説明

表面保護フィルム

【課題】 高い粘着力を有し、背面の滑り性や巻き戻し性に優れ、巻き出し特性(巻き出し張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもしわや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】 片面に粘着層、他面に離型層が積層されてなり、該離型層は少なくともポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物を含有し、その表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にある表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂板、金属板等の表面保護に使われる表面保護フィルムにおいて、特に成型加工により表面にプリズム加工等の凹凸加工がなされた樹脂板の表面保護に最適な表面保護フィルムを提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、樹脂板、金属板等の被着体の加工時、輸送時、さらに保管時の傷付き防止のための表面保護のために使用される。表面保護フィルムは、樹脂板等の表面に適度な粘着力を持って仮着され、通常、樹脂板等の被着体に加熱、成型、あるいは断裁などの加工を行う間も貼着されたままで使用され、樹脂板等を最終的に使用する段階で剥がされる。
【0003】
表面保護フィルムは、加工時に剥がれが生じないような適度な粘着力を有し、長期に渡って貼着されても粘着力の経時変化が生じず、不要時には容易に剥離できて樹脂板等への粘着剤の糊残りがなく、基材の破断が起こらないことが望ましい。
【0004】
特に表面にプリズム加工、エンボス加工、およびマット加工等により形成された凹凸を有する樹脂板等に使用する場合には、粘着層と樹脂板等の接触面積が小さくなるため、平滑面よりも高い粘着力を有する設計にする必要がある。
【0005】
本問題を解決するため、ポリオレフィンなどの基材フィルムの片面に、一般式A−B−A(ここでAはスチレン重合体ブロックを示し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、またはエチレン・ブチレン共重合体ブロックを示す)のブロック共重合体と粘着付与性樹脂とを混和した粘着層が形成された表面保護フィルムが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
ブロック共重合体と粘着付与性樹脂とからなる粘着層は、非常に高い粘着力を有しているため、凹凸を有する樹脂板に対しての高い粘着力、優れた密着性を実現することができる。しかし、その一方で基材であるフィルムとも強く密着し、ロール状に巻かれた表面保護フィルムを巻き出して使用する際に粘着層とフィルムがブロッキングを生じて剥離しにくくなるというように、巻き出し性が悪い問題があった。また、樹脂板等に貼着後、加工時、輸送時、さらに保管時に粘着力が上昇して、剥離しにくくなる問題があった。
【0007】
本問題を改善するため、ポリオレフィン樹脂からなる基材フィルムの片面に粘着層が形成され、該粘着層の主成分がスチレン系ランダム共重合体の水素添加樹脂とエチレン−αオレフィン共重合体エラストマーからなる表面保護フィルムが知られている(特許文献2参照)。
【0008】
スチレン系ランダム共重合体の水素添加樹脂とエチレン−αオレフィン共重合体エラストマーからなる粘着層は、ブロック共重合体と粘着付与性樹脂とからなる粘着剤よりも低い粘着力を有するため、上記巻き出し性の点からは好ましいが、凹凸を有する樹脂板に対して、凹凸の中心線平均粗さが3μm以上の場合に十分な粘着力を得ることができず、被着体が限定される問題があった。
【0009】
それらを改善する方法として、飽和ゴムの中間ブロックを有するスチレン系の熱可塑性エラストマーと粘着性樹脂を含み、接着剤コーティングを含まない平滑面を有する第一面と、艶消しエンボスを施された粗表面を有する第二面を含み、それらが共押出しされてなる表面保護フィルムが知られている(特許文献3参照)。
【0010】
しかしながら、この表面保護フィルムは、エンボスを施さなければ前記ブロッキングの点から巻き取りが行えないため、共押出しと同じ工程内でエンボスを施す必要があるが、安定した巻き戻し性を得るためには加工速度と生産性を低下させなければならず、かつ傷、たるみ等の外観欠点を生じやすい等の問題があった。
【0011】
オレフィン系樹脂にシリコーン系微粒子を添加・配合した樹脂層(離型層)と、粘着層とが直接または間接に積層一体化する方法も提案されている(特許文献4参照)。
【0012】
しかしながら、かかる方法においては、粘着層の粘着特性によりシリコーン系微粒子が粘着層に一部とられる現象が起こり、脱落した微粒子によるロール汚染、および表面保護フィルムを被着体に仮着した際に、脱落した微粒子により被着体表面に押し跡、傷等の外観欠点が生じる問題があった。
【特許文献1】特許昭58−30911号公報
【特許文献2】特許3560006号公報
【特許文献3】特開2005−48161号
【特許文献4】特開2000−345125号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記問題点を解決し、表面に成型加工等によりプリズム加工、エンボス加工、およびマット加工等の凹凸加工がなされた樹脂板等に使用された場合においても、高い粘着力を有し、背面の滑り性や巻き戻し性に優れ、巻き出し特性(巻き出し張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもしわや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)にも優れた表面保護フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0015】
