説明

表面保護フィルム

【課題】初期接着力及び接着力の経時安定性に優れており、風圧によって被着体から剥離し難く、剥離時には被着体から容易に剥離でき、剥離後に被着体に糊残りや接着跡が生じ難い表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系基材2にゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着層3が積層されており、ゴム系樹脂成分が、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーであり、粘着付与樹脂がパラフィン系オイルを含有し、粘着層は、ゴム系樹脂成分100重量部に対して、パラフィン系オイルを5〜40重量部の範囲で含有する、表面保護フィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止するための表面保護フィルムに関し、特に、ポリオレフィン系基材の片面にゴム系粘着剤層が積層されている表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護フィルムが仮着されていることが多い。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹脂板または各種銘板などの様々な被着体、中でも塗装鋼板や塗装樹脂板の表面に、加工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するために、表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
この種の表面保護フィルムは、フィルム基材の片面に粘着剤層を積層した構造を有する。上記フィルム基材としては、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルム基材が用いられている。表面保護フィルムは、被着体表面に上記粘着剤層の粘着力を利用して貼付され、被着体表面の保護を図る。被着体が使用される際には、表面保護フィルムは被着体表面から剥離されることになる。従って、表面保護フィルムでは、被着体の表面に容易に仮着され得るのに適切な粘着性を有することが求められており、かつ使用後には、被着体表面から容易に剥離し得る程度の良好な剥離性を有することが求められている。さらに、剥離後の被着体表面に糊残りや、接着跡等が無いことも強く求められている。
【0004】
例えば、塗装を終えた自動車の車体や部品等はトラックや船に荷積みされて、海外等の遠隔地に移送されることがある。移送の際に、塵や埃、雨等の種々の浮遊物が塗膜に付着し、塗膜が汚れたり、変色することがあった。また、衝突物により塗膜が損傷することもあった。
【0005】
そこで、このような塗膜の汚染、変色、損傷等を防止するために、塗膜表面に表面保護フィルムを仮着し、海外等の遠隔地への移送が行われている。
【0006】
この種の塗膜保護用の表面保護フィルムもまた、フィルム基板の片面に粘着剤層が積層された構造を有する。そして、このフィルム基板としては、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられている。
【0007】
上記塗装鋼板などの塗膜の表面保護に用いられる表面保護フィルムや、様々な物品を保護するための表面保護フィルムは、一般に、手貼りにより、保護対象表面に仮着され、使用に先立ち剥離される。
【0008】
従って、表面保護フィルムには、1)初期接着力が十分であり、2)接着力の経時安定性が良好であり、3)風圧によって被着体から剥離し難く、さらに4)剥離時には被着体から容易に剥離でき、5)剥離後に被着体に糊残りが生じ難く、かつ6)接着跡が形成され難いことが求められる。
【0009】
下記の特許文献1には、基材の表面に粘着剤層が積層されており、該粘着剤層としてポリイソブチレンを用いた自動車塗膜保護用の表面保護フィルムが開示されている。ここでは、ポリイソブチレンを粘着剤層に用いることにより表面保護フィルムの性能を高め得ると示されている。しかしながら、ポリイソブチレン系粘着剤は、接着力の経時安定性及び剥離作業性においては優れているものの、凝集力が比較的低い。よって、耐熱、耐湿試験後に表面保護フィルムを塗装鋼板から剥離すると、糊残りが生じ易かった。すなわち、上記5)の糊残りについては改良の余地があった。
【0010】
他方、下記の特許文献2には、スチレン系エラストマーからなる粘着剤層を用いた表面保護フィルムが開示されている。ここでは、上記粘着剤層の弾性率を制御することにより、1)初期接着力が十分な範囲とされ、かつ2)接着力の経時安定性が高められるとされている。しかしながら、4)剥離作業性に関しては、ポリイソブチレンを粘着剤層に用いた表面保護フィルムよりも劣っていた。
【0011】
また、ソフトセグメントのエラストマー部分に共役ジエンが用いられており、最後に水素添加されているが、工業的には、水素添加を完全に100%とすることが困難であるため、耐熱性も十分ではなかった。
【0012】
他方、下記の特許文献3には、基材の表面に粘着剤層が積層されており、該粘着剤層がスチレン−イソブチレンブロック共重合体100重量部と、300重量部以下の軟化剤と、0〜20重量部の粘着付与樹脂とを含む表面保護シートが開示されている。特許文献3では、この構成により、天然ゴムベースの粘着剤層や他のスチレン系エラストマーの粘着剤層の場合と比べて、70℃の高温下に晒されても粘着力が安定であり、さらに押出加工性に優れているとされている。
