表面プラズモン共鳴を利用した携帯用バイオチップスキャナ
【課題】回転するプリズムディスク及びマイクロスキャニングミラーを採用することによって多チャンネル測定が可能な小型の携帯用バイオチップスキャナを提供する。
【解決手段】回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニット44と、所定の角度範囲内で表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッド50と、を備え、光ヘッドは、ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動する。
【解決手段】回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニット44と、所定の角度範囲内で表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッド50と、を備え、光ヘッドは、ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用した携帯用バイオチップスキャナに係り、より詳細には、回転するプリズムディスク及びマイクロスキャニングミラーを採用することによって多チャンネル測定が可能な小型の携帯用バイオチップスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで生体試料を分析する方法としては、蛍光分析方法が主に使われた。蛍光分析方法は、固有の反応波長を持つ相異なる蛍光染料でそれぞれの生体分子を染色した後、いろいろな生体分子が混合された全体試料に光を照射して試料から放出される光のスペクトルから試料の成分などを分析する方法である。しかし、このような蛍光分析方法は、試料の染色過程が複雑であり、かつ蛍光染料の値段が非常に高いという問題があった。
【0003】
これにより、蛍光染料なしに生体分子を検出する方法が提案されたが、そのうち一つが、表面プラズモン共鳴を利用する方法である。
【0004】
表面プラズモンとは、金属薄膜と誘電体との境界面に沿って進行する表面電磁気波の一種であり、表面プラズモン共鳴現象は、金属薄膜の表面で発生する電子の集団的な振動により発生することが知られている。表面プラズモン共鳴を引き起こすための光学的な方法には、屈折率の相異なる二つの媒質の境界面に金属薄膜を積層し、前記境界面に全反射角より大きい角で光を入射させる方法がある。この時、全反射が起きる場合、二つの媒質の境界面で屈折率の低い媒質側に非常に短い有効距離を持つ消散波が発生するが、金属薄膜の厚さは、この消散波の有効距離より小さい必要がある。例えば、前記金属薄膜の厚さは約50nm以下であることが好ましい。
【0005】
図1は、このような表面プラズモン共鳴を引き起こすための構造を図示している。図1を参照すれば、プリズム10の底面に金属薄膜11が蒸着されており、前記金属薄膜11には誘電体12が積層されている。もし、プリズム10の底面に前記金属薄膜11及び誘電体12がなければ、プリズム10の底面に入射する光の入射角による反射率の変化は図2Aの通りであるだろう。すなわち、臨界角以上になれば底面に透過される光はなくなり、あらゆる入射光が反射される。しかし、図1のようにプリズム10の底面に金属薄膜11及び誘電体12が存在する場合、全反射角を過ぎて入射する光子は、特定の角で金属薄膜11と誘電体12との境界面で全部吸収される。これを表面プラズモンが励起されたという。図2Bは、表面プラズモン共鳴が起きる場合の反射率グラフである。図2Bに示すように、全反射角を超える特定の角度で表面プラズモン共鳴現象により反射率がゼロになることが分かる。
【0006】
ところが、表面プラズモン共鳴が起きる角度は、金属薄膜11に積層された誘電体12の屈折率によって変わる。これを利用すれば、特定種類の生体物質を検出することができる。例えば、特定の種類の生体分子のみに結合するプローブ分子を誘電体12として金属薄膜11に付着し、いろいろな生体分子が混合された流体試料を前記誘電体12に流す。この時、前記プローブ分子からなる誘電体12に特定の生体分子13が結合されれば、全体的な屈折率が変わりつつ、図2Bに示すように反射率曲線がAからBに移動する。したがって、プリズム10の底面に光を入射させつつ反射率を測定すれば、いかなる種類の生体分子が流体試料内に存在しているかが分かる。
【0007】
図3ないし図5は、このような表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に図示している。
【0008】
まず、図3に図示された装置は、特許文献1に開示されたものであり、所定範囲の入射角を持つ光をプリズム15に入射させ、色々な角度による反射率をCCD(Charge Coupled Device)のような2次元検出器16で一度に測定する検出装置である。ここで、上方に図示されたものは側断面図であり、下方に図示されたものは平面図である。下方に図示された平面図から分かるように、複数の光を入射させて同時に複数チャンネルのサンプルに対して測定することができる。しかし、図3に図示された検出装置の場合、検出に必要な高い精密度を持つ大面積CCDが非常に高コストの部品であるため、製造コストが上昇し、光路が長くて小型に製造するのに適していない。また、一度に検出できるチャンネルの数には限界がある。
【0009】
図4Aに図示された検出装置25は特許文献2に開示されたものであり、光源20から所定の角度で発散する光を第1反射面21で全反射させ、これを再び第2反射面22を通じて2次元検出器または検出器アレイ23に反射させる構造である。この時、流体試料は第1反射面21の外面に沿って流れる。図4Aの検出装置25は、非常に小型に製作できるが、一回に一チャンネルしか検出できないという問題がある。図4Bに示すように、二つの検出装置25a、25bを並列に連結して2チャンネルの検出ができる。しかし、このような方式で増加させうるチャンネルの数には限界がある。また、角度分解能が検出器23と試料との距離(すなわち、検出器23と第1反射面21との距離)に比例するために、小型に製造するために検出器23と試料との距離を短くするほど角度分解能が低くなる。
【0010】
一方、図5に図示された検出装置30は、フォーカシングされた光ビームを、スキャナ31を利用して所定の角度範囲内でプリズム32aに走査し、プリズム32aと試料32bとの境界面で全反射された光ビームの強度を検出器33で測定して反射率を求めるように設計されている。前記検出装置30は、構成が非常に簡単で高コストの2次元検出器を使用する必要がないので、小型化しやすくて低コストで製作できる。また、スキャナ31で入射角を精密に調節できるために、角度分解能も優秀であり、走査速度を速くして高速の検出が可能である。しかし、一度に一つのチャンネルしか検出できず、効率が低下するという問題がある。
【0011】
前述したように、表面プラズモン共鳴現象を利用する従来の生体分子検出装置の場合、未だ小型、低コスト、多チャンネル及び高精度を同時に満足させることはできなかった。
【特許文献1】米国特許第5,313,264号明細書
【特許文献2】米国特許第5,898,503号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述した従来の問題点を改善するためのものである。したがって、本発明の目的は、構成が簡単で小型化しやすく、高速の測定が可能であり、同時にいろいろなチャンネルを測定でき、高精度の生体分子検出装置、特に、表面プラズモン共鳴現象を利用する携帯用バイオチップスキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による携帯用バイオチップスキャナは、回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットと、所定の角度範囲内で前記表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、前記表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッドと、を備え、前記光ヘッドは、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットは、プリズムが環状に形成されているプリズムディスクと、前記プリズムディスクの底面に結合され、微細流体が流れる複数の微細流体チャンネルが上面に形成されている微細流体ディスクと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、前記光ヘッドは、平行光を出射する光源ユニットと、所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニットから出射された光を所定の角度範囲内で走査するマイクロスキャニングミラーと、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーと、前記プリズムディスクの底面から全反射された光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【0016】
前記プリズムディスクの底面には、円周方向に沿って表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターンが同心円トラックの形態で形成されており、前記金属薄膜には、特定の生体分子にのみ結合する複数のプローブ分子が付着されることを特徴とする。
【0017】