すなわち、本発明の表面保護フィルムは、片面に粘着層、他面に離型層が積層されてなり、該離型層が少なくともポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物を含有し、その表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記課題を解決し、表面に成型加工等によりプリズム加工、エンボス加工、およびマット加工等の凹凸加工がなされた樹脂板等に使用された場合においても高い粘着力を有し、背面の滑り性や巻き出し性に優れ、貼り合わせ時の加工性(巻き出し張力を減少させ、被着体との貼り合わせの際にもしわや傷が入ることなく、容易にかつ高速に貼り合わせ加工が可能)に優れた表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の表面保護フィルムは、片面に粘着層、他面に離型層が積層されてなり、該離型層は少なくともポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物を含有し、その表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にある表面保護フィルムである。
【0018】
まず、本発明の表面保護フィルムを、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、表面保護フィルムの一例を示す断面模式図である。粘着層1、離型層2が順次積層されてなる。
【0020】
図2は、表面保護フィルムのさらに好ましい一例を示す断面模式図である。粘着層1、基材層3、さらに離型層2が順次積層されてなる。
【0021】
本発明において、表面保護フィルムの離型係数Rとは、下式によって定義されるものである。
【0022】
【数1】

【0023】
表面に成型加工等によりプリズム加工、エンボス加工、およびマット加工等の凹凸加工がなされた凹凸を有する樹脂板に対しては、高い粘着力が必要である一方で、巻き出し性の点から離型層面への粘着力は低い方が好ましい。表面保護フィルムを、凹凸を有する樹脂板に貼着して使用する際には、離型係数は、好ましくは0.25以下であり、さらに好ましくは0.10以下である。
【0024】
本発明の表面保護フィルムでは、離型層は、少なくともポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物を含有する。
【0025】
離型層のポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、およびプロピレン−αオレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種類以上のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどを挙げることができる。また、エチレン−プロピレン共重合体としては、ランダム共重合体、および/またはブロック共重合体などを挙げることができる。離型層には適宜、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を用いてもよい。
【0026】
離型層のシリコーン化合物は、好ましくは、下記式2で与えられるシリコーン構造を有する化合物が少なくとも1種類以上含有されてなる。
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、Rは互いに同一、または異なる炭素数1〜12の炭化水素基を示す。R2は互いに同一、または異なる炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子、または水酸基であり、nは正の整数である。)
シリコーン化合物は、JIS K7210(1999)で規定されるMFR(メルトマスフローレート)がポリオレフィン系樹脂となるべく近いことが好ましい。MFRとは樹脂の溶融時の流動性を示す数値であり、両者のMFRの差が50g/10min以上になると、シリコーン化合物の分散性が悪くなり、シリコーン化合物の凝集が起こりやすく、シリコーン化合物がブリードアウトしたり、フィッシュアイの発生が増加する傾向がある。
【0029】
本発明の表面保護フィルムでは、シリコーン化合物の好ましい形態としては、シリコーン化合物が樹脂とシリコーン樹脂が均一に分散されてなるシリコーン混合体からなる。より好ましくは、ポリエチレンとシリコーン樹脂が均一に分散されてなるポリエチレン−シリコーン混合体、ポリプロピレンとシリコーン樹脂が均一に分散されてなるポリプロピレン−シリコーン混合体、および/またはそれらの混合物から選ばれる1種類以上からなる。さらに好ましくは樹脂との分散性、加工性、機械的強度、表面粗さの点から、ポリプロピレン−シリコーン混合体からなる。
【0030】
本発明の表面保護フィルムでは、ポリプロピレン−シリコーン混合体としては、オイルタイプ、グラフトタイプ、および/またはそれらの混合物から1種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0031】
オイルタイプは、ポリプロピレン樹脂に超高分子量のシリコーン化合物を高濃度に混練することによって形成されるポリプロピレン−シリコーン混合体を示すが、本発明の離型層に使用した場合に、摩擦係数が小さいことにより、巻き出し張力が低くなるという特徴を有するが、長期保管時に経時でシリコーン化合物がブリードアウトしたり、粘着層に移行したりする問題がある。
【0032】
グラフトタイプは、ポリプロピレン樹脂に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合されて形成されるポリプロピレン−シリコーン混合体を示し、本発明の表面保護フィルムのように離型層に使用した場合でも、シリコーン化合物のブリードアウトや移行といった問題が起こらないため、耐汚染性に優れた離型層を形成することができる。本発明の表面保護フィルムでは、ポリプロピレン-シリコーン混合体が、ポリプロピレン樹脂に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合されて形成されてなることが好ましい。