【0013】
しかしながら、特許文献3では、上記軟化剤や上記粘着付与樹脂として多くの材料が記載されているものの、使用する粘着付与樹脂の種類によっては、耐熱、耐湿試験後に表面保護フィルムを塗装鋼板から剥離したときに、表面保護フィルムの端部や貼付時に表面保護フィルムに皺が生じていた箇所等において、被着体に接着跡や糊残りが著しく形成されることがあった。
【特許文献1】特開平6−73352号公報
【特許文献2】特開2001−234149号公報
【特許文献3】特許第3887402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、初期接着力及び接着力の経時安定性に優れており、風圧によって被着体から剥離し難く、剥離時には被着体から容易に剥離でき、剥離後に被着体に糊残りが生じ難く、接着跡が形成され難い表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着層が積層されている表面保護フィルムであって、前記ゴム系樹脂成分が、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーであり、前記粘着付与樹脂がパラフィン系オイルを含有し、前記粘着層は、前記ゴム系樹脂成分100重量部に対して、前記パラフィン系オイルを5〜40重量部の範囲で含有し、前記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下であり、かつ70℃で2×10Pa以上であることを特徴とする、表面保護フィルムが提供される。
【0016】
本発明に係る表面保護フィルムのある特定の局面では、前記粘着層に、オレフィン系オリゴマーがさらに含有されている。より好ましくは、前記オレフィン系オリゴマーは、前記ゴム系樹脂成分100重量部に対して10重量部以下の割合で前記粘着層に含有される。
【0017】
本発明の表面保護フィルムの他の特定の局面では、上記表面保護フィルムとして、特に、塗膜保護用シートとして好適に用いられる表面保護フィルムが提供され、前記ポリオレフィン系基材が耐候剤を含み、かつ前記ポリオレフィン系基材の波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下とされている。この場合には、塗膜保護用の表面保護フィルムが自動車等の塗膜に仮着されて移送される際に、表面保護フィルムが太陽光等に晒された場合でも表面保護フィルムの温度上昇が抑制され、かつポリオレフィン系基材を通過して粘着層に至る紫外線量が低減されるため、ポリオレフィン系基材及び粘着層が劣化し難い。従って、塗膜から表面保護フィルムを剥離する際に塗膜表面に糊残りがより一層生じ難い。さらに、表面保護フィルムを通過して塗膜に至る紫外線量も低減されるため、紫外線による塗膜の劣化を抑制することもできる。
【0018】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0019】
本願発明者らは、ポリオレフィン系基材の表面に粘着層が積層されている表面保護フィルムについて鋭意検討した結果、ゴム系樹脂成分としてスチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーを用いて、かつ上記粘着層に、上記ゴム系樹脂成分100重量部に対して、粘着付与樹脂としてのパラフィン系オイルを5〜40重量部の範囲で含有させれば、上記課題を達成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0020】
(ゴム系樹脂成分)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層は、ゴム系樹脂成分を含む。
【0021】
上記ゴム系樹脂成分は、上記のように、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体である。言い換えると、下記の(1)、(2)のスチレン系エラストマーである。
【0022】
(1)スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。このスチレン系エラストマーとしては、(A)−(B)ブロック共重合体を主骨格とする限り、特に限定されず、例えばA−B、A−B−A、(A−B)または(A−B)Xなどで表わされる共重合体が挙げられる。なお、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0023】
(2)スチレン系重合体ブロック(A)とスチレン及びイソブチレンのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。このようなスチレン系エラストマーとしては、下記の(2−1)〜(2−4)が挙げられる。
【0024】
(2−1)ブロック(A)とブロック(B’)とが結合したもの:A−B’ブロック共重合体
(2−2)スチレンとイソブチレンの内スチレンが漸増するテーパーブロック(G)を含むもの:A−B’−Gブロック共重合体
(2−3)上記テーパーブロック(G)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B’−Aブロック共重合体
