説明

表面処理粉体及びその粉体を含有する化粧料

【課題】色くすみ防止機能に優れ、かつ使用感触に優れた粉体化粧料を提供する。
【解決手段】分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンで順次被覆処理した粉体を、加熱処理することで得られる表面処理粉体、及びそれを配合することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理粉体および化粧料に関し、詳しくは、下記式(1);
【化4】

(式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。n、mは、整数であり、0≦m+n≦1000である。p、qは、整数であり、1≦p、q≦1000である。Rは下記式(2);
【化5】

を示す。式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。r、sは、整数であり、1≦r+s≦1000である。Rは−H、もしくは下記式(3);

−CH−CH−Si−(OR・・・・・(3)

を示す。式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)に表される分岐型シリコーン5〜30質量部を被覆処理し、次いで下記式(4);
【化6】


(式中、aは0〜40、bは8〜40である。)に表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン2〜10質量部を被覆処理するという、熱に対する架橋反応速度の異なる2種類のシリコーンにて表面処理してなる、汗や皮脂による色変化の抑制効果に優れ、かつべたつきのない表面処理粉体、及びそれを配合した色ぐすみ防止効果に優れ、かつ使用感に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのシリコーンオイルを、粉体表面に被覆処理した後、加熱して架橋させる粉体表面処理技術は、一般に広く使われている技術である。このシリコーン表面処理は粉体に適度なすべり感やなめらかさ、撥水性を与える表面処理として知られており、処理量としては粉体100質量部に対して、0.1〜10質量部で効果を発揮する(特許文献1,2,3参照)。また、シリコーン被膜は汗や皮脂などと比較的近い屈折率をもっているため、高濃度処理により粉体上に被膜として処理すると、粉体が初めから濡れているような光散乱状態とすることができるが(特許文献4)、架橋反
応が進みすぎると硬さが際立つ感触となり、また、架橋反応が進んでいないと、未架橋のシリコーンなどによって粉体の凝集を惹き起こし、べたついた感触となるといった問題がある。
【0003】
一方、粉体を含む化粧料においては、配合される粉体が汗や皮脂に濡れることによって、粉体表面の光散乱状態が変化し、色が変化する(くすむ)ということが常に問題として挙げられる。この問題は、粉末を含有する乳化型化粧料や油性化粧料においても挙げられるものであるが、特に、液状成分の配合量の少ない粉末化粧料においては、製剤中における粉体の濡れ具合が低いため、皮膚上において皮脂や汗で濡れることによる粉体表面の光散乱状態の変化が大きく、そのために色が暗くなり、くすみの原因になると考えられる。
【0004】
【特許文献1】特公昭45−2915号公報
【特許文献2】特公昭49−1769号公報
【特許文献3】特開昭55−136213号公報
【特許文献4】特開平5−221828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汗や皮脂による色変化の抑制効果に優れ、かつべたつきのない表面処理粉体、及びそれを配合した色ぐすみ防止効果に優れ、かつ使用感に優れた化粧料を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記事情に鑑み、如何にして粉体が濡れることによる色ぐすみを抑えるかを考え、鋭意研究を重ねた結果、分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンという熱に対する架橋反応の反応性が異なる2種類のシリコーンを用い、架橋反応進行度を調整することで解決できることを見出した。架橋度を小さく抑えた分岐型シリコーンの被膜が、汗や皮脂に濡れたときと同じ粉体表面の光散乱状態を作り出し、架橋度を高くしたメチルハイドロジェンポリシロキサンが、架橋度の小さい分岐型シリコーンのべたつきを抑えることで、従来の問題を解決した。そして、この処理粉体を化粧料に配合したところ、使用感触に優れ、色ぐすみ防止機能に優れた化粧料を提供できるに至った。
【0007】
即ち、本願第1の発明は、粉体100質量部に対して、下記式(1);
【化7】

(式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。n、mは、整数であり、0≦m+n≦1000である。p、qは、整数であり、1≦p、q≦1000である。Rは下記式(2);
【化8】

を示す。式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。r、sは、整数であり、1≦r+s≦1000である。Rは−H、もしくは下記式(3);

−CH−CH−Si−(OR・・・・・(3)

を示す。式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)に表される分岐型シリコーン5〜30質量部を被覆処理し、次いで下記式(4);
【化9】