また、前記微細流体ディスクの上面に形成された複数の微細流体チャンネルは、前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンを横切って微細流体ディスクを一周する。
【0018】
一方、本発明による携帯用バイオチップスキャナは、表面プラズモン共鳴ユニットの内部を流れる微細流体の温度を一定に維持させるための温度調節器をさらに備える。前記温度調節器は、前記微細流体ディスクの底面に所定の間隔をおいて配置されたペルティエ素子である。
【0019】
一方、前記マイクロスキャニングミラーは、前記プリズムディスクの円周方向に垂直な方向に沿って光を走査する。かかるマイクロスキャニングミラーは、微細電子機械システム(Micro−Electro−Mechanical Systems;MEMS)技術を利用して超小型に製造される。この時、マイクロスキャニングミラーの振動数は10kHzないし30kHzの範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーは、光をプリズムディスクの底面上の一点に収束させるための凹ミラーである。
【0021】
また、前記反射ミラーは平面ミラーであり、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を収束し、かつ収差を補正するためのf−θレンズが前記平面ミラーとマイクロスキャニングミラーとの間にさらに配置される。
【0022】
一方、本発明によれば、前記光ヘッドは、誤検出の防止のために二つの平行光を前記プリズムディスクの底面に入射させ、前記プリズムディスクの底面で全反射された二つの反射光を二つの検出器でそれぞれ検出して比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回転するプリズムディスク及びマイクロスキャニングミラーを採用することによって光学系の構成を単純化したので、低コストの小型バイオチップスキャナを提供できる。また、一つの低電力光源及び一つの光検出器だけでも多チャンネル測定が可能である。さらに、レーザーTVなどに使用するマイクロスキャニングミラーは非常に精巧に角度を調節でき、かつ超高速スキャニングが可能なために、前記マイクロスキャニングミラーを使用するバイオチップスキャナは、高速の精密な測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図6は、本発明による携帯用バイオチップスキャナの斜視図である。
【0026】
図6を参照すれば、本発明による携帯用バイオチップスキャナ40は、環状のプリズムで形成されたプリズムディスク42、前記プリズムディスク42の底面に結合される微細流体ディスク43及び前記プリズムディスク42に光を出射し、かつ前記プリズムディスク42から全反射された光を検出する光ヘッド50を備える。プリズムディスク42は、表面プラズモン共鳴を引き起こすための構成であり、微細流体ディスク43は、測定される微細流体を前記プリズムディスク42に提供するためのものである。前記プリズムディスク42と微細流体ディスク43とは互いに結合されて表面プラズモン共鳴ユニット44をなし、シャフト47を中心に共に回転する。一方、光ヘッド50は、プリズムディスク42上をスキャニングしつつ表面プラズモン共鳴による反射率の変化を観測する。前記光ヘッド50は、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の半径方向に沿って往復動できる。
【0027】
図7は、本発明による携帯用バイオチップスキャナ40の側断面図である。図7に示すように、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板41上にDC(Direct Current)モータ46が実装されており、前記DCモータ46のシャフト47には表面プラズモン共鳴ユニット44が結合されている。また、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の下部には、所定の間隔をおいて温度調節器45が前記PCB基板41上に配置されている。温度調節器45は、微細流体ディスク43内に流れる微細流体の温度を一定に維持させるための役割を行う。前記温度調節器45は、例えば、ペルティエ素子でありうる。このような温度調節器45は、DCモータ46を中心に両側にそれぞれ一つずつ設置されてもよく、DCモータ46の周囲を全体的に取り囲むように設置されてもよい。
【0028】
前述したように、表面プラズモン共鳴ユニット44は、プリズムディスク42及び微細流体ディスク43で構成される。プリズムディスク42は、全反射が起きる底面と前記底面より狭い上面とを持つプリズムが環状に形成されている。前記プリズムディスク42の外周面と内周面とは、それぞれ光の入射面と出射面とになる。図8Aに示すように、前記プリズムディスク42の底面には、複数のチャンネルに対する検出を行えるように、表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターン48が、円周方向に沿って同心円トラックの形態で形成されている。前述したように、表面プラズモン共鳴が起きるためにはプリズムの底面に金属薄膜が蒸着されていなければならず、前記金属薄膜の厚さは約50nm以下であることが好ましい。そして、前記金属薄膜には、特定の生体分子のみに結合するプローブ分子(図示せず)が付着される。この時、円周方向に沿って相異なる色々なプローブ分子を複数付着させることができる。すなわち、一つの円形金属薄膜パターン48のトラック内で、それぞれ異なる放射角ごとに異なるプローブ分子が付着される。このために、一つの円形金属薄膜パターン48のトラックに沿って複数の金属薄膜が所定の間隔で蒸着される。
【0029】
前記プリズムディスク42の底面に微細流体試料を提供するために、微細流体ディスク43の上面には、図8Bに示すような微細流体チャンネル49が形成されている。図8Cは、このようなプリズムディスク42と微細流体ディスク43とを結合する態様を図示する。図8Cに示すように、プリズムディスク42の底面と微細流体ディスク43の上面とが互いに対向するように結合される。これにより、微細流体ディスク43の上面に形成された微細流体チャンネル49は、前記プリズムディスク42に形成された複数の金属薄膜パターン48を横切りつつ微細流体ディスク43を一周する。したがって、微細流体試料内に含まれた生体分子は前記微細流体ディスク43の微細流体チャンネル49に沿って流れつつ、プリズムディスク42の金属薄膜パターン48に付着された特定プローブ分子と結合する。
【0030】
さらに、図8Bを参照して、前記微細流体ディスク43の上面に形成された微細流体チャンネル49の構造についてさらに詳細に説明する。図8Bに示すように、微細流体ディスク43の上面外郭側には円形の排出保存部85が形成されており、前記排出保存部85には複数の微細流体チャンネル49がディスク43の中心に向かって連結されている。前記複数の微細流体チャンネル49は、微細流体ディスク43に半径方向に形成されており、それぞれの微細流体チャンネル49には、微細流体を保存するための試料保存部82が半径方向に延びている。また、前記試料保存部82の上端(すなわち、ディスク43の中心方向への端部)には、微細流体を注入するための試料注入口81がそれぞれ形成されている。この時、前記試料保存部82の数と、前記金属薄膜パターン48の一トラック当り金属薄膜の数は常に一致せねばならない。
【0031】
一方、前記微細流体チャンネル49のさらに詳細な構造は図8Bの右側に図示されている。図8Bを参照して、前記試料保存部82にあらかじめ保存されていた試料は、微細流体ディスク43が回転し始めて所定の回転速度に到達すれば、徐々にフローチャンネル84に沿ってそれぞれの試料チャンバ83側に移動する。前記フローチャンネル84の表面は、疎水性を持つように表面処理されている。前記チャンネル84の構造や大きさまたはディスク43の回転速度によって流体速度が調節される(すなわち、受動弁方式)。この時、もし、前記プリズムディスク42に4個の金属薄膜パターン48トラックがパターニングされているならば、一個の微細流体チャンネル49に対して総4個の試料チャンバ83が必要である。また、実施形態によって、それぞれの試料チャンバ83は、平行に隣接した二つのチャンバ83a、83bの対からなってもよい。それら1対の試料チャンバ83のうち第1試料チャンバ83aは、表面プラズモン共鳴を通じて実際試料を検出するためのものであり、他の第2試料チャンバ83bは、後述する組立公差などによる検出誤差の補正のための参照信号を提供するためのものである。この場合、総8個のチャンバが必要となる。
【0032】
そして、一つの試料保存部82から出発した試料がそれぞれ4個の試料チャンバに分岐されて流れるならば、図8Bに示すように、それぞれの試料流体は、前記試料保存部82から近い順にそれぞれ1:3、1:2、1:1の割合で流れ込む。例えば、試料保存部82から100体積の試料が流れ出れば、75体積はフローチャンネル84に沿ってそのまま次の試料チャンバへ流れ込み、25体積のみ最初の試料チャンバ流れ込む。そして、2番目の試料チャンバの前で、75体積の試料のうち50体積は次のフローチャンネル84に流れ込み、25体積のみ二番目の試料チャンバに流れ込む。最後に、50体積の試料はそれぞれ25体積に分けられて、残りの二つの試料チャンバに流れ込む。このような流体の分岐はいずれもフローチャンネル84の適切な構造設計を通じて容易に具現でき、このような方法は既知のものである。この時、それぞれの試料チャンバ83に流れ込む試料流体は、実際試料の検出及び参照信号の測定のために同時に二つのチャンネルを通過して1対のチャンバ83a、83b内に均一に分配される。
