電流保持部CHLにおいては、図6に示すように、システムコントローラ140から供給されるデータ制御信号(ハイレベルの第1の電流取込信号WTodd、及び、ローレベルの第2の電流取込信号WTevn)に基づいて、各列に設けられた電流保持回路136のラッチ部136aが電流ラッチ・出力動作状態に設定されることにより、特定の奇数番目の行(例えば、1行目)の表示画素EMに対応する上記信号電流Id(Ida)を取り込み、蓄積容量Caに当該信号電流Idaに基づく電荷を蓄積すると同時に、蓄積容量Caに蓄積された電荷、及び、カレントミラー回路(薄膜トランジスタTr33a、Tr34a)により設定された電流比率に基づいて、所定の電流値を有する階調電流Ipixを生成して、各データラインDLjaを介して、当該行(1行目)の各表示画素EMに供給する電流ラッチ・出力動作が実行される。
【0067】
次いで、上記電流ラッチ・出力動作の後に、システムコントローラ140から供給されるデータ制御信号(ローレベルの第1の電流取込信号WTodd、及び、ハイレベルの第2の電流取込信号WTevn)に基づいて、電流保持回路136のラッチ部136aが電流出力保持動作状態に設定されることにより、ラッチ部136aにおいて、上記蓄積容量Caに蓄積された電荷(すなわち、信号電流Ida)に基づく階調電流Ipixが、各データラインDLjaを介して、当該行(1行目)の各表示画素EMに継続して供給される電流出力保持動作が実行される。
【0068】
また、ラッチ部136aにおいて、電流出力保持動作が実行されている期間においては、図6に示すように、システムコントローラ140から供給されるデータ制御信号(ローレベルの第1の電流取込信号WTodd、及び、ハイレベルの第2の電流取込信号WTevn)に基づいて、電流保持回路136のラッチ部136bが電流ラッチ・出力動作状態に設定されることにより、電流生成回路CGNから供給される、上記特定の奇数番目の行に隣り合う、次の偶数番目の行(例えば、2行目)の信号電流Id(Idb)が、ラッチ部136bに取り込まれて、蓄積容量Cbに電荷が蓄積されると同時に、該蓄積容量Cbに蓄積された電荷、及び、カレントミラー回路(薄膜トランジスタTr33b、Tr34b)により設定された電流比率に基づいて、所定の電流値を有する階調電流Ipixを生成して、各データラインDLjbを介して、当該行(2行目)の各表示画素EMに供給する電流ラッチ・出力動作が実行される。
【0069】
次いで、上記ラッチ部136aにおける電流出力保持動作の後に、システムコントローラ140により、再び、第1の電流取込信号WToddがハイレベルに、また、第2の電流取込信号WTevnがローレベルに設定されることにより、ラッチ部136aは再び電流ラッチ・出力動作状態に設定されることにより、次の奇数番目の行(例えば、3行目)の信号電流Id(Ida)に基づく電荷が蓄積容量Caに蓄積されると同時に、該蓄積容量Caに蓄積された電荷、及び、カレントミラー回路により設定された電流比率に基づく階調電流Ipixが、各データラインDLjaを介して、当該行(3行目)の各表示画素EMに供給される電流ラッチ・出力動作が実行される。
【0070】
また、このとき、電流保持回路136のラッチ部136bが電流出力保持動作状態に設定されることにより、先のタイミングで上記蓄積容量Cbに蓄積された電荷に基づく階調電流Ipixが、各データラインDLjbを介して、上記電流ラッチ・出力動作の対象となった行(2行目)の各表示画素EMに継続して供給される電流出力保持動作が実行される。
【0071】
これにより、電流保持部CHLにおいて、各列に対応して設けられた各電流保持回路136を構成する2段のラッチ部136a及び136bの間で、電流ラッチ・出力動作と電流出力保持動作を同時並行的に実行する制御を、所定の動作周期ごとに交互に繰り返すことにより、電流生成回路CGNから順次供給される各行の表示データ(輝度階調値)に対応した信号電流Idが連続的に電流保持回路136に取り込み保持されると同時に、階調電流Ipixとして各行の表示画素に一斉に供給される動作が実行される。
【0072】
