表面処理装置及び転写材処理装置
【課題】作業効率の低下及びコスト高を回避しつつ、トナー画像が定着された定着済みの転写材の表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写材の表面における加筆性を向上させることができる表面処理装置及び転写材処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置70は、定着済みのトナー画像が形成されている転写材Pの表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備える。放電手段は、転写材Pのトナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し転写材Pの移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材703と、導電性部材704aの表面に誘電体層704bが形成され転写材Pを間に介して第1電極部材703に対向するように設けられた第2電極部材704と、第1電極部材703と第2電極部材704の導電性部材704aとの間に電圧を印加する電圧印加手段705,706とを備える。
【解決手段】表面処理装置70は、定着済みのトナー画像が形成されている転写材Pの表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備える。放電手段は、転写材Pのトナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し転写材Pの移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材703と、導電性部材704aの表面に誘電体層704bが形成され転写材Pを間に介して第1電極部材703に対向するように設けられた第2電極部材704と、第1電極部材703と第2電極部材704の導電性部材704aとの間に電圧を印加する電圧印加手段705,706とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置及び転写材処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カールソンプロセスに代表される電子写真方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、一般的に、光導電性特性を有する感光体が一様に帯電され、画像パターンに応じた像露光にて電荷分布として潜像化され、感光体上の潜像は、正負どちらかに帯電した樹脂着色微粒子であるトナーにて顕像化される。その後、感光体上のトナー像は、静電気力にて転写紙等の転写材の表面に転写され、圧をかけたローラ間を通すことでトナーの弾性を利用して転写材上に定着され、最終的なトナー像を得ることができる。トナーの弾性を利用して定着するトナー定着手段は熱エネルギーを用いるのが一般的である。
【0003】
前記熱エネルギーを用いるトナー定着手段は、加熱されたローラ等からなる定着部材の表面と転写材上のトナー像とが直接接触するため、トナー像の一部が定着部材の表面に付着するオフセット現象や定着部材に転写材が巻き付く巻き付き現象が発生するおそれがある。これらのオフセット現象や転写材の巻き付き現象を防止するため、定着部材の表面にテフロン(登録商標)やシリコーンの離型層を設けるとともに、離型剤としてのオイル(例えば、シリコーンオイル)を定着部材の表面に塗付する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、上記定着部材の表面へ塗布するオイルの塗付量を低減したりオイルの塗布そのものを省略したりできるように、離型剤としてのワックスを添加したトナーを用いて画像を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、前記電子写真方式を用いた画像形成装置の高速化、高画質化が進むとともに、紙処理の周辺装置も充実してきている。また、電子写真方式を用いた画像形成装置では版を作製する必要がない。これらの理由から、プリント・オン・デマンド(以下「POD」という。)機として従来オフセット等の印刷機が使用されている領域で、電子写真方式を用いた画像形成装置が使用され始めている。このようなPOD機として使用する場合、印刷物としての転写材への後処理による付加価値を付与するため、定着済みの転写材の表面にニスを塗布するコート処理やPP(ポリプロピレン)ラミネートに代表されるフィルム等のコート処理を実施することがある。このようなニスやフィルムのコート処理により、高光沢な上がりによる高級感やキズ、こすれ防止等の付加価値が得られる。
ところが、上記ニスやフィルムのコート処理を、前記電子写真方式を用いた画像形成装置(POD器)から出力された定着済みの転写材に対して実施すると、前述の離型性を得るためのオイルやワックスが転写材上のニスの塗付ムラや転写材とフィルムとの接着性に影響することがある。すなわち、定着済みの転写材の表面に上記離型剤としてのオイルやワックスが存在しているため、ニスやフィルムの接着剤をはじいてしまい、ニスを均一に塗付できないという現象や転写材とフィルムとの間で所定の接着性が得られない現象が発生するおそれがある。
これらの現象を回避するために、浸透等により転写材の表面に存在するオイルが減少するまで転写材を放置したり、あるいは界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いたりすることが考えられる。しかしながら、上記転写材を放置するという非効率な作業があると作業効率が落ちてしまい、また、上記ニスや接着剤の専用品を使用するとコスト高になってしまう。
【0005】
また、前記電子写真方式を用いた画像形成装置から出力された定着済みの転写材の表面に上記離型剤としてのオイルやワックスが存在していると、その定着済みの転写材の表面に筆記具で追記したり捺印したりすることが難しく良好な加筆性が得られないという課題もある。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、作業効率の低下及びコスト高を回避しつつ、トナー像が定着された定着済みの転写材の表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写材の表面における加筆性を向上させることができる表面処理装置及びその表面処理装置を備えた転写材処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置であって、前記処理対象の転写材は、トナー画像が表面に形成され、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いて該トナー画像が定着された転写材であり、前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置であって、前記処理対象の転写材は、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いてトナー画像が表面に形成され、該トナー画像が定着された転写材であり、前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の表面処理装置において、前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分に対する水の接触角が90°以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1又は2の表面処理装置において、前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分及び前記トナー画像に存在していない部分それぞれに対する水の接触角が90°以下であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、前記放電は、大気圧プラズマが生じる放電、大気圧グロー放電、コロナ放電、又は大気圧ストリーマ放電であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、前記放電は、誘電体バリア放電であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の表面処理装置において、前記転写材を搬送する搬送手段を更に備え、前記放電手段は、前記搬送手段で搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、導電性部材の表面に誘電体層が形成され該転写材を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の表面処理装置において、前記電圧は、周波数が20[kHz]以上及び500[kHz]以下である交流電圧であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の表面処理装置において、前記交流電圧のピーク間電圧値は、前記空隙の厚みの単位長[mm]あたり、5[kVp−p]以下及び30[kVp−p]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9のいずれかの表面処理装置において、前記第1電極部材の材料はステンレスであることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項7乃至10のいずれかの表面処理装置において、前記第1電極部材及び前記第2電極部材はそれぞれローラ形状を有し、該第2電極部材の直径は該第1電極部材の直径よりも大きいことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の表面処理装置において、前記第2電極部材を回転駆動する駆動手段を備え、該第2電極部材は、その外周面の周方向の全体が前記誘電体層によって覆われていることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項7乃至12のいずれかの表面処理装置において、前記第2電極部材の誘電体層の比誘電率は、2以上及び10以下であり、該誘電層の厚みは、0.1[mm]以上及び5[mm]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項5又は6の表面処理装置において、複数の支持ローラに掛け渡され前記転写材を搬送する搬送ベルトを更に備え、前記放電手段は、前記搬送ベルトで搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、該搬送ベルトの該転写材を搬送している部分を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、転写材を処理する転写材処理装置であって、表面にトナー画像が形成され該トナー画像が定着された定着済みの転写材を供給する転写材供給部と、該転写材供給部から送り出された該転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置と、該表面処理装置で表面処理された該転写材が出力される転写材出力部と、を備え、前記表面処理装置は、請求項1乃至14のいずれかの表面処理装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いてトナー画像が定着された転写材や、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いて形成されたトナー画像が定着された転写材について、その定着済みの転写材の表面又はその表面の近傍に放電を発生させるように処理する。この放電により、転写材の表面に存在しているオイルやワックスを低減させるとともに転写材の表面の濡れ性を向上させることができる。従って、定着済みの転写材の表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写材の表面における加筆性を向上させることができる。しかも、定着済みの転写材を長時間放置するという非効率な作業を行う必要がなく、上記コート処理のために界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いる必要もないので、作業効率の低下及びコスト高を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】定着装置の一構成例を示す拡大構成図。
【図3】オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図。
【図4】ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図。
【図5】トナーに添加されたワックス等の添加物の様子を示す説明図。
【図6】接触角の説明図。
【図7】表面処理装置の一構成例を示す概略構成図。
【図8】第1電極ローラ及び第2電極ローラの寸法及び位置関係の説明図。
【図9】オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図。
【図10】ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図。
【図11】(a)及び(b)はそれぞれ実施例で用いた転写紙の表面のSEM写真。
【図12】FTIR−ATR法の原理の説明図。
【図13】ATR分析深さ(もぐりこみ深さ)dpの波数依存性を示すグラフ。
【図14】(a)及び(b)はそれぞれ放電処理前及び放電処理後における定着済み転写紙の表面のSEM写真。
【図15】2種類の定着処理それぞれによって定着された定着処理後の転写紙について測定した放電処理後におけるトナー画像上の接触角の時間推移を示すグラフ。
【図16】2種類の定着処理それぞれによって定着された定着処理後の転写紙について測定した表面のpH値の時間推移を示すグラフ。
【図17】放電処理済みの転写紙及び未処理の転写紙それぞれについて測定した転写紙表面の接触角の時間推移を示すグラフ。
【図18】放電処理の効果の確認に用いた実験装置の概略構成図。
【図19】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置の概略構成図。
【図20】本発明の更に他の実施形態に係る画像形成システムの概略構成図。
【図21】本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図。
【図22】本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置1は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成可能なフルカラー画像形成装置であり、フルカラーPOD機として使用することができる。
【0011】
本実施形態の画像形成装置1は、2つの光書込ユニット21と、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー画像をそれぞれ形成するための4つのトナー画像形成部としてのプロセスユニット18Y,M,C,Kとを備えている。また、画像形成装置1は、2つの給紙カセット44を有する給紙部43から供給される転写材としての転写紙Pが搬送・出力される転写紙搬送路48を形成するように、レジストローラ対49、手差し送出ローラ50、手差しトレイ51、手差し給紙路53、搬送切替装置28、定着後排紙ローラ対56、表面処理対象の定着済み転写紙Pを搬送する搬送ローラ対57、58、転写材出力部としての排紙トレイ59等を更に備えている。また、画像形成装置1は、プロセスユニット18Y,M,C,Kで形成されたトナー画像を中間転写体としての中間転写ベルト10を介して転写紙Pに転写する中間転写ユニットと、転写紙P上のトナー画像を定着する定着手段としての定着装置25と、中間転写ユニットでトナー画像が転写された転写紙Pを支持ローラ23に掛け渡された搬送ベルト24によって定着装置25に搬送する搬送ベルトユニットと、転写紙Pの両面にトナー画像を形成するための転写紙再送装置28と、を更に備えている。そして、画像形成装置1は、後で詳述するように、定着装置25から出力された定着済み転写紙Pの表面を処理する表面処理装置70を更に備えている。
【0012】
各給紙カセット44はそれぞれ転写紙Pの束を収容し、給紙カセット44の紙束における一番上の転写紙Pが給紙ローラ42の回転駆動によって送り出される。給紙カセット44から送り出された転写紙は、給紙ローラ45、47及び給紙路46により、転写紙搬送路48に向けて搬送される。筺体の側面にある手差しトレイ51は筺体に対して開閉可能に配設されており、筺体に対して開いた状態でトレイ上面に紙束が手差しされる。手差しされた紙束における一番上の転写紙は、手差し送出ローラ50によって転写紙搬送路48に向けて送り出される。
【0013】
上記2つの光書込ユニット21はそれぞれ、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、外部の画像読み取り装置(スキャナ)によって読み取られた画像情報やコンピュータ装置等の外部装置から送られてくる画像情報に基づいて半導体レーザー(LD)等の光源を駆動することにより、プロセスユニット18Y,M,C,Kの感光体40Y,M,C,Kを光走査する。具体的には、プロセスユニット18Y,M,C,Kの感光体40Y,M,C,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動される。図中左側の光書込ユニット21は、回転駆動中の感光体40Y,Mに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体40Y,Mには、Y,M画像情報に基づいた静電潜像がそれぞれ形成される。また、図中右側の光書込ユニット21は、回転駆動中の感光体40C,Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体40C,Kには、C,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0014】
上記4つのプロセスユニット18Y,M,C,Kはそれぞれ、潜像担持体としてのドラム状の感光体40Y,M,C,Kを有している。また、プロセスユニット18Y,M,C,Kはそれぞれ、感光体40Y,M,C,Kの周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、それらが画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。各プロセスユニット18Y,M,C,Kは、互いに使用するトナーの色が異なる点の他が同様の構成になっている。本実施形態の画像形成装置1は、これらの4つのプロセスユニット18Y,M,C,Kを中間転写ベルト10の支持ローラ間の張架部に対向させるようにその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。
【0015】
イエロー(Y)のトナー画像を形成するプロセスユニット18Yを例にすると、プロセスユニット18Yは、感光体40Yの他、この表面に形成された静電潜像をYトナー画像に現像するための現像装置を有している。また、回転駆動される感光体40Yの表面に対して一様帯電処理を施す帯電装置や、Y用の1次転写ニップを通過した後の感光体40Y表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置等を有している。これらの帯電装置、現像装置及びドラムクリーニング装置は、その順番で感光体40Yの回転方向に並ぶように配設されている。
【0016】
感光体40Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いてもよい。
【0017】
Y用の現像装置は、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を用いて潜像を現像するものである。現像装置として、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。現像装置に対しては、図示しないYトナー補給装置により、Yトナーボトル180Y内のYトナーが適宜補給される。なお、各プロセスユニット18Y,M,C,Kの現像装置で用いることができるトナーについては、後で例示する。
【0018】
Y用のドラムクリーニング装置としては、クリーニング部材であるポリウレタンゴム製のクリーニングブレードを感光体40Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。また、クリーニング性を高める目的で、本画像形成装置では、回転自在なファーブラシを感光体40Yに当接させる方式のものを採用している。このファーブラシは、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体40Y表面に塗布する役割も兼ねている。
【0019】
感光体40Yの上方には、図示しない除電ランプが配設されており、この除電ランプもプロセスユニット40Yの一部になっている。除電ランプは、上記ドラムクリーニング装置を通過した後の感光体40Y表面を光照射によって除電する。除電された感光体40Yの表面は、帯電装置によって一様に帯電された後、上述したYM用の光書込ユニット21による光走査が施される。なお、帯電装置は、図示しない電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。かかる方式に代えて、感光体40Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式を採用してもよい。
【0020】
以上、Y用のプロセスユニット18Yについて説明したが、M,C,K用のプロセスユニット40M,C,Kも、Y用のものと同様の構成になっている。
【0021】
4つのプロセスユニット40Y,M,C,Kの下方に、前記中間転写ユニットが配設されている。この中間転写ユニットは、複数のローラ14,15,15’,16,63に掛け渡されて張架されている中間転写ベルト10を、感光体40Y,M,C,Kに当接させながら、何れか1つのローラの回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体40Y,M,C,Kと中間転写ベルト10とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0022】
Y,M,C,K用の1次転写ニップそれぞれの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写部材としての1次転写ローラ62Y,M,C,Kによって中間転写ベルト10を感光体40Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体40Y,M,C,K上のトナー画像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。
