説明

表面処理装置及び画像形成システム

【課題】被処理媒体上の画像に対して所定の位置の被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御する場合に、被処理媒体上の画像と加熱位置とを精度よく位置合わせることが可能な表面処理装置及び画像形成システムを提供する。
【解決手段】加熱手段8による加熱処理を制御する制御手段150は、元画像情報と実画像情報とから、元画像情報が示す被処理媒体S上の画像の位置と、実画像情報が示す被処理媒体上に実際に形成されている画像の被処理媒体上の位置との差異を示す情報を求め、入力された加熱位置情報を上記差異を示す情報に基づいて補正して、補正後の加熱位置情報に従って加熱手段による加熱処理を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを介して被処理媒体を部分的に加熱して、被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御可能な表面処理装置及びこれを備えた画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の多くは、記録材と色材との光沢度が違うことから、印字率によりその表面の光沢が異なる。このような印刷物に対し、オーバーコートを施すなどの様々な後処理工程により、印刷物の表面全体に均一な光沢面を作る方法が種々提案されている。
【0003】
又、近年、光沢を制御する技術も種々提案されている。例えば、オフセット印刷においては、次のような手法により、様々な光沢表現が可能になっている。即ち、色材インキで印刷後、UV硬化性の透明インキを用いて、特定の部分にオフセット印刷する。そして、印刷物の表面全体に対しUV照射することにより、UV硬化性の透明インキを固定させる。この手法によれば、特定の部分(写真や見出し部など)のグロスを向上し視覚効果に富んだ印刷物を出力することが可能である。
【0004】
近年では、電子写真方式においても、全面光沢画像や部分的に光沢処理された付加価値の高い印刷物に対する要求が高まっている。特許文献1には、印刷物の表面全体のグロスを向上させて写真調の記録を行う方法が提案されている。この方法では、トナーで画像が形成された印刷物の表面を、表面の平滑性の高い無端状のベルトを介して再加熱することによりトナーを再溶融させる。その後、ベルトと接触した状態でトナーを冷却させることにより、トナーで形成された画像の表面にベルトの平滑性が転写された状態でトナーを固化させる。この方法では、印刷物の全体の光沢を制御することができるが、印刷物の表面の光沢を部分的に制御することは困難である。
【0005】
特許文献2には、サーマルヘッドを用いて印刷物の表面の光沢を部分的に制御する方法が開示されている。この方法では、サーマルヘッドでシート体の表面を部分的に加熱した後に、そのシート体を無端ベルトに加圧ローラで押圧しながら搬送し、その後そのシート体を無端ベルトに密着させた状態のまま冷却する。これにより、シート体の表面のサーマルヘッドで加熱した部分に無端ベルトの表面性状を転写する。特許文献2には、位置合わせセンサーによる検知情報に基づき、制御手段が無端ベルトの回転速度等を制御して位置ズレ等が生じるのを防止することが記載されている。
【0006】
又、上述のような光沢性の付与だけではなく、金、銀などの金属質を表現することが求められることがある。特許文献3には、金属光沢を目的としたサーマルプリンタ(熱転写プリンタ)用の熱転写シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−086747号公報
【特許文献2】特開2004−170548号公報
【特許文献3】特開2001−130150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、例えばサーマルヘッドと薄いフィルムを用いて部分的に印刷物を加熱する方法が、電子写真方式などにより画像が形成された印刷物の表面の光沢を部分的に制御するのに適していることを見出した。この方法によれば、サーマルヘッドを電気的に制御することで、印刷物上の任意の位置を加熱することができる。被処理媒体が電子写真方式によってトナーで画像が形成された印刷物である場合、印刷物のトナー像を、フィルムを介して加熱・溶融させ、その後冷却・分離することで、印刷物の任意位置の光沢を制御することができる。
【0009】
例えば、文字の一部に光沢処理を行ない、立体感を表現するような場合、文字が形成された印刷物と加熱位置との非常に高精度な位置合わせが要求される。勿論、文字だけではなく、写真調の画像においても同様に、光沢処理を行う場合には、高精度の位置合わせが要求される。又、印刷物の光沢処理に限らず、上述のような金、銀などの特色の画像を後処理で印刷物上に形成する場合にも、印刷物と特色の画像との高精度の位置合わせが要求される。
【0010】
近年の電子写真や熱転写プリンタなどの出力装置は、デジタル画像データを元に出力を行なうものが主流であるが、記録材上に形成された画像は、元となるデジタル画像データ(元画像データ)が示す記録材上の位置と完全には一致しない。
【0011】
例えば、電子写真方式の画像形成装置においては、記録材を搬送しながら画像形成を行なう。そのため、記録材の搬送速度のバラツキや画像形成部の精度のバラツキが要因で、記録材上に形成された画像の位置は、必ずしも元画像データが示す記録材上の位置とは一致せずに、オフセット、回転、変形又は倍率変化が生じてしまうことがある。
【0012】
又、画像形成を行なう際に熱を加えて画像を記録材上に定着させるため、記録材が紙の場合、水分が蒸発することで、紙は一般的に縮む。又、その縮み量は繊維の配向や密度が影響するため厳密に安定させることは困難である。更に、その後の放置環境により、水分が記録材に再浸透するとまた伸びてしまうが、その復元量も安定しない。よって、記録材上の画像の位置も記録材に合わせて伸縮するので、元画像データが示す記録材上の位置とは一致しなくなりやすい。
【0013】
そのため、一旦出力した記録材上の画像に、光沢画像や特色などの画像を元画像データに合わせて上書きする場合、記録材上の実際の画像の位置と元画像データが示す位置との間にはズレが生じているので、位置を合わせることが困難となる。
【0014】
ここで、特許文献2には、位置合わせセンサーによる検知情報に基づいて、どのように位置合わせを行うかは開示されていない。
【0015】
従って、本発明の目的は、被処理媒体上の画像に対して所定の位置の被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御する場合に、被処理媒体上の画像と加熱位置とを精度よく位置合わせることが可能な表面処理装置及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る表面処理装置及び画像形成システムにて達成される。要約すれば、本発明は、被処理媒体を搬送する搬送手段と、フィルムを介して被処理媒体の搬送方向と略直交する方向における被処理媒体の表面の異なる位置を選択的に加熱することができる加熱手段と、を有し、前記搬送手段によって搬送される、元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体の表面を、前記加熱手段によって部分的に加熱する処理を行う表面処理装置において、前記加熱手段による加熱処理を制御する制御手段と、前記元画像情報を前記制御手段に入力する元画像情報入力手段と、前記加熱手段による被処理媒体の加熱処理部よりも被処理媒体の搬送方向上流に配置され、前記元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体の外形形状と、該被処理媒体上の画像とを読み取り、被処理媒体の外形形状の情報である外形形状情報と、その被処理媒体上の画像の情報である実画像情報とを前記制御手段に入力する読み取り手段と、前記被処理媒体上の前記加熱手段による加熱位置を示す加熱位置情報を前記制御手段に入力する加熱位置情報入力手段と、を有し、前記制御手段は、前記元画像情報が示す被処理媒体上の画像の位置と、前記外形形状情報及び前記実画像情報が示す被処理媒体上の実際に形成されている画像の位置との差異を示す情報を求め、入力された前記加熱位置情報を前記差異を示す情報に基づいて補正して、補正後の加熱位置情報に従って前記加熱手段による加熱処理を制御することを特徴とする表面処理装置である。
【0017】