したがって、図6に示すように、電流保持部CHL(各電流保持回路136)から各列のデータライン群DGjを介して階調電流Ipixを出力し、システムコントローラ140から供給される走査制御信号に基づくタイミングで、走査ドライバ120からハイレベルの走査信号Vselを、少なくとも隣り合う走査ラインSLi、SLi+1に対して、所定の期間(例えば、1水平走査期間)、オーバーラップするように印加(各行の走査信号Vselは、各々2水平走査期間)することにより、各走査ラインSLiに対応する複数の行(例えば、1行目と2行目の2行分)の表示画素EMに、上記各データライン群DGjのデータラインDLja、DLjbを介して順次供給される階調電流Ipixが書き込まれ、該階調電流Ipixに基づく所定の輝度階調で発光動作が実行される。
【0073】
このように、本実施形態においては、複数の表示画素が2次元配列された表示パネルに対して、走査ドライバから、隣り合う複数行(k行;kは2以上の正の整数。本実施形態では、2行)の走査ラインに対して、所定の期間、オーバーラップするように走査信号を印加することにより、複数行(k行)分の表示画素を一定期間ずつ同時並行して選択状態に設定し、かつ、データドライバにより、各列ごとにラッチ部が複数個(k個)並列的に設けられた電流保持回路に、各行の表示画素に対応する表示データを取り込んで保持すると同時に、各行の表示画素に階調電流を供給するように構成されているので、各列のデータライン群を構成するデータライン数(k本)分のラッチ部を備えた構成で、複数の行の表示画素に対して、表示データに基づく階調電流を同時並行的に書き込むことができ、当該階調電流の書込時間を実質的に複数倍(k倍)に、長く設定することができる。
【0074】
具体的には、上述したように、各列に配設されるデータライン群が2本のデータラインからなり、当該データラインに対応して電流保持部に2個のラッチ部が設けられた構成においては、走査信号による特定の行の表示画素の選択期間の1/2の期間が、次の行の表示画素の選択期間とオーバーラップするように設定することにより、例えば、i行目と(i+1)行目の表示画素に設定される選択期間同士が重なる期間を、通常の1水平走査期間(1H)に設定した場合、選択期間が通常の2倍になり、データドライバ(電流保持部)から供給される階調電流を各表示画素に2倍の書き込み時間で書き込むことができる。
【0075】
また、各列のデータライン群を構成する各データラインに接続される表示画素の数を、1列に1本のデータラインを配設した従来の表示装置に比較して、k分の1(本実施形態では、1/2)に削減して、各データラインに寄生する容量成分(寄生容量)を大幅に低減することができ、データライン(表示画素)への階調電流の供給時(表示データの書込時)に生じる遅延時間(データラインの充電に要する時間)を大幅に減少させることができる。
【0076】
したがって、各表示画素への表示データの書込時間を充分に長く確保することができるとともに、各データラインの寄生容量を大幅に削減することができるので、表示パネルを大型化した場合や高精細化した場合、あるいは、低階調表示時であっても、データラインの寄生容量を迅速に所定の電圧まで充分に充電して、表示データの書込不足を解消することができ、各表示画素を表示データに応じた適切な輝度階調で発光動作させて、表示パネル内で発生する輝度傾斜(表示ムラ)を大幅に低減して表示画質の向上を図ることができる。
また、電流生成回路及び電流保持部からなるデータドライバを、表示パネルが形成される基板とは独立して、例えば、ドライバチップの形態で提供することができるので、表示装置の各構成の配置に関して設計自由度を向上させることができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、上述したように、データドライバにより各行の表示画素に対応する表示データをラッチ部に取り込んで保持すると同時に、各行の階調電流を生成して、順次各表示画素に供給するように構成されているため、電流保持回路(ラッチ部)におけるラッチ動作を迅速に実行する必要があり、信号遅延等によりラッチ動作のタイミングにずれが生じた場合には、表示動作に支障を来す可能性がある。
【0078】