(2−4)(2−1)〜(2−3)の繰り返しやこれらが任意の割合で結合したもの:(A−B’)、(A−B’)X、(A−B’−G)X、(A−B’−A)Xなど。
【0025】
なお、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤による残基である。
【0026】
上記(2)のスチレン系エラストマーにおいては、スチレンと、イソブチレンとの構成成分の含有割合は、重量比で5:95〜60:40の範囲が好ましく、より好ましくは7:93〜40:60の範囲である。スチレンの含有割合が5重量%未満では、粘着層の凝集力が低下し、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じるおそれがあり、60重量%を超えると、粘着力が不足し、被着体への貼付が困難なことがある。
【0027】
上記(2)のスチレン系エラストマーのスチレン系エラストマーにおいて、上記テーパーブロック(G)を含む構成では、スチレン系エラストマーを構成している全モノマー構成中のブロック(A)におけるスチレン含有量とテーパーブロック(G)におけるスチレン含有量との合計であるスチレン含有割合の合計は5〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜40重量%の範囲、さらに好ましくは5〜25重量%の範囲である。ブロック(A)及びテーパーブロック(G)のスチレンの合計の含有割合が全モノマー中5重量%未満では、粘着層の凝集力が低下し、表面保護フィルムを剥離した際に被着体に糊残りが生じることがあり、50重量%を超えると、粘着層の粘着力が不足し、被着体への貼付が困難なことがある。スチレン系エラストマーを構成している全モノマー構成中のブロック(A)におけるスチレン含有割合は、3重量%以上が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。
【0028】
上記スチレン系エラストマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、30000〜400000の範囲が好ましく、より好ましくは50000〜200000の範囲である。重量平均分子量が30000未満では、粘着層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。重量平均分子量が400000を超えると、粘着力が不足するとともに、粘着層を構成する粘着剤組成物の調製や表面保護フィルムの製造時に、溶液粘度や溶融粘度の増大といった支障を生じることがある。
【0029】
(粘着付与樹脂)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層は、上記特定のゴム系樹脂成分に加えて、粘着付与樹脂をさらに含む。
【0030】
また、上記粘着層は、粘着付与樹脂としてパラフィン系オイルを含む。該パラフィン系オイルは、上記ゴム系樹脂成分100重量部に対して5〜40重量部の範囲で粘着層に含有される。パラフィン系オイルが5重量部未満であると、粘着層の剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。40重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムを被着体から剥離し難くなり、また剥離後に糊残りを生じ易くなる。
【0031】
本願発明者らは、上記粘着付与樹脂としてパラフィン系オイルを上記特定の割合で粘着層に配合することによって、耐熱、耐湿試験後に表面保護フィルムを塗装鋼板から剥離したときに、表面保護フィルムの端部や、貼付時に表面保護フィルムに皺が生じていた箇所等において接着跡が形成され難いことを見出した。この接着跡の発生メカニズムは、表面保護フィルム中の粘着付与樹脂の移行や、塗膜の水蒸気の吸収に伴う塗膜の膨れにあると考えられ、特にパラフィン系オイルは塗膜に移行し難いために、接着跡が生じ難くなると考えられる。
【0032】
本発明では、パラフィン系オイルに加えて、該パラフィン系オイル以外の粘着付与樹脂を用いてもよい。
【0033】
上記パラフィン系オイル以外の粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液状ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン等が挙げられる。具体的には、テルペン系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン、液体ポリイソブチレン樹脂としては、BASF社製、商品名:グリソパール、ポリブテンとしては出光興産社製、商品名:出光ポリブテンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記粘着付与樹脂のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、300〜5000の範囲が好ましく、より好ましくは300〜1500の範囲である。更に好ましくは300〜1000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると、粘着層の凝集力が低下するため、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。一方、重量平均分子量が5000を超えても、ゴム系樹脂成分との相溶性が悪くなり、表面保護フィルムを剥離する際に被着体に糊残りが生じることがある。