【0033】
次いで、このように4個の試料チャンバ83をいずれも通過した試料は、金属薄膜の近くで反応した後にいずれも抜け出て帯状のトラックである排出保存部85に保存される。
【0034】
一方、再び図7を参照すれば、前記プリズムディスク42の上をスキャニングしつつ表面プラズモン共鳴による反射率の変化を検出する光ヘッド50は、光源ユニット51、マイクロスキャニングミラー52、反射ミラー53及び光検出器54を備える。光源ユニット51は、白色光または所定の波長を持つ平行光を出射してマイクロスキャニングミラー52に入射させる。たとえ図示されていないとしても、前記光源ユニット51は、例えば、レーザーダイオードと前記レーザーダイオードの光出射面の前に配置されたコリメートレンズとを備えることができる。マイクロスキャニングミラー52は、所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニット51から出射された光を所定の角度範囲内で走査する小型ミラーである。反射ミラー53は、前記マイクロスキャニングミラー51により走査される光を反射させて前記プリズムディスク42の底面に向かわせる。また、光検出器54は、前記プリズムディスク42の底面から全反射された光を検出して光の強度を測定する。
【0035】
本発明で使用するマイクロスキャニングミラー52は、例えば、レーザープロジェクションTVなどで映像信号をスクリーンに高速で偏向させて画像を形成するところに使用する公知の光スキャナをそのまま利用できる。例えば、本出願人による大韓民国特許出願10−2000−0010469号(2002年02月27日出願)または大韓民国特許出願10−2001−51407(2001年08月24日出願)には、本発明で採用されたマイクロスキャニングミラーの構造が詳細に説明されている。このようなマイクロスキャニングミラーは、コーム状のコーム電極(comb−typed electrode)構造による静電効果を利用し、MEMS技術によって非常に精巧かつ微細に製作できる。
【0036】
図9は、このようなマイクロスキャニングミラー52の構造を例示的に図示している。図9に示すように、公知の光スキャナは、基板61の上方に懸架されているミラー部62、前記ミラー部62の両端を支持する支持体63、前記ミラー部62と支持体63との間に連結されてミラー部62のシーソー運動を支持するトーションバネ64、前記ミラー部62の両側面に垂直に形成された複数の移動コーム電極65、及び前記移動コーム電極65と交互に基板61上に垂直に設置された複数の固定コーム電極66を備えて構成される。このような構造で、移動コーム電極65と固定コーム電極66とにそれぞれ逆極性の電圧が印加されれば、前記電極間の静電気力が発生してミラー62が高速でシーソー運動をする。このように構成されたマイクロスキャニングミラー52は、約1mmないし10mm程度のミラーを使用する超小型に製作でき、10kHzないし30kHz程度の超高速スキャニングが可能である。このようなマイクロスキャニングミラー52の構造及び原理は既知のものであるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
一方、マイクロスキャニングミラー52により色々な角度でスキャニングされる光は、プリズムディスク42の底面上の一点に入射されねばならない。すなわち、前記マイクロスキャニングミラー52によりスキャニングされた光は、入射角度を異ならせてプリズムディスク42の底面上の一点に入射される。このために、マイクロスキャニングミラー52により反射された光を収束させる必要がある。
【0038】
図10Aは、このための例示的な構造を図示する。図10Aに示すように、マイクロスキャニングミラー52により反射された光を収束させるために、凹ミラーを反射ミラー53として使用できる。または、図10Bに示すように、レーザープリンタの光走査装置で一般的に使用するF−θレンズ55を使用してもよい。前記F−θレンズ55は、マイクロスキャニングミラー52により走査される光を収束するだけでなく、マイクロスキャニングミラー52により発生する収差などを補正する役割も行える。この場合、反射ミラー53としては平面ミラーを使用する。
【0039】
これから、前述した構造の本発明による携帯用バイオチップスキャナの動作について説明する。
【0040】
まず、モータ46を所定の速度で回転させる。モータ46の回転速度が所定の速度に到達すれば、微細流体試料が微細流体ディスク43に形成された微細流体チャンネル49に、図8Bの右側に図示された経路に沿って流れ始める。同時に、モータ46のシャフト47に結合された表面プラズモン共鳴ユニット44も共に回転する。この時、光ヘッド50は、プリズムディスク42に形成された同心円形態の金属薄膜パターン48のトラックのうちいずれか一つに沿ってトラッキングしつつ、現在トラッキングしている金属薄膜パターン48の位置に光を照射する。光源ユニット51から出射される光は、マイクロスキャニングミラー52及び反射ミラー53により色々な角度で前記プリズムディスク42の金属薄膜パターン48の位置に入射する。入射角によって前記プリズムディスク42の底面で全反射が起きるか、表面プラズモン共鳴による吸収現象が起きる。また、金属薄膜パターン48の特定放射角位置にそれぞれ付着されたプローブ分子に特定の生体分子が結合される場合、屈折率の変化によって表面プラズモン共鳴による吸収が起きる角度が変わる。光検出器54は、反射光の強度を測定してこのような表面プラズモン共鳴が起きる角度を求める。したがって、微細流体内にいかなる物質が存在しているかが分かる。このようにして一つの金属薄膜パターンに対する測定が終了すれば、光ヘッド50は、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の半径方向に沿って移動して、プリズムディスク42の他の金属薄膜パターン48のトラックで測定を始める。
【0041】
前述したように、本発明は、いかなる入射角で表面プラズモン共鳴が起きるかを測定して、微細流体内にいかなる物質が存在するかに関する情報を得るためのものであるので、あらゆる入射角に対する反射率を求める必要はない。したがって、測定の迅速性及び効率性のために一定範囲内の角度でのみ光を入射させることが好ましい。一般的に表面プラズモン共鳴が起きる角度の物質による差は約10゜程度であるため、約10゜の範囲内で角度を変化させることが良い。例えば、40゜〜50゜の入射角で光を入射させることができる。
【0042】
一方、マイクロスキャニングミラー52のスキャニング速度(すなわち、振動数)が遅い場合、1スキャニング周期の間に円周方向へのビームワークの大きさが過度に大きくなって正確な検出がなされない。正確な検出がなされるためには、1スキャニング周期の間に円周方向への移動がなるべく小さい必要がある。
【0043】
図11Aないし図11Cは、ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明するための図面である。図11Aに方形で表示した部分は、現在スキャニングされている部分であり、rは、回転中心からスキャニングされている位置までの半径である。ディスクは、矢印で表示したように時計回り方向に回転すると仮定する。本発明の場合、マイクロスキャニングミラー52は、プリズムディスク42の円周方向に垂直な方向に沿って光を走査する。したがって、ビームワークは、図11B及び図11Cのように現れる。ここで、図11Bは、スキャニング速度が比較的遅い場合であり、図11Cは、スキャニング速度が比較的速い場合である。もし、r=20mmであり、ディスクの回転速度が600rpmであれば、円周方向への移動速度は約1.2mm/msとなる。この場合、マイクロスキャニングミラー52が1kHzの速度でスキャニングすれば、1スキャニング周期の間に1.2mmを移動する。一方、30kHzの速度でスキャニングすれば、1スキャニング周期の間にわずか0.04mmのみ移動するために、ほとんど移動がないと言える。前述したように、本発明によるマイクロスキャニングミラー52は、10kHzないし30kHzの範囲内でスキャニングするために、十分に高い正確度で検出できる。
【0044】
図12は、本発明の他の実施形態による携帯用バイオチップスキャナの光ヘッドを図示する概略的な平面図である。図12に示すように、前記光ヘッド50は、二つの光源ユニット51a、51b、二つのマイクロスキャニングミラー52a、52b、二つの反射ミラー53a、53b及び二つの光検出器54a、54bを備える。一般的に、表面プラズモン共鳴ユニット44は、組立公差などによって理想的に回転できず、歳差運動のような不安定な回転運動を行える。また、振動のような外部環境によっても回転が不規則になりえる。その結果、プリズムディスク42の底面に入射する光の入射角が元来意図した入射角と異なりうる。ところが、表面プラズモン共鳴により生じる吸光度は、非常に微細な角度の変化にも大きく変わるために、正確な検出結果を得るには難点がある。
【0045】
したがって、組立公差及び外部環境による誤検出を防止するために、一つの光は表面プラズモン共鳴による反射率の変化を測定し、他の一つの光は、前述した原因により発生する角度の変化を追跡して誤差を補正できる。例えば、第1光源ユニット51aから放出された光は、第1試料チャンバ83aから表面プラズモン共鳴を通じて実際試料を検出し、他の第2光源ユニット51bから放出された光は、第2試料チャンバ83bから単に参照信号のみを提供される。このように、第1試料チャンバ83aからの反射光と第2試料チャンバ83bからの反射光とを比較して誤差を補正できる。このために、第1試料チャンバ83aに対応する金属薄膜パターン48のトラック上の位置にはプローブ分子を付着し、第2試料チャンバ83bに対応する金属薄膜パターン48のトラック上の位置にはプローブ分子を付着しない。流体試料内の特定の生体分子が前記プローブ分子と結合されていない間には、組立公差及び外部環境によって撹乱が発生しても二つの反射光は同一に変化する。しかし、前記プローブ分子に特定の生体分子が結合すれば、二つの反射光の変化は変わる。したがって、組立公差及び外部環境によって撹乱が発生しても正確な検出が可能になる。