【0023】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト10のおもて面には、各1次転写ニップでトナー画像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト10のおもて面には4色重ね合わせトナー画像(以下「4色トナー画像」という。)が形成される。
【0024】
中間転写ベルト10の図中下方の2次転写部22には、2次転写部材としての2次転写ローラ16’が配設されている。この2次転写ローラ16’は、中間転写ベルト10における2次転写バックアップローラ16に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して2次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト10のおもて面と2次転写ローラ16’とが当接する2次転写ニップが形成されている。
【0025】
2次転写ローラ16’には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の2次転写バックアップローラ16は接地されている。これにより、2次転写ニップ内に2次転写電界が形成されている。
【0026】
2次転写部22の図中右側方には、上述のレジストローラ対49が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト10上の4色トナー画像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト10上の4色トナー画像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括2次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0027】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10のおもて面には、2次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト10に当接するベルトクリーニング装置17によってクリーニングされる。
【0028】
2次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト10から離間して、上述の搬送ベルトユニットに受け渡される。この搬送ベルトユニットは、無端状の搬送ベルト24を2つのローラ(駆動ローラ、従動ローラ)23によって張架しながら、駆動ローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動させる。そして、2次転写ニップから受け渡された転写紙Pを搬送ベルト上部の張架面に保持しながら、搬送ベルト24の無端移動に伴って搬送して定着装置25に受け渡す。
【0029】
図2は、定着装置25の一構成例を示す拡大構成図である。定着装置25は、定着ベルト26、定着ローラ27、弾性駆動ローラ261、加熱ローラ262、トナー除去ユニット263、オイル塗布ローラ264、オイル供給ローラ265、オイル浸透フェルト266、オイル受け皿267等を有している。
【0030】
無端状の定着ベルト26は、弾性駆動ローラ261と、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ262とに掛け回された状態で、弾性駆動ローラ261の図中時計回り方向の回転駆動に伴って、図中時計回り方向に無端移動する。そして、加熱ローラ262に対する掛け回し位置で、加熱ローラ262によって加熱される。加熱ローラ262の発熱源に対する電源供給のオン、オフは、図示しない定着温度制御部によって制御される。この定着温度制御部は、定着ベルト26の表面温度を検知する図示しない温度センサによる検知結果が所定値になるように、前述の電源供給をオン、オフ制御する。
【0031】
定着ベルト26における弾性駆動ローラ261に対する掛け回し箇所には、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ27が当接して定着ニップが形成される。定着ローラ27は、上記定着ニップを形成しながら、図中反時計回り方向に回転駆動されている。定着ローラ27の発熱源に対する電源供給のオン、オフも、定着温度制御部によって制御される。定着温度制御部は、定着ローラ27の表面温度を検知する図示しない温度センサによる検知結果が所定値になるように、前述の電源供給をオン、オフ制御する。
【0032】
上述した2次転写ニップを通過した転写紙Pは、定着装置25内に送られて定着ニップに挟み込まれる。そして、加圧や加熱などの作用により、転写紙P上のトナー画像の定着処理が施される。
【0033】
定着ニップを通過した後の定着ベルト26には、トナー除去ユニット263のクリーニングウェブが当接している。このクリーニングウェブにより、定着ベルト26の表面に付着してしまったトナーが拭き取られる。なお、トナー除去ユニット263は、帯状のウェブを巻き付けロールに巻き付けている。そして、この巻き付けロールから引き伸ばされたウェブを、巻き取りロールの回転によって巻き取ることができる。ウェブにおける巻き付けロールと、巻き取りロールとの間の箇所を定着ベルト26に当接させており、その箇所の汚れの度合い(拭き取り動作時間)が進行するのに応じて、適宜量のウェブを巻き取りロールで巻き取ることで、ウェブの汚れていない箇所を定着ベルト26に当接させる。
【0034】
定着ベルト26における加熱ローラ262に対する掛け回し箇所には、オイル塗布ローラ264が当接している。このオイル塗布ローラ264は、定着ベルト26の表面に当接しながら回転することで、離型剤としてのオイル(例えば、シリコーンオイル)を同表面に塗布する。
【0035】
オイル塗布ローラ264の近傍には、オイル受け皿267、オイル浸透フェルト266、及びオイル供給ローラ265が配設されている。オイル受け皿267内には、オイルが貯留されている。このオイル受け皿267には、所定の高さ位置でオイル受け皿267内のオイルをオーバーフローさせる図示しないオーバーフロー管が設けられている。オイル受け皿267に対しては、図示しないオイル補給装置によってオイルが定期的に補給されるが、このとき、余剰のオイルは前述のオーバーフロー管を経由してオイル補給装置に戻される。
【0036】
オイル受け皿267内のオイルには、オイル浸透フェルト266が部分的に浸かっている。このオイル浸透フェルト266は、オイルに対する非浸透箇所に対して、毛細管現象によってオイルを染み込ませる。
【0037】
オイル供給ローラ265は、オイル浸透フェルト266とオイル塗布ローラ264とに当接した状態で回転することにより、オイル浸透フェルト266から拭い取ったオイルを、オイル塗布ローラ264に塗布する。これにより、定着ベルト26に対するオイル塗布によってオイルを失ったオイル塗布ローラ264の表面に、新たなオイルが供給される。
【0038】
定着装置25は、以上のようにして定着ベルト26にオイルを塗布することで、定着ベルト26に対するトナーのオフセットを抑えている。また、定着ベルト26に塗布したオイルを、転写紙Pが挟み込まれていない定着ニップで定着ローラ27に転移させることで、定着ローラ27に対するトナーのオフセットも抑えている。
【0039】
先に示した図1において、2次転写ニップで表面にトナー画像が転写され定着装置25でトナー画像が定着された転写紙は表面処理装置70に向けて送り出される。定着装置25から出力された転写紙は、定着後排紙ローラ対56及び搬送ローラ対57を経由して表面処理装置70に搬送される。表面処理装置70で表面処理された転写紙は、搬送ローラ対58を経由して排紙トレイ59上に排紙される。
【0040】
次に、上記画像形成装置1の表面処理装置70を用いた転写紙の表面処理について説明する。
図3は、離型剤としてのオイルが表面に塗布された定着部材(定着ベルト26、定着ローラ27)を用いてトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図である。図3に示すように、定着前の転写紙P上のトナーTは粉体状態で静電気力にて転写紙P上に固定化されているが、転写紙P上のトナーTは定着処理によって溶融し転写紙P上に固定される。トナーの表面との離型性を得るためのオイル268は、転写紙P上のトナー画像T’の表面やトナーが存在しない転写紙Pの表面に移行する。そのため、定着処理後は、トナー画像T’が形成されている部分を含む転写紙Pの表面全体に、上記定着部材から移行したオイル268が存在する。このオイル268が存在する転写紙Pの表面に、高級感等の付加価値を与える等の目的でニスを塗布するコート処理やPP等のフィルムのコート処理を実施しようとすると、ニスやフィルムの接着剤をはじいてしまい、ニスを均一に塗付できないという現象や転写紙Pとフィルムとの間で所定の接着性が得られない現象が発生するおそれがある。また、上記オイル268が存在する定着後の転写紙Pの表面は、筆記具で追記したり印鑑を捺印したりすることができず良好な加筆性が得られないおそれがある。
【0041】
図4は、離型剤としてのワックスを含有するトナーを用いて転写紙P上に形成されたトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図であり、図5は、トナーに添加されたワックス等の添加物の様子を示す説明図である。トナーTは、後述のように樹脂Trを主成分として顔料Tpや帯電制御剤Tcが添加され、更に離型剤としてのワックスW等が添加される場合がある。ワックスWを含有するトナーTを用いて転写紙P上に形成されたトナー画像を定着する場合も、図3の場合と同様に、定着前の転写紙P上のトナーTは粉体状態で静電気力にて転写紙P上に固定され、転写紙P上のトナーTは定着処理によって溶融し転写紙P上に固定化される。トナーに含有するワックスWは、定着時にトナー画像T’の表面に染み出し定着部材(定着ローラ)との離型性を得る効果を発揮するが、定着後の転写紙P上のトナー画像T’の表面に残留存在する。このトナー画像T’の表面のワックスWは、トナー画像T’の周辺の転写紙表面に広がって存在するおそれもある。従って、上記ニスやフィルムの良好なコート処理ができないという現象及び良好な加筆性が得られないという現象は、上記定着装置25の定着部材にオイルを用いる場合だけでなく、ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上にトナー画像を形成した場合にも発生するおそれがある。なお、定着での離型余裕度の向上を目的として、ワックスが含有されたトナーを用いる場合においても定着装置25の定着部材にオイルを塗布することもある。
【0042】
上記オイルやワックスは離型性を上げる効果を得るためのものであるので、非常にぬれ性が低い材料であり、そのためにニスや接着剤等を弾きやすいと考えられる。このぬれ性を表す指標として「接触角」θがあり、この接触角θの大きさによってぬれ性を表現することができる。接触角θは、図6に示すように対象物900と液滴901の接線Lとのなす角度である。
【0043】
対象物の表面のぬれ性は、一般的に、接触角θの大きさに応じて次の(1)〜(3)の3種類に分類することができる。
(1)拡張ぬれ(spreading wetting):θ=0°の場合で、液滴が薄膜状にどこまでも拡がってゆく。
(2)浸漬ぬれ(immersional wetting):0°<θ≦90°の場合で、固体を液中に浸漬したときのぬれ。
(3)付着ぬれ(adhesional wetting):90°<θ≦180°の場合で、里芋の葉に朝露が乗っているような状態。付着ぬれとはいっているが、ぬれないといってもよい。
【0044】
本発明者らが上記オイル塗付の定着部材でトナー画像が定着された転写紙やワックス含有トナーを用いてトナー画像が形成された転写紙について、純水の液滴Dwを滴下して接触角θを測定したところ、接触角θが95°以上の値であって上記(3)の「付着ぬれ」の領域となっていることがわかった。この「付着ぬれ」の領域にあるために、定着後の転写紙にニスや接着剤がぬれないで弾きやすくなっていると考えられる。
【0045】
そこで、本実施形態の画像形成装置1は、上記定着後の転写紙Pの表面の濡れ性を向上させることができるように、定着装置25から出力された転写紙Pの表面を処理する表面処理装置70が設けられている。この表面処理装置70は、定着済みのトナー画像が形成されている転写紙Pの表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を有している。
【0046】
図7は、本実施形態の表面処理装置70の一構成例を示す概略構成図である。この表面処理装置70は、上記放電手段としての放電処理部700と、定着装置25から送られてくる転写紙Pが放電発生領域を通過するように転写紙を搬送する搬送手段としての搬送ローラ対701,702と、を備える。放電処理部700は、導電性の第1電極部材としての第1電極ローラ703と、第1電極ローラ703に対向するように設けられた第2電極部材としての第2電極ローラ704と、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間に所定の電圧を印加する電圧印加手段とを有している。第1電極ローラ703は、搬送ローラ対701,702で搬送されている転写紙Pのトナー画像が形成されている表面に空隙Gを介して対向し転写紙Pの移動方向と交差する方向に延在している。第2電極ローラ704は、導電性部材からなるローラ状の芯金部704aの表面に誘電体層704bが形成され転写紙Pを間に介して第1電極ローラ703に対向するように設けられている。また、上記電圧印加手段は、所定の周波数fの交流電圧を発生させる高周波発信機705と、高周波発信機705から出力された交流電圧の大きさを所定の電圧まで昇圧する高圧トランス706とを用いて構成されている。高周波発信機705としては、例えば春日電機株式会社製の高周波電源(CT−0212)を使用することができ、高圧トランス706としては、例えば春日電機株式会社製のトランス(CT−T02W)を使用することができる。また、図7の例では、第2電極ローラ704の芯金部704aと高周波発信機705のアース端子とがともに接地され、高圧トランス706の所定の周波数及び電圧値からなる交流電圧が出力される出力端子706aが第1電極ローラ703に接続されている。この第1電極ローラ703に所定の交流電圧が印加されると、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704に接触した状態で搬送されている転写紙Pの表面との間の空隙Gに誘電体バリア放電が発生する。
【0047】
上記構成の表面処理装置70において、高周波発信機705から出力する交流電圧の周波数fは20[kHz]以下且つ500[kHz]以下の範囲であることが好ましい。20[kHz]より低い周波数で20[Hz]までの領域は人の可聴域と重なり、放電の際に発する音が不快で耳障りであるため好ましくない。また、さらに20[Hz]より低い直流までの周波数領域では、第1電極ローラ703及び第2電極ローラ704の軸方向に対し均一な放電が発生しない(局所的に放電が集中する)ため、好ましくない。一方、500[kHz]より高い周波数領域では空隙Gに放電によって発生したイオンがそのまま滞留することによって生じた残留イオンによる低抵抗な放電チャネルが形成されやすく、放電が局部的に集中して均一な処理ができないばかりか大電流が流れて高熱が発生するために安全上も好ましくない。なお、この場合、高周波発信機705より出力する交流電圧の波形については、周波数が上記20[kHz]〜500[kHz]の範囲であれば、特に制限は無く、正弦波であっても方形波(パルス状波形を含む)であってもよい。
【0048】
第1電極ローラ703に印加される高圧トランス706の出力電圧値(ピーク間電圧)は、転写紙P及び第2電極ローラ704の誘電体層704bの誘電特性や厚み、及び第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙の大きさによって適宜決定すればよいが、この間隙が1[mm]に対しては5[kVp−p]以上且つ30[kVp−p]以下の範囲であることが好ましい。高圧トランス706の出力電圧値が5[kVp−p]より低い場合は上記間隙に存在する空気の絶縁破壊電圧に達せず放電がなされない場合があるため好ましくない。また、高圧トランス706の出力電圧値が30[kVp−p]より高い場合は、第1電極ローラ703と周囲の部材の間でアーク放電がなされる可能性が高くなるので、安全上好ましくない。なお、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙と高圧トランス706の出力電圧値の好適な範囲とは略比例する関係にあるため、上記間隙が1[mm]以外の場合は、上記1[mm]の場合の好適範囲である5〜30[kVp−p]に基づいて当該間隙に対する高圧トランス706の出力電圧値を決定すればよい。
【0049】
また、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙gの大きさ(図8参照)は、処理対象の転写紙Pの厚み以上であればよく、概ね3[mm]以下であることが好ましい。3[mm]より大きい場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。
【0050】
また、第1電極ローラ703の材料は鉄、銅、アルミ、ステンレス等の金属より適宜選択すればよいが、放電時に発生するオゾンによって腐食され難いステンレスが好ましい。第2電極ローラ704の芯材についても第1電極ローラ703の材料と同様である。
【0051】
また、第2電極ローラ704の直径R2は、第1電極ローラ703の直径R1より大きい状態であることが好ましい(図8参照)。すなわち、第1電極ローラ703側から見たとき第2電極ローラ704がみなし平面であることがより好ましい。このように第1電極ローラ703側から第2電極ローラ704がみなし平面であるように見えることにより、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704とが対向する位置でより広く均一な放電領域(いわゆる転写紙移動方向に発生している沿面放電の領域)を転写紙Pの表面へ付与することが可能となり、均一な無駄のない処理効果が得られる。これに対し、第2電極ローラ704の直径が第1電極ローラ703の直径より小さい場合は、放電領域が第1電極ローラ703と第2電極ローラ704の最短距離の領域に集中して沿面放電の距離が短くなるために、非常に狭い領域(ライン状)で処理がなされる。従って、極めて僅かな転写紙Pの搬送速度変化であっても転写紙Pの面内において処理ムラを発生させてしまい、かつ集中した放電パワーのため誘電体層などの劣化を促進させてしまう原因となってしまう。
【0052】
第2電極ローラ704の誘電体層704bの材料は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等のプラスティック、シリコンゴム等のゴム、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミックスの中から適宜選択することができるが、放電によって侵食され難く且つ比誘電率が2以上且つ10以下の範囲にあるガラス、石英、アルミナ等が好ましい。比誘電率が2より小さい場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。また、比誘電率が10より大きい場合は放電が局所的に集中し易くなるため好ましくない。
【0053】
誘電体層704bの厚みt2(図8参照)は、0.1[mm]以上且つ5[mm]以下であることが好ましい。0.1[mm]より薄い場合は絶縁破壊によりアーク放電がなされ安全上好ましくない。なお、ガラス、石英、アルミナ等の場合は機械的強度も加味し1[mm]以上であればより好ましい。5[mm]よりも厚い場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。
【0054】
また、放電による誘電体層704bの侵食を軽減するために、第2電極ローラ704は全周にわたって誘電体で覆われて回転することが好ましい。第2電極ローラ704は、図示しないモータなどの駆動手段によって回転駆動することができる。
【0055】
図9は、オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図である。図示のように表面にオイル268が存在している定着済みの転写紙Pの表面に対して放電DSを発生させる表面処理を行うと、転写紙Pの表面におけるトナー画像の部分とトナー画像が形成されていない部分のいずれについても、その表面に存在していたオイル268が低減する。このようにオイル268が低減するメカニズムは明確に解明されていないが、上記放電DSによって転写紙Pの表面に存在していたオイル268がトナー画像の内部及び転写紙Pの内部に浸透する現象を促進する作用や、「酸化」、「架橋」、「分解」等の放電作用が関連していると考えられる。また、上記放電DSは、上記定着済み転写紙Pの表面に親水性官能基を生成する作用も有していると考えられる。この親水性官能基の生成や上記オイルの低減等により、定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上する。この放電処理後の転写紙Pの表面について純水の接触角θを実際に測定してみると、表面処理前に95°以上あったものが90°以下まで低下している。このように定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上することにより、その定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができるようになる。
【0056】
図10は、ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図である。図示のように表面にワックス含有のトナーを用いてトナー画像T’が形成されている定着済みの転写紙Pの表面に対して放電DSを発生させる表面処理を行うと、転写紙P上のトナー画像T’の表面に存在していたワックスWが低減する。このようにワックスWが低減するメカニズムについても明確に解明されていないが、上記放電DSによって転写紙Pの表面に存在していたワックスWがトナー画像の内部に浸透する現象を促進する作用や、「酸化」、「架橋」、「分解」等の放電作用が関連していると考えられる。また、この場合も、上記放電DSは、上記定着済み転写紙Pの表面に親水性官能基を生成する作用を有していると考えられる。この親水性官能基の生成や上記ワックスの低減等により、定着済み転写紙の表面における濡れ性が向上する。そして、この放電処理後の転写紙Pの表面について純水の接触角θを実際に測定してみると、表面処理前に95°以上あったものが90°以下まで低下している。このように定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上することにより、その定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができるようになる。
