説明

表面保護フィルム

【課題】 強力な粘着力を有しても、ロール状に巻き取る際にはシワなく巻き取る事ができ、かつ、ロール状から、再び繰り出して使用する際、容易に展開することのできる表面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】 基材層と粘着層とを有する表面保護フィルムであって、前記基材層が、プロピレン系樹脂(A1)と、エチレン系樹脂(A2)と、メチルペンテン系樹脂(A3)とを含有し、該エチレン系樹脂(A2)が、前記(A1)、前記(A2)、前記樹脂(A3)の合計質量に対して5質量%以上で含まれる樹脂混合物を主成分とするものであり、且つ前記粘着層が、スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)を含有するものであることを特徴とする表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子分野、建築資材等で用いられる各種光学フィルム、各種樹脂板、ガラス板、金属板等の表面を保護する目的でその表面に貼着して、保管、運搬、後加工の際に被着体を傷付き、汚染等から守る表面保護フィルムに関する。特に、粘着力が強い表面保護フィルムでもロール状に巻き取る際、シワなく巻き取る事ができ、更には、ロール状の表面保護フィルムを展開する際に、容易に展開する事ができる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムに対する基本的な要求性能としては、前記した各種被着体に対し、シワや空気を巻き込むことなく一様に貼り付けられる貼着作業性に優れること、被着体の保管、搬送等の間に浮きや剥がれが生じない適度な粘着力を有すること、被着体の保管中の環境変化や後加工による粘着力の経時変化が少なく、容易に剥離可能で剥離後に被着体の表面を汚染することがない等が挙げられる。
【0003】
従来の表面保護フィルムとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等からなるフィルムを基材として、その片面にウレタン系、アクリル系、ゴム系等の粘着剤を塗工したものが知られている。しかしながら、これらの表面保護フィルムは、基材であるフィルムと粘着剤との密着性に劣る場合があったり、粘着剤自体の凝集力の低さが原因で被着体から剥離した際に粘着剤の一部が被着体の表面に残留したりする問題があった。また、フィルムに粘着剤を塗工して製造する表面保護フィルムは、基材であるフィルムの製造工程と粘着剤の塗工工程との最低2工程を必要とするため製造コストが高くなる問題、粘着剤の塗工工程で大量の溶剤を除去する必要があり環境負荷が高くなる問題等があった。
【0004】
上記の問題点を改善する方法として共押出積層法により、基材のフィルム層と粘着剤層とを同時に押出、積層した自己粘着型の表面保護フィルムが提案されている。このような表面保護フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなる基材層の片面に、スチレン系エラストマー、粘着付与剤等の樹脂組成物からなる粘着層を設けた共押出積層フィルム、熱可塑性樹脂を基材層とし、非晶性オレフィン共重合体と結晶性オレフィン系重合体及びスチレン系エラストマーからなる粘着層を設けた共押出積層フィルムが挙げられる。
【0005】
しかしながら、一般に、表面保護フィルムは、長尺状のフィルムをロール状に巻き取り製造されており、強粘着力となる粘着面を有する表面保護フィルムをロール状にした場合、粘着面が表面保護フィルムの背面(基材の粘着層面側の反対面)にも強力に粘着するためその状態からフィルムを繰り出す際、容易に展開することができる表面保護フィルムが望まれている。
【0006】
上記の課題点を改善する方法として、背面がポリエチレン系樹脂を主体とした表面保護フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、背面がプロピレン系(共)重合体及び炭素数4以上のα−オレフィンを主成分とするオレフィン系(共)重合体からなる組成物を用いた表面保護フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1、2で提供された表面保護フィルムではロール状からの展開性が不十分であり、またロール状に巻き取る際にシワが発生しやすい問題があり、更なる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−143998号公報
【特許文献2】特開2008−081709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、強力な粘着力を有しても、ロール状に巻き取る際にはシワなく巻き取る事ができ、かつ、ロール状から、再び繰り出して使用する際、容易に展開することのできる表面保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、表面保護フィルムの基材層にプロピレン系樹脂と、エチレン系樹脂と、メチルペンテン系樹脂との3つの成分を特定の配合比率で混合した樹脂を用い、更に粘着層に特定の樹脂を用いることにより、ロール状に巻き取る際、シワなく巻き取る事ができ、かつ、ロール状から再び繰り出して使用する際、容易に展開することのできる表面保護フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、基材層(A)と粘着層(B)とを有する表面保護フィルムであって、該基材層(A)がプロピレン系樹脂(A1)と、エチレン系樹脂(A2)と、メチルペンテン系樹脂(A3)とを含有し、該エチレン系樹脂(A2)が、前記プロピレン系樹脂(A1)、前記エチレン系樹脂(A2)、前記メチルペンテン系樹脂(A3)の合計質量に対して5質量%以上で含まれる樹脂混合物を主成分とし、且つ粘着層(B)が、スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)を含有することを特徴とする表面保護フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、拡散板、導光板、プリズム、ARフィルム、AGフィルム等の光学フィルム、各種樹脂板、ガラス板、金属板等に対し適度な粘着力で粘着し、高温環境にさらされたりしても、粘着力の経時変化が少なく、かつ、被着体からの浮きや剥がれがなく、被着体に反りを発生させることがない等の耐熱性に優れ、また、剥離後の被着体表面に目視確認できる糊残しが無く、さらに、ロール状にシワなく巻き取る事ができ、再び繰り出して使用する際も容易に展開する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の表面保護フィルムは、少なくとも基材層(A)と粘着層(B)とを有する多層フィルムである。
