説明

表装材および表装材敷設方法

【課題】敷設作業が容易でかつ結露防止が必要な領域に限定して結露防止対策を施すことを可能にした表装材および表装材敷設方法を提供する。
【解決手段】プラスチック段ボールからなる平板状のピース基板2と、結露防止機能を有しかつこのピース基板2の表面に形成された機能性塗料層3と、ピース基板2の裏面に形成された接着層4と、からなる3層構造のピース1を複数個用意し、結露が発生し易い壁面にピース1を敷き詰めることにより、プラスチック段ボール自体の結露防止機能と機能性塗料層3の結露防止機能とを併せ持つようになり、効果的な結露対策が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室、洗面所、台所等、室内において湿気が多い場所にある壁面や床等に敷設する表装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
居住環境の快適さを阻害する要因の一つとして、室内における結露の問題があげられる。結露は屋内外の温度差によって発生するものであり、特に、冬場において、窓ガラス、窓枠、サッシまたはその近傍の壁面において発生し易くなる。その他、結露が発生し易い場所としては、浴室、洗面所、台所等、水場に近いところがあげられる。
【0003】
結露が発生した箇所をそのまま放置しておくと、カビやダニが発生するなど多くの悪影響を及ぼすおそれがあるため、従来より、結露防止用のスプレー材やコーティング材、さらには結露防止用のパネル等、様々な結露防止対策が提案されている。
【0004】
また、従来、この種の技術としては、特許文献1に記載された技術がある。この特許文献1には、一枚板のプラスチック段ボールの片面にブチルゴム粘着体を貼着してなる防音シートについて記載されており、さらに、この防音シートは、防音作用に加え、断熱、結露防止作用も備えており、建築物の内壁、外壁、床、天井等に使用されることについて記載されている。
【特許文献1】特開平10−131337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結露防止対策の工夫の一つとして段ボールを結露箇所に貼着することが、従来より提案されている。すなわち、段ボールが有する空気層によって、屋外から屋内までの温度変化が緩やかなものになるため、結露の発生を防止できるようになる。
【0006】
ところで、窓や窓枠といった箇所においては、窓や窓枠全面において結露が発生し易いため、パネル状の段ボールを取り付ける場合には、段ボールを窓や窓枠形状にして一度の作業によって取り付けるといった、比較的容易な作業によって結露防止対策が可能になる。
【0007】
一方、室内の壁面においては、壁面全体が結露しているわけではなく、壁面の一部、例えば、窓枠周囲の壁面に結露が発生することが多い。そのため、窓枠周囲の壁面にパネル状の段ボールを取り付けることによって、結露防止対策は可能になる。しかし、この場合、結露があまり生じない領域まで段ボールを取り付けることになる。ここで、段ボールの耐久性や寿命を考慮すると、プラスチック段ボールを適用することが有効であるが、プラスチック段ボールを、結露があまり生じない領域にまで取り付けることは、その分、材料費が高くなることになる。しかも、プラスチック段ボールにおける接着面の反対面に、何らかの処理が施されている場合には、その分の材料費も加算されることになる。
【0008】
また、プラスチック段ボールのサイズが大きな場合には、正確な敷設作業をするために複数の人手が必要となるため、ユーザの手作業によって容易に行えるものではなくなる。
【0009】
また、窓枠周囲は、部屋の角部に位置している場合が多く、このような角部には何らかの物品が置かれている場合が多い。パネル状のプラスチック段ボールを壁面に貼り付ける場合においては、貼着作業の障害となる物品を移動してからの作業となる場合が多くなる。したがって、プラスチック段ボールを敷設するための作業性に問題が生ずる場合がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決し、敷設作業が容易でかつ結露防止が必要な領域に限定して結露防止対策を施すことを可能にした表装材および表装材敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、
(1)平板状のピース体とこのピース体の表面に形成した接着層とを有する表装材であって、前記ピース体は、プラスチック段ボールによって構成され、前記接着層を介して表装対象物に貼着されることを特徴とする。このように構成することにより、結露防止対策を施す必要のある領域に限定してプラスチック段ボールを取り付けることが可能になり、使用するプラスチック段ボールの量を低減することができる。しかも、小型のピース体を所望の位置に貼着する作業のため、一人で作業を行うことも可能になる。また、接着層によって接着可能の面であれば、貼付位置は問わないため、例えば、湿気の多い壁面に貼着する場合には、少なくともピース体の大きさに相当する領域の水分を拭き取ることによって、ピース体を貼着することが可能になるために、結露防止材を壁面に塗布するよりも作業性が良い。
【0012】
(2)複数の前記ピース体が前記表装対象物の所定領域に敷設されることを特徴とする。このように構成することにより、複数のピース体を組み合わせることによって、結露防止対策を施す必要のある領域の形状に合わせて敷設することが可能になる。
【0013】
(3)前記表面の反対面に機能性塗料層が形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、表装材に対し、プラスチック段ボールによる結露防止機能や断熱機能の他に、機能性塗料による機能を加えることが可能になる。しかも、機能性塗料を塗布するよりも作業が容易になる。
【0014】