又、本発明の他の態様によると、上記本発明の表面処理装置と、記録材に前記元画像情報に従って画像を形成して該記録材を被処理媒体として前記表面処理装置に供給する画像形成装置と、を有することを特徴とする画像形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被処理媒体上の画像に対して所定の位置の被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御する場合に、被処理媒体上の画像と加熱位置とを精度よく位置合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る表面処理装置の模式的な断面図である。
【図2】サーマルヘッドの駆動回路の一例を示す回路図である。
【図3】サーマルヘッドの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】サーマルヘッドの当接、離間動作を説明するための模式図である。
【図5】サーマルヘッドの当接、離間動作を説明するための模式図である。
【図6】本発明の一実施例に係る表面処理装置の概略制御態様を示すブロック図である。
【図7】本発明に従う光沢処理装置の動作の手順の一例を示すフローチャート図である。
【図8】本発明に従う補正処理の手順の一例を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の一実施例に係る表面処理装置におけるセンサー配置を説明するための模式図である。
【図10】記録紙上の画像と光沢処理後の成果物の例を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施例に係る画像形成システムの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る表面処理装置及びこれを備えた画像形成システムを図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】
実施例1
1.表面処理装置の基本構成
図1は、本発明の一実施例に係る表面処理装置100の模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100は、電子写真方式の画像形成装置によって熱溶融性のトナーで別途画像が形成された記録材を被処理媒体Sとして、その表面の表面性状を制御する処理(表面処理)を行う。
【0022】
表面処理装置100は、装置本体1、被処理媒体Sを積載したカセット2、カセット2から被処理媒体Sを一枚ずつ分離給送する供給ローラ3、被処理媒体Sを挟持搬送する搬送ローラ対4、9などを有する。又、表面処理装置100は、被処理媒体Sを処理部Tに搬送する際に被処理媒体Sの先端を検知するセンサー6を有する。又、表面処理装置100は、搬送ローラ対4から送られてきた被処理媒体Sの斜行を補正し、被処理媒体Sの搬送タイミングを補正するレジストローラ対5を有する。
【0023】
又、表面処理装置100は、被処理媒体Sの搬送経路を挟んで対向して配置される、支持部材としてのローラ型のプラテンであるプラテンローラ7と、加熱手段としての接触型の局所加熱装置であるサーマルヘッド8と、を有する。プラテンローラ7は、サーマルヘッド8が後述するフィルム11及び被処理媒体Sを介して押圧される際の下支えとなると共に、被処理媒体Sを搬送する。サーマルヘッド8は、後述する光沢処理パターン(加熱位置情報、加熱処理パターン、光沢画像データ、加熱画像データ)に応じて選択的に発熱する。
【0024】
表面処理装置100は更に、サーマルヘッド8によって被処理媒体Sに押圧されると共に選択的に加熱されるフィルム11と、フィルム11の巻き取り手段としての巻き取り軸13と、フィルム11の供給手段としての供給軸12とを有する。巻き取り軸13は、駆動源としての巻き取り軸駆動モータM1(図6)によって回転駆動される。巻き取り軸駆動モータM1は、フィルム11を供給軸12から巻き取り軸13に巻き取る方向に巻き取り軸13を回転駆動することができる。このとき、供給軸12は、フィルム11を巻き取り軸13へと供給する方向に回転可能とされる。尚、供給軸12を上記方向とは逆方向に回転させる方向に付勢してフィルム11のたるみを防止するための付勢手段を設けてもよい。
【0025】
ここで、フィルム11の被処理媒体Sに接触する側の面を表面、その反対側の面を裏面とする。又、被処理媒体Sのフィルム11が接触する側の面を表面、その反対側であるプラテンローラ7に接触する側の面を裏面とする。
【0026】
表面処理装置100は更に、フィルム11の裏面側に接触するように設けられた、第1の張架ローラ34と第2の張架ローラ35とを有する。又、表面処理装置100は、フィルム11の裏面側に接触するように設けられ、サーマルヘッド8によって加熱押圧されたフィルム11と被処理媒体Sとを分離する分離部材15を有する。供給軸12、巻き取り軸13、プラテンローラ7、第1の張架ローラ34及び第2の張架ローラ35の回転軸線方向並びに分離部材15の長手方向は略平行である。フィルム11は、供給軸12から引き出され、第1の張架ローラ34の外周の一部に掛け回されて、サーマルヘッド8とプラテンローラ7とによる押圧部(ニップ)である処理部Tに案内される。そして、フィルム11は、処理部Tを通過して、第2の張架ローラ35を通過して、分離部材15によって屈曲されて、巻き取り軸13に案内され、巻き取り軸13によって巻き取られる。このフィルム11の搬送方向を順方向とする。フィルム11の搬送方向は、供給軸12、巻き取り軸13、プラテンローラ7、第1の張架ローラ34及び第2の張架ローラ35の回転軸線方向並びに分離部材15の長手方向と略直交する。被処理媒体Sの表面処理を行うとき、処理部Tにおけるフィルム11と被処理媒体Sの搬送方向は同方向である。第1の張架ローラ34、第2の張架ローラ35は、フィルム11を張架する回転可能なガイドローラである。第1の張架ローラ34、第2の張架ローラ35は、フィルム11の搬送に伴って回転する。
【0027】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Tの上流側に、処理を行う前に被処理媒体Sの姿勢を整える、互いに押圧されたローラ対であるレジストローラ対5を有する。レジストローラ対5は、駆動源としてのレジストローラ駆動モータM2(図6)によって回転駆動される。レジストローラ対5は、被処理媒体Sの斜行を補正した後、その被処理媒体Sを処理部Tに搬送する。被処理媒体Sは、回転が停止されているレジストローラ対5の接触部(ニップ)にその搬送方向の先端が突き当たることで斜行が補正される。
【0028】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向においてレジストローラ対5の上流側に、互いに押圧されたローラ対である搬送ローラ対4を有する。又、表面処理装置100は、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Tの下流側に、互いに押圧されたローラ対である搬送ローラ対9を有する。搬送ローラ対4は、被処理媒体Sをレジストローラ対5へと搬送する。又、搬送ローラ対9は、処理後の被処理媒体Sを後述する表面処理装置100の外部の排出トレイ16或いは後処理工程へと搬送する。
【0029】
本実施例では、搬送ローラ対4、9、レジストローラ対5、プラテンローラ7などが、被処理媒体Sを搬送する搬送手段を構成する。
【0030】
又、表面処理装置100には、被処理媒体Sの有無(特に、その先端及び/又は後端)を検知する被処理媒体先端検知手段としての被処理媒体センサー(以下「先端検知センサー」という。)6が設けられている。本実施例では、被処理媒体センサー6は、被処理媒体Sの搬送方向においてレジストローラ対5の下流側、且つ、第1の張架ローラ34の上流側に設けられている。先端検知センサー6により、搬送中の被処理媒体Sを検知することができる。図9に示すように、本実施例では、被処理媒体Sの搬送方向に略直交する方向における両側部側に1個ずつ先端検知センサー6a、6bが設けられている。
【0031】
又、表面処理装置100には、詳しくは後述するように、被処理媒体Sの搬送方向において搬送ローラ対4よりも上流側に、被処理媒体S上の画像を読み取る画像読み取り手段としてのコンタクトイメージセンサー(以下「CIS」という。)60が設けられている。
【0032】
又、表面処理装置100には、被処理媒体側部検知手段としての被処理媒体センサーであるラインセンサー(以下「サイドエッジ検知センサー」という。)61が設けられている。本実施例では、ラインセンサー61は、被処理媒体Sの搬送方向において、レジストローラ対5よりも上流側、且つ、搬送ローラ対4よりも上流側において、被処理媒体Sの有無(特に、その搬送方向に略直交する方向の両側部(サイドエッジ))を検知する。図9に示すように、本実施例では、被処理媒体Sの搬送方向に略直交する方向における両端部側に1個ずつサイドエッジ検知センサー61a、61bが設けられている。