(式中、aは0〜40、bは8〜40である。)に表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン2〜10質量部を被覆処理して得られる表面処理粉体にある(加熱処理を、分岐型シリコーンによる被覆処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサンによる被覆処理の各処理後に行なっても、両方の被覆処理後に行なってもいずれでも良い)。
【0008】
本願第2の発明は、分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの配合比が1:0.2〜1:1であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体にある。
【0009】
本願第3の発明は、被覆処理として、分岐型シリコーンによる被覆処理は溶剤を用いた湿式被覆処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンによる被覆処理は溶剤を用いない、又は少量の溶剤を用いた乾式被覆処理で処理されることを特徴とする前記の表面処理粉体にある。
【0010】
本願第4の発明は、分岐型シリコーン及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを各々被覆処理した後、120〜160℃で1〜10時間の加熱処理を行い、更に130〜180℃で1〜10時間の加熱処理を行うことで、途中で加熱温度を変える2段階加熱をすることを特徴とする前記の表面処理粉体にある。
【0011】
本願第5の発明は、表面処理を施したセリサイト89.6質量部に対し、赤色酸化鉄0.4質量部、スクワラン10質量部を攪拌混合した物を、丸型金皿容器に打型した際の表面色と、その混合物に吸油点までスクワランを加えたものを同じ容器に充填した際の表面色との色差(ΔE)が10.0以下となる表面処理を特徴とする前記の表面処理粉体にある。
【0012】
本願第6の発明は、前記の表面処理粉体を5〜99質量%配合してなる化粧料にある。
【0013】
本願第7の発明は、前記の表面処理粉体を5〜99質量%配合してなる粉末状化粧料に
ある。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、汗や皮脂による色変化の抑制効果に優れ、べたつきのない表面処理粉体を作成することができ、また、色ぐすみ防止機能に優れ、使用感触に優れた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。本発明で用いる分岐型シリコーンとしては下記式(1);
【化10】


(式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。n、mは、整数であり、0≦m+n≦1000、好ましくは0≦m+n≦500である。また、p、qは、整数であり、1≦p、q≦1000、好ましくは1≦p、q≦500である。
【0016】
は下記式(2);
【化11】


を示す。式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。r、sは、整数であり、1≦r+s≦1000、好ましくは1≦r+s≦500である。
【0017】
は−H、もしくは下記式(3);

−CH−CH−Si−(OR・・・・・(3)

を示す。式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)に表されるシリコーンオイルを用いる。
【0018】
具体的な例としては、信越化学工業社製KF−9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)や信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)が挙げられる。
【0019】
本発明で用いるメチルハイドロジェンポリシロキサンとしては下記式(4);