(4)前記機能性塗料層は、断熱性塗料によって形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、表装材の断熱機能を補うことが可能になる。
【0015】
(5)前記機能性塗料層は、特殊水性アクリル樹脂と、吸水性および水分発散性を有するセラミック形骨材とを成分に含む、結露防止塗料によって形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、表装材に、プラスチック段ボールによる結露防止機能の他に、結露防止塗料による防露、断熱、遮熱、防音、防水等の機能を持たせることが可能になる。
【0016】
(6)前記接着層は、再湿粘着型の接着部材によって形成されていることを特徴とする。このように構成することにより、濡れた壁面であっても貼着可能となり、しかも、剥がして再度貼着することも可能であるため、正確な取り付けが可能になるとともに、ピース体の取り替え作業も容易に可能となる。
【0017】
(7)前記プラスチック段ボールは、ポリプロピレンまたはポリカーボネートからなることを特徴とする。このように構成することにより、軽量かつ扱いやすいピース体を構成することができる。
【0018】
(8)(1)〜(7)のいずれかの表装材を表装対象物に敷設する方法であって、前記表装対象物に前記接着層を当接させて前記ピース体を貼着する工程を繰り返すことにより、複数の前記ピース体を、前記表装対象物の所定領域に敷き詰めることを特徴とする。このように構成することにより、ピース体自体が小型かつ軽量で扱いやすいため、貼着作業が安全になり、ユーザによる敷設作業が可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、結露防止対策を施す必要のある領域等にプラスチック段ボールからなるピース体からなる表装材を貼着することよって結露防止対策の施工が完了するため、結露防止対策を施す必要があるとユーザが判断した領域に、ユーザ自身の作業によって容易に結露防止対策を施すことが可能になる。また、ピース体の組み合わせであるため、ピース体を配置する自由度が高くなり、余分な領域までカバーすることがなくなるため、使用するプラスチック段ボールの量を低減することができ、その分、材料費を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の表装材の一実施形態におけるピースの構成を示す斜視図、図2は図1のA−A線断面図である。ピース1は、プラスチック段ボールからなる平板状のピース基板2と、このピース基板2の表面に形成された機能性塗料層3と、ピース基板2の裏面に形成された接着層4とからなる3層構造である。
【0022】
ピース基板2の材質としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が用いられる。機能性塗料層3としては、断熱塗料、結露防止塗料またこれらの機能を併せ持っている多機能性塗料が用いられる。例えば、断熱塗料としては、特開2002−105385号公報に記載された塗布式断熱材が適用可能であり、結露防止塗料としては、特殊水性アクリル樹脂と、吸水性および水分発散性を有するセラミック形骨材とを成分に含む塗料(株式会社日進産業社の商品名ノン結露)があげられる。
【0023】
接着層4としては、例えば、両面粘着性テープや、感圧粘着型あるいは再湿粘着型の接着テープ等があげられ、接着層4として用いる接着部材については、ピース1を貼着する面に応じて適宜選択する。
【0024】
そして、接着層4を対象物に押しつけることにより、ピース1は対象物に貼着され、この貼着作業をくり返すことによって複数のピース1を対象物に敷き詰めることにより、対象物が表装される。
【0025】
次に、ピース1を敷設する対象物が結露し易い壁面である場合を例として、具体的に説明する。この例に用いるピース1として、ピース基板2には450mm×300mmの平面および3mmの厚さを有するポリプロピレンのプラスチック段ボールが用いられ、機能性塗料層3には前述したシスタコートが用いられ、接着層4には再湿粘着型の接着シートが用いられているものとする。
【0026】
まず、壁面におけるピース1の敷設する領域の余分な水分を拭き取り、汚れを除去する。次に、接着層4に水分を与えることによって、接着層4の粘着性を高める。そして、接着層4を壁面に押しつけてピース1を壁面に貼着する。この作業を繰り返してピース1を壁面に敷き詰めていくことによって、ピース1の敷設作業が完了する。
【0027】
図3は居間におけるピースの敷設例を示す説明図であり、窓枠周囲や窓近くの天井等にピース1が敷設されている。また、壁面に冷暖房機がある場合には、冷暖房機を避けるようにピース1を配置したり、テレビが壁面を隠したりしているような場合には少しの移動で敷設作業が可能になる。さらに、北側に位置する壁面が湿気の影響を受けやすいため、北側の壁面に敷設することにより、結露による壁紙の剥離やカビの発生等から部屋を守ることが可能になる。
【0028】
なお、居間の壁面のように、壁面にあらかじめ壁紙が貼着されている場合には、壁紙の上にピース1を敷設しても良く、これにより、壁紙自体に湿気がたまり、壁紙が剥がれたりカビが発生したりするといったことが防止できる。また、図3は居間を例としたものであるが、浴室のようにタイルが敷設されている場合には、タイル上にピース1を敷設しても良い。この場合には、タイル間の目地付近の凹凸が吸収できるように、表面に柔軟性を有する接着シートを用いることにより、目地付近にカビが発生することを防止することができる。
【0029】
このように本実施形態は、複数のピース1を壁面等に敷き詰めるものであるため、壁紙のような厚さのないシート部材を壁面に貼着するよりも施工性が良い。また、軽量であるため、敷設作業においてピース1を落下させたとしても、作業者がケガをしたりピースが破損したりすると言った不具合が発生するおそれは一切なく、さらに、敷設作業の際に特別な技術も必要としないため、タイルの敷設作業よりもはるかに簡単でかつ安全である。したがって、ユーザによる手作業でも容易に敷設が可能となる。