【0033】
フィルム11は、フィルムカートリッジ14に収納されて一体的に装置本体1に対して着脱可能とされている。
【0034】
表面処理装置100は更に、表面処理が施された後の被処理媒体Sを装置本体1の筐体外へ排出する排出ローラ対10を有する。又、表面処理装置100は、装置本体1の外部において排出された被処理媒体Sが積載される排紙トレイ16を有する。
【0035】
2.表面処理装置の各部の構成
次に、表面処理装置100の各部の構成について更に説明する。
【0036】
2−1.サーマルヘッド
サーマルヘッド8の基本構成及び基本仕様について説明する。図3は、特に、サーマルヘッド8の発熱体の構成の概略図である。サーマルヘッド8は、アルミナなどを用いた基板51に印刷されたグレーズ52(保温層)上にコモン(共通)電極53a、リード(個別)電極53bを形成すると共に、これらの各電極の上面に発熱抵抗体55を形成して構成されている。更に、上記基板51、保温層52、各電極53a、53b及び発熱抵抗体55の上面に、保護膜54(オーバーコート層)が形成されている。又、サーマルヘッド8には、発熱体に選択的に電力を印加して発熱させるための駆動回路160(図6)が接続されている。更に、サーマルヘッド8には、被処理媒体Sに熱を与えた後の余分な熱を放熱させる放熱板などの部材が設けられている。サーマルヘッド8は、被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に沿って直線状に配列された複数の発熱体(加熱部)を有し、その配列方向において異なる領域を選択的に加熱することでフィルム11を介して被処理媒体Sの面を加熱することができる。
【0037】
本実施例で使用したサーマルヘッド8は、発熱体密度300dpi、記録密度(処理密度)300dpi、駆動電圧30V、発熱体平均抵抗値5000Ωである。しかし、サーマルヘッド8の構成や仕様は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0038】
図2は、一般的なサーマルヘッド8の駆動回路の概略図である。アルミナ基板上には、1ライン分の発熱抵抗体が設けられ、その両サイドに電極が配線されている。又、光沢処理パターンの1ライン分のデータを転送し保持するレジスタ群を含むドライバICが、同一アルミナ基板上或いは別個の配線基板上に設けられている。
【0039】
2−2.プラテンローラ
プラテンローラ7は、軸(芯金)7aの周りに、硬質ゴムなどの摩擦係数の高い部材から成る弾性層7bをローラ状に形成した弾性ローラである。本実施例では、軸7aの周りにシリコーンゴムから成る弾性層7bをローラ状に形成した耐熱性のゴムローラである。プラテンローラ7は、軸7aにより装置本体1に回動可能に取り付けられている。そして、この軸7aを介してプラテンローラ7を駆動源としてのプラテンローラ駆動モータM3(図6)により回転駆動することにより、被処理媒体Sとフィルム11とが搬送される。本実施例では、被処理媒体Sの搬送速度は、プラテンローラ7の回転速度によって決定され、サーマルヘッド8へ送られるデータは、このプラテンローラ7の回転速度に基づいて形成される。本実施例では、表面処理時に、処理部Tにおいて被処理媒体Sとフィルム11は略等速度で同方向に搬送される。
【0040】
2−3.フィルム
フィルム(転写フィルム)11は、供給軸12に所望の長さ巻き取られて蓄えられており、必要に応じて巻き取り軸13により巻き取ることにより、処理部Tに供給される。フィルム11は、被処理媒体Sの表面を局所的に加熱するために、薄い可撓性材料で構成することが望まれる。この観点から、フィルム11の厚さは40μm以下が望ましい。フィルム11の厚さは、光沢処理の観点からは2μmまで薄くすることが可能であるが、強度の観点からは4μm以上が好ましい。更に、表面処理において、写真調の写像性に優れた表面性を得るために、フィルム11はある程度の剛度を持つことが有効であり、下記のような材質においては8μm以上が好ましい。又、材質については、サーマルヘッド8に対する耐熱性が必要である。ポリイミドなど、200℃を超える耐熱性を有する材質が望ましい。しかし、加熱履歴は残るが、PET(ポリエチレンテレフタラート)など安価で一般的な樹脂フィルム(熱可塑性フィルム)を採用することができる。又、フィルム11の表層(被処理媒体Sに接触する面)には、離型コーティングを施すことができる。この機能層は、低表面エネルギーのコーティング層であり、フィルム11と被処理媒体Sの表層の樹脂の離型性を向上するために施すことができる。フィルム11の表面の形状を被処理媒体Sの表面に転写するにあたっては、フィルム11の形状を如何に正確に転写するかという観点から、スムーズに離型することが望ましい。これらの組成としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。又、形成方法については、コーティングを用いることができるが、コーティングに限ることはなく、あくまで転写すべき表面性を形成できることが重要となる。例えば、写真用の平滑な面を作るため、ベースフィルムにコーティングにより平滑面を作成することができる。又、フィルム11の裏面(サーマルヘッド8と摺動する面)には、スティック防止層を設けることができる。これはサーマルヘッド8との機械的摩擦を低減するために施すことができる。上述の離型コーティングに近い特性が要求されるため、具体的には、離型層と同様のフッ素樹脂、シリコーン樹脂などによるコーティングが有効である。本実施例では、フィルム11として、PETフィルム(基材)に離型コーティングを施し、又スティック防止層を設けたものを使用した。
【0041】
フィルム11は、その表面形状(表面性状)を被処理媒体Sに転写するため、高光沢の平滑フィルムであれば、高光沢な写真調の光沢表面に処理することが可能になる。又、逆に、サンドブラストなどによるマットフィルムを使用するか或いは特定の形状を施したフィルムを使えば、その形状の反転形状を被処理媒体Sに転写することが可能である。例えば、絹目や和紙や、エンボス紙に有るような様々な風合いの形状を転写することが可能である。又、幾何学模様を施すことも可能であり、格子など様々な風合いを転写することが可能である。又、更に1μmからサブμmオーダーの幾何学構造を作ることによりホログラム色を呈する表面を転写することが可能である。本実施例では、フィルム11はフィルムカートリッジ14として供給され交換可能である。又、本実施例では、表面処理装置100は、部分的に処理が可能であるため、これらのフィルム11から種類の異なるフィルム11を複数備えて、必要な場所にのみさまざまな形状やホログラム色を処理することが可能である。
【0042】
本実施例では、フィルム11のサイズは、その搬送方向と略直交する方向の幅が320mm〜350mm程度のものを使用し、サーマルヘッド8の同方向の幅も同等の幅を持つものを使用する。これにより、A3サイズ程度までの様々なサイズの被処理媒体Sに対応することが可能である。又、本実施例では、フィルム11は、その表面が平滑で、被処理媒体Sに光沢を付与するためのものであるものとする。又、本実施例では、フィルム107は、熱可塑性フィルムから成り、その薄さから、一度使用すると、加熱部分にしわが発生し、再利用することはできない。
【0043】
2−4.分離部
フィルム11から被処理媒体Sが分離する部分(分離部)について説明する。適切な表面処理のためには、サーマルヘッド8及び分離部の構成は重要である。本実施例では、分離部材15は、フィルム11の冷却機能と曲率によるフィルム11からの被処理媒体Sの分離機能の2つの役目を担っている。本実施例では、分離部材15は、SUS板などの金属により構成し、分離曲率(本例では曲率半径で1mm)を十分小さい値に設定することにより、被処理媒体Sとフィルム11とを確実に離型できるようにした。
【0044】
又、分離部材15には、分離部の温度上昇を抑えるため冷却機構(図示せず)が設けられていることが望ましい。冷却機構としては、空冷機構を設けたり、冷却フィンを取り付けたりすることなどが有効である。
【0045】
又、分離部の温度は、複数箇所に設けられた温度検知手段としてのサーミスタ抵抗により監視し、冷却目標温度T1℃以下になるよう、ファン風量や印字動作を制御する。冷却目標温度は、被処理媒体S上の色材或いはオーバーコート材などの、被処理媒体Sの表層の樹脂(熱可塑性樹脂)のTgに合わせることが望ましい。Tgと溶融開始点のずれを考慮すると、Tg+15℃程度以下に設定するのが好ましく、Tg以下に設定するのが更に好ましい。又、色材層には樹脂や着色材以外にWaxなどの成分を含む表層材質もある。この場合、Waxの融点以下に設定することが好ましい。記録材質が定まらない場合は室温程度に十分低い温度に設定することが好ましい。例えば30〜50℃程度が良好である。