【0057】
次に、上記放電処理による定着済みの転写紙Pの濡れ性向上についてより定量的な結果が得られた実施例について説明する。この実施例では、2種類の転写紙X(王子製紙社製、PODグロスコート紙)及び転写紙Y(王子製紙社製、PODマットコート紙)を使用し、ワックスが添加された2種類のトナーA及びトナーBを用いてトナー画像を形成した後、上記オイルが表面に塗布された定着部材を用いて定着処理を行った。
【0058】
図11(a)及び(b)はそれぞれ、トナー画像を形成する前の転写紙X及び転写紙Yの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真(倍率:250倍)である。これらのSEM像の写真から、転写紙Xの表面の平滑度が転写紙Yの表面よりも高いことがわかる。
【0059】
上記トナーA及びトナーBはそれぞれ次のように製造したものである。
(トナーAの製造)
下記に示す結着樹脂2種類、離型剤2種類及び着色剤の処方を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM10B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130°Cの温度で溶融、混練した。得られた混練物は室温まで冷却後、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、重量平均粒径が6.0±0.3μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で、重量平均粒径が6.8±0.3μm、4μm以下の微粉量が10個数%以下となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、下記に示す添加剤2種をヘンシェルミキサーで撹拌混合し製造した。
【0060】
・結着樹脂 :結着樹脂A・・・テレフタル酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物の重合体、軟化点:110°C、ガラス転移温度:60°C、酸価:5、Mn:2800、Mw:8000、50重量部
結着樹脂B・・・テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加の重合体、軟化点:200°C、ガラス転移温度:66°C、酸価:12、Mn:2800、Mw:45000、50重量部
・離型剤 :離型剤A・・・カルナウバワックス、融点78°C 3重量部
離型剤B・・・エチレンビスステアリン酸アミド、融点145°C 2重量部
・着色剤 :カーボンブラック 10重量部
・添加剤 :無機微粒子A・・・SiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.01μm、添加量1.0重量部
無機微粒子B・・・TiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.02μm、添加量1.0重量部
【0061】
(トナーBの製造)
下記に示す結着樹脂2種、離型剤、及び着色剤、添加剤2種の処方量を用いてトナーAの製造と同様に実施した。
【0062】
・結着樹脂 :結着樹脂A・・・テレフタル酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物の重合体、軟化点:100°C、ガラス転移温度:65°C、酸価:5mgKOH/g、Mn:2800、Mw:13000、50重量部
結着樹脂B・・・テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加の重合体、軟化点:140°C、ガラス転移温度:65°C、酸価:16、Mn:2400、Mw:45000、50重量部
・離型剤 :カルナウバワックス、融点 78°C 5重量部
・着色剤 :カーボンブラック 10重量部
・添加剤 :無機微粒子A・・・SiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.01μm、添加量1.0重量部
無機微粒子B・・・TiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.02μm、添加量1.0重量部
【0063】
ここで、上記トナーA,Bの製造におけるポリエステル樹脂の特性値は、以下のようにして測定を行った。
【0064】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6°C/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0065】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200°Cまで昇温し、その温度から降温速度10°C/分で0°Cまで冷却したサンプルを昇温速度10°C/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0066】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0067】
〔樹脂の分子量500以下の低分子量成分の含有量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定する。トナー30mgにテトラヒドロフラン10mlを加え、ボールミルで1時間混合後、ポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP−200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液を調製する。
溶離液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40°Cの恒温槽中でカラムを安定させ、試料溶液100μlを注入して測定を行う。なお、分析カラムには「GMHLX+G3000HXL」(東ソー(株)製)を使用し、分子量の検量線は数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成する。
分子量が500以下の低分子量成分の含有量(%)は、RI(屈折率)検出器により得られたチャート面積における該当領域の面積の、全チャート面積に対する割合(該当領域の面積/全チャート面積)として算出する。
【0068】
転写紙Pの表面のオイル及びワックスの分析には、FTIR(フーリエ変換型赤外分光)−ATR(減衰全反射)法を用いた。このFTIR−ATR法は、図12に示すように、ATR結晶910と試料911(本実施例では転写紙)の界面で赤外光を全反射させ、その反射面から試料911側にごくわずかしみ出す光を検出する手法である。ATR分析深さ(もぐりこみ深さ:penetration depth)dpは、上記界面に入射した光の強度が1/eになる深さで定義され、試料911に吸収のない場合、次式で表される。
【数1】
【0069】
ここで、θは入射角(41.5°)、n21はn2/n1(n1:ATR結晶910の屈折率、n2:試料911の屈折率)、λ1はλ/n1(ATR結晶中での光の波長)である。ATR結晶910がGe結晶の場合、上記n1の値は4.0である。
【0070】
図13は、ATR結晶910としてGe結晶を用い入射角θが41.5°である場合のATR分析深さ(もぐりこみ深さ)dpの波数依存性を示すグラフである。試料911の屈折率n2は、有機物の一般的な値である1.5と仮定した。図示のように分析深さdpは高波数ほど浅くなり、波数1000[cm−1]で0.8[μm]、波数3000[cm−1]で0.3[μm]程度になる。ここで、例えばワックスに特有の吸収波数は2890[cm−1]であるので、図13により、FTIR−ATR法で測定される深度(深さ)は約0.3[μm]である。従って、このFTIR−ATR法によりトナー画像の表面上だけに存在するワックスやオイルによる赤外線の吸収を検知し、それらの量を測定できることになる。
【0071】
表1及び表2は、上記トナーA及びトナーBを用いてトナー画像(ベタ画像)が形成された定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)について放電処理前後のトナー画像上のオイル及びワックスの量を測定した結果を示している。表1及び表2の値は、放電処理前のオイル及びワックスそれぞれの測定値を1.0とし、その値を基準にして放電処理後のオイル及びワックスの測定値を求めた値である。また、表1及び表2それぞれには、定着後に放電処理を行わないで所定時間放置した場合の転写紙Xのトナー画像上のオイル及びワックスを測定した結果も記載している。この放電処理無しで放置した場合の値も、上記放電処理前の測定値を1.0にして求めた値である。
【表1】
【表2】
【0072】
表1及び表2に示すように、トナーA及びトナーBのいずれについても上記放電処理によって転写紙のトナー画像上のオイル及びワックスが低減している。なお、トナーBについては、定着後に放電処理を行わないで放置した場合もオイルが低減している。これは、転写紙X上のトナーBからなるトナー画像を定着した後、上記放電処理を行わないで放置している間に表面に存在するオイルがトナー画像内へしだいに染みこんでいったことによるものと考えられる。
【0073】
図14(a)及び(b)はそれぞれ放電処理前及び放電処理後における定着済み転写紙の表面のSEM写真(倍率:3000倍)である。図14(a)に示すように放電処理前の定着済み転写紙の表面には定着で使用されたオイルが残っている。この転写紙に対して上記放電処理を行うと、図14(b)示すようにオイルがほとんど観察されない。
【0074】
表3は、定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)及び転写紙Y(PODマットコート紙)それぞれについて放電処理前後の転写紙上の接触角θを測定した結果を示している。接触角θは、定着済みの各転写紙X,Yの表面に純水の液滴を滴下して測定した。表3に示すように、放電処理前の転写紙では接触角θが80°以上と大きく濡れ性がよくないが、放電処理によって各転写紙X,Yの表面の接触角θはいずれも50°以下になり濡れ性が向上した。
【表3】
【0075】
表4は、トナーA及びトナーBそれぞれを用いてトナー画像(ベタ画像)が形成された2種類の定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)について放電処理前後のトナー画像上の接触角θを測定した結果を示している。接触角θは、上記定着済みの転写紙のトナー画像に純水の液滴を滴下して測定した。表4に示すように、トナーA及びトナーBのいずれについても、放電処理前の転写紙のトナー画像では接触角θが100°以上の大きな値(90°よりも大きな値)になり濡れ性がよくないが、放電処理によって接触角θはいずれも90°をおおきく下回る70°以下の値になり濡れ性が向上した。
【表4】
【0076】
図15は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによって定着された定着処理後の転写紙X(PODグロスコート紙)について測定した、上記放電処理後におけるトナー画像(ベタ画像)上の接触角θの時間推移を示すグラフである。各転写紙上のトナー画像はワックスを含有するトナーを用いて形成したものである。また、接触角θは、上記定着済みの転写紙の表面に純水の液滴を滴下して測定した。なお、上記放電処理を行う前の接触角θは、上記オイル塗布定着の場合で103°及び上記オイルレス定着の場合で104°というように、いずれの場合も接触角θが100°以上の大きな値(90°よりも大きな値)になり濡れ性がよくなかった。図15に示すように、上記放電処理を行った後、オイル塗布定着及びオイルレス定着のいずれの場合も接触角θは時間経過とともに大きくなっていくが、70時間経過しても90°以下に維持することができた。
【0077】
図16は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによって定着された定着処理後の転写紙X(PODグロスコート紙)について測定した、接触角θに影響を及ぼす要因の一つとして考えられる転写紙表面のpH値の時間推移を示すグラフである。このpH値は転写紙表面に生成される親水性官能基の密度によって変化すると考えられる。そして、この転写紙表面に存在する親水性官能基の密度が高いほどpH値が小さくなって酸性になり、接触角θが小さくなって濡れ性が向上する。上記放電処理を行う前の転写紙表面のpH値は、上記2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれの場合も6.8であった。図16に示すように、上記2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれの場合も、上記放電処理を行った後、pH値が時間経過とともに大きくなっていき、48時間を経過したところで放電処理前のpH値(6.8)に戻った。このように放電処理から48時間以上経過すると、放電処理前のpH値(6.8)に戻ることから放電処理で生成された親水性官能基がほとんど消失したと考えられる。
【0078】
図17は、上記放電処理を行った場合及び上記放電処理を行わなかった場合それぞれについて測定した、転写紙X(PODグロスコート紙)の表面の接触角θの時間推移を示すグラフである。接触角θは、転写紙Xの表面に純水の液滴を滴下して測定した。図17に示すように、上記放電処理を行わなかった場合、転写紙表面の接触角θは90°以下の78°〜83°の値で推移した。これに対し、上記放電処理を行ったときの転写紙表面の接触角θは、放電処理直後の46.6°から時間経過とともに大きくなっていくが、65°以下の値に維持され、上記放電処理を行わなかった場合の接触角θ(=78°〜83°)に戻らなかった。この図17の結果と上記図16の結果から、上記放電処理を行った後、時間が経過しても転写紙表面やトナー画像表面の接触角θが65°以下の低い水準に維持され濡れ性が悪化しないのは、上記放電処理によるオイルやワックスの低減効果の寄与が大きいためであると考えられる。
【0079】
表5は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによってトナー画像が定着された定着処理後の転写紙について放電処理前後の加筆性(ボールペン、鉛筆、油性、マジック、捺印、蛍光ペン、水性ペン)を調べた結果を示している。この加筆性は、コピー用紙(株式会社リコー製、「マイリサイクルペーパーGP」)とPODグロスコート紙(株式会社リコー製、「ビジネスコートグロス100」)の2種類の転写紙について調べた。表5に示すように、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれについても、上記放電処理により、水性インクを用いた筆記具(蛍光ペン、水性ペン)の加筆性が向上した。
【表5】
【0080】
図18は、本実施形態の画像形成装置における放電処理の効果の確認実験に用いた表面処理装置の概略構成図である。なお、この表面処理装置は、上記構成の画像形成装置1(図1参照)や後述の転写材処理装置に組み込む表面処理装置70として用いることができる。図18において、第1電極部材としての放電電極710は、ステンレス製の直径が6mm及び長さが300mmの丸棒である。第2電極部材としてのアース電極711は、厚さが5mm及び放電電極軸方向の長さが300mmのアルミ板であり、接地されている。アース電極711の転写紙Pが載置される表面側には、厚さが1mmのガラス板からなる誘電体712が設けられている。アース電極711及び誘電体712は、放電電極710と誘電体712との間隔が1mmになるように絶縁架台713に固定され、電動スライダ(オリエンタルモータ製、EZ limo)714により速度500[mm/s]で放電電極710の下を放電電極軸と直交する方向にスライドさせる。このとき、高周波発信機(春日電機株式会社製のCT−0212)705及び高圧トランス(春日電機株式会社製のCT−T02W)706により、放電電極710に高周波高電圧を印加し、電力500Wで放電させ、電子写真方式の画像形成装置によりそれぞれ出力した各色100%ベタ画像の転写紙Pを誘電体712上に載せることで転写紙Pを処理した。なお、上記電子写真方式の画像形成装置としては、2種類のカラー画像形成装置(画像形成装置A:株式会社リコー製のオンデマンドプリンティング装置「Pro C900」、画像形成装置B:株式会社リコー製のデジタルカラー複合機「imagio MP C4000」)を用いた。そして、各画像形成装置A,Bにより、処理対象の転写紙P上に、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナーからなるベタ画像を形成した。
【0081】
表6は、上記実験装置で放電処理した転写紙Pに、UVニス(DIC社製、ダイキュアクリヤーUV−1245)を4番のワイヤーバーでコーティングした結果と、放電処理を行っていない未処理の転写紙に同様にコーティングした比較例の結果とを示している。表6に示すように、定着済み転写紙Pについて放電処理を行った場合は、上記実験に用いた各色のトナー画像がそれぞれ形成された2種類の転写紙のいずれについても、転写紙表面に上記ニスを均一に塗布することができ、良好なコーティング結果が得られた。一方、上記放電処理を行わなかった比較例では、上記いずれの転写紙についても転写紙表面に上記ニスを均一に塗布することができず、コーティング不良が発生した。
【表6】
【0082】
以上、本実施形態によれば、表面処理装置70により、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いてトナー画像が定着された定着済みの転写紙Pや、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いて形成されたトナー画像が定着された転写紙Pについて、その定着済みの転写紙Pの表面又はその表面の近傍に誘電体バリア放電を発生させるように処理する。これにより、この放電により、転写紙Pの表面に存在しているオイルを低減させるとともに転写紙Pの表面の濡れ性を向上させることができる。従って、定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができる。しかも、定着済みの転写紙Pを長時間放置するという非効率な作業を行う必要がなく、上記コート処理のために界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いる必要もないので、作業効率の低下及びコスト高を回避することができる。
【0083】
特に、本実施形態によれば、定着済みの転写紙Pを間に介して第1電極部材703の表面と第2電極ローラ704の誘電体層704bの表面との間に誘電体バリア放電を発生させている。この誘電体バリア放電を利用することにより、第1電極部材703の表面と転写紙Pの表面との空隙Gに集中的に放電を発生させることができるので、転写紙Pの表面又はその表面における放電を効率的に且つ確実に発生させることができる。
【0084】
なお、上記実施形態では、本発明に係る表面処理装置70及びそれを備えた画像形成装置1について説明したが、これら例示したものに限定されるものではない。本発明の表面処理装置は、後述する他の実施形態のように構成してもいいし、また、本発明は、後述のような画像形成システムや転写材処理装置にも適用することができる。
【0085】
図19は、本発明の他の実施形態に係る表面処理装置70の概略構成図である。本実施形態の表面処理装置70では、第1電極ローラ703に対向する第2電極部材として、導電性材料からなる電極板720を用いている。この電極板720の材料としては例えばアルミ板を用いることができる。この電極板720に裏面が接するように誘電体ベルト721が複数のローラ722,723に掛け渡されている。このローラ722,723のいずれか一方が駆動ローラとして誘電体ベルト721を回転駆動することにより、誘電体ベルト721上に処理対象の転写紙Pを保持して搬送できる。この表面処理装置70においても、第1電極ローラ703に上記所定の交流電圧を印加することにより、誘電体ベルト721で搬送されている転写紙Pの表面と第1電極ローラ703との間の空隙Gに放電を発生させ、転写紙Pを表面処理することができる。なお、図19の表面処理装置70において、第1電極ローラ703に対向する第2電極部材として、電極板720の代わりに、導電性ローラを配置してもよい。この場合、第2電極部材としての導電性ローラの表面には、誘電体層を設けなくてもよい。
【0086】
図20は、本発明の更に他の実施形態に係る画像形成システムの概略構成図である。本実施形態の画像形成システムは、上記表面処理装置を備えていない通常の画像形成装置1’と、上記表面処理装置を備えた周辺装置としての転写材処理装置2とを組み合わせたものである。なお、図20において、画像形成装置1’を構成する各種部材や装置は前述の図1の画像形成装置1と同様なものを使用することができ、それらについては同じ符号を付し説明を省略する。画像形成装置1’は、定着装置25で処理された定着済み転写紙を転写材処理装置2に向けて出力するように定着後排紙ローラ対56が設けられた転写材出力部を備えている。また、本実施形態の画像形成システムを構成する転写材処理装置2は、画像形成装置1’から出力される定着済みの転写紙が入力される転写材入力部と、その転写材入力部から入力された転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置70と、表面処理装置70で表面処理された転写材が出力される転写材出力部としての排紙トレイ203と、を備えている。上記転写材入力部は、画像形成装置1’の定着後排紙ローラ対56が設けられた転写材出力部に対向するように設けられている。かかる構成により、画像形成装置1’の給紙カセット44の給紙位置から転写材処理装置2の排紙トレイ203に至るまで転写紙搬送経路48が形成される。また、転写材処理装置2に設けられる表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の画像形成システムにおいて、画像形成装置1’でトナー画像を形成され定着処理が完了すると、その定着済みの転写紙が画像形成装置1’の転写紙出力部から転写材処理装置2内に導入される。転写材処理装置2の表面処理装置70で放電処理が完了すると、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ203上に排出される。