【0035】
粘着層がパラフィン系オイル以外の粘着付与樹脂を含む場合には、粘着層は、ゴム系樹脂成分100重量部に対して、パラフィン系オイルとパラフィン系オイル以外の粘着付与樹脂を合計で5〜40重量部の範囲で含むことが好ましい。より好ましくは10〜30重量部である。5重量部未満では、粘着層の剪断貯蔵弾性率が高くなりすぎることがあり、さらに被着体に対する粘着力が不足することがある。40重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムを被着体から剥離し難くなり、また剥離後に糊残りを生じ易くなる。
【0036】
(オレフィン系オリゴマー)
本発明に係る表面保護フィルムの粘着層には、好ましくは、ゴム系樹脂成分及び粘着付与樹脂に加えて、オレフィン系オリゴマーがさらに含有される。
【0037】
ゴム系樹脂成分及び粘着付与樹脂にオレフィン系オリゴマーを添加すると、高温時(70℃)の粘着層の弾性率が向上し、粘着層の凝集力も向上する。また、ポリオレフィン基材と粘着層との界面接着力が向上し、高温下での剥離時に糊残りがより一層生じ難くなる。
【0038】
上記オレフィン系オリゴマーとしては、エチレン系オリゴマー、プロピレン系オリゴマー等が挙げられる。ここで言うオリゴマーとはGPCにより求めたポリスチレン換算の数平均分子量が1万程度以下のものを言う。
【0039】
上記エチレン系オリゴマーとしては、例えば、エチレンのホモオリゴマー、エチレン−アクリル酸オリゴマー、エチレン−酢酸ビニルオリゴマー、エチレン−無水マレイン酸オリゴマー等が挙げられる。具体的には、エチレンのホモオリゴマーとしては、Honeywell社製、製品名:A−C6,6A、三井化学社製、製品名:エクセレックス、三洋化成社製、製品名:サンワックス、クラリアント社製、商品名:リコセン PE、エチレン−アクリル酸オリゴマーとしては、Honeywell社製、製品名:A−C540、エチレン−酢酸ビニルオリゴマーとしては、Honeywell社製、製品名:A−C400、エチレン−無水マレイン酸オリゴマーとしては、Honeywell社製、製品名:A−C573A等が挙げられる。
【0040】
上記プロピレン系オリゴマーとしては、例えば、プロピレンのホモオリゴマー、プロピレン−エチレンのオリゴマー、プロピレン−無水マレイン酸のオリゴマー等が挙げられる。プロピレンのホモオリゴマーとしては、三洋化成社製、商品名:ビスコール、クラリアント社製、商品名:リコセン PP6102,6050M、プロピレン−エチレンのオリゴマーとしては、クラリアント社製、商品名:リコセン PP4202,1302,1502,1602、プロピレン−無水マレイン酸のオリゴマーとしては、クラリアント社製、商品名:リコモント等が挙げられる。
【0041】
上記オレフィン系オリゴマーは、ゴム系樹脂成分100重量部に対して10重量部以下の割合で粘着層に含有されることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10重量部の範囲、さらに好ましくは1〜6重量部の範囲である。オレフィン系オリゴマーを含まない場合には、被着体に糊残りが生じ易くなり、オレフィン系オリゴマーを含む場合でも、オレフィン系オリゴマーが少なすぎると、オレフィン系オリゴマーの添加効果が小さいために被着体に糊残りが生じ易くなる。オレフィン系オリゴマーが多すぎると、ゴム系樹脂成分との相溶性が悪くなり、被着体に対する粘着力の経時安定性が悪くなることがある。
【0042】
また、本発明で使用するオレフィン系オリゴマーは、添加されるゴム系樹脂成分に相溶することが好ましい。オレフィン系オリゴマーとゴム系樹脂成分との相溶性を制御することにより、粘着力の経時安定性が高められ、経時後でも糊残りが極めて生じ難くなる。
【0043】
ゴム系樹脂成分とオレフィン系オリゴマーとの相溶性は、例えば以下の方法により評価することができる。
【0044】
ゴム系樹脂成分100重量部にオレフィン系オリゴマー5重量部を溶融ブレンドし、厚み1mmのプレスシートを作製する。JIS K 7105に準じて、光路長10mmのセルを使用し、流動パラフィン中で上記プレスシートにおけるヘイズを測定する。ヘイズが20%以下である場合に相溶性を有するものとし、ヘイズが20%を超える場合に相溶性を有しないものとする。
【0045】
(粘着層に配合される他の成分)
本発明に係る表面保護フィルムでは、必要に応じて、粘着性能を阻害しない範囲で、上記粘着層に耐光剤や酸化防止剤などの安定剤や接着昂進防止剤などが添加されてもよい。
【0046】
上記耐光剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の酸化防止剤が挙げられる。
【0047】
上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
【0048】
(ポリオレフィン基材)
上記ポリオレフィン系基材を構成するポリオレフィンについては特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンやポリオレフィンにオレフィン系エラストマーを混合したものなどを用いることができる。