【0033】
本発明の表面保護フィルムでは、ポリプロピレン−シリコーン混合体のシリコーン樹脂成分の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上であることが好ましい。Mwが10万より低い場合は、シリコーン樹脂成分のブリードアウトが起こりやすくなり、粘着層の汚染の原因となる場合がある。
【0034】
本発明の表面保護フィルムでは、離型層の表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にある。離型層のシリコーン化合物として、特にグラフトタイプのポリプロピレン-シリコーン混合体を使用した場合に、離型層の表面粗さRaを容易に250〜5,000nmにすることができ、離型係数が小さくなり巻き出し張力が小さくなる。
【0035】
離型層中のシリコーン樹脂の含有率は、0.1〜30%が好ましく、1.0〜20%がさらに好ましい。シリコーン樹脂の含有率が0.1%より少ない場合には、十分な表面粗さが得られず、表面保護フィルムの巻き出し張力が高くなる問題があり、30%を超える場合には、製膜性が悪くなり、フィッシュアイ等の外観欠点が多くなる問題がある。
本発明の表面保護フィルムは、少なくとも粘着層と離型層が積層されてなる。粘着層と離型層との2層積層フィルムであってもよいが、より好ましくは、粘着層と離型層との間にポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂からなる基材層を有した3層積層フィルムの構成となすことが好ましい。
【0036】
本発明の表面保護フィルムの好ましい形態としては、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層の片面に離型層が共押出し法により形成されてなり、その反対面に粘着層が形成されている構成が挙げられる。
【0037】
基材層に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダム共重合体およびまたはブロック共重合体)、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げることができる。これらは単独で用いられても併用されてもよい。なお、前記α−オレフィンとしては、プロピレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ペンテン−1、ヘプテン−1等を挙げることができる。
【0038】
本発明における表面保護フィルムの製造方法は、特に指定されないが、インフレーション法、Tダイ法等の公知の方法を用いることができる。本発明においては、厚み精度に優れること、および表面粗さの制御の点から、Tダイ法が好ましく用いられる。離型層と基材層の複合フィルムの形成方法としては、離型層、および基材層をそれぞれ個別に溶融押出しした後、口金内で積層一体化させ、離型層と基材層の積層フィルムを形成する方法を用いることができる。
【0039】
離型層と基材層の積層厚み比率としては、離型層/基材層=1/40〜1/1が好ましく、より好ましくは離型層/基材層=1/20〜1/2である。積層厚み比率が上記より小さい場合は、巻き出し張力が高くなり、上記より大きい場合には、製膜性が悪くなり、フィッシュアイが多くなる問題がある。
【0040】
なお、基材層には、その物性を阻害しない範囲内において、タルク、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等の充填剤や滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、核剤等を適宜添加してもよい。また、これらを単独もしくは2種類以上併用して添加してもよい。
【0041】
また、離型層、および基材層に、必要に応じてエンボス加工、顔料添加による着色、および印刷を施してもよい。
【0042】
本発明の表面保護フィルムでは、粘着層に使用される粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを挙げることができる。本発明の表面保護フィルムは、粘着層が少なくともアクリル系粘着剤からなることがより好ましい。
【0043】
本発明の表面保護フィルムの好ましい例においては、一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体(但し、これらの式中、Aはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、またはこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックである。)を含有するゴム系粘着剤や、アクリル系粘着剤を挙げることができる。
一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体において、スチレン系重合体ブロックAは、重量平均分子量が12,000〜100,000程度、ガラス転移点が20℃以上のものが好ましい。また、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、またはこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックBは、重量平均分子量が10,000〜300,000程度、ガラス転移点が−20℃以下のものが好ましい。
【0044】
上記A成分とB成分の重量比としては、A/B=5/95〜50/50であり、より好ましくはA/B=10/90〜30/70である。上記一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体は単独で用いでもよいが、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
