説明

表面保護フィルム

【課題】粘着力、接着力の経時安定性に優れ、剥離後に糊残りが生じ難くい表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系基材の機材の片面にゴム系樹脂系成分及び粘着付与材を含む粘着層が積層されており、共押出法により得られる表面保護フィルムであって、ゴム系樹脂系成分がスチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体であり、前記ゴム系樹脂成分のスチレン含有量が20重量%以上であり、イソブチレン系重合体ブロック(B)またはスチレンとイソブチレンとのランダム共重合ブロック(B’)の重量平均分子量が40000から70000であり、前記粘着層の周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下である表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止するための表面保護フィルムに関し、特に、ポリオレフィン系基材の片面にゴム系粘着剤層が積層されている表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護フィルムが仮着されていることが多い。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹脂板または各種銘板などの様々な被着体、中でも塗装鋼板や塗装樹脂板の表面に、加工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために、表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
この種の表面保護フィルムは、フィルム基材の片面に粘着剤層を積層した構造を有する。上記フィルム基材としては、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルム基材が用いられている。表面保護フィルムは、被着体表面に上記粘着剤層の粘着力を利用して貼付され、それによって被着体表面の保護が図られている。被着体が使用される前に、表面保護フィルムは被着体表面から剥離されることになる。従って、表面保護フィルムでは、被着体の表面に容易に仮着され得るのに適切な粘着性を有することが求められており、かつ、被着体表面から容易に剥離し得る程度の良好な剥離性を有することが求められている。さらに、剥離後の被着体表面に糊残りや接着跡等が生じないことも強く求められている。
【0004】
ところで、塗装を終えた自動車の車体や部品等はトラックや船に荷積みされて、海外等の遠隔地に移送されることがある。移送の際に、塵、埃または雨等の種々の浮遊物が塗膜に付着し、それによって、塗膜が汚れたりまたは変色したりすることがあった。また、他の物質や部材の衝突により塗膜が損傷することもあった。
【0005】
そこで、このような塗膜の汚染、変色または損傷等を防止するために、塗膜表面に表面保護フィルムを仮着して、海外等の遠隔地への移送が行われている。
【0006】
この種の塗膜保護用の表面保護フィルム材としては、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられている。
【0007】
上記塗装鋼板などの塗膜の表面保護に用いられる表面保護フィルムや、様々な物品を保護するための表面保護フィルムは、一般に、手貼りにより、保護対象表面に仮着され、使用に先立ち剥離される。
【0008】
従って、表面保護フィルムには、1)初期接着力が十分であり、2)接着力の経時安定性が良好であり、3)風圧によって被着体から剥離し難く、さらに4)剥離時には被着体から容易に剥離でき、5)剥離後に被着体に糊残りが生じ難いことが求められる。
【0009】
上記要求1)〜5)を満たす表面保護フィルムとして、下記の特許文献1には、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体からなる表面保護フィルムが開示されている。粘着剤にスチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体を使用することにより、上記要求1)〜5)が満たされている。
【0010】
ところで、特許文献1に記載の表面保護フィルムの製造に際しては、溶融共押出法を利用し、長尺状の表面保護フィルムを得る方法が生産性を高める上で好ましい。溶融共押出法では、フィルム基材と上記粘着剤とが共押出され、連続的に上記表面保護フィルムが製造される。そして、該表面保護フィルムを巻き取り、巻重体とすることにより、表面保護フィルムの保管が用意となる。使用に際しては、巻重体から表面保護フィルムを繰り出し、適宜の長さで切断して、使用すればよい。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の表面保護フィルムでは、使用に際して巻重体から表面保護フィルムを繰り出す際、すなわち巻重体を展開する際に必要な力が比較的大きく、円滑に表面保護フィルムを繰り出すことができないことがあった。また、表面保護フィルムを無理に繰り出した場合には、表面保護フィルムが伸びて変形し、貼り付け時に外観を損ねるおそれがあった。
【0012】
他方、溶融共押出法により製造される表面保護フィルムにおいて巻重体からの展開力を低下させるために、従来、種々の方法が提案されている。例えば、下記の特許文献2では、ポリエチレンからなるフィルム基材と粘着層とを溶融共押出法により積層した後に、フィルム基材の粘着層とは反対側の面すなわち、背面が摩擦処理される。フィルム基材の背面を摩擦することにより、展開力が軽減されている。