(式中、aは0〜40、bは8〜40である。)に表されるシリコーンオイルを用いる。
【0020】
具体的な例としては、信越化学工業社製KF−99P、KF−9901、GE東芝シリコーン社製TSF−484が挙げられる。
【0021】
本発明で用いる粉体の例としては、赤色104号、赤色102号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黒色401号等の色素、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の高分子、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、ラウロイルリジン、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)、大きさに特に制限はない。これら各種の粉体は、それぞれ単独で処理したものを混合しても、混合物としてまとめて処理しても構わない。また、混合物の色を肌色などに調色したものを処理することも可能である。さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱成分を使用することで紫外線防御機能を有する処理粉体とすることも可能である。
【0022】
本発明では、上記各種の粉体をそのまま本発明の処理に用いても、他の従来公知の表面処理を施した処理粉体を用いても構わない。他の表面処理としては、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等が挙げられる。また、本発明の表面処理を施した後で、配合する化粧料の剤型やその目的に応じて、本願発明の効果を損なわない範囲で、前記各種の表面処理を施しても良い。
【0023】
本発明で用いる溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの低級アルコール、フッソ系溶剤、トリクロロエチレン、ジクロロメタンなどの塩素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、イソパラフィンなどの石油系溶剤などが挙げられるが、低コストで入手が容易な低級アルコール、石油系溶剤が好ましい。
【0024】
本発明の処理粉体は、まず、粉体100質量部に対して、分岐型シリコーン5〜30質量部を被覆処理する。分岐型シリコーンは熱による架橋反応が進みにくいため、その被膜は粉体表面を濡れたときと同様な光散乱状態にするが、上記範囲を超えると凝集、べたつきの原因となり、上記範囲を下回ると濡れ色を出す効果が不十分である。
【0025】
次いでメチルハイドロジェンポリシロキサン2〜10質量部を被覆処理する。メチルハイドロジェンポリシロキサンは熱による架橋反応が進みやすく、分岐型シリコーンを覆うことで、そのべたつきを抑える効果があるが、上記範囲を超えるとシリコーン被膜の硬い感触が顕著に表れ、上記範囲を下回ると分岐型シリコーンのべたつきを抑える効果が不十分となる。
【0026】
分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの配合比が、1:0.2〜1:1であると、感触に優れた表面処理粉体が得られる。分岐型シリコーンの割合が高ければ、凝集やべたつきの原因となり、分岐型シリコーンの割合が低ければ、硬い感触となり、好ましくない。
【0027】
被覆処理の方法としては、乾式被覆処理としては、以下のものが挙げられる。
(a)溶剤を用いず、粉体とシリコーンを攪拌、混合する乾式被覆処理。(b)少量の溶剤にシリコーンを溶解させたものを、粉体と共に攪拌、混合する乾式被覆処理。
また、湿式被覆処理としては、以下のものが挙げられる。(c)多量の溶剤にシリコーンを溶解させたものと粉体類とのスラリーを形成させた後、溶剤を留去する湿式被覆処理。 被覆処理としては、一般に上記のいずれかから選ばれるが、分岐型シリコーンは、(c)の湿式被覆処理を用いることで、より均一な被覆処理を行うことができ、メチルハイドロジェンポリシロキサンは、(a)もしくは(b)の乾式被覆処理で処理されることで、先に被覆処理された分岐型シリコーンとの相溶を抑えた状態で表面処理することができる。
【0028】
加熱条件としては、120〜180℃で3〜20時間の範囲が好ましい。この加熱処理によって、熱に対する架橋反応速度が相対的に遅い分岐型シリコーンは、粉体表面を濡らすような被膜をつくり、架橋反応速度の速いメチルハイドロジェンポリシロキサンの被膜が、低架橋度の分岐型シリコーンの被膜による凝集やべたつきを抑える。また、各々のシリコーンを被覆した後に、その度毎に加熱処理を行なうことも可能であるが、2種類のシリコーンを被覆処理した後に行っても良い。更に、2種類のシリコーンを被覆処理した後、120〜160℃で1〜10時間の加熱処理を行い、加熱温度を変え、更に130〜180℃で1〜10時間の加熱処理を行うことで、2種類のシリコーン処理剤の架橋度合の差を広げることが可能であり、好ましい。
【0029】
上記の表面処理により得られる表面処理粉体が、どのくらいの色変化防止効果をもっているかの評価指標としては、この表面処理を施したセリサイト89.6質量部に対し、赤色酸化鉄0.4質量部、スクワラン10質量部を攪拌混合した物を、丸型金皿容器に打型した際の表面色と、その混合物に吸油点までスクワランを加えたものを同じ容器に充填した際の表面色との色差(ΔE)を計測する方法を用いた。ΔEはL*a*b*表色系における3次元での距離をもって表した。この表面処理法を用いた場合、ΔEを10.0以下とすることが可能である。
【0030】
本発明の表面処理粉体を用いた化粧料は、2種類のシリコーン処理の効果により、液体で濡れた状態と同じような光散乱状態としつつも、実際に濡れているのとは違う、凝集感のない、使用感に優れたものとなる。また、化粧料中における処理粉体の配合量は、化粧料の総量を基準として、5〜99質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜95質量%である。また、化粧料中の全粉体量に対して、本願処理粉体が5質量%以上であることが好ましい。
【0031】
本発明の表面処理粉体を用いた化粧料には、本願処理粉体以外に、通常化粧料に用いられる油剤、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含み、UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0032】
上記の油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性および不揮発性の油剤、溶剤、ならびに樹脂等が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれであっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類
、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂、ポリエチレンワックス、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマー等が挙げられる。
【0033】
また、別の形態の油剤の例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール等のフッ素化合物が挙げられる。
【0034】
粉体の例としては、前記の粉体とその一般な表面処理物が挙げられる。
【0035】
溶媒の例としては、精製水、環状シリコーン、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、例えばアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤を用いることができる。
【0037】
粘剤、樹脂の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックス等が挙げられる。
【0038】
本発明における化粧料とは、粉体を構成成分として含有する化粧料を指し、例えばファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、口紅、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料や、ボディパウダーやベビーパウダーのようなボディ用化粧料等が挙げられる。特に、パウダーファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイブロー、チーク、ボディパウダー、ベビーパウダー等の、粉体を主な構成成分とする粉末化粧料において、より大きな色変化の抑制効果が得られる。
【実施例】
【0039】
・表面処理粉体の色変化抑制効果の評価
表面処理を施したセリサイト89.6質量部に対し、赤色酸化鉄0.4質量部、スクワラン10質量部を攪拌混合した物を、丸型金皿容器に打型した際の表面色と、その混合物に吸油点までスクワランを加えたものを同じ容器に充填した際の表面色との色差(ΔE)を計測する。ΔEはL*a*b*表色系における3次元での距離をもって表す。
【0040】
・表面処理粉体の感触評価
専門パネラーを各評価項目ごとに10名ずつ用意し(但し、項目によりパネラーが重複する場合もある)、表1に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの合計点数を以て評価結果とした。従って、点数が高いほど項目における評価が高いことを示す。(満点:50点)
【0041】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
基 準 点 数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
感触がとても優れている 5
感触が優れている 4
感触がやや優れている 3
感触がやや悪い 2
感触が悪い 1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0042】
・化粧料の皮膚有用性評価
専門パネラーを各評価項目ごとに10名ずつ用意し(但し、項目によりパネラーが重複する場合もある)、表2に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの合計点数を以て評価結果とした。従って、点数が高いほど評価項目に対する有用性が高いことを示す。(満点:50点)
【0043】
[表2]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
基 準 点 数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
効果が高く感じられる 5
効果が感じられる 4
効果はやや感じられる 3
効果はわずかしか感じられない 2
効果が感じられない 1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0044】
以下、実施例、及び比較例に基づいて本発明を詳明する。実施例及び比較例の表面処理粉体、化粧料の各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0045】
実施例1
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)15質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)5質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、処理粉体1を得た。
【0046】
実施例2