【0014】
本発明で表面保護フィルムの基材層(A)は、ロール状に巻き取る際のシワ発生の抑制とロール状からの繰り出し性を容易にするために、プロピレン系樹脂(A1)と、エチレン系樹脂(A2)と、メチルペンテン系樹脂(A3)とを混合し、且つ該エチレン系樹脂(A2)を一定量以上含有する樹脂混合物を主成分とすることを必須とする。
【0015】
前記プロピレン系樹脂(A1)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の表面保護フィルムを各種光学フィルム、樹脂板、ガラス板、金属板等に貼着された後、乾燥、加熱成型等の後加工に供されて高温環境下にさらされる用途で用いる場合や、ロール状に巻き取られ長期間保管する場合は、結晶性プロピレン系樹脂を用いることが好ましい。なお、本願において結晶性とはDSC(示差走査熱量測定)において95〜250℃の範囲で0.5J/g以上のピークを有することを言うものである。
【0016】
また、上記のプロピレン系樹脂(A1)は、メルトフローレート(以下、「230℃のMFR」という。;JIS K7210:1999に準拠して、230℃、21.18Nで測定した値)が0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、230℃のMFRが2.0〜15.0g/10分で、融点が125〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、被着体に貼着された後の乾燥、加熱成形等によって高温環境にさらされてもフィルムの収縮が少ないため、浮きや剥がれがなく、被着体に反りを発生させることもなく、また、積層フィルムの成膜性も向上する。また、密度は0.890〜0.910g/cmであることが好ましく、0.895〜0.905g/cmであることがより好ましい。
【0017】
また、特に、基材層(A)に用いるプロピレン系樹脂(A1)の一つとしてプロピレン−エチレンブロック共重合体を用い、基材層の表面を梨地状に改質してもよい。特にプロピレン単独重合体とプロピレン−エチレンブロック共重合体との混合樹脂を用いると、基材層の表面を梨地状とすることで粘着力を強く設計した際に起こりやすい、ロール状に巻き取る際のシワの発生を抑制することができ、また、ロール状で保管した際のブロッキングを軽減できる。ここでプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンとエチレンとをブロック重合した樹脂であって、基材層(A)に用いた場合に、該樹脂層の表面が梨地状になるものであればよく、特に限定されない。例えば、プロピレン単独重合体の存在下で、エチレンの重合、又はエチレン及びプロピレンの重合を行って得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、表面を梨地状にすることが容易であることから、エチレン由来成分含有率が8〜20質量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いることが好ましく、エチレン由来成分の含有率が10〜15質量%のプロピレン−エチレンブロック共重合体であることが好ましい。また、プロピレン−エチレンブロック共重合体の230℃のMFRは0.5〜15g/10分であることが押出加工しやすい点で好ましく、6〜10g/10分であることがより好ましい。
【0018】
また、基材層(A)に用いるプロピレン系樹脂(A1)の一つとして、結晶性プロピレン系重合体とエチレン・プロピレンゴム(以下、「EPR」という。)との混合樹脂を用いると、基材層の表面を梨地状に容易に改質することができる。このとき用いる結晶性プロピレン系重合体としては、汎用性の高いプロピレン単独重合体が好ましい。一方、このとき用いるEPRとしては、重量平均分子量が40万〜100万の範囲であるものがフィルム表面に凹凸を形成させて、表面を梨地状に改質できる点で好ましく、50〜80万の範囲であることがより好ましい。また、混合樹脂中のEPRの含有率は、5〜35質量%の範囲であることがフィルム表面を均質に梨地状に改質できる点で好ましい。この結晶性プロピレン系重合体とEPRとの混合樹脂のMFR(230℃)は、0.5〜15g/10分の範囲であることが押出加工しやすい点で好ましい。なお、前記EPRの重量平均分子量は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出した成分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって算出して求めたものである。また、前記混合樹脂中のEPRの含有率は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出されたEPRの抽出量より求めたものである。
【0019】