【0046】
2−5.被処理媒体(カット紙)
本実施例では、被処理媒体Sとして、電子写真画像形成装置により出力された印刷物を用いた。例えば、CMYKの4色プロセスにより画像が形成された記録材、或いはCMYKの4色のトナーによる記録画像と色材を含まない樹脂主体の透明トナー(クリアトナー)とを用いた5色プロセスにより画像が形成された記録材が挙げられる。透明トナーとしては、例えば、顔料を含まず、主にポリエステル樹脂で構成されるものを用いることができる。又、透明トナーとしては、光透過性が高く、着色剤が実質的に入らない樹脂から成る、実質的に無色であり、少なくとも可視光を実質的に散乱することなく良く透過する粒子を好適に用いることができる。但し、透明トナーは、定着後に上述のように実質的に無色透明となるものであれば好適に用いることができ、定着前には無色透明でなくてもよく、例えば集合したときに白色に見えるようなものであっても構わない。例えば、透明トナーは、CMYKに分版後、印字率の低い部分に透明トナーを補い、記録材の全体をトナーで覆うように印字パターンを決定し出力することができる。これにより、被処理媒体Sの任意の場所の表面処理が可能となる。その他、一定量の透明トナーを記録材の全面に載せるなどしてもよい。例えば、電子写真画像形成装置による印刷物のグロスは、60°グロスで10%程度になるよう電子写真画像形成装置におけるトナーの定着状態を調整することができる。
【0047】
又、例えば、被処理媒体Sとして、上記4色及び5色プロセスに限らず、樹脂コーティングを施した記録材に4色プロセスにより画像が形成された記録材を用いてもよい。
【0048】
又、例えば、溶融熱転写記録、昇華熱転写記録、インクジェット記録などにより記録された記録も同様に、被処理媒体Sとして用いることができる。この場合も、熱可塑性樹脂で記録材の面を覆うことより、被処理媒体Sの全面の任意の場所の表面処理が可能となる。
【0049】
2−6.搬送ローラ
本実施例では、被処理媒体Sの最小サイズとしては、写真のL版相当を想定しているため、各ローラ間のピッチは約100mm以下としている。プラテンローラ7も同様、上流・下流の搬送ローラとの距離は約100mmである。
【0050】
3.表面処理動作
図6は、本実施例の表面処理装置100の概略制御態様を示す。
【0051】
表面処理装置100の動作は、制御手段としてのコントローラ150によって制御される。コントローラ150には、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部装置501や操作部170から光沢処理データ(処理命令、光沢処理命令、加熱処理命令)が伝送され、演算制御部としてのCPU151がその光沢処理データを取得する。又、CPU151は、搬送手段としての搬送ローラ対4、9、レジストローラ対5などの搬送制御、イメージセンサー(CIS)60の読み取り制御、サーマルヘッド8の着脱手段の動作制御などを行う。更に、CPU151は、フィルム巻取り手段としての巻き取り軸13の動作制御、サーマルヘッド駆動回路160の駆動制御、被処理媒体検知手段としての先端検知センサー6、サイドエッジ検知センサー61の検知制御などを行う。
【0052】
更に説明すると、表面処理装置100の各種動作は、コントローラ(制御部)150により統括的に制御される。コントローラ150はパーソナルコンピュータなどの外部装置501から送られてくる光沢処理データや、表面処理装置100に設けられた操作部170により入力される光沢処理データに基づいて表面処理装置100の各部の動作を制御する。コントローラ150は、CPU151、記憶手段としてのROM152及びRAM153などを有し、CPU151が光沢処理データに応じて、ROM152、RAM153に格納されたプログラムやデータに従って制御を実行する。光沢処理データは、対応する領域が処理部Tを通過するタイミングに合わせてサーマルヘッド8を選択的に発熱させるための光沢処理パターン(加熱位置情報)を含む。又、光沢処理データは被処理媒体Sに形成されている画像の元となる情報である元画像データ(元画像情報)を含む。尚、元画像データは、当該元画像データに従って画像が形成された記録材(被処理媒体)上の画像の位置を示す情報を含んでいる。又、光沢処理データは、被処理媒体Sのサイズの情報を含む。更に、光沢処理データは、その中に光沢処理パターンが含まれる、画像上の一定の領域を指定する処理領域情報を含んでいてよい。
【0053】
サーマルヘッド8は、詳しくは後述するように、上述のような光沢処理データに基づいて、被処理媒体Sの所定位置に対応して発熱して、被処理媒体Sの表面処理を行なう。本実施例では、コントローラ150に入力された光沢処理データはRAM153に格納される。
【0054】
図7は、本実施例の表面処理装置100の表面処理動作の手順を示す。
【0055】
図7を参照して、先ず、S1及びS2において、コントローラ150は、次の処理を行う。即ち、パーソナルコンピュータやその他の接続機器(USBメモリー、SDカード等)といった外部装置501からの光沢処理データの受信の有無(S1)及び操作部170からの光沢処理データの入力の有無(S2)を確認する。光沢処理データは、光沢処理する被処理媒体Sのサイズ、光沢処理パターン、処理領域、元画像データ等で構成されている。
【0056】
光沢処理データが受信又は入力されると、S3において、コントローラ150は、被処理媒体Sの搬送を開始する。即ち、記録紙Pに画像が記録されている被処理媒体Sを積載したカセット2から、供給ローラ3で被処理媒体Sが一枚ずつ装置本体1内に分離給送されると共に、被処理媒体Sが搬送ローラ対4によって挟持されて搬送される。
【0057】
次に、S4において、コントローラ150は、CIS60を制御して、被処理媒体Sの外形形状(プロファイル)と被処理媒体S上の画像の読み込みを行なう。CIS60は、図9に示すように、被処理媒体Sの搬送方向における光沢処理が行なわれる処理部(ニップ部)Tとの間の距離L0と、搬送する被処理媒体Sの最大長さLpとの関係が、L0>Lpとなる位置に配置されている。そのため、コントローラ150は、光沢処理が開始される前に読み込み及び画像処理を終了することができる。
【0058】
次に、S5において、コントローラ150は、次の処理を行う。即ち、S4で読み込んだ被処理媒体Sの外形形状の情報である外形形状データ(外形形状情報)と、被処理媒体S上の画像の情報である実画像データ(実画像情報)と、S1又はS2で受信又は入力された光沢処理データとを比較する。光沢処理データは、上述のように、被処理媒体Sのサイズ、光沢処理パターン、処理領域、元画像データ等で構成される。そして、コントローラ150は、当該光沢処理データに含まれる光沢処理パターンを補正する。
【0059】
より具体的には、コントローラ150は、光沢処理データに含まれる元画像データが示す被処理媒体S上の画像の位置と、外形形状データ及び実画像データが示す被処理媒体S上の実際に形成されている画像の位置との差異を示す情報を求める。そして、コントローラ150は、光沢処理データに含まれる光沢処理パターンを、その差異を示す情報に基づいて補正する。又、コントローラ150は、後述するように、この補正後の光沢処理パターンに従ってサーマルヘッド8による光沢処理(加熱処理)を制御する。
【0060】
即ち、本実施例では、コントローラ150には、元画像データと光沢処理パターンとが、外部装置501から光沢処理データとして入力されている。又、コントローラ150には、被処理媒体Sの外形形状データと実画像データとが、CIS60から入力される。元画像データは、当該元画像データに従って画像が形成された被処理媒体S上の画像の位置を示す情報を含んでいる。従って、元画像データが示す被処理媒体上の画像の位置と、外形形状データ及び実画像データが示す被処理媒体上の実際に形成されている画像の位置とを比較することで、次のことが可能となる。即ち、元画像データが示す被処理媒体S上の画像の位置に対する、被処理媒体S上に実際に形成されている画像のズレの程度を求めることができる。
【0061】
より具体的には、本実施例では、コントローラ150は、CIS60から入力された外形形状データ及び実画像データから、被処理媒体S上に形成された画像の被処理媒体Sの搬送方向の先端側の縁部(先端エッジ)を基準とした位置を求める。そして、コントローラ150は、被処理媒体S上に形成された画像の先端エッジを基準とした位置と、元画像データが示す画像の被処理媒体Sの先端エッジを基準とした位置とを比較する。これにより、元画像データが示す画像に対する被処理媒体S上に実際に形成されている画像の倍率変化(縮小又は拡大)の程度を求めることができる。先端エッジを基準として画像データを比較して、画像の倍率変化を求める際の具体的な演算処理方法は、斯界にて利用可能な任意の方法を用いることができ、本発明においては斯かる方法自体は任意である。