上記一般式A−B−Aで表されるブロック共重合体の具体例としては、スチレンーエチレン/プロピレンースチレン、スチレンーエチレン/ブチレンースチレン、およびそれらの水素添加体を挙げることができ、一般式A−Bで表されるブロック共重合体の具体例としては、スチレンーエチレン/プロピレン、およびスチレンーエチレン/ブチレンおよびそれらの水素添加体を挙げることができる。
【0046】
一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体は、単独で用いてもよいが、好ましくは粘着付与性樹脂を適宜用いてもよい。
【0047】
粘着付与性樹脂としては、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、クロマン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等を使用することができるが、この限りではない。
【0048】
粘着付与性樹脂は、上記ブロック共重合体との相溶性、樹脂の融点、および粘着層の粘着力の点から、適宜選択される。
【0049】
粘着付与性樹脂の添加量としては、上記ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは5〜200部、より好ましくは5〜100部である。粘着付与性樹脂の添加量が少なすぎると、凹凸のある被着体に貼り合わせた際に表面保護フィルムの浮きや剥がれが発生する問題があり、添加量が多すぎると、巻き出し張力が高くなり、被着体との貼り合わせの際にしわや傷が入る問題がある。また、粘着付与樹脂のブリードアウトが発生し、粘着力が低下しやすくなる。
【0050】
上記アクリル樹脂系粘着剤の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、等の単独重合体もしくは共重合体などを挙げることができるが、この限りではない。
【0051】
また、上記アクリル系粘着剤には、好ましくは官能基を有するアクリル系単量体が共重合されて用いられる。官能基を有するアクリル化合物の例としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸などを挙げることができるが、この限りではない。
【0052】
本発明に用いられる共重合体の重合方法は、例えばラジカル重合などの方法によって得ることができるが、特に限定されるものではない。
【0053】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて架橋剤を使用することができる。本発明における架橋剤とは、共重合体に存在する官能基と熱架橋反応し、最終的には三次元網状構造を有する粘着層とするための化合物で、基材シートとの密着性、強靱性、耐溶剤性、耐水性等を向上するために加えるものである。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、エポキシ系化合物、アミノ系化合物、アミド系化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤等、また、それらの変性体を適宜使用することができる。
【0054】
本発明では、粘着層の架橋性、強靱性等からイソシアネート系化合物およびその変性体を使用することが好ましい。イソシアネート系化合物とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上持つもので、芳香族系と脂肪族系の化合物に大別される。芳香族系の化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等が使用され、また脂肪族系の化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が使用される。これらのイソシアネート系化合物の変性体としては、イソシアネート系化合物のビゥレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体等の化合物を挙げることができる。これら架橋剤は、単独で用いても、2種類以上を使用してもよい。また、必要に応じて、反応を促進させるために例えば、ジブチルスズラウレート等の架橋触媒を粘着剤に添加することができる。
【0055】
また、上記粘着層には、必要に応じて粘着付与性樹脂、軟化剤、老化防止剤、填料、染料または顔料などの着色剤などを添加することができる。
【0056】
粘着付与性樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などを挙げることができるが、この限りではない。
【0057】
軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤などを挙げることができる。
【0058】
充填剤としては、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、および酸化チタンなどを挙げることができる。
【0059】
本発明の表面保護フィルムでは、粘着層の粘着力は、アクリル板に対して、2.0〜30N/50mmが好ましく、3.0〜20N/50mmが特に好ましい。粘着力が2.0N/50mmより低い場合は、凹凸のある被着体に貼り合わせた際に表面保護フィルムの浮きや剥がれが発生する問題があり、粘着力が30N/50mmより高い場合は、巻き出し張力が高くなり、被着体との貼り合わせの際にしわや傷が入る問題がある。
【0060】
粘着層の厚みは、1.0〜50μmであり、好ましくは、2.0〜30μmである。粘着層が1.0μmより薄い場合は、上記粘着力が低いことにより表面保護フィルムの浮きや剥がれが発生する問題があり、粘着層が50μmより厚い場合は、上記粘着力が高いことにより巻き出し張力が高くなり、被着体との貼り合わせの際にしわや傷が入る問題がある。また、表面保護フィルムのコシが強くなるため、取り扱い性が悪くなる問題がある。