前記結晶性プロピレン系重合体とEPRとの混合樹脂の製造方法は、特に制限はなく、具体例として例えば、プロピレン単独重合体とエチレン・プロピレンゴムとを、それぞれ別々にチーグラー型触媒を用いて溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等により製造した後、両者を混合機にて混合する方法や、2段重合法により、1段目でプロピレン単独重合体を生成させた後、2段目においてこの重合体の存在下でEPRを生成させる方法等が挙げられる。
【0020】
前記チーグラー型触媒は、所謂チーグラー・ナッタ触媒であり、チタン含有化合物などの遷移金属化合物、またはマグネシウム化合物などの担体に遷移金属化合物を担持させることによって、得られる担体担持触媒と有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物の助触媒とを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0021】
前記エチレン系樹脂(A2)としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、上記のエチレン系樹脂(A2)は、メルトフローレート(以下、「190℃のMFR」という。;JIS K7210:1999に準拠して、190℃、21.18Nで測定した値)が0.05〜30.0g/10分であるものが押出成形が容易となることから好ましい。より好ましくは、190℃のMFRが0.1〜10.0g/10分のものであり、基材層の表面を梨地状に改質することができ、粘着力を強く設計した保護フィルムをロール状に巻き取る際に起こりやすい、シワの発生を抑制することができ、ロール状からの繰り出し性に優れる。更に、これらのエチレン系樹脂(A2)は融点が90〜135℃のものであることが好ましく、より好ましくは、融点が105〜130℃のものである。融点がこの範囲であれば、被着体に貼着された後の乾燥、加熱成形等によって高温環境に置かれてもフィルムの収縮が少ないため、被着体からの浮きや剥がれ、被着体の反りを抑制することができる。
【0023】
前記メチルペンテン系樹脂(A3)としては、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のメチルペンテン若しくはメチルペンテンを主成分とするモノマーを重合して得られた重合体であり、例えば、メチルペンテンの単独重合体、若しくは、メチルペンテンと共重合可能な他の化合物との共重合体が挙げられる。メチルペンテンと共重合可能な他の化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。これらは1種又は2種以上がメチルペンテン系重合体中に含まれてよい。
【0024】
このようなメチルペンテン系樹脂(A3)は、メルトフローレート(以下、「260℃のMFR」という。;ASTM D1238に準拠して、260℃、5kgで測定した値)が0.1〜300g/10分であるものが好ましく、より好ましくは、1〜200g/10分のものである。MFRが0.1g/10分未満になると、メチルペンテン系樹脂(A3)とプロピレン系樹脂(A1)とエチレン系樹脂(A2)との混ざりが悪化するため外観に劣るフィルムとなりやすい。一方、300g/10分を越えると、分子量が小さすぎるため機械的特性が低下し易くなる。
【0025】
本発明において、基材層(A)は前述のプロピレン系樹脂(A1)、エチレン系樹脂(A2)及びメチルペンテン系樹脂(A3)とを混合して得られる樹脂混合物であって、前記エチレン系樹脂(A2)の配合質量として、プロピレン系樹脂(A1)、エチレン系樹脂(A2)及びメチルペンテン系樹脂(A3)の合計質量に対して、5質量%以上含有する樹脂混合物を主成分とする。エチレン系樹脂(A2)の使用割合が5質量%未満である場合には、フィルムを巻き取る際にシワが発生しやすくなり、実用面で劣るものとなる。
【0026】
尚、本発明における「主成分とする」とのことは、各層における、特定の樹脂又はその混合物の、全体質量に対する当該特定の樹脂又はその混合物の質量割合が65質量%以上、好ましくは80質量%以上であることをいうものである。
【0027】
基材層(A)に用いる前記樹脂混合物において、得られる表面保護フィルムの巻き取り性、耐ブロッキング性等の性能を高いレベルで兼備できる点から、プロピレン系樹脂(A1)を10〜85質量%と、エチレン系樹脂(A2)を5〜50質量%と、メチルペンテン系樹脂(A3)を5〜85質量%とを混合したものであることが好ましく、特にプロピレン系樹脂(A1)を20〜85質量%と、エチレン系樹脂(A2)を5〜30質量%と、メチルペンテン系樹脂(A3)を10〜50質量%とを混合したものであることが好ましい。
【0028】
本発明の表面保護フィルムの粘着層(B)は、スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)を含有することを必須とする。特に、粘着層(B)を形成する樹脂成分中に、前記スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)を40質量%以上で含有する樹脂組成物であることが好ましく、50質量%以上で含有することがより好ましい。
【0029】
前記スチレン系エラストマー(B1)としては、スチレン系重合体ブロックとスチレンと共役ジエンとのランダム共重合体の二重結合部を水素添加したスチレン系ランダム共重合体や、一般式a−b−a、又はa−b〔aはスチレン系単量体の重合体ブロックであり、bは共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエン重合体中の二重結合部を水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックである〕で示されるスチレン系ブロック共重合体であって、共重合体中におけるスチレン系単量体由来構造と共役ジエン化合物由来構造の質量割合が、前者/後者=5/95〜60/40であるものが挙げられる。
【0030】