そこで、本実施形態においては、電流保持回路(ラッチ部)における表示データ(輝度階調値に応じた信号電流)のラッチ動作を小電流で迅速に行うようにするとともに、各データラインへの出力段に、カレントミラー回路構成を適用することにより、階調電流の電流値(絶対値)を簡易に制御して大電流化するようにして、ラッチ動作の遅延を抑制することができる。
【0079】
<表示画素の具体回路例>
次に、本発明に係る表示装置に適用可能な表示画素の具体回路例について、図面を参照して説明する。
図7は、本発明に係る表示装置に適用可能な表示画素(画素駆動回路、発光素子)の一具体例を示す回路構成図である。
【0080】
本実施形態に係る表示パネルに適用される表示画素EM(厳密には、上述した表示画素EM及び選択トランジスタTrselからなる構成)は、例えば、図7に示すように、概略、上述した走査ドライバ120から印加される走査信号Vselに基づいて、表示画素EMを選択状態に設定し、該選択状態においてデータドライバ130(電流保持部CHL)から供給される階調電流Ipixを取り込み、該階調電流Ipixに応じた発光駆動電流を発光素子に流す画素駆動回路(上述した選択トランジスタTrselを含む;発光駆動回路)DCと、該画素駆動回路DCから供給される発光駆動電流に基づいて、所定の輝度階調で発光動作する有機EL素子OEL等の電流制御型の発光素子と、を有して構成されている。
【0081】
画素駆動回路DCは、具体的には、図7に示すように、例えば、制御端子(ゲート端子)が走査ラインSLiに、電流路(ソース−ドレイン)が電源ラインVL及び接点N11に各々接続されたnチャネル型の薄膜トランジスタTr11と、制御端子が走査ラインSLiに、電流路がデータラインDLj(上述した各実施形態に示したデータライン群DGjを構成する各データラインDLja、DLjb)及び接点N12に各々接続されたnチャネル型の薄膜トランジスタTr12と、制御端子が接点N11に、電流路が電源ラインVL及び接点N12に各々接続されたnチャネル型の薄膜トランジスタTr13と、接点N11及び接点N12間に接続されたコンデンサ(保持容量)Csと、を備えた構成を有し、有機EL素子OELのアノード端子が接点N12に、カソード端子が接地電位に各々接続されている。ここで、コンデンサCsは、薄膜トランジスタTr13のゲート−ソース間に形成される寄生容量であってもよい。また、薄膜トランジスタTr12は、上述した実施形態に示した選択トランジスタTrselに相当する。
【0082】
<表示画素の発光駆動制御方法>
図8は、本構成例に係る表示画素(画素駆動回路)における駆動制御動作を示す概念図であり、図9は、本構成例に係る表示画素を適用した場合の表示装置における駆動制御動作を示すタイミングチャートである。また、図10は、本構成例に係る表示画素を適用した表示装置の一構成例を示す概略ブロック図である。
【0083】
上述したような構成を有する画素駆動回路DCにおける発光素子(有機EL素子OEL)の発光駆動制御は、例えば、図9に示すように、一走査期間Tscを1サイクルとして、該一走査期間Tsc内に、走査ラインSLiに接続された表示画素EMを選択して表示データに基づく階調電流Ipixを書き込み、電圧成分として保持する選択期間(書込動作期間)Tseと、該選択期間Tseに書き込み、保持された電圧成分に基づいて、上記表示データに応じた発光駆動電流を有機EL素子OELに供給して、所定の輝度階調で発光動作させる非選択期間(発光動作期間)Tnseと、を設定することにより実行される(Tsc=Tse+Tnse)。ここで、各行の表示画素EMに設定される選択期間は、図9に示すように、隣り合う複数の行(例えば、2行)の間で、所定の期間(選択期間の1/2の期間)、時間的に重なる(オーバーラップする)ように設定される。以下、説明を簡明にするために、上述した実施形態に示したように、隣り合う2行の表示画素EM(走査ラインSLi)に対応して、各列に2本のデータラインDLja、DLjbを一組とするデータライン群DGjが配設された構成について、具体的に説明する。
【0084】
(選択期間)