【0013】
また、下記の特許文献3では、フィルム基材層、粘着層及び離型層が積層された表面保護シートの製造方法が開示されている。ここでは、ポリオレフィン系樹脂を含有するフィルム基材層と、熱可塑性エラストマーを含有する粘着層とが共押出により積層される。積層後、連続して、フィルム基材の背面、すなわちフィルム基材層の粘着層が積層されている側とは反対側の面に、離型剤による離型層が形成されている。ここでは、離型層の形成により、巻重体内における離型層と、離型層に接触している次の層の表面保護シートの粘着層との間の密着力が低められている。
【特許文献1】WO2006/32183
【特許文献2】特開平2−252777号公報
【特許文献3】特開2003−41216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、特許文献2,3に記載の表面保護フィルムや表面保護シートでは、巻重体からの展開力を軽減することができる。
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の表面保護フィルムでは、被着体に貼付する際の初期段階における密着性を高めるために、粘着剤の23℃における剪断貯蔵弾性率が低く設計されている。そのため、特許文献2に記載のような展開力軽減方法を利用したとしても、巻重体から展開するのに必要な力、すなわち展開力が低くなり難かった。
【0016】
一方、特許文献3の方法を用いて、離型層を形成すれば十分な展開性は期待できるが、この方法では、共押出した後巻き取るまでの短時間に離型剤の塗布、乾燥、硬化の工程が必要であり、設備のスペースやコスト、生産性、硬化不良に伴う粘着品質等の解決すべき問題点が多かった。
【0017】
一般に、共押出法により製造された表面保護フィルムでは、溶液塗工法により粘着層が形成された表面保護フィルムに比べて、コストを低減することができ、かつ糊残りが生じ難いという利点を有する。しかしながら、被着体への貼付初期段階における被着体における密着性を維持したまま、巻重体から容易にかつ安定に展開し得るように設計することが困難であった。
【0018】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、初期接着力や接着力の経時安定性等の物性は維持したまま、前述した展開性が良好な表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与剤とを含む粘着剤からなる粘着層が共押出法により積層されている表面保護フィルムであって、前記ゴム系樹脂成分が、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体であり、前記ゴム系樹脂成分のスチレン含有量が20重量%以上であり、イソブチレン系重合体ブロック(B)またはスチレンとイソブチレンとのランダム共重合ブロック(B’)の重量平均分子量が40000から70000であり、前記粘着層の周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下であることを特徴とする、表面保護フィルムが提供される。
【0020】
本発明に係る表面保護フィルムでは、前記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下であるため、上記粘着力を高めることができる。また、冬場などの低温の環境のもとにおいて保管されたとしても被着体からの表面保護フィルムの剥離を抑制することができる。さらに、輸送時の風圧による剥離を抑制することも可能となる。
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
本願発明者らは、ポリオレフィン系基材の表面に粘着層が積層されている表面保護フィルムについて鋭意検討した結果、粘着層に含有されるゴム系樹脂成分として、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体を用いて、かつゴム系樹脂成分のスチレン含有量を20重量%以上とし、イソブチレン系重合体ブロック(B)またはスチレンとイソブチレンとのランダム共重合ブロック(B’)の重量平均分子量が40000から70000の範囲に設定すれば、上記課題を達成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0023】
(ゴム系樹脂成分)
本発明に係る表面保護フィルムにおける粘着剤は、ゴム系樹脂成分を含む。そして、ゴム系樹脂成分は、上記のように、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体である。言い換えると、上記ゴム系樹脂成分は下記の(1)、(2)のブロック共重合体の少なくとも一方を含むものである。
【0024】
(1)スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体からなるブロック共重合体。ここで、このブロック共重合体としては、特に限定されず、例えばA−B、A−B−A、(A−B)または(A−B)Xなどで表わされる共重合体が挙げられる。なお、nは1以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0025】