【0046】
たとえ、図12には、光源ユニット、マイクロスキャニングミラー、反射ミラー及び光検出器がそれぞれ2個ずつ図示されていても、他の構成も十分に可能である。例えば、一つの光源ユニットから出射された光を、ビームスプリッタを利用して二つに分離し、分離された二つの光を一つのマイクロスキャニングミラーと反射ミラーとで反射した後、プリズムディスクで反射された二つの光を二つの光検出器でそれぞれ検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、多チャンネル測定が可能な携帯用バイオチップスキャナの関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】表面プラズモン共鳴現象を引き起こすためのプリズム構造を示す図面である。
【図2A】金属薄膜が蒸着されていないプリズムでの入射角による反射率グラフである。
【図2B】金属薄膜が蒸着されたプリズムでの入射角による反射率グラフである。
【図3】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図4】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図5】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図6】本発明による携帯用バイオチップスキャナの斜視図である。
【図7】本発明による携帯用バイオチップスキャナの側断面図である。
【図8A】本発明による携帯用バイオチップスキャナのプリズムディスクの底面を示す斜視図である。
【図8B】本発明による携帯用バイオチップスキャナの微細流体ディスクの上面を示す図面である。
【図8C】図8Aのプリズムディスクと図8Bの微細流体ディスクとの結合状態を示す斜視図である。
【図9】本発明で使われるマイクロスキャニングミラーの例示的な構造を示す図面である。
【図10A】本発明で使われる光ヘッドの色々な実施形態を示す図面である。
【図10B】本発明で使われる光ヘッドの色々な実施形態を示す図面である。
【図11A】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図11B】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図11C】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図12】本発明の他の実施形態による携帯用バイオチップスキャナの光ヘッドを概略的に示す図面である。
【符号の説明】
【0049】
40 携帯用バイオチップスキャナ、
42 プリズムディスク、
43 微細流体ディスク、
44 表面プラズモン共鳴ユニット、
45 温度調節器、
46 DCモータ、
47 シャフト、
50 光ヘッド、
51 光源ユニット、
52 マイクロスキャニングミラー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用した携帯用バイオチップスキャナに係り、より詳細には、回転するプリズムディスク及びマイクロスキャニングミラーを採用することによって多チャンネル測定が可能な小型の携帯用バイオチップスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで生体試料を分析する方法としては、蛍光分析方法が主に使われた。蛍光分析方法は、固有の反応波長を持つ相異なる蛍光染料でそれぞれの生体分子を染色した後、いろいろな生体分子が混合された全体試料に光を照射して試料から放出される光のスペクトルから試料の成分などを分析する方法である。しかし、このような蛍光分析方法は、試料の染色過程が複雑であり、かつ蛍光染料の値段が非常に高いという問題があった。
【0003】
これにより、蛍光染料なしに生体分子を検出する方法が提案されたが、そのうち一つが、表面プラズモン共鳴を利用する方法である。
【0004】
表面プラズモンとは、金属薄膜と誘電体との境界面に沿って進行する表面電磁気波の一種であり、表面プラズモン共鳴現象は、金属薄膜の表面で発生する電子の集団的な振動により発生することが知られている。表面プラズモン共鳴を引き起こすための光学的な方法には、屈折率の相異なる二つの媒質の境界面に金属薄膜を積層し、前記境界面に全反射角より大きい角で光を入射させる方法がある。この時、全反射が起きる場合、二つの媒質の境界面で屈折率の低い媒質側に非常に短い有効距離を持つ消散波が発生するが、金属薄膜の厚さは、この消散波の有効距離より小さい必要がある。例えば、前記金属薄膜の厚さは約50nm以下であることが好ましい。
【0005】
図1は、このような表面プラズモン共鳴を引き起こすための構造を図示している。図1を参照すれば、プリズム10の底面に金属薄膜11が蒸着されており、前記金属薄膜11には誘電体12が積層されている。もし、プリズム10の底面に前記金属薄膜11及び誘電体12がなければ、プリズム10の底面に入射する光の入射角による反射率の変化は図2Aの通りであるだろう。すなわち、臨界角以上になれば底面に透過される光はなくなり、あらゆる入射光が反射される。しかし、図1のようにプリズム10の底面に金属薄膜11及び誘電体12が存在する場合、全反射角を過ぎて入射する光子は、特定の角で金属薄膜11と誘電体12との境界面で全部吸収される。これを表面プラズモンが励起されたという。図2Bは、表面プラズモン共鳴が起きる場合の反射率グラフである。図2Bに示すように、全反射角を超える特定の角度で表面プラズモン共鳴現象により反射率がゼロになることが分かる。
【0006】
ところが、表面プラズモン共鳴が起きる角度は、金属薄膜11に積層された誘電体12の屈折率によって変わる。これを利用すれば、特定種類の生体物質を検出することができる。例えば、特定の種類の生体分子のみに結合するプローブ分子を誘電体12として金属薄膜11に付着し、いろいろな生体分子が混合された流体試料を前記誘電体12に流す。この時、前記プローブ分子からなる誘電体12に特定の生体分子13が結合されれば、全体的な屈折率が変わりつつ、図2Bに示すように反射率曲線がAからBに移動する。したがって、プリズム10の底面に光を入射させつつ反射率を測定すれば、いかなる種類の生体分子が流体試料内に存在しているかが分かる。
【0007】
図3ないし図5は、このような表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に図示している。
【0008】
まず、図3に図示された装置は、特許文献1に開示されたものであり、所定範囲の入射角を持つ光をプリズム15に入射させ、色々な角度による反射率をCCD(Charge Coupled Device)のような2次元検出器16で一度に測定する検出装置である。ここで、上方に図示されたものは側断面図であり、下方に図示されたものは平面図である。下方に図示された平面図から分かるように、複数の光を入射させて同時に複数チャンネルのサンプルに対して測定することができる。しかし、図3に図示された検出装置の場合、検出に必要な高い精密度を持つ大面積CCDが非常に高コストの部品であるため、製造コストが上昇し、光路が長くて小型に製造するのに適していない。また、一度に検出できるチャンネルの数には限界がある。
【0009】
図4Aに図示された検出装置25は特許文献2に開示されたものであり、光源20から所定の角度で発散する光を第1反射面21で全反射させ、これを再び第2反射面22を通じて2次元検出器または検出器アレイ23に反射させる構造である。この時、流体試料は第1反射面21の外面に沿って流れる。図4Aの検出装置25は、非常に小型に製作できるが、一回に一チャンネルしか検出できないという問題がある。図4Bに示すように、二つの検出装置25a、25bを並列に連結して2チャンネルの検出ができる。しかし、このような方式で増加させうるチャンネルの数には限界がある。また、角度分解能が検出器23と試料との距離(すなわち、検出器23と第1反射面21との距離)に比例するために、小型に製造するために検出器23と試料との距離を短くするほど角度分解能が低くなる。
【0010】
一方、図5に図示された検出装置30は、フォーカシングされた光ビームを、スキャナ31を利用して所定の角度範囲内でプリズム32aに走査し、プリズム32aと試料32bとの境界面で全反射された光ビームの強度を検出器33で測定して反射率を求めるように設計されている。前記検出装置30は、構成が非常に簡単で高コストの2次元検出器を使用する必要がないので、小型化しやすくて低コストで製作できる。また、スキャナ31で入射角を精密に調節できるために、角度分解能も優秀であり、走査速度を速くして高速の検出が可能である。しかし、一度に一つのチャンネルしか検出できず、効率が低下するという問題がある。
【0011】
前述したように、表面プラズモン共鳴現象を利用する従来の生体分子検出装置の場合、未だ小型、低コスト、多チャンネル及び高精度を同時に満足させることはできなかった。
【特許文献1】米国特許第5,313,264号明細書