【0087】
図21は、本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図である。本実施形態の転写材処理装置3は、処理対象の転写材にトナー画像を形成する画像形成装置の設置場所から離れた位置に、その画像形成装置とは独立に設置することができる独立設置型の装置である。この転写材処理装置3は、表面にトナー画像が形成された定着済みの転写紙Pを供給する転写材供給部としての給紙カセット301と、その給紙カセット301から供給された転写紙Pのトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置70と、表面処理装置70で表面処理された転写紙Pが出力される転写材出力部としても排紙トレイ311とを備えている。給紙カセット301は定着処理済みの転写紙Pの束を収容し、給紙カセット301の紙束における一番上の転写紙Pが給紙ローラ302の回転駆動によって送り出される。給紙カセット301から送り出された転写紙Pは、給紙ローラ303及び搬送ローラ304〜309により、表面処理装置70に向けて搬送される。表面処理装置70で放電処理されて出力された転写紙Pは、排紙ローラ対310により排紙トレイ311上に出力される。かかる構成により、給紙カセット301の給紙位置から排紙トレイ311に至るまで転写紙搬送経路300が形成される。また、本実施形態においても、表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の転写材処理装置3において、給紙カセット301に複数枚の定着済みの転写紙をまとめてセットし、例えば図示しない操作部の処理開始ボタンをユーザが操作すると、給紙カセット301内の複数枚の転写紙Pが上から順番に1枚ずつ自動給紙され、表面処理装置70で所定の放電処理を行われ、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ301上に連続的に排出される。
【0088】
図22は、本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図である。本実施形態の転写材処理装置4は、上記図21の転写材処理装置3と同様に、画像形成装置とは独立に設置することができる独立設置型の装置である。本実施形態の転写材処理装置4は、図21の構成例とは異なり、定着済みの転写紙Pを供給する転写材供給部として、給紙カセットの代わりに手差しトレイ401を備えている。手差しトレイ401上にセットされた転写紙Pは、手差し送出ローラ402によって表面処理装置70に向けて送り出され、搬送ローラ404により表面処理装置70に導入される。また、表面処理装置70で放電処理されて出力された転写紙Pは、排紙ローラ対405により排紙トレイ405上に出力される。かかる構成により、手差しトレイ401から排紙トレイ405に至るまで転写紙搬送経路400が形成される。また、本実施形態においても、表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の転写材処理装置4において、手差しトレイ401に定着済みの転写紙をセットし、例えば図示しない操作部の処理開始ボタンの操作又は手差しトレイ401上の転写紙の検知に基づいて、手差しトレイ401上の転写紙Pが自動給紙され、表面処理装置70で所定の放電処理を行われ、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ405上に連続的に排出される。特に、本実施形態の転写材処理装置4では、定着済みの転写紙を手差しトレイ401上に載置すればよいので、定着済みの転写紙を1枚ずつ手軽に処理することができる。
【0089】
なお、上記各実施形態では、上記定着済み転写紙の表面処理に誘電体バリア放電を用いる例を示したが、本発明は、「大気圧プラズマ」、「大気圧グロー放電」、「コロナ放電」、「大気圧ストリーマ放電」などで表現される大気圧下での高電圧による他の放電を用いてもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、表面処理装置70で処理する処理対象の転写材が繊維質の材料がベースになっている転写紙である例をしましたが、本発明に係る転写装置装置の処理対象は、トナー画像が形成され定着可能なものであればOHP用のプラスチックシート等の転写紙以外の転写材であってもよく、同様な効果が得られるものである。
【0091】
また、上記各実施形態の表面処理装置で処理可能な転写材上のトナー画像を構成するトナーとしては、例えば、以下に示すような少なくとも樹脂と着色剤とを含有する電子写真用トナーを使用できる。また、トナーは、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有してもよい。
【0092】
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。機械的な強度等を合わせ考慮すると、ポリエステル系樹脂が好ましい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
【0093】
前記アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0094】
前記メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0095】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0096】
また、本実施形態のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0097】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0098】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0099】
前記ビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0100】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0101】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0102】
前記ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
【0103】
前記ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0104】
前記ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0105】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。この結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0106】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0107】
また、本実施形態のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0108】
前記トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、次式(1)で算出する。ただし、fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W・・・(1)
【0109】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80°Cであるのが好ましく、40〜75°Cであるのがより好ましい。Tgが35°Cより低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80°Cを超えると、定着性が低下することがある。
【0110】
トナーには磁性体を含有させてもよい。磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0111】
前記磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0112】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0113】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0114】
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0115】
〔着色剤〕
前記トナーに含有する着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0116】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0117】
また、本実施形態のトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0118】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0119】
また、トナーの分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0120】
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0121】
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0122】
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0123】
<ワックス>
また、前述のように、上記実施形態の表面処理装置で処理可能な転写材上のトナー画像を構成するトナーは、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有するトナーであってもよい。
【0124】
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0125】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0126】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0127】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0128】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0129】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0130】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0131】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110°Cの領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110°Cの領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0132】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0133】
本実施形態のトナーに含有するワックスでは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0134】
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、例えば、JIS K7121に準じた方法を採用する。DSC曲線は、例えば、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0135】
<帯電制御剤>
トナーの帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
また、トナーに添加する帯電制御剤は、例えば、トナーの帯電特性を調整し、高温高湿度下、あるいは低温低湿度下等の帯電特性が大きく変動し得る環境下での帯電特性差異の抑制や、トナー粒子間の帯電量ばらつきを抑制するために用いられる。
【0137】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれもオリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれもヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット株式会社製);キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
前記帯電制御剤は、前記マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解及び/又は分散させてもよく、あるいは前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解及び/又は分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。
【0138】
トナーにおける帯電制御剤の含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0139】
<流動性向上剤>
本実施形態のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0140】
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0141】
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
【0142】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0143】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0144】
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0145】
前記有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0146】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
【0147】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m2/g以上が好ましく、60〜400m2/gがより好ましい。
【0148】
表面処理された微粉体としては、20m2/g以上が好ましく、40〜300m2/gがより好ましい。これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0149】
また、本実施形態のトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0150】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0151】
また、現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
【0152】
前記混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0153】
トナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0154】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。前記無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、5mμ〜500mμであることがより好ましい。前記BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0155】
この他、外添剤としては、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0156】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0157】
潜像担持体としての感光体や一次転写体として転写ベルトに残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加するクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μmから1μmのものが好ましい。
【0158】
上記各種材料からなるトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0159】
1、1’ 画像形成装置
2、3、4 転写材処理装置
70 表面処理装置
700 放電処理部
701、702 搬送ローラ
703 第1電極ローラ
704 第2電極ローラ
705 高周波発信機
706 高圧トランス
268 オイル
P 転写紙
W ワックス
T トナー
T’ トナー画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】特開昭62−100775号公報
【特許文献2】特開平3−91764号公報
【特許文献3】特開平3−168649号公報
【特許文献4】特開平8−334919号公報
【非特許文献】
【0161】
【非特許文献1】電子写真学会編、「電子写真技術の基礎と応用」、初版、株式会社コロナ社、昭和63年6月15日、p.321−324
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置及び転写材処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カールソンプロセスに代表される電子写真方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、一般的に、光導電性特性を有する感光体が一様に帯電され、画像パターンに応じた像露光にて電荷分布として潜像化され、感光体上の潜像は、正負どちらかに帯電した樹脂着色微粒子であるトナーにて顕像化される。その後、感光体上のトナー像は、静電気力にて転写紙等の転写材の表面に転写され、圧をかけたローラ間を通すことでトナーの弾性を利用して転写材上に定着され、最終的なトナー像を得ることができる。トナーの弾性を利用して定着するトナー定着手段は熱エネルギーを用いるのが一般的である。
【0003】
前記熱エネルギーを用いるトナー定着手段は、加熱されたローラ等からなる定着部材の表面と転写材上のトナー像とが直接接触するため、トナー像の一部が定着部材の表面に付着するオフセット現象や定着部材に転写材が巻き付く巻き付き現象が発生するおそれがある。これらのオフセット現象や転写材の巻き付き現象を防止するため、定着部材の表面にテフロン(登録商標)やシリコーンの離型層を設けるとともに、離型剤としてのオイル(例えば、シリコーンオイル)を定着部材の表面に塗付する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、上記定着部材の表面へ塗布するオイルの塗付量を低減したりオイルの塗布そのものを省略したりできるように、離型剤としてのワックスを添加したトナーを用いて画像を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、前記電子写真方式を用いた画像形成装置の高速化、高画質化が進むとともに、紙処理の周辺装置も充実してきている。また、電子写真方式を用いた画像形成装置では版を作製する必要がない。これらの理由から、プリント・オン・デマンド(以下「POD」という。)機として従来オフセット等の印刷機が使用されている領域で、電子写真方式を用いた画像形成装置が使用され始めている。このようなPOD機として使用する場合、印刷物としての転写材への後処理による付加価値を付与するため、定着済みの転写材の表面にニスを塗布するコート処理やPP(ポリプロピレン)ラミネートに代表されるフィルム等のコート処理を実施することがある。このようなニスやフィルムのコート処理により、高光沢な上がりによる高級感やキズ、こすれ防止等の付加価値が得られる。
ところが、上記ニスやフィルムのコート処理を、前記電子写真方式を用いた画像形成装置(POD器)から出力された定着済みの転写材に対して実施すると、前述の離型性を得るためのオイルやワックスが転写材上のニスの塗付ムラや転写材とフィルムとの接着性に影響することがある。すなわち、定着済みの転写材の表面に上記離型剤としてのオイルやワックスが存在しているため、ニスやフィルムの接着剤をはじいてしまい、ニスを均一に塗付できないという現象や転写材とフィルムとの間で所定の接着性が得られない現象が発生するおそれがある。
これらの現象を回避するために、浸透等により転写材の表面に存在するオイルが減少するまで転写材を放置したり、あるいは界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いたりすることが考えられる。しかしながら、上記転写材を放置するという非効率な作業があると作業効率が落ちてしまい、また、上記ニスや接着剤の専用品を使用するとコスト高になってしまう。
【0005】