【0049】
上記ポリオレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、20〜100μmが好ましい。20μm以下では、例えば塗膜のような被着体の保護性能を十分に発揮できないことがあり、100μm以上では、コストが高く生産が困難なことがある。
【0050】
また、粘着層が上記オレフィン系オリゴマーを含む場合には、ポリオレフィン系基材に用いられるオレフィン系樹脂としては、上記オレフィン系オリゴマーと良好に相溶するものが好ましい。この場合、ポリオレフィン系基材と粘着層との界面接着力すなわち、ポリオレフィン系基材に対する粘着層のアンカー性がより一層高められる。
【0051】
相溶性に優れているオレフィン系樹脂とオレフィン系オリゴマーの組み合わせとしては、プロピレン系ポリマー(ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)とプロピレン系オリゴマー、プロピレン系ポリマー(ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)とエチレン系オリゴマー、エチレン系ポリマーとエチレン系オリゴマー等が挙げられる。
【0052】
特に、自動車用の塗膜保護用途に多用されているポリプロピレン系基材に対して、プロピレン系オリゴマーを含む粘着層を適用すると、プロピレン系オリゴマーが少量でも基材と粘着層との界面接着力が顕著に高められる。
【0053】
本発明においては、ポリオレフィン系基材中には、この分野で通常配合される公知の添加剤が配合されることは任意である。添加剤としては上記粘着層に添加され得る耐光剤や酸化防止剤などの安定剤のほか、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、顔料等が例示できる。例えば自動車用塗膜を保護する表面保護フィルムのように、紫外線に晒されるような表面保護フィルムの場合には、好ましくは、ポリオレフィン系基材に耐候剤が配合される。
【0054】
ポリオレフィン系基材に配合される耐候剤としては、紫外線遮蔽剤及び/または紫外線安定化剤が好ましく用いられる。
【0055】
上記紫外線遮蔽剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数のものをブレンドして用いてもよい。なかでも、紫外線遮蔽性に優れているため、酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0056】
上記紫外線安定化剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定化剤が挙げられる。これらは、1種のみが用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
【0057】
(表面保護フィルム)
本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、−30℃で4×10Pa以下とされている。より好ましくは、3.5×10Pa以下である。
【0058】
表面保護フィルムが被着体に仮着された状態で、冬場に屋外で保管された場合には、表面保護フィルムの温度は0℃を下回ることもある。この場合、従来の表面保護フィルムでは、表面保護フィルムの粘着力が低下し、表面保護フィルムが被着体から自然に剥がれることがあった。さらに、貼付後にキャリアカー等で輸送する際に風圧によって表面保護フィルムが剥がれ、再度貼り直しをしなければならないこともあった。
【0059】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、冬場に屋外で保管された際の表面保護フィルムの自然剥離現象及び輸送時の風圧による剥がれが、−5℃での粘着層と被着体との保持力と相関することを見出した。具体的には、−5℃での粘着層と被着体との保持力を評価し、表面保護フィルムの荷重40gの90°保持力評価時の剥離速度が0.3mm/s以下であれば、冬場に屋外で保管した際に表面保護フィルムが被着体から剥離せず、仮着状態を十分に維持し、且つ輸送時に風圧で剥がれ難いことが明らかとなった。
【0060】
さらに、−5℃での粘着層と被着体との保持力は、−30℃における剪断貯蔵弾性率と密接に関連していることも見出した。すなわち、上記−30℃における剪断貯蔵弾性率が、冬場に屋外で保管した際の表面保護フィルムの自然剥離現象及び輸送時の風圧による剥がれに密接に関連していることは、本願発明者により初めて見出されたものであり、この表面保護フィルムの−30℃における剪断貯蔵弾性率を特定の値、すなわち、4×10Pa以下とすれば、冬場に屋外で保管した際に表面保護フィルムが被着体から剥離せず、仮着状態を十分に維持し、且つ輸送時の風圧による剥がれが生じ難いことがわかった。
【0061】
すなわち、周波数10Hzにおける−30℃での剪断貯蔵弾性率を上記特定の範囲とすることにより、特に初期粘着力が良好となるとともに、冬場に屋外で保管された際に表面保護フィルムが被着体から剥離することなく仮着状態を十分に維持し、輸送時の風圧によっても表面保護フィルムが極めて剥がれ難くなる。
【0062】