【特許文献2】米国特許第5,898,503号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述した従来の問題点を改善するためのものである。したがって、本発明の目的は、構成が簡単で小型化しやすく、高速の測定が可能であり、同時にいろいろなチャンネルを測定でき、高精度の生体分子検出装置、特に、表面プラズモン共鳴現象を利用する携帯用バイオチップスキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による携帯用バイオチップスキャナは、回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットと、所定の角度範囲内で前記表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、前記表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッドと、を備え、前記光ヘッドは、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットは、プリズムが環状に形成されているプリズムディスクと、前記プリズムディスクの底面に結合され、微細流体が流れる複数の微細流体チャンネルが上面に形成されている微細流体ディスクと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、前記光ヘッドは、平行光を出射する光源ユニットと、所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニットから出射された光を所定の角度範囲内で走査するマイクロスキャニングミラーと、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーと、前記プリズムディスクの底面から全反射された光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【0016】
前記プリズムディスクの底面には、円周方向に沿って表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターンが同心円トラックの形態で形成されており、前記金属薄膜には、特定の生体分子にのみ結合する複数のプローブ分子が付着されることを特徴とする。
【0017】
また、前記微細流体ディスクの上面に形成された複数の微細流体チャンネルは、前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンを横切って微細流体ディスクを一周する。
【0018】
一方、本発明による携帯用バイオチップスキャナは、表面プラズモン共鳴ユニットの内部を流れる微細流体の温度を一定に維持させるための温度調節器をさらに備える。前記温度調節器は、前記微細流体ディスクの底面に所定の間隔をおいて配置されたペルティエ素子である。
【0019】
一方、前記マイクロスキャニングミラーは、前記プリズムディスクの円周方向に垂直な方向に沿って光を走査する。かかるマイクロスキャニングミラーは、微細電子機械システム(Micro−Electro−Mechanical Systems;MEMS)技術を利用して超小型に製造される。この時、マイクロスキャニングミラーの振動数は10kHzないし30kHzの範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーは、光をプリズムディスクの底面上の一点に収束させるための凹ミラーである。
【0021】
また、前記反射ミラーは平面ミラーであり、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を収束し、かつ収差を補正するためのf−θレンズが前記平面ミラーとマイクロスキャニングミラーとの間にさらに配置される。
【0022】
一方、本発明によれば、前記光ヘッドは、誤検出の防止のために二つの平行光を前記プリズムディスクの底面に入射させ、前記プリズムディスクの底面で全反射された二つの反射光を二つの検出器でそれぞれ検出して比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回転するプリズムディスク及びマイクロスキャニングミラーを採用することによって光学系の構成を単純化したので、低コストの小型バイオチップスキャナを提供できる。また、一つの低電力光源及び一つの光検出器だけでも多チャンネル測定が可能である。さらに、レーザーTVなどに使用するマイクロスキャニングミラーは非常に精巧に角度を調節でき、かつ超高速スキャニングが可能なために、前記マイクロスキャニングミラーを使用するバイオチップスキャナは、高速の精密な測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図6は、本発明による携帯用バイオチップスキャナの斜視図である。
【0026】
図6を参照すれば、本発明による携帯用バイオチップスキャナ40は、環状のプリズムで形成されたプリズムディスク42、前記プリズムディスク42の底面に結合される微細流体ディスク43及び前記プリズムディスク42に光を出射し、かつ前記プリズムディスク42から全反射された光を検出する光ヘッド50を備える。プリズムディスク42は、表面プラズモン共鳴を引き起こすための構成であり、微細流体ディスク43は、測定される微細流体を前記プリズムディスク42に提供するためのものである。前記プリズムディスク42と微細流体ディスク43とは互いに結合されて表面プラズモン共鳴ユニット44をなし、シャフト47を中心に共に回転する。一方、光ヘッド50は、プリズムディスク42上をスキャニングしつつ表面プラズモン共鳴による反射率の変化を観測する。前記光ヘッド50は、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の半径方向に沿って往復動できる。
【0027】
図7は、本発明による携帯用バイオチップスキャナ40の側断面図である。図7に示すように、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板41上にDC(Direct Current)モータ46が実装されており、前記DCモータ46のシャフト47には表面プラズモン共鳴ユニット44が結合されている。また、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の下部には、所定の間隔をおいて温度調節器45が前記PCB基板41上に配置されている。温度調節器45は、微細流体ディスク43内に流れる微細流体の温度を一定に維持させるための役割を行う。前記温度調節器45は、例えば、ペルティエ素子でありうる。このような温度調節器45は、DCモータ46を中心に両側にそれぞれ一つずつ設置されてもよく、DCモータ46の周囲を全体的に取り囲むように設置されてもよい。
【0028】
前述したように、表面プラズモン共鳴ユニット44は、プリズムディスク42及び微細流体ディスク43で構成される。プリズムディスク42は、全反射が起きる底面と前記底面より狭い上面とを持つプリズムが環状に形成されている。前記プリズムディスク42の外周面と内周面とは、それぞれ光の入射面と出射面とになる。図8Aに示すように、前記プリズムディスク42の底面には、複数のチャンネルに対する検出を行えるように、表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターン48が、円周方向に沿って同心円トラックの形態で形成されている。前述したように、表面プラズモン共鳴が起きるためにはプリズムの底面に金属薄膜が蒸着されていなければならず、前記金属薄膜の厚さは約50nm以下であることが好ましい。そして、前記金属薄膜には、特定の生体分子のみに結合するプローブ分子(図示せず)が付着される。この時、円周方向に沿って相異なる色々なプローブ分子を複数付着させることができる。すなわち、一つの円形金属薄膜パターン48のトラック内で、それぞれ異なる放射角ごとに異なるプローブ分子が付着される。このために、一つの円形金属薄膜パターン48のトラックに沿って複数の金属薄膜が所定の間隔で蒸着される。
【0029】
前記プリズムディスク42の底面に微細流体試料を提供するために、微細流体ディスク43の上面には、図8Bに示すような微細流体チャンネル49が形成されている。図8Cは、このようなプリズムディスク42と微細流体ディスク43とを結合する態様を図示する。図8Cに示すように、プリズムディスク42の底面と微細流体ディスク43の上面とが互いに対向するように結合される。これにより、微細流体ディスク43の上面に形成された微細流体チャンネル49は、前記プリズムディスク42に形成された複数の金属薄膜パターン48を横切りつつ微細流体ディスク43を一周する。したがって、微細流体試料内に含まれた生体分子は前記微細流体ディスク43の微細流体チャンネル49に沿って流れつつ、プリズムディスク42の金属薄膜パターン48に付着された特定プローブ分子と結合する。
【0030】
さらに、図8Bを参照して、前記微細流体ディスク43の上面に形成された微細流体チャンネル49の構造についてさらに詳細に説明する。図8Bに示すように、微細流体ディスク43の上面外郭側には円形の排出保存部85が形成されており、前記排出保存部85には複数の微細流体チャンネル49がディスク43の中心に向かって連結されている。前記複数の微細流体チャンネル49は、微細流体ディスク43に半径方向に形成されており、それぞれの微細流体チャンネル49には、微細流体を保存するための試料保存部82が半径方向に延びている。また、前記試料保存部82の上端(すなわち、ディスク43の中心方向への端部)には、微細流体を注入するための試料注入口81がそれぞれ形成されている。この時、前記試料保存部82の数と、前記金属薄膜パターン48の一トラック当り金属薄膜の数は常に一致せねばならない。