図9に示すように、表示画素EMの選択期間Tseにおいては、まず、走査ドライバ120から特定の走査ラインSLiに対して、ハイレベルの走査信号Vselが印加されて当該行の表示画素EMが選択状態に設定されるとともに、当該選択期間Tseの後半(選択期間Tseの1/2の期間)においては、次の行の走査ラインSLi+1に対しても、ハイレベルの走査信号Vselが印加されて、隣り合う奇数行及び偶数行からなる2行の表示画素が、所定の期間(選択期間Tseの1/2の期間)、時間的に重なるように選択状態に設定される。また、この選択期間Tseにおいては、上記走査信号Vselの印加に同期して、当該行の表示画素EMの電源ラインVLに対して、ローレベルの電源電圧Vscが印加される。
【0085】
そして、このタイミングに同期して、データドライバ130(電流保持部CHLの各電流保持回路136)から選択状態に設定されている行の表示画素EMに、各列のデータライン群DGjを構成する、いずれかのデータラインDLja、DLjbを介して(奇数行目の表示画素EMに対してはデータラインDLjaを介して、また、偶数行目の表示画素EMに対してはデータラインDLjbを介して)、表示データに基づく(負極性の)階調電流Ipixが供給される。ここで、隣り合う2行の表示画素が、同時に選択状態に設定される期間においては、データライン群DGjの2本のデータラインDLja、DLjbを介して、各行の表示画素EMの表示データに対応した個別の階調電流Ipixが同時に供給される。
【0086】
これにより、図8(a)に示すように、画素駆動回路DCを構成する薄膜トランジスタTr11及びTr12がオン動作して、ローレベルの電源電圧Vscが接点N11(すなわち、薄膜トランジスタTr13のゲート端子及びコンデンサCsの一端)に印加されるとともに、データラインDLja又はDLjbを介してデータドライバ130(電流保持部CHL)方向に階調電流Ipixを引き込む動作が行われることにより、ローレベルの電源電圧Vscよりも低電位の電圧レベルが接点N12(すなわち、薄膜トランジスタTr13のソース端子及びコンデンサCsの他端)に印加される。
【0087】
このように、接点N11及びN12間(薄膜トランジスタTr13のゲート−ソース間)に電位差が生じることにより、薄膜トランジスタTr13がオン動作して、電源ラインVLから薄膜トランジスタTr13、接点N12、薄膜トランジスタTr12、データラインDLja又はDLjbを介して、電流保持部CHL方向に、階調電流Ipixに対応した書込電流Iaが流れる。
【0088】
このとき、コンデンサCsには、接点N11及びN12間(薄膜トランジスタのTr13のゲート−ソース間)に生じた電位差に対応する電荷が蓄積され、電圧成分として保持される(充電される)。また、電源ラインVLには、接地電位以下の電圧レベルを有する電源電圧Vscが印加され、さらに、書込電流IaがデータラインDL方向に流れるように制御されていることから、有機EL素子OELのアノード端子(接点N12)に印加される電位はカソード端子の電位(接地電位)よりも低くなり、有機EL素子OELに逆バイアス電圧が印加されていることになるため、有機EL素子OELには発光駆動電流が流れず、発光動作は行われない。
【0089】
(非選択期間)
次いで、図9に示すように、選択期間Tse終了後の非選択期間Tnseにおいては、走査ドライバ120から特定の走査ラインSLiに対して、ローレベルの走査信号Vselが印加されて当該行の表示画素が非選択状態に設定されるとともに、当該行の表示画素の電源ラインVLに対して、ハイレベルの電源電圧Vscが印加される。また、このタイミングに同期して、データドライバ130(電流保持部DHL)による階調電流Ipixの引き込み動作が停止される。なお、このとき、次の行の走査ラインSLi+1には、ハイレベルの走査信号Vselが継続して印加され、選択状態が保持される。
【0090】
これにより、図8(b)に示すように、画素駆動回路DCを構成する薄膜トランジスタTr11及びTr12がオフ動作して、接点N11(すなわち、薄膜トランジスタTr13のゲート端子及びコンデンサCsの一端)への電源電圧Vscの印加が遮断されるとともに、接点N12(すなわち、薄膜トランジスタTr13のソース端子及びコンデンサCsの他端)への電流保持部CHLによる階調電流Ipixの引き込み動作に起因する電圧レベルの印加が遮断されるので、コンデンサCsは、上述した選択期間Tseにおいて蓄積された電荷を保持する。