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)15質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後
、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)10質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて10時間加熱し、処理粉体2を得た。
【0047】
実施例3
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)15質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)5質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて130℃にて4時間加熱し、更に140℃にて4時間加熱して、処理粉体3を得た。
【0048】
比較例1
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)20質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて10時間加熱し、比較処理粉体1を得た。
【0049】
比較例2
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)25質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、比較処理粉体2を得た。
【0050】
比較例3
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)3質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)1質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて8時間加熱し、比較処理粉体3を得た。
【0051】
比較例4
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)15質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)1質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて10時間加熱し、比較処理粉体4を得た。
【0052】
比較例5
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)10質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後
、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。次いで信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)15質量部をヘキサン5質量部を溶剤としたものと攪拌、混合して、乾式処理にて被覆処理した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて10時間加熱し、比較処理粉体5を得た。
【0053】
比較例6
セリサイト100質量部に対し、信越化学工業社製KF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)15質量部と信越化学工業社製KF−9901(メチルハイドロジェンポリシロキサン)5質量部をイソプロピルアルコール300質量部を溶剤としたものでスラリー化して、湿式処理にて被覆処理した後、減圧乾燥にてイソプロピルアルコールを留去した。その後、乾熱オーブンにて140℃にて10時間加熱し、比較処理粉体6を得た。
【0054】
実施例4
表3に示す処方と下記製造方法に従い、ファンデーションを作製した。尚、処理顔料としては実施例1で製造した処理粉体1を用いた。
【0055】
[表3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
成分名 配合量(質量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
成分A
(1)ベンガラ 0.56
(2)黄酸化鉄 2.00
(3)黒酸化鉄 0.28
(4)酸化チタン 10.00
(5)処理顔料 62.16
(6)酸化亜鉛処理雲母チタン 10.00
(7)球状ナイロンパウダー 5.00
成分B
(8)ジメチルポリシロキサン 4.00
(9)α−オレフィンオリゴマー 3.00
(10)ワセリン 2.00
(11)ジカプリル酸プロピレングリコール 1.00
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0056】
製造方法
成分Aをミキサーにて混合した。次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合した。得られた粉末をアトマイザーにて粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0057】
実施例5
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、実施例2で製造した処理粉体2を用いた他は全て実施例1と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0058】
実施例6
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、実施例3で製造した処理粉体3を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0059】
比較例7
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例1で製造した比較処理粉体1を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0060】
比較例8
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例2で製造した比較処理粉体2を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0061】
比較例9
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例3で製造した比較処理粉体3を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0062】
比較例10
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例4で製造した比較処理粉体4を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0063】
比較例11
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例5で製造した比較処理粉体5を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0064】
比較例12
実施例4で用いた処理粉体1の代わりに、比較例6で製造した比較処理粉体6を用いた他は全て実施例4と同様に行い、ファンデーションを得た。
【0065】
上記の各実施例及び比較例で得られた表面処理粉体、化粧料の評価結果をそれぞれ表4、5に示す。
【0066】
[表4]
(表面処理粉体の評価結果)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
評価項目
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ΔE 柔らかさ さらさら感
(べたつきの無さ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例1 6.57 45 45
実施例2 4.43 38 46
実施例3 6.01 44 46
比較例1 4.42 45 12
比較例2 17.64 32 41
比較例3 18.51 29 33
比較例4 7.27 37 17
比較例5 8.64 18 44
比較例6 5.75 38 22
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0067】
[表5]
(化粧料の評価結果)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
評価項目
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
くすみ 感触の しっとり とれの
抑制効果 なめらかさ 感 良さ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例4 40 43 40 39
実施例5 45 36 38 43
実施例6 42 41 39 41
比較例7 46 11 41 13
比較例8 23 41 31 42
比較例9 19 37 25 37
比較例10 42 13 37 13
比較例11 38 18 23 41
比較例12 41 22 36 20
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0068】
表4の結果より、本発明の各実施例は比較例と比べてより高い評価を示していることが判った。実施例1〜3は、本発明を用いた表面処理粉体に関するものであり、各評価項目に関して高い評価を得た。これに対して、比較例1は分岐型シリコーンのみで表面処理した例であり、ΔEは低い値を示しているが、架橋度が低いためにさらさら感での項目で評価が低かった。比較例4と6に関しても、比較例1と同様の傾向が見られる。また、比較例2はメチルハイドロジェンポリシロキサンのみで表面処理した例であり、ΔEが高く、色変化の抑制効果が不充分である。表面処理剤の量が少ない比較例3にも同様の傾向が見られる。さらに比較例5はメチルハイドロジェンポリシロキサンの割合の多い例であり、柔らかさの項目で評価が低かった。
【0069】
表5の結果においても、本発明の各実施例は比較例と比べてより高い効果を示していることが判った。実施例4〜6は本発明の処理粉体を用いたファンデーションに関するものであり、各評価項目に関して高い評価を得た。これに対して、比較例7は分岐型シリコーンのみで表面処理した粉体で製造した例であり、くすみ抑制効果では優れた評価を得たが、粉体の凝集性が高く、ケーキングを起こしてしまっていた。比較例10と12に関しても、比較例7と同様の傾向が見られる。また、比較例8はメチルハイドロジェンポリシロキサンのみで表面処理した粉体を用いて製造した例であり、くすみ抑制効果が不充分である。表面処理剤の量が少ない粉体を用いた比較例9にも同様の結果が見られる。さらに比較例11はメチルハイドロジェンポリシロキサンの割合の多い粉体で製造した例であり、なめらかさやしっとり感の項目で評価が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の、分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンという架橋反応速度の異なる2種類のシリコーンにて表面処理した粉体を用いることで、汗や皮脂による色くすみの抑制効果に優れ、かつ使用感触に優れた化粧料を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体100質量部に対して、下記式(1);
【化1】