また、前記電子写真方式を用いた画像形成装置から出力された定着済みの転写材の表面に上記離型剤としてのオイルやワックスが存在していると、その定着済みの転写材の表面に筆記具で追記したり捺印したりすることが難しく良好な加筆性が得られないという課題もある。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、作業効率の低下及びコスト高を回避しつつ、トナー像が定着された定着済みの転写材の表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写材の表面における加筆性を向上させることができる表面処理装置及びその表面処理装置を備えた転写材処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置であって、前記処理対象の転写材は、トナー画像が表面に形成され、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いて該トナー画像が定着された転写材であり、前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、転写材の表面を処理する表面処理装置であって、前記処理対象の転写材は、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いてトナー画像が表面に形成され、該トナー画像が定着された転写材であり、前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の表面処理装置において、前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分に対する水の接触角が90°以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1又は2の表面処理装置において、前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分及び前記トナー画像に存在していない部分それぞれに対する水の接触角が90°以下であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、前記放電は、大気圧プラズマが生じる放電、大気圧グロー放電、コロナ放電、又は大気圧ストリーマ放電であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、前記放電は、誘電体バリア放電であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の表面処理装置において、前記転写材を搬送する搬送手段を更に備え、前記放電手段は、前記搬送手段で搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、導電性部材の表面に誘電体層が形成され該転写材を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の表面処理装置において、前記電圧は、周波数が20[kHz]以上及び500[kHz]以下である交流電圧であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の表面処理装置において、前記交流電圧のピーク間電圧値は、前記空隙の厚みの単位長[mm]あたり、5[kVp−p]以下及び30[kVp−p]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9のいずれかの表面処理装置において、前記第1電極部材の材料はステンレスであることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項7乃至10のいずれかの表面処理装置において、前記第1電極部材及び前記第2電極部材はそれぞれローラ形状を有し、該第2電極部材の直径は該第1電極部材の直径よりも大きいことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の表面処理装置において、前記第2電極部材を回転駆動する駆動手段を備え、該第2電極部材は、その外周面の周方向の全体が前記誘電体層によって覆われていることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項7乃至12のいずれかの表面処理装置において、前記第2電極部材の誘電体層の比誘電率は、2以上及び10以下であり、該誘電層の厚みは、0.1[mm]以上及び5[mm]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項5又は6の表面処理装置において、複数の支持ローラに掛け渡され前記転写材を搬送する搬送ベルトを更に備え、前記放電手段は、前記搬送ベルトで搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、該搬送ベルトの該転写材を搬送している部分を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、転写材を処理する転写材処理装置であって、表面にトナー画像が形成され該トナー画像が定着された定着済みの転写材を供給する転写材供給部と、該転写材供給部から送り出された該転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置と、該表面処理装置で表面処理された該転写材が出力される転写材出力部と、を備え、前記表面処理装置は、請求項1乃至14のいずれかの表面処理装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いてトナー画像が定着された転写材や、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いて形成されたトナー画像が定着された転写材について、その定着済みの転写材の表面又はその表面の近傍に放電を発生させるように処理する。この放電により、転写材の表面に存在しているオイルやワックスを低減させるとともに転写材の表面の濡れ性を向上させることができる。従って、定着済みの転写材の表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写材の表面における加筆性を向上させることができる。しかも、定着済みの転写材を長時間放置するという非効率な作業を行う必要がなく、上記コート処理のために界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いる必要もないので、作業効率の低下及びコスト高を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】定着装置の一構成例を示す拡大構成図。
【図3】オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図。
【図4】ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図。
【図5】トナーに添加されたワックス等の添加物の様子を示す説明図。
【図6】接触角の説明図。
【図7】表面処理装置の一構成例を示す概略構成図。
【図8】第1電極ローラ及び第2電極ローラの寸法及び位置関係の説明図。
【図9】オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図。
【図10】ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図。
【図11】(a)及び(b)はそれぞれ実施例で用いた転写紙の表面のSEM写真。
【図12】FTIR−ATR法の原理の説明図。
【図13】ATR分析深さ(もぐりこみ深さ)dpの波数依存性を示すグラフ。
【図14】(a)及び(b)はそれぞれ放電処理前及び放電処理後における定着済み転写紙の表面のSEM写真。
【図15】2種類の定着処理それぞれによって定着された定着処理後の転写紙について測定した放電処理後におけるトナー画像上の接触角の時間推移を示すグラフ。
【図16】2種類の定着処理それぞれによって定着された定着処理後の転写紙について測定した表面のpH値の時間推移を示すグラフ。
【図17】放電処理済みの転写紙及び未処理の転写紙それぞれについて測定した転写紙表面の接触角の時間推移を示すグラフ。
【図18】放電処理の効果の確認に用いた実験装置の概略構成図。
【図19】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置の概略構成図。
【図20】本発明の更に他の実施形態に係る画像形成システムの概略構成図。
【図21】本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図。
【図22】本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置1は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成可能なフルカラー画像形成装置であり、フルカラーPOD機として使用することができる。
【0011】
本実施形態の画像形成装置1は、2つの光書込ユニット21と、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー画像をそれぞれ形成するための4つのトナー画像形成部としてのプロセスユニット18Y,M,C,Kとを備えている。また、画像形成装置1は、2つの給紙カセット44を有する給紙部43から供給される転写材としての転写紙Pが搬送・出力される転写紙搬送路48を形成するように、レジストローラ対49、手差し送出ローラ50、手差しトレイ51、手差し給紙路53、搬送切替装置28、定着後排紙ローラ対56、表面処理対象の定着済み転写紙Pを搬送する搬送ローラ対57、58、転写材出力部としての排紙トレイ59等を更に備えている。また、画像形成装置1は、プロセスユニット18Y,M,C,Kで形成されたトナー画像を中間転写体としての中間転写ベルト10を介して転写紙Pに転写する中間転写ユニットと、転写紙P上のトナー画像を定着する定着手段としての定着装置25と、中間転写ユニットでトナー画像が転写された転写紙Pを支持ローラ23に掛け渡された搬送ベルト24によって定着装置25に搬送する搬送ベルトユニットと、転写紙Pの両面にトナー画像を形成するための転写紙再送装置28と、を更に備えている。そして、画像形成装置1は、後で詳述するように、定着装置25から出力された定着済み転写紙Pの表面を処理する表面処理装置70を更に備えている。
【0012】
各給紙カセット44はそれぞれ転写紙Pの束を収容し、給紙カセット44の紙束における一番上の転写紙Pが給紙ローラ42の回転駆動によって送り出される。給紙カセット44から送り出された転写紙は、給紙ローラ45、47及び給紙路46により、転写紙搬送路48に向けて搬送される。筺体の側面にある手差しトレイ51は筺体に対して開閉可能に配設されており、筺体に対して開いた状態でトレイ上面に紙束が手差しされる。手差しされた紙束における一番上の転写紙は、手差し送出ローラ50によって転写紙搬送路48に向けて送り出される。
【0013】
上記2つの光書込ユニット21はそれぞれ、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、外部の画像読み取り装置(スキャナ)によって読み取られた画像情報やコンピュータ装置等の外部装置から送られてくる画像情報に基づいて半導体レーザー(LD)等の光源を駆動することにより、プロセスユニット18Y,M,C,Kの感光体40Y,M,C,Kを光走査する。具体的には、プロセスユニット18Y,M,C,Kの感光体40Y,M,C,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動される。図中左側の光書込ユニット21は、回転駆動中の感光体40Y,Mに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体40Y,Mには、Y,M画像情報に基づいた静電潜像がそれぞれ形成される。また、図中右側の光書込ユニット21は、回転駆動中の感光体40C,Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体40C,Kには、C,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0014】
上記4つのプロセスユニット18Y,M,C,Kはそれぞれ、潜像担持体としてのドラム状の感光体40Y,M,C,Kを有している。また、プロセスユニット18Y,M,C,Kはそれぞれ、感光体40Y,M,C,Kの周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、それらが画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。各プロセスユニット18Y,M,C,Kは、互いに使用するトナーの色が異なる点の他が同様の構成になっている。本実施形態の画像形成装置1は、これらの4つのプロセスユニット18Y,M,C,Kを中間転写ベルト10の支持ローラ間の張架部に対向させるようにその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。
【0015】
イエロー(Y)のトナー画像を形成するプロセスユニット18Yを例にすると、プロセスユニット18Yは、感光体40Yの他、この表面に形成された静電潜像をYトナー画像に現像するための現像装置を有している。また、回転駆動される感光体40Yの表面に対して一様帯電処理を施す帯電装置や、Y用の1次転写ニップを通過した後の感光体40Y表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置等を有している。これらの帯電装置、現像装置及びドラムクリーニング装置は、その順番で感光体40Yの回転方向に並ぶように配設されている。
【0016】
感光体40Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いてもよい。
【0017】
Y用の現像装置は、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を用いて潜像を現像するものである。現像装置として、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。現像装置に対しては、図示しないYトナー補給装置により、Yトナーボトル180Y内のYトナーが適宜補給される。なお、各プロセスユニット18Y,M,C,Kの現像装置で用いることができるトナーについては、後で例示する。
【0018】
Y用のドラムクリーニング装置としては、クリーニング部材であるポリウレタンゴム製のクリーニングブレードを感光体40Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。また、クリーニング性を高める目的で、本画像形成装置では、回転自在なファーブラシを感光体40Yに当接させる方式のものを採用している。このファーブラシは、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体40Y表面に塗布する役割も兼ねている。
【0019】
感光体40Yの上方には、図示しない除電ランプが配設されており、この除電ランプもプロセスユニット40Yの一部になっている。除電ランプは、上記ドラムクリーニング装置を通過した後の感光体40Y表面を光照射によって除電する。除電された感光体40Yの表面は、帯電装置によって一様に帯電された後、上述したYM用の光書込ユニット21による光走査が施される。なお、帯電装置は、図示しない電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。かかる方式に代えて、感光体40Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式を採用してもよい。
【0020】
以上、Y用のプロセスユニット18Yについて説明したが、M,C,K用のプロセスユニット40M,C,Kも、Y用のものと同様の構成になっている。
【0021】
4つのプロセスユニット40Y,M,C,Kの下方に、前記中間転写ユニットが配設されている。この中間転写ユニットは、複数のローラ14,15,15’,16,63に掛け渡されて張架されている中間転写ベルト10を、感光体40Y,M,C,Kに当接させながら、何れか1つのローラの回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体40Y,M,C,Kと中間転写ベルト10とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0022】
Y,M,C,K用の1次転写ニップそれぞれの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写部材としての1次転写ローラ62Y,M,C,Kによって中間転写ベルト10を感光体40Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体40Y,M,C,K上のトナー画像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。
【0023】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト10のおもて面には、各1次転写ニップでトナー画像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト10のおもて面には4色重ね合わせトナー画像(以下「4色トナー画像」という。)が形成される。
【0024】
中間転写ベルト10の図中下方の2次転写部22には、2次転写部材としての2次転写ローラ16’が配設されている。この2次転写ローラ16’は、中間転写ベルト10における2次転写バックアップローラ16に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して2次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト10のおもて面と2次転写ローラ16’とが当接する2次転写ニップが形成されている。
【0025】
2次転写ローラ16’には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の2次転写バックアップローラ16は接地されている。これにより、2次転写ニップ内に2次転写電界が形成されている。
【0026】
2次転写部22の図中右側方には、上述のレジストローラ対49が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト10上の4色トナー画像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト10上の4色トナー画像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括2次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0027】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10のおもて面には、2次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト10に当接するベルトクリーニング装置17によってクリーニングされる。
【0028】
2次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト10から離間して、上述の搬送ベルトユニットに受け渡される。この搬送ベルトユニットは、無端状の搬送ベルト24を2つのローラ(駆動ローラ、従動ローラ)23によって張架しながら、駆動ローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動させる。そして、2次転写ニップから受け渡された転写紙Pを搬送ベルト上部の張架面に保持しながら、搬送ベルト24の無端移動に伴って搬送して定着装置25に受け渡す。
【0029】
図2は、定着装置25の一構成例を示す拡大構成図である。定着装置25は、定着ベルト26、定着ローラ27、弾性駆動ローラ261、加熱ローラ262、トナー除去ユニット263、オイル塗布ローラ264、オイル供給ローラ265、オイル浸透フェルト266、オイル受け皿267等を有している。
【0030】
無端状の定着ベルト26は、弾性駆動ローラ261と、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ262とに掛け回された状態で、弾性駆動ローラ261の図中時計回り方向の回転駆動に伴って、図中時計回り方向に無端移動する。そして、加熱ローラ262に対する掛け回し位置で、加熱ローラ262によって加熱される。加熱ローラ262の発熱源に対する電源供給のオン、オフは、図示しない定着温度制御部によって制御される。この定着温度制御部は、定着ベルト26の表面温度を検知する図示しない温度センサによる検知結果が所定値になるように、前述の電源供給をオン、オフ制御する。
【0031】
定着ベルト26における弾性駆動ローラ261に対する掛け回し箇所には、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ27が当接して定着ニップが形成される。定着ローラ27は、上記定着ニップを形成しながら、図中反時計回り方向に回転駆動されている。定着ローラ27の発熱源に対する電源供給のオン、オフも、定着温度制御部によって制御される。定着温度制御部は、定着ローラ27の表面温度を検知する図示しない温度センサによる検知結果が所定値になるように、前述の電源供給をオン、オフ制御する。
【0032】
上述した2次転写ニップを通過した転写紙Pは、定着装置25内に送られて定着ニップに挟み込まれる。そして、加圧や加熱などの作用により、転写紙P上のトナー画像の定着処理が施される。
【0033】
定着ニップを通過した後の定着ベルト26には、トナー除去ユニット263のクリーニングウェブが当接している。このクリーニングウェブにより、定着ベルト26の表面に付着してしまったトナーが拭き取られる。なお、トナー除去ユニット263は、帯状のウェブを巻き付けロールに巻き付けている。そして、この巻き付けロールから引き伸ばされたウェブを、巻き取りロールの回転によって巻き取ることができる。ウェブにおける巻き付けロールと、巻き取りロールとの間の箇所を定着ベルト26に当接させており、その箇所の汚れの度合い(拭き取り動作時間)が進行するのに応じて、適宜量のウェブを巻き取りロールで巻き取ることで、ウェブの汚れていない箇所を定着ベルト26に当接させる。
【0034】
定着ベルト26における加熱ローラ262に対する掛け回し箇所には、オイル塗布ローラ264が当接している。このオイル塗布ローラ264は、定着ベルト26の表面に当接しながら回転することで、離型剤としてのオイル(例えば、シリコーンオイル)を同表面に塗布する。
【0035】
オイル塗布ローラ264の近傍には、オイル受け皿267、オイル浸透フェルト266、及びオイル供給ローラ265が配設されている。オイル受け皿267内には、オイルが貯留されている。このオイル受け皿267には、所定の高さ位置でオイル受け皿267内のオイルをオーバーフローさせる図示しないオーバーフロー管が設けられている。オイル受け皿267に対しては、図示しないオイル補給装置によってオイルが定期的に補給されるが、このとき、余剰のオイルは前述のオーバーフロー管を経由してオイル補給装置に戻される。