前記スチレン系エラストマー(B1)の原料として用いる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられ、工業的入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましい。
【0031】
前記ブロック共重合体(B2)としては、結晶性ポリオレフィンからなるブロック(I)と結晶性を有さないその他のブロック(II)として共役ジエン系重合体からなるブロックを有するものである。また、該共重合体の構成としては、(I−II)n1又は(I−II)n2−(I)(n1、n2は1以上の整数である。)で表される、ポリマー鎖の少なくとも1つの末端が結晶性オレフィンブロック(I)からなるものであることが好ましい。
【0032】
この様なブロック共重合体(B2)としては、例えば、特開平3−128957号公報や特開平8−231786号で提供されているものが挙げられる。具体的には、1,2−ビニル結合含有率の低い(例えば25%以下)ポリブタジエン重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体であって1,2−及び3,4−結合含有率が高い(例えば50%以上)重合体ブロックとからなる共重合体を合成し、これを水素添加することによって該ポリブタジエン部分をポリエチレンと類似の構造とすることで結晶性の重合体ブロックとしたもの等が挙げられる。
【0033】
前記ブロック共重合体(B2)の原料として用いる共役ジエン化合物としては、前述のスチレン系エラストマー(B1)に用いる共役ジエン化合物と同様のものを何れも例示することができ、工業的入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましい。
【0034】
前記スチレン系エラストマー(B1)やブロック共重合体(B2)の市販品としては、例えば、スチレン系ランダム共重合体として、スチレン−ブタジエンランダム共重合体水添物(以下、HSBRと略記する。)であるJSR株式会社製「ダイナロン1320P」が挙げられ、またスチレン系ブロック共重合体として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと略記する。)であるJSR株式会社製「SIS5200」、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略記する。)である「JSR株式会社製ダイナロン8600P、ダイナロン8601P」、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEPSと略記する。)であるクラレ株式会社製「セプトン2063、セプトン2004」等が挙げられ、また、ブロック共重合体(B2)としては、結晶性オレフィン−エチレン・ブチレン共重合体−結晶性オレフィンの構成を有するブロック共重合体(以下、CEBCと略記する。)であるJSR株式会社製「ダイナロン 6200P」等が挙げられる。
【0035】
本発明の表面保護フィルムの粘着層(B)に用いる非晶性α−オレフィン系重合体(B3)は、炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位を含有する重合体であって、示差走査熱量計(DSC)の−100〜250℃の測定範囲で、結晶の融解熱量が0.5J/g以上の融解ピーク、結晶化熱量が0.5J/g以上の結晶化ピークのいずれも観測されない重合体である。
【0036】
前記炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、直鎖状、分岐状のいずれのものでもよく、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、へプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ナノデセン−1、エイコセン−1等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチルペンテン−1等の分岐状のα−オレフィンなどが挙げられる。また、非晶性α−オレフィン系重合体(B3)は、これらのα−オレフィンを2種以上含有する重合体が好ましく、プロピレンに基づく単量体単位と炭素数4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを1種以上含有する重合体がより好ましい。また、非晶性α−オレフィン系重合体(B3)には、上記のα−オレフィン以外の単量体を含有していてもよい。このような単量体としては、例えば、エチレン、ポリエン化合物、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物等が挙げられる。非晶性α−オレフィン系重合体(B3)の中でも、非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体、非晶性プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体が好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体中のプロピレンに基づく単量体単位は、非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体の全単量体単位を100質量%とすると、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上で、さらに好ましくは90質量%以上ある。プロピレンに基づく単量体単位がこの範囲であれば、耐熱性が向上する。
【0038】