(2)スチレン系重合体ブロック(A)と、スチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体を主とするブロック共重合体。このようなブロック共重合体としては、下記の(2−1)〜(2−4)が挙げられる。
【0026】
(2−1)ブロック(A)とブロック(B’)とが結合したもの:A−B’ブロック共重合体
(2−2)スチレンとイソブチレンの内、スチレンが漸増するテーパーブロック(C)を含むもの:A−B’−Cブロック共重合体
(2−3)上記テーパーブロック(C)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B’−Aブロック共重合体
(2−4)(2−1)〜(2−3)の繰り返しやこれらが任意の割合で結合したもの:(A−B’)、(A−B’)X、(A−B’−C)X、(A−B’−A)Xなど。
【0027】
なお、nは1以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0028】
上記ゴム系樹脂成分は、イソブチレンを含有する重合体ブロック(B),(B’)を有するが、ポリイソブチレンは、脂肪族性不飽和結合を有さないため、水素添加が不要であり、熱安定性や耐候性を高めることができる。
【0029】
ゴム系樹脂成分においては、スチレンと、イソブチレンとの構成成分の含有割合は、重量比で5:95〜60:40の範囲が好ましく、より好ましくは7:93〜40:60の範囲である。スチレンと、イソブチレンとの合計を100重量%としたとき、スチレンの含有割合が5重量%未満では、粘着層の凝集力が低下し、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じるおそれがあり、60重量%を超えると、粘着力が不足し、被着体への貼付が困難なことがある。
【0030】
上記(2)のブロック共重合体からなるゴム系樹脂成分において、ブロック(C)を含む構成では、ブロック共重合体を構成している全モノマーの合計に対するブロック(A)におけるスチレン含有量とブロック(C)におけるスチレン含有量との合計であるスチレン含有割合は3〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜40重量%の範囲、さらに好ましくは5〜25重量%の範囲である。ブロック(A)及びブロック(C)のスチレン含有量の合計であるスチレン含有割合が3重量%未満では、粘着剤層の凝集力が低下し、表面保護フィルムを剥離した際に被着体に糊残りが生じることがあり、50重量%を超えると、粘着剤層の粘着力が不足し、被着体への貼付が困難となることがある。ブロック共重合体を構成している全モノマーの合計に対するブロック(A)におけるスチレン含有量の割合は、3重量%以上が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。
【0031】
上記ゴム系樹脂成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、30000〜400000の範囲が好ましく、より好ましくは50000〜200000の範囲である。重量平均分子量が30000未満では、粘着層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。重量平均分子量が400000を超えると、粘着力が不足するとともに、表面保護フィルムの製造時に溶融粘度増大しがちとなる。
【0032】
上記ゴム系樹脂成分のスチレン含有量と、ゴム系樹脂成分における上記イソブチレン系重合体ブロック(B)または上記ランダム共重合体ブロック(B’)の重量平均分子量を制御することにより、粘着物性を維持したまま、展開力を低めることが出来る。具体的には、(I)ゴム系樹脂成分におけるスチレン含有量を増加させ、かつ(II)イソブチレン系重合体ブロック(B)またはランダム共重合体ブロック(B’)の重量平均分子量を小さくする。
【0033】
上記(I)及び(II)により粘着物性を維持したまま、展開力を低めることができるのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、上記(I)及び(II)に示した条件を満たすことにより、低温領域での剪断貯蔵弾性率は維持したまま、粘着剤のゴムプラトー領域の剪断貯蔵弾性率を増加させることができる。従って、粘着物性を維持したまま、展開力を低めることができると考えられる。
【0034】
ゴム系樹脂成分のスチレン含有量は20重量%以上である。20重量%未満では、展開力が大きくなり、巻重体から表面保護フィルムを無理なく繰り出すことが困難となる。甚しい場合には、繰り出しが可能であっても、繰り出された表面保護フィルムが変形して貼り付け性を低下させるおそれがある。
【0035】
また、イソブチレン系重合体ブロック(B)及びランダム共重合体ブロック(B’)の重量平均分子量は40000〜70000の範囲である。好ましくは40000〜65000である。このイソブチレン系重合体ブロック(B)及びランダム共重合体ブロック(B’)は使用されるスチレン系ラストマーにおけるソフトセグメント部分である。前述したように、上記イソブチレン系重合体ブロック(B)は、より具体的には、共役ジエン重合体ブロックまたはイソブチレン重合体ブロックなどであり、また上記ランダム共重合体ブロック(B’)は、スチレンと、共役ジエンもしくはイソブチレンなどからなるオレフィンとのランダム共重合体ブロックであり、いずれも、スチレン系重合体ブロック(A)よりも柔軟性に富む、ソフトセグメント部分である。このイソブチレン系重合体ブロック(B)及びランダム共重合体ブロック(B’)の重量平均分子量が70000を超えると、粘着層のゴムプラトー領域の剪断貯蔵弾性率の増加効果が得られず、展開力が大きくなる。40000未満では、粘着層のゴムプラトー領域の剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎ、表面保護フィルムに必要な十分な粘着物性を満足出来なくなる。