(式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。n、mは、整数であり、0≦m+n≦1000である。また、p、qは、整数であり、1≦p、q≦1000である。Rは下記式(2);
【化2】

を示す。式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっても構わない。r、sは、整数であり、1≦r+s≦1000である。Rは−H、もしくは下記式(3);

−CH−CH−Si−(OR・・・・・(3)

を示す。式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)に表される分岐型シリコーン5〜30質量部を被覆処理し、次いで下記式(4);
【化3】


(式中、aは0〜40、bは8〜40である。)に表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン2〜10質量部を被覆処理して得られる表面処理粉体(加熱処理を、分岐型シリコーンによる被覆処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサンによる被覆処理の各処理後に行なっても、両方の被覆処理後に行なっても、いずれでも良い)。
【請求項2】
分岐型シリコーンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの配合比が1:0.2〜1:1であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項3】
被覆処理として、分岐型シリコーンによる被覆処理は多量の溶剤を用いた湿式被覆処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンによる被覆処理は乾式被覆処理であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項4】
分岐型シリコーン及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを各々被覆処理した後、120〜160℃で1〜10時間の加熱処理を行い、更に130〜180℃で1〜10時間の加熱処理を行うことで、途中で加熱温度を変える2段階加熱をすることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項5】
表面処理を施したセリサイト89.6質量部に対し、赤色酸化鉄0.4質量部、スクワラン10質量部を攪拌混合した物を、丸型金皿容器に打型した際の表面色と、その混合物に吸油量までスクワランを加えたものを同じ容器に充填した際の表面色との色差(ΔE)が10.0以下となる表面処理を特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体

【請求項6】
請求項1に記載の表面処理粉体を配合してなる化粧料。
【請求項7】
請求項1に記載の表面処理粉体を配合してなる粉末化粧料。

【公開番号】特開2006−176557(P2006−176557A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368773(P2004−368773)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】