前記非晶性プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体中のプロピレンに基づく単量体単位は、非晶性プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体の全単量体単位を100質量%とすると、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。プロピレンに基づく単量体単位がこの範囲であれば、耐熱性が向上する。また、非晶性プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体中のエチレンに基づく単量体単位は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上である。エチレンに基づく単量体単位がこの範囲であれば、前記粘着層が比較的柔らかいものになり、被着体表面に凹凸がある場合でも、その凹凸に追従する形で密着するため、十分な粘着力が得られる。
【0039】
また、前記非晶性α−オレフィン系重合体(B3)の極限粘度[η]は0.1〜10.0dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜7.0dl/gである。さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、1より大きく4以下であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。非晶性α−オレフィン系重合体(B3)の極限粘度、分子量分布がこの範囲であると、耐熱性、透明性、粘着性が向上し、表面保護フィルムを貼着した被着体を長期保管したり、高温環境にさらされたりしても非晶性α−オレフィン系重合体(B2)中の低分子量成分が被着体表面に移行して被着体を汚染することがない。また、非晶性α−オレフィン系重合体(B3)は、オレフィン系重合体であることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体を粘着層に用いた場合のように、脱酢酸等の樹脂の変質による経時的な粘着力の増加がなく、長期にわたり安定した粘着力を維持することができる。
【0040】
前記非晶性α−オレフィン系重合体(B3)の製造方法としては、例えば、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法等を用いて、メタロセン系触媒により重合する方法が挙げられる。より好ましい製造方法としては、特開2002−348417号公報に開示された製造方法が挙げられる。
【0041】
本発明の粘着層(B)には、スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)の単独、若しくは、2種以上併用しても良い。また、結晶性オレフィン系重合体(B4)を混合することで、要求される粘着力に調整することができる。
【0042】
前記結晶性オレフィン系重合体(B4)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系重合体等が挙げられる。
【0043】
また、上記のプロピレン系重合体は、230℃のMFRが0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、230℃のMFRが2.0〜15.0g/10分であるものが好ましい。
【0044】
また、上記のエチレン系重合体は、190℃のMFRが0.5〜30.0g/10分であるものが押出成形が容易となることから好ましく、より好ましくは、190℃のMFRが2.0〜15.0g/10分のものである。
【0045】
本発明の表面保護フィルムは、上記のように基材層(A)と粘着層(B)との少なくとも2層から構成されるが、さらに基材層(A)と粘着層(B)間に中心層(C)を設けても構わない。中心層(C)に用いる樹脂としては、特に限定はないが、基材層(A)との親和性が良好である点からオレフィン系重合体を用いることが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−エチレン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の表面保護フィルムは、全フィルム厚さが20〜120μmのものが好ましい。全フィルムの厚さがこの範囲であれば、被着体の保護性、被着体の保管、搬送等の間に浮きや剥がれが生じない粘着特性、及び貼着・剥離等の作業性が良好となる。また、粘着層(B)の厚さは、3〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜25μmである。粘着層(B)の厚さがこの範囲であれば、被着体の保管、搬送等の間に浮きや剥がれが生じない粘着特性及び積層フィルムの成膜性が良好となる。
【0047】
本発明の表面保護フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、共押出積層法であることが特に好ましく、例えば、2台以上の押出機を用いて各樹脂層に用いる樹脂を溶融し、共押出ダイス法、フィードブロック法等の共押出法により溶融状態で積層した後、インフレーション、T−ダイ・チルロール法等の方法を用いてフィルム状に加工する方法が挙げられる。T−ダイ・チルロール法の場合、ゴムタッチロールやスチールベルト等とチルロール間で、溶融積層されたフィルムをニップして冷却してもよい。
【0048】
さらに、本発明の表面保護フィルムは、少なくとも1軸方向に延伸されていてもよい。延伸方法としては、縦あるいは横方向の1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、あるいはチューブラー法2軸延伸等の種々の方法を採用することができる。また、延伸工程はインラインでもあっても、オフラインであってもよい。1軸延伸の延伸方法としては、近接ロール延伸法でも圧延法でもよい。1軸延伸の延伸倍率としては、縦あるいは横方向に1.1〜80倍が好ましく、より好ましくは3〜30倍である。一方、2軸延伸の延伸倍率としては、面積比で1.2〜70倍が好ましく、より好ましくは縦4〜6倍、横5〜9倍、面積比で20〜54倍である。
【0049】