【0062】
又、コントローラ150は、CIS60から入力された外形形状データ及び実画像データから、被処理媒体S上に形成された画像の先端エッジ及び被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向の側部の縁部(サイドエッジ)を基準とした位置を求める。そして、コントローラ150は、この求めた位置と、元画像データが示す画像の被処理媒体Sの先端エッジ及びサイドエッジを基準とした位置とから、被処理媒体S上に形成された画像のオフセット、回転、又は変形の量を求めることができる。サイドエッジとしては、被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向において、いずれか一方のサイドエッジを基準とすることができる。尚、画像のオフセットは、元画像データが示す画像の搬送方向及び/又は搬送方向と略直交する方向へ、画像が平行移動した場合である。画像の回転は、元画像データが示す画像の搬送方向に沿う方向が、被処理媒体Sの搬送方向に対して傾いた場合である。又、画像の変形は、典型的には、画像がひし形に変形した場合のように、元画像データが示す画像の搬送方向の位置毎に、一定の割合で搬送方向と略直交する方向の位置がずれた場合である。画像のオフセット量、回転量(傾き量)、倍率変化を求める際の具体的な演算処理方法は、斯界にて利用可能な任意の方法を用いることができ、本発明においては斯かる方法自体は任意である。
【0063】
図8は、光沢処理データ補正処理(S5)の手順の一例をより詳細に示す。
【0064】
S501において、コントローラ150は、S4で読み込んだ実画像データを、読み込んだ外形形状データに基づいて被処理媒体Sの搬送方向先端基準に変換する。
【0065】
次に、S502において、コントローラ150は、次の処理を行う。即ち、画像の倍率を、S1又はS2で受信又は入力された光沢処理データ(被処理媒体Sのサイズ、光沢処理パターン、処理領域、元画像データ等で構成される)の元画像データと、S4で読み込んだ実画像データとの比較により算出する。この時に比較する画像は、典型的にはS1又はS2で入力された光沢処理データに含まれる元画像データの全域であるが、元画像データの一部であってもよく、この場合少なくとも処理領域(光沢処理パターンとその近傍)を含むことが望ましい。光沢処理を行う部分の倍率変化をより正確に求めるためである。
【0066】
次に、S503において、コントローラ150は、S502と同様に、次の処理を行う。即ち、光沢処理データの元画像データと、実画像データ及び外形形状データとの比較により、元画像データの示す画像の位置と被処理媒体Sに実際に形成された画像との位置ズレ(被処理媒体Sに対する画像の位置のオフセット量/回転量)を算出する。
【0067】
更に、S504において、コントローラ150は、S502及びS503と同様に、光沢処理データの元画像データと実画像データ及び外形形状データとの比較によって、画像の変形量を算出する。画像の変形の基準は、画像データのセンターを基準に算出される。
【0068】
そして、S505において、コントローラ150は、S501〜S504での倍率、変形量、位置ズレ量の算出結果を基に、光沢処理データに含まれる、加熱位置を規定する光沢処理パターンの補正データを作成し、図7におけるS6へ進む。尚、S502〜S504の処理ステップは平行して処理してもよい。
【0069】
このように、本実施例では、(1)実画像の元画像データに対する倍率が異なる場合、(2)実画像がオフセットしている場合、(3)実画像が回転している場合、(4)実画像が変形している場合には、それぞれ次のようにして光沢処理パターンが補正される。即ち、(1)実画像の全体の元画像データに対する倍率が異なる場合は、S502で算出された倍率を基にして、コントローラ150によって、光沢処理パターンの全体の倍率を変更する。又、(2)実画像がオフセットしている場合は、被処理媒体Sの先端エッジ基準に対する搬送方向の画像位置及びサイドエッジ基準に対する光沢処理パターンの位置を変更する。又、(3)実画像の全体が回転している場合は、画像センター(搬送方向)に対して光沢処理パターンを回転させる。又、(4)実画像が変形している場合は、画像データのセンターに対する画像の変形量に合わせて光沢処理パターンを変形(縦横比を変更)させる。尚、画像の変形は、前述のように、典型的には、元画像データが示す画像の搬送方向の位置毎に、一定の割合で搬送方向と略直交する方向の位置がずれた場合である。そのため、光沢処理パターンも、搬送方向の位置毎に、一定の割合で搬送方向と略直交する方向の位置をずらすことで補正することができる。
【0070】
尚、被処理媒体上に形成された画像の位置と元画像データが示す被処理媒体S上の位置との間で、オフセット、回転、変形、倍率変化のいずれもが常に生じるわけではない。例えば、被処理媒体Sに画像を形成した画像形成装置の特性などによって、いずれかが生じ易い場合がある。従って、本実施例では、上述のように、オフセット、回転、変形、倍率変化のいずれが生じた場合にも対応できるようにしたが、これらのいずれかのみ又はいくつかに対応できるようになっていてもよい。
【0071】
図7を再び参照して、本実施例では、S4の処理と並行して、コントローラ150は、被処理媒体Sをレジストローラ対5の位置まで予め搬送し、斜行補正するために一旦停止させる。レジストローラ対5の上流には、サイドエッジ検知センサー61(61a、61b)が配置されている。従って、この際に、コントローラ150は、サイドエッジセンサー61(61a、61b)を制御して、被処理媒体Sの両サイドエッジの位置を検知する。その後、コントローラ150は、レジストローラ対5を駆動させて被処理媒体Sの搬送を再開する。本実施例では、こうして被処理媒体Sの搬送を再開して、被処理媒体Sの後端までCIS60による画像の読み取りが終了したら、上述のS5の処理が行われる。
【0072】
そして、S6において、コントローラ150は、被処理媒体Sの先端を先端検知センサー6(6a、6b)で検知する。この時、コントローラ150は、次の情報に基づいて、被処理媒体Sに対する光沢処理の開始位置(光沢画像の搬送方向及び該搬送方向と略直交する方向の位置)を決定する。即ち、サイドエッジ検知センサー61(61a、61b)での検知結果、S4で読み込んだ被処理媒体Sの外形形状、先端検知センサー6(6a、6b)の検知結果、及びS5で補正された光沢処理パターンである。
【0073】
本実施例では、図4に示すように、サーマルヘッド8は、通常時はプラテンローラ7から離間した状態で待機している。そして、S7において、コントローラ150は、次の処理を行う。即ち、被処理媒体Sの先端が先端検知センサー6(6a、6b)を通過するタイミングを基に、図5に示すようにサーマルヘッド8を図中下方に移動させて、プラテンローラ7に押圧するように、サーマルヘッド着脱手段の駆動(加圧動作)を制御する。本実施例では、サーマルヘッド着脱手段は、サーマルヘッド8を支持するサーマルヘッドホルダーをプラテンローラ7に向けて付勢するバネなどの付勢手段を有する。又、このサーマルヘッド着脱手段は、上記付勢手段の付勢力に抗してサーマルヘッドホルダーをプラテンローラ7から離れる方向に移動させるカムなどの移動手段を有する。又、このサーマルヘッド着脱手段は、上記移動手段を駆動するモータとされる駆動源を有する。コントローラ150は、この駆動源を制御することで、サーマルヘッド8とプラテンローラ7との当接・離間の動作、そのタイミングを制御することができる。尚、本実施例では、上述のようにサーマルヘッド8をプラテンローラ7に対して着脱させる構成とする。斯かる構成は、フィルム11の消費量を低減できる点で好ましい。しかし、サーマルヘッド8はプラテンローラ7に押圧されている構成とすることもできる。
【0074】
コントローラ150は、S7でサーマルヘッド8の加圧を完了させてからフィルム搬送を開始させる。即ち、巻き取り軸13は、図4の状態では停止しており、図5のようにプラテンローラ7にサーマルヘッド8が押圧されると、巻き取り軸13も同時に駆動される。このため、巻き取り軸13は、光沢処理中は、フィルム11が被処理媒体Sから分離するテンションを発生させつつ、被処理媒体Sの搬送と共に搬送されるフィルム11を巻き取るようになっている。
【0075】