【0061】
本発明の粘着層の離型層面への粘着力としては、好ましくは、1.0N/50mm以下であり、より好ましくは、0.5N/50mm以下である。粘着層の離型層面への粘着力が1.0/50mmを上回る場合は、ロール状に巻かれた表面保護フィルムを巻き出して使用する際に粘着層とフィルムの離型層面がブロッキングを生じて剥離しにくくなるため、巻き出し張力が高くなり、巻き出し性が悪くなる問題がある。
【0062】
粘着層の形成方法としては特に指定されないが、共押出し法により形成する方法、塗工法により形成する方法を例として挙げることができる。
【0063】
本発明の表面保護フィルムでは、では、粘着層の粘着力の点から塗工法により粘着層を形成する方法がより好ましい。粘着層の形成方法としては、特に制限なく種々の方法を使用することができ、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーターなどを挙げることができる。
【0064】
粘着層を塗工法により形成する場合に、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒の種類は、特に限定されないが、沸点が70〜150℃の溶媒が塗工時の作業性、硬化前後の乾燥性等の点から用いやすい。具体的な例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤を単独、場合によっては併用して使用することができる。
【0065】
塗工法により粘着層を形成した後、必要に応じて高温で養生処理を行ったり、紫外線などの放射線照射を行い、反応を進行させてもよい。
【0066】
また、離型層、または中間層の粘着層と接する面に表面処理や下塗り処理を施すことにより、塗工性が向上するのみならず、密着性が改良されるのでより好ましく利用することができる。離型層、または中間層の粘着層と接する面の表面処理としては公知の方法、例えば、コロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中、希ガス中等)やプラズマ(グロー放電)処理(高圧、低圧)、フレーム処理、高周波スパッタエッチング処理を挙げることができる。
【0067】
本発明の表面保護フィルムは、表面に成型加工等によりプリズム加工、エンボス加工、およびマット加工等の凹凸加工がなされた凹凸を有する成型加工品に対して、特に好ましく使用される。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0069】
実施例および比較例中の部数は固形分の重量を示し、また、%は特に断りのない限り重量による。
【0070】
実施例および比較例における本発明の特性値は、以下に示す試験方法によるものである。
【0071】
・試験方法
(1)粘着力
A. サンプルの作製
表面保護フィルム(60mm幅×120mm長)を予め50mm幅×100mm長にカットした被着体に5kgのハンドゴムローラーを一往復させて貼り合わせた。表面保護フィルムを被着体の幅に合わせてカットし、23℃×65%RHで20時間以上静置してサンプルとした。
【0072】
B. 測定方法
引張圧縮試験機TG−500N(ミネベア株式会社製)を用いて、表面保護フィルムを剥離角度180°、所定速度で剥離した際の剥離力の積分平均値を粘着力(mN/50mm)とした。剥離速度は通常は300mm/分、試験長は100mmとした。被着体がアクリル板の場合の粘着力をアクリル板への粘着力、被着体が離型層面の場合の粘着力を離型層面への粘着力とし、離型係数を求めた。また、剥離試験後の離型層の外観を観察した。
【0073】
(2)表面粗さ
離型層面に蒸着処理を行った後、JIS B0601(2001)に準じて非接触式三次元表面粗さ計 WYKO NT−1000(日本ビーコ株式会社製)で測定長さ736(フィルム横方向)×480(フィルム長手方向)を測定範囲として、中心線平均粗さRa(nm)を求めた。
【0074】
(3)樹脂のMFR(メルトマスフローレート)
JIS K7210(1999)に準拠し、230℃、2.16kgf/cm下でのMFR(g/10min)を求めた。
【0075】
(実施例1)
離型層用樹脂組成物として、MFRが5/10min、シリコーン樹脂含有率が40%のグラフトタイプのポリプロピレン−シリコーン混合体 BY27−201(東レ・ダウコーニング株式会社製)30%、MFR 2g/10minのエチレン−プロピレンのブロック共重合体70%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した。中間層用樹脂組成物として、MFR 2g/10minのエチレン−プロピレンのブロック共重合体100%からなる樹脂組成物をヘンシェルミキサにて均一に混合した。
【0076】
次に、各々φ35mmの2台の押出機を有する口金幅300mmのTダイ型複合製膜機を用い、上記準備した樹脂組成物をそれぞれの押出機に導入し、離型層/中間層の厚み比率が1/4となるよう各押出機の吐出量を調整し、複合Tダイから押出温度210℃にて押出し、中間層の表層にコロナ処理を施した後、フィルム厚み40μmの2層積層フィルムを製膜した。
【0077】
さらに、トルエン500部に、粘着付与性樹脂(アルコンP−125(荒川化学工業株式会社製))25部、ブロック共重合体(Kraton G−1657(クレイトンポリマージャパン株式会社製))100部を順次加え、1時間攪拌し調製した濃度20%のゴム系粘着剤をフィルムのコロナ処理面に塗工し、熱風オーブンで80℃、1分間乾燥し、厚みが5μmの粘着層を形成した。評価結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
グラフトタイプのポリプロピレン−シリコーン混合体を10%、エチレン−プロピレンのブロック共重合体を90%とした以外は実施例1と同様である。
【0079】