【0091】
このように、コンデンサCsが書込動作時(選択期間Tse)の充電電圧を保持することにより、接点N11及びN12間(薄膜トランジスタのTr13のゲート−ソース間)の電位差が保持されることになり、薄膜トランジスタTr13はオン状態を維持する。また、電源ラインVLには、接地電位よりも高い電圧レベルを有する電源電圧Vscが印加されるので、有機EL素子OELのアノード端子(接点N12)に印加される電位はカソード端子の電位(接地電位)よりも高くなる。
【0092】
したがって、電源ラインVLから薄膜トランジスタTr13、接点N12を介して、有機EL素子OELに順バイアス方向に所定の発光駆動電流Ibが流れ、有機EL素子OELが発光する。ここで、コンデンサCsにより保持される電位差(充電電圧)は、薄膜トランジスタTr13において階調電流Ipixに対応した書込電流Iaを流す場合の電位差に相当するので、有機EL素子OELに流下する発光駆動電流Ibは、上記書込電流Iaと同等の電流値を有することになる。
【0093】
これにより、特定の行の表示画素EMにおいて、選択期間Tse後の非選択期間Tnseにおいては、選択期間Tseに書き込まれた表示データ(階調電流Ipix)に対応する電圧成分に基づいて、薄膜トランジスタTr13を介して、発光駆動電流が継続的に供給されることになり、有機EL素子OELは表示データに応じた輝度階調で発光する動作を継続する。
【0094】
そして、上述した一連の動作を、図9に示すように、上述した表示装置の駆動制御動作(図6参照)に基づいて、表示パネル110を構成する全ての走査ラインSLiについて、選択期間の一部の期間が隣り合う行との間で時間的に重なる(オーバーラップする)ように、順次繰り返し実行することにより、表示パネル1画面分の表示データが書き込まれて、所定の輝度階調で発光し、所望の画像情報が表示される。
【0095】
ここで、本実施例に係る画素駆動回路DCにおいては、薄膜トランジスタTr11〜Tr13を全て同一のチャネル極性(nチャネル型)を有する薄膜トランジスタを用いて構成することができるので、例えば、アモルファスシリコン半導体層、あるいは、ポリシリコン半導体層をチャネル層とするnチャネル型の電界効果型トランジスタのみを用いて構成することができる。この場合、技術的に確立され、単結晶シリコン製造技術に比較して製造コストが安価なアモルファスシリコン製造プロセスやポリシリコン製造プロセスを適用して、動作特性が安定した電界効果型トランジスタを比較的安価に製造することができるので、表示パネルを高精細化や大型化した場合であっても、表示画質に優れた表示装置を簡易かつ安価に実現することができる。
【0096】
また、上述したような回路構成を有する画素駆動回路DCによれば、表示データの輝度階調に応じた比較的大きな電流値を有する階調電流Ipixをデータドライバ130により供給して、有機EL素子OELを発光動作させるための発光制御トランジスタ(薄膜トランジスタTr13)のゲート−ソース間に付設されたコンデンサCsに該階調電流Ipixに対応した電圧を良好に充電する(書き込む)ことができるので、上述した表示装置の駆動制御方法により、階調電流の表示画素への書込時間を長く設定できることに加え、その書込速度を向上させて表示応答特性や表示画質の一層の改善を図ることができる。
【0097】
なお、本構成例に係る画素駆動回路DCにおいて、電源ラインVLに所定の電源電圧Vcsを印加する構成としては、例えば、図10に示すように、各行の走査ラインSLiに並行して電源ラインVLiが配設された表示パネル110の周辺領域に、該電源ラインVLiに接続された電源ドライバ160を備え、システムコントローラ140から供給される電源制御信号に基づいて、図9に示したように、走査ドライバ120から走査信号Vselを出力するタイミングに同期して、電源ドライバ160から上記所定の電圧値を有する電源電圧Vcsを各電源ラインVLiに印加するようにした構成を良好に適用することができる。
【0098】