【0036】
(粘着付与材)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層は、上記特定のゴム系樹脂成分に加えて、粘着付与材をさらに含む。
【0037】
上記粘着付与材としては、例えば、テルペン系樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン等が挙げられる。具体的には、テルペン系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン、パラフィン系プロセスオイルとしては、出光興産社製、商品名:ダイアナプロセスオイル、神戸油化学社製、商品名:SYNTAC、液体ポリイソブチレン樹脂としては、BASF社製、商品名:グリソパール、ポリブテンとしては、出光興産社製、商品名:出光ポリブテン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記粘着付与材のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、300〜5000の範囲が好ましく、より好ましくは300〜4000の範囲である。更に好ましくは300〜3000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると、粘着層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。一方、重量平均分子量が5000を超えても、ゴム系樹脂成分との相溶性が悪くなり、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。
【0039】
粘着層では、ゴム系樹脂成分100重量部に対して、粘着付与材は好ましくは、5〜40重量部の範囲で含有される。より好ましくは10〜30重量部である。5重量部未満では、粘着層の剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。40重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムを被着体から剥離し難くなることがあり、また剥離後に糊残りが生じ易くなることがある。
【0040】
(粘着層に配合される他の成分)
本発明に係る表面保護フィルムでは、必要に応じて、粘着性能を阻害しない範囲で、上記粘着層に耐光剤や酸化防止剤などの安定剤や接着昂進防止剤などが添加されてもよい。
【0041】
上記耐光剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の酸化防止剤が挙げられる。
【0042】
上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
【0043】
(ポリオレフィン基材)
上記ポリオレフィン系基材を構成するポリオレフィンについては特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンやポリオレフィンにオレフィン系エラストマーを混合したものなどを用いることができる。
【0044】
上記ポリオレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、20〜100μmが好ましい。20μm未満では、例えば塗膜のような被着体の保護性能を十分に発揮できないことがあり、100μmを越えると、ハンドリング性や貼り付け性が低下することがあり、コスト的にも不利である。
【0045】
本発明においては、ポリオレフィン系基材中には、この分野で通常配合される公知の添加剤が配合されてもよい。添加剤としては上記粘着層に添加され得る耐光剤や酸化防止剤などの安定剤のほか、滑剤、帯電防止剤、防錆剤または顔料等が挙げられる。例えば自動車用塗膜を保護する表面保護フィルムのように、紫外線に晒されるような表面保護フィルムの場合には、ポリオレフィン系基材に耐候剤を配合することが好ましい。
【0046】
ポリオレフィン系基材に配合される耐候剤としては、紫外線遮蔽剤及び/または紫外線安定化剤が好ましく用いられる。
【0047】
上記紫外線遮蔽剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数のものをブレンドして用いてもよい。
【0048】
上記紫外線安定化剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系もしくはシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。
【0049】
これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
【0050】
(表面保護フィルム)
本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、−30℃で4×10Pa以下である。
【0051】
周波数10Hzにおける−30℃での剪断貯蔵弾性率を上記特定の範囲とすることにより、特に初期粘着力が高められるとともに、冬場に屋外で保管された際に表面保護フィルムが被着体から剥離することなく、仮着状態を十分に維持し得る。また、輸送時の風圧によっても表面保護フィルムが極めて剥がれ難くなる。