【0036】
オイル受け皿267内のオイルには、オイル浸透フェルト266が部分的に浸かっている。このオイル浸透フェルト266は、オイルに対する非浸透箇所に対して、毛細管現象によってオイルを染み込ませる。
【0037】
オイル供給ローラ265は、オイル浸透フェルト266とオイル塗布ローラ264とに当接した状態で回転することにより、オイル浸透フェルト266から拭い取ったオイルを、オイル塗布ローラ264に塗布する。これにより、定着ベルト26に対するオイル塗布によってオイルを失ったオイル塗布ローラ264の表面に、新たなオイルが供給される。
【0038】
定着装置25は、以上のようにして定着ベルト26にオイルを塗布することで、定着ベルト26に対するトナーのオフセットを抑えている。また、定着ベルト26に塗布したオイルを、転写紙Pが挟み込まれていない定着ニップで定着ローラ27に転移させることで、定着ローラ27に対するトナーのオフセットも抑えている。
【0039】
先に示した図1において、2次転写ニップで表面にトナー画像が転写され定着装置25でトナー画像が定着された転写紙は表面処理装置70に向けて送り出される。定着装置25から出力された転写紙は、定着後排紙ローラ対56及び搬送ローラ対57を経由して表面処理装置70に搬送される。表面処理装置70で表面処理された転写紙は、搬送ローラ対58を経由して排紙トレイ59上に排紙される。
【0040】
次に、上記画像形成装置1の表面処理装置70を用いた転写紙の表面処理について説明する。
図3は、離型剤としてのオイルが表面に塗布された定着部材(定着ベルト26、定着ローラ27)を用いてトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図である。図3に示すように、定着前の転写紙P上のトナーTは粉体状態で静電気力にて転写紙P上に固定化されているが、転写紙P上のトナーTは定着処理によって溶融し転写紙P上に固定される。トナーの表面との離型性を得るためのオイル268は、転写紙P上のトナー画像T’の表面やトナーが存在しない転写紙Pの表面に移行する。そのため、定着処理後は、トナー画像T’が形成されている部分を含む転写紙Pの表面全体に、上記定着部材から移行したオイル268が存在する。このオイル268が存在する転写紙Pの表面に、高級感等の付加価値を与える等の目的でニスを塗布するコート処理やPP等のフィルムのコート処理を実施しようとすると、ニスやフィルムの接着剤をはじいてしまい、ニスを均一に塗付できないという現象や転写紙Pとフィルムとの間で所定の接着性が得られない現象が発生するおそれがある。また、上記オイル268が存在する定着後の転写紙Pの表面は、筆記具で追記したり印鑑を捺印したりすることができず良好な加筆性が得られないおそれがある。
【0041】
図4は、離型剤としてのワックスを含有するトナーを用いて転写紙P上に形成されたトナー画像を定着する定着処理の前後における転写材表面の様子を示す模式図であり、図5は、トナーに添加されたワックス等の添加物の様子を示す説明図である。トナーTは、後述のように樹脂Trを主成分として顔料Tpや帯電制御剤Tcが添加され、更に離型剤としてのワックスW等が添加される場合がある。ワックスWを含有するトナーTを用いて転写紙P上に形成されたトナー画像を定着する場合も、図3の場合と同様に、定着前の転写紙P上のトナーTは粉体状態で静電気力にて転写紙P上に固定され、転写紙P上のトナーTは定着処理によって溶融し転写紙P上に固定化される。トナーに含有するワックスWは、定着時にトナー画像T’の表面に染み出し定着部材(定着ローラ)との離型性を得る効果を発揮するが、定着後の転写紙P上のトナー画像T’の表面に残留存在する。このトナー画像T’の表面のワックスWは、トナー画像T’の周辺の転写紙表面に広がって存在するおそれもある。従って、上記ニスやフィルムの良好なコート処理ができないという現象及び良好な加筆性が得られないという現象は、上記定着装置25の定着部材にオイルを用いる場合だけでなく、ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上にトナー画像を形成した場合にも発生するおそれがある。なお、定着での離型余裕度の向上を目的として、ワックスが含有されたトナーを用いる場合においても定着装置25の定着部材にオイルを塗布することもある。
【0042】
上記オイルやワックスは離型性を上げる効果を得るためのものであるので、非常にぬれ性が低い材料であり、そのためにニスや接着剤等を弾きやすいと考えられる。このぬれ性を表す指標として「接触角」θがあり、この接触角θの大きさによってぬれ性を表現することができる。接触角θは、図6に示すように対象物900と液滴901の接線Lとのなす角度である。
【0043】
対象物の表面のぬれ性は、一般的に、接触角θの大きさに応じて次の(1)〜(3)の3種類に分類することができる。
(1)拡張ぬれ(spreading wetting):θ=0°の場合で、液滴が薄膜状にどこまでも拡がってゆく。
(2)浸漬ぬれ(immersional wetting):0°<θ≦90°の場合で、固体を液中に浸漬したときのぬれ。
(3)付着ぬれ(adhesional wetting):90°<θ≦180°の場合で、里芋の葉に朝露が乗っているような状態。付着ぬれとはいっているが、ぬれないといってもよい。
【0044】
本発明者らが上記オイル塗付の定着部材でトナー画像が定着された転写紙やワックス含有トナーを用いてトナー画像が形成された転写紙について、純水の液滴Dwを滴下して接触角θを測定したところ、接触角θが95°以上の値であって上記(3)の「付着ぬれ」の領域となっていることがわかった。この「付着ぬれ」の領域にあるために、定着後の転写紙にニスや接着剤がぬれないで弾きやすくなっていると考えられる。
【0045】
そこで、本実施形態の画像形成装置1は、上記定着後の転写紙Pの表面の濡れ性を向上させることができるように、定着装置25から出力された転写紙Pの表面を処理する表面処理装置70が設けられている。この表面処理装置70は、定着済みのトナー画像が形成されている転写紙Pの表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を有している。
【0046】
図7は、本実施形態の表面処理装置70の一構成例を示す概略構成図である。この表面処理装置70は、上記放電手段としての放電処理部700と、定着装置25から送られてくる転写紙Pが放電発生領域を通過するように転写紙を搬送する搬送手段としての搬送ローラ対701,702と、を備える。放電処理部700は、導電性の第1電極部材としての第1電極ローラ703と、第1電極ローラ703に対向するように設けられた第2電極部材としての第2電極ローラ704と、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間に所定の電圧を印加する電圧印加手段とを有している。第1電極ローラ703は、搬送ローラ対701,702で搬送されている転写紙Pのトナー画像が形成されている表面に空隙Gを介して対向し転写紙Pの移動方向と交差する方向に延在している。第2電極ローラ704は、導電性部材からなるローラ状の芯金部704aの表面に誘電体層704bが形成され転写紙Pを間に介して第1電極ローラ703に対向するように設けられている。また、上記電圧印加手段は、所定の周波数fの交流電圧を発生させる高周波発信機705と、高周波発信機705から出力された交流電圧の大きさを所定の電圧まで昇圧する高圧トランス706とを用いて構成されている。高周波発信機705としては、例えば春日電機株式会社製の高周波電源(CT−0212)を使用することができ、高圧トランス706としては、例えば春日電機株式会社製のトランス(CT−T02W)を使用することができる。また、図7の例では、第2電極ローラ704の芯金部704aと高周波発信機705のアース端子とがともに接地され、高圧トランス706の所定の周波数及び電圧値からなる交流電圧が出力される出力端子706aが第1電極ローラ703に接続されている。この第1電極ローラ703に所定の交流電圧が印加されると、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704に接触した状態で搬送されている転写紙Pの表面との間の空隙Gに誘電体バリア放電が発生する。
【0047】
上記構成の表面処理装置70において、高周波発信機705から出力する交流電圧の周波数fは20[kHz]以下且つ500[kHz]以下の範囲であることが好ましい。20[kHz]より低い周波数で20[Hz]までの領域は人の可聴域と重なり、放電の際に発する音が不快で耳障りであるため好ましくない。また、さらに20[Hz]より低い直流までの周波数領域では、第1電極ローラ703及び第2電極ローラ704の軸方向に対し均一な放電が発生しない(局所的に放電が集中する)ため、好ましくない。一方、500[kHz]より高い周波数領域では空隙Gに放電によって発生したイオンがそのまま滞留することによって生じた残留イオンによる低抵抗な放電チャネルが形成されやすく、放電が局部的に集中して均一な処理ができないばかりか大電流が流れて高熱が発生するために安全上も好ましくない。なお、この場合、高周波発信機705より出力する交流電圧の波形については、周波数が上記20[kHz]〜500[kHz]の範囲であれば、特に制限は無く、正弦波であっても方形波(パルス状波形を含む)であってもよい。
【0048】
第1電極ローラ703に印加される高圧トランス706の出力電圧値(ピーク間電圧)は、転写紙P及び第2電極ローラ704の誘電体層704bの誘電特性や厚み、及び第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙の大きさによって適宜決定すればよいが、この間隙が1[mm]に対しては5[kVp−p]以上且つ30[kVp−p]以下の範囲であることが好ましい。高圧トランス706の出力電圧値が5[kVp−p]より低い場合は上記間隙に存在する空気の絶縁破壊電圧に達せず放電がなされない場合があるため好ましくない。また、高圧トランス706の出力電圧値が30[kVp−p]より高い場合は、第1電極ローラ703と周囲の部材の間でアーク放電がなされる可能性が高くなるので、安全上好ましくない。なお、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙と高圧トランス706の出力電圧値の好適な範囲とは略比例する関係にあるため、上記間隙が1[mm]以外の場合は、上記1[mm]の場合の好適範囲である5〜30[kVp−p]に基づいて当該間隙に対する高圧トランス706の出力電圧値を決定すればよい。
【0049】
また、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704との間隙gの大きさ(図8参照)は、処理対象の転写紙Pの厚み以上であればよく、概ね3[mm]以下であることが好ましい。3[mm]より大きい場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。
【0050】
また、第1電極ローラ703の材料は鉄、銅、アルミ、ステンレス等の金属より適宜選択すればよいが、放電時に発生するオゾンによって腐食され難いステンレスが好ましい。第2電極ローラ704の芯材についても第1電極ローラ703の材料と同様である。
【0051】
また、第2電極ローラ704の直径R2は、第1電極ローラ703の直径R1より大きい状態であることが好ましい(図8参照)。すなわち、第1電極ローラ703側から見たとき第2電極ローラ704がみなし平面であることがより好ましい。このように第1電極ローラ703側から第2電極ローラ704がみなし平面であるように見えることにより、第1電極ローラ703と第2電極ローラ704とが対向する位置でより広く均一な放電領域(いわゆる転写紙移動方向に発生している沿面放電の領域)を転写紙Pの表面へ付与することが可能となり、均一な無駄のない処理効果が得られる。これに対し、第2電極ローラ704の直径が第1電極ローラ703の直径より小さい場合は、放電領域が第1電極ローラ703と第2電極ローラ704の最短距離の領域に集中して沿面放電の距離が短くなるために、非常に狭い領域(ライン状)で処理がなされる。従って、極めて僅かな転写紙Pの搬送速度変化であっても転写紙Pの面内において処理ムラを発生させてしまい、かつ集中した放電パワーのため誘電体層などの劣化を促進させてしまう原因となってしまう。
【0052】
第2電極ローラ704の誘電体層704bの材料は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等のプラスティック、シリコンゴム等のゴム、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミックスの中から適宜選択することができるが、放電によって侵食され難く且つ比誘電率が2以上且つ10以下の範囲にあるガラス、石英、アルミナ等が好ましい。比誘電率が2より小さい場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。また、比誘電率が10より大きい場合は放電が局所的に集中し易くなるため好ましくない。
【0053】
誘電体層704bの厚みt2(図8参照)は、0.1[mm]以上且つ5[mm]以下であることが好ましい。0.1[mm]より薄い場合は絶縁破壊によりアーク放電がなされ安全上好ましくない。なお、ガラス、石英、アルミナ等の場合は機械的強度も加味し1[mm]以上であればより好ましい。5[mm]よりも厚い場合は放電のために高い電圧が必要となるため好ましくない。
【0054】
また、放電による誘電体層704bの侵食を軽減するために、第2電極ローラ704は全周にわたって誘電体で覆われて回転することが好ましい。第2電極ローラ704は、図示しないモータなどの駆動手段によって回転駆動することができる。
【0055】
図9は、オイルが表面に塗布された定着部材を用いてトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図である。図示のように表面にオイル268が存在している定着済みの転写紙Pの表面に対して放電DSを発生させる表面処理を行うと、転写紙Pの表面におけるトナー画像の部分とトナー画像が形成されていない部分のいずれについても、その表面に存在していたオイル268が低減する。このようにオイル268が低減するメカニズムは明確に解明されていないが、上記放電DSによって転写紙Pの表面に存在していたオイル268がトナー画像の内部及び転写紙Pの内部に浸透する現象を促進する作用や、「酸化」、「架橋」、「分解」等の放電作用が関連していると考えられる。また、上記放電DSは、上記定着済み転写紙Pの表面に親水性官能基を生成する作用も有していると考えられる。この親水性官能基の生成や上記オイルの低減等により、定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上する。この放電処理後の転写紙Pの表面について純水の接触角θを実際に測定してみると、表面処理前に95°以上あったものが90°以下まで低下している。このように定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上することにより、その定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができるようになる。
【0056】
図10は、ワックスを含有するトナーを用いて転写紙上に形成されたトナー画像を定着した定着済み転写紙の放電処理の前後における表面の様子を示す模式図である。図示のように表面にワックス含有のトナーを用いてトナー画像T’が形成されている定着済みの転写紙Pの表面に対して放電DSを発生させる表面処理を行うと、転写紙P上のトナー画像T’の表面に存在していたワックスWが低減する。このようにワックスWが低減するメカニズムについても明確に解明されていないが、上記放電DSによって転写紙Pの表面に存在していたワックスWがトナー画像の内部に浸透する現象を促進する作用や、「酸化」、「架橋」、「分解」等の放電作用が関連していると考えられる。また、この場合も、上記放電DSは、上記定着済み転写紙Pの表面に親水性官能基を生成する作用を有していると考えられる。この親水性官能基の生成や上記ワックスの低減等により、定着済み転写紙の表面における濡れ性が向上する。そして、この放電処理後の転写紙Pの表面について純水の接触角θを実際に測定してみると、表面処理前に95°以上あったものが90°以下まで低下している。このように定着済み転写紙Pの表面における濡れ性が向上することにより、その定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができるようになる。
【0057】
次に、上記放電処理による定着済みの転写紙Pの濡れ性向上についてより定量的な結果が得られた実施例について説明する。この実施例では、2種類の転写紙X(王子製紙社製、PODグロスコート紙)及び転写紙Y(王子製紙社製、PODマットコート紙)を使用し、ワックスが添加された2種類のトナーA及びトナーBを用いてトナー画像を形成した後、上記オイルが表面に塗布された定着部材を用いて定着処理を行った。
【0058】
図11(a)及び(b)はそれぞれ、トナー画像を形成する前の転写紙X及び転写紙Yの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真(倍率:250倍)である。これらのSEM像の写真から、転写紙Xの表面の平滑度が転写紙Yの表面よりも高いことがわかる。
【0059】
上記トナーA及びトナーBはそれぞれ次のように製造したものである。
(トナーAの製造)
下記に示す結着樹脂2種類、離型剤2種類及び着色剤の処方を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM10B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130°Cの温度で溶融、混練した。得られた混練物は室温まで冷却後、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、重量平均粒径が6.0±0.3μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で、重量平均粒径が6.8±0.3μm、4μm以下の微粉量が10個数%以下となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、下記に示す添加剤2種をヘンシェルミキサーで撹拌混合し製造した。
【0060】
・結着樹脂 :結着樹脂A・・・テレフタル酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物の重合体、軟化点:110°C、ガラス転移温度:60°C、酸価:5、Mn:2800、Mw:8000、50重量部
結着樹脂B・・・テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加の重合体、軟化点:200°C、ガラス転移温度:66°C、酸価:12、Mn:2800、Mw:45000、50重量部
・離型剤 :離型剤A・・・カルナウバワックス、融点78°C 3重量部
離型剤B・・・エチレンビスステアリン酸アミド、融点145°C 2重量部
・着色剤 :カーボンブラック 10重量部
・添加剤 :無機微粒子A・・・SiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.01μm、添加量1.0重量部
無機微粒子B・・・TiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.02μm、添加量1.0重量部
【0061】
(トナーBの製造)
下記に示す結着樹脂2種、離型剤、及び着色剤、添加剤2種の処方量を用いてトナーAの製造と同様に実施した。
【0062】
・結着樹脂 :結着樹脂A・・・テレフタル酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物の重合体、軟化点:100°C、ガラス転移温度:65°C、酸価:5mgKOH/g、Mn:2800、Mw:13000、50重量部
結着樹脂B・・・テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加の重合体、軟化点:140°C、ガラス転移温度:65°C、酸価:16、Mn:2400、Mw:45000、50重量部
・離型剤 :カルナウバワックス、融点 78°C 5重量部
・着色剤 :カーボンブラック 10重量部
・添加剤 :無機微粒子A・・・SiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.01μm、添加量1.0重量部
無機微粒子B・・・TiO2 (シランカップリング剤で表面を疎水化処理)、平均粒径0.02μm、添加量1.0重量部
【0063】
ここで、上記トナーA,Bの製造におけるポリエステル樹脂の特性値は、以下のようにして測定を行った。
【0064】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6°C/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0065】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200°Cまで昇温し、その温度から降温速度10°C/分で0°Cまで冷却したサンプルを昇温速度10°C/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0066】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0067】
〔樹脂の分子量500以下の低分子量成分の含有量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定する。トナー30mgにテトラヒドロフラン10mlを加え、ボールミルで1時間混合後、ポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP−200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液を調製する。
溶離液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40°Cの恒温槽中でカラムを安定させ、試料溶液100μlを注入して測定を行う。なお、分析カラムには「GMHLX+G3000HXL」(東ソー(株)製)を使用し、分子量の検量線は数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成する。