【0030】
また、接着層4として再湿粘着型の接着テープを用いることにより、一度、ピース1を壁面から剥離させても再度貼着することが可能になるため、必要に応じてピース1の貼着数を調整したり、貼着位置を変えたりすることが可能になる。しかも、ピース1は小型かつ軽量であるため、大きなパネル体を剥離させるよりも容易な剥離作業が可能になる。
【0031】
また、機能性塗料層3としては、貼着位置における壁面やその周囲の環境、さらにはインテリア性等を考慮して適宜選択可能であるが、特に、防露、断熱、防音機能を有する塗料を用いることにより、ピース基板2が段ボールであるため、段ボール自体に防露、断熱、防音機能を有することから、機能性塗料層3の塗布によって防露、断熱、防音機能を補うことが可能になる。
【0032】
図4は銭湯の天井面にピースを敷設した例を示す説明図である。24時間営業の銭湯のように、常時、湿気を有する環境下にある天井面においては、塗料を塗布する作業はきわめて困難である。それに対して本実施形態においては、接着層4に再湿粘着型の接着シートが用いられているため、湿気が多い環境下でも容易に敷設作業が可能になる。
【0033】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上述したものに限るものではない。上述した実施形態においては、居間および銭湯における敷設例を説明したが、結露が発生し易い場所であれば、敷設場所を壁面に限る必要はない。例えば、家具の側面や、床面、ドア、浴室、洗面所、トイレ、押入等にピース1を敷設しても良い。また、窓や窓枠にピース1を敷設しても良いことは言うまでもない。
【0034】
また、機能性塗料層3としては、美観性やデザイン性を付与するために、顔料のような画像表示機能を持たせる塗料を使用しても良い。この場合には、機能性塗料層3自体に結露防止等の機能がないものの、上述したように、プラスチック段ボール自体に結露防止機能があるため、壁面の結露を防止するとともにインテリア性を持たせることが可能になる。さらに、発光塗料を併用することにより、昼夜におけるインテリア性を持たせることも可能である。
【0035】
また、ピース1の弾性を高めるために、ピース基板2が有する空気層を大きくしたい場合には、ピース基板2を複数枚重ね、最上面に機能性塗料層3を形成し、最下面に接着層4を形成すると良い。さらに、ピース1において表面に垂直な方向の通気性を持たせたい場合には、ピース基板2の表裏面に孔を形成しても良い。このように本実施形態によれば、簡単な工夫によって多機能化を図ることが可能である。また、ピース基板2としてポリカーボネートを用いた場合には、ポリカーボネートが有する耐熱性、耐寒性により、ピース体の表側と裏側との温度差が大きくても劣化が少なく、安定していることから、ピース体の長寿命化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の表装材の一実施形態におけるピースの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】居間におけるピースの敷設例を示す説明図である。
【図4】銭湯におけるピースの敷設例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ピース、2…ピース基板、3…機能性塗料層、4…接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のピース体とこのピース体の表面に形成した接着層とを有する表装材であって、
前記ピース体は、プラスチック段ボールによって構成され、前記接着層を介して表装対象物に貼着されることを特徴とする表装材。
【請求項2】
複数の前記ピース体が前記表装対象物の所定領域に敷設されることを特徴とする請求項1記載の表装材。
【請求項3】
前記表面の反対面に機能性塗料層が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の表装材。
【請求項4】
前記機能性塗料層は、断熱性塗料によって形成されていることを特徴とする請求項3記載の表装材。
【請求項5】
前記機能性塗料層は、特殊水性アクリル樹脂と、吸水性および水分発散性を有するセラミック形骨材とを成分に含む、結露防止塗料によって形成されていることを特徴とする請求項3記載の表装材。
【請求項6】
前記接着層は、再湿粘着型の接着部材によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の表装材。
【請求項7】
前記プラスチック段ボールは、ポリプロピレンまたはポリカーボネートからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の表装材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の表装材を表装対象物に敷設する方法であって、前記表装対象物に前記接着層を当接させて前記ピース体を貼着する工程を繰り返すことにより、複数の前記ピース体を、前記表装対象物の所定領域に敷き詰めることを特徴とする表装材敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−328913(P2006−328913A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157955(P2005−157955)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(505200585)株式会社快適環境21 (1)
【Fターム(参考)】