【0052】
本発明においては、上記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で2.5×10〜8×10Paの範囲とされていることが好ましい。8×10Paを超えると、粘着力不足により輸送中に表面保護フィルムが被着体から剥離し易くなり、2.5×10を下回ると、剥離工程における作業性が悪くなったり、剥離時に糊残りしやすくなるおそれがある。
【0053】
(用途)
本発明の表面保護フィルムは、様々な被着体に適用することができる。すなわち、本発明の表面保護フィルムは、アクリル系樹脂などの合成樹脂や金属などの極性を有する材料からなる被着体表面の保護にも好適に用いることができる。その場合においても、糊残りが生じ難く、良好な剥離性能を得ることができる。すなわち、本発明の表面保護フィルムが適用される被着体表面は特に限定されるものではない。
【0054】
表面保護フィルムの製造方法としては、ポリオレフィン系基材と粘着剤組成物とを共押出により積層一体化する方法が採用される。具体的な方法としては、インフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられ得る。これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る表面保護フィルムでは、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与材とを含む粘着層が積層されており、ゴム系樹脂成分が上記特定のゴム系樹脂成分であり、ゴム系樹脂成分のスチレン含有量が20重量%以上であり、イソブチレン系重合体ブロック(B)またはスチレンとオレフィンとのランダム共重合ブロック(B’)の重量平均分子量が40000から70000の範囲とされているので、初期接着力及び接着力の経時安定性が高められ、風圧により被着体から剥離し難く、剥離時には被着体から容易に剥離することができる。また、剥離後に被着体に塗り残りが生じ難い。加えて、表面保護フィルムの巻重体から展開する際の展開力を十分に含めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
以下の実施例及び比較例では、ポリオレフィン系基材の片面に粘着層が積層されている表面保護フィルムをTダイ共押出法により製造し、評価した。
【0058】
(使用した材料)
〔ゴム系樹脂成分〕
SIBS(1);カネカ社製、品番:シブスター 102T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合14重量%、ソフトセグメント(イソブチレン系重合体ブロック(B)としてのイソブチレン系重合体ブロック)のMw 86000]
SIBS(2);カネカ社製、品番:シブスター 073T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合30重量%、ソフトセグメント(イソブチレン系重合体ブロック(B)としてのイソブチレン系重合体ブロック)のMw 49000]
SIBS(3);カネカ社製、品番:シブスター 072T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合23重量%、ソフトセグメント(イソブチレン系重合体ブロック(B)としてのイソブチレン系重合体ブロック)のMw 53900]
SEBS(1);クレイトンポリマー社製、品番:G1652、スチレンとエチレン、ブチレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合30重量%、ソフトセグメントのMw 49000]
SEBS(2);旭化成社製、品番:H1052、スチレンとエチレン、ブチレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合20重量%、ソフトセグメントのMw 72000]
SIPS;クラレ社製、品番セプトン2007、スチレンとイソプレンのブロック共重合体[全モノマー中のスチレン含有割合30重量%、ソフトセグメントのMw70000]
なお、ソフトセグメントの分子量Mwは、以下のようにして求めた。
【0059】
スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)やランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体中のスチレン系重合体ブロック(A)含有量は、H−NMR測定により求めることが出来る(新版 高分子分析ハンドブック 日本分析化学会 高分子分析研究懇談会 編 p971)。 スチレン系エラストマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量Mwから、イソブチレン系重合体ブロック(B)、ランダム共重合体ブロック(B’)の分子量Mwbは、下記式により求められる。
【0060】
Mwb=Mw×(1−スチレン系重合体ブロック(A)含有量(%))
〔粘着付与材〕
PA95;神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA95(重量平均分子量=400)
クリアロンLH;ヤスハラケミカル社製、水添テルペン樹脂、商品名:クリアロンLH(重量平均分子量=1000)
【0061】
〔ポリオレフィン系基材材料〕
PB170A;サンアロマー社製ブロックポリプロピレン