本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着層の10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、70℃で2×10Pa以上とされている。70℃での剪断貯蔵弾性率が2×10Pa以上である場合には、粘着力の経時安定性により一層優れ、経時により粘着力がより一層変動し難い。70℃での剪断貯蔵弾性率が2×10Pa未満であると、経時により粘着力が変動することがある。
【0063】
また、本発明に係る表面保護フィルムでは、粘着層の周波数10Hzにおける引張貯蔵弾性率は、−100℃で2.5×10Pa以上とされていることが好ましい。−100℃での引張貯蔵弾性率を2.5×10Pa以上とすることにより、人の手により円滑に被着体から剥離することができ、糊残りも生じ難い。
【0064】
本発明においては、上記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で2×10〜5×10Paの範囲とされていることが好ましい。5×10Paを超えると、粘着力不足により輸送中に表面保護フィルムが被着体から剥離し易くなり、2×10を下回ると、剥離工程における作業性が悪くなったり、剥離時に糊残りしやすくなるおそれがある。
【0065】
粘着層の周波数10Hzにおける−100℃における引張貯蔵弾性率、及び23℃における剪断貯蔵弾性率を上記特定の範囲とすることで、表面保護フィルムの(1)初期接着力、(2)接着力の経時安定性及び(4)剥離作業性をより一層良好なものとすることができる。
【0066】
本発明において、例えば自動車用塗膜などを保護するのに好適な表面保護フィルムは、前述した耐候剤を含むポリオレフィン系基材を有し、ポリオレフィン系基材の波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下であり、上述したゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着層を有する表面保護用フィルムである。
【0067】
塗膜保護用フィルム、特に自動車用塗膜保護用フィルムでは、波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下に設定されていることによって、十分な耐候性を有するものとなる。好ましい紫外線透過率は1%以下である。このような範囲を達成するには、紫外線遮蔽剤や紫外線吸収剤の配合量と基材厚みとを考慮しながら、表面保護フィルムを設計すればよい。なお、塗膜面の温度上昇を抑制できることから、酸化チタン等の熱線反射機能を併せ持った紫外線遮蔽剤を配合すると効果的である。
【0068】
本発明に係る塗膜保護用の表面保護フィルムは粘着層を介して塗膜に仮着される。例えば、仮着された表面保護フィルムに紫外線が照射された場合には、ポリオレフィン系基材を通じて塗膜に貼付された粘着層に紫外線が至ることになる。ポリオレフィン系基材の紫外線透過率が上記特定の範囲とされている場合には、ポリオレフィン系基材のみならず、塗膜に貼付された粘着層が劣化し難い。よって、塗膜に貼付された粘着層が劣化し難いので、塗膜から表面保護フィルムを剥離する際に塗膜表面に糊残りが生じ難い。さらに、表面保護フィルムを通過して塗膜に至る紫外線量も低減されるため、紫外線によって塗膜も劣化し難い。
【0069】
本発明の表面保護フィルムは、上記のように、塗膜保護用の表面保護フィルムとして好適に用いられるが、塗膜に限らず、様々な被着体に適用することができる。すなわち、アクリル系樹脂などの合成樹脂や金属などの極性を有する材料からなる被着体表面の保護にも好適に用いることができる。その場合においても、糊残りが生じ難く、良好な剥離性能を得ることができる。すなわち、本発明の表面保護フィルムが適用される被着体表面は特に限定されるものではない。
【0070】
表面保護フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層を構成する粘着剤組成物と、ポリオレフィン系基材を構成する組成物とを共押出することにより積層一体化する方法、あるいは成膜されたポリオレフィン系基材上に粘着剤組成物をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
【0071】
ポリオレフィン系基材と粘着剤組成物とを共押出により積層一体化する方法としては、インフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられ得る。粘着剤組成物をポリオレフィン系基材にラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出コーティング法などが用いられる。これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。また、溶液塗工法が行われる場合には、基材層と粘着層との間の接合強度を高めるために、ポリオレフィン系基材に予めプライマー塗布などし、表面処理を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0072】