処理部(ニップ部)Tにおいては、被処理媒体Sの搬送経路を挟んでプラテンローラ7と、光沢処理パターンに応じて選択的に発熱するサーマルヘッド8とが対向している。そして、サーマルヘッド8の下方にはフィルム11、更にその下方に被処理媒体Sが搬送される。フィルム11は、フィルムカートリッジ14に収納されており、サーマルヘッド8とプラテンローラ7とにより、被処理媒体Sと共に挟持されて搬送される。
【0076】
S9において、コントローラ150は、サーマルヘッド8の発熱抵抗体を、S5で補正された光沢処理データに基づいた光沢処理パターンにより選択的に加熱するように制御する。これにより、フィルム11と被処理媒体Sをサーマルヘッド8とプラテンローラ7との間に挟持して搬送しながら、被処理媒体S上のトナー像を再溶融させる。被処理媒体Sの搬送方向においてサーマルヘッド8の下流には分離部材15が設けられており、フィルム11は被処理媒体Sから分離される。この時、被処理媒体Sは十分に冷却されているため、被処理媒体Sの表面のトナー像は、フィルム11の表面性が転写された状態で固化し、被処理媒体Sに所望の表面性が転写されて、光沢性が付与される。
【0077】
フィルムカートリッジ14内に設けられているフィルム11の巻き取り軸13には、駆動装置(巻き取り軸駆動モータM1)が接続されている。尚、供給軸12にも駆動装置が設けられ、フィルム11を逆方向に巻き取ることでフィルム11のたるみを防止するようになっていてよい。巻き取り軸13は、被処理媒体Sの搬送に伴って搬送されるフィルム11を巻き取り、同時に分離部材15による分離部でフィルム11と被処理媒体Sを分離するために必要なテンションを発生させている。このテンションは、被処理媒体Sの搬送速度よりフィルム11の巻き取り速度を若干速めに設定し、駆動装置にトルクリミッタ等を介すことで発生させている。
【0078】
光沢処理の終了後に、コントローラ150は、S10において巻き取り軸13の回転を停止するように制御し、S11において図4に示すようにサーマルヘッド8をプラテンローラ7から離間(圧解除)させるように制御する。
【0079】
最後に、被処理媒体Sは、排出ローラ対10へ案内され、装置本体1の筐体外へ排出されて、光沢処理工程が終了する。尚、本実施例では、表面処理時(記録時)の被処理媒体(被記録媒体)Sの移動スピードは100mm/sに制御した。
【0080】
図10は、入力された又は伝送された元画像データに対して、実際の被処理媒体S上の画像に光沢処理を施した後の成果物の例を示している。
【0081】
図10(A)は、被処理媒体Sが搬送方向に対して縮んでいる場合である。この場合、長さの短くなった透明トナー画像の領域に搬送方向に縮小された光沢文字(「IMAGE IMAGE」)が形成される。それと共に、三角形状の光沢領域の頂点と文字Aとの位置関係が一致するように搬送方向に縮小されて頂点位置が形成されている。
【0082】
図10(B)は、画像が搬送方向に伸びた場合である。この場合、長さの長くなった透明トナー画像の領域に、搬送方向に拡大された光沢文字(「IMAGE IMAGE」)が形成される。それと共に、三角形状の光沢領域の頂点と文字Aとの位置関係が一致するように搬送方向に拡大されて頂点位置が形成されている。
【0083】
図10(C)は、被処理媒体S上の画像がひし形に変形している場合である。この場合、変形した透明トナー画像の領域に合わせて光沢文字(「IMAGE IMAGE」)がひし形に変形されて形成されている。
【0084】
図10(D)は、被処理媒体S上の画像が回転して位置がずれている場合である。この場合、ずれた透明トナー画像の領域に合わせて光沢文字(「IMAGE IMAGE」)が回転されて形成されている。
【0085】
このように、本実施例では、表面処理装置100は、被処理媒体Sを搬送する搬送手段としての搬送ローラ対4、9、レジストローラ対5、プラテンローラ7などを有する。又、表面処理装置100は、フィルム11を介して被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向における被処理媒体Sの表面の異なる位置を選択的に加熱することができる加熱手段としてのサーマルヘッド8を有する。この表面処理装置100は、搬送手段7によって搬送される、元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体Sの表面を、加熱手段8によって部分的に加熱する処理を行う。
【0086】
又、本実施例では、表面処理装置100は、加熱手段8による加熱処理を制御する制御手段としてのコントローラ150を有する。又、表面処理装置100は、元画像情報を制御手段150に入力する元画像情報入力手段を有する。本実施例では、外部装置501からの情報を制御手段150に入力するインターフェースや操作部17が元画像情報入力手段を構成する。又、表面処理装置100は、次のような読み取り手段を有する。即ち、読み取り手段は、加熱手段8による被処理媒体Sの加熱処理部Tよりも被処理媒体Sの搬送方向上流に配置され、元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体Sの外形形状と、該被処理媒体上の画像とを読み取る。そして、読み取り手段は、被処理媒体Sの外形形状の情報である外形形状情報と、その被処理媒体上の画像の情報である実画像情報とを制御手段150に入力する。本実施例では、CIS60が読み取り手段を構成する。又、表面処理装置100は、被処理媒体上の加熱手段8による加熱位置を示す加熱位置情報を制御手段に入力する加熱位置情報入力手段を有する。本実施例では、外部装置501からの情報を制御手段150に入力するインターフェースや操作部17が加熱位置情報入力手段を構成する。
【0087】
そして、本実施例では、制御手段150は、元画像情報が示す被処理媒体上の画像の位置と、外形形状情報及び実画像情報が示す被処理媒体上の実際に形成されている画像の位置との差異を示す情報を求める。そして、制御手段150は、入力された加熱位置情報を上記差異を示す情報に基づいて補正して、補正後の加熱位置情報に従って加熱手段8による加熱処理を制御する。特に、本実施例では、制御手段150は、上記差異を示す情報として、元画像情報が示す画像と実画像情報が示す画像との間における、オフセット、回転、変形及び倍率変化のうち少なくとも一つの程度を示す情報を求める。より詳細には、制御手段150は、元画像情報が示す画像と実画像情報が示す画像との間における、オフセット、変形、回転及び倍率変化のうち少なくとも一つの程度を示す情報に適合するように、次のような処理を行う。即ち、入力された加熱位置情報が示す加熱手段8による加熱パターンを、オフセットさせ、回転させ、変形させ、又は倍率変化させて、加熱位置情報の補正を行う。
【0088】
又、本実施例では、表面処理装置100は、加熱処理部Tよりも被処理媒体Sの搬送方向上流に配置され被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向の側部を検知する被処理媒体側部検知手段としてのサイドエッジ検知センサー61を有する。又、本実施例では、表面処理装置100は、加熱処理部Tよりも被処理媒体Sの搬送方向上流に配置され被処理媒体Sの搬送方向の先端を検知する被処理媒体先端検知手段としての先端検知センサー6を有する。そして、制御手段150は、被処理媒体側部検知手段61の検知結果と、被処理媒体先端検知手段6の検知結果と、補正後の加熱位置情報とから、加熱手段8による加熱開始位置を決定する。
【0089】
又、本実施例では、読み取り手段60は、加熱手段8による被処理媒体Sの加熱処理が開始される前に該被処理媒体Sの外形形状及び該被処理媒体上の画像を読み取る。特に、本実施例では、読み取り手段60の画像読み取り位置から加熱手段8による加熱位置までの被処理媒体Sの搬送距離は、被処理媒体Sの搬送方向の最大長さよりも大きい。
【0090】
以上、本実施例によれば、被処理媒体S上の画像に対して所定の位置の被処理媒体Sの表面の表面性状を部分的に制御する際に、次のような場合でも、処理位置を精度よく実際の被処理媒体S上の画像に合わせることが可能となる。即ち、実際の被処理媒体S上の画像が入力された元画像データに対してズレが生じている場合や変形している場合、又は被処理媒体S自体が収縮している場合である。従って、本実施例によれば、被処理媒体S上の画像に対して所定の位置の被処理媒体Sの表面の表面性状を部分的に制御する場合に、被処理媒体S上の画像と処理位置とを精度よく位置合わせることが可能となる。
【0091】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例において、実施例1の表面処理装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0092】