なお、上述した表示画素EMにおいては、画素駆動回路DCとして3個の薄膜トランジスタを備え、データライン群DGj(データラインDLja、DLjb)を介してデータドライバ130(電流保持部DHL)方向に階調電流Ipixを引き込む形態の電流指定方式に対応した回路構成を示したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、少なくとも、電流指定方式を適用した画素駆動回路を備えた表示装置であって、発光素子への発光駆動電流の供給を制御する発光制御トランジスタ、及び、階調電流の書込動作を制御する書込制御トランジスタを有し、表示データに応じた階調電流(書込電流)を保持した後、該階調電流に基づいて、上記発光制御トランジスタをオン動作させて発光駆動電流を供給して、発光素子を所定の輝度階調で発光させるものであれば、他の回路構成を有するものであればよく、例えば、4個の薄膜トランジスタを備えた回路構成を有するものであってもよく、さらには、データドライバ(電流保持部)から上記データライン群を介して表示画素(画素駆動回路)方向に階調電流を流し込む形態の回路構成を有するものであってもよい。
【0099】
また、上述した表示画素の構成例においては、電流制御型の発光素子として、有機EL素子を適用した構成を示したが、本発明に係る表示装置はこれに限るものではなく、供給される発光駆動電流の電流値に応じて所定の輝度階調で発光動作する発光素子であれば、上述した有機EL素子の他に、例えば、発光ダイオードやその他の発光素子を良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 表示装置
110 表示パネル
120 走査ドライバ
130 データドライバ
136 電流保持回路
140 システムコントローラ
150 表示信号生成部
CGN 電流生成回路
CHL 電流保持部
SLi 走査ライン
DGj データライン群
EM 表示画素
DC 画素駆動回路
OEL 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを構成する2次元配列された複数の表示画素に対して、表示データに基づく階調電流を供給することにより、前記各表示画素を駆動する表示駆動装置において、
少なくとも、
前記表示パネルの隣接する所定の複数の行の前記表示画素の各々を、互いに重複しない期間と互いに重複する期間とを有する所定のタイミングで順次選択状態に設定する画素選択手段と、
前記表示データに基づいて前記各表示画素の輝度階調を制御する所定の電流値を有する信号電流を生成する電流生成手段と、
前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行の前記表示画素に対応する前記信号電流を順次取り込み、該信号電流に基づく前記階調電流を生成し、該階調電流を、前記所定のタイミングに対応して前記選択状態に設定される前記所定の複数の行の前記表示画素の各々に、前記表示パネルの前記隣接する複数の行の前記表示画素の各々に対応する複数のデータラインを介して、前記重複しない期間と重複する期間とを有して順次供給する電流書込手段と、
を備え、前記電流書込手段は、前記複数のデータラインに前記所定のタイミングで前記階調電流を出力する複数の電流保持回路を備え、
該各電流保持回路は、前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行の各列の前記表示画素に対応して前記信号電流を保持する信号保持部と、該信号保持部に前記信号電流を分配する信号分配部と、該信号保持部に保持された前記信号電流に対応する電流を前記階調電流として生成して、該階調電流を、前記選択状態に設定される期間に亘って、前記所定の複数行の前記各表示画素に出力する階調電流出力部と、を有する複数の電流保持・出力部を備え
少なくとも、前記電流書込手段は、前記表示パネルが形成される基板とは独立して設けられていることを特徴とする表示駆動装置。
【請求項2】
前記信号保持部は、前記信号電流に基づく電荷を蓄積して、電圧成分として保持する電荷蓄積手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の表示駆動装置。