本発明に係る表面保護フィルムでは、ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着層が積層されており、ゴム系樹脂成分が上記特定のスチレン系エラストマーであり、該ゴム系樹脂成分100重量部に対して、粘着付与樹脂としてのパラフィン系オイルが5〜40重量部の範囲で上記粘着層に含有されているので、上記のように(1)初期接着力に優れ、被着体表面に対して確実に貼付することができ、それによって被着体表面への塵埃の付着を防止したり、傷つきを防止することができる。また、表面保護フィルムは、(2)接着力の経時安定性が高められると共に、(3)輸送時等の風圧によって被着体から剥離し難く、(4)剥離時には作業性が良好であり、さらに(5)剥離後に被着体に糊残りが生じ難く、(6)接着跡も形成され難い。従って、(1)初期接着力、(2)接着力の経時安定性、(3)風圧による剥がれ性能、(4)剥離作業性、(5)糊残り及び(6)接着跡のいずれにおいても優れた表面保護フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
図1は、本発明の一実施形態としての表面保護フィルムを示す略図的正面断面図である。以下の実施例及び比較例では、図1に示すように、ポリオレフィン系基材2の片面に粘着層3が積層されている表面保護フィルム1を作製し、評価した。
【0075】
以下、上記表面保護フィルムの具体的な実施例及び比較例を説明する。
【0076】
(使用した材料)
〔ゴム系樹脂成分〕
SIBS(1);カネカ社製、品番:シブスター 102T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体
SIBS(2);カネカ社製、品番:シブスター 073T、スチレンとイソブチレンのブロック共重合体
【0077】
〔粘着付与樹脂〕
PA95;神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA95(重量平均分子量 400)
PA100;神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC PA100(重量平均分子量 600)
P470;神戸油化学社製パラフィン系プロセスオイル、商品名:SYNTAC P470(重量平均分子量 1400)
グリソパール V190;BASF社製、液状ポリイソブチレン樹脂、商品名:グリソパール V190(重量平均分子量 3400)
B15;BASF社製、品番:オパノールB15、ポリイソブチレン樹脂(重量平均分子量 150000)
クリアロンLH;ヤスハラケミカル社製、水添テルペン樹脂、商品名:クリアロンLH(重量平均分子量 1000)
【0078】
〔オレフィン系オリゴマー〕
ビスコール660P;三洋化成社製、プロピレン系オリゴマー
〔ポリオレフィン系基材材料〕
PB170A;サンアロマー社製ポリプロピレン
PEX6800A;東京インキ社製酸化チタン、商品名:PEX6800A White
UVT−52;東京インキ社製ヒンダードアミン系光安定化剤、商品名:PPM UVT−52
【0079】
(実施例1)
スチレン系エラストマーとしてのSIBS(1)100重量部、粘着付与樹脂としてのPA95 20重量部、及びオレフィン系オリゴマーとしてのビスコール660P 2重量部とを含む粘着剤組成物と、PB170A 100重量部、PEX6800A 20重量部、及びUVT−52 3重量部をドライブレンドしてなるポリプロピレン基材用組成物とを、Tダイ法により共押出し、50μmの厚みのポリプロピレン基材上に10μmの厚みの粘着層が積層された表面保護フィルムを得た。
【0080】
(実施例2,3及び比較例1〜6)
使用したゴム系樹脂成分及び粘着付与樹脂並びにそれらの配合割合を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0081】
(評価)
上記のようにして得られた各表面保護フィルムについて、以下の項目を評価した。
【0082】
(1)剪断貯蔵弾性率
各粘着層の剪断貯蔵弾性率を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)により、周波数10Hz、昇温速度6℃/分で−50℃〜+150℃の範囲で測定し、−30℃、23℃及び70℃における各剪断貯蔵弾性率を求めた。
【0083】
(2)引張貯蔵弾性率
各粘着層の引張貯蔵弾性率を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御社製、品番:DVA200)により、周波数10Hz、昇温速度6℃/分で−100℃〜+50℃の範囲で測定し、−100℃における引張貯蔵弾性率を求めた。
【0084】
(3)初期粘着力
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度でそれぞれ貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
【0085】
(4)初期剥離力
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度でそれぞれ貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を30m/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期剥離力とした。
【0086】
(5)経時粘着力