PEX6800A;東京インキ社製酸化チタン、商品名:PEX6800A White
UVT−52;東京インキ社製ヒンダードアミン系光安定化剤、商品名:PPM UVT−52
【0062】
(実施例1)
ゴム系樹脂成分としてのSIBS(2)を100重量部、粘着付与材としてのプロセスオイル(PA95)を20重量部含む粘着剤組成物と、ポリプロピレン(PB170A)を100重量部、酸化チタン(PEX6800A)を20重量部、光安定剤(UVT−52)を3重量部ドライブレンドしてなるポリプロピレン基材用組成物とを、Tダイ法により共押出し、50μmの厚みのポリプロピレン基材上に10μmの厚みの粘着層が積層された表面保護フィルムを連続的に巻き取り、巻重体を得た。
【0063】
(実施例2及び比較例1〜5)
使用したゴム系樹脂成分及び粘着付与材の種類並びにそれらの配合割合を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0064】
(評価)
上記のようにして得られた各表面保護フィルムの特性を以下の要領で評価した。
【0065】
(1)展開力
幅100mmの各表面保護フィルムの巻重体を用意し、300mm/分及び20m/分の各速度で表面保護フィルムを繰り出したときの、繰り出しに必要とした力(最大値)を測定し、展開力(N/100mm)とした。
【0066】
(2)剪断貯蔵弾性率
各粘着層に相当する粘着剤組成物をプレスして厚み1mmのシートを作製し、このシートサンプルについての剪断貯蔵弾性率を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)により、周波数10Hz、昇温速度6℃/分で−50℃〜+150℃の範囲で測定し、−30℃、23℃及び70℃における各剪断貯蔵弾性率を求めた。
【0067】
(3)初期粘着力
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に適用し、ポリオレフィン基材の背面において、2kgの圧着ゴムローラーを300mm/分の速度で走行させて貼り付け、その状態で30分間放置した。次に、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
【0068】
(4)初期剥離力
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に適用し、ポリオレフィン基材の背面において、2kgの圧着ゴムローラーを300mm/分の速度で走行させて貼り付け、その状態で30分間放置した。次に、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を30m/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期剥離力とした。
【0069】
(5)経時粘着力
各表面保護フィルムを、(4)の初期剥離力測定の場合と同様にして自動車用塗装鋼板にそれぞれ貼り付け、その状態で70℃のギアオーブン中に7日間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
【0070】
(6)被着体の汚染評価
(3)〜(5)の剥離後の被着体表面を目視で観察し、糊残りの有無で汚染の評価をした。
【0071】
〔糊残りの評価基準〕
○:糊残り無し
×:糊残り発生
【0072】
(7)風圧による剥がれ試験
各表面保護フィルムを100mm幅にカットし、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に2kgの圧着ローラーを適用し、ポリオレフィン基材の背面において300mm/分の速度で走行させて貼り付け、その状態で0℃の環境温度雰囲気下に30分間放置した。
【0073】
次いで、上記で得られた鋼板を架台上に水平に載置し、0℃の環境温度雰囲気下において風速22mの風洞実験を2時間実施した後、フィルムが剥がれた距離を測定した。これをn=10で評価し、10mm以上剥がれた場合を不良とし、風圧による剥がれ性能を下記評価基準で評価した。
【0074】
〔風圧による剥がれ性能の評価基準〕
○:不良率が20%以下
△:不良率が20%超、40%未満
×:不良率が40%以上
結果を下記の表1に示す。
【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与剤とを含む粘着剤からなる粘着層が共押出法により積層されている表面保護フィルムであって、
前記ゴム系樹脂成分が、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体及び/またはスチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体であり、
前記ゴム系樹脂成分のスチレン含有量が20重量%以上であり、イソブチレン系重合体ブロック(B)またはスチレンとイソブチレンとのランダム共重合ブロック(B’)の重量平均分子量が40000から70000であり、前記粘着層の周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下であることを特徴とする、表面保護フィルム。

【公開番号】特開2009−191104(P2009−191104A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30731(P2008−30731)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】