【0031】
一方、前記微細流体チャンネル49のさらに詳細な構造は図8Bの右側に図示されている。図8Bを参照して、前記試料保存部82にあらかじめ保存されていた試料は、微細流体ディスク43が回転し始めて所定の回転速度に到達すれば、徐々にフローチャンネル84に沿ってそれぞれの試料チャンバ83側に移動する。前記フローチャンネル84の表面は、疎水性を持つように表面処理されている。前記チャンネル84の構造や大きさまたはディスク43の回転速度によって流体速度が調節される(すなわち、受動弁方式)。この時、もし、前記プリズムディスク42に4個の金属薄膜パターン48トラックがパターニングされているならば、一個の微細流体チャンネル49に対して総4個の試料チャンバ83が必要である。また、実施形態によって、それぞれの試料チャンバ83は、平行に隣接した二つのチャンバ83a、83bの対からなってもよい。それら1対の試料チャンバ83のうち第1試料チャンバ83aは、表面プラズモン共鳴を通じて実際試料を検出するためのものであり、他の第2試料チャンバ83bは、後述する組立公差などによる検出誤差の補正のための参照信号を提供するためのものである。この場合、総8個のチャンバが必要となる。
【0032】
そして、一つの試料保存部82から出発した試料がそれぞれ4個の試料チャンバに分岐されて流れるならば、図8Bに示すように、それぞれの試料流体は、前記試料保存部82から近い順にそれぞれ1:3、1:2、1:1の割合で流れ込む。例えば、試料保存部82から100体積の試料が流れ出れば、75体積はフローチャンネル84に沿ってそのまま次の試料チャンバへ流れ込み、25体積のみ最初の試料チャンバ流れ込む。そして、2番目の試料チャンバの前で、75体積の試料のうち50体積は次のフローチャンネル84に流れ込み、25体積のみ二番目の試料チャンバに流れ込む。最後に、50体積の試料はそれぞれ25体積に分けられて、残りの二つの試料チャンバに流れ込む。このような流体の分岐はいずれもフローチャンネル84の適切な構造設計を通じて容易に具現でき、このような方法は既知のものである。この時、それぞれの試料チャンバ83に流れ込む試料流体は、実際試料の検出及び参照信号の測定のために同時に二つのチャンネルを通過して1対のチャンバ83a、83b内に均一に分配される。
【0033】
次いで、このように4個の試料チャンバ83をいずれも通過した試料は、金属薄膜の近くで反応した後にいずれも抜け出て帯状のトラックである排出保存部85に保存される。
【0034】
一方、再び図7を参照すれば、前記プリズムディスク42の上をスキャニングしつつ表面プラズモン共鳴による反射率の変化を検出する光ヘッド50は、光源ユニット51、マイクロスキャニングミラー52、反射ミラー53及び光検出器54を備える。光源ユニット51は、白色光または所定の波長を持つ平行光を出射してマイクロスキャニングミラー52に入射させる。たとえ図示されていないとしても、前記光源ユニット51は、例えば、レーザーダイオードと前記レーザーダイオードの光出射面の前に配置されたコリメートレンズとを備えることができる。マイクロスキャニングミラー52は、所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニット51から出射された光を所定の角度範囲内で走査する小型ミラーである。反射ミラー53は、前記マイクロスキャニングミラー51により走査される光を反射させて前記プリズムディスク42の底面に向かわせる。また、光検出器54は、前記プリズムディスク42の底面から全反射された光を検出して光の強度を測定する。
【0035】
本発明で使用するマイクロスキャニングミラー52は、例えば、レーザープロジェクションTVなどで映像信号をスクリーンに高速で偏向させて画像を形成するところに使用する公知の光スキャナをそのまま利用できる。例えば、本出願人による大韓民国特許出願10−2000−0010469号(2002年02月27日出願)または大韓民国特許出願10−2001−51407(2001年08月24日出願)には、本発明で採用されたマイクロスキャニングミラーの構造が詳細に説明されている。このようなマイクロスキャニングミラーは、コーム状のコーム電極(comb−typed electrode)構造による静電効果を利用し、MEMS技術によって非常に精巧かつ微細に製作できる。
【0036】
図9は、このようなマイクロスキャニングミラー52の構造を例示的に図示している。図9に示すように、公知の光スキャナは、基板61の上方に懸架されているミラー部62、前記ミラー部62の両端を支持する支持体63、前記ミラー部62と支持体63との間に連結されてミラー部62のシーソー運動を支持するトーションバネ64、前記ミラー部62の両側面に垂直に形成された複数の移動コーム電極65、及び前記移動コーム電極65と交互に基板61上に垂直に設置された複数の固定コーム電極66を備えて構成される。このような構造で、移動コーム電極65と固定コーム電極66とにそれぞれ逆極性の電圧が印加されれば、前記電極間の静電気力が発生してミラー62が高速でシーソー運動をする。このように構成されたマイクロスキャニングミラー52は、約1mmないし10mm程度のミラーを使用する超小型に製作でき、10kHzないし30kHz程度の超高速スキャニングが可能である。このようなマイクロスキャニングミラー52の構造及び原理は既知のものであるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
一方、マイクロスキャニングミラー52により色々な角度でスキャニングされる光は、プリズムディスク42の底面上の一点に入射されねばならない。すなわち、前記マイクロスキャニングミラー52によりスキャニングされた光は、入射角度を異ならせてプリズムディスク42の底面上の一点に入射される。このために、マイクロスキャニングミラー52により反射された光を収束させる必要がある。
【0038】
図10Aは、このための例示的な構造を図示する。図10Aに示すように、マイクロスキャニングミラー52により反射された光を収束させるために、凹ミラーを反射ミラー53として使用できる。または、図10Bに示すように、レーザープリンタの光走査装置で一般的に使用するF−θレンズ55を使用してもよい。前記F−θレンズ55は、マイクロスキャニングミラー52により走査される光を収束するだけでなく、マイクロスキャニングミラー52により発生する収差などを補正する役割も行える。この場合、反射ミラー53としては平面ミラーを使用する。
【0039】
これから、前述した構造の本発明による携帯用バイオチップスキャナの動作について説明する。
【0040】
まず、モータ46を所定の速度で回転させる。モータ46の回転速度が所定の速度に到達すれば、微細流体試料が微細流体ディスク43に形成された微細流体チャンネル49に、図8Bの右側に図示された経路に沿って流れ始める。同時に、モータ46のシャフト47に結合された表面プラズモン共鳴ユニット44も共に回転する。この時、光ヘッド50は、プリズムディスク42に形成された同心円形態の金属薄膜パターン48のトラックのうちいずれか一つに沿ってトラッキングしつつ、現在トラッキングしている金属薄膜パターン48の位置に光を照射する。光源ユニット51から出射される光は、マイクロスキャニングミラー52及び反射ミラー53により色々な角度で前記プリズムディスク42の金属薄膜パターン48の位置に入射する。入射角によって前記プリズムディスク42の底面で全反射が起きるか、表面プラズモン共鳴による吸収現象が起きる。また、金属薄膜パターン48の特定放射角位置にそれぞれ付着されたプローブ分子に特定の生体分子が結合される場合、屈折率の変化によって表面プラズモン共鳴による吸収が起きる角度が変わる。光検出器54は、反射光の強度を測定してこのような表面プラズモン共鳴が起きる角度を求める。したがって、微細流体内にいかなる物質が存在しているかが分かる。このようにして一つの金属薄膜パターンに対する測定が終了すれば、光ヘッド50は、前記表面プラズモン共鳴ユニット44の半径方向に沿って移動して、プリズムディスク42の他の金属薄膜パターン48のトラックで測定を始める。
【0041】
前述したように、本発明は、いかなる入射角で表面プラズモン共鳴が起きるかを測定して、微細流体内にいかなる物質が存在するかに関する情報を得るためのものであるので、あらゆる入射角に対する反射率を求める必要はない。したがって、測定の迅速性及び効率性のために一定範囲内の角度でのみ光を入射させることが好ましい。一般的に表面プラズモン共鳴が起きる角度の物質による差は約10゜程度であるため、約10゜の範囲内で角度を変化させることが良い。例えば、40゜〜50゜の入射角で光を入射させることができる。
【0042】
一方、マイクロスキャニングミラー52のスキャニング速度(すなわち、振動数)が遅い場合、1スキャニング周期の間に円周方向へのビームワークの大きさが過度に大きくなって正確な検出がなされない。正確な検出がなされるためには、1スキャニング周期の間に円周方向への移動がなるべく小さい必要がある。
【0043】