また、縦あるいは横方向の延伸工程としては、必ずしも1段延伸に限らず、多段延伸であってもよい。特に、逐次2軸延伸における縦1軸ロール延伸、縦1軸圧延延伸等の縦1軸延伸においては、厚み、物性の均一性等の点で多段延伸とすることが好ましい。さらに近接ロール延伸においては、フラット法、クロス法のいずれでも構わないが、幅縮みの低減が図れる多段の近接クロス延伸がより好ましい。延伸温度は、1軸延伸の場合、いずれの延伸方法においても80〜160℃が好ましく、1軸延伸でテンター延伸を使用する場合は、90〜165℃が好ましい。また、より好ましい延伸温度としては、それぞれ110〜155℃、120〜160℃である。一方、2軸延伸の場合、いずれの方法においても1軸延伸の場合と同様な延伸温度範囲が好ましい。また、延伸工程前に予熱部、延伸工程後に熱固定部を適宜設けてもよい。この場合、予熱部の温度は60〜140℃、熱固定部の温度は90〜160℃の範囲が好ましい。
【0050】
本発明の表面保護フィルムは、少なくとも1軸方向への延伸し、熱固定により構造安定化を図ることで、オレフィン系樹脂を主成分とした基材層(A)の配向結晶化により、さらに耐熱性が向上し、粘着力の経時変化が小さくなるので好ましい。
【0051】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、粘着層(B)に粘着付与剤を適宜添加してもよい。粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などの、一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用できる。これらの粘着付与剤は単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0052】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、ポリエチレンワックス等のブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐電防止剤、防曇剤等、着色剤等を適宜添加してもよい。これらの添加剤としては、オレフィン系重合体用の各種添加剤を使用することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0054】
(合成例)
[非晶性α−オレフィン系重合体(非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体)の合成]
攪拌機を備えた100Lステンレス製重合容器中で、水素を分子量調整剤として用いて、プロピレンとブテン−1を連続的に共重合させて、非晶性α−オレフィン重合体として非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体を得た。具体的には、重合器の下部から、重合溶媒としてヘキサンを供給速度100L/時間で、プロピレンを24.00kg/時間で、ブテン−1を1.81kg/時間で連続的に供給し、重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lを保持するように、反応混合物を連続的に抜き出した。また、重合器の下部から、触媒成分として、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、各々連続的に供給した。共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに、冷却水を循環させることによって45℃で行った。重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に少量のエタノールを加え重合反応を停止させた後、脱モノマー、水洗浄、及び溶媒除去工程を経て、非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体を得た。次いで、得られた共重合体を80℃で24時間減圧乾燥した。この非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体中のプロピレン単量体単位の含有率は94.5質量%、ブテン−1単量体単位の含有率は5.5質量%であった。また該共重合体のDSCにおける融解ピークは観測されず、また、極限粘度[η]は2.3dl/g、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0055】
(調整例)
[非晶性α−オレフィン系重合体組成物の調製]
上記で得られた非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体に、結晶性プロピレン−ブテン−1共重合体〔密度0.900g/cm、MFR(230℃、21.18N)10.0g/10分、DSCにおける最大融解ピーク126℃〕を、非晶性プロピレン−ブテン−1共重合体/結晶性プロピレン−ブテン−1共重合体=95/5(質量比)となるように配合し、さらに芳香族フォスファイト系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「イルガフォス(Irgafos)168」)とヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス(Irganox)1010」)を各々2000ppm配合し、2軸押出機で溶融混練し、次いで、造粒機により非晶性α−オレフィン系重合体組成物のペレットを得た。
【0056】
(実施例1)