分子量が500以下の低分子量成分の含有量(%)は、RI(屈折率)検出器により得られたチャート面積における該当領域の面積の、全チャート面積に対する割合(該当領域の面積/全チャート面積)として算出する。
【0068】
転写紙Pの表面のオイル及びワックスの分析には、FTIR(フーリエ変換型赤外分光)−ATR(減衰全反射)法を用いた。このFTIR−ATR法は、図12に示すように、ATR結晶910と試料911(本実施例では転写紙)の界面で赤外光を全反射させ、その反射面から試料911側にごくわずかしみ出す光を検出する手法である。ATR分析深さ(もぐりこみ深さ:penetration depth)dpは、上記界面に入射した光の強度が1/eになる深さで定義され、試料911に吸収のない場合、次式で表される。
【数1】
【0069】
ここで、θは入射角(41.5°)、n21はn2/n1(n1:ATR結晶910の屈折率、n2:試料911の屈折率)、λ1はλ/n1(ATR結晶中での光の波長)である。ATR結晶910がGe結晶の場合、上記n1の値は4.0である。
【0070】
図13は、ATR結晶910としてGe結晶を用い入射角θが41.5°である場合のATR分析深さ(もぐりこみ深さ)dpの波数依存性を示すグラフである。試料911の屈折率n2は、有機物の一般的な値である1.5と仮定した。図示のように分析深さdpは高波数ほど浅くなり、波数1000[cm−1]で0.8[μm]、波数3000[cm−1]で0.3[μm]程度になる。ここで、例えばワックスに特有の吸収波数は2890[cm−1]であるので、図13により、FTIR−ATR法で測定される深度(深さ)は約0.3[μm]である。従って、このFTIR−ATR法によりトナー画像の表面上だけに存在するワックスやオイルによる赤外線の吸収を検知し、それらの量を測定できることになる。
【0071】
表1及び表2は、上記トナーA及びトナーBを用いてトナー画像(ベタ画像)が形成された定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)について放電処理前後のトナー画像上のオイル及びワックスの量を測定した結果を示している。表1及び表2の値は、放電処理前のオイル及びワックスそれぞれの測定値を1.0とし、その値を基準にして放電処理後のオイル及びワックスの測定値を求めた値である。また、表1及び表2それぞれには、定着後に放電処理を行わないで所定時間放置した場合の転写紙Xのトナー画像上のオイル及びワックスを測定した結果も記載している。この放電処理無しで放置した場合の値も、上記放電処理前の測定値を1.0にして求めた値である。
【表1】
【表2】
【0072】
表1及び表2に示すように、トナーA及びトナーBのいずれについても上記放電処理によって転写紙のトナー画像上のオイル及びワックスが低減している。なお、トナーBについては、定着後に放電処理を行わないで放置した場合もオイルが低減している。これは、転写紙X上のトナーBからなるトナー画像を定着した後、上記放電処理を行わないで放置している間に表面に存在するオイルがトナー画像内へしだいに染みこんでいったことによるものと考えられる。
【0073】
図14(a)及び(b)はそれぞれ放電処理前及び放電処理後における定着済み転写紙の表面のSEM写真(倍率:3000倍)である。図14(a)に示すように放電処理前の定着済み転写紙の表面には定着で使用されたオイルが残っている。この転写紙に対して上記放電処理を行うと、図14(b)示すようにオイルがほとんど観察されない。
【0074】
表3は、定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)及び転写紙Y(PODマットコート紙)それぞれについて放電処理前後の転写紙上の接触角θを測定した結果を示している。接触角θは、定着済みの各転写紙X,Yの表面に純水の液滴を滴下して測定した。表3に示すように、放電処理前の転写紙では接触角θが80°以上と大きく濡れ性がよくないが、放電処理によって各転写紙X,Yの表面の接触角θはいずれも50°以下になり濡れ性が向上した。
【表3】
【0075】
表4は、トナーA及びトナーBそれぞれを用いてトナー画像(ベタ画像)が形成された2種類の定着済みの転写紙X(PODグロスコート紙)について放電処理前後のトナー画像上の接触角θを測定した結果を示している。接触角θは、上記定着済みの転写紙のトナー画像に純水の液滴を滴下して測定した。表4に示すように、トナーA及びトナーBのいずれについても、放電処理前の転写紙のトナー画像では接触角θが100°以上の大きな値(90°よりも大きな値)になり濡れ性がよくないが、放電処理によって接触角θはいずれも90°をおおきく下回る70°以下の値になり濡れ性が向上した。
【表4】
【0076】
図15は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによって定着された定着処理後の転写紙X(PODグロスコート紙)について測定した、上記放電処理後におけるトナー画像(ベタ画像)上の接触角θの時間推移を示すグラフである。各転写紙上のトナー画像はワックスを含有するトナーを用いて形成したものである。また、接触角θは、上記定着済みの転写紙の表面に純水の液滴を滴下して測定した。なお、上記放電処理を行う前の接触角θは、上記オイル塗布定着の場合で103°及び上記オイルレス定着の場合で104°というように、いずれの場合も接触角θが100°以上の大きな値(90°よりも大きな値)になり濡れ性がよくなかった。図15に示すように、上記放電処理を行った後、オイル塗布定着及びオイルレス定着のいずれの場合も接触角θは時間経過とともに大きくなっていくが、70時間経過しても90°以下に維持することができた。
【0077】
図16は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによって定着された定着処理後の転写紙X(PODグロスコート紙)について測定した、接触角θに影響を及ぼす要因の一つとして考えられる転写紙表面のpH値の時間推移を示すグラフである。このpH値は転写紙表面に生成される親水性官能基の密度によって変化すると考えられる。そして、この転写紙表面に存在する親水性官能基の密度が高いほどpH値が小さくなって酸性になり、接触角θが小さくなって濡れ性が向上する。上記放電処理を行う前の転写紙表面のpH値は、上記2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれの場合も6.8であった。図16に示すように、上記2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれの場合も、上記放電処理を行った後、pH値が時間経過とともに大きくなっていき、48時間を経過したところで放電処理前のpH値(6.8)に戻った。このように放電処理から48時間以上経過すると、放電処理前のpH値(6.8)に戻ることから放電処理で生成された親水性官能基がほとんど消失したと考えられる。
【0078】
図17は、上記放電処理を行った場合及び上記放電処理を行わなかった場合それぞれについて測定した、転写紙X(PODグロスコート紙)の表面の接触角θの時間推移を示すグラフである。接触角θは、転写紙Xの表面に純水の液滴を滴下して測定した。図17に示すように、上記放電処理を行わなかった場合、転写紙表面の接触角θは90°以下の78°〜83°の値で推移した。これに対し、上記放電処理を行ったときの転写紙表面の接触角θは、放電処理直後の46.6°から時間経過とともに大きくなっていくが、65°以下の値に維持され、上記放電処理を行わなかった場合の接触角θ(=78°〜83°)に戻らなかった。この図17の結果と上記図16の結果から、上記放電処理を行った後、時間が経過しても転写紙表面やトナー画像表面の接触角θが65°以下の低い水準に維持され濡れ性が悪化しないのは、上記放電処理によるオイルやワックスの低減効果の寄与が大きいためであると考えられる。
【0079】
表5は、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)それぞれによってトナー画像が定着された定着処理後の転写紙について放電処理前後の加筆性(ボールペン、鉛筆、油性、マジック、捺印、蛍光ペン、水性ペン)を調べた結果を示している。この加筆性は、コピー用紙(株式会社リコー製、「マイリサイクルペーパーGP」)とPODグロスコート紙(株式会社リコー製、「ビジネスコートグロス100」)の2種類の転写紙について調べた。表5に示すように、2種類の定着処理(オイル塗布定着、オイルレス定着)のいずれについても、上記放電処理により、水性インクを用いた筆記具(蛍光ペン、水性ペン)の加筆性が向上した。
【表5】
【0080】
図18は、本実施形態の画像形成装置における放電処理の効果の確認実験に用いた表面処理装置の概略構成図である。なお、この表面処理装置は、上記構成の画像形成装置1(図1参照)や後述の転写材処理装置に組み込む表面処理装置70として用いることができる。図18において、第1電極部材としての放電電極710は、ステンレス製の直径が6mm及び長さが300mmの丸棒である。第2電極部材としてのアース電極711は、厚さが5mm及び放電電極軸方向の長さが300mmのアルミ板であり、接地されている。アース電極711の転写紙Pが載置される表面側には、厚さが1mmのガラス板からなる誘電体712が設けられている。アース電極711及び誘電体712は、放電電極710と誘電体712との間隔が1mmになるように絶縁架台713に固定され、電動スライダ(オリエンタルモータ製、EZ limo)714により速度500[mm/s]で放電電極710の下を放電電極軸と直交する方向にスライドさせる。このとき、高周波発信機(春日電機株式会社製のCT−0212)705及び高圧トランス(春日電機株式会社製のCT−T02W)706により、放電電極710に高周波高電圧を印加し、電力500Wで放電させ、電子写真方式の画像形成装置によりそれぞれ出力した各色100%ベタ画像の転写紙Pを誘電体712上に載せることで転写紙Pを処理した。なお、上記電子写真方式の画像形成装置としては、2種類のカラー画像形成装置(画像形成装置A:株式会社リコー製のオンデマンドプリンティング装置「Pro C900」、画像形成装置B:株式会社リコー製のデジタルカラー複合機「imagio MP C4000」)を用いた。そして、各画像形成装置A,Bにより、処理対象の転写紙P上に、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナーからなるベタ画像を形成した。
【0081】
表6は、上記実験装置で放電処理した転写紙Pに、UVニス(DIC社製、ダイキュアクリヤーUV−1245)を4番のワイヤーバーでコーティングした結果と、放電処理を行っていない未処理の転写紙に同様にコーティングした比較例の結果とを示している。表6に示すように、定着済み転写紙Pについて放電処理を行った場合は、上記実験に用いた各色のトナー画像がそれぞれ形成された2種類の転写紙のいずれについても、転写紙表面に上記ニスを均一に塗布することができ、良好なコーティング結果が得られた。一方、上記放電処理を行わなかった比較例では、上記いずれの転写紙についても転写紙表面に上記ニスを均一に塗布することができず、コーティング不良が発生した。
【表6】
【0082】
以上、本実施形態によれば、表面処理装置70により、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いてトナー画像が定着された定着済みの転写紙Pや、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いて形成されたトナー画像が定着された転写紙Pについて、その定着済みの転写紙Pの表面又はその表面の近傍に誘電体バリア放電を発生させるように処理する。これにより、この放電により、転写紙Pの表面に存在しているオイルを低減させるとともに転写紙Pの表面の濡れ性を向上させることができる。従って、定着済みの転写紙Pの表面へのニス、フィルム等のコート処理を良好に行うことができ、当該定着済みの転写紙Pの表面における加筆性を向上させることができる。しかも、定着済みの転写紙Pを長時間放置するという非効率な作業を行う必要がなく、上記コート処理のために界面活性剤やアルコールを添加した専用のニスや接着剤を用いる必要もないので、作業効率の低下及びコスト高を回避することができる。
【0083】
特に、本実施形態によれば、定着済みの転写紙Pを間に介して第1電極部材703の表面と第2電極ローラ704の誘電体層704bの表面との間に誘電体バリア放電を発生させている。この誘電体バリア放電を利用することにより、第1電極部材703の表面と転写紙Pの表面との空隙Gに集中的に放電を発生させることができるので、転写紙Pの表面又はその表面における放電を効率的に且つ確実に発生させることができる。
【0084】
なお、上記実施形態では、本発明に係る表面処理装置70及びそれを備えた画像形成装置1について説明したが、これら例示したものに限定されるものではない。本発明の表面処理装置は、後述する他の実施形態のように構成してもいいし、また、本発明は、後述のような画像形成システムや転写材処理装置にも適用することができる。
【0085】
図19は、本発明の他の実施形態に係る表面処理装置70の概略構成図である。本実施形態の表面処理装置70では、第1電極ローラ703に対向する第2電極部材として、導電性材料からなる電極板720を用いている。この電極板720の材料としては例えばアルミ板を用いることができる。この電極板720に裏面が接するように誘電体ベルト721が複数のローラ722,723に掛け渡されている。このローラ722,723のいずれか一方が駆動ローラとして誘電体ベルト721を回転駆動することにより、誘電体ベルト721上に処理対象の転写紙Pを保持して搬送できる。この表面処理装置70においても、第1電極ローラ703に上記所定の交流電圧を印加することにより、誘電体ベルト721で搬送されている転写紙Pの表面と第1電極ローラ703との間の空隙Gに放電を発生させ、転写紙Pを表面処理することができる。なお、図19の表面処理装置70において、第1電極ローラ703に対向する第2電極部材として、電極板720の代わりに、導電性ローラを配置してもよい。この場合、第2電極部材としての導電性ローラの表面には、誘電体層を設けなくてもよい。
【0086】
図20は、本発明の更に他の実施形態に係る画像形成システムの概略構成図である。本実施形態の画像形成システムは、上記表面処理装置を備えていない通常の画像形成装置1’と、上記表面処理装置を備えた周辺装置としての転写材処理装置2とを組み合わせたものである。なお、図20において、画像形成装置1’を構成する各種部材や装置は前述の図1の画像形成装置1と同様なものを使用することができ、それらについては同じ符号を付し説明を省略する。画像形成装置1’は、定着装置25で処理された定着済み転写紙を転写材処理装置2に向けて出力するように定着後排紙ローラ対56が設けられた転写材出力部を備えている。また、本実施形態の画像形成システムを構成する転写材処理装置2は、画像形成装置1’から出力される定着済みの転写紙が入力される転写材入力部と、その転写材入力部から入力された転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置70と、表面処理装置70で表面処理された転写材が出力される転写材出力部としての排紙トレイ203と、を備えている。上記転写材入力部は、画像形成装置1’の定着後排紙ローラ対56が設けられた転写材出力部に対向するように設けられている。かかる構成により、画像形成装置1’の給紙カセット44の給紙位置から転写材処理装置2の排紙トレイ203に至るまで転写紙搬送経路48が形成される。また、転写材処理装置2に設けられる表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の画像形成システムにおいて、画像形成装置1’でトナー画像を形成され定着処理が完了すると、その定着済みの転写紙が画像形成装置1’の転写紙出力部から転写材処理装置2内に導入される。転写材処理装置2の表面処理装置70で放電処理が完了すると、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ203上に排出される。
【0087】
図21は、本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図である。本実施形態の転写材処理装置3は、処理対象の転写材にトナー画像を形成する画像形成装置の設置場所から離れた位置に、その画像形成装置とは独立に設置することができる独立設置型の装置である。この転写材処理装置3は、表面にトナー画像が形成された定着済みの転写紙Pを供給する転写材供給部としての給紙カセット301と、その給紙カセット301から供給された転写紙Pのトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置70と、表面処理装置70で表面処理された転写紙Pが出力される転写材出力部としても排紙トレイ311とを備えている。給紙カセット301は定着処理済みの転写紙Pの束を収容し、給紙カセット301の紙束における一番上の転写紙Pが給紙ローラ302の回転駆動によって送り出される。給紙カセット301から送り出された転写紙Pは、給紙ローラ303及び搬送ローラ304〜309により、表面処理装置70に向けて搬送される。表面処理装置70で放電処理されて出力された転写紙Pは、排紙ローラ対310により排紙トレイ311上に出力される。かかる構成により、給紙カセット301の給紙位置から排紙トレイ311に至るまで転写紙搬送経路300が形成される。また、本実施形態においても、表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の転写材処理装置3において、給紙カセット301に複数枚の定着済みの転写紙をまとめてセットし、例えば図示しない操作部の処理開始ボタンをユーザが操作すると、給紙カセット301内の複数枚の転写紙Pが上から順番に1枚ずつ自動給紙され、表面処理装置70で所定の放電処理を行われ、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ301上に連続的に排出される。
【0088】
図22は、本発明の更に他の実施形態に係る転写材処理装置の概略構成図である。本実施形態の転写材処理装置4は、上記図21の転写材処理装置3と同様に、画像形成装置とは独立に設置することができる独立設置型の装置である。本実施形態の転写材処理装置4は、図21の構成例とは異なり、定着済みの転写紙Pを供給する転写材供給部として、給紙カセットの代わりに手差しトレイ401を備えている。手差しトレイ401上にセットされた転写紙Pは、手差し送出ローラ402によって表面処理装置70に向けて送り出され、搬送ローラ404により表面処理装置70に導入される。また、表面処理装置70で放電処理されて出力された転写紙Pは、排紙ローラ対405により排紙トレイ405上に出力される。かかる構成により、手差しトレイ401から排紙トレイ405に至るまで転写紙搬送経路400が形成される。また、本実施形態においても、表面処理装置70は、定着処理済みの転写紙の表面又はその表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えており、例えば、前述の図7、図18又は図19に示す転写処理装置と同様な構成のものを用いることができる。本実施形態の転写材処理装置4において、手差しトレイ401に定着済みの転写紙をセットし、例えば図示しない操作部の処理開始ボタンの操作又は手差しトレイ401上の転写紙の検知に基づいて、手差しトレイ401上の転写紙Pが自動給紙され、表面処理装置70で所定の放電処理を行われ、濡れ性が向上した処理済みの転写紙Pが排紙トレイ405上に連続的に排出される。特に、本実施形態の転写材処理装置4では、定着済みの転写紙を手差しトレイ401上に載置すればよいので、定着済みの転写紙を1枚ずつ手軽に処理することができる。
【0089】
なお、上記各実施形態では、上記定着済み転写紙の表面処理に誘電体バリア放電を用いる例を示したが、本発明は、「大気圧プラズマ」、「大気圧グロー放電」、「コロナ放電」、「大気圧ストリーマ放電」などで表現される大気圧下での高電圧による他の放電を用いてもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、表面処理装置70で処理する処理対象の転写材が繊維質の材料がベースになっている転写紙である例をしましたが、本発明に係る転写装置装置の処理対象は、トナー画像が形成され定着可能なものであればOHP用のプラスチックシート等の転写紙以外の転写材であってもよく、同様な効果が得られるものである。
【0091】
また、上記各実施形態の表面処理装置で処理可能な転写材上のトナー画像を構成するトナーとしては、例えば、以下に示すような少なくとも樹脂と着色剤とを含有する電子写真用トナーを使用できる。また、トナーは、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有してもよい。
【0092】
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。機械的な強度等を合わせ考慮すると、ポリエステル系樹脂が好ましい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
【0093】
前記アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0094】
前記メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0095】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0096】
また、本実施形態のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0097】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0098】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0099】
前記ビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0100】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0101】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0102】
前記ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