図11Aないし図11Cは、ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明するための図面である。図11Aに方形で表示した部分は、現在スキャニングされている部分であり、rは、回転中心からスキャニングされている位置までの半径である。ディスクは、矢印で表示したように時計回り方向に回転すると仮定する。本発明の場合、マイクロスキャニングミラー52は、プリズムディスク42の円周方向に垂直な方向に沿って光を走査する。したがって、ビームワークは、図11B及び図11Cのように現れる。ここで、図11Bは、スキャニング速度が比較的遅い場合であり、図11Cは、スキャニング速度が比較的速い場合である。もし、r=20mmであり、ディスクの回転速度が600rpmであれば、円周方向への移動速度は約1.2mm/msとなる。この場合、マイクロスキャニングミラー52が1kHzの速度でスキャニングすれば、1スキャニング周期の間に1.2mmを移動する。一方、30kHzの速度でスキャニングすれば、1スキャニング周期の間にわずか0.04mmのみ移動するために、ほとんど移動がないと言える。前述したように、本発明によるマイクロスキャニングミラー52は、10kHzないし30kHzの範囲内でスキャニングするために、十分に高い正確度で検出できる。
【0044】
図12は、本発明の他の実施形態による携帯用バイオチップスキャナの光ヘッドを図示する概略的な平面図である。図12に示すように、前記光ヘッド50は、二つの光源ユニット51a、51b、二つのマイクロスキャニングミラー52a、52b、二つの反射ミラー53a、53b及び二つの光検出器54a、54bを備える。一般的に、表面プラズモン共鳴ユニット44は、組立公差などによって理想的に回転できず、歳差運動のような不安定な回転運動を行える。また、振動のような外部環境によっても回転が不規則になりえる。その結果、プリズムディスク42の底面に入射する光の入射角が元来意図した入射角と異なりうる。ところが、表面プラズモン共鳴により生じる吸光度は、非常に微細な角度の変化にも大きく変わるために、正確な検出結果を得るには難点がある。
【0045】
したがって、組立公差及び外部環境による誤検出を防止するために、一つの光は表面プラズモン共鳴による反射率の変化を測定し、他の一つの光は、前述した原因により発生する角度の変化を追跡して誤差を補正できる。例えば、第1光源ユニット51aから放出された光は、第1試料チャンバ83aから表面プラズモン共鳴を通じて実際試料を検出し、他の第2光源ユニット51bから放出された光は、第2試料チャンバ83bから単に参照信号のみを提供される。このように、第1試料チャンバ83aからの反射光と第2試料チャンバ83bからの反射光とを比較して誤差を補正できる。このために、第1試料チャンバ83aに対応する金属薄膜パターン48のトラック上の位置にはプローブ分子を付着し、第2試料チャンバ83bに対応する金属薄膜パターン48のトラック上の位置にはプローブ分子を付着しない。流体試料内の特定の生体分子が前記プローブ分子と結合されていない間には、組立公差及び外部環境によって撹乱が発生しても二つの反射光は同一に変化する。しかし、前記プローブ分子に特定の生体分子が結合すれば、二つの反射光の変化は変わる。したがって、組立公差及び外部環境によって撹乱が発生しても正確な検出が可能になる。
【0046】
たとえ、図12には、光源ユニット、マイクロスキャニングミラー、反射ミラー及び光検出器がそれぞれ2個ずつ図示されていても、他の構成も十分に可能である。例えば、一つの光源ユニットから出射された光を、ビームスプリッタを利用して二つに分離し、分離された二つの光を一つのマイクロスキャニングミラーと反射ミラーとで反射した後、プリズムディスクで反射された二つの光を二つの光検出器でそれぞれ検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、多チャンネル測定が可能な携帯用バイオチップスキャナの関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】表面プラズモン共鳴現象を引き起こすためのプリズム構造を示す図面である。
【図2A】金属薄膜が蒸着されていないプリズムでの入射角による反射率グラフである。
【図2B】金属薄膜が蒸着されたプリズムでの入射角による反射率グラフである。
【図3】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図4】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図5】表面プラズモン共鳴現象を利用した従来の生体分子検出装置の構造を概略的に示す図面である。
【図6】本発明による携帯用バイオチップスキャナの斜視図である。
【図7】本発明による携帯用バイオチップスキャナの側断面図である。
【図8A】本発明による携帯用バイオチップスキャナのプリズムディスクの底面を示す斜視図である。
【図8B】本発明による携帯用バイオチップスキャナの微細流体ディスクの上面を示す図面である。
【図8C】図8Aのプリズムディスクと図8Bの微細流体ディスクとの結合状態を示す斜視図である。
【図9】本発明で使われるマイクロスキャニングミラーの例示的な構造を示す図面である。
【図10A】本発明で使われる光ヘッドの色々な実施形態を示す図面である。
【図10B】本発明で使われる光ヘッドの色々な実施形態を示す図面である。
【図11A】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図11B】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図11C】ディスクの回転によるビームワークの大きさを説明する図面である。
【図12】本発明の他の実施形態による携帯用バイオチップスキャナの光ヘッドを概略的に示す図面である。
【符号の説明】
【0049】
40 携帯用バイオチップスキャナ、
42 プリズムディスク、
43 微細流体ディスク、
44 表面プラズモン共鳴ユニット、
45 温度調節器、
46 DCモータ、
47 シャフト、
50 光ヘッド、
51 光源ユニット、
52 マイクロスキャニングミラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットと、
所定の角度範囲内で前記表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、前記表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッドと、を備え、
前記光ヘッドは、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動することを特徴とする携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項2】
前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットは、
プリズムが環状に形成されているプリズムディスクと、
前記プリズムディスクの底面に結合され、微細流体が流れる複数の微細流体チャンネルが上面に形成されている微細流体ディスクと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項3】
前記プリズムディスクの底面には、円周方向に沿って表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターンが同心円トラックの形態で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項4】
前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンの内面には、表面プラズモン共鳴を引き起こすための金属薄膜が蒸着されていることを特徴とする請求項3に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項5】
前記金属薄膜には、特定の生体分子にのみ結合する複数のプローブ分子が付着されることを特徴とする請求項4に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項6】
前記微細流体ディスクの上面に形成された複数の微細流体チャンネルは、前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンを横切って微細流体ディスクを一周することを特徴とする請求項3に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項7】
前記微細流体ディスクの上面に円形の排出保存部がさらに形成されており、前記複数の微細流体チャンネルは、前記微細流体ディスクの中心に向かって半径方向に前記排出保存部に連結されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項8】
前記複数の微細流体チャンネルそれぞれには微細流体を保存するための試料保存部が半径方向に延びており、前記試料保存部には、微細流体を注入するための試料注入口がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項9】
前記それぞれの微細流体チャンネルは、同心円トラックの形態で形成された前記それぞれの金属薄膜パターンとそれぞれ対応する位置にある複数の試料チャンバと、前記試料保存部から前記試料チャンバに微細流体を伝達するフローチャンネルと、を備えることを特徴とする請求項8に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項10】
ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットを回転させるためのモータをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項11】