基材層用樹脂として、プロピレン単独重合体(以下「HOPP」という)と低密度ポリエチレン(密度:0.920、MFR(230℃、21.18N):0.35g/10分、以下「LDPE−1」という)とメチルペンテン系樹脂(三井化学株式会社製メチルペンテンポリマー MX002、密度:0.835、MFR(260℃、50N):20g/10分、以下「MX002」という。)を質量比で55/15/30となるように混合し、中心層用樹脂として、メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体(密度:0.900g/cm、MFR(230℃、21.18N):7.0g/10分、エチレン単量体単位の含有率:3.5質量%、以下「メタロセン系COPP」という。)を用い、粘着層用樹脂として、スチレン−ブタジエンランダム共重合体水添物(JSR株式会社製「ダイナロン1320P」;以下「HSBR」という。)60質量部と直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、MFR(190℃、21.18N):4g/10分;以下「LLDPE」という。)40質量部からなる樹脂組成物を用いて、基材層用押出機(口径50mm)、中心層用押出機(口径50mm)及び粘着層用押出機(口径40mm)にそれぞれ供給し、共押出法により押出温度250℃でT−ダイから基材層の厚さが12μm、中心層の厚さが36μm、粘着層の厚さが12μmになるように押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却した後、ロールに巻き取り、表面保護フィルムを得た。得られたフィルムは、物理的性質を安定化するため、35℃の熟成室で48時間熟成させた。
【0057】
(実施例2)
基材層用樹脂として、HOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とMX002を質量比で40/40/15/5となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0058】
(実施例3)
基材層用樹脂として、HOPPとLDPE−1と低密度ポリエチレン(密度:0.934g/cm、MFR(230℃、21,18N):2g/10分、以下「LDPE―2」という)とMX002を質量比で35/20/25/20となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0059】
(実施例4)
基材層用樹脂として、プロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とMX002を質量比で10/5/85となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0060】
(実施例5)
基材層用樹脂として、HOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とMX002を質量比で55/20/5/20となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例5の表面保護フィルムを得た。
【0061】
(実施例6)
基材層用樹脂として、HOPPとLDPE−2とMX002を質量比で40/30/30となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例6の表面保護フィルムを得た。
【0062】
(実施例7)
基材層用樹脂として、HOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とMX002を質量比で45/25/10/20となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例7の表面保護フィルムを得た。
【0063】
(実施例8)
粘着層用樹脂として、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(JSR株式会社製;ダイナロン8601P;以下「SEBS」という)とLLDPEとを質量比で60/40となるように混合した組成物を用いた以外は実施例7と同様にして実施例8の表面保護フィルムを得た。
【0064】
(実施例9)
粘着層用樹脂として、上記で調製した非晶性α−オレフィン系重合体組成物90質量部とLLDPE10質量部を混合した組成物を用いた以外は実施例7と同様にして実施例9の表面保護フィルムを得た。
【0065】
(実施例10)
粘着層用樹脂として、HSBRとLLDPEとを質量比で90/10となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例10の表面保護フィルムを得た。
【0066】
(実施例11)
基材層用樹脂として、HOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とメチルペンテン系樹脂(三井化学株式会社製メチルペンテンポリマー MX021、密度:0.833、MFR(260℃、50N):23g/10分、以下「MX021」という。)を質量比で55/15/30となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例11の表面保護フィルムを得た。
【0067】
(比較例1)
基材層用樹脂として、HOPPとMX002を質量比で70/30となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0068】
(比較例2)
基材層用樹脂として、HOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1を質量比で55/30/15となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0069】
(比較例3)
基材層用樹脂として、プロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とMX002を質量比で7/3/90となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0070】
(比較例4)
基材層用樹脂として、メタロセン系COPPとMX002を質量比で70/30となるように混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして比較例5の表面保護フィルムを得た。