各表面保護フィルムを、(4)の初期剥離力測定の場合と同様にして自動車用塗装鋼板にそれぞれ貼り付け、その状態で70℃のギアオーブン中に7日間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
【0087】
(6)被着体の汚染評価
(接着跡)
各表面保護フィルムを、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、表面保護フィルムに皺を入れて300mm/分の速度でそれぞれ貼り付けた。しかる後、50℃及び相対湿度95%の恒温・恒湿オーブン中に7日間放置し、表面保護フィルムを剥離した。表面保護フィルムの皺部が貼付されていた部分における上記鋼板表面の段差を、表面形状測定装置(VE1000、日本Veeco社製)を用いて測定し、接着跡を下記評価基準で評価した。
【0088】
〔接着跡の評価基準〕
○:段差0.25μm未満
△:段差0.25μm以上0.4μm未満
×:段差0.4μm以上
【0089】
(糊残りA)
前記(5)経時粘着力測定後の塗膜面における糊残りの有無を下記評価基準で評価した。
【0090】
(糊残りB)
各表面保護フィルムを、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)の表面を紙やすり(#1200)により荒らした塗膜に、2kgの圧着ローラーを用いて、300mm/分の速度でそれぞれ貼り付け、その状態で30分間放置した。次に70℃の恒温槽中に7日間放置した後、80℃に加熱した状態で25mm幅における180度剥離を300mm/分の速度で行った。このときの塗膜面における糊残りの有無を下記評価基準で評価した。
【0091】
〔糊残りA,Bの評価基準〕
○:糊残り無し
△:ごくわずかに糊残りがみられた
×:糊残り発生
【0092】
(7)保持力
各表面保護フィルム25mm幅を、室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)に、2kgの圧着ゴムローラーを用いてそれぞれ貼付し、5℃の環境下に30分放置した。しかる後、40gの重りを用いて90゜保持力を評価し、剥離距離と時間により剥離速度を算出した。
【0093】
(8)風圧による剥がれ試験
各表面保護フィルムを100mm幅にカットし、2kgの圧着ローラーを用いて、自動車用塗装鋼板(アルキッド・メラミン塗膜、表面グロス80%)にそれぞれ貼り付け、その状態で−5〜5℃の環境温度雰囲気下に30分間放置した。
【0094】
次いで自動車ルーフに固定されたキャリアの上に、上記で得られた鋼板を取付け、−5〜5℃の環境温度において80km/hの速度で高速道路を2時間走行した後、フィルムが剥がれた長さを測定した。これを1サンプル10回評価し、10mm以上剥がれた回数を算出し、風圧による剥がれ性能を下記評価基準で評価した。
【0095】
〔風圧による剥がれ性能の評価基準〕
○:剥がれた回数が2回以下
△:剥がれた回数が3回以下
×:剥がれた回数が4回以上
結果を下記の表1に示す。
【0096】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態としての表面保護フィルムの略図的正面断面図。
【符号の説明】
【0098】
1…表面保護フィルム
2…ポリオレフィン系基材
3…粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系基材にゴム系樹脂成分と粘着付与樹脂とを含む粘着層が積層されている表面保護フィルムであって、
前記ゴム系樹脂成分が、スチレン系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B’)とのブロック共重合体、及び/またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーであり、
前記粘着付与樹脂がパラフィン系オイルを含有し、
前記粘着層は、前記ゴム系樹脂成分100重量部に対して、前記パラフィン系オイルを5〜40重量部の範囲で含有し、
前記粘着層の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率が、−30℃で4×10Pa以下であり、かつ70℃で2×10Pa以上であることを特徴とする、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着層が、オレフィン系オリゴマーをさらに含む、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層は、前記ゴム系樹脂成分100重量部に対して、前記オレフィン系オリゴマーを10重量部以下の割合で含む、請求項2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
塗膜保護用フィルムとして用いられる表面保護フィルムであって、前記ポリオレフィン系基材が耐候剤を含み、かつ前記ポリオレフィン系基材の波長190〜370nmの範囲における紫外線透過率が10%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−57469(P2009−57469A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225932(P2007−225932)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】