実施例1では、表面処理装置は、電子写真方式の画像形成装置によって別途画像が形成された記録材を被処理媒体として、その表面処理を行う個別の表面処理装置であった。しかし、表面処理装置は、電子写真方式の画像形成装置に接続され、画像形成装置において画像が形成された記録材が、被処理媒体として表面処理装置に搬送されるものであってもよい。
【0093】
図11は、本発明の一実施例に係る表面処理装置を備えた画像形成システムの全体構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100と、電子写真方式の画像形成装置200とが連結されて、画像形成システム300が構成されている。画像形成システム300は、画像形成装置200において記録用紙などの記録材Pに電子写真方式により熱溶融性トナーで画像を形成して、記録材Pの搬送方向において下流側に連結された表面処理装置100に受け渡す。表面処理装置100は、この画像が形成された記録材Pを被処理媒体Sとして、その表面の表面性状を制御する処理(表面処理)を行った後に出力する。
【0094】
本実施例では、画像形成装置200は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる中間転写方式を採用した1ドラム型の画像形成装置である。
【0095】
画像形成装置200は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム201を有する。感光ドラム201は、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム201の周りには、その回転方向に従って順に次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としての帯電ローラ202である。次に、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ)203である。次に、現像手段としての複数の現像器204を備えたロータリー現像装置240である。次に、転写手段としての中間転写ユニット205である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ206である。
【0096】
中間転写ユニット205は、感光ドラム201に対向するように、中間転写体として無端ベルト状の中間転写体ベルト253を有する。中間転写ベルト253は、複数の張架ローラに張架されて図中矢印R2方向に回転駆動される。中間転写ベルト253の内周面側には、感光ドラム201と対向する位置に一次転写手段としての一次転写ローラ251が配置されており、中間転写ベルト253と感光ドラム201とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1が形成されている。又、中間転写ベルト253の外周面側において、中間転写ベルト253と接触して二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成するように、二次転写手段としての二次転写ローラ252が配置されている。
【0097】
本実施例では、ロータリー現像装置203は、それぞれCMYKの各色のトナーを用いる現像器204に加え、透明トナー(クリアトナー)を用いる現像器204を有している。表面処理装置100は、トナー像を再加熱してフィルム11の表面性を転写することで光沢性を付与する装置であるため、トナー量が比較的少ない画像部では光沢性を十分に付与することが難しい。このためトナー量が比較的少ない画像部や余白部などに透明トナーを使用することにより、このような部分にも光沢処理をすることが可能となる。尚、透明トナーであるために、本来のフルカラー画像に対して影響を及ぼすことはない。
【0098】
尚、YMCKの4色のトナーは、樹脂と顔料とを主成分とする微粉体であり、又透明トナーは顔料を含まない樹脂を主成分とする微粉体である。本実施例では、トナーを構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いた。
【0099】
画像形成装置200は更に、記録材Pを給送する給送部207、記録材Pにトナー像を定着させる定着部208、記録材Pを画像形成装置200から表面処理装置100へと搬送する排出部209などを有して構成されている。
【0100】
斯かる構成の画像形成装置200は、一般的な電子写真方式の画像形成装置と同様の動作で透明トナーを含むフルカラーの画像形成を行なうことができる。透明トナーを含むフルカラー画像の形成時を例として説明すると、画像形成時には、回転する感光ドラム201の表面は帯電ローラ202によって一様に帯電させられる。又、帯電した感光ドラム201の表面は、露光装置203に分解色の画像信号が入力されることで、この画像信号に応じて走査露光される。これにより、感光ドラム201上には画像信号に応じた静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム201上に形成された静電潜像は、当該分解色に対応する現像器204によって、対応する色のトナーが供給されてトナー像として現像される。感光ドラム201上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ251の作用によって中間転写体ベルト253に一次転写される。このような帯電、露光、現像、一次転写の各工程を、必要な分解色分(ここでは、YMCK及び透明)繰り返し、中間転写ベルト253上に各色のトナーが順次に重ね合わせるように一次転写された多重トナー像を形成する。中間転写ベルト253に形成されたトナー像は、二次転写ローラ252の作用によって、記録材P上に一括して二次転写される。記録材Pは、中間転写ベルト253上の多重トナー像とタイミングを合わせて、給送部207から二次転写部N2に搬送されてくる。又、このタイミングに合わせて、二次転写ローラ252が中間転写ベルト253に当接される。トナー像が転写された記録材Pは、定着部208に搬送され、ここで加熱及び加圧されることで、記録材P上にトナー像が定着される。一次転写工程後に感光ドラム201上に残留したトナーは、ドラムクリーナ206によって除去されて回収される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト253上に残留したトナーは、図示しないクリーニング手段によって除去されて回収される。そして、画像が定着された記録材Pは、表面処理装置100における被処理媒体Sとして、排出部209により表面処理装置100へと搬送される。
【0101】
表面処理装置100は、画像形成装置200の排出部209に接続されている。このため、通常の画像形成装置200の排出部に設けられる排出トレイ、又表面処理装置100の給送部に設けられる給送装置は、本実施例の画像形成システム300には含まれていない。
【0102】
又、表面処理装置100の構成は、実施例1のものと実質的に同じである。但し、本実施例では、上述のように、実施例1の表面処理装置100におけるカセット2、供給ローラ3は設けられておらず、画像形成装置200から画像形成済みの記録材Pが被処理媒体Sとして直接搬送される。又、本実施例では、表面処理装置100のコントローラ500は、図示しない画像形成装置200側のコントローラ(制御部)と通信可能である。そして、本実施例では、コントローラ500は、画像形成装置200から入力される光沢処理データや、表面処理装置100に設けられた操作部170により入力される光沢処理データに基づいて、表面処理装置100の各部の動作を制御することができる。光沢処理データは、対応する領域が処理部Tを通過するタイミングに合わせてサーマルヘッド8を選択的に発熱させるための光沢処理パターン(加熱位置情報)を含む。サーマルヘッド8は、その光沢処理パターンに基づき被処理媒体Sの所定位置に対応して発熱して、被処理媒体Sの表面処理を行なう。実施例1と同様、コントローラ500は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から光沢処理データが入力されるようになっていてもよい。
【0103】
画像形成装置200の排出部209から排出される、例えば透明トナーを含むフルカラーの記録材Pは、被処理媒体Sとして表面処理装置100の搬送ローラ対4へと搬送される。搬送ローラ対4へと搬送された被処理媒体Sに対する光沢処理は、実施例1で説明したのと同様に行なわれる。
【0104】
このようなインラインで光沢処理を行う場合、表面処理装置100の処理能力は画像形成装置200の印刷処理能力より高いことが望ましい。表面処理装置100の処理能力が画像形成装置200の印刷能力より低い場合は、画像形成装置200の印刷スピードを落とすか、紙間を開けるなどして表面処理装置100の処理能力に合わせる必要がある。