(実施例3)
グラフトタイプのポリプロピレン−シリコーン混合体を4%、エチレン−プロピレンのブロック共重合体を96%とした以外は実施例1と同様である。
【0080】
(実施例4)
離型層用樹脂組成物をMFR 15g/10min、シリコーン樹脂含有率が50%のオイルタイプのポリプロピレン−シリコーン混合体 BY27−001(東レ・ダウコーニング株式会社製)10%、エチレン−プロピレンのブロック共重合体を90%とした以外は実施例1と同様である。
【0081】
(実施例5)
粘着層を酢酸エチル400部に、アクリル系粘着剤ニッセツ KP−1405(日本ポリカーボネート工業株式会社製)100部、イソシアネート系架橋剤ニッセツ CK−102 0.5部を順次加え、10分間攪拌して調製した濃度20%のアクリル系粘着剤とし、粘着層の塗膜形成後、40℃×4日間のエージングを行った以外は実施例1と同様である。
【0082】
(比較例1)
離型層用樹脂組成物をエチレン−プロピレンのブロック共重合体100%とした以外は実施例1と同様である。
【0083】
(比較例2)
離型層用樹脂組成物をエチレン−プロピレンのブロック共重合体90%、平均粒径15μmのシリカ微粒子10%とした以外は実施例1と同様である。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より、本発明の表面保護フィルムは、比較例1と比較して、離型層にシリコーン化合物を含有し、かつ表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にあることにより、アクリル板に対する高い粘着力を有しながら離型係数が低く、巻き出し性に優れる特徴を有することがわかる。また、比較例2は巻き出し性には優れるが、シリカ微粒子の脱落が発生するため、本発明の表面保護フィルムと比較して好ましくないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明の表面保護フィルムを例示する断面図である。
【図2】図2は、本発明の表面保護フィルムを例示する断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1:離型層
2:粘着層
3:中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に粘着層、他面に離型層が積層されてなり、該離型層は少なくともポリオレフィン系樹脂とシリコーン化合物を含有し、その表面粗さRaが250〜5,000nmの範囲にある表面保護フィルム。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材層の片面に離型層が共押出し法により形成されてなり、その反対面に粘着層が形成されている請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
粘着層のアクリル板への粘着力が2.0〜30N/50mmであり、離型係数Rが、0.25以下である請求項1および2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
離型層のポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、およびプロピレン−αオレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種類以上である請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
離型層のシリコーン化合物が、ポリプロピレン樹脂にシリコーン樹脂が均一に分散されてなるポリプロピレン−シリコーン混合体からなる請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
ポリプロピレン-シリコーン混合体が、ポリプロピレン樹脂に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合されて形成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
離型層中のシリコーン樹脂の含有率が0.1〜30%である請求項6に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
粘着層が少なくとも一般式A−B−AもしくはA−Bで表されるブロック共重合体(但し、これらの式中、Aはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、またはこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックである。)100重量部と粘着付与性樹脂5〜200部を含有するゴム系粘着剤からなる請求項1〜7のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
粘着層が少なくともアクリル系粘着剤からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
粘着層が塗工法によって形成される請求項1〜9のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法で、表面保護フィルムを製造する表面保護フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法で製造された表面保護フィルムが表面に貼着されてなる成型加工品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−80626(P2008−80626A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262811(P2006−262811)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】