【0103】
前記ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0104】
前記ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0105】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。この結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0106】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0107】
また、本実施形態のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0108】
前記トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、次式(1)で算出する。ただし、fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W・・・(1)
【0109】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80°Cであるのが好ましく、40〜75°Cであるのがより好ましい。Tgが35°Cより低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80°Cを超えると、定着性が低下することがある。
【0110】
トナーには磁性体を含有させてもよい。磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0111】
前記磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0112】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0113】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0114】
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0115】
〔着色剤〕
前記トナーに含有する着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0116】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0117】
また、本実施形態のトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0118】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0119】
また、トナーの分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0120】
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0121】
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0122】
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0123】
<ワックス>
また、前述のように、上記実施形態の表面処理装置で処理可能な転写材上のトナー画像を構成するトナーは、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有するトナーであってもよい。
【0124】
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0125】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0126】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0127】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0128】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0129】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0130】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0131】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110°Cの領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110°Cの領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0132】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0133】
本実施形態のトナーに含有するワックスでは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0134】
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、例えば、JIS K7121に準じた方法を採用する。DSC曲線は、例えば、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0135】
<帯電制御剤>
トナーの帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
また、トナーに添加する帯電制御剤は、例えば、トナーの帯電特性を調整し、高温高湿度下、あるいは低温低湿度下等の帯電特性が大きく変動し得る環境下での帯電特性差異の抑制や、トナー粒子間の帯電量ばらつきを抑制するために用いられる。
【0137】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれもオリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれもヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット株式会社製);キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
前記帯電制御剤は、前記マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解及び/又は分散させてもよく、あるいは前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解及び/又は分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。
【0138】
トナーにおける帯電制御剤の含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0139】
<流動性向上剤>
本実施形態のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0140】
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0141】
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
【0142】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0143】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0144】
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0145】
前記有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0146】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
【0147】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m2/g以上が好ましく、60〜400m2/gがより好ましい。
【0148】
表面処理された微粉体としては、20m2/g以上が好ましく、40〜300m2/gがより好ましい。これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0149】
また、本実施形態のトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0150】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0151】
また、現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
【0152】
前記混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0153】
トナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0154】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。前記無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μmであることが好ましく、5mμ〜500mμであることがより好ましい。前記BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0155】
この他、外添剤としては、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0156】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0157】
潜像担持体としての感光体や一次転写体として転写ベルトに残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加するクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μmから1μmのものが好ましい。
【0158】
上記各種材料からなるトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0159】
1、1’ 画像形成装置
2、3、4 転写材処理装置
70 表面処理装置
700 放電処理部
701、702 搬送ローラ
703 第1電極ローラ
704 第2電極ローラ
705 高周波発信機
706 高圧トランス
268 オイル
P 転写紙
W ワックス
T トナー
T’ トナー画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】特開昭62−100775号公報
【特許文献2】特開平3−91764号公報
【特許文献3】特開平3−168649号公報
【特許文献4】特開平8−334919号公報
【非特許文献】
【0161】
【非特許文献1】電子写真学会編、「電子写真技術の基礎と応用」、初版、株式会社コロナ社、昭和63年6月15日、p.321−324
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材の表面を処理する表面処理装置であって、
前記処理対象の転写材は、トナー画像が表面に形成され、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いて該トナー画像が定着された転写材であり、
前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
転写材の表面を処理する表面処理装置であって、
前記処理対象の転写材は、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いてトナー画像が表面に形成され、該トナー画像が定着された転写材であり、
前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2の表面処理装置において、
前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分に対する水の接触角が90°以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2の表面処理装置において、
前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分及び前記トナー画像に存在していない部分それぞれに対する水の接触角が90°以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、
前記放電は、大気圧プラズマが生じる放電、大気圧グロー放電、コロナ放電、又は大気圧ストリーマ放電であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、
前記放電は、誘電体バリア放電であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項7】
請求項6の表面処理装置において、
前記転写材を搬送する搬送手段を更に備え、
前記放電手段は、
前記搬送手段で搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、
導電性部材の表面に誘電体層が形成され該転写材を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、
該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えることを特徴とする表面処理装置。
【請求項8】
請求項7の表面処理装置において、
前記電圧は、周波数が20[kHz]以上及び500[kHz]以下である交流電圧であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項9】
請求項8の表面処理装置において、
前記交流電圧のピーク間電圧値は、前記空隙の厚みの単位長[mm]あたり、5[kVp−p]以下及び30[kVp−p]以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかの表面処理装置において、
前記第1電極部材の材料はステンレスであることを特徴とする表面処理装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかの表面処理装置において、
前記第1電極部材及び前記第2電極部材はそれぞれローラ形状を有し、
該第2電極部材の直径は該第1電極部材の直径よりも大きいことを特徴とする表面処理装置。
【請求項12】
請求項11の表面処理装置において、
前記第2電極部材を回転駆動する駆動手段を備え、
該第2電極部材は、その外周面の周方向の全体が前記誘電体層によって覆われていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかの表面処理装置において、
前記第2電極部材の誘電体層の比誘電率は、2以上及び10以下であり、
該誘電層の厚みは、0.1[mm]以上及び5[mm]以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】
請求項5又は6の表面処理装置において、
複数の支持ローラに掛け渡され前記転写材を搬送する搬送ベルトを更に備え、
前記放電手段は、
前記搬送ベルトで搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、
該搬送ベルトの該転写材を搬送している部分を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、
該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えることを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
転写材を処理する転写材処理装置であって、
表面にトナー画像が形成され該トナー画像が定着された定着済みの転写材を供給する転写材供給部と、
該転写材供給部から供給された該転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置と、
該表面処理装置で表面処理された該転写材が出力される転写材出力部と、を備え、
前記表面処理装置は、請求項1乃至14のいずれかの表面処理装置であることを特徴とする転写材処理装置。
【請求項1】
転写材の表面を処理する表面処理装置であって、
前記処理対象の転写材は、トナー画像が表面に形成され、オイルからなる離型剤を塗布した定着部材を用いて該トナー画像が定着された転写材であり、
前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
転写材の表面を処理する表面処理装置であって、
前記処理対象の転写材は、ワックスからなる離型剤が添加されたトナーを用いてトナー画像が表面に形成され、該トナー画像が定着された転写材であり、
前記定着が行われた定着済みのトナー画像が形成されている前記転写材の表面又は該表面の近傍に放電を発生させる放電手段を備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2の表面処理装置において、
前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分に対する水の接触角が90°以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2の表面処理装置において、
前記放電で処理された前記転写材の表面のうち前記トナー画像に存在している部分及び前記トナー画像に存在していない部分それぞれに対する水の接触角が90°以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、
前記放電は、大気圧プラズマが生じる放電、大気圧グロー放電、コロナ放電、又は大気圧ストリーマ放電であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの表面処理装置において、
前記放電は、誘電体バリア放電であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項7】
請求項6の表面処理装置において、
前記転写材を搬送する搬送手段を更に備え、
前記放電手段は、
前記搬送手段で搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、
導電性部材の表面に誘電体層が形成され該転写材を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、
該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えることを特徴とする表面処理装置。
【請求項8】
請求項7の表面処理装置において、
前記電圧は、周波数が20[kHz]以上及び500[kHz]以下である交流電圧であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項9】
請求項8の表面処理装置において、
前記交流電圧のピーク間電圧値は、前記空隙の厚みの単位長[mm]あたり、5[kVp−p]以下及び30[kVp−p]以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかの表面処理装置において、
前記第1電極部材の材料はステンレスであることを特徴とする表面処理装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかの表面処理装置において、
前記第1電極部材及び前記第2電極部材はそれぞれローラ形状を有し、
該第2電極部材の直径は該第1電極部材の直径よりも大きいことを特徴とする表面処理装置。
【請求項12】
請求項11の表面処理装置において、
前記第2電極部材を回転駆動する駆動手段を備え、
該第2電極部材は、その外周面の周方向の全体が前記誘電体層によって覆われていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかの表面処理装置において、
前記第2電極部材の誘電体層の比誘電率は、2以上及び10以下であり、
該誘電層の厚みは、0.1[mm]以上及び5[mm]以下であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】
請求項5又は6の表面処理装置において、
複数の支持ローラに掛け渡され前記転写材を搬送する搬送ベルトを更に備え、
前記放電手段は、
前記搬送ベルトで搬送されている転写材の前記トナー画像が形成されている表面に空隙を介して対向し該転写材の移動方向と交差する方向に延在する導電性の第1電極部材と、
該搬送ベルトの該転写材を搬送している部分を間に介して該第1電極部材に対向するように設けられた第2電極部材と、
該第1電極部材と該第2電極部材の導電性部材との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えることを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
転写材を処理する転写材処理装置であって、
表面にトナー画像が形成され該トナー画像が定着された定着済みの転写材を供給する転写材供給部と、
該転写材供給部から供給された該転写材のトナー画像が定着されている表面を処理する表面処理装置と、
該表面処理装置で表面処理された該転写材が出力される転写材出力部と、を備え、
前記表面処理装置は、請求項1乃至14のいずれかの表面処理装置であることを特徴とする転写材処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【図14】
【公開番号】特開2011−59576(P2011−59576A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211783(P2009−211783)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
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