表面プラズモン共鳴ユニットの内部を流れる微細流体の温度を一定に維持させるための温度調節器をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項12】
前記温度調節器は、前記微細流体ディスクの底面に所定の間隔をおいて配置されたペルティエ素子であることを特徴とする請求項11に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項13】
前記光ヘッドは、
平行光を出射する光源ユニットと、
所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニットから出射された光を所定の角度範囲内で走査するマイクロスキャニングミラーと、
前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーと、
前記プリズムディスクの底面から全反射された光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項14】
前記マイクロスキャニングミラーは、前記プリズムディスクの円周方向に垂直な方向に沿って光を走査することを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項15】
前記マイクロスキャニングミラーは、微細電子機械システム技術を利用して製造されることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項16】
前記マイクロスキャニングミラーの振動数は10kHzないし30kHzの範囲であることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項17】
前記反射ミラーは、前記マイクロスキャニングミラーにより色々な角度で走査される光をプリズムディスクの底面上の一点に収束させるための凹ミラーであることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項18】
前記反射ミラーは平面ミラーであり、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を収束し、かつ収差を補正するためのf−θレンズが前記平面ミラーとマイクロスキャニングミラーとの間に配置されることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項19】
前記光ヘッドは、誤検出の防止のために二つの平行光を前記プリズムディスクの底面に入射させ、前記プリズムディスクの底面で全反射された二つの反射光を二つの検出器でそれぞれ検出して比較することを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項1】
回転自在のディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットと、
所定の角度範囲内で前記表面プラズモン共鳴ユニットに光が入射されるように光を走査し、前記表面プラズモン共鳴ユニットから全反射された光を検出する光ヘッドと、を備え、
前記光ヘッドは、前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットの半径方向に沿って移動することを特徴とする携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項2】
前記ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットは、
プリズムが環状に形成されているプリズムディスクと、
前記プリズムディスクの底面に結合され、微細流体が流れる複数の微細流体チャンネルが上面に形成されている微細流体ディスクと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項3】
前記プリズムディスクの底面には、円周方向に沿って表面プラズモン共鳴を引き起こすための複数の金属薄膜パターンが同心円トラックの形態で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項4】
前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンの内面には、表面プラズモン共鳴を引き起こすための金属薄膜が蒸着されていることを特徴とする請求項3に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項5】
前記金属薄膜には、特定の生体分子にのみ結合する複数のプローブ分子が付着されることを特徴とする請求項4に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項6】
前記微細流体ディスクの上面に形成された複数の微細流体チャンネルは、前記プリズムディスクに形成された複数の金属薄膜パターンを横切って微細流体ディスクを一周することを特徴とする請求項3に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項7】
前記微細流体ディスクの上面に円形の排出保存部がさらに形成されており、前記複数の微細流体チャンネルは、前記微細流体ディスクの中心に向かって半径方向に前記排出保存部に連結されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項8】
前記複数の微細流体チャンネルそれぞれには微細流体を保存するための試料保存部が半径方向に延びており、前記試料保存部には、微細流体を注入するための試料注入口がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項9】
前記それぞれの微細流体チャンネルは、同心円トラックの形態で形成された前記それぞれの金属薄膜パターンとそれぞれ対応する位置にある複数の試料チャンバと、前記試料保存部から前記試料チャンバに微細流体を伝達するフローチャンネルと、を備えることを特徴とする請求項8に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項10】
ディスク形状の表面プラズモン共鳴ユニットを回転させるためのモータをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項11】
表面プラズモン共鳴ユニットの内部を流れる微細流体の温度を一定に維持させるための温度調節器をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項12】
前記温度調節器は、前記微細流体ディスクの底面に所定の間隔をおいて配置されたペルティエ素子であることを特徴とする請求項11に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項13】
前記光ヘッドは、
平行光を出射する光源ユニットと、
所定の振動数でシーソー運動しつつ前記光源ユニットから出射された光を所定の角度範囲内で走査するマイクロスキャニングミラーと、
前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を前記プリズムディスクの底面で反射させる反射ミラーと、
前記プリズムディスクの底面から全反射された光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項14】
前記マイクロスキャニングミラーは、前記プリズムディスクの円周方向に垂直な方向に沿って光を走査することを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項15】
前記マイクロスキャニングミラーは、微細電子機械システム技術を利用して製造されることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項16】
前記マイクロスキャニングミラーの振動数は10kHzないし30kHzの範囲であることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項17】
前記反射ミラーは、前記マイクロスキャニングミラーにより色々な角度で走査される光をプリズムディスクの底面上の一点に収束させるための凹ミラーであることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項18】
前記反射ミラーは平面ミラーであり、前記マイクロスキャニングミラーにより走査される光を収束し、かつ収差を補正するためのf−θレンズが前記平面ミラーとマイクロスキャニングミラーとの間に配置されることを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【請求項19】
前記光ヘッドは、誤検出の防止のために二つの平行光を前記プリズムディスクの底面に入射させ、前記プリズムディスクの底面で全反射された二つの反射光を二つの検出器でそれぞれ検出して比較することを特徴とする請求項13に記載の携帯用バイオチップスキャナ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公開番号】特開2006−201163(P2006−201163A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2940(P2006−2940)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】
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