【0105】
図11において、CIS60は、画像形成装置200の筐体から分離可能な表面処理装置100の筐体側に配置されている。しかし、これに限定されるものではなく、このCIS60は、表面処理装置100の筐体から分離可能な画像形成装置200の筐体側の、定着部208の被処理媒体Sの搬送方向下流に配置することもできる。この場合も、実施例1と同様に、記録材P(即ち、被処理媒体S)上の画像を読み取って、光沢処理データを補正することが可能である。尚、この場合も全体として本実施例と同様に、本発明に従う表面処理装置と、記録材に画像を形成してこれを被処理媒体として該表面処理装置に供給する画像形成装置とから成る画像形成システムが構成されることに変わりない。
【0106】
このように表面処理装置100を画像形成装置200の排出部209と接続することにより、インラインでの光沢処理が可能となり、光沢処理を施した印刷物を作成する際の生産性が向上する。
【0107】
尚、特定の画像形成装置との接続のため予め接続された画像形成装置固有の画像変形量や位置ズレ量などが判っている場合がある。この場合には、光沢処理データと共に画像変形量のデータや位置ズレ量のデータを伝送することによって、画像変形量の算出ステップ及び位置ズレ量の算出ステップをなくすことも可能である。
【0108】
更に、表面処理装置100の下流側に製本や仕分け等の後処理装置を接続することも可能である。
【0109】
このように、本実施例では、画像形成システム300は、表面処理装置100と、記録材Pに元画像情報に従って画像を形成して該記録材Pを被処理媒体Sとして表面処理装置100に供給する画像形成装置200と、を有して構成される。
【0110】
このような画像形成システム300に本発明に従う表面処理装置を適用しても、上記実施例1と同様の効果を奏し得る。
【0111】
その他
上述の実施例では、被処理媒体の表面の表面性状を制御するものとして一旦出力した画像上に光沢画像を得る場合について説明した。一方、印刷物としては、特色として、金、銀などの金属質を表現することが求められることがある。静電気力を用いて画像を形成する電子写真装置では、画像を形成する基材であるトナーに金属系の材質を使用することは原理的に困難である。サーマルヘッドを用いた熱転写プリンタ(熱転写方式)では、金属色のインクとして、例えばフィルムに金属蒸着層を形成し、これを熱により転写することにより、金属質の画像を形成することが可能である(特許文献3)。熱転写方式で使用するフィルムは、フィルム基材と、フィルム基材にコーティングされたインク層とを有する。インク層は剥離層を介してフィルム基材にコーティングされることがあり、又インク層の上には接着層が設けられることがある。金、銀に限らず、このような特色を後処理で印刷物に画像形成する場合にも、印刷物と特色の位置合わせは重要である。本発明は、このようなフィルムに金、銀などの金属色のインクを蒸着したものを用い、サーマルヘッドで加熱することにより、一旦出力した画像上にこれらの特色の画像を熱転写する場合にも適用することができる。この場合、上述の実施例における光沢画像と出力画像との位置合わせの場合と同様に、特色の画像と出力画像との位置合わせを良好に行うことができる。本発明においては、このように被処理媒体の表面に部分的に金属色のインクを熱転写し、金属光沢などの金属質の表現を付与することも含めて、被処理媒体の表面処理という。即ち、フィルムは被処理媒体上の熱可塑性樹脂画像表面と表面粗さが異なる表面粗さを表層に有するもの、或いは被処理媒体に加熱により溶融して転写されるインクがコーティングされたものとすることができる。このように、本発明は、フィルムを介して加熱して被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御したり、フィルム上の熱溶融性インクを被処理媒体の表面に部分的に熱転写したりする表面処理装置及びこれを備えた画像形成システムに適用可能である。
【0112】
又、上述の実施例で画像読み取り手段として用いたCISの替わりに、カメラ(デジタルカメラ)を用いて画像及び記録紙の外形形状を読み込むことで可能である。尚、光沢処理データの補正フローは実施例1で説明したものと同じである。
【符号の説明】
【0113】
6 先端検知センサー
7 プラテンローラ
8 サーマルヘッド
11 フィルム
60 CIS(コンタクトイメージセンサー)
61 サイドエッジ検知センサー
100 表面処理装置
150 コントローラ
170 操作部
S 被処理媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理媒体を搬送する搬送手段と、フィルムを介して被処理媒体の搬送方向と略直交する方向における被処理媒体の表面の異なる位置を選択的に加熱することができる加熱手段と、を有し、前記搬送手段によって搬送される、元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体の表面を、前記加熱手段によって部分的に加熱する処理を行う表面処理装置において、
前記加熱手段による加熱処理を制御する制御手段と、
前記元画像情報を前記制御手段に入力する元画像情報入力手段と、
前記加熱手段による被処理媒体の加熱処理部よりも被処理媒体の搬送方向上流に配置され、前記元画像情報に従って表面に画像が形成されている被処理媒体の外形形状と、該被処理媒体上の画像とを読み取り、被処理媒体の外形形状の情報である外形形状情報と、その被処理媒体上の画像の情報である実画像情報とを前記制御手段に入力する読み取り手段と、
前記被処理媒体上の前記加熱手段による加熱位置を示す加熱位置情報を前記制御手段に入力する加熱位置情報入力手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記元画像情報が示す被処理媒体上の画像の位置と、前記外形形状情報及び前記実画像情報が示す被処理媒体上の実際に形成されている画像の位置との差異を示す情報を求め、入力された前記加熱位置情報を前記差異を示す情報に基づいて補正して、補正後の加熱位置情報に従って前記加熱手段による加熱処理を制御することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記差異を示す情報として、前記元画像情報が示す画像と前記実画像情報が示す画像との間における、オフセット、回転、変形及び倍率変化のうち少なくとも一つの程度を示す情報を求めることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記元画像情報が示す画像と前記実画像情報が示す画像との間における、オフセット、変形、回転及び倍率変化のうち少なくとも一つの程度を示す情報に適合するように、入力された前記加熱位置情報が示す前記加熱手段による加熱パターンを、オフセットさせ、回転させ、変形させ、又は倍率変化させて、前記加熱位置情報の補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記加熱処理部よりも被処理媒体の搬送方向上流に配置され被処理媒体の搬送方向と略直交する方向の側部を検知する被処理媒体側部検知手段と、前記加熱処理部よりも被処理媒体の搬送方向上流に配置され被処理媒体の搬送方向の先端を検知する被処理媒体先端検知手段と、を有し、
前記制御手段は、前記被処理媒体側部検知手段の検知結果と、前記被処理媒体先端検知手段の検知結果と、前記補正後の加熱位置情報とから、前記加熱手段による加熱開始位置を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記読み取り手段は、前記加熱手段による被処理媒体の加熱処理が開始される前に該被処理媒体の外形形状及び該被処理媒体上の画像を読み取ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記読み取り手段の画像読み取り位置から前記加熱手段による加熱位置までの被処理媒体の搬送距離は、被処理媒体の搬送方向の最大長さよりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面処理装置と、記録材に前記元画像情報に従って画像を形成して該記録材を被処理媒体として前記表面処理装置に供給する画像形成装置と、を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64877(P2013−64877A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203590(P2011−203590)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】