【0071】
上記の実施例1〜11及び比較例1〜4で得られた表面保護フィルムを用いて、以下の測定及び評価を行った。
【0072】
(1)粘着力の測定
23℃、50%RHの恒温室において、JIS Z0237:2000の粘着力評価方法に準拠して、表面保護フィルムを厚さ2mmのアクリル板(鏡面仕上げ、三菱レイヨン株式会社製「アクリライト」)に貼着した。フィルムが貼着されたアクリル板を23℃恒温室中で30分間静置した後、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー社製)を用いて、300mm/分の速度で180°方向に剥離して初期粘着力を測定した。
【0073】
(2)展開性の評価(剥離力)
得られた表面保護フィルムを、縦200mm×横150mmで切り出し、10枚重ねた後、12MPaの圧力で10分間プレスし、その後、23℃、50%RHの恒温室内で10分保管した。次いで、そのフィルムを25mm幅に切り出し、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー社製)を用いて、300mm/分の速度で180°方向に剥離して剥離力(展開性、ブロッキング)を測定した。
【0074】
(3)巻取り性(シワ)
巻取り中のフィルムロールを目視で観察し、シワの発生しなかった場合を○とし、シワが発生したものを×と記した。
【0075】
上記で作製した表面保護フィルムの層構成及びこれらの表面保護フィルムを用いて得られた評価結果を表1〜3に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
実施例1〜11の結果から、本発明の表面保護フィルムは、剥離力を低くする事ができるため、繰り出して使用する際、容易に展開性することができる。また、ロール状にシワなく巻き取る事でき、巻質の良好な表面保護フィルムであることがわかった。
【0080】
比較例1は、実施例1と中心層、粘着層は同一であるが、基材層にHOPPとMX002とを70/30の混合物を用い、成分(A2)を配合していない表面保護フィルムの例である。この比較例1の表面保護フィルムでは、ロール状に巻き取る際にシワが発生することがわかった。
【0081】
比較例2は、実施例1と中心層、粘着層は同一で、基材層にHOPPとプロピレン−エチレンブロック共重合体とLDPE−1とを55/30/15の混合物を用い、成分(A3)を配合していない表面保護フィルムの例である。この比較例2の表面保護フィルムでは、剥離力が高く、ロールからの展開性に劣ることがわかった。
【0082】
比較例3は、実施例1と中心層、粘着層は同一であるが、成分(A2)の配合比率を下限の5質量部を下回る3質量部とした表面保護フィルムの例である。この比較例3の表面保護フィルムでは、剥離力の低減は可能であるが、ロール状に巻き取る際にシワが発生することがわかった。
【0083】
比較例4は、実施例1と中心層、粘着層は同一であるが、基材層にメタロセン系COPPとMX002とを70/30の混合物を用い、成分(A2)を配合していない表面保護フィルムの例である。この比較例4の表面保護フィルムでは、ロール状に巻き取る際にシワが発生することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の表面保護フィルムは、各種樹脂板、ガラス板、金属板等の表面を保護するフィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)と粘着層(B)とを有する表面保護フィルムであって、
前記基材層(A)が、プロピレン系樹脂(A1)と、エチレン系樹脂(A2)と、メチルペンテン系樹脂(A3)とを含有し、該エチレン系樹脂(A2)が、前記プロピレン系樹脂(A1)、前記エチレン系樹脂(A2)、前記メチルペンテン系樹脂(A3)の合計質量に対して5質量%以上で含まれる樹脂混合物を主成分とするものであり、
且つ前記粘着層(B)が、スチレン系エラストマー(B1)、結晶性オレフィン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(B2)、又は非晶性α−オレフィン系重合体(B3)を含有するものであることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記基材層(A)の主成分である樹脂混合物が、プロピレン系樹脂(A1)を10〜85質量%と、エチレン系樹脂(A2)を5〜50質量%と、メチルペンテン系樹脂(A3)を5〜85質量%とを混合したものである請求項1記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層(B)が、更に結晶性オレフィン系重合体(B4)を含むものである請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記プロピレン系樹脂(A1)がプロピレン単独重合体とプロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物である請求項1〜3の何れか1項記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記基材層(A)と前記粘着層(B)との間に更に中心層(C)を有する請求項1〜4の何れか1項記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記中心層(C)がオレフィン系重合体を主成分とするものである請求項5記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−87164(P2012−87164A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232510(P2010−232510)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】