【請求項3】
前記階調電流出力部は、カレントミラー回路構成を有し、前記電流生成手段から供給される前記信号電流に対して、所定の電流比率の電流値を有する前記階調電流を生成して、前記各行の前記表示画素に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示駆動装置。
【請求項4】
少なくとも、前記電流書込手段は、同一のチャネル極性を有する電界効果型トランジスタを用いて構成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の表示駆動装置。
【請求項5】
表示パネルの行方向に配設された複数の走査ライン及び列方向に配設された複数のデータラインの各交点近傍に配列された複数の表示画素に対して、表示データに応じた所定の電流値を有する階調電流を供給することにより前記表示画素を駆動して、前記表示パネルに所望の画像情報を表示する表示装置において、
少なくとも、
各列に、隣接する所定の複数の行の前記表示画素に対応する複数のデータラインからなるデータライン群が配設された前記表示パネルと、
前記表示パネルの前記隣接する所定の複数の行に対応する複数の前記走査ラインの各々に、互いに重複する期間を有する所定のタイミングで順次走査信号を印加して、該各走査ラインに接続される前記表示画素を、互いに重複しない期間と互いに重複する期間とを有して順次選択状態に設定する走査駆動回路と、
前記表示データに基づいて前記表示パネルの前記各表示画素の輝度階調を制御する所定の電流値を有する信号電流を生成する電流生成手段、及び、前記表示パネルの前記所定の複数の行の表示画素に対応する前記信号電流を順次取り込み、該信号電流に基づく前記階調電流を生成し、該階調電流を、前記選択状態に設定される前記所定の複数の行の表示画素の各々に、前記重複しない期間と重複する期間とを有して供給する電流書込手段を備えた信号駆動回路と、
を備え、
前記信号駆動回路の前記電流書込手段は、前記表示パネルの各列の前記データライン群に前記所定のタイミングで前記階調電流を出力する複数の電流保持回路を備え、
該各電流保持回路は、前記表示パネルの前記所定の複数の行の各列の前記表示画素に対応して前記信号電流を保持する信号保持部と、該信号保持部に前記信号電流を分配する信号分配部と、該信号保持部に保持された前記信号電流に対応する電流を前記階調電流として生成して、該階調電流を、前記選択状態に設定される期間に亘って、前記所定の複数行の前記各表示画素に出力する階調電流出力部と、を有する複数の電流保持・出力部を備え
少なくとも、前記信号駆動回路は、前記表示パネルが形成される基板とは独立して設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルに配列された前記表示画素は、
前記階調電流に基づいて所定の発光駆動電流を生成する発光駆動回路と、
該発光駆動回路から供給される前記発光駆動電流の電流値に基づいて、所定の輝度階調で発光動作する電流制御型の発光素子と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の表示装置。
【請求項7】
少なくとも、前記発光駆動回路は、同一のチャネル極性を有する電界効果型トランジスタを用いて構成されていることを特徴とする請求項記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセント素子であることを特徴とする請求項又はに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−2911(P2010−2911A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166247(P2009−166247)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【分割の表示】特願2004−266441(P2004−266441)